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広義積分・パラメータ積分とガンマ関数:積分と極限を交換してよいとき

対象読者: 本テーマ第 1〜9 章の定積分、級数の収束判定、重積分を学んだ人。一様収束の考え方に触れていればよく、広義積分やガンマ関数は未習でもかまいません。

前提となる記事:積分の基本定理と定積分:リーマン和から原始関数へ、級数と収束判定:部分和の極限・4 つの判定法・絶対収束と条件収束、重積分と累次積分:フビニの定理とヤコビアンで多変数の積分を計算する

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この記事は、積分の中に文字(パラメータ)が入っているとき、その文字での微分や極限を、積分の外と中のどちらで先に行ってよいのかを調べます。この答えを使うと、原始関数が書けない積分の値が求まり、階乗 n!n! を整数以外にも広げた関数が作れ、n!n! のおよその大きさを表す公式まで導けます。

  • 広義積分は「区間を広げる極限」で定義されます。収束判定は級数の判定法とほぼ同じ形(コーシーの判定法・比較判定法・絶対収束)で、∫1∞sin⁡x/x dx\int_1^\infty\sin x/x\,dx のような条件収束(積分は収束するが、絶対値の積分は発散すること)はディリクレの判定法(§2 で証明します)で扱います。
  • パラメータ tt を含む積分 F(t)=∫f(x,t) dxF(t)=\int f(x,t)\,dx について、「tt で微分して積分」と「積分して tt で微分」を交換してよいかが問題になります。有界閉区間なら ff と ∂tf\partial_tf の連続性で十分、無限区間なら積分の一様収束が条件になります。
  • この道具で、ガウス積分 ∫0∞e−x2dx=π/2\int_0^\infty e^{-x^2}dx=\sqrt\pi/2、e−x2e^{-x^2} のフーリエ変換、フルラニ型の積分(∫0∞(e−ax−e−bx)/x dx\int_0^\infty (e^{-ax}-e^{-bx})/x\,dx の形のもの)が、すべて微分方程式を立てる形で計算できます。
  • ガンマ関数 Γ(s)=∫0∞xs−1e−xdx\Gamma(s)=\int_0^\infty x^{s-1}e^{-x}dx は階乗の一般化 Γ(n+1)=n!\Gamma(n+1)=n! で、ベータ関数とは B(a,b)=Γ(a)Γ(b)/Γ(a+b)B(a,b)=\Gamma(a)\Gamma(b)/\Gamma(a+b) で結ばれます。
  • スターリングの公式 n!∼2πn (n/e)nn!\sim\sqrt{2\pi n}\,(n/e)^n は、log⁡n!\log n! の単調性とウォリスの公式だけで証明でき、2π\sqrt{2\pi} という定数はウォリス積分(∫0π/2sin⁡nx dx\int_0^{\pi/2}\sin^nx\,dx)から現れます。

1. 動機:「積分の中に変数がある」とき何が起こるか

Section titled “1. 動機:「積分の中に変数がある」とき何が起こるか”

次の 3 つの計算を考えます。

  1. ∫0∞e−x2dx\int_0^\infty e^{-x^2}dx は原始関数が初等関数で書けません。それでも値 π/2\sqrt\pi/2 は求まります(その 1 つの方法を §3 で示します)。
  2. 階乗 n!=1⋅2⋯nn!=1\cdot2\cdots n を整数でない ss に拡張するにはどうしたらよいでしょうか。部分積分を繰り返すと ∫0∞xne−xdx=n!\int_0^\infty x^ne^{-x}dx=n! が出てくるので、nn を実数 s−1s-1 に置き換えたもの Γ(s)\Gamma(s) が自然な候補です(§5)。
  3. n!n! は nn とともに急速に大きくなります。その大きさを、nn の初等的な式で 1+o(1)1+o(1) の精度で見積もれるでしょうか(§7)。

これらに共通するのは、被積分関数が「変数 xx」と「パラメータ tt(または ss)」の両方を持ち、さらに積分区間が無限、あるいは端点で被積分関数が発散していることです。ここでは 2 種類の注意が必要になります。

  • 無限区間・非有界関数の積分: 広義積分として、極限を使って定義する。極限が存在するかどうかの判定が要る。
  • 積分と微分・極限の交換: ddt∫f dx=∫∂tf dx\frac{d}{dt}\int f\,dx=\int\partial_tf\,dx は一般には成り立たない。成り立つための条件が要る。

たとえば f(x,t)=t e−txf(x,t)=t\,e^{-tx} では、t>0t>0 で ∫0∞f dx=1\int_0^\infty f\,dx=1 ですが、t=0t=0 では f=0f=0 なので ∫0∞f dx=0\int_0^\infty f\,dx=0 です。パラメータ tt の関数として F(t)F(t) は t=0t=0 で不連続になります。積分と極限の交換が許されない典型例で、この例が壊れる原因(§4 の「一様収束」)が、この記事の主題の 1 つです。

以下 a<ω≤∞a<\omega\le\infty とし、f:[a,ω)→Rf:[a,\omega)\to\mathbb{R} は連続とします。

定義 2.1(広義積分)↗

任意の b∈[a,ω)b\in[a,\omega) に対して ∫abf(x) dx\int_a^bf(x)\,dx は存在します(連続関数の積分、定理 3.5[積分の基本定理と定積分])。極限

∫aωf(x) dx=lim⁡b→ω−0∫abf(x) dx\int_a^\omega f(x)\,dx=\lim_{b\to\omega-0}\int_a^bf(x)\,dx

が有限の値として存在するとき、広義積分は収束するといいます。存在しない(または ±∞\pm\infty の)とき発散するといいます。(α,b](\alpha,b] 上で連続な関数についても、∫αbf=lim⁡c→α+0∫cbf\int_\alpha^bf=\lim_{c\to\alpha+0}\int_c^bf で同様に定義します。(α,ω)(\alpha,\omega) 上で連続な ff については、α<c<ω\alpha<c<\omega をとって ∫αcf\int_\alpha^cf と ∫cωf\int_c^\omega f がともに収束するとき、その和を ∫αωf\int_\alpha^\omega f とします(cc の取り方によらない)。

端点が有限で被積分関数が発散する例が ∫01x−1/2dx=lim⁡c→+0[2x]c1=2\int_0^1x^{-1/2}dx=\lim_{c\to+0}[2\sqrt x]_c^1=2 です。区間が無限の例が ∫0∞e−xdx=1\int_0^\infty e^{-x}dx=1 です。

定理 2.2(広義積分のコーシーの判定法)✓

∫aωf(x) dx\int_a^\omega f(x)\,dx が収束するための必要十分条件は、任意の ε>0\varepsilon>0 に対して c∈[a,ω)c\in[a,\omega) が存在し、c<b<b′<ωc<b<b'<\omega をみたすすべての b,b′b,b' について

∣∫bb′f(x) dx∣<ε\Bigl|\int_b^{b'}f(x)\,dx\Bigr|<\varepsilon

が成り立つことです。

証明(定理 2.2)

G(b)=∫abf(x) dxG(b)=\int_a^bf(x)\,dx とおくと ∫bb′f=G(b′)−G(b)\int_b^{b'}f=G(b')-G(b) です。 (必要性)G(b)→LG(b)\to L とします。ε/2\varepsilon/2 に対して cc を、b>cb>c なら ∣G(b)−L∣<ε/2|G(b)-L|<\varepsilon/2 となるようにとれば、c<b<b′c<b<b' で ∣G(b′)−G(b)∣<ε|G(b')-G(b)|<\varepsilon です。 (十分性)bn∈[a,ω)b_n\in[a,\omega) を bn→ωb_n\to\omega の増加列とします。仮定から (G(bn))(G(b_n)) はコーシー列で、実数の完備性(定理 7.3[実数の完備性とコーシー列])によりある LL に収束します。別の列 bn′→ωb_n'\to\omega に対しても、2 つの列を交互に並べた列にコーシー列の条件を使うと G(bn′)→LG(b_n')\to L です。したがって lim⁡b→ωG(b)=L\lim_{b\to\omega}G(b)=L です。

定理 2.3(比較判定法と絶対収束)✓

f,g:[a,ω)→Rf,g:[a,\omega)\to\mathbb{R} を連続とする。

  1. 0≤f≤g0\le f\le g で ∫aωg\int_a^\omega g が収束するなら ∫aωf\int_a^\omega f も収束し、∫aωf≤∫aωg\int_a^\omega f\le\int_a^\omega g。
  2. ∫aω∣f∣\int_a^\omega|f| が収束するなら ∫aωf\int_a^\omega f も収束し、∣∫aωf∣≤∫aω∣f∣\bigl|\int_a^\omega f\bigr|\le\int_a^\omega|f|。
証明(定理 2.3)

(1) G(b)=∫abfG(b)=\int_a^bf は bb について単調増加で、G(b)≤∫abg≤∫aωgG(b)\le\int_a^bg\le\int_a^\omega g と上に有界です。増加列 bn→ωb_n\to\omega に対し G(bn)G(b_n) は単調有界数列として収束し(定理 2.1[級数と収束判定])、その極限は sup⁡bG(b)\sup_bG(b) です。GG 自身が単調ですから lim⁡b→ωG(b)=sup⁡G\lim_{b\to\omega}G(b)=\sup G で収束し、≤∫g\le\int g です。 (2) ∣∫bb′f∣≤∫bb′∣f∣\bigl|\int_b^{b'}f\bigr|\le\int_b^{b'}|f| で、右辺は 定理 2.2 を ∣f∣|f| に使って小さくできます。同じ判定法を ff に使えば収束がいえます。

命題 2.4(べき関数の広義積分の収束条件)✓

p∈Rp\in\mathbb{R} とする。∫1∞x−p dx\int_1^\infty x^{-p}\,dx は p>1p>1 のときに限り収束し、∫01x−p dx\int_0^1x^{-p}\,dx は p<1p<1 のときに限り収束する。

証明(命題 2.4)

∫1∞\int_1^\infty は b→∞b\to\infty のときの ∫1bx−pdx\int_1^bx^{-p}dx の極限、∫01\int_0^1 は c→+0c\to+0 のときの ∫c1x−pdx\int_c^1x^{-p}dx の極限です。p≠1p\ne1 のとき原始関数 x1−p1−p\frac{x^{1-p}}{1-p} と 定理 5.4[積分の基本定理と定積分] より ∫1bx−pdx=b1−p−11−p\int_1^bx^{-p}dx=\frac{b^{1-p}-1}{1-p} で、p>1p>1 なら b1−p→0b^{1-p}\to0 なので 1p−1\frac1{p-1} に収束し、p<1p<1 なら b1−p→∞b^{1-p}\to\infty で発散します。p=1p=1 では ∫1bx−1dx=log⁡b→∞\int_1^bx^{-1}dx=\log b\to\infty で発散します。同様に p≠1p\ne1 のとき ∫c1x−pdx=1−c1−p1−p\int_c^1x^{-p}dx=\frac{1-c^{1-p}}{1-p} で、p<1p<1 なら c1−p→0c^{1-p}\to0 で 11−p\frac1{1-p} に収束し、p>1p>1 なら c1−p→∞c^{1-p}\to\infty で発散します。p=1p=1 では ∫c1x−1dx=−log⁡c→∞\int_c^1x^{-1}dx=-\log c\to\infty で発散します。

例 2.5(べき関数の広義積分)

∫1∞x−p dx は p>1 のときに限り収束する,∫01x−p dx は p<1 のときに限り収束する.\int_1^\infty x^{-p}\,dx\ \text{は}\ p>1\ \text{のときに限り収束する},\qquad \int_0^1x^{-p}\,dx\ \text{は}\ p<1\ \text{のときに限り収束する}.

実際 p≠1p\ne1 で ∫1bx−pdx=b1−p−11−p\int_1^bx^{-p}dx=\frac{b^{1-p}-1}{1-p} は b→∞b\to\infty で p>1p>1 なら 1p−1\frac1{p-1} に収束、p<1p<1 なら発散し、p=1p=1 では log⁡b→∞\log b\to\infty です。∫c1x−pdx\int_c^1x^{-p}dx も同様です。これは級数 ∑n−p\sum n^{-p} の収束条件(定理 5.1[級数と収束判定])の積分版です。

絶対値の積分が発散しても、振動のおかげで収束する積分があります。

定理 2.6(ディリクレの判定法)✓

f:[a,∞)→Rf:[a,\infty)\to\mathbb{R} を連続で、ある MM について ∣∫abf∣≤M\bigl|\int_a^bf\bigr|\le M(b≥ab\ge a)とする。g:[a,∞)→Rg:[a,\infty)\to\mathbb{R} を C1C^1 級で、単調減少かつ g(x)→0g(x)\to0(x→∞x\to\infty)とする。このとき ∫a∞f(x)g(x) dx\int_a^\infty f(x)g(x)\,dx は収束する。

証明(定理 2.6)

F(x)=∫axfF(x)=\int_a^xf とおくと、定理 5.2[積分の基本定理と定積分] から FF は C1C^1 級で F′=fF'=f、∣F∣≤M|F|\le M です。部分積分(定理 6.2[積分の基本定理と定積分])から

∫abfg dx=F(b)g(b)−F(a)g(a)−∫abF(x)g′(x) dx=F(b)g(b)−∫abF g′ dx\int_a^bfg\,dx=F(b)g(b)-F(a)g(a)-\int_a^bF(x)g'(x)\,dx=F(b)g(b)-\int_a^bF\,g'\,dx

です(F(a)=0F(a)=0)。∣F(b)g(b)∣≤Mg(b)→0|F(b)g(b)|\le Mg(b)\to0。また g′≤0g'\le0 なので ∫ab∣Fg′∣ dx≤M∫ab(−g′) dx=M(g(a)−g(b))≤Mg(a)\int_a^b|Fg'|\,dx\le M\int_a^b(-g')\,dx=M(g(a)-g(b))\le Mg(a) で、∫a∞∣Fg′∣\int_a^\infty|Fg'| は 定理 2.3 の (1) により収束します。(2) により ∫a∞Fg′\int_a^\infty Fg' が収束し、したがって ∫abfg\int_a^bfg の極限が存在します。

例 2.7(∫0∞sin⁡x/x dx\int_0^\infty\sin x/x\,dx は条件収束する)

[0,1][0,1] では sin⁡x/x\sin x/x は x=0x=0 での値を 11 とすれば連続で、∫01\int_0^1 は通常の積分です。[1,∞)[1,\infty) では f=sin⁡xf=\sin x、g=1/xg=1/x とすると ∣∫1bsin⁡x dx∣=∣cos⁡1−cos⁡b∣≤2|\int_1^b\sin x\,dx|=|\cos1-\cos b|\le2 で、定理 2.6 の仮定を満たします。よって収束します。一方、∫1∞∣sin⁡x∣/x dx\int_1^\infty|\sin x|/x\,dx は発散します(∣sin⁡x∣≥sin⁡2x=(1−cos⁡2x)/2|\sin x|\ge\sin^2x=(1-\cos2x)/2 に 定理 2.6 を使えば ∫cos⁡2x/x\int\cos2x/x は収束し、∫dx/(2x)\int dx/(2x) は発散するため)。このように、収束するが絶対収束しない積分を条件収束といいます。値が π/2\pi/2 であることは ボールウェイン積分 の 定理 3.2[ボールウェイン積分] で示されます。

3. パラメータを含む積分(有界閉区間)

Section titled “3. パラメータを含む積分(有界閉区間)”

パラメータ tt を含む積分 F(t)=∫abf(x,t) dxF(t)=\int_a^bf(x,t)\,dx の性質を調べます。積分区間が有界閉区間なら、必要な条件は連続性だけです。鍵は次の補題です。

補題 3.1(有界閉長方形上の連続関数の一様連続性)✓

K=[a,b]×[c,d]K=[a,b]\times[c,d] 上の連続関数 hh は一様連続である。すなわち任意の ε>0\varepsilon>0 に対し η>0\eta>0 が存在し、p,q∈Kp,q\in K、∥p−q∥<η\|p-q\|<\eta ならば ∣h(p)−h(q)∣<ε|h(p)-h(q)|<\varepsilon である。

証明(補題 3.1)

そうでないとすると、ある ε>0\varepsilon>0 と KK の点列 pk,qkp_k,q_k で ∥pk−qk∥<1/k\|p_k-q_k\|<1/k かつ ∣h(pk)−h(qk)∣≥ε|h(p_k)-h(q_k)|\ge\varepsilon となるものがあります。ボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理(定理 6.3[実数の完備性とコーシー列])を各成分に 2 回使うと、部分列 pkj→p∈Kp_{k_j}\to p\in K(KK は閉)が取れます。すると qkj→pq_{k_j}\to p でもあり、hh の連続性から ∣h(pkj)−h(qkj)∣→0|h(p_{k_j})-h(q_{k_j})|\to0 となって矛盾します。

定理 3.2(パラメータ積分の連続性)✓

f:[a,b]×[c,d]→Rf:[a,b]\times[c,d]\to\mathbb{R} が連続ならば、F(t)=∫abf(x,t) dxF(t)=\int_a^bf(x,t)\,dx は [c,d][c,d] 上連続である。

証明(定理 3.2)

ε>0\varepsilon>0 をとり、補題 3.1 で ε/(b−a)\varepsilon/(b-a) に対する η\eta を取ります。∣t−t′∣<η|t-t'|<\eta なら、すべての xx について ∣f(x,t)−f(x,t′)∣<ε/(b−a)|f(x,t)-f(x,t')|<\varepsilon/(b-a) ですから

∣F(t)−F(t′)∣≤∫ab∣f(x,t)−f(x,t′)∣ dx≤ε|F(t)-F(t')|\le\int_a^b|f(x,t)-f(x,t')|\,dx\le\varepsilon

です。

微分についての定理は、前の記事の 補題 3.6[ベクトル解析と積分定理] で示しました(同じ一様連続性の議論)。ここでは結論だけ再掲します。ff と ∂tf\partial_tf が [a,b]×J[a,b]\times J で連続なら

ddt∫abf(x,t) dx=∫ab∂f∂t(x,t) dx\frac{d}{dt}\int_a^bf(x,t)\,dx=\int_a^b\frac{\partial f}{\partial t}(x,t)\,dx

で、右辺は tt の連続関数です。以下この等式を「有界閉区間での微分公式」と呼びます。これを使って、初等関数で表せない積分を計算します。

定理 3.3(ガウス積分)✓

広義積分 ∫0∞e−x2dx\int_0^\infty e^{-x^2}dx は収束し、その値は π/2\sqrt\pi/2 である。したがって ∫−∞∞e−x2dx=π\int_{-\infty}^\infty e^{-x^2}dx=\sqrt\pi。

e−x2e^{-x^2} には初等的な原始関数がないので、値を直接は求められません。そこで g(t)=∫0te−x2dxg(t)=\int_0^te^{-x^2}dx の 2 乗 A(t)A(t) に、もう 1 つの関数 B(t)B(t) を足して、微分すると打ち消し合うようにします。A+BA+B が定数になれば、t=0t=0 での値 π/4\pi/4 が分かり、t→∞t\to\infty では B→0B\to0 なので A→π/4A\to\pi/4 と読めます。BB は、導関数 B′B' が A′A' の積分表示と符号だけが逆になるように選んだ関数です。

証明(定理 3.3)

x≥1x\ge1 で e−x2≤e−xe^{-x^2}\le e^{-x} で ∫1∞e−xdx<∞\int_1^\infty e^{-x}dx<\infty ですから、定理 2.3 により収束します。I=∫0∞e−x2dx>0I=\int_0^\infty e^{-x^2}dx>0 とおき、

g(t)=∫0te−x2dx,A(t)=g(t)2,B(t)=∫01e−t2(1+s2)1+s2 dsg(t)=\int_0^te^{-x^2}dx,\qquad A(t)=g(t)^2,\qquad B(t)=\int_0^1\frac{e^{-t^2(1+s^2)}}{1+s^2}\,ds

とします。A′(t)=2g(t)e−t2A'(t)=2g(t)e^{-t^2} で、g(t)=∫0te−x2dxg(t)=\int_0^te^{-x^2}dx を x=tsx=ts と置換(定理 6.1[積分の基本定理と定積分])すると g(t)=t∫01e−t2s2dsg(t)=t\int_0^1e^{-t^2s^2}ds ですから

A′(t)=2te−t2∫01e−t2s2ds=∫012t e−t2(1+s2) ds.A'(t)=2te^{-t^2}\int_0^1e^{-t^2s^2}ds=\int_0^1 2t\,e^{-t^2(1+s^2)}\,ds .

一方、有界閉区間での微分公式を BB に使うと(被積分関数と ∂t\partial_t は [0,1]×R[0,1]\times\mathbb{R} で連続)

B′(t)=∫01−2t(1+s2)e−t2(1+s2)1+s2 ds=−∫012t e−t2(1+s2) ds=−A′(t)B'(t)=\int_0^1\frac{-2t(1+s^2)e^{-t^2(1+s^2)}}{1+s^2}\,ds=-\int_0^12t\,e^{-t^2(1+s^2)}\,ds=-A'(t)

です。よって A+BA+B は定数で、A(0)+B(0)=0+∫01ds1+s2=π4A(0)+B(0)=0+\int_0^1\frac{ds}{1+s^2}=\frac\pi4 です。t→∞t\to\infty では 0≤B(t)≤e−t2∫01ds1+s2→00\le B(t)\le e^{-t^2}\int_0^1\frac{ds}{1+s^2}\to0 ですから A(t)→π/4A(t)\to\pi/4、つまり I2=π/4I^2=\pi/4 で、I>0I>0 より I=π/2I=\sqrt\pi/2 です。

別の導出として、二重積分と極座標を使うものが 例 6.12[重積分と累次積分] にあります。上の証明は 2 重積分を使わずに 1 変数の微積分だけで済む点が特徴です。

4. 広義パラメータ積分と一様収束

Section titled “4. 広義パラメータ積分と一様収束”

積分区間が無限、あるいは被積分関数が端点で発散する場合に同じ公式を使うには、積分の収束がパラメータについて一様でなければなりません。以下、a<ω≤∞a<\omega\le\infty、J⊂RJ\subset\mathbb{R} は区間、f:[a,ω)×J→Rf:[a,\omega)\times J\to\mathbb{R} は連続とし、すべての t∈Jt\in J で ∫aωf(x,t) dx\int_a^\omega f(x,t)\,dx が収束するとします。

定義 4.1(広義積分の一様収束)↗

任意の ε>0\varepsilon>0 に対し c∈[a,ω)c\in[a,\omega) が存在し、すべての b∈(c,ω)b\in(c,\omega) とすべての t∈Jt\in J について ∣∫bωf(x,t) dx∣<ε\bigl|\int_b^\omega f(x,t)\,dx\bigr|<\varepsilon が成り立つとき、∫aωf(x,t) dx\int_a^\omega f(x,t)\,dx は JJ 上一様収束するといいます。

命題 4.2(積分版 M 判定法)✓

連続関数 M:[a,ω)→[0,∞)M:[a,\omega)\to[0,\infty) で ∣f(x,t)∣≤M(x)|f(x,t)|\le M(x)(x∈[a,ω), t∈Jx\in[a,\omega),\ t\in J)かつ ∫aωM(x) dx<∞\int_a^\omega M(x)\,dx<\infty となるものがあれば、∫aωf(x,t) dx\int_a^\omega f(x,t)\,dx は JJ 上一様収束(絶対収束)する。

証明(命題 4.2)

∣∫bωf(x,t) dx∣≤∫bωM(x) dx\bigl|\int_b^\omega f(x,t)\,dx\bigr|\le\int_b^\omega M(x)\,dx で、右辺は tt に依らず、b→ωb\to\omega で 00 に収束します(収束する積分の尾部)。

注意 4.3(一様でないと何が起こるか)

f(x,t)=te−txf(x,t)=te^{-tx}([0,∞)×[0,1][0,\infty)\times[0,1])では、t>0t>0 で ∫b∞f dx=e−tb\int_b^\infty f\,dx=e^{-tb} です。bb を固定して t→0t\to0 とすると e−tb→1e^{-tb}\to1 ですから、sup⁡t∫b∞f=1\sup_t\int_b^\infty f=1 で、尾部は一様に小さくなりません。実際 §1 で見たように F(t)=1F(t)=1(t>0t>0)、F(0)=0F(0)=0 で、FF は t=0t=0 で不連続です。

定理 4.4(広義パラメータ積分の連続性)✓

∫aωf(x,t) dx\int_a^\omega f(x,t)\,dx が JJ 上一様収束するならば、F(t)=∫aωf(x,t) dxF(t)=\int_a^\omega f(x,t)\,dx は JJ 上連続である。

証明(定理 4.4)

bn∈[a,ω)b_n\in[a,\omega) を bn→ωb_n\to\omega の列とし、Fn(t)=∫abnf(x,t) dxF_n(t)=\int_a^{b_n}f(x,t)\,dx とおきます。ff は [a,bn]×K[a,b_n]\times K(K⊂JK\subset J は任意の有界閉区間)で連続ですから、定理 3.2 から FnF_n は連続です。一様収束の仮定から sup⁡t∣F(t)−Fn(t)∣=sup⁡t∣∫bnωf∣→0\sup_t|F(t)-F_n(t)|=\sup_t\bigl|\int_{b_n}^\omega f\bigr|\to0 ですから、Fn⇉FF_n\rightrightarrows F(定義 3.2[関数列と一様収束])で、一様収束極限の連続性(定理 4.1[関数列と一様収束])から FF は連続です。

定理 4.5(広義積分の積分記号下の微分)✓

JJ を開区間、ff と ∂tf\partial_tf を [a,ω)×J[a,\omega)\times J 上で連続とします。ある t0∈Jt_0\in J で ∫aωf(x,t0) dx\int_a^\omega f(x,t_0)\,dx が収束し、∫aω∂tf(x,t) dx\int_a^\omega\partial_tf(x,t)\,dx が JJ 上一様収束するならば、すべての t∈Jt\in J で F(t)=∫aωf(x,t) dxF(t)=\int_a^\omega f(x,t)\,dx は収束し、FF は C1C^1 級で

F′(t)=∫aω∂f∂t(x,t) dxF'(t)=\int_a^\omega\frac{\partial f}{\partial t}(x,t)\,dx

が成り立ちます。

証明の方針は次のとおりです。区間を [a,bn][a,b_n] で打ち切った積分 FnF_n には、有界閉区間での微分公式がそのまま使えます。あとは n→∞n\to\infty としたときに、微分した関数 Fn′F_n' が一様収束することを使って、極限の関数も微分可能で、その導関数が Fn′F_n' の極限になることを示します(関数列の一様収束と項別微分の定理を使います)。

証明(定理 4.5)

bn→ωb_n\to\omega の増加列をとり、Fn(t)=∫abnf(x,t) dxF_n(t)=\int_a^{b_n}f(x,t)\,dx とおきます。有界閉区間での微分公式により FnF_n は C1C^1 級で Fn′(t)=∫abn∂tf(x,t) dxF_n'(t)=\int_a^{b_n}\partial_tf(x,t)\,dx です。G(t)=∫aω∂tf(x,t) dxG(t)=\int_a^\omega\partial_tf(x,t)\,dx とおくと、一様収束の仮定から Fn′⇉GF_n'\rightrightarrows G です。また Fn(t0)→∫aωf(x,t0) dxF_n(t_0)\to\int_a^\omega f(x,t_0)\,dx は収束します。t0t_0 を含む任意の有界閉区間 [α,β]⊂J[\alpha,\beta]\subset J に 項別微分の定理(定理 7.3[関数列と一様収束])を使うと、FnF_n は [α,β][\alpha,\beta] 上である関数 F~\tilde F に収束し、F~\tilde F は C1C^1 級で F~′=G\tilde F'=G です。F~(t0)\tilde F(t_0) は列 (bn)(b_n) の取り方に依らず、F~′=G\tilde F'=G も列に依らないので、F~(t)=F~(t0)+∫t0tG\tilde F(t)=\tilde F(t_0)+\int_{t_0}^tG も列に依りません。したがって lim⁡b→ω∫abf(x,t) dx\lim_{b\to\omega}\int_a^bf(x,t)\,dx が存在して F~(t)=F(t)\tilde F(t)=F(t) に等しく、F′=GF'=G です。GG は 定理 4.4 から連続です。

端点 α\alpha で発散する (α,b](\alpha,b] 型の広義積分についても、x↦α+b−xx\mapsto\alpha+b-x で向きを入れ替えれば同じ定理が成り立ちます。

例 4.6(ガウス関数のフーリエ余弦変換)

Φ(t)=∫0∞e−x2cos⁡(2tx) dx\Phi(t)=\int_0^\infty e^{-x^2}\cos(2tx)\,dx とします。∂t(e−x2cos⁡2tx)=−2xe−x2sin⁡(2tx)\partial_t\bigl(e^{-x^2}\cos2tx\bigr)=-2xe^{-x^2}\sin(2tx) は ∣⋅∣≤2xe−x2|\cdot|\le2xe^{-x^2} で、∫0∞2xe−x2dx=1<∞\int_0^\infty2xe^{-x^2}dx=1<\infty ですから、命題 4.2 により一様収束です。Φ(0)=π/2\Phi(0)=\sqrt\pi/2(定理 3.3)で収束するので 定理 4.5 が使え、部分積分(u=sin⁡2txu=\sin2tx、v=e−x2v=e^{-x^2})を行うと

Φ′(t)=∫0∞sin⁡(2tx) d(e−x2)=[e−x2sin⁡2tx]0∞−2t∫0∞e−x2cos⁡2tx dx=−2t Φ(t)\Phi'(t)=\int_0^\infty\sin(2tx)\,d\bigl(e^{-x^2}\bigr)=\Bigl[e^{-x^2}\sin2tx\Bigr]_0^\infty-2t\int_0^\infty e^{-x^2}\cos2tx\,dx=-2t\,\Phi(t)

です。(et2Φ)′=0(e^{t^2}\Phi)'=0 ですから、Φ(t)=π2e−t2\Phi(t)=\frac{\sqrt\pi}2e^{-t^2} が得られます。ガウス関数のフーリエ変換がまたガウス関数になる、という事実の実解析的な証明です。

例 4.7(フルラニ型の積分)

a,b>0a,b>0 に対し F(a)=∫0∞e−ax−e−bxxdx=log⁡ba\displaystyle F(a)=\int_0^\infty\frac{e^{-ax}-e^{-bx}}{x}dx=\log\frac ba です。被積分関数は x=0x=0 での値を b−ab-a とすれば [0,∞)×(0,∞)[0,\infty)\times(0,\infty) で連続で、a=ba=b のとき積分は 00 ですから収束します。∂a\partial_a は −e−ax-e^{-ax} で、a>a0>0a>a_0>0 では ∣−e−ax∣≤e−a0x|-e^{-ax}|\le e^{-a_0x} と積分版 M 判定法(命題 4.2)から一様収束です。定理 4.5 により F′(a)=−∫0∞e−axdx=−1/aF'(a)=-\int_0^\infty e^{-ax}dx=-1/a、よって F(a)=−log⁡a+CF(a)=-\log a+C で、F(b)=0F(b)=0 から F(a)=log⁡(b/a)F(a)=\log(b/a) を得ます。

定義 5.1(ガンマ関数)↗

s>0s>0 に対し

Γ(s)=∫0∞xs−1e−x dx\Gamma(s)=\int_0^\infty x^{s-1}e^{-x}\,dx

と定めます。

この広義積分は、x=0x=0 と x=∞x=\infty の両端で問題があります。[0,∞)[0,\infty) を (0,1](0,1] と [1,∞)[1,\infty) に分けて調べます。

命題 5.2(ガンマ積分の収束)✓

s>0s>0 のとき Γ(s)\Gamma(s) は収束し、Γ(s)>0\Gamma(s)>0 である。

証明の方針です。x=0x=0 の近くでは xs−1x^{s-1} との比較で、x→∞x\to\infty の近くでは「指数関数 e−xe^{-x} はどんなべきよりも速く 00 に近づく」ことで、それぞれ上から押さえます。後者のために整数 mm を m≥sm\ge s となるようにとり、ex/2e^{x/2} の級数展開の mm 次の項で下から評価して、xx のべきを打ち消します。

証明(命題 5.2)

0<x≤10<x\le1 では xs−1e−x≤xs−1x^{s-1}e^{-x}\le x^{s-1} で、命題 2.4 の p=1−s<1p=1-s<1 から ∫01xs−1dx=1/s\int_0^1x^{s-1}dx=1/s は収束します。x≥1x\ge1 では、整数 m≥sm\ge s を取ると ex/2≥(x/2)m/m!e^{x/2}\ge(x/2)^m/m!(指数関数の級数展開の 1 項)ですから、xs−1e−x/2≤m! 2mxs−1−m≤m! 2mx^{s-1}e^{-x/2}\le m!\,2^mx^{s-1-m}\le m!\,2^m です。したがって xs−1e−x≤m! 2me−x/2x^{s-1}e^{-x}\le m!\,2^me^{-x/2} で、右辺は [1,∞)[1,\infty) で積分可能ですから、定理 2.3 により収束します。被積分関数は正の連続関数なので Γ(s)>0\Gamma(s)>0 です。

定理 5.3(ガンマ関数の関数等式)✓

s>0s>0 に対し Γ(s+1)=s Γ(s)\Gamma(s+1)=s\,\Gamma(s) である。とくに Γ(1)=1\Gamma(1)=1 であり、自然数 nn に対し Γ(n+1)=n!\Gamma(n+1)=n! である。また Γ(1/2)=π\Gamma(1/2)=\sqrt\pi である。

証明(定理 5.3)

0<ε<R0<\varepsilon<R に対し、部分積分(定理 6.2[積分の基本定理と定積分])で

∫εRxse−xdx=[−xse−x]εR+s∫εRxs−1e−xdx\int_\varepsilon^Rx^se^{-x}dx=\bigl[-x^se^{-x}\bigr]_\varepsilon^R+s\int_\varepsilon^Rx^{s-1}e^{-x}dx

です。s>0s>0 ですから εse−ε→0\varepsilon^se^{-\varepsilon}\to0、また Rse−R→0R^se^{-R}\to0(命題 5.2 の証明の評価 xse−x/2≤Cx^se^{-x/2}\le C から)で、ε→0\varepsilon\to0、R→∞R\to\infty として Γ(s+1)=sΓ(s)\Gamma(s+1)=s\Gamma(s) を得ます。Γ(1)=∫0∞e−xdx=1\Gamma(1)=\int_0^\infty e^{-x}dx=1 で、これと帰納法から Γ(n+1)=nΓ(n)=⋯=n! Γ(1)=n!\Gamma(n+1)=n\Gamma(n)=\cdots=n!\,\Gamma(1)=n! です。最後に x=y2x=y^2(dx=2y dydx=2y\,dy)と置換すると Γ(1/2)=∫0∞y−1e−y22y dy=2∫0∞e−y2dy=π\Gamma(1/2)=\int_0^\infty y^{-1}e^{-y^2}2y\,dy=2\int_0^\infty e^{-y^2}dy=\sqrt\pi です(定理 3.3)。

したがって Γ\Gamma は階乗を実数に拡張します。たとえば Γ(3/2)=12Γ(12)=π2\Gamma(3/2)=\frac12\Gamma(\frac12)=\frac{\sqrt\pi}2、Γ(5/2)=32⋅π2=3π4\Gamma(5/2)=\frac32\cdot\frac{\sqrt\pi}2=\frac{3\sqrt\pi}4 です。

Γ(1)=1Γ(2)=1Γ(3)=2Γ(4)=6s
ガンマ関数 Γ(s)(0.25 ≤ s ≤ 4)。Γ(1)=Γ(2)=1、Γ(3)=2、Γ(4)=6 と階乗を通り、s→0 で発散し、s≈1.46 で最小値 0.886 をとる

命題 5.4(ガンマ関数の滑らかさ)✓

Γ\Gamma は (0,∞)(0,\infty) 上で何回でも微分可能(C∞C^\infty 級)で、各 k≥0k\ge0 について

Γ(k)(s)=∫0∞xs−1(log⁡x)ke−x dx\Gamma^{(k)}(s)=\int_0^\infty x^{s-1}(\log x)^ke^{-x}\,dx

である。

証明の方針です。ss で微分すると被積分関数に log⁡x\log x が 1 つ掛かります。x→+0x\to+0 で log⁡x\log x は発散しますが、その発散は x−δx^{-\delta}(δ>0\delta>0 は小さくてよい)のような小さなべきより遅いので、定数 CC を使って x−δx^{-\delta} で押さえられます。こうして積分版 M 判定法が使える形になり、微分と積分が交換できます。

証明(命題 5.4)

k≥0k\ge0 に対し Γk(s)=∫0∞xs−1(log⁡x)ke−xdx\Gamma_k(s)=\int_0^\infty x^{s-1}(\log x)^ke^{-x}dx とおき、0<s0<s10<s_0<s_1、J=(s0,s1)J=(s_0,s_1) を固定します。Γk\Gamma_k が JJ で収束し、Γk′=Γk+1\Gamma_k'=\Gamma_{k+1} となることを示せば、帰納法で主張が従います。f(x,s)=xs−1(log⁡x)ke−xf(x,s)=x^{s-1}(\log x)^ke^{-x} は (0,∞)×J(0,\infty)\times J で連続で、∂sf=xs−1(log⁡x)k+1e−x\partial_sf=x^{s-1}(\log x)^{k+1}e^{-x} も連続です。

[1,∞)[1,\infty) での評価。 log⁡x≤x\log x\le x より、s<s1s<s_1 のとき ∣∂sf∣≤xs1−1+k+1e−x=:M1(x)|\partial_sf|\le x^{s_1-1+k+1}e^{-x}=:M_1(x)。命題 5.2 の証明と同じ評価で ∫1∞M1<∞\int_1^\infty M_1<\infty です。

(0,1](0,1] での評価。 x→+0x\to+0 で xδ∣log⁡x∣k+1→0x^{\delta}|\log x|^{k+1}\to0 ですから(δ=s0/2\delta=s_0/2)、ある定数 CC について ∣log⁡x∣k+1≤Cx−δ|\log x|^{k+1}\le Cx^{-\delta}(0<x≤10<x\le1)で、s>s0s>s_0 のとき ∣∂sf∣≤Cxs0−1−δ=Cxs0/2−1=:M0(x)|\partial_sf|\le Cx^{s_0-1-\delta}=Cx^{s_0/2-1}=:M_0(x)。命題 2.4 から ∫01M0<∞\int_0^1M_0<\infty です。

したがって積分版 M 判定法(命題 4.2、(0,1](0,1] では端点の向きを入れ替える)から、∫∂sf dx\int\partial_sf\,dx は JJ 上一様収束します。同様の評価(kk を k+1k+1 から kk に落とすだけ)で Γk(s)\Gamma_k(s) は収束します。定理 4.5 を [1,∞)[1,\infty) と (0,1](0,1] のそれぞれに使うと、Γk\Gamma_k は微分可能で Γk′=Γk+1\Gamma_k'=\Gamma_{k+1} です。s0,s1s_0,s_1 は任意なので (0,∞)(0,\infty) 上で成り立ちます。

定義 6.1(ベータ関数)↗

a,b>0a,b>0 に対し B(a,b)=∫01xa−1(1−x)b−1dxB(a,b)=\displaystyle\int_0^1x^{a-1}(1-x)^{b-1}dx と定めます。

x=0x=0 の近くでは (1−x)b−1(1-x)^{b-1} が有界で xa−1x^{a-1} と比較でき、x=1x=1 の近くでは同様に (1−x)b−1(1-x)^{b-1} と比較できるので、命題 2.4 により収束します。次の定理は、ベータ関数がガンマ関数で書けることを示します。証明は、22 変数の広義積分を、有界閉集合上の積分(フビニの定理と変数変換が使える)で挟んで評価する方法で行います。

定理 6.2(ベータ関数とガンマ関数の関係)✓

a,b>0a,b>0 に対し

B(a,b)=Γ(a) Γ(b)Γ(a+b)B(a,b)=\frac{\Gamma(a)\,\Gamma(b)}{\Gamma(a+b)}

が成り立つ。

証明の方針です。Γ(a)Γ(b)\Gamma(a)\Gamma(b) は x,yx,y の 2 重積分で、変換 (u,v)=(x+y, x/(x+y))(u,v)=(x+y,\,x/(x+y)) をすると積分が uu だけの積分と vv だけの積分の積に分かれ、それぞれ Γ(a+b)\Gamma(a+b) と B(a,b)B(a,b) になります。ただし第 1 象限全体は有界ではないので、端を少し削った有界閉の領域を使い、変換後の長方形の像 TT が正方形を含む場合と、正方形が TT を含む場合の 2 通りで上と下から挟みます。下からの評価の複雑な ε\varepsilon は、正方形がちょうど TT に入るように選んだものです。

証明(定理 6.2)

f(x,y)=xa−1yb−1e−x−yf(x,y)=x^{a-1}y^{b-1}e^{-x-y} は第 1 象限 V=(0,∞)2V=(0,\infty)^2 上の正の連続関数です。写像 Φ(u,v)=(uv, u(1−v))\Phi(u,v)=(uv,\,u(1-v)) は U=(0,∞)×(0,1)U=(0,\infty)\times(0,1) から VV への全単射で、逆写像 (x,y)↦(x+y, x/(x+y))(x,y)\mapsto(x+y,\,x/(x+y)) も C1C^1 級、det⁡DΦ=v⋅(−u)−u⋅(1−v)=−u≠0\det D\Phi=v\cdot(-u)-u\cdot(1-v)=-u\ne0 です。

0<ε<1/20<\varepsilon<1/2、R>1R>1 に対し E=[ε,R]×[ε,1−ε]⊂UE=[\varepsilon,R]\times[\varepsilon,1-\varepsilon]\subset U(コンパクト)とし、T=Φ(E)T=\Phi(E) とおきます。変数変換公式(定理 6.7[重積分と累次積分])とフビニの定理(系 4.3[重積分と累次積分])から

∬Tf dx dy=∬E(uv)a−1(u(1−v))b−1e−u u du dv=P(ε,R) Q(ε)\iint_Tf\,dx\,dy=\iint_E(uv)^{a-1}\bigl(u(1-v)\bigr)^{b-1}e^{-u}\,u\,du\,dv=P(\varepsilon,R)\,Q(\varepsilon)

です。ここで P(ε,R)=∫εRua+b−1e−uduP(\varepsilon,R)=\int_\varepsilon^Ru^{a+b-1}e^{-u}du、Q(ε)=∫ε1−εva−1(1−v)b−1dvQ(\varepsilon)=\int_\varepsilon^{1-\varepsilon}v^{a-1}(1-v)^{b-1}dv で、ε→0\varepsilon\to0、R→∞R\to\infty のとき P↗Γ(a+b)P\nearrow\Gamma(a+b)、Q↗B(a,b)Q\nearrow B(a,b) です。

上からの評価。 TT の点 (x,y)=(uv,u(1−v))(x,y)=(uv,u(1-v)) は x,y∈[ε2,R]x,y\in[\varepsilon^2,R] を満たします(u≥εu\ge\varepsilon、v,1−v≥εv,1-v\ge\varepsilon、u≤Ru\le R から)。f>0f>0 ですから、フビニの定理から

P(ε,R)Q(ε)≤∬[ε2,R]2f=∫ε2Rxa−1e−xdx∫ε2Ryb−1e−ydy≤Γ(a)Γ(b)P(\varepsilon,R)Q(\varepsilon)\le\iint_{[\varepsilon^2,R]^2}f=\int_{\varepsilon^2}^Rx^{a-1}e^{-x}dx\int_{\varepsilon^2}^Ry^{b-1}e^{-y}dy\le\Gamma(a)\Gamma(b)

です。ε→0\varepsilon\to0、R→∞R\to\infty として Γ(a+b)B(a,b)≤Γ(a)Γ(b)\Gamma(a+b)B(a,b)\le\Gamma(a)\Gamma(b) を得ます。

下からの評価。 0<δ<R′0<\delta<R' に対し、ε=min⁡{δ/(δ+R′), 2δ}<1/2\varepsilon=\min\{\delta/(\delta+R'),\,2\delta\}<1/2、R=2R′R=2R' とおくと [δ,R′]2⊂Tε,R[\delta,R']^2\subset T_{\varepsilon,R} です。実際 (x,y)∈[δ,R′]2(x,y)\in[\delta,R']^2 に対し u=x+y∈[2δ,2R′]⊂[ε,R]u=x+y\in[2\delta,2R']\subset[\varepsilon,R]、v=x/(x+y)v=x/(x+y)、1−v=y/(x+y)1-v=y/(x+y) はともに ≥δ/(δ+R′)≥ε\ge\delta/(\delta+R')\ge\varepsilon です。したがって

∫δR′xa−1e−xdx∫δR′yb−1e−ydy=∬[δ,R′]2f≤∬Tε,Rf=P(ε,R)Q(ε)≤Γ(a+b)B(a,b)\int_\delta^{R'}x^{a-1}e^{-x}dx\int_\delta^{R'}y^{b-1}e^{-y}dy=\iint_{[\delta,R']^2}f\le\iint_{T_{\varepsilon,R}}f=P(\varepsilon,R)Q(\varepsilon)\le\Gamma(a+b)B(a,b)

です。δ→0\delta\to0、R′→∞R'\to\infty として Γ(a)Γ(b)≤Γ(a+b)B(a,b)\Gamma(a)\Gamma(b)\le\Gamma(a+b)B(a,b) を得ます。2 つの不等式から等式が従い、Γ(a+b)>0\Gamma(a+b)>0 で割ります。

例 6.3(ベータ関数の値と三角関数の積分)

(1) B(1/2,1/2)=Γ(1/2)2/Γ(1)=πB(1/2,1/2)=\Gamma(1/2)^2/\Gamma(1)=\pi です。これは ∫01dxx(1−x)=π\int_0^1\frac{dx}{\sqrt{x(1-x)}}=\pi で、x=sin⁡2θx=\sin^2\theta と置換すれば ∫0π/22 dθ=π\int_0^{\pi/2}2\,d\theta=\pi と直接確かめられます。 (2) 同じ置換 x=sin⁡2θx=\sin^2\theta(dx=2sin⁡θcos⁡θ dθdx=2\sin\theta\cos\theta\,d\theta)を一般の a,ba,b に使うと

∫0π/2sin⁡2a−1θcos⁡2b−1θ dθ=12B(a,b)=Γ(a)Γ(b)2Γ(a+b)\int_0^{\pi/2}\sin^{2a-1}\theta\cos^{2b-1}\theta\,d\theta=\frac12B(a,b)=\frac{\Gamma(a)\Gamma(b)}{2\Gamma(a+b)}

です。a=(n+1)/2a=(n+1)/2、b=1/2b=1/2 とすると、例 6.5[積分の基本定理と定積分] のウォリス積分は

In=∫0π/2sin⁡nx dx=π Γ(n+12)2 Γ(n2+1)I_n=\int_0^{\pi/2}\sin^nx\,dx=\frac{\sqrt\pi\,\Gamma\bigl(\frac{n+1}2\bigr)}{2\,\Gamma\bigl(\frac n2+1\bigr)}

と表されます。n=2n=2 なら π⋅π/22⋅1=π4\frac{\sqrt\pi\cdot\sqrt\pi/2}{2\cdot1}=\frac\pi4 で、漸化式から出る I2=12⋅π2I_2=\frac12\cdot\frac\pi2 と一致します。

n!n! は nn について急速に増大します。その増大の速さを正確に表すのがスターリングの公式です。

定理 7.1(スターリングの公式)✓

n≥1n\ge1 に対して

2πn(ne)n≤n!≤2πn(ne)ne1/(12n)\sqrt{2\pi n}\Bigl(\frac ne\Bigr)^n\le n!\le\sqrt{2\pi n}\Bigl(\frac ne\Bigr)^ne^{1/(12n)}

が成り立つ。とくに n!∼2πn (n/e)nn!\sim\sqrt{2\pi n}\,(n/e)^n(n→∞n\to\infty で比が 11 に収束)である。

証明は 2 段階です。まず、an=n! en/nn+1/2a_n=n!\,e^n/n^{n+1/2} が単調に減少して正の極限 cc に収束することを示します。次に、ウォリスの公式から c=2πc=\sqrt{2\pi} を決めます。

補題 7.2(ana_n の単調性)✓

an=n! ennn+1/2a_n=\dfrac{n!\,e^n}{n^{n+1/2}} とおくと、すべての n≥1n\ge1 で

0<log⁡an−log⁡an+1<112n−112(n+1)0<\log a_n-\log a_{n+1}<\frac1{12n}-\frac1{12(n+1)}

が成り立つ。したがって (an)(a_n) は単調減少、(log⁡an−112n)(\log a_n-\frac1{12n}) は単調増加で、ana_n は正の数 cc に収束し、c≤an≤c e1/(12n)c\le a_n\le c\,e^{1/(12n)} である。

証明の方針です。log⁡an−log⁡an+1\log a_n-\log a_{n+1} を t=1/(2n+1)t=1/(2n+1) の関数 h(t)/(2t)−1h(t)/(2t)-1 に書き直し、これが 00 より大きく、かつ t23(1−t2)\frac{t^2}{3(1-t^2)} より小さいことを、それぞれ微分の符号で確かめます。v(t)v(t) の形は、右辺が t=1/(2n+1)t=1/(2n+1) のとき 112n−112(n+1)\frac1{12n}-\frac1{12(n+1)} になるように選んだものです。

証明(補題 7.2)

an/an+1=(1+1/n)n+1/2ea_n/a_{n+1}=\dfrac{(1+1/n)^{n+1/2}}e ですから log⁡anan+1=(n+12)log⁡(1+1n)−1\log\dfrac{a_n}{a_{n+1}}=(n+\tfrac12)\log\bigl(1+\tfrac1n\bigr)-1 です。t=12n+1∈(0,1)t=\dfrac1{2n+1}\in(0,1) とおくと 1+1n=1+t1−t1+\frac1n=\frac{1+t}{1-t}、n+12=12tn+\frac12=\frac1{2t} なので、h(t)=log⁡1+t1−th(t)=\log\frac{1+t}{1-t} として

log⁡anan+1=h(t)2t−1.\log\frac{a_n}{a_{n+1}}=\frac{h(t)}{2t}-1 .

下からの評価。 u(t)=h(t)−2tu(t)=h(t)-2t は u(0)=0u(0)=0、u′(t)=21−t2−2=2t21−t2>0u'(t)=\frac2{1-t^2}-2=\frac{2t^2}{1-t^2}>0 ですから、0<t<10<t<1 で u(t)>0u(t)>0、つまり h2t−1>0\frac{h}{2t}-1>0 です。 上からの評価。 v(t)=2t+2t33(1−t2)−h(t)v(t)=2t+\dfrac{2t^3}{3(1-t^2)}-h(t) とおくと v(0)=0v(0)=0 で、計算により

v′(t)=2+23⋅3t2−t4(1−t2)2−21−t2=4t43(1−t2)2>0v'(t)=2+\frac23\cdot\frac{3t^2-t^4}{(1-t^2)^2}-\frac2{1-t^2}=\frac{4t^4}{3(1-t^2)^2}>0

(通分すると分子は 2(1−t2)2+23(3t2−t4)−2(1−t2)=43t42(1-t^2)^2+\tfrac23(3t^2-t^4)-2(1-t^2)=\tfrac43t^4)ですから v(t)>0v(t)>0 で、h2t−1<t23(1−t2)\frac{h}{2t}-1<\frac{t^2}{3(1-t^2)} です。t=12n+1t=\frac1{2n+1} のとき t21−t2=1(2n+1)2−1=14n(n+1)\frac{t^2}{1-t^2}=\frac1{(2n+1)^2-1}=\frac1{4n(n+1)} ですから、右辺は 112n(n+1)=112n−112(n+1)\frac1{12n(n+1)}=\frac1{12n}-\frac1{12(n+1)} です。

以上から log⁡an\log a_n は減少、log⁡an−112n\log a_n-\frac1{12n} は増加です。減少列 (an)(a_n) は log⁡an≥log⁡a1−112+112n>0\log a_n\ge\log a_1-\frac1{12}+\frac1{12n}>0(a1=e>e1/12a_1=e>e^{1/12})で下に有界ですから収束し(定理 2.1[級数と収束判定])、極限 c>0c>0 です。an↓ca_n\downarrow c から an≥ca_n\ge c、log⁡an−112n↑log⁡c\log a_n-\frac1{12n}\uparrow\log c から an≤ce1/(12n)a_n\le ce^{1/(12n)} です。

証明(定理 7.1)

c=2πc=\sqrt{2\pi} を示せば、補題 7.2 の c≤an≤ce1/(12n)c\le a_n\le ce^{1/(12n)} が定理の不等式そのものです。ウォリス積分 In=∫0π/2sin⁡nx dxI_n=\int_0^{\pi/2}\sin^nx\,dx の漸化式 In=n−1nIn−2I_n=\frac{n-1}nI_{n-2}(命題 6.4[積分の基本定理と定積分])と I0=π/2I_0=\pi/2、I1=1I_1=1(同じ命題)から、帰納法で

I2m=π2wm,I2m+1=1(2m+1) wm,wm=(2m)!4m(m!)2I_{2m}=\frac\pi2w_m,\qquad I_{2m+1}=\frac1{(2m+1)\,w_m},\qquad w_m=\frac{(2m)!}{4^m(m!)^2}

が得られます(wm=1⋅3⋯(2m−1)2⋅4⋯2mw_m=\frac{1\cdot3\cdots(2m-1)}{2\cdot4\cdots2m} なので wm=2m−12mwm−1w_m=\frac{2m-1}{2m}w_{m-1}、I2m=2m−12mI2m−2I_{2m}=\frac{2m-1}{2m}I_{2m-2} と I2m+1=2m2m+1I2m−1I_{2m+1}=\frac{2m}{2m+1}I_{2m-1} が対応)。0≤sin⁡x≤10\le\sin x\le1 より I2m+1≤I2m≤I2m−1I_{2m+1}\le I_{2m}\le I_{2m-1} ですから

1≤I2mI2m+1≤I2m−1I2m+1=2m+12m→11\le\frac{I_{2m}}{I_{2m+1}}\le\frac{I_{2m-1}}{I_{2m+1}}=\frac{2m+1}{2m}\to1

で、I2mI2m+1=π2(2m+1) wm2→1\frac{I_{2m}}{I_{2m+1}}=\frac\pi2(2m+1)\,w_m^2\to1、すなわち (2m+1)wm2→2π(2m+1)w_m^2\to\frac2\pi です。

一方、n!=annn+1/2e−nn!=a_nn^{n+1/2}e^{-n} を wmw_m に代入すると

wm=a2m(2m)2m+1/2e−2m4m am2 m2m+1e−2m=a2mam2⋅2mw_m=\frac{a_{2m}(2m)^{2m+1/2}e^{-2m}}{4^m\,a_m^2\,m^{2m+1}e^{-2m}}=\frac{a_{2m}}{a_m^2}\cdot\frac{\sqrt2}{\sqrt m}

ですから (2m+1)wm2=2m+1m⋅2a2m2am4→2⋅2c2c4=4c2(2m+1)w_m^2=\dfrac{2m+1}m\cdot\dfrac{2a_{2m}^2}{a_m^4}\to2\cdot\dfrac{2c^2}{c^4}=\dfrac4{c^2} です。両者を比べて 4/c2=2/π4/c^2=2/\pi、c2=2πc^2=2\pi、c>0c>0 より c=2πc=\sqrt{2\pi} です。

例 7.3(数値で確かめる)

n=5n=5: 5!=1205!=120、10π (5/e)5≈118.02\sqrt{10\pi}\,(5/e)^5\approx118.02、比は 1.01681.0168 で、上限 e1/60≈1.0168e^{1/60}\approx1.0168 のすぐ下にあります。n=10n=10: 10!=3 628 80010!=3\,628\,800、20π (10/e)10≈3 598 696\sqrt{20\pi}\,(10/e)^{10}\approx3\,598\,696、比は 1.00841.0084 で、上限 e1/120≈1.0084e^{1/120}\approx1.0084 の範囲内です。誤差 112n\frac1{12n} は nn が小さくても驚くほど良い見積もりです。

例 7.4(中央二項係数の漸近形)

(2nn)=(2n)!(n!)2\binom{2n}n=\dfrac{(2n)!}{(n!)^2} に 定理 7.1 を使うと、分子は 4πn(2n/e)2n\sqrt{4\pi n}(2n/e)^{2n}、分母は 2πn(n/e)2n2\pi n(n/e)^{2n} に漸近し、

(2nn)∼4πn 4n2πn=4nπn\binom{2n}n\sim\frac{\sqrt{4\pi n}\,4^n}{2\pi n}=\frac{4^n}{\sqrt{\pi n}}

です。これは 定理 7.1 の証明で wn=(2nn)/4n∼1/πnw_n=\binom{2n}n/4^n\sim1/\sqrt{\pi n} を使った計算と同じ内容です。

注意 7.5(実数引数と定数 2π\sqrt{2\pi} の由来)

ガンマ関数についても Γ(s+1)∼2πs (s/e)s\Gamma(s+1)\sim\sqrt{2\pi s}\,(s/e)^s(s→∞s\to\infty)が成り立ちます。これは被積分関数 xse−xx^se^{-x} が x=sx=s の近くでガウス関数の形をしていることから導かれます(ラプラスの方法)。この記事では整数 nn の場合だけを証明しました。定数 2π\sqrt{2\pi} は、ガウス積分 ∫−∞∞e−x2/2dx=2π\int_{-\infty}^\infty e^{-x^2/2}dx=\sqrt{2\pi} に現れる定数と同じものです。ガウス測度の正規化定数として確率論でも使われます。

演習 8.1標準

次の広義積分が収束するための α\alpha の範囲を求めよ。(1) ∫0∞xα1+x2dx\displaystyle\int_0^\infty\frac{x^\alpha}{1+x^2}dx。(2) ∫01dxxα(1−x)1/2\displaystyle\int_0^1\frac{dx}{x^\alpha(1-x)^{1/2}}。

解答

(1) [0,1][0,1] では xα1+x2≍xα\frac{x^\alpha}{1+x^2}\asymp x^\alpha なので α>−1\alpha>-1 が必要十分、[1,∞)[1,\infty) では ≍xα−2\asymp x^{\alpha-2} なので α−2<−1\alpha-2<-1、つまり α<1\alpha<1 が必要十分です(例 2.5 と比較判定法)。したがって −1<α<1-1<\alpha<1。(2) x=0x=0 の近くで x−αx^{-\alpha}、x=1x=1 の近くで (1−x)−1/2(1-x)^{-1/2} と比較できます。α<1\alpha<1 が必要十分で、このとき B(1−α,12)B(1-\alpha,\tfrac12) に等しい。

演習 8.2標準

次の値を求めよ。(1) ∫01x2(1−x)3dx\displaystyle\int_0^1x^2(1-x)^3dx。(2) ∫0∞x3e−x2dx\displaystyle\int_0^\infty x^3e^{-x^2}dx。(3) Γ(7/2)\Gamma(7/2)。

解答

(1) B(3,4)=Γ(3)Γ(4)Γ(7)=2⋅6720=160B(3,4)=\dfrac{\Gamma(3)\Gamma(4)}{\Gamma(7)}=\dfrac{2\cdot6}{720}=\dfrac1{60}。(2) x2=yx^2=y と置換して 12∫0∞y e−ydy=12Γ(2)=12\frac12\int_0^\infty y\,e^{-y}dy=\frac12\Gamma(2)=\frac12。(3) Γ(72)=52⋅32⋅12Γ(12)=158π\Gamma(\tfrac72)=\tfrac52\cdot\tfrac32\cdot\tfrac12\Gamma(\tfrac12)=\tfrac{15}8\sqrt\pi。

演習 8.3標準

t>0t>0 に対し I(t)=∫0∞e−tx2dx=12π/tI(t)=\int_0^\infty e^{-tx^2}dx=\frac12\sqrt{\pi/t} が成り立つことを使って、定理 4.5 により ∫0∞x2e−x2dx\int_0^\infty x^2e^{-x^2}dx を求めよ。

解答

∂t(e−tx2)=−x2e−tx2\partial_t(e^{-tx^2})=-x^2e^{-tx^2} で、t>t0>0t>t_0>0 で ∣⋅∣≤x2e−t0x2|\cdot|\le x^2e^{-t_0x^2}、右辺は積分可能ですから積分版 M 判定法で一様収束です。I(1)I(1) は収束していますから、定理 4.5 から I′(t)=−∫0∞x2e−tx2dxI'(t)=-\int_0^\infty x^2e^{-tx^2}dx です。I(t)=π2t−1/2I(t)=\frac{\sqrt\pi}2t^{-1/2} ですから I′(t)=−π4t−3/2I'(t)=-\frac{\sqrt\pi}4t^{-3/2}、t=1t=1 として ∫0∞x2e−x2dx=π4\int_0^\infty x^2e^{-x^2}dx=\frac{\sqrt\pi}4 です。Γ(3/2)/2=π4\Gamma(3/2)/2=\frac{\sqrt\pi}4 とも一致します。

演習 8.4易

定理 7.1 を使って、lim⁡n→∞(n!)1/nn=1e\lim_{n\to\infty}\dfrac{(n!)^{1/n}}{n}=\dfrac1e を示せ。

解答

定理より n!=2πn (n/e)neθnn!=\sqrt{2\pi n}\,(n/e)^ne^{\theta_n}、0≤θn≤112n0\le\theta_n\le\frac1{12n} と書けます。両辺を 1/n1/n 乗して nn で割ると (n!)1/nn=1e (2πn)1/(2n)eθn/n\dfrac{(n!)^{1/n}}n=\dfrac1e\,(2\pi n)^{1/(2n)}e^{\theta_n/n} です。(2πn)1/(2n)=exp⁡(log⁡(2πn)2n)→1(2\pi n)^{1/(2n)}=\exp\bigl(\frac{\log(2\pi n)}{2n}\bigr)\to1、θn/n→0\theta_n/n\to0 ですから、極限は 1/e1/e です。

  • 杉浦光夫『解析入門 I』東京大学出版会、1980。
  • 杉浦光夫『解析入門 II』東京大学出版会、1985。
  • 高木貞治『解析概論』岩波書店(改訂第三版、1961)。
  • W. Feller, An Introduction to Probability Theory and Its Applications, Vol. I, 3rd ed., Wiley, 1968 — Chapter II §9(スターリングの公式の初等的証明)。

このテーマの 100 本ノック(100 問)

執筆: Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 3 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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