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指数・対数・三角関数をきちんと定義する:級数から出発して π と弧の長さまで

対象読者: 高校数学 III の微分積分の計算と、本テーマの極限の章および指数関数・対数関数の章(ε-N による極限、指数法則)を学んだ人。大学の解析学は仮定しません。

前提となる記事:数列と関数の極限:「限りなく近づく」を ε-N で言い直し、e まで進む、指数関数と対数関数:累乗根から実数の指数へ、指数法則を証明する

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sin⁡\sin や π\pi は、高校では図形(円や角)を使って決めます。ところが、その説明をたどると、定義と証明がぐるぐる回っていることに気づきます。この記事は、図形を使わず、無限に足し算を続ける式だけから exe^x、sin⁡x\sin x、cos⁡x\cos x、π\pi を作り直し、高校で使ってきた公式が本当に成り立つことを順に確かめます。読み終えると、「弧度法でなぜ弧の長さが角になるのか」を循環なしに説明できるようになります。

  • 高校の教科書では、sin⁡x\sin x を単位円で、π\pi を円周の長さで、角の大きさ(弧度)を弧の長さで定義します。ところが、sin⁡x/x→1\sin x/x\to1 の証明には「扇形の面積」を、扇形の面積や弧の長さの公式には微分積分を、微分積分の計算には sin⁡\sin の導関数を使っており、定義と定理が輪になっています。この記事は、その輪を断ち切る方法を示します。
  • 方法は、幾何を一切使わずにべき級数だけから指数関数 exp⁡\exp、余弦 cos⁡\cos、正弦 sin⁡\sin を定義することです。そこから、加法定理、cos⁡2+sin⁡2=1\cos^2+\sin^2=1、π\pi の定義(cos⁡\cos の最小の正の零点の 2 倍)、周期性、単位円の媒介変数表示 θ↦(cos⁡θ,sin⁡θ)\theta\mapsto(\cos\theta,\sin\theta) が全単射であることを、順に証明します。
  • そのあとで初めて幾何に戻り、曲線の長さを積分で定義すると単位円の弧の長さがちょうど θ\theta になること、扇形の面積が θ/2\theta/2 になることを定理として証明します。これで「弧度法」が正当化されます。
  • 対数は exp⁡\exp の逆関数、一般の指数 axa^x は exp⁡(xlog⁡a)\exp(x\log a) と一致することを示し、1∞1^\infty 型の極限 lim⁡(1+an)bn=exp⁡(lim⁡anbn)\lim(1+a_n)^{b_n}=\exp(\lim a_nb_n) を証明します。
  • 逆三角関数・Machin の公式による π\pi の評価・双曲線関数・微分方程式 y′=yy'=y、y′′=−yy''=-y の解の一意性も証明します。後の記事(三角関数・平面ベクトル・合同と相似・三角比)は、この記事の定理を根にします。

1. 動機:「定義」と「証明」が輪になっていないか

Section titled “1. 動機:「定義」と「証明」が輪になっていないか”

高校で次のように習ったことを思い出してください。

  1. 角の大きさは弧度法で測る。半径 11 の円の弧の長さが θ\theta になる角を θ\theta ラジアンとする。
  2. 単位円周上の点を (cos⁡θ,sin⁡θ)(\cos\theta,\sin\theta) と書く。
  3. lim⁡x→0sin⁡xx=1\displaystyle\lim_{x\to0}\frac{\sin x}x=1。(扇形の面積と三角形の面積を比べるはさみうちで証明する。)
  4. したがって (sin⁡x)′=cos⁡x(\sin x)'=\cos x、(cos⁡x)′=−sin⁡x(\cos x)'=-\sin x。
  5. 円の面積 πr2\pi r^2 や扇形の面積 12r2θ\tfrac12r^2\theta、曲線の長さは積分で計算する。

3 で使う「扇形の面積は θ/2\theta/2」は、5 の積分を使えば(極座標の積分で)証明できますが、その積分は 4 の導関数(あるいは ∫cos⁡\int\cos の計算)を使います。つまり、3 → 4 → 5 → 3 と輪になっています。高校ではこの輪を見ないふりをして進みますが、論理的には「どれが定義でどれが定理か」を決め直さないと、最初の一歩が踏めません。

高校の説明:輪になる扇形の面積sin x / x → 1sin の導関数積分の計算どれも他を使って証明しているこの記事:一方通行べき級数(定義)exp・cos・sin加法定理・π単位円の媒介変数弧の長さ = θ扇形 = θ/2
高校の説明(左)では定義と証明が輪になる。この記事(右)は級数を根にして一方通行の依存にする

この記事の方針は、次の 3 点です。

  • 定義は級数にします。exp⁡x=∑xk/k!\exp x=\sum x^k/k!、cos⁡x=∑(−1)kx2k/(2k)!\cos x=\sum(-1)^kx^{2k}/(2k)!、sin⁡x=∑(−1)kx2k+1/(2k+1)!\sin x=\sum(-1)^kx^{2k+1}/(2k+1)!。無限和の収束と微分は、大学の解析の定理(級数・一様収束)で保証されます。ここに図形は現れません。
  • π\pi は cos⁡\cos の零点として定義します。円周の長さではありません。
  • 幾何は最後です。弧の長さと面積の定義(積分)を決めて、そこから「弧の長さ =θ=\theta」「扇形の面積 =θ/2=\theta/2」を導きます。これらは定義でなく定理です。

高校で教わる直観的な説明(回転による加法定理、扇形による sin⁡x/x→1\sin x/x\to1)は、各所の「高校での説明」に残しますが、その説明は証明では使いません。

この記事の証明は、次のものだけを使います。いずれも 微分積分学 などの記事で証明されています。

用途結果
級数の収束比判定法(定理 6.2[級数と収束判定])、比較判定法(定理 4.2[級数と収束判定])、ライプニッツの判定法(定理 7.3[級数と収束判定])、絶対収束は収束(定理 7.2[級数と収束判定])
一様収束と微分M 判定法(系 6.4[関数列と一様収束])、項別微分(定理 7.3[関数列と一様収束])
複素数の指数法則補題 4.1[複素数と複素平面]
微分積の法則・商の法則(定理 6.1[導関数の定義と基本的な微分法])、連鎖律(定理 7.2[導関数の定義と基本的な微分法])、逆関数の微分(命題 8.1[導関数の定義と基本的な微分法])
平均値の定理導関数の符号と単調性(系 3.4[平均値の定理とテイラーの定理])
連続関数中間値の定理(定理 5.7[極限と連続性])
積分微分積分学の基本定理(定理 5.4[積分の基本定理と定積分])、重積分の変数変換(系 6.9[重積分と累次積分])

表の中の二つの道具は、次の内容です(以下の証明で使う形での言い換えです)。M 判定法は、各項の絶対値が正の定数 MkM_k 以下で、∑Mk\sum M_k が収束するなら、その関数の級数は一様収束する、というものです。項別微分は、各項を微分した関数の列が一様収束し、元の関数の列がどこか 1 点で収束するなら、極限の関数は微分可能で、その導関数は「各項を微分したものの極限」になる、というものです。つまり、無限に足す式でも、項ごとに微分してよい条件を与えます。

なお、微積分の記事 導関数の定義と基本的な微分法 の sin⁡x/x→1\sin x/x\to1 と三角関数・指数関数の導関数は、この記事の定理(定理 8.4、定理 6.2、定理 3.3)を引いて証明しています。記事どうしは互いに参照し合いますが、定理の単位で見ると、上の表の定理(項別微分・平均値の定理・中間値の定理・重積分の変数変換など)は三角関数・指数関数を使わずに証明されているので、循環はありません。

xx を実数とします。

定義 3.1(指数関数(べき級数による定義))↗

exp⁡x=∑k=0∞xkk!=1+x+x22!+x33!+⋯\exp x=\sum_{k=0}^\infty\frac{x^k}{k!}=1+x+\frac{x^2}{2!}+\frac{x^3}{3!}+\cdots

とする。この級数が収束することは 定理 3.3 (1) で示す。

先に、多項式の微分の準備を済ませておきます。

補題 3.2(単項式の導関数)✓

k≥1k\ge1 ならば x↦xkx\mapsto x^k は R\mathbb R 上微分可能で、導関数は kxk−1kx^{k-1}(k=1k=1 のとき 11)である。

証明(補題 3.2)

k=1k=1 のとき、(x+h)−xh=1\dfrac{(x+h)-x}h=1 なので微分係数の定義(定義 3.1[導関数の定義と基本的な微分法])から導関数は 11 です。xkx^k の導関数が kxk−1kx^{k-1} であると仮定すると、積の法則(定理 6.1[導関数の定義と基本的な微分法])より (xk+1)′=(xk⋅x)′=kxk−1⋅x+xk⋅1=(k+1)xk(x^{k+1})'=(x^k\cdot x)'=kx^{k-1}\cdot x+x^k\cdot1=(k+1)x^k です。

定理 3.3(指数関数の基本性質)✓

  1. (収束)任意の実数 xx に対し、級数 ∑xk/k!\sum x^k/k! は絶対収束する。さらに、任意の R>0R>0 に対し、部分和 PN(x)=∑k=0Nxk/k!P_N(x)=\sum_{k=0}^Nx^k/k! は [−R,R][-R,R] 上で exp⁡\exp に一様収束する。
  2. (加法性)exp⁡(x+y)=exp⁡x⋅exp⁡y\exp(x+y)=\exp x\cdot\exp y、exp⁡0=1\exp0=1。
  3. (微分)exp⁡\exp は R\mathbb R 上微分可能で exp⁡′=exp⁡\exp'=\exp。とくに連続である。
  4. (単調性と値域)すべての xx で exp⁡x>0\exp x>0。exp⁡\exp は狭義単調増加で、x≥0x\ge0 では exp⁡x≥1+x\exp x\ge1+x。値域は (0,∞)(0,\infty) であり、exp⁡:R→(0,∞)\exp:\mathbb R\to(0,\infty) は全単射である。
証明(定理 3.3)

(1) x≠0x\ne0 とします。項の絶対値の比は ∣x∣k+1/(k+1)!∣x∣k/k!=∣x∣k+1→0\dfrac{|x|^{k+1}/(k+1)!}{|x|^k/k!}=\dfrac{|x|}{k+1}\to0 なので、比判定法(定理 6.2[級数と収束判定])により ∑∣x∣k/k!\sum|x|^k/k! は収束します。x=0x=0 は自明です。一様収束は、Mk=Rk/k!M_k=R^k/k! とおくと ∣xk/k!∣≤Mk|x^k/k!|\le M_k(∣x∣≤R|x|\le R)で、∑Mk\sum M_k が同じ理由で収束するので、M 判定法(系 6.4[関数列と一様収束])から従います。

(2) 複素数 zz に対する指数関数 exp⁡z=∑zn/n!\exp z=\sum z^n/n!(補題 4.1[複素数と複素平面])は、zz が実数のとき上の級数と同じです。その指数法則 exp⁡(z+w)=exp⁡zexp⁡w\exp(z+w)=\exp z\exp w を実数に使えば (2) です。exp⁡0=1\exp0=1 は、x=0x=0 で k≥1k\ge1 の項が 00 だからです。

(3) PNP_N は多項式で、補題 3.2 から PN′(x)=∑k=1Nxk−1/(k−1)!=PN−1(x)P_N'(x)=\sum_{k=1}^Nx^{k-1}/(k-1)!=P_{N-1}(x) です。R>0R>0 を取ります。[−R,R][-R,R] 上で、PN(0)=1P_N(0)=1 は収束し、導関数の列 PN′=PN−1P_N'=P_{N-1} は (1) より exp⁡\exp に一様収束します。項別微分の定理(定理 7.3[関数列と一様収束])により、PNP_N の極限(=exp⁡=\exp)は [−R,R][-R,R] 上微分可能で導関数は exp⁡\exp です。任意の実数 xx に対し R>∣x∣R>|x| と取れば xx は [−R,R][-R,R] の内点なので、端点の片側微分係数を考える必要はなく、すべての点で exp⁡′=exp⁡\exp'=\exp です。微分可能なら連続です(定理 3.4[導関数の定義と基本的な微分法])。

(4) x≥0x\ge0 のとき級数の項はすべて 00 以上で、最初の 2 項で exp⁡x≥1+x≥1>0\exp x\ge1+x\ge1>0 です。x<0x<0 のときは、(2) より exp⁡x⋅exp⁡(−x)=exp⁡0=1\exp x\cdot\exp(-x)=\exp0=1 で、exp⁡(−x)>0\exp(-x)>0 なので exp⁡x=1/exp⁡(−x)>0\exp x=1/\exp(-x)>0 です。(3) より exp⁡′=exp⁡>0\exp'=\exp>0 なので、導関数の符号と単調性(系 3.4[平均値の定理とテイラーの定理] (3))から狭義単調増加です。値域:y>0y>0 を任意にとる。exp⁡x≥1+x\exp x\ge1+x(x≥0x\ge0)から exp⁡b>y\exp b>y となる b>0b>0 が取れ、exp⁡(−b′)=1/exp⁡b′\exp(-b')=1/\exp b' から exp⁡(−b′)<y\exp(-b')<y となる b′>0b'>0 が取れます。中間値の定理(定理 5.7[極限と連続性])により [−b′,b][-b',b] に exp⁡x=y\exp x=y となる点があり、単調性から一意です。

(2) は、「ex+y=exeye^{x+y}=e^xe^y」という指数法則が、級数の定義から出る(コーシー積という計算を通して)ことを言っています。高校の定義では、まず exe^x の意味(ee の xx 乗)があって、指数法則が成り立つことが先にありました。ここでは順序が逆で、指数法則が成り立つ関数を級数で作ったのです。

ee との関係は、数列の記事で証明した e=∑k≥01/k!e=\sum_{k\ge0}1/k!(定理 4.2[数列と関数の極限])から、次のとおりです。

系 3.4(exp 1 = e)✓

exp⁡1=e\exp1=e、すなわち exp⁡1=lim⁡n→∞(1+1n)n\exp1=\displaystyle\lim_{n\to\infty}\left(1+\frac1n\right)^n である。

証明(系 3.4)

exp⁡1=∑k≥01/k!\exp1=\sum_{k\ge0}1/k! は定義そのもので、これが ee に等しいことは 定理 4.2[数列と関数の極限] です。

exp⁡:R→(0,∞)\exp:\mathbb R\to(0,\infty) は連続で狭義単調増加な全単射(定理 3.3 (4))なので、逆関数があります。

定義 4.1(自然対数)↗

exp⁡\exp の逆関数 log⁡:(0,∞)→R\log:(0,\infty)\to\mathbb R を自然対数という(ln⁡\ln とも書く)。exp⁡(log⁡y)=y\exp(\log y)=y(y>0y>0)、log⁡(exp⁡x)=x\log(\exp x)=x(x∈Rx\in\mathbb R)である。

定理 4.2(自然対数の性質)✓

  1. log⁡1=0\log1=0、log⁡e=1\log e=1。
  2. log⁡(yz)=log⁡y+log⁡z\log(yz)=\log y+\log z(y,z>0y,z>0)、log⁡(yn)=nlog⁡y\log(y^n)=n\log y(nn は整数)。
  3. log⁡\log は (0,∞)(0,\infty) 上で連続かつ狭義単調増加。
  4. log⁡\log は微分可能で log⁡′(y)=1/y\log'(y)=1/y。
証明(定理 4.2)

(1) exp⁡0=1\exp0=1、exp⁡1=e\exp1=e(系 3.4)。(2) u=log⁡yu=\log y、v=log⁡zv=\log z とすると、yz=exp⁡uexp⁡v=exp⁡(u+v)yz=\exp u\exp v=\exp(u+v)(定理 3.3 (2))なので log⁡(yz)=u+v\log(yz)=u+v です。整数 nn 乗は、これを繰り返して(n<0n<0 は log⁡(1/y)=−log⁡y\log(1/y)=-\log y から)従います。(3) 連続で狭義単調な関数の逆関数は連続で狭義単調(命題 8.1[導関数の定義と基本的な微分法])。(4) 同じ命題より、log⁡′(y)=1/exp⁡′(log⁡y)=1/exp⁡(log⁡y)=1/y\log'(y)=1/\exp'(\log y)=1/\exp(\log y)=1/y です。

数列の記事の指数の定義(有理数の指数からの極限による axa^x)との関係は、次のとおりです。

定理 4.3(ax=a^x = exp(x log a))✓

任意の a>0a>0、実数 xx に対し、axa^x(定義 3.3[指数関数と対数関数])は exp⁡(xlog⁡a)\exp(x\log a) に等しい。

証明(定理 4.3)

有理数の指数。 r=p/qr=p/q(pp は整数、qq は正の整数)とします。exp⁡(rlog⁡a)\exp(r\log a) は正で、その qq 乗は、定理 3.3 (2) を繰り返し使って exp⁡(qrlog⁡a)=exp⁡(plog⁡a)=(exp⁡(log⁡a))p=ap\exp(qr\log a)=\exp(p\log a)=\bigl(\exp(\log a)\bigr)^p=a^p です。一方、ar=(a1/q)pa^r=(a^{1/q})^p も正で、qq 乗すると apa^p です。正の qq 乗根は一意(定理 2.2[指数関数と対数関数])なので exp⁡(rlog⁡a)=ar\exp(r\log a)=a^r です。

実数の指数。 有理数列 rn→xr_n\to x を取ります。arn→axa^{r_n}\to a^x(定理 3.4[指数関数と対数関数] (2))です。他方、exp⁡\exp は連続(定理 3.3 (3))なので、exp⁡(rnlog⁡a)→exp⁡(xlog⁡a)\exp(r_n\log a)\to\exp(x\log a)(命題 5.5[数列と関数の極限] (1))です。有理数では両者が等しいので、極限の一意性(命題 2.2[数列と関数の極限] (2))から ax=exp⁡(xlog⁡a)a^x=\exp(x\log a) です。

とくに a=ea=e とすると ex=exp⁡(xlog⁡e)=exp⁡xe^x=\exp(x\log e)=\exp x です。これで、高校の「ee の xx 乗」と、級数で定義した exp⁡x\exp x が同じ関数であることがわかりました。高校の教科書が「exe^x」と書くのは、これを前提にしているのです。

(1+1n)n→e\left(1+\dfrac1n\right)^n\to e の一般化として、次の定理が成り立ちます。これは入試で「1∞1^\infty 型の極限」と呼ばれる形です。

定理 5.1(1∞1^∞ 型の極限)✓

数列 (an)(a_n) は an>−1a_n>-1 かつ an→0a_n\to0 を満たし、実数列 (bn)(b_n) について anbn→ca_nb_n\to c(c∈Rc\in\mathbb R)とする。このとき

(1+an)bn→exp⁡c(1+a_n)^{b_n}\to\exp c

である。(左辺は exp⁡(bnlog⁡(1+an))\exp(b_n\log(1+a_n)) であり、定理 4.3 により (1+an)bn(1+a_n)^{b_n} と同じ。)

証明(定理 5.1)

qn=log⁡(1+an)anq_n=\dfrac{\log(1+a_n)}{a_n}(an≠0a_n\ne0)、qn=1q_n=1(an=0a_n=0)とおきます。log⁡\log は 11 で微分可能で log⁡′(1)=1\log'(1)=1(定理 4.2 (4))、log⁡1=0\log1=0 なので、ε>0\varepsilon>0 に対し δ>0\delta>0 が取れて、0<∣h∣<δ0<|h|<\delta ならば ∣log⁡(1+h)h−1∣<ε\left|\dfrac{\log(1+h)}h-1\right|<\varepsilon です。an→0a_n\to0 なので十分大きい nn で ∣an∣<δ|a_n|<\delta となり、an≠0a_n\ne0 なら ∣qn−1∣<ε|q_n-1|<\varepsilon、an=0a_n=0 なら ∣qn−1∣=0|q_n-1|=0 です。したがって qn→1q_n\to1 です。

bnlog⁡(1+an)=(anbn) qn→c⋅1=cb_n\log(1+a_n)=(a_nb_n)\,q_n\to c\cdot1=c(命題 2.2[数列と関数の極限] (3))です。exp⁡\exp は連続なので、命題 5.5[数列と関数の極限] (1) から exp⁡(bnlog⁡(1+an))→exp⁡c\exp\bigl(b_n\log(1+a_n)\bigr)\to\exp c です。

定理 5.2(exp x = lim (1 +x/n)n+ x/n)^n)✓

任意の実数 xx に対し exp⁡x=lim⁡n→∞(1+xn)n\exp x=\displaystyle\lim_{n\to\infty}\left(1+\frac xn\right)^n である。

証明(定理 5.2)

定理 5.1 を an=x/na_n=x/n、bn=nb_n=n に使います(nn が十分大きければ an>−1a_n>-1 で、有限個の項は極限に影響しない)。anbn=x→xa_nb_n=x\to x です。

とくに x=1x=1 とすれば、数列の記事で定義した e=lim⁡(1+1/n)ne=\lim(1+1/n)^n が exp⁡1\exp1 であることの、独立な別証明になります。

例 5.3(複利の極限)

元金 11、年利 rr、年 nn 回の複利で 11 年後の元利合計は (1+rn)n\left(1+\dfrac rn\right)^n です。定理 5.2 から、n→∞n\to\infty(連続複利)の極限は exp⁡r=er\exp r=e^r です。年利 100%100\% で e≈2.718e\approx2.718 倍、年利 10%10\% で e0.1≈1.1052e^{0.1}\approx1.1052 倍(年 1 回の複利の 1.11.1 倍より少し多い)になります。

実数 xx に対し、次のように定義します。ここにも図形は現れません。

定義 6.1(余弦・正弦(べき級数による定義))↗

cos⁡x=∑k=0∞(−1)kx2k(2k)!,sin⁡x=∑k=0∞(−1)kx2k+1(2k+1)!\cos x=\sum_{k=0}^\infty\frac{(-1)^kx^{2k}}{(2k)!},\qquad\sin x=\sum_{k=0}^\infty\frac{(-1)^kx^{2k+1}}{(2k+1)!}

とする。収束は 定理 6.2 (1) で示す。

定理 6.2(cos・sin の収束・対称性・導関数)✓

  1. (収束)二つの級数は任意の実数 xx で絶対収束し、任意の R>0R>0 に対して部分和は [−R,R][-R,R] 上で一様収束する。
  2. cos⁡0=1\cos0=1、sin⁡0=0\sin0=0、cos⁡(−x)=cos⁡x\cos(-x)=\cos x、sin⁡(−x)=−sin⁡x\sin(-x)=-\sin x。
  3. cos⁡,sin⁡\cos,\sin は R\mathbb R 上微分可能で、(sin⁡x)′=cos⁡x(\sin x)'=\cos x、(cos⁡x)′=−sin⁡x(\cos x)'=-\sin x。とくに連続である。
証明(定理 6.2)

(1) cos⁡\cos の級数の項の絶対値 ∣x∣2k/(2k)!|x|^{2k}/(2k)! の部分和は、exp⁡∣x∣=∑∣x∣n/n!\exp|x|=\sum|x|^n/n! の部分和以下なので(項を一部だけ取っている)、上に有界な単調増加数列です。単調有界定理(定理 2.1[級数と収束判定])により収束し、絶対収束が出ます。sin⁡\sin も同様です。R>0R>0 に対し Mk=R2k/(2k)!M_k=R^{2k}/(2k)!、Mk′=R2k+1/(2k+1)!M_k'=R^{2k+1}/(2k+1)! とおくと、∑Mk\sum M_k、∑Mk′\sum M_k' も同じ理由で収束するので、M 判定法(系 6.4[関数列と一様収束])から一様収束が出ます。

(2) x=0x=0 では、cos⁡\cos の級数は k=0k=0 の項 11 だけが残り、sin⁡\sin の級数はすべての項が 00 です。また (−x)2k=x2k(-x)^{2k}=x^{2k}、(−x)2k+1=−x2k+1(-x)^{2k+1}=-x^{2k+1} なので、部分和の段階で CN(−x)=CN(x)C_N(-x)=C_N(x)、SN(−x)=−SN(x)S_N(-x)=-S_N(x)(CN,SNC_N,S_N は下の (3) の部分和)が成り立ち、N→∞N\to\infty とすれば対称性が出ます。

(3) 部分和を CN(x)=∑k=0N(−1)kx2k(2k)!C_N(x)=\sum_{k=0}^N\dfrac{(-1)^kx^{2k}}{(2k)!}、SN(x)=∑k=0N(−1)kx2k+1(2k+1)!S_N(x)=\sum_{k=0}^N\dfrac{(-1)^kx^{2k+1}}{(2k+1)!} とします。補題 3.2 により

SN′(x)=∑k=0N(−1)kx2k(2k)!=CN(x),CN′(x)=∑k=1N(−1)kx2k−1(2k−1)!=−SN−1(x)S_N'(x)=\sum_{k=0}^N\frac{(-1)^kx^{2k}}{(2k)!}=C_N(x),\qquad C_N'(x)=\sum_{k=1}^N\frac{(-1)^kx^{2k-1}}{(2k-1)!}=-S_{N-1}(x)

です。[−R,R][-R,R] 上で、SN′=CN→cos⁡S_N'=C_N\to\cos(一様)、SN(0)=0S_N(0)=0 は収束するので、項別微分(定理 7.3[関数列と一様収束])から sin⁡′=cos⁡\sin'=\cos です。同様に CN′=−SN−1→−sin⁡C_N'=-S_{N-1}\to-\sin(一様)、CN(0)=1C_N(0)=1 なので cos⁡′=−sin⁡\cos'=-\sin です。(1) より極限は cos⁡,sin⁡\cos,\sin そのものです。R>∣x∣R>|x| と取れば xx は内点なので、すべての実数 xx で成り立ちます。

複素数 zz に対する exp⁡z=∑zn/n!\exp z=\sum z^n/n! を使います。実数 xx に対して exp⁡(ix)\exp(ix) を級数で眺めると、偶数次の項は実数、奇数次の項は純虚数になります。

次の補題のねらいは、exp⁡\exp の級数の偶数次の項(実数)と奇数次の項(虚数単位 ii がつく)を分けると、ちょうど cos⁡\cos と sin⁡\sin の級数になる、と確かめることです。これで exp⁡\exp の指数法則から加法定理が取り出せます。

補題 6.3(exp(ix) = cos x + i sin x)✓

任意の実数 xx に対し exp⁡(ix)=cos⁡x+isin⁡x\exp(ix)=\cos x+i\sin x である。

証明(補題 6.3)

TM=∑n=0M(ix)n/n!T_M=\sum_{n=0}^M(ix)^n/n! とおきます。i2k=(−1)ki^{2k}=(-1)^k、i2k+1=(−1)kii^{2k+1}=(-1)^ki なので T2N+1=CN(x)+iSN(x)T_{2N+1}=C_N(x)+iS_N(x) です(CN,SNC_N,S_N は 定理 6.2 の証明の部分和)。N→∞N\to\infty のとき、T2N+1T_{2N+1} は収束数列 (TM)(T_M) の部分列なので exp⁡(ix)\exp(ix) に収束し、CN(x)→cos⁡xC_N(x)\to\cos x、SN(x)→sin⁡xS_N(x)\to\sin x です。複素数 ww について ∣Re w∣≤∣w∣|\mathrm{Re}\,w|\le|w|、∣Im w∣≤∣w∣|\mathrm{Im}\,w|\le|w| なので、収束する複素数の列は実部と虚部がそれぞれ極限の実部・虚部に収束します。したがって Re T2N+1=CN(x)\mathrm{Re}\,T_{2N+1}=C_N(x) は Reexp⁡(ix)\mathrm{Re}\exp(ix) と cos⁡x\cos x の両方に収束し、虚部も同様なので、極限の一意性(命題 2.2[数列と関数の極限] (2))から exp⁡(ix)=cos⁡x+isin⁡x\exp(ix)=\cos x+i\sin x です。

定理 6.4(加法定理)✓

任意の実数 x,yx,y に対し

cos⁡(x+y)=cos⁡xcos⁡y−sin⁡xsin⁡y,sin⁡(x+y)=sin⁡xcos⁡y+cos⁡xsin⁡y.\cos(x+y)=\cos x\cos y-\sin x\sin y,\qquad\sin(x+y)=\sin x\cos y+\cos x\sin y.
証明(定理 6.4)

複素数の指数法則(補題 4.1[複素数と複素平面])より exp⁡(i(x+y))=exp⁡(ix)exp⁡(iy)\exp(i(x+y))=\exp(ix)\exp(iy) です。補題 6.3 を左辺と右辺の各因子に使うと

cos⁡(x+y)+isin⁡(x+y)=(cos⁡x+isin⁡x)(cos⁡y+isin⁡y)=(cos⁡xcos⁡y−sin⁡xsin⁡y)+i(sin⁡xcos⁡y+cos⁡xsin⁡y)\cos(x+y)+i\sin(x+y)=(\cos x+i\sin x)(\cos y+i\sin y)=(\cos x\cos y-\sin x\sin y)+i(\sin x\cos y+\cos x\sin y)

です。両辺の実部どうし、虚部どうしを比べれば主張を得ます(cos⁡,sin⁡\cos,\sin は実数値なので、実部・虚部が読み取れる)。

定理 6.5(cos² + sin² = 1)✓

任意の実数 xx に対し cos⁡2x+sin⁡2x=1\cos^2x+\sin^2x=1 である。とくに ∣cos⁡x∣≤1|\cos x|\le1、∣sin⁡x∣≤1|\sin x|\le1。

証明(定理 6.5)

定理 6.4 で y=−xy=-x とすると、定理 6.2 (2) の対称性から cos⁡0=cos⁡xcos⁡(−x)−sin⁡xsin⁡(−x)=cos⁡2x+sin⁡2x\cos0=\cos x\cos(-x)-\sin x\sin(-x)=\cos^2x+\sin^2x です。cos⁡0=1\cos0=1 です。

7. π\pi の定義・周期性・単位円の媒介変数表示

Section titled “7. π\piπ の定義・周期性・単位円の媒介変数表示”

π\pi を「cos⁡\cos の最小の正の零点の 2 倍」と定義するには、まずそのような零点があることを示さなければなりません。cos⁡0=1>0\cos0=1>0 なので、どこかで cos⁡\cos が負になれば、連続関数が途中で 00 を通ることから零点が見つかります。そこで次の補題では、具体的な値 x=2x=2 で cos⁡2<0\cos2<0 となることを、交代級数の誤差評価で確かめます(22 は、評価が簡単に済む手頃な値として選んでいます)。

補題 7.1(cos の最小の正の零点)✓

  1. 0<x≤20<x\le2 ならば sin⁡x>0\sin x>0 である。また cos⁡2<0\cos2<0 である。
  2. cos⁡x=0\cos x=0 を満たす最小の正の数 cc が存在し、0<c<20<c<2 である。0≤x<c0\le x<c で cos⁡x>0\cos x>0 であり、sin⁡c=1\sin c=1。
証明(補題 7.1)

(1) 0<x≤20<x\le2 とし、cj=x2j+1/(2j+1)!c_j=x^{2j+1}/(2j+1)! とおくと sin⁡x=c0−c1+c2−c3+⋯\sin x=c_0-c_1+c_2-c_3+\cdots です。cj+1cj=x2(2j+2)(2j+3)≤46<1\dfrac{c_{j+1}}{c_j}=\dfrac{x^2}{(2j+2)(2j+3)}\le\dfrac46<1 なので (cj)(c_j) は正で単調に減少し、00 に収束します。ライプニッツの判定法(定理 7.3[級数と収束判定])を c2−c3+c4−⋯c_2-c_3+c_4-\cdots(和を σ\sigma とおく)に使うと、∣σ−c2∣≤c3|\sigma-c_2|\le c_3 なので σ≥c2−c3≥0\sigma\ge c_2-c_3\ge0 です。よって sin⁡x=c0−c1+σ≥x−x36=x(1−x26)≥x⋅13>0\sin x=c_0-c_1+\sigma\ge x-\dfrac{x^3}6=x\left(1-\dfrac{x^2}6\right)\ge x\cdot\dfrac13>0 です。

cos⁡2=1−∑k≥1(−1)k−1bk\cos2=1-\sum_{k\ge1}(-1)^{k-1}b_k(bk=22k/(2k)!b_k=2^{2k}/(2k)!)です。b1=2b_1=2、b2=23b_2=\dfrac23、b3=445b_3=\dfrac4{45} で、bk+1bk=4(2k+1)(2k+2)≤13\dfrac{b_{k+1}}{b_k}=\dfrac4{(2k+1)(2k+2)}\le\dfrac13 (k≥1k\ge1) なので単調減少です。ライプニッツの判定法(定理 7.3[級数と収束判定])で、和 T=∑k≥1(−1)k−1bkT=\sum_{k\ge1}(-1)^{k-1}b_k は ∣T−(b1−b2)∣≤b3|T-(b_1-b_2)|\le b_3 を満たし、T≥43−445=5645T\ge\dfrac43-\dfrac4{45}=\dfrac{56}{45} です。したがって cos⁡2=1−T≤−1145<0\cos2=1-T\le-\dfrac{11}{45}<0 です。

(2) cos⁡0=1>0>cos⁡2\cos0=1>0>\cos2 で cos⁡\cos は連続なので、中間値の定理(定理 5.7[極限と連続性])から Z={x∈[0,2]:cos⁡x=0}Z=\{x\in[0,2]:\cos x=0\} は空でありません。ZZ は下に有界なので下限 c=inf⁡Zc=\inf Z が存在します(定理 4.2[実数の完備性とコーシー列])。ZZ の元からなる列 zn→cz_n\to c を取れば、cos⁡c=lim⁡cos⁡zn=0\cos c=\lim\cos z_n=0(連続性。命題 5.5[数列と関数の極限])で、c∈[0,2]c\in[0,2] です。cos⁡0=1≠0\cos0=1\ne0 なので c>0c>0、また cos⁡2≠0\cos2\ne0 なので c<2c<2 です。0≤x<c0\le x<c で cos⁡x≤0\cos x\le0 となる xx があれば、cos⁡0>0\cos0>0 との間に中間値の定理で零点が [0,x][0,x] にあり、cc の最小性に反します。最後に、(1) より sin⁡c>0\sin c>0 で、sin⁡2c=1−cos⁡2c=1\sin^2c=1-\cos^2c=1(定理 6.5)なので sin⁡c=1\sin c=1 です。

定義 7.2(円周率 π)↗

補題 7.1 の cc(cos⁡\cos の最小の正の零点)に対し、π=2c\pi=2c と定める。すなわち π/2\pi/2 は cos⁡x=0\cos x=0 を満たす最小の正の数である。

これが π\pi の定義です。円の周の長さでも直径に対する円周の比でもなく、cos⁡\cos の零点です。この π\pi が、円周の長さ(2π2\pi)や円の面積と結びつくことは §8 で証明します。0<π/2<20<\pi/2<2 なので 0<π<40<\pi<4 です。

定理 7.3(周期性と基本的な対称性)✓

  1. 任意の実数 xx に対し cos⁡(x+π2)=−sin⁡x\cos\left(x+\dfrac\pi2\right)=-\sin x、sin⁡(x+π2)=cos⁡x\sin\left(x+\dfrac\pi2\right)=\cos x。
  2. cos⁡π=−1\cos\pi=-1、sin⁡π=0\sin\pi=0。任意の xx に対し cos⁡(x+π)=−cos⁡x\cos(x+\pi)=-\cos x、sin⁡(x+π)=−sin⁡x\sin(x+\pi)=-\sin x、cos⁡(x+2π)=cos⁡x\cos(x+2\pi)=\cos x、sin⁡(x+2π)=sin⁡x\sin(x+2\pi)=\sin x。
  3. [0,π/2][0,\pi/2] で cos⁡\cos は 11 から 00 へ連続に狭義単調減少し、sin⁡\sin は 00 から 11 へ狭義単調増加する。cos⁡>0\cos>0 は [0,π/2)[0,\pi/2) で、sin⁡>0\sin>0 は (0,π/2](0,\pi/2] で成り立つ。また [π/2,π][\pi/2,\pi] で cos⁡x=−sin⁡(x−π/2)∈[−1,0]\cos x=-\sin(x-\pi/2)\in[-1,0]、sin⁡x=cos⁡(x−π/2)≥0\sin x=\cos(x-\pi/2)\ge0 である。
証明(定理 7.3)

(1) 定理 6.4 に y=π/2y=\pi/2 を代入し、cos⁡(π/2)=0\cos(\pi/2)=0、sin⁡(π/2)=1\sin(\pi/2)=1(補題 7.1)を使います。

(2) (1) を 2 回使うと cos⁡(x+π)=−sin⁡(x+π/2)=−cos⁡x\cos(x+\pi)=-\sin(x+\pi/2)=-\cos x、sin⁡(x+π)=cos⁡(x+π/2)=−sin⁡x\sin(x+\pi)=\cos(x+\pi/2)=-\sin x です。x=0x=0 として cos⁡π=−1\cos\pi=-1、sin⁡π=0\sin\pi=0。さらにもう 1 回使えば周期 2π2\pi です。

(3) 0<x≤π/20<x\le\pi/2 で sin⁡x>0\sin x>0(π/2<2\pi/2<2 と 補題 7.1 (1))なので、(cos⁡x)′=−sin⁡x<0(\cos x)'=-\sin x<0 です。導関数の符号と単調性(系 3.4[平均値の定理とテイラーの定理] (3))から、[0,π/2][0,\pi/2] で cos⁡\cos は狭義単調減少で、cos⁡0=1\cos0=1、cos⁡(π/2)=0\cos(\pi/2)=0 です。cos⁡>0\cos>0([0,π/2)[0,\pi/2))は 補題 7.1 (2) で、(sin⁡x)′=cos⁡x>0(\sin x)'=\cos x>0(0≤x<π/20\le x<\pi/2)から sin⁡\sin は狭義単調増加、sin⁡0=0\sin0=0、sin⁡(π/2)=1\sin(\pi/2)=1 です。x∈[π/2,π]x\in[\pi/2,\pi] では (1) より cos⁡x=−sin⁡(x−π/2)\cos x=-\sin(x-\pi/2)、sin⁡x=cos⁡(x−π/2)\sin x=\cos(x-\pi/2) で、x−π/2∈[0,π/2]x-\pi/2\in[0,\pi/2] だから値の範囲が従います。

次の定理で示したいのは、「角 θ\theta を 00 から 2π2\pi まで動かすと、点 (cos⁡θ,sin⁡θ)(\cos\theta,\sin\theta) が単位円を過不足なくちょうど 1 周する」ことです。証明の方針は、円を四つの部分 Q0,…,Q3Q_0,\dots,Q_3 に分け、π/2\pi/2 ずつ進むと次の部分に移ること(90∘90^\circ 回転)を使って、最初の 1/41/4 周の場合に帰着させる、というものです。

定理 7.4(単位円の媒介変数表示)✓

写像 θ↦(cos⁡θ,sin⁡θ)\theta\mapsto(\cos\theta,\sin\theta) は、区間 [0,2π)[0,2\pi) から単位円 S1={(a,b)∈R2:a2+b2=1}S^1=\{(a,b)\in\mathbb R^2:a^2+b^2=1\} への全単射である(像が単位円に入ることは 定理 6.5)。

証明(定理 7.4)

単位円を 4 つの部分に分けます。

Q0={a>0, b≥0},Q1={a≤0, b>0},Q2={a<0, b≤0},Q3={a≥0, b<0}\begin{aligned} Q_0&=\{a>0,\ b\ge0\},& Q_1&=\{a\le0,\ b>0\},\\ Q_2&=\{a<0,\ b\le0\},& Q_3&=\{a\ge0,\ b<0\} \end{aligned}

(各集合は単位円上の点 (a,b)(a,b) の条件)。単位円上の点は符号の組合せで、ちょうど 1 つの QkQ_k に入ります。ρ(a,b)=(−b,a)\rho(a,b)=(-b,a) を「90∘90^\circ 回転」と呼ぶと、ρ\rho は単位円から単位円への全単射で、ρ(Q0)=Q1\rho(Q_0)=Q_1、ρ(Q1)=Q2\rho(Q_1)=Q_2、ρ(Q2)=Q3\rho(Q_2)=Q_3、ρ(Q3)=Q0\rho(Q_3)=Q_0 です。実際、たとえば (a,b)∈Q0(a,b)\in Q_0(a>0a>0、b≥0b\ge0)なら ρ(a,b)=(−b,a)\rho(a,b)=(-b,a) は −b≤0-b\le0、a>0a>0 で Q1Q_1 に入り、他の 3 つも同じく符号を確かめれば ρ(Qk)⊆Qk+1\rho(Q_k)\subseteq Q_{k+1}(添字は 44 を法とする)がわかります。逆写像 ρ−1(a,b)=(b,−a)\rho^{-1}(a,b)=(b,-a) についても同様に ρ−1(Qk+1)⊆Qk\rho^{-1}(Q_{k+1})\subseteq Q_k なので、等号が成り立ちます。また 定理 7.3 (1) より (cos⁡(θ+π/2),sin⁡(θ+π/2))=ρ(cos⁡θ,sin⁡θ)(\cos(\theta+\pi/2),\sin(\theta+\pi/2))=\rho(\cos\theta,\sin\theta) です。

[0,π/2)[0,\pi/2) から Q0Q_0 への全単射。 θ∈[0,π/2)\theta\in[0,\pi/2) なら cos⁡θ>0\cos\theta>0、sin⁡θ≥0\sin\theta\ge0 で像は Q0Q_0 に入ります(定理 7.3 (3))。単射性は cos⁡\cos が [0,π/2][0,\pi/2] で狭義単調であることから。全射性:(a,b)∈Q0(a,b)\in Q_0 とすると a∈(0,1]a\in(0,1] で、cos⁡\cos は [0,π/2][0,\pi/2] から [0,1][0,1] への連続な狭義単調減少の全単射なので cos⁡θ=a\cos\theta=a となる θ∈[0,π/2]\theta\in[0,\pi/2] があり、a>0a>0 より θ<π/2\theta<\pi/2 です。このとき sin⁡θ≥0\sin\theta\ge0 かつ sin⁡2θ=1−a2=b2\sin^2\theta=1-a^2=b^2 なので sin⁡θ=b\sin\theta=b(b≥0b\ge0)です。

一般の θ\theta。 θ∈[kπ/2,(k+1)π/2)\theta\in[k\pi/2,(k+1)\pi/2)(k=0,1,2,3k=0,1,2,3)を θ=θ0+kπ/2\theta=\theta_0+k\pi/2(θ0∈[0,π/2)\theta_0\in[0,\pi/2))と書くと、(cos⁡θ,sin⁡θ)=ρk(cos⁡θ0,sin⁡θ0)(\cos\theta,\sin\theta)=\rho^k(\cos\theta_0,\sin\theta_0) で、ρk\rho^k は Q0Q_0 から QkQ_k への全単射です。したがって各区間 [kπ/2,(k+1)π/2)[k\pi/2,(k+1)\pi/2) は QkQ_k に全単射に写り、Q0,…,Q3Q_0,\dots,Q_3 は単位円を分割するので、これらを合わせて [0,2π)[0,2\pi) から単位円への全単射を得ます。

これで、「角 θ\theta に対応する単位円上の点」が、高校の定義と同じ意味で定まりました。しかも π\pi は円周と無関係に cos⁡\cos の零点として定義したのに、2π2\pi ちょうどで 1 周する、つまり**周期が 2π2\pi**になっています。

8. 幾何への接続:弧の長さと扇形の面積

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ここで初めて、曲線の長さと面積を積分で定義します。面積は重積分(定義 5.1[重積分と累次積分])で定めたものです。

定義 8.1(曲線の長さ)↗

γ:[α,β]→R2\gamma:[\alpha,\beta]\to\mathbb R^2、γ(t)=(x(t),y(t))\gamma(t)=(x(t),y(t)) を C1C^1 級の曲線(x,yx,y が微分可能で x′,y′x',y' が連続)とする。その長さを

L(γ)=∫αβx′(t)2+y′(t)2 dtL(\gamma)=\int_\alpha^\beta\sqrt{x'(t)^2+y'(t)^2}\,dt

で定義する。

この定義は、「曲線を細かい折れ線で近似して、折れ線の長さを足す」という素朴な考えの極限として自然に出てくるものです(折れ線の 1 辺は (Δx)2+(Δy)2≈x′2+y′2 Δt\sqrt{(\Delta x)^2+(\Delta y)^2}\approx\sqrt{x'^2+y'^2}\,\Delta t)。

定理 8.2(単位円の弧の長さ = θ)✓

0≤θ≤2π0\le\theta\le2\pi とする。曲線 γ(t)=(cos⁡t,sin⁡t)\gamma(t)=(\cos t,\sin t)(0≤t≤θ0\le t\le\theta)の長さは θ\theta である。とくに θ=2π\theta=2\pi のとき、単位円周の長さは 2π2\pi である。

証明(定理 8.2)

γ′(t)=(−sin⁡t,cos⁡t)\gamma'(t)=(-\sin t,\cos t)(定理 6.2 (3))で、sin⁡2t+cos⁡2t=1\sqrt{\sin^2t+\cos^2t}=1(定理 6.5)なので、定義 8.1 より L(γ)=∫0θ1 dt=θL(\gamma)=\int_0^\theta1\,dt=\theta です(定理 5.4[積分の基本定理と定積分] を F(t)=tF(t)=t に使う)。γ\gamma が単位円の弧をちょうど 1 回なぞることは 定理 7.4 からわかります。

これが「弧度法」の正当化です。角 θ\theta を「単位円の弧の長さ」として測ると決めたとき、その角に対応する点は (cos⁡θ,sin⁡θ)(\cos\theta,\sin\theta) であって、cos⁡,sin⁡\cos,\sin は級数で定義した関数である、という整合性が、定義ではなく定理として示されました。

この命題の証明の方針は、扇形の点を、中心からの距離 rr と角 tt で表す「極座標」の変数変換で、長方形 [0,1]×[0,θ][0,1]\times[0,\theta] の積分に置き換えることです。このとき面積が rr 倍になる(ヤコビ行列式が rr になる)ことが計算の要で、あとは ∫01r dr=12\int_0^1r\,dr=\tfrac12 に θ\theta をかけるだけです。証明の前半は、この変数変換が使える条件(単射であること)の確認にあたります。

命題 8.3(扇形の面積 = θ/2)✓

0<θ≤2π0<\theta\le2\pi とし、Dθ={(rcos⁡t,rsin⁡t): 0≤r≤1, 0≤t≤θ}D_\theta=\{(r\cos t,r\sin t):\ 0\le r\le1,\ 0\le t\le\theta\}(半径 11、中心角 θ\theta の扇形)とする。DθD_\theta は面積確定で、その面積は θ/2\theta/2 である。とくに θ=2π\theta=2\pi のとき単位円板の面積は π\pi である。

証明(命題 8.3)

Φ(r,t)=(rcos⁡t,rsin⁡t)\Phi(r,t)=(r\cos t,r\sin t) は R2\mathbb R^2 上の C1C^1 級写像で、ヤコビ行列式は det⁡JΦ=cos⁡t⋅rcos⁡t−(−rsin⁡t)sin⁡t=r\det J_\Phi=\cos t\cdot r\cos t-(-r\sin t)\sin t=r です(定理 6.2 (3) と 定理 6.5)。E=[0,1]×[0,θ]E=[0,1]\times[0,\theta]、Z=∂EZ=\partial E(長方形の周、面積 00)とします。intE∖Z=(0,1)×(0,θ)\mathrm{int}E\setminus Z=(0,1)\times(0,\theta) で Φ\Phi が単射であることを示します。Φ(r,t)=Φ(r′,t′)\Phi(r,t)=\Phi(r',t') とすると、両辺の成分の 2 乗和から r2=r′2r^2=r'^2、r,r′>0r,r'>0 なので r=r′r=r' です(定理 6.5)。したがって (cos⁡t,sin⁡t)=(cos⁡t′,sin⁡t′)(\cos t,\sin t)=(\cos t',\sin t') で、t,t′∈(0,θ)⊆(0,2π)t,t'\in(0,\theta)\subseteq(0,2\pi) なので t=t′t=t' です(定理 7.4)。そこで det⁡JΦ=r>0\det J_\Phi=r>0 とあわせて、変数変換公式(系 6.9[重積分と累次積分])が使えて、Dθ=Φ(E)D_\theta=\Phi(E) は面積確定で

∣Dθ∣=∬Er dr dt=∫0θ(∫01r dr)dt=∫0θ12 dt=θ2|D_\theta|=\iint_E r\,dr\,dt=\int_0^\theta\left(\int_0^1r\,dr\right)dt=\int_0^\theta\frac12\,dt=\frac\theta2

です(累次積分は長方形の場合の縦線集合の定理 定理 5.6[重積分と累次積分] による)。

θ=2π\theta=2\pi とすると、単位円板の面積は π\pi、円周の長さは 2π2\pi です。級数で定義した π\pi が、確かに円周率になっています。

定理 8.4(sin x / x の極限)✓

lim⁡x→0sin⁡xx=1\displaystyle\lim_{x\to0}\frac{\sin x}x=1、lim⁡x→01−cos⁡xx=0\displaystyle\lim_{x\to0}\frac{1-\cos x}x=0 である。

証明(定理 8.4)

微分係数の定義(定義 3.1[導関数の定義と基本的な微分法])により、sin⁡′(0)=lim⁡h→0sin⁡h−sin⁡0h=lim⁡h→0sin⁡hh\sin'(0)=\lim_{h\to0}\dfrac{\sin h-\sin0}h=\lim_{h\to0}\dfrac{\sin h}h です。定理 6.2 (3) より sin⁡′(0)=cos⁡0=1\sin'(0)=\cos0=1 です。同様に cos⁡′(0)=−sin⁡0=0\cos'(0)=-\sin0=0 で、lim⁡h→0cos⁡h−1h=0\lim_{h\to0}\dfrac{\cos h-1}h=0 です。

補題 9.1(三角関数の制限は全単射)✓

  1. sin⁡\sin は [−π/2,π/2][-\pi/2,\pi/2] から [−1,1][-1,1] への連続な狭義単調増加の全単射である。
  2. cos⁡\cos は [0,π][0,\pi] から [−1,1][-1,1] への連続な狭義単調減少の全単射である。
  3. −π/2<x<π/2-\pi/2<x<\pi/2 で cos⁡x>0\cos x>0 なので tan⁡x=sin⁡x/cos⁡x\tan x=\sin x/\cos x が定義でき、tan⁡\tan は (−π/2,π/2)(-\pi/2,\pi/2) から R\mathbb R への連続な狭義単調増加の全単射で、tan⁡′x=1/cos⁡2x=1+tan⁡2x\tan'x=1/\cos^2x=1+\tan^2x である。
証明(補題 9.1)

(1) [0,π/2][0,\pi/2] で sin⁡\sin は 00 から 11 へ狭義単調増加(定理 7.3 (3))で、sin⁡\sin は奇関数なので [−π/2,0][-\pi/2,0] では −1-1 から 00 へ狭義単調増加です。つなげれば [−π/2,π/2][-\pi/2,\pi/2] で −1-1 から 11 へ狭義単調増加で、連続なので中間値の定理(定理 5.7[極限と連続性])により全射です。(2) [0,π/2][0,\pi/2] で cos⁡\cos は 11 から 00 へ、[π/2,π][\pi/2,\pi] で cos⁡x=−sin⁡(x−π/2)\cos x=-\sin(x-\pi/2) は 00 から −1-1 へ狭義単調減少です(定理 7.3 (1)(3))。つなげれば [0,π][0,\pi] で 11 から −1-1 へ狭義単調減少で、連続なので中間値の定理(定理 5.7[極限と連続性])により全射です。

(3) cos⁡\cos は偶関数で [0,π/2)[0,\pi/2) で正なので、(−π/2,π/2)(-\pi/2,\pi/2) で正です。商の法則(定理 6.1[導関数の定義と基本的な微分法])から tan⁡′=cos⁡2+sin⁡2cos⁡2=1cos⁡2=1+tan⁡2>0\tan'=\dfrac{\cos^2+\sin^2}{\cos^2}=\dfrac1{\cos^2}=1+\tan^2>0 で、狭義単調増加です(系 3.4[平均値の定理とテイラーの定理])。全射性を示します。y>0y>0 を任意にとり、sin⁡(π/2)=1\sin(\pi/2)=1、cos⁡(π/2)=0\cos(\pi/2)=0 と連続性から、π/2\pi/2 に十分近い x0<π/2x_0<\pi/2 で sin⁡x0>1/2\sin x_0>1/2 かつ 0<cos⁡x0<12(y+1)0<\cos x_0<\dfrac1{2(y+1)} となるものが取れます。このとき tan⁡x0>y+1>y\tan x_0>y+1>y で、tan⁡0=0<y\tan0=0<y なので、中間値の定理(定理 5.7[極限と連続性])から tan⁡x=y\tan x=y となる x∈(0,x0)x\in(0,x_0) があります。y<0y<0 は奇関数性から、y=0y=0 は x=0x=0 です。

定義 9.2(逆三角関数)↗

上の補題の逆関数を、それぞれ arcsin⁡:[−1,1]→[−π/2,π/2]\arcsin:[-1,1]\to[-\pi/2,\pi/2]、arccos⁡:[−1,1]→[0,π]\arccos:[-1,1]\to[0,\pi]、arctan⁡:R→(−π/2,π/2)\arctan:\mathbb R\to(-\pi/2,\pi/2) と書く。arcsin⁡x\arcsin x は「sin⁡θ=x\sin\theta=x となる θ∈[−π/2,π/2]\theta\in[-\pi/2,\pi/2]」、arccos⁡x\arccos x は「cos⁡θ=x\cos\theta=x となる θ∈[0,π]\theta\in[0,\pi]」、arctan⁡x\arctan x は「tan⁡θ=x\tan\theta=x となる θ∈(−π/2,π/2)\theta\in(-\pi/2,\pi/2)」である。

定理 9.3(逆三角関数の導関数)✓

(arcsin⁡x)′=11−x2,(arccos⁡x)′=−11−x2(−1<x<1),(arctan⁡x)′=11+x2(x∈R).(\arcsin x)'=\frac1{\sqrt{1-x^2}},\quad(\arccos x)'=-\frac1{\sqrt{1-x^2}}\quad(-1<x<1),\qquad(\arctan x)'=\frac1{1+x^2}\quad(x\in\mathbb R).
証明(定理 9.3)

逆関数の微分法(命題 8.1[導関数の定義と基本的な微分法])を使います。∣x∣<1|x|<1 で θ=arcsin⁡x∈(−π/2,π/2)\theta=\arcsin x\in(-\pi/2,\pi/2) とすると、cos⁡θ>0\cos\theta>0 かつ cos⁡2θ=1−sin⁡2θ=1−x2\cos^2\theta=1-\sin^2\theta=1-x^2 なので cos⁡θ=1−x2\cos\theta=\sqrt{1-x^2} で、(arcsin⁡x)′=1/cos⁡θ=1/1−x2(\arcsin x)'=1/\cos\theta=1/\sqrt{1-x^2} です。arccos⁡\arccos は、θ=arccos⁡x∈(0,π)\theta=\arccos x\in(0,\pi) で sin⁡θ>0\sin\theta>0(定理 7.3 (3) と 補題 7.1)、sin⁡θ=1−x2\sin\theta=\sqrt{1-x^2} なので (arccos⁡x)′=1/(−sin⁡θ)=−1/1−x2(\arccos x)'=1/(-\sin\theta)=-1/\sqrt{1-x^2} です。arctan⁡\arctan は、θ=arctan⁡x\theta=\arctan x のとき (arctan⁡x)′=1/tan⁡′θ=1/(1+tan⁡2θ)=1/(1+x2)(\arctan x)'=1/\tan'\theta=1/(1+\tan^2\theta)=1/(1+x^2) です(補題 9.1 (3))。

10. arctan⁡\arctan の加法定理と π\pi の評価

Section titled “10. arctan⁡\arctanarctan の加法定理と π\piπ の評価”

命題 10.1(arctan の加法定理)✓

x,yx,y が実数で xy<1xy<1 ならば

arctan⁡x+arctan⁡y=arctan⁡x+y1−xy\arctan x+\arctan y=\arctan\frac{x+y}{1-xy}

である。arctan⁡\arctan は奇関数なので、xy>−1xy>-1 のとき arctan⁡x−arctan⁡y=arctan⁡x−y1+xy\arctan x-\arctan y=\arctan\dfrac{x-y}{1+xy} も成り立つ。

証明(命題 10.1)

α=arctan⁡x\alpha=\arctan x、β=arctan⁡y∈(−π/2,π/2)\beta=\arctan y\in(-\pi/2,\pi/2) とすると cos⁡α,cos⁡β>0\cos\alpha,\cos\beta>0、sin⁡α=xcos⁡α\sin\alpha=x\cos\alpha、sin⁡β=ycos⁡β\sin\beta=y\cos\beta です。加法定理(定理 6.4)から

cos⁡(α+β)=cos⁡αcos⁡β (1−xy)>0,sin⁡(α+β)=cos⁡αcos⁡β (x+y)\cos(\alpha+\beta)=\cos\alpha\cos\beta\,(1-xy)>0,\qquad\sin(\alpha+\beta)=\cos\alpha\cos\beta\,(x+y)

です。α+β∈(−π,π)\alpha+\beta\in(-\pi,\pi) で、[π/2,π)[\pi/2,\pi) では cos⁡≤0\cos\le0(定理 7.3 (3))、cos⁡\cos は偶関数なので、cos⁡(α+β)>0\cos(\alpha+\beta)>0 から α+β∈(−π/2,π/2)\alpha+\beta\in(-\pi/2,\pi/2) です。そこで tan⁡(α+β)=x+y1−xy\tan(\alpha+\beta)=\dfrac{x+y}{1-xy} で、arctan⁡\arctan の定義から α+β=arctan⁡x+y1−xy\alpha+\beta=\arctan\dfrac{x+y}{1-xy} です。差の公式は yy を −y-y に置き換えます。

命題 10.2(arctan のべき級数)✓

∣x∣<1|x|<1 ならば arctan⁡x=∑k=0∞(−1)kx2k+12k+1\displaystyle\arctan x=\sum_{k=0}^\infty\frac{(-1)^kx^{2k+1}}{2k+1} である。

証明(命題 10.2)

0<ρ<10<\rho<1 とし、GN(x)=∑k=0N(−1)kx2k+12k+1G_N(x)=\sum_{k=0}^N\dfrac{(-1)^kx^{2k+1}}{2k+1} とおきます。∣x∣≤ρ|x|\le\rho では級数は絶対収束するので(∑ρ2k+1\sum\rho^{2k+1} との比較。定理 4.2[級数と収束判定])、極限関数 g(x)=lim⁡GN(x)g(x)=\lim G_N(x) が定まります。GN′(x)=∑k=0N(−x2)k=1−(−x2)N+11+x2G_N'(x)=\sum_{k=0}^N(-x^2)^k=\dfrac{1-(-x^2)^{N+1}}{1+x^2}(等比数列の和)で、

∣GN′(x)−11+x2∣=x2N+21+x2≤ρ2N+2→0\left|G_N'(x)-\frac1{1+x^2}\right|=\frac{x^{2N+2}}{1+x^2}\le\rho^{2N+2}\to0

は [−ρ,ρ][-\rho,\rho] 上で一様です(命題 3.1[数列と関数の極限])。項別微分(定理 7.3[関数列と一様収束])から gg は微分可能で g′(x)=11+x2g'(x)=\dfrac1{1+x^2} です。定理 9.3 より (g−arctan⁡)′=0(g-\arctan)'=0 なので、導関数が 00 の関数は定数(系 3.4[平均値の定理とテイラーの定理] (1))、すなわち g−arctan⁡g-\arctan は (−ρ,ρ)(-\rho,\rho) 上で定数です。g(0)=0=arctan⁡0g(0)=0=\arctan0 なので定数は 00 で、ρ<1\rho<1 は任意です。

系 10.3(Machin の公式)✓

π4=4arctan⁡15−arctan⁡1239\frac\pi4=4\arctan\frac15-\arctan\frac1{239}

である。

証明(系 10.3)

まず arctan⁡1=π/4\arctan1=\pi/4 を示します。定理 6.4 で x=y=π/4x=y=\pi/4 とすると 0=cos⁡π2=cos⁡2π4−sin⁡2π40=\cos\frac\pi2=\cos^2\frac\pi4-\sin^2\frac\pi4 で、π4∈(0,π2)\frac\pi4\in(0,\frac\pi2) では cos⁡,sin⁡>0\cos,\sin>0 なので cos⁡π4=sin⁡π4\cos\frac\pi4=\sin\frac\pi4 、すなわち tan⁡π4=1\tan\frac\pi4=1 です。

命題 10.1 を繰り返します。x=y=15x=y=\frac15 で xy<1xy<1 なので 2arctan⁡15=arctan⁡2/524/25=arctan⁡5122\arctan\frac15=\arctan\dfrac{2/5}{24/25}=\arctan\frac5{12}。さらに x=y=512x=y=\frac5{12} で 4arctan⁡15=arctan⁡5/6119/144=arctan⁡1201194\arctan\frac15=\arctan\dfrac{5/6}{119/144}=\arctan\frac{120}{119} です。次に差の公式で

arctan⁡120119−arctan⁡1239=arctan⁡120119−12391+120119⋅239=arctan⁡28561/2844128561/28441=arctan⁡1=π4\arctan\frac{120}{119}-\arctan\frac1{239}=\arctan\frac{\frac{120}{119}-\frac1{239}}{1+\frac{120}{119\cdot239}}=\arctan\frac{28561/28441}{28561/28441}=\arctan1=\frac\pi4

です(120⋅239−119=28561120\cdot239-119=28561、119⋅239+120=28561119\cdot239+120=28561)。

定理 10.4(π の評価)✓

3.1415926<π<3.14159283.1415926<\pi<3.1415928 である。

証明(定理 10.4)

系 10.3 から π=16arctan⁡15−4arctan⁡1239\pi=16\arctan\frac15-4\arctan\frac1{239} です。A=arctan⁡15A=\arctan\frac15、B=arctan⁡1239B=\arctan\frac1{239} とおくと、命題 10.2 により、それぞれ項の絶対値が単調に減少して 00 に収束する交項級数 ∑(−1)k1(2k+1)52k+1\sum(-1)^k\dfrac1{(2k+1)5^{2k+1}}、∑(−1)k1(2k+1)2392k+1\sum(-1)^k\dfrac1{(2k+1)239^{2k+1}} です。ライプニッツの判定法(定理 7.3[級数と収束判定])の剰余評価 ∣S−SN∣≤bN+1|S-S_N|\le b_{N+1} を使います。

AA の最初の 5 項の和は 15−1375+115625−1546875+117578125=0.19739556165⋯\frac15-\frac1{375}+\frac1{15625}-\frac1{546875}+\frac1{17578125}=0.19739556165\cdots で、次の項は 111⋅511<2×10−9\dfrac1{11\cdot5^{11}}<2\times10^{-9} なので 0.1973955596<A<0.19739556370.1973955596<A<0.1973955637 です(5 項目は正の項なので、AA は 5 項の和から次の項を引いた値と 5 項の和の間にある)。BB の最初の 2 項の和は 1239−13⋅2393=0.004184076002⋯\frac1{239}-\frac1{3\cdot239^3}=0.004184076002\cdots で、次の項は 15⋅2395<3×10−13\dfrac1{5\cdot239^5}<3\times10^{-13} なので 0.0041840759<B<0.00418407610.0041840759<B<0.0041840761 です。したがって

π>16⋅0.1973955596−4⋅0.0041840761=3.1415926492⋯ ,π<16⋅0.1973955637−4⋅0.0041840759=3.1415927156⋯\pi>16\cdot0.1973955596-4\cdot0.0041840761=3.1415926492\cdots,\qquad\pi<16\cdot0.1973955637-4\cdot0.0041840759=3.1415927156\cdots

で、3.1415926<π<3.14159283.1415926<\pi<3.1415928 です。

指数関数から、三角関数に似た 2 つの関数が作れます。

定義 11.1(双曲線関数)↗

cosh⁡x=exp⁡x+exp⁡(−x)2,sinh⁡x=exp⁡x−exp⁡(−x)2\cosh x=\frac{\exp x+\exp(-x)}2,\qquad\sinh x=\frac{\exp x-\exp(-x)}2

とする。

命題 11.2(双曲線関数の恒等式と媒介変数表示)✓

  1. cosh⁡2x−sinh⁡2x=1\cosh^2x-\sinh^2x=1。cosh⁡\cosh は偶関数、sinh⁡\sinh は奇関数。
  2. cosh⁡(x+y)=cosh⁡xcosh⁡y+sinh⁡xsinh⁡y\cosh(x+y)=\cosh x\cosh y+\sinh x\sinh y、sinh⁡(x+y)=sinh⁡xcosh⁡y+cosh⁡xsinh⁡y\sinh(x+y)=\sinh x\cosh y+\cosh x\sinh y。
  3. (cosh⁡x)′=sinh⁡x(\cosh x)'=\sinh x、(sinh⁡x)′=cosh⁡x(\sinh x)'=\cosh x。
  4. 双曲線 a2−b2=1a^2-b^2=1 の右半分 {(a,b):a>0, a2−b2=1}\{(a,b):a>0,\ a^2-b^2=1\} の点は、(cosh⁡t,sinh⁡t)(\cosh t,\sinh t)(t∈Rt\in\mathbb R)の形にただ 1 通りに書ける。
証明(命題 11.2)

exe^x は exp⁡x\exp x の略記とし、exp⁡xexp⁡(−x)=1\exp x\exp(-x)=1(定理 3.3 (2))を使います。

(1) 4(cosh⁡2x−sinh⁡2x)=(ex+e−x)2−(ex−e−x)2=4exe−x=44(\cosh^2x-\sinh^2x)=(e^x+e^{-x})^2-(e^x-e^{-x})^2=4e^xe^{-x}=4 です。偶奇は定義から。(2) cosh⁡xcosh⁡y+sinh⁡xsinh⁡y=14[(ex+e−x)(ey+e−y)+(ex−e−x)(ey−e−y)]=12(ex+y+e−x−y)=cosh⁡(x+y)\cosh x\cosh y+\sinh x\sinh y=\frac14\bigl[(e^x+e^{-x})(e^y+e^{-y})+(e^x-e^{-x})(e^y-e^{-y})\bigr]=\frac12\bigl(e^{x+y}+e^{-x-y}\bigr)=\cosh(x+y)。sinh⁡\sinh も同様に展開します。(3) exp⁡′=exp⁡\exp'=\exp(定理 3.3 (3))と連鎖律(定理 7.2[導関数の定義と基本的な微分法])から (exp⁡(−x))′=−exp⁡(−x)(\exp(-x))'=-\exp(-x) なので、定義の式を微分して従います。

(4) (1) から cosh⁡2=1+sinh⁡2≥1\cosh^2=1+\sinh^2\ge1 で cosh⁡>0\cosh>0 です。(3) より sinh⁡′=cosh⁡>0\sinh'=\cosh>0 なので sinh⁡\sinh は狭義単調増加です。x≥0x\ge0 で exp⁡x≥1+x\exp x\ge1+x、exp⁡(−x)≤1\exp(-x)\le1 なので sinh⁡x≥x/2→∞\sinh x\ge x/2\to\infty で、奇関数性とあわせて sinh⁡\sinh は R\mathbb R から R\mathbb R への連続な狭義単調増加の全単射です(定理 3.4[導関数の定義と基本的な微分法] と中間値の定理 定理 5.7[極限と連続性]、単調性は 系 3.4[平均値の定理とテイラーの定理] (3))。したがって点 (a,b)(a,b) に対し sinh⁡t=b\sinh t=b となる tt がただ 1 つ存在し、cosh⁡t>0\cosh t>0 かつ cosh⁡2t=1+b2=a2\cosh^2t=1+b^2=a^2(a>0a>0)から cosh⁡t=a\cosh t=a です。

三角関数が円 a2+b2=1a^2+b^2=1 のパラメータ表示を与えたのと同じように、cosh⁡,sinh⁡\cosh,\sinh は双曲線 a2−b2=1a^2-b^2=1 のパラメータ表示を与えます。双曲線の媒介変数表示は、後の記事「2 次曲線」で使います。

指数関数・三角関数は、微分方程式を満たす関数としても特徴づけられます。高校では、y′=yy'=y の解が exe^x の定数倍であることを暗黙のうちに使いますが、証明は次のとおり短いものです。

定理 12.1(y' = y と y'' = −y の解)✓

  1. y:R→Ry:\mathbb R\to\mathbb R が微分可能で y′=yy'=y ならば、y(x)=y(0)exp⁡xy(x)=y(0)\exp x(x∈Rx\in\mathbb R)である。
  2. y:R→Ry:\mathbb R\to\mathbb R が 2 回微分可能で y′′=−yy''=-y ならば、y(x)=y(0)cos⁡x+y′(0)sin⁡xy(x)=y(0)\cos x+y'(0)\sin x(x∈Rx\in\mathbb R)である。
証明(定理 12.1)

(1) z(x)=y(x)exp⁡(−x)z(x)=y(x)\exp(-x) とおくと、積の法則と連鎖律(定理 6.1[導関数の定義と基本的な微分法]、定理 7.2[導関数の定義と基本的な微分法])から z′=y′exp⁡(−x)−yexp⁡(−x)=0z'=y'\exp(-x)-y\exp(-x)=0 です。導関数が 00 の関数は定数(系 3.4[平均値の定理とテイラーの定理] (1))なので z≡z(0)=y(0)z\equiv z(0)=y(0) で、y(x)=y(0)exp⁡(x)y(x)=y(0)\exp(x) です(exp⁡(x)exp⁡(−x)=1\exp(x)\exp(-x)=1)。

(2) a=y(0)a=y(0)、b=y′(0)b=y'(0) とし、w=y−acos⁡−bsin⁡w=y-a\cos-b\sin とおきます。cos⁡′′=−cos⁡\cos''=-\cos、sin⁡′′=−sin⁡\sin''=-\sin(定理 6.2 (3))なので w′′=−ww''=-w で、w(0)=a−a=0w(0)=a-a=0、w′(0)=b−a⋅0−b⋅1=0w'(0)=b-a\cdot0-b\cdot1=0 です。E=w2+(w′)2E=w^2+(w')^2 とおくと E′=2ww′+2w′w′′=2ww′−2w′w=0E'=2ww'+2w'w''=2ww'-2w'w=0 なので、EE は定数です(系 3.4[平均値の定理とテイラーの定理] (1))。E(0)=w(0)2+w′(0)2=0E(0)=w(0)^2+w'(0)^2=0 で、EE の 2 つの項はどちらも 00 以上なので、すべての xx で w(x)2≤E(x)=0w(x)^2\le E(x)=0、すなわち w≡0w\equiv0 です。

この定理から、exp⁡,cos⁡,sin⁡\exp,\cos,\sin はそれぞれ、初期値 y(0)=1y(0)=1 の y′=yy'=y の解、(y(0),y′(0))=(1,0)(y(0),y'(0))=(1,0)、(0,1)(0,1) の y′′=−yy''=-y の解として、一意に特徴づけられます。級数による定義は、これらの微分方程式の解の構成法の 1 つだったことになります。

  • べき級数と解析関数。 exp⁡,cos⁡,sin⁡\exp,\cos,\sin のようにべき級数で書ける関数は、収束円の内側で何回でも項別微分でき、複素数にも自然に拡張できます。複素数の指数関数を使った Euler の公式 eix=cos⁡x+isin⁡xe^{ix}=\cos x+i\sin x を、複素数と複素平面 が扱っています。この記事の 補題 6.3 は、そこで認めていた「cos⁡,sin⁡\cos,\sin の Maclaurin 展開」を、級数を定義にすることで根本から用意し直したものです。
  • 微積分の記事との関係。 導関数の定義と基本的な微分法 では、sin⁡x/x→1\sin x/x\to1 に扇形の面積を使う高校流の説明を採用しています。この記事の 定理 8.4 と 命題 8.3 が、それを定義から証明し直したものです。
  • 常微分方程式。 定理 12.1 は、線形微分方程式の解の一意性の最も簡単な場合です。一般の定数係数の線形方程式と一意性の定理は 常微分方程式の初等的解法 に続きます。
  • 角と回転。 θ↦(cos⁡θ,sin⁡θ)\theta\mapsto(\cos\theta,\sin\theta) は、加法群 R/2πZ\mathbb R/2\pi\mathbb Z から円周群 S1S^1 への同型です。群の言葉でいえば、指数写像 θ↦eiθ\theta\mapsto e^{i\theta} が円周群の普遍被覆になっていることで、リー群論(行列リー群)に続きます。

演習 14.1標準

すべての実数 xx に対して exp⁡x≥1+x\exp x\ge1+x が成り立つことを示せ。

解答

x≥0x\ge0 では 定理 3.3 (4) である。x<0x<0 では g(x)=exp⁡x−1−xg(x)=\exp x-1-x とおくと g′(x)=exp⁡x−1<0g'(x)=\exp x-1<0(exp⁡\exp は狭義単調増加で exp⁡0=1\exp0=1)なので、gg は (−∞,0](-\infty,0] で狭義単調減少(系 3.4[平均値の定理とテイラーの定理] (3) を −g-g に使う)。したがって x<0x<0 で g(x)>g(0)=0g(x)>g(0)=0 である。

演習 14.2易

次の極限を、定理 5.1 を使って求めよ。(1) lim⁡n→∞(1+2n)3n\displaystyle\lim_{n\to\infty}\left(1+\frac2n\right)^{3n} (2) lim⁡n→∞(1−1n)n\displaystyle\lim_{n\to\infty}\left(1-\frac1n\right)^n (3) lim⁡n→∞(1+1n2)n\displaystyle\lim_{n\to\infty}\left(1+\frac1{n^2}\right)^n

解答

(1) an=2/na_n=2/n、bn=3nb_n=3n で anbn=6a_nb_n=6 なので exp⁡6=e6\exp6=e^6。(2) an=−1/na_n=-1/n(n≥2n\ge2 で >−1>-1)、bn=nb_n=n で anbn=−1a_nb_n=-1 なので exp⁡(−1)=e−1\exp(-1)=e^{-1}。(3) an=1/n2a_n=1/n^2、bn=nb_n=n で anbn=1/n→0a_nb_n=1/n\to0 なので exp⁡0=1\exp0=1。

演習 14.3標準

すべての実数 xx に対して cos⁡x≥1−x22\cos x\ge1-\dfrac{x^2}2 が成り立つことを示せ。

解答

h(x)=x−sin⁡xh(x)=x-\sin x とおく。h′(x)=1−cos⁡x≥0h'(x)=1-\cos x\ge0(定理 6.5 より cos⁡x≤1\cos x\le1)なので、hh は単調増加(系 3.4[平均値の定理とテイラーの定理] (2))で、h(0)=0h(0)=0 より x≥0x\ge0 で sin⁡x≤x\sin x\le x である。次に g(x)=cos⁡x−1+x22g(x)=\cos x-1+\dfrac{x^2}2 とおくと、g′(x)=−sin⁡x+x=h(x)≥0g'(x)=-\sin x+x=h(x)\ge0(x≥0x\ge0)なので gg は [0,∞)[0,\infty) で単調増加、g(0)=0g(0)=0 から x≥0x\ge0 で g(x)≥0g(x)\ge0 である。gg は偶関数なので、すべての xx で g(x)≥0g(x)\ge0 である。

  • W. Rudin, Principles of Mathematical Analysis, 3rd ed., McGraw-Hill, 1976 — Chapter 8(指数関数・対数関数・三角関数をべき級数から定義する)。
  • M. Spivak, Calculus, 4th ed., Publish or Perish, 2008 — 三角関数・対数関数・指数関数の章(定義の順序の違いによる流儀の比較)。
  • 高木貞治『解析概論』岩波書店 — 初等関数の章(べき級数による定義)。
  • 杉浦光夫『解析入門 I』東京大学出版会、1980 — 初等関数の定義(べき級数)。

このテーマの 100 本ノック(100 問)

執筆: Claude Code(Sonnet 5.5)、Claude Code(Opus 5.5)・監査 3 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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