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円の名定理:Ptolemy・Brahmagupta・Miquel・蝶・折れ弦・Pitot・目玉・最大視角

対象読者: 本テーマ第 4 章の円周角の定理・方べきの定理と、第 3 章の面積公式を使える人。人名のついた円の定理を初めて証明付きで学ぶ高校生を想定します。

前提となる記事:円の幾何:円周角・接線・方べきの定理を座標から証明する

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円の中に四角形や三角形を描くと、辺や対角線の長さ、角の間に、思いがけないきれいな関係が成り立つことがあります。この記事では、そうした関係のうち人の名前がついた有名なものを、図の描き方に左右されない計算で一つずつ確かめます。読み終えると、円に内接する四角形の対角線や面積を辺の長さから求めたり、見る位置によって絵の見え方(見込む角)が最大になる場所を見つけたりできるようになります。

  • 前の章(円の幾何)で証明した円周角の定理・方べきの定理・見込む角と円の内外の補題を使って、円の名定理を一つずつ証明します。
  • Ptolemy の定理は、既存の解析学の章にある複素数による等号条件を円に内接する凸四角形に当てはめて得ます(定理 2.1)。第 2 定理は、外接円の半径の公式 S=abc4RS=\frac{abc}{4R} から出ます(定理 2.3)。
  • 円に内接する四角形の面積の Brahmagupta の公式は Bretschneider の公式(一般の四角形の面積を 4 辺と対角の和で表す公式)の特別な場合、Brahmagupta の定理(直交する対角線)は方べきの定理から出ます(定理 3.1、定理 3.3)。
  • Miquel の定理は、向きつきの直線の角(π\pi を法とする角、つまり半回転ぶんのずれを同じとみなして測る角)を使うと一行の計算になります(定理 4.3)。そのための共円条件を、先に向きつきの形で言い直します(命題 4.2)。
  • 蝶の定理は座標による計算、折れ弦の定理は円周上の点の媒介変数表示による計算、Pitot の定理は接線の長さの等しさ、目玉の定理は接線と半径の関係で証明します。最大視角の問題は、前章の補題から「円が接するところで最大」と分かります(命題 8.1)。
  • この章の定理には、すべて証明を付けます。位置関係が特殊な場合(円が接する、点が一致する)の扱いは、定理の仮定として明記します。

1. 動機 — 「名前のついた定理」を、場合分けなしで

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初等幾何には、人名のついた定理が数多くあります。たいていは補助線 1 本のきれいな証明が知られていますが、補助線の引き方は図の配置に依存します。この章では、前章で作った道具を使い、配置が変わっても同じ式で通る証明を選びます。

使う道具を並べておきます。

道具内容
補題 2.2[円の幾何]円周上の 2 点を結ぶベクトルを角度で表す
定理 3.4[円の幾何]4 点が同一円周上にある条件(見込む角)
定理 5.2[円の幾何]方べきの定理とその逆
定理 3.3[三角比と三角形の計量]三角形の面積公式
補題 4.1[三角比と三角形の計量]外接円の半径 R=abc4SR=\frac{abc}{4S}

円に内接する四角形では、2 本の対角線の長さの積が、2 組の対辺の長さの積の和に等しくなります。長方形に当てはめると三平方の定理が出る、その一般化です。この章では、解析学の章で複素数を使って示されている等号条件を、円に内接する凸四角形に当てはめる形で証明します。

定理 2.1(Ptolemy の定理)✓

円に内接する凸四角形 ABCDABCD(4 頂点が同一円周上にある、前章の 定義 5.5[合同と相似] の意味の凸四角形)について

∣AC∣ ∣BD∣=∣AB∣ ∣CD∣+∣AD∣ ∣BC∣|AC|\,|BD|=|AB|\,|CD|+|AD|\,|BC|

である。

証明の方針は、複素数の章で示された等号条件に当てはめるだけです。ただし、その条件は「BB と DD が弦 ACAC の両側にある」ことを要求するので、凸四角形ならそうなることを確かめるのが仕事になります。その確認に符号つき面積 S(A,B,C)S(A,B,C)(三角形 ABCABC が反時計回りなら正、時計回りなら負になる面積)を使い、符号が違えば 2 点は直線の反対側にある、と読みます。

証明(定理 2.1)

平面を複素平面とみなし、頂点を複素数 a,b,c,da,b,c,d とする。既存の定理 定理 3.6[古典的な不等式と関数方程式] は、相異なる 4 点について ∣a−c∣∣b−d∣=∣a−b∣∣c−d∣+∣a−d∣∣b−c∣|a-c||b-d|=|a-b||c-d|+|a-d||b-c| が成り立つ必要十分条件が、4 点が一つの円周(または直線)上にあって bb と dd が a,ca,c で分けられる 2 つの弧の別々の側にあることだと述べている。いまの 4 点は一つの円周上にある。凸四角形の定義から S(A,B,C)>0S(A,B,C)>0 かつ S(A,C,D)>0S(A,C,D)>0、すなわち S(C,A,B)>0S(C,A,B)>0 かつ S(C,A,D)<0S(C,A,D)<0 なので、BB と DD は直線 ACAC について反対側にある。円周から A,CA,C を除いた 2 つの弧は、弦 ACAC の両側にそれぞれある(定理 3.1[円の幾何] の証明で調べた 2 つの範囲 (i)、(ii) がそれぞれ直線の別の側に対応する)ので、BB と DD は別々の弧にある。よって等式が成り立つ。

例 2.2(正五角形の対角線と黄金比)

一辺 11 の正五角形の頂点 A,B,C,D,EA,B,C,D,E のうち連続する 4 頂点 A,B,C,DA,B,C,D を取る。5 頂点は一つの円周上にあり、対角線は等しいので ∣AC∣=∣BD∣=∣AD∣=δ|AC|=|BD|=|AD|=\delta とおくと、辺は ∣AB∣=∣BC∣=∣CD∣=1|AB|=|BC|=|CD|=1 である。定理 2.1 から δ⋅δ=1⋅1+δ⋅1\delta\cdot\delta=1\cdot1+\delta\cdot1、すなわち δ2=δ+1\delta^2=\delta+1 で、δ=1+52\delta=\dfrac{1+\sqrt5}{2}(黄金比)となる。

長方形では対角線が等しく対辺が等しいので、Ptolemy の定理は三平方の定理 ∣AC∣2=∣AB∣2+∣BC∣2|AC|^2=|AB|^2+|BC|^2 になります。

Ptolemy の定理は対角線の積を与えます。次の第 2 定理は対角線の比を、4 辺の長さだけで与えます。両方を使うと、4 辺の長さから 2 本の対角線の長さが別々に求まります。

定理 2.3(Ptolemy の第 2 定理)✓

円に内接する凸四角形 ABCDABCD について

∣AC∣∣BD∣=∣AB∣∣AD∣+∣CB∣∣CD∣∣BA∣∣BC∣+∣DA∣∣DC∣\frac{|AC|}{|BD|}=\frac{|AB||AD|+|CB||CD|}{|BA||BC|+|DA||DC|}

である。

証明(定理 2.3)

円の半径を RR とする。4 つの三角形 ABCABC、ACDACD、ABDABD、BCDBCD の外接円はどれもこの円なので(外心の一意性、補題 4.1[三角比と三角形の計量])、それぞれの面積は 補題 4.1[三角比と三角形の計量] の公式 S=abc4RS=\dfrac{abc}{4R} で書ける。四角形の面積は、対角線 ACAC で分けても BDBD で分けても同じである。実際、命題 6.2[平面ベクトルと座標] の 4 から S(A,B,C)+S(A,C,D)=12det⁡(c−a,d−b)S(A,B,C)+S(A,C,D)=\tfrac12\det(\boldsymbol c-\boldsymbol a,\boldsymbol d-\boldsymbol b) で、同じ 4 を頂点の順 B,C,D,AB,C,D,A に使うと S(B,C,D)+S(B,D,A)=12det⁡(d−b,a−c)S(B,C,D)+S(B,D,A)=\tfrac12\det(\boldsymbol d-\boldsymbol b,\boldsymbol a-\boldsymbol c) となり、この 2 つは等しい(det⁡\det の交代性)。凸四角形では 4 つの三角形はどれも反時計回りで、SS はそのまま面積である。したがって、

∣AB∣∣BC∣∣CA∣4R+∣AC∣∣CD∣∣DA∣4R=∣AB∣∣BD∣∣DA∣4R+∣BC∣∣CD∣∣DB∣4R.\frac{|AB||BC||CA|}{4R}+\frac{|AC||CD||DA|}{4R}=\frac{|AB||BD||DA|}{4R}+\frac{|BC||CD||DB|}{4R}.

左辺は ∣AC∣4R(∣AB∣∣BC∣+∣CD∣∣DA∣)\dfrac{|AC|}{4R}\bigl(|AB||BC|+|CD||DA|\bigr)、右辺は ∣BD∣4R(∣AB∣∣DA∣+∣BC∣∣CD∣)\dfrac{|BD|}{4R}\bigl(|AB||DA|+|BC||CD|\bigr) なので、4R4R を払って整理すると主張の式を得る。

一般の四角形は、辺の長さを変えずに変形できるので、4 辺だけでは面積が決まりません。円に内接するという条件を足すと面積が決まり、Heron の公式の 4 辺版になります。

定理 3.1(Brahmagupta の公式)✓

円に内接する凸四角形で、辺が a,b,c,da,b,c,d、s=a+b+c+d2s=\dfrac{a+b+c+d}{2} のとき、面積 SS は

S=(s−a)(s−b)(s−c)(s−d)S=\sqrt{(s-a)(s-b)(s-c)(s-d)}

である。

証明(定理 3.1)

前章の 定理 3.5[円の幾何] から対角の和は A+C=πA+C=\pi で、cos⁡A+C2=cos⁡π2=0\cos\dfrac{A+C}{2}=\cos\dfrac\pi2=0 である。Bretschneider の公式(定理 7.2[三角比と三角形の計量])の最後の項が消える。

d=0d=0(四角形が三角形に退化する極限)とみなせば、Heron の公式に戻ります。

例 3.2(辺 25, 39, 52, 60 の内接四角形)

s=88s=88 で S=63⋅49⋅36⋅28=3111696=1764S=\sqrt{63\cdot49\cdot36\cdot28}=\sqrt{3111696}=1764。実際、252+602=652=392+52225^2+60^2=65^2=39^2+52^2 なので、対角線 6565 で直角三角形 2 つに分かれ、面積は 12⋅25⋅60+12⋅39⋅52=750+1014=1764\tfrac12\cdot25\cdot60+\tfrac12\cdot39\cdot52=750+1014=1764 と一致する。

定理 3.3(Brahmagupta の定理)✓

円に内接する凸四角形 ABCDABCD の対角線 ACAC と BDBD が垂直に交わるとき、その交点 PP を通り辺 ABAB に垂直な直線は、対辺 CDCD の中点を通る。

証明(定理 3.3)

まず対角線の交点を調べる。凸四角形では AA と CC は直線 BDBD について反対側にあり、BB と DD は直線 ACAC について反対側にある(前章の 定理 3.5[円の幾何] の証明)。直線 BDBD に関する det⁡\det の符号が A,CA,C で異なるので、線分 ACAC は直線 BDBD と内部の 1 点で交わり(1 次関数の符号が変わる)、同様に線分 BDBD は直線 ACAC と内部の 1 点で交わる。2 直線 AC,BDAC,BD は平行でない(垂直)ので交点は 1 つで、2 つの点は一致する。これが PP で、線分 ACAC と BDBD の内部の点である。

u,v\boldsymbol u,\boldsymbol v を互いに垂直な単位ベクトルとし、A=P+auA=P+a\boldsymbol u、C=P−cuC=P-c\boldsymbol u、B=P+bvB=P+b\boldsymbol v、D=P−dvD=P-d\boldsymbol v(a,b,c,d>0a,b,c,d>0)と書く。方べきの定理(定理 5.2[円の幾何] の 1)を PP について 2 本の弦 ACAC、BDBD に使うと、PA→⋅PC→=−ac\overrightarrow{PA}\cdot\overrightarrow{PC}=-ac、PB→⋅PD→=−bd\overrightarrow{PB}\cdot\overrightarrow{PD}=-bd がともに pow⁡(P)\operatorname{pow}(P) に等しいので ac=bdac=bd である。CDCD の中点を MM とすると PM→=−12(cu+dv)\overrightarrow{PM}=-\tfrac12(c\boldsymbol u+d\boldsymbol v)、AB→=bv−au\overrightarrow{AB}=b\boldsymbol v-a\boldsymbol u で

PM→⋅AB→=−12(cu+dv)⋅(bv−au)=12(ac−bd)=0\overrightarrow{PM}\cdot\overrightarrow{AB}=-\tfrac12\bigl(c\boldsymbol u+d\boldsymbol v\bigr)\cdot\bigl(b\boldsymbol v-a\boldsymbol u\bigr)=\tfrac12(ac-bd)=0

なので、PP と MM を通る直線は ABAB に垂直である。

三角形の 3 辺(の延長)上に 1 点ずつとり、各頂点とその両隣の 2 点を通る円を 3 つ描くと、3 円が 1 点を共有します。点が辺の内部にあるか延長上にあるかで図の見た目が大きく変わるので、図に頼る証明は配置ごとに書き直しが要ります。そこで、直線どうしの角を π\pi を法として測り、配置によらない形で証明します。

「π\pi を法として測る」とは、角が半回転(π\pi)だけ違うものを同じ角とみなす、ということです。直線には向きがなく、方向ベクトルを逆向きにとっても同じ直線なので、直線どうしの角はこう測るのが自然です。ふつうの角(向きつきの角、2π2\pi ごとに同じ)との違いはそこだけです。次の定義と命題は、そのための準備で、Miquel の定理の証明で使います。

直線の向きつきの角を、π\pi を法として定義します。

定義 4.1(2 直線の向きつきの角)↗

直線 ℓ,m\ell,m の方向ベクトルを u,w\boldsymbol u,\boldsymbol w とするとき、∡(ℓ,m)=ang⁡(u,w) mod π\measuredangle(\ell,m)=\operatorname{ang}(\boldsymbol u,\boldsymbol w)\bmod\pi を ℓ\ell から mm への向きつきの角(R/πZ\mathbb{R}/\pi\mathbb{Z} の元)という。方向ベクトルの向きを反転すると ang⁡\operatorname{ang} は π\pi だけ変わるので、π\pi を法とすれば ℓ,m\ell,m だけで決まる。∡(ℓ,m)=0  ⟺  ℓ∥m\measuredangle(\ell,m)=0\iff\ell\parallel m で、前章の 命題 4.5[平面ベクトルと座標] の 4 から ∡(ℓ,m)+∡(m,n)=∡(ℓ,n)\measuredangle(\ell,m)+\measuredangle(m,n)=\measuredangle(\ell,n) である。

命題 4.2(共円条件の向きつきの形)✓

A≠BA\ne B とし、P,QP,Q を直線 ABAB 上にない点とする。A,B,P,QA,B,P,Q が同一円周上にある   ⟺  ∡(PA,PB)=∡(QA,QB)\iff\measuredangle(PA,PB)=\measuredangle(QA,QB) である。

証明(命題 4.2)

XX が直線 ABAB 上にないとき、det⁡(XA→,XB→)=2S(A,B,X)\det(\overrightarrow{XA},\overrightarrow{XB})=2S(A,B,X) なので、ang⁡(XA→,XB→)\operatorname{ang}(\overrightarrow{XA},\overrightarrow{XB}) は S(A,B,X)>0S(A,B,X)>0 なら ∠AXB∈(0,π)\angle AXB\in(0,\pi)、S(A,B,X)<0S(A,B,X)<0 なら −∠AXB-\angle AXB である(命題 4.5[平面ベクトルと座標] の 1・2)。したがって ∡(XA,XB)=εX∠AXB mod π\measuredangle(XA,XB)=\varepsilon_X\angle AXB\bmod\pi(εX=sgn⁡S(A,B,X)\varepsilon_X=\operatorname{sgn}S(A,B,X))。P,QP,Q が同じ側(εP=εQ\varepsilon_P=\varepsilon_Q)なら ∡(PA,PB)=∡(QA,QB)  ⟺  ∠APB≡∠AQB(modπ)  ⟺  ∠APB=∠AQB\measuredangle(PA,PB)=\measuredangle(QA,QB)\iff\angle APB\equiv\angle AQB\pmod\pi\iff\angle APB=\angle AQB(どちらも (0,π)(0,\pi) の元)で、これは前章の 定理 3.4[円の幾何] の 1 により共円と同値。反対側(εQ=−εP\varepsilon_Q=-\varepsilon_P)なら ∡(PA,PB)=∡(QA,QB)  ⟺  ∠APB+∠AQB≡0(modπ)  ⟺  ∠APB+∠AQB=π\measuredangle(PA,PB)=\measuredangle(QA,QB)\iff\angle APB+\angle AQB\equiv0\pmod\pi\iff\angle APB+\angle AQB=\pi(和は (0,2π)(0,2\pi) にある)で、同 2 により共円と同値である。

定理 4.3(Miquel の定理)✓

三角形 ABCABC と、直線 BC,CA,ABBC,CA,AB 上の点 D,E,FD,E,F(頂点とは異なる)をとる。円 AEFAEF、BFDBFD、CDECDE をそれぞれ ΓA,ΓB,ΓC\Gamma_A,\Gamma_B,\Gamma_C とする。ΓB\Gamma_B と ΓC\Gamma_C が DD 以外の共有点 MM をもつならば、MM は ΓA\Gamma_A の上にもある。とくに 3 円は 1 点 MM(Miquel 点)で交わる。

証明(定理 4.3)

M=EM=E なら E∈ΓAE\in\Gamma_A、M=FM=F なら F∈ΓAF\in\Gamma_A なので M∈ΓAM\in\Gamma_A である。M≠E,FM\ne E,F とする(M≠DM\ne D は仮定)。向きつきの角の加法性(定義 4.1)から

∡(ME,MF)=∡(ME,MD)+∡(MD,MF).\measuredangle(ME,MF)=\measuredangle(ME,MD)+\measuredangle(MD,MF).

M,C,D,EM,C,D,E は円 ΓC\Gamma_C 上にあり、C≠D,EC\ne D,E、M≠D,EM\ne D,E である。円と直線は高々 2 点で交わるので、M,CM,C は直線 DEDE 上にない(ΓC\Gamma_C と直線 DEDE の共有点は D,ED,E だけ)。したがって 命題 4.2 から ∡(ME,MD)=∡(CE,CD)\measuredangle(ME,MD)=\measuredangle(CE,CD) である。同様に M,B,D,FM,B,D,F は円 ΓB\Gamma_B 上にあり、B,M≠D,FB,M\ne D,F なので ∡(MD,MF)=∡(BD,BF)\measuredangle(MD,MF)=\measuredangle(BD,BF) である。直線として CE=CACE=CA、CD=CBCD=CB、BD=BCBD=BC、BF=BABF=BA なので、

∡(ME,MF)=∡(CA,CB)+∡(BC,BA)=∡(CA,BA)=∡(AE,AF)\measuredangle(ME,MF)=\measuredangle(CA,CB)+\measuredangle(BC,BA)=\measuredangle(CA,BA)=\measuredangle(AE,AF)

(最後は AE=ACAE=AC、AF=ABAF=AB による)。A,E,FA,E,F は一直線上にない(∡(AE,AF)≠0\measuredangle(AE,AF)\ne0)ので、この等式から MM は直線 EFEF 上になく、命題 4.2 により M,A,E,FM,A,E,F は同一円周上、すなわち M∈ΓAM\in\Gamma_A である。

ABCDEFMΓ_AΓ_BΓ_C
Miquel の定理。D, E, F をとり、3 つの円 Γ_A, Γ_B, Γ_C をかくと、3 円は点 M を共有する

ΓB\Gamma_B と ΓC\Gamma_C が DD で接する場合には、DD 以外の共有点がないので、この定理は何も主張しません。その場合を含めた主張は、この章では扱いません。

弦 PQPQ の中点 MM を通る 2 本の弦をひくと、4 つの端点を結ぶ 2 本の直線が PQPQ から切り取る 2 点は、MM から等しい距離にあります。補助線の引き方が配置に左右されるので、ここでは座標をとって計算します。方針は、MM を原点、弦 PQPQ を xx 軸にとり、2 本の弦の円との交点の座標を「2 次方程式の解と係数の関係」で押さえ、XX と YY の座標の逆数を足すと 0 になることを示す、というものです。

定理 5.1(蝶の定理)✓

円の弦 PQPQ の中点を MM とし、MM を通る別の 2 本の弦 ABAB、CDCD(A,B,C,DA,B,C,D は円周上、直線 AB≠CDAB\ne CD、どちらも直線 PQPQ と異なる)をとる。直線 ADAD と直線 PQPQ の交点を XX、直線 BCBC と直線 PQPQ の交点を YY とする(それぞれ存在するとする)と、MM は線分 XYXY の中点である。

証明(定理 5.1)

MM を原点、直線 PQPQ を xx 軸にとると、円の中心は垂直二等分線(yy 軸)上にあり、(0,k)(0,k) と書ける。P=(−h,0)P=(-h,0)、Q=(h,0)Q=(h,0)、半径を rr とすると r2=h2+k2r^2=h^2+k^2、h>0h>0 で、円の方程式は x2+(y−k)2=r2x^2+(y-k)^2=r^2 である。MM は円の内部の点で、A,B,C,DA,B,C,D は MM と異なる。

直線 ABAB は xx 軸ではないので x=s1yx=s_1y と書ける。円との共有点の yy 座標は、(s1y)2+(y−k)2=r2(s_1y)^2+(y-k)^2=r^2、すなわち (1+s12)y2−2ky−h2=0(1+s_1^2)y^2-2ky-h^2=0 の 2 解 y1,y2y_1,y_2(A=(s1y1,y1)A=(s_1y_1,y_1)、B=(s1y2,y2)B=(s_1y_2,y_2))で、解と係数の関係(2 次式の係数比較)から

y1+y2=2k1+s12,y1y2=−h21+s12,したがって1y1+1y2=−2kh2.y_1+y_2=\frac{2k}{1+s_1^2},\qquad y_1y_2=\frac{-h^2}{1+s_1^2},\qquad\text{したがって}\quad\frac1{y_1}+\frac1{y_2}=-\frac{2k}{h^2}.

直線 CDCD を x=s2yx=s_2y、C=(s2y3,y3)C=(s_2y_3,y_3)、D=(s2y4,y4)D=(s_2y_4,y_4) とすると同様に 1y3+1y4=−2kh2\dfrac1{y_3}+\dfrac1{y_4}=-\dfrac{2k}{h^2} である(s1≠s2s_1\ne s_2)。

直線 ADAD と xx 軸(y=0y=0)の交点は、A+λ(D−A)A+\lambda(D-A) の yy 座標を 00 とおく λ=−y1y4−y1\lambda=-\dfrac{y_1}{y_4-y_1} から、xX=y1y4(s1−s2)y4−y1x_X=\dfrac{y_1y_4(s_1-s_2)}{y_4-y_1} である(XX が存在するので y4≠y1y_4\ne y_1)。したがって 1xX=1s1−s2(1y1−1y4)\dfrac1{x_X}=\dfrac{1}{s_1-s_2}\Bigl(\dfrac1{y_1}-\dfrac1{y_4}\Bigr)。同様に直線 BCBC との交点は 1xY=1s1−s2(1y2−1y3)\dfrac1{x_Y}=\dfrac1{s_1-s_2}\Bigl(\dfrac1{y_2}-\dfrac1{y_3}\Bigr)。足すと

1xX+1xY=1s1−s2[(1y1+1y2)−(1y3+1y4)]=0\frac1{x_X}+\frac1{x_Y}=\frac1{s_1-s_2}\Bigl[\Bigl(\frac1{y_1}+\frac1{y_2}\Bigr)-\Bigl(\frac1{y_3}+\frac1{y_4}\Bigr)\Bigr]=0

なので xX=−xYx_X=-x_Y、すなわち MM は XYXY の中点である。

円周上の 2 点 A,CA,C を結ぶ折れ線 ABCABC(弦 ABAB と BCBC をつないだもの)の長さ ∣AB∣+∣BC∣|AB|+|BC| を、長いほうの弦に下ろした垂線の足がちょうど二等分する、というのが折れ弦の定理です。円周上の点を角度で表して(e(θ)=(cos⁡θ,sin⁡θ)e(\theta)=(\cos\theta,\sin\theta) は、xx 軸の正の向きから角 θ\theta だけ回った単位円周上の点です)、弦の長さと向きを 補題 2.2[円の幾何] で書き下します。

定理 6.1(Archimedes の折れ弦の定理)✓

円周上の 3 点 A,B,CA,B,C について、BB を含む方の弧 ACAC の中点を MM とし、∣AB∣>∣BC∣|AB|>|BC| とする。MM から弦 ABAB に下ろした垂線の足を FF とすると、FF は線分 ABAB 上にあって ∣AF∣=∣FB∣+∣BC∣|AF|=|FB|+|BC| である。

証明(定理 6.1)

円の半径を 11、中心を原点にとってよい(等式 ∣AF∣=∣FB∣+∣BC∣|AF|=|FB|+|BC| も垂線の足も、拡大・回転・鏡映で保たれる)。回転して M=e(π2)M=e(\frac\pi2) とし、必要なら鏡映して AA が MM から反時計回りの側にあるようにする。すなわち M=e(π2)M=e(\frac\pi2)、A=e(π2+x)A=e(\frac\pi2+x)、C=e(π2−x)C=e(\frac\pi2-x)(0<x<π0<x<\pi。MM が弧 ACAC の中点なので A,CA,C は MM から対称)、B=e(π2+y)B=e(\frac\pi2+y)(−x<y<x-x<y<x、BB が MM を含む弧 ACAC 上にある)とおく。補題 2.2[円の幾何] から

∣AB∣=2sin⁡x−y2,∣BC∣=2sin⁡x+y2,AB→=2sin⁡x−y2 e(x+y2),AM→=2sin⁡x2 e(x2)|AB|=2\sin\tfrac{x-y}2,\qquad|BC|=2\sin\tfrac{x+y}2,\qquad\overrightarrow{AB}=2\sin\tfrac{x-y}2\,e\bigl(\tfrac{x+y}2\bigr),\qquad\overrightarrow{AM}=2\sin\tfrac x2\,e\bigl(\tfrac x2\bigr)

(0<x±y2<π0<\frac{x\pm y}2<\pi なので正弦は正)。和積の公式から ∣AB∣−∣BC∣=2(sin⁡x−y2−sin⁡x+y2)=4cos⁡x2sin⁡(−y2)|AB|-|BC|=2\bigl(\sin\frac{x-y}2-\sin\frac{x+y}2\bigr)=4\cos\frac x2\sin\bigl(-\frac y2\bigr) で、cos⁡x2>0\cos\frac x2>0 だから、∣AB∣>∣BC∣|AB|>|BC| は y<0y<0 と同値である。

e=e(x+y2)\boldsymbol e=e(\frac{x+y}2) は AB→\overrightarrow{AB} の単位ベクトルで、垂線の足 FF は AF→=(AM→⋅e)e\overrightarrow{AF}=\bigl(\overrightarrow{AM}\cdot\boldsymbol e\bigr)\boldsymbol e で与えられる。

AM→⋅e=2sin⁡x2cos⁡(x2−x+y2)=2sin⁡x2cos⁡y2=sin⁡x+y2+sin⁡x−y2.\overrightarrow{AM}\cdot\boldsymbol e=2\sin\tfrac x2\cos\Bigl(\tfrac x2-\tfrac{x+y}2\Bigr)=2\sin\tfrac x2\cos\tfrac y2=\sin\tfrac{x+y}2+\sin\tfrac{x-y}2.

これは ∣AB∣=2sin⁡x−y2|AB|=2\sin\frac{x-y}2 より小さく、00 より大きい(sin⁡x+y2−sin⁡x−y2=2cos⁡x2sin⁡y2<0\sin\frac{x+y}{2}-\sin\frac{x-y}2=2\cos\frac x2\sin\frac y2<0)ので、FF は線分 ABAB 上にある。∣FB∣=∣AB∣−∣AF∣=sin⁡x−y2−sin⁡x+y2=2cos⁡x2sin⁡(−y2)|FB|=|AB|-|AF|=\sin\frac{x-y}2-\sin\frac{x+y}2=2\cos\frac x2\sin\bigl(-\frac y2\bigr) で、

∣AF∣−∣BC∣=sin⁡x−y2−sin⁡x+y2=2cos⁡x2sin⁡(−y2)=∣FB∣|AF|-|BC|=\sin\tfrac{x-y}2-\sin\tfrac{x+y}2=2\cos\tfrac x2\sin\bigl(-\tfrac y2\bigr)=|FB|

である。

四角形に円が内接する(4 辺すべてに接する)ときは、向かい合う辺の長さの和が等しくなります。鍵は、円の外の 1 点から円へ引いた 2 本の接線の長さが等しいことで、これは方べき(定義 5.1[円の幾何])が接線の長さの 2 乗に等しいことから出ます。ここでは、この向きの主張(必要条件)だけを証明します。

定理 7.1(Pitot の定理)✓

凸四角形 ABCDABCD の 4 辺(線分)に、それぞれの内部の点で接する円があるならば、∣AB∣+∣CD∣=∣BC∣+∣DA∣|AB|+|CD|=|BC|+|DA| である。

証明(定理 7.1)

円を Γ(O,r)\Gamma(O,r) とし、辺 AB,BC,CD,DAAB,BC,CD,DA との接点をそれぞれ T1,T2,T3,T4T_1,T_2,T_3,T_4 とする。接線 ℓ\ell 上の接点 TT と異なる点 PP では、OT→⊥ℓ\overrightarrow{OT}\perp\ell なので ∣PO∣2=∣OT∣2+∣PT∣2|PO|^2=|OT|^2+|PT|^2、すなわち pow⁡(P)=∣PT∣2\operatorname{pow}(P)=|PT|^2(定義 5.1[円の幾何])である。頂点 AA は直線 ABAB 上で T1T_1 と異なり、直線 ADAD 上で T4T_4 と異なるので、∣AT1∣2=pow⁡(A)=∣AT4∣2|AT_1|^2=\operatorname{pow}(A)=|AT_4|^2。他の頂点でも同様なので、tA=∣AT1∣=∣AT4∣t_A=|AT_1|=|AT_4|、tB=∣BT1∣=∣BT2∣t_B=|BT_1|=|BT_2|、tC=∣CT2∣=∣CT3∣t_C=|CT_2|=|CT_3|、tD=∣DT3∣=∣DT4∣t_D=|DT_3|=|DT_4| とおける。接点は辺の内部にあるので ∣AB∣=tA+tB|AB|=t_A+t_B、∣BC∣=tB+tC|BC|=t_B+t_C、∣CD∣=tC+tD|CD|=t_C+t_D、∣DA∣=tD+tA|DA|=t_D+t_A で、∣AB∣+∣CD∣=tA+tB+tC+tD=∣BC∣+∣DA∣|AB|+|CD|=t_A+t_B+t_C+t_D=|BC|+|DA| である。

次の目玉の定理は、離れた 2 つの円の一方の中心から他方へ接線を引き、それが自分の円から切り取る弦を比べるものです。2 円の半径が違っていても、2 つの弦の長さは等しくなります。

定理 7.2(目玉の定理)✓

中心 O1,O2O_1,O_2、半径 r1,r2r_1,r_2 の 2 円が、d=∣O1O2∣>r1+r2d=|O_1O_2|>r_1+r_2 を満たすとする(互いに外部にある)。O1O_1 から円 Γ2\Gamma_2 に引いた 2 本の接線が円 Γ1\Gamma_1 と、O1O2O_1O_2 の側の半直線上で交わる点を A,BA,B、O2O_2 から円 Γ1\Gamma_1 に引いた 2 本の接線が Γ2\Gamma_2 と、O2O1O_2O_1 の側の半直線上で交わる点を C,DC,D とすると、∣AB∣=∣CD∣|AB|=|CD| である。

証明(定理 7.2)

e\boldsymbol e を O1O2→\overrightarrow{O_1O_2} 方向の単位ベクトルとし、O1O_1 を通る単位方向ベクトル ν\boldsymbol\nu の直線の O2O_2 からの距離は ∣det⁡(ν,O1O2→)∣=d ∣sin⁡ang⁡(ν,e)∣|\det(\boldsymbol\nu,\overrightarrow{O_1O_2})|=d\,|\sin\operatorname{ang}(\boldsymbol\nu,\boldsymbol e)| である(命題 4.5[平面ベクトルと座標] の 1)。これが r2r_2 に等しいのは sin⁡ang⁡=±r2d\sin\operatorname{ang}=\pm\dfrac{r_2}{d} のときで、O2O_2 側を向く方向は ν=R(±φ)e\boldsymbol\nu=R(\pm\varphi)\boldsymbol e、φ∈(0,π2)\varphi\in(0,\frac\pi2)、sin⁡φ=r2d\sin\varphi=\dfrac{r_2}{d} の 2 つである。したがって A=O1+r1R(φ)eA=O_1+r_1R(\varphi)\boldsymbol e、B=O1+r1R(−φ)eB=O_1+r_1R(-\varphi)\boldsymbol e で、補題 2.2[円の幾何] と回転が長さを保つこと(命題 6.3[平面ベクトルと座標] の 2)から ∣AB∣=r1 ∣e(φ)−e(−φ)∣=2r1sin⁡φ=2r1r2d|AB|=r_1\,|e(\varphi)-e(-\varphi)|=2r_1\sin\varphi=\dfrac{2r_1r_2}{d}。同様に ∣CD∣=2r2r1d|CD|=\dfrac{2r_2r_1}{d} で、等しい。

8. 最大視角(Regiomontanus の問題)

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壁にかかった絵(線分 ABAB)を、床の上の直線 mm に沿って歩きながら見るとき、見込む角 ∠APB\angle APB が最大になる位置はどこでしょうか。候補は、A,BA,B を通って直線 mm に接する円の接点です。その近くでは、接点以外の点は円の外に出るので、見込む角は小さくなります。この証明は、前章の「見込む角と円の内外の補題」を使って、そのことを示すものです。

命題 8.1(最大視角)✓

直線 mm と、mm 上にない同じ側の 2 点 A,BA,B をとる。

  1. 直線 ABAB が mm と点 QQ で交わるとき、T∈mT\in m を ∣QT∣2=∣QA∣∣QB∣|QT|^2=|QA||QB| となる点(mm 上に 2 つある)とすると、A,B,TA,B,T を通る円は mm に TT で接し、QQ から TT の方向の半直線上の点 P≠TP\ne T について ∠APB<∠ATB\angle APB<\angle ATB である。
  2. AB∥mAB\parallel m のとき、線分 ABAB の垂直二等分線と mm の交点を TT とすると、mm 上の点 P≠TP\ne T について ∠APB<∠ATB\angle APB<\angle ATB である。
証明(命題 8.1)

1: A,BA,B は mm の同じ側にあるので、QQ は線分 ABAB の外にあり、QA→⋅QB→=∣QA∣∣QB∣>0\overrightarrow{QA}\cdot\overrightarrow{QB}=|QA||QB|>0。Γ\Gamma を A,B,TA,B,T を通る円とすると、方べきの定理(定理 5.2[円の幾何] の 1)から pow⁡Γ(Q)=QA→⋅QB→=∣QT∣2\operatorname{pow}_\Gamma(Q)=\overrightarrow{QA}\cdot\overrightarrow{QB}=|QT|^2。直線 m=QTm=QT は Γ\Gamma と TT ともう 1 点 T2T_2(接するなら T2=TT_2=T)で交わり、QT→⋅QT2→=pow⁡Γ(Q)=∣QT∣2\overrightarrow{QT}\cdot\overrightarrow{QT_2}=\operatorname{pow}_\Gamma(Q)=|QT|^2、T2−QT_2-Q は T−QT-Q の実数倍なので T2=TT_2=T。よって mm は Γ\Gamma の接線で、mm 上の TT と異なる点 PP では、直線 mm と Γ\Gamma の共有点は TT だけなので、定理 5.2[円の幾何] の 1(接する場合)から pow⁡Γ(P)=∣PT∣2>0\operatorname{pow}_\Gamma(P)=|PT|^2>0、すなわち PP は Γ\Gamma の外にある。直線 ABAB に関する符号 f(X)=det⁡(AB→,AX→)f(X)=\det(\overrightarrow{AB},\overrightarrow{AX}) は mm 上で 1 次関数で f(Q)=0f(Q)=0、ff は定数でない(mm は ABAB と平行でない)ので、QQ から TT の方向の半直線上の QQ 以外の点では符号が一定、つまり PP は直線 ABAB について TT と同じ側にある(P=QP=Q のときは A,BA,B が QQ から同じ向きにあるので ∠AQB=0<∠ATB\angle AQB=0<\angle ATB で、主張は明らか)。A,BA,B を必要なら入れ替えて S(A,B,T)>0S(A,B,T)>0 とすると、見込む角と円の内外の補題 補題 3.3[円の幾何] から ∠APB<∠ATB\angle APB<\angle ATB。

2: TT は垂直二等分線上にあるので、A,B,TA,B,T を通る円の中心 O′O' も垂直二等分線上にある。垂直二等分線は AB∥mAB\parallel m に垂直なので mm にも垂直で、TO′→\overrightarrow{TO'} は mm に垂直、すなわち mm は TT で Γ\Gamma に接する(定義 4.2[円の幾何])。あとは 1 と同じく、P≠TP\ne T は Γ\Gamma の外にあり、AB∥mAB\parallel m なので P,TP,T は同じ側にある。補題から ∠APB<∠ATB\angle APB<\angle ATB。

例 8.2(最大視角の数値例)

A=(0,1)A=(0,1)、B=(0,3)B=(0,3)、mm を xx 軸とすると、ABAB と mm の交点は Q=(0,0)Q=(0,0) で、∣QA∣∣QB∣=3|QA||QB|=3 なので T=(3,0)T=(\sqrt3,0)。x>0x>0 の側で見込む角は x=3x=\sqrt3 で最大になる。そのとき TT から BB への仰角は arctan⁡3=π3\arctan\sqrt3=\dfrac\pi3、AA への仰角は arctan⁡13=π6\arctan\dfrac1{\sqrt3}=\dfrac\pi6 なので、∠ATB=π3−π6=π6\angle ATB=\dfrac\pi3-\dfrac\pi6=\dfrac\pi6(30∘30^\circ)である。たとえば x=1x=1 では arctan⁡3−arctan⁡1≈26.6∘\arctan3-\arctan1\approx26.6^\circ で、確かに小さい。

  • 複比と円円対応。Ptolemy の定理の等号条件が「複比が負の実数」であったこと(既存の解析学の章)は、複素解析の 1 次分数変換と複比の理論(等角写像)に直結します。4 点が同一円周上にあることは複比が実数であることと同値で、向きつきの角(命題 4.2)はその偏角の言い換えです。
  • 射影幾何。Miquel の定理と Brianchon の定理は、直線と円の「双対性」と射影変換のもとで統一されます。後の章の反転:円と直線の名定理で円と直線を区別しない反転の見方を、その次の章の射影の名定理で Brianchon の定理を極と極線の双対として学びます。
  • 代数幾何。蝶の定理の証明の「2 次式の解と係数の関係」は、円錐曲線と直線の交点の議論の最小の例です。

演習 10.1標準

円に内接する四角形の辺が 5,5,5,55,5,5,5(順に)であるとき面積を求めよ。また、辺が 1,1,1, x1,1,1,\ x の内接四角形が存在するとき、面積を xx で表せ。

解答

前半は 定理 3.1 から s=10s=10、S=54=25S=\sqrt{5^4}=25(正方形)。後半は s=3+x2s=\dfrac{3+x}2、s−1=1+x2s-1=\dfrac{1+x}2、s−x=3−x2s-x=\dfrac{3-x}2 なので S=(1+x2)33−x2=14(1+x)3(3−x)S=\sqrt{\Bigl(\dfrac{1+x}2\Bigr)^3\dfrac{3-x}2}=\dfrac{1}{4}\sqrt{(1+x)^3(3-x)}(0<x<30<x<3)。

演習 10.2標準

A=(0,2)A=(0,2)、B=(0,8)B=(0,8) を yy 軸上にとり、xx 軸の正の側の点 P=(x,0)P=(x,0) から ABAB を見込む角を最大にする xx と、そのときの角を求めよ。

解答

Q=(0,0)Q=(0,0) で ∣QA∣∣QB∣=16|QA||QB|=16 なので、命題 8.1 から x=4x=4。そのとき tan⁡∠ATB=tan⁡∠BTQ−tan⁡∠ATQ1+tan⁡∠BTQtan⁡∠ATQ=2−121+1=34\tan\angle ATB=\dfrac{\tan\angle BTQ-\tan\angle ATQ}{1+\tan\angle BTQ\tan\angle ATQ}=\dfrac{2-\frac12}{1+1}=\dfrac34 で(T=(4,0)T=(4,0) から BB への仰角の tan⁡\tan が 84=2\frac84=2、AA へが 24=12\frac24=\frac12)、角は arctan⁡34≈36.9∘\arctan\dfrac34\approx36.9^\circ である。

演習 10.3易

半径 22 と 33、中心間の距離 1010 の 2 円について、定理 7.2 の ∣AB∣|AB| と ∣CD∣|CD| を求めよ。

解答

∣AB∣=∣CD∣=2r1r2d=2⋅2⋅310=65|AB|=|CD|=\dfrac{2r_1r_2}{d}=\dfrac{2\cdot2\cdot3}{10}=\dfrac65 である。

  • H. S. M. Coxeter, S. L. Greitzer, Geometry Revisited, Mathematical Association of America, 1967 — 第 2 章(円のいくつかの性質)。
  • Roger A. Johnson, Advanced Euclidean Geometry, Dover, 2007 — 円に内接する四角形、Miquel の定理の古典的な扱い。
  • Robin Hartshorne, Geometry: Euclid and Beyond, Springer, 2000 — 円周角の定理と共円条件を公理から扱う。
  • Titu Andreescu, Dorin Andrica, Complex Numbers from A to … Z, Birkhäuser, 2006 — 複素数による初等幾何の証明。

このテーマの 100 本ノック(100 問)

執筆: Claude Code(Sonnet 5.5)、Claude Code(Opus 5.5)・監査 2 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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