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積分の応用:面積・体積・曲線の長さ・微分方程式を、定義から公式まで

対象読者: 高校数学 III の積分法(面積・体積・曲線の長さの公式)と、本テーマの積分法の章までの内容を学んだ人。大学の重積分や測度の知識は仮定しません。

前提となる記事:積分法:計算の技法とその根拠。部分分数・三角関数・Wallis の積・和との比較

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高校で覚えた「面積は積分で求める」「回転させた立体の体積は積分で求める」という公式は、なぜ正しいのでしょうか。そもそも、曲がった図形の「面積」や立体の「体積」は、何をもって決めるのでしょうか。この記事では、まず面積や体積の意味をはっきり決め、そこから高校の公式を順に導きます。最後に、微分方程式(変化の仕方から元の関数を求める問題)の基本的な解き方も確かめます。読み終えると、各公式がどの仮定の下で成り立つのかが分かります。

  • 高校の積分の応用は、「面積は ∫(g−f)dx\int(g-f)dx」「体積は ∫S(x)dx\int S(x)dx」「回転体の体積は π∫y2dx\pi\int y^2dx」といった公式として覚えます。ところが、そもそも「面積」「体積」とは何でしょうか。この記事では、面積を重積分(平面上の図形での積分。大学の記事)、体積をルベーグ測度(長さ・面積・体積を一般の集合に広げた「大きさ」)で定義し、公式はそれらの定理から導きます。
  • 面積:2 曲線の間の面積、媒介変数表示された曲線の下の面積、極座標の面積 12∫ρ2dθ\frac12\int\rho^2d\theta を証明します。
  • 体積:断面積から体積を求める公式(Cavalieri の原理の積分版)と、回転体の体積 π∫f(x)2dx\pi\int f(x)^2dx を証明します。座標軸でない直線のまわりの回転体(トーラス)や、体積が有限なのに表面積が無限になる Gabriel のラッパも扱います。
  • 曲線の長さは前の記事で定義した積分(定義 8.1[指数・対数・三角関数をきちんと定義する])から、グラフ・媒介変数・極座標の 3 つの形の公式を導きます。
  • 最後に、微分方程式の入口として、変数分離形・1 階線形方程式・ロジスティック方程式・連立線形方程式の解法を、解の一意性(大学の常微分方程式の記事)とあわせて証明します。

1. 動機:「面積」「体積」「長さ」を定義する

Section titled “1. 動機:「面積」「体積」「長さ」を定義する”

高校では、次の公式を「当たり前」のこととして使います。

  • 曲線 y=f(x)y=f(x) と y=g(x)y=g(x) の間の面積は ∫ab(g(x)−f(x))dx\displaystyle\int_a^b\bigl(g(x)-f(x)\bigr)dx。
  • 回転体の体積は π∫abf(x)2dx\displaystyle\pi\int_a^bf(x)^2dx。
  • 曲線の長さは ∫ab1+f′(x)2 dx\displaystyle\int_a^b\sqrt{1+f'(x)^2}\,dx。

区間 [a,b][a,b] を細かく刻んで、短冊や円板や折れ線で近似して足し合わせる、という「積分の考え方」で説明されます。それはその通りなのですが、「面積」という量自体の定義がはっきりしないまま、公式を使っているのです。たとえば、「曲線で囲まれた図形の面積」が、図形の置き方(平行移動・回転)によらないことは、公式からは見えません。

この記事では、定義を次のように決めます。

量定義公式の根拠
平面図形の面積重積分 ∬1 dxdy\iint1\,dxdy(定義 5.1[重積分と累次積分])縦線集合の累次積分(定理 5.6[重積分と累次積分])、変数変換公式(系 6.9[重積分と累次積分])
空間図形の体積R3\mathbb R^3 のルベーグ測度 m3m_3(定義 2.1[ℝ^d の変数変換公式と極座標])Tonelli の定理(定理 3.3[直積測度と Fubini–Tonelli の定理])
曲線の長さ∫x′2+y′2 dt\int\sqrt{x'^2+y'^2}\,dt(定義 8.1[指数・対数・三角関数をきちんと定義する])前の記事の弧の長さ =θ=\theta

円の面積に関係する計算が何度も出てくるので、先に 1 つの補題にまとめておきます。

補題 2.1(半円の積分)✓

r>0r>0 ならば ∫−rrr2−x2 dx=πr22\displaystyle\int_{-r}^r\sqrt{r^2-x^2}\,dx=\frac{\pi r^2}2 である。

証明(補題 2.1)

φ(θ)=rsin⁡θ\varphi(\theta)=r\sin\theta(−π2≤θ≤π2-\frac\pi2\le\theta\le\frac\pi2)とおくと、φ\varphi は C1C^1 級で φ(±π2)=±r\varphi(\pm\frac\pi2)=\pm r です(定理 7.3[指数・対数・三角関数をきちんと定義する])。f(x)=r2−x2f(x)=\sqrt{r^2-x^2} は [−r,r][-r,r] で連続で、[−π2,π2][-\frac\pi2,\frac\pi2] で cos⁡θ≥0\cos\theta\ge0 なので f(φ(θ))=rcos⁡θf(\varphi(\theta))=r\cos\theta です。置換積分(定理 6.1[積分の基本定理と定積分])より

∫−rrf(x) dx=∫−π/2π/2rcos⁡θ⋅rcos⁡θ dθ=r2∫−π/2π/21+cos⁡2θ2 dθ=r2[θ2+sin⁡2θ4]−π/2π/2=πr22\int_{-r}^rf(x)\,dx=\int_{-\pi/2}^{\pi/2}r\cos\theta\cdot r\cos\theta\,d\theta=r^2\int_{-\pi/2}^{\pi/2}\frac{1+\cos2\theta}2\,d\theta=r^2\left[\frac\theta2+\frac{\sin2\theta}4\right]_{-\pi/2}^{\pi/2}=\frac{\pi r^2}2

です(cos⁡2θ=1+cos⁡2θ2\cos^2\theta=\frac{1+\cos2\theta}2 は倍角の公式。系 4.2[三角関数]。sin⁡(±π)=0\sin(\pm\pi)=0)。

定理 2.2(2 曲線の間の面積)✓

f,g:[a,b]→Rf,g:[a,b]\to\mathbb R を連続で f≤gf\le g とする。D={(x,y):a≤x≤b, f(x)≤y≤g(x)}D=\{(x,y):a\le x\le b,\ f(x)\le y\le g(x)\} は面積確定で、その面積は

∣D∣=∫ab(g(x)−f(x))dx|D|=\int_a^b\bigl(g(x)-f(x)\bigr)dx

である。

証明(定理 2.2)

縦線集合上の累次積分の定理(定理 5.6[重積分と累次積分])を、φ1=f\varphi_1=f、φ2=g\varphi_2=g、被積分関数 11 に使います。∣D∣=∬D1 dxdy=∫ab(∫f(x)g(x)1 dy)dx=∫ab(g−f) dx|D|=\iint_D1\,dxdy=\int_a^b\left(\int_{f(x)}^{g(x)}1\,dy\right)dx=\int_a^b(g-f)\,dx です。

例 2.3(直線と放物線が囲む図形)

y=xy=x と y=x2y=x^2 の交点は x=0,1x=0,1 で、[0,1][0,1] で x2≤xx^2\le x です。面積は ∫01(x−x2)dx=∫01x(1−x)dx=16\int_0^1(x-x^2)dx=\int_0^1x(1-x)dx=\dfrac16(1/6 公式。定理 7.1[積分法])です。

円板(半径 rr)の面積:D={x2+y2≤r2}D=\{x^2+y^2\le r^2\} は f(x)=−r2−x2f(x)=-\sqrt{r^2-x^2}、g(x)=r2−x2g(x)=\sqrt{r^2-x^2} に挟まれた縦線集合で、定理 2.2 と 補題 2.1 から ∣D∣=2∫−rrr2−x2dx=πr2|D|=2\int_{-r}^r\sqrt{r^2-x^2}dx=\pi r^2 です。

2.3. 媒介変数で表された曲線の下の面積

Section titled “2.3. 媒介変数で表された曲線の下の面積”

定理 2.4(媒介変数表示された曲線の下の面積)✓

x,y:[α,β]→Rx,y:[\alpha,\beta]\to\mathbb R とし、xx は C1C^1 級で狭義単調増加、yy は連続で y≥0y\ge0 とする。曲線 (x(t),y(t))(x(t),y(t)) は、a=x(α)a=x(\alpha)、b=x(β)b=x(\beta) として [a,b][a,b] 上の連続関数 Y=y∘x−1Y=y\circ x^{-1} のグラフであり、その下の図形 D={(x,v):a≤x≤b, 0≤v≤Y(x)}D=\{(x,v):a\le x\le b,\ 0\le v\le Y(x)\} の面積は

∣D∣=∫αβy(t) x′(t) dt|D|=\int_\alpha^\beta y(t)\,x'(t)\,dt

である。

証明(定理 2.4)

xx は連続な狭義単調増加関数なので、[α,β][\alpha,\beta] から [a,b][a,b] への全単射で、逆関数 x−1x^{-1} も連続です(開区間 (α,β)(\alpha,\beta) では 命題 8.1[導関数の定義と基本的な微分法]。端点では、単調増加な x−1x^{-1} の値域が区間 [α,β][\alpha,\beta] なので、飛びがなく連続です)。したがって Y=y∘x−1Y=y\circ x^{-1} は連続で、曲線は YY のグラフです。定理 2.2 を f=0f=0、g=Yg=Y に使うと ∣D∣=∫abY(x) dx|D|=\int_a^bY(x)\,dx で、置換積分(定理 6.1[積分の基本定理と定積分])を x=x(t)x=x(t) として使うと ∫abY(x)dx=∫αβY(x(t)) x′(t) dt=∫αβy(t)x′(t) dt\int_a^bY(x)dx=\int_\alpha^\beta Y(x(t))\,x'(t)\,dt=\int_\alpha^\beta y(t)x'(t)\,dt です。

例 2.5(サイクロイドの 1 つのアーチの下の面積)

サイクロイド x=t−sin⁡tx=t-\sin t、y=1−cos⁡ty=1-\cos t(0≤t≤2π0\le t\le2\pi)は、車輪の縁の 1 点が描く曲線です。x′(t)=1−cos⁡tx'(t)=1-\cos t は、0<t<2π0<t<2\pi で正(cos⁡t=1\cos t=1 となるのは t∈2πZt\in2\pi\mathbb Z だけ。命題 3.1[三角関数] (5))なので、xx は [0,2π][0,2\pi] で狭義単調増加です。定理 2.4 から面積は

∫02π(1−cos⁡t)2dt=∫02π(1−2cos⁡t+cos⁡2t)dt=2π−0+π=3π\int_0^{2\pi}(1-\cos t)^2dt=\int_0^{2\pi}\bigl(1-2\cos t+\cos^2t\bigr)dt=2\pi-0+\pi=3\pi

です(∫02πcos⁡t dt=0\int_0^{2\pi}\cos t\,dt=0、∫02πcos⁡2t dt=[t2+sin⁡2t4]02π=π\int_0^{2\pi}\cos^2t\,dt=\left[\frac t2+\frac{\sin2t}4\right]_0^{2\pi}=\pi)。サイクロイドを生む円の面積 π\pi の 3 倍です。

2.4. 極座標で表された図形の面積

Section titled “2.4. 極座標で表された図形の面積”

原点からの距離 ρ(θ)\rho(\theta) が角度 θ\theta ごとに決まる図形の面積を求めます。直感的には、角度を細かく刻んで、細い扇形を足し合わせる計算です。証明では、極座標への変数変換のヤコビ行列式(変換で面積が何倍に伸び縮みするかを表す量)が rr になることを使います。途中の「変換が一対一であること」の確認が長いのは、変数変換公式を使うための条件を確かめているためです。

定理 2.6(極座標の面積)✓

α<β≤α+2π\alpha<\beta\le\alpha+2\pi とし、ρ:[α,β]→[0,∞)\rho:[\alpha,\beta]\to[0,\infty) を連続とする。

D={(rcos⁡θ, rsin⁡θ): α≤θ≤β, 0≤r≤ρ(θ)}D=\{(r\cos\theta,\ r\sin\theta):\ \alpha\le\theta\le\beta,\ 0\le r\le\rho(\theta)\}

は面積確定で、その面積は ∣D∣=12∫αβρ(θ)2dθ\displaystyle|D|=\frac12\int_\alpha^\beta\rho(\theta)^2d\theta である。

証明(定理 2.6)

Φ(r,θ)=(rcos⁡θ,rsin⁡θ)\Phi(r,\theta)=(r\cos\theta,r\sin\theta) は R2\mathbb R^2 上の C1C^1 級写像で、ヤコビ行列式は det⁡JΦ=cos⁡θ⋅rcos⁡θ−(−rsin⁡θ)sin⁡θ=r\det J_\Phi=\cos\theta\cdot r\cos\theta-(-r\sin\theta)\sin\theta=r です(定理 6.2[指数・対数・三角関数をきちんと定義する] (3)、定理 6.5[指数・対数・三角関数をきちんと定義する])。E={(r,θ):α≤θ≤β, 0≤r≤ρ(θ)}E=\{(r,\theta):\alpha\le\theta\le\beta,\ 0\le r\le\rho(\theta)\} は、θ\theta を独立変数とみたとき連続関数 0≤ρ0\le\rho で挟まれた集合(横線集合)で、有界閉かつ面積確定です(定理 5.6[重積分と累次積分])。境界 Z=∂EZ=\partial E は、連続関数のグラフ(補題 5.2[重積分と累次積分])と線分からなるので面積 00 です。

intE∖Z=intE\mathrm{int}E\setminus Z=\mathrm{int}E の上で Φ\Phi が単射であることを示します。(r,θ),(r′,θ′)∈intE(r,\theta),(r',\theta')\in\mathrm{int}E(r,r′>0r,r'>0、α<θ,θ′<β\alpha<\theta,\theta'<\beta)で Φ(r,θ)=Φ(r′,θ′)\Phi(r,\theta)=\Phi(r',\theta') とすると、成分の 2 乗和から r=r′r=r' で、したがって cos⁡θ=cos⁡θ′\cos\theta=\cos\theta'、sin⁡θ=sin⁡θ′\sin\theta=\sin\theta' です。このとき cos⁡(θ′−θ)=cos⁡θ′cos⁡θ+sin⁡θ′sin⁡θ=1\cos(\theta'-\theta)=\cos\theta'\cos\theta+\sin\theta'\sin\theta=1 なので、θ′−θ∈2πZ\theta'-\theta\in2\pi\mathbb Z(命題 3.1[三角関数] (5))で、∣θ′−θ∣<β−α≤2π|\theta'-\theta|<\beta-\alpha\le2\pi から θ=θ′\theta=\theta' です。そこで変数変換公式(系 6.9[重積分と累次積分])が使えて、D=Φ(E)D=\Phi(E) は面積確定で

∣D∣=∬Er dr dθ=∫αβ(∫0ρ(θ)r dr)dθ=∫αβρ(θ)22 dθ|D|=\iint_Er\,dr\,d\theta=\int_\alpha^\beta\left(\int_0^{\rho(\theta)}r\,dr\right)d\theta=\int_\alpha^\beta\frac{\rho(\theta)^2}2\,d\theta

です(累次積分は 定理 5.6[重積分と累次積分] の横線集合の形による)。

例 2.7(カージオイドの面積)

ρ(θ)=1+cos⁡θ\rho(\theta)=1+\cos\theta(0≤θ≤2π0\le\theta\le2\pi。ρ≥0\rho\ge0)が囲む図形の面積は、定理 2.6 から 12∫02π(1+cos⁡θ)2dθ=12∫02π(1+2cos⁡θ+cos⁡2θ)dθ=12(2π+0+π)=3π2\dfrac12\int_0^{2\pi}(1+\cos\theta)^2d\theta=\dfrac12\int_0^{2\pi}(1+2\cos\theta+\cos^2\theta)d\theta=\dfrac12(2\pi+0+\pi)=\dfrac{3\pi}2 です。ρ(θ)=a\rho(\theta)=a(定数)なら 12∫02πa2dθ=πa2\frac12\int_0^{2\pi}a^2d\theta=\pi a^2 で、円板の面積の公式に一致します。

空間の図形 S⊆R3S\subseteq\mathbb R^3 の体積を、ルベーグ測度 m3m_3 で定めます。R3=R×R2\mathbb R^3=\mathbb R\times\mathbb R^2 とみて、xx を固定したときの断面 Sx={(y,z):(x,y,z)∈S}S_x=\{(y,z):(x,y,z)\in S\} の面積(R2\mathbb R^2 のルベーグ測度 m2m_2)を xx で積分すると、体積になります。立体をパンのように薄く切って、各断面の面積を足し合わせるイメージです。証明は、3 次元のルベーグ測度が 1 次元と 2 次元の測度の積であることと、Tonelli の定理(積の測度を、片方ずつ順に積分して求める定理)を指示関数に使うだけです。

定理 3.1(断面積による体積)✓

S⊆R3S\subseteq\mathbb R^3 をボレル集合とする。x↦m2(Sx)x\mapsto m_2(S_x) は可測で

m3(S)=∫Rm2(Sx) dm1(x)m_3(S)=\int_{\mathbb R}m_2(S_x)\,dm_1(x)

が成り立つ。x↦m2(Sx)x\mapsto m_2(S_x) が [a,b][a,b] の外で 00 で、[a,b][a,b] 上で連続(あるいはリーマン可積分)ならば、右辺は ∫abm2(Sx)dx\displaystyle\int_a^bm_2(S_x)dx(リーマン積分)に等しい。

証明(定理 3.1)

ルベーグ測度の定義(定義 2.1[ℝ^d の変数変換公式と極座標])から m3=m1×m2m_3=m_1\times m_2 です。SS の指示関数に Tonelli の定理(定理 3.3[直積測度と Fubini–Tonelli の定理])を使うと、x↦∫1S(x,⋅) dm2=m2(Sx)x\mapsto\int1_S(x,\cdot)\,dm_2=m_2(S_x) は可測で m3(S)=∫m2(Sx) dm1(x)m_3(S)=\int m_2(S_x)\,dm_1(x) です。[a,b][a,b] の外では被積分関数が 00 なので、∫R=∫[a,b]\int_{\mathbb R}=\int_{[a,b]} です。リーマン可積分な関数のルベーグ積分とリーマン積分は一致します(定理 8.1[ルベーグ積分の定義と収束定理])。

これは、断面積がすべての xx で等しい 2 つの立体は体積が等しい、という Cavalieri の原理の積分版です。

円板の面積から出発して、回転体の体積を求めます。

補題 3.2(円板のルベーグ測度)✓

r≥0r\ge0 ならば、R2\mathbb R^2 の閉円板 {(y,z):y2+z2≤r2}\{(y,z):y^2+z^2\le r^2\} のルベーグ測度は πr2\pi r^2 である。

証明(補題 3.2)

r=0r=0 は 1 点で測度 00 です。r>0r>0 とします。m2=m1×m1m_2=m_1\times m_1 なので、Tonelli の定理(定理 3.3[直積測度と Fubini–Tonelli の定理])から、閉円板 DrD_r について m2(Dr)=∫m1({z:(y,z)∈Dr})dm1(y)m_2(D_r)=\int m_1\bigl(\{z:(y,z)\in D_r\}\bigr)dm_1(y) です。∣y∣≤r|y|\le r のとき断面は区間 [−r2−y2,r2−y2][-\sqrt{r^2-y^2},\sqrt{r^2-y^2}] で長さ 2r2−y22\sqrt{r^2-y^2}、∣y∣>r|y|>r のとき空集合なので、m2(Dr)=∫−rr2r2−y2 dm1(y)m_2(D_r)=\int_{-r}^r2\sqrt{r^2-y^2}\,dm_1(y) です。被積分関数は連続なので、これはリーマン積分に等しく(定理 8.1[ルベーグ積分の定義と収束定理])、補題 2.1 から 2⋅πr22=πr22\cdot\frac{\pi r^2}2=\pi r^2 です。

定理 3.3(回転体の体積)✓

f:[a,b]→[0,∞)f:[a,b]\to[0,\infty) を連続とし、xx 軸のまわりに曲線 y=f(x)y=f(x) を回転してできる立体

S={(x,y,z)∈R3: a≤x≤b, y2+z2≤f(x)2}S=\{(x,y,z)\in\mathbb R^3:\ a\le x\le b,\ y^2+z^2\le f(x)^2\}

を考える。このとき SS の体積は m3(S)=π∫abf(x)2 dx\displaystyle m_3(S)=\pi\int_a^bf(x)^2\,dx である。

証明(定理 3.3)

SS は閉集合(連続関数 (x,y,z)↦y2+z2−f(x)2(x,y,z)\mapsto y^2+z^2-f(x)^2 の ≤0\le0 の部分と閉区間の積)で有界、したがってボレル集合です。断面 SxS_x は a≤x≤ba\le x\le b で半径 f(x)f(x) の閉円板、それ以外で空集合なので、補題 3.2 より m2(Sx)=πf(x)2m_2(S_x)=\pi f(x)^2(a≤x≤ba\le x\le b)です。これは連続なので、定理 3.1 から m3(S)=∫abπf(x)2dxm_3(S)=\int_a^b\pi f(x)^2dx です。

例 3.4(球と円錐の体積)

球。 f(x)=r2−x2f(x)=\sqrt{r^2-x^2}(−r≤x≤r-r\le x\le r)の回転体は半径 rr の球で、体積は π∫−rr(r2−x2)dx=π[r2x−x33]−rr=π(2r3−2r33)=43πr3\pi\int_{-r}^r(r^2-x^2)dx=\pi\left[r^2x-\frac{x^3}3\right]_{-r}^r=\pi\left(2r^3-\frac{2r^3}3\right)=\dfrac43\pi r^3 です。

円錐。 f(x)=rhxf(x)=\dfrac rhx(0≤x≤h0\le x\le h)の回転体は、底面の半径 rr、高さ hh の円錐で、体積は π∫0hr2h2x2dx=πr2h2⋅h33=13πr2h\pi\int_0^h\dfrac{r^2}{h^2}x^2dx=\dfrac{\pi r^2}{h^2}\cdot\dfrac{h^3}3=\dfrac13\pi r^2h です。

3.3. 座標軸でない直線のまわりの回転体

Section titled “3.3. 座標軸でない直線のまわりの回転体”

回転軸が xx 軸でなく直線 y=cy=c で、しかも図形と軸の間にすき間があると、立体の断面は円板ではなくドーナツ状(輪)になります。輪の面積は「外側の円板の面積 −- 内側の円板の面積」で求まります。証明の後半は、内側のくりぬく開円板の面積も πρ12\pi\rho_1^2 であることを、小さい閉円板で内側から近づいて確かめている部分です。

定理 3.5(直線 y = c のまわりの回転体の体積)✓

f,g:[a,b]→Rf,g:[a,b]\to\mathbb R を連続とし、c≤g≤fc\le g\le f とする。直線 y=cy=c のまわりに、g(x)≤y≤f(x)g(x)\le y\le f(x)(a≤x≤ba\le x\le b)の部分を回転してできる立体

S={(x,y,z): a≤x≤b, (g(x)−c)2≤(y−c)2+z2≤(f(x)−c)2}S=\{(x,y,z):\ a\le x\le b,\ (g(x)-c)^2\le(y-c)^2+z^2\le(f(x)-c)^2\}

の体積は

m3(S)=π∫ab[(f(x)−c)2−(g(x)−c)2]dxm_3(S)=\pi\int_a^b\Bigl[\bigl(f(x)-c\bigr)^2-\bigl(g(x)-c\bigr)^2\Bigr]dx

である。

証明(定理 3.5)

SS は閉集合で有界、したがってボレル集合です。断面 SxS_x(a≤x≤ba\le x\le b)は、点 (c,0)(c,0) を中心とする、半径 ρ2=f(x)−c\rho_2=f(x)-c の閉円板から半径 ρ1=g(x)−c\rho_1=g(x)-c の開円板を除いたものです。ルベーグ測度は並進で不変で(補題 3.1[ℝ^d の変数変換公式と極座標])、閉円板の測度は 補題 3.2 から πρ22\pi\rho_2^2 です。ρ1=0\rho_1=0 なら開円板は空集合で測度 0=πρ120=\pi\rho_1^2 です。ρ1>0\rho_1>0 なら、開円板は閉円板の増加列 {∣⋅∣≤ρ1−1n}\{|\cdot|\le\rho_1-\frac1n\}(n>1/ρ1n>1/\rho_1)の和集合なので、測度の下からの連続性(命題 2.3[測度空間と Carathéodory の拡張定理])から測度は πρ12\pi\rho_1^2 です。したがって m2(Sx)=πρ22−πρ12m_2(S_x)=\pi\rho_2^2-\pi\rho_1^2 で、定理 3.1 から m3(S)=π∫ab(ρ22−ρ12)dxm_3(S)=\pi\int_a^b(\rho_2^2-\rho_1^2)dx です。

例 3.6(トーラスの体積)

円板 x2+(y−R)2≤r2x^2+(y-R)^2\le r^2(R≥r>0R\ge r>0)を xx 軸のまわりに回転すると、トーラス(ドーナツ型)ができます。f(x)=R+r2−x2f(x)=R+\sqrt{r^2-x^2}、g(x)=R−r2−x2g(x)=R-\sqrt{r^2-x^2}、c=0c=0(g≥R−r≥0g\ge R-r\ge0)として 定理 3.5 を使うと、f2−g2=4Rr2−x2f^2-g^2=4R\sqrt{r^2-x^2} なので、体積は π∫−rr4Rr2−x2 dx=4πR⋅πr22=2π2Rr2\pi\int_{-r}^r4R\sqrt{r^2-x^2}\,dx=4\pi R\cdot\dfrac{\pi r^2}2=2\pi^2Rr^2(補題 2.1)です。「断面の円板の面積 πr2\pi r^2 に、中心の描く円周の長さ 2πR2\pi R を掛けたもの」と読めます。

4. 曲線の長さと回転体の表面積

Section titled “4. 曲線の長さと回転体の表面積”

曲線の長さは、前の記事で ∫x′(t)2+y′(t)2 dt\int\sqrt{x'(t)^2+y'(t)^2}\,dt と定義しました(定義 8.1[指数・対数・三角関数をきちんと定義する])。この定義から、高校で使う 3 つの形の公式が出ます。

定理 4.1(曲線の長さの公式)✓

  1. f:[a,b]→Rf:[a,b]\to\mathbb R が C1C^1 級ならば、グラフ y=f(x)y=f(x) の長さは ∫ab1+f′(x)2 dx\displaystyle\int_a^b\sqrt{1+f'(x)^2}\,dx。
  2. x(t),y(t)x(t),y(t) が [α,β][\alpha,\beta] で C1C^1 級ならば、曲線 (x(t),y(t))(x(t),y(t)) の長さは ∫αβx′(t)2+y′(t)2 dt\displaystyle\int_\alpha^\beta\sqrt{x'(t)^2+y'(t)^2}\,dt(定義)。
  3. ρ:[α,β]→R\rho:[\alpha,\beta]\to\mathbb R が C1C^1 級ならば、極座標の曲線 r=ρ(θ)r=\rho(\theta)、すなわち (ρ(θ)cos⁡θ,ρ(θ)sin⁡θ)(\rho(\theta)\cos\theta,\rho(\theta)\sin\theta) の長さは ∫αβρ(θ)2+ρ′(θ)2 dθ\displaystyle\int_\alpha^\beta\sqrt{\rho(\theta)^2+\rho'(\theta)^2}\,d\theta。
証明(定理 4.1)

(2) は定義です。(1) は曲線 γ(x)=(x,f(x))\gamma(x)=(x,f(x))(a≤x≤ba\le x\le b)に定義を使うと、γ′=(1,f′)\gamma'=(1,f') で 1+f′2\sqrt{1+f'^2} です。(3) は γ(θ)=(ρcos⁡θ,ρsin⁡θ)\gamma(\theta)=(\rho\cos\theta,\rho\sin\theta) で、積の法則と 定理 6.2[指数・対数・三角関数をきちんと定義する] (3) から γ′=(ρ′cos⁡θ−ρsin⁡θ, ρ′sin⁡θ+ρcos⁡θ)\gamma'=(\rho'\cos\theta-\rho\sin\theta,\ \rho'\sin\theta+\rho\cos\theta)、∣γ′∣2=ρ′2(cos⁡2θ+sin⁡2θ)+ρ2(sin⁡2θ+cos⁡2θ)+2ρ′ρ(−cos⁡θsin⁡θ+sin⁡θcos⁡θ)=ρ′2+ρ2|\gamma'|^2=\rho'^2(\cos^2\theta+\sin^2\theta)+\rho^2(\sin^2\theta+\cos^2\theta)+2\rho'\rho(-\cos\theta\sin\theta+\sin\theta\cos\theta)=\rho'^2+\rho^2(定理 6.5[指数・対数・三角関数をきちんと定義する])です。

例 4.2(サイクロイド・懸垂線・カージオイドの長さ)

サイクロイドの 1 つのアーチ。 x=t−sin⁡tx=t-\sin t、y=1−cos⁡ty=1-\cos t(0≤t≤2π0\le t\le2\pi)。x′2+y′2=(1−cos⁡t)2+sin⁡2t=2−2cos⁡t=4sin⁡2t2x'^2+y'^2=(1-\cos t)^2+\sin^2t=2-2\cos t=4\sin^2\frac t2(半角の公式)で、0≤t≤2π0\le t\le2\pi で sin⁡t2≥0\sin\frac t2\ge0 なので x′2+y′2=2sin⁡t2\sqrt{x'^2+y'^2}=2\sin\frac t2、長さは ∫02π2sin⁡t2 dt=[−4cos⁡t2]02π=8\int_0^{2\pi}2\sin\frac t2\,dt=\left[-4\cos\frac t2\right]_0^{2\pi}=8 です。

懸垂線。 y=cosh⁡xy=\cosh x(定義 11.1[指数・対数・三角関数をきちんと定義する])の 0≤x≤a0\le x\le a の長さは、1+sinh⁡2x=cosh⁡2x1+\sinh^2x=\cosh^2x(命題 11.2[指数・対数・三角関数をきちんと定義する] (1)(3))から ∫0acosh⁡x dx=sinh⁡a\int_0^a\cosh x\,dx=\sinh a です。

カージオイド。 ρ=1+cos⁡θ\rho=1+\cos\theta(0≤θ≤2π0\le\theta\le2\pi)。ρ2+ρ′2=(1+cos⁡θ)2+sin⁡2θ=2+2cos⁡θ=4cos⁡2θ2\rho^2+\rho'^2=(1+\cos\theta)^2+\sin^2\theta=2+2\cos\theta=4\cos^2\frac\theta2 で、長さは ∫02π2∣cos⁡θ2∣dθ\int_0^{2\pi}2\left|\cos\frac\theta2\right|d\theta。[0,π][0,\pi] で cos⁡θ2≥0\cos\frac\theta2\ge0、[π,2π][\pi,2\pi] で ≤0\le0 なので [4sin⁡θ2]0π−[4sin⁡θ2]π2π=4+4=8\left[4\sin\frac\theta2\right]_0^\pi-\left[4\sin\frac\theta2\right]_\pi^{2\pi}=4+4=8 です。

曲面の面積は、重積分を使って厳密に定義できますが、それには曲面の理論が必要です(ベクトル解析の記事)。ここでは、細い帯(円錐台)を足し合わせる考え方に従った式を定義とします。

定義 4.3(回転体の表面積)↗

f:[a,b]→[0,∞)f:[a,b]\to[0,\infty) を C1C^1 級とする。xx 軸のまわりに曲線 y=f(x)y=f(x) を回転してできる曲面の面積を

A=2π∫abf(x)1+f′(x)2 dxA=2\pi\int_a^bf(x)\sqrt{1+f'(x)^2}\,dx

と定める。[a,∞)[a,\infty) 上の関数に対しては、lim⁡R→∞2π∫aRf1+f′2 dx\displaystyle\lim_{R\to\infty}2\pi\int_a^Rf\sqrt{1+f'^2}\,dx(広義積分。定義 2.1[広義積分・パラメータ積分とガンマ関数])で定める。

幅 Δx\Delta x の細い帯は、半径 f(x)f(x) の円周(長さ 2πf(x)2\pi f(x))に、斜めの長さ 1+f′2 Δx\sqrt{1+f'^2}\,\Delta x を掛けたものと考える、というのがこの定義の動機です。

例 4.4(球帯の面積)

半径 rr の球面を、x=ux=u と x=vx=v(−r<u<v<r-r<u<v<r)で挟んだ部分(球帯)は、f(x)=r2−x2f(x)=\sqrt{r^2-x^2} の回転面です。f′(x)=−xr2−x2f'(x)=\dfrac{-x}{\sqrt{r^2-x^2}} から 1+f′2=r2r2−x21+f'^2=\dfrac{r^2}{r^2-x^2} なので、f1+f′2=rf\sqrt{1+f'^2}=r で、面積は 2π∫uvr dx=2πr(v−u)2\pi\int_u^vr\,dx=2\pi r(v-u) です。球帯の面積は、高さ v−uv-u に比例し、半径と帯の位置(u,vu,v の取り方)には依存しない、という Archimedes の結果です。u=−ru=-r、v=rv=r とすると、球全体の表面積 4πr24\pi r^2 になります(端点では f′f' が発散するので、極限として)。

定理 4.5(Gabriel のラッパ:体積は有限、表面積は無限)✓

x≥1x\ge1 で f(x)=1xf(x)=\dfrac1x とし、S={(x,y,z):x≥1, y2+z2≤f(x)2}S=\{(x,y,z):x\ge1,\ y^2+z^2\le f(x)^2\} とする。

  1. SS の体積は m3(S)=πm_3(S)=\pi(有限)である。
  2. SS の表面積 2π∫1Rf1+f′2 dx2\pi\displaystyle\int_1^Rf\sqrt{1+f'^2}\,dx は R→∞R\to\infty で ∞\infty に発散する。
証明(定理 4.5)

(1) Sn=S∩{x≤n}S_n=S\cap\{x\le n\}(n=1,2,…n=1,2,\dots)は増加する閉集合の列で、S=⋃SnS=\bigcup S_n です。定理 3.3 から m3(Sn)=π∫1nx−2dx=π[−1x]1n=π(1−1n)m_3(S_n)=\pi\int_1^nx^{-2}dx=\pi\left[-\frac1x\right]_1^n=\pi\left(1-\frac1n\right) です。測度の下からの連続性(命題 2.3[測度空間と Carathéodory の拡張定理])から m3(S)=lim⁡m3(Sn)=πm_3(S)=\lim m_3(S_n)=\pi です。

(2) f′(x)=−x−2f'(x)=-x^{-2}、f1+f′2=1x1+x−4≥1xf\sqrt{1+f'^2}=\dfrac1x\sqrt{1+x^{-4}}\ge\dfrac1x なので、2π∫1Rf1+f′2dx≥2π∫1Rdxx=2πlog⁡R2\pi\int_1^Rf\sqrt{1+f'^2}dx\ge2\pi\int_1^R\dfrac{dx}x=2\pi\log R です(命題 2.1[積分法])。log⁡R→∞\log R\to\infty(exp⁡\exp の値域が (0,∞)(0,\infty)。定理 3.3[指数・対数・三角関数をきちんと定義する] (4))ので、発散します。

「ラッパの中をペンキで満たすには体積 π\pi のペンキで足りるが、外側を塗るにはペンキが足りない」というパラドックスとして有名です。矛盾はなく、体積と表面積は別の量で、一方が有限でも他方が無限になりうる、ということです。

微分方程式 y′=f(x)g(y)y'=f(x)g(y) は、「dyg(y)=f(x)dx\dfrac{dy}{g(y)}=f(x)dx と書いて両辺を積分する」という手順で解きます。この手順が正しい理由を確かめます。

命題 5.1(変数分離形の解法)✓

I,JI,J を開区間、f:I→Rf:I\to\mathbb R、g:J→Rg:J\to\mathbb R を連続とし、g(y0)≠0g(y_0)\ne0 とする。φ\varphi が区間 I1∋x0I_1\ni x_0 上の微分可能な解(φ′=f(x)g(φ)\varphi'=f(x)g(\varphi)、φ(x0)=y0\varphi(x_0)=y_0)で、I1I_1 上で g(φ(x))≠0g(\varphi(x))\ne0 ならば

∫y0φ(x)dηg(η)=∫x0xf(s) ds(x∈I1)\int_{y_0}^{\varphi(x)}\frac{d\eta}{g(\eta)}=\int_{x_0}^xf(s)\,ds\qquad(x\in I_1)

が成り立つ。逆に、この等式を満たす連続関数 φ\varphi は解である。解の存在と一意性は、大学の常微分方程式の記事で証明されている(定理 3.1[常微分方程式の初等解法])。

証明(命題 5.1)

G(y)=∫y0ydηg(η)G(y)=\int_{y_0}^y\frac{d\eta}{g(\eta)}(g≠0g\ne0 の範囲で連続)とおくと、基本定理(定理 5.2[積分の基本定理と定積分])から G′(y)=1/g(y)G'(y)=1/g(y) です。連鎖律から ddxG(φ(x))=φ′(x)g(φ(x))=f(x)\dfrac d{dx}G(\varphi(x))=\dfrac{\varphi'(x)}{g(\varphi(x))}=f(x) で、これは F(x)=∫x0xf(s)dsF(x)=\int_{x_0}^xf(s)ds の導関数に等しいので、G∘φ−FG\circ\varphi-F は定数(系 3.4[平均値の定理とテイラーの定理] (1))、x=x0x=x_0 で 00 なので G(φ(x))=F(x)G(\varphi(x))=F(x) です。逆に G(φ(x))=F(x)G(\varphi(x))=F(x) ならば、GG は g≠0g\ne0 の範囲で狭義単調(導関数 1/g1/g が定符号)なので φ=G−1∘F\varphi=G^{-1}\circ F で、逆関数の微分(命題 8.1[導関数の定義と基本的な微分法])から φ′=1/G′(φ)⋅F′=g(φ)f\varphi'=1/G'(\varphi)\cdot F'=g(\varphi)f です。

例 5.2(y' = ky と y' = y²)

y′=kyy'=ky(kk は定数、y(0)=y0≠0y(0)=y_0\ne0):f=kf=k、g(y)=yg(y)=y(y≠0y\ne0)。∫y0ydηη=log⁡∣yy0∣=kx\int_{y_0}^y\frac{d\eta}\eta=\log\left|\frac y{y_0}\right|=kx なので y=y0ekxy=y_0e^{kx} です(命題 2.1[微分法とその応用])。

y′=y2y'=y^2(y(0)=1y(0)=1):∫1ydηη2=1−1y=x\int_1^y\frac{d\eta}{\eta^2}=1-\frac1y=x から y=11−xy=\dfrac1{1-x}(x<1x<1)です。解は x→1−x\to1^- で ∞\infty に発散するので、すべての xx に延長できません(有限時間での爆発)。

命題 5.3(1 階線形方程式の解法)✓

II を開区間、p,q:I→Rp,q:I\to\mathbb R を連続、x0∈Ix_0\in I とし、P(x)=∫x0xp(s)dsP(x)=\int_{x_0}^xp(s)ds とおく。y′+p(x)y=q(x)y'+p(x)y=q(x)、y(x0)=y0y(x_0)=y_0 の(微分可能な)解は II 全体でただ 1 つで、

y(x)=e−P(x)(y0+∫x0xeP(s)q(s) ds)y(x)=e^{-P(x)}\left(y_0+\int_{x_0}^xe^{P(s)}q(s)\,ds\right)

で与えられる。

証明(命題 5.3)

yy が解ならば、P′=pP'=p(基本定理)と連鎖律・積の法則から (ePy)′=eP(y′+py)=ePq\bigl(e^{P}y\bigr)'=e^{P}(y'+py)=e^{P}q です。両辺を x0x_0 から xx まで積分し(基本定理第二部。ePqe^Pq は連続)、eP(x0)y(x0)=y0e^{P(x_0)}y(x_0)=y_0 を使うと eP(x)y(x)=y0+∫x0xeP(s)q(s)dse^{P(x)}y(x)=y_0+\int_{x_0}^xe^{P(s)}q(s)ds で、これが解の形と一意性です。逆に、この式で定めた yy を微分すると y′=−py+e−PePq=−py+qy'=-py+e^{-P}e^Pq=-py+q で、解です。この結果は大学の記事(定理 4.2[常微分方程式の初等解法])の特別な場合です。

例 5.4(y' + 2y =e(−x)= e^{(−x)})

p=2p=2、P=2xP=2x、(e2xy)′=e2xe−x=ex\left(e^{2x}y\right)'=e^{2x}e^{-x}=e^x から e2xy=ex+Ce^{2x}y=e^x+C、y=e−x+Ce−2xy=e^{-x}+Ce^{-2x} です。y(0)=0y(0)=0 なら C=−1C=-1 で y=e−x−e−2xy=e^{-x}-e^{-2x} です。

個体数 y(t)y(t) の増え方を、「個体数が少ないうちは指数的に増え、環境の限界 KK に近づくと増加が鈍る」としてモデル化したのが、ロジスティック方程式

y′=ry(1−yK)(r>0, K>0)y'=ry\left(1-\frac yK\right)\qquad(r>0,\ K>0)

です。

ここでは、解の式を具体的に書き下し、それが解であることを確かめます。その解が唯一であること(ほかに別の解がないこと)は、大学の記事の一意性の定理を使って示します。

定理 5.5(ロジスティック方程式の解)✓

0<y0<K0<y_0<K とし、C=K−y0y0>0C=\dfrac{K-y_0}{y_0}>0 とおく。初期値問題 y′=ry(1−y/K)y'=ry(1-y/K)、y(0)=y0y(0)=y_0 の解は、R\mathbb R 全体で定義された

y(t)=K1+Ce−rty(t)=\frac K{1+Ce^{-rt}}

であり、これが(定義域が 00 を含む区間であるような)唯一の解である。この解は次を満たす。

  1. 0<y(t)<K0<y(t)<K で、yy は狭義単調増加。t→∞t\to\infty で y→Ky\to K、t→−∞t\to-\infty で y→0y\to0。
  2. yy は y=K/2y=K/2 となる時刻 t∗=1rlog⁡Ct^*=\frac1r\log C でちょうど 1 回だけ凹凸が入れ替わる(変曲点)。
証明(定理 5.5)

解であること。 y=K(1+Ce−rt)−1y=K(1+Ce^{-rt})^{-1} を微分すると y′=rKCe−rt(1+Ce−rt)2y'=\dfrac{rKCe^{-rt}}{(1+Ce^{-rt})^2} で、一方 ry(1−yK)=rK1+Ce−rt⋅Ce−rt1+Ce−rtry\left(1-\dfrac yK\right)=\dfrac{rK}{1+Ce^{-rt}}\cdot\dfrac{Ce^{-rt}}{1+Ce^{-rt}} で等しくなります。y(0)=K1+C=y0y(0)=\dfrac K{1+C}=y_0 です。

一意性。 F(y)=ry(1−y/K)F(y)=ry(1-y/K) は yy について C1C^1 級なので局所 Lipschitz で(命題 2.4[解の存在と一意性])、2 つの解が t=0t=0 で一致すれば共通の定義域で一致します(定理 3.2[解の存在と一意性])。

(1) Ce−rt>0Ce^{-rt}>0 なので 0<y<K0<y<K で、y′=ry(1−y/K)>0y'=ry(1-y/K)>0 から狭義単調増加です(系 3.4[平均値の定理とテイラーの定理] (3))。t→∞t\to\infty で e−rt→0e^{-rt}\to0(定理 3.3[指数・対数・三角関数をきちんと定義する] (4))、t→−∞t\to-\infty で e−rt→∞e^{-rt}\to\infty なので、それぞれ y→Ky\to K、y→0y\to0 です。

(2) y′′=ry′(1−yK)−rKyy′=ry′(1−2yK)y''=ry'\left(1-\frac yK\right)-\frac rKyy'=ry'\left(1-\frac{2y}K\right) で、y′>0y'>0 なので y′′y'' の符号は 1−2yK1-\frac{2y}K の符号です。yy は連続で狭義単調増加、値域は (0,K)(0,K) なので、y=K/2y=K/2 となる時刻がちょうど 1 つあり(中間値の定理)、その前後で y′′y'' の符号は ++ から −- に変わります。その時刻は K1+Ce−rt=K2\frac K{1+Ce^{-rt}}=\frac K2、すなわち Ce−rt=1Ce^{-rt}=1、t=1rlog⁡Ct=\frac1r\log C です。

増加の速さ y′y' は、y=K/2y=K/2 のときに最大です(y′=ry(1−y/K)y'=ry(1-y/K) は y=K/2y=K/2 で最大値 rK/4rK/4)。この「S 字曲線」は、人口・感染者数・普及率など、さまざまな現象のモデルになります。

2 つの未知関数 x(t),y(t)x(t),y(t) が互いに絡み合う連立方程式 x′=ax+byx'=ax+by、y′=cx+dyy'=cx+dy は、行列とベクトルで u′=Au\boldsymbol u'=A\boldsymbol u(A=(abcd)A=\begin{pmatrix}a&b\\c&d\end{pmatrix}、u=(xy)\boldsymbol u=\begin{pmatrix}x\\y\end{pmatrix})と書けます。

解き方の方針は、1 つの未知関数の方程式 y′=kyy'=ky の解 ekte^{kt} を、行列に拡張することです。行列 AA に対する行列指数関数 etAe^{tA} は、指数関数の級数 ∑ktkk!Ak\sum_k\frac{t^k}{k!}A^k で定められ、AA の固有ベクトルの方向では単なる eλte^{\lambda t} 倍として働きます。

命題 5.6(固有ベクトルによる連立線形方程式の解法)✓

AA を 22 次の実正方行列とし、Av1=λ1v1A\boldsymbol v_1=\lambda_1\boldsymbol v_1、Av2=λ2v2A\boldsymbol v_2=\lambda_2\boldsymbol v_2(λ1,λ2\lambda_1,\lambda_2 は実数、v1,v2∈R2\boldsymbol v_1,\boldsymbol v_2\in\mathbb R^2 は 11 次独立)とする。初期値問題 u′=Au\boldsymbol u'=A\boldsymbol u、u(0)=u0\boldsymbol u(0)=\boldsymbol u_0 の解は、u0=c1v1+c2v2\boldsymbol u_0=c_1\boldsymbol v_1+c_2\boldsymbol v_2 と書いて

u(t)=c1eλ1tv1+c2eλ2tv2\boldsymbol u(t)=c_1e^{\lambda_1t}\boldsymbol v_1+c_2e^{\lambda_2t}\boldsymbol v_2

であり、これが唯一の解である。

証明(命題 5.6)

v1,v2\boldsymbol v_1,\boldsymbol v_2 が張る部分空間は次元 22 で、dim⁡R2=2\dim\mathbb R^2=2 なので R2\mathbb R^2 全体です(命題 5.7[ベクトル空間と線形変換] (3))。したがって 2 本は R2\mathbb R^2 の基底で、c1,c2c_1,c_2 が存在します。大学の記事の定数係数線形系の解の公式(定理 4.3[線形微分方程式系])から、解は u(t)=etAu0\boldsymbol u(t)=e^{tA}\boldsymbol u_0 で唯一です(行列指数関数は 定義 4.1[線形微分方程式系])。固有ベクトル v\boldsymbol v について Akv=λkvA^k\boldsymbol v=\lambda^k\boldsymbol v なので etAv=∑ktkk!Akv=(∑k(λt)kk!)v=eλtve^{tA}\boldsymbol v=\sum_k\frac{t^k}{k!}A^k\boldsymbol v=\left(\sum_k\frac{(\lambda t)^k}{k!}\right)\boldsymbol v=e^{\lambda t}\boldsymbol v です。線形性から etAu0=c1eλ1tv1+c2eλ2tv2e^{tA}\boldsymbol u_0=c_1e^{\lambda_1t}\boldsymbol v_1+c_2e^{\lambda_2t}\boldsymbol v_2 です。

例 5.7(x' = x + 2y、y' = 2x + y)

A=(1221)A=\begin{pmatrix}1&2\\2&1\end{pmatrix} の固有値は 33(固有ベクトル v1=(1,1)\boldsymbol v_1=(1,1))と −1-1(v2=(1,−1)\boldsymbol v_2=(1,-1))です。初期値 (x(0),y(0))=(2,0)=v1+v2(x(0),y(0))=(2,0)=\boldsymbol v_1+\boldsymbol v_2 なら、x(t)=e3t+e−tx(t)=e^{3t}+e^{-t}、y(t)=e3t−e−ty(t)=e^{3t}-e^{-t} です。たとえば x′=3e3t−e−tx'=3e^{3t}-e^{-t} と x+2y=3e3t−e−tx+2y=3e^{3t}-e^{-t} が確かに一致します。

y′=f(t,y)y'=f(t,y) の解を、刻み幅 hh で近似する最も簡単な方法は、yk+1=yk+hf(tk,yk)y_{k+1}=y_k+hf(t_k,y_k) と進める Euler 法です。

例 5.8(Euler 法で e を求める)

y′=yy'=y、y(0)=1y(0)=1 の厳密解は ete^t です(定理 12.1[指数・対数・三角関数をきちんと定義する])。t=1t=1 まで nn 歩(h=1/nh=1/n)で Euler 法を使うと、yk+1=yk(1+h)y_{k+1}=y_k(1+h) から yn=(1+1/n)ny_n=(1+1/n)^n になります。これは ee に収束する数列そのもの(定理 4.1[数列と関数の極限])で、刻み幅を 00 に近づけると近似が厳密解に収束することを、この例では e=exp⁡1e=\exp1 の収束(定理 5.2[指数・対数・三角関数をきちんと定義する])として確かめられます。n=10n=10 で 1.110=2.5937⋯1.1^{10}=2.5937\cdots、n=100n=100 で 2.7048⋯2.7048\cdots です。

  • 重積分と体積・面積。 この記事で定義に使った重積分(面積)は 重積分、ルベーグ測度(体積)は 積測度と Fubini の定理 で扱われます。3 次元の回転体の体積は、円柱座標での 3 重積分として一般化されます。
  • 曲面の面積とベクトル解析。 回転面の面積の式(定義 4.3)は、曲面の面積要素の特別な場合です(ベクトル解析)。球帯の面積 2πrh2\pi rh は、微分幾何学の Gauss–Bonnet の定理や球面幾何につながります。
  • 常微分方程式。 解の存在と一意性(Picard–Lindelöf の定理)、線形系・安定性・定数変化法は 常微分方程式の初等的解法、解の存在と一意性、線形系 です。ロジスティック方程式は、1 次元の力学系(不動点 00 が不安定、KK が安定)の最も簡単な例です。
  • 力学と物理。 運動方程式 mx¨=Fm\ddot x=F は 2 階の微分方程式で、ばねの振動は y′′=−ω2yy''=-\omega^2y(定理 12.1[指数・対数・三角関数をきちんと定義する])の解、減衰を含む場合は定数係数の 2 階線形方程式になります。
  • 次の学び。 確率の記事 確率の発展 では、Buffon の針の問題で、この記事の積分(面積)を使います。

演習 7.1易

放物線 y=x2y=x^2 と直線 y=x+2y=x+2 で囲まれた図形の面積を求めよ。

解答

x2=x+2x^2=x+2 から x2−x−2=(x−2)(x+1)=0x^2-x-2=(x-2)(x+1)=0、交点は x=−1,2x=-1,2 で、[−1,2][-1,2] で x+2≥x2x+2\ge x^2 である。定理 2.2 から面積は ∫−12(x+2−x2)dx=∫−12(−(x+1)(x−2))dx=(2−(−1))36=276=92\int_{-1}^2(x+2-x^2)dx=\int_{-1}^2(-(x+1)(x-2))dx=\dfrac{(2-(-1))^3}6=\dfrac{27}6=\dfrac92(1/6 公式。定理 7.1[積分法])である。

演習 7.2標準

放物線 y=x2y=x^2(0≤x≤10\le x\le1)と直線 y=1y=1、yy 軸で囲まれた図形を yy 軸のまわりに回転してできる立体の体積を求めよ。

解答

yy 軸のまわりの回転は、座標を入れ替えて xx 軸のまわりの回転と同じ形になる(定理 3.3 を、独立変数を yy、半径を y\sqrt y として使う)。0≤y≤10\le y\le1 で半径 x=yx=\sqrt y の円板が断面なので、体積は π∫01(y)2dy=π∫01y dy=π2\pi\int_0^1(\sqrt y)^2dy=\pi\int_0^1y\,dy=\dfrac\pi2 である。

演習 7.3標準

ロジスティック方程式 y′=y(1−y/10)y'=y(1-y/10)(r=1r=1、K=10K=10)の解で y(0)=1y(0)=1 のものについて、個体数が最も速く増える時刻 t∗t^* とそのときの増加速度を求めよ。

解答

C=10−11=9C=\frac{10-1}1=9 で、定理 5.5 から y=101+9e−ty=\frac{10}{1+9e^{-t}}。最も速く増えるのは y=K/2=5y=K/2=5 となる時刻で、t∗=log⁡9=2log⁡3≈2.20t^*=\log9=2\log3\approx2.20 である。そのときの速度は y′=y(1−y/10)=5⋅12=2.5y'=y(1-y/10)=5\cdot\frac12=2.5 である。

  • 杉浦光夫『解析入門 I』東京大学出版会、1980 — 積分の応用(面積・体積・曲線の長さ)の節。
  • 高木貞治『解析概論』岩波書店 — 面積・曲線の長さの章。
  • V. I. Arnold, Ordinary Differential Equations, Springer, 1992 — 1 階方程式・線形系の章(変数分離形・線形系)。
  • 柳田英二・栄伸一郎『常微分方程式論』朝倉書店 — 1 階方程式・線形系の章。

このテーマの 100 本ノック(100 問)

執筆: Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 2 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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