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図形と方程式:直線・円・極線・軌跡・領域・面積と格子点

対象読者: 本テーマ第 1 章の平面ベクトルと、高校の 2 次関数(平方完成・判別式)を学んだ人。直線・円の方程式は復習から入り、極と極線は仮定しません。

前提となる記事:平面ベクトルと座標:内積・行列式・重み付き距離の公式を一本の道で、2 次関数:平方完成から最大最小・判別式・解の配置まで

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この記事は、図形の問題を「式の計算」に置き換えて解く方法の話です。たとえば「円の外の点から引いた 2 本の接線の接点を結ぶ線はどこを通るか」「2 点からの距離の比が決まった点はどんな図形を描くか」といった問いを、座標を使って計算で確かめます。読み終えると、直線・円・領域・面積の問題を、図に頼らず式の変形で、しかも「本当に同じことを言い換えているか」を確かめながら解けるようになります。後半の名前(極線、靴ひも公式、Gauss の円問題など)は、その節で初めて説明するので、今は知らなくて大丈夫です。

  • 平面を座標平面 R2\mathbb{R}^2 とすると、直線は ax+by+c=0ax+by+c=0((a,b)≠(0,0)(a,b)\ne(0,0))、円は (x−p)2+(y−q)2=r2(x-p)^2+(y-q)^2=r^2 という方程式で表されます。図形の性質は、方程式の係数の関係として読めます。
  • 点と直線の距離 ∣ax0+by0+c∣a2+b2\dfrac{|ax_0+by_0+c|}{\sqrt{a^2+b^2}} の公式は、「垂線の足が最短」というピタゴラスの定理の言い換えとして証明できます。円と直線の位置関係(交点 2 個・接する・交わらない)は、この距離と半径の大小で決まります。
  • 円の極と極線(円の外の点から引いた 2 本の接線の接点を結ぶ直線が、その点の極線です)は、(P−C)⋅(X−C)=r2(P-C)\cdot(X-C)=r^2 という内積の方程式一つで定まり、接線・接点・反転の話を統一します。La Hire の定理(QQ が PP の極線上   ⟺  \iff PP が QQ の極線上)は内積の対称性そのものです。
  • 軌跡は「必要十分」を確かめて初めて完成します。Apollonius の円(2 定点からの距離の比が一定の点の軌跡)は、方程式を変形して円の方程式に直すことで、必要十分のまま示せます。
  • 領域と最大・最小:線形の目的関数の最大・最小は、凸多角形の頂点で起こります(線形計画法)。通過領域は、パラメータの 2 次方程式が(区間内に)実数解をもつ条件として求めます。
  • 面積と格子点:凸多角形の面積は靴ひも公式で計算でき、Gauss の円問題(半径 rr の円の内部の格子点の個数 =πr2+O(r)=\pi r^2+O(r))は、単位正方形の敷き詰めで示せます。Sylvester–Gallai の定理は、点と直線の距離の最小性による Kelly の証明です。なお O(r)O(r) は「rr に比例する程度の大きさ以下」という意味の記号です。

1. 動機:図形の問題を式の問題に直す

Section titled “1. 動機:図形の問題を式の問題に直す”

Descartes による座標の導入は、図形の問題を方程式の問題に翻訳する道具です。翻訳は一方通行ではありません。たとえば「円と直線が接する」は、図形としては「共有点がちょうど 1 つ」ですが、式としては「連立方程式の判別式が 00」「中心と直線の距離が半径に等しい」の 2 通りに言い換えられ、どちらも同じことを言っています。この記事では、そうした言い換えを、言い換えのたびに同値になっているかを確かめながら積み上げます。

高校の「図形と方程式」の問題には、いくつかの典型があります。

  • 点と直線の距離、円と直線の位置関係、接線の方程式。
  • 軌跡:条件を満たす点の集合を求める。必要条件だけで絞って終わりにしない(逆に、求めた図形のすべての点が条件を満たすことの確認が要る)。
  • 不等式の表す領域、領域での最大・最小、通過領域。
  • 面積・格子点の計算。

この記事は、これらの典型を、最初の章 平面ベクトルと座標 の道具(内積・行列式・符号付き面積)と、2 次関数 の判別式・解の配置から導きます。

2. 直線の方程式と点と直線の距離

Section titled “2. 直線の方程式と点と直線の距離”

命題 2.1(直線の方程式・平行と垂直)✓

  1. (一般形) 平面の直線は、(a,b)≠(0,0)(a,b)\ne(0,0) を満たす ax+by+c=0ax+by+c=0 の解集合として表され、逆にそのような方程式の解集合は直線である。n=(a,b)\boldsymbol n=(a,b) は法線ベクトル、(−b,a)(-b,a) は方向ベクトルである。2 つの方程式が同じ直線を表すことと、係数の組 (a,b,c)(a,b,c) が互いに 00 でない定数倍であることは同値である。
  2. (2 点を通る直線) 相異なる 2 点 A,BA,B を通る直線はただ 1 つで、その方程式は (yB−yA)(x−xA)−(xB−xA)(y−yA)=0(y_B-y_A)(x-x_A)-(x_B-x_A)(y-y_A)=0。
  3. 直線 ℓ:ax+by+c=0\ell:ax+by+c=0、ℓ′:a′x+b′y+c′=0\ell':a'x+b'y+c'=0 について、Δ=ab′−a′b\Delta=ab'-a'b とする。Δ≠0\Delta\ne0 ならちょうど 1 点で交わり、交点は (bc′−b′cΔ, ca′−c′aΔ)\Bigl(\dfrac{bc'-b'c}{\Delta},\ \dfrac{ca'-c'a}{\Delta}\Bigr)。Δ=0\Delta=0 なら一致するか共有点をもたない(平行)。ℓ⊥ℓ′  ⟺  aa′+bb′=0\ell\perp\ell'\iff aa'+bb'=0。
  4. b,b′≠0b,b'\ne0 のとき、傾き m=−a/bm=-a/b、m′=−a′/b′m'=-a'/b' について、ℓ∥ℓ′  ⟺  m=m′\ell\parallel\ell'\iff m=m'、ℓ⊥ℓ′  ⟺  mm′=−1\ell\perp\ell'\iff mm'=-1。
証明(命題 2.1)

(1) 直線は {x∣det⁡(d,x−a)=0}\{\boldsymbol x\mid\det(\boldsymbol d,\boldsymbol x-\boldsymbol a)=0\}(d≠0\boldsymbol d\ne\boldsymbol 0、直線と円のベクトル方程式(命題 5.5)[平面ベクトルと座標] (1))で、det⁡(d,y)=−d2y1+d1y2\det(\boldsymbol d,\boldsymbol y)=-d_2y_1+d_1y_2 から (a,b)=(−d2,d1)(a,b)=(-d_2,d_1) とおけば ax+by+c=0ax+by+c=0(c=−n⋅ac=-\boldsymbol n\cdot\boldsymbol a)の形になります。逆に (a,b)≠0(a,b)\ne\boldsymbol0 なら解集合は空でなく(b≠0b\ne0 なら (0,−c/b)(0,-c/b)、b=0b=0 なら (−c/a,0)(-c/a,0) が解)、その 1 点を AA とすると n⋅(x−a)=0\boldsymbol n\cdot(\boldsymbol x-\boldsymbol a)=0 と書け、同じ命題の (2) により AA を通り n\boldsymbol n に垂直な直線です。同じ直線を表す 2 つの方程式の法線ベクトル n,n′\boldsymbol n,\boldsymbol n' は、直線上の相異なる 2 点 A,BA,B をとると、どちらも w=b−a≠0\boldsymbol w=\boldsymbol b-\boldsymbol a\ne\boldsymbol 0 と垂直です。n,n′\boldsymbol n,\boldsymbol n' が 1 次独立なら 1 次独立と成分表示の一意性(命題 3.1)[平面ベクトルと座標] により w=sn+tn′\boldsymbol w=s\boldsymbol n+t\boldsymbol n' と書け、∣w∣2=s n⋅w+t n′⋅w=0|\boldsymbol w|^2=s\,\boldsymbol n\cdot\boldsymbol w+t\,\boldsymbol n'\cdot\boldsymbol w=0 で w=0\boldsymbol w=\boldsymbol 0 となり矛盾します。したがって n′=λn\boldsymbol n'=\lambda\boldsymbol n で、AA を代入して c′=λcc'=\lambda c です。逆は明らか。

(2) det⁡(b−a,x−a)=0\det(\boldsymbol b-\boldsymbol a,\boldsymbol x-\boldsymbol a)=0 を成分で書いたものです(直線と円のベクトル方程式(命題 5.5)[平面ベクトルと座標] (1))。A,BA,B を通る直線は、(1) の証明のとおり、法線ベクトルが B−AB-A に垂直という条件で定数倍を除いて決まり、AA を通ることから定数項も決まるので、ただ 1 つです。

(3) Δ≠0\Delta\ne0 なら連立 1 次方程式の解は Cramer の公式の形(代入して確かめられる)でただ 1 つです。Δ=0\Delta=0 なら n,n′\boldsymbol n,\boldsymbol n' は 1 次従属(1 次独立と成分表示の一意性(命題 3.1)[平面ベクトルと座標])で n′=λn\boldsymbol n'=\lambda\boldsymbol n と書ける。共有点 X0X_0 があれば ℓ′={λn⋅(x−x0)=0}=ℓ\ell'=\{\lambda\boldsymbol n\cdot(\boldsymbol x-\boldsymbol x_0)=0\}=\ell。垂直は、方向ベクトルが法線ベクトルを 90∘90^\circ 回転したもの((−b,a)⋅(−b′,a′)=aa′+bb′(-b,a)\cdot(-b',a')=aa'+bb')なので、法線ベクトルの垂直と同じです。

(4) 方向ベクトルは (1,m)(1,m)、(1,m′)(1,m') で、平行は成分が比例する(m=m′m=m')、垂直は内積 1+mm′=01+mm'=0 です。

次の定理は、点 PP から直線 ℓ\ell への距離を座標だけで求める公式です。方針は、PP から ℓ\ell に垂線を下ろした足 HH をとり、ℓ\ell 上のほかの点 XX について直角三角形 PHXPHX にピタゴラスの定理を使うことです。斜辺 PXPX は他の辺より長いので、HH が最も近い点になります。

PHXℓ
点 P から直線 ℓ に下ろした垂線の足 H。ℓ 上の任意の点 X について、三角形 PHX は H で直角なので |PX|² = |PH|² + |HX|²

定理 2.2(点と直線の距離)✓

ℓ:ax+by+c=0\ell:ax+by+c=0、P=(x0,y0)P=(x_0,y_0) とし、n=(a,b)\boldsymbol n=(a,b)、δ=ax0+by0+ca2+b2\delta=\dfrac{ax_0+by_0+c}{a^2+b^2} とおく。点 H=P−δnH=P-\delta\boldsymbol n は ℓ\ell 上にあり、ℓ\ell の任意の点 XX について

∣P−X∣2=∣P−H∣2+∣H−X∣2.|P-X|^2=|P-H|^2+|H-X|^2.

したがって PP から ℓ\ell までの距離(ℓ\ell の点との距離の最小値)は ∣PH∣=∣ax0+by0+c∣a2+b2|PH|=\dfrac{|ax_0+by_0+c|}{\sqrt{a^2+b^2}} で、最小を与える点は HH だけである。

証明(定理 2.2)

n⋅H+c=n⋅P−δ∣n∣2+c=0\boldsymbol n\cdot H+c=\boldsymbol n\cdot P-\delta|\boldsymbol n|^2+c=0 なので H∈ℓH\in\ell。X∈ℓX\in\ell なら n⋅X=−c=n⋅H\boldsymbol n\cdot X=-c=\boldsymbol n\cdot H で、H−XH-X は n\boldsymbol n に垂直です。P−H=δnP-H=\delta\boldsymbol n は n\boldsymbol n に平行なので (P−H)⋅(H−X)=0(P-H)\cdot(H-X)=0。内積の性質(定理 4.1)[平面ベクトルと座標] (3) より ∣P−X∣2=∣(P−H)+(H−X)∣2=∣P−H∣2+∣H−X∣2|P-X|^2=|(P-H)+(H-X)|^2=|P-H|^2+|H-X|^2 です。右辺は X=HX=H のときに限り最小(定理 4.1[平面ベクトルと座標] (2))で、∣P−H∣=∣δ∣∣n∣=∣ax0+by0+c∣∣n∣|P-H|=|\delta||\boldsymbol n|=\dfrac{|ax_0+by_0+c|}{|\boldsymbol n|}。

例 2.3(距離と面積)

点 (1,2)(1,2) と直線 3x+4y−5=03x+4y-5=0 の距離は ∣3+8−5∣5=65\dfrac{|3+8-5|}{5}=\dfrac65。三角形 A(0,0)A(0,0)、B(4,0)B(4,0)、C(1,3)C(1,3) の面積は、底辺 ABAB を y=0y=0 とすると、CC との距離 33 から 12⋅4⋅3=6\tfrac12\cdot4\cdot3=6、符号付き面積(符号付き面積の性質と三角形の面積(命題 6.2)[平面ベクトルと座標])では S=12det⁡((4,0),(1,3))=6S=\tfrac12\det((4,0),(1,3))=6 と一致します。

3. 円の方程式・円と直線・接線

Section titled “3. 円の方程式・円と直線・接線”

命題 3.1(円の方程式)✓

x2+y2+Ax+By+C=0x^2+y^2+Ax+By+C=0 の解集合は、A2+B2−4C>0A^2+B^2-4C>0 のとき中心 (−A2,−B2)\bigl(-\tfrac A2,-\tfrac B2\bigr)、半径 12A2+B2−4C\tfrac12\sqrt{A^2+B^2-4C} の円、=0=0 のとき 1 点(中心)、<0<0 のとき空集合である。逆に、中心 (p,q)(p,q)、半径 rr の円は x2+y2−2px−2qy+p2+q2−r2=0x^2+y^2-2px-2qy+p^2+q^2-r^2=0。

証明(命題 3.1)

平方完成により x2+y2+Ax+By+C=(x+A2)2+(y+B2)2−A2+B2−4C4x^2+y^2+Ax+By+C=\bigl(x+\tfrac A2\bigr)^2+\bigl(y+\tfrac B2\bigr)^2-\tfrac{A^2+B^2-4C}{4}。右辺 =0=0 は、中心 (−A2,−B2)\bigl(-\tfrac A2,-\tfrac B2\bigr) からの距離の 2 乗が A2+B2−4C4\tfrac{A^2+B^2-4C}4 という条件で、距離の 2 乗は 00 以上なので、正のとき円、00 のとき中心 1 点(内積の性質(定理 4.1)[平面ベクトルと座標] (2))、負のとき解なしです。

定理 3.2(円と直線の位置関係)✓

Γ\Gamma を中心 CC、半径 r>0r>0 の円、ℓ\ell を直線とし、d=dist⁡(C,ℓ)d=\operatorname{dist}(C,\ell) を中心と直線の距離とする。Γ∩ℓ\Gamma\cap\ell の点の個数は、d<rd<r のとき 2、d=rd=r のとき 1(唯一の共有点は CC から ℓ\ell に下ろした垂線の足 HH)、d>rd>r のとき 0 である。

証明(定理 3.2)

HH を 定理 2.2 の垂線の足、e\boldsymbol e を ℓ\ell の単位方向ベクトルとすると、ℓ\ell の点は X=H+τeX=H+\tau\boldsymbol e(τ∈R\tau\in\mathbb{R})と書け、∣H−X∣=∣τ∣|H-X|=|\tau| です。定理 2.2 より ∣C−X∣2=d2+τ2|C-X|^2=d^2+\tau^2 なので、X∈ΓX\in\Gamma は τ2=r2−d2\tau^2=r^2-d^2 と同値です。d>rd>r なら右辺が負で解なし、d=rd=r なら τ=0\tau=0 すなわち X=HX=H のみ、d<rd<r なら τ=±r2−d2\tau=\pm\sqrt{r^2-d^2} の 2 点です。

直線を円に近づけていったとき、共有点の個数が dd と rr の大小に応じてどう変わるかを見てみましょう。

円に向かって直線が平行移動する動画。d が半径 r より大きい間は共有点がなく、d = r で垂線の足 H だけで接し、d が r より小さくなると 2 点で交わる。
直線 ℓ を円に向かって平行移動する。中心 C からの距離 d が r より大きい間は共有点 0 個、d = r で垂線の足 H の 1 個(接する)、d < r で 2 個になる

直線が円に接するとは、共有点がちょうど 1 つであること、その共有点を接点といいます。

命題 3.3(円の接線)✓

円 Γ:(x−p)2+(y−q)2=r2\Gamma:(x-p)^2+(y-q)^2=r^2 上の点 T=(x0,y0)T=(x_0,y_0) における接線(TT を通り Γ\Gamma とちょうど 1 点 TT で交わる直線)はただ 1 つで、

(x0−p)(x−p)+(y0−q)(y−q)=r2(x_0-p)(x-p)+(y_0-q)(y-q)=r^2

である。これは TT を通り CTCT(C=(p,q)C=(p,q))に垂直な直線である。

証明(命題 3.3)

t=T−C\boldsymbol t=T-C(∣t∣=r|\boldsymbol t|=r)とおくと、与えられた方程式は t⋅(X−C)=r2\boldsymbol t\cdot(X-C)=r^2、すなわち t⋅(X−T)=0\boldsymbol t\cdot(X-T)=0(t⋅(T−C)=r2\boldsymbol t\cdot(T-C)=r^2 を使う)で、TT を通り t\boldsymbol t に垂直な直線 ℓ0\ell_0 です。CC からの距離は ∣t⋅(C−T)∣∣t∣=r2r=r\dfrac{|\boldsymbol t\cdot(C-T)|}{|\boldsymbol t|}=\dfrac{r^2}{r}=r なので、定理 3.2 により ℓ0\ell_0 は Γ\Gamma と 1 点(TT)で交わる接線です。一意性:TT を通る別の接線 ℓ\ell があれば、ℓ\ell は Γ\Gamma と 1 点だけで交わるので 定理 3.2 により dist⁡(C,ℓ)=r\operatorname{dist}(C,\ell)=r で、共有点 TT が垂線の足 HH に一致します。すると CT⊥ℓCT\perp\ell で、ℓ\ell は TT を通り t\boldsymbol t に垂直な直線、すなわち ℓ0\ell_0 です。

円 Γ\Gamma(中心 CC、半径 rr)と点 P≠CP\ne C に対し、直線

ℓP: (P−C)⋅(X−C)=r2\ell_P:\ (P-C)\cdot(X-C)=r^2

を PP の(Γ\Gamma に関する)極線、PP を ℓP\ell_P の極といいます。式だけを見ると唐突ですが、PP が円の外にあるときは、PP から引いた 2 本の接線の接点を結ぶ直線がちょうどこの ℓP\ell_P になります(下の定理の (3) で示します。図は定理の少し後にあります)。PP が円周上なら 命題 3.3 により ℓP\ell_P は PP における接線です。

定理 4.1(極と極線)✓

Γ\Gamma を中心 CC、半径 rr の円、P,Q≠CP,Q\ne C とする。

  1. (La Hire)Q∈ℓP  ⟺  P∈ℓQQ\in\ell_P\iff P\in\ell_Q。
  2. ℓP\ell_P は CPCP に垂直で、直線 CPCP との交点 P′P' は半直線 CPCP 上にあり ∣CP∣⋅∣CP′∣=r2|CP|\cdot|CP'|=r^2 を満たす。
  3. PP が Γ\Gamma の外側(∣CP∣>r|CP|>r)にあるとき、ℓP\ell_P は Γ\Gamma とちょうど 2 点 T1,T2T_1,T_2 で交わり、T1,T2T_1,T_2 は PP から Γ\Gamma に引いた 2 本の接線の接点である。
証明(定理 4.1)

(1) Q∈ℓP  ⟺  (P−C)⋅(Q−C)=r2Q\in\ell_P\iff(P-C)\cdot(Q-C)=r^2 で、内積は対称(内積の性質(定理 4.1)[平面ベクトルと座標] (1))なので、これは P∈ℓQP\in\ell_Q と同じです。

(2) ℓP\ell_P の法線ベクトルは P−CP-C なので CP⊥ℓPCP\perp\ell_P。X=C+λ(P−C)X=C+\lambda(P-C) が ℓP\ell_P 上にある条件は λ∣P−C∣2=r2\lambda|P-C|^2=r^2 なので λ=r2/∣CP∣2>0\lambda=r^2/|CP|^2>0 で、∣CP′∣=λ∣CP∣=r2/∣CP∣|CP'|=\lambda|CP|=r^2/|CP|。

(3) T∈ΓT\in\Gamma における接線 (T−C)⋅(X−C)=r2(T-C)\cdot(X-C)=r^2(命題 3.3)が PP を通る条件は (T−C)⋅(P−C)=r2(T-C)\cdot(P-C)=r^2、すなわち T∈ℓPT\in\ell_P です。したがって、PP を通る接線の接点は Γ∩ℓP\Gamma\cap\ell_P の点で、逆も成り立ちます。(2) より CC から ℓP\ell_P までの距離は ∣CP′∣=r2/∣CP∣<r|CP'|=r^2/|CP|<r なので、定理 3.2 により Γ∩ℓP\Gamma\cap\ell_P はちょうど 2 点です。

(2) の対応 P↦P′P\mapsto P' は、反転:円と直線の名定理 の章で扱った反転そのものです。極線は、「円の外の点から引いた 2 本の接線の接点を結ぶ線」として、高校の「図形と方程式」にも現れます。

定理 4.2(円の束)✓

f=x2+y2+ax+by+cf=x^2+y^2+ax+by+c、g=x2+y2+a′x+b′y+c′g=x^2+y^2+a'x+b'y+c' を異なる 2 円(f=0f=0、g=0g=0)の方程式とし、2 円は相異なる 2 点 P1,P2P_1,P_2 で交わるとする。

  1. f−g=0f-g=0 は直線 P1P2P_1P_2 の方程式である。
  2. 2 点 P1,P2P_1,P_2 を通る円は、ちょうど f+k(f−g)=0f+k(f-g)=0(kk は実数)で表される円であり、各円に対して kk はただ 1 つ決まる。
証明(定理 4.2)

(1) f−g=(a−a′)x+(b−b′)y+(c−c′)f-g=(a-a')x+(b-b')y+(c-c')。(a,b)=(a′,b′)(a,b)=(a',b') なら f−gf-g は定数 c−c′c-c' で、P1P_1 で f=g=0f=g=0 なので c=c′c=c'、2 円が一致して仮定に反します。よって (a−a′,b−b′)≠0(a-a',b-b')\ne\boldsymbol0 で f−g=0f-g=0 は直線(命題 2.1 (1))。P1,P2P_1,P_2 で f=g=0f=g=0 から f−g=0f-g=0 なので、この直線は P1,P2P_1,P_2 を通り、命題 2.1 (2) の直線と一致します((1) の一意性)。

(2) 円 h=x2+y2+a′′x+b′′y+c′′=0h=x^2+y^2+a''x+b''y+c''=0 が P1,P2P_1,P_2 を通るなら、h−fh-f は 1 次以下の式で P1,P2P_1,P_2 で 00 になります。(a′′−a,b′′−b)=0(a''-a,b''-b)=\boldsymbol0 なら h−fh-f は定数で、P1P_1 での値から 00、すなわち h=fh=f(k=0k=0)。そうでなければ h−f=0h-f=0 は P1,P2P_1,P_2 を通る直線で、(1) と 命題 2.1 (1) により h−f=k(f−g)h-f=k(f-g)(k≠0k\ne0)と書けます。kk の一意性は f−gf-g が零でない 1 次式であることによります。逆に、任意の実数 kk について f+k(f−g)=x2+y2+(a+k(a−a′))x+⋯f+k(f-g)=x^2+y^2+\bigl(a+k(a-a')\bigr)x+\cdots の x2+y2x^2+y^2 の係数は 11 なので 命題 3.1 の形で、P1,P2P_1,P_2 を解にもつので空でなく、2 点を含むので 1 点集合でもなく、したがって円です。

CPT₁T₂P’
円の外の点 P の極線:2 本の接線の接点 T₁, T₂ を結ぶ直線。極線は CP に垂直で、CP との交点 P' は |CP|·|CP'| = r² を満たす

次の定理の証明は、n∣PA∣=m∣PB∣n|PA|=m|PB| の両辺を 2 乗して PP の座標の 2 次式にし、それを平方完成して円の方程式の形に直す、という計算です。途中で 2 乗しても同値のままであることを確かめるのが要点で、長い式は最後の整理(D2D^2 で通分した分子が m2n2∣AB∣2m^2n^2|AB|^2 になる部分)に集中しています。

定理 5.1(Apollonius の円)✓

A≠BA\ne B、m,n>0m,n>0 とし、∣PA∣:∣PB∣=m:n|PA|:|PB|=m:n(すなわち n∣PA∣=m∣PB∣n|PA|=m|PB|)を満たす点 PP の集合を L\mathcal{L} とする。m=nm=n なら L\mathcal{L} は線分 ABAB の垂直二等分線である。m≠nm\ne n なら L\mathcal{L} は

中心  n2a−m2bn2−m2,半径  mn ∣AB∣∣n2−m2∣\text{中心 }\ \dfrac{n^2\boldsymbol a-m^2\boldsymbol b}{n^2-m^2},\qquad\text{半径 }\ \dfrac{mn\,|AB|}{|n^2-m^2|}

の円で、これは線分 ABAB を m:nm:n に内分する点と外分する点(内分点・外分点(定理 5.1)[平面ベクトルと座標])を直径の両端とする円である。

証明(定理 5.1)

n∣PA∣=m∣PB∣n|PA|=m|PB| の両辺は 00 以上なので、2 乗した n2∣PA∣2=m2∣PB∣2n^2|PA|^2=m^2|PB|^2 と同値です(実数の計算規則(命題 2.2)[数と式] (6))。p=P\boldsymbol p=P として展開すると

(n2−m2)∣p∣2−2p⋅(n2a−m2b)+n2∣a∣2−m2∣b∣2=0.(n^2-m^2)|\boldsymbol p|^2-2\boldsymbol p\cdot(n^2\boldsymbol a-m^2\boldsymbol b)+n^2|\boldsymbol a|^2-m^2|\boldsymbol b|^2=0.

m=nm=n なら p⋅(a−b)=12(∣a∣2−∣b∣2)\boldsymbol p\cdot(\boldsymbol a-\boldsymbol b)=\tfrac12(|\boldsymbol a|^2-|\boldsymbol b|^2) で、これは法線ベクトル a−b\boldsymbol a-\boldsymbol b をもつ直線で、中点 a+b2\tfrac{\boldsymbol a+\boldsymbol b}2 を通ります。m≠nm\ne n なら D=n2−m2≠0D=n^2-m^2\ne0 で割り、c=n2a−m2bD\boldsymbol c=\tfrac{n^2\boldsymbol a-m^2\boldsymbol b}{D} とすると ∣p−c∣2=∣c∣2−n2∣a∣2−m2∣b∣2D|\boldsymbol p-\boldsymbol c|^2=|\boldsymbol c|^2-\tfrac{n^2|\boldsymbol a|^2-m^2|\boldsymbol b|^2}{D}。右辺を D2D^2 で通分した分子は

∣n2a−m2b∣2−D(n2∣a∣2−m2∣b∣2)=m2n2(∣a∣2−2a⋅b+∣b∣2)=m2n2∣AB∣2|n^2\boldsymbol a-m^2\boldsymbol b|^2-D(n^2|\boldsymbol a|^2-m^2|\boldsymbol b|^2)=m^2n^2\bigl(|\boldsymbol a|^2-2\boldsymbol a\cdot\boldsymbol b+|\boldsymbol b|^2\bigr)=m^2n^2|AB|^2

(展開すると n4∣a∣2n^4|\boldsymbol a|^2 と m4∣b∣2m^4|\boldsymbol b|^2 が消える)なので、∣p−c∣=mn∣AB∣∣D∣|\boldsymbol p-\boldsymbol c|=\tfrac{mn|AB|}{|D|}。以上は同値変形の連鎖なので、L\mathcal{L} はこの円そのものです。内分点 na+mbm+n\tfrac{n\boldsymbol a+m\boldsymbol b}{m+n} と外分点 −na+mbm−n\tfrac{-n\boldsymbol a+m\boldsymbol b}{m-n} の中点が c\boldsymbol c、両者の差が 2mn(b−a)m2−n2\tfrac{2mn(\boldsymbol b-\boldsymbol a)}{m^2-n^2} なので距離の半分が半径に一致します。

例 5.2(Apollonius の円の例)

A=(−1,0)A=(-1,0)、B=(2,0)B=(2,0)、∣PA∣:∣PB∣=1:2|PA|:|PB|=1:2(m=1m=1、n=2n=2)。中心 4(−1,0)−(2,0)3=(−2,0)\tfrac{4(-1,0)-(2,0)}{3}=(-2,0)、半径 1⋅2⋅33=2\tfrac{1\cdot2\cdot3}{3}=2、すなわち (x+2)2+y2=4(x+2)^2+y^2=4。確かめると P=(0,0)P=(0,0) は ∣PA∣=1|PA|=1、∣PB∣=2|PB|=2 で比 1:21:2、中心との距離は 22 で円周上にあります。軌跡を求める問題では、方程式の導出が同値変形であること(上の証明の「両辺が 00 以上なので 2 乗しても同値」)を確かめて、はじめて「求めた円のすべての点が条件を満たす」ことが保証されます。

命題 6.1(半平面)✓

f(x,y)=ax+by+cf(x,y)=ax+by+c((a,b)≠0(a,b)\ne\boldsymbol 0)、ℓ:f=0\ell:f=0 とする。

  1. 点 X,YX,Y(f(X),f(Y)≠0f(X),f(Y)\ne0)について、線分 XYXY が ℓ\ell と交わるための必要十分条件は f(X)f(Y)<0f(X)f(Y)<0。したがって平面は ℓ\ell と 2 つの開半平面 {f>0}\{f>0\}、{f<0}\{f<0\} に分かれる。
  2. 半平面 {f≥0}\{f\ge0\} は凸である。したがって有限個の半平面の共通部分は凸である。
証明(命題 6.1)

ff は 1 次式なので、Xt=(1−t)X+tYX_t=(1-t)X+tY について f(Xt)=(1−t)f(X)+tf(Y)f(X_t)=(1-t)f(X)+tf(Y)。(1) f(X)f(Y)<0f(X)f(Y)<0 なら t0=f(X)f(X)−f(Y)∈(0,1)t_0=\dfrac{f(X)}{f(X)-f(Y)}\in(0,1)(分子分母は同符号で、分母のほうが絶対値が大きい)で f(Xt0)=0f(X_{t_0})=0。f(X)f(Y)>0f(X)f(Y)>0 なら f(Xt)f(X_t) は 2 つの同符号の数の凸結合で 00 にならない。(2) f(X),f(Y)≥0f(X),f(Y)\ge0 なら f(Xt)≥0f(X_t)\ge0(0≤t≤10\le t\le1)。

高校の線形計画法では、領域の多角形の中で ax+byax+by の値が一定の直線を平行に動かし、最後に多角形に触れる点(頂点)で最大・最小になる、と図で考えます。次の定理はこれを厳密にしたもので、証明の方針は「頂点でない点 XX からは、目的関数の値が減らない向きに動いて、制約の境界にぶつかるまで進める」ことの繰り返しです。ぶつかるたびに有効な制約が増えるので、最大でも 2 回で頂点に着きます。

定理 6.2(線形の目的関数の最大・最小は頂点で起こる)✓

fj(X)=nj⋅X+cjf_j(X)=\boldsymbol n_j\cdot X+c_j(nj≠0\boldsymbol n_j\ne\boldsymbol 0、j=1,…,kj=1,\dots,k)に対し K={X∣fj(X)≥0 (j=1,…,k)}K=\{X\mid f_j(X)\ge0\ (j=1,\dots,k)\} は空でない有界集合とする。KK の点 VV で、2 つの制約 fj(V)=fj′(V)=0f_j(V)=f_{j'}(V)=0 で nj,nj′\boldsymbol n_j,\boldsymbol n_{j'} が 1 次独立なものを頂点という。頂点は有限個で、1 次関数 φ(X)=α⋅X+β\varphi(X)=\boldsymbol\alpha\cdot X+\beta について、KK の各点 XX に対し、φ(V)≥φ(X)\varphi(V)\ge\varphi(X) を満たす頂点 VV が存在する。したがって KK での φ\varphi の最大値は頂点での値の最大値で、最小値も同様である。

証明(定理 6.2)

頂点は 2 つの制約の等式からなる連立 1 次方程式の(一意な)解なので、高々 (k2)\binom k2 個です。

X∈KX\in K とし、J={j∣fj(X)=0}J=\{j\mid f_j(X)=0\}(有効な制約)とします。{nj}j∈J\{\boldsymbol n_j\}_{j\in J} が 1 次独立な 2 本を含むなら XX は頂点です。そうでなければ、これらの法線ベクトルはすべてある 1 本のベクトルの定数倍(または J=∅J=\emptyset)で、すべてに垂直な d≠0\boldsymbol d\ne\boldsymbol 0 があります。α⋅d≥0\boldsymbol\alpha\cdot\boldsymbol d\ge0 となるように d\boldsymbol d の符号を選びます。Xt=X+tdX_t=X+t\boldsymbol d(t≥0t\ge0)では、j∈Jj\in J について fj(Xt)=0f_j(X_t)=0、j∉Jj\notin J について fj(Xt)=fj(X)+t nj⋅df_j(X_t)=f_j(X)+t\,\boldsymbol n_j\cdot\boldsymbol d(fj(X)>0f_j(X)>0)です。KK は有界なので、Xt∈KX_t\in K がすべての t≥0t\ge0 で成り立つことはなく、nj⋅d<0\boldsymbol n_j\cdot\boldsymbol d<0 となる jj が存在します。

t∗=min⁡{fj(X)−nj⋅d ∣ nj⋅d<0}t^*=\min\Bigl\{\frac{f_j(X)}{-\boldsymbol n_j\cdot\boldsymbol d}\ \Bigm|\ \boldsymbol n_j\cdot\boldsymbol d<0\Bigr\}

とすると X∗=Xt∗∈KX^*=X_{t^*}\in K で、φ(X∗)=φ(X)+t∗α⋅d≥φ(X)\varphi(X^*)=\varphi(X)+t^*\boldsymbol\alpha\cdot\boldsymbol d\ge\varphi(X)。最小を与える j∗j^* の制約が X∗X^* で有効になり、nj∗⋅d≠0\boldsymbol n_{j^*}\cdot\boldsymbol d\ne0 なので nj∗\boldsymbol n_{j^*} は JJ の法線ベクトルの張る空間に入りません。したがって X∗X^* の有効な制約の法線ベクトルが張る空間の次元は XX のそれより真に増えます。次元は高々 22 なので、この操作を高々 2 回繰り返すと頂点に至ります。

例 6.3(線形計画法の例)

x≥0x\ge0、y≥0y\ge0、x+y≤4x+y\le4、x+3y≤6x+3y\le6 のもとで φ=x+2y\varphi=x+2y の最大・最小を求める。制約を 2 つずつ等式にして解き、KK に入るものが頂点です。(0,0)(0,0)、(0,2)(0,2)(x=0x=0 と x+3y=6x+3y=6)、(4,0)(4,0)(y=0y=0 と x+y=4x+y=4)、(3,1)(3,1)(x+y=4x+y=4 と x+3y=6x+3y=6)が頂点で、(0,4)(0,4)(x+3y=12>6x+3y=12>6)と (6,0)(6,0)(x+y=6>4x+y=6>4)は KK に入りません。φ\varphi の値は 0,4,4,50,4,4,5 なので、最大値は (3,1)(3,1) での 55、最小値は原点での 00 です。

通過領域の問題では、点 (x,y)(x,y) が通過領域に入る条件が「パラメータ tt の 2 次方程式が 0≤t≤10\le t\le1 に解をもつこと」になります。次の補題は、その条件を q(a),q(b)q(a),q(b) の符号と判別式、軸の位置で言い表したものです。区間の端で qq の符号が変わる場合((i))と、変わらず、両端で正のまま放物線の谷が区間の中で tt 軸の下に届く場合((ii))の 2 つに分けて考えます。

補題 6.4(2 次方程式が閉区間に実数解をもつ条件)✓

q(t)=t2+pt+sq(t)=t^2+pt+s(p,sp,s は実数)、a<ba<b とする。qq が閉区間 [a,b][a,b] に実数解をもつための必要十分条件は、次の (i) または (ii) である。

  • (i) q(a)q(b)≤0q(a)q(b)\le0。
  • (ii) p2−4s≥0p^2-4s\ge0、a≤−p2≤ba\le-\dfrac p2\le b、q(a)>0q(a)>0、q(b)>0q(b)>0。
証明(補題 6.4)

(十分)(i) なら、多項式は連続(多項式関数の連続性(系 5.2)[極限と連続性])で、00 は q(a)q(a) と q(b)q(b) の間にあるので、中間値の定理(中間値の定理(定理 5.7)[極限と連続性])により [a,b][a,b] に解があります。(ii) なら、実数解 α≤β\alpha\le\beta をもち(判別式と解の個数(定理 5.2)[2 次関数])、q(a)=(a−α)(a−β)>0q(a)=(a-\alpha)(a-\beta)>0 から a<αa<\alpha または a>βa>\beta。a>βa>\beta なら a>α+β2=−p2a>\tfrac{\alpha+\beta}2=-\tfrac p2 で仮定に反するので a<αa<\alpha。同様に q(b)>0q(b)>0 から b<αb<\alpha または b>βb>\beta で、b<αb<\alpha なら b<−p2b<-\tfrac p2 に反するので b>βb>\beta。よって a<α≤β<ba<\alpha\le\beta<b で解は [a,b][a,b] にあります。

(必要)qq が [a,b][a,b] に解 rr をもち、(i) が成り立たない、すなわち q(a)q(b)>0q(a)q(b)>0 とします。q(a),q(b)q(a),q(b) がともに負なら、q(a)<0q(a)<0 と平方完成 q(t)≥−p2−4s4q(t)\ge-\tfrac{p^2-4s}{4}(平方完成(補題 3.1)[2 次関数])から判別式は正で、実数解 α<β\alpha<\beta があり、q<0q<0 となるのは (α,β)(\alpha,\beta) だけなので a,b∈(α,β)a,b\in(\alpha,\beta)、すると [a,b]⊂(α,β)[a,b]\subset(\alpha,\beta) で q(r)<0q(r)<0 となり rr が解であることに反します。したがって q(a),q(b)>0q(a),q(b)>0、解をもつので p2−4s≥0p^2-4s\ge0。−p2<a-\tfrac p2<a とすると、a≤x<ya\le x<y で q(y)−q(x)=(y−x)(x+y+p)>0q(y)-q(x)=(y-x)(x+y+p)>0(x+y+p>2a+p>0x+y+p>2a+p>0)なので qq は [a,∞)[a,\infty) で増加し、q(r)>q(a)>0q(r)>q(a)>0(r>ar>a)となって矛盾。−p2>b-\tfrac p2>b なら、[a,b][a,b] で x+y+p<2b+p<0x+y+p<2b+p<0 から qq は減少し、q(r)≥q(b)>0q(r)\ge q(b)>0 で矛盾。よって a≤−p2≤ba\le-\tfrac p2\le b です。

定理 6.5(通過領域)✓

tt を実数のパラメータとする直線 Lt: y=tx−t2L_t:\ y=tx-t^2 について、点 (x,y)(x,y) がある tt に対して LtL_t 上にあることは、q(t)=t2−xt+y=0q(t)=t^2-xt+y=0 が tt の方程式として解をもつことである。

  1. tt が全実数を動くとき、直線の通過する領域は y≤x24y\le\dfrac{x^2}{4} である。
  2. tt が 0≤t≤10\le t\le1 を動くとき、通過する領域は
{(x,y)∣y(y−x+1)≤0} ∪ {(x,y) ∣ y>0, y>x−1, y≤x24, 0≤x≤2}.\{(x,y)\mid y(y-x+1)\le0\}\ \cup\ \Bigl\{(x,y)\ \Bigm|\ y>0,\ y>x-1,\ y\le\frac{x^2}{4},\ 0\le x\le2\Bigr\}.
証明(定理 6.5)

(x,y)∈Lt  ⟺  y=tx−t2  ⟺  t2−xt+y=0(x,y)\in L_t\iff y=tx-t^2\iff t^2-xt+y=0。(1) qq の判別式は x2−4yx^2-4y なので、解をもつ条件は 判別式と解の個数(定理 5.2)[2 次関数] により x2−4y≥0x^2-4y\ge0。(2) 補題 6.4 を p=−xp=-x、s=ys=y、[a,b]=[0,1][a,b]=[0,1] に使うと、q(0)=yq(0)=y、q(1)=1−x+yq(1)=1-x+y、−p2=x2-\tfrac p2=\tfrac x2 なので、(i) は y(1−x+y)≤0y(1-x+y)\le0、(ii) は x2−4y≥0x^2-4y\ge0、0≤x2≤10\le\tfrac x2\le1、y>0y>0、1−x+y>01-x+y>0 です。

例 6.6(通過領域の検算)

(2) で x=1x=1 を調べると、y=t−t2y=t-t^2(0≤t≤10\le t\le1)は 00 から 14\tfrac14 の値を動きます。定理の第 1 の集合は y⋅y≤0y\cdot y\le0 より y=0y=0、第 2 の集合は y>0y>0、y>0y>0、y≤14y\le\tfrac14 なので 0<y≤140<y\le\tfrac14。合わせて 0≤y≤140\le y\le\tfrac14 で一致します。パラメータの実数解の存在条件を、解の配置(解の配置(定理 6.2)[2 次関数])の言葉で書き直すと、「通過領域」の問題が 2 次方程式の問題に帰着することがわかります。

多角形の面積は、R2\mathbb{R}^2 のルベーグ測度(ℝ^d のルベーグ測度(定義 2.1)[ℝ^d の変数変換公式と極座標])で与えます。

補題 7.1(三角形の面積)✓

u,v∈R2\boldsymbol u,\boldsymbol v\in\mathbb{R}^2 が det⁡(u,v)≠0\det(\boldsymbol u,\boldsymbol v)\ne0 を満たすとき、三角形 T={P+su+tv∣s,t≥0, s+t≤1}T=\{P+s\boldsymbol u+t\boldsymbol v\mid s,t\ge0,\ s+t\le1\} の面積は 12∣det⁡(u,v)∣\tfrac12|\det(\boldsymbol u,\boldsymbol v)| である。

証明(補題 7.1)

標準三角形 T0={s,t≥0, s+t≤1}T_0=\{s,t\ge0,\ s+t\le1\} の測度が 12\tfrac12 であることを示せば、T=P+A(T0)T=P+A(T_0)(A=(u v)A=(\boldsymbol u\ \boldsymbol v))と、線形写像による変換(線形写像によるルベーグ測度の変換(定理 3.4)[ℝ^d の変数変換公式と極座標])と並進不変性(並進不変性(補題 3.1)[ℝ^d の変数変換公式と極座標])から m(T)=∣det⁡A∣⋅12m(T)=|\det A|\cdot\tfrac12 です。単位正方形 [0,1]2[0,1]^2 は T0T_0 と T0′=(1,1)−T0T_0'=(1,1)-T_0 の和集合で(s+t≥1s+t\ge1 の点 (s,t)(s,t) は (1−s,1−t)∈T0(1-s,1-t)\in T_0 の像)、共通部分は直線 s+t=1s+t=1 に含まれます。直線は測度 00 です(直線 {P+τw}\{P+\tau\boldsymbol w\} は特異な行列による像の平行移動で、線形写像によるルベーグ測度の変換(定理 3.4)[ℝ^d の変数変換公式と極座標] (2) と並進不変性による)。m(T0′)=m(T0)m(T_0')=m(T_0)(−I-I の行列式の絶対値は 11)で、箱の測度(箱の測度と超平面(補題 2.2)[ℝ^d の変数変換公式と極座標])から m([0,1]2)=1m([0,1]^2)=1 なので 2m(T0)=12m(T_0)=1。

平面の点 P1,…,PnP_1,\dots,P_n(n≥3n\ge3)が反時計回りの凸位置にあるとは、i<j<ki<j<k のすべてについて S(Pi,Pj,Pk)>0S(P_i,P_j,P_k)>0(符号付き面積(定義 6.1)[平面ベクトルと座標])が成り立つことをいいます。K={∑λiPi∣λi≥0, ∑λi=1}K=\{\sum\lambda_iP_i\mid\lambda_i\ge0,\ \sum\lambda_i=1\} を、PiP_i を頂点とする凸 nn 角形とよびます。

靴ひも公式は、凸多角形を 1 つの頂点 P1P_1 から出る対角線で三角形に切り分け、各三角形の面積(符号付き面積)を足し合わせると、隣り合う頂点の行列式の和だけが残る、という式です。証明の (a)(b) は「この切り分けで多角形がもれなく、重なりなく三角形に分かれる」ことの確認で、(c) が足し算です。

定理 7.2(靴ひも公式)✓

P1,…,PnP_1,\dots,P_n が反時計回りの凸位置にあるとき、凸 nn 角形 KK の面積は

m(K)=12∑i=1ndet⁡(pi,pi+1)(pn+1=p1)m(K)=\frac12\sum_{i=1}^n\det(\boldsymbol p_i,\boldsymbol p_{i+1})\qquad(\boldsymbol p_{n+1}=\boldsymbol p_1)

である。座標では 12∣∑(xiyi+1−xi+1yi)∣\tfrac12\bigl|\sum(x_iy_{i+1}-x_{i+1}y_i)\bigr| で、各項は「斜めにかけて引く」計算(靴ひもを交互に結ぶ形)である。

証明(定理 7.2)

uk=pk−p1\boldsymbol u_k=\boldsymbol p_k-\boldsymbol p_1(k=2,…,nk=2,\dots,n)とすると、det⁡(uk,ul)=2S(P1,Pk,Pl)>0\det(\boldsymbol u_k,\boldsymbol u_l)=2S(P_1,P_k,P_l)>0(k<lk<l)です。TiT_i を三角形 P1PiPi+1P_1P_iP_{i+1}(i=2,…,n−1i=2,\dots,n-1、KK の部分集合)とします。

(a) K=⋃TiK=\bigcup T_i。 Ti⊆KT_i\subseteq K は凸結合の形から明らか。逆に X=∑λkPk∈KX=\sum\lambda_kP_k\in K、v=X−P1=∑k≥2λkuk\boldsymbol v=X-P_1=\sum_{k\ge2}\lambda_k\boldsymbol u_k とし、hk=det⁡(uk,v)h_k=\det(\boldsymbol u_k,\boldsymbol v) とおくと、h2=∑l≥3λldet⁡(u2,ul)≥0h_2=\sum_{l\ge3}\lambda_l\det(\boldsymbol u_2,\boldsymbol u_l)\ge0、hn=−∑l≤n−1λldet⁡(ul,un)≤0h_n=-\sum_{l\le n-1}\lambda_l\det(\boldsymbol u_l,\boldsymbol u_n)\le0。hi≥0h_i\ge0 となる最大の i∈{2,…,n−1}i\in\{2,\dots,n-1\} をとると hi+1≤0h_{i+1}\le0(i+1<ni+1<n なら最大性から負、i+1=ni+1=n なら上の不等式)。det⁡(ui,ui+1)>0\det(\boldsymbol u_i,\boldsymbol u_{i+1})>0 なので 1 次独立と成分表示の一意性(命題 3.1)[平面ベクトルと座標] により v=sui+tui+1\boldsymbol v=s\boldsymbol u_i+t\boldsymbol u_{i+1}、s=−hi+1/det⁡(ui,ui+1)≥0s=-h_{i+1}/\det(\boldsymbol u_i,\boldsymbol u_{i+1})\ge0、t=hi/det⁡(ui,ui+1)≥0t=h_i/\det(\boldsymbol u_i,\boldsymbol u_{i+1})\ge0。g(Z)=S(Pi,Pi+1,Z)g(Z)=S(P_i,P_{i+1},Z) は ZZ の 1 次式で、凸位置の仮定から g(Pk)≥0g(P_k)\ge0(k≠i,i+1k\ne i,i+1 では正、k=i,i+1k=i,i+1 では 00)なので、凸結合で KK 全体で g≥0g\ge0 です。X=(1−s−t)P1+sPi+tPi+1X=(1-s-t)P_1+sP_i+tP_{i+1} で g(X)=(1−s−t)g(P1)≥0g(X)=(1-s-t)g(P_1)\ge0、g(P1)=S(P1,Pi,Pi+1)>0g(P_1)=S(P_1,P_i,P_{i+1})>0 から s+t≤1s+t\le1。よって X∈TiX\in T_i。

(b) Ti∩TjT_i\cap T_j(i<ji<j)は直線上にある。 X−P1=sui+tui+1=s′uj+t′uj+1X-P_1=s\boldsymbol u_i+t\boldsymbol u_{i+1}=s'\boldsymbol u_j+t'\boldsymbol u_{j+1}(係数はすべて 00 以上)とすると、det⁡(ui+1,X−P1)=−sdet⁡(ui,ui+1)≤0\det(\boldsymbol u_{i+1},X-P_1)=-s\det(\boldsymbol u_i,\boldsymbol u_{i+1})\le0 と、=s′det⁡(ui+1,uj)+t′det⁡(ui+1,uj+1)≥0=s'\det(\boldsymbol u_{i+1},\boldsymbol u_j)+t'\det(\boldsymbol u_{i+1},\boldsymbol u_{j+1})\ge0 の両方が成り立つので s=0s=0、XX は直線 P1Pi+1P_1P_{i+1} 上です。直線は測度 00(補題 7.1 の証明と同じ)。

(c) 面積。 (a)(b) から m(K)=∑im(Ti)m(K)=\sum_im(T_i)、補題 7.1 から m(Ti)=12det⁡(ui,ui+1)=S(P1,Pi,Pi+1)m(T_i)=\tfrac12\det(\boldsymbol u_i,\boldsymbol u_{i+1})=S(P_1,P_i,P_{i+1})。符号付き面積の展開(符号付き面積の性質と三角形の面積(命題 6.2)[平面ベクトルと座標] (1))で ∑i=2n−1S(P1,Pi,Pi+1)=12∑i=2n−1(det⁡(p1,pi)+det⁡(pi,pi+1)+det⁡(pi+1,p1))\sum_{i=2}^{n-1}S(P_1,P_i,P_{i+1})=\tfrac12\sum_{i=2}^{n-1}\bigl(\det(\boldsymbol p_1,\boldsymbol p_i)+\det(\boldsymbol p_i,\boldsymbol p_{i+1})+\det(\boldsymbol p_{i+1},\boldsymbol p_1)\bigr) で、det⁡(p1,pi)\det(\boldsymbol p_1,\boldsymbol p_i) と det⁡(pi,p1)\det(\boldsymbol p_{i},\boldsymbol p_1) の項は i=3,…,n−1i=3,\dots,n-1 で打ち消しあい、det⁡(p1,p2)+det⁡(pn,p1)\det(\boldsymbol p_1,\boldsymbol p_2)+\det(\boldsymbol p_n,\boldsymbol p_1) が残るので、これに ∑i=2n−1det⁡(pi,pi+1)\sum_{i=2}^{n-1}\det(\boldsymbol p_i,\boldsymbol p_{i+1}) を足すと主張の式です。

例 7.3(五角形の面積)

P1=(0,0)P_1=(0,0)、P2=(3,0)P_2=(3,0)、P3=(4,2)P_3=(4,2)、P4=(2,4)P_4=(2,4)、P5=(0,3)P_5=(0,3) は反時計回りの凸位置にあります。uk=pk−p1\boldsymbol u_k=\boldsymbol p_k-\boldsymbol p_1 について det⁡(u2,u3),det⁡(u2,u4),det⁡(u2,u5),det⁡(u3,u4),det⁡(u3,u5),det⁡(u4,u5)\det(\boldsymbol u_2,\boldsymbol u_3),\det(\boldsymbol u_2,\boldsymbol u_4),\det(\boldsymbol u_2,\boldsymbol u_5),\det(\boldsymbol u_3,\boldsymbol u_4),\det(\boldsymbol u_3,\boldsymbol u_5),\det(\boldsymbol u_4,\boldsymbol u_5) は 6,12,9,12,12,66,12,9,12,12,6 で、P1P_1 を含まない 4 組の符号付き面積は S(P2,P3,P4)=3S(P_2,P_3,P_4)=3、S(P2,P3,P5)=92S(P_2,P_3,P_5)=\tfrac92、S(P2,P4,P5)=92S(P_2,P_4,P_5)=\tfrac92、S(P3,P4,P5)=3S(P_3,P_4,P_5)=3 と、10 組すべてが正です(辺ベクトルの外積がすべて正であることだけでは、星形の多角形も通るので、凸位置の確認には足りません)。det⁡(pi,pi+1)=0, 6, 12, 6, 0\det(\boldsymbol p_i,\boldsymbol p_{i+1})=0,\ 6,\ 12,\ 6,\ 0。面積は 12(0+6+12+6+0)=12\tfrac12(0+6+12+6+0)=12。

格子点の個数と面積の関係を、円で見ます。N(r)=#{(j,k)∈Z2∣j2+k2≤r2}N(r)=\#\{(j,k)\in\mathbb{Z}^2\mid j^2+k^2\le r^2\} とおきます。

定理 7.4(Gauss の円問題(O(r)O(r) の評価))✓

r≥1r\ge1 について

π(r−22)2≤N(r)≤π(r+22)2,\pi\Bigl(r-\frac{\sqrt2}2\Bigr)^2\le N(r)\le\pi\Bigl(r+\frac{\sqrt2}2\Bigr)^2,

したがって ∣N(r)−πr2∣≤π(2 r+12)|N(r)-\pi r^2|\le\pi\Bigl(\sqrt2\,r+\dfrac12\Bigr) である。

証明(定理 7.4)

s=22s=\tfrac{\sqrt2}2 とし、格子点 (j,k)(j,k) に正方形 Qj,k=[j−12,j+12)×[k−12,k+12)Q_{j,k}=[j-\tfrac12,j+\tfrac12)\times[k-\tfrac12,k+\tfrac12) を対応させます。各点 (x,y)∈R2(x,y)\in\mathbb{R}^2 は、j−12≤x<j+12j-\tfrac12\le x<j+\tfrac12、k−12≤y<k+12k-\tfrac12\le y<k+\tfrac12 となる整数 j,kj,k がただ 1 つずつ存在する(アルキメデスの原理 アルキメデスの原理(命題 5.4)[数とは何か] による)ので、{Qj,k}\{Q_{j,k}\} は平面の分割です。Qj,kQ_{j,k} の測度は 11(箱の測度と超平面(補題 2.2)[ℝ^d の変数変換公式と極座標])で、点 X∈Qj,kX\in Q_{j,k} は中心 (j,k)(j,k) から ∣X−(j,k)∣2≤14+14=12|X-(j,k)|^2\le\tfrac14+\tfrac14=\tfrac12、すなわち距離 ss 以下です。

上から。 L={(j,k)∣j2+k2≤r2}L=\{(j,k)\mid j^2+k^2\le r^2\}、U=⋃(j,k)∈LQj,kU=\bigcup_{(j,k)\in L}Q_{j,k} とすると、UU の測度は N(r)N(r)(互いに素な正方形の和)。X∈UX\in U なら ∣X∣≤r+s|X|\le r+s なので、UU は半径 r+sr+s の閉円板に含まれ、その測度は π(r+s)2\pi(r+s)^2(球の体積と球面の面積(定理 6.8)[ℝ^d の変数変換公式と極座標] の d=2d=2、Γ(2)=1\Gamma(2)=1)です。下から。 ∣X∣≤r−s|X|\le r-s の点 XX は、ただ 1 つの Qj,kQ_{j,k} に属し、∣(j,k)∣≤∣X∣+s≤r|(j,k)|\le|X|+s\le r なので (j,k)∈L(j,k)\in L、すなわち X∈UX\in U。よって半径 r−sr-s の円板は UU に含まれ、π(r−s)2≤N(r)\pi(r-s)^2\le N(r) です。

N(r)=πr2+O(r)N(r)=\pi r^2+O(r) は粗い評価で、本当の誤差は r1/2+εr^{1/2+\varepsilon} 程度と予想されています(Gauss の円問題は未解決で、現在知られている最良の評価は O(rθ)O(r^{\theta})、θ<2/3\theta<2/3 です)。ここで示したのは、最も簡単な O(r)O(r) の評価です。

補題 8.1(距離と面積)✓

相異なる 2 点 X,YX,Y と点 ZZ について、ZZ から直線 XYXY までの距離は 2∣S(X,Y,Z)∣∣XY∣\dfrac{2|S(X,Y,Z)|}{|XY|} である。

証明(補題 8.1)

直線 XYXY は n=(yY−yX, −(xY−xX))\boldsymbol n=(y_Y-y_X,\ -(x_Y-x_X)) を法線ベクトルとする直線 n⋅(x−xX)=0\boldsymbol n\cdot(\boldsymbol x-\boldsymbol x_X)=0 で(命題 2.1 (2))、∣n∣=∣XY∣|\boldsymbol n|=|XY|。ZZ からの距離は 定理 2.2 により ∣n⋅(z−xX)∣∣n∣=∣det⁡(y−x,z−x)∣∣XY∣=2∣S(X,Y,Z)∣∣XY∣\dfrac{|\boldsymbol n\cdot(\boldsymbol z-\boldsymbol x_X)|}{|\boldsymbol n|}=\dfrac{|\det(\boldsymbol y-\boldsymbol x,\boldsymbol z-\boldsymbol x)|}{|XY|}=\dfrac{2|S(X,Y,Z)|}{|XY|} です。

定理 8.2(Sylvester–Gallai の定理)✓

平面の有限個の点の集合 S\mathcal{S} が 3 点以上を含み、すべての点が 1 直線上にあるわけではないとする。このとき、S\mathcal{S} の点をちょうど 2 個だけ含む直線が存在する。

証明(定理 8.2)

Kelly の証明。 2 点以上を含む直線 ℓ\ell と、ℓ\ell 上にない点 P∈SP\in\mathcal{S} の組 (P,ℓ)(P,\ell) は、仮定により存在し、有限個です。距離 dist⁡(P,ℓ)>0\operatorname{dist}(P,\ell)>0 が最小になる組を 1 つ選びます。この ℓ\ell に含まれる S\mathcal{S} の点がちょうど 2 個であることを示します。3 個以上あると仮定して矛盾を導きます。

PP から ℓ\ell に下ろした垂線の足を QQ とし、ℓ\ell に QQ を原点とする座標 τ\tau を入れます(定理 2.2)。ℓ\ell 上の S\mathcal{S} の点 3 個のうち、τ≥0\tau\ge0 のものか τ≤0\tau\le0 のものが少なくとも 2 個あり(τ\tau の符号は <0<0、=0=0、>0>0 の 3 通りで、3 個を分けると、どちらかの閉半直線に 2 個)、必要なら向きを逆にして 0≤τA<τB0\le\tau_A<\tau_B となる 2 点 A,B∈S∩ℓA,B\in\mathcal{S}\cap\ell をとれます。h=∣PQ∣=dist⁡(P,ℓ)>0h=|PQ|=\operatorname{dist}(P,\ell)>0 とすると、∣PB∣2=h2+τB2>τB2|PB|^2=h^2+\tau_B^2>\tau_B^2 なので ∣AB∣=τB−τA≤τB<∣PB∣|AB|=\tau_B-\tau_A\le\tau_B<|PB|。

直線 PBPB 上に AA はない(あれば 補題 8.1 により S(P,B,A)=0S(P,B,A)=0、A,B,PA,B,P が一直線上になり、P∉ℓ=ABP\notin\ell=AB に反する)。A∈SA\in\mathcal{S}、P,B∈SP,B\in\mathcal{S} なので、(A, PB)(A,\ PB) も候補の組で、補題 8.1 により

dist⁡(A,PB)=2∣S(P,B,A)∣∣PB∣,h=dist⁡(P,AB)=2∣S(A,B,P)∣∣AB∣.\operatorname{dist}(A,PB)=\frac{2|S(P,B,A)|}{|PB|},\qquad h=\operatorname{dist}(P,AB)=\frac{2|S(A,B,P)|}{|AB|}.

∣S(P,B,A)∣=∣S(A,B,P)∣|S(P,B,A)|=|S(A,B,P)|(符号付き面積の性質と三角形の面積(命題 6.2)[平面ベクトルと座標] (1):頂点の入れ替えで符号が変わるだけ)なので dist⁡(A,PB)=h⋅∣AB∣∣PB∣<h\operatorname{dist}(A,PB)=h\cdot\dfrac{|AB|}{|PB|}<h。これは hh の最小性に反します。

線形計画法は凸最適化(頂点の列挙と単体法)の入口で、制約が多次元のときの「頂点で最大」は凸多面体の理論です。格子点と面積の関係は、数論の幾何(geometry of numbers、Minkowski の格子点定理、number-theory)へ続き、Gauss の円問題は解析的整数論の未解決問題です。極と極線・円の束は、射影幾何(algebraic-geometry の射影空間)と複素解析の一次分数変換につながります。極と極線の双対性は 射影の名定理 の 命題 4.2[共線と共点の名定理] で扱い、円の極と極線は一般の 2 次曲線(2 次曲線)の極と極線に一般化されます。Sylvester–Gallai の定理は、離散幾何の入口として、Erdős の問題と射影平面の有限幾何にもつながります。

演習 10.1易

円 x2+y2=4x^2+y^2=4 の外の点 P(4,0)P(4,0) から引いた 2 本の接線の接点を求めよ。

解答

C=OC=O、r=2r=2、P−C=(4,0)P-C=(4,0) なので、極線は (4,0)⋅(x,y)=4(4,0)\cdot(x,y)=4、すなわち x=1x=1(定理 4.1 (3))。円との交点は 1+y2=41+y^2=4 から (1,±3)(1,\pm\sqrt3)。確かめると、(1,3)(1,\sqrt3) での接線は 命題 3.3 により x+3y=4x+\sqrt3y=4 で、P=(4,0)P=(4,0) を通ります。

演習 10.2標準

A(0,0)A(0,0)、B(6,0)B(6,0) について ∣PA∣=2∣PB∣|PA|=2|PB| を満たす点 PP の軌跡を求めよ。

解答

∣PA∣:∣PB∣=2:1|PA|:|PB|=2:1 で、m=2m=2、n=1n=1(n∣PA∣=m∣PB∣n|PA|=m|PB|)。定理 5.1 により中心 1⋅(0,0)−4(6,0)1−4=(8,0)\dfrac{1\cdot(0,0)-4(6,0)}{1-4}=(8,0)、半径 2⋅1⋅6∣1−4∣=4\dfrac{2\cdot1\cdot6}{|1-4|}=4。すなわち円 (x−8)2+y2=16(x-8)^2+y^2=16。確かめ:(4,0)(4,0) は ∣PA∣=4|PA|=4、∣PB∣=2|PB|=2。(12,0)(12,0) は ∣PA∣=12|PA|=12、∣PB∣=6|PB|=6。

演習 10.3標準

x≥0x\ge0、y≥0y\ge0、x+2y≤8x+2y\le8、3x+y≤93x+y\le9 のとき、2x+y2x+y の最大値を求めよ。

解答

頂点は、制約の組を等式にして KK に入るものを探すと (0,0)(0,0)、(3,0)(3,0)(y=0y=0 と 3x+y=93x+y=9)、(0,4)(0,4)(x=0x=0 と x+2y=8x+2y=8)、(2,3)(2,3)(x+2y=8x+2y=8 と 3x+y=93x+y=9)。(8,0)(8,0) は 3x=24>93x=24>9、(0,9)(0,9) は 2y=18>82y=18>8 で KK の外。2x+y2x+y の値は 0,6,4,70,6,4,7 なので、最大値は (2,3)(2,3) での 77(定理 6.2)。

演習 10.4易

P1=(0,0)P_1=(0,0)、P2=(5,1)P_2=(5,1)、P3=(4,4)P_3=(4,4)、P4=(0,3)P_4=(0,3) を頂点とする四角形の面積を、定理 7.2 と三角形への分割の 2 通りで求めよ。

解答

4 組の 3 点の符号付き面積は S(P1,P2,P3)=8S(P_1,P_2,P_3)=8、S(P1,P2,P4)=152S(P_1,P_2,P_4)=\tfrac{15}2、S(P1,P3,P4)=6S(P_1,P_3,P_4)=6、S(P2,P3,P4)=132S(P_2,P_3,P_4)=\tfrac{13}2 とすべて正なので、反時計回りの凸位置です。det⁡(pi,pi+1)=0, 5⋅4−4⋅1=16, 4⋅3−0⋅4=12, 0\det(\boldsymbol p_i,\boldsymbol p_{i+1})=0,\ 5\cdot4-4\cdot1=16,\ 4\cdot3-0\cdot4=12,\ 0 で、面積は 12(0+16+12+0)=14\tfrac12(0+16+12+0)=14。分割:S(P1,P2,P3)=12det⁡((5,1),(4,4))=8S(P_1,P_2,P_3)=\tfrac12\det((5,1),(4,4))=8、S(P1,P3,P4)=12det⁡((4,4),(0,3))=6S(P_1,P_3,P_4)=\tfrac12\det((4,4),(0,3))=6 で合計 1414。

  • H. S. M. Coxeter, Introduction to Geometry, 2nd ed., Wiley, 1969 — 円と反転・極と極線に関する章。
  • Robin Hartshorne, Geometry: Euclid and Beyond, Springer, 2000 — 直線と円に関する章。
  • Aigner, Martin; Ziegler, Günter M., Proofs from THE BOOK, Springer — Sylvester–Gallai の定理の章(Kelly の証明)。
  • 杉浦光夫『解析入門 II』東京大学出版会、1985 — 重積分と面積に関する章。

このテーマの 100 本ノック(100 問)

執筆: Claude Code(Sonnet 5.5)、Claude Code(Opus 5.5)・監査 2 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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