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Navier–Stokes 方程式 I:Clay の問題 (A)〜(D) と Leray の弱解

対象読者: 学部の解析(Fourier 級数、常微分方程式の解の存在と一意性、熱方程式)と Sobolev 空間の基本を学んだ人。流体力学や偏微分方程式の弱解の理論は仮定しません。

前提となる記事:Sobolev 空間:弱微分・埋め込み定理・Rellich のコンパクト性・トレース定理、フーリエ級数:Dirichlet–Jordan の収束定理・Fejér の定理・Parseval の等式・Gibbs 現象、解の存在と一意性:Picard–Lindelöf・Peano・Gronwall と初期値への依存、熱方程式:基本解・放物型最大値原理・熱半群 e^{tΔ}・Feynman–Kac 公式

生 Markdown

水や空気のような粘り気のある流れの動きは、Navier–Stokes 方程式という 1 本の方程式で書かれます。この方程式について「なめらかな流れから出発したとき、その流れはいつまでもなめらかなままか」という素朴な問いが、100 年近く解けていません。この記事では、問いを正確な形で書き下し、いまわかっていること(解を「少し弱い意味」でなら必ず作れること、2 次元ならなめらかさが保たれること)を証明つきで確かめます。読み終えると、3 次元の難しさがどこにあるかを式で説明できるようになります。

  • Clay 数学研究所の問題は、3 次元の非圧縮 Navier–Stokes 方程式について 4 つの命題 (A)〜(D) のどれか 1 つを証明することを求めます。(A)(B) は外力 f=0f=0 での滑らかな大域解の存在、(C)(D) は滑らかな初期値と外力で大域解が存在しない例の存在で、(A)(B) と (C)(D) は互いの否定になっていません。
  • 滑らかな解はエネルギー等式を満たします。非線形項は ⟨(u⋅∇)u,u⟩=0\langle(u\cdot\nabla)u,u\rangle=0 で消えるので、運動エネルギーは外力の仕事と粘性散逸だけで変わります。
  • スケール変換 uλ(x,t)=λu(λx,λ2t)u_\lambda(x,t)=\lambda u(\lambda x,\lambda^2t) のもとで、3 次元のエネルギーは λ−1\lambda^{-1} 倍になります(優臨界。流れを細かく縮めるほど、エネルギーでは細部を抑えられなくなるという意味)。2 次元では不変(臨界)で、これが 2 次元と 3 次元の違いの源です。
  • トーラス T3\mathbb{T}^3(各方向に周期 11 をもつ箱)上では、L2L^2 の初期値に対して Leray–Hopf の弱解(方程式を微分ではなく積分の形で満たす解)が大域的に存在します(Galerkin 近似、つまり有限個の Fourier モードに切り詰めた常微分方程式の解の極限と、エネルギー評価。この記事で証明を閉じます)。一意性と滑らかさは分かっていません。
  • 2 次元では弱解は一意で、滑らかな解の ∥∇u∥L2\|\nabla u\|_{L^2} は時間によらず抑えられます。3 次元では ddt∥∇u∥2≤Cν−3∥∇u∥6\frac{d}{dt}\|\nabla u\|^2\le C\nu^{-3}\|\nabla u\|^6 しか得られず、短時間または小さい初期値でしか ∥∇u∥\|\nabla u\| を抑えられません。
  • 滑らかな解がある区間では、同じデータの Leray–Hopf 弱解はそれに一致します(弱強一意性)。第 11 章で「ある解が爆発するなら、同じデータの滑らかな大域解は無い」を導くのに使います。

粘性をもつ非圧縮流体の運動方程式は、Navier(1822 年に学士院で発表)と Stokes(1845 年)にさかのぼります。方程式は 2 世紀にわたって流体力学の基礎として使われてきましたが、「滑らかな初期状態から出発した 3 次元の流れが、いつまでも滑らかであり続けるか」は分かっていません。

Leray は 1934 年の論文で、この問題に対する現在の出発点をほぼすべて用意しました。エネルギーが有限な初期値に対して、方程式を積分の意味で満たす解(Leray は「乱流解」と呼びました)が大域的に存在すること、滑らかな解は短時間なら存在して一意であること、そして滑らかな解が壊れるとすれば特定の速さ以上でノルムが発散すること、の 3 つです。Hopf は 1951 年に、境界をもつ一般の領域で同じ型の弱解を構成しました。2 次元については、Ladyzhenskaya が 1959 年に弱解の一意性と大域的な滑らかさを証明しています。

2000 年、Clay 数学研究所はこの問題をミレニアム懸賞問題の 1 つに選び、Fefferman が問題文を書きました。この記事ではまず問題文の条件を式で書き出し、次に 1934 年から変わっていない出発点、すなわち「弱解は大域的にあるが一意性と滑らかさが分からない。強解は一意で滑らかだが局所的にしか分からない」を証明つきで述べます。正則性の判定条件と爆発の研究は 第 10 章、2026 年に公表された外力つきの爆発の主張は 第 11 章 で扱います。

空間は Ω=Rd\Omega=\mathbb{R}^d またはトーラス Td=Rd/Zd\mathbb{T}^d=\mathbb{R}^d/\mathbb{Z}^d(d=2,3d=2,3)とします。Td\mathbb{T}^d 上の関数は、各座標について周期 11 の Rd\mathbb{R}^d 上の関数と同一視します。∥⋅∥\|\cdot\| は L2(Ω)L^2(\Omega) のノルム、⟨⋅,⋅⟩\langle\cdot,\cdot\rangle は L2(Ω)L^2(\Omega) の実内積、∥⋅∥q\|\cdot\|_q は Lq(Ω)L^q(\Omega) のノルムです。添字の繰り返しは和を取ります。

定義 2.1(非圧縮 Navier–Stokes 方程式・Euler 方程式)↗

ν>0\nu\gt0 を定数(粘性)とする。速度 u:Ω×[0,T)→Rdu:\Omega\times[0,T)\to\mathbb{R}^d、圧力 p:Ω×[0,T)→Rp:\Omega\times[0,T)\to\mathbb{R}、外力 f:Ω×[0,T)→Rdf:\Omega\times[0,T)\to\mathbb{R}^d、初期値 u0:Ω→Rdu_0:\Omega\to\mathbb{R}^d に対する方程式

∂tu+(u⋅∇)u=νΔu−∇p+f,div⁡u=0,u(⋅,0)=u0\partial_tu+(u\cdot\nabla)u=\nu\Delta u-\nabla p+f,\qquad\operatorname{div}u=0,\qquad u(\cdot,0)=u_0

を非圧縮 Navier–Stokes 方程式という。ここで ((u⋅∇)u)j=ui∂iuj((u\cdot\nabla)u)_j=u_i\partial_iu_j である。ν=0\nu=0 としたものを Euler 方程式という。u,pu,p が Ω×[0,T)\Omega\times[0,T) 上 C∞C^\infty 級で方程式を各点で満たすとき、(u,p)(u,p) を滑らかな解という。

div⁡u=0\operatorname{div}u=0 なら (u⋅∇)uj=∂i(uiuj)(u\cdot\nabla)u_j=\partial_i(u_iu_j) と書けます。方程式の発散を取ると ∂t\partial_t と Δ\Delta の項が消えて

−Δp=∂i∂j(uiuj)−div⁡f-\Delta p=\partial_i\partial_j(u_iu_j)-\operatorname{div}f

となり、圧力は各時刻の速度と外力から Poisson 方程式で決まります。圧力は独立な未知関数ではなく、速度を発散なしに保つための Lagrange 乗数です。また渦度を ω=curl⁡u\omega=\operatorname{curl}u(d=2d=2 ではスカラー ω=∂1u2−∂2u1\omega=\partial_1u_2-\partial_2u_1)と定めます。

Fefferman の問題文(参考文献 [1])は、空間全体と周期的な場合のそれぞれについて、初期値・外力・解に課す条件を番号つきで述べています。条件が多く見えますが、役割は 2 種類だけです。初期値と外力が遠方で十分速く消える(または周期的である)ことで「データがまともである」ことを、解が滑らかでエネルギーが有限であることで「解がまともである」ことを要請しています。原文の番号のまま書き出します。式 (1)(2)(3) は 定義 2.1 の方程式・非圧縮条件・初期条件です。

定義 2.2(問題文の条件 (4)〜(11))↗

n=3n=3 とする。α\alpha は空間の多重指数、m≥0m\ge0 は整数、K>0K\gt0 は任意の実数、eje_j は第 jj 単位ベクトルである。

全空間の場合。 初期値と外力に対する条件:

(4)∣∂xαu0(x)∣≤CαK(1+∣x∣)−K(x∈R3),(5)∣∂xα∂tmf(x,t)∣≤CαmK(1+∣x∣+t)−K(x∈R3, t≥0).\begin{aligned} &(4)\quad|\partial_x^\alpha u_0(x)|\le C_{\alpha K}(1+|x|)^{-K}\quad(x\in\mathbb{R}^3),\\ &(5)\quad|\partial_x^\alpha\partial_t^mf(x,t)|\le C_{\alpha mK}(1+|x|+t)^{-K}\quad(x\in\mathbb{R}^3,\ t\ge0). \end{aligned}

解に対する条件:

(6)p,u∈C∞(R3×[0,∞)),(7)∫R3∣u(x,t)∣2dx<C(t≥0)(エネルギーの有界性).\begin{aligned} &(6)\quad p,u\in C^\infty(\mathbb{R}^3\times[0,\infty)),\\ &(7)\quad\int_{\mathbb{R}^3}|u(x,t)|^2dx\lt C\quad(t\ge0)\qquad\text{(エネルギーの有界性)}. \end{aligned}

周期的な場合。 初期値と外力に対する条件:

(8)u0(x+ej)=u0(x),f(x+ej,t)=f(x,t)(1≤j≤3),(9)∣∂xα∂tmf(x,t)∣≤CαmK(1+∣t∣)−K(x∈R3, t≥0).\begin{aligned} &(8)\quad u_0(x+e_j)=u_0(x),\quad f(x+e_j,t)=f(x,t)\quad(1\le j\le3),\\ &(9)\quad|\partial_x^\alpha\partial_t^mf(x,t)|\le C_{\alpha mK}(1+|t|)^{-K}\quad(x\in\mathbb{R}^3,\ t\ge0). \end{aligned}

解に対する条件:

(10)u(x+ej,t)=u(x,t)(1≤j≤3),(11)p,u∈C∞(R3×[0,∞)).\begin{aligned} &(10)\quad u(x+e_j,t)=u(x,t)\quad(1\le j\le3),\\ &(11)\quad p,u\in C^\infty(\mathbb{R}^3\times[0,\infty)). \end{aligned}

問題文に付された正誤表により、周期的な場合には圧力の周期性 p(x+ej,t)=p(x,t)p(x+e_j,t)=p(x,t) も条件に加える。

定義 2.3(命題 (A)〜(D))↗

ν>0\nu\gt0、n=3n=3 とする。

  • (A) 全空間での存在と滑らかさ。 (4) を満たす任意の滑らかな発散なしベクトル場 u0u_0 に対し、f≡0f\equiv0 として、(1)(2)(3)(6)(7) を満たす R3×[0,∞)\mathbb{R}^3\times[0,\infty) 上の滑らかな p,up,u が存在する。
  • (B) 周期的な場合の存在と滑らかさ。 (8) を満たす任意の滑らかな発散なしベクトル場 u0u_0 に対し、f≡0f\equiv0 として、(1)(2)(3)(10)(11) を満たす滑らかな p,up,u が存在する。
  • (C) 全空間での解の破綻。 (4)(5) を満たす滑らかな発散なしベクトル場 u0u_0 と滑らかな ff で、(1)(2)(3)(6)(7) を満たす解 (p,u)(p,u) が R3×[0,∞)\mathbb{R}^3\times[0,\infty) 上に存在しないものがある。
  • (D) 周期的な場合の解の破綻。 (8)(9) を満たす滑らかな発散なしベクトル場 u0u_0 と滑らかな ff で、(1)(2)(3)(10)(11) を満たす解 (p,u)(p,u) が存在しないものがある。

問題文は、この 4 つのうちどれか 1 つの証明を解決として求めている。

(A)(B) と (C)(D) の仮定の違いを表にします。

空間初期値外力主張
(A)R3\mathbb{R}^3(4) を満たす任意の u0u_0f≡0f\equiv0滑らかでエネルギー有界な大域解がある
(B)T3\mathbb{T}^3周期的な任意の u0u_0f≡0f\equiv0滑らかな周期的大域解がある
(C)R3\mathbb{R}^3(4) を満たすある u0u_0(5) を満たすある ff滑らかでエネルギー有界な大域解が無い
(D)T3\mathbb{T}^3周期的なある u0u_0(8)(9) を満たすある ff滑らかな周期的大域解が無い

注意 2.4((A) と (C) は互いの否定ではない)

(A) の否定は「f≡0f\equiv0 のもとで、ある u0u_0 に対して滑らかでエネルギー有界な大域解が無い」です。(C) は外力 f≠0f\ne0 を許すので、(C) が成り立っても (A) の真偽は決まりません。f≡0f\equiv0 は条件 (5) を満たすので、(A) の否定は (C) を導きますが、逆は言えません。つまり論理的には「(A) かつ (C)」がありえます。外力なしの方程式で滑らかな初期値から特異点が生じるかどうか、という物理的に最も関心のある問いは (A)(B) の側にあります。

注意 2.5(問題文は一意性を求めていない)

(A)(B) が求めるのは存在であり、(C)(D) が求めるのは「条件を満たす解が 1 つも無い」ことです。(C) を示すには、ある解が有限時間で壊れることに加えて、同じデータの別の滑らかな解が大域的に存在する可能性を排除しなければなりません。その排除に使うのが 定理 8.2 です。

3. エネルギー等式とスケール不変性

Section titled “3. エネルギー等式とスケール不変性”

Td\mathbb{T}^d 上の滑らかな周期関数 FF については、微積分の基本定理を 1 変数ずつ使って ∫Td∂jF dx=0\int_{\mathbb{T}^d}\partial_jF\,dx=0 です。Rd\mathbb{R}^d では、次の減衰の条件を課して同じことをします。

定義 3.1(減衰する滑らかな解)↗

Rd×[0,T]\mathbb{R}^d\times[0,T] 上の滑らかな解 (u,p)(u,p) が減衰するとは、pp が有界で、すべての多重指数 α\alpha、m∈{0,1}m\in\{0,1\}、K>0K\gt0 について sup⁡0≤t≤T∣∂xα∂tmu(x,t)∣≤CαK(1+∣x∣)−K\sup_{0\le t\le T}|\partial_x^\alpha\partial_t^mu(x,t)|\le C_{\alpha K}(1+|x|)^{-K} が成り立つことをいう。Td\mathbb{T}^d 上の滑らかな解は、u,pu,p がともに周期的であるものだけを考える。

補題 3.2(三重線形形式の反対称性)✓

u,v,wu,v,w を Ω\Omega 上の滑らかなベクトル場(Ω=Td\Omega=\mathbb{T}^d なら周期的、Ω=Rd\Omega=\mathbb{R}^d なら uu は有界で v,wv,w とその 1 階導関数は任意の多項式より速く減衰)とし、b(u,v,w)=∫Ωui ∂ivj wj dxb(u,v,w)=\int_\Omega u_i\,\partial_iv_j\,w_j\,dx とおく。div⁡u=0\operatorname{div}u=0 ならば

b(u,v,w)=−b(u,w,v),とくにb(u,v,v)=0.b(u,v,w)=-b(u,w,v),\qquad\text{とくに}\quad b(u,v,v)=0 .
証明(補題 3.2)

積の微分により ∂i(uivjwj)=(∂iui)vjwj+ui∂ivj wj+uivj ∂iwj\partial_i(u_iv_jw_j)=(\partial_iu_i)v_jw_j+u_i\partial_iv_j\,w_j+u_iv_j\,\partial_iw_j です。∂iui=div⁡u=0\partial_iu_i=\operatorname{div}u=0 なので、右辺は ui∂ivjwj+uivj∂iwju_i\partial_iv_jw_j+u_iv_j\partial_iw_j です。左辺の積分は、Td\mathbb{T}^d では周期性により 00 です。Rd\mathbb{R}^d では球 BRB_R 上で発散定理(補題 2.1[ラプラス方程式と調和関数])を使うと ∫∂BR(u⋅n)vjwj dS\int_{\partial B_R}(u\cdot n)v_jw_j\,dS になり、被積分関数は C(1+R)−KC(1+R)^{-K} で抑えられ、球面の面積は Rd−1R^{d-1} に比例するので、K>d−1K\gt d-1 と取れば R→∞R\to\infty で 00 に収束します。したがって b(u,v,w)+b(u,w,v)=0b(u,v,w)+b(u,w,v)=0 です。w=vw=v とすると 2b(u,v,v)=02b(u,v,v)=0 です。

命題 3.3(エネルギー等式)✓

(u,p)(u,p) を Ω×[0,T]\Omega\times[0,T] 上の滑らかな解(Ω=Rd\Omega=\mathbb{R}^d では 定義 3.1 の意味で減衰する解)とし、ff は連続で f(t)∈L2(Ω)f(t)\in L^2(\Omega)、t↦∥f(t)∥t\mapsto\|f(t)\| は有界とする。このとき、すべての 0≤t≤T0\le t\le T で

12∥u(t)∥2+ν∫0t∥∇u(s)∥2ds=12∥u0∥2+∫0t⟨f(s),u(s)⟩ ds.\frac12\|u(t)\|^2+\nu\int_0^t\|\nabla u(s)\|^2ds=\frac12\|u_0\|^2+\int_0^t\langle f(s),u(s)\rangle\,ds .

ここで ∥∇u∥2=∫Ω∂iuj ∂iuj dx\|\nabla u\|^2=\int_\Omega\partial_iu_j\,\partial_iu_j\,dx である。

証明(命題 3.3)

方程式と uu の内積を取って Ω\Omega 上で積分します。uu と ∂tu\partial_tu の減衰(または周期性)により積分記号下で微分でき(系 7.4[ルベーグ積分の定義と収束定理])、⟨∂tu,u⟩=12ddt∥u∥2\langle\partial_tu,u\rangle=\frac12\frac{d}{dt}\|u\|^2 です。

非線形項は ⟨(u⋅∇)u,u⟩=b(u,u,u)=0\langle(u\cdot\nabla)u,u\rangle=b(u,u,u)=0 です(補題 3.2)。

粘性項は、∂i(∂iuj uj)=Δuj uj+∂iuj∂iuj\partial_i(\partial_iu_j\,u_j)=\Delta u_j\,u_j+\partial_iu_j\partial_iu_j を積分して ⟨Δu,u⟩=−∥∇u∥2\langle\Delta u,u\rangle=-\|\nabla u\|^2 です(境界項は 補題 3.2 の証明と同じ理由で消えます)。

圧力項は、∂j(puj)=∂jp uj+p ∂juj=∂jp uj\partial_j(pu_j)=\partial_jp\,u_j+p\,\partial_ju_j=\partial_jp\,u_j を積分します。Td\mathbb{T}^d では pp の周期性により ⟨∇p,u⟩=0\langle\nabla p,u\rangle=0 です。Rd\mathbb{R}^d では境界項が sup⁡∣p∣⋅C(1+R)−KRd−1→0\sup|p|\cdot C(1+R)^{-K}R^{d-1}\to0 なので、やはり ⟨∇p,u⟩=0\langle\nabla p,u\rangle=0 です。

以上から 12ddt∥u∥2+ν∥∇u∥2=⟨f,u⟩\frac12\frac{d}{dt}\|u\|^2+\nu\|\nabla u\|^2=\langle f,u\rangle となり、00 から tt まで積分すると主張の等式です。

この等式が Navier–Stokes 方程式について無条件に使える唯一の保存則型の評価です。外力が無ければ、エネルギーは単調に減り、ν∫0∞∥∇u∥2dt≤12∥u0∥2\nu\int_0^\infty\|\nabla u\|^2dt\le\frac12\|u_0\|^2 です。

流れを λ\lambda 倍に拡大・縮小し、時間も合わせて変えても、方程式の形は変わりません。このとき各ノルム(エネルギーなど)が λ\lambda の何乗倍になるかを調べると、エネルギー等式が抑えてくれる量が、細かい渦を抑えるのには足りないことが見えてきます。以下の分類はそのための物差しです。

定義 3.4(スケール変換と臨界性)↗

λ>0\lambda\gt0 に対し

uλ(x,t)=λu(λx,λ2t),pλ(x,t)=λ2p(λx,λ2t),fλ(x,t)=λ3f(λx,λ2t)u_\lambda(x,t)=\lambda u(\lambda x,\lambda^2t),\qquad p_\lambda(x,t)=\lambda^2p(\lambda x,\lambda^2t),\qquad f_\lambda(x,t)=\lambda^3f(\lambda x,\lambda^2t)

とおく。Rd\mathbb{R}^d 上の関数に対する量 N(u)N(u) が N(uλ)=λσN(u)N(u_\lambda)=\lambda^{\sigma}N(u) を満たすとき、σ=0\sigma=0 なら NN を臨界、σ>0\sigma\gt0 なら劣臨界、σ<0\sigma\lt0 なら優臨界という。

λ>1\lambda\gt1 のとき uλu_\lambda は uu を細かいスケールに縮めたものです。劣臨界な量が有界なら細かいスケールほど量が小さくなり、優臨界な量は有界でも細かいスケールでの振る舞いを抑えません。

命題 3.5(スケール不変性と各ノルムの次数)✓

(i) (u,p)(u,p) が Rd×[0,T)\mathbb{R}^d\times[0,T) 上で粘性 ν\nu・外力 ff の滑らかな解ならば、(uλ,pλ)(u_\lambda,p_\lambda) は Rd×[0,T/λ2)\mathbb{R}^d\times[0,T/\lambda^2) 上で同じ粘性 ν\nu・外力 fλf_\lambda の滑らかな解である。

(ii) 時刻 00 のノルムについて、1≤q≤∞1\le q\le\infty、s≥0s\ge0 に対し

∥uλ(0)∥Lq(Rd)=λ1−d/q∥u0∥Lq,∥uλ(0)∥H˙s(Rd)=λ1+s−d/2∥u0∥H˙s,\|u_\lambda(0)\|_{L^q(\mathbb{R}^d)}=\lambda^{1-d/q}\|u_0\|_{L^q},\qquad\|u_\lambda(0)\|_{\dot H^s(\mathbb{R}^d)}=\lambda^{1+s-d/2}\|u_0\|_{\dot H^s},

ここで ∥v∥H˙s2=(2π)−d∫∣ξ∣2s∣v^(ξ)∣2dξ\|v\|_{\dot H^s}^2=(2\pi)^{-d}\int|\xi|^{2s}|\hat v(\xi)|^2d\xi である。

(iii) したがって d=3d=3 では、エネルギー 12∥u∥2\frac12\|u\|^2 は λ−1\lambda^{-1} 倍(優臨界)、∥u∥L3\|u\|_{L^3} と ∥u∥H˙1/2\|u\|_{\dot H^{1/2}} は不変(臨界)、∥∇u∥2\|\nabla u\|^2 は λ\lambda 倍(劣臨界)である。d=2d=2 ではエネルギーが不変(臨界)である。

証明(命題 3.5)

(i) y=λxy=\lambda x、s=λ2ts=\lambda^2t とおくと、連鎖律により ∂tuλ=λ3(∂su)(y,s)\partial_tu_\lambda=\lambda^3(\partial_su)(y,s)、∂xiuλ=λ2(∂yiu)(y,s)\partial_{x_i}u_\lambda=\lambda^2(\partial_{y_i}u)(y,s)、Δuλ=λ3(Δu)(y,s)\Delta u_\lambda=\lambda^3(\Delta u)(y,s)、∇pλ=λ3(∇p)(y,s)\nabla p_\lambda=\lambda^3(\nabla p)(y,s) です。よって (uλ⋅∇)uλ=λ⋅λ2 ((u⋅∇)u)(y,s)=λ3((u⋅∇)u)(y,s)(u_\lambda\cdot\nabla)u_\lambda=\lambda\cdot\lambda^2\,((u\cdot\nabla)u)(y,s)=\lambda^3((u\cdot\nabla)u)(y,s) で、方程式のすべての項が λ3\lambda^3 倍になります:

∂tuλ+(uλ⋅∇)uλ−νΔuλ+∇pλ=λ3[∂su+(u⋅∇)u−νΔu+∇p](y,s)=λ3f(y,s)=fλ.\partial_tu_\lambda+(u_\lambda\cdot\nabla)u_\lambda-\nu\Delta u_\lambda+\nabla p_\lambda=\lambda^3\bigl[\partial_su+(u\cdot\nabla)u-\nu\Delta u+\nabla p\bigr](y,s)=\lambda^3f(y,s)=f_\lambda .

div⁡uλ=λ2(div⁡u)(y,s)=0\operatorname{div}u_\lambda=\lambda^2(\operatorname{div}u)(y,s)=0 です。s<Ts\lt T は t<T/λ2t\lt T/\lambda^2 と同値です。

(ii) 変数変換 y=λxy=\lambda x、dx=λ−ddydx=\lambda^{-d}dy により ∫∣λu0(λx)∣qdx=λq−d∫∣u0∣qdy\int|\lambda u_0(\lambda x)|^qdx=\lambda^{q-d}\int|u_0|^qdy なので、qq 乗根を取って λ1−d/q\lambda^{1-d/q} です(q=∞q=\infty では λ\lambda 倍で、式と合います)。Fourier 変換は uλ(0)^(ξ)=λ1−du^0(ξ/λ)\widehat{u_\lambda(0)}(\xi)=\lambda^{1-d}\hat u_0(\xi/\lambda) なので、η=ξ/λ\eta=\xi/\lambda として

∫∣ξ∣2sλ2−2d∣u^0(ξ/λ)∣2dξ=λ2−2dλ2sλd∫∣η∣2s∣u^0(η)∣2dη=λ2+2s−d∥u0∥H˙s2(2π)d\int|\xi|^{2s}\lambda^{2-2d}|\hat u_0(\xi/\lambda)|^2d\xi=\lambda^{2-2d}\lambda^{2s}\lambda^{d}\int|\eta|^{2s}|\hat u_0(\eta)|^2d\eta=\lambda^{2+2s-d}\|u_0\|_{\dot H^s}^2(2\pi)^d

となり、平方根を取って λ1+s−d/2\lambda^{1+s-d/2} です。

(iii) d=3d=3 のとき、q=2q=2 で 1−3/2=−1/21-3/2=-1/2 なので ∥u∥2\|u\|^2 は λ−1\lambda^{-1} 倍、q=3q=3 で 1−1=01-1=0、s=1/2s=1/2 で 1+1/2−3/2=01+1/2-3/2=0、s=1s=1 で 1+1−3/2=1/21+1-3/2=1/2 なので ∥∇u∥2\|\nabla u\|^2 は λ\lambda 倍です。d=2d=2 のとき q=2q=2 で 1−2/2=01-2/2=0 です。

例 3.6(3 次元での次数の表)

d=3d=3 で、N(uλ)=λσN(u)N(u_\lambda)=\lambda^\sigma N(u) の σ\sigma を並べます。時間を含むノルムは区間 [0,T/λ2)[0,T/\lambda^2) で測ります。

量σ\sigma分類
∥u∥L2\lVert u\rVert _{L^2}−1/2-1/2優臨界
ν∫0T∥∇u∥2dt\nu\int_0^T\lVert \nabla u\rVert ^2dt−1-1優臨界
∥u∥L3\lVert u\rVert _{L^3}、∥u∥H˙1/2\lVert u\rVert _{\dot H^{1/2}}00臨界
∥u∥LtpLxq\lVert u\rVert _{L^p_tL^q_x}(2/p+3/q=12/p+3/q=1)00臨界
∥∇u∥L2\lVert \nabla u\rVert _{L^2}1/21/2劣臨界
∥u∥L∞\lVert u\rVert _{L^\infty}11劣臨界

混合ノルムの行は、∫0T/λ2∥uλ(t)∥qpdt=λp(1−3/q)λ−2∫0T∥u(s)∥qpds\int_0^{T/\lambda^2}\|u_\lambda(t)\|_q^pdt=\lambda^{p(1-3/q)}\lambda^{-2}\int_0^T\|u(s)\|_q^pds で、指数が p(1−3/q)−2=p(1−2/p−3/q)p(1-3/q)-2=p(1-2/p-3/q) であることから出ます。エネルギー等式が抑える 2 つの量(上の 2 行)がどちらも優臨界であることが、3 次元の難しさを数で表しています。

4. 準備:Fourier 級数と補間不等式

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次の定義で、HH は「発散なし」の条件を課した速度場の空間、VV はその中で勾配の L2L^2 ノルムも有限なもの、Leray 射影 P\mathbb{P} は任意の場から勾配の部分を取り除いて発散なしの部分だけを残す操作です。圧力は勾配の形で現れるので、P\mathbb{P} を掛けると方程式から圧力が消えます。

k∈Zdk\in\mathbb{Z}^d に対し ek(x)=e2πik⋅xe_k(x)=e^{2\pi ik\cdot x}、u^(k)=∫Tdu(x)e−2πik⋅xdx\hat u(k)=\int_{\mathbb{T}^d}u(x)e^{-2\pi ik\cdot x}dx とします(ベクトル値の uu では成分ごと)。

補題 4.1(多次元トーラスの Parseval の等式)✓

(ek)k∈Zd(e_k)_{k\in\mathbb{Z}^d} は L2(Td;C)L^2(\mathbb{T}^d;\mathbb{C}) の正規直交基底である。したがって u,v∈L2(Td)u,v\in L^2(\mathbb{T}^d) について ∫Tduvˉ dx=∑ku^(k)v^(k)‾\int_{\mathbb{T}^d}u\bar v\,dx=\sum_k\hat u(k)\overline{\hat v(k)}、∥u∥2=∑k∣u^(k)∣2\|u\|^2=\sum_k|\hat u(k)|^2 であり、部分和 ∑∣k∣≤Nu^(k)ek\sum_{|k|\le N}\hat u(k)e_k は L2L^2 で uu に収束する。

証明(補題 4.1)

正規直交性は、∫01e2πi(kj−lj)xjdxj\int_0^1e^{2\pi i(k_j-l_j)x_j}dx_j が kj=ljk_j=l_j のとき 11、それ以外で 00 であることと Fubini の定理(定理 3.4[直積測度と Fubini–Tonelli の定理])から従います。完全性を dd についての帰納法で示します。d=1d=1 は 定理 5.1[フーリエ級数] です(変数を θ=2πx\theta=2\pi x と取り替える)。d−1d-1 で正しいとし、u∈L2(Td)u\in L^2(\mathbb{T}^d) がすべての eke_k と直交するとします。x=(x′,xd)x=(x',x_d)、k=(k′,l)k=(k',l) と分け、gl(x′)=∫01u(x′,xd)e−2πilxddxdg_l(x')=\int_0^1u(x',x_d)e^{-2\pi ilx_d}dx_d とおくと、Cauchy–Schwarz の不等式と Fubini の定理により gl∈L2(Td−1)g_l\in L^2(\mathbb{T}^{d-1}) で、g^l(k′)=u^(k′,l)=0\hat g_l(k')=\hat u(k',l)=0 です。帰納法の仮定から gl=0g_l=0 がほとんどすべての x′x' で成り立ちます。ll は可算個なので、ほとんどすべての x′x' について、u(x′,⋅)∈L2(T)u(x',\cdot)\in L^2(\mathbb{T}) のすべての Fourier 係数が 00 となり、d=1d=1 の場合から u(x′,⋅)=0u(x',\cdot)=0 です。よって u=0u=0 で、(ek)(e_k) は完全です。残りの主張は正規直交基底の一般的な性質です(定理 5.1[フーリエ級数] と同じ)。

定義 4.2(空間 H・V、射影 ℙ・PNP_N、H⁻¹ のノルム)↗

実ベクトル値の u∈L2(Td;Rd)u\in L^2(\mathbb{T}^d;\mathbb{R}^d) に対し、次のように定める。

  • HH は、u^(0)=0\hat u(0)=0(平均 00)かつすべての kk で k⋅u^(k)=0k\cdot\hat u(k)=0(発散なし)を満たす uu の全体。L2L^2 の閉部分空間である。
  • ∥∇u∥2=4π2∑k∣k∣2∣u^(k)∣2\|\nabla u\|^2=4\pi^2\sum_k|k|^2|\hat u(k)|^2 とおき、V={u∈H:∥∇u∥<∞}V=\{u\in H:\|\nabla u\|\lt\infty\} とする。滑らかな uu では ∂ju^(k)=2πikju^(k)\widehat{\partial_ju}(k)=2\pi ik_j\hat u(k) なので、補題 4.1 によりこれは勾配の L2L^2 ノルムに一致する。
  • Leray 射影 P\mathbb{P} を Pu^(k)=Πku^(k)\widehat{\mathbb{P}u}(k)=\Pi_k\hat u(k)(k≠0k\ne0)、Pu^(0)=0\widehat{\mathbb{P}u}(0)=0 で定める。ここで Πk=I−kkT/∣k∣2\Pi_k=I-kk^{\mathsf T}/|k|^2 は kk に直交する平面への直交射影である。P\mathbb{P} は L2L^2 から HH への直交射影である。
  • PNP_N は ∣k∣≤N|k|\le N の係数だけを残す切断で、VN=PNH\mathcal{V}_N=P_NH(有限次元。元は発散なし・平均 00 の実三角多項式)とする。
  • 係数の列 (g^(k))k≠0(\hat g(k))_{k\ne0}(g^(−k)=g^(k)‾\hat g(-k)=\overline{\hat g(k)})に対し ∥g∥−12=∑k≠0∣g^(k)∣2/(4π2∣k∣2)\|g\|_{-1}^2=\sum_{k\ne0}|\hat g(k)|^2/(4\pi^2|k|^2) とおき、v∈Vv\in V との組を ⟨g,v⟩=∑k≠0g^(k)⋅v^(k)‾\langle g,v\rangle=\sum_{k\ne0}\hat g(k)\cdot\overline{\hat v(k)} で定める。Cauchy–Schwarz の不等式により ∣⟨g,v⟩∣≤∥g∥−1∥∇v∥|\langle g,v\rangle|\le\|g\|_{-1}\|\nabla v\| である。L2(0,T;H−1)L^2(0,T;H^{-1}) は、各 g^(k,⋅)\hat g(k,\cdot) が可測で ∫0T∥g(t)∥−12dt<∞\int_0^T\|g(t)\|_{-1}^2dt\lt\infty となる gg の全体とする。

平均 00 の u∈Vu\in V では ∣k∣≥1|k|\ge1 なので ∥u∥2=∑k≠0∣u^(k)∣2≤∑∣k∣2∣u^(k)∣2\|u\|^2=\sum_{k\ne0}|\hat u(k)|^2\le\sum|k|^2|\hat u(k)|^2、すなわち Poincaré の不等式 ∥u∥≤(2π)−1∥∇u∥\|u\|\le(2\pi)^{-1}\|\nabla u\| が成り立ちます。また u∈Hu\in H と滑らかな周期関数 ψ\psi について ⟨u,∇ψ⟩=∑ku^(k)⋅2πikψ^(k)‾=0\langle u,\nabla\psi\rangle=\sum_k\hat u(k)\cdot\overline{2\pi ik\hat\psi(k)}=0 です。HH の元は超関数の意味で発散なしです。

補題 4.3(Ladyzhenskaya の不等式と Sobolev の不等式)✓

以下 (i)(ii) の uu は、Rd\mathbb{R}^d 上の滑らかな関数で、uu と ∇u\nabla u が ∣x∣→∞|x|\to\infty で任意の多項式より速く減衰するものとする(Cc∞C_c^\infty の元はこれを満たす)。

(i) d=2d=2 のとき ∥u∥42≤2∥u∥ ∥∇u∥\|u\|_4^2\le2\|u\|\,\|\nabla u\|。

(ii) d=3d=3 のとき ∥u∥6≤4∥∇u∥\|u\|_6\le4\|\nabla u\|、∥u∥4≤43/4∥u∥1/4∥∇u∥3/4\|u\|_4\le4^{3/4}\|u\|^{1/4}\|\nabla u\|^{3/4}、∥u∥3≤2∥u∥1/2∥∇u∥1/2\|u\|_3\le2\|u\|^{1/2}\|\nabla u\|^{1/2}。

(iii) 定数 CC があって、平均 00 の滑らかな周期関数 uu について、T2\mathbb{T}^2 上で ∥u∥42≤C∥u∥ ∥∇u∥\|u\|_4^2\le C\|u\|\,\|\nabla u\|、T3\mathbb{T}^3 上で ∥u∥6≤C∥∇u∥\|u\|_6\le C\|\nabla u\|、∥u∥4≤C∥u∥1/4∥∇u∥3/4\|u\|_4\le C\|u\|^{1/4}\|\nabla u\|^{3/4}、∥u∥3≤C∥u∥1/2∥∇u∥1/2\|u\|_3\le C\|u\|^{1/2}\|\nabla u\|^{1/2}。

(iv) (iii) の不等式は u∈Vu\in V(成分ごと)でも成り立ち、PNu→uP_Nu\to u は T2\mathbb{T}^2 では L4L^4、T3\mathbb{T}^3 では L6L^6 で収束する。

ベクトル値の uu については、成分ごとに適用して定数を取り替えれば同じ形で成り立つ。

証明(補題 4.3)

(i) v=u2v=u^2 は v,∇v=2u∇u∈L1v,\nabla v=2u\nabla u\in L^1 を満たすので W1,1(R2)W^{1,1}(\mathbb{R}^2) の元です。これに、n=2n=2、p=1p=1、p∗=2p^*=2 の Gagliardo–Nirenberg–Sobolev の不等式(定理 4.3[Sobolev 空間]。定数は p(n−1)/(n−p)=1p(n-1)/(n-p)=1)を使うと ∥u2∥2≤∥∇(u2)∥1=2∥u∇u∥1\|u^2\|_2\le\|\nabla(u^2)\|_1=2\|u\nabla u\|_1 です。左辺は ∥u∥42\|u\|_4^2、右辺は Cauchy–Schwarz の不等式で 2∥u∥ ∥∇u∥2\|u\|\,\|\nabla u\| 以下です。

(ii) n=3n=3、p=2p=2、p∗=6p^*=6 の同じ不等式(定数は 2⋅2/1=42\cdot2/1=4)が ∥u∥6≤4∥∇u∥\|u\|_6\le4\|\nabla u\| です。14=θ2+1−θ6\frac14=\frac{\theta}{2}+\frac{1-\theta}{6} を解くと θ=14\theta=\frac14 で、Hölder の不等式(定理 4.2[L^p 空間と関数解析への導入])を ∣u∣4=∣u∣1⋅∣u∣3|u|^4=|u|^{1}\cdot|u|^{3} に指数 22 と 22 で使うと ∫∣u∣4≤∥u∥ ∥u∥63\int|u|^4\le\|u\|\,\|u\|_6^3、よって ∥u∥4≤∥u∥1/4∥u∥63/4≤43/4∥u∥1/4∥∇u∥3/4\|u\|_4\le\|u\|^{1/4}\|u\|_6^{3/4}\le4^{3/4}\|u\|^{1/4}\|\nabla u\|^{3/4} です。同様に ∣u∣3=∣u∣3/2∣u∣3/2|u|^3=|u|^{3/2}|u|^{3/2} に指数 4/34/3 と 44 で使うと ∫∣u∣3≤∥u∥3/2∥u∥63/2\int|u|^3\le\|u\|^{3/2}\|u\|_6^{3/2} で、∥u∥3≤∥u∥1/2∥u∥61/2≤2∥u∥1/2∥∇u∥1/2\|u\|_3\le\|u\|^{1/2}\|u\|_6^{1/2}\le2\|u\|^{1/2}\|\nabla u\|^{1/2} です。

(iii) χ∈Cc∞(Rd)\chi\in C_c^\infty(\mathbb{R}^d) を、[0,1]d[0,1]^d 上で 11、台が (−1,2)d(-1,2)^d に含まれ、0≤χ≤10\le\chi\le1 となるように取ります。周期関数 uu について χu∈Cc∞(Rd)\chi u\in C_c^\infty(\mathbb{R}^d) で、(−1,2)d(-1,2)^d は周期の胞 3d3^d 個から成るので

∥u∥Lq(Td)≤∥χu∥Lq(Rd),∥χu∥L2(Rd)≤3d/2∥u∥,∥∇(χu)∥L2(Rd)≤3d/2(∥∇χ∥∞∥u∥+∥∇u∥)\|u\|_{L^q(\mathbb{T}^d)}\le\|\chi u\|_{L^q(\mathbb{R}^d)},\qquad\|\chi u\|_{L^2(\mathbb{R}^d)}\le3^{d/2}\|u\|,\qquad\|\nabla(\chi u)\|_{L^2(\mathbb{R}^d)}\le3^{d/2}\bigl(\|\nabla\chi\|_\infty\|u\|+\|\nabla u\|\bigr)

です。平均 00 なので Poincaré の不等式 ∥u∥≤(2π)−1∥∇u∥\|u\|\le(2\pi)^{-1}\|\nabla u\| により最後の量は C∥∇u∥C\|\nabla u\| 以下です。(i)(ii) を χu\chi u に使うと (iii) の各不等式が出ます。

(iv) u∈Vu\in V とし uN=PNuu_N=P_Nu とおきます。uNu_N は平均 00 の三角多項式で、∥uN−uM∥→0\|u_N-u_M\|\to0、∥∇(uN−uM)∥→0\|\nabla(u_N-u_M)\|\to0(N,M→∞N,M\to\infty)です。(iii) を uN−uMu_N-u_M に使うと (uN)(u_N) は T2\mathbb{T}^2 では L4L^4、T3\mathbb{T}^3 では L6L^6 の Cauchy 列で、極限は L2L^2 極限 uu に一致します。(iii) の各不等式は uNu_N で成り立ち、両辺が収束するので uu でも成り立ちます(L6L^6 収束は有限測度空間で L4L^4・L3L^3 収束を導きます。系 4.3[L^p 空間と関数解析への導入])。

2 次元と 3 次元で ∥∇u∥\|\nabla u\| の指数が 1/21/2 と 3/43/4 に分かれることが、後の節で決定的な差になります。

滑らかな解に発散なしの試験関数 φ\varphi を掛けて積分すると、圧力が消え、補題 3.2 により −b(u,u,φ)=b(u,φ,u)=∫uiuj∂iφj dx-b(u,u,\varphi)=b(u,\varphi,u)=\int u_iu_j\partial_i\varphi_j\,dx となって、uu の微分が現れない式が得られます。これを解の定義に採用します。

定義 5.1(Leray–Hopf の弱解)↗

d∈{2,3}d\in\{2,3\}、T>0T\gt0、u0∈Hu_0\in H、f∈L2(0,T;H−1)f\in L^2(0,T;H^{-1}) とする(記号は 定義 4.2)。u:[0,T]→Hu:[0,T]\to H が次を満たすとき、Td×[0,T]\mathbb{T}^d\times[0,T] 上の Leray–Hopf の弱解という。

(a) 各 Fourier 係数 t↦u^(k,t)t\mapsto\hat u(k,t) は連続で、sup⁡0≤t≤T∥u(t)∥<∞\sup_{0\le t\le T}\|u(t)\|\lt\infty、∫0T∥∇u(t)∥2dt<∞\int_0^T\|\nabla u(t)\|^2dt\lt\infty。

(b) 弱形式: すべての NN とすべての φ∈C1([0,T];VN)\varphi\in C^1([0,T];\mathcal{V}_N)、すべての t∈[0,T]t\in[0,T] について

⟨u(t),φ(t)⟩=⟨u0,φ(0)⟩+∫0t(⟨u,∂sφ⟩−ν⟨∇u,∇φ⟩+∫Tduiuj ∂iφj dx+⟨f,φ⟩)ds.\langle u(t),\varphi(t)\rangle=\langle u_0,\varphi(0)\rangle+\int_0^t\Bigl(\langle u,\partial_s\varphi\rangle-\nu\langle\nabla u,\nabla\varphi\rangle+\int_{\mathbb{T}^d}u_iu_j\,\partial_i\varphi_j\,dx+\langle f,\varphi\rangle\Bigr)ds .

(c) エネルギー不等式: すべての t∈[0,T]t\in[0,T] について

12∥u(t)∥2+ν∫0t∥∇u(s)∥2ds≤12∥u0∥2+∫0t⟨f(s),u(s)⟩ ds.\frac12\|u(t)\|^2+\nu\int_0^t\|\nabla u(s)\|^2ds\le\frac12\|u_0\|^2+\int_0^t\langle f(s),u(s)\rangle\,ds .

(b) で φ\varphi を時間によらない cek+cˉe−kce_k+\bar ce_{-k}(c⊥kc\perp k)に取ると、各係数 u^(k,t)\hat u(k,t) が満たす積分方程式になります。滑らかな解(平均 00)は (a)(b) を満たし、命題 3.3 により (c) を等号で満たします。弱解では (c) は不等号でしか分かりません。等号が成り立つかどうかは、3 次元では未解決です。

定理 5.2(Leray–Hopf の弱解の存在(トーラス))✓

d∈{2,3}d\in\{2,3\}、ν>0\nu\gt0、T>0T\gt0 とする。任意の u0∈Hu_0\in H と f∈L2(0,T;H−1)f\in L^2(0,T;H^{-1}) に対し、Td×[0,T]\mathbb{T}^d\times[0,T] 上の Leray–Hopf の弱解が存在し、すべての t∈[0,T]t\in[0,T] で

∥u(t)∥2+ν∫0t∥∇u∥2ds≤∥u0∥2+1ν∫0t∥f(s)∥−12ds\|u(t)\|^2+\nu\int_0^t\|\nabla u\|^2ds\le\|u_0\|^2+\frac1\nu\int_0^t\|f(s)\|_{-1}^2ds

を満たす。

証明は、有限個の Fourier モードに切断した常微分方程式(Galerkin 近似)を解き、エネルギー評価で一様な有界性を得て、部分列の極限を取る、という順に進みます。8 つの段の役割は、第 1 段が外力を扱いやすい形に近似、第 2 段が近似解の構成、第 3 段が一様な大きさの評価、第 4 段が部分列を取る準備、第 5 段が極限の大きさの評価、第 6 段が強収束、第 7 段が弱形式の確認、第 8 段がエネルギー不等式の確認です。非線形項の極限移行には L2L^2 での強収束が必要で、そこに ∥∇u∥\|\nabla u\| の評価を使います。

証明(定理 5.2)

第 1 段(外力の近似)。 各 kk について f^(k,⋅)∈L2(0,T)\hat f(k,\cdot)\in L^2(0,T) なので、連続関数で L2(0,T)L^2(0,T) の意味で近似できます(命題 7.2[L^p 空間と関数解析への導入])。PNfP_Nf は有限個の係数しか持たないので、係数が R\mathbb{R} 上連続で g^N(−k)=g^N(k)‾\hat g_N(-k)=\overline{\hat g_N(k)}、g^N(k)=0\hat g_N(k)=0(∣k∣>N|k|\gt N)を満たす gNg_N を ∫0T∥PNf−gN∥−12dt≤1/N2\int_0^T\|P_Nf-g_N\|_{-1}^2dt\le1/N^2 となるように取れます。∫0T∥f−PNf∥−12dt=∫0T∑∣k∣>N∣f^(k,t)∣2/(4π2∣k∣2) dt→0\int_0^T\|f-P_Nf\|_{-1}^2dt=\int_0^T\sum_{|k|\gt N}|\hat f(k,t)|^2/(4\pi^2|k|^2)\,dt\to0(優収束定理。定理 7.3[ルベーグ積分の定義と収束定理])なので、∥gN−f∥L2(0,T;H−1)→0\|g_N-f\|_{L^2(0,T;H^{-1})}\to0 です。必要なら有限個の NN を除いて ∥gN∥L2(0,T;H−1)≤∥f∥L2(0,T;H−1)+1\|g_N\|_{L^2(0,T;H^{-1})}\le\|f\|_{L^2(0,T;H^{-1})}+1 とします。

第 2 段(Galerkin 近似)。 uN(t)=∑0<∣k∣≤Nak(t)ek∈VNu_N(t)=\sum_{0\lt|k|\le N}a_k(t)e_k\in\mathcal{V}_N を、常微分方程式

ddtak=−4π2ν∣k∣2ak−Πk∑l+m=k2πi (al⋅m) am+Πkg^N(k,t),ak(0)=u^0(k)(0<∣k∣≤N)\frac{d}{dt}a_k=-4\pi^2\nu|k|^2a_k-\Pi_k\sum_{l+m=k}2\pi i\,(a_l\cdot m)\,a_m+\Pi_k\hat g_N(k,t),\qquad a_k(0)=\hat u_0(k)\quad(0\lt|k|\le N)

の解として定めます。右辺第 2 項は (uN⋅∇)uN(u_N\cdot\nabla)u_N の第 kk 係数に Πk\Pi_k を掛けたもので、方程式は ∂tuN=νΔuN−PNP[(uN⋅∇)uN]+PNPgN\partial_tu_N=\nu\Delta u_N-P_N\mathbb{P}[(u_N\cdot\nabla)u_N]+P_N\mathbb{P}g_N と同じです。未知数は有限次元の実ベクトル空間 {(ak):a−k=aˉk, k⋅ak=0}\{(a_k):a_{-k}=\bar a_k,\ k\cdot a_k=0\} を動き、右辺は tt について連続、aa について 2 次多項式なので局所 Lipschitz 連続です(命題 2.4[解の存在と一意性])。したがって最大解がただ 1 つ存在します(定理 4.1[解の存在と一意性]、系 4.2[解の存在と一意性])。

第 3 段(エネルギー評価)。 解が存在する区間で、PNPP_N\mathbb{P} が L2L^2 の直交射影で uNu_N がその像に入ることから

12ddt∥uN∥2=⟨∂tuN,uN⟩=−ν∥∇uN∥2−b(uN,uN,uN)+⟨gN,uN⟩=−ν∥∇uN∥2+⟨gN,uN⟩\frac12\frac{d}{dt}\|u_N\|^2=\langle\partial_tu_N,u_N\rangle=-\nu\|\nabla u_N\|^2-b(u_N,u_N,u_N)+\langle g_N,u_N\rangle=-\nu\|\nabla u_N\|^2+\langle g_N,u_N\rangle

です(補題 3.2)。∣⟨gN,uN⟩∣≤∥gN∥−1∥∇uN∥≤ν2∥∇uN∥2+12ν∥gN∥−12|\langle g_N,u_N\rangle|\le\|g_N\|_{-1}\|\nabla u_N\|\le\frac\nu2\|\nabla u_N\|^2+\frac1{2\nu}\|g_N\|_{-1}^2 なので、積分して

∥uN(t)∥2+ν∫0t∥∇uN∥2ds≤∥u0∥2+1ν∫0t∥gN∥−12ds≤M2,M2:=∥u0∥2+1ν(∥f∥L2(0,T;H−1)+1)2\|u_N(t)\|^2+\nu\int_0^t\|\nabla u_N\|^2ds\le\|u_0\|^2+\frac1\nu\int_0^t\|g_N\|_{-1}^2ds\le M^2,\qquad M^2:=\|u_0\|^2+\frac1\nu\bigl(\|f\|_{L^2(0,T;H^{-1})}+1\bigr)^2

を得ます。∑∣ak(t)∣2=∥uN(t)∥2≤M2\sum|a_k(t)|^2=\|u_N(t)\|^2\le M^2 なので解は有界集合にとどまり、最大解は [0,T][0,T] 全体で定義されます(定理 6.1[解の存在と一意性])。同じ計算から、等式

12∥uN(t)∥2+ν∫0t∥∇uN∥2ds=12∥PNu0∥2+∫0t⟨gN,uN⟩ ds\frac12\|u_N(t)\|^2+\nu\int_0^t\|\nabla u_N\|^2ds=\frac12\|P_Nu_0\|^2+\int_0^t\langle g_N,u_N\rangle\,ds

が成り立ちます。

第 4 段(各係数の同程度連続性)。 k≠0k\ne0 を固定し、N≥∣k∣N\ge|k| とします。(u⋅∇)uj=∂i(uiuj)(u\cdot\nabla)u_j=\partial_i(u_iu_j) の第 kk 係数は 2πi ki(uiuj)^(k)2\pi i\,k_i\widehat{(u_iu_j)}(k) で、∣(uiu)^(k) ki∣≤∫∣k⋅u∣ ∣u∣ dx≤∣k∣ ∥u∥2|\widehat{(u_iu)}(k)\,k_i|\le\int|k\cdot u|\,|u|\,dx\le|k|\,\|u\|^2 なので、非線形項の係数の大きさは 2π∣k∣M22\pi|k|M^2 以下です。また ∣g^N(k,t)∣≤2π∣k∣ ∥gN(t)∥−1|\hat g_N(k,t)|\le2\pi|k|\,\|g_N(t)\|_{-1} です。常微分方程式を ss から tt まで積分すると

∣akN(t)−akN(s)∣≤(4π2ν∣k∣2M+2π∣k∣M2)∣t−s∣+2π∣k∣(∥f∥L2(0,T;H−1)+1)∣t−s∣1/2\lvert a_k^N(t)-a_k^N(s)\rvert\le\bigl(4\pi^2\nu|k|^2M+2\pi|k|M^2\bigr)|t-s|+2\pi|k|\bigl(\|f\|_{L^2(0,T;H^{-1})}+1\bigr)|t-s|^{1/2}

となり、右辺は NN によりません。よって各 kk について (akN)N(a_k^N)_N は [0,T][0,T] 上で一様有界かつ同程度連続です。Arzelà–Ascoli の定理(系 3.4[Arzelà–Ascoli と Stone–Weierstrass])を kk を数え上げて順に使い、対角線論法で部分列を取ると、すべての kk について akN→aka_k^N\to a_k が [0,T][0,T] 上一様に成り立つようにできます。以下この部分列を取り、u(t)=∑kak(t)eku(t)=\sum_ka_k(t)e_k とおきます。a−k=aˉka_{-k}=\bar a_k、k⋅ak=0k\cdot a_k=0 は極限で保たれます。

第 5 段(極限の有界性)。 任意の KK について ∑∣k∣≤K∣ak(t)∣2=lim⁡N∑∣k∣≤K∣akN(t)∣2≤lim inf⁡N∥uN(t)∥2\sum_{|k|\le K}|a_k(t)|^2=\lim_N\sum_{|k|\le K}|a_k^N(t)|^2\le\liminf_N\|u_N(t)\|^2 なので、KK について上限を取って

∥u(t)∥2≤lim inf⁡N∥uN(t)∥2≤M2,∫0t∥∇u∥2ds≤lim inf⁡N∫0t∥∇uN∥2ds≤M2ν\|u(t)\|^2\le\liminf_N\|u_N(t)\|^2\le M^2,\qquad\int_0^t\|\nabla u\|^2ds\le\liminf_N\int_0^t\|\nabla u_N\|^2ds\le\frac{M^2}{\nu}

です(後者は有限和に Fatou の補題 補題 6.1[ルベーグ積分の定義と収束定理] を使い、KK について上限を取る)。とくに u(t)∈Hu(t)\in H で (a) が成り立ちます。

第 6 段(L2L^2 での強収束)。 任意の KK について

∫0T∥uN−u∥2dt=∫0T∑∣k∣≤K∣akN−ak∣2dt+∫0T∑∣k∣>K∣akN−ak∣2dt\int_0^T\|u_N-u\|^2dt=\int_0^T\sum_{|k|\le K}|a_k^N-a_k|^2dt+\int_0^T\sum_{|k|\gt K}|a_k^N-a_k|^2dt

です。第 2 項は、∣k∣>K|k|\gt K で 1≤∣k∣2/K21\le|k|^2/K^2 なので 14π2K2∫0T∥∇(uN−u)∥2dt≤14π2K2⋅4M2ν\frac{1}{4\pi^2K^2}\int_0^T\|\nabla(u_N-u)\|^2dt\le\frac{1}{4\pi^2K^2}\cdot\frac{4M^2}{\nu} 以下です。第 1 項は有限和で、係数の一様収束により N→∞N\to\infty で 00 に収束します。KK は任意なので ∫0T∥uN−u∥2dt→0\int_0^T\|u_N-u\|^2dt\to0 です。高い周波数の寄与を ∥∇u∥\|\nabla u\| の評価で抑えたことが、コンパクト性の中身です。

第 7 段(弱形式)。 φ∈C1([0,T];VK)\varphi\in C^1([0,T];\mathcal{V}_K) とし N≥KN\ge K とします。PNPφ=φP_N\mathbb{P}\varphi=\varphi なので、第 2 段の方程式から

ddt⟨uN,φ⟩=⟨uN,∂tφ⟩−ν⟨∇uN,∇φ⟩+∫uiNujN∂iφj dx+⟨gN,φ⟩\frac{d}{dt}\langle u_N,\varphi\rangle=\langle u_N,\partial_t\varphi\rangle-\nu\langle\nabla u_N,\nabla\varphi\rangle+\int u^N_iu^N_j\partial_i\varphi_j\,dx+\langle g_N,\varphi\rangle

で、これを 00 から tt まで積分したものが uNu_N の弱形式です。N→∞N\to\infty とします。φ\varphi は ∣k∣≤K|k|\le K の係数しか持たないので、⟨uN(t),φ(t)⟩\langle u_N(t),\varphi(t)\rangle、⟨uN,∂sφ⟩\langle u_N,\partial_s\varphi\rangle、⟨∇uN,∇φ⟩\langle\nabla u_N,\nabla\varphi\rangle は有限個の係数 akNa_k^N の 1 次式で、一様収束により対応する uu の式に収束します。外力の項は ∣∫0t⟨gN−f,φ⟩ds∣≤∥gN−f∥L2(0,T;H−1)(∫0T∥∇φ∥2)1/2→0\bigl|\int_0^t\langle g_N-f,\varphi\rangle ds\bigr|\le\|g_N-f\|_{L^2(0,T;H^{-1})}\bigl(\int_0^T\|\nabla\varphi\|^2\bigr)^{1/2}\to0 です。非線形項は、uiNujN−uiuj=(uiN−ui)ujN+ui(ujN−uj)u^N_iu^N_j-u_iu_j=(u^N_i-u_i)u^N_j+u_i(u^N_j-u_j) と Cauchy–Schwarz の不等式により

∣∫0t ⁣ ⁣∫(uiNujN−uiuj)∂iφj dx ds∣≤sup⁡∣∇φ∣∫0T∥uN−u∥(∥uN∥+∥u∥)ds≤2MTsup⁡∣∇φ∣(∫0T∥uN−u∥2)1/2→0\Bigl|\int_0^t\!\!\int(u^N_iu^N_j-u_iu_j)\partial_i\varphi_j\,dx\,ds\Bigr|\le\sup|\nabla\varphi|\int_0^T\|u_N-u\|\bigl(\|u_N\|+\|u\|\bigr)ds\le2M\sqrt T\sup|\nabla\varphi|\Bigl(\int_0^T\|u_N-u\|^2\Bigr)^{1/2}\to0

です(第 6 段)。PNu0→u0P_Nu_0\to u_0 と合わせて (b) が得られます。

第 8 段(エネルギー不等式)。 tt を固定します。第 3 段の等式の左辺について、第 5 段から 12∥u(t)∥2+ν∫0t∥∇u∥2≤lim inf⁡N(12∥uN(t)∥2+ν∫0t∥∇uN∥2)\frac12\|u(t)\|^2+\nu\int_0^t\|\nabla u\|^2\le\liminf_N\bigl(\frac12\|u_N(t)\|^2+\nu\int_0^t\|\nabla u_N\|^2\bigr) です。右辺について、∥PNu0∥→∥u0∥\|P_Nu_0\|\to\|u_0\| で、

∫0t⟨gN,uN⟩−∫0t⟨f,u⟩=∫0t⟨gN−f,uN⟩+∫0t⟨f−PKf,uN−u⟩+∫0t⟨PKf,uN−u⟩\int_0^t\langle g_N,u_N\rangle-\int_0^t\langle f,u\rangle=\int_0^t\langle g_N-f,u_N\rangle+\int_0^t\langle f-P_Kf,u_N-u\rangle+\int_0^t\langle P_Kf,u_N-u\rangle

と分けます。第 1 項は ∥gN−f∥L2(0,T;H−1)M/ν→0\|g_N-f\|_{L^2(0,T;H^{-1})}M/\sqrt\nu\to0、第 2 項は ∥f−PKf∥L2(0,T;H−1)⋅2M/ν\|f-P_Kf\|_{L^2(0,T;H^{-1})}\cdot2M/\sqrt\nu 以下で KK を大きくすれば NN によらず小さく、第 3 項は有限和 ∫0t∑∣k∣≤Kf^(k,s)⋅(akN−ak)‾ ds\int_0^t\sum_{|k|\le K}\hat f(k,s)\cdot\overline{(a_k^N-a_k)}\,ds で、係数の一様収束と f^(k,⋅)∈L1(0,T)\hat f(k,\cdot)\in L^1(0,T) により N→∞N\to\infty で 00 に収束します。よって (c) が成り立ちます。定理の評価式は、第 3 段の最初の不等式 ∥uN(t)∥2+ν∫0t∥∇uN∥2≤∥u0∥2+1ν∫0t∥gN∥−12\|u_N(t)\|^2+\nu\int_0^t\|\nabla u_N\|^2\le\|u_0\|^2+\frac1\nu\int_0^t\|g_N\|_{-1}^2 で、左辺に第 5 段を、右辺に ∫0t∥gN∥−12→∫0t∥f∥−12\int_0^t\|g_N\|_{-1}^2\to\int_0^t\|f\|_{-1}^2 を使えば得られます。

注意 5.3(証明に使ったコンパクト性)

通常の教科書では第 6 段を Aubin–Lions の補題で行います。ここではトーラス上の Fourier 係数が可算個であることを使い、係数ごとの Arzelà–Ascoli と高周波の裾の評価に分けました。∥∇uN∥\|\nabla u_N\| の一様評価が無ければ裾を抑えられず、uiNujNu^N_iu^N_j の極限が uiuju_iu_j である保証はなくなります。Euler 方程式(ν=0\nu=0)で同じ方法が使えないのはこのためです。

定理 5.4(Leray の存在定理(全空間))※

ν>0\nu\gt0 とする。u0∈L2(R3)u_0\in L^2(\mathbb{R}^3) が超関数の意味で発散なしならば、R3×[0,∞)\mathbb{R}^3\times[0,\infty) 上に、u∈L∞(0,∞;L2)u\in L^\infty(0,\infty;L^2)、∇u∈L2(0,∞;L2)\nabla u\in L^2(0,\infty;L^2) で、Navier–Stokes 方程式(f=0f=0)を超関数の意味で満たし、エネルギー不等式 12∥u(t)∥2+ν∫0t∥∇u∥2ds≤12∥u0∥2\frac12\|u(t)\|^2+\nu\int_0^t\|\nabla u\|^2ds\le\frac12\|u_0\|^2 をすべての t≥0t\ge0 で満たす弱解が存在する。

注意 5.5(主張のみとする理由)

定理 5.4 は主張のみです。出典は Leray の 1934 年の論文(参考文献 [2])で、教科書の証明は参考文献 [5] にあります。証明の構造は 定理 5.2 と同じですが、全空間では Fourier 変数が連続で、強収束は有界集合の上でしか得られないため、空間の遠方の寄与を別に抑える議論(局所的なコンパクト性と切り落とし)が加わります。新しい考えは要らず分量だけが増えるので、この記事ではトーラスの場合に証明を限りました。

6. 2 次元:弱解の一意性と大域的な評価

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2 次元では 補題 4.3 の ∥u∥42≤C∥u∥ ∥∇u∥\|u\|_4^2\le C\|u\|\,\|\nabla u\| により、エネルギーの評価だけで u∈L4u\in L^4(時空)が出ます。これで非線形項が「自分自身と組める」ようになり、3 次元では閉じない議論が閉じます。

補題 6.1(積分で与えられた関数の 2 乗)✓

h∈L1(0,T;Cm)h\in L^1(0,T;\mathbb{C}^m)、y(t)=y0+∫0th(s) dsy(t)=y_0+\int_0^th(s)\,ds とする。このとき ∣y(t)∣2=∣y0∣2+2Re⁡∫0ty(s)‾⋅h(s) ds|y(t)|^2=|y_0|^2+2\operatorname{Re}\int_0^t\overline{y(s)}\cdot h(s)\,ds。

証明(補題 6.1)

∫0ty(s)‾⋅h(s)ds=yˉ0⋅∫0th+∫0t ⁣∫0sh(r)‾⋅h(s) dr ds\int_0^t\overline{y(s)}\cdot h(s)ds=\bar y_0\cdot\int_0^th+\int_0^t\!\int_0^s\overline{h(r)}\cdot h(s)\,dr\,ds です。被積分関数は [0,t]2[0,t]^2 上で可積分なので Fubini の定理(定理 3.4[直積測度と Fubini–Tonelli の定理])が使え、rr と ss を入れ替えた積分は元の積分の複素共役です。[0,t]2[0,t]^2 は {r<s}\{r\lt s\} と {s<r}\{s\lt r\} に(測度 00 を除いて)分かれるので 2Re⁡∫0t ⁣∫0sh(r)‾⋅h(s) dr ds=∣∫0th∣22\operatorname{Re}\int_0^t\!\int_0^s\overline{h(r)}\cdot h(s)\,dr\,ds=\bigl|\int_0^th\bigr|^2 です。よって右辺は ∣y0∣2+2Re⁡(yˉ0⋅∫0th)+∣∫0th∣2=∣y(t)∣2|y_0|^2+2\operatorname{Re}(\bar y_0\cdot\int_0^th)+|\int_0^th|^2=|y(t)|^2 です。

定理 6.2(2 次元の一意性と大域的な先験評価(Ladyzhenskaya))✓

d=2d=2、ν>0\nu\gt0 とする。

(i) 一意性。 u0∈Hu_0\in H、f∈L2(0,T;H−1)f\in L^2(0,T;H^{-1}) に対する T2×[0,T]\mathbb{T}^2\times[0,T] 上の Leray–Hopf の弱解はただ 1 つである。

(ii) 先験評価。 (u,p)(u,p) を T2×[0,T]\mathbb{T}^2\times[0,T] 上の滑らかな解、ff を滑らかな周期的外力とし、u0u_0 と f(t)f(t) の平均は 00 とする。渦度 ω=∂1u2−∂2u1\omega=\partial_1u_2-\partial_2u_1 と g=∂1f2−∂2f1g=\partial_1f_2-\partial_2f_1 について、すべての 0≤t≤T0\le t\le T で

∥∇u(t)∥=∥ω(t)∥≤∥ω0∥+∫0t∥g(s)∥ ds.\|\nabla u(t)\|=\|\omega(t)\|\le\|\omega_0\|+\int_0^t\|g(s)\|\,ds .

とくに f=0f=0 なら ∥∇u(t)∥≤∥∇u0∥\|\nabla u(t)\|\le\|\nabla u_0\| で、評価は TT によらない。

証明(定理 6.2)

(i) u,vu,v を同じデータの弱解とし、w=u−vw=u-v、Gij=uiuj−vivjG_{ij}=u_iu_j-v_iv_j とおきます。sup⁡t∥u∥,sup⁡t∥v∥≤M\sup_t\|u\|,\sup_t\|v\|\le M、∫0T∥∇u∥2,∫0T∥∇v∥2≤M2/ν\int_0^T\|\nabla u\|^2,\int_0^T\|\nabla v\|^2\le M^2/\nu となる MM を取ります。補題 4.3 (iv) により ∫0T∥u∥44dt≤C2∫0T∥u∥2∥∇u∥2dt≤C2M4/ν\int_0^T\|u\|_4^4dt\le C^2\int_0^T\|u\|^2\|\nabla u\|^2dt\le C^2M^4/\nu で、vv も同様です。よって G∈L2(T2×(0,T))G\in L^2(\mathbb{T}^2\times(0,T)) です。

弱形式 (b) の差を、時間によらない φ∈VK\varphi\in\mathcal{V}_K について取ると

⟨w(t),φ⟩=∫0t(−ν⟨∇w,∇φ⟩+∫Gij∂iφj dx)ds\langle w(t),\varphi\rangle=\int_0^t\Bigl(-\nu\langle\nabla w,\nabla\varphi\rangle+\int G_{ij}\partial_i\varphi_j\,dx\Bigr)ds

です。φ=cek+cˉe−k\varphi=ce_k+\bar ce_{-k}(c⊥kc\perp k)と取ると、w^(k,t)=∫0thk(s)ds\hat w(k,t)=\int_0^th_k(s)ds、hk=−4π2ν∣k∣2w^(k)−Πk 2πikiG^i⋅(k)h_k=-4\pi^2\nu|k|^2\hat w(k)-\Pi_k\,2\pi ik_i\hat G_{i\cdot}(k) の形で、hk∈L2(0,T)h_k\in L^2(0,T) です。補題 6.1 を各 kk に使って ∣k∣≤K|k|\le K で和を取ると、wK=PKww_K=P_Kw について

12∥wK(t)∥2+ν∫0t∥∇wK∥2ds=∫0t ⁣ ⁣∫Gij ∂i(wK)j dx ds\frac12\|w_K(t)\|^2+\nu\int_0^t\|\nabla w_K\|^2ds=\int_0^t\!\!\int G_{ij}\,\partial_i(w_K)_j\,dx\,ds

となります(右辺は Parseval の等式 補題 4.1 で係数の和を積分に戻したもの)。K→∞K\to\infty とすると、∇wK→∇w\nabla w_K\to\nabla w が L2(T2×(0,T))L^2(\mathbb{T}^2\times(0,T)) で成り立ち、G∈L2G\in L^2 なので

12∥w(t)∥2+ν∫0t∥∇w∥2ds=∫0t ⁣ ⁣∫Gij ∂iwj dx ds,Gij=wiuj+viwj\frac12\|w(t)\|^2+\nu\int_0^t\|\nabla w\|^2ds=\int_0^t\!\!\int G_{ij}\,\partial_iw_j\,dx\,ds,\qquad G_{ij}=w_iu_j+v_iw_j

です。

∫viwj∂iwj dx=0\int v_iw_j\partial_iw_j\,dx=0 を示します。三角多項式 wKw_K については viwjK∂iwjK=12v⋅∇∣wK∣2v_iw^K_j\partial_iw^K_j=\frac12v\cdot\nabla|w_K|^2 で、v(s)∈Hv(s)\in H は滑らかな関数の勾配と直交する(定義 4.2 の後の注意)ので積分は 00 です。ほとんどすべての ss で v(s),w(s)∈Vv(s),w(s)\in V であり、wK→ww_K\to w は L4L^4 で、∇wK→∇w\nabla w_K\to\nabla w は L2L^2 で収束し(補題 4.3 (iv))、v∈L4v\in L^4 なので、Hölder の不等式により K→∞K\to\infty で ∫viwj∂iwj dx=0\int v_iw_j\partial_iw_j\,dx=0 です。

残りの項は、Hölder の不等式と 補題 4.3 により

∣∫wiuj∂iwj dx∣≤∥w∥4∥u∥4∥∇w∥≤C1/2∥u∥4∥w∥1/2∥∇w∥3/2≤ν∥∇w∥2+C′ν3∥u∥44∥w∥2\Bigl|\int w_iu_j\partial_iw_j\,dx\Bigr|\le\|w\|_4\|u\|_4\|\nabla w\|\le C^{1/2}\|u\|_4\|w\|^{1/2}\|\nabla w\|^{3/2}\le\nu\|\nabla w\|^2+\frac{C'}{\nu^3}\|u\|_4^4\|w\|^2

です(最後は Young の不等式 ab≤34(εa)4/3+14(b/ε)4ab\le\frac34(\varepsilon a)^{4/3}+\frac14(b/\varepsilon)^4 を a=∥∇w∥3/2a=\|\nabla w\|^{3/2} に使う。補題 4.1[L^p 空間と関数解析への導入])。したがって ∥w(t)∥2≤∫0tβ(s)∥w(s)∥2ds\|w(t)\|^2\le\int_0^t\beta(s)\|w(s)\|^2ds、β=2C′ν−3∥u∥44∈L1(0,T)\beta=2C'\nu^{-3}\|u\|_4^4\in L^1(0,T) です。t↦∫0tβt\mapsto\int_0^t\beta は連続なので、[0,T][0,T] を有限個の区間 [tj,tj+1][t_j,t_{j+1}] に分けて各区間で ∫tjtj+1β≤12\int_{t_j}^{t_{j+1}}\beta\le\frac12 とできます。[0,tj][0,t_j] で w=0w=0 と分かっているとし、mj=sup⁡tj≤t≤tj+1∥w(t)∥2<∞m_j=\sup_{t_j\le t\le t_{j+1}}\|w(t)\|^2\lt\infty とおくと、t∈[tj,tj+1]t\in[t_j,t_{j+1}] で ∥w(t)∥2≤∫tjtβ∥w∥2ds≤12mj\|w(t)\|^2\le\int_{t_j}^t\beta\|w\|^2ds\le\frac12m_j なので mj≤12mjm_j\le\frac12m_j、すなわち mj=0m_j=0 です。jj についての帰納法で [0,T][0,T] 全体で w=0w=0 です。

(ii) 方程式の第 2 成分を x1x_1 で、第 1 成分を x2x_2 で微分して引くと、圧力が消えて

∂tω+u⋅∇ω=νΔω+g\partial_t\omega+u\cdot\nabla\omega=\nu\Delta\omega+g

です。実際 ∂1(ui∂iu2)−∂2(ui∂iu1)=ui∂iω+(∂1ui∂iu2−∂2ui∂iu1)\partial_1(u_i\partial_iu_2)-\partial_2(u_i\partial_iu_1)=u_i\partial_i\omega+(\partial_1u_i\partial_iu_2-\partial_2u_i\partial_iu_1) で、括弧の中は ∂1u1∂1u2+∂1u2∂2u2−∂2u1∂1u1−∂2u2∂2u1=(∂1u1+∂2u2)(∂1u2−∂2u1)=0\partial_1u_1\partial_1u_2+\partial_1u_2\partial_2u_2-\partial_2u_1\partial_1u_1-\partial_2u_2\partial_2u_1=(\partial_1u_1+\partial_2u_2)(\partial_1u_2-\partial_2u_1)=0 です。3 次元の渦度方程式にある伸張項 (ω⋅∇)u(\omega\cdot\nabla)u が、2 次元では現れません。ω\omega を掛けて積分すると、∫(u⋅∇ω)ω=12∫u⋅∇ω2=0\int(u\cdot\nabla\omega)\omega=\frac12\int u\cdot\nabla\omega^2=0 なので

12ddt∥ω∥2+ν∥∇ω∥2=⟨g,ω⟩≤∥g∥ ∥ω∥.\frac12\frac{d}{dt}\|\omega\|^2+\nu\|\nabla\omega\|^2=\langle g,\omega\rangle\le\|g\|\,\|\omega\| .

δ>0\delta\gt0 に対し ddt(∥ω∥2+δ)1/2=ddt∥ω∥22(∥ω∥2+δ)1/2≤∥g∥\frac{d}{dt}(\|\omega\|^2+\delta)^{1/2}=\frac{\frac{d}{dt}\|\omega\|^2}{2(\|\omega\|^2+\delta)^{1/2}}\le\|g\| なので、積分して δ→0\delta\to0 とすると ∥ω(t)∥≤∥ω0∥+∫0t∥g∥\|\omega(t)\|\le\|\omega_0\|+\int_0^t\|g\| です。最後に、k⋅u^(k)=0k\cdot\hat u(k)=0 のとき ω^(k)=2πi(k1u^2−k2u^1)\hat\omega(k)=2\pi i(k_1\hat u_2-k_2\hat u_1) で、∣k1u^2−k2u^1∣2+∣k⋅u^∣2=∣k∣2∣u^∣2|k_1\hat u_2-k_2\hat u_1|^2+|k\cdot\hat u|^2=|k|^2|\hat u|^2(Lagrange の恒等式)なので ∥ω∥2=4π2∑∣k∣2∣u^(k)∣2=∥∇u∥2\|\omega\|^2=4\pi^2\sum|k|^2|\hat u(k)|^2=\|\nabla u\|^2 です。

(ii) の評価が時間によらず成り立つことから、滑らかな解は壊れることなく延長でき、2 次元では (A)(B) に当たる主張が成り立ちます(延長の仕組みは 定理 7.3 の 2 次元版です)。

3 次元で同じことを試みます。この節では Ω=T3\Omega=\mathbb{T}^3(u0u_0 と f(t)f(t) の平均は 00)または Ω=R3\Omega=\mathbb{R}^3(定義 3.1 の減衰する解)とします。

命題 7.1(‖∇u‖² の微分不等式)✓

Ω\Omega だけで決まる定数 C0C_0 があって、Ω×[0,T)\Omega\times[0,T) 上の滑らかな解 (u,p)(u,p)(外力 ff は連続で f(t)∈L2f(t)\in L^2)について、y(t)=∥∇u(t)∥2y(t)=\|\nabla u(t)\|^2 は

dydt+ν∥Δu∥2≤C0ν3 y3+2ν∥f∥2\frac{dy}{dt}+\nu\|\Delta u\|^2\le\frac{C_0}{\nu^3}\,y^3+\frac2\nu\|f\|^2

を満たす。

証明(命題 7.1)

方程式と −Δu-\Delta u の内積を取ります。部分積分により ⟨∂tu,−Δu⟩=12ddt∥∇u∥2\langle\partial_tu,-\Delta u\rangle=\frac12\frac{d}{dt}\|\nabla u\|^2、⟨νΔu,−Δu⟩=−ν∥Δu∥2\langle\nu\Delta u,-\Delta u\rangle=-\nu\|\Delta u\|^2 です。圧力項は ∂j(p Δuj)=∂jp Δuj+p Δ(div⁡u)=∂jp Δuj\partial_j(p\,\Delta u_j)=\partial_jp\,\Delta u_j+p\,\Delta(\operatorname{div}u)=\partial_jp\,\Delta u_j を積分して ⟨∇p,Δu⟩=0\langle\nabla p,\Delta u\rangle=0 です(境界項の扱いは 命題 3.3 と同じ)。よって

12dydt+ν∥Δu∥2=⟨(u⋅∇)u,Δu⟩−⟨f,Δu⟩.\frac12\frac{dy}{dt}+\nu\|\Delta u\|^2=\langle(u\cdot\nabla)u,\Delta u\rangle-\langle f,\Delta u\rangle .

右辺第 1 項を評価します。Hölder の不等式(指数 6,3,26,3,2。定理 4.2[L^p 空間と関数解析への導入])により ∣⟨(u⋅∇)u,Δu⟩∣≤∥u∥6∥∇u∥3∥Δu∥|\langle(u\cdot\nabla)u,\Delta u\rangle|\le\|u\|_6\|\nabla u\|_3\|\Delta u\| です。補題 4.3 を uu に使って ∥u∥6≤C∥∇u∥\|u\|_6\le C\|\nabla u\|、各 ∂iuj\partial_iu_j(トーラスでは平均 00)に使って ∥∇u∥3≤C∥∇u∥1/2∥D2u∥1/2\|\nabla u\|_3\le C\|\nabla u\|^{1/2}\|D^2u\|^{1/2} です。2 回の部分積分で ∫∂i∂juk ∂i∂juk=∫∂i∂iuk ∂j∂juk\int\partial_i\partial_ju_k\,\partial_i\partial_ju_k=\int\partial_i\partial_iu_k\,\partial_j\partial_ju_k、すなわち ∥D2u∥=∥Δu∥\|D^2u\|=\|\Delta u\| なので

∣⟨(u⋅∇)u,Δu⟩∣≤C2 y3/4 ∥Δu∥3/2≤ν4∥Δu∥2+C1ν3y3\lvert\langle(u\cdot\nabla)u,\Delta u\rangle\rvert\le C^2\,y^{3/4}\,\|\Delta u\|^{3/2}\le\frac\nu4\|\Delta u\|^2+\frac{C_1}{\nu^3}y^3

です。最後は Young の不等式 ab≤34(εa)4/3+14(b/ε)4ab\le\frac34(\varepsilon a)^{4/3}+\frac14(b/\varepsilon)^4 を a=∥Δu∥3/2a=\|\Delta u\|^{3/2}、b=C2y3/4b=C^2y^{3/4}、34ε4/3=ν4\frac34\varepsilon^{4/3}=\frac\nu4 で使いました(ε−4=27ν−3\varepsilon^{-4}=27\nu^{-3})。第 2 項は ∣⟨f,Δu⟩∣≤ν4∥Δu∥2+1ν∥f∥2|\langle f,\Delta u\rangle|\le\frac\nu4\|\Delta u\|^2+\frac1\nu\|f\|^2 です。合わせて 12y′+ν2∥Δu∥2≤C1ν−3y3+ν−1∥f∥2\frac12y'+\frac\nu2\|\Delta u\|^2\le C_1\nu^{-3}y^3+\nu^{-1}\|f\|^2 となり、2 倍して C0=2C1C_0=2C_1 とおけば主張です。

2 次元では同じ計算で ∥u∥4∥∇u∥4∥Δu∥≤C∥u∥1/2∥∇u∥ ∥Δu∥3/2\|u\|_4\|\nabla u\|_4\|\Delta u\|\le C\|u\|^{1/2}\|\nabla u\|\,\|\Delta u\|^{3/2} となり、右辺は y2∥u∥2y^2\|u\|^2 の形、すなわち yy について線形(係数 y∥u∥2y\|u\|^2 が時間について可積分)になって大域的に閉じます。3 次元の y3y^3 は有限時間で発散しうる常微分不等式で、そこから先に進めません。

系 7.2(存在時間の下界と小さい初期値)✓

命題 7.1 の状況で f=0f=0、u0≠0u_0\ne0 とする。

(i) 解が存在する限り、0≤t<T1:=ν32C0∥∇u0∥40\le t\lt T_1:=\dfrac{\nu^3}{2C_0\|\nabla u_0\|^4} で

∥∇u(t)∥2≤∥∇u0∥2(1−2C0ν−3∥∇u0∥4 t)1/2.\|\nabla u(t)\|^2\le\frac{\|\nabla u_0\|^2}{\bigl(1-2C_0\nu^{-3}\|\nabla u_0\|^4\,t\bigr)^{1/2}} .

(ii) ∥u0∥2∥∇u0∥2<ν4/C0\|u_0\|^2\|\nabla u_0\|^2\lt\nu^4/C_0 ならば、解が存在する限り ∥∇u(t)∥≤∥∇u0∥\|\nabla u(t)\|\le\|\nabla u_0\| である。

証明(系 7.2)

(i) δ>0\delta\gt0 とし Y=y+δY=y+\delta とおくと Y′=y′≤C0ν−3y3≤C0ν−3Y3Y'=y'\le C_0\nu^{-3}y^3\le C_0\nu^{-3}Y^3、Y>0Y\gt0 なので (Y−2)′=−2Y′Y−3≥−2C0ν−3(Y^{-2})'=-2Y'Y^{-3}\ge-2C_0\nu^{-3} です。積分して Y(t)−2≥Y(0)−2−2C0ν−3tY(t)^{-2}\ge Y(0)^{-2}-2C_0\nu^{-3}t、右辺が正である間 Y(t)≤(Y(0)−2−2C0ν−3t)−1/2Y(t)\le(Y(0)^{-2}-2C_0\nu^{-3}t)^{-1/2} です。δ→0\delta\to0 として、y(0)−2−2C0ν−3t>0y(0)^{-2}-2C_0\nu^{-3}t\gt0 すなわち t<T1t\lt T_1 で主張の式を得ます。

(ii) Cauchy–Schwarz の不等式により y=∥∇u∥2=−⟨u,Δu⟩≤∥u∥ ∥Δu∥y=\|\nabla u\|^2=-\langle u,\Delta u\rangle\le\|u\|\,\|\Delta u\| で、命題 3.3 から ∥u(t)∥≤∥u0∥\|u(t)\|\le\|u_0\| なので ∥Δu∥2≥y2/∥u0∥2\|\Delta u\|^2\ge y^2/\|u_0\|^2 です。よって

y′≤y2(C0ν3 y−ν∥u0∥2).y'\le y^2\Bigl(\frac{C_0}{\nu^3}\,y-\frac{\nu}{\|u_0\|^2}\Bigr).

y∗=ν4/(C0∥u0∥2)y_*=\nu^4/(C_0\|u_0\|^2) とおくと仮定は y(0)<y∗y(0)\lt y_* で、y<y∗y\lt y_* である間は y′≤0y'\le0 です。y(t)>y(0)y(t)\gt y(0) となる時刻があったとし、そのような時刻の下限を t1t_1 とします。連続性から y(t1)=y(0)<y∗y(t_1)=y(0)\lt y_* で、t1t_1 の右側の小さい区間で y<y∗y\lt y_*、したがって y′≤0y'\le0、y≤y(t1)=y(0)y\le y(t_1)=y(0) となり、t1t_1 の取り方に反します。

(ii) の条件 ∥u0∥ ∥∇u0∥<ν2/C0\|u_0\|\,\|\nabla u_0\|\lt\nu^2/\sqrt{C_0} の左辺は、命題 3.5 により λ−1/2λ1/2=1\lambda^{-1/2}\lambda^{1/2}=1 倍、すなわちスケール不変です。「小さい初期値」の条件は必ず臨界な量で書かれます。

定理 7.3(滑らかな解の局所存在と延長の判定)※

Ω=R3\Omega=\mathbb{R}^3 または T3\mathbb{T}^3、ν>0\nu\gt0 とする。u0u_0 を滑らかな発散なしベクトル場、ff を滑らかな外力とし、R3\mathbb{R}^3 では (4)(5)、T3\mathbb{T}^3 では (8)(9) を満たすとする(定義 2.2)。

(i) T>0T\gt0 と Ω×[0,T)\Omega\times[0,T) 上の滑らかな解 (u,p)(u,p) が存在し、R3\mathbb{R}^3 ではすべての mm について u∈C([0,T′);Hm)u\in C([0,T');H^m)(T′<TT'\lt T)である。この性質をもつ滑らかな解は一意である。f=0f=0 のとき、T≥c ν3/∥∇u0∥4T\ge c\,\nu^3/\|\nabla u_0\|^4(cc は絶対定数)と取れる。

(ii) (i) の解が存在する最大の TT を T∗T^* とする。T∗<∞T^*\lt\infty ならば lim sup⁡t↑T∗∥∇u(t)∥=∞\limsup_{t\uparrow T^*}\|\nabla u(t)\|=\infty である。

注意 7.4(主張のみとする理由)

定理 7.3 は主張のみです。出典は Leray の論文(参考文献 [2])で、教科書の証明は参考文献 [5] にあります。存在時間を決める先験評価は 命題 7.1 と 系 7.2 で証明しました。主張として残したのは、(a) この評価を保つ近似解(Galerkin 近似など)の極限として解を構成すること、(b) ∥∇u∥\|\nabla u\| が有界な区間で高階の導関数を順に評価して滑らかさを得ること(bootstrap)、(c) 全空間での圧力と減衰の扱い、の 3 点です。

定理 7.5(小さい臨界ノルムの初期値に対する大域解)※

ν>0\nu\gt0、f=0f=0 とする。絶対定数 ε>0\varepsilon\gt0 があって、発散なしの u0∈H˙1/2(R3)u_0\in\dot H^{1/2}(\mathbb{R}^3) が ∥u0∥H˙1/2≤εν\|u_0\|_{\dot H^{1/2}}\le\varepsilon\nu を満たせば、u∈C([0,∞);H˙1/2)∩L2(0,∞;H˙3/2)u\in C([0,\infty);\dot H^{1/2})\cap L^2(0,\infty;\dot H^{3/2}) となる解が大域的にただ 1 つ存在し、t>0t\gt0 で滑らかである(Fujita–Kato)。同じ型の結果が、∥u0∥L3≤εν\|u_0\|_{L^3}\le\varepsilon\nu(Kato)、∥u0∥BMO−1≤εν\|u_0\|_{BMO^{-1}}\le\varepsilon\nu(Koch–Tataru)についても成り立つ。

注意 7.6(主張のみとする理由)

定理 7.5 は主張のみです。出典は参考文献 [6] と、T. Kato, Math. Z. 187 (1984)、H. Koch・D. Tataru, Adv. Math. 157 (2001) です。これらは熱半群(定義 4.1[熱方程式])を使って方程式を積分方程式 u(t)=eνtΔu0−∫0teν(t−s)ΔPdiv⁡(u⊗u)(s) dsu(t)=e^{\nu t\Delta}u_0-\int_0^te^{\nu(t-s)\Delta}\mathbb{P}\operatorname{div}(u\otimes u)(s)\,ds に書き直し、臨界な空間で縮小写像の原理を使う方法(mild 解)によります。系 7.2 (ii) はその最も素朴な形です。3 つの空間は H˙1/2⊂L3⊂BMO−1\dot H^{1/2}\subset L^3\subset BMO^{-1} の順に広く、どれも 命題 3.5 の意味で臨界です。この方法が大きい初期値に届かないことが、問題の中心です。

弱解の一意性は 3 次元では分かっていません。しかし、同じデータの滑らかな解が存在する区間では、弱解はそれに一致します。弱解の側に要るのはエネルギー不等式だけです。

補題 8.1(試験関数の拡張)✓

uu を Td×[0,T]\mathbb{T}^d\times[0,T] 上の Leray–Hopf の弱解とする。弱形式 (b) は、Td×[0,T]\mathbb{T}^d\times[0,T] 上の滑らかで、各時刻で発散なし・平均 00 の任意の φ\varphi についても成り立つ。

証明(補題 8.1)

φK=PKφ∈C1([0,T];VK)\varphi_K=P_K\varphi\in C^1([0,T];\mathcal{V}_K) について (b) が成り立ちます。m=3m=3 として Δm\Delta^m を部分積分で e−ke_{-k} に移すと (4π2∣k∣2)m∣φ^(k,t)∣≤sup⁡∣Δmφ∣(4\pi^2|k|^2)^m|\hat\varphi(k,t)|\le\sup|\Delta^m\varphi| で、∂tφ\partial_t\varphi についても同じなので、∣φ^(k,t)∣+∣∂tφ^(k,t)∣≤C∣k∣−6|\hat\varphi(k,t)|+|\partial_t\hat\varphi(k,t)|\le C|k|^{-6} です。d≤3d\le3 で ∑k≠0∣k∣⋅∣k∣−6<∞\sum_{k\ne0}|k|\cdot|k|^{-6}\lt\infty なので、K→∞K\to\infty のとき sup⁡∣φ−φK∣\sup|\varphi-\varphi_K|、sup⁡∣∇(φ−φK)∣\sup|\nabla(\varphi-\varphi_K)|、sup⁡∣∂t(φ−φK)∣\sup|\partial_t(\varphi-\varphi_K)| はすべて 00 に収束します。(b) の各項は、sup⁡t∥u∥<∞\sup_t\|u\|\lt\infty、∫0T∥∇u∥2<∞\int_0^T\|\nabla u\|^2\lt\infty、∣⟨f,φ−φK⟩∣≤∥f∥−1∥∇(φ−φK)∥|\langle f,\varphi-\varphi_K\rangle|\le\|f\|_{-1}\|\nabla(\varphi-\varphi_K)\| によりこれらの量で抑えられるので、極限でも (b) が成り立ちます。

定理 8.2(弱強一意性)✓

ν>0\nu\gt0、T>0T\gt0 とする。

(i) トーラス、弱解と滑らかな解。 d∈{2,3}d\in\{2,3\} とし、(u,p)(u,p) を Td×[0,T]\mathbb{T}^d\times[0,T] 上の滑らかな解、外力 ff は滑らかで、u0u_0 と f(t)f(t) の平均は 00 とする。同じ u0u_0 と ff に対する Td×[0,T]\mathbb{T}^d\times[0,T] 上の Leray–Hopf の弱解 vv は、[0,T][0,T] 上で uu に一致する。

(ii) トーラス、滑らかな解どうし。 (u,p)(u,p) と (v,P)(v,P) を T3×[0,T]\mathbb{T}^3\times[0,T] 上の滑らかな解(速度も圧力も周期的。平均の条件は課さない)で、初期値と外力が等しいものとする。このとき u=vu=v。

(iii) 全空間、滑らかな解どうし。 (u,p)(u,p) と (v,P)(v,P) を R3×[0,T]\mathbb{R}^3\times[0,T] 上の滑らかな解で、初期値と外力が等しいものとする。∇u\nabla u は R3×[0,T]\mathbb{R}^3\times[0,T] で有界とし、

sup⁡0≤t≤T(∥u(t)∥+∥v(t)∥)<∞,∫0T(∥u∥33+∥v∥33)dt<∞,∫0T∥P−p∥3/23/2dt<∞\sup_{0\le t\le T}\bigl(\|u(t)\|+\|v(t)\|\bigr)\lt\infty,\qquad\int_0^T\bigl(\|u\|_3^3+\|v\|_3^3\bigr)dt\lt\infty,\qquad\int_0^T\|P-p\|_{3/2}^{3/2}dt\lt\infty

を仮定する。このとき u=vu=v。

証明(定理 8.2)

L=sup⁡Ω×[0,T]∣∇u∣<∞L=\sup_{\Omega\times[0,T]}|\nabla u|\lt\infty とおきます。

(i) まず u(t)u(t) の平均が 00 であることを確かめます。方程式を Td\mathbb{T}^d 上で積分すると、(u⋅∇)uj=∂i(uiuj)(u\cdot\nabla)u_j=\partial_i(u_iu_j)、Δu\Delta u、∇p\nabla p の積分は周期性により 00 なので ddt∫u dx=∫f dx=0\frac{d}{dt}\int u\,dx=\int f\,dx=0 で、u0u_0 の平均が 00 だからです。したがって uu は 補題 8.1 の試験関数に使えます。

3 つの関係式を使います。第 1 に、vv のエネルギー不等式(定義 5.1 (c))。第 2 に、uu のエネルギー等式(命題 3.3)。第 3 に、vv の弱形式に φ=u\varphi=u を入れたもの(補題 8.1):

⟨v(t),u(t)⟩=∥u0∥2+∫0t(⟨v,∂su⟩−ν⟨∇v,∇u⟩+∫vivj∂iuj dx+⟨f,u⟩)ds.\langle v(t),u(t)\rangle=\|u_0\|^2+\int_0^t\Bigl(\langle v,\partial_su\rangle-\nu\langle\nabla v,\nabla u\rangle+\int v_iv_j\partial_iu_j\,dx+\langle f,u\rangle\Bigr)ds .

ここに ∂su=νΔu−(u⋅∇)u−∇p+f\partial_su=\nu\Delta u-(u\cdot\nabla)u-\nabla p+f を代入します。v(s)∈Hv(s)\in H なので ⟨v,∇p⟩=0\langle v,\nabla p\rangle=0、Parseval の等式(補題 4.1)により ⟨v,Δu⟩=−⟨∇v,∇u⟩\langle v,\Delta u\rangle=-\langle\nabla v,\nabla u\rangle です。よって

⟨v(t),u(t)⟩=∥u0∥2+∫0t(−2ν⟨∇v,∇u⟩−∫ui∂iuj vj dx+∫vivj∂iuj dx+⟨f,u+v⟩)ds.\langle v(t),u(t)\rangle=\|u_0\|^2+\int_0^t\Bigl(-2\nu\langle\nabla v,\nabla u\rangle-\int u_i\partial_iu_j\,v_j\,dx+\int v_iv_j\partial_iu_j\,dx+\langle f,u+v\rangle\Bigr)ds .

w=v−uw=v-u とおくと 12∥w∥2=12∥v∥2+12∥u∥2−⟨v,u⟩\frac12\|w\|^2=\frac12\|v\|^2+\frac12\|u\|^2-\langle v,u\rangle で、第 1・第 2 の関係式の和から上の式を引くと、外力の項と初期値の項が消えて

12∥w(t)∥2+ν∫0t∥∇w∥2ds≤∫0t(∫ui∂iuj vj dx−∫vivj∂iuj dx)ds\frac12\|w(t)\|^2+\nu\int_0^t\|\nabla w\|^2ds\le\int_0^t\Bigl(\int u_i\partial_iu_j\,v_j\,dx-\int v_iv_j\partial_iu_j\,dx\Bigr)ds

となります。右辺の被積分関数は −∫wi ∂iuj vj dx=−∫wi∂iuj wj dx−∫wi∂iuj uj dx-\int w_i\,\partial_iu_j\,v_j\,dx=-\int w_i\partial_iu_j\,w_j\,dx-\int w_i\partial_iu_j\,u_j\,dx です。最後の項は 12∫w⋅∇∣u∣2dx\frac12\int w\cdot\nabla|u|^2dx で、w(s)∈Hw(s)\in H が滑らかな関数の勾配と直交することから 00 です。したがって

∥w(t)∥2≤2L∫0t∥w(s)∥2ds.\|w(t)\|^2\le2L\int_0^t\|w(s)\|^2ds .

Φ(t)=∫0t∥w∥2ds\Phi(t)=\int_0^t\|w\|^2ds は連続で Φ(t)≤∫0t2L Φ(s) ds\Phi(t)\le\int_0^t2L\,\Phi(s)\,ds を満たすので、Gronwall の不等式(補題 3.1[解の存在と一意性]、α=0\alpha=0)により Φ≡0\Phi\equiv0、よって ∥w(t)∥2≤2LΦ(t)=0\|w(t)\|^2\le2L\Phi(t)=0 です。

(ii) w=v−uw=v-u、π=P−p\pi=P-p は滑らかで周期的で、方程式の差は

∂tw+(v⋅∇)w+(w⋅∇)u=νΔw−∇π,div⁡w=0\partial_tw+(v\cdot\nabla)w+(w\cdot\nabla)u=\nu\Delta w-\nabla\pi,\qquad\operatorname{div}w=0

です((v⋅∇)v−(u⋅∇)u=(v⋅∇)w+(w⋅∇)u(v\cdot\nabla)v-(u\cdot\nabla)u=(v\cdot\nabla)w+(w\cdot\nabla)u)。ww との内積を取ると、補題 3.2 により b(v,w,w)=0b(v,w,w)=0、周期性により ⟨∇π,w⟩=0\langle\nabla\pi,w\rangle=0 なので 12ddt∥w∥2+ν∥∇w∥2=−∫wi∂iujwj≤L∥w∥2\frac12\frac{d}{dt}\|w\|^2+\nu\|\nabla w\|^2=-\int w_i\partial_iu_jw_j\le L\|w\|^2 です。∥w(0)∥=0\|w(0)\|=0 と Gronwall の不等式から w=0w=0 です。

(iii) 同じ差の方程式が成り立ちますが、ww と π\pi の遠方での振る舞いが分からないので、切り落としを入れます。χ∈Cc∞(R3)\chi\in C_c^\infty(\mathbb{R}^3) を 0≤χ≤10\le\chi\le1、∣x∣≤1|x|\le1 で χ=1\chi=1 と取り、χR(x)=χ(x/R)\chi_R(x)=\chi(x/R) とおくと ∣∇χR∣≤C/R|\nabla\chi_R|\le C/R、∣ΔχR∣≤C/R2|\Delta\chi_R|\le C/R^2 です。差の方程式に χRw\chi_Rw を掛けて積分します(台がコンパクトなので部分積分の境界項はありません)。各項は

∫χR (v⋅∇)w⋅w=12∫χR v⋅∇∣w∣2=−12∫∣w∣2 v⋅∇χR,ν∫χR w⋅Δw=−ν∫χR∣∇w∣2−ν2∫∇χR⋅∇∣w∣2=−ν∫χR∣∇w∣2+ν2∫∣w∣2ΔχR,−∫χR w⋅∇π=∫π w⋅∇χR\begin{aligned} \int\chi_R\,(v\cdot\nabla)w\cdot w&=\frac12\int\chi_R\,v\cdot\nabla|w|^2=-\frac12\int|w|^2\,v\cdot\nabla\chi_R,\\ \nu\int\chi_R\,w\cdot\Delta w&=-\nu\int\chi_R|\nabla w|^2-\frac\nu2\int\nabla\chi_R\cdot\nabla|w|^2=-\nu\int\chi_R|\nabla w|^2+\frac\nu2\int|w|^2\Delta\chi_R,\\ -\int\chi_R\,w\cdot\nabla\pi&=\int\pi\,w\cdot\nabla\chi_R \end{aligned}

です(第 1・第 3 式で div⁡v=div⁡w=0\operatorname{div}v=\operatorname{div}w=0 を使う)。ER(t)=∫χR∣w(t)∣2dxE_R(t)=\int\chi_R|w(t)|^2dx とおくと

12ER′+ν∫χR∣∇w∣2=−∫χR wi∂iujwj+ν2∫∣w∣2ΔχR+12∫∣w∣2v⋅∇χR+∫π w⋅∇χR.\frac12E_R'+\nu\int\chi_R|\nabla w|^2=-\int\chi_R\,w_i\partial_iu_jw_j+\frac\nu2\int|w|^2\Delta\chi_R+\frac12\int|w|^2v\cdot\nabla\chi_R+\int\pi\,w\cdot\nabla\chi_R .

右辺第 1 項は LERLE_R 以下です。残りは Hölder の不等式により

CνR2∥w∥2+CR∥w∥32∥v∥3+CR∥π∥3/2∥w∥3\frac{C\nu}{R^2}\|w\|^2+\frac{C}{R}\|w\|_3^2\|v\|_3+\frac{C}{R}\|\pi\|_{3/2}\|w\|_3

以下で、仮定と ∥w∥3≤∥u∥3+∥v∥3\|w\|_3\le\|u\|_3+\|v\|_3、および時間についての Hölder の不等式 ∫0T∥π∥3/2∥w∥3≤(∫0T∥π∥3/23/2)2/3(∫0T∥w∥33)1/3\int_0^T\|\pi\|_{3/2}\|w\|_3\le(\int_0^T\|\pi\|_{3/2}^{3/2})^{2/3}(\int_0^T\|w\|_3^3)^{1/3} により、この 3 項の [0,T][0,T] 上の積分は R≥1R\ge1 によらない定数 K0K_0 を使って K0/RK_0/R 以下です。ER(0)=0E_R(0)=0 なので

ER(t)≤2K0R+∫0t2L ER(s) ds,E_R(t)\le\frac{2K_0}{R}+\int_0^t2L\,E_R(s)\,ds,

Gronwall の不等式により ER(t)≤2K0Re2LTE_R(t)\le\frac{2K_0}{R}e^{2LT} です。R→∞R\to\infty とすると単調収束定理(定理 5.2[ルベーグ積分の定義と収束定理])により ER(t)→∥w(t)∥2E_R(t)\to\|w(t)\|^2 なので、w=0w=0 です。

注意 8.3(全空間の場合の仮定について)

Fefferman の条件 (6)(7) が解に課すのは、滑らかさとエネルギーの有界性だけです。(iii) の残りの 2 つの可積分性は、その条件からは直ちには出ません。条件 (6)(7) だけから u=vu=v を導くには、圧力の勾配が ∇π=∇∑i,jRiRj(vivj−uiuj)\nabla\pi=\nabla\sum_{i,j}R_iR_j(v_iv_j-u_iu_j)(RiR_i は Riesz 変換)と決まることを示し、Riesz 変換の LpL^p 有界性(Calderón–Zygmund の理論)で圧力の流束を抑える議論が要ります。その理論は Rikai に未収録なので、この記事では上の仮定のもとで証明しました。第 11 章 でこの点にもう一度触れます。

例 9.1(2 次元の Taylor–Green 渦)

周期 2π2\pi の正方形の上で

u(x,y,t)=e−2νt(sin⁡xcos⁡y, −cos⁡xsin⁡y),p(x,y,t)=e−4νt4(cos⁡2x+cos⁡2y)u(x,y,t)=e^{-2\nu t}\bigl(\sin x\cos y,\ -\cos x\sin y\bigr),\qquad p(x,y,t)=\frac{e^{-4\nu t}}{4}\bigl(\cos2x+\cos2y\bigr)

とおきます。∂xu1+∂yu2=e−2νt(cos⁡xcos⁡y−cos⁡xcos⁡y)=0\partial_xu_1+\partial_yu_2=e^{-2\nu t}(\cos x\cos y-\cos x\cos y)=0 です。Δu=−2u\Delta u=-2u なので ∂tu=−2νu=νΔu\partial_tu=-2\nu u=\nu\Delta u。非線形項は

(u⋅∇)u=e−4νt(sin⁡xcos⁡x(cos⁡2y+sin⁡2y), sin⁡ycos⁡y(sin⁡2x+cos⁡2x))=e−4νt2(sin⁡2x,sin⁡2y)=−∇p(u\cdot\nabla)u=e^{-4\nu t}\bigl(\sin x\cos x(\cos^2y+\sin^2y),\ \sin y\cos y(\sin^2x+\cos^2x)\bigr)=\frac{e^{-4\nu t}}{2}(\sin2x,\sin2y)=-\nabla p

です。よって f=0f=0 の Navier–Stokes 方程式の解で、エネルギーは e−4νte^{-4\nu t} に比例して減ります。命題 3.3 と合うことは、∥∇u∥2=2∥u∥2\|\nabla u\|^2=2\|u\|^2 から ddt12∥u∥2=−2ν∥u∥2=−ν∥∇u∥2\frac{d}{dt}\frac12\|u\|^2=-2\nu\|u\|^2=-\nu\|\nabla u\|^2 と確かめられます。

例 9.2(Beltrami 流では非線形項が勾配になる)

恒等式 (u⋅∇)u=∇∣u∣22−u×curl⁡u(u\cdot\nabla)u=\nabla\frac{|u|^2}{2}-u\times\operatorname{curl}u により、curl⁡u=μu\operatorname{curl}u=\mu u(μ\mu は定数)を満たす発散なしの場では (u⋅∇)u=∇∣u∣22(u\cdot\nabla)u=\nabla\frac{|u|^2}{2} です。このとき Δu=−curl⁡curl⁡u=−μ2u\Delta u=-\operatorname{curl}\operatorname{curl}u=-\mu^2u なので、u(x,t)=e−νμ2tu0(x)u(x,t)=e^{-\nu\mu^2t}u_0(x)、p=−12∣u∣2p=-\frac12|u|^2 が f=0f=0 の解です。例えば R3/(2πZ)3\mathbb{R}^3/(2\pi\mathbb{Z})^3 上の

u0=(Asin⁡z+Ccos⁡y, Bsin⁡x+Acos⁡z, Csin⁡y+Bcos⁡x)u_0=(A\sin z+C\cos y,\ B\sin x+A\cos z,\ C\sin y+B\cos x)

は curl⁡u0=u0\operatorname{curl}u_0=u_0 を満たします(∂yu0,3−∂zu0,2=Ccos⁡y+Asin⁡z\partial_yu_{0,3}-\partial_zu_{0,2}=C\cos y+A\sin z など)。非線形項が圧力に吸収されて線形の熱方程式に帰着する、3 次元の大域解の族です。

例 9.3(Burgers 渦)

円柱座標 (r,θ,z)(r,\theta,z) で、α>0\alpha\gt0、Γ∈R\Gamma\in\mathbb{R} に対し

ur=−αr2,uz=αz,uθ=Γ2πr(1−e−αr2/(4ν))u_r=-\frac{\alpha r}{2},\qquad u_z=\alpha z,\qquad u_\theta=\frac{\Gamma}{2\pi r}\Bigl(1-e^{-\alpha r^2/(4\nu)}\Bigr)

は定常な Navier–Stokes 方程式の解です。1r∂r(rur)+∂zuz=−α+α=0\frac1r\partial_r(ru_r)+\partial_zu_z=-\alpha+\alpha=0。軸方向の渦度は ω=1r(ruθ)′=Γα4πνe−αr2/(4ν)\omega=\frac1r(ru_\theta)'=\frac{\Gamma\alpha}{4\pi\nu}e^{-\alpha r^2/(4\nu)} で、方位角方向の方程式は ur ω=ν ω′u_r\,\omega=\nu\,\omega' と同値です。実際 νω′=−αr2ω\nu\omega'=-\frac{\alpha r}{2}\omega です。内向きの流れが渦度を軸に集め、軸方向の伸張がそれを強め、粘性の拡散がちょうど釣り合います。芯の半径は ν/α\sqrt{\nu/\alpha} です。この解はエネルギーが無限大で、問題文の条件 (7) を満たしませんが、「伸張と拡散の釣り合い」という 3 次元に固有の機構を見せる基本例で、第 11 章の構成の主部もこの型(内向きの渦巻きと軸方向の流出)です。

例 9.4(平面 Couette 流と Poiseuille 流)

u=(U(y),0,0)u=(U(y),0,0) の形の流れでは (u⋅∇)u=U∂xu=0(u\cdot\nabla)u=U\partial_xu=0 で、非線形項が恒等的に消えます。定常解は νU′′=∂xp\nu U''=\partial_xp を満たし、∂xp=0\partial_xp=0 なら U=ay+bU=ay+b(Couette 流)、∂xp=−G\partial_xp=-G(定数)なら U=G2νy(h−y)U=\frac{G}{2\nu}y(h-y)(幅 hh の水路の Poiseuille 流)です。どちらも全空間やトーラスの解ではありませんが、非線形項が消える対称性の典型です。難しさは、こうした対称性が無い流れにだけ現れます。

演習 10.1易

d=3d=3 とする。∥u∥Lp(0,T;Lq(R3))\|u\|_{L^p(0,T;L^q(\mathbb{R}^3))} がスケール変換 u↦uλu\mapsto u_\lambda(時間区間は [0,T/λ2)[0,T/\lambda^2))で不変になるための p,qp,q の条件を求めよ。また、エネルギー等式から有界と分かる ∥u∥Lt∞Lx2\|u\|_{L^\infty_tL^2_x} と ∥∇u∥Lt2Lx2\|\nabla u\|_{L^2_tL^2_x} から、Sobolev の不等式と補間で得られる LtpLxqL^p_tL^q_x の評価は、2/p+3/q2/p+3/q がいくつのものか。

解答

例 3.6 の計算により、∥uλ∥LpLq=λ1−2/p−3/q∥u∥LpLq\|u_\lambda\|_{L^pL^q}=\lambda^{1-2/p-3/q}\|u\|_{L^pL^q} なので、不変である条件は 2/p+3/q=12/p+3/q=1 です。一方 ∥u∥6≤C∥∇u∥\|u\|_6\le C\|\nabla u\| から u∈Lt2Lx6u\in L^2_tL^6_x(2/2+3/6=3/22/2+3/6=3/2)、また u∈Lt∞Lx2u\in L^\infty_tL^2_x(0+3/2=3/20+3/2=3/2)で、この 2 つを Hölder の不等式で補間して得られる組はすべて 2/p+3/q=3/22/p+3/q=3/2 を満たします(1q=θ2+1−θ6\frac1q=\frac\theta2+\frac{1-\theta}6、1p=1−θ2\frac1p=\frac{1-\theta}2 から 2p+3q=(1−θ)+3θ2+1−θ2=32\frac2p+\frac3q=(1-\theta)+\frac{3\theta}2+\frac{1-\theta}2=\frac32)。エネルギーから出る評価は 3/23/2、正則性に要るのは 11 で、その差 1/21/2 が埋まっていません。

演習 10.2標準

T2\mathbb{T}^2 上の f=0f=0 の滑らかな解の渦度 ω\omega について、偶数 q≥2q\ge2 に対し ∥ω(t)∥q≤∥ω0∥q\|\omega(t)\|_q\le\|\omega_0\|_q を示せ。q→∞q\to\infty として sup⁡∣ω(t)∣≤sup⁡∣ω0∣\sup|\omega(t)|\le\sup|\omega_0| を導け。

解答

定理 6.2 の証明のとおり ∂tω+u⋅∇ω=νΔω\partial_t\omega+u\cdot\nabla\omega=\nu\Delta\omega です。ωq−1\omega^{q-1} を掛けて積分します。∫∂tω ωq−1=1qddt∫ωq\int\partial_t\omega\,\omega^{q-1}=\frac1q\frac{d}{dt}\int\omega^q、∫(u⋅∇ω)ωq−1=1q∫u⋅∇(ωq)=0\int(u\cdot\nabla\omega)\omega^{q-1}=\frac1q\int u\cdot\nabla(\omega^q)=0(div⁡u=0\operatorname{div}u=0)、ν∫Δω ωq−1=−ν(q−1)∫ωq−2∣∇ω∣2≤0\nu\int\Delta\omega\,\omega^{q-1}=-\nu(q-1)\int\omega^{q-2}|\nabla\omega|^2\le0(qq が偶数なので ωq−2≥0\omega^{q-2}\ge0)です。よって ddt∫ωq≤0\frac{d}{dt}\int\omega^q\le0 で、∥ω(t)∥q≤∥ω0∥q\|\omega(t)\|_q\le\|\omega_0\|_q。T2\mathbb{T}^2 の測度は 11 なので ∥ω0∥q≤sup⁡∣ω0∣\|\omega_0\|_q\le\sup|\omega_0| で、連続関数について ∥ω(t)∥q→sup⁡∣ω(t)∣\|\omega(t)\|_q\to\sup|\omega(t)|(q→∞q\to\infty)なので sup⁡∣ω(t)∣≤sup⁡∣ω0∣\sup|\omega(t)|\le\sup|\omega_0| です。3 次元では伸張項 (ω⋅∇)u(\omega\cdot\nabla)u があるため、この計算は成り立ちません。

演習 10.3標準

次元解析で次を確かめよ。時刻 TT に向かって、速さ U(t)U(t) の流れが半径 ℓ(t)→0\ell(t)\to0 の球に集中するとし、Uℓ=νU\ell=\nu(局所的な Reynolds 数が 11)、ℓ=ν(T−t)\ell=\sqrt{\nu(T-t)} とする。(1) d=3d=3 では、集中部分のエネルギー U2ℓ3U^2\ell^3 と散逸の時間積分 ν∫T(U/ℓ)2ℓ3dt\nu\int^T(U/\ell)^2\ell^3dt はどちらも有界で、エネルギー等式はこの筋書きを排除しない。(2) d=2d=2 では、同じ筋書きは 定理 6.2 (ii) に反する。

解答

U=ν/ℓU=\nu/\ell です。(1) U2ℓ3=ν2ℓ→0U^2\ell^3=\nu^2\ell\to0。散逸は ν(U/ℓ)2ℓ3=νU2ℓ=ν3/ℓ=ν5/2(T−t)−1/2\nu(U/\ell)^2\ell^3=\nu U^2\ell=\nu^3/\ell=\nu^{5/2}(T-t)^{-1/2} で、∫T(T−t)−1/2dt<∞\int^T(T-t)^{-1/2}dt\lt\infty です。したがって 命題 3.3 の 2 つの量はどちらも有界のままで、矛盾は生じません。なお ∥∇u∥2≈(U/ℓ)2ℓ3=ν2/ℓ=ν3/2(T−t)−1/2\|\nabla u\|^2\approx(U/\ell)^2\ell^3=\nu^2/\ell=\nu^{3/2}(T-t)^{-1/2} は、系 7.2 (i) が許す発散の速さ ∥∇u∥2∼(T−t)−1/2\|\nabla u\|^2\sim(T-t)^{-1/2} とちょうど同じ次数です。(2) d=2d=2 では集中部分の渦度の 2 乗積分が (U/ℓ)2ℓ2=U2=ν2/ℓ2→∞(U/\ell)^2\ell^2=U^2=\nu^2/\ell^2\to\infty となりますが、f=0f=0 なら ∥ω(t)∥≤∥ω0∥\|\omega(t)\|\le\|\omega_0\| なので起こりえません。2 次元ではエネルギーより強い保存量型の評価(渦度)があり、3 次元にはそれが無い、という違いです。

演習 10.4易

(A)〜(D) について次の真偽を理由つきで答えよ。(1) (A) の否定は (C) を導く。(2) (C) は (A) の否定を導く。(3) f≡0f\equiv0 は条件 (5) と (9) を満たす。

解答

(3) は真です。00 はどんな評価も満たします。(1) は真です。(A) の否定は「(4) を満たすある u0u_0 と f≡0f\equiv0 に対し (6)(7) を満たす解が無い」で、(3) により f≡0f\equiv0 は (5) を満たすので、これは (C) の主張そのものの特別な場合です。(2) は偽(導けるとは言えない)です。(C) が保証する外力は 00 とは限らず、f≠0f\ne0 のデータで解が無いことから、f≡0f\equiv0 のデータについては何も結論できません(注意 2.4)。

  1. C. L. Fefferman, “Existence and smoothness of the Navier–Stokes equation”, Clay Mathematics Institute の問題文(正誤表つき)。https://www.claymath.org/wp-content/uploads/2022/06/navierstokes.pdf(2026-10-08 に取得して条件 (4)〜(11) と (A)〜(D) を確認)。
  2. J. Leray, “Sur le mouvement d’un liquide visqueux emplissant l’espace”, Acta Mathematica 63 (1934), 193–248. doi:10.1007/BF02547354
  3. E. Hopf, “Über die Anfangswertaufgabe für die hydrodynamischen Grundgleichungen”, Mathematische Nachrichten 4 (1951), 213–231.
  4. O. A. Ladyzhenskaya, The Mathematical Theory of Viscous Incompressible Flow, 2nd ed., Gordon and Breach, 1969 — 2 次元の一意性と大域解。
  5. J. C. Robinson, J. L. Rodrigo, W. Sadowski, The Three-Dimensional Navier–Stokes Equations: Classical Theory, Cambridge University Press, 2016 — 弱解・強解・弱強一意性。
  6. H. Fujita, T. Kato, “On the Navier–Stokes initial value problem. I”, Archive for Rational Mechanics and Analysis 16 (1964), 269–315.
  7. R. Temam, Navier–Stokes Equations: Theory and Numerical Analysis, North-Holland(AMS Chelsea 版 2001) — Galerkin 近似による弱解の構成。

このテーマの 100 本ノック(50 問)

執筆: Claude Code(Opus 5.5)、Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 2 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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