高校で覚えた「面積は積分で求める」「回転させた立体の体積は積分で求める」という公式は、なぜ正しいのでしょうか。そもそも、曲がった図形の「面積」や立体の「体積」は、何をもって決めるのでしょうか。この記事では、まず面積や体積の意味をはっきり決め、そこから高校の公式を順に導きます。最後に、微分方程式(変化の仕方から元の関数を求める問題)の基本的な解き方も確かめます。読み終えると、各公式がどの仮定の下で成り立つのかが分かります。
- 高校の積分の応用は、「面積は ∫(g−f)dx」「体積は ∫S(x)dx」「回転体の体積は π∫y2dx」といった公式として覚えます。ところが、そもそも「面積」「体積」とは何でしょうか。この記事では、面積を重積分(平面上の図形での積分。大学の記事)、体積をルベーグ測度(長さ・面積・体積を一般の集合に広げた「大きさ」)で定義し、公式はそれらの定理から導きます。
- 面積:2 曲線の間の面積、媒介変数表示された曲線の下の面積、極座標の面積 21∫ρ2dθ を証明します。
- 体積:断面積から体積を求める公式(Cavalieri の原理の積分版)と、回転体の体積 π∫f(x)2dx を証明します。座標軸でない直線のまわりの回転体(トーラス)や、体積が有限なのに表面積が無限になる Gabriel のラッパも扱います。
- 曲線の長さは前の記事で定義した積分(定義 8.1[指数・対数・三角関数をきちんと定義する])から、グラフ・媒介変数・極座標の 3 つの形の公式を導きます。
- 最後に、微分方程式の入口として、変数分離形・1 階線形方程式・ロジスティック方程式・連立線形方程式の解法を、解の一意性(大学の常微分方程式の記事)とあわせて証明します。
高校では、次の公式を「当たり前」のこととして使います。
- 曲線 y=f(x) と y=g(x) の間の面積は ∫ab(g(x)−f(x))dx。
- 回転体の体積は π∫abf(x)2dx。
- 曲線の長さは ∫ab1+f′(x)2dx。
区間 [a,b] を細かく刻んで、短冊や円板や折れ線で近似して足し合わせる、という「積分の考え方」で説明されます。それはその通りなのですが、「面積」という量自体の定義がはっきりしないまま、公式を使っているのです。たとえば、「曲線で囲まれた図形の面積」が、図形の置き方(平行移動・回転)によらないことは、公式からは見えません。
この記事では、定義を次のように決めます。
円の面積に関係する計算が何度も出てくるので、先に 1 つの補題にまとめておきます。
補題 2.1(半円の積分)✓
r>0 ならば ∫−rrr2−x2dx=2πr2 である。
証明(補題 2.1)
φ(θ)=rsinθ(−2π≤θ≤2π)とおくと、φ は C1 級で φ(±2π)=±r です(定理 7.3[指数・対数・三角関数をきちんと定義する])。f(x)=r2−x2 は [−r,r] で連続で、[−2π,2π] で cosθ≥0 なので f(φ(θ))=rcosθ です。置換積分(定理 6.1[積分の基本定理と定積分])より
∫−rrf(x)dx=∫−π/2π/2rcosθ⋅rcosθdθ=r2∫−π/2π/221+cos2θdθ=r2[2θ+4sin2θ]−π/2π/2=2πr2です(cos2θ=21+cos2θ は倍角の公式。系 4.2[三角関数]。sin(±π)=0)。
∎
定理 2.2(2 曲線の間の面積)✓
f,g:[a,b]→R を連続で f≤g とする。D={(x,y):a≤x≤b, f(x)≤y≤g(x)} は面積確定で、その面積は
∣D∣=∫ab(g(x)−f(x))dxである。
証明(定理 2.2)
縦線集合上の累次積分の定理(定理 5.6[重積分と累次積分])を、φ1=f、φ2=g、被積分関数 1 に使います。∣D∣=∬D1dxdy=∫ab(∫f(x)g(x)1dy)dx=∫ab(g−f)dx です。
∎
例 2.3(直線と放物線が囲む図形)
y=x と y=x2 の交点は x=0,1 で、[0,1] で x2≤x です。面積は ∫01(x−x2)dx=∫01x(1−x)dx=61(1/6 公式。定理 7.1[積分法])です。
円板(半径 r)の面積:D={x2+y2≤r2} は f(x)=−r2−x2、g(x)=r2−x2 に挟まれた縦線集合で、定理 2.2 と 補題 2.1 から ∣D∣=2∫−rrr2−x2dx=πr2 です。
定理 2.4(媒介変数表示された曲線の下の面積)✓
x,y:[α,β]→R とし、x は C1 級で狭義単調増加、y は連続で y≥0 とする。曲線 (x(t),y(t)) は、a=x(α)、b=x(β) として [a,b] 上の連続関数 Y=y∘x−1 のグラフであり、その下の図形 D={(x,v):a≤x≤b, 0≤v≤Y(x)} の面積は
∣D∣=∫αβy(t)x′(t)dtである。
証明(定理 2.4)
x は連続な狭義単調増加関数なので、[α,β] から [a,b] への全単射で、逆関数 x−1 も連続です(開区間 (α,β) では 命題 8.1[導関数の定義と基本的な微分法]。端点では、単調増加な x−1 の値域が区間 [α,β] なので、飛びがなく連続です)。したがって Y=y∘x−1 は連続で、曲線は Y のグラフです。定理 2.2 を f=0、g=Y に使うと ∣D∣=∫abY(x)dx で、置換積分(定理 6.1[積分の基本定理と定積分])を x=x(t) として使うと ∫abY(x)dx=∫αβY(x(t))x′(t)dt=∫αβy(t)x′(t)dt です。
∎
例 2.5(サイクロイドの 1 つのアーチの下の面積)
サイクロイド x=t−sint、y=1−cost(0≤t≤2π)は、車輪の縁の 1 点が描く曲線です。x′(t)=1−cost は、0<t<2π で正(cost=1 となるのは t∈2πZ だけ。命題 3.1[三角関数] (5))なので、x は [0,2π] で狭義単調増加です。定理 2.4 から面積は
∫02π(1−cost)2dt=∫02π(1−2cost+cos2t)dt=2π−0+π=3πです(∫02πcostdt=0、∫02πcos2tdt=[2t+4sin2t]02π=π)。サイクロイドを生む円の面積 π の 3 倍です。
原点からの距離 ρ(θ) が角度 θ ごとに決まる図形の面積を求めます。直感的には、角度を細かく刻んで、細い扇形を足し合わせる計算です。証明では、極座標への変数変換のヤコビ行列式(変換で面積が何倍に伸び縮みするかを表す量)が r になることを使います。途中の「変換が一対一であること」の確認が長いのは、変数変換公式を使うための条件を確かめているためです。
定理 2.6(極座標の面積)✓
α<β≤α+2π とし、ρ:[α,β]→[0,∞) を連続とする。
D={(rcosθ, rsinθ): α≤θ≤β, 0≤r≤ρ(θ)}は面積確定で、その面積は ∣D∣=21∫αβρ(θ)2dθ である。
証明(定理 2.6)
Φ(r,θ)=(rcosθ,rsinθ) は R2 上の C1 級写像で、ヤコビ行列式は detJΦ=cosθ⋅rcosθ−(−rsinθ)sinθ=r です(定理 6.2[指数・対数・三角関数をきちんと定義する] (3)、定理 6.5[指数・対数・三角関数をきちんと定義する])。E={(r,θ):α≤θ≤β, 0≤r≤ρ(θ)} は、θ を独立変数とみたとき連続関数 0≤ρ で挟まれた集合(横線集合)で、有界閉かつ面積確定です(定理 5.6[重積分と累次積分])。境界 Z=∂E は、連続関数のグラフ(補題 5.2[重積分と累次積分])と線分からなるので面積 0 です。
intE∖Z=intE の上で Φ が単射であることを示します。(r,θ),(r′,θ′)∈intE(r,r′>0、α<θ,θ′<β)で Φ(r,θ)=Φ(r′,θ′) とすると、成分の 2 乗和から r=r′ で、したがって cosθ=cosθ′、sinθ=sinθ′ です。このとき cos(θ′−θ)=cosθ′cosθ+sinθ′sinθ=1 なので、θ′−θ∈2πZ(命題 3.1[三角関数] (5))で、∣θ′−θ∣<β−α≤2π から θ=θ′ です。そこで変数変換公式(系 6.9[重積分と累次積分])が使えて、D=Φ(E) は面積確定で
∣D∣=∬Erdrdθ=∫αβ(∫0ρ(θ)rdr)dθ=∫αβ2ρ(θ)2dθです(累次積分は 定理 5.6[重積分と累次積分] の横線集合の形による)。
∎
例 2.7(カージオイドの面積)
ρ(θ)=1+cosθ(0≤θ≤2π。ρ≥0)が囲む図形の面積は、定理 2.6 から 21∫02π(1+cosθ)2dθ=21∫02π(1+2cosθ+cos2θ)dθ=21(2π+0+π)=23π です。ρ(θ)=a(定数)なら 21∫02πa2dθ=πa2 で、円板の面積の公式に一致します。
空間の図形 S⊆R3 の体積を、ルベーグ測度 m3 で定めます。R3=R×R2 とみて、x を固定したときの断面 Sx={(y,z):(x,y,z)∈S} の面積(R2 のルベーグ測度 m2)を x で積分すると、体積になります。立体をパンのように薄く切って、各断面の面積を足し合わせるイメージです。証明は、3 次元のルベーグ測度が 1 次元と 2 次元の測度の積であることと、Tonelli の定理(積の測度を、片方ずつ順に積分して求める定理)を指示関数に使うだけです。
定理 3.1(断面積による体積)✓
S⊆R3 をボレル集合とする。x↦m2(Sx) は可測で
m3(S)=∫Rm2(Sx)dm1(x)が成り立つ。x↦m2(Sx) が [a,b] の外で 0 で、[a,b] 上で連続(あるいはリーマン可積分)ならば、右辺は ∫abm2(Sx)dx(リーマン積分)に等しい。
証明(定理 3.1)
ルベーグ測度の定義(定義 2.1[ℝ^d の変数変換公式と極座標])から m3=m1×m2 です。S の指示関数に Tonelli の定理(定理 3.3[直積測度と Fubini–Tonelli の定理])を使うと、x↦∫1S(x,⋅)dm2=m2(Sx) は可測で m3(S)=∫m2(Sx)dm1(x) です。[a,b] の外では被積分関数が 0 なので、∫R=∫[a,b] です。リーマン可積分な関数のルベーグ積分とリーマン積分は一致します(定理 8.1[ルベーグ積分の定義と収束定理])。
∎
これは、断面積がすべての x で等しい 2 つの立体は体積が等しい、という Cavalieri の原理の積分版です。
円板の面積から出発して、回転体の体積を求めます。
補題 3.2(円板のルベーグ測度)✓
r≥0 ならば、R2 の閉円板 {(y,z):y2+z2≤r2} のルベーグ測度は πr2 である。
証明(補題 3.2)
r=0 は 1 点で測度 0 です。r>0 とします。m2=m1×m1 なので、Tonelli の定理(定理 3.3[直積測度と Fubini–Tonelli の定理])から、閉円板 Dr について m2(Dr)=∫m1({z:(y,z)∈Dr})dm1(y) です。∣y∣≤r のとき断面は区間 [−r2−y2,r2−y2] で長さ 2r2−y2、∣y∣>r のとき空集合なので、m2(Dr)=∫−rr2r2−y2dm1(y) です。被積分関数は連続なので、これはリーマン積分に等しく(定理 8.1[ルベーグ積分の定義と収束定理])、補題 2.1 から 2⋅2πr2=πr2 です。
∎
定理 3.3(回転体の体積)✓
f:[a,b]→[0,∞) を連続とし、x 軸のまわりに曲線 y=f(x) を回転してできる立体
S={(x,y,z)∈R3: a≤x≤b, y2+z2≤f(x)2}を考える。このとき S の体積は m3(S)=π∫abf(x)2dx である。
証明(定理 3.3)
S は閉集合(連続関数 (x,y,z)↦y2+z2−f(x)2 の ≤0 の部分と閉区間の積)で有界、したがってボレル集合です。断面 Sx は a≤x≤b で半径 f(x) の閉円板、それ以外で空集合なので、補題 3.2 より m2(Sx)=πf(x)2(a≤x≤b)です。これは連続なので、定理 3.1 から m3(S)=∫abπf(x)2dx です。
∎
例 3.4(球と円錐の体積)
球。 f(x)=r2−x2(−r≤x≤r)の回転体は半径 r の球で、体積は π∫−rr(r2−x2)dx=π[r2x−3x3]−rr=π(2r3−32r3)=34πr3 です。
円錐。 f(x)=hrx(0≤x≤h)の回転体は、底面の半径 r、高さ h の円錐で、体積は π∫0hh2r2x2dx=h2πr2⋅3h3=31πr2h です。
回転軸が x 軸でなく直線 y=c で、しかも図形と軸の間にすき間があると、立体の断面は円板ではなくドーナツ状(輪)になります。輪の面積は「外側の円板の面積 − 内側の円板の面積」で求まります。証明の後半は、内側のくりぬく開円板の面積も πρ12 であることを、小さい閉円板で内側から近づいて確かめている部分です。
定理 3.5(直線 y = c のまわりの回転体の体積)✓
f,g:[a,b]→R を連続とし、c≤g≤f とする。直線 y=c のまわりに、g(x)≤y≤f(x)(a≤x≤b)の部分を回転してできる立体
S={(x,y,z): a≤x≤b, (g(x)−c)2≤(y−c)2+z2≤(f(x)−c)2}の体積は
m3(S)=π∫ab[(f(x)−c)2−(g(x)−c)2]dxである。
証明(定理 3.5)
S は閉集合で有界、したがってボレル集合です。断面 Sx(a≤x≤b)は、点 (c,0) を中心とする、半径 ρ2=f(x)−c の閉円板から半径 ρ1=g(x)−c の開円板を除いたものです。ルベーグ測度は並進で不変で(補題 3.1[ℝ^d の変数変換公式と極座標])、閉円板の測度は 補題 3.2 から πρ22 です。ρ1=0 なら開円板は空集合で測度 0=πρ12 です。ρ1>0 なら、開円板は閉円板の増加列 {∣⋅∣≤ρ1−n1}(n>1/ρ1)の和集合なので、測度の下からの連続性(命題 2.3[測度空間と Carathéodory の拡張定理])から測度は πρ12 です。したがって m2(Sx)=πρ22−πρ12 で、定理 3.1 から m3(S)=π∫ab(ρ22−ρ12)dx です。
∎
例 3.6(トーラスの体積)
円板 x2+(y−R)2≤r2(R≥r>0)を x 軸のまわりに回転すると、トーラス(ドーナツ型)ができます。f(x)=R+r2−x2、g(x)=R−r2−x2、c=0(g≥R−r≥0)として 定理 3.5 を使うと、f2−g2=4Rr2−x2 なので、体積は π∫−rr4Rr2−x2dx=4πR⋅2πr2=2π2Rr2(補題 2.1)です。「断面の円板の面積 πr2 に、中心の描く円周の長さ 2πR を掛けたもの」と読めます。
曲線の長さは、前の記事で ∫x′(t)2+y′(t)2dt と定義しました(定義 8.1[指数・対数・三角関数をきちんと定義する])。この定義から、高校で使う 3 つの形の公式が出ます。
証明(定理 4.1)
(2) は定義です。(1) は曲線 γ(x)=(x,f(x))(a≤x≤b)に定義を使うと、γ′=(1,f′) で 1+f′2 です。(3) は γ(θ)=(ρcosθ,ρsinθ) で、積の法則と 定理 6.2[指数・対数・三角関数をきちんと定義する] (3) から γ′=(ρ′cosθ−ρsinθ, ρ′sinθ+ρcosθ)、∣γ′∣2=ρ′2(cos2θ+sin2θ)+ρ2(sin2θ+cos2θ)+2ρ′ρ(−cosθsinθ+sinθcosθ)=ρ′2+ρ2(定理 6.5[指数・対数・三角関数をきちんと定義する])です。
∎
例 4.2(サイクロイド・懸垂線・カージオイドの長さ)
サイクロイドの 1 つのアーチ。 x=t−sint、y=1−cost(0≤t≤2π)。x′2+y′2=(1−cost)2+sin2t=2−2cost=4sin22t(半角の公式)で、0≤t≤2π で sin2t≥0 なので x′2+y′2=2sin2t、長さは ∫02π2sin2tdt=[−4cos2t]02π=8 です。
懸垂線。 y=coshx(定義 11.1[指数・対数・三角関数をきちんと定義する])の 0≤x≤a の長さは、1+sinh2x=cosh2x(命題 11.2[指数・対数・三角関数をきちんと定義する] (1)(3))から ∫0acoshxdx=sinha です。
カージオイド。 ρ=1+cosθ(0≤θ≤2π)。ρ2+ρ′2=(1+cosθ)2+sin2θ=2+2cosθ=4cos22θ で、長さは ∫02π2cos2θdθ。[0,π] で cos2θ≥0、[π,2π] で ≤0 なので [4sin2θ]0π−[4sin2θ]π2π=4+4=8 です。
曲面の面積は、重積分を使って厳密に定義できますが、それには曲面の理論が必要です(ベクトル解析の記事)。ここでは、細い帯(円錐台)を足し合わせる考え方に従った式を定義とします。
定義 4.3(回転体の表面積)↗
f:[a,b]→[0,∞) を C1 級とする。x 軸のまわりに曲線 y=f(x) を回転してできる曲面の面積を
A=2π∫abf(x)1+f′(x)2dxと定める。[a,∞) 上の関数に対しては、R→∞lim2π∫aRf1+f′2dx(広義積分。定義 2.1[広義積分・パラメータ積分とガンマ関数])で定める。
幅 Δx の細い帯は、半径 f(x) の円周(長さ 2πf(x))に、斜めの長さ 1+f′2Δx を掛けたものと考える、というのがこの定義の動機です。
例 4.4(球帯の面積)
半径 r の球面を、x=u と x=v(−r<u<v<r)で挟んだ部分(球帯)は、f(x)=r2−x2 の回転面です。f′(x)=r2−x2−x から 1+f′2=r2−x2r2 なので、f1+f′2=r で、面積は 2π∫uvrdx=2πr(v−u) です。球帯の面積は、高さ v−u に比例し、半径と帯の位置(u,v の取り方)には依存しない、という Archimedes の結果です。u=−r、v=r とすると、球全体の表面積 4πr2 になります(端点では f′ が発散するので、極限として)。
定理 4.5(Gabriel のラッパ:体積は有限、表面積は無限)✓
x≥1 で f(x)=x1 とし、S={(x,y,z):x≥1, y2+z2≤f(x)2} とする。
- S の体積は m3(S)=π(有限)である。
- S の表面積 2π∫1Rf1+f′2dx は R→∞ で ∞ に発散する。
証明(定理 4.5)
(1) Sn=S∩{x≤n}(n=1,2,…)は増加する閉集合の列で、S=⋃Sn です。定理 3.3 から m3(Sn)=π∫1nx−2dx=π[−x1]1n=π(1−n1) です。測度の下からの連続性(命題 2.3[測度空間と Carathéodory の拡張定理])から m3(S)=limm3(Sn)=π です。
(2) f′(x)=−x−2、f1+f′2=x11+x−4≥x1 なので、2π∫1Rf1+f′2dx≥2π∫1Rxdx=2πlogR です(命題 2.1[積分法])。logR→∞(exp の値域が (0,∞)。定理 3.3[指数・対数・三角関数をきちんと定義する] (4))ので、発散します。
∎
「ラッパの中をペンキで満たすには体積 π のペンキで足りるが、外側を塗るにはペンキが足りない」というパラドックスとして有名です。矛盾はなく、体積と表面積は別の量で、一方が有限でも他方が無限になりうる、ということです。
微分方程式 y′=f(x)g(y) は、「g(y)dy=f(x)dx と書いて両辺を積分する」という手順で解きます。この手順が正しい理由を確かめます。
命題 5.1(変数分離形の解法)✓
I,J を開区間、f:I→R、g:J→R を連続とし、g(y0)=0 とする。φ が区間 I1∋x0 上の微分可能な解(φ′=f(x)g(φ)、φ(x0)=y0)で、I1 上で g(φ(x))=0 ならば
∫y0φ(x)g(η)dη=∫x0xf(s)ds(x∈I1)が成り立つ。逆に、この等式を満たす連続関数 φ は解である。解の存在と一意性は、大学の常微分方程式の記事で証明されている(定理 3.1[常微分方程式の初等解法])。
証明(命題 5.1)
G(y)=∫y0yg(η)dη(g=0 の範囲で連続)とおくと、基本定理(定理 5.2[積分の基本定理と定積分])から G′(y)=1/g(y) です。連鎖律から dxdG(φ(x))=g(φ(x))φ′(x)=f(x) で、これは F(x)=∫x0xf(s)ds の導関数に等しいので、G∘φ−F は定数(系 3.4[平均値の定理とテイラーの定理] (1))、x=x0 で 0 なので G(φ(x))=F(x) です。逆に G(φ(x))=F(x) ならば、G は g=0 の範囲で狭義単調(導関数 1/g が定符号)なので φ=G−1∘F で、逆関数の微分(命題 8.1[導関数の定義と基本的な微分法])から φ′=1/G′(φ)⋅F′=g(φ)f です。
∎
例 5.2(y' = ky と y' = y²)
y′=ky(k は定数、y(0)=y0=0):f=k、g(y)=y(y=0)。∫y0yηdη=logy0y=kx なので y=y0ekx です(命題 2.1[微分法とその応用])。
y′=y2(y(0)=1):∫1yη2dη=1−y1=x から y=1−x1(x<1)です。解は x→1− で ∞ に発散するので、すべての x に延長できません(有限時間での爆発)。
命題 5.3(1 階線形方程式の解法)✓
I を開区間、p,q:I→R を連続、x0∈I とし、P(x)=∫x0xp(s)ds とおく。y′+p(x)y=q(x)、y(x0)=y0 の(微分可能な)解は I 全体でただ 1 つで、
y(x)=e−P(x)(y0+∫x0xeP(s)q(s)ds)で与えられる。
証明(命題 5.3)
y が解ならば、P′=p(基本定理)と連鎖律・積の法則から (ePy)′=eP(y′+py)=ePq です。両辺を x0 から x まで積分し(基本定理第二部。ePq は連続)、eP(x0)y(x0)=y0 を使うと eP(x)y(x)=y0+∫x0xeP(s)q(s)ds で、これが解の形と一意性です。逆に、この式で定めた y を微分すると y′=−py+e−PePq=−py+q で、解です。この結果は大学の記事(定理 4.2[常微分方程式の初等解法])の特別な場合です。
∎
例 5.4(y' + 2y =e(−x))
p=2、P=2x、(e2xy)′=e2xe−x=ex から e2xy=ex+C、y=e−x+Ce−2x です。y(0)=0 なら C=−1 で y=e−x−e−2x です。
個体数 y(t) の増え方を、「個体数が少ないうちは指数的に増え、環境の限界 K に近づくと増加が鈍る」としてモデル化したのが、ロジスティック方程式
y′=ry(1−Ky)(r>0, K>0)
です。
ここでは、解の式を具体的に書き下し、それが解であることを確かめます。その解が唯一であること(ほかに別の解がないこと)は、大学の記事の一意性の定理を使って示します。
定理 5.5(ロジスティック方程式の解)✓
0<y0<K とし、C=y0K−y0>0 とおく。初期値問題 y′=ry(1−y/K)、y(0)=y0 の解は、R 全体で定義された
y(t)=1+Ce−rtKであり、これが(定義域が 0 を含む区間であるような)唯一の解である。この解は次を満たす。
- 0<y(t)<K で、y は狭義単調増加。t→∞ で y→K、t→−∞ で y→0。
- y は y=K/2 となる時刻 t∗=r1logC でちょうど 1 回だけ凹凸が入れ替わる(変曲点)。
証明(定理 5.5)
解であること。 y=K(1+Ce−rt)−1 を微分すると y′=(1+Ce−rt)2rKCe−rt で、一方 ry(1−Ky)=1+Ce−rtrK⋅1+Ce−rtCe−rt で等しくなります。y(0)=1+CK=y0 です。
一意性。 F(y)=ry(1−y/K) は y について C1 級なので局所 Lipschitz で(命題 2.4[解の存在と一意性])、2 つの解が t=0 で一致すれば共通の定義域で一致します(定理 3.2[解の存在と一意性])。
(1) Ce−rt>0 なので 0<y<K で、y′=ry(1−y/K)>0 から狭義単調増加です(系 3.4[平均値の定理とテイラーの定理] (3))。t→∞ で e−rt→0(定理 3.3[指数・対数・三角関数をきちんと定義する] (4))、t→−∞ で e−rt→∞ なので、それぞれ y→K、y→0 です。
(2) y′′=ry′(1−Ky)−Kryy′=ry′(1−K2y) で、y′>0 なので y′′ の符号は 1−K2y の符号です。y は連続で狭義単調増加、値域は (0,K) なので、y=K/2 となる時刻がちょうど 1 つあり(中間値の定理)、その前後で y′′ の符号は + から − に変わります。その時刻は 1+Ce−rtK=2K、すなわち Ce−rt=1、t=r1logC です。
∎
増加の速さ y′ は、y=K/2 のときに最大です(y′=ry(1−y/K) は y=K/2 で最大値 rK/4)。この「S 字曲線」は、人口・感染者数・普及率など、さまざまな現象のモデルになります。
2 つの未知関数 x(t),y(t) が互いに絡み合う連立方程式 x′=ax+by、y′=cx+dy は、行列とベクトルで u′=Au(A=(acbd)、u=(xy))と書けます。
解き方の方針は、1 つの未知関数の方程式 y′=ky の解 ekt を、行列に拡張することです。行列 A に対する行列指数関数 etA は、指数関数の級数 ∑kk!tkAk で定められ、A の固有ベクトルの方向では単なる eλt 倍として働きます。
命題 5.6(固有ベクトルによる連立線形方程式の解法)✓
A を 2 次の実正方行列とし、Av1=λ1v1、Av2=λ2v2(λ1,λ2 は実数、v1,v2∈R2 は 1 次独立)とする。初期値問題 u′=Au、u(0)=u0 の解は、u0=c1v1+c2v2 と書いて
u(t)=c1eλ1tv1+c2eλ2tv2であり、これが唯一の解である。
証明(命題 5.6)
v1,v2 が張る部分空間は次元 2 で、dimR2=2 なので R2 全体です(命題 5.7[ベクトル空間と線形変換] (3))。したがって 2 本は R2 の基底で、c1,c2 が存在します。大学の記事の定数係数線形系の解の公式(定理 4.3[線形微分方程式系])から、解は u(t)=etAu0 で唯一です(行列指数関数は 定義 4.1[線形微分方程式系])。固有ベクトル v について Akv=λkv なので etAv=∑kk!tkAkv=(∑kk!(λt)k)v=eλtv です。線形性から etAu0=c1eλ1tv1+c2eλ2tv2 です。
∎
例 5.7(x' = x + 2y、y' = 2x + y)
A=(1221) の固有値は 3(固有ベクトル v1=(1,1))と −1(v2=(1,−1))です。初期値 (x(0),y(0))=(2,0)=v1+v2 なら、x(t)=e3t+e−t、y(t)=e3t−e−t です。たとえば x′=3e3t−e−t と x+2y=3e3t−e−t が確かに一致します。
y′=f(t,y) の解を、刻み幅 h で近似する最も簡単な方法は、yk+1=yk+hf(tk,yk) と進める Euler 法です。
例 5.8(Euler 法で e を求める)
y′=y、y(0)=1 の厳密解は et です(定理 12.1[指数・対数・三角関数をきちんと定義する])。t=1 まで n 歩(h=1/n)で Euler 法を使うと、yk+1=yk(1+h) から yn=(1+1/n)n になります。これは e に収束する数列そのもの(定理 4.1[数列と関数の極限])で、刻み幅を 0 に近づけると近似が厳密解に収束することを、この例では e=exp1 の収束(定理 5.2[指数・対数・三角関数をきちんと定義する])として確かめられます。n=10 で 1.110=2.5937⋯、n=100 で 2.7048⋯ です。
- 重積分と体積・面積。 この記事で定義に使った重積分(面積)は 重積分、ルベーグ測度(体積)は 積測度と Fubini の定理 で扱われます。3 次元の回転体の体積は、円柱座標での 3 重積分として一般化されます。
- 曲面の面積とベクトル解析。 回転面の面積の式(定義 4.3)は、曲面の面積要素の特別な場合です(ベクトル解析)。球帯の面積 2πrh は、微分幾何学の Gauss–Bonnet の定理や球面幾何につながります。
- 常微分方程式。 解の存在と一意性(Picard–Lindelöf の定理)、線形系・安定性・定数変化法は 常微分方程式の初等的解法、解の存在と一意性、線形系 です。ロジスティック方程式は、1 次元の力学系(不動点 0 が不安定、K が安定)の最も簡単な例です。
- 力学と物理。 運動方程式 mx¨=F は 2 階の微分方程式で、ばねの振動は y′′=−ω2y(定理 12.1[指数・対数・三角関数をきちんと定義する])の解、減衰を含む場合は定数係数の 2 階線形方程式になります。
- 次の学び。 確率の記事 確率の発展 では、Buffon の針の問題で、この記事の積分(面積)を使います。
演習 7.1易
放物線 y=x2 と直線 y=x+2 で囲まれた図形の面積を求めよ。
解答
x2=x+2 から x2−x−2=(x−2)(x+1)=0、交点は x=−1,2 で、[−1,2] で x+2≥x2 である。定理 2.2 から面積は ∫−12(x+2−x2)dx=∫−12(−(x+1)(x−2))dx=6(2−(−1))3=627=29(1/6 公式。定理 7.1[積分法])である。
演習 7.2標準
放物線 y=x2(0≤x≤1)と直線 y=1、y 軸で囲まれた図形を y 軸のまわりに回転してできる立体の体積を求めよ。
解答
y 軸のまわりの回転は、座標を入れ替えて x 軸のまわりの回転と同じ形になる(定理 3.3 を、独立変数を y、半径を y として使う)。0≤y≤1 で半径 x=y の円板が断面なので、体積は π∫01(y)2dy=π∫01ydy=2π である。
演習 7.3標準
ロジスティック方程式 y′=y(1−y/10)(r=1、K=10)の解で y(0)=1 のものについて、個体数が最も速く増える時刻 t∗ とそのときの増加速度を求めよ。
解答
C=110−1=9 で、定理 5.5 から y=1+9e−t10。最も速く増えるのは y=K/2=5 となる時刻で、t∗=log9=2log3≈2.20 である。そのときの速度は y′=y(1−y/10)=5⋅21=2.5 である。
- 杉浦光夫『解析入門 I』東京大学出版会、1980 — 積分の応用(面積・体積・曲線の長さ)の節。
- 高木貞治『解析概論』岩波書店 — 面積・曲線の長さの章。
- V. I. Arnold, Ordinary Differential Equations, Springer, 1992 — 1 階方程式・線形系の章(変数分離形・線形系)。
- 柳田英二・栄伸一郎『常微分方程式論』朝倉書店 — 1 階方程式・線形系の章。