この記事は、積分の中に文字(パラメータ)が入っているとき、その文字での微分や極限を、積分の外と中のどちらで先に行ってよいのかを調べます。この答えを使うと、原始関数が書けない積分の値が求まり、階乗 n! を整数以外にも広げた関数が作れ、n! のおよその大きさを表す公式まで導けます。
- 広義積分は「区間を広げる極限」で定義されます。収束判定は級数の判定法とほぼ同じ形(コーシーの判定法・比較判定法・絶対収束)で、∫1∞sinx/xdx のような条件収束(積分は収束するが、絶対値の積分は発散すること)はディリクレの判定法(§2 で証明します)で扱います。
- パラメータ t を含む積分 F(t)=∫f(x,t)dx について、「t で微分して積分」と「積分して t で微分」を交換してよいかが問題になります。有界閉区間なら f と ∂tf の連続性で十分、無限区間なら積分の一様収束が条件になります。
- この道具で、ガウス積分 ∫0∞e−x2dx=π/2、e−x2 のフーリエ変換、フルラニ型の積分(∫0∞(e−ax−e−bx)/xdx の形のもの)が、すべて微分方程式を立てる形で計算できます。
- ガンマ関数 Γ(s)=∫0∞xs−1e−xdx は階乗の一般化 Γ(n+1)=n! で、ベータ関数とは B(a,b)=Γ(a)Γ(b)/Γ(a+b) で結ばれます。
- スターリングの公式 n!∼2πn(n/e)n は、logn! の単調性とウォリスの公式だけで証明でき、2π という定数はウォリス積分(∫0π/2sinnxdx)から現れます。
次の 3 つの計算を考えます。
- ∫0∞e−x2dx は原始関数が初等関数で書けません。それでも値 π/2 は求まります(その 1 つの方法を §3 で示します)。
- 階乗 n!=1⋅2⋯n を整数でない s に拡張するにはどうしたらよいでしょうか。部分積分を繰り返すと ∫0∞xne−xdx=n! が出てくるので、n を実数 s−1 に置き換えたもの Γ(s) が自然な候補です(§5)。
- n! は n とともに急速に大きくなります。その大きさを、n の初等的な式で 1+o(1) の精度で見積もれるでしょうか(§7)。
これらに共通するのは、被積分関数が「変数 x」と「パラメータ t(または s)」の両方を持ち、さらに積分区間が無限、あるいは端点で被積分関数が発散していることです。ここでは 2 種類の注意が必要になります。
- 無限区間・非有界関数の積分: 広義積分として、極限を使って定義する。極限が存在するかどうかの判定が要る。
- 積分と微分・極限の交換: dtd∫fdx=∫∂tfdx は一般には成り立たない。成り立つための条件が要る。
たとえば f(x,t)=te−tx では、t>0 で ∫0∞fdx=1 ですが、t=0 では f=0 なので ∫0∞fdx=0 です。パラメータ t の関数として F(t) は t=0 で不連続になります。積分と極限の交換が許されない典型例で、この例が壊れる原因(§4 の「一様収束」)が、この記事の主題の 1 つです。
以下 a<ω≤∞ とし、f:[a,ω)→R は連続とします。
定義 2.1(広義積分)↗
任意の b∈[a,ω) に対して ∫abf(x)dx は存在します(連続関数の積分、定理 3.5[積分の基本定理と定積分])。極限
∫aωf(x)dx=b→ω−0lim∫abf(x)dxが有限の値として存在するとき、広義積分は収束するといいます。存在しない(または ±∞ の)とき発散するといいます。(α,b] 上で連続な関数についても、∫αbf=limc→α+0∫cbf で同様に定義します。(α,ω) 上で連続な f については、α<c<ω をとって ∫αcf と ∫cωf がともに収束するとき、その和を ∫αωf とします(c の取り方によらない)。
端点が有限で被積分関数が発散する例が ∫01x−1/2dx=limc→+0[2x]c1=2 です。区間が無限の例が ∫0∞e−xdx=1 です。
定理 2.2(広義積分のコーシーの判定法)✓
∫aωf(x)dx が収束するための必要十分条件は、任意の ε>0 に対して c∈[a,ω) が存在し、c<b<b′<ω をみたすすべての b,b′ について
∫bb′f(x)dx<εが成り立つことです。
証明(定理 2.2)
G(b)=∫abf(x)dx とおくと ∫bb′f=G(b′)−G(b) です。
(必要性)G(b)→L とします。ε/2 に対して c を、b>c なら ∣G(b)−L∣<ε/2 となるようにとれば、c<b<b′ で ∣G(b′)−G(b)∣<ε です。
(十分性)bn∈[a,ω) を bn→ω の増加列とします。仮定から (G(bn)) はコーシー列で、実数の完備性(定理 7.3[実数の完備性とコーシー列])によりある L に収束します。別の列 bn′→ω に対しても、2 つの列を交互に並べた列にコーシー列の条件を使うと G(bn′)→L です。したがって limb→ωG(b)=L です。
∎
定理 2.3(比較判定法と絶対収束)✓
f,g:[a,ω)→R を連続とする。
- 0≤f≤g で ∫aωg が収束するなら ∫aωf も収束し、∫aωf≤∫aωg。
- ∫aω∣f∣ が収束するなら ∫aωf も収束し、∫aωf≤∫aω∣f∣。
証明(定理 2.3)
(1) G(b)=∫abf は b について単調増加で、G(b)≤∫abg≤∫aωg と上に有界です。増加列 bn→ω に対し G(bn) は単調有界数列として収束し(定理 2.1[級数と収束判定])、その極限は supbG(b) です。G 自身が単調ですから limb→ωG(b)=supG で収束し、≤∫g です。
(2) ∫bb′f≤∫bb′∣f∣ で、右辺は 定理 2.2 を ∣f∣ に使って小さくできます。同じ判定法を f に使えば収束がいえます。
∎
命題 2.4(べき関数の広義積分の収束条件)✓
p∈R とする。∫1∞x−pdx は p>1 のときに限り収束し、∫01x−pdx は p<1 のときに限り収束する。
証明(命題 2.4)
∫1∞ は b→∞ のときの ∫1bx−pdx の極限、∫01 は c→+0 のときの ∫c1x−pdx の極限です。p=1 のとき原始関数 1−px1−p と 定理 5.4[積分の基本定理と定積分] より ∫1bx−pdx=1−pb1−p−1 で、p>1 なら b1−p→0 なので p−11 に収束し、p<1 なら b1−p→∞ で発散します。p=1 では ∫1bx−1dx=logb→∞ で発散します。同様に p=1 のとき ∫c1x−pdx=1−p1−c1−p で、p<1 なら c1−p→0 で 1−p1 に収束し、p>1 なら c1−p→∞ で発散します。p=1 では ∫c1x−1dx=−logc→∞ で発散します。
∎
例 2.5(べき関数の広義積分)
∫1∞x−pdx は p>1 のときに限り収束する,∫01x−pdx は p<1 のときに限り収束する.実際 p=1 で ∫1bx−pdx=1−pb1−p−1 は b→∞ で p>1 なら p−11 に収束、p<1 なら発散し、p=1 では logb→∞ です。∫c1x−pdx も同様です。これは級数 ∑n−p の収束条件(定理 5.1[級数と収束判定])の積分版です。
絶対値の積分が発散しても、振動のおかげで収束する積分があります。
定理 2.6(ディリクレの判定法)✓
f:[a,∞)→R を連続で、ある M について ∫abf≤M(b≥a)とする。g:[a,∞)→R を C1 級で、単調減少かつ g(x)→0(x→∞)とする。このとき ∫a∞f(x)g(x)dx は収束する。
証明(定理 2.6)
F(x)=∫axf とおくと、定理 5.2[積分の基本定理と定積分] から F は C1 級で F′=f、∣F∣≤M です。部分積分(定理 6.2[積分の基本定理と定積分])から
∫abfgdx=F(b)g(b)−F(a)g(a)−∫abF(x)g′(x)dx=F(b)g(b)−∫abFg′dxです(F(a)=0)。∣F(b)g(b)∣≤Mg(b)→0。また g′≤0 なので ∫ab∣Fg′∣dx≤M∫ab(−g′)dx=M(g(a)−g(b))≤Mg(a) で、∫a∞∣Fg′∣ は 定理 2.3 の (1) により収束します。(2) により ∫a∞Fg′ が収束し、したがって ∫abfg の極限が存在します。
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例 2.7(∫0∞sinx/xdx は条件収束する)
[0,1] では sinx/x は x=0 での値を 1 とすれば連続で、∫01 は通常の積分です。[1,∞) では f=sinx、g=1/x とすると ∣∫1bsinxdx∣=∣cos1−cosb∣≤2 で、定理 2.6 の仮定を満たします。よって収束します。一方、∫1∞∣sinx∣/xdx は発散します(∣sinx∣≥sin2x=(1−cos2x)/2 に 定理 2.6 を使えば ∫cos2x/x は収束し、∫dx/(2x) は発散するため)。このように、収束するが絶対収束しない積分を条件収束といいます。値が π/2 であることは ボールウェイン積分 の 定理 3.2[ボールウェイン積分] で示されます。
パラメータ t を含む積分 F(t)=∫abf(x,t)dx の性質を調べます。積分区間が有界閉区間なら、必要な条件は連続性だけです。鍵は次の補題です。
証明(補題 3.1)
そうでないとすると、ある ε>0 と K の点列 pk,qk で ∥pk−qk∥<1/k かつ ∣h(pk)−h(qk)∣≥ε となるものがあります。ボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理(定理 6.3[実数の完備性とコーシー列])を各成分に 2 回使うと、部分列 pkj→p∈K(K は閉)が取れます。すると qkj→p でもあり、h の連続性から ∣h(pkj)−h(qkj)∣→0 となって矛盾します。
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定理 3.2(パラメータ積分の連続性)✓
f:[a,b]×[c,d]→R が連続ならば、F(t)=∫abf(x,t)dx は [c,d] 上連続である。
証明(定理 3.2)
ε>0 をとり、補題 3.1 で ε/(b−a) に対する η を取ります。∣t−t′∣<η なら、すべての x について ∣f(x,t)−f(x,t′)∣<ε/(b−a) ですから
∣F(t)−F(t′)∣≤∫ab∣f(x,t)−f(x,t′)∣dx≤εです。
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微分についての定理は、前の記事の 補題 3.6[ベクトル解析と積分定理] で示しました(同じ一様連続性の議論)。ここでは結論だけ再掲します。f と ∂tf が [a,b]×J で連続なら
dtd∫abf(x,t)dx=∫ab∂t∂f(x,t)dx
で、右辺は t の連続関数です。以下この等式を「有界閉区間での微分公式」と呼びます。これを使って、初等関数で表せない積分を計算します。
定理 3.3(ガウス積分)✓
広義積分 ∫0∞e−x2dx は収束し、その値は π/2 である。したがって ∫−∞∞e−x2dx=π。
e−x2 には初等的な原始関数がないので、値を直接は求められません。そこで g(t)=∫0te−x2dx の 2 乗 A(t) に、もう 1 つの関数 B(t) を足して、微分すると打ち消し合うようにします。A+B が定数になれば、t=0 での値 π/4 が分かり、t→∞ では B→0 なので A→π/4 と読めます。B は、導関数 B′ が A′ の積分表示と符号だけが逆になるように選んだ関数です。
証明(定理 3.3)
x≥1 で e−x2≤e−x で ∫1∞e−xdx<∞ ですから、定理 2.3 により収束します。I=∫0∞e−x2dx>0 とおき、
g(t)=∫0te−x2dx,A(t)=g(t)2,B(t)=∫011+s2e−t2(1+s2)dsとします。A′(t)=2g(t)e−t2 で、g(t)=∫0te−x2dx を x=ts と置換(定理 6.1[積分の基本定理と定積分])すると g(t)=t∫01e−t2s2ds ですから
A′(t)=2te−t2∫01e−t2s2ds=∫012te−t2(1+s2)ds.一方、有界閉区間での微分公式を B に使うと(被積分関数と ∂t は [0,1]×R で連続)
B′(t)=∫011+s2−2t(1+s2)e−t2(1+s2)ds=−∫012te−t2(1+s2)ds=−A′(t)です。よって A+B は定数で、A(0)+B(0)=0+∫011+s2ds=4π です。t→∞ では 0≤B(t)≤e−t2∫011+s2ds→0 ですから A(t)→π/4、つまり I2=π/4 で、I>0 より I=π/2 です。
∎
別の導出として、二重積分と極座標を使うものが 例 6.12[重積分と累次積分] にあります。上の証明は 2 重積分を使わずに 1 変数の微積分だけで済む点が特徴です。
積分区間が無限、あるいは被積分関数が端点で発散する場合に同じ公式を使うには、積分の収束がパラメータについて一様でなければなりません。以下、a<ω≤∞、J⊂R は区間、f:[a,ω)×J→R は連続とし、すべての t∈J で ∫aωf(x,t)dx が収束するとします。
命題 4.2(積分版 M 判定法)✓
連続関数 M:[a,ω)→[0,∞) で ∣f(x,t)∣≤M(x)(x∈[a,ω), t∈J)かつ ∫aωM(x)dx<∞ となるものがあれば、∫aωf(x,t)dx は J 上一様収束(絶対収束)する。
証明(命題 4.2)
∫bωf(x,t)dx≤∫bωM(x)dx で、右辺は t に依らず、b→ω で 0 に収束します(収束する積分の尾部)。
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定理 4.4(広義パラメータ積分の連続性)✓
∫aωf(x,t)dx が J 上一様収束するならば、F(t)=∫aωf(x,t)dx は J 上連続である。
証明(定理 4.4)
bn∈[a,ω) を bn→ω の列とし、Fn(t)=∫abnf(x,t)dx とおきます。f は [a,bn]×K(K⊂J は任意の有界閉区間)で連続ですから、定理 3.2 から Fn は連続です。一様収束の仮定から supt∣F(t)−Fn(t)∣=supt∫bnωf→0 ですから、Fn⇉F(定義 3.2[関数列と一様収束])で、一様収束極限の連続性(定理 4.1[関数列と一様収束])から F は連続です。
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定理 4.5(広義積分の積分記号下の微分)✓
J を開区間、f と ∂tf を [a,ω)×J 上で連続とします。ある t0∈J で ∫aωf(x,t0)dx が収束し、∫aω∂tf(x,t)dx が J 上一様収束するならば、すべての t∈J で F(t)=∫aωf(x,t)dx は収束し、F は C1 級で
F′(t)=∫aω∂t∂f(x,t)dxが成り立ちます。
証明の方針は次のとおりです。区間を [a,bn] で打ち切った積分 Fn には、有界閉区間での微分公式がそのまま使えます。あとは n→∞ としたときに、微分した関数 Fn′ が一様収束することを使って、極限の関数も微分可能で、その導関数が Fn′ の極限になることを示します(関数列の一様収束と項別微分の定理を使います)。
証明(定理 4.5)
bn→ω の増加列をとり、Fn(t)=∫abnf(x,t)dx とおきます。有界閉区間での微分公式により Fn は C1 級で Fn′(t)=∫abn∂tf(x,t)dx です。G(t)=∫aω∂tf(x,t)dx とおくと、一様収束の仮定から Fn′⇉G です。また Fn(t0)→∫aωf(x,t0)dx は収束します。t0 を含む任意の有界閉区間 [α,β]⊂J に 項別微分の定理(定理 7.3[関数列と一様収束])を使うと、Fn は [α,β] 上である関数 F~ に収束し、F~ は C1 級で F~′=G です。F~(t0) は列 (bn) の取り方に依らず、F~′=G も列に依らないので、F~(t)=F~(t0)+∫t0tG も列に依りません。したがって limb→ω∫abf(x,t)dx が存在して F~(t)=F(t) に等しく、F′=G です。G は 定理 4.4 から連続です。
∎
端点 α で発散する (α,b] 型の広義積分についても、x↦α+b−x で向きを入れ替えれば同じ定理が成り立ちます。
例 4.6(ガウス関数のフーリエ余弦変換)
Φ(t)=∫0∞e−x2cos(2tx)dx とします。∂t(e−x2cos2tx)=−2xe−x2sin(2tx) は ∣⋅∣≤2xe−x2 で、∫0∞2xe−x2dx=1<∞ ですから、命題 4.2 により一様収束です。Φ(0)=π/2(定理 3.3)で収束するので 定理 4.5 が使え、部分積分(u=sin2tx、v=e−x2)を行うと
Φ′(t)=∫0∞sin(2tx)d(e−x2)=[e−x2sin2tx]0∞−2t∫0∞e−x2cos2txdx=−2tΦ(t)です。(et2Φ)′=0 ですから、Φ(t)=2πe−t2 が得られます。ガウス関数のフーリエ変換がまたガウス関数になる、という事実の実解析的な証明です。
例 4.7(フルラニ型の積分)
a,b>0 に対し F(a)=∫0∞xe−ax−e−bxdx=logab です。被積分関数は x=0 での値を b−a とすれば [0,∞)×(0,∞) で連続で、a=b のとき積分は 0 ですから収束します。∂a は −e−ax で、a>a0>0 では ∣−e−ax∣≤e−a0x と積分版 M 判定法(命題 4.2)から一様収束です。定理 4.5 により F′(a)=−∫0∞e−axdx=−1/a、よって F(a)=−loga+C で、F(b)=0 から F(a)=log(b/a) を得ます。
定義 5.1(ガンマ関数)↗
s>0 に対し
Γ(s)=∫0∞xs−1e−xdxと定めます。
この広義積分は、x=0 と x=∞ の両端で問題があります。[0,∞) を (0,1] と [1,∞) に分けて調べます。
命題 5.2(ガンマ積分の収束)✓
s>0 のとき Γ(s) は収束し、Γ(s)>0 である。
証明の方針です。x=0 の近くでは xs−1 との比較で、x→∞ の近くでは「指数関数 e−x はどんなべきよりも速く 0 に近づく」ことで、それぞれ上から押さえます。後者のために整数 m を m≥s となるようにとり、ex/2 の級数展開の m 次の項で下から評価して、x のべきを打ち消します。
証明(命題 5.2)
0<x≤1 では xs−1e−x≤xs−1 で、命題 2.4 の p=1−s<1 から ∫01xs−1dx=1/s は収束します。x≥1 では、整数 m≥s を取ると ex/2≥(x/2)m/m!(指数関数の級数展開の 1 項)ですから、xs−1e−x/2≤m!2mxs−1−m≤m!2m です。したがって xs−1e−x≤m!2me−x/2 で、右辺は [1,∞) で積分可能ですから、定理 2.3 により収束します。被積分関数は正の連続関数なので Γ(s)>0 です。
∎
定理 5.3(ガンマ関数の関数等式)✓
s>0 に対し Γ(s+1)=sΓ(s) である。とくに Γ(1)=1 であり、自然数 n に対し Γ(n+1)=n! である。また Γ(1/2)=π である。
証明(定理 5.3)
0<ε<R に対し、部分積分(定理 6.2[積分の基本定理と定積分])で
∫εRxse−xdx=[−xse−x]εR+s∫εRxs−1e−xdxです。s>0 ですから εse−ε→0、また Rse−R→0(命題 5.2 の証明の評価 xse−x/2≤C から)で、ε→0、R→∞ として Γ(s+1)=sΓ(s) を得ます。Γ(1)=∫0∞e−xdx=1 で、これと帰納法から Γ(n+1)=nΓ(n)=⋯=n!Γ(1)=n! です。最後に x=y2(dx=2ydy)と置換すると Γ(1/2)=∫0∞y−1e−y22ydy=2∫0∞e−y2dy=π です(定理 3.3)。
∎
したがって Γ は階乗を実数に拡張します。たとえば Γ(3/2)=21Γ(21)=2π、Γ(5/2)=23⋅2π=43π です。
ガンマ関数 Γ(s)(0.25 ≤ s ≤ 4)。Γ(1)=Γ(2)=1、Γ(3)=2、Γ(4)=6 と階乗を通り、s→0 で発散し、s≈1.46 で最小値 0.886 をとる
命題 5.4(ガンマ関数の滑らかさ)✓
Γ は (0,∞) 上で何回でも微分可能(C∞ 級)で、各 k≥0 について
Γ(k)(s)=∫0∞xs−1(logx)ke−xdxである。
証明の方針です。s で微分すると被積分関数に logx が 1 つ掛かります。x→+0 で logx は発散しますが、その発散は x−δ(δ>0 は小さくてよい)のような小さなべきより遅いので、定数 C を使って x−δ で押さえられます。こうして積分版 M 判定法が使える形になり、微分と積分が交換できます。
証明(命題 5.4)
k≥0 に対し Γk(s)=∫0∞xs−1(logx)ke−xdx とおき、0<s0<s1、J=(s0,s1) を固定します。Γk が J で収束し、Γk′=Γk+1 となることを示せば、帰納法で主張が従います。f(x,s)=xs−1(logx)ke−x は (0,∞)×J で連続で、∂sf=xs−1(logx)k+1e−x も連続です。
[1,∞) での評価。 logx≤x より、s<s1 のとき ∣∂sf∣≤xs1−1+k+1e−x=:M1(x)。命題 5.2 の証明と同じ評価で ∫1∞M1<∞ です。
(0,1] での評価。 x→+0 で xδ∣logx∣k+1→0 ですから(δ=s0/2)、ある定数 C について ∣logx∣k+1≤Cx−δ(0<x≤1)で、s>s0 のとき ∣∂sf∣≤Cxs0−1−δ=Cxs0/2−1=:M0(x)。命題 2.4 から ∫01M0<∞ です。
したがって積分版 M 判定法(命題 4.2、(0,1] では端点の向きを入れ替える)から、∫∂sfdx は J 上一様収束します。同様の評価(k を k+1 から k に落とすだけ)で Γk(s) は収束します。定理 4.5 を [1,∞) と (0,1] のそれぞれに使うと、Γk は微分可能で Γk′=Γk+1 です。s0,s1 は任意なので (0,∞) 上で成り立ちます。
∎
定義 6.1(ベータ関数)↗
a,b>0 に対し B(a,b)=∫01xa−1(1−x)b−1dx と定めます。
x=0 の近くでは (1−x)b−1 が有界で xa−1 と比較でき、x=1 の近くでは同様に (1−x)b−1 と比較できるので、命題 2.4 により収束します。次の定理は、ベータ関数がガンマ関数で書けることを示します。証明は、2 変数の広義積分を、有界閉集合上の積分(フビニの定理と変数変換が使える)で挟んで評価する方法で行います。
定理 6.2(ベータ関数とガンマ関数の関係)✓
a,b>0 に対し
B(a,b)=Γ(a+b)Γ(a)Γ(b)が成り立つ。
証明の方針です。Γ(a)Γ(b) は x,y の 2 重積分で、変換 (u,v)=(x+y,x/(x+y)) をすると積分が u だけの積分と v だけの積分の積に分かれ、それぞれ Γ(a+b) と B(a,b) になります。ただし第 1 象限全体は有界ではないので、端を少し削った有界閉の領域を使い、変換後の長方形の像 T が正方形を含む場合と、正方形が T を含む場合の 2 通りで上と下から挟みます。下からの評価の複雑な ε は、正方形がちょうど T に入るように選んだものです。
証明(定理 6.2)
f(x,y)=xa−1yb−1e−x−y は第 1 象限 V=(0,∞)2 上の正の連続関数です。写像 Φ(u,v)=(uv,u(1−v)) は U=(0,∞)×(0,1) から V への全単射で、逆写像 (x,y)↦(x+y,x/(x+y)) も C1 級、detDΦ=v⋅(−u)−u⋅(1−v)=−u=0 です。
0<ε<1/2、R>1 に対し E=[ε,R]×[ε,1−ε]⊂U(コンパクト)とし、T=Φ(E) とおきます。変数変換公式(定理 6.7[重積分と累次積分])とフビニの定理(系 4.3[重積分と累次積分])から
∬Tfdxdy=∬E(uv)a−1(u(1−v))b−1e−uududv=P(ε,R)Q(ε)です。ここで P(ε,R)=∫εRua+b−1e−udu、Q(ε)=∫ε1−εva−1(1−v)b−1dv で、ε→0、R→∞ のとき P↗Γ(a+b)、Q↗B(a,b) です。
上からの評価。 T の点 (x,y)=(uv,u(1−v)) は x,y∈[ε2,R] を満たします(u≥ε、v,1−v≥ε、u≤R から)。f>0 ですから、フビニの定理から
P(ε,R)Q(ε)≤∬[ε2,R]2f=∫ε2Rxa−1e−xdx∫ε2Ryb−1e−ydy≤Γ(a)Γ(b)です。ε→0、R→∞ として Γ(a+b)B(a,b)≤Γ(a)Γ(b) を得ます。
下からの評価。 0<δ<R′ に対し、ε=min{δ/(δ+R′),2δ}<1/2、R=2R′ とおくと [δ,R′]2⊂Tε,R です。実際 (x,y)∈[δ,R′]2 に対し u=x+y∈[2δ,2R′]⊂[ε,R]、v=x/(x+y)、1−v=y/(x+y) はともに ≥δ/(δ+R′)≥ε です。したがって
∫δR′xa−1e−xdx∫δR′yb−1e−ydy=∬[δ,R′]2f≤∬Tε,Rf=P(ε,R)Q(ε)≤Γ(a+b)B(a,b)です。δ→0、R′→∞ として Γ(a)Γ(b)≤Γ(a+b)B(a,b) を得ます。2 つの不等式から等式が従い、Γ(a+b)>0 で割ります。
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例 6.3(ベータ関数の値と三角関数の積分)
(1) B(1/2,1/2)=Γ(1/2)2/Γ(1)=π です。これは ∫01x(1−x)dx=π で、x=sin2θ と置換すれば ∫0π/22dθ=π と直接確かめられます。
(2) 同じ置換 x=sin2θ(dx=2sinθcosθdθ)を一般の a,b に使うと
∫0π/2sin2a−1θcos2b−1θdθ=21B(a,b)=2Γ(a+b)Γ(a)Γ(b)です。a=(n+1)/2、b=1/2 とすると、例 6.5[積分の基本定理と定積分] のウォリス積分は
In=∫0π/2sinnxdx=2Γ(2n+1)πΓ(2n+1)と表されます。n=2 なら 2⋅1π⋅π/2=4π で、漸化式から出る I2=21⋅2π と一致します。
n! は n について急速に増大します。その増大の速さを正確に表すのがスターリングの公式です。
定理 7.1(スターリングの公式)✓
n≥1 に対して
2πn(en)n≤n!≤2πn(en)ne1/(12n)が成り立つ。とくに n!∼2πn(n/e)n(n→∞ で比が 1 に収束)である。
証明は 2 段階です。まず、an=n!en/nn+1/2 が単調に減少して正の極限 c に収束することを示します。次に、ウォリスの公式から c=2π を決めます。
補題 7.2(an の単調性)✓
an=nn+1/2n!en とおくと、すべての n≥1 で
0<logan−logan+1<12n1−12(n+1)1が成り立つ。したがって (an) は単調減少、(logan−12n1) は単調増加で、an は正の数 c に収束し、c≤an≤ce1/(12n) である。
証明の方針です。logan−logan+1 を t=1/(2n+1) の関数 h(t)/(2t)−1 に書き直し、これが 0 より大きく、かつ 3(1−t2)t2 より小さいことを、それぞれ微分の符号で確かめます。v(t) の形は、右辺が t=1/(2n+1) のとき 12n1−12(n+1)1 になるように選んだものです。
証明(補題 7.2)
an/an+1=e(1+1/n)n+1/2 ですから logan+1an=(n+21)log(1+n1)−1 です。t=2n+11∈(0,1) とおくと 1+n1=1−t1+t、n+21=2t1 なので、h(t)=log1−t1+t として
logan+1an=2th(t)−1.下からの評価。 u(t)=h(t)−2t は u(0)=0、u′(t)=1−t22−2=1−t22t2>0 ですから、0<t<1 で u(t)>0、つまり 2th−1>0 です。
上からの評価。 v(t)=2t+3(1−t2)2t3−h(t) とおくと v(0)=0 で、計算により
v′(t)=2+32⋅(1−t2)23t2−t4−1−t22=3(1−t2)24t4>0(通分すると分子は 2(1−t2)2+32(3t2−t4)−2(1−t2)=34t4)ですから v(t)>0 で、2th−1<3(1−t2)t2 です。t=2n+11 のとき 1−t2t2=(2n+1)2−11=4n(n+1)1 ですから、右辺は 12n(n+1)1=12n1−12(n+1)1 です。
以上から logan は減少、logan−12n1 は増加です。減少列 (an) は logan≥loga1−121+12n1>0(a1=e>e1/12)で下に有界ですから収束し(定理 2.1[級数と収束判定])、極限 c>0 です。an↓c から an≥c、logan−12n1↑logc から an≤ce1/(12n) です。
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証明(定理 7.1)
c=2π を示せば、補題 7.2 の c≤an≤ce1/(12n) が定理の不等式そのものです。ウォリス積分 In=∫0π/2sinnxdx の漸化式 In=nn−1In−2(命題 6.4[積分の基本定理と定積分])と I0=π/2、I1=1(同じ命題)から、帰納法で
I2m=2πwm,I2m+1=(2m+1)wm1,wm=4m(m!)2(2m)!が得られます(wm=2⋅4⋯2m1⋅3⋯(2m−1) なので wm=2m2m−1wm−1、I2m=2m2m−1I2m−2 と I2m+1=2m+12mI2m−1 が対応)。0≤sinx≤1 より I2m+1≤I2m≤I2m−1 ですから
1≤I2m+1I2m≤I2m+1I2m−1=2m2m+1→1で、I2m+1I2m=2π(2m+1)wm2→1、すなわち (2m+1)wm2→π2 です。
一方、n!=annn+1/2e−n を wm に代入すると
wm=4mam2m2m+1e−2ma2m(2m)2m+1/2e−2m=am2a2m⋅m2ですから (2m+1)wm2=m2m+1⋅am42a2m2→2⋅c42c2=c24 です。両者を比べて 4/c2=2/π、c2=2π、c>0 より c=2π です。
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例 7.3(数値で確かめる)
n=5: 5!=120、10π(5/e)5≈118.02、比は 1.0168 で、上限 e1/60≈1.0168 のすぐ下にあります。n=10: 10!=3628800、20π(10/e)10≈3598696、比は 1.0084 で、上限 e1/120≈1.0084 の範囲内です。誤差 12n1 は n が小さくても驚くほど良い見積もりです。
例 7.4(中央二項係数の漸近形)
(n2n)=(n!)2(2n)! に 定理 7.1 を使うと、分子は 4πn(2n/e)2n、分母は 2πn(n/e)2n に漸近し、
(n2n)∼2πn4πn4n=πn4nです。これは 定理 7.1 の証明で wn=(n2n)/4n∼1/πn を使った計算と同じ内容です。
演習 8.1標準
次の広義積分が収束するための α の範囲を求めよ。(1) ∫0∞1+x2xαdx。(2) ∫01xα(1−x)1/2dx。
解答
(1) [0,1] では 1+x2xα≍xα なので α>−1 が必要十分、[1,∞) では ≍xα−2 なので α−2<−1、つまり α<1 が必要十分です(例 2.5 と比較判定法)。したがって −1<α<1。(2) x=0 の近くで x−α、x=1 の近くで (1−x)−1/2 と比較できます。α<1 が必要十分で、このとき B(1−α,21) に等しい。
演習 8.2標準
次の値を求めよ。(1) ∫01x2(1−x)3dx。(2) ∫0∞x3e−x2dx。(3) Γ(7/2)。
解答
(1) B(3,4)=Γ(7)Γ(3)Γ(4)=7202⋅6=601。(2) x2=y と置換して 21∫0∞ye−ydy=21Γ(2)=21。(3) Γ(27)=25⋅23⋅21Γ(21)=815π。
演習 8.3標準
t>0 に対し I(t)=∫0∞e−tx2dx=21π/t が成り立つことを使って、定理 4.5 により ∫0∞x2e−x2dx を求めよ。
解答
∂t(e−tx2)=−x2e−tx2 で、t>t0>0 で ∣⋅∣≤x2e−t0x2、右辺は積分可能ですから積分版 M 判定法で一様収束です。I(1) は収束していますから、定理 4.5 から I′(t)=−∫0∞x2e−tx2dx です。I(t)=2πt−1/2 ですから I′(t)=−4πt−3/2、t=1 として ∫0∞x2e−x2dx=4π です。Γ(3/2)/2=4π とも一致します。
演習 8.4易
定理 7.1 を使って、limn→∞n(n!)1/n=e1 を示せ。
解答
定理より n!=2πn(n/e)neθn、0≤θn≤12n1 と書けます。両辺を 1/n 乗して n で割ると n(n!)1/n=e1(2πn)1/(2n)eθn/n です。(2πn)1/(2n)=exp(2nlog(2πn))→1、θn/n→0 ですから、極限は 1/e です。
- 杉浦光夫『解析入門 I』東京大学出版会、1980。
- 杉浦光夫『解析入門 II』東京大学出版会、1985。
- 高木貞治『解析概論』岩波書店(改訂第三版、1961)。
- W. Feller, An Introduction to Probability Theory and Its Applications, Vol. I, 3rd ed., Wiley, 1968 — Chapter II §9(スターリングの公式の初等的証明)。