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複素数平面と作図:回転・共円・Napoleon の定理から作図可能な数まで

対象読者: 本テーマ第 1 章の平面ベクトルと、高校の多項式(因数定理・1 の冪根)を学んだ人。複素数の四則と極形式を知っていれば読め、体論は仮定しません。

前提となる記事:平面ベクトルと座標:内積・行列式・重み付き距離の公式を一本の道で、多項式の割り算と高次方程式:因数定理から Cardano の公式・1 の冪根まで

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複素数どうしのかけ算は、平面の上では「くるっと回して、伸ばし縮みさせる」操作になります。この見方を使うと、三角形が一直線に並ぶ、直角になる、正三角形になる、4 点が同じ円の上にある、といった図形の条件が、複素数の式に置き換わります。補助線を探していた幾何の証明が計算で済むことを、有名な定理で確かめ、最後は定規とコンパスで作れる長さの限界まで進みます。以下の箇条書きは全体の見取り図なので、知らない言葉があっても、各節で説明するので気にせず先に進んでください。

  • 複素数 z=x+iyz=x+iy を平面の点 (x,y)(x,y) と同一視すると、複素数の積は回転と拡大の合成です。ww をかける写像は、arg⁡w\arg w だけ回転し ∣w∣|w| 倍に拡大する相似変換で、図形の「向きつきの角」と「辺の比」が、商 c−ab−a\dfrac{c-a}{b-a} の偏角と絶対値に一括して現れます。
  • 3 点が一直線上、AB⊥ACAB\perp AC、正三角形、4 点が同一円周上、といった図形の条件は、すべて複素数の方程式(商が実数、純虚数、a+ωb+ω2c=0a+\omega b+\omega^2c=0、交比が実数)として書けます。
  • 複素数で書くと、Napoleon の定理、van Aubel の定理(四角形)、Pompeiu の定理は、数行の計算で証明できます。点の位置関係(外側か内側か)による場合分けは、回転の向きの符号に吸収されます。
  • 1 の nn 乗根は正 nn 角形の頂点で、zn−1=∏(z−ωk)z^n-1=\prod(z-\omega^k) から、頂点までの距離の積・正弦の積 ∏k=1n−12sin⁡kπn=n\prod_{k=1}^{n-1}2\sin\tfrac{k\pi}n=n・距離の 2 乗の和が得られます。
  • 格子を保つ回転の位数は 1,2,3,4,61,2,3,4,6 に限られます(結晶学的制限)。離散 Fourier 変換の反転公式は、1 の冪根の直交関係そのものです。
  • 作図可能な数は、0,10,1 から四則と平方根で作られる数で、これは体の拡大次数が 22 のべきであることの特徴づけになり、三大作図問題の不可能性が従います。

1. 動機:図形の言葉と複素数の言葉の辞書

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高校の「複素数平面」では、「c−ab−a\dfrac{c-a}{b-a} の偏角が π2\dfrac\pi2 なら AB⊥ACAB\perp AC」「c−ab−a=1±3i2\dfrac{c-a}{b-a}=\dfrac{1\pm\sqrt3 i}2 なら正三角形」といった条件を暗記します。この記事は、なぜこれらが成り立つのかを一本の見取り図で説明します。

見取り図は単純です。複素数の積 wzwz は、zz を原点のまわりに arg⁡w\arg w だけ回転し、∣w∣|w| 倍した点です。だから 2 つの辺ベクトル b−ab-a と c−ac-a の関係は、それらの商 c−ab−a=ρeiθ\dfrac{c-a}{b-a}=\rho e^{i\theta} という 1 つの複素数に集約され、ρ\rho が辺の長さの比、θ\theta が向きつきの角になります。2 つの三角形が(向きまで含めて)相似であることは、商が等しいことです。

この見取り図の使い道は 2 つあります。

  • 幾何の定理を代数の計算に落とす(Napoleon の定理など、補助線を引く総合幾何の証明が、数行の計算になる)。
  • 複素数の演算が、図形の変換(回転・相似・反転)であることを使って、代数の問題を図形の言葉で見る。1 の冪根の和・積、離散 Fourier 変換、作図可能な数がその例です。

出発点は、複素数体の基本性質(複素数体の基本性質:極形式、de Moivre の定理、nn 乗根)と、最初の章の平面ベクトル(平面ベクトルと座標:向きつきの角、回転行列)と、1 の冪根の直交関係(多項式の割り算と高次方程式)です。

2. 複素数平面・積と回転・回転相似

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定義 2.1(複素数平面)↗

複素数 z=x+iyz=x+iy(x,y∈Rx,y\in\mathbb{R})を平面 R2\mathbb{R}^2 の点(ベクトル)(x,y)(x,y) と同一視する。このとき ∣z∣|z| は原点からの距離、∣z−w∣|z-w| は 2 点 z,wz,w の距離、z+wz+w はベクトルの和、zˉ\bar z は実軸に関する対称点である。z≠0z\ne0 の極形式 z=∣z∣eiθz=|z|e^{i\theta}(偏角と極形式(定義 4.3)[複素数と複素平面])の θ\theta は、実軸の正の向きから zz への向きつきの角(向きつきの角(定義 4.4)[平面ベクトルと座標])である。

命題 2.2(複素数の積は回転と拡大)✓

  1. w=ρeiφw=\rho e^{i\varphi}(ρ>0\rho>0)に対し、写像 z↦wzz\mapsto wz は、(x,y)↦ρR(φ)(xy)(x,y)\mapsto\rho R(\varphi)\binom xy(回転行列の合成(命題 6.3)[平面ベクトルと座標] の R(φ)R(\varphi))である。すなわち、原点のまわりの角 φ\varphi の回転と、ρ\rho 倍の拡大の合成である。
  2. a≠ba\ne b、a≠ca\ne c とする。c−ab−a=∣AC∣∣AB∣ eiθ\dfrac{c-a}{b-a}=\dfrac{|AC|}{|AB|}\,e^{i\theta}、ただし θ\theta は AB→\overrightarrow{AB} から AC→\overrightarrow{AC} への向きつきの角(2π2\pi を除いて)である。
証明(命題 2.2)

(1) オイラーの公式(オイラーの公式(定理 4.2)[複素数と複素平面])により eiφ=cos⁡φ+isin⁡φe^{i\varphi}=\cos\varphi+i\sin\varphi で、(x+iy)(cos⁡φ+isin⁡φ)=(xcos⁡φ−ysin⁡φ)+i(xsin⁡φ+ycos⁡φ)(x+iy)(\cos\varphi+i\sin\varphi)=(x\cos\varphi-y\sin\varphi)+i(x\sin\varphi+y\cos\varphi) です。これは R(φ)(xy)R(\varphi)\binom xy の成分です。 (2) b′=B−A\boldsymbol b'=B-A、c′=C−A\boldsymbol c'=C-A の向きつきの角を θ\theta とすると、定義(向きつきの角の存在と一意性(命題 4.3)[平面ベクトルと座標])により c′∣c′∣=R(θ)b′∣b′∣\dfrac{\boldsymbol c'}{|\boldsymbol c'|}=R(\theta)\dfrac{\boldsymbol b'}{|\boldsymbol b'|}、すなわち複素数として c′∣c′∣=eiθb′∣b′∣\dfrac{c'}{|c'|}=e^{i\theta}\dfrac{b'}{|b'|}((1) による)。b′≠0b'\ne0 で割れば c′b′=∣c′∣∣b′∣eiθ\dfrac{c'}{b'}=\dfrac{|c'|}{|b'|}e^{i\theta} です。

定理 2.3(回転相似)✓

α≠0\alpha\ne0、β\beta を複素数とし、f(z)=αz+βf(z)=\alpha z+\beta とする。

  1. ∣f(z)−f(w)∣=∣α∣∣z−w∣|f(z)-f(w)|=|\alpha||z-w|。さらに f(c)−f(a)f(b)−f(a)=c−ab−a\dfrac{f(c)-f(a)}{f(b)-f(a)}=\dfrac{c-a}{b-a} なので、ff は向きつきの角と辺の比を保つ(相似変換)。
  2. α≠1\alpha\ne1 なら、不動点 z0=β1−αz_0=\dfrac{\beta}{1-\alpha} がただ 1 つあり、f(z)−z0=α(z−z0)f(z)-z_0=\alpha(z-z_0)。すなわち ff は z0z_0 のまわりの角 arg⁡α\arg\alpha の回転と ∣α∣|\alpha| 倍の拡大の合成(回転相似、z0z_0 はその中心)である。
  3. 相異なる 3 点 a,b,ca,b,c と 3 点 a′,b′,c′a',b',c'(a′≠b′a'\ne b')に対し、f(a)=a′f(a)=a'、f(b)=b′f(b)=b'、f(c)=c′f(c)=c' となる ff が存在するための必要十分条件は (b′−a′)(c−a)=(c′−a′)(b−a)(b'-a')(c-a)=(c'-a')(b-a)。
証明(定理 2.3)

(1) f(z)−f(w)=α(z−w)f(z)-f(w)=\alpha(z-w) から。商は α\alpha が約分されます。(2) z0=αz0+βz_0=\alpha z_0+\beta から z0=β/(1−α)z_0=\beta/(1-\alpha)。f(z)−z0=αz+β−αz0−β=α(z−z0)f(z)-z_0=\alpha z+\beta-\alpha z_0-\beta=\alpha(z-z_0)。命題 2.2 (1) により回転と拡大です。(3) 必要性:f(b)−f(a)=α(b−a)f(b)-f(a)=\alpha(b-a)、f(c)−f(a)=α(c−a)f(c)-f(a)=\alpha(c-a) から b′−a′=α(b−a)b'-a'=\alpha(b-a)、c′−a′=α(c−a)c'-a'=\alpha(c-a) で、消去して条件を得ます。十分性:α=b′−a′b−a≠0\alpha=\dfrac{b'-a'}{b-a}\ne0、β=a′−αa\beta=a'-\alpha a とすると f(a)=a′f(a)=a'、f(b)=α(b−a)+a′=b′f(b)=\alpha(b-a)+a'=b'、そして条件から f(c)=α(c−a)+a′=(b′−a′)(c−a)b−a+a′=c′f(c)=\alpha(c-a)+a'=\dfrac{(b'-a')(c-a)}{b-a}+a'=c'。

(3) は、三角形 ABCABC と A′B′C′A'B'C' が向きまで含めて相似である(辺の比がすべて等しく、向きつきの角が等しい)ことの複素数による言い換えです。補助線を引いて相似な三角形を探す高校幾何の議論は、この 1 つの等式の確認に置き換わります。

3. 図形の条件を複素数の条件にする

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命題 3.1(共線・直交・正三角形の条件)✓

ω=e2πi/3=−1+i32\omega=e^{2\pi i/3}=\dfrac{-1+i\sqrt3}2 とする。相異なる 3 点 a,b,ca,b,c について次が成り立つ。

  1. A,B,CA,B,C が一直線上にある   ⟺  c−ab−a∈R\iff\dfrac{c-a}{b-a}\in\mathbb{R}。
  2. AB⊥AC  ⟺  c−ab−aAB\perp AC\iff\dfrac{c-a}{b-a} が純虚数。
  3. 三角形 ABCABC が正三角形である   ⟺  c−ab−a=e±iπ/3  ⟺  a+ωb+ω2c=0\iff\dfrac{c-a}{b-a}=e^{\pm i\pi/3}\iff a+\omega b+\omega^2c=0 または a+ω2b+ωc=0a+\omega^2b+\omega c=0(前者が反時計回り、後者が時計回り)  ⟺  a2+b2+c2=ab+bc+ca\iff a^2+b^2+c^2=ab+bc+ca。
証明(命題 3.1)

u=c−ab−a=s+itu=\dfrac{c-a}{b-a}=s+it とおく。(1) c−a=u(b−a)c-a=u(b-a) で、直線 ABAB は {a+τ(b−a)∣τ∈R}\{a+\tau(b-a)\mid\tau\in\mathbb{R}\}(直線と円のベクトル方程式(命題 5.5)[平面ベクトルと座標])。CC がその上にあるのは u∈Ru\in\mathbb{R} のときです。(2) 内積 (c−a)⋅(b−a)=Re⁡((c−a)(b−a)‾)=∣b−a∣2Re⁡u=∣b−a∣2s(c-a)\cdot(b-a)=\operatorname{Re}\bigl((c-a)\overline{(b-a)}\bigr)=|b-a|^2\operatorname{Re}u=|b-a|^2s。垂直は s=0s=0、すなわち uu が純虚数(t≠0t\ne0 は c≠ac\ne a から)。(3) 正三角形なら ∣u∣=∣AC∣∣AB∣=1|u|=\dfrac{|AC|}{|AB|}=1、∣u−1∣=∣BC∣∣AB∣=1|u-1|=\dfrac{|BC|}{|AB|}=1。∣u∣2=∣u−1∣2|u|^2=|u-1|^2 から Re⁡u=12\operatorname{Re}u=\tfrac12、∣u∣=1|u|=1 と合わせて u=12±32i=e±iπ/3u=\tfrac12\pm\tfrac{\sqrt3}2i=e^{\pm i\pi/3}。逆は ∣u∣=∣u−1∣=1|u|=|u-1|=1 から 3 辺が等しい。次に eiπ/3=−ω2e^{i\pi/3}=-\omega^2(ω2=−1−i32\omega^2=\tfrac{-1-i\sqrt3}2)なので c−a=−ω2(b−a)c-a=-\omega^2(b-a)、すなわち c=a(1+ω2)−ω2b=−ωa−ω2bc=a(1+\omega^2)-\omega^2b=-\omega a-\omega^2b(1+ω+ω2=01+\omega+\omega^2=0)。ω2\omega^2 をかけて ω3=1\omega^3=1 を使うと a+ωb+ω2c=0a+\omega b+\omega^2c=0(逆向きにたどれば同値)。e−iπ/3=−ωe^{-i\pi/3}=-\omega なら、上の計算で ω\omega と ω2\omega^2 の役割を入れ替えるだけで c=−ω2a−ωbc=-\omega^2a-\omega b、すなわち a+ω2b+ωc=0a+\omega^2b+\omega c=0(両辺に ω\omega をかける)です。最後に展開すると (a+ωb+ω2c)(a+ω2b+ωc)=a2+b2+c2+(ω+ω2)(ab+bc+ca)=a2+b2+c2−ab−bc−ca(a+\omega b+\omega^2c)(a+\omega^2b+\omega c)=a^2+b^2+c^2+(\omega+\omega^2)(ab+bc+ca)=a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca(ω3=1\omega^3=1、ω+ω2=−1\omega+\omega^2=-1)。複素数体は体なので、これが 00 であることは 2 つの因子の一方が 00 であることと同値です。

定理 3.2(4 点が同一円周上にある条件(交比))✓

相異なる 4 点 z1,z2,z3,z4∈Cz_1,z_2,z_3,z_4\in\mathbb{C} について、これらが 1 つの円または 1 本の直線の上にあるための必要十分条件は、交比

(z4,z1,z2,z3)=z4−z1z4−z3⋅z2−z3z2−z1(z_4,z_1,z_2,z_3)=\frac{z_4-z_1}{z_4-z_3}\cdot\frac{z_2-z_3}{z_2-z_1}

が実数であることである。

この定理のねらいは、「4 点が同じ円の上にある」という図形の条件を、1 つの複素数が実数かどうかという判定に変えることです。証明の方針は、3 点を 0,1,∞0,1,\infty に写す変換で円を実軸に移し、4 点目の行き先が実軸にあるかを見ることです。ここで使う一次分数変換は、円や直線を円や直線に写す写像です。

証明(定理 3.2)

z1,z2,z3z_1,z_2,z_3 を 0,1,∞0,1,\infty に写す 1 次分数変換を SS とする(3 点の対応で決まる(定理 4.4)[等角写像とリーマン写像定理])。交比の定義(交比(定義 4.5)[等角写像とリーマン写像定理])により (z4,z1,z2,z3)=S(z4)(z_4,z_1,z_2,z_3)=S(z_4) です。一般化された円(円、または直線に ∞\infty を加えたもの)の全体を考えます。S−1S^{-1} は 1 次分数変換なので(メビウス変換の基本性質(命題 4.2)[等角写像とリーマン写像定理])、円円対応(円円対応(定理 4.3)[等角写像とリーマン写像定理])により Γ=S−1(R^)\Gamma=S^{-1}(\hat{\mathbb{R}})(R^=R∪{∞}\hat{\mathbb{R}}=\mathbb{R}\cup\{\infty\})は z1,z2,z3z_1,z_2,z_3 を通る一般化された円です。z1,z2,z3z_1,z_2,z_3 を通る一般化された円 Γ′\Gamma' があれば、S(Γ′)S(\Gamma') は 0,1,∞0,1,\infty を通る一般化された円で、∞\infty を含むので直線であり、0,10,1 を通るので R\mathbb{R} に一致し、Γ′=Γ\Gamma'=\Gamma です。したがって 4 点が 1 つの円か直線にあることは z4∈Γz_4\in\Gamma、すなわち S(z4)∈R^S(z_4)\in\hat{\mathbb{R}} と同値で、z4≠z3z_4\ne z_3 から S(z4)S(z_4) は有限なので、実数であることと同じです。

注意 3.3

arg⁡z4−z1z4−z3\arg\dfrac{z_4-z_1}{z_4-z_3} は z4z3→\overrightarrow{z_4z_3} から z4z1→\overrightarrow{z_4z_1} への向きつきの角なので、交比が実数であることは「向きつきの角 ∠z3z4z1\angle z_3z_4z_1 と ∠z3z2z1\angle z_3z_2z_1 が π\pi の整数倍を除いて等しい」ことです。これは円周角の定理とその逆(円の幾何)の複素数による定式化で、場合分けのない形になっています。

定理 3.4(反転は円・直線を円・直線に写す)✓

c∈Cc\in\mathbb{C}、r>0r>0 とし、円 ∣z−c∣=r|z-c|=r に関する反転を ι(z)=c+r2z−c‾\iota(z)=c+\dfrac{r^2}{\overline{z-c}}(z≠cz\ne c)で定める。

  1. ι(z)\iota(z) は半直線 czcz 上にあり、∣ι(z)−c∣⋅∣z−c∣=r2|\iota(z)-c|\cdot|z-c|=r^2。ι∘ι=id\iota\circ\iota=\mathrm{id}。
  2. ι\iota は、cc を通らない円を円に、cc を通る円を(cc を除いた)直線に、cc を通らない直線を cc を通る円(cc を除く)に、cc を通る直線を自分自身に写す。
証明(定理 3.4)

(1) ι(z)−c=r2z−c‾=r2(z−c)∣z−c∣2\iota(z)-c=\dfrac{r^2}{\overline{z-c}}=\dfrac{r^2(z-c)}{|z-c|^2} は z−cz-c の正の実数倍で、絶対値は r2∣z−c∣\dfrac{r^2}{|z-c|}。ι(ι(z))−c=r2ι(z)−c‾=r2r2/(z−c)=z−c\iota(\iota(z))-c=\dfrac{r^2}{\overline{\iota(z)-c}}=\dfrac{r^2}{r^2/(z-c)}=z-c。

(2) T(w)=c+r2w−cˉ=cw−∣c∣2+r2w−cˉT(w)=c+\dfrac{r^2}{w-\bar c}=\dfrac{cw-|c|^2+r^2}{w-\bar c} は 1 次分数変換(ad−bc=−r2≠0ad-bc=-r^2\ne0)で、ι(z)=T(zˉ)\iota(z)=T(\bar z) です。複素共役 z↦zˉz\mapsto\bar z は、方程式 Azzˉ+Bˉz+Bzˉ+C=0Az\bar z+\bar Bz+B\bar z+C=0 を同じ形(BB と Bˉ\bar B の入れ替え)に写すので一般化された円を一般化された円に写し(円円対応(定理 4.3)[等角写像とリーマン写像定理] の表示)、TT もそうです。したがって ι\iota は一般化された円を一般化された円に写します。ι\iota を C^\hat{\mathbb{C}} 上に ι(c)=∞\iota(c)=\infty、ι(∞)=c\iota(\infty)=c(T(cˉ)=∞T(\bar c)=\infty、T(∞)=cT(\infty)=c による)と拡張すると、cc を通る一般化された円は ∞\infty を含む像(直線)に、∞\infty を含む直線で cc を通らないものは cc を含み ∞\infty を含まない像(cc を通る円)に、cc も ∞\infty も含まない円は c,∞c,\infty を含まない像(円)に写ります。cc を通る直線は、z=c+tdz=c+td(t∈Rt\in\mathbb{R})と書けて、(1) により ι(z)−c=r2t⋅d∣d∣2\iota(z)-c=\dfrac{r^2}{t}\cdot\dfrac{d}{|d|^2} は同じ直線上にあり、自分自身に写ります。

反転の c=0c=0、r=1r=1 の場合は z↦1/zˉz\mapsto1/\bar z で、これは z↦1/zz\mapsto1/z と共役 z↦zˉz\mapsto\bar z の合成です。円と直線を一緒に扱う反転の議論は、前に出た章 反転:円と直線の名定理 で、図形の定理(Feuerbach の定理など)とあわせて扱いました。

ABC
Napoleon の定理:三角形 ABC の外側に正三角形を立て、その中心を結ぶと正三角形ができる

定理 4.1(Napoleon の定理)✓

三角形 ABCABC の 3 辺 BCBC、CACA、ABAB を 1 辺とする正三角形を、三角形 ABCABC の外側に作り、それらの中心(重心)を GaG_a、GbG_b、GcG_c とする。このとき GaGbGcG_aG_bG_c は正三角形である(3 点が一致する退化した場合を含む)。

証明の方針は、3 つの正三角形の中心を a,b,ca,b,c の式で書き、前節の正三角形の条件 ga+ωgb+ω2gc=0g_a+\omega g_b+\omega^2g_c=0 を確かめることです。「外側に立てる」は、A,B,CA,B,C が反時計回りに並ぶとき、三角形の内部は各辺(A→BA\to B など向きをつけた線分)の進行方向の左側にあるので、外側は右側、つまり −π/3-\pi/3 の回転の側になる、ということです。

証明(定理 4.1)

A,B,CA,B,C が反時計回りに並ぶとしてよい(時計回りなら全体の複素共役)。辺 BCBC の外側は有向線分 b→cb\to c の右側なので、外側の正三角形の頂点は a′=b+e−iπ/3(c−b)a'=b+e^{-i\pi/3}(c-b)。e−iπ/3=−ωe^{-i\pi/3}=-\omega なので a′=b−ω(c−b)=−ω2b−ωca'=b-\omega(c-b)=-\omega^2b-\omega c(1+ω=−ω21+\omega=-\omega^2)で、中心は

ga=b+c+a′3=(1−ω2)b+(1−ω)c3.g_a=\frac{b+c+a'}3=\frac{(1-\omega^2)b+(1-\omega)c}3.

同様に gb=(1−ω2)c+(1−ω)a3g_b=\dfrac{(1-\omega^2)c+(1-\omega)a}3、gc=(1−ω2)a+(1−ω)b3g_c=\dfrac{(1-\omega^2)a+(1-\omega)b}3。3(ga+ωgb+ω2gc)3(g_a+\omega g_b+\omega^2g_c) を展開すると、aa の係数は ω(1−ω)+ω2(1−ω2)=ω−ω2+ω2−ω=0\omega(1-\omega)+\omega^2(1-\omega^2)=\omega-\omega^2+\omega^2-\omega=0、bb の係数は (1−ω2)+ω2(1−ω)=1−ω3=0(1-\omega^2)+\omega^2(1-\omega)=1-\omega^3=0、cc の係数は (1−ω)+ω(1−ω2)=1−ω3=0(1-\omega)+\omega(1-\omega^2)=1-\omega^3=0。したがって ga+ωgb+ω2gc=0g_a+\omega g_b+\omega^2g_c=0 です。3 点が相異なるなら、命題 3.1 (3) により GaGbGcG_aG_bG_c は(反時計回りの)正三角形です。2 点が一致するとき、たとえば ga=gbg_a=g_b なら ga(1+ω)+ω2gc=ω2(gc−ga)=0g_a(1+\omega)+\omega^2g_c=\omega^2(g_c-g_a)=0(1+ω=−ω21+\omega=-\omega^2)で gc=gag_c=g_a となり、3 点がすべて一致する退化した場合です(他の組も同様)。

定理 4.2(van Aubel の定理(四角形))✓

四角形 ABCDABCD(任意の 4 点、頂点がこの順に反時計回りとして)の各辺の右側(外側)に正方形を立て、辺 AB,BC,CD,DAAB,BC,CD,DA に立てた正方形の中心を O1,O2,O3,O4O_1,O_2,O_3,O_4 とする。このとき線分 O1O3O_1O_3 と O2O4O_2O_4 は長さが等しく、互いに直交する。

証明(定理 4.2)

辺 a→ba\to b の右側に立てた正方形の中心は、辺の中点から、辺ベクトルを −90∘-90^\circ 回転した半分だけ動いた点で o1=a+b2−i(b−a)2=(1+i)a+(1−i)b2o_1=\dfrac{a+b}2-\dfrac{i(b-a)}2=\dfrac{(1+i)a+(1-i)b}2。同様に o2=(1+i)b+(1−i)c2o_2=\dfrac{(1+i)b+(1-i)c}2、o3=(1+i)c+(1−i)d2o_3=\dfrac{(1+i)c+(1-i)d}2、o4=(1+i)d+(1−i)a2o_4=\dfrac{(1+i)d+(1-i)a}2。すると

o1−o3=(1+i)(a−c)+(1−i)(b−d)2,o2−o4=(1+i)(b−d)+(1−i)(c−a)2o_1-o_3=\frac{(1+i)(a-c)+(1-i)(b-d)}2,\qquad o_2-o_4=\frac{(1+i)(b-d)+(1-i)(c-a)}2

で、i(o1−o3)=(i−1)(a−c)+(i+1)(b−d)2=(1+i)(b−d)+(1−i)(c−a)2=o2−o4i(o_1-o_3)=\dfrac{(i-1)(a-c)+(i+1)(b-d)}2=\dfrac{(1+i)(b-d)+(1-i)(c-a)}2=o_2-o_4。したがって o2−o4=i(o1−o3)o_2-o_4=i(o_1-o_3)、すなわち O4O2O_4O_2 は O3O1O_3O_1 を 90∘90^\circ 回転して得られ(命題 2.2 (1))、長さが等しく直交します。

定理 4.3(Pompeiu の定理)✓

ABCABC を正三角形、PP を平面上の任意の点とする。このとき ∣PA∣≤∣PB∣+∣PC∣|PA|\le|PB|+|PC|、∣PB∣≤∣PC∣+∣PA∣|PB|\le|PC|+|PA|、∣PC∣≤∣PA∣+∣PB∣|PC|\le|PA|+|PB| で、線分 PA,PB,PCPA,PB,PC は(退化してもよい)三角形の 3 辺をなす。

証明(定理 4.3)

A,B,CA,B,C が反時計回りとして 命題 3.1 (3) の a+ωb+ω2c=0a+\omega b+\omega^2c=0 を使う(時計回りなら ω\omega と ω2\omega^2 を入れ替える)。任意の pp について

(p−a)+ω(p−b)+ω2(p−c)=p(1+ω+ω2)−(a+ωb+ω2c)=0.(p-a)+\omega(p-b)+\omega^2(p-c)=p(1+\omega+\omega^2)-(a+\omega b+\omega^2c)=0.

よって p−a=−ω(p−b)−ω2(p−c)p-a=-\omega(p-b)-\omega^2(p-c) で、∣ω∣=1|\omega|=1 と三角不等式(三角不等式(定理 3.4)[複素数と複素平面])から ∣PA∣≤∣PB∣+∣PC∣|PA|\le|PB|+|PC|。他の 2 つは添字を巡回させて同様です。

n≥2n\ge2 として ωn=e2πi/n\omega_n=e^{2\pi i/n} とおく。zn=1z^n=1 の解は ωnk\omega_n^k(k=0,…,n−1k=0,\dots,n-1)で、複素数平面で単位円周に内接する正 nn 角形の頂点です(複素数の n 乗根(定理 5.4)[複素数と複素平面])。

命題 5.1(複素数で導く三角関数の公式)✓

  1. (加法定理)cos⁡(α+β)=cos⁡αcos⁡β−sin⁡αsin⁡β\cos(\alpha+\beta)=\cos\alpha\cos\beta-\sin\alpha\sin\beta、sin⁡(α+β)=sin⁡αcos⁡β+cos⁡αsin⁡β\sin(\alpha+\beta)=\sin\alpha\cos\beta+\cos\alpha\sin\beta。
  2. (多倍角)n≥1n\ge1 について
cos⁡nθ=∑j=0⌊n/2⌋(−1)j(n2j)cos⁡n−2jθ sin⁡2jθ,sin⁡nθ=∑j=0⌊(n−1)/2⌋(−1)j(n2j+1)cos⁡n−2j−1θ sin⁡2j+1θ.\cos n\theta=\sum_{j=0}^{\lfloor n/2\rfloor}(-1)^j\binom n{2j}\cos^{n-2j}\theta\,\sin^{2j}\theta,\qquad\sin n\theta=\sum_{j=0}^{\lfloor(n-1)/2\rfloor}(-1)^j\binom n{2j+1}\cos^{n-2j-1}\theta\,\sin^{2j+1}\theta.

たとえば cos⁡3θ=4cos⁡3θ−3cos⁡θ\cos3\theta=4\cos^3\theta-3\cos\theta。 3. (等差の和)sin⁡θ2≠0\sin\dfrac\theta2\ne0 のとき

∑k=0n−1cos⁡kθ=sin⁡nθ2cos⁡(n−1)θ2sin⁡θ2,∑k=0n−1sin⁡kθ=sin⁡nθ2sin⁡(n−1)θ2sin⁡θ2.\sum_{k=0}^{n-1}\cos k\theta=\frac{\sin\frac{n\theta}2\cos\frac{(n-1)\theta}2}{\sin\frac\theta2},\qquad\sum_{k=0}^{n-1}\sin k\theta=\frac{\sin\frac{n\theta}2\sin\frac{(n-1)\theta}2}{\sin\frac\theta2}.
証明(命題 5.1)

(1) 指数法則(指数法則(補題 4.1)[複素数と複素平面])とオイラーの公式から cos⁡(α+β)+isin⁡(α+β)=ei(α+β)=eiαeiβ=(cos⁡αcos⁡β−sin⁡αsin⁡β)+i(sin⁡αcos⁡β+cos⁡αsin⁡β)\cos(\alpha+\beta)+i\sin(\alpha+\beta)=e^{i(\alpha+\beta)}=e^{i\alpha}e^{i\beta}=(\cos\alpha\cos\beta-\sin\alpha\sin\beta)+i(\sin\alpha\cos\beta+\cos\alpha\sin\beta) で、実部と虚部を比べます。

(2) de Moivre の定理(ド・モアブルの定理(定理 5.1)[複素数と複素平面])で cos⁡nθ+isin⁡nθ=(cos⁡θ+isin⁡θ)n\cos n\theta+i\sin n\theta=(\cos\theta+i\sin\theta)^n。二項定理(二項定理(定理 7.3)[数え上げと母関数])で右辺を ∑m(nm)cos⁡n−mθ (isin⁡θ)m\sum_m\binom nm\cos^{n-m}\theta\,(i\sin\theta)^m と展開し、i2j=(−1)ji^{2j}=(-1)^j、i2j+1=(−1)jii^{2j+1}=(-1)^ji から偶数番目の項が実部、奇数番目の項が虚部です。n=3n=3 では cos⁡3θ=cos⁡3θ−3cos⁡θsin⁡2θ=4cos⁡3θ−3cos⁡θ\cos3\theta=\cos^3\theta-3\cos\theta\sin^2\theta=4\cos^3\theta-3\cos\theta(sin⁡2=1−cos⁡2\sin^2=1-\cos^2)。

(3) r=eiθ≠1r=e^{i\theta}\ne1(sin⁡θ2≠0\sin\tfrac\theta2\ne0 から)。因数分解の公式(因数分解の公式(命題 5.1)[数と式] (1)。複素数でも成り立つ)より ∑k=0n−1rk=rn−1r−1=einθ/2(einθ/2−e−inθ/2)eiθ/2(eiθ/2−e−iθ/2)=ei(n−1)θ/2sin⁡nθ2sin⁡θ2\sum_{k=0}^{n-1}r^k=\dfrac{r^n-1}{r-1}=\dfrac{e^{in\theta/2}(e^{in\theta/2}-e^{-in\theta/2})}{e^{i\theta/2}(e^{i\theta/2}-e^{-i\theta/2})}=e^{i(n-1)\theta/2}\dfrac{\sin\frac{n\theta}2}{\sin\frac\theta2}(eix−e−ix=2isin⁡xe^{ix}-e^{-ix}=2i\sin x)。実部と虚部をとります。

定理 5.2(正多角形の頂点までの距離の積)✓

n≥2n\ge2、ω=ωn\omega=\omega_n とする。

  1. zn−1=∏k=0n−1(z−ωk)z^n-1=\displaystyle\prod_{k=0}^{n-1}(z-\omega^k)。
  2. 任意の複素数 pp について、pp から単位円に内接する正 nn 角形の頂点 ωk\omega^k までの距離の積は ∏k=0n−1∣p−ωk∣=∣pn−1∣\displaystyle\prod_{k=0}^{n-1}|p-\omega^k|=|p^n-1|。とくに p=eiθp=e^{i\theta} では 2∣sin⁡nθ2∣2\left|\sin\dfrac{n\theta}2\right|。
証明(定理 5.2)

(1) ω0,…,ωn−1\omega^0,\dots,\omega^{n-1} は zn=1z^n=1 の相異なる nn 個の解です(複素数の n 乗根(定理 5.4)[複素数と複素平面]、w=1w=1)。解と係数の関係(解と係数の関係(定理 4.3)[多項式の割り算と高次方程式])により zn−1=∏i=1n(z−αi)z^n-1=\prod_{i=1}^n(z-\alpha_i) と書け、根の集合は {αi}\{\alpha_i\}。これが相異なる nn 個の数 ωk\omega^k の集合に等しいので、αi\alpha_i は相異なり ωk\omega^k の並べ替えです。(2) (1) に z=pz=p を代入して絶対値をとります(積の絶対値は絶対値の積)。p=eiθp=e^{i\theta} では ∣einθ−1∣=∣einθ/2∣ ∣einθ/2−e−inθ/2∣=2∣sin⁡nθ2∣|e^{in\theta}-1|=|e^{in\theta/2}|\,|e^{in\theta/2}-e^{-in\theta/2}|=2|\sin\tfrac{n\theta}2|。

系 5.3(正弦の積の公式)✓

n≥2n\ge2 について

∏k=1n−12sin⁡kπn=n,すなわち∏k=1n−1sin⁡kπn=n2n−1.\prod_{k=1}^{n-1}2\sin\frac{k\pi}n=n,\qquad\text{すなわち}\qquad\prod_{k=1}^{n-1}\sin\frac{k\pi}n=\frac n{2^{n-1}}.

証明では、zn−1z^n-1 の 2 通りの因数分解を見比べて共通の因子 z−1z-1 を消します。この「消してよい」という操作は、係数が複素数の多項式環で、積が 00 になるのは一方が 00 のときだけ(整域であること)という性質によります。

証明(系 5.3)

zn−1=(z−1)∑k=0n−1zkz^n-1=(z-1)\sum_{k=0}^{n-1}z^k(因数分解の公式(命題 5.1)[数と式] (1))と 定理 5.2 (1) の k=0k=0 の因子 z−1z-1 を、多項式環が整域であること(多項式環の次数・整域性・単元(定理 6.2)[環と体の基礎])で消すと ∑k=0n−1zk=∏k=1n−1(z−ωk)\sum_{k=0}^{n-1}z^k=\prod_{k=1}^{n-1}(z-\omega^k)。z=1z=1 を代入して n=∏k=1n−1(1−ωk)n=\prod_{k=1}^{n-1}(1-\omega^k)。1−ωk=−2i eiπk/nsin⁡kπn1-\omega^k=-2i\,e^{i\pi k/n}\sin\tfrac{k\pi}n なので ∣1−ωk∣=2sin⁡kπn|1-\omega^k|=2\sin\tfrac{k\pi}n(0<k<n0<k<n で sin⁡>0\sin>0)で、絶対値をとると主張を得ます。

たとえば n=6n=6 では ∏k=15sin⁡kπ6=12⋅32⋅1⋅32⋅12=316=625\prod_{k=1}^5\sin\tfrac{k\pi}6=\tfrac12\cdot\tfrac{\sqrt3}2\cdot1\cdot\tfrac{\sqrt3}2\cdot\tfrac12=\tfrac3{16}=\tfrac6{2^5} です。

命題 5.4(頂点までの距離の 2 乗の和)✓

n≥2n\ge2、r>0r>0 とする。中心が原点で半径 rr の円に内接する正 nn 角形の頂点 rωkr\omega^k と任意の点 pp について

∑k=0n−1∣p−rωk∣2=n(∣p∣2+r2).\sum_{k=0}^{n-1}|p-r\omega^k|^2=n\bigl(|p|^2+r^2\bigr).
証明(命題 5.4)

∣p−rωk∣2=∣p∣2−2rRe⁡(pˉ ωk)+r2|p-r\omega^k|^2=|p|^2-2r\operatorname{Re}\bigl(\bar p\,\omega^k\bigr)+r^2(∣ωk∣=1|\omega^k|=1)。和をとると n∣p∣2+nr2−2rRe⁡(pˉ∑kωk)n|p|^2+nr^2-2r\operatorname{Re}\bigl(\bar p\sum_k\omega^k\bigr) で、∑k=0n−1ωk=0\sum_{k=0}^{n-1}\omega^k=0(1 の冪根の直交関係 1 の冪根の直交関係(定理 8.1)[多項式の割り算と高次方程式] で j=1j=1、n∤1n\nmid1)です。

これは Leibniz の公式(重み付き距離の 2 乗の和(Leibniz の公式)(定理 7.1)[平面ベクトルと座標])の正多角形の場合で、重心が中心 00 であることに対応しています。

定理 6.1(結晶学的制限)✓

u,v∈R2\boldsymbol u,\boldsymbol v\in\mathbb{R}^2 を 1 次独立なベクトルとし、格子 Λ={mu+nv∣m,n∈Z}\Lambda=\{m\boldsymbol u+n\boldsymbol v\mid m,n\in\mathbb{Z}\} とする。N≥1N\ge1 を整数とし、原点のまわりの角 θ=2πN\theta=\dfrac{2\pi}N の回転 R(θ)R(\theta) が Λ\Lambda を Λ\Lambda に写す(R(θ)Λ⊆ΛR(\theta)\Lambda\subseteq\Lambda)ならば、N∈{1,2,3,4,6}N\in\{1,2,3,4,6\} である。

証明(定理 6.1)

R(θ)u=αu+βvR(\theta)\boldsymbol u=\alpha\boldsymbol u+\beta\boldsymbol v、R(θ)v=γu+δvR(\theta)\boldsymbol v=\gamma\boldsymbol u+\delta\boldsymbol v となる整数 α,β,γ,δ\alpha,\beta,\gamma,\delta がある(R(θ)u,R(θ)v∈ΛR(\theta)\boldsymbol u,R(\theta)\boldsymbol v\in\Lambda)。P=(u v)P=(\boldsymbol u\ \boldsymbol v) は可逆(1 次独立と成分表示の一意性(命題 3.1)[平面ベクトルと座標])で R(θ)P=PMR(\theta)P=PM、M=(αγβδ)M=\begin{pmatrix}\alpha&\gamma\\\beta&\delta\end{pmatrix}。したがって R(θ)=PMP−1R(\theta)=PMP^{-1} で、tr⁡(XY)=tr⁡(YX)\operatorname{tr}(XY)=\operatorname{tr}(YX)(成分で確かめられる)から tr⁡R(θ)=tr⁡M=α+δ∈Z\operatorname{tr}R(\theta)=\operatorname{tr}M=\alpha+\delta\in\mathbb{Z}。tr⁡R(θ)=2cos⁡θ\operatorname{tr}R(\theta)=2\cos\theta なので、2cos⁡2πN∈Z2\cos\dfrac{2\pi}N\in\mathbb{Z} です。

N=1,2,3,4,6N=1,2,3,4,6 では 2cos⁡2πN=2,−2,−1,0,12\cos\tfrac{2\pi}N=2,-2,-1,0,1 で整数。N=5N=5 では π3<2π5<π2\tfrac\pi3<\tfrac{2\pi}5<\tfrac\pi2 で、[0,π2][0,\tfrac\pi2] で cos⁡\cos は狭義単調減少(周期性と基本的な対称性(定理 7.3)[指数・対数・三角関数をきちんと定義する] (3))、cos⁡π3=12\cos\tfrac\pi3=\tfrac12、cos⁡π2=0\cos\tfrac\pi2=0 なので 0<2cos⁡2π5<10<2\cos\tfrac{2\pi}5<1 で整数でない。N≥7N\ge7 では 0<2πN<π30<\tfrac{2\pi}N<\tfrac\pi3 で 12<cos⁡2πN<1\tfrac12<\cos\tfrac{2\pi}N<1、すなわち 1<2cos⁡2πN<21<2\cos\tfrac{2\pi}N<2 で整数でない。したがって N∈{1,2,3,4,6}N\in\{1,2,3,4,6\} です。

結晶には 5 回対称も 8 回対称もないことの数学的な理由がこれです(準結晶は周期的な格子ではないので例外です)。

定理 6.2(離散 Fourier 変換の反転公式)✓

n≥1n\ge1、ω=ωn\omega=\omega_n、a=(a0,…,an−1)∈Cna=(a_0,\dots,a_{n-1})\in\mathbb{C}^n とし、a^j=∑k=0n−1akω−jk\hat a_j=\displaystyle\sum_{k=0}^{n-1}a_k\omega^{-jk}(j=0,…,n−1j=0,\dots,n-1)を aa の離散 Fourier 変換とする。

  1. (反転公式)ak=1n∑j=0n−1a^j ωjka_k=\dfrac1n\displaystyle\sum_{j=0}^{n-1}\hat a_j\,\omega^{jk}。
  2. (Parseval の等式)∑k=0n−1∣ak∣2=1n∑j=0n−1∣a^j∣2\displaystyle\sum_{k=0}^{n-1}|a_k|^2=\frac1n\sum_{j=0}^{n-1}|\hat a_j|^2。
証明(定理 6.2)

(1) ∑ja^jωjk=∑lal∑jωj(k−l)\sum_j\hat a_j\omega^{jk}=\sum_{l}a_l\sum_j\omega^{j(k-l)}。1 の冪根の直交関係(1 の冪根の直交関係(定理 8.1)[多項式の割り算と高次方程式])により、内側の和は n∣(k−l)n\mid(k-l) のとき nn、そうでなければ 00 で、0≤k,l≤n−10\le k,l\le n-1 では k=lk=l のときだけ nn です。よって nakna_k。(2) ∣a^j∣2=a^ja^j‾=∑k,lakal‾ ω−j(k−l)|\hat a_j|^2=\hat a_j\overline{\hat a_j}=\sum_{k,l}a_k\overline{a_l}\,\omega^{-j(k-l)}(ω−jl‾=ωjl\overline{\omega^{-jl}}=\omega^{jl})。jj について足すと同じ直交関係で ∑j∣a^j∣2=n∑k∣ak∣2\sum_j|\hat a_j|^2=n\sum_k|a_k|^2 です。

例 6.3(離散 Fourier 変換の計算)

n=4n=4、ω=i\omega=i、a=(1,2,3,4)a=(1,2,3,4):a^0=10\hat a_0=10、a^1=1+2(−i)+3(−1)+4i=−2+2i\hat a_1=1+2(-i)+3(-1)+4i=-2+2i、a^2=1−2+3−4=−2\hat a_2=1-2+3-4=-2、a^3=1+2i−3−4i=−2−2i\hat a_3=1+2i-3-4i=-2-2i。Parseval:1+4+9+16=301+4+9+16=30、14(100+8+4+8)=30\tfrac14(100+8+4+8)=30。反転:a0=14(10−2+2i−2−2−2i)=1a_0=\tfrac14(10-2+2i-2-2-2i)=1。離散 Fourier 変換は、周期的な信号を 1 の冪根 ωjk\omega^{jk}(周波数 jj の波)に分解する操作で、高速 Fourier 変換(FFT)はこの計算を速く行うアルゴリズムです。

7. 定規とコンパスで作図できる数

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平面を複素数平面とみなし、作図可能な点を次のように定めます(多項式環と体の拡大 の定義と同じ)。P0={0,1}P_0=\{0,1\} から始め、PkP_k の相異なる 2 点を通る直線と、PkP_k の 1 点を中心とし PkP_k の 2 点の距離を半径とする円のうち、相異なる 2 つの図形の交点を PkP_k に加えて Pk+1P_{k+1} とし、⋃kPk\bigcup_kP_k の点を作図可能な点、その全体を C\mathcal{C} とする。R=C∩R\mathcal{R}=\mathcal{C}\cap\mathbb{R} は作図可能な実数の全体である。

補題 7.1(基本的な作図)✓

a≠ba\ne b を C\mathcal{C} の点とする。

  1. 2a−b∈C2a-b\in\mathcal{C}。
  2. 線分 abab の垂直二等分線は 2 点 a+(b−a)e±iπ/3∈Ca+(b-a)e^{\pm i\pi/3}\in\mathcal{C} を通り、中点 a+b2∈C\dfrac{a+b}2\in\mathcal{C}。
  3. a±i(b−a)∈Ca\pm i(b-a)\in\mathcal{C}。とくに i∈Ci\in\mathcal{C}。
  4. z∈Cz\in\mathcal{C} なら zˉ∈C\bar z\in\mathcal{C}。
  5. z∈Cz\in\mathcal{C} なら Re⁡z,Im⁡z∈R\operatorname{Re}z,\operatorname{Im}z\in\mathcal{R}。
  6. x,y∈Rx,y\in\mathcal{R} なら x+iy∈Cx+iy\in\mathcal{C}。
  7. x,y∈Rx,y\in\mathcal{R} なら x±y∈Rx\pm y\in\mathcal{R}。
  8. x,y∈Rx,y\in\mathcal{R} なら xy∈Rxy\in\mathcal{R}、x≠0x\ne0 なら y/x∈Ry/x\in\mathcal{R}。
  9. x∈Rx\in\mathcal{R}、x>0x>0 なら x∈R\sqrt x\in\mathcal{R}。

この補題のねらいは、定規とコンパスだけで、中点・垂線・足し算・引き算・かけ算・割り算・平方根といった基本の操作がすべてできることを示し、次の定理で「作図可能な数」を体の言葉で整理する準備をすることです。証明は (1) から順に、前の結果を使って組み上げます。(8) と (9) は座標で書かれていますが、(8) は 2 本の直線と実軸の交点、(9) は円と虚軸の交点を求めているだけです。

証明(補題 7.1)

P0⊆P1⊆⋯P_0\subseteq P_1\subseteq\cdots なので、C\mathcal{C} の有限個の点はある PkP_k にまとめて入り、以下ではそれらから 1 段階で図形と交点を作ります。(1) 直線 abab と、aa を中心とし bb を通る円の交点は bb と 2a−b2a-b。(2) aa 中心 bb 通過の円と bb 中心 aa 通過の円の交点 pp は ∣p−a∣=∣p−b∣=∣b−a∣|p-a|=|p-b|=|b-a| を満たし、u=p−ab−au=\dfrac{p-a}{b-a} は ∣u∣=∣u−1∣=1|u|=|u-1|=1 で、Re⁡u=12\operatorname{Re}u=\tfrac12 から u=e±iπ/3u=e^{\pm i\pi/3}(命題 3.1 (3) の計算)。この 2 点を通る直線は、どちらも a,ba,b から等距離なので垂直二等分線で、直線 abab との交点は中点です。(3) (1) の 2a−b2a-b(≠b\ne b)と bb の垂直二等分線は aa を通り直線 abab に垂直で、aa 中心 bb 通過の円との交点が a±i(b−a)a\pm i(b-a) です。a=0a=0、b=1b=1 で ±i∈C\pm i\in\mathcal{C}。(4) z∉Rz\notin\mathbb{R} とする。00 中心 ∣z∣|z| 半径の円と、11 中心 ∣z−1∣|z-1| 半径の円はどちらも zz と zˉ\bar z を通り、中心が異なるので共有点はこの 2 点だけ(相異なる 2 円の共有点は高々 2 個)。(5) w∈Cw\in\mathcal{C} について Re⁡w=w+wˉ2\operatorname{Re}w=\dfrac{w+\bar w}2 は (2)(4) により C\mathcal{C} に属す(w∈Rw\in\mathbb{R} なら ww 自身)。Im⁡z=Re⁡(−iz)\operatorname{Im}z=\operatorname{Re}(-iz) で、z≠0z\ne0 なら −iz=0−i(z−0)∈C-iz=0-i(z-0)\in\mathcal{C}((3))(z=0z=0 なら Im⁡z=0\operatorname{Im}z=0)。(6) x,y≠0x,y\ne0 とする。(1) の 2x2x(a=xa=x、b=0b=0)と 00 の垂直二等分線は直線 Re⁡z=x\operatorname{Re}z=x。(3) の iyiy と (1) の 2iy2iy から、00 と 2iy2iy の垂直二等分線は直線 Im⁡z=y\operatorname{Im}z=y。その交点が x+iyx+iy。x=0x=0 または y=0y=0 なら (3) と仮定から。(7) 2x,2y∈C2x,2y\in\mathcal{C}((1))の中点が x+yx+y((2)。2x=2y2x=2y なら x+y=2xx+y=2x)。−y=2⋅0−y-y=2\cdot0-y((1))。(8) x≠0x\ne0 とする。(6) で x+i(y−1)x+i(y-1)、1+i(y−x)1+i(y-x) を作図でき、iyiy とあわせて、点 iyiy と x+i(y−1)x+i(y-1) を通る直線 {(tx, y−t)}\{(tx,\ y-t)\} は実軸と t=yt=y で交わり、交点 xyxy です(方向 (x,−1)(x,-1) は水平でない)。点 iyiy と 1+i(y−x)1+i(y-x) を通る直線 {(t, y−tx)}\{(t,\ y-tx)\} は実軸と t=y/xt=y/x で交わります。(9) −1∈R-1\in\mathcal{R}((7))と xx の中点 c=x−12c=\tfrac{x-1}2((2))を中心とし xx を通る円は (X−c)2+Y2=(x+12)2(X-c)^2+Y^2=\bigl(\tfrac{x+1}2\bigr)^2 で、直線 X=0X=0(00 と ii を通る直線)との交点は Y2=(x+1)2−(x−1)24=xY^2=\tfrac{(x+1)^2-(x-1)^2}4=x から ±ix\pm i\sqrt x。x=Re⁡(−i⋅ix)∈R\sqrt x=\operatorname{Re}(-i\cdot i\sqrt x)\in\mathcal{R}((5))です。

定理 7.2(作図可能な数)✓

  1. C\mathcal{C} は C\mathbb{C} の部分体で、複素共役と複素数の平方根について閉じている。R\mathcal{R} は R\mathbb{R} の部分体(Q\mathbb{Q} を含む)で、正の元の平方根について閉じ、C=R+iR\mathcal{C}=\mathcal{R}+i\mathcal{R} である。
  2. z=x+iyz=x+iy が作図可能であることは、実数の体の列 Q=F0⊂F1⊂⋯⊂Fm⊂R\mathbb{Q}=F_0\subset F_1\subset\cdots\subset F_m\subset\mathbb{R}(各 Fj+1=Fj(Dj)F_{j+1}=F_j(\sqrt{D_j})、Dj∈FjD_j\in F_j、Dj≥0D_j\ge0)で、x,y∈Fmx,y\in F_m となるものがあることと同値である。すなわち作図可能な数は、Q\mathbb{Q} から四則と平方根を有限回くり返して得られる数である。特に [Q(x,y):Q][\mathbb{Q}(x,y):\mathbb{Q}] は 22 のべきである。
証明(定理 7.2)

(1) R\mathcal{R} は 補題 7.1 (7)(8) により +,−,×,÷+,-,\times,\div で閉じ、11 を含むので部分体で Q\mathbb{Q} を含みます。(9) が平方根。(5)(6) から C=R+iR\mathcal{C}=\mathcal{R}+i\mathcal{R}。したがって C\mathcal{C} は (x+iy)(u+iv)=(xu−yv)+i(xv+yu)(x+iy)(u+iv)=(xu-yv)+i(xv+yu) と (x+iy)−1=x−iyx2+y2(x+iy)^{-1}=\dfrac{x-iy}{x^2+y^2} で積と逆元について閉じ、和・差・共役でも閉じます。複素数の平方根:z=x+iy∈Cz=x+iy\in\mathcal{C}、r=x2+y2∈Rr=\sqrt{x^2+y^2}\in\mathcal{R}(r≥∣x∣r\ge|x|)、a=(r+x)/2a=\sqrt{(r+x)/2}、b=(r−x)/2∈Rb=\sqrt{(r-x)/2}\in\mathcal{R} とし、y≥0y\ge0 なら w=a+ibw=a+ib、y<0y<0 なら w=a−ibw=a-ib とすると、a2−b2=xa^2-b^2=x、2ab=2(r2−x2)/4=∣y∣2ab=2\sqrt{(r^2-x^2)/4}=|y| から w2=zw^2=z。

(2) (⇐\Leftarrow) F0=Q⊆RF_0=\mathbb{Q}\subseteq\mathcal{R} で、Fj⊆RF_j\subseteq\mathcal{R} なら Dj∈RD_j\in\mathcal{R}、Dj∈R\sqrt{D_j}\in\mathcal{R}((1))で Fj+1⊆RF_{j+1}\subseteq\mathcal{R}。よって x,y∈Rx,y\in\mathcal{R} から z∈Cz\in\mathcal{C}((1))。(⇒\Rightarrow) PkP_k の点の座標がすべて入る体の列があることを kk について示します。k=0k=0 は F0=QF_0=\mathbb{Q}。k→k+1k\to k+1:新しい点の座標は、交点の座標は高々 2 次の拡大に入る(補題 8.1)[多項式環と体の拡大] により、現在の体(PkP_k の座標をすべて含む列の最後 FF)について F(D)F(\sqrt D)(D∈FD\in F、D≥0D\ge0)に入ります。新しい点は有限個なので、それらの D\sqrt D を 1 つずつ順に添加した列を継ぎ足せば、Pk+1P_{k+1} の座標をすべて含む列を得ます。拡大次数は [Fj+1:Fj]∈{1,2}[F_{j+1}:F_j]\in\{1,2\}(Dj\sqrt{D_j} は t2−Djt^2-D_j の根)で、拡大次数の連鎖律(次数の連鎖律(命題 6.1)[多項式環と体の拡大])により [Fm:Q][F_m:\mathbb{Q}] は 22 のべき、Q⊆Q(x,y)⊆Fm\mathbb{Q}\subseteq\mathbb{Q}(x,y)\subseteq F_m から [Q(x,y):Q][\mathbb{Q}(x,y):\mathbb{Q}] は 2s2^s の約数、したがって 22 のべきです。

系 7.3(三大作図問題と正七角形)✓

  1. 立方体倍積:23∉R\sqrt[3]2\notin\mathcal{R} なので、長さ 11 の線分から長さ 23\sqrt[3]2 の線分は作図できない。
  2. 角の三等分:60∘60^\circ の三等分は作図できない(cos⁡20∘∉R\cos20^\circ\notin\mathcal{R})。
  3. 単位円に内接し 1 つの頂点が 11 の正七角形の頂点 e2πi/7e^{2\pi i/7} は作図可能でない。
証明(系 7.3)

(1)(2) は、x3−2x^3-2 と 4y3−3y−124y^3-3y-\tfrac12 の既約性による次数の議論(立方体倍積と角の三等分の不可能性(系 8.3)[多項式環と体の拡大])です。 (3) ζ=e2πi/7\zeta=e^{2\pi i/7}、y=ζ+ζ−1=2cos⁡2π7y=\zeta+\zeta^{-1}=2\cos\tfrac{2\pi}7 とすると、y2=ζ2+2+ζ−2y^2=\zeta^2+2+\zeta^{-2}、y3=ζ3+3ζ+3ζ−1+ζ−3y^3=\zeta^3+3\zeta+3\zeta^{-1}+\zeta^{-3} から y3+y2−2y−1=ζ−3(1+ζ+⋯+ζ6)=0y^3+y^2-2y-1=\zeta^{-3}(1+\zeta+\cdots+\zeta^6)=0(ζ7=1\zeta^7=1 と 1+ζ+⋯+ζ6=01+\zeta+\cdots+\zeta^6=0、後者は ζ7−1=(ζ−1)∑k=06ζk\zeta^7-1=(\zeta-1)\sum_{k=0}^6\zeta^k(因数分解の公式(命題 5.1)[数と式] (1))と ζ≠1\zeta\ne1 による)。f(t)=t3+t2−2t−1f(t)=t^3+t^2-2t-1 は有理根の候補 ±1\pm1 がどちらも根でない(f(1)=−1f(1)=-1、f(−1)=1f(-1)=1、有理根定理(定理 6.1)[多項式の割り算と高次方程式])ので、3 次式が可約なら 1 次の因子(有理数の根、剰余の定理・因数定理(定理 2.3)[多項式の割り算と高次方程式])をもつことから Q\mathbb{Q} 上既約で、yy の最小多項式です。したがって [Q(y):Q]=3[\mathbb{Q}(y):\mathbb{Q}]=3(単純拡大の次数(命題 6.2)[多項式環と体の拡大])。e2πi/7e^{2\pi i/7} が作図可能なら、その実部 x=cos⁡2π7=y/2x=\cos\tfrac{2\pi}7=y/2 について 定理 7.2 (2) により [Q(x):Q][\mathbb{Q}(x):\mathbb{Q}] は 22 のべき(Q(x)⊆Q(x,Im⁡e2πi/7)\mathbb{Q}(x)\subseteq\mathbb{Q}(x,\operatorname{Im}e^{2\pi i/7}) と連鎖律)ですが、Q(x)=Q(y)\mathbb{Q}(x)=\mathbb{Q}(y) の次数は 33 で矛盾します。

注意 7.4(さらに先の話)

円積問題(円と同じ面積の正方形)が不可能なのは、π\pi が超越数であること(Lindemann, 1882)から従います(Niven, Irrational Numbers)。正 nn 角形が作図可能であるための条件 n=2kp1⋯prn=2^kp_1\cdots p_r(pip_i は相異なる Fermat 素数)は、Gauss と Wantzel によるもので、必要性は上の次数の議論から、十分性は円分体の Galois 理論から得られます(Stewart, Galois Theory の作図の章)。コンパスだけ(Mohr–Mascheroni)や、定規と 1 つの円だけ(Poncelet–Steiner)、折り紙による作図は、作図の規則を変えた研究です(Hartshorne, Geometry: Euclid and Beyond)。

複素数平面は、複素解析(complex-analysis)の舞台そのものです。回転相似 z↦αz+βz\mapsto\alpha z+\beta は正則な 1 次写像で、反転と合わせた**一次分数変換**が円円対応を満たすことが、共円の条件の背景にあります。1 の冪根と離散 Fourier 変換は、群の指標の理論(有限アーベル群上の Fourier 解析)と、フーリエ解析(fourier-analysis)の離散版です。結晶学的制限は、格子を保つ線形変換の整数行列の性質(トレースが整数)で、結晶群の分類の入口です。作図可能な数の特徴づけは、体の拡大と Galois 理論(algebra)の最初の応用で、多項式の割り算と高次方程式 の因数定理・有理根定理がその部品になっています。

演習 9.1易

f(z)=αz+βf(z)=\alpha z+\beta が f(0)=1+if(0)=1+i、f(1)=3+2if(1)=3+2i を満たすとき、ff の不動点(回転相似の中心)、回転角、拡大率を求めよ。

解答

定理 2.3 (3) の証明により α=f(1)−f(0)=2+i\alpha=f(1)-f(0)=2+i、β=1+i\beta=1+i。不動点は z0=β1−α=1+i−1−i=−1z_0=\dfrac{\beta}{1-\alpha}=\dfrac{1+i}{-1-i}=-1。回転角は arg⁡(2+i)=arctan⁡12\arg(2+i)=\arctan\tfrac12(約 26.6∘26.6^\circ)、拡大率は ∣2+i∣=5|2+i|=\sqrt5。確かめると f(−1)=−2−i+1+i=−1f(-1)=-2-i+1+i=-1。

演習 9.2標準

4 点 0, 1, 1+i, i0,\ 1,\ 1+i,\ i が同一円周上にあることを、交比で示せ。

解答

z1=0z_1=0、z2=1z_2=1、z3=1+iz_3=1+i、z4=iz_4=i とすると、定理 3.2 の交比の因子は z4−z1z4−z3=i−1=−i\dfrac{z_4-z_1}{z_4-z_3}=\dfrac{i}{-1}=-i、z2−z3z2−z1=−i1=−i\dfrac{z_2-z_3}{z_2-z_1}=\dfrac{-i}{1}=-i で、積は (−i)(−i)=i2=−1(-i)(-i)=i^2=-1。実数なので 4 点は 1 つの円(正方形の外接円)または直線上にあり、直線上にはない(1+i1+i は直線 00–11 上にない)ので円周上です。

演習 9.3標準

sin⁡π8sin⁡3π8\sin\dfrac\pi8\sin\dfrac{3\pi}8 の値を求めよ。

解答

系 5.3 の n=8n=8 より ∏k=17sin⁡kπ8=827=116\prod_{k=1}^7\sin\tfrac{k\pi}8=\tfrac8{2^7}=\tfrac1{16}。sin⁡(8−k)π8=sin⁡kπ8\sin\tfrac{(8-k)\pi}8=\sin\tfrac{k\pi}8 なので積は (sin⁡π8sin⁡2π8sin⁡3π8)2sin⁡4π8\bigl(\sin\tfrac\pi8\sin\tfrac{2\pi}8\sin\tfrac{3\pi}8\bigr)^2\sin\tfrac{4\pi}8。sin⁡π2=1\sin\tfrac\pi2=1、sin⁡π4=22\sin\tfrac\pi4=\tfrac{\sqrt2}2 なので (sin⁡π8sin⁡3π8⋅22)2=116\Bigl(\sin\tfrac\pi8\sin\tfrac{3\pi}8\cdot\tfrac{\sqrt2}2\Bigr)^2=\tfrac1{16}、各正弦は正なので sin⁡π8sin⁡3π8⋅22=14\sin\tfrac\pi8\sin\tfrac{3\pi}8\cdot\tfrac{\sqrt2}2=\tfrac14、すなわち sin⁡π8sin⁡3π8=24\sin\tfrac\pi8\sin\tfrac{3\pi}8=\tfrac{\sqrt2}4。直接確かめると sin⁡3π8=cos⁡π8\sin\tfrac{3\pi}8=\cos\tfrac\pi8 なので積は 12sin⁡π4=24\tfrac12\sin\tfrac\pi4=\tfrac{\sqrt2}4 で一致します。

演習 9.4標準

n=4n=4 で a^=(4, 0, 0, 0)\hat a=(4,\,0,\,0,\,0) を離散 Fourier 変換とする数列 aa を求めよ。

解答

定理 6.2 (1) により ak=14∑j=03a^j ijk=14⋅4⋅1=1a_k=\tfrac14\sum_{j=0}^3\hat a_j\,i^{jk}=\tfrac14\cdot4\cdot1=1(j=0j=0 の項のみ)。すなわち a=(1,1,1,1)a=(1,1,1,1)(定数列のフーリエ係数は 0 番目だけに現れる)。確かめると a^0=4\hat a_0=4、a^j=∑ki−jk=0\hat a_j=\sum_ki^{-jk}=0(j=1,2,3j=1,2,3、直交関係)。

  • Tristan Needham, Visual Complex Analysis, Oxford University Press, 1997 — 複素数の積と回転、反転に関する章。
  • Liang-shin Hahn, Complex Numbers and Geometry, Mathematical Association of America, 1994 — 複素数による平面幾何。
  • Ian Stewart, Galois Theory, 4th ed., CRC Press, 2015 — 作図の章。
  • Ivan Niven, Irrational Numbers, Mathematical Association of America, 1956 — 円積問題と π\pi の超越性に関する章。

このテーマの 100 本ノック(100 問)

執筆: Claude Code(Sonnet 5.5)、Claude Code(Opus 5.5)・監査 2 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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