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積分法:計算の技法とその根拠。部分分数・三角関数・Wallis の積・和との比較

対象読者: 高校数学 III の積分法(不定積分、置換積分、部分積分)と、本テーマの微分法の章までの内容を学んだ人。大学の微分積分学の定理は結果を引用して使います。

前提となる記事:微分法とその応用:計算規則の根拠から、グラフ・解の個数・一般二項定理・累乗の塔まで

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分数の形の積分や三角関数の積分は、高校では「こうやって解く」という手順で習います。この記事は、その手順が毎回うまくいくのはなぜか、図形の面積や和の見積もりにどう使えるのかを、一つずつ確かめていく記事です。読み終えると、部分分数に分ける方法が必ず使えること、円周率が分数の積で表せること、台形で近似したときの誤差の大きさが見積もれることが、理由つきで説明できるようになります。

  • 高校の積分法は、不定積分(原始関数)を公式と技法で求め、微分積分学の基本定理で定積分に直す科目です。この記事は、大学の微分積分学で証明された基本定理・置換積分・部分積分を土台に、積分の計算技法がなぜ使えるのかを証明で整理します。
  • 有理関数の積分では、部分分数分解が必ずできること(実数の範囲で、1 次式のべきと既約な 2 次式のべきの和になる)を証明します。その後で、そのすべての項が初等関数(有理関数・対数・arctan)で積分できることを確かめます。
  • 三角関数の積分では、t=tan⁡(x/2)t=\tan(x/2) という置換で、三角関数の有理式がすべて有理関数の積分に帰着することと、sin⁡mx\sin mx、cos⁡nx\cos nx の直交性(∫−ππsin⁡mxsin⁡nx dx=0\int_{-\pi}^{\pi}\sin mx\sin nx\,dx=0 など)を示します。
  • Wallis 積分 ∫0π/2sin⁡nx dx\int_0^{\pi/2}\sin^nx\,dx の漸化式から、π/2\pi/2 の無限積表示(Wallis の積)を導きます。1/6 公式 ∫αβ(x−α)(x−β)dx=−(β−α)3/6\int_\alpha^\beta(x-\alpha)(x-\beta)dx=-(\beta-\alpha)^3/6 から、放物線と弦が囲む面積(Archimedes)も証明します。
  • 和と積分の大小比較から、Euler の定数(調和級数と log⁡n\log n の差が近づく値)の存在、n!n! の評価、台形公式の誤差評価を示します。

1. 動機:公式の手前にある問い

Section titled “1. 動機:公式の手前にある問い”

高校の積分で、次のような問題を解きます。

  • ∫dxx2−1\displaystyle\int\frac{dx}{x^2-1} や ∫dxx3+1\displaystyle\int\frac{dx}{x^3+1} のような分数の形の積分は、「分母を因数分解して部分分数に分ける」。
  • ∫0π/2sin⁡nx dx\displaystyle\int_0^{\pi/2}\sin^nx\,dx は、「部分積分で漸化式を作る」。
  • ∫αβ(x−α)(x−β)dx\displaystyle\int_\alpha^\beta(x-\alpha)(x-\beta)dx は、「−16(β−α)3-\dfrac16(\beta-\alpha)^3 を覚えておく」。

これらは手順として習うので、「いつでもできるのか」「なぜその形になるのか」は問われません。ところが、たとえば部分分数に分ける手順は、分母が 4 次以上になると本当に「いつでもできる」でしょうか。実数の範囲で、分母は 1 次式と(実数の範囲で因数分解できない)2 次式の積に分かれる、とだけ習います。この事実は、代数学の基本定理(複素数の範囲で必ず根がある)という大定理に依存しています。

この記事では、そのような「教科書が手順だけ示している箇所」の証明を、順に書いていきます。使う根の定理は次のとおりです。

用途結果
積分の基本微分積分学の基本定理(定理 5.2[積分の基本定理と定積分]、定理 5.4[積分の基本定理と定積分])、置換積分(定理 6.1[積分の基本定理と定積分])、部分積分(定理 6.2[積分の基本定理と定積分])、定積分の基本性質(命題 4.1[積分の基本定理と定積分])
多項式除法の原理・因数定理(定理 2.2[多項式の割り算と高次方程式]、定理 2.3[多項式の割り算と高次方程式])、代数学の基本定理(定理 4.3[正則関数の強力な性質])
初等関数導関数(命題 2.1[微分法とその応用]、定理 9.3[指数・対数・三角関数をきちんと定義する])、三角関数の公式(三角関数)

連続関数 ff に対し、F′=fF'=f となる関数 FF を原始関数といい、微分積分学の基本定理(第二部)より、定積分は ∫abf(x)dx=F(b)−F(a)\int_a^bf(x)dx=F(b)-F(a) と計算できます。そこで、基本的な関数の原始関数を、導関数の公式を逆に使って確かめます。

命題 2.1(基本的な関数の原始関数)✓

次の各組 (F,f)(F,f) で、区間 II 上で F′=fF'=f が成り立つ。したがって [a,b]⊆I[a,b]\subseteq I ならば ∫abf(x)dx=F(b)−F(a)\displaystyle\int_a^bf(x)dx=F(b)-F(a) である。

f(x)f(x)F(x)F(x)区間 II
xαx^\alpha(α≠−1\alpha\ne-1)xα+1α+1\dfrac{x^{\alpha+1}}{\alpha+1}x>0x>0(α\alpha が整数なら x≠0x\ne0 の各区間)
1x\dfrac1xlog⁡∣x∣\log\lvert x\rvertx≠0x\ne0 の各区間
exe^x、axa^x(a>0a>0、a≠1a\ne1)exe^x、axlog⁡a\dfrac{a^x}{\log a}R\mathbb R
sin⁡x\sin x、cos⁡x\cos x−cos⁡x-\cos x、sin⁡x\sin xR\mathbb R
1cos⁡2x\dfrac1{\cos^2x}tan⁡x\tan xcos⁡x≠0\cos x\ne0 の各区間
11+x2\dfrac1{1+x^2}arctan⁡x\arctan xR\mathbb R
11−x2\dfrac1{\sqrt{1-x^2}}arcsin⁡x\arcsin x(−1,1)(-1,1)
証明(命題 2.1)

各行の FF を微分して ff を得ます。xα+1/(α+1)x^{\alpha+1}/(\alpha+1) の導関数は 命題 2.1[微分法とその応用] (1)(2) から xαx^\alpha、log⁡∣x∣\log|x| は同 (4) から 1/x1/x、ax/log⁡aa^x/\log a は同 (3) から axa^x(a=ea=e のとき exe^x。log⁡e=1\log e=1)、−cos⁡x-\cos x と sin⁡x\sin x は 定理 6.2[指数・対数・三角関数をきちんと定義する] (3) から sin⁡x\sin x と cos⁡x\cos x、tan⁡x\tan x は 命題 2.1[微分法とその応用] (5) から 1/cos⁡2x1/\cos^2x、arctan⁡x\arctan x と arcsin⁡x\arcsin x は 定理 9.3[指数・対数・三角関数をきちんと定義する] です。最後の主張は基本定理(第二部。定理 5.4[積分の基本定理と定積分])で、FF が [a,b][a,b] 上で連続(微分可能だから)、ff が連続(したがって可積分)であることを使います。

2.2. 積分で定義された関数の微分

Section titled “2.2. 積分で定義された関数の微分”

G(x)=∫u(x)v(x)f(t)dtG(x)=\int_{u(x)}^{v(x)}f(t)dt のように、積分の上端・下端が xx の関数である場合の微分は、基本定理(第一部)と連鎖律から出ます。

定理 2.2(積分で表された関数の微分)✓

JJ を開区間、f:J→Rf:J\to\mathbb R を連続、II を開区間、u,v:I→Ju,v:I\to J を微分可能とし、G(x)=∫u(x)v(x)f(t) dtG(x)=\displaystyle\int_{u(x)}^{v(x)}f(t)\,dt(x∈Ix\in I)とおく。このとき GG は微分可能で

G′(x)=f(v(x))v′(x)−f(u(x))u′(x)G'(x)=f\bigl(v(x)\bigr)v'(x)-f\bigl(u(x)\bigr)u'(x)

である。

証明(定理 2.2)

s0∈Js_0\in J を 1 つ固定し Φ(s)=∫s0sf(t)dt\Phi(s)=\int_{s_0}^sf(t)dt(s∈Js\in J)とおくと、基本定理(第一部。定理 5.2[積分の基本定理と定積分] (2))から ff が連続な点 ss で Φ′(s)=f(s)\Phi'(s)=f(s) です。向き付き積分の加法性(命題 4.2[積分の基本定理と定積分])から G(x)=Φ(v(x))−Φ(u(x))G(x)=\Phi(v(x))-\Phi(u(x)) なので、連鎖律(定理 7.2[導関数の定義と基本的な微分法])で G′(x)=Φ′(v(x))v′(x)−Φ′(u(x))u′(x)G'(x)=\Phi'(v(x))v'(x)-\Phi'(u(x))u'(x) です。

例 2.3(上端と下端がどちらも x の関数の場合)

G(x)=∫x2xdttG(x)=\displaystyle\int_x^{2x}\frac{dt}t(x>0x>0)では、定理 2.2 から G′(x)=12x⋅2−1x=0G'(x)=\dfrac1{2x}\cdot2-\dfrac1x=0 で、GG は定数です。実際 G(x)=log⁡2x−log⁡x=log⁡2G(x)=\log2x-\log x=\log2 です。

整式 P(x),Q(x)P(x),Q(x) の比 P(x)/Q(x)P(x)/Q(x) を有理関数といいます。deg⁡P<deg⁡Q\deg P<\deg Q のとき真分数式です。そうでなければ除法の原理(定理 2.2[多項式の割り算と高次方程式])で P=QS+RP=QS+R(R=0R=0 または deg⁡R<deg⁡Q\deg R<\deg Q)と書けて、P/Q=S+R/QP/Q=S+R/Q となり、整式 SS の積分は項ごとにできるので、真分数式の積分だけを考えれば足ります。

3.1. 実数係数の多項式の因数分解

Section titled “3.1. 実数係数の多項式の因数分解”

補題 3.1(実係数多項式は 1 次式と 2 次式の積)✓

QQ を実数係数の nn 次多項式(n≥1n\ge1)とする。このとき QQ は

Q(x)=a∏i(x−αi)∏j(x2+pjx+qj)Q(x)=a\prod_i(x-\alpha_i)\prod_j(x^2+p_jx+q_j)

の形に書ける。ここで aa は QQ の最高次の係数、αi,pj,qj\alpha_i,p_j,q_j は実数で、各 x2+pjx+qjx^2+p_jx+q_j は判別式 pj2−4qj<0p_j^2-4q_j<0 を満たす(実数の範囲で根を持たない)。

証明(補題 3.1)

nn についての帰納法です。代数学の基本定理(定理 4.3[正則関数の強力な性質])により、QQ は複素数の根 zz を持ちます。

zz が実数のとき。 因数定理(定理 2.3[多項式の割り算と高次方程式])で Q=(x−z)Q1Q=(x-z)Q_1(Q1Q_1 は実係数で n−1n-1 次)です。

zz が実数でないとき。 QQ の係数は実数なので、共役を取ると Q(zˉ)=Q(z)‾=0Q(\bar z)=\overline{Q(z)}=0(命題 3.2[複素数と複素平面] (1))で、zˉ\bar z も根です。r(x)=(x−z)(x−zˉ)=x2−2(Re⁡z)x+∣z∣2r(x)=(x-z)(x-\bar z)=x^2-2(\operatorname{Re}z)x+|z|^2 は実係数で、判別式は 4(Re⁡z)2−4∣z∣2=−4(Im⁡z)2<04(\operatorname{Re}z)^2-4|z|^2=-4(\operatorname{Im}z)^2<0 です。QQ を rr で割ると(除法の原理を実数係数で)Q=rQ1+(ex+f)Q=rQ_1+(ex+f)(e,fe,f は実数)です。x=zx=z を代入すると ez+f=0ez+f=0 で、虚部を取ると eIm⁡z=0e\operatorname{Im}z=0、したがって e=0e=0、続いて f=0f=0 です。よって Q=rQ1Q=rQ_1(Q1Q_1 は実係数で n−2n-2 次)です。

どちらの場合も次数の小さい多項式に帰着するので、帰納法で主張を得ます(定数多項式は aa のみ)。

同じ 1 次式・同じ 2 次式をまとめれば、Q(x)=a∏i(x−αi)mi∏jrj(x)njQ(x)=a\prod_i(x-\alpha_i)^{m_i}\prod_jr_j(x)^{n_j}(αi\alpha_i は相異なる実数、rj(x)=x2+pjx+qjr_j(x)=x^2+p_jx+q_j は相異なる、判別式が負の 2 次式)と書けます。

部分分数分解は、分母の因子を 1 つずつ選び、その最高べきの項を取り出す操作の繰り返しとして証明します。たとえば 1x2−1\dfrac1{x^2-1} から 12⋅1x−1\dfrac12\cdot\dfrac1{x-1} を引くと、残りは分母が x+1x+1 だけの分数になります(§3.4 の例 (a) と同じ分解です)。次の 2 つの補題は、この「1 つ取り出して、残りの分母を小さくする」一歩が、一般の分母でも必ずできることを示すものです。証明では、分子を割り切れる形にそろえるために、分母の因子の根を代入する、という考え方を使います。2 次式の場合は、その根が複素数になるため、実部と虚部に分けて実数の係数 b,cb,c を決めます。

補題 3.2(1 次式の最高べきの項を取り出す)✓

P,Q1P,Q_1 を実係数の多項式、α\alpha を実数、m≥1m\ge1 を整数とし、Q1(α)≠0Q_1(\alpha)\ne0、P=0P=0 または deg⁡P<m+deg⁡Q1\deg P<m+\deg Q_1 とする。このとき実数 cc と多項式 P1P_1(P1=0P_1=0 または deg⁡P1<m−1+deg⁡Q1\deg P_1<m-1+\deg Q_1)が存在して

P(x−α)mQ1=c(x−α)m+P1(x−α)m−1Q1\frac{P}{(x-\alpha)^mQ_1}=\frac c{(x-\alpha)^m}+\frac{P_1}{(x-\alpha)^{m-1}Q_1}

(x≠αx\ne\alpha、Q1(x)≠0Q_1(x)\ne0)が成り立つ。

証明(補題 3.2)

c=P(α)/Q1(α)c=P(\alpha)/Q_1(\alpha) とおきます。多項式 P−cQ1P-cQ_1 は x=αx=\alpha で 00 になるので、因数定理(定理 2.3[多項式の割り算と高次方程式])から P−cQ1=(x−α)P1P-cQ_1=(x-\alpha)P_1 と書けます。deg⁡P<m+deg⁡Q1\deg P<m+\deg Q_1、deg⁡Q1<m+deg⁡Q1\deg Q_1<m+\deg Q_1(m≥1m\ge1)なので deg⁡(P−cQ1)<m+deg⁡Q1\deg(P-cQ_1)<m+\deg Q_1 で、deg⁡P1<m−1+deg⁡Q1\deg P_1<m-1+\deg Q_1 です。このとき

P(x−α)mQ1−c(x−α)m=P−cQ1(x−α)mQ1=P1(x−α)m−1Q1\frac P{(x-\alpha)^mQ_1}-\frac c{(x-\alpha)^m}=\frac{P-cQ_1}{(x-\alpha)^mQ_1}=\frac{P_1}{(x-\alpha)^{m-1}Q_1}

です。

補題 3.3(2 次式の最高べきの項を取り出す)✓

r(x)=x2+px+qr(x)=x^2+px+q(p2−4q<0p^2-4q<0)とし、ω\omega をその複素根の 1 つ、n≥1n\ge1 を整数、P,Q1P,Q_1 を実係数の多項式とする。Q1(ω)≠0Q_1(\omega)\ne0、P=0P=0 または deg⁡P<2n+deg⁡Q1\deg P<2n+\deg Q_1 とする。このとき実数 b,cb,c と多項式 P1P_1(P1=0P_1=0 または deg⁡P1<2(n−1)+deg⁡Q1\deg P_1<2(n-1)+\deg Q_1)が存在して

PrnQ1=bx+crn+P1rn−1Q1\frac P{r^nQ_1}=\frac{bx+c}{r^n}+\frac{P_1}{r^{n-1}Q_1}

が成り立つ。

証明(補題 3.3)

d=q−p2/4>0d=\sqrt{q-p^2/4}>0 とおくと r(x)=(x+p/2)2+d2r(x)=(x+p/2)^2+d^2 で、ω=−p/2+id\omega=-p/2+id は rr の根(ω2+pω+q=(ω+p/2)2+d2=−d2+d2=0\omega^2+p\omega+q=(\omega+p/2)^2+d^2=-d^2+d^2=0)です。ζ=P(ω)/Q1(ω)\zeta=P(\omega)/Q_1(\omega) を複素数とし、b=Im⁡ζ/db=\operatorname{Im}\zeta/d、c=Re⁡ζ+bp/2c=\operatorname{Re}\zeta+bp/2 とおくと bω+c=ζb\omega+c=\zeta です(虚部:bd=Im⁡ζbd=\operatorname{Im}\zeta。実部:−bp/2+c=Re⁡ζ-bp/2+c=\operatorname{Re}\zeta)。したがって実係数の多項式 S=P−(bx+c)Q1S=P-(bx+c)Q_1 は S(ω)=P(ω)−(bω+c)Q1(ω)=0S(\omega)=P(\omega)-(b\omega+c)Q_1(\omega)=0 を満たします。SS を rr で割ると S=rP1+(ex+f)S=rP_1+(ex+f)(e,fe,f は実数)で、x=ωx=\omega を代入して eω+f=0e\omega+f=0、ω∉R\omega\notin\mathbb R なので e=f=0e=f=0 です(補題 3.1 の証明と同じ議論)。すなわち S=rP1S=rP_1 です。deg⁡S<2n+deg⁡Q1\deg S<2n+\deg Q_1(deg⁡P<2n+deg⁡Q1\deg P<2n+\deg Q_1 と deg⁡((bx+c)Q1)≤1+deg⁡Q1<2n+deg⁡Q1\deg\bigl((bx+c)Q_1\bigr)\le1+\deg Q_1<2n+\deg Q_1)なので deg⁡P1<2(n−1)+deg⁡Q1\deg P_1<2(n-1)+\deg Q_1 です。このとき PrnQ1−bx+crn=SrnQ1=P1rn−1Q1\dfrac P{r^nQ_1}-\dfrac{bx+c}{r^n}=\dfrac S{r^nQ_1}=\dfrac{P_1}{r^{n-1}Q_1} です。

定理 3.4(部分分数分解)✓

P,QP,Q を実係数の多項式とし、deg⁡P<deg⁡Q\deg P<\deg Q とする。QQ を Q(x)=a∏i(x−αi)mi∏jrj(x)njQ(x)=a\prod_i(x-\alpha_i)^{m_i}\prod_jr_j(x)^{n_j}(a≠0a\ne0、αi\alpha_i は相異なる実数、rj=x2+pjx+qjr_j=x^2+p_jx+q_j は相異なる、判別式が負の 2 次式。補題 3.1 による)と因数分解する。このとき実数 cik,bjk,cjk′c_{ik},b_{jk},c_{jk}' が存在して

P(x)Q(x)=∑i∑k=1micik(x−αi)k+∑j∑k=1njbjkx+cjk′rj(x)k\frac{P(x)}{Q(x)}=\sum_i\sum_{k=1}^{m_i}\frac{c_{ik}}{(x-\alpha_i)^k}+\sum_j\sum_{k=1}^{n_j}\frac{b_{jk}x+c_{jk}'}{r_j(x)^k}

が成り立つ。

証明(定理 3.4)

QQ の次数についての帰納法で、「分母が上の形の真分数式は上の形に分解できる」を示します。aa は分子 PP に吸収できるので a=1a=1 としてよい。deg⁡Q=0\deg Q=0 のとき P=0P=0 で自明です。deg⁡Q≥1\deg Q\ge1 のとき、QQ は少なくとも 1 つの因子 (x−α)m(x-\alpha)^m か rnr^n を持ちます。

(x−α)m(x-\alpha)^m がある場合。 Q=(x−α)mQ1Q=(x-\alpha)^mQ_1 とすると、Q1(α)≠0Q_1(\alpha)\ne0 です(αi\alpha_i は相異なる。また rj(α)=(α+pj/2)2+dj2>0r_j(\alpha)=(\alpha+p_j/2)^2+d_j^2>0)。補題 3.2 から PQ=c(x−α)m+P1(x−α)m−1Q1\dfrac PQ=\dfrac c{(x-\alpha)^m}+\dfrac{P_1}{(x-\alpha)^{m-1}Q_1} で、第 2 項は分母の次数が 1 小さい真分数式で、分母は同じ形((x−α)(x-\alpha) の指数が m−1m-1)です。帰納法の仮定で第 2 項を分解します。

rnr^n がある場合。 Q=rnQ1Q=r^nQ_1、ω\omega を rr の根とすると、Q1(ω)≠0Q_1(\omega)\ne0 です(Q1Q_1 の実 1 次因子は ω∉R\omega\notin\mathbb R で 00 にならず、別の rj′r_{j'} が ω\omega を根に持つなら rj′=(x−ω)(x−ωˉ)=rr_{j'}=(x-\omega)(x-\bar\omega)=r となって相異なることに反する)。補題 3.3 から PQ=bx+crn+P1rn−1Q1\dfrac PQ=\dfrac{bx+c}{r^n}+\dfrac{P_1}{r^{n-1}Q_1} で、同様に帰納法の仮定を使います。

どの場合も、取り出した項は分解の形の項で、残りの項は帰納法の仮定で同じ形に分解されるので、全体として主張の形になります。

部分分数分解の各項が、初等関数で積分できることを確かめます。1 次式の項は対数かべき、2 次式 r=x2+px+qr=x^2+px+q について 2x+prk\dfrac{2x+p}{r^k} の形も対数かべき、残る 1rk\dfrac1{r^k} だけが少し手間で、kk が 1 つ上がるごとに前の JkJ_k から作る漸化式で表されます。その漸化式がどこから来たかは、右辺を微分して r−k−1r^{-k-1} になることを確かめる、という証明で裏付けます。

系 3.5(有理関数の不定積分)✓

真分数式の部分分数分解に現れる各項は、次のとおり原始関数を持つ。ここで r(x)=x2+px+qr(x)=x^2+px+q、d=q−p2/4>0d=\sqrt{q-p^2/4}>0、u=x+p/2u=x+p/2 とおく。

  1. ∫dxx−α=log⁡∣x−α∣\displaystyle\int\frac{dx}{x-\alpha}=\log|x-\alpha|、k≥2k\ge2 で ∫dx(x−α)k=(x−α)1−k1−k\displaystyle\int\frac{dx}{(x-\alpha)^k}=\frac{(x-\alpha)^{1-k}}{1-k}。
  2. ∫2x+pr(x)dx=log⁡r(x)\displaystyle\int\frac{2x+p}{r(x)}dx=\log r(x)、k≥2k\ge2 で ∫2x+pr(x)kdx=r(x)1−k1−k\displaystyle\int\frac{2x+p}{r(x)^k}dx=\frac{r(x)^{1-k}}{1-k}。
  3. Jk(x)=∫dxr(x)kJ_k(x)=\displaystyle\int\frac{dx}{r(x)^k} は、J1=1darctan⁡udJ_1=\dfrac1d\arctan\dfrac ud、Jk+1=12kd2(urk+(2k−1)Jk)J_{k+1}=\dfrac1{2kd^2}\left(\dfrac u{r^k}+(2k-1)J_k\right)(k≥1k\ge1)で与えられる。

したがって、すべての有理関数の不定積分は、有理関数・対数・arctan の(有限個の)和で書ける。

証明(系 3.5)

すべて右辺を微分して確かめます(命題 2.1[微分法とその応用] と連鎖律)。(1) は (log⁡∣x−α∣)′=1x−α(\log|x-\alpha|)'=\dfrac1{x-\alpha}、((x−α)1−k1−k)′=(x−α)−k\left(\dfrac{(x-\alpha)^{1-k}}{1-k}\right)'=(x-\alpha)^{-k} です。(2) は r>0r>0(r=u2+d2r=u^2+d^2)で r′=2x+pr'=2x+p なので (log⁡r)′=r′r(\log r)'=\dfrac{r'}r、(r1−k1−k)′=r−kr′\left(\dfrac{r^{1-k}}{1-k}\right)'=r^{-k}r' です。

(3) J1J_1:(1darctan⁡ud)′=1d⋅1/d1+u2/d2=1u2+d2=1r\left(\dfrac1d\arctan\dfrac ud\right)'=\dfrac1d\cdot\dfrac{1/d}{1+u^2/d^2}=\dfrac1{u^2+d^2}=\dfrac1r(定理 9.3[指数・対数・三角関数をきちんと定義する])です。Jk+1J_{k+1} の式は、kk についての帰納法で Jk′=r−kJ_k'=r^{-k} を仮定して右辺を微分します。商の法則から

ddxurk=1rk−2ku2rk+1=r−2ku2rk+1=(1−2k)r+2kd2rk+1=1−2krk+2kd2rk+1\frac{d}{dx}\frac u{r^k}=\frac1{r^k}-\frac{2ku^2}{r^{k+1}}=\frac{r-2ku^2}{r^{k+1}}=\frac{(1-2k)r+2kd^2}{r^{k+1}}=\frac{1-2k}{r^k}+\frac{2kd^2}{r^{k+1}}

(r=u2+d2r=u^2+d^2 から r−2ku2=(1−2k)r+2kd2r-2ku^2=(1-2k)r+2kd^2)です。これに (2k−1)Jk′=(2k−1)r−k(2k-1)J_k'=(2k-1)r^{-k} を足すと 2kd2r−k−12kd^2r^{-k-1} となり、2kd22kd^2 で割って Jk+1′=r−k−1J_{k+1}'=r^{-k-1} を得ます。

最後の主張:真分数式は部分分数分解(定理 3.4)で (1)〜(3) の項の和です。bx+crk\dfrac{bx+c}{r^k} は bx+c=b2(2x+p)+(c−bp2)bx+c=\dfrac b2(2x+p)+\left(c-\dfrac{bp}2\right) と分け、(2) と (3) を使います。

例 3.6(部分分数に分けて積分する)

(a) 1x2−1=12(1x−1−1x+1)\dfrac1{x^2-1}=\dfrac12\left(\dfrac1{x-1}-\dfrac1{x+1}\right) なので、∫dxx2−1=12log⁡∣x−1x+1∣\displaystyle\int\frac{dx}{x^2-1}=\frac12\log\left|\frac{x-1}{x+1}\right| です。

(b) x3+1=(x+1)(x2−x+1)x^3+1=(x+1)(x^2-x+1)(x2−x+1x^2-x+1 の判別式は −3<0-3<0)。1x3+1=13⋅1x+1+13⋅−x+2x2−x+1\dfrac1{x^3+1}=\dfrac13\cdot\dfrac1{x+1}+\dfrac13\cdot\dfrac{-x+2}{x^2-x+1} です(右辺を通分すると分子は 13[(x2−x+1)+(−x+2)(x+1)]=13⋅3=1\frac13\bigl[(x^2-x+1)+(-x+2)(x+1)\bigr]=\frac13\cdot3=1)。−x+2=−12(2x−1)+32-x+2=-\frac12(2x-1)+\frac32 と分け、u=x−12u=x-\frac12、d=32d=\frac{\sqrt3}2 として 系 3.5 の (2)(3) を使うと

∫dxx3+1=13log⁡∣x+1∣−16log⁡(x2−x+1)+13arctan⁡2x−13\int\frac{dx}{x^3+1}=\frac13\log|x+1|-\frac16\log(x^2-x+1)+\frac1{\sqrt3}\arctan\frac{2x-1}{\sqrt3}

です(係数:13⋅32⋅1d=13⋅32⋅23=13\frac13\cdot\frac32\cdot\frac1d=\frac13\cdot\frac32\cdot\frac2{\sqrt3}=\frac1{\sqrt3})。

4.1. t=tan⁡(x/2)t=\tan(x/2) による置換

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sin⁡x\sin x と cos⁡x\cos x の有理式(分数式)の積分は、t=tan⁡x2t=\tan\dfrac x2 という置換で、すべて有理関数の積分に帰着します。

命題 4.1(t = tan(x/2) による置換)✓

−π<x<π-\pi<x<\pi とし、t=tan⁡x2t=\tan\dfrac x2 とおく。このとき

sin⁡x=2t1+t2,cos⁡x=1−t21+t2,x=2arctan⁡t,dxdt=21+t2\sin x=\frac{2t}{1+t^2},\qquad\cos x=\frac{1-t^2}{1+t^2},\qquad x=2\arctan t,\qquad\frac{dx}{dt}=\frac2{1+t^2}

である。したがって、sin⁡x,cos⁡x\sin x,\cos x の有理式 R(sin⁡x,cos⁡x)R(\sin x,\cos x) の積分は、tt の有理関数の積分

∫R(sin⁡x,cos⁡x)dx=∫R ⁣(2t1+t2,1−t21+t2)21+t2 dt\int R\bigl(\sin x,\cos x\bigr)dx=\int R\!\left(\frac{2t}{1+t^2},\frac{1-t^2}{1+t^2}\right)\frac2{1+t^2}\,dt

に帰着し、系 3.5 により初等関数で書ける。

証明(命題 4.1)

∣x∣<π|x|<\pi なので x/2∈(−π/2,π/2)x/2\in(-\pi/2,\pi/2) で cos⁡(x/2)>0\cos(x/2)>0、t=tan⁡(x/2)t=\tan(x/2) が定まり、1+tan⁡2=1/cos⁡21+\tan^2=1/\cos^2(補題 9.1[指数・対数・三角関数をきちんと定義する] (3))から cos⁡2x2=11+t2\cos^2\dfrac x2=\dfrac1{1+t^2} です。倍角の公式(系 4.2[三角関数])より sin⁡x=2sin⁡x2cos⁡x2=2tcos⁡2x2=2t1+t2\sin x=2\sin\frac x2\cos\frac x2=2t\cos^2\frac x2=\dfrac{2t}{1+t^2}、cos⁡x=2cos⁡2x2−1=21+t2−1=1−t21+t2\cos x=2\cos^2\frac x2-1=\dfrac{2}{1+t^2}-1=\dfrac{1-t^2}{1+t^2} です。x/2∈(−π/2,π/2)x/2\in(-\pi/2,\pi/2) と arctan⁡\arctan の定義から x/2=arctan⁡tx/2=\arctan t、すなわち x=2arctan⁡tx=2\arctan t で、dxdt=21+t2\dfrac{dx}{dt}=\dfrac2{1+t^2}(定理 9.3[指数・対数・三角関数をきちんと定義する])です。積分の置換は置換積分(定理 6.1[積分の基本定理と定積分])を φ(t)=2arctan⁡t\varphi(t)=2\arctan t に使います。

例 4.2(1 / sin x と 1 / (1 + sin x))

(a) ∫dxsin⁡x\displaystyle\int\frac{dx}{\sin x}:sin⁡x=2t1+t2\sin x=\dfrac{2t}{1+t^2}、dx=21+t2dtdx=\dfrac2{1+t^2}dt から ∫1+t22t⋅21+t2dt=∫dtt=log⁡∣t∣=log⁡∣tan⁡x2∣\displaystyle\int\frac{1+t^2}{2t}\cdot\frac2{1+t^2}dt=\int\frac{dt}t=\log|t|=\log\left|\tan\frac x2\right| です。

(b) ∫0π/2dx1+sin⁡x\displaystyle\int_0^{\pi/2}\frac{dx}{1+\sin x}:x=0x=0 で t=0t=0、x=π2x=\frac\pi2 で t=tan⁡π4=1t=\tan\frac\pi4=1 で、1+sin⁡x=(1+t)21+t21+\sin x=\dfrac{(1+t)^2}{1+t^2} なので ∫011+t2(1+t)2⋅21+t2dt=∫012(1+t)2dt=[−21+t]01=1\displaystyle\int_0^1\frac{1+t^2}{(1+t)^2}\cdot\frac2{1+t^2}dt=\int_0^1\frac2{(1+t)^2}dt=\left[-\frac2{1+t}\right]_0^1=1 です。

a2−x2\sqrt{a^2-x^2} を含む積分は x=asin⁡θx=a\sin\theta とおく置換が定番です。

例 4.3(∫₀ᵃ √(a² − x²) dx = πa²/4)

a>0a>0 とし、φ(θ)=asin⁡θ\varphi(\theta)=a\sin\theta(0≤θ≤π20\le\theta\le\frac\pi2)とおくと φ\varphi は C1C^1 級で φ(0)=0\varphi(0)=0、φ(π2)=a\varphi(\frac\pi2)=a、f(x)=a2−x2f(x)=\sqrt{a^2-x^2} は [0,a][0,a] で連続です。θ∈[0,π2]\theta\in[0,\frac\pi2] で cos⁡θ≥0\cos\theta\ge0 なので f(φ(θ))=acos⁡θf(\varphi(\theta))=a\cos\theta で、置換積分(定理 6.1[積分の基本定理と定積分])より

∫0af(x)dx=∫0π/2acos⁡θ⋅acos⁡θ dθ=a2∫0π/21+cos⁡2θ2 dθ=a2[θ2+sin⁡2θ4]0π/2=πa24\int_0^af(x)dx=\int_0^{\pi/2}a\cos\theta\cdot a\cos\theta\,d\theta=a^2\int_0^{\pi/2}\frac{1+\cos2\theta}2\,d\theta=a^2\left[\frac\theta2+\frac{\sin2\theta}4\right]_0^{\pi/2}=\frac{\pi a^2}4

です(cos⁡2θ=1+cos⁡2θ2\cos^2\theta=\frac{1+\cos2\theta}2 は倍角の公式、sin⁡π=0\sin\pi=0)。これは、半径 aa の円の第 1 象限の部分(四分円)の面積が πa2/4\pi a^2/4 であること(命題 8.3[指数・対数・三角関数をきちんと定義する] の a=1a=1、θ=π2\theta=\frac\pi2 の場合の一般化)と一致しています。

関数 f,gf,g に対し、∫−ππf(x)g(x)dx\int_{-\pi}^{\pi}f(x)g(x)dx を「関数の内積」とみなすと、sin⁡mx\sin mx、cos⁡nx\cos nx たちは互いに直交します。

定理 5.1(三角関数系の直交性)✓

m,nm,n を 00 以上の整数とする。

  1. ∫−ππcos⁡mxcos⁡nx dx={0(m≠n)π(m=n≥1)2π(m=n=0)\displaystyle\int_{-\pi}^{\pi}\cos mx\cos nx\,dx=\begin{cases}0&(m\ne n)\\\pi&(m=n\ge1)\\2\pi&(m=n=0)\end{cases}
  2. ∫−ππsin⁡mxsin⁡nx dx={0(m≠n)π(m=n≥1)\displaystyle\int_{-\pi}^{\pi}\sin mx\sin nx\,dx=\begin{cases}0&(m\ne n)\\\pi&(m=n\ge1)\end{cases}(m=0m=0 または n=0n=0 のときは 00)
  3. ∫−ππsin⁡mxcos⁡nx dx=0\displaystyle\int_{-\pi}^{\pi}\sin mx\cos nx\,dx=0。
証明(定理 5.1)

まず、整数 kk について ∫−ππcos⁡kx dx\displaystyle\int_{-\pi}^{\pi}\cos kx\,dx は、k=0k=0 のとき 2π2\pi、k≠0k\ne0 のとき [sin⁡kxk]−ππ=sin⁡kπ−sin⁡(−kπ)k=0\left[\dfrac{\sin kx}k\right]_{-\pi}^{\pi}=\dfrac{\sin k\pi-\sin(-k\pi)}k=0(sin⁡kπ=0\sin k\pi=0。命題 3.1[三角関数] (5))です。同様に ∫−ππsin⁡kx dx=0\displaystyle\int_{-\pi}^{\pi}\sin kx\,dx=0(k=0k=0 は被積分関数が 00、k≠0k\ne0 は [−cos⁡kxk]−ππ=−cos⁡kπ−cos⁡(−kπ)k=0\left[-\dfrac{\cos kx}k\right]_{-\pi}^{\pi}=-\dfrac{\cos k\pi-\cos(-k\pi)}k=0)です。

積和の公式(系 4.3[三角関数])から

cos⁡mxcos⁡nx=12[cos⁡(m+n)x+cos⁡(m−n)x],sin⁡mxsin⁡nx=12[cos⁡(m−n)x−cos⁡(m+n)x],\cos mx\cos nx=\tfrac12\bigl[\cos(m+n)x+\cos(m-n)x\bigr],\quad\sin mx\sin nx=\tfrac12\bigl[\cos(m-n)x-\cos(m+n)x\bigr],sin⁡mxcos⁡nx=12[sin⁡(m+n)x+sin⁡(m−n)x]\sin mx\cos nx=\tfrac12\bigl[\sin(m+n)x+\sin(m-n)x\bigr]

です。これらを積分し、上の結果を使えば、(1) は m≠nm\ne n で 00、m=n≥1m=n\ge1 で 12(0+2π)=π\frac12(0+2\pi)=\pi、m=n=0m=n=0 で 12(2π+2π)=2π\frac12(2\pi+2\pi)=2\pi です。(2) は m≠nm\ne n で 12(0−0)=0\frac12(0-0)=0、m=n≥1m=n\ge1 で 12(2π−0)=π\frac12(2\pi-0)=\pi、m=n=0m=n=0 または片方が 00 のとき被積分関数が 00 です。(3) は常に 12(0+0)=0\frac12(0+0)=0 です。

例 5.2(係数の取り出し)

有限個の項からなる三角多項式 f(x)=a02+∑k=1N(akcos⁡kx+bksin⁡kx)f(x)=\frac{a_0}2+\sum_{k=1}^N(a_k\cos kx+b_k\sin kx) に 定理 5.1 を使うと、積分の線形性(命題 4.1[積分の基本定理と定積分] (1))から ∫−ππf(x)cos⁡nx dx=πan\displaystyle\int_{-\pi}^{\pi}f(x)\cos nx\,dx=\pi a_n、∫−ππf(x)sin⁡nx dx=πbn\displaystyle\int_{-\pi}^{\pi}f(x)\sin nx\,dx=\pi b_n(n≥1n\ge1)です。つまり係数 an,bna_n,b_n は、ff の積分で取り出せます。これが周期関数を sin⁡kx\sin kx、cos⁡kx\cos kx の(無限)和に展開する Fourier 級数の出発点です。

n≥0n\ge0 に対し Wn=∫0π/2sin⁡nx dxW_n=\displaystyle\int_0^{\pi/2}\sin^nx\,dx とおきます。nn が大きいほど sin⁡nx\sin^nx は小さくなるので WnW_n も小さくなりますが、その様子を厳密に追います。

定理 6.1(Wallis 積分)✓

  1. W0=π2W_0=\dfrac\pi2、W1=1W_1=1、nWn=(n−1)Wn−2nW_n=(n-1)W_{n-2}(n≥2n\ge2)。
  2. W2m=π2∏k=1m2k−12kW_{2m}=\dfrac\pi2\displaystyle\prod_{k=1}^m\dfrac{2k-1}{2k}、W2m+1=∏k=1m2k2k+1W_{2m+1}=\displaystyle\prod_{k=1}^m\dfrac{2k}{2k+1}(m≥0m\ge0。空の積は 11)。
  3. すべての nn で Wn>0W_n>0 で、Wn+1≤WnW_{n+1}\le W_n。
証明(定理 6.1)

(1) W0=∫0π/21 dx=π2W_0=\int_0^{\pi/2}1\,dx=\frac\pi2、W1=[−cos⁡x]0π/2=1W_1=[-\cos x]_0^{\pi/2}=1(cos⁡π2=0\cos\frac\pi2=0、cos⁡0=1\cos0=1)です。n≥2n\ge2 のとき、部分積分(定理 6.2[積分の基本定理と定積分])を u=sin⁡n−1xu=\sin^{n-1}x、v′=sin⁡xv'=\sin x(v=−cos⁡xv=-\cos x)に使うと

Wn=[−sin⁡n−1xcos⁡x]0π/2+(n−1)∫0π/2sin⁡n−2xcos⁡2x dxW_n=\Bigl[-\sin^{n-1}x\cos x\Bigr]_0^{\pi/2}+(n-1)\int_0^{\pi/2}\sin^{n-2}x\cos^2x\,dx

です(u′=(n−1)sin⁡n−2xcos⁡xu'=(n-1)\sin^{n-2}x\cos x)。境界項は sin⁡n−1π2cos⁡π2=0\sin^{n-1}\frac\pi2\cos\frac\pi2=0 と sin⁡n−10⋅cos⁡0=0\sin^{n-1}0\cdot\cos0=0(n≥2n\ge2)で 00 です。cos⁡2x=1−sin⁡2x\cos^2x=1-\sin^2x から Wn=(n−1)(Wn−2−Wn)W_n=(n-1)(W_{n-2}-W_n)、すなわち nWn=(n−1)Wn−2nW_n=(n-1)W_{n-2} です。

(2) (1) から W2m=2m−12mW2m−2W_{2m}=\frac{2m-1}{2m}W_{2m-2}、W2m+1=2m2m+1W2m−1W_{2m+1}=\frac{2m}{2m+1}W_{2m-1} で、これを繰り返します。

(3) [0,π2][0,\frac\pi2] で 0≤sin⁡x≤10\le\sin x\le1(定理 7.3[指数・対数・三角関数をきちんと定義する] (3)、定理 6.5[指数・対数・三角関数をきちんと定義する])なので sin⁡n+1x≤sin⁡nx\sin^{n+1}x\le\sin^nx で、積分の単調性(命題 4.1[積分の基本定理と定積分] (2))から Wn+1≤WnW_{n+1}\le W_n。正であること:sin⁡\sin は [0,π2][0,\frac\pi2] で単調増加で sin⁡π4>0\sin\frac\pi4>0(命題 3.2[三角関数])なので、[π4,π2][\frac\pi4,\frac\pi2] で sin⁡nx≥(sin⁡π4)n\sin^nx\ge\left(\sin\frac\pi4\right)^n です。したがって区間加法性(同 (3))と単調性から Wn≥∫π/4π/2sin⁡nx dx≥π4(sin⁡π4)n>0W_n\ge\int_{\pi/4}^{\pi/2}\sin^nx\,dx\ge\frac\pi4\left(\sin\frac\pi4\right)^n>0 です。

定理 6.2(Wallis の積)✓

π2=lim⁡m→∞∏k=1m(2k)2(2k−1)(2k+1)=lim⁡m→∞21⋅23⋅43⋅45⋅65⋅67⋯2m2m−1⋅2m2m+1\frac\pi2=\lim_{m\to\infty}\prod_{k=1}^m\frac{(2k)^2}{(2k-1)(2k+1)}=\lim_{m\to\infty}\frac21\cdot\frac23\cdot\frac43\cdot\frac45\cdot\frac65\cdot\frac67\cdots\frac{2m}{2m-1}\cdot\frac{2m}{2m+1}

である。

証明(定理 6.2)

Πm=∏k=1m(2k)2(2k−1)(2k+1)\Pi_m=\displaystyle\prod_{k=1}^m\frac{(2k)^2}{(2k-1)(2k+1)} とおきます。定理 6.1 (2) から

W2mW2m+1=π2∏k=1m2k−12k⋅∏k=1m2k+12k=π2⋅1Πm\frac{W_{2m}}{W_{2m+1}}=\frac\pi2\prod_{k=1}^m\frac{2k-1}{2k}\cdot\prod_{k=1}^m\frac{2k+1}{2k}=\frac\pi2\cdot\frac1{\Pi_m}

です。すなわち Πm=π2⋅W2m+1W2m\Pi_m=\dfrac\pi2\cdot\dfrac{W_{2m+1}}{W_{2m}} です。同 (3) の単調性から W2m+1≤W2m≤W2m−1W_{2m+1}\le W_{2m}\le W_{2m-1} なので、すべて正であることに注意して

W2m+1W2m−1≤W2m+1W2m≤1\frac{W_{2m+1}}{W_{2m-1}}\le\frac{W_{2m+1}}{W_{2m}}\le1

です。(1) から W2m+1W2m−1=2m2m+1=1−12m+1→1\dfrac{W_{2m+1}}{W_{2m-1}}=\dfrac{2m}{2m+1}=1-\dfrac1{2m+1}\to1 なので、はさみうち(命題 2.2[数列と関数の極限] (6))から W2m+1W2m→1\dfrac{W_{2m+1}}{W_{2m}}\to1、したがって Πm→π2\Pi_m\to\dfrac\pi2 です。

例 6.3(Wallis の積の最初の項)

Π1=43=1.333⋯\Pi_1=\frac43=1.333\cdots、Π2=43⋅1615=6445=1.422⋯\Pi_2=\frac43\cdot\frac{16}{15}=\frac{64}{45}=1.422\cdots、Π3=6445⋅3635=256175=1.462⋯\Pi_3=\frac{64}{45}\cdot\frac{36}{35}=\frac{256}{175}=1.462\cdots で、π2=1.5707⋯\frac\pi2=1.5707\cdots に向かって単調に増えます(収束はゆっくりです。証明中の不等式から π2−Πm≤π2(2m+1)\frac\pi2-\Pi_m\le\frac\pi{2(2m+1)} で、実際の誤差はその半分ほどです)。この積は、階乗の漸近式 Stirling の公式(定理 7.1[広義積分・パラメータ積分とガンマ関数])の定数 2π\sqrt{2\pi} を決めるのにも使われます。

定理 7.1(1/6 公式)✓

α<β\alpha<\beta とする。

∫αβ(x−α)(x−β) dx=−(β−α)36\int_\alpha^\beta(x-\alpha)(x-\beta)\,dx=-\frac{(\beta-\alpha)^3}6

である。すなわち ∫αβ(x−α)(β−x) dx=(β−α)36\displaystyle\int_\alpha^\beta(x-\alpha)(\beta-x)\,dx=\frac{(\beta-\alpha)^3}6。

証明(定理 7.1)

L=β−αL=\beta-\alpha とし、φ(u)=u+α\varphi(u)=u+\alpha による置換積分(定理 6.1[積分の基本定理と定積分])を使うと、∫αβ(x−α)(x−β)dx=∫0Lu(u−L) du=[u33−Lu22]0L=L33−L32=−L36\displaystyle\int_\alpha^\beta(x-\alpha)(x-\beta)dx=\int_0^Lu(u-L)\,du=\left[\frac{u^3}3-\frac{Lu^2}2\right]_0^L=\frac{L^3}3-\frac{L^3}2=-\frac{L^3}6 です(多項式の原始関数は 命題 2.1 の xnx^n の項ごとの和)。

7.2. 放物線と弦が囲む図形(Archimedes)

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定理 7.2(放物線の切片の面積)✓

f(x)=ax2+bx+cf(x)=ax^2+bx+c(a≠0a\ne0)、α<β\alpha<\beta とし、放物線上の 2 点 A=(α,f(α))\mathrm A=(\alpha,f(\alpha))、B=(β,f(β))\mathrm B=(\beta,f(\beta)) を通る直線 y=ℓ(x)y=\ell(x) を考える。放物線と線分 AB\mathrm{AB} が囲む図形 D={(x,y):α≤x≤β, yD=\{(x,y):\alpha\le x\le\beta,\ y は f(x)f(x) と ℓ(x)\ell(x) の間}\} について、次が成り立つ。

  1. f(x)−ℓ(x)=a(x−α)(x−β)f(x)-\ell(x)=a(x-\alpha)(x-\beta)。
  2. DD の面積は ∣a∣(β−α)36\dfrac{|a|(\beta-\alpha)^3}6 である。
  3. 弦の中点の真上(x=m=α+β2x=m=\frac{\alpha+\beta}2)で放物線と弦の間の鉛直方向の距離を hh とすると h=∣a∣(β−α)24h=\dfrac{|a|(\beta-\alpha)^2}4 で、DD の面積は、AB\mathrm{AB} と鉛直なベクトル (0,h)(0,h) が張る平行四辺形の面積の 23\dfrac23 である(Archimedes)。
証明(定理 7.2)

(1) f−ℓf-\ell は 2 次の多項式で、最高次の係数は aa、x=α,βx=\alpha,\beta で 00 です。因数定理(定理 2.3[多項式の割り算と高次方程式])より f−ℓ=(x−α)(ax+e)f-\ell=(x-\alpha)(ax+e)、x=βx=\beta で (β−α)(aβ+e)=0(\beta-\alpha)(a\beta+e)=0 なので e=−aβe=-a\beta、すなわち f−ℓ=a(x−α)(x−β)f-\ell=a(x-\alpha)(x-\beta) です。

(2) α<x<β\alpha<x<\beta で (x−α)(x−β)<0(x-\alpha)(x-\beta)<0 なので、f−ℓf-\ell の符号は −sign⁡a-\operatorname{sign}a で一定です。したがって DD は連続関数 φ1≤φ2\varphi_1\le\varphi_2({f,ℓ}\{f,\ell\} の小さい方と大きい方)で挟まれた縦線集合で、縦線集合上の累次積分の定理(定理 5.6[重積分と累次積分])から、面積は ∫αβ∣f(x)−ℓ(x)∣dx=∣a∣∫αβ(x−α)(β−x) dx=∣a∣(β−α)36\displaystyle\int_\alpha^\beta|f(x)-\ell(x)|dx=|a|\int_\alpha^\beta(x-\alpha)(\beta-x)\,dx=\frac{|a|(\beta-\alpha)^3}6(定理 7.1)です。

(3) (1) から h=∣f(m)−ℓ(m)∣=∣a∣⋅β−α2⋅β−α2=∣a∣(β−α)24h=|f(m)-\ell(m)|=|a|\cdot\frac{\beta-\alpha}2\cdot\frac{\beta-\alpha}2=\frac{|a|(\beta-\alpha)^2}4 です。AB→=(β−α, ℓ(β)−ℓ(α))\overrightarrow{\mathrm{AB}}=(\beta-\alpha,\ \ell(\beta)-\ell(\alpha)) と (0,h)(0,h) が張る平行四辺形の面積は、命題 8.1[行列式とその性質] から ∣(β−α)h−0∣=(β−α)h=∣a∣(β−α)34|(\beta-\alpha)h-0|=(\beta-\alpha)h=\dfrac{|a|(\beta-\alpha)^3}4 で、(2) の面積 ∣a∣(β−α)36\dfrac{|a|(\beta-\alpha)^3}6 はその 23\dfrac23 です。

積分は和の極限なので、単調な関数なら、和と積分は互いに挟み合います。

定理 8.1(単調関数の和と積分の大小)✓

m<nm<n を整数とし、f:[m,n]→Rf:[m,n]\to\mathbb R を連続とする。

  1. ff が単調減少(x≤y⇒f(x)≥f(y)x\le y\Rightarrow f(x)\ge f(y))ならば ∑k=m+1nf(k)≤∫mnf(x)dx≤∑k=mn−1f(k)\displaystyle\sum_{k=m+1}^nf(k)\le\int_m^nf(x)dx\le\sum_{k=m}^{n-1}f(k)。
  2. ff が単調増加ならば ∑k=mn−1f(k)≤∫mnf(x)dx≤∑k=m+1nf(k)\displaystyle\sum_{k=m}^{n-1}f(k)\le\int_m^nf(x)dx\le\sum_{k=m+1}^nf(k)。
証明(定理 8.1)

(1) のみ示します((2) は −f-f に (1) を使う)。各 kk について、[k,k+1][k,k+1] 上で f(k+1)≤f(x)≤f(k)f(k+1)\le f(x)\le f(k) なので、積分の単調性(命題 4.1[積分の基本定理と定積分] (2))から f(k+1)≤∫kk+1f(x)dx≤f(k)f(k+1)\le\int_k^{k+1}f(x)dx\le f(k) です(区間の長さは 11)。k=m,…,n−1k=m,\dots,n-1 について足し、区間加法性(同 (3))で ∑k∫kk+1=∫mn\sum_k\int_k^{k+1}=\int_m^n とすれば主張を得ます。

Hn=∑k=1n1kH_n=\displaystyle\sum_{k=1}^n\frac1k は ∞\infty に発散しました(調和級数。定理 3.3[数列と関数の極限])が、その発散の速さは log⁡n\log n とちょうど同じです。

定理 8.2(Euler の定数)✓

γn=Hn−log⁡n\gamma_n=H_n-\log n とおく。数列 (γn)(\gamma_n) は単調に減少し、すべての nn で γn>0\gamma_n>0 である。したがって γn\gamma_n は収束する。その極限を γ\gamma(Euler の定数)と書くと、すべての nn で γn−1n≤γ≤γn\gamma_n-\dfrac1n\le\gamma\le\gamma_n である。

証明(定理 8.2)

∫1ndxx=log⁡n\displaystyle\int_1^n\frac{dx}x=\log n(命題 2.1)です。定理 8.1 (1) を f(x)=1/xf(x)=1/x([1,n][1,n] で単調減少)に使うと Hn−1=∑k=2n1k≤log⁡n≤∑k=1n−11k=Hn−1\displaystyle H_n-1=\sum_{k=2}^n\frac1k\le\log n\le\sum_{k=1}^{n-1}\frac1k=H_{n-1} です。右側の不等式から γn=Hn−log⁡n≥Hn−Hn−1=1n>0\gamma_n=H_n-\log n\ge H_n-H_{n-1}=\dfrac1n>0 です。

単調性。 γn−γn+1=log⁡(n+1)−log⁡n−1n+1=∫nn+1(1x−1n+1)dx≥0\gamma_n-\gamma_{n+1}=\log(n+1)-\log n-\dfrac1{n+1}=\displaystyle\int_n^{n+1}\left(\frac1x-\frac1{n+1}\right)dx\ge0([n,n+1][n,n+1] で 1x≥1n+1\frac1x\ge\frac1{n+1})です。したがって (γn)(\gamma_n) は単調減少で下に有界(00 以上)なので、収束します(定理 2.1[級数と収束判定] を −γn-\gamma_n に使う)。極限 γ\gamma は、γ≤γn\gamma\le\gamma_n です。

下からの評価。 γk−γk+1=∫kk+1dxx−1k+1≤1k−1k+1\gamma_k-\gamma_{k+1}=\displaystyle\int_k^{k+1}\frac{dx}x-\frac1{k+1}\le\frac1k-\frac1{k+1}(∫kk+1dxx≤1k\int_k^{k+1}\frac{dx}x\le\frac1k)です。k=n,…,N−1k=n,\dots,N-1 で足すと γn−γN≤1n−1N\gamma_n-\gamma_N\le\frac1n-\frac1N で、N→∞N\to\infty として γn−γ≤1n\gamma_n-\gamma\le\frac1n です(命題 2.2[数列と関数の極限] (5))。

例 8.3(Euler の定数の評価)

n=10n=10 で H10=73812520=2.92897⋯H_{10}=\frac{7381}{2520}=2.92897\cdots、log⁡10=2.30259⋯\log10=2.30259\cdots(電卓の値)なので γ10=0.62638⋯\gamma_{10}=0.62638\cdots で、定理 8.2 から 0.526<γ<0.6270.526<\gamma<0.627 です。実際の値は γ=0.5772⋯\gamma=0.5772\cdots で、評価の範囲にあります。

定理 8.4(n! の評価)✓

任意の正の整数 nn に対し

e(ne)n≤n!≤e n(ne)ne\left(\frac ne\right)^n\le n!\le e\,n\left(\frac ne\right)^n

である。

証明(定理 8.4)

n=1n=1 のときは 3 つの式がすべて 11 なので、n≥2n\ge2 とします。log⁡\log は単調増加なので、定理 8.1 (2) を f=log⁡f=\log([1,n][1,n] で連続)に使うと ∑k=1n−1log⁡k≤∫1nlog⁡x dx≤∑k=2nlog⁡k\displaystyle\sum_{k=1}^{n-1}\log k\le\int_1^n\log x\,dx\le\sum_{k=2}^n\log k、すなわち log⁡(n−1)!≤∫1nlog⁡x dx≤log⁡n!\log(n-1)!\le\int_1^n\log x\,dx\le\log n! です(log⁡\log の和は積の対数。定理 4.2[指数・対数・三角関数をきちんと定義する] (2))。(xlog⁡x−x)′=log⁡x+1−1=log⁡x(x\log x-x)'=\log x+1-1=\log x(積の法則と 定理 4.2[指数・対数・三角関数をきちんと定義する] (4))から、∫1nlog⁡x dx=[xlog⁡x−x]1n=nlog⁡n−n+1\displaystyle\int_1^n\log x\,dx=[x\log x-x]_1^n=n\log n-n+1 です。したがって log⁡n!≥nlog⁡n−n+1=log⁡(e(n/e)n)\log n!\ge n\log n-n+1=\log\left(e(n/e)^n\right)、log⁡(n−1)!≤nlog⁡n−n+1\log(n-1)!\le n\log n-n+1 で、後者は n!=n⋅(n−1)!≤n e(n/e)nn!=n\cdot(n-1)!\le n\,e(n/e)^n を意味します(exp⁡\exp の単調性)。

例 8.5(10! の評価)

e−10=4.54×10−5e^{-10}=4.54\times10^{-5} から e (10/e)10=e⋅1010e−10≈1.23×106e\,(10/e)^{10}=e\cdot10^{10}e^{-10}\approx1.23\times10^6、10 e (10/e)10≈1.23×10710\,e\,(10/e)^{10}\approx1.23\times10^7 です。定理 8.4 より 1.23×106≤10!≤1.23×1071.23\times10^6\le10!\le1.23\times10^7 で、実際 10!=362880010!=3628800 です。上下の幅は nn 倍ありますが、桁数のおおよその見当がつきます。

定積分の近似に使う台形公式は、区間を等分して、各小区間で関数を線分で置き換える方法です。その誤差が、第 2 次導関数と h2h^2(hh は刻み幅)で抑えられることを示します。証明の方針は、まず 1 つの小区間で誤差を u(x)=(x−p)(q−x)u(x)=(x-p)(q-x) と f′′f'' の積の積分に直し、それを §7.1 の 1/6 公式で見積もり、最後に小区間の誤差を足し合わせる、というものです。部分積分は 2 回使い、境界項は u(p)=u(q)=0u(p)=u(q)=0 のため 1 回目で消えます。

定理 8.6(台形公式の誤差評価)✓

f:[a,b]→Rf:[a,b]\to\mathbb R を C2C^2 級(f′′f'' が連続)とし、N≥1N\ge1、h=b−aNh=\dfrac{b-a}N、xk=a+khx_k=a+kh とおく。

TN=h[f(x0)2+∑k=1N−1f(xk)+f(xN)2]T_N=h\left[\frac{f(x_0)}2+\sum_{k=1}^{N-1}f(x_k)+\frac{f(x_N)}2\right]

とすると、M=max⁡[a,b]∣f′′∣M=\max_{[a,b]}|f''| について

∣∫abf(x)dx−TN∣≤(b−a) h2M12\left|\int_a^bf(x)dx-T_N\right|\le\frac{(b-a)\,h^2M}{12}

である。

証明(定理 8.6)

1 つの小区間。 p<qp<q とし、u(x)=(x−p)(q−x)u(x)=(x-p)(q-x) とおくと u(p)=u(q)=0u(p)=u(q)=0、u′(x)=p+q−2xu'(x)=p+q-2x、u′′=−2u''=-2 です。部分積分(定理 6.2[積分の基本定理と定積分])を 2 回使うと

∫pqu f′′ dx=[uf′]pq−∫pqu′f′ dx=−([u′f]pq+2∫pqf dx)\int_p^qu\,f''\,dx=\bigl[uf'\bigr]_p^q-\int_p^qu'f'\,dx=-\Bigl(\bigl[u'f\bigr]_p^q+2\int_p^qf\,dx\Bigr)

です。[u′f]pq=(p−q)f(q)−(q−p)f(p)=−(q−p)(f(p)+f(q))[u'f]_p^q=(p-q)f(q)-(q-p)f(p)=-(q-p)\bigl(f(p)+f(q)\bigr) なので、

∫pqf dx−q−p2(f(p)+f(q))=−12∫pqu(x)f′′(x) dx\int_p^qf\,dx-\frac{q-p}2\bigl(f(p)+f(q)\bigr)=-\frac12\int_p^qu(x)f''(x)\,dx

です。u≥0u\ge0 なので、右辺の絶対値は M2∫pqu dx=M2⋅(q−p)36\dfrac M2\displaystyle\int_p^qu\,dx=\dfrac M2\cdot\dfrac{(q-p)^3}6(定理 7.1)以下です。q−p=hq-p=h とすると、1 つの小区間の誤差は Mh312\dfrac{Mh^3}{12} 以下です。

全体。 [xk,xk+1][x_k,x_{k+1}](k=0,…,N−1k=0,\dots,N-1)で足すと、内側の節点 xkx_k は両側の小区間から h2f(xk)\frac h2f(x_k) ずつ受け取って hf(xk)hf(x_k)、両端は h2f\frac h2f を 1 回受け取るだけなので、台形の和は TNT_N、積分の和は ∫abf\int_a^bf(区間加法性)です。誤差は N⋅Mh312=(b−a)h2M12N\cdot\dfrac{Mh^3}{12}=\dfrac{(b-a)h^2M}{12} 以下です。

例 8.7(台形公式で log 2 を求める)

log⁡2=∫12dxx\log2=\displaystyle\int_1^2\frac{dx}x を N=4N=4(h=0.25h=0.25)の台形公式で近似します。f(x)=1/xf(x)=1/x の値は f(1)=1f(1)=1、f(1.25)=0.8f(1.25)=0.8、f(1.5)=0.6667f(1.5)=0.6667、f(1.75)=0.5714f(1.75)=0.5714、f(2)=0.5f(2)=0.5 で、T4=0.25 [ 0.5+0.8+0.6667+0.5714+0.25 ]=0.69702⋯T_4=0.25\,[\,0.5+0.8+0.6667+0.5714+0.25\,]=0.69702\cdots です。f′′(x)=2/x3≤2f''(x)=2/x^3\le2([1,2][1,2])なので、定理 8.6 から誤差は 1⋅0.0625⋅212=0.0105\dfrac{1\cdot0.0625\cdot2}{12}=0.0105 以下です。実際の log⁡2=0.69315⋯\log2=0.69315\cdots との差は 0.00390.0039 で、評価の範囲内です。

  • リーマン積分とその先。 定積分の定義・可積分性・基本定理は 積分と微分積分学の基本定理 にあり、広義積分・ガンマ関数・ベータ関数・Stirling の公式は 広義積分とパラメータ積分 で扱います。Wallis 積分はベータ関数の特別な場合です。
  • Fourier 解析。 定理 5.1 は、周期関数の空間 L2(−π,π)L^2(-\pi,\pi) での直交系であることを意味します。Fourier 級数の収束と完全性は フーリエ級数 で扱われます。
  • 数値積分。 台形公式の誤差の評価 O(h2)O(h^2) から、Simpson の公式(O(h4)O(h^4))、Gauss 型の公式へ進みます。
  • 初等関数で積分できない関数。 ∫e−x2dx\int e^{-x^2}dx のように、有理関数・対数・arctan・三角関数・指数関数を有限回組み合わせても原始関数が書けない関数があります。その理論(Liouville の定理)は、微分体の代数を使うもので、ここでは扱いません。
  • 代数学との接点。 部分分数分解は、多項式環 R[x]\mathbb R[x] の一意分解性と、有理関数体の構造の話です。複素数の範囲で分解すれば、分母はすべて 1 次式のべきになります(多項式の割り算と高次方程式)。

演習 10.1易

∫dxx(x2+1)\displaystyle\int\frac{dx}{x(x^2+1)} を求めよ。

解答

1x(x2+1)=1x−xx2+1\dfrac1{x(x^2+1)}=\dfrac1x-\dfrac x{x^2+1} である(右辺を通分すると分子は (x2+1)−x2=1(x^2+1)-x^2=1)。命題 2.1 と 系 3.5 (2)(p=0p=0、r=x2+1r=x^2+1、xx2+1=12⋅2xx2+1\frac x{x^2+1}=\frac12\cdot\frac{2x}{x^2+1})から、∫dxx(x2+1)=log⁡∣x∣−12log⁡(x2+1)\displaystyle\int\frac{dx}{x(x^2+1)}=\log|x|-\frac12\log(x^2+1) である。

演習 10.2標準

∫0π/2cos⁡4x dx\displaystyle\int_0^{\pi/2}\cos^4x\,dx を求めよ。

解答

f(x)=cos⁡4xf(x)=\cos^4x、φ(t)=π2−t\varphi(t)=\frac\pi2-t に置換積分(定理 6.1[積分の基本定理と定積分])を使う。φ′=−1\varphi'=-1、φ(0)=π2\varphi(0)=\frac\pi2、φ(π2)=0\varphi(\frac\pi2)=0 なので ∫0π/2f(φ(t))⋅(−1) dt=∫π/20f(x)dx=−∫0π/2cos⁡4x dx\int_0^{\pi/2}f(\varphi(t))\cdot(-1)\,dt=\int_{\pi/2}^0f(x)dx=-\int_0^{\pi/2}\cos^4x\,dx である。左辺は cos⁡(π2−t)=sin⁡t\cos\left(\frac\pi2-t\right)=\sin t(命題 3.1[三角関数] (3))から −∫0π/2sin⁡4t dt=−W4-\int_0^{\pi/2}\sin^4t\,dt=-W_4 なので、∫0π/2cos⁡4x dx=W4\int_0^{\pi/2}\cos^4x\,dx=W_4 である。定理 6.1 (1) から W4=34W2=34⋅12W0=38⋅π2=3π16W_4=\frac34W_2=\frac34\cdot\frac12W_0=\frac38\cdot\frac\pi2=\frac{3\pi}{16} である。

演習 10.3標準

∫−ππ(1+2cos⁡x+3sin⁡2x)2dx\displaystyle\int_{-\pi}^{\pi}\bigl(1+2\cos x+3\sin2x\bigr)^2dx を求めよ。

解答

展開すると、2 乗の項 11、4cos⁡2x4\cos^2x、9sin⁡22x9\sin^22x と、交差項 4cos⁡x4\cos x、6sin⁡2x6\sin2x、12cos⁡xsin⁡2x12\cos x\sin2x になる。定理 5.1 から、∫−ππ1 dx=2π\int_{-\pi}^{\pi}1\,dx=2\pi、∫4cos⁡2x dx=4π\int4\cos^2x\,dx=4\pi、∫9sin⁡22x dx=9π\int9\sin^22x\,dx=9\pi で、交差項の積分は ∫cos⁡x dx=0\int\cos x\,dx=0、∫sin⁡2x dx=0\int\sin2x\,dx=0、∫cos⁡xsin⁡2x dx=0\int\cos x\sin2x\,dx=0 なので、すべて 00 である。合計 2π+4π+9π=15π2\pi+4\pi+9\pi=15\pi。

演習 10.4標準

∑k=1n1k≥2n+1−2\displaystyle\sum_{k=1}^n\frac1{\sqrt k}\ge2\sqrt{n+1}-2 を示せ。

解答

f(x)=x−1/2f(x)=x^{-1/2} は [1,n+1][1,n+1] で連続な単調減少関数で、原始関数は 2x2\sqrt x(命題 2.1 で α=−12\alpha=-\frac12)である。定理 8.1 (1) を区間 [1,n+1][1,n+1] に使うと ∑k=2n+1f(k)≤∫1n+1f≤∑k=1nf(k)\sum_{k=2}^{n+1}f(k)\le\int_1^{n+1}f\le\sum_{k=1}^nf(k) なので、∑k=1n1k≥∫1n+1x−1/2dx=2n+1−2\sum_{k=1}^n\frac1{\sqrt k}\ge\int_1^{n+1}x^{-1/2}dx=2\sqrt{n+1}-2 である。

  • 杉浦光夫『解析入門 I』東京大学出版会、1980 — 積分法の章。
  • R. Courant, F. John, Introduction to Calculus and Analysis, Vol. I, Wiley, 1989 — 積分法・有理関数の積分の章。
  • W. Rudin, Principles of Mathematical Analysis, 3rd ed., McGraw-Hill, 1976 — Chapter 6(積分)。
  • 高木貞治『解析概論』岩波書店 — 積分法の章(有理関数の積分・Wallis の公式)。

このテーマの 100 本ノック(100 問)

執筆: Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 2 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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