コンテンツにスキップ

Sobolev 空間:弱微分・埋め込み定理・Rellich のコンパクト性・トレース定理

対象読者: 本テーマ第 2〜3 章のフーリエ変換とシュワルツ空間・緩増加超関数、L^p 空間の基礎を学んだ修士レベルの人。偏微分方程式の経験は仮定しませんが、多変数の部分積分には慣れていてください。

前提となる記事:Schwartz 空間と緩増加超関数:Fréchet 空間 𝒮 とその双対で Fourier 変換を完成させる、ℝⁿ 上のフーリエ変換:反転公式・Plancherel の定理・Young の不等式・Poisson 和公式・Hermite 関数、L^p 空間と関数解析への導入:ヘルダーの不等式から完備性・ヒルベルト空間まで

生 Markdown

折れ線のように角のある関数や、一点で無限大になる関数にも、「微分した」と言える場面があります。この記事は、そうした関数まで含めて「微分の大きさ」を測る空間(Sobolev 空間)を作り、微分についての情報から関数自身の大きさや連続性が読み取れることを示します。読み終えると、「微分が二乗可積分なら関数は有界か」「有界領域で Laplacian の固有値が飛び飛びになるのはなぜか」といった問いに、不等式を使って答えられるようになります。

  • 弱微分は部分積分の公式を定義に取り直したものです。kk 階までの弱微分が LpL^p に入る関数の空間が Wk,pW^{k,p} で、Banach 空間になります。
  • p=2p=2 では Fourier 変換が使え、Hs={u∣⟨ξ⟩su^∈L2}H^s=\{u\mid\langle\xi\rangle^s\hat u\in L^2\} が任意の実数 ss で定義できます。整数 kk では Hk=Wk,2H^k=W^{k,2} です。
  • Sobolev 埋め込み: 「微分の可積分性」は「関数自身の可積分性・連続性」に変換できます。1≤p<n1\le p\lt n なら ∥u∥np/(n−p)≤C∥∇u∥p\|u\|_{np/(n-p)}\le C\|\nabla u\|_p(Gagliardo–Nirenberg–Sobolev)、p>np\gt n なら Hölder 連続(Morrey。ある γ>0\gamma\gt0 で ∣u(x)−u(y)∣≤C∣x−y∣γ|u(x)-u(y)|\le C|x-y|^\gamma が成り立つ連続性のこと)、s>n/2s\gt n/2 なら Hs⊂CbH^s\subset C_b です。
  • Rellich のコンパクト性: 台を固定すると、HsH^s の有界集合は HtH^t(t<st\lt s)で相対コンパクトです。有界領域の Dirichlet Laplacian(境界で値を 00 とする Laplacian)のスペクトルが離散(固有値が飛び飛びに並ぶ)になる理由です。
  • トレース定理: s>1/2s\gt1/2 なら超平面への制限は Hs(Rn)→Hs−1/2(Rn−1)H^s(\mathbb{R}^n)\to H^{s-1/2}(\mathbb{R}^{n-1}) に延びて全射です。「境界で 1/21/2 階の滑らかさを失う」ことの正確な形です。
  • そのほか、Hardy の不等式、円周上の H1/2H^{1/2} と調和拡張の Dirichlet 積分、ベクトル場の勾配を発散と回転で抑える Gaffney 不等式を扱います。

Schrödinger 作用素 −Δ+V-\Delta+V の自己共役性(Kato–Rellich)や二次形式の閉性(KLMN。どちらも −Δ+V-\Delta+V が量子力学の正しい作用素になるための判定法)では、「ψ\psi と Δψ\Delta\psi が L2L^2 に入るなら ψ\psi は有界」「∇ψ∈L2\nabla\psi\in L^2 なら ∫V∣ψ∣2\int V|\psi|^2 が制御できる」といった評価が要になります(自己共役性の判定)。これらはすべて、微分についての情報を関数の大きさの情報に変える Sobolev 型の不等式です。

古典的な CkC^k 空間はこの目的に向きません。CkC^k は完備ですが Hilbert 空間ではなく、変分法で得られる極小元は CkC^k に入るとは限りません。∫∣∇u∣2\int|\nabla u|^2 のような量で完備になる空間を作るには、微分を超関数の意味で取り、LpL^p ノルムで測る必要があります。こうして得られるのが Sobolev 空間です。

本章では、試験関数・超関数の言葉(Schwartz 空間と緩増加超関数)と Fourier 変換の正規化 u^(ξ)=∫e−ix⋅ξu(x) dx\hat u(\xi)=\int e^{-ix\cdot\xi}u(x)\,dx(ℝⁿ 上のフーリエ変換)を使います。⟨ξ⟩=(1+∣ξ∣2)1/2\langle\xi\rangle=(1+|\xi|^2)^{1/2} です。

定義 2.1(弱微分と Wk,pW^{k,p})↗

U⊂RnU\subset\mathbb{R}^n を開集合、u,v∈Lloc1(U)u,v\in L^1_{\mathrm{loc}}(U)、α∈N0n\alpha\in\mathbb{N}_0^n とする。すべての φ∈Cc∞(U)\varphi\in C_c^\infty(U) について

∫Uu ∂αφ dx=(−1)∣α∣∫Uv φ dx\int_Uu\,\partial^\alpha\varphi\,dx=(-1)^{|\alpha|}\int_Uv\,\varphi\,dx

が成り立つとき、vv を uu の α\alpha 階の弱微分といい ∂αu=v\partial^\alpha u=v と書く。k∈N0k\in\mathbb{N}_0、1≤p≤∞1\le p\le\infty について

Wk,p(U)={u∈Lp(U)∣∣α∣≤k の弱微分 ∂αu が存在して Lp(U) に入る},∥u∥Wk,p=∑∣α∣≤k∥∂αu∥pW^{k,p}(U)=\{u\in L^p(U)\mid|\alpha|\le k\text{ の弱微分 }\partial^\alpha u\text{ が存在して }L^p(U)\text{ に入る}\},\qquad\|u\|_{W^{k,p}}=\sum_{|\alpha|\le k}\|\partial^\alpha u\|_p

と定める。W0k,p(U)W^{k,p}_0(U) は Cc∞(U)C_c^\infty(U) の Wk,p(U)W^{k,p}(U) での閉包である。

弱微分は存在すれば a.e. で一意です。二つの候補 v,v′v,v' について ∫(v−v′)φ=0\int(v-v')\varphi=0(全 φ∈Cc∞(U)\varphi\in C_c^\infty(U))なので、補題 2.2[Schwartz 空間と緩増加超関数] の 3 から v=v′v=v' a.e. です。uu が CkC^k 級なら部分積分(境界項は φ\varphi の台がコンパクトなので消える)から、古典的な導関数が弱微分です。

例 2.2(弱微分の例と非例)

  1. u(x)=∣x∣u(x)=|x|(U=(−1,1)U=(-1,1))の弱微分は sgn x\mathrm{sgn}\,x です。∫∣x∣φ′=∫01xφ′−∫−10xφ′=−∫01φ+∫−10φ\int|x|\varphi'=\int_0^1x\varphi'-\int_{-1}^0x\varphi'=-\int_0^1\varphi+\int_{-1}^0\varphi を部分積分で確かめられます。よって ∣x∣∈W1,∞(−1,1)|x|\in W^{1,\infty}(-1,1) です。
  2. sgn x\mathrm{sgn}\,x は弱微分を Lloc1L^1_{\mathrm{loc}} にもちません。もし vv があれば ∫vφ=−∫sgn φ′=2φ(0)\int v\varphi=-\int\mathrm{sgn}\,\varphi'=2\varphi(0) となり、00 を含まない台の φ\varphi で v=0v=0 a.e.、すると φ(0)=0\varphi(0)=0 となって矛盾します。超関数としての微分は 2δ2\delta で、関数ではありません。
  3. n≥2n\ge2、u(x)=∣x∣−au(x)=|x|^{-a}(U=B(0,1)U=B(0,1))は、a<(n−p)/pa\lt(n-p)/p のとき W1,p(U)W^{1,p}(U) に入ります(演習 10.1)。n≥3n\ge3、p=2p=2 では a<n/2−1a\lt n/2-1 で、原点に特異性をもつ W1,2W^{1,2} 関数が存在します。W1,pW^{1,p} の元が連続とは限らないことの典型例です。

命題 2.3(Wk,pW^{k,p} は Banach 空間)✓

Wk,p(U)W^{k,p}(U) は Banach 空間である。Wk,2(U)W^{k,2}(U) は内積 ∑∣α∣≤k⟨∂αu,∂αv⟩\sum_{|\alpha|\le k}\langle\partial^\alpha u,\partial^\alpha v\rangle について Hilbert 空間である。

証明(命題 2.3)

ノルムの公理は LpL^p のもの(系 4.6[L^p 空間と関数解析への導入])から出ます。(uj)(u_j) を Cauchy 列とすると、各 ∂αuj\partial^\alpha u_j は LpL^p の Cauchy 列で、Riesz–Fischer の定理(定理 5.3[L^p 空間と関数解析への導入])からある uα∈Lpu_\alpha\in L^p に収束します。u=u0u=u_0 とおきます。φ∈Cc∞(U)\varphi\in C_c^\infty(U) は Lp′L^{p'} に入るので、Hölder の不等式から

∫u ∂αφ=lim⁡j∫uj ∂αφ=lim⁡j(−1)∣α∣∫∂αuj φ=(−1)∣α∣∫uαφ\int u\,\partial^\alpha\varphi=\lim_j\int u_j\,\partial^\alpha\varphi=\lim_j(-1)^{|\alpha|}\int\partial^\alpha u_j\,\varphi=(-1)^{|\alpha|}\int u_\alpha\varphi

となり、∂αu=uα\partial^\alpha u=u_\alpha です。よって u∈Wk,pu\in W^{k,p} で uj→uu_j\to u です。Hilbert 空間の主張はノルムの同値性(∑α∥⋅∥\sum_\alpha\|\cdot\| と (∑α∥⋅∥2)1/2(\sum_\alpha\|\cdot\|^2)^{1/2})から出ます。

定理 2.4(滑らかな関数による近似)✓

1≤p<∞1\le p\lt\infty、k∈N0k\in\mathbb{N}_0 とする。

  1. u∈Wk,p(Rn)u\in W^{k,p}(\mathbb{R}^n) ならば ρε∗u∈C∞\rho_\varepsilon*u\in C^\infty で、∂α(ρε∗u)=ρε∗∂αu\partial^\alpha(\rho_\varepsilon*u)=\rho_\varepsilon*\partial^\alpha u(∣α∣≤k|\alpha|\le k)、ρε∗u→u\rho_\varepsilon*u\to u(Wk,pW^{k,p})。
  2. Cc∞(Rn)C_c^\infty(\mathbb{R}^n) は Wk,p(Rn)W^{k,p}(\mathbb{R}^n) で稠密である。すなわち W0k,p(Rn)=Wk,p(Rn)W^{k,p}_0(\mathbb{R}^n)=W^{k,p}(\mathbb{R}^n)。
証明(定理 2.4)

1: ρε\rho_\varepsilon はSchwartz 空間と緩増加超関数の 補題 2.1[Schwartz 空間と緩増加超関数] の軟化子です。積分記号下の微分と、y↦ρε(x−y)y\mapsto\rho_\varepsilon(x-y) が Cc∞C_c^\infty であることから

∂α(ρε∗u)(x)=∫∂xαρε(x−y) u(y) dy=(−1)∣α∣∫∂yα[ρε(x−y)] u(y) dy=∫ρε(x−y) ∂αu(y) dy\partial^\alpha(\rho_\varepsilon*u)(x)=\int\partial_x^\alpha\rho_\varepsilon(x-y)\,u(y)\,dy=(-1)^{|\alpha|}\int\partial_y^\alpha[\rho_\varepsilon(x-y)]\,u(y)\,dy=\int\rho_\varepsilon(x-y)\,\partial^\alpha u(y)\,dy

です(最後に弱微分の定義を使った)。補題 2.2[Schwartz 空間と緩増加超関数] の 1 を各 ∂αu\partial^\alpha u に使えば収束が出ます。

2: χ∈Cc∞\chi\in C_c^\infty を ∣x∣≤1|x|\le1 で 11 とし、χR(x)=χ(x/R)\chi_R(x)=\chi(x/R) とします。φ∈Cc∞\varphi\in C_c^\infty について χRφ∈Cc∞\chi_R\varphi\in C_c^\infty を試験関数に使うと、弱微分にも Leibniz 則 ∂α(χRu)=∑β≤α(αβ)∂α−βχR ∂βu\partial^\alpha(\chi_Ru)=\sum_{\beta\le\alpha}\binom\alpha\beta\partial^{\alpha-\beta}\chi_R\,\partial^\beta u が成り立ちます(∣α∣|\alpha| についての帰納法)。β≠α\beta\ne\alpha の項は ∥∂α−βχR∥∞≤CR−1\|\partial^{\alpha-\beta}\chi_R\|_\infty\le CR^{-1} を係数にもち、χR∂αu→∂αu\chi_R\partial^\alpha u\to\partial^\alpha u は優収束定理から出るので、χRu→u\chi_Ru\to u(Wk,pW^{k,p})です。χRu\chi_Ru はコンパクト台をもつので、1 の ρε∗(χRu)∈Cc∞\rho_\varepsilon*(\chi_Ru)\in C_c^\infty で近似できます。

有界領域 UU では W0k,p(U)≠Wk,p(U)W^{k,p}_0(U)\ne W^{k,p}(U) です(k≥1k\ge1)。例えば定数関数 11 は W1,2(0,1)W^{1,2}(0,1) に入りますが、W01,2(0,1)W^{1,2}_0(0,1) の元は 定理 4.5 の連続な代表元が端点で 00 になるので、11 は入りません。W0W_0 は「境界で 00」という境界条件を弱い形で課した空間です。

定義 3.1(Sobolev 空間 Hˢ(ℝⁿ))↗

s∈Rs\in\mathbb{R} について、u∈S′(Rn)u\in\mathcal{S}'(\mathbb{R}^n) で u^\hat u が局所可積分関数かつ ⟨ξ⟩su^∈L2\langle\xi\rangle^s\hat u\in L^2 となるもの全体を Hs(Rn)H^s(\mathbb{R}^n) とし、

⟨u,v⟩Hs=(2π)−n∫⟨ξ⟩2s u^(ξ)‾ v^(ξ) dξ,∥u∥Hs=⟨u,u⟩Hs1/2\langle u,v\rangle_{H^s}=(2\pi)^{-n}\int\langle\xi\rangle^{2s}\,\overline{\hat u(\xi)}\,\hat v(\xi)\,d\xi,\qquad\|u\|_{H^s}=\langle u,u\rangle_{H^s}^{1/2}

とおく。

F\mathcal{F} は HsH^s から重み付き空間 L2(Rn,(2π)−n⟨ξ⟩2sdξ)L^2(\mathbb{R}^n,(2\pi)^{-n}\langle\xi\rangle^{2s}d\xi) への全単射等長写像なので(全射性は、重み付き L2L^2 の元 gg が緩増加超関数を定め、F−1\mathcal{F}^{-1} が S′\mathcal{S}' の全単射であること(定理 6.4[Schwartz 空間と緩増加超関数])から)、HsH^s は Hilbert 空間です。Plancherel の定理(定理 4.1[ℝⁿ 上のフーリエ変換])から H0=L2H^0=L^2 で、ノルムも一致します。s≤ts\le t なら Ht⊂HsH^t\subset H^s で ∥u∥Hs≤∥u∥Ht\|u\|_{H^s}\le\|u\|_{H^t} です。S\mathcal{S} は各 HsH^s で稠密です(F(S)=S\mathcal{F}(\mathcal{S})=\mathcal{S} は重み付き L2L^2 で稠密)。

命題 3.2(Hk=Wk,2Hᵏ = W^{k,2})✓

k∈N0k\in\mathbb{N}_0 について Hk(Rn)=Wk,2(Rn)H^k(\mathbb{R}^n)=W^{k,2}(\mathbb{R}^n) であり、

∑∣α∣≤k∥∂αu∥22≤∥u∥Hk2≤k!∑∣α∣≤k∥∂αu∥22\sum_{|\alpha|\le k}\|\partial^\alpha u\|_2^2\le\|u\|_{H^k}^2\le k!\sum_{|\alpha|\le k}\|\partial^\alpha u\|_2^2

が成り立つ。とくに ∥u∥H12=∥u∥22+∥∇u∥22\|u\|_{H^1}^2=\|u\|_2^2+\|\nabla u\|_2^2。

証明(命題 3.2)

u∈L2u\in L^2 の弱微分 ∂αu=v∈L2\partial^\alpha u=v\in L^2 が存在することは、超関数の微分 ∂αTu\partial^\alpha T_u(定義 6.3[Schwartz 空間と緩増加超関数])が L2L^2 関数 TvT_v であることと同値です(Cc∞C_c^\infty は S\mathcal{S} で稠密なので、Cc∞C_c^\infty 上の等式は S\mathcal{S} 上の等式に延びる。命題 3.5[Schwartz 空間と緩増加超関数] の 4)。定理 6.4[Schwartz 空間と緩増加超関数] から ∂αu^=(iξ)αu^\widehat{\partial^\alpha u}=(i\xi)^\alpha\hat u で、Plancherel の定理から、これは ξαu^∈L2\xi^\alpha\hat u\in L^2 と同値で ∥∂αu∥22=(2π)−n∫ξ2α∣u^∣2\|\partial^\alpha u\|_2^2=(2\pi)^{-n}\int\xi^{2\alpha}|\hat u|^2 です。多項定理から

⟨ξ⟩2k=(1+ξ12+⋯+ξn2)k=∑∣α∣≤kk!(k−∣α∣)! α!ξ2α\langle\xi\rangle^{2k}=(1+\xi_1^2+\cdots+\xi_n^2)^k=\sum_{|\alpha|\le k}\frac{k!}{(k-|\alpha|)!\,\alpha!}\xi^{2\alpha}

で、係数は 11 以上 k!k! 以下なので、∑∣α∣≤kξ2α≤⟨ξ⟩2k≤k!∑∣α∣≤kξ2α\sum_{|\alpha|\le k}\xi^{2\alpha}\le\langle\xi\rangle^{2k}\le k!\sum_{|\alpha|\le k}\xi^{2\alpha} です。これに (2π)−n∣u^∣2(2\pi)^{-n}|\hat u|^2 を掛けて積分すれば主張を得ます。

負の ss の HsH^s は超関数を含みます。例えば δ^=1\hat\delta=1 なので、δ∈Hs\delta\in H^s は ∫⟨ξ⟩2sdξ<∞\int\langle\xi\rangle^{2s}d\xi\lt\infty、すなわち s<−n/2s\lt-n/2 と同値です。H−sH^{-s} は L2L^2 の内積を通して HsH^s の双対と同一視されます: ∣∫u^‾v^∣≤∥⟨ξ⟩−su^∥2∥⟨ξ⟩sv^∥2|\int\overline{\hat u}\hat v|\le\|\langle\xi\rangle^{-s}\hat u\|_2\|\langle\xi\rangle^s\hat v\|_2 で、逆に HsH^s 上の連続線形汎関数は Riesz の表現定理(定理 4.2[Hilbert 空間の基礎])から この形に書けます。

定理 4.1(Hˢ の連続関数への埋め込み)✓

s>n/2s\gt n/2 ならば、u∈Hs(Rn)u\in H^s(\mathbb{R}^n) は有界連続で ∣x∣→∞|x|\to\infty で 00 に収束する代表元をもち、

∥u∥∞≤(2π)−n/2(∫⟨ξ⟩−2sdξ)1/2∥u∥Hs.\|u\|_\infty\le(2\pi)^{-n/2}\Bigl(\int\langle\xi\rangle^{-2s}d\xi\Bigr)^{1/2}\|u\|_{H^s}.
証明(定理 4.1)

s>n/2s\gt n/2 なら ⟨ξ⟩−2s\langle\xi\rangle^{-2s} は可積分です。Cauchy–Schwarz の不等式で ∫∣u^∣=∫⟨ξ⟩−s⋅⟨ξ⟩s∣u^∣≤∥⟨ξ⟩−s∥2 (2π)n/2∥u∥Hs\int|\hat u|=\int\langle\xi\rangle^{-s}\cdot\langle\xi\rangle^s|\hat u|\le\|\langle\xi\rangle^{-s}\|_2\,(2\pi)^{n/2}\|u\|_{H^s} なので u^∈L1\hat u\in L^1 です。v(x)=(2π)−n∫u^(ξ)eix⋅ξdξv(x)=(2\pi)^{-n}\int\hat u(\xi)e^{ix\cdot\xi}d\xi は有界連続で、Riemann–Lebesgue の補題(定理 2.4[ℝⁿ 上のフーリエ変換])から無限遠で 00 に収束し、∣v∣≤(2π)−n∥u^∥1|v|\le(2\pi)^{-n}\|\hat u\|_1 です。f∈Sf\in\mathcal{S} について Fubini の定理で ∫vf=(2π)−n∫u^ Ff(−⋅)=u^(F−1f)=u(f)\int vf=(2\pi)^{-n}\int\hat u\,\mathcal{F}f(-\cdot)=\hat u(\mathcal{F}^{-1}f)=u(f) なので(定理 6.4[Schwartz 空間と緩増加超関数])、u=vu=v です。

n≤3n\le3 では H2(Rn)⊂L∞H^2(\mathbb{R}^n)\subset L^\infty で、これが L2+L∞L^2+L^\infty ポテンシャルに対する Kato–Rellich の定理の鍵です(補題 3.3[自己共役性の判定] は n=3n=3 の場合を定数まで追跡したもの)。s=n/2s=n/2 では埋め込みは成り立ちません(演習 10.3)。

4.2. Gagliardo–Nirenberg–Sobolev の不等式(p<np\lt n)

Section titled “4.2. Gagliardo–Nirenberg–Sobolev の不等式(p<np\lt np<n)”

この節のねらいは、勾配の LpL^p ノルムだけで uu 自身のより高い指数の Lp∗L^{p^*} ノルムが抑えられる、という不等式です。証明の方針は 2 段です。まず p=1p=1 を、「uu は各座標方向に 1 回積分すれば勾配で抑えられる」ことと、次の補題(nn 個の座標方向の「影」の積分の積で全体の積分を抑える不等式)で示します。次に一般の pp を、∣u∣|u| の適当な冪に p=1p=1 の結果を当てはめて導きます。

補題 4.2(Gagliardo の補題)✓

n≥2n\ge2 とし、g1,…,gng_1,\ldots,g_n を Rn−1\mathbb{R}^{n-1} 上の非負可測関数とする。x^i∈Rn−1\hat x_i\in\mathbb{R}^{n-1} を xx から第 ii 座標を除いたものとすると

∫Rn∏i=1ngi(x^i)1/(n−1)dx≤∏i=1n(∫Rn−1gi)1/(n−1).\int_{\mathbb{R}^n}\prod_{i=1}^ng_i(\hat x_i)^{1/(n-1)}dx\le\prod_{i=1}^n\Bigl(\int_{\mathbb{R}^{n-1}}g_i\Bigr)^{1/(n-1)}.
証明(補題 4.2)

nn についての帰納法です。n=2n=2 では左辺は ∫ ⁣ ⁣∫g1(x2)g2(x1) dx1dx2\int\!\!\int g_1(x_2)g_2(x_1)\,dx_1dx_2 で、Tonelli の定理から等号が成り立ちます。nn で正しいとし、n+1n+1 個の関数 g1,…,gn+1g_1,\ldots,g_{n+1}(Rn\mathbb{R}^n 上)を考えます。gn+1(x^n+1)g_{n+1}(\hat x_{n+1}) は xn+1x_{n+1} によらないので、まず xn+1x_{n+1} で積分し、nn 個の関数に対する一般化 Hölder の不等式 ∫∏i≤nFi≤∏i≤n∥Fi∥n\int\prod_{i\le n}F_i\le\prod_{i\le n}\|F_i\|_n(Hölder の不等式 定理 4.2[L^p 空間と関数解析への導入] を帰納的に使う)を適用すると

∫∏i≤n+1gi1/n dxn+1≤gn+11/n∏i≤nGi1/n,Gi=∫gi dxn+1.\int\prod_{i\le n+1}g_i^{1/n}\,dx_{n+1}\le g_{n+1}^{1/n}\prod_{i\le n}G_i^{1/n},\qquad G_i=\int g_i\,dx_{n+1}.

GiG_i は xix_i と xn+1x_{n+1} を除いた n−1n-1 変数の関数です。次に x′=(x1,…,xn)x'=(x_1,\ldots,x_n) で積分し、Hölder の不等式(指数 nn と n/(n−1)n/(n-1))と帰納法の仮定を使うと

∫gn+11/n∏i≤nGi1/ndx′≤(∫gn+1)1/n(∫∏i≤nGi1/(n−1)dx′)(n−1)/n≤(∫gn+1)1/n∏i≤n(∫Gi)1/n\int g_{n+1}^{1/n}\prod_{i\le n}G_i^{1/n}dx'\le\Bigl(\int g_{n+1}\Bigr)^{1/n}\Bigl(\int\prod_{i\le n}G_i^{1/(n-1)}dx'\Bigr)^{(n-1)/n}\le\Bigl(\int g_{n+1}\Bigr)^{1/n}\prod_{i\le n}\Bigl(\int G_i\Bigr)^{1/n}

で、∫Gi=∫gi\int G_i=\int g_i(Tonelli)なので n+1n+1 の場合が示されます。

定理 4.3(Gagliardo–Nirenberg–Sobolev の不等式)✓

n≥2n\ge2、1≤p<n1\le p\lt n、p∗=np/(n−p)p^*=np/(n-p) とする。すべての u∈W1,p(Rn)u\in W^{1,p}(\mathbb{R}^n) について

∥u∥p∗≤p(n−1)n−p ∥∇u∥p.\|u\|_{p^*}\le\frac{p(n-1)}{n-p}\,\|\nabla u\|_p .
証明(定理 4.3)

p=1p=1、u∈Cc1u\in C_c^1 の場合. 各 ii について u(x)=∫−∞xi∂iu dyiu(x)=\int_{-\infty}^{x_i}\partial_iu\,dy_i なので ∣u(x)∣≤gi(x^i):=∫R∣∂iu∣ dyi|u(x)|\le g_i(\hat x_i):=\int_{\mathbb{R}}|\partial_iu|\,dy_i です。掛け合わせて ∣u(x)∣n/(n−1)≤∏igi(x^i)1/(n−1)|u(x)|^{n/(n-1)}\le\prod_ig_i(\hat x_i)^{1/(n-1)} で、補題 4.2 から ∫∣u∣n/(n−1)≤∏i∥∂iu∥11/(n−1)≤∥∇u∥1n/(n−1)\int|u|^{n/(n-1)}\le\prod_i\|\partial_iu\|_1^{1/(n-1)}\le\|\nabla u\|_1^{n/(n-1)}、すなわち ∥u∥n/(n−1)≤∥∇u∥1\|u\|_{n/(n-1)}\le\|\nabla u\|_1 です。

1<p<n1\lt p\lt n、u∈Cc1u\in C_c^1 の場合. γ=p(n−1)/(n−p)>1\gamma=p(n-1)/(n-p)\gt1 とおくと、∣u∣γ=(∣u∣2)γ/2|u|^\gamma=(|u|^2)^{\gamma/2} は Cc1C_c^1 で ∣∇∣u∣γ∣≤γ∣u∣γ−1∣∇u∣|\nabla|u|^\gamma|\le\gamma|u|^{\gamma-1}|\nabla u| です(u=0u=0 の点では ∣u∣γ=o(∣x−x0∣)|u|^\gamma=o(|x-x_0|) なので勾配は 00)。p=1p=1 の場合と Hölder の不等式(p′=p/(p−1)p'=p/(p-1))から

∥∣u∣γ∥n/(n−1)≤γ∫∣u∣γ−1∣∇u∣≤γ ∥∣u∣γ−1∥p′∥∇u∥p.\bigl\||u|^\gamma\bigr\|_{n/(n-1)}\le\gamma\int|u|^{\gamma-1}|\nabla u|\le\gamma\,\bigl\||u|^{\gamma-1}\bigr\|_{p'}\|\nabla u\|_p .

γn/(n−1)=(γ−1)p′=p∗\gamma n/(n-1)=(\gamma-1)p'=p^* なので、これは ∥u∥p∗γ≤γ∥u∥p∗γ−1∥∇u∥p\|u\|_{p^*}^\gamma\le\gamma\|u\|_{p^*}^{\gamma-1}\|\nabla u\|_p です。∥u∥p∗<∞\|u\|_{p^*}\lt\infty なので割って結論を得ます。

一般の u∈W1,pu\in W^{1,p}. 定理 2.4 で uj∈Cc∞u_j\in C_c^\infty、uj→uu_j\to u(W1,pW^{1,p})を取り、部分列で uj→uu_j\to u a.e. とします(定理 5.3[L^p 空間と関数解析への導入] の証明)。Fatou の補題から ∥u∥p∗≤lim inf⁡∥uj∥p∗≤Clim⁡∥∇uj∥p=C∥∇u∥p\|u\|_{p^*}\le\liminf\|u_j\|_{p^*}\le C\lim\|\nabla u_j\|_p=C\|\nabla u\|_p です。

指数 p∗p^* はスケーリングで決まります。uλ(x)=u(λx)u_\lambda(x)=u(\lambda x) とすると ∥uλ∥q=λ−n/q∥u∥q\|u_\lambda\|_q=\lambda^{-n/q}\|u\|_q、∥∇uλ∥p=λ1−n/p∥∇u∥p\|\nabla u_\lambda\|_p=\lambda^{1-n/p}\|\nabla u\|_p なので、∥u∥q≤C∥∇u∥p\|u\|_q\le C\|\nabla u\|_p が全 λ\lambda で成り立つには −n/q=1−n/p-n/q=1-n/p、すなわち q=p∗q=p^* が必要です。n≥3n\ge3、p=2p=2 では p∗=2n/(n−2)p^*=2n/(n-2) で、∥u∥2n/(n−2)≤C∥∇u∥2\|u\|_{2n/(n-2)}\le C\|\nabla u\|_2 が Coulomb 系や Lieb–Thirring 型の評価の出発点です。最良定数と臨界の場合は次章 補間と古典的不等式 で扱います。

1/ps0112H¹ = W^{1,2}L⁶(1/p* = 1/2 − 1/3)H² = W^{2,2}(s − n/p = 1/2)1/p = 0 で s = 1/2:有界連続
Sobolev 埋め込みの見取り図(n = 3)。横軸は 1/p、縦軸は微分の階数 s。点 の空間 は、傾き の直線 一定 に沿って左下の空間に埋め込まれる。直線が s 軸の正の側(1/p = 0 の左側に延長して s > 0)に届くとき、すなわち なら関数は連続(Morrey・)。

系 4.4(W1,p⊂LqW^{1,p} ⊂ L^q)✓

n≥2n\ge2、1≤p<n1\le p\lt n なら、p≤q≤p∗p\le q\le p^* について ∥u∥q≤C∥u∥W1,p\|u\|_q\le C\|u\|_{W^{1,p}}。

証明(系 4.4)

1/q=θ/p+(1−θ)/p∗1/q=\theta/p+(1-\theta)/p^* と書くと、Hölder の不等式から ∥u∥q≤∥u∥pθ∥u∥p∗1−θ≤∥u∥p+∥u∥p∗\|u\|_q\le\|u\|_p^\theta\|u\|_{p^*}^{1-\theta}\le\|u\|_p+\|u\|_{p^*} で、定理 4.3 を使います。

4.3. Morrey の不等式(p>np\gt n)

Section titled “4.3. Morrey の不等式(p>np\gt np>n)”

p>np\gt n では勾配の可積分性が高いので、関数の値の差 ∣u(x)−u(y)∣|u(x)-u(y)| を、xx から yy へ向かう線に沿った勾配の積分で抑えられます。証明は、各点 xx での値と近くの球での平均値との差を評価し(第 1 段)、xx と yy の両方の近くの球を共通の平均値の橋渡しに使う(第 2 段)、という流れです。

定理 4.5(Morrey の不等式)✓

n<p≤∞n\lt p\le\infty、γ=1−n/p\gamma=1-n/p とする。u∈W1,p(Rn)u\in W^{1,p}(\mathbb{R}^n) は連続な代表元をもち、すべての x,yx,y で

∣u(x)−u(y)∣≤C∣x−y∣γ∥∇u∥p,∥u∥∞≤C∥u∥W1,p|u(x)-u(y)|\le C|x-y|^\gamma\|\nabla u\|_p,\qquad\|u\|_\infty\le C\|u\|_{W^{1,p}}

(CC は n,pn,p のみによる)。

証明(定理 4.5)

p<∞p\lt\infty とし(p=∞p=\infty も同様)、まず u∈Cc1u\in C_c^1 とします。∣Br∣|B_r| を半径 rr の球の体積とし、可測集合 WW(0<∣W∣<∞0\lt|W|\lt\infty)上の平均を AW(g)=∣W∣−1∫WgA_W(g)=|W|^{-1}\int_Wg と書きます。

第 1 段: 球上の平均との差. z∈B(x,r)z\in B(x,r) について ∣u(z)−u(x)∣≤∫01∣∇u(x+t(z−x))∣ ∣z−x∣ dt|u(z)-u(x)|\le\int_0^1|\nabla u(x+t(z-x))|\,|z-x|\,dt です。zz で積分し、各 tt で線形変数変換 w=x+t(z−x)w=x+t(z-x)(dz=t−ndwdz=t^{-n}dw)をすると

∫B(x,r)∣u(z)−u(x)∣ dz≤r∫01t−n∫B(x,tr)∣∇u(w)∣ dw dt≤r∥∇u∥p∫01t−n∣Btr∣1−1/pdt\int_{B(x,r)}|u(z)-u(x)|\,dz\le r\int_0^1t^{-n}\int_{B(x,tr)}|\nabla u(w)|\,dw\,dt\le r\|\nabla u\|_p\int_0^1t^{-n}|B_{tr}|^{1-1/p}dt

(Hölder の不等式)。∣Btr∣=tn∣Br∣|B_{tr}|=t^n|B_r| で ∫01t−n/pdt=(1−n/p)−1\int_0^1t^{-n/p}dt=(1-n/p)^{-1}(p>np\gt n)なので、AB(x,r)(∣u−u(x)∣)≤C rγ∥∇u∥pA_{B(x,r)}(|u-u(x)|)\le C\,r^{\gamma}\|\nabla u\|_p です。

第 2 段: Hölder 評価. r=∣x−y∣r=|x-y|、W=B(x,r)∩B(y,r)W=B(x,r)\cap B(y,r) とすると、WW は中点を中心とする半径 r/2r/2 の球を含むので ∣W∣≥2−n∣Br∣|W|\ge2^{-n}|B_r| です。

∣u(x)−u(y)∣≤AW(∣u(x)−u∣)+AW(∣u−u(y)∣)≤2n(AB(x,r)(∣u−u(x)∣)+AB(y,r)(∣u−u(y)∣))≤C rγ∥∇u∥p.|u(x)-u(y)|\le A_W(|u(x)-u|)+A_W(|u-u(y)|)\le2^n\bigl(A_{B(x,r)}(|u-u(x)|)+A_{B(y,r)}(|u-u(y)|)\bigr)\le C\,r^\gamma\|\nabla u\|_p .

また第 1 段で r=1r=1 として ∣u(x)∣≤AB(x,1)(∣u∣)+C∥∇u∥p≤C(∥u∥p+∥∇u∥p)|u(x)|\le A_{B(x,1)}(|u|)+C\|\nabla u\|_p\le C(\|u\|_p+\|\nabla u\|_p) です(Hölder の不等式で AB(x,1)(∣u∣)≤∣B1∣−1/p∥u∥pA_{B(x,1)}(|u|)\le|B_1|^{-1/p}\|u\|_p)。

第 3 段: 一般の uu. uj∈Cc∞u_j\in C_c^\infty を uj→uu_j\to u(W1,pW^{1,p})と取ると、上限評価から (uj)(u_j) は一様 Cauchy 列で、連続関数 u~\tilde u に一様収束します。LpL^p 収束の部分列は a.e. 収束するので u~=u\tilde u=u a.e. で、評価は極限で保たれます。

n=1n=1、p=2p=2 では、H1(R)H^1(\mathbb{R}) の元は 1/21/2-Hölder 連続です(演習 10.2)。

「HsH^s で有界な列」から「HtH^t(t<st\lt s)で収束する部分列」を取り出すのが目標です。台が固定されていると u^j\hat u_j が滑らか(一様に Lipschitz)になるので、低周波の部分には Arzelà–Ascoli の定理が使えます。高周波の部分は、t<st\lt s なので重み ⟨ξ⟩2(t−s)\langle\xi\rangle^{2(t-s)} が小さく、全体の寄与が小さくなります。証明はこの低周波と高周波の分割です。

定理 5.1(Rellich のコンパクト性定理)✓

K⊂RnK\subset\mathbb{R}^n をコンパクト集合、0≤t<s0\le t\lt s とする。supp⁡uj⊂K\operatorname{supp}u_j\subset K かつ sup⁡j∥uj∥Hs<∞\sup_j\|u_j\|_{H^s}\lt\infty を満たす列 (uj)(u_j) は、HtH^t で収束する部分列をもつ。

証明(定理 5.1)

M=sup⁡j∥uj∥HsM=\sup_j\|u_j\|_{H^s} とします。uj∈L2u_j\in L^2 は KK の外で 00 なので L1L^1 にも入り、u^j(ξ)=∫Kuj(x)e−ix⋅ξdx\hat u_j(\xi)=\int_Ku_j(x)e^{-ix\cdot\xi}dx です。Cauchy–Schwarz の不等式と積分記号下の微分から

∣u^j(ξ)∣≤∣K∣1/2∥uj∥2≤∣K∣1/2M,∣∇ξu^j(ξ)∣≤(∫K∣x∣2dx)1/2M.|\hat u_j(\xi)|\le|K|^{1/2}\|u_j\|_2\le|K|^{1/2}M,\qquad|\nabla_\xi\hat u_j(\xi)|\le\Bigl(\int_K|x|^2dx\Bigr)^{1/2}M .

したがって (u^j)(\hat u_j) は各閉球 Bˉ(0,R)\bar B(0,R) 上で一様有界かつ同程度連続(一様 Lipschitz)です。Arzelà–Ascoli の定理(定理 3.3[Arzelà–Ascoli と Stone–Weierstrass])と R=1,2,…R=1,2,\ldots についての対角線論法で、u^j\hat u_j がすべてのコンパクト集合上で一様収束する部分列(同じ記号で書く)が取れます。この部分列について、R>0R\gt0 を固定すると

∥uj−uk∥Ht2=(2π)−n(∫∣ξ∣≤R+∫∣ξ∣>R)⟨ξ⟩2t∣u^j−u^k∣2≤CRsup⁡∣ξ∣≤R∣u^j−u^k∣2+⟨R⟩2(t−s) 4M2\|u_j-u_k\|_{H^t}^2=(2\pi)^{-n}\Bigl(\int_{|\xi|\le R}+\int_{|\xi|\gt R}\Bigr)\langle\xi\rangle^{2t}|\hat u_j-\hat u_k|^2\le C_R\sup_{|\xi|\le R}|\hat u_j-\hat u_k|^2+\langle R\rangle^{2(t-s)}\,4M^2

です(第 2 項では ⟨ξ⟩2t=⟨ξ⟩2s⟨ξ⟩2(t−s)\langle\xi\rangle^{2t}=\langle\xi\rangle^{2s}\langle\xi\rangle^{2(t-s)} を使った)。先に RR を大きく取って第 2 項を小さくし、次に j,kj,k を大きくすれば第 1 項も小さくなるので、(uj)(u_j) は HtH^t の Cauchy 列です。

系 5.2(有界領域での Rellich の定理)✓

U⊂RnU\subset\mathbb{R}^n が有界開集合なら、包含写像 W01,2(U)→L2(U)W^{1,2}_0(U)\to L^2(U) はコンパクトである。したがって、W01,2(U)W^{1,2}_0(U) を形式定義域とする Dirichlet Laplacian −ΔD-\Delta_D はコンパクトなレゾルベントをもち、そのスペクトルは重複度有限の固有値 0<λ1≤λ2≤⋯→∞0\lt\lambda_1\le\lambda_2\le\cdots\to\infty からなる。

証明(系 5.2)

Cc∞(U)C_c^\infty(U) の元を 00 で延長すると Rn\mathbb{R}^n 上の Cc∞C_c^\infty 関数で、W1,2W^{1,2} ノルムは変わりません。閉包を取ると、W01,2(U)W^{1,2}_0(U) は supp⁡⊂Uˉ\operatorname{supp}\subset\bar U を満たす H1(Rn)H^1(\mathbb{R}^n) の閉部分空間と等長に同一視されます(命題 3.2)。定理 5.1(s=1s=1、t=0t=0、K=UˉK=\bar U)から、有界列は L2L^2 で収束する部分列をもちます。Dirichlet Laplacian は閉形式 ∫∣∇u∣2\int|\nabla u|^2(定義域 W01,2W^{1,2}_0)の表す作用素(定理 4.2[自己共役性の判定])で、(−ΔD+1)−1(-\Delta_D+1)^{-1} は L2L^2 から W01,2W^{1,2}_0 への有界作用素と包含写像の合成なのでコンパクトです。Hilbert–Schmidt の定理(定理 4.2[コンパクト作用素・Hilbert–Schmidt 作用素・トレースクラス])から固有値の主張が出ます。λ1>0\lambda_1\gt0 は次のようにわかります。λ1=0\lambda_1=0 なら固有関数 u∈W01,2(U)u\in W^{1,2}_0(U)、∥u∥2=1\|u\|_2=1 で ∫∣∇u∣2=0\int|\nabla u|^2=0 となるものがあります。00 で延長した u∈H1(Rn)u\in H^1(\mathbb{R}^n) は ∣ξ∣2∣u^∣2=0|\xi|^2|\hat u|^2=0 a.e. なので u^=0\hat u=0、すなわち u=0u=0 となり、∥u∥2=1\|u\|_2=1 に矛盾します。

台を固定する仮定は外せません。uj(x)=u(x−je1)u_j(x)=u(x-je_1)(平行移動)は HsH^s で有界ですが、どの HtH^t でも収束する部分列をもちません(∥uj−uk∥L22→2∥u∥22\|u_j-u_k\|_{L^2}^2\to2\|u\|_2^2)。また t=st=s も許されません。χ∈Cc∞\chi\in C_c^\infty を固定し uj(x)=⟨j⟩−seijx1χ(x)u_j(x)=\langle j\rangle^{-s}e^{ijx_1}\chi(x) とすると、u^j(ξ)=⟨j⟩−sχ^(ξ−je1)\hat u_j(\xi)=\langle j\rangle^{-s}\hat\chi(\xi-je_1) から ∥uj∥Hs\|u_j\|_{H^s} は有界で 00 に近づかず、一方 L2L^2 では uj→0u_j\to0 なので、HsH^s で収束する部分列があれば極限は 00 でなければならず矛盾します。

x=(x′,xn)∈Rn−1×Rx=(x',x_n)\in\mathbb{R}^{n-1}\times\mathbb{R} と書き、u∈S(Rn)u\in\mathcal{S}(\mathbb{R}^n) に対して γu(x′)=u(x′,0)\gamma u(x')=u(x',0) を超平面 {xn=0}\{x_n=0\} へのトレース(制限)とします。L2L^2 関数は零集合の上で値をもたないので、γ\gamma を L2L^2 に延ばすことはできません。問題は、どれだけの滑らかさがあれば延びるかです。

Fourier 側で見ると、xn=0x_n=0 での値は「ξn\xi_n 方向の全周波数成分の和」(積分)に当たります。その積分を Cauchy–Schwarz の不等式で抑えるとき、ξn\xi_n について ⟨ξ⟩−2s\langle\xi\rangle^{-2s} を積分した量が ⟨ξ′⟩1−2s\langle\xi'\rangle^{1-2s} に比例することから、滑らかさが 1/21/2 だけ下がります。

定理 6.1(トレース定理)✓

s>1/2s\gt1/2 とする。γ\gamma は有界線形写像 γ:Hs(Rn)→Hs−1/2(Rn−1)\gamma:H^s(\mathbb{R}^n)\to H^{s-1/2}(\mathbb{R}^{n-1}) に一意に延び、∥γu∥Hs−1/2≤cs1/2∥u∥Hs\|\gamma u\|_{H^{s-1/2}}\le c_s^{1/2}\|u\|_{H^s}、cs=12π∫R(1+τ2)−sdτc_s=\frac1{2\pi}\int_{\mathbb{R}}(1+\tau^2)^{-s}d\tau。さらに γ\gamma は全射で、有界な右逆写像 E:Hs−1/2(Rn−1)→Hs(Rn)E:H^{s-1/2}(\mathbb{R}^{n-1})\to H^s(\mathbb{R}^n)(γE=1\gamma E=1)をもつ。

証明(定理 6.1)

第 1 段: Fourier 側の公式. u∈S(Rn)u\in\mathcal{S}(\mathbb{R}^n) について、反転公式を ξn\xi_n だけ先に積分する形に書くと

u(x′,0)=(2π)−(n−1)∫Rn−1eix′⋅ξ′ g(ξ′) dξ′,g(ξ′)=12π∫Ru^(ξ′,ξn) dξnu(x',0)=(2\pi)^{-(n-1)}\int_{\mathbb{R}^{n-1}}e^{ix'\cdot\xi'}\,g(\xi')\,d\xi',\qquad g(\xi')=\frac1{2\pi}\int_{\mathbb{R}}\hat u(\xi',\xi_n)\,d\xi_n

です(Fubini)。g∈S(Rn−1)g\in\mathcal{S}(\mathbb{R}^{n-1}) なので、Rn−1\mathbb{R}^{n-1} での反転公式の一意性(定理 4.2[Schwartz 空間と緩増加超関数] の 2)から γu^=g\widehat{\gamma u}=g です。

第 2 段: 評価. Cauchy–Schwarz の不等式で

∣g(ξ′)∣2≤14π2∫⟨ξ⟩2s∣u^(ξ′,ξn)∣2dξn⋅∫(1+∣ξ′∣2+ξn2)−sdξn.|g(\xi')|^2\le\frac1{4\pi^2}\int\langle\xi\rangle^{2s}|\hat u(\xi',\xi_n)|^2d\xi_n\cdot\int(1+|\xi'|^2+\xi_n^2)^{-s}d\xi_n .

最後の積分で ξn=⟨ξ′⟩τ\xi_n=\langle\xi'\rangle\tau と置換すると ⟨ξ′⟩1−2s∫(1+τ2)−sdτ=2πcs⟨ξ′⟩1−2s\langle\xi'\rangle^{1-2s}\int(1+\tau^2)^{-s}d\tau=2\pi c_s\langle\xi'\rangle^{1-2s} で、s>1/2s\gt1/2 なので有限です。両辺に (2π)−(n−1)⟨ξ′⟩2s−1(2\pi)^{-(n-1)}\langle\xi'\rangle^{2s-1} を掛けて ξ′\xi' で積分すると ∥γu∥Hs−1/22≤cs∥u∥Hs2\|\gamma u\|_{H^{s-1/2}}^2\le c_s\|u\|_{H^s}^2 です。S\mathcal{S} は HsH^s で稠密なので、γ\gamma は一意に連続延長されます。この評価は u∈Su\in\mathcal{S} を使わず u^\hat u だけで書けているので、写像 G:u↦12π∫u^(⋅,ξn) dξnG:u\mapsto\frac1{2\pi}\int\hat u(\cdot,\xi_n)\,d\xi_n は Hs(Rn)H^s(\mathbb{R}^n) 全体で定義され、重み (2π)−(n−1)⟨ξ′⟩2s−1(2\pi)^{-(n-1)}\langle\xi'\rangle^{2s-1} の L2L^2 への有界写像です。S\mathcal{S} 上で γu^=Gu\widehat{\gamma u}=Gu なので、連続性からすべての u∈Hsu\in H^s で γu^=Gu\widehat{\gamma u}=Gu が成り立ちます。

第 3 段: 右逆. h∈Hs−1/2(Rn−1)h\in H^{s-1/2}(\mathbb{R}^{n-1}) に対し

Eh^(ξ′,ξn)=cs−1 h^(ξ′) ⟨ξ′⟩2s−1⟨ξ⟩−2s\widehat{Eh}(\xi',\xi_n)=c_s^{-1}\,\hat h(\xi')\,\langle\xi'\rangle^{2s-1}\langle\xi\rangle^{-2s}

と定めます。第 2 段と同じ置換で ∫⟨ξ⟩2s∣Eh^∣2dξn=cs−2∣h^∣2⟨ξ′⟩4s−2⋅2πcs⟨ξ′⟩1−2s\int\langle\xi\rangle^{2s}|\widehat{Eh}|^2d\xi_n=c_s^{-2}|\hat h|^2\langle\xi'\rangle^{4s-2}\cdot2\pi c_s\langle\xi'\rangle^{1-2s} なので、∥Eh∥Hs2=cs−1∥h∥Hs−1/22\|Eh\|_{H^s}^2=c_s^{-1}\|h\|_{H^{s-1/2}}^2 です。第 2 段の最後の注意から γEh^=G(Eh)=cs−1h^⟨ξ′⟩2s−1⋅12π∫⟨ξ⟩−2sdξn=cs−1h^⟨ξ′⟩2s−1⋅cs⟨ξ′⟩1−2s=h^\widehat{\gamma Eh}=G(Eh)=c_s^{-1}\hat h\langle\xi'\rangle^{2s-1}\cdot\frac1{2\pi}\int\langle\xi\rangle^{-2s}d\xi_n=c_s^{-1}\hat h\langle\xi'\rangle^{2s-1}\cdot c_s\langle\xi'\rangle^{1-2s}=\hat h、すなわち γEh=h\gamma Eh=h です。

s=1/2s=1/2 では積分 ∫(1+τ2)−1/2dτ\int(1+\tau^2)^{-1/2}d\tau が発散し、実際に H1/2(Rn)H^{1/2}(\mathbb{R}^n) からのトレースは L2(Rn−1)L^2(\mathbb{R}^{n-1}) に延びません(演習 10.4)。半空間 {xn>0}\{x_n\gt0\} や滑らかな境界をもつ領域では、局所座標と 1 の分割でこの定理を貼り合わせて γ:H1(U)→H1/2(∂U)\gamma:H^1(U)\to H^{1/2}(\partial U) を得ます。W01,2(U)W^{1,2}_0(U) はこの γ\gamma の核に一致します(滑らかな境界の場合。証明は Evans §5.5 を参照)。

d≥3d\ge3 の Hardy の不等式 ∫∣u∣2/∣x∣2≤4(d−2)2∫∣∇u∣2\int|u|^2/|x|^2\le\frac4{(d-2)^2}\int|\nabla u|^2(u∈H1(Rd)u\in H^1(\mathbb{R}^d))は 定理 3.1[シュレーディンガー作用素の自己共役性と束縛状態] で、定数の最良性は 命題 3.2[シュレーディンガー作用素の自己共役性と束縛状態] で証明されています。ここでは 1 次元の半直線版を示します。境界条件の役割がよく見えるからです。

命題 7.1(半直線上の Hardy の不等式)✓

u∈W01,2(0,∞)u\in W^{1,2}_0(0,\infty) ならば

∫0∞∣u(x)∣2x2 dx≤4∫0∞∣u′(x)∣2 dx.\int_0^\infty\frac{|u(x)|^2}{x^2}\,dx\le4\int_0^\infty|u'(x)|^2\,dx .
証明(命題 7.1)

u∈Cc∞((0,∞))u\in C_c^\infty((0,\infty)) とします。部分積分(境界項は台がコンパクトなので 00)で

∫0∞∣u∣2x2dx=∫0∞∣u∣2(−1x)′dx=∫0∞2 Re(uˉ u′)xdx≤2(∫∣u∣2x2)1/2(∫∣u′∣2)1/2\int_0^\infty\frac{|u|^2}{x^2}dx=\int_0^\infty|u|^2\Bigl(-\frac1x\Bigr)'dx=\int_0^\infty\frac{2\,\mathrm{Re}(\bar u\,u')}{x}dx\le2\Bigl(\int\frac{|u|^2}{x^2}\Bigr)^{1/2}\Bigl(\int|u'|^2\Bigr)^{1/2}

で、左辺は有限なので割れば Cc∞C_c^\infty での不等式です。一般の u∈W01,2u\in W^{1,2}_0 には uj∈Cc∞u_j\in C_c^\infty、uj→uu_j\to u(W1,2W^{1,2})を取り、部分列の a.e. 収束と Fatou の補題で移ります。

境界条件は本質的です。u=1u=1 を [0,1][0,1] で、11 から 00 へ [1,2][1,2] で線形に落とした関数は W1,2(0,∞)W^{1,2}(0,\infty) に入りますが、∫01x−2dx=∞\int_0^1x^{-2}dx=\infty です。{0}\{0\} の「容量」が正であることの表れで、d≥3d\ge3 で境界条件が不要なのは、点の容量が 00 だからです。

円周 T=R/2πZ\mathbb{T}=\mathbb{R}/2\pi\mathbb{Z} 上の関数 u∈L2(T)u\in L^2(\mathbb{T}) の Fourier 係数を u^(k)=12π∫−ππu(θ)e−ikθdθ\hat u(k)=\frac1{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}u(\theta)e^{-ik\theta}d\theta とし(フーリエ級数 と同じ)、Hs(T)={u∣∑k⟨k⟩2s∣u^(k)∣2<∞}H^s(\mathbb{T})=\{u\mid\sum_k\langle k\rangle^{2s}|\hat u(k)|^2\lt\infty\} とおきます。s=1/2s=1/2 の空間は、ループ群・共形場理論・境界値問題で特別な役割を果たします。理由は次の 2 つの表示にあります。

定理 8.1(H1/2(𝕋)H^{1/2}(𝕋) の 2 つの表示)✓

u∈L2(T)u\in L^2(\mathbb{T}) について、次の 3 つの量は(+∞+\infty を許して)等しい。

2π∑k∈Z∣k∣ ∣u^(k)∣2=12π∫−ππ ⁣ ⁣∫−ππ∣u(θ+t)−u(θ)∣24sin⁡2(t/2) dθ dt=∫D∣∇U∣2 dx dy.2\pi\sum_{k\in\mathbb{Z}}|k|\,|\hat u(k)|^2=\frac1{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}\!\!\int_{-\pi}^{\pi}\frac{|u(\theta+t)-u(\theta)|^2}{4\sin^2(t/2)}\,d\theta\,dt=\int_{\mathbb{D}}|\nabla U|^2\,dx\,dy .

ここで U(reiθ)=∑ku^(k)r∣k∣eikθU(re^{i\theta})=\sum_k\hat u(k)r^{|k|}e^{ik\theta} は uu の単位円板 D\mathbb{D} への調和拡張(Poisson 積分)である。とくに u∈H1/2(T)u\in H^{1/2}(\mathbb{T}) であることは、これらが有限であることと同値である。

証明(定理 8.1)

第 1 の等式. tt を固定すると u(⋅+t)−uu(\cdot+t)-u の Fourier 係数は (eikt−1)u^(k)(e^{ikt}-1)\hat u(k) なので、Parseval の等式(定理 5.1[フーリエ級数])から ∫−ππ∣u(θ+t)−u(θ)∣2dθ=2π∑k∣eikt−1∣2∣u^(k)∣2=2π∑k4sin⁡2(kt/2)∣u^(k)∣2\int_{-\pi}^\pi|u(\theta+t)-u(\theta)|^2d\theta=2\pi\sum_k|e^{ikt}-1|^2|\hat u(k)|^2=2\pi\sum_k4\sin^2(kt/2)|\hat u(k)|^2 です。tt で積分すると(Tonelli)、

∫−ππsin⁡2(kt/2)sin⁡2(t/2)dt=2π∣k∣\int_{-\pi}^{\pi}\frac{\sin^2(kt/2)}{\sin^2(t/2)}dt=2\pi|k|

を使えば第 1 の等式です。この積分は k≥1k\ge1 について、Fejér 核(補題 4.1[フーリエ級数]、N+1=kN+1=k)の正規化 12π∫Fk−1=1\frac1{2\pi}\int F_{k-1}=1 そのものです。

第 2 の等式. r<1r\lt1 では級数は C∞C^\infty で項別微分でき、極座標で ∣∇U∣2=∣∂rU∣2+r−2∣∂θU∣2|\nabla U|^2=|\partial_rU|^2+r^{-2}|\partial_\theta U|^2 です。θ\theta についての Parseval の等式から

∫02π(∣∂rU∣2+r−2∣∂θU∣2)dθ=2π∑k2k2r2∣k∣−2∣u^(k)∣2\int_0^{2\pi}\bigl(|\partial_rU|^2+r^{-2}|\partial_\theta U|^2\bigr)d\theta=2\pi\sum_k2k^2r^{2|k|-2}|\hat u(k)|^2

で、r drr\,dr を掛けて 00 から 11 まで積分すると(単調収束定理)∫012k2r2∣k∣−1dr=∣k∣\int_0^12k^2r^{2|k|-1}dr=|k| から 2π∑k∣k∣∣u^(k)∣22\pi\sum_k|k||\hat u(k)|^2 を得ます。

3 つ目の表示から、H1/2(T)H^{1/2}(\mathbb{T}) は「有限な Dirichlet エネルギーをもつ円板上の関数の境界値」の空間で、トレース定理(定理 6.1、s=1s=1)の円板版になっています。2 つ目の表示は Fourier を使わない内在的な定義で、H1/2H^{1/2} が円周の微分同相(再パラメータ化)で保たれることの証明に使えます。∑k∣k∣∣u^(k)∣2\sum_k|k||\hat u(k)|^2 は uu の値を T\mathbb{T} の上で回したときの「巻き付きの大きさ」でもあり、u=eimθu=e^{im\theta} なら ∣m∣|m| です。

ベクトル場 u=(u1,…,un)u=(u_1,\ldots,u_n) の勾配全体 ∇u=(∂jui)i,j\nabla u=(\partial_ju_i)_{i,j} は、発散 div⁡u=∑i∂iui\operatorname{div}u=\sum_i\partial_iu_i と回転 curl⁡u=(∂iuj−∂jui)i<j\operatorname{curl}u=(\partial_iu_j-\partial_ju_i)_{i\lt j} だけで制御できます。Maxwell 方程式や Hodge 理論、Navier–Stokes 方程式で使われる評価です。

定理 9.1(全空間の Gaffney 等式)✓

u∈H1(Rn;Cn)u\in H^1(\mathbb{R}^n;\mathbb{C}^n) について

∥∇u∥22=∥div⁡u∥22+∥curl⁡u∥22,∥curl⁡u∥22=∑i<j∥∂iuj−∂jui∥22.\|\nabla u\|_2^2=\|\operatorname{div}u\|_2^2+\|\operatorname{curl}u\|_2^2,\qquad\|\operatorname{curl}u\|_2^2=\sum_{i\lt j}\|\partial_iu_j-\partial_ju_i\|_2^2 .

とくに ∥u∥H12=∥u∥22+∥div⁡u∥22+∥curl⁡u∥22\|u\|_{H^1}^2=\|u\|_2^2+\|\operatorname{div}u\|_2^2+\|\operatorname{curl}u\|_2^2。

証明(定理 9.1)

Plancherel の定理と ∂jui^=iξju^i\widehat{\partial_ju_i}=i\xi_j\hat u_i から、各 ξ\xi で

∣ξ∣2∣u^∣2=∣ξ⋅u^∣2+∑i<j∣ξiu^j−ξju^i∣2|\xi|^2|\hat u|^2=|\xi\cdot\hat u|^2+\sum_{i\lt j}|\xi_i\hat u_j-\xi_j\hat u_i|^2

を示せば十分です(両辺に (2π)−n(2\pi)^{-n} を掛けて積分する)。これは Lagrange の恒等式です。右辺を展開すると ∑i,jξiξju^ˉiu^j+∑i<j(ξi2∣u^j∣2+ξj2∣u^i∣2−2 Re(ξiξju^ˉiu^j))\sum_{i,j}\xi_i\xi_j\bar{\hat u}_i\hat u_j+\sum_{i\lt j}(\xi_i^2|\hat u_j|^2+\xi_j^2|\hat u_i|^2-2\,\mathrm{Re}(\xi_i\xi_j\bar{\hat u}_i\hat u_j)) で、交差項は打ち消し、∑iξi2∣u^i∣2+∑i≠jξi2∣u^j∣2=∣ξ∣2∣u^∣2\sum_i\xi_i^2|\hat u_i|^2+\sum_{i\neq j}\xi_i^2|\hat u_j|^2=|\xi|^2|\hat u|^2 が残ります。

注意 9.2(有界領域での Gaffney 不等式)

有界で滑らかな境界をもつ領域 UU では、境界条件(法成分 u⋅ν=0u\cdot\nu=0 または接成分 u×ν=0u\times\nu=0)のもとで ∥u∥H1(U)≤C(∥u∥L2+∥div⁡u∥L2+∥curl⁡u∥L2)\|u\|_{H^1(U)}\le C(\|u\|_{L^2}+\|\operatorname{div}u\|_{L^2}+\|\operatorname{curl}u\|_{L^2}) が成り立ちます。これが元来の Gaffney 不等式で、証明は 定理 9.1 の部分積分版に境界の曲率から来る項 ∫∂U(第二基本形式)(u,u)\int_{\partial U}(\text{第二基本形式})(u,u) が加わり、それをトレース定理で抑えます(G. Schwarz, Hodge Decomposition, Lecture Notes in Math. 1607, Springer, 1995 の第 2 章)。本章では全空間の等式までを証明し、領域版は主張にとどめます。

演習 10.1標準

n≥2n\ge2、1≤p<n1\le p\lt n、u(x)=∣x∣−au(x)=|x|^{-a}(0<a0\lt a)とし U=B(0,1)U=B(0,1) とする。u∈W1,p(U)u\in W^{1,p}(U) となるのは a<(n−p)/pa\lt(n-p)/p のときであることを示せ(弱微分が古典的な勾配 −a∣x∣−a−2x-a|x|^{-a-2}x に一致することも確かめよ)。

解答

∣∇u∣=a∣x∣−a−1|\nabla u|=a|x|^{-a-1} で、∫U∣x∣−bdx<∞  ⟺  b<n\int_U|x|^{-b}dx\lt\infty\iff b\lt n(極座標。命題 6.6[ℝ^d の変数変換公式と極座標])なので、u∈Lpu\in L^p は ap<nap\lt n、∇u∈Lp\nabla u\in L^p は (a+1)p<n(a+1)p\lt n、すなわち a<(n−p)/pa\lt(n-p)/p と同値です。弱微分であること: φ∈Cc∞(U)\varphi\in C_c^\infty(U) について B(0,ε)B(0,\varepsilon) の外で部分積分すると ∫∣x∣>εu ∂iφ=−∫∣x∣>ε∂iu φ−∫∣x∣=εuφ νi dS\int_{|x|\gt\varepsilon}u\,\partial_i\varphi=-\int_{|x|\gt\varepsilon}\partial_iu\,\varphi-\int_{|x|=\varepsilon}u\varphi\,\nu_i\,dS です。境界項は ≤∥φ∥∞ε−a∣Sn−1∣εn−1→0\le\|\varphi\|_\infty\varepsilon^{-a}|S^{n-1}|\varepsilon^{n-1}\to0(a<n−1a\lt n-1 は a<(n−p)/p≤n−1a\lt(n-p)/p\le n-1 から従う)で、他の項は優収束定理で ε→0\varepsilon\to0 の極限に移れます。

演習 10.2易

u∈H1(R)u\in H^1(\mathbb{R}) の連続な代表元が ∣u(x)−u(y)∣≤∣x−y∣1/2∥u′∥2|u(x)-u(y)|\le|x-y|^{1/2}\|u'\|_2 と ∥u∥∞2≤∥u∥2∥u′∥2\|u\|_\infty^2\le\|u\|_2\|u'\|_2 を満たすことを、u∈Cc∞u\in C_c^\infty の場合に直接示せ。

解答

∣u(x)−u(y)∣=∣∫yxu′∣≤∣x−y∣1/2∥u′∥2|u(x)-u(y)|=|\int_y^xu'|\le|x-y|^{1/2}\|u'\|_2(Cauchy–Schwarz)。また ∣u(x)∣2=∫−∞x(∣u∣2)′=∫−∞x2 Re(uˉu′)≤2∫−∞x∣u∣∣u′∣|u(x)|^2=\int_{-\infty}^x(|u|^2)'=\int_{-\infty}^x2\,\mathrm{Re}(\bar uu')\le2\int_{-\infty}^x|u||u'|、同様に ∣u(x)∣2≤2∫x∞∣u∣∣u′∣|u(x)|^2\le2\int_x^\infty|u||u'| なので、足して 2∣u(x)∣2≤2∫∣u∣∣u′∣≤2∥u∥2∥u′∥22|u(x)|^2\le2\int|u||u'|\le2\|u\|_2\|u'\|_2 です。一般の H1H^1 関数には 定理 2.4 と 定理 4.5 の第 3 段と同じ極限操作で移ります。

演習 10.3難

n=2n=2 とする。u(x)=χ(x)log⁡log⁡(e+1/∣x∣)u(x)=\chi(x)\log\log(e+1/|x|)(χ∈Cc∞\chi\in C_c^\infty、原点の近くで 11)は H1(R2)H^1(\mathbb{R}^2) に入るが有界でないことを示し、定理 4.1 が s=n/2s=n/2 で成り立たないことを確かめよ。

解答

原点の近くで r=∣x∣r=|x| とすると ∣∇u∣=1log⁡(e+1/r)⋅1e+1/r⋅1r2≤1rlog⁡(1/r)|\nabla u|=\frac{1}{\log(e+1/r)}\cdot\frac{1}{e+1/r}\cdot\frac1{r^2}\le\frac{1}{r\log(1/r)}(rr が小さいとき)です。∫r<1/21r2log⁡2(1/r) 2πr dr=2π∫log⁡2∞dtt2<∞\int_{r\lt1/2}\frac{1}{r^2\log^2(1/r)}\,2\pi r\,dr=2\pi\int_{\log2}^\infty\frac{dt}{t^2}\lt\infty(t=log⁡(1/r)t=\log(1/r))なので ∇u∈L2\nabla u\in L^2 で、u∈L2u\in L^2 も明らかです。原点以外では uu は滑らかで、原点の近傍を除いて部分積分した境界項は εlog⁡log⁡(1/ε)→0\varepsilon\log\log(1/\varepsilon)\to0 なので古典的な勾配が弱微分です。一方 u(x)→∞u(x)\to\infty(x→0x\to0)で、どんな代表元も原点の近傍で本質的に有界ではありません。

演習 10.4難

n=2n=2 とする。u^N(ξ)=1{1≤∣ξ2∣≤N} ⟨ξ⟩−1(log⁡N)−1/2ϕ(ξ1)\hat u_N(\xi)=\mathbf{1}_{\{1\le|\xi_2|\le N\}}\,\langle\xi\rangle^{-1}(\log N)^{-1/2}\phi(\xi_1)(ϕ∈Cc∞(R)\phi\in C_c^\infty(\mathbb{R})、ϕ≥0\phi\ge0、ϕ≠0\phi\ne0)で uN∈Su_N\in\mathcal{S} に近い関数を定めると、∥uN∥H1/2\|u_N\|_{H^{1/2}} は有界だが ∥γuN∥L2→∞\|\gamma u_N\|_{L^2}\to\infty となることを示せ(S\mathcal{S} の元で近似すれば、トレースが H1/2(R2)→L2(R)H^{1/2}(\mathbb{R}^2)\to L^2(\mathbb{R}) に有界に延びないことがわかる)。

解答

∥uN∥H1/22=(2π)−2(log⁡N)−1∫ϕ(ξ1)2∫1≤∣ξ2∣≤N⟨ξ⟩−1dξ2 dξ1\|u_N\|_{H^{1/2}}^2=(2\pi)^{-2}(\log N)^{-1}\int\phi(\xi_1)^2\int_{1\le|\xi_2|\le N}\langle\xi\rangle^{-1}d\xi_2\,d\xi_1 で、ϕ\phi の台の上では ⟨ξ⟩≥∣ξ2∣\langle\xi\rangle\ge|\xi_2| なので内側は ≤2log⁡N\le2\log N、全体は有界です。一方 定理 6.1 の第 1 段の公式から γuN^(ξ1)=12π(log⁡N)−1/2ϕ(ξ1)∫1≤∣ξ2∣≤N⟨ξ⟩−1dξ2\widehat{\gamma u_N}(\xi_1)=\frac1{2\pi}(\log N)^{-1/2}\phi(\xi_1)\int_{1\le|\xi_2|\le N}\langle\xi\rangle^{-1}d\xi_2 で、ϕ\phi の台の上で ⟨ξ⟩≤C∣ξ2∣\langle\xi\rangle\le C|\xi_2|(∣ξ2∣≥1|\xi_2|\ge1)なので積分は ≥(2/C)log⁡N\ge(2/C)\log N、よって ∥γuN∥2≥c(log⁡N)1/2→∞\|\gamma u_N\|_2\ge c(\log N)^{1/2}\to\infty です。u^N\hat u_N は不連続ですが、u^N\hat u_N を S\mathcal{S} の関数で重み付き L2L^2 と L1L^1 の両方で近似すれば(第 1 段の公式は u^∈L1\hat u\in L^1 で意味をもつ)、同じ結論が S\mathcal{S} の列で得られます。

演習 10.5標準

UU を有界開集合とする。Rellich の定理を使って、ある CC ですべての u∈W01,2(U)u\in W^{1,2}_0(U) について ∥u∥L2≤C∥∇u∥L2\|u\|_{L^2}\le C\|\nabla u\|_{L^2}(Poincaré の不等式)が成り立つことを背理法で示せ。

解答

成り立たないとすると ∥uj∥2=1\|u_j\|_2=1、∥∇uj∥2→0\|\nabla u_j\|_2\to0 となる uj∈W01,2(U)u_j\in W^{1,2}_0(U) があります。∥uj∥H1\|u_j\|_{H^1} は有界なので、系 5.2 から部分列が L2L^2 で uu に収束し、∥u∥2=1\|u\|_2=1 です。∇uj→0\nabla u_j\to0 と合わせると uju_j は H1H^1 の Cauchy 列で、極限 u∈W01,2u\in W^{1,2}_0 は ∇u=0\nabla u=0 を満たします。00 で延長した u∈H1(Rn)u\in H^1(\mathbb{R}^n) について ∣ξ∣2∣u^∣2=0|\xi|^2|\hat u|^2=0 a.e. なので u^=0\hat u=0、すなわち u=0u=0 となり、∥u∥2=1\|u\|_2=1 に矛盾します。

  • L. C. Evans, Partial Differential Equations, 2nd ed., American Mathematical Society, 2010 — 第 5 章(弱微分、近似、Gagliardo–Nirenberg–Sobolev、Morrey、Rellich、トレース)。
  • R. A. Adams, J. J. F. Fournier, Sobolev Spaces, 2nd ed., Academic Press, 2003 — 第 3 章〜第 6 章。
  • E. H. Lieb, M. Loss, Analysis, 2nd ed., American Mathematical Society, 2001 — 第 7 章・第 8 章(Hˢ と Sobolev 不等式)。
  • G. B. Folland, Introduction to Partial Differential Equations, 2nd ed., Princeton University Press, 1995 — 第 6 章(Fourier 変換による Sobolev 空間とトレース)。
  • G. Schwarz, Hodge Decomposition — A Method for Solving Boundary Value Problems, Lecture Notes in Mathematics 1607, Springer, 1995 — 第 2 章(Gaffney 不等式)。

このテーマの 100 本ノック(100 問)

執筆: Claude Code(Opus 5.5)、Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 4 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

この記事の誤りを報告する ・運営: 夢現技研合同会社 ・料金 ・利用条件 ・特定商取引法に基づく表記

© 2026 夢現技研合同会社 ・コード例は MIT ライセンスです。