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数列:等差・等比、和の計算、差分と和分、数学的帰納法

対象読者: 本テーマ第 1 章(実数の計算規則と式の扱い)を学んだ高校生。等差数列・等比数列と Σ 記号の基本は既習とし、数学的帰納法は本文で復習します。

前提となる記事:数と式:実数の性質と式の計算を公理から組み立てる

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「1 から 100 まで足すといくつか」のような和を、全部足さずに求めるにはどうすればよいか。この記事は、その問いに答える道具を整理します。等差数列や等比数列の和の公式、12+22+⋯+n21^2+2^2+\cdots+n^2 のような和の公式を、覚えるだけでなく自分で見つけて確かめられるようになります。最後には、連続する整数の和の表し方や、ローンの毎月の返済額の計算までできるようになります。

  • 数列の和の計算は、和が打ち消しあう(telescoping)か、公式を数学的帰納法で確かめるかのどちらかに帰着します。この記事では、前者を差分作用素 Δ\Delta(隣り合う項の差をとる操作)の言葉で整理します。
  • 等差数列の和は「逆順に並べて足す」、等比数列の和は因数分解の公式 rn−1=(r−1)(1+r+⋯+rn−1)r^n-1=(r-1)(1+r+\cdots+r^{n-1}) から得られます。
  • 自然数の冪の和 ∑k\sum k、∑k2\sum k^2、∑k3\sum k^3 は帰納法で証明できますが、公式をどう見つけるかは別問題です。下降階乗冪 k(k−1)⋯(k−m+1)k(k-1)\cdots(k-m+1)(kk から 1 ずつ小さい数を mm 個かけた積)は差分で綺麗に振る舞うので、和が一瞬で求まります(微分に対する xmx^m の役割と同じです)。
  • 階差数列の考え方は、Newton の前進差分公式 an=∑j(n−1j)Δja1a_{n}=\sum_j\binom{n-1}{j}\Delta^ja_1 に一般化されます。pp 回の階差で一定になる数列は nn の pp 次多項式です。
  • 「NN を連続する正の整数の和で表す方法の数」は、NN の奇数の約数の個数に等しく、「元利均等返済の毎回の返済額」は等比数列の和の公式で閉じた形に書けます。
  • 帰納法で証明するには、公式が先に見つかっていなければなりません。規則性の推定が、証明ではないことを、有名な反例(n2+n+41n^2+n+41)で確かめます。

1. 動機:和の公式はどうやって見つけ、どうやって確かめるのか

Section titled “1. 動機:和の公式はどうやって見つけ、どうやって確かめるのか”

1+2+3+⋯+n=n(n+1)21+2+3+\cdots+n=\tfrac{n(n+1)}2 は、小さい頃のガウスの逸話で知られます。ところが 12+22+⋯+n21^2+2^2+\cdots+n^2 の公式 n(n+1)(2n+1)6\tfrac{n(n+1)(2n+1)}6 を、同じような「ひらめき」で見つけるのは容易ではありません。教科書では、公式を与えて帰納法で確かめます。確かめることはできても、「なぜその公式なのか」は語られません。

もう一つの疑問は、数列の問題の定石のうち、どれが本質的でどれが技巧かです。階差数列、和の打ち消し、公式の推定と帰納法による証明は、じつは一つの仕組みの 3 つの顔です。その仕組みが、差分と和分です。連続な世界の微分と積分に対応する、離散的な世界の微積分です。微分積分学の基本定理(∫abf′=f(b)−f(a)\int_a^bf'=f(b)-f(a))の離散版が、∑k=mnΔak=an+1−am\sum_{k=m}^n\Delta a_k=a_{n+1}-a_m です。

この記事では、まず等差・等比数列と和の記号 Σ\Sigma の規則を確認し、次に差分と和分で冪の和を一括して求め、最後に応用として連続する整数の和と返済の計算を扱います。使う道具は前章の 数と式(因数分解の公式)と、帰納法(数学的帰納法の原理(定理 3.2)[証明の技術])です。次の章 漸化式と母関数 で、数列の一般項を求める話に進みます。

定義 2.1(数列と和の記号)↗

実数の数列とは、N={1,2,3,… }\mathbb{N}=\{1,2,3,\dots\} から R\mathbb{R} への対応 n↦ann\mapsto a_n(項 ana_n の並び)のことで、(an)(a_n) と書く。添字が 00 や負の整数から始まる列(k=0,1,2,…k=0,1,2,\dots に対する aka_k など)も同じ形で扱う。整数 m≤nm\le n について

∑k=mnak=am+am+1+⋯+an\sum_{k=m}^na_k=a_m+a_{m+1}+\cdots+a_n

と書く(帰納的に、∑k=mmak=am\sum_{k=m}^ma_k=a_m、∑k=mn+1ak=∑k=mnak+an+1\sum_{k=m}^{n+1}a_k=\sum_{k=m}^na_k+a_{n+1} で定める)。m>nm>n のときの和(空の和)は 00 とする。

命題 2.2(和の記号の規則)✓

数列 (ak),(bk)(a_k),(b_k) と定数 cc について、

  1. ∑k=mn(ak+bk)=∑k=mnak+∑k=mnbk\sum_{k=m}^n(a_k+b_k)=\sum_{k=m}^na_k+\sum_{k=m}^nb_k、∑k=mncak=c∑k=mnak\sum_{k=m}^nca_k=c\sum_{k=m}^na_k。
  2. (添字のずらし)∑k=mnak=∑k=m+sn+sak−s\sum_{k=m}^na_k=\sum_{k=m+s}^{n+s}a_{k-s}。
  3. ∑k=mnc=(n−m+1) c\sum_{k=m}^nc=(n-m+1)\,c。
  4. (順序の反転)∑k=mnam+n−k=∑k=mnak\sum_{k=m}^na_{m+n-k}=\sum_{k=m}^na_k。
証明(命題 2.2)

いずれも nn に関する帰納法です。(1) は n=mn=m で自明で、n→n+1n\to n+1 では定義 ∑k=mn+1=∑k=mn+an+1\sum_{k=m}^{n+1}=\sum_{k=m}^n+a_{n+1} を両辺に適用すれば、加法の交換法則・結合法則(分配法則)から従います。(2)(3) も同じ形の帰納法です。(4) は n=mn=m で自明。n→n+1n\to n+1 では、左辺 ∑k=mn+1am+n+1−k\sum_{k=m}^{n+1}a_{m+n+1-k} の k=mk=m の項は an+1a_{n+1} で、残りの k=m+1,…,n+1k=m+1,\dots,n+1 の和は、添字を k=k′+1k=k'+1 とずらす (2) により ∑k′=mnam+n−k′\sum_{k'=m}^{n}a_{m+n-k'} です。これは帰納法の仮定で ∑k′=mnak′\sum_{k'=m}^na_{k'} に等しく、全体で an+1+∑k=mnak=∑k=mn+1aka_{n+1}+\sum_{k=m}^na_k=\sum_{k=m}^{n+1}a_k となります。

命題 2.3(等差数列の和)✓

ak=a+(k−1)da_k=a+(k-1)d とする。∑k=1nak=n(a1+an)2=na+n(n−1)2d\displaystyle\sum_{k=1}^na_k=\frac{n(a_1+a_n)}2=na+\frac{n(n-1)}2d。

証明(命題 2.3)

S=∑k=1nakS=\sum_{k=1}^na_k とし、和の順序を逆にした S=∑k=1nan+1−kS=\sum_{k=1}^na_{n+1-k}(命題 2.2 (4))を足し合わせます。ak+an+1−k=2a+(n−1)d=a1+ana_k+a_{n+1-k}=2a+(n-1)d=a_1+a_n は kk によらないので、2S=∑k=1n(a1+an)=n(a1+an)2S=\sum_{k=1}^n(a_1+a_n)=n(a_1+a_n)(命題 2.2 (3))です。a1+an=2a+(n−1)da_1+a_n=2a+(n-1)d を代入すれば第 2 の等号を得ます。

命題 2.4(等比数列の和)✓

ak=ark−1a_k=ar^{k-1} とする。r≠1r\ne1 のとき ∑k=1nak=a(rn−1)r−1\displaystyle\sum_{k=1}^na_k=\frac{a(r^n-1)}{r-1}、r=1r=1 のとき nana。

証明(命題 2.4)

r=1r=1 は 命題 2.2 (3)。r≠1r\ne1 のとき、因数分解の公式(命題 5.1)[数と式] (1)(a→ra\to r、b→1b\to1)により rn−1=(r−1)∑k=0n−1rn−1−kr^n-1=(r-1)\sum_{k=0}^{n-1}r^{n-1-k} で、和の順序を反転すると(命題 2.2 (4))∑k=0n−1rn−1−k=∑k=0n−1rk\sum_{k=0}^{n-1}r^{n-1-k}=\sum_{k=0}^{n-1}r^k。r−1≠0r-1\ne0 で割り、aa をかけます(∑k=1nark−1=a∑k=0n−1rk\sum_{k=1}^nar^{k-1}=a\sum_{k=0}^{n-1}r^k は 命題 2.2 (2) の添字のずらし)。

無限等比級数 ∑k=1∞ark−1=a1−r\sum_{k=1}^\infty ar^{k-1}=\tfrac{a}{1-r}(∣r∣<1|r|<1)は極限の議論が要り、その証明は、数とは何か? の等比級数の命題(等比級数(命題 6.2)[数とは何か])にあります。

命題 2.5(冪の和)✓

すべての自然数 nn について

∑k=1nk=n(n+1)2,∑k=1nk2=n(n+1)(2n+1)6,∑k=1nk3=(n(n+1)2)2.\sum_{k=1}^nk=\frac{n(n+1)}2,\qquad\sum_{k=1}^nk^2=\frac{n(n+1)(2n+1)}6,\qquad\sum_{k=1}^nk^3=\Bigl(\frac{n(n+1)}2\Bigr)^2.
証明(命題 2.5)

どれも nn に関する帰納法です(数学的帰納法の原理(定理 3.2)[証明の技術])。n=1n=1 では左辺が 11、右辺も 11。k3k^3 の場合の帰納ステップのみ示します:nn で成り立つとして

(n(n+1)2)2+(n+1)3=(n+1)2(n24+n+1)=(n+1)2(n+2)24=((n+1)(n+2)2)2.\Bigl(\frac{n(n+1)}2\Bigr)^2+(n+1)^3=(n+1)^2\Bigl(\frac{n^2}4+n+1\Bigr)=\frac{(n+1)^2(n+2)^2}4=\Bigl(\frac{(n+1)(n+2)}2\Bigr)^2.

k2k^2 では n(n+1)(2n+1)6+(n+1)2=(n+1)(2n2+7n+6)6=(n+1)(n+2)(2n+3)6\tfrac{n(n+1)(2n+1)}6+(n+1)^2=\tfrac{(n+1)(2n^2+7n+6)}6=\tfrac{(n+1)(n+2)(2n+3)}6。kk では n(n+1)2+(n+1)=(n+1)(n+2)2\tfrac{n(n+1)}2+(n+1)=\tfrac{(n+1)(n+2)}2 です。

例 2.6(四角錐数)

1, 1+4, 1+4+9,…1,\,1+4,\,1+4+9,\dots、すなわち ∑k=1nk2\sum_{k=1}^nk^2 は、nn 段の四角錐状に球を積んだときの個数で、四角錐数とよばれます。n=1,2,3,4n=1,2,3,4 で 1,5,14,301,5,14,30。公式 n(n+1)(2n+1)6\tfrac{n(n+1)(2n+1)}6 は n=4n=4 で 4⋅5⋅96=30\tfrac{4\cdot5\cdot9}6=30 と一致します。

定義 3.1(差分と下降階乗冪)↗

数列 (ak)(a_k) に対し、Δak=ak+1−ak\Delta a_k=a_{k+1}-a_k を階差(差分)という。Δ0a=a\Delta^0a=a、Δj+1a=Δ(Δja)\Delta^{j+1}a=\Delta(\Delta^ja) と定める。整数 m≥0m\ge0 に対し、

km‾=k(k−1)(k−2)⋯(k−m+1)(m≥1),k0‾=1k^{\underline{m}}=k(k-1)(k-2)\cdots(k-m+1)\quad(m\ge1),\qquad k^{\underline0}=1

を下降階乗冪という(mm 個の因数の積)。

定理 3.2(和分の基本公式(telescoping))✓

整数 m≤nm\le n について

∑k=mnΔak=an+1−am.\sum_{k=m}^n\Delta a_k=a_{n+1}-a_m.

したがって、Δbk=ak\Delta b_k=a_k となる数列 (bk)(b_k) が見つかれば、∑k=mnak=bn+1−bm\sum_{k=m}^na_k=b_{n+1}-b_m である。

証明(定理 3.2)

nn に関する帰納法。n=mn=m では左辺 Δam=am+1−am\Delta a_m=a_{m+1}-a_m。n→n+1n\to n+1 では ∑k=mn+1Δak=(an+1−am)+(an+2−an+1)=an+2−am\sum_{k=m}^{n+1}\Delta a_k=(a_{n+1}-a_m)+(a_{n+2}-a_{n+1})=a_{n+2}-a_m。後半は ak=Δbka_k=\Delta b_k を代入するだけです。

これは微分積分学の基本定理 ∫abf′(x) dx=f(b)−f(a)\int_a^bf'(x)\,dx=f(b)-f(a)(微分積分学の基本定理(定理 5.4)[積分の基本定理と定積分])の離散版です。対応表は次のとおりです。

連続離散
微分 f′(x)f'(x)差分 Δak=ak+1−ak\Delta a_k=a_{k+1}-a_k
xmx^m下降階乗冪 km‾k^{\underline m}
(xm)′=mxm−1(x^m)'=mx^{m-1}Δkm‾=mkm−1‾\Delta k^{\underline m}=mk^{\underline{m-1}}(下記)
積分 ∫ab\int_a^b和分 ∑k=mn\sum_{k=m}^{n}
∫abf′=f(b)−f(a)\int_a^bf'=f(b)-f(a)∑k=mnΔak=an+1−am\sum_{k=m}^n\Delta a_k=a_{n+1}-a_m

命題 3.3(下降階乗冪の差分と和)✓

m≥1m\ge1 について Δkm‾=m km−1‾\Delta k^{\underline m}=m\,k^{\underline{m-1}}。したがって、m≥0m\ge0、n≥0n\ge0 について

∑k=0nkm‾=(n+1)m+1‾m+1.\sum_{k=0}^nk^{\underline m}=\frac{(n+1)^{\underline{m+1}}}{m+1}.
証明(命題 3.3)

(k+1)m‾=(k+1) km−1‾(k+1)^{\underline m}=(k+1)\,k^{\underline{m-1}}(k+1k+1 から k−m+2k-m+2 までの mm 個の積は、k+1k+1 と kk から k−m+2k-m+2 までの m−1m-1 個の積)、km‾=km−1‾ (k−m+1)k^{\underline m}=k^{\underline{m-1}}\,(k-m+1) なので、Δkm‾=km−1‾((k+1)−(k−m+1))=m km−1‾\Delta k^{\underline m}=k^{\underline{m-1}}\bigl((k+1)-(k-m+1)\bigr)=m\,k^{\underline{m-1}}。bk=km+1‾m+1b_k=\tfrac{k^{\underline{m+1}}}{m+1} とおくと Δbk=km‾\Delta b_k=k^{\underline m} です。b0=0b_0=0(km+1‾k^{\underline{m+1}} は因数 kk をもつ)なので、定理 3.2 により ∑k=0nkm‾=bn+1−b0=(n+1)m+1‾m+1\sum_{k=0}^nk^{\underline m}=b_{n+1}-b_0=\tfrac{(n+1)^{\underline{m+1}}}{m+1} です。

例 3.4(冪の和を下降階乗冪で求める)

k2=k2‾+k1‾k^2=k^{\underline2}+k^{\underline1}(右辺は k(k−1)+kk(k-1)+k)なので、∑k=0nk2=(n+1)3‾3+(n+1)2‾2=(n+1)n(n−1)3+(n+1)n2=n(n+1)(2n+1)6\sum_{k=0}^nk^2=\tfrac{(n+1)^{\underline3}}3+\tfrac{(n+1)^{\underline2}}2=\tfrac{(n+1)n(n-1)}3+\tfrac{(n+1)n}2=\tfrac{n(n+1)(2n+1)}6。k3=k3‾+3k2‾+k1‾k^3=k^{\underline3}+3k^{\underline2}+k^{\underline1}(右辺を展開すると k3−3k2+2k+3k2−3k+kk^3-3k^2+2k+3k^2-3k+k)なので ∑k=0nk3=(n+1)4‾4+(n+1)3‾+(n+1)2‾2=(n+1)n12(3(n−1)(n−2)+12(n−1)+6)=n2(n+1)24\sum_{k=0}^nk^3=\tfrac{(n+1)^{\underline4}}4+(n+1)^{\underline3}+\tfrac{(n+1)^{\underline2}}2=\tfrac{(n+1)n}{12}\bigl(3(n-1)(n-2)+12(n-1)+6\bigr)=\tfrac{n^2(n+1)^2}4。このように、帰納法では「確かめる」だけだった公式を、導くことができます。係数 1,11,1 や 1,3,11,3,1 は、kmk^m を下降階乗冪で展開する係数(第 2 種 Stirling 数)です。

次の定理のねらいは、高校の「階差数列の和をとって一般項を求める」方法を、階差の階差(2 階の階差)、その階差と続けて、数列の第 nn 項を「最初の項での階差」だけで書き表すことです。たとえば 1,4,9,16,…1,4,9,16,\dots では、最初の項での 0 階・1 階・2 階の階差は 1,3,21,3,2 で、第 3 項は 1+2⋅3+1⋅2=91+2\cdot3+1\cdot2=9 と、二項係数 1,2,11,2,1 を重みにして復元できます。

定理 3.5(Newton の前進差分公式(階差数列の一般化))✓

任意の数列 (ak)(a_k) と n≥1n\ge1 について

an=∑j=0n−1(n−1j) (Δja)1.a_n=\sum_{j=0}^{n-1}\binom{n-1}{j}\,(\Delta^ja)_1.

とくに n≥2n\ge2 のとき an=a1+∑k=1n−1Δaka_n=a_1+\sum_{k=1}^{n-1}\Delta a_k(階差数列の和)である。

証明(定理 3.5)

N=n−1N=n-1 とし、「すべての数列 aa について aN+1=∑j=0N(Nj)(Δja)1a_{N+1}=\sum_{j=0}^N\binom Nj(\Delta^ja)_1」を NN に関する帰納法で示します。N=0N=0 は a1=(Δ0a)1a_1=(\Delta^0a)_1。NN で成り立つとします。数列 ak′=ak+1a'_k=a_{k+1} に帰納法の仮定を使うと aN+2=aN+1′=∑j(Nj)(Δja′)1a_{N+2}=a'_{N+1}=\sum_j\binom Nj(\Delta^ja')_1。Δ\Delta は 1 つ後ろへのずらしと交換できる(Δak′=ak+2−ak+1=(Δa)k+1\Delta a'_k=a_{k+2}-a_{k+1}=(\Delta a)_{k+1})ので、(Δja′)1=(Δja)2(\Delta^ja')_1=(\Delta^ja)_2 で、これは (Δja)1+(Δj+1a)1(\Delta^ja)_1+(\Delta^{j+1}a)_1 に等しい(Δ\Delta の定義)。したがって、

aN+2=∑j=0N(Nj)(Δja)1+∑j=0N(Nj)(Δj+1a)1=∑j=0N+1((Nj)+(Nj−1))(Δja)1,a_{N+2}=\sum_{j=0}^N\binom Nj(\Delta^ja)_1+\sum_{j=0}^N\binom Nj(\Delta^{j+1}a)_1=\sum_{j=0}^{N+1}\Bigl(\binom Nj+\binom N{j-1}\Bigr)(\Delta^ja)_1,

パスカルの関係(パスカルの三角形(命題 7.2)[数え上げと母関数])により (Nj)+(Nj−1)=(N+1j)\binom Nj+\binom N{j-1}=\binom{N+1}j。後半の主張は、定理 3.2 を m=1m=1、n−1n-1 について使うと ∑k=1n−1Δak=an−a1\sum_{k=1}^{n-1}\Delta a_k=a_n-a_1 となることから従います。

次の命題は、「階差をとるたびに多項式の次数が 1 つ下がる」ことを述べています。たとえば k2k^2 の階差は (k+1)2−k2=2k+1(k+1)^2-k^2=2k+1 で 1 次式になり、最高次の係数は 11 から 22 倍の 22 になります。k3k^3 なら階差は 3k2+3k+13k^2+3k+1 で、最高次の係数は 3 倍です。これを繰り返して、階差が一定になる回数から次数が分かる、という流れです。

命題 3.6(階差と多項式の次数)✓

  1. ak=f(k)a_k=f(k) が pp 次多項式(p≥1p\ge1)なら、Δak\Delta a_k は p−1p-1 次多項式で、最高次の係数は pp 倍になる。したがって Δpa\Delta^{p}a は定数 p!⋅cp!\cdot c(cc は ff の最高次の係数)、Δp+1a=0\Delta^{p+1}a=0。
  2. 逆に、すべての kk で Δp+1ak=0\Delta^{p+1}a_k=0 ならば、an=∑j=0p(n−1j)(Δja)1a_n=\sum_{j=0}^p\binom{n-1}j(\Delta^ja)_1 は nn の pp 次以下の多項式である。
証明(命題 3.6)

(1) (k+1)m−km=∑i=0m−1(mi)ki(k+1)^m-k^m=\sum_{i=0}^{m-1}\binom mik^i(二項定理 二項定理(定理 7.3)[数え上げと母関数])は m−1m-1 次で、最高次の係数は mm。f(k)=∑cmkmf(k)=\sum c_mk^m の階差では、最高次 cpkpc_pk^p から cp p kp−1c_p\,p\,k^{p-1} が出て、低次の項は次数 p−2p-2 以下にしか寄与しません。帰納法で Δpa=p! cp\Delta^pa=p!\,c_p。(2) 定理 3.5 で j>pj>p の項が消えます。(n−1j)=(n−1)(n−2)⋯(n−j)j!\binom{n-1}j=\tfrac{(n-1)(n-2)\cdots(n-j)}{j!} は nn の jj 次多項式です。

例 3.7(階差の表から一般項を読む)

1,4,9,16,25,…1,4,9,16,25,\dots の階差は 3,5,7,93,5,7,9、2 階の階差は 2,2,22,2,2 で一定です。ここでは、すべての kk で Δ3ak=0\Delta^3a_k=0 となることが何らかの形で保証されているとします(有限個の項の観察だけでは、§4 で述べたとおり推定にとどまります)。このとき 命題 3.6 (2) により ana_n は 2 次以下の式で、定理 3.5 から an=1+3(n−11)+2(n−12)=1+3(n−1)+(n−1)(n−2)=n2a_n=1+3\binom{n-1}1+2\binom{n-1}2=1+3(n-1)+(n-1)(n-2)=n^2。階差数列の「∑\sum をとる」という高校の定石は、この公式の第 2 項までに対応します。

4. 帰納法で証明する前の「推定」

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帰納法は、公式が与えられた後でそれを確かめる方法です。公式を見つける段階の「推定」は、小さい nn の観察に基づくので、証明ではありません。有名な反例があります。

例 4.1(観察は証明ではない:Euler の多項式)

f(n)=n2+n+41f(n)=n^2+n+41 は、n=0,1,…,39n=0,1,\dots,39 のすべてで素数になります(n=0,1,2,3n=0,1,2,3 で 41,43,47,5341,43,47,53)。しかし n=40n=40 では f(40)=1600+40+41=1681=412f(40)=1600+40+41=1681=41^2 で合成数です。40 回確かめても、「すべての nn で素数」とは言えません。数列の規則性を推定したら、帰納法(数学的帰納法の原理(定理 3.2)[証明の技術])か、この記事の差分の方法で証明します。

例 4.2(推定と帰納法による証明)

a1=1a_1=1、an+1=an+2n+1a_{n+1}=a_n+2n+1 で定まる数列の一般項を推定します。a2=4a_2=4、a3=9a_3=9、a4=16a_4=16 から an=n2a_n=n^2 と推定します。帰納法で、a1=1=12a_1=1=1^2。an=n2a_n=n^2 と仮定すると an+1=n2+2n+1=(n+1)2a_{n+1}=n^2+2n+1=(n+1)^2。これは 定理 3.2 で an=a1+∑k=1n−1(2k+1)=1+(n−1)n+(n−1)=n2a_n=a_1+\sum_{k=1}^{n-1}(2k+1)=1+(n-1)n+(n-1)=n^2 と導くことと同じです。帰納法は確かめ、和分は導きます。

例 4.3(群数列)

自然数を「第 kk 群に kk 個」で 1 ∣ 2,3 ∣ 4,5,6 ∣ 7,8,9,10 ∣⋯1\,|\,2,3\,|\,4,5,6\,|\,7,8,9,10\,|\cdots と分けます。第 kk 群の最初の数は、それより前の群の項数 ∑i=1k−1i=k(k−1)2\sum_{i=1}^{k-1}i=\tfrac{k(k-1)}2 の次なので k(k−1)2+1\tfrac{k(k-1)}2+1、第 kk 群の最後の数は k(k+1)2\tfrac{k(k+1)}2(命題 2.3)です。第 kk 群の和は、等差数列の和(初項 k(k−1)2+1\tfrac{k(k-1)}2+1、項数 kk)で k(k2+1)2\tfrac{k(k^2+1)}2 となります。

5. 応用:連続する整数の和と返済の計算

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次の命題の方針は、等差数列の和の公式から 2N2N を 2 つの整数の積 k⋅mk\cdot m に分け、その 2 つの偶奇が必ず異なることに注目して、約数と対応づけることです。たとえば N=15N=15 では 2N=302N=30 で、項数 k=2k=2 のとき m=15m=15 となり、a=15−2+12=7a=\tfrac{15-2+1}2=7 から 7+87+8 が得られます。

命題 5.1(連続する正の整数の和としての表し方)✓

正の整数 NN を、1 個以上の連続する正の整数の和 N=a+(a+1)+⋯+(a+k−1)N=a+(a+1)+\cdots+(a+k-1)(a,k≥1a,k\ge1)として表す方法の数は、NN の奇数の約数の個数に等しい。

証明(命題 5.1)

命題 2.3 により右辺は k(2a+k−1)2\tfrac{k(2a+k-1)}2 なので、条件は 2N=k m2N=k\,m、m=2a+k−1m=2a+k-1 と書けます。m−k=2a−1m-k=2a-1 は奇数なので k,mk,m は偶奇が異なり、m>km>k。逆に 2N=km2N=km で k<mk<m、k,mk,m の偶奇が異なるなら、a=m−k+12a=\tfrac{m-k+1}2 は正の整数で kk 個の和が NN になります。したがって表し方は、2N=km2N=km、k<mk<m、偶奇が異なる分解の個数です。偶奇が異なる分解では、一方が奇数で他方が偶数です。N=2eN′N=2^eN'(N′N' は奇数)とすると、奇数のほうの因子は N′N' の約数 dd で、偶数のほうは 2e+1N′/d2^{e+1}N'/d に決まります。したがって偶奇の異なる非順序対は N′N' の約数(すなわち NN の奇数の約数)dd と 1 対 1 に対応し、k<mk<m の順序は各対でちょうど 1 通りです。

たとえば N=15N=15 の奇数の約数は 1,3,5,151,3,5,15 の 4 個で、1515、7+87+8、4+5+64+5+6、1+2+3+4+51+2+3+4+5 の 4 通りです。N=16=24N=16=2^4 は奇数の約数が 11 だけで、1616 自身以外の表し方がありません。約数の個数を数える公式は 約数の個数(命題 5.5)[整除と素因数分解] です。

命題 5.2(元利均等返済)✓

元金 PP を月利 r>0r>0 で借り、毎月末に一定額 xx ずつ nn 回で完済する(利息は月初の残高に対して月末に付く)。このとき

x=P r (1+r)n(1+r)n−1.x=\frac{P\,r\,(1+r)^n}{(1+r)^n-1}.
証明(命題 5.2)

第 kk 月末の返済直後の残高を bkb_k とすると、b0=Pb_0=P、bk=(1+r)bk−1−xb_k=(1+r)b_{k-1}-x。この漸化式から bk=(1+r)kP−x∑i=0k−1(1+r)ib_k=(1+r)^kP-x\sum_{i=0}^{k-1}(1+r)^i が帰納法で従います(bkb_k の式に (1+r)(1+r) をかけて xx を引く)。命題 2.4 により ∑i=0n−1(1+r)i=(1+r)n−1r\sum_{i=0}^{n-1}(1+r)^i=\tfrac{(1+r)^n-1}{r} なので、完済 bn=0b_n=0 の条件は (1+r)nP=x(1+r)n−1r(1+r)^nP=x\tfrac{(1+r)^n-1}r です。(1+r)n−1≠0(1+r)^n-1\ne0 で xx について解きます。

例 5.3(返済額の計算例)

P=3,000,000P=3{,}000{,}000 円、月利 r=1%r=1\%(0.010.01)、n=12n=12 回なら (1.01)12≈1.126825(1.01)^{12}\approx1.126825 で x≈30000×1.1268250.126825≈266,546x\approx\tfrac{30000\times1.126825}{0.126825}\approx266{,}546 円。総返済額は約 3,198,5563{,}198{,}556 円で、利息は約 198,556198{,}556 円です(実際の住宅ローンの金利は年利で表示され、月利への換算は契約により異なります)。

差分と和分は、解析学の微分と積分の離散版です。連続な世界では xmx^m、離散の世界では下降階乗冪 km‾k^{\underline m} が「微分で次数が 1 つ下がる」基底で、Taylor 展開の離散版が Newton の前進差分公式です。級数(無限和)の収束の議論は微分積分学(calculus)の級数の章へ、数え上げ((nk)\binom nk や Stirling 数)は組合せ論(combinatorics)の差分法と母関数へ続きます。差分方程式(漸化式)としての数列は、次の章 漸化式と母関数 と常微分方程式(ode)の定数係数線形方程式の離散版です。

演習 7.1易

次の 2 つの和を求めよ。(1) ∑k=110(3k+2)\displaystyle\sum_{k=1}^{10}(3k+2) (2) ∑k=162⋅3k−1\displaystyle\sum_{k=1}^{6}2\cdot3^{k-1}

解答

等差数列(初項 55、公差 33、項数 1010)の和は 命題 2.3 により 10(5+32)2=185\tfrac{10(5+32)}2=185。等比数列(初項 22、公比 33、項数 66)の和は 命題 2.4 により 2(36−1)3−1=728\tfrac{2(3^6-1)}{3-1}=728。

演習 7.2標準

∑k=1n1k(k+1)\displaystyle\sum_{k=1}^n\frac1{k(k+1)} を、定理 3.2 を使って求めよ。

解答

bk=−1kb_k=-\tfrac1k とおくと Δbk=−1k+1+1k=1k(k+1)\Delta b_k=-\tfrac1{k+1}+\tfrac1k=\tfrac1{k(k+1)}。よって ∑k=1n1k(k+1)=bn+1−b1=1−1n+1=nn+1\sum_{k=1}^n\tfrac1{k(k+1)}=b_{n+1}-b_1=1-\tfrac1{n+1}=\tfrac n{n+1}。

演習 7.3標準

∑k=1nk(k+1)(k+2)\displaystyle\sum_{k=1}^nk(k+1)(k+2) を求めよ。

解答

k(k+1)(k+2)=(k+2)3‾k(k+1)(k+2)=(k+2)^{\underline3}((k+2)(k+1)k(k+2)(k+1)k)。j=k+2j=k+2 とおくと ∑k=1n(k+2)3‾=∑j=3n+2j3‾=∑j=0n+2j3‾\sum_{k=1}^n(k+2)^{\underline3}=\sum_{j=3}^{n+2}j^{\underline3}=\sum_{j=0}^{n+2}j^{\underline3}(j=0,1,2j=0,1,2 では j3‾=0j^{\underline3}=0)。命題 3.3 により (n+3)4‾4=(n+3)(n+2)(n+1)n4\tfrac{(n+3)^{\underline4}}4=\tfrac{(n+3)(n+2)(n+1)n}4。n=1n=1 なら 4⋅3⋅2⋅14=6=1⋅2⋅3\tfrac{4\cdot3\cdot2\cdot1}4=6=1\cdot2\cdot3 で一致。

演習 7.4標準

4545 を連続する正の整数の和として表す方法は何通りあるか。すべて挙げよ。

解答

45=32⋅545=3^2\cdot5 で奇数の約数は 1,3,5,9,15,451,3,5,9,15,45 の 6 個なので、命題 5.1 により 6 通り。k=1k=1:4545。k=2k=2:22+2322+23。k=3k=3:14+15+1614+15+16。k=5k=5:7+8+9+10+117+8+9+10+11。k=6k=6:5+6+7+8+9+105+6+7+8+9+10。k=9k=9:1+2+⋯+91+2+\cdots+9。検算:2⋅45=90=k⋅m2\cdot45=90=k\cdot m で (k,m)=(1,90),(2,45),(3,30),(5,18),(6,15),(9,10)(k,m)=(1,90),(2,45),(3,30),(5,18),(6,15),(9,10) の 6 組。

  • Ronald L. Graham, Donald E. Knuth, Oren Patashnik, Concrete Mathematics, 2nd ed., Addison-Wesley, 1994 — Chapter 2(和)、Chapter 5(二項係数と差分)。
  • 杉浦光夫『解析入門 I』東京大学出版会、1980 — 数列と級数に関する節。
  • 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成 30 年告示)解説 数学編 理数編』— 数学 B「数列」。
  • 松坂和夫『集合・位相入門』岩波書店、1968 — 第 1 章(数学的帰納法に関する節)。

このテーマの 100 本ノック(100 問)

執筆: Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 3 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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