23 は「2 を 3 回掛ける」と読めますが、22 は「2 を 2 回掛ける」とは読めません。それでも電卓は 22 の値を出し、22⋅22=222 のような計算も成り立つものとして使います。この記事は、「回数」では説明できない指数が、なぜ矛盾なく定まり、なぜ指数法則が成り立つのかを、段階を追って確かめる記事です。読み終えると、指数・対数の計算規則がどこから出てくるのかを自分で説明できるようになります。
- 高校では、指数を 23(正の整数)から 20、2−3(整数)、21/2(有理数)へ広げ、最後に 22(実数)まで広げます。実数の指数を「2 に近づく有理数 1.4, 1.41, 1.414,… で近似した値の極限」と説明するのが普通ですが、極限がなぜ近似のしかたによらずに定まるのかはふつう省略されます。この記事ではそこまで証明します。
- 出発点は累乗根の存在です。正の数 a と自然数 n に対し bn=a となる正の数 b がただ 1 つ存在することを、中間値の定理から示します。
- 有理数の指数、実数の指数の順に定義し、指数法則 ax+y=axay、(ax)y=axy、(ab)x=axbx を実数の範囲で証明します。ここで実数の連続性(上限の存在)と、数列の極限(数列と関数の極限(命題 2.2)[数列と関数の極限])を使います。
- 指数関数 ax は連続で、a>1 なら狭義単調増加、値域は (0,∞) です。その逆関数が対数関数で、対数の性質・底の変換公式・桁数と常用対数は、すべて指数法則から出ます。
- 級数による exp の定義との一致(ax=exp(xloga))は、後の記事 指数・対数・三角関数をきちんと定義する で証明します。
23=2×2×2 は「2 を 3 回掛ける」でした。ところが 22 を「2 を 2 回掛ける」と言うことはできません。2 回の掛け算は意味を持たないからです。高校の教科書では、指数を段階的に広げます。
| 指数の範囲 | 定義 | その定義を選ぶ理由 |
|---|
| 正の整数 n | an=a×⋯×a | 出発点 |
| 0 と負の整数 | a0=1, a−n=1/an | aman=am+n を保つため |
| 有理数 m/n | am/n=(na)m | (ar)n=arn を保つため |
| 実数 | 有理数の指数による近似の極限 | 指数関数がつながったグラフになるように |
どの段階でも、「指数法則を保つように定義を決める」ことが方針です。ただし、そうして決めた定義が(1)矛盾なく定まり(たとえば a1/2 と a2/4 が同じ値になるか)、(2)本当に指数法則を満たすか、は別の問題で、証明が必要です。この記事では、その 2 点を最後の「実数の指数」まで確かめます。
使う道具は 2 つです。1 つは中間値の定理で、「xn のグラフがつながっているから、値 a を取る点がある」という形で累乗根の存在を保証します。もう 1 つは実数の連続性で、「上に有界な集合には上限がある」という性質を、実数の指数を定義するために使います。
まず整数の指数について、次の事実を確認します。a,b を正の実数、m,n を整数とします。a0=1、n>0 で an=an−1a、a−n=1/an と定めます。
補題 2.1(整数の指数法則)✓
a,b>0、m,n∈Z とする。
- aman=am+n、(am)n=amn、(ab)n=anbn。
- n>0 で 0<a<b ならば an<bn。a>1 ならば an>1 で、a>1 のとき m<n ならば am<an。
証明(補題 2.1)
(1) m,n≥0 のときは、n についての帰納法で示します。ama0=am は明らか。aman=am+n を仮定すると aman+1=am(ana)=(aman)a=am+na=am+n+1 です。(am)n=amn は、(am)n+1=(am)nam=amnam=amn+m として帰納的に、(ab)n=anbn は (ab)n+1=(ab)n(ab)=anbnab で、積の可換性により従います。指数に負の整数が入る場合は、a−n=1/an の定義に戻して、分数の計算規則に帰着します(たとえば ama−n は m≥n なら am−nana−n=am−n、m<n なら am/an=1/an−m です)。
(2) n>0 で 0<a<b とすると、bn−an=(b−a)(bn−1+bn−2a+⋯+an−1)>0 です(因数分解は右辺を展開して確かめられる)。a>1 なら 1<a に上を使って 1<an、さらに m<n なら an=aman−m>am(an−m>1、am>0)です。
∎
次の定理の存在の部分は、「y=xn のグラフはつながっているので、高さ a の水平線とどこかで必ず交わる」ということです。下の図は n=2、a=2 の場合で、交点の x 座標が 2 です。
y = x² のグラフと水平線 y = 2。連続なグラフが y = 0 から y = 4 まで続くので、y = 2 の高さを必ず横切り、その点の x 座標が b = √2 になる。
定理 2.2(累乗根の存在と一意性)✓
n を正の整数とする。
- 任意の正の実数 a に対し、bn=a を満たす正の実数 b がただ 1 つ存在する。これを na または a1/n と書く。
- n が奇数ならば、任意の実数 a に対し bn=a を満たす実数 b がただ 1 つ存在する。
証明(定理 2.2)
(1) 存在。 f(x)=xn は多項式関数なので連続です(系 5.2[極限と連続性])。M=max(1,a) とおくと f(0)=0<a、f(M)=Mn≥M≥a なので、中間値の定理(定理 5.7[極限と連続性])から f(b)=a となる b∈[0,M] があります。a>0 なので b=0、すなわち b>0 です。一意性。 0<b<c なら 補題 2.1 (2) より bn<cn なので、異なる正の数は異なる n 乗を持ちます。
(2) a>0 は (1) で済んでいます。a=0 は b=0。a<0 のときは、(−a)>0 の n 乗根を c>0 として b=−c とすれば、n が奇数なので bn=−cn=a です。一意性は、n が奇数のとき x↦xn が R 上で狭義単調増加であることから従います。実際 x<y のとき、0≤x<y なら 補題 2.1 (2)、x<y≤0 なら −y<−x に同じ補題を使って (−y)n<(−x)n(n が奇数なので (−y)n=−yn)、x<0<y なら xn<0<yn です。
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na が一意に定まることは、先に「正の数」という条件を課したおかげです。n が偶数なら bn=a には b と −b の 2 つの解がありますが、a1/n は正の方に決めたのでした。
有理数 r を、整数 m と正の整数 n で r=m/n と書き、a>0 に対して
ar=(a1/n)m
と定めます。ここで、同じ有理数 r の分数表示は 1 通りではありません。21=42 ですが、(a1/2)1 と (a1/4)2 は本当に同じでしょうか。これが「矛盾なく定まる」という問題で、次の定理で確かめます。
定理 2.3(有理数の指数の定義と指数法則)✓
a,b>0、r,s を有理数とする。
- ar は r の分数表示によらずに定まる。
- aras=ar+s、(ar)s=ars、(ab)r=arbr。
- a>1 かつ r<s ならば ar<as。また a>1 で r>0 ならば ar>1。
証明の流れは次のとおりです。(1) では、2 通りの分数表示から作った 2 つの値が、どちらも同じ数の「正の累乗根」になることを示し、累乗根の一意性で両者を等しいとします。(2) は分母をそろえて、整数の指数法則に帰着させます。(3) は (2) から出ます。
証明(定理 2.3)
(1) r=m/n=m′/n′(n,n′>0)とし、b=a1/n、b′=a1/n′ とします。補題 2.1 (1) を使って (bm)nn′=(bn)mn′=amn′、同様に (b′m′)nn′=(b′n′)m′n=am′n です。mn′=m′n なので、bm と b′m′ はどちらも「amn′ の nn′ 乗根」であり、amn′>0 の正の nn′ 乗根は一意(定理 2.2)なので bm=b′m′ です(どちらも正)。
(2) r,s を共通の分母 N>0 で r=p/N、s=q/N と書き、c=a1/N とします。ar=cp、as=cq、ar+s=cp+q なので、aras=cpcq=cp+q=ar+s です。(ab)1/N=a1/Nb1/N は、右辺が正で N 乗すると ab になることと、定理 2.2 の一意性からわかり、そこから (ab)r=arbr が従います。(ar)s については、まず d=(ar)1/N が ar/N に等しいことを示します。ar/N は正で、N 個を掛けると上で示した aras=ar+s により ar になるので(N 回の指数の和が r)、一意性から d=ar/N です。したがって (ar)s=((ar)1/N)q=(ar/N)q=arq/N=ars です。
(3) a>1 のとき a1/N>1 です。もし a1/N≤1 なら、N 乗して a=(a1/N)N≤1 となり矛盾します。よって t=p/N>0(p≥1)なら at=(a1/N)p>1(補題 2.1 (2))です。r<s のとき、(2) より as=aras−r>ar です。
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実数の指数の定義には、有理数の指数が「小さな指数の変化に対して、あまり変わらない」ことが必要です。
補題 3.1(ベルヌーイの不等式)✓
h>−1、n≥1 ならば (1+h)n≥1+nh である。
証明(補題 3.1)
n=1 は等号です。(1+h)n≥1+nh を仮定すると、1+h>0 なので (1+h)n+1≥(1+nh)(1+h)=1+(n+1)h+nh2≥1+(n+1)h です。
∎
補題 3.2(a1/n の極限)✓
任意の a>0 に対し、数列 a1/n は 1 に収束する。
証明(補題 3.2)
a=1 は明らか。a>1 とすると、定理 2.3 (3) より bn=a1/n>1 です。bn=1+hn(hn>0)とすると、補題 3.1 より a=bnn≥1+nhn、したがって 0<hn≤(a−1)/n です。はさみうち(命題 2.2[数列と関数の極限] (6))で hn→0、すなわち bn→1 です。0<a<1 のときは 1/a>1 で、a1/n=1/(1/a)1/n なので、商の極限(同 (4))から 1 に収束します。
∎
a>1 の場合を考えます。有理数の指数について ar は r の増加関数(定理 2.3 (3))なので、実数 x に対して ax は
「x より小さい有理数 r に対する ar」の最小の上界(上限)
と定めるのが自然です。x に近づく有理数による近似と同じ値になるはずで、後で確かめます。0<a<1 のときは ax=(1/a)−x とします。
なぜ極限ではなく上限で定義するかというと、「近づく先の値」を使って定義しようとすると、その極限がそもそも存在することや、近づき方によらないことを先に示さなければならないからです。上限なら、集合が空でなく上に有界でありさえすれば、実数の連続性だけで値が 1 つに決まります。近似の極限になっていることは、そのあとの定理で確かめます。
定義 3.3(実数の指数)↗
a>0、x∈R とする。a=1 のときは ax=1。a>1 のときは
ax=sup{ar: r∈Q, r<x}とする。0<a<1 のときは ax=(1/a)−x とする。
定理 3.4(実数の指数は矛盾なく定まり、有理数の近似の極限になる)✓
a>0 とする。
- ax は任意の実数 x に対し定まる正の実数である。x が有理数のときは、定義 3.3 と §2.3 の定義は一致する。
- x∈R に収束する任意の有理数列 (rn) に対し、arn→ax である。とくに、極限は近似列のとり方によらない。
証明の見取り図です。(1) は、上限が存在することと、有理数の指数のときに元の値と一致することの確認です。(2) の ε の評価では、文字の役割が次のようになっています。x を有理数 p<x<p′ ではさむと、ax は ap と ap′ の間にあります。N は指数の大きさの上限で、K=aN は ap の大きさの上限です。m は「a1/m が 1 に十分近い」ように選ぶ番号で、p′−p<1/m とすれば ap′−ap が ε より小さくなります。
証明(定理 3.4)
a>1 の場合を示します(a=1 は明らか、0<a<1 は最後に述べます)。
(1) 定まること。 x より小さい有理数は存在する(有理数の稠密性。命題 5.5[数とは何か])ので、集合 Sx={ar:r∈Q,r<x} は空でありません。整数 N>x を取ると、r<x<N ならば ar<aN(定理 2.3 (3))で、Sx は上に有界です。したがって上限が存在します(定理 4.2[実数の完備性とコーシー列])。Sx の元は正なので、supSx>0 です。
有理数での一致。 x が有理数なら、r<x の有理数 r で ar<ax なので supSx≤ax(右辺は §2.3 の値)です。逆に r=x−1/n を取ると、ar=ax/a1/n で、これは n→∞ で ax に収束します(補題 3.2 と商の極限 命題 2.2[数列と関数の極限] (4))。各 ar≤supSx なので、極限を取って(同 (5))ax≤supSx です。
(2) まず、実数 x と有理数 p<x<p′ に対し ap≤ax≤ap′ が成り立ちます(ap∈Sx だから ap≤supSx。また Sx のどの元 ar(r<x<p′)も ap′ 以下なので supSx≤ap′)。
ε>0 を任意にとります。整数 N>∣x∣+1 を取り K=aN とおきます。補題 3.2 から K(a1/m−1)<ε となる正の整数 m が取れます。有理数 p,p′ を x−2m1<p<x<p′<x+2m1 となるように取ると(命題 5.5[数とは何か])、p′−p<1/m なので、∣p∣,∣p′∣<N に注意して
ap′−ap=ap(ap′−p−1)<K(a1/m−1)<εです(ap<aN=K と ap′−p<a1/m は有理数の指数の単調性)。有理数 r∈(p,p′) に対しては ap<ar<ap′ で、ax も [ap,ap′] に入るので ∣ar−ax∣<ε です。rn→x なので、十分大きい n では rn∈(p,p′) で、∣arn−ax∣<ε となります。
0<a<1 のとき。 有理数 r について ar=(1/a)−r が成り立ちます(a1/N⋅(1/a)1/N=1 から)。したがって ax=(1/a)−x は 1/a>1 の場合から正の実数として定まり、x が有理数なら §2.3 の値と一致します((1))。rn→x なら −rn→−x で、a>1 の場合から (1/a)−rn→(1/a)−x=ax です。
∎
これで、高校の「2 に近づく有理数 rn で 2rn を作ると、その極限が定まる」という説明が、実際に正しいことがわかりました。極限は近似列によらないので、22=lim21.4, 21.41, 21.414,… のように近似してよいのです。
補題 4.1(実数の指数の単調性)✓
a>1 で x<y ならば ax<ay である。0<a<1 で x<y ならば ax>ay である。
証明(補題 4.1)
a>1 とします。有理数 q,q′ を x<q<q′<y となるように取ります(稠密性 命題 5.5[数とは何か] を 2 回使う)。ax=sup{ar:r<x} で、r<x<q の有理数について ar<aq なので ax≤aq です。有理数の指数の単調性(定理 2.3 (3))で aq<aq′。また q′<y なので aq′∈{ar:r<y}、よって aq′≤ay です。まとめて ax≤aq<aq′≤ay です。0<a<1 のときは ax=(1/a)−x で、−x>−y に 1/a>1 の場合を使います。
∎
定理 4.2(実数の指数に関する指数法則(和と積))✓
a,b>0、x,y を実数とする。
- ax+y=axay。とくに a0=1、a−x=1/ax。
- (ab)x=axbx。
証明(定理 4.2)
有理数列 rn→x、sn→y を取ります(たとえば小数展開の途中で切ったもの)。有理数の指数法則(定理 2.3 (2))より arn+sn=arnasn です。rn+sn は有理数で x+y に収束するので、定理 3.4 (2) により左辺は ax+y に収束します。右辺は、同じ定理により arn→ax、asn→ay なので、積の極限(命題 2.2[数列と関数の極限] (3))から axay に収束します。極限の一意性(同 (2))で ax+y=axay です。a0=1 は定義から(a>1 のとき sup{ar:r<0}=1 は 定理 3.4 (1) の一致の部分)、a−x については axa−x=a0=1 です。
(2) も同様に、(ab)rn=arnbrn の両辺の極限を取ります。
∎
命題 4.3(指数関数の単調性・連続性・値域)✓
a>0、a=1 とし f(x)=ax とおく。
- a>1 なら f は狭義単調増加、0<a<1 なら狭義単調減少である。
- f は R 上連続である。
- f の値域は (0,∞) で、f:R→(0,∞) は全単射である。
(2) の証明では、数列による連続性の特徴づけを使います。「un→u となるどんな数列についても f(un)→f(u) となる」ことを示せば、f は u で連続だといえる、というものです。そのために、まず 0 に近づく指数で値が 1 に近づくことを示します。
証明(命題 4.3)
(1) は 補題 4.1 です。以下 a>1 とします(0<a<1 は ax=(1/a)−x で帰着)。
(2) まず、tn→0 ならば atn→1 を示します。ε>0 に対し、補題 3.2 から m を、a1/m<1+ε かつ a−1/m=1/a1/m>1−ε となるように取れます。tn→0 なので十分大きい n で ∣tn∣<1/m となり、(1) より 1−ε<a−1/m<atn<a1/m<1+ε です。次に、un→u ならば 定理 4.2 (1) より aun=auaun−u→au⋅1 です。数列による特徴づけ(命題 5.5[数列と関数の極限] (2))により f は連続です。
(3) y>0 を任意にとります。ベルヌーイの不等式(補題 3.1)で aN=(1+(a−1))N≥1+N(a−1) なので、N を大きく取れば aN>y です。同様に a−N=1/aN<y となる N が取れます。区間 [−N,N] で f は連続で f(−N)<y<f(N) なので、中間値の定理(定理 5.7[極限と連続性])から ax=y となる x があります。単調性から x は一意で、また ax>0 なので値域は (0,∞) です。
∎
命題 4.4(指数法則(累乗の累乗))✓
a>0、x,y を実数とする。(ax)y=axy である。
証明(命題 4.4)
まず y が有理数 s=p/q(q>0)の場合です。d=(ax)1/q は正で dq=ax です。一方 e=ax/q も正で、定理 4.2 (1) を q 回使って eq=ax です。累乗根の一意性(定理 2.2)から d=e で、(ax)s=dp=ep=axp/q=axs です。
一般の y では、有理数列 sn→y を取ります。底 ax>0 に 定理 3.4 (2) を使って (ax)sn→(ax)y です。他方 (ax)sn=axsn で、xsn→xy と指数関数の連続性(命題 4.3 (2) と 命題 5.5[数列と関数の極限] (1))から axsn→axy です(a=1 なら両辺とも 1)。極限の一意性により (ax)y=axy です。
∎
以上で、高校で使う指数法則が、すべての実数の指数について証明できました。「ax は x の関数としてつながったグラフを持つ(連続)」ことも示せています。
命題 5.1(指数関数の逆関数)✓
a>0、a=1 とする。各 y>0 に対し ax=y を満たす実数 x がただ 1 つ存在する。
証明(命題 5.1)
定義 5.2(対数)↗
a>0、a=1、y>0 とする。ax=y を満たす実数 x(命題 5.1 でただ 1 つ存在)を、a を底とする y の対数といい、logay と書く。底が e(定理 4.1[数列と関数の極限])のときは logy または lny と書き、自然対数という。
「y は a の何乗か」を答えるのが対数です。定義から、alogay=y と loga(ax)=x がすぐに従います。
定理 5.3(対数の性質)✓
a>0、a=1、y,z>0、t∈R とする。
- loga1=0、logaa=1。
- loga(yz)=logay+logaz。
- loga(yt)=tlogay。とくに loga(1/y)=−logay。
- a>1 なら y<z⇒logay<logaz、0<a<1 なら不等号の向きが逆になる。
- y↦logay は (0,∞) 上連続である。
証明(定理 5.3)
(1) a0=1、a1=a です(定理 4.2)。(2) u=logay、v=logaz とすると、yz=auav=au+v(定理 4.2 (1))なので loga(yz)=u+v です。(3) u=logay とすると yt=(au)t=aut(命題 4.4)なので loga(yt)=tu です。(4) a>1 とする。u=logay、v=logaz とおき、u≥v なら y=au≥av=z(命題 4.3 (1))となり y<z に反します。よって u<v。0<a<1 も同様です。(5) f(x)=ax は R 上連続で狭義単調(命題 4.3)なので、その逆関数は連続です(命題 8.1[導関数の定義と基本的な微分法])。
∎
(2) は、「掛け算が足し算に変わる」という対数の役割そのものです。計算尺(長さの足し算で掛け算をする道具)や、桁の大きい数を扱う対数目盛・デシベル・マグニチュードは、この 1 本の等式の応用です。
定理 5.4(底の変換公式)✓
a,b>0、a,b=1、y>0 とする。
logay=logbalogbyである。とくに logab=1/logba。
証明(定理 5.4)
u=logay とすると y=au です。両辺の b を底とする対数を取ると、定理 5.3 (3) より logby=ulogba です。a=1 より logba=0(a=blogba で、logba=0 なら a=1 になる)ので、u=logby/logba です。y=b とすれば logab=1/logba です。
∎
底の変換公式があるので、どんな底の対数も、自然対数(あるいは常用対数)の比で書けます。電卓に log のキーが 1 種類(または 2 種類)しかなくても、log25=log105/log102 のように計算できる理由です。
底が 10 の対数を常用対数といいます。
命題 6.1(桁数と最高位の数字)✓
N を正の整数とする。
- N がちょうど k 桁であることは、k−1≤log10N<k と同値である。
- N が k 桁で最高位の数字が d(1≤d≤9)であることは、log10d≤log10N−(k−1)<log10(d+1) と同値である。
証明(命題 6.1)
(1) N がちょうど k 桁であることは 10k−1≤N<10k のことです。log10 は狭義単調増加で log1010j=j(定理 5.3)なので、これは k−1≤log10N<k と同値です。(2) N が k 桁で最高位が d であることは d⋅10k−1≤N<(d+1)⋅10k−1 と同値です。log10 を取ると log10d+(k−1)≤log10N<log10(d+1)+(k−1)(定理 5.3 (2)(4))です。
∎
例 6.2(2100 は何桁か)
210=1024 なので 2100=102410 です。100010=1030≤102410 です。上からは 102410=1030⋅1.02410 で、1.0242<1.05、1.0248<1.054<1.22 から 1.02410<1.22×1.05<2 です。したがって 1030<2100<2⋅1030 で、30<log102100<30+log102<31 です。命題 6.1 により 2100 は 31 桁で、最高位の数字は 1 です(実際 2100=1267650600228229401496703205376)。
命題 6.3(log23 は無理数)✓
log23 は無理数である。
証明(命題 6.3)
3>1 なので log23>0 です。有理数であると仮定して log23=p/q(p,q は正の整数)とすると、3=2p/q です。両辺を q 乗すると、3q=(2p/q)q=2p(命題 4.4)です。左辺は奇数、右辺は偶数(p≥1)なので矛盾します。
∎
例 7.1(置き換えで 2 次方程式にする)
4x−3⋅2x−4=0 を解きます。4x=(22)x=(2x)2(命題 4.4)なので、t=2x とおくと t2−3t−4=0、すなわち (t−4)(t+1)=0 です。t=2x>0(命題 4.3 (3))なので t=4、すなわち x=2 です。t>0 という制約を忘れると t=−1 という不適な解が残ります。
例 7.2(底が 1 より小さい対数の不等式)
log1/2(x−1)≥−2 を解きます。真数条件は x>1。−2=log1/24 なので、不等式は log1/2(x−1)≥log1/24 です。底 1/2 は 1 より小さいので log1/2 は単調減少(定理 5.3 (4))で、不等号が逆転して x−1≤4 です。真数条件とあわせて 1<x≤5 です。
例 7.3(複利で元金が 2 倍になる年数(72 の法則))
年利 r% の複利で元金が 2 倍になる年数 n は、(1+r/100)n=2 を解いて n=log1+r/1002=ln(1+r/100)ln2 です(底の変換公式)。ln2=0.6931⋯ として数値を計算すると、次のようになります。
| 年利 r% | 1 | 2 | 4 | 6 | 8 | 10 | 12 |
|---|
| 年数 n | 69.66 | 35.00 | 17.67 | 11.90 | 9.01 | 7.27 | 6.12 |
| r×n | 69.7 | 70.0 | 70.7 | 71.4 | 72.1 | 72.7 | 73.4 |
r×n はほぼ 70 から 73 の間で、「n≈72/r」という覚え方(72 の法則)がよく当たります。この 72 は 69.3(=100ln2)に少し足した値で、r が 6〜10 のあたりで精度がよい数です。
- 指数関数の特徴づけ。 加法性 f(x+y)=f(x)f(y) を満たす連続関数が指数関数に限られることは、関数方程式の話題として 古典的な不等式と関数方程式 に出てきます。この記事で示した指数法則は、その出発点です。
- 級数による定義。 ax=exp(xlna) と書き直すと、指数関数・対数関数が微分方程式 y′=y の解として特徴づけられます。次の記事 指数・対数・三角関数をきちんと定義する で扱います。
- 実数の構成。 実数の指数は、実数の連続性(上限の存在)がなければ定義できません。実数そのものの構成については 数とは何か と 完備性とコーシー列 が受け皿です。
- 群としての見方。 指数関数は、加法群 (R,+) から乗法群 ((0,∞),×) への同型を与え、対数がその逆です。この視点は代数学・リー群論に続きます。
演習 9.1易
2300 と 3200 はどちらが大きいか。
解答
2300=(23)100=8100、3200=(32)100=9100 である(補題 2.1 (1))。8<9 なので 補題 2.1 (2) より 8100<9100、すなわち 3200 のほうが大きい。
演習 9.2標準
0.4771<log103<0.4772 を認めて、350 の桁数を求めよ。
解答
定理 5.3 (3) より log10350=50log103 で、23.855<50log103<23.86 である。したがって 23<log10350<24 で、命題 6.1 (1) により k−1=23、すなわち 350 は 24 桁である(実際 350=717897987691852588770249)。
演習 9.3標準
log2x+log2(x−2)=3 を解け。
解答
真数条件は x>0 かつ x−2>0、すなわち x>2。定理 5.3 (2) より左辺は log2(x(x−2)) なので、x(x−2)=23=8、すなわち x2−2x−8=0、(x−4)(x+2)=0 である。真数条件から x=4。x=−2 は条件を満たさない。
- 杉浦光夫『解析入門 I』東京大学出版会、1980 — 第 I 章(実数の連続性)・第 II 章(初等関数)。
- W. Rudin, Principles of Mathematical Analysis, 3rd ed., McGraw-Hill, 1976 — Chapter 1(実数の指数の定義)、Chapter 8(指数関数・対数関数)。
- 高木貞治『解析概論』岩波書店 — 第 1 章・第 2 章(指数関数・対数関数)。
- 『数学 II』『数学 III』(検定済み高等学校教科書、各社)— 指数関数・対数関数の章。