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2 次関数:平方完成から最大最小・判別式・解の配置まで

対象読者: 高校の数と式(本テーマ第 1 章の実数の計算規則・不等式)と 2 次関数の基本的なグラフを学んだ人。微分や線形代数は仮定しません。

前提となる記事:数と式:実数の性質と式の計算を公理から組み立てる

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ボールを投げたときの軌跡のような「山なりの曲線」は、y=ax2+bx+cy=ax^2+bx+c という式で表されます。この記事では、式を 1 回変形するだけで曲線の頂点や対称の軸が読み取れることを確かめ、そこから「ある区間での最大・最小」「方程式の解の個数」「解がどこにあるか」といった問題を、場合分けの漏れなく解けるようにします。

  • 2 次関数のグラフの形(放物線、頂点、軸)は、すべて平方完成 ax2+bx+c=a(x+b2a)2−D4aax^2+bx+c=a\bigl(x+\tfrac{b}{2a}\bigr)^2-\tfrac{D}{4a}(D=b2−4acD=b^2-4ac)という 1 つの恒等式から読み取れます。
  • 閉区間 [m,M][m,M] での最大値・最小値は、軸の位置による場合分けで決まります。この記事では、場合分けが漏れなく、重複なく全体を尽くすことを示します(最小は 3 通り、最大は 2 通り)。
  • 解の公式と判別式 DD は、平方完成の直接の帰結です。さらに、D=a2(α−β)2D=a^2(\alpha-\beta)^2 という式により、判別式の正体は「2 つの解の差の 2 乗(の a2a^2 倍)」だとわかります。
  • 解の配置問題(「2 つの解がともに kk より大きい」「pp と qq の間にちょうど 1 つの解がある」)は、f(k)f(k) の符号・軸の位置・判別式の 3 条件に翻訳できます。後者は中間値の定理(連続な関数が正の値と負の値をとるなら、その間で 00 もとる、という性質)を使います。
  • 「すべての実数 tt について at2+bt+c≥0at^2+bt+c\ge0」は、a≠0a\ne0 のとき「a>0a>0 かつ D≤0D\le0」と同値です(a=0a=0 の場合は命題の中で別に扱います)。この型の判別式の不等式は、次章の Cauchy–Schwarz の不等式(2 つのベクトルの内積の大きさを、それぞれの長さの積で抑える不等式)の証明に使います。
  • 大学では、2 次関数は凸関数(グラフが下にふくらんだ形の関数)と2 次形式(x2x^2、xyxy、y2y^2 のように 2 次の項だけでできた式。線形代数の主軸定理で扱います)に一般化されます。

1. 動機:なぜ 2 次関数をこれほど丁寧に扱うのか

Section titled “1. 動機:なぜ 2 次関数をこれほど丁寧に扱うのか”

2 次関数は、高校数学で最初に出会う「非自明な」関数です。1 次関数 y=ax+by=ax+b は増えるか減るかのどちらかで、最大・最小は端点でしか起こりません。2 次関数では減る領域と増える領域が切り替わるため、最大・最小が内部で起こり、場合分けが必要になります。

また、2 次関数は一般の関数を近似する最初の道具でもあります。微分を学ぶと、なめらかな関数は各点のまわりで 1 次関数、次いで 2 次関数で近似されます(Taylor の定理。関数を多項式で近似する定理です)。極値の判定(第 2 次導関数の符号)は、まさに「その点のまわりの 2 次関数の形」を見るものです。

この記事では、高校の 2 次関数の話題を、定義 → 定理 → 証明の形に整理します。使う道具は前章 数と式 で示した計算規則・絶対値・平方根の性質と、中間値の定理だけです。

2. 関数とグラフ、平行移動・対称移動

Section titled “2. 関数とグラフ、平行移動・対称移動”

定義 2.1(関数のグラフと 2 次関数)↗

実数の部分集合 AA から R\mathbb{R} への関数 ff に対し、平面 R2\mathbb{R}^2 の部分集合

Gf={(x,f(x))∣x∈A}G_f=\{(x,f(x))\mid x\in A\}

を ff のグラフという。a≠0a\ne0 として f(x)=ax2+bx+cf(x)=ax^2+bx+c と書ける関数を 2 次関数という。

命題 2.2(平行移動と対称移動)✓

関数 ff のグラフ GfG_f について、次が成り立つ。

  1. y=f(x−p)+qy=f(x-p)+q のグラフは、GfG_f を xx 方向に pp、yy 方向に qq だけ平行移動したものである。
  2. y=−f(x)y=-f(x) のグラフは GfG_f の xx 軸に関する対称移動、y=f(−x)y=f(-x) は yy 軸に関する対称移動、y=−f(−x)y=-f(-x) は原点に関する対称移動(点対称移動)である。
証明(命題 2.2)

(1) 点 (X,Y)(X,Y) が新しいグラフ上にあることは、Y=f(X−p)+qY=f(X-p)+q、すなわち Y−q=f(X−p)Y-q=f(X-p) ということです。これは点 (X−p, Y−q)(X-p,\,Y-q) が GfG_f 上にあることと同じです。したがって新しいグラフは {(x+p, y+q)∣(x,y)∈Gf}\{(x+p,\,y+q)\mid(x,y)\in G_f\} です。 (2) 点 (X,Y)(X,Y) が y=−f(x)y=-f(x) のグラフ上にあることは −Y=f(X)-Y=f(X)、すなわち (X,−Y)∈Gf(X,-Y)\in G_f ということで、これは GfG_f の点 (x,y)(x,y) を (x,−y)(x,-y) に写す対称移動の像と同じです。他の 2 つも、(x,y)↦(−x,y)(x,y)\mapsto(-x,y)、(x,y)↦(−x,−y)(x,y)\mapsto(-x,-y) について同じです。

補題 3.1(平方完成)✓

a≠0a\ne0 とし、D=b2−4acD=b^2-4ac とおく。すべての実数 xx について

ax2+bx+c=a(x+b2a)2−D4a.ax^2+bx+c=a\Bigl(x+\frac{b}{2a}\Bigr)^2-\frac{D}{4a}.

とくに、a>0a>0 ならば ax2+bx+c≥−D4aax^2+bx+c\ge-\dfrac{D}{4a} で、等号は x=−b2ax=-\dfrac{b}{2a} のときに限る。a<0a<0 ならば不等号が逆向きで、等号条件は同じである。

証明(補題 3.1)

右辺を展開すると a(x2+bax+b24a2)−b2−4ac4a=ax2+bx+b24a−b24a+ca\bigl(x^2+\tfrac{b}{a}x+\tfrac{b^2}{4a^2}\bigr)-\tfrac{b^2-4ac}{4a}=ax^2+bx+\tfrac{b^2}{4a}-\tfrac{b^2}{4a}+c で、左辺に一致します。a>0a>0 のとき、(x+b2a)2≥0\bigl(x+\tfrac{b}{2a}\bigr)^2\ge0(命題 2.2[数と式] (3))で、a>0a>0 をかけて a(x+b2a)2≥0a\bigl(x+\tfrac{b}{2a}\bigr)^2\ge0。等号は平方が 00 のとき、すなわち(命題 2.2[数と式] (2))x=−b2ax=-\tfrac{b}{2a} のときに限ります。a<0a<0 のときは a(x+b2a)2≤0a\bigl(x+\tfrac{b}{2a}\bigr)^2\le0 です。

したがって、y=ax2+bx+cy=ax^2+bx+c のグラフは、y=ax2y=ax^2 のグラフを平行移動したもの(命題 2.2 (1)、p=−b2ap=-\tfrac{b}{2a}、q=−D4aq=-\tfrac{D}{4a})であり、頂点 (−b2a,−D4a)\bigl(-\tfrac{b}{2a},-\tfrac{D}{4a}\bigr) をもち、軸 x=−b2ax=-\tfrac{b}{2a} に関して対称です。軸に関する対称性は、f(p+t)=f(p−t)=at2+qf(p+t)=f(p-t)=at^2+q からすぐに従います。

頂点mMp
頂点 (p, q) をもつ放物線と、閉区間 [m, M]。軸が区間の内側にあるか外側にあるかで最小値の取り方が変わる

定理 4.1(閉区間での 2 次関数の最大・最小)✓

f(x)=a(x−p)2+qf(x)=a(x-p)^2+q(a>0a>0)とし、閉区間 [m,M][m,M](m<Mm<M)での最小値・最大値を考える。

  • 最小値: (i) p<mp<m のとき f(m)f(m)、(ii) m≤p≤Mm\le p\le M のとき f(p)=qf(p)=q、(iii) M<pM<p のとき f(M)f(M)。
  • 最大値: (iv) p≤m+M2p\le\dfrac{m+M}{2} のとき f(M)f(M)、(v) p≥m+M2p\ge\dfrac{m+M}{2} のとき f(m)f(m)。

(i)〜(iii) は互いに排反で全体を尽くす。(iv) と (v) は p=m+M2p=\tfrac{m+M}{2} で重なるが、そのとき f(m)=f(M)f(m)=f(M) なので値は一致する。a<0a<0 のときは、−f-f に上を適用して最大と最小を入れ替えればよい。

この定理の方針は、「頂点(軸)に近い点ほど値が小さい」ことを使って、軸が区間のどこにあるかで場合を分けることです。たとえば f(x)=(x−2)2f(x)=(x-2)^2 を区間 [0,3][0,3] で考えると、軸 x=2x=2 は区間の内側にあるので最小値は f(2)=0f(2)=0、軸は区間の中点 1.51.5 より右にあるので最大値は遠い端点の f(0)=4f(0)=4 です(f(3)=1f(3)=1 より大きい)。証明では、これを式で確かめます。

軸 pp を左から右へ動かしたとき、最小の点(緑の丸)と最大の点(赤い四角)がどう移るかを見てください。最小は端点、軸、端点と切り替わり、最大は中点(橙の点線)を越えた瞬間に反対側の端点へ飛びます。

放物線の軸 p を左から右へ動かすと、区間 [1,4] での最小の点が左端、軸、右端と移り、最大の点は区間の中点を境に右端から左端へ切り替わる動画
区間 [1, 4] で f(x)=(x−p)² の軸 p を −0.5 から 5.5 まで動かす。最小の点は (i)(ii)(iii) の順に移り、最大の点は区間の中点で左右の端点を入れ替える。
証明(定理 4.1)

網羅性。 実数 pp は、順序の公理(三分律)により p<mp<m、m≤p≤Mm\le p\le M、M<pM<p のちょうど 1 つを満たします。pp と m+M2\tfrac{m+M}{2} の大小も同様に、p≤m+M2p\le\tfrac{m+M}{2} と p≥m+M2p\ge\tfrac{m+M}{2} のいずれか(少なくとも一方)が成り立ちます。

値。 f(x)=a∣x−p∣2+qf(x)=a|x-p|^2+q で、a>0a>0 かつ t↦t2t\mapsto t^2 は t≥0t\ge0 で狭義単調増加(命題 2.2[数と式] (6))なので、f(x)f(x) は ∣x−p∣|x-p| が大きいほど大きくなります。したがって、[m,M][m,M] での ff の最小・最大は、∣x−p∣|x-p| の最小・最大で決まります。

(i) p<mp<m なら、x∈[m,M]x\in[m,M] で x−p≥m−p>0x-p\ge m-p>0。最小は x=mx=m。(ii) p∈[m,M]p\in[m,M] なら ∣x−p∣≥0=∣p−p∣|x-p|\ge0=|p-p| で最小は x=px=p。(iii) M<pM<p なら ∣x−p∣=p−x≥p−M|x-p|=p-x\ge p-M で最小は x=Mx=M。

(iv)(v) x∈[m,M]x\in[m,M] とすると m−p≤x−p≤M−pm-p\le x-p\le M-p なので、t=max⁡(∣m−p∣,∣M−p∣)t=\max(|m-p|,|M-p|) とおくと −t≤m−p≤x−p≤M−p≤t-t\le m-p\le x-p\le M-p\le t(定理 3.2[数と式] (2))、よって ∣x−p∣≤t|x-p|\le t(定理 3.2[数と式] (6))で、xx が mm または MM のとき等号が成り立つので最大は tt です。どちらが大きいかは (m−p)2−(M−p)2=(m−M)(m+M−2p)(m-p)^2-(M-p)^2=(m-M)(m+M-2p) の符号で決まります。m−M<0m-M<0 なので、p≥m+M2p\ge\tfrac{m+M}{2}(すなわち m+M−2p≤0m+M-2p\le0)のとき ∣m−p∣≥∣M−p∣|m-p|\ge|M-p| で最大は f(m)f(m)、p≤m+M2p\le\tfrac{m+M}{2} のとき最大は f(M)f(M) です。

例 4.2(文字を含む場合の最小値)

f(x)=x2−2ax+3f(x)=x^2-2ax+3(aa は定数)の区間 [0,2][0,2] での最小値 g(a)g(a) を求める。平方完成すると f(x)=(x−a)2+3−a2f(x)=(x-a)^2+3-a^2 で、軸は x=ax=a。定理 4.1 により、a<0a<0 なら g(a)=f(0)=3g(a)=f(0)=3、0≤a≤20\le a\le2 なら g(a)=3−a2g(a)=3-a^2、a>2a>2 なら g(a)=f(2)=7−4ag(a)=f(2)=7-4a。3 つの場合は aa の範囲として切れ目なくつながり(a=0a=0 で 33、a=2a=2 で −1-1 に一致する)、グラフは連続です。場合分けの境目の値が一致することを確かめるのは、計算の誤りを見つける有効な検算です。

例 4.3(折れ線の関数の最小値)

h(x)=∣x−1∣+∣x−4∣+∣x−6∣h(x)=|x-1|+|x-4|+|x-6| の最小値を求める。区間ごとに 1 次式になります。x≤1x\le1 で h=11−3xh=11-3x、1≤x≤41\le x\le4 で h=9−xh=9-x、4≤x≤64\le x\le6 で h=x+1h=x+1、6≤x6\le x で h=3x−11h=3x-11。傾きは −3,−1,+1,+3-3,-1,+1,+3 と増えていくので、最小は傾きが負から正に変わる x=4x=4(3 数の中央値)で、h(4)=5h(4)=5 です。2 次関数の最小が軸で起こるのと対応して、折れ線関数の最小は傾きの符号が変わる点で起こります。

5. 2 次方程式の解の公式と判別式

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定理 5.1(2 次方程式の解の公式)✓

a≠0a\ne0、D=b2−4ac≥0D=b^2-4ac\ge0 のとき、方程式 ax2+bx+c=0ax^2+bx+c=0 の実数解は

x=−b±D2ax=\frac{-b\pm\sqrt D}{2a}

の 2 つ(D=0D=0 のときは 1 つ)に限る。

証明(定理 5.1)

補題 3.1 により、方程式は a(x+b2a)2=D4aa\bigl(x+\tfrac{b}{2a}\bigr)^2=\tfrac{D}{4a}、すなわち (x+b2a)2=D4a2=(D2a)2\bigl(x+\tfrac{b}{2a}\bigr)^2=\tfrac{D}{4a^2}=\bigl(\tfrac{\sqrt D}{2a}\bigr)^2 と同値です(a≠0a\ne0 で両辺を割った)。u2=v2u^2=v^2 は (u−v)(u+v)=0(u-v)(u+v)=0 と同値で、命題 2.2[数と式] (2) により u=vu=v または u=−vu=-v です。よって x+b2a=±D2ax+\tfrac{b}{2a}=\pm\tfrac{\sqrt D}{2a}。

定理 5.2(判別式と解の個数)✓

a≠0a\ne0、D=b2−4acD=b^2-4ac とする。方程式 ax2+bx+c=0ax^2+bx+c=0 の実数解の個数は、D>0D>0 のとき 2 個、D=0D=0 のとき 1 個(重解)、D<0D<0 のとき 0 個である。

証明(定理 5.2)

D≥0D\ge0 の場合は 定理 5.1 で、D>0D>0 なら D>0\sqrt D>0 より 2 つの値は異なり、D=0D=0 なら一致します。D<0D<0 とすると、補題 3.1 により ax2+bx+c=a(x+b2a)2−D4a=14a(4a2(x+b2a)2−D)ax^2+bx+c=a\bigl(x+\tfrac{b}{2a}\bigr)^2-\tfrac{D}{4a}=\tfrac{1}{4a}\bigl(4a^2(x+\tfrac{b}{2a})^2-D\bigr) で、括弧の中は (2ax+b)2+(−D)>0(2ax+b)^2+(-D)>0(命題 2.2[数と式] (3))なので 00 になりません。解は存在しません。

命題 5.3(判別式の正体と解と係数の関係)✓

D≥0D\ge0 のときの 2 解を α,β\alpha,\beta(D=0D=0 なら α=β\alpha=\beta)とする。このとき

α+β=−ba,αβ=ca,D=a2(α−β)2,\alpha+\beta=-\frac{b}{a},\qquad \alpha\beta=\frac{c}{a},\qquad D=a^2(\alpha-\beta)^2,

かつ ax2+bx+c=a(x−α)(x−β)ax^2+bx+c=a(x-\alpha)(x-\beta) である。

証明(命題 5.3)

定理 5.1 の 2 解 α,β=−b±D2a\alpha,\beta=\dfrac{-b\pm\sqrt D}{2a} について、和は −b/a-b/a、積は b2−D4a2=4ac4a2=ca\dfrac{b^2-D}{4a^2}=\dfrac{4ac}{4a^2}=\dfrac ca、差は α−β=Da\alpha-\beta=\dfrac{\sqrt D}{a} なので a2(α−β)2=Da^2(\alpha-\beta)^2=D です。最後の等式は a(x−α)(x−β)=a(x2−(α+β)x+αβ)=ax2+bx+ca(x-\alpha)(x-\beta)=a\bigl(x^2-(\alpha+\beta)x+\alpha\beta\bigr)=ax^2+bx+c です。

判別式が D=a2(α−β)2D=a^2(\alpha-\beta)^2 と書けるので、D=0D=0 は「2 つの解が一致する」、D>0D>0 は「2 つの解が実数で異なる」ことを表します。解が複素数のときの D<0D<0 の意味は、多項式の割り算と高次方程式で扱います。

定理 6.1(2 次不等式の解)✓

a>0a>0 とし、f(x)=ax2+bx+cf(x)=ax^2+bx+c、D=b2−4acD=b^2-4ac とする。

  • D>0D>0 で解を α<β\alpha<\beta とすると、f(x)>0  ⟺  x<αf(x)>0\iff x<\alpha または x>βx>\beta、f(x)<0  ⟺  α<x<βf(x)<0\iff\alpha<x<\beta。
  • D=0D=0 で重解を α\alpha とすると、f(x)>0  ⟺  x≠αf(x)>0\iff x\ne\alpha、f(x)<0f(x)<0 を満たす xx はない。
  • D<0D<0 ならば、すべての実数 xx で f(x)>0f(x)>0。

a<0a<0 のときは、−f-f に適用すれば不等号の向きが逆の結果が得られる。

証明(定理 6.1)

D≥0D\ge0 のとき、命題 5.3 により f(x)=a(x−α)(x−β)f(x)=a(x-\alpha)(x-\beta)。a>0a>0 なので f(x)>0f(x)>0 は (x−α)(x−β)>0(x-\alpha)(x-\beta)>0 と同値、すなわち 2 因数が同符号です。α<β\alpha<\beta とすると、ともに正なら x>βx>\beta、ともに負なら x<αx<\alpha。α<x<β\alpha<x<\beta なら x−α>0>x−βx-\alpha>0>x-\beta で積は負、x=α,βx=\alpha,\beta なら積は 00 です。D=0D=0 なら f(x)=a(x−α)2≥0f(x)=a(x-\alpha)^2\ge0 で、00 になるのは x=αx=\alpha のときだけです。D<0D<0 のときは 補題 3.1 により f(x)≥−D4a>0f(x)\ge-\tfrac{D}{4a}>0(a>0a>0、D<0D<0)です。

定理 6.2(解の配置)✓

f(x)=ax2+bx+cf(x)=ax^2+bx+c(a>0a>0)、D=b2−4acD=b^2-4ac とし、k,p,qk,p,q を実数とする。

  1. f(p)<0f(p)<0 ならば、ff は異なる 2 つの実数解 α<p<β\alpha<p<\beta をもつ。
  2. 2 つの実数解(重解は 2 つと数える)がともに kk より大きいための必要十分条件は、D≥0D\ge0、−b2a>k-\dfrac{b}{2a}>k、f(k)>0f(k)>0 の 3 つがすべて成り立つことである。
  3. p<qp<q とする。f(p)f(q)<0f(p)f(q)<0 ならば、(p,q)(p,q) にちょうど 1 つの解がある。

証明は (1)〜(3) の順に行います。(1) は「f(p)f(p) が負なら、グラフが xx 軸をまたぐ」、(2) は 3 条件が「2 解がともに kk の右にある」ことと同じ意味であること(必要と十分の両方向)、(3) は 2 つの端点で符号が違えば、間にちょうど 1 つ解があること(存在と、1 つしかないことの 2 段階)を示します。

証明(定理 6.2)

(1) f(p)<0f(p)<0 とすると、D=b2−4acD=b^2-4ac について 補題 3.1 より −D4a≤f(p)<0-\tfrac{D}{4a}\le f(p)<0 なので D>0D>0。2 解 α<β\alpha<\beta をとると f(p)=a(p−α)(p−β)<0f(p)=a(p-\alpha)(p-\beta)<0 で、定理 6.1 により α<p<β\alpha<p<\beta。

(2) (必要)2 解 α≤β\alpha\le\beta がともに kk より大きいなら、実数解をもつので D≥0D\ge0。f(k)=a(k−α)(k−β)>0f(k)=a(k-\alpha)(k-\beta)>0(負の数 2 つの積)。軸 −b2a=α+β2>k-\tfrac{b}{2a}=\tfrac{\alpha+\beta}{2}>k です。(十分)D≥0D\ge0 から実数解 α≤β\alpha\le\beta があります。f(k)>0f(k)>0 から (k−α)(k−β)>0(k-\alpha)(k-\beta)>0 で、2 因数は同符号です。ともに正なら k>β≥αk>\beta\ge\alpha で、すると α+β2≤β<k\tfrac{\alpha+\beta}{2}\le\beta<k となり軸の条件に反します。したがってともに負で、k<α≤βk<\alpha\le\beta です。

(3) 存在。ff は連続で(多項式関数の連続性(系 5.2)[極限と連続性])f(p)f(p) と f(q)f(q) は異符号なので、00 はその間にあり、中間値の定理(定理 5.7)[極限と連続性] により f(c)=0f(c)=0 となる c∈[p,q]c\in[p,q] が存在します。f(p),f(q)≠0f(p),f(q)\ne0 なので c∈(p,q)c\in(p,q)。一意性。異なる解 α<β\alpha<\beta が (p,q)(p,q) に 2 つあれば、p<α<β<qp<\alpha<\beta<q で、f(p)=a(p−α)(p−β)>0f(p)=a(p-\alpha)(p-\beta)>0、f(q)=a(q−α)(q−β)>0f(q)=a(q-\alpha)(q-\beta)>0 となり f(p)f(q)>0f(p)f(q)>0 で仮定に反します。重解の場合も同じ議論です。

k軸f(k)>0αβD≥0
2 解がともに k より大きい場合。実数解がある(D≥0)、軸が k の右、k での値 f(k) が正、の 3 条件が図のどこに当たるか

(2) の 3 条件はそれぞれ、「実数解がある」「解の中点(軸)が kk より右」「f(k)f(k) が正(kk は 2 解の外側)」を表します。「kk が 2 解の外側」と「軸が kk の右」を組み合わせることで、「外側かつ左側」という 1 つの位置が決まる、というのが配置の考え方です。

7. 共通解と判別式で示す不等式

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命題 7.1(2 つの 2 次方程式の共通解)✓

p≠p′p\ne p' とし、x2+px+q=0x^2+px+q=0 と x2+p′x+q′=0x^2+p'x+q'=0 を考える。両方を満たす実数 xx は存在すれば x0=−q′−qp′−px_0=-\dfrac{q'-q}{p'-p} ただ 1 つで、存在するための必要十分条件は

(q′−q)2=(p′−p)(pq′−p′q)(q'-q)^2=(p'-p)(pq'-p'q)

である。

方針は、2 つの式を引いて x2x^2 を消し、xx の 1 次式にすることです。共通解があるならこの 1 次式の解しかありえないので、候補が 1 つに絞れます。あとはその候補が元の式を満たす条件を計算します(途中の u,v,wu,v,w は、式を見やすくするための置き換えです)。

証明(命題 7.1)

2 式を引くと (p′−p)x+(q′−q)=0(p'-p)x+(q'-q)=0 で、p′≠pp'\ne p から共通解は x0=−q′−qp′−px_0=-\tfrac{q'-q}{p'-p} だけです。u=p′−pu=p'-p、v=q′−qv=q'-q、w=pq′−p′qw=pq'-p'q とおきます。x0=−v/ux_0=-v/u が第 1 式を満たす条件は x02+px0+q=0x_0^2+px_0+q=0、すなわち v2u2−pvu+q=v2−puv+qu2u2=0\tfrac{v^2}{u^2}-\tfrac{pv}{u}+q=\tfrac{v^2-puv+qu^2}{u^2}=0 です。分子は v2−u(pv−qu)v^2-u(pv-qu) で、pv−qu=p(q′−q)−q(p′−p)=pq′−p′q=wpv-qu=p(q'-q)-q(p'-p)=pq'-p'q=w なので、条件は v2=uwv^2=uw です。x0x_0 が第 1 式を満たせば、(p′−p)x0+(q′−q)=0(p'-p)x_0+(q'-q)=0 により第 2 式も満たします。

命題 7.2(判別式で示す不等式)✓

実数 a,b,ca,b,c について、すべての実数 tt で at2+bt+c≥0at^2+bt+c\ge0 が成り立つための必要十分条件は、「a>0a>0 かつ b2−4ac≤0b^2-4ac\le0」または「a=0a=0 かつ b=0b=0 かつ c≥0c\ge0」である。

証明は aa の符号で 3 つに分けます。a=0a=0(b≠0b\ne0 のとき)と a<0a<0 の場合は、「この tt を代入すると値が負になる」という具体的な tt を 1 つ見つけて不成立を示します(a<0a<0 の tt の式が複雑なのは、どんな a,b,ca,b,c でも使えるように選ぶためです)。a>0a>0 の場合は平方完成から最小値が読めるので、その符号を見ます。

証明(命題 7.2)

a=0a=0 のとき。 b≠0b\ne0 なら t=−c+1bt=-\tfrac{c+1}{b} で bt+c=−1<0bt+c=-1<0 なので不成立です。b=0b=0 なら不等式は c≥0c\ge0 と同値です。

a<0a<0 のとき。 不成立であることを示します。補題 3.1 により at2+bt+c=−∣a∣s2+D4∣a∣at^2+bt+c=-|a|s^2+\tfrac{D}{4|a|}(s=t+b2as=t+\tfrac{b}{2a}、a=−∣a∣a=-|a| を使った)です。s=(∣D∣4∣a∣+1)/∣a∣s=\sqrt{\bigl(\tfrac{|D|}{4|a|}+1\bigr)/|a|} となる tt をとれば、値は −∣D∣4∣a∣−1+D4∣a∣≤−1<0-\tfrac{|D|}{4|a|}-1+\tfrac{D}{4|a|}\le-1<0 です。

a>0a>0 のとき。 補題 3.1 により最小値は −D4a-\tfrac{D}{4a}(t=−b2at=-\tfrac{b}{2a} で達成)で、全 tt で ≥0\ge0 となるのは最小値が 00 以上のとき、すなわち −D4a≥0  ⟺  D≤0-\tfrac{D}{4a}\ge0\iff D\le0 のときです。

この命題は次章の Cauchy–Schwarz の不等式 の証明にそのまま使います。ベクトル u,v\boldsymbol u,\boldsymbol v に対して tt の 2 次式 ∣tu+v∣2≥0|t\boldsymbol u+\boldsymbol v|^2\ge0 を作り、判別式が 00 以下であることを読み取る証明です。

2 次関数のグラフが凸(下に開く放物線)であることは、凸関数(real-analysis)の最初の例です。f(x)=ax2+bx+cf(x)=ax^2+bx+c(a>0a>0)が下に凸であることは、f′′(x)=2a>0f''(x)=2a>0 から従い、一般には Jensen の不等式 へつながります。平方完成は、多変数では対称行列の対角化(線形代数のスペクトル定理と主軸定理)です。2 変数 2 次形式 ax2+2bxy+cy2ax^2+2bxy+cy^2 の正定値性の判定が、この記事の判別式の不等式の拡張です(スペクトル定理)。閉区間での最大・最小は、連続関数の最大値の定理(微分積分学)の特殊な場合です。

演習 9.1標準

f(x)=−x2+4x+kf(x)=-x^2+4x+k の区間 [a,a+1][a,a+1](aa は定数)での最大値を aa の範囲で場合分けして求めよ。

解答

f(x)=−(x−2)2+4+kf(x)=-(x-2)^2+4+k。−f-f は (x−2)2−4−k(x-2)^2-4-k で a>0a>0 型なので、ff の最大は −f-f の最小です。軸 x=2x=2 と区間 [a,a+1][a,a+1] の位置関係で 定理 4.1 (i)〜(iii) を適用します。2<a2<a なら −f-f の最小は x=ax=a で ff の最大は f(a)=−a2+4a+kf(a)=-a^2+4a+k。a≤2≤a+1a\le2\le a+1、すなわち 1≤a≤21\le a\le2 なら最大は f(2)=4+kf(2)=4+k。a+1<2a+1<2、すなわち a<1a<1 なら最大は f(a+1)=−(a+1)2+4(a+1)+k=−a2+2a+3+kf(a+1)=-(a+1)^2+4(a+1)+k=-a^2+2a+3+k。3 つの場合は a<1a<1、1≤a≤21\le a\le2、a>2a>2 と互いに排反で全体を尽くし、境目で値が連続につながっています(a=1a=1 で 4+k4+k、a=2a=2 で 4+k4+k)。

演習 9.2標準

方程式 x2−2mx+m+2=0x^2-2mx+m+2=0 が x>1x>1 の範囲に異なる 2 つの実数解をもつような定数 mm の範囲を求めよ。

解答

f(x)=x2−2mx+m+2f(x)=x^2-2mx+m+2。異なる 2 解がともに 11 より大きい条件は 定理 6.2 (2) の D≥0D\ge0 を D>0D>0 に強めたものです(D>0D>0 なら 2 解は異なり、異なる 2 解があれば D>0D>0)。D/4=m2−m−2=(m−2)(m+1)>0D/4=m^2-m-2=(m-2)(m+1)>0 より m<−1m<-1 または m>2m>2。軸 x=m>1x=m>1。f(1)=1−2m+m+2=3−m>0f(1)=1-2m+m+2=3-m>0 より m<3m<3。以上をすべて満たすのは 2<m<32<m<3 です。

演習 9.3標準

2 つの方程式 x2+ax+1=0x^2+ax+1=0 と x2+x+a=0x^2+x+a=0 が共通の実数解をもつような実数 aa をすべて求めよ。

解答

p=a, q=1, p′=1, q′=ap=a,\ q=1,\ p'=1,\ q'=a。a≠1a\ne1 のとき 命題 7.1 により、条件は (a−1)2=(1−a)(a⋅a−1⋅1)=(1−a)(a2−1)(a-1)^2=(1-a)(a\cdot a-1\cdot1)=(1-a)(a^2-1)。a≠1a\ne1 で (a−1)2=(1−a)(a−1)(a+1)=−(a−1)2(a+1)(a-1)^2=(1-a)(a-1)(a+1)=-(a-1)^2(a+1) ですから 1=−(a+1)1=-(a+1)、a=−2a=-2。このとき共通解は x0=−a−11−a=1x_0=-\tfrac{a-1}{1-a}=1 で、確かに 1+(−2)+1=01+(-2)+1=0、1+1−2=01+1-2=0 です。a=1a=1 のときは 2 式が一致し x2+x+1=0x^2+x+1=0 で D=−3<0D=-3<0 なので実数解がありません。よって a=−2a=-2。

演習 9.4易

すべての実数 xx について x2−(k+1)x+k+4>0x^2-(k+1)x+k+4>0 が成り立つような定数 kk の範囲を求めよ。

解答

定理 6.1 の第 3 の場合により、a=1>0a=1>0 なので条件は D<0D<0。D=(k+1)2−4(k+4)=k2−2k−15=(k−5)(k+3)<0D=(k+1)^2-4(k+4)=k^2-2k-15=(k-5)(k+3)<0 より −3<k<5-3<k<5。

  • 杉浦光夫『解析入門 I』東京大学出版会、1980 — 第 I 章(実数)・第 II 章(連続関数)。
  • 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成 30 年告示)解説 数学編 理数編』— 数学 I「二次関数」。
  • Walter Rudin, Principles of Mathematical Analysis, 3rd ed., McGraw-Hill, 1976 — Chapter 4(連続性と中間値の定理)。
  • G. H. Hardy, J. E. Littlewood, G. Pólya, Inequalities, 2nd ed., Cambridge University Press, 1952 — Chapter 2(判別式による Cauchy の不等式の証明)。

このテーマの 100 本ノック(100 問)

執筆: Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 2 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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