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Paley–Wiener の定理・Hardy 空間・Hilbert 変換:上半平面の正則関数と境界値

対象読者: 本テーマ第 2〜3 章のフーリエ変換と緩増加超関数、および調和関数とポアソン積分(円板のディリクレ問題)を学んだ修士レベルの人。ハーディ空間は初めてでも読めます。

前提となる記事:Schwartz 空間と緩増加超関数:Fréchet 空間 𝒮 とその双対で Fourier 変換を完成させる、調和関数と Poisson 積分:円板の Dirichlet 問題から Harnack・Herglotz・鏡像原理へ、ℝⁿ 上のフーリエ変換:反転公式・Plancherel の定理・Young の不等式・Poisson 和公式・Hermite 関数

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実数直線上の関数 ff を、その上の半平面(上半平面)に「なめらかに延ばす」ことを考えます。熱が境界から内側へ広がるように、境界の値から内側の値が決まります。延ばした関数が複素数の意味で正則になる条件は、ff の周波数成分が正の側にしかないことと同じだと分かり、そこから「周波数の符号を反転させる操作」としての Hilbert 変換や、物理で使う境界値の公式が出てきます。この記事を読むと、因果律や、レゾルベントからスペクトルを読み取る公式の数学的な裏付けが分かります。以下の箇条書きは全体の地図で、用語は各節で定義します。

  • 上半平面 C+={z=x+iy∣y>0}\mathbb{C}_+=\{z=x+iy\mid y\gt0\} の Poisson 核 Py(x)=1πyx2+y2P_y(x)=\frac1\pi\frac{y}{x^2+y^2} は P^y(ξ)=e−y∣ξ∣\hat P_y(\xi)=e^{-y|\xi|} を満たし、境界の関数 ff を調和関数 Py∗fP_y*f に延ばします。
  • Paley–Wiener の定理(半平面版): Hardy 空間 H2(C+)H^2(\mathbb{C}_+) の関数は、ちょうど [0,∞)[0,\infty) に台をもつ L2L^2 関数の Fourier 積分 F(z)=12π∫0∞g(ξ)eizξdξF(z)=\frac1{2\pi}\int_0^\infty g(\xi)e^{iz\xi}d\xi です。全平面版: f^\hat f の台が [−A,A][-A,A] に入ることは、ff が指数型 AA の整関数(∣F(z)∣≤CeA∣Im z∣|F(z)|\le Ce^{A|\mathrm{Im}\,z|} を満たすもの)に延びることと同値です。
  • Hilbert 変換 Hf=F−1(−i sgn ξ f^)Hf=\mathcal{F}^{-1}(-i\,\mathrm{sgn}\,\xi\,\hat f) は L2L^2 上のユニタリ(内積を保つ全単射)で、Hf=1πp.v.1x∗fHf=\frac1\pi\mathrm{p.v.}\frac1x*f です。f+iHff+iHf は H2H^2 関数の境界値で、HH は「境界上の調和共役」です。
  • Sokhotski–Plemelj 公式(p.v. は x=0x=0 の両側を対称に避けて積分する「主値」のこと): 1x∓i0=p.v.1x±iπδ\frac1{x\mp i0}=\mathrm{p.v.}\frac1x\pm i\pi\delta。Cauchy 積分の上下からの境界値は ±12f+i2Hf\pm\frac12f+\frac i2Hf で、跳びが ff です。
  • Nevanlinna 関数(C+\mathbb{C}_+ で Im F≥0\mathrm{Im}\,F\ge0)は F(z)=a+bz+∫(1t−z−t1+t2)dμ(t)F(z)=a+bz+\int\bigl(\frac1{t-z}-\frac t{1+t^2}\bigr)d\mu(t) と表され、μ\mu は Stieltjes の反転公式 μ=lim⁡1πIm F(x+iε)dx\mu=\lim\frac1\pi\mathrm{Im}\,F(x+i\varepsilon)dx で復元されます。レゾルベントの行列要素からスペクトル測度を取り出す公式です。
  • Denjoy–Carleman: 導関数の増大列 MkM_k について ∑Mk−1/Mk<∞\sum M_{k-1}/M_k\lt\infty ならコンパクト台の関数が C{Mk}C\{M_k\} に存在します。Gevrey 類 (k!)s(k!)^s(s>1s\gt1。解析関数の類より少し広い滑らかさの類)はこの場合で、Fourier 変換が e−c∣ξ∣1/se^{-c|\xi|^{1/s}} で減衰する滑らかな窓関数が作れます。逆に(MkM_k が対数凸で)和が発散すれば C{Mk}C\{M_k\} は準解析的(ある 1 点での全導関数の値が関数全体を決める)で、Bang の方法による実変数だけの証明を付けています。

量子力学のレゾルベント ⟨ψ,(A−z)−1ψ⟩\langle\psi,(A-z)^{-1}\psi\rangle は、zz が上半平面を動くとき正則で、虚部が正の関数です。そのスペクトル測度は実軸への境界値 z→x+i0z\to x+i0 から読み取れます。散乱理論の極限吸収原理(Mourre 評価と極限吸収原理)、共鳴の Friedrichs 模型(共鳴)、場の量子論の Källén–Lehmann 表示は、すべて「上半平面の正則関数とその境界値」の理論に支えられています。

この理論の基本的な事実は Fourier 変換で見ると透明になります。上半平面で有界な正則関数 eizξe^{iz\xi} は ξ≥0\xi\ge0 のときに限られるので、「上半平面に正則に延びる」ことは「Fourier 変換が正の周波数にしかない」ことに対応します。これが Paley–Wiener の定理の内容で、因果律(応答関数が t<0t\lt0 で 00)と分散関係(Kramers–Kronig)の数学的な根拠でもあります。

本章の Fourier 変換は f^(ξ)=∫e−ixξf(x) dx\hat f(\xi)=\int e^{-ix\xi}f(x)\,dx、F−1g(x)=12π∫g(ξ)eixξdξ\mathcal{F}^{-1}g(x)=\frac1{2\pi}\int g(\xi)e^{ix\xi}d\xi(ℝⁿ 上のフーリエ変換)で、∥f^∥22=2π∥f∥22\|\hat f\|_2^2=2\pi\|f\|_2^2 です。

補題 2.1(Lᵖ での近似単位元)✓

φ∈L1(R)\varphi\in L^1(\mathbb{R})、∫φ=1\int\varphi=1、φy(x)=y−1φ(x/y)\varphi_y(x)=y^{-1}\varphi(x/y) とする。1≤p<∞1\le p\lt\infty、f∈Lpf\in L^p ならば ∥φy∗f∥p≤∥φ∥1∥f∥p\|\varphi_y*f\|_p\le\|\varphi\|_1\|f\|_p かつ ∥φy∗f−f∥p→0\|\varphi_y*f-f\|_p\to0(y↓0y\downarrow0)。

証明(補題 2.1)

φy∗f(x)−f(x)=∫φ(u)(f(x−yu)−f(x)) du\varphi_y*f(x)-f(x)=\int\varphi(u)(f(x-yu)-f(x))\,du です。測度 ∣φ(u)∣du|\varphi(u)|du に対する Hölder の不等式から ∣∫φ(u)g(u)du∣p≤∥φ∥1p−1∫∣φ(u)∣∣g(u)∣pdu|\int\varphi(u)g(u)du|^p\le\|\varphi\|_1^{p-1}\int|\varphi(u)||g(u)|^pdu なので、xx で積分して Tonelli の定理を使うと ∥φy∗f−f∥pp≤∥φ∥1p−1∫∣φ(u)∣ ∥τyuf−f∥pp du\|\varphi_y*f-f\|_p^p\le\|\varphi\|_1^{p-1}\int|\varphi(u)|\,\|\tau_{yu}f-f\|_p^p\,du です。被積分関数は 2p∥f∥pp∣φ∣2^p\|f\|_p^p|\varphi| で抑えられ、平行移動の連続性(補題 2.3[ℝⁿ 上のフーリエ変換])から各 uu で 00 に収束するので、優収束定理で結論を得ます。前半も同じ評価から出ます。

命題 2.2(上半平面の Poisson 核)✓

Py(x)=1πyx2+y2P_y(x)=\frac1\pi\frac y{x^2+y^2}(y>0y\gt0)とし、共役 Poisson 核を Qy(x)=1πxx2+y2Q_y(x)=\frac1\pi\frac x{x^2+y^2} とする。

  1. Py≥0P_y\ge0、∫Py=1\int P_y=1、P^y(ξ)=e−y∣ξ∣\hat P_y(\xi)=e^{-y|\xi|}、Py∗Py′=Py+y′P_y*P_{y'}=P_{y+y'}。
  2. Py(x)+iQy(x)=iπ(x+iy)P_y(x)+iQ_y(x)=\frac{i}{\pi(x+iy)} で、(x,y)↦Py(x)(x,y)\mapsto P_y(x)、Qy(x)Q_y(x) は C+\mathbb{C}_+ 上調和である。
  3. f∈Lp(R)f\in L^p(\mathbb{R})(1≤p≤∞1\le p\le\infty)なら u(x+iy)=(Py∗f)(x)u(x+iy)=(P_y*f)(x) は C+\mathbb{C}_+ 上調和で ∥u(⋅+iy)∥p≤∥f∥p\|u(\cdot+iy)\|_p\le\|f\|_p。p<∞p\lt\infty なら y↓0y\downarrow0 で u(⋅+iy)→fu(\cdot+iy)\to f(LpL^p)。ff が有界一様連続なら一様収束する。
証明(命題 2.2)

1: 正値性と ∫P1=1π[arctan⁡x]−∞∞=1\int P_1=\frac1\pi[\arctan x]_{-\infty}^\infty=1 は直接計算です。∫e−∣x∣e−ixξdx=21+ξ2\int e^{-|x|}e^{-ix\xi}dx=\frac2{1+\xi^2}(x>0x\gt0 と x<0x\lt0 に分けて積分)は可積分なので、反転公式(定理 3.3[ℝⁿ 上のフーリエ変換]、両辺連続なので各点で)から e−∣x∣=∫1π11+ξ2eixξdξe^{-|x|}=\int\frac1\pi\frac{1}{1+\xi^2}e^{ix\xi}d\xi、すなわち P^1(ξ)=e−∣ξ∣\hat P_1(\xi)=e^{-|\xi|} です(偶関数なので符号は問わない)。尺度変換 Py(x)=y−1P1(x/y)P_y(x)=y^{-1}P_1(x/y) から P^y(ξ)=e−y∣ξ∣\hat P_y(\xi)=e^{-y|\xi|} で、Py∗Py′^=e−(y+y′)∣ξ∣\widehat{P_y*P_{y'}}=e^{-(y+y')|\xi|} と反転公式から合成則が出ます。

2: iπ(x+iy)=i(x−iy)π(x2+y2)=y+ixπ(x2+y2)\frac{i}{\pi(x+iy)}=\frac{i(x-iy)}{\pi(x^2+y^2)}=\frac{y+ix}{\pi(x^2+y^2)} です。z↦iπzz\mapsto\frac i{\pi z} は C+\mathbb{C}_+ で正則なので、その実部・虚部は調和です。

3: (x,y)↦Py(x−t)(x,y)\mapsto P_y(x-t) の 2 階までの偏導関数は、C+\mathbb{C}_+ のコンパクト集合上で tt について一様に C/(1+t2)C/(1+t^2) で抑えられ、1/(1+t2)∈Lp′1/(1+t^2)\in L^{p'} なので、積分記号下で微分でき(系 7.4[ルベーグ積分の定義と収束定理])、Δu=∫ΔPy(x−t)f(t)dt=0\Delta u=\int\Delta P_y(x-t)f(t)dt=0 です。ノルムの評価と収束は 補題 2.1(φ=P1\varphi=P_1)です。一様連続の場合は 定理 5.5[直積測度と Fubini–Tonelli の定理] の 2 と同じ議論です。

補題 2.3(境界で 0 の有界調和関数)✓

vv を閉上半平面 C+‾\overline{\mathbb{C}_+} 上の有界連続な実数値関数で、C+\mathbb{C}_+ 上調和、実軸上で 00 とする。このとき v≡0v\equiv0。

この補題は、境界で 00 になる有界な調和関数は 00 しかない、という一意性です。下半平面へ符号を変えて折り返すと全平面の有界調和関数になり、定数になる、という方針で示します。

証明(補題 2.3)

調和関数の鏡像原理(定理 7.4[調和関数と Poisson 積分]、Ω=C\Omega=\mathbb{C})により、v~(z)=−v(zˉ)\tilde v(z)=-v(\bar z)(y<0y\lt0)と延長した v~\tilde v は C\mathbb{C} 上の有界調和関数です。系 5.4[調和関数と Poisson 積分] から定数で、実軸上で 00 なので v~≡0\tilde v\equiv0 です。

有界性の仮定は外せません。v(x+iy)=yv(x+iy)=y は境界で 00 の調和関数ですが 00 ではありません。

ℝ(境界値 f)ℂ₊z = x + iyP_y(y 大)P_y(y 小)x
上半平面の Poisson 核。点 z = x + iy での調和関数の値は、境界の値 f を重み P_y(x − t) で平均したものである。y が小さいほど重みは x の近くに集中し(近似単位元)、y → 0 で境界値 f(x) に近づく。

3. Hardy 空間 H² と Paley–Wiener の定理

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定義 3.1(Hardy 空間 H²(ℂ₊))↗

C+\mathbb{C}_+ 上の正則関数 FF で

∥F∥H22=sup⁡y>0∫R∣F(x+iy)∣2 dx<∞\|F\|_{H^2}^2=\sup_{y\gt0}\int_{\mathbb{R}}|F(x+iy)|^2\,dx\lt\infty

となるものの全体を H2(C+)H^2(\mathbb{C}_+) と書く。Fy(x)=F(x+iy)F_y(x)=F(x+iy) と書く。

定理 3.2(Paley–Wiener の定理(上半平面))✓

F∈H2(C+)F\in H^2(\mathbb{C}_+) であるための必要十分条件は、g∈L2(0,∞)g\in L^2(0,\infty) が存在して

F(z)=12π∫0∞g(ξ) eizξ dξ(z∈C+)F(z)=\frac1{2\pi}\int_0^\infty g(\xi)\,e^{iz\xi}\,d\xi\qquad(z\in\mathbb{C}_+)

と書けることである。このとき ∥F∥H22=12π∥g∥22\|F\|_{H^2}^2=\frac1{2\pi}\|g\|_2^2 で、f=F−1gf=\mathcal{F}^{-1}g(gg を ξ<0\xi\lt0 で 00 と延長)について Fy→fF_y\to f(L2L^2)かつ Fy=Py∗fF_y=P_y*f。

十分性は、gg から FF を書き下して確かめるだけです。難しいのは必要性で、H2H^2 の関数 FF だけが与えられたとき、各高さ yy での Fourier 変換 GyG_y に eyξe^{y\xi} を掛けると yy によらなくなる、という事実が鍵です。これが分かれば共通の関数 gg が決まり、あとはその台が [0,∞)[0,\infty) に入ることを y→∞y\to\infty で確かめます。第 1 段の長方形の周の積分は、この「yy によらない」ことを示すためだけにあります。

証明(定理 3.2)

十分性. y≥y0>0y\ge y_0\gt0 では ∣g(ξ)eizξ∣≤∣g(ξ)∣e−y0ξ|g(\xi)e^{iz\xi}|\le|g(\xi)|e^{-y_0\xi} で、g∈L2g\in L^2 と e−y0ξξk∈L2(0,∞)e^{-y_0\xi}\xi^k\in L^2(0,\infty) から積分記号下で微分でき、FF は正則です。Fy^=g e−yξ1ξ>0\widehat{F_y}=g\,e^{-y\xi}\mathbf{1}_{\xi\gt0} なので(ge−yξ∈L1∩L2ge^{-y\xi}\in L^1\cap L^2 の逆 Fourier 変換)、Plancherel の定理から ∥Fy∥22=12π∫0∞∣g∣2e−2yξdξ\|F_y\|_2^2=\frac1{2\pi}\int_0^\infty|g|^2e^{-2y\xi}d\xi で、y↓0y\downarrow0 で単調に 12π∥g∥22\frac1{2\pi}\|g\|_2^2 に増加します。∥Fy−f∥22=12π∫0∞∣g∣2(1−e−yξ)2→0\|F_y-f\|_2^2=\frac1{2\pi}\int_0^\infty|g|^2(1-e^{-y\xi})^2\to0(優収束定理)です。Py∗f^=e−y∣ξ∣g=Fy^\widehat{P_y*f}=e^{-y|\xi|}g=\widehat{F_y} から Fy=Py∗fF_y=P_y*f です。

必要性. F∈H2F\in H^2 とし、Gy=Fy^∈L2G_y=\widehat{F_y}\in L^2 とおきます。

第 1 段: eyξGy(ξ)e^{y\xi}G_y(\xi) は yy によらない. 0<y1<y20\lt y_1\lt y_2 を固定し、Φ(x)=∫y1y2∣F(x+it)∣2dt\Phi(x)=\int_{y_1}^{y_2}|F(x+it)|^2dt とおくと、Tonelli の定理で ∫Φ dx=∫y1y2∥Ft∥22dt<∞\int\Phi\,dx=\int_{y_1}^{y_2}\|F_t\|_2^2dt\lt\infty です。したがって Φ(R)+Φ(−R)\Phi(R)+\Phi(-R) は (0,∞)(0,\infty) 上可積分で、Φ(Rk)+Φ(−Rk)→0\Phi(R_k)+\Phi(-R_k)\to0 となる Rk→∞R_k\to\infty が取れます。ξ\xi を固定し、正則関数 F(z)e−izξF(z)e^{-iz\xi} を長方形 [−Rk,Rk]×[y1,y2][-R_k,R_k]\times[y_1,y_2] の周で積分すると 00(Cauchy の積分定理)なので

Tk(y1)(ξ)−Tk(y2)(ξ)=(縦の辺の寄与),Tk(y)(ξ)=∫−RkRkF(x+iy)e−i(x+iy)ξdxT_k(y_1)(\xi)-T_k(y_2)(\xi)=(\text{縦の辺の寄与}),\qquad T_k(y)(\xi)=\int_{-R_k}^{R_k}F(x+iy)e^{-i(x+iy)\xi}dx

です。縦の辺の寄与は Cauchy–Schwarz の不等式で ey2∣ξ∣(y2−y1)1/2(Φ(Rk)1/2+Φ(−Rk)1/2)e^{y_2|\xi|}(y_2-y_1)^{1/2}(\Phi(R_k)^{1/2}+\Phi(-R_k)^{1/2}) 以下なので、ξ\xi の有界集合上で一様に 00 に収束します。一方 Tk(y)=eyξ⋅(1[−Rk,Rk]Fy)∧T_k(y)=e^{y\xi}\cdot(\mathbf{1}_{[-R_k,R_k]}F_y)^\wedge で、Plancherel の定理から (1[−Rk,Rk]Fy)∧→Gy(\mathbf{1}_{[-R_k,R_k]}F_y)^\wedge\to G_y が L2L^2 で成り立つので、Tk(y)→eyξGyT_k(y)\to e^{y\xi}G_y が L2([−A,A])L^2([-A,A])(任意の AA)で成り立ちます。合わせて ey1ξGy1=ey2ξGy2e^{y_1\xi}G_{y_1}=e^{y_2\xi}G_{y_2} a.e. です。この共通の関数を gg とおきます。

第 2 段: gg の台と可積分性. ∫∣g∣2e−2yξdξ=∥Gy∥22=2π∥Fy∥22≤2π∥F∥H22\int|g|^2e^{-2y\xi}d\xi=\|G_y\|_2^2=2\pi\|F_y\|_2^2\le2\pi\|F\|_{H^2}^2 がすべての y>0y\gt0 で成り立ちます。{ξ<0, g≠0}\{\xi\lt0,\ g\ne0\} が正測度なら y→∞y\to\infty で左辺は(単調収束定理で)∞\infty に発散するので、g=0g=0 a.e. on (−∞,0)(-\infty,0) です。y↓0y\downarrow0 として ∥g∥22≤2π∥F∥H22\|g\|_2^2\le2\pi\|F\|_{H^2}^2 です。

第 3 段. Fy^=ge−yξ1ξ>0∈L1∩L2\widehat{F_y}=ge^{-y\xi}\mathbf{1}_{\xi\gt0}\in L^1\cap L^2 で、Plancherel の定理(定理 4.1[ℝⁿ 上のフーリエ変換]。逆変換は L1∩L2L^1\cap L^2 上で積分で与えられる)から Fy(x)=12π∫0∞g(ξ)e−yξeixξdξF_y(x)=\frac1{2\pi}\int_0^\infty g(\xi)e^{-y\xi}e^{ix\xi}d\xi が a.e. で、両辺連続なので各点で成り立ちます。これが主張の表示です。

境界値の空間として見ると、H2(C+)H^2(\mathbb{C}_+) は L2(R)L^2(\mathbb{R}) の閉部分空間 {f∈L2∣f^=0 on (−∞,0)}\{f\in L^2\mid\hat f=0\text{ on }(-\infty,0)\} と等長に同一視されます(ノルムは ∥F∥H2=∥f∥2\|F\|_{H^2}=\|f\|_2)。その直交射影は P+=F−11ξ>0FP_+=\mathcal{F}^{-1}\mathbf{1}_{\xi\gt0}\mathcal{F} で、Riesz 射影と呼ばれます。

定理 3.3(Paley–Wiener の定理(指数型整関数))✓

f∈L2(R)f\in L^2(\mathbb{R})、A>0A\gt0 とする。次は同値である。

  1. f^=0\hat f=0 a.e. on R∖[−A,A]\mathbb{R}\setminus[-A,A]。
  2. 整関数 FF と定数 CC が存在して、R\mathbb{R} 上 a.e. で F=fF=f、かつ ∣F(z)∣≤CeA∣Im z∣|F(z)|\le Ce^{A|\mathrm{Im}\,z|}(全 z∈Cz\in\mathbb{C})。

このとき F(z)=12π∫−AAf^(ξ)eizξdξF(z)=\frac1{2\pi}\int_{-A}^A\hat f(\xi)e^{iz\xi}d\xi である。

証明(定理 3.3)

1 ⇒ 2: f^∈L2([−A,A])⊂L1\hat f\in L^2([-A,A])\subset L^1 なので、F(z)=12π∫−AAf^(ξ)eizξdξF(z)=\frac1{2\pi}\int_{-A}^A\hat f(\xi)e^{iz\xi}d\xi は積分記号下の微分で整関数、∣F(z)∣≤12π∥f^∥1eA∣Im z∣|F(z)|\le\frac1{2\pi}\|\hat f\|_1e^{A|\mathrm{Im}\,z|} で、Plancherel の定理(逆変換は L1∩L2L^1\cap L^2 上で積分で与えられる)から実軸上で a.e. に ff と一致します。

2 ⇒ 1: G(z)=eiAzF(z)G(z)=e^{iAz}F(z) とおくと、C+‾\overline{\mathbb{C}_+} 上で ∣G(z)∣≤Ce−AyeAy=C|G(z)|\le Ce^{-Ay}e^{Ay}=C です。実軸上の G0(x)=eiAxf(x)G_0(x)=e^{iAx}f(x) は L2∩L∞L^2\cap L^\infty に入ります。v=G−Py∗G0v=G-P_y*G_0 を考えると、命題 2.2 の 3(G0G_0 は有界一様連続: FF は整関数なので実軸上で滑らか、∣G0′∣|G_0'| は Cauchy の評価から有界)により vv の実部・虚部は C+‾\overline{\mathbb{C}_+} 上の有界連続な調和関数で、実軸上で 00 です。補題 2.3 から Gy=Py∗G0G_y=P_y*G_0、よって ∥Gy∥2≤∥G0∥2\|G_y\|_2\le\|G_0\|_2 で G∈H2(C+)G\in H^2(\mathbb{C}_+) です。定理 3.2 から G0^\widehat{G_0} の台は [0,∞)[0,\infty) に入り、G0^(ξ)=f^(ξ−A)\widehat{G_0}(\xi)=\hat f(\xi-A) なので f^=0\hat f=0 on (−∞,−A)(-\infty,-A) です。最後に、整関数 F(zˉ)‾\overline{F(\bar z)} は同じ評価を満たし実軸上で fˉ\bar f に等しいので、いま示したことから fˉ^\widehat{\bar f} の台は [−A,∞)[-A,\infty) に入ります。fˉ^(ξ)=f^(−ξ)‾\widehat{\bar f}(\xi)=\overline{\hat f(-\xi)} なので f^=0\hat f=0 on (A,∞)(A,\infty) です。

条件 2 の「C\mathbb{C} 全体での評価」は、Phragmén–Lindelöf の原理(定理 5.1[最大値原理の一般化と正則関数族])を使えば「指数型 AA(∣F(z)∣≤Cεe(A+ε)∣z∣|F(z)|\le C_\varepsilon e^{(A+\varepsilon)|z|})かつ実軸上で L2L^2」に弱められます。帯域制限された信号(f^\hat f の台が有界)が整関数であることは、標本化定理とウェーブレット の標本化定理の出発点です。とくに、帯域制限された信号はコンパクト台をもちません(整関数が区間で 00 なら一致の定理で恒等的に 00)。

定義 4.1(Hilbert 変換)↗

f∈L2(R)f\in L^2(\mathbb{R}) に対し Hf=F−1(−i sgn(ξ) f^(ξ))Hf=\mathcal{F}^{-1}\bigl(-i\,\mathrm{sgn}(\xi)\,\hat f(\xi)\bigr) を ff の Hilbert 変換という。

定理 4.2(Hilbert 変換の基本性質)✓

  1. HH は L2(R)L^2(\mathbb{R}) 上のユニタリ作用素で、H2=−1H^2=-1、H∗=−HH^*=-H。Riesz 射影は P+=12(1+iH)P_+=\frac12(1+iH)。
  2. f∈L2f\in L^2 について Qy∗f→HfQ_y*f\to Hf(L2L^2、y↓0y\downarrow0)。F(z)=(Py∗f)(x)+i(Qy∗f)(x)F(z)=(P_y*f)(x)+i(Q_y*f)(x) は C+\mathbb{C}_+ 上正則で、ff が実数値なら Re F=Py∗f\mathrm{Re}\,F=P_y*f の調和共役が Qy∗fQ_y*f である。
  3. f∈S(R)f\in\mathcal{S}(\mathbb{R}) なら各点で Hf(x)=1πlim⁡ε↓0∫∣t∣>εf(x−t)t dtHf(x)=\frac1\pi\lim_{\varepsilon\downarrow0}\int_{|t|\gt\varepsilon}\frac{f(x-t)}t\,dt。

証明の方針は、1 は Fourier 側の掛け算因子の計算、2 は QyQ_y の Fourier 変換が −i sgn(ξ)e−y∣ξ∣-i\,\mathrm{sgn}(\xi)e^{-y|\xi|} であることから y↓0y\downarrow0 の極限を取る、3 は L2L^2 の極限を具体的な主値積分の形に読み替える、というものです。3 に出てくる ψ\psi は、積分 ∫∣t∣>yf(x−t)tdt\int_{|t|\gt y}\frac{f(x-t)}{t}dt と πQy∗f\pi Q_y*f の差を、yy に依らない一つの可積分関数にまとめるために置いたものです。

証明(定理 4.2)

1: 掛け算因子 −i sgn ξ-i\,\mathrm{sgn}\,\xi は絶対値 11 で、2 乗が −1-1、共役が i sgn ξi\,\mathrm{sgn}\,\xi なので、Plancherel の定理から出ます。12(1+i(−i sgn ξ))=12(1+sgn ξ)=1ξ>0\frac12(1+i(-i\,\mathrm{sgn}\,\xi))=\frac12(1+\mathrm{sgn}\,\xi)=\mathbf{1}_{\xi\gt0}(a.e.)です。

2: Q^y(ξ)=−i sgn(ξ)e−y∣ξ∣\hat Q_y(\xi)=-i\,\mathrm{sgn}(\xi)e^{-y|\xi|} を示します。Qy=xyPyQ_y=\frac xyP_y なので、超関数の Fourier 変換の公式(定理 6.4[Schwartz 空間と緩増加超関数]、xT^=i∂T^\widehat{xT}=i\partial\hat T)から Q^y=iyddξe−y∣ξ∣=iy(−y sgn ξ)e−y∣ξ∣\hat Q_y=\frac iy\frac{d}{d\xi}e^{-y|\xi|}=\frac iy(-y\,\mathrm{sgn}\,\xi)e^{-y|\xi|} です(e−y∣ξ∣e^{-y|\xi|} は連続で区分的に C1C^1 なので、超関数の微分は各点の微分に一致)。Qy∈L2Q_y\in L^2 なので Qy∗f^=Q^yf^\widehat{Q_y*f}=\hat Q_y\hat f で、∥Qy∗f−Hf∥22=12π∫∣f^∣2(1−e−y∣ξ∣)2→0\|Q_y*f-Hf\|_2^2=\frac1{2\pi}\int|\hat f|^2(1-e^{-y|\xi|})^2\to0 です。正則性: Py∗f+iQy∗f=iπ∫f(t)z−tdtP_y*f+iQ_y*f=\frac i\pi\int\frac{f(t)}{z-t}dt(命題 2.2 の 2)は、積分記号下の微分で zz について正則です。

3: ψ(u)=u1+u2−1∣u∣>1u\psi(u)=\frac u{1+u^2}-\frac{\mathbf{1}_{|u|\gt1}}u は奇関数で可積分(∣u∣≤1|u|\le1 で有界、∣u∣>1|u|\gt1 で ∣ψ(u)∣=1∣u∣(1+u2)|\psi(u)|=\frac1{|u|(1+u^2)})なので ∫ψ=0\int\psi=0 です。πQy∗f(x)−∫∣t∣>yf(x−t)tdt=∫f(x−yu)ψ(u) du=∫(f(x−yu)−f(x))ψ(u) du\pi Q_y*f(x)-\int_{|t|\gt y}\frac{f(x-t)}tdt=\int f(x-yu)\psi(u)\,du=\int(f(x-yu)-f(x))\psi(u)\,du は、ff が有界連続なので優収束定理で y→0y\to0 のとき 00 に収束します。∫∣t∣>yf(x−t)tdt\int_{|t|\gt y}\frac{f(x-t)}tdt は y↓0y\downarrow0 で収束し(∫y<∣t∣≤1dtt=0\int_{y\lt|t|\le1}\frac{dt}t=0 なので ∫∣t∣>yf(x−t)tdt=∫y<∣t∣≤1f(x−t)−f(x)tdt+∫∣t∣>1f(x−t)tdt\int_{|t|\gt y}\frac{f(x-t)}tdt=\int_{y\lt|t|\le1}\frac{f(x-t)-f(x)}tdt+\int_{|t|\gt1}\frac{f(x-t)}tdt と書けます。f∈Sf\in\mathcal{S} なので平均値の定理から第 1 項の被積分関数は sup⁡∣f′∣\sup|f'| で押さえられ、第 2 項は yy によらず、∣f(x−t)/t∣≤∣f(x−t)∣|f(x-t)/t|\le|f(x-t)| と f∈L1f\in L^1 から絶対収束するので、優収束定理により y↓0y\downarrow0 で収束します)、2 から Qy∗f→HfQ_y*f\to Hf は L2L^2 で、部分列で a.e. 成り立つので、極限は a.e. で HfHf に一致します。両辺は連続なので各点で一致します。

例 4.3(Cauchy 分布の Hilbert 変換)

f(x)=11+x2=πP1(x)f(x)=\frac1{1+x^2}=\pi P_1(x) なら f^=πe−∣ξ∣\hat f=\pi e^{-|\xi|}、Hf^=−iπ sgn ξ e−∣ξ∣=πQ^1\widehat{Hf}=-i\pi\,\mathrm{sgn}\,\xi\,e^{-|\xi|}=\pi\hat Q_1 なので Hf(x)=x1+x2Hf(x)=\frac x{1+x^2} です。f+iHf=1+ix1+x2=ix+if+iHf=\frac{1+ix}{1+x^2}=\frac{i}{x+i} は、C+\mathbb{C}_+ で正則な iz+i\frac i{z+i} の境界値で、確かに H2(C+)H^2(\mathbb{C}_+) に入ります。

LpL^p(1<p<∞1\lt p\lt\infty)での有界性も成り立ちます(M. Riesz の定理)が、証明には Calderón–Zygmund 分解か複素解析的な議論が要るので本章では扱いません。p=1p=1 と p=∞p=\infty では成り立ちません(1[0,1]\mathbf{1}_{[0,1]} の Hilbert 変換は 1πlog⁡∣xx−1∣\frac1\pi\log\bigl|\frac x{x-1}\bigr| で、有界でも可積分でもない)。

定理 5.1(Sokhotski–Plemelj の公式)✓

  1. S′(R)\mathcal{S}'(\mathbb{R}) で、ε↓0\varepsilon\downarrow0 のとき 1x−iε→p.v.1x+iπδ,1x+iε→p.v.1x−iπδ.\frac1{x-i\varepsilon}\to\mathrm{p.v.}\frac1x+i\pi\delta,\qquad\frac1{x+i\varepsilon}\to\mathrm{p.v.}\frac1x-i\pi\delta .
  2. f∈L2(R)f\in L^2(\mathbb{R}) の Cauchy 積分 Cf(z)=12πi∫f(t)t−zdt\mathcal{C}f(z)=\frac1{2\pi i}\int\frac{f(t)}{t-z}dt(z∉Rz\notin\mathbb{R})について、L2L^2 で Cf(⋅+iε)→12f+i2Hf=P+f,Cf(⋅−iε)→−12f+i2Hf=−P−f.\mathcal{C}f(\cdot+i\varepsilon)\to\tfrac12f+\tfrac i2Hf=P_+f,\qquad\mathcal{C}f(\cdot-i\varepsilon)\to-\tfrac12f+\tfrac i2Hf=-P_-f . とくに跳び Cf(x+i0)−Cf(x−i0)=f(x)\mathcal{C}f(x+i0)-\mathcal{C}f(x-i0)=f(x)、和 Cf(x+i0)+Cf(x−i0)=iHf(x)\mathcal{C}f(x+i0)+\mathcal{C}f(x-i0)=iHf(x)。
証明(定理 5.1)

1: φ∈S\varphi\in\mathcal{S} について ∫φ(x)x∓iεdx=∫φ(x)xx2+ε2dx±iπ∫φ(x)Pε(x)dx\int\frac{\varphi(x)}{x\mp i\varepsilon}dx=\int\varphi(x)\frac{x}{x^2+\varepsilon^2}dx\pm i\pi\int\varphi(x)P_\varepsilon(x)dx です。第 2 項は ±iπφ(0)\pm i\pi\varphi(0) に収束します(命題 2.2 の 3、一様収束版)。第 1 項は ∫0∞(φ(x)−φ(−x))xx2+ε2dx\int_0^\infty(\varphi(x)-\varphi(-x))\frac{x}{x^2+\varepsilon^2}dx で、被積分関数は ∣φ(x)−φ(−x)∣x\frac{|\varphi(x)-\varphi(-x)|}{x}(≤2sup⁡∣φ′∣\le2\sup|\varphi'| で、x→∞x\to\infty で可積分に減衰)で抑えられるので、優収束定理で ∫0∞φ(x)−φ(−x)xdx=p.v.1x(φ)\int_0^\infty\frac{\varphi(x)-\varphi(-x)}xdx=\mathrm{p.v.}\frac1x(\varphi) に収束します。

2: f∈L1∩L2f\in L^1\cap L^2 とし、Im z>0\mathrm{Im}\,z\gt0 とします。1t−z=i∫0∞eiξ(z−t)dξ\frac1{t-z}=i\int_0^\infty e^{i\xi(z-t)}d\xi(∣eiξ(z−t)∣=e−ξ Im z|e^{i\xi(z-t)}|=e^{-\xi\,\mathrm{Im}\,z})と Fubini の定理から

Cf(z)=12πi∫f(t) i∫0∞eiξ(z−t)dξ dt=12π∫0∞f^(ξ)eizξdξ\mathcal{C}f(z)=\frac1{2\pi i}\int f(t)\,i\int_0^\infty e^{i\xi(z-t)}d\xi\,dt=\frac1{2\pi}\int_0^\infty\hat f(\xi)e^{iz\xi}d\xi

です。これは 定理 3.2 の g=f^1ξ>0g=\hat f\mathbf{1}_{\xi\gt0} の場合なので、Cf(⋅+iε)=F−1(e−εξ1ξ>0f^)→P+f\mathcal{C}f(\cdot+i\varepsilon)=\mathcal{F}^{-1}(e^{-\varepsilon\xi}\mathbf{1}_{\xi\gt0}\hat f)\to P_+f です。Im z<0\mathrm{Im}\,z\lt0 では同様に 1t−z=−i∫−∞0eiξ(z−t)dξ\frac1{t-z}=-i\int_{-\infty}^0e^{i\xi(z-t)}d\xi から Cf(⋅−iε)=−F−1(eεξ1ξ<0f^)→−P−f\mathcal{C}f(\cdot-i\varepsilon)=-\mathcal{F}^{-1}(e^{\varepsilon\xi}\mathbf{1}_{\xi\lt0}\hat f)\to-P_-f(P−=1−P+P_-=1-P_+)です。どちらの写像 f↦Cf(⋅±iε)f\mapsto\mathcal{C}f(\cdot\pm i\varepsilon) も L2L^2 ノルム 11 以下なので、L1∩L2L^1\cap L^2 から L2L^2 全体に延びます。最後に 定理 4.2 の 1 から P±=12(1±iH)P_\pm=\frac12(1\pm iH) です。

物理では 1 の公式を 1E−H±i0=P1E−H∓iπδ(E−H)\frac1{E-H\pm i0}=\mathrm{P}\frac1{E-H}\mp i\pi\delta(E-H) の形で使い、Fermi の黄金律の 2πδ(Ef−Ei)2\pi\delta(E_f-E_i) や散乱振幅の光学定理はここから来ます(共鳴)。ff が Hölder 連続なら 2 の境界値は各点で存在します(Privalov の定理)が、本章では L2L^2 の形にとどめます。

6. Nevanlinna 関数と Stieltjes 反転公式

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定義 6.1(Nevanlinna 関数)↗

C+\mathbb{C}_+ 上の正則関数 FF で Im F(z)≥0\mathrm{Im}\,F(z)\ge0(全 z∈C+z\in\mathbb{C}_+)となるものを Nevanlinna 関数(Herglotz 関数、Pick 関数)という。

典型例は −1/z-1/z、log⁡z\log z(主枝)、z\sqrt z(C+\mathbb{C}_+ で偏角 (0,π/2)(0,\pi/2) の枝)、そして自己共役作用素 AA のレゾルベントの対角成分 ⟨ψ,(A−z)−1ψ⟩\langle\psi,(A-z)^{-1}\psi\rangle です(スペクトル定理(定理 6.3[スペクトル定理と関数計算]) の 3 から ∫dμψ(t)t−z\int\frac{d\mu_\psi(t)}{t-z} と書け、Im1t−z=y(t−x)2+y2>0\mathrm{Im}\frac1{t-z}=\frac{y}{(t-x)^2+y^2}\gt0)。

定理 6.2(Nevanlinna の表現定理)✓

FF が Nevanlinna 関数であるための必要十分条件は、a∈Ra\in\mathbb{R}、b≥0b\ge0、および ∫dμ(t)1+t2<∞\int\frac{d\mu(t)}{1+t^2}\lt\infty を満たす R\mathbb{R} 上の正のボレル測度 μ\mu が存在して

F(z)=a+bz+∫R(1t−z−t1+t2)dμ(t)(z∈C+)F(z)=a+bz+\int_{\mathbb{R}}\Bigl(\frac1{t-z}-\frac t{1+t^2}\Bigr)d\mu(t)\qquad(z\in\mathbb{C}_+)

と書けることである。このとき a=Re F(i)a=\mathrm{Re}\,F(i)、b=lim⁡y→∞F(iy)/(iy)b=\lim_{y\to\infty}F(iy)/(iy) で、μ\mu も FF から一意に決まる(定理 6.3)。

必要性の証明の方針は、上半平面を Cayley 変換で単位円板に移すと、「虚部が非負」が「実部が非負」になり、円板の Herglotz の表現定理がそのまま使える、というものです。そのあと変数を円周から実軸へ戻す計算が長いのですが、実際には ζ+wζ−w\frac{\zeta+w}{\zeta-w} を z,tz,t で書き直すだけです。

証明(定理 6.2)

十分性. ∣1t−z−t1+t2∣=∣1+tz∣∣t−z∣(1+t2)\bigl|\frac1{t-z}-\frac t{1+t^2}\bigr|=\frac{|1+tz|}{|t-z|(1+t^2)} は zz が C+\mathbb{C}_+ のコンパクト集合を動くとき C/(1+t2)C/(1+t^2) で抑えられるので、積分は zz について正則です(積分記号下の微分)。Im F(x+iy)=by+∫y(t−x)2+y2dμ(t)≥0\mathrm{Im}\,F(x+iy)=by+\int\frac{y}{(t-x)^2+y^2}d\mu(t)\ge0 です。

必要性. Cayley 変換 w=z−iz+iw=\frac{z-i}{z+i} は C+\mathbb{C}_+ を単位円板 D\mathbb{D} に正則同型に写し、逆は z=i1+w1−wz=i\frac{1+w}{1-w} です。G(w)=−iF(z)G(w)=-iF(z) とおくと Re G=Im F≥0\mathrm{Re}\,G=\mathrm{Im}\,F\ge0 なので、円板の Herglotz の表現定理(定理 6.2[調和関数と Poisson 積分])から、円周 TT 上の正の有限測度 ν\nu で

G(w)=i Im G(0)+∫Tζ+wζ−w dν(ζ)G(w)=i\,\mathrm{Im}\,G(0)+\int_T\frac{\zeta+w}{\zeta-w}\,d\nu(\zeta)

となるものがあります。ζ≠1\zeta\ne1 の点を ζ=t−it+i\zeta=\frac{t-i}{t+i}(t∈Rt\in\mathbb{R}、これは R\mathbb{R} から T∖{1}T\setminus\{1\} への同相写像)と書くと、分母を払った直接の計算で

ζ+wζ−w=(t−i)(z+i)+(z−i)(t+i)(t−i)(z+i)−(z−i)(t+i)=1+tzi(t−z)=−i(1+t2)(1t−z−t1+t2)\frac{\zeta+w}{\zeta-w}=\frac{(t-i)(z+i)+(z-i)(t+i)}{(t-i)(z+i)-(z-i)(t+i)}=\frac{1+tz}{i(t-z)}=-i(1+t^2)\Bigl(\frac1{t-z}-\frac t{1+t^2}\Bigr)

(最後は 1+tz=(1+t2)−t(t−z)1+tz=(1+t^2)-t(t-z))、ζ=1\zeta=1 では 1+w1−w=−iz\frac{1+w}{1-w}=-iz です。F=iGF=iG に代入すると

F(z)=−Im G(0)+ν({1}) z+∫R(1t−z−t1+t2)(1+t2) dν~(t)F(z)=-\mathrm{Im}\,G(0)+\nu(\{1\})\,z+\int_{\mathbb{R}}\Bigl(\frac1{t-z}-\frac t{1+t^2}\Bigr)(1+t^2)\,d\tilde\nu(t)

です。ここで ν~\tilde\nu は ν∣T∖{1}\nu|_{T\setminus\{1\}} の tt 座標への像です。a=−Im G(0)a=-\mathrm{Im}\,G(0)、b=ν({1})≥0b=\nu(\{1\})\ge0、dμ=(1+t2)dν~d\mu=(1+t^2)d\tilde\nu とおけば ∫dμ1+t2=ν(T∖{1})<∞\int\frac{d\mu}{1+t^2}=\nu(T\setminus\{1\})\lt\infty です。w=0w=0 は z=iz=i に対応し G(0)=−iF(i)G(0)=-iF(i) なので a=Re F(i)a=\mathrm{Re}\,F(i) です。

bb の公式. 1iy(1t−iy−t1+t2)=1+ityiy(t−iy)(1+t2)\frac1{iy}\bigl(\frac1{t-iy}-\frac t{1+t^2}\bigr)=\frac{1+ity}{iy(t-iy)(1+t^2)} の絶対値は y≥1y\ge1 で 1+∣t∣yyt2+y2⋅11+t2≤21+t2\frac{1+|t|y}{y\sqrt{t^2+y^2}}\cdot\frac1{1+t^2}\le\frac2{1+t^2} で抑えられ、各 tt で 00 に収束するので、優収束定理から F(iy)/(iy)→bF(iy)/(iy)\to b です。

定理 6.3(Stieltjes の反転公式)✓

FF を 定理 6.2 の形の Nevanlinna 関数とする。c<dc\lt d について

lim⁡ε↓01π∫cdIm F(x+iε) dx=μ((c,d))+12μ({c})+12μ({d}).\lim_{\varepsilon\downarrow0}\frac1\pi\int_c^d\mathrm{Im}\,F(x+i\varepsilon)\,dx=\mu((c,d))+\tfrac12\mu(\{c\})+\tfrac12\mu(\{d\}).

とくに μ\mu は FF から一意に決まる。また Im F(x+iε)\mathrm{Im}\,F(x+i\varepsilon) が [c,d][c,d] 上一様に連続関数 h(x)h(x) に収束するなら、(c,d)(c,d) 上で dμ=1πh(x) dxd\mu=\frac1\pi h(x)\,dx。

証明(定理 6.3)

Im F(x+iε)=bε+π∫Pε(x−t) dμ(t)\mathrm{Im}\,F(x+i\varepsilon)=b\varepsilon+\pi\int P_\varepsilon(x-t)\,d\mu(t) なので、Tonelli の定理で

1π∫cdIm F(x+iε) dx=bε(d−c)π+∫χε(t) dμ(t),χε(t)=1π(arctan⁡d−tε−arctan⁡c−tε)\frac1\pi\int_c^d\mathrm{Im}\,F(x+i\varepsilon)\,dx=\frac{b\varepsilon(d-c)}\pi+\int\chi_\varepsilon(t)\,d\mu(t),\qquad\chi_\varepsilon(t)=\frac1\pi\Bigl(\arctan\frac{d-t}\varepsilon-\arctan\frac{c-t}\varepsilon\Bigr)

です。0≤χε≤10\le\chi_\varepsilon\le1 で、ε↓0\varepsilon\downarrow0 のとき χε(t)\chi_\varepsilon(t) は t∈(c,d)t\in(c,d) で 11、t∈{c,d}t\in\{c,d\} で 12\frac12、それ以外で 00 に収束します。∣t∣≥T0=2(∣c∣+∣d∣)+1|t|\ge T_0=2(|c|+|d|)+1、ε≤1\varepsilon\le1 では χε(t)=∫cdPε(x−t)dx≤(d−c)επ(∣t∣/2)2≤C1+t2\chi_\varepsilon(t)=\int_c^dP_\varepsilon(x-t)dx\le(d-c)\frac{\varepsilon}{\pi(|t|/2)^2}\le\frac{C}{1+t^2} なので、χε≤C′1+t2\chi_\varepsilon\le\frac{C'}{1+t^2}(全 tt)が μ\mu-可積分な優関数になり、優収束定理で結論を得ます。一意性: μ\mu の原子は可算個なので、原子でない c,dc,d について μ((c,d))\mu((c,d)) が FF から決まり、そのような区間(と空集合)は π-系としてボレル集合族を生成します(定理 4.5[測度空間と Carathéodory の拡張定理]、μ\mu は有界区間上で有限)。最後の主張は、一様収束から左辺が 1π∫cdh\frac1\pi\int_c^dh に等しく、hh が有界なので小区間に適用すると μ\mu に原子がないことも従うからです。

自己共役作用素 AA と ψ\psi について F(z)=⟨ψ,(A−z)−1ψ⟩F(z)=\langle\psi,(A-z)^{-1}\psi\rangle に使うと、スペクトル測度 μψ\mu_\psi が 1πIm⟨ψ,(A−x−i0)−1ψ⟩\frac1\pi\mathrm{Im}\langle\psi,(A-x-i0)^{-1}\psi\rangle として得られます。極限吸収原理(レゾルベントの境界値が存在して連続)が「絶対連続スペクトル」を意味するのはこの公式によります。Källén–Lehmann 表示 ∫ρ(m2) dm2m2−p2−i0\int\frac{\rho(m^2)\,dm^2}{m^2-p^2-i0} のスペクトル関数 ρ\rho も、同じ公式で 2 点関数の虚部から復元されます。

7. Denjoy–Carleman の定理と Gevrey 類

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正則関数は一点での Taylor 係数で決まりますが、C∞C^\infty 関数は決まりません(補題 2.1[Schwartz 空間と緩増加超関数] の e−1/te^{-1/t})。その中間に、「導関数の増え方を制限すると Taylor 係数で決まる」クラスがあり、どこに境界があるかを答えるのが Denjoy–Carleman の定理です。

定義 7.1(C{Mk}C\{M_k\} 類と準解析性)↗

正の数列 M0=1,M1,M2,…M_0=1,M_1,M_2,\ldots と区間 II について、f∈C∞(I)f\in C^\infty(I) で、ある C,RC,R について sup⁡I∣f(k)∣≤CRkMk\sup_I|f^{(k)}|\le CR^kM_k(全 kk)となるものの全体を C{Mk}(I)C\{M_k\}(I) と書く。任意の区間 II と点 x0∈Ix_0\in I について、f∈C{Mk}(I)f\in C\{M_k\}(I) がすべての f(k)(x0)=0f^{(k)}(x_0)=0 を満たせば f≡0f\equiv0 となるとき、C{Mk}C\{M_k\} は準解析的であるという(満たさない区間と ff があれば準解析的でない)。Mk=(k!)sM_k=(k!)^s(s≥1s\ge1)の類を Gevrey 類 GsG^s という。

定理 7.2(Denjoy–Carleman の定理)✓

MkM_k が対数凸(Mk2≤Mk−1Mk+1M_k^2\le M_{k-1}M_{k+1})であるとする。C{Mk}C\{M_k\} が準解析的であるための必要十分条件は

∑k≥1Mk−1Mk=∞\sum_{k\ge1}\frac{M_{k-1}}{M_k}=\infty

である。

注意 7.3(証明の構成)

定理の二つの向きは、この節の中で次のように証明します。「和が有限なら準解析的でない」は、窓関数を畳み込みで作る 命題 7.5 です(対数凸性は使いません)。「和が発散すれば準解析的」は、Taylor の定理を使う帰納法で、次の 補題 7.4 に帰着します。Fourier–Laplace 変換と上半平面の対数積分を使う Carleman の証明(Rudin の第 19 章)とは異なり、実変数だけの初等的な議論で、Bang の方法と呼ばれます。二つの向きを合わせた定理の証明は、命題 7.5 の直後に置きます。

十分性の向きには対数凸性が要ります。たとえば Mk=(k!)2M_k=(k!)^2 を、k=j2k=j^2(j≥1j\ge1)の添字でだけ Mj2=((j2+1)!)2M_{j^2}=((j^2+1)!)^2 に大きく取り替えると、Mj2/Mj2+1=1M_{j^2}/M_{j^2+1}=1 が無限回現れるので ∑Mk−1/Mk=∞\sum M_{k-1}/M_k=\infty ですが、類は C{(k!)2}C\{(k!)^2\} を含むのでコンパクト台の関数を含み、準解析的ではありません。対数凸でない列については、対数凸な最大の下からの列(対数凸正則化)MkcM_k^c に取り替えた ∑Mk−1c/Mkc=∞\sum M_{k-1}^c/M_k^c=\infty が正しい条件になります(Hörmander の第 1.3 節)。

次の Bang の補題は、点 00 で全導関数が 00 の関数が、導関数の大きさの評価 MkM_k のもとで、どこまで先で 00 のままでいられるかを測るものです。証明の前に全体像を述べます。ff が 00 の近くで極めて小さいことを出発点に、評価をひとつ弱めるたびに、00 とみなせる区間を an/(2e)a_n/(2e) ずつ右へ延ばしていきます。∑ak=∞\sum a_k=\infty なら、この延長はいくらでも先まで続きます。証明の後の段落に、同じことを図なしで言い直してあります。

補題 7.4(Bang の補題(片端で無限位の零点をもつ関数))✓

M0,M1,M2,…M_0,M_1,M_2,\ldots を正の数列で対数凸(Mk2≤Mk−1Mk+1M_k^2\le M_{k-1}M_{k+1})とし、ak=Mk−1/Mka_k=M_{k-1}/M_k(k≥1k\ge1)とおく。∑k≥1ak=∞\sum_{k\ge1}a_k=\infty とする。L>0L\gt0 として、f∈C∞([0,L])f\in C^\infty([0,L]) が

sup⁡[0,L]∣f(k)∣≤Mk(k=0,1,2,…),f(k)(0)=0(k=0,1,2,…)\sup_{[0,L]}|f^{(k)}|\le M_k\quad(k=0,1,2,\ldots),\qquad f^{(k)}(0)=0\quad(k=0,1,2,\ldots)

を満たすなら、[0,L][0,L] 上で f≡0f\equiv0 である。

証明(補題 7.4)

準備。 対数凸性は Mk/Mk−1≤Mk+1/MkM_k/M_{k-1}\le M_{k+1}/M_k、すなわち ak≥ak+1a_k\ge a_{k+1} です。したがって a1≥a2≥⋯a_1\ge a_2\ge\cdots で、Mj+i/Mj=1/(aj+1aj+2⋯aj+i)M_{j+i}/M_j=1/(a_{j+1}a_{j+2}\cdots a_{j+i}) から

Mj+iMj d i=∏l=1idaj+l≤(dan)i(j+i≤n, d>0)(∗)\frac{M_{j+i}}{M_j}\,d^{\,i}=\prod_{l=1}^{i}\frac{d}{a_{j+l}}\le\Bigl(\frac{d}{a_n}\Bigr)^{i}\qquad(j+i\le n,\ d\gt0)\qquad(\ast)

が成り立ちます(l≤il\le i なら j+l≤nj+l\le n で aj+l≥ana_{j+l}\ge a_n)。以下、μj(x)=sup⁡[0,x]∣f(j)∣\mu_j(x)=\sup_{[0,x]}|f^{(j)}|(0≤x≤L0\le x\le L)と書きます。整数 n≥0n\ge0 と s∈[0,L]s\in[0,L] について、次の主張を P(n,s)P(n,s) とします。

μj(s)≤e−(n−j)Mj(j=0,1,…,n).\mu_j(s)\le e^{-(n-j)}M_j\qquad(j=0,1,\ldots,n).

P(n,s)P(n,s) は「[0,s][0,s] 上で f(j)f^{(j)} が、MjM_j の e−(n−j)e^{-(n-j)} 倍以下に小さい」という主張です。jj が nn に近いほど情報は弱く、j=nj=n は μn≤Mn\mu_n\le M_n で仮定そのものです。

ステップ。 n≥1n\ge1 で P(n,s)P(n,s) が成り立つなら、t=min⁡{L, s+an/(2e)}t=\min\{L,\ s+a_n/(2e)\} について P(n−1,t)P(n-1,t) が成り立つ、と主張します。d=t−s≤an/(2e)d=t-s\le a_n/(2e) とおきます。j∈{0,…,n−1}j\in\{0,\ldots,n-1\}、p=n−j≥1p=n-j\ge1、u∈[s,t]u\in[s,t] を取り、f(j)f^{(j)} を ss のまわりで Lagrange の剰余項つきの Taylor の定理(定理 5.3[平均値の定理とテイラーの定理])で展開します。

f(j)(u)=∑i=0p−1f(j+i)(s)i!(u−s)i+f(n)(ξ)p!(u−s)p(ξ∈[s,u]).f^{(j)}(u)=\sum_{i=0}^{p-1}\frac{f^{(j+i)}(s)}{i!}(u-s)^i+\frac{f^{(n)}(\xi)}{p!}(u-s)^p\qquad(\xi\in[s,u]).

和の各項は j+i≤n−1j+i\le n-1 なので P(n,s)P(n,s) から ∣f(j+i)(s)∣≤μj+i(s)≤e−(p−i)Mj+i|f^{(j+i)}(s)|\le\mu_{j+i}(s)\le e^{-(p-i)}M_{j+i} で、(∗\ast) から Mj+i d i≤Mj(d/an)i≤Mj(2e)−iM_{j+i}\,d^{\,i}\le M_j(d/a_n)^i\le M_j(2e)^{-i} です。剰余項は仮定 ∣f(n)∣≤Mn|f^{(n)}|\le M_n と (∗\ast)(i=pi=p)から Mnd p≤Mj(2e)−pM_nd^{\,p}\le M_j(2e)^{-p} で抑えられます。階乗は 11 以上なので捨てて、

∣f(j)(u)∣≤Mj[∑i=0p−1e−(p−i)(2e)−i+(2e)−p]=Mje−p[∑i=0p−12−i+2−p]<2e−pMj≤e−(p−1)Mj|f^{(j)}(u)|\le M_j\Bigl[\sum_{i=0}^{p-1}e^{-(p-i)}(2e)^{-i}+(2e)^{-p}\Bigr]=M_je^{-p}\Bigl[\sum_{i=0}^{p-1}2^{-i}+2^{-p}\Bigr]\lt2e^{-p}M_j\le e^{-(p-1)}M_j

です(最後は 2<e2\lt e。括弧の中は 2−2−p2-2^{-p})。p−1=(n−1)−jp-1=(n-1)-j です。u∈[0,s]u\in[0,s] では P(n,s)P(n,s) から ∣f(j)(u)∣≤e−(n−j)Mj≤e−((n−1)−j)Mj|f^{(j)}(u)|\le e^{-(n-j)}M_j\le e^{-((n-1)-j)}M_j です。以上で μj(t)≤e−((n−1)−j)Mj\mu_j(t)\le e^{-((n-1)-j)}M_j(j=0,…,n−1j=0,\ldots,n-1)、すなわち P(n−1,t)P(n-1,t) が示されました。

結論。 n≥0n\ge0 を固定します。∑ak=∞\sum a_k=\infty なので、N>nN\gt n を 12e∑k=n+1Nak≥L\frac1{2e}\sum_{k=n+1}^{N}a_k\ge L となるようにとれます。f(j)(0)=0f^{(j)}(0)=0 から μj(0)=0\mu_j(0)=0 で、P(N,0)P(N,0) は自明に成り立ちます。ステップを sN=0s_N=0、sk−1=min⁡{L, sk+ak/(2e)}s_{k-1}=\min\{L,\ s_k+a_k/(2e)\}(k=N,N−1,…,n+1k=N,N-1,\ldots,n+1)として N−nN-n 回適用すると P(n,sn)P(n,s_n) を得ます。min⁡{L, min⁡{L,x}+y}=min⁡{L, x+y}\min\{L,\ \min\{L,x\}+y\}=\min\{L,\ x+y\}(y≥0y\ge0)を繰り返すと sn=min⁡{L, 12e∑k=n+1Nak}=Ls_n=\min\{L,\ \frac1{2e}\sum_{k=n+1}^Na_k\}=L です。ゆえに P(n,L)P(n,L) の j=0j=0 の部分から

sup⁡[0,L]∣f∣≤e−nM0\sup_{[0,L]}|f|\le e^{-n}M_0

です。nn は任意なので f≡0f\equiv0 です。

補題の仕組みは、短い区間 [0,aN/(2e)][0,a_N/(2e)] で ff が非常に小さいことから出発し、NN を一つずつ下げながら区間を aN,aN−1,…a_N,a_{N-1},\ldots ずつ延ばしていく、というものです。区間の長さは ∑ak\sum a_k のように足し上がるので、和が発散するなら、どれだけ長い区間にも届きます。和が収束する場合は、足し上がった長さが頭打ちになり、補題が成り立たない例が 命題 7.5 です。

命題 7.5(準解析的でない類のコンパクト台関数)✓

MkM_k が正の数列で M0=1M_0=1、ak=Mk−1/Mka_k=M_{k-1}/M_k(k≥1k\ge1)について a=∑kak<∞a=\sum_ka_k\lt\infty とする。このとき f∈C∞(R)f\in C^\infty(\mathbb{R}) で、f≥0f\ge0、∫f=1\int f=1、supp⁡f⊂[0,1+a]\operatorname{supp}f\subset[0,1+a]、sup⁡∣f(k)∣≤2kMk\sup|f^{(k)}|\le2^kM_k(全 kk)となるものが存在する。とくに C{Mk}C\{M_k\} は準解析的でない。

証明(命題 7.5)

b0=1b_0=1、bj=ajb_j=a_j(j≥1j\ge1)、hb=b−11[0,b]h_b=b^{-1}\mathbf{1}_{[0,b]} とし、fN=hb0∗hb1∗⋯∗hbNf_N=h_{b_0}*h_{b_1}*\cdots*h_{b_N} とおきます。fN≥0f_N\ge0、∫fN=1\int f_N=1、supp⁡fN⊂[0,1+a]\operatorname{supp}f_N\subset[0,1+a]、∥fN∥∞≤∥hb0∥∞=1\|f_N\|_\infty\le\|h_{b_0}\|_\infty=1(確率密度との畳み込みは上限を増やさない)です。差分作用素 Dbg(x)=g(x)−g(x−b)bD_bg(x)=\frac{g(x)-g(x-b)}b について (hb∗g)′=Dbg(h_b*g)'=D_bg(gg が連続なら微積分の基本定理)で、∥Dbg∥∞≤2b∥g∥∞\|D_bg\|_\infty\le\frac2b\|g\|_\infty です。k<Nk\lt N なら、畳み込みの可換性から fN=hb1∗⋯∗hbk∗(hb0∗hbk+1∗⋯∗hbN)f_N=h_{b_1}*\cdots*h_{b_k}*(h_{b_0}*h_{b_{k+1}}*\cdots*h_{b_N}) と並べ替えて

∥fN(k)∥∞=∥Db1⋯Dbk(hb0∗hbk+1∗⋯∗hbN)∥∞≤2kb1⋯bk=2kMk\|f_N^{(k)}\|_\infty=\|D_{b_1}\cdots D_{b_k}(h_{b_0}*h_{b_{k+1}}*\cdots*h_{b_N})\|_\infty\le\frac{2^k}{b_1\cdots b_k}=2^kM_k

です(b1⋯bk=M0/Mkb_1\cdots b_k=M_0/M_k)。さらに fN+1=fN∗hbN+1f_{N+1}=f_N*h_{b_{N+1}} と平均値の定理から ∥fN+1(k)−fN(k)∥∞≤bN+1∥fN(k+1)∥∞≤bN+12k+1Mk+1\|f_{N+1}^{(k)}-f_N^{(k)}\|_\infty\le b_{N+1}\|f_N^{(k+1)}\|_\infty\le b_{N+1}2^{k+1}M_{k+1}(N≥k+2N\ge k+2)で、∑bN<∞\sum b_N\lt\infty なので (fN(k))N(f_N^{(k)})_N は一様 Cauchy 列です。項別微分(定理 7.3[関数列と一様収束])を各 kk に使うと、極限 ff は C∞C^\infty で f(k)=lim⁡fN(k)f^{(k)}=\lim f_N^{(k)}、評価と台の条件は極限で保たれ、∫f=1\int f=1 です(台が一様に有界なので積分と極限を交換できる)。ff は 00 の左で恒等的に 00 なので、x0=0x_0=0 ですべての導関数が 00 ですが f≢0f\not\equiv0 です。

証明(定理 7.2)

必要性(準解析的ならば和は発散)は対偶で示します。∑kMk−1/Mk<∞\sum_kM_{k-1}/M_k\lt\infty なら、命題 7.5 が C{Mk}(R)C\{M_k\}(\mathbb{R}) の関数 f≢0f\not\equiv0 で x0=0x_0=0 ですべての導関数が 00 になるものを与えるので、C{Mk}C\{M_k\} は準解析的でありません。この向きでは対数凸性を使いません。

十分性(和が発散するならば準解析的)。∑kMk−1/Mk=∞\sum_kM_{k-1}/M_k=\infty とし、区間 II、点 x0∈Ix_0\in I、f∈C{Mk}(I)f\in C\{M_k\}(I) で、すべての kk について f(k)(x0)=0f^{(k)}(x_0)=0 となるものを取ります。sup⁡I∣f(k)∣≤CRkMk\sup_I|f^{(k)}|\le CR^kM_k と書きます(C,RC,R を大きくしても評価は保たれるので C,R>0C,R\gt0 としてよい)。Mk′=CRkMkM'_k=CR^kM_k とおきます。Mk′M'_k も正で対数凸です((Mk′)2Mk−1′Mk+1′=Mk2Mk−1Mk+1≤1\frac{(M'_k)^2}{M'_{k-1}M'_{k+1}}=\frac{M_k^2}{M_{k-1}M_{k+1}}\le1)。また Mk−1′/Mk′=1R⋅Mk−1MkM'_{k-1}/M'_k=\frac1R\cdot\frac{M_{k-1}}{M_k} なので、和は発散したままです。

x1∈Ix_1\in I、x1>x0x_1\gt x_0 を任意に取ります。II は区間なので [x0,x1]⊂I[x_0,x_1]\subset I で、g(t)=f(x0+t)g(t)=f(x_0+t)(0≤t≤L=x1−x00\le t\le L=x_1-x_0)は sup⁡∣g(k)∣≤Mk′\sup|g^{(k)}|\le M'_k、g(k)(0)=0g^{(k)}(0)=0 を満たします。補題 7.4 を Mk′M'_k に使うと g≡0g\equiv0、特に f(x1)=0f(x_1)=0 です。x1<x0x_1\lt x_0 のときは g(t)=f(x0−t)g(t)=f(x_0-t) を使います。∣g(k)∣=∣f(k)∣|g^{(k)}|=|f^{(k)}| で g(k)(0)=±f(k)(x0)=0g^{(k)}(0)=\pm f^{(k)}(x_0)=0 なので、同じ補題から f(x1)=0f(x_1)=0 です。したがって II 上で f≡0f\equiv0 で、C{Mk}C\{M_k\} は準解析的です。

命題 7.6(解析的な類は準解析的)✓

C{k!}(I)C\{k!\}(I) は準解析的である。

証明(命題 7.6)

f∈C{k!}(I)f\in C\{k!\}(I)、f(k)(x0)=0f^{(k)}(x_0)=0(全 kk)とします。剰余項つきの Taylor の定理(定理 5.3[平均値の定理とテイラーの定理])で、∣x−x0∣<1/R|x-x_0|\lt1/R なら ∣f(x)∣≤CRn+1(n+1)!(n+1)!∣x−x0∣n+1→0|f(x)|\le\frac{CR^{n+1}(n+1)!}{(n+1)!}|x-x_0|^{n+1}\to0 です。すなわち ff は x0x_0 の 1/R1/R 近傍で 00 で、そこではすべての導関数も 00 です。同じ議論を繰り返すと、ff の零点で全導関数が消える点の集合は II の開かつ閉な空でない部分集合なので、II 全体です(区間の連結性)。

注意 7.7(Gevrey 類と窓関数)

Mk=(k!)sM_k=(k!)^s は対数凸で(Mk+1Mk−1Mk2=(k+1k)s≥1\frac{M_{k+1}M_{k-1}}{M_k^2}=\bigl(\frac{k+1}k\bigr)^s\ge1)、∑Mk−1Mk=∑k−s\sum\frac{M_{k-1}}{M_k}=\sum k^{-s} は s>1s\gt1 で収束、s=1s=1 で発散します。したがって s>1s\gt1 の Gevrey 類にはコンパクト台の関数があり(命題 7.5)、s=1s=1(解析関数)にはありません(命題 7.6)。準解析性の境界は s=1s=1 のちょうど上にあり、Mk=k! (log⁡(k+e))kM_k=k!\,(\log(k+e))^k のような「解析関数より少しだけ大きい」類は、定理の逆向きにより準解析的です。

命題 7.8(Gevrey 窓関数の Fourier 変換の減衰)✓

f∈Gs(R)f\in G^s(\mathbb{R})(s≥1s\ge1)がコンパクト台 [−L,L][-L,L] をもち sup⁡∣f(k)∣≤CRk(k!)s\sup|f^{(k)}|\le CR^k(k!)^s なら、c=s/(eR1/s)c=s/(eR^{1/s}) について

∣f^(ξ)∣≤2LC es e−c∣ξ∣1/s(ξ∈R).|\hat f(\xi)|\le2LC\,e^{s}\,e^{-c|\xi|^{1/s}}\qquad(\xi\in\mathbb{R}).
証明(命題 7.8)

部分積分を kk 回行うと ∣ξ∣k∣f^(ξ)∣≤∥f(k)∥1≤2LCRk(k!)s≤2LCRkksk|\xi|^k|\hat f(\xi)|\le\|f^{(k)}\|_1\le2LCR^k(k!)^s\le2LCR^kk^{sk} です(k!≤kkk!\le k^k、00=10^0=1)。X=(∣ξ∣/R)1/sX=(|\xi|/R)^{1/s} とおき k=⌊X/e⌋k=\lfloor X/e\rfloor と選ぶと、Rks∣ξ∣=(k/X)s≤e−s\frac{Rk^s}{|\xi|}=(k/X)^s\le e^{-s} から ∣f^(ξ)∣≤2LC(Rks∣ξ∣)k≤2LCe−sk|\hat f(\xi)|\le2LC\bigl(\frac{Rk^s}{|\xi|}\bigr)^k\le2LCe^{-sk} です。sk≥s(X/e−1)=c∣ξ∣1/s−ssk\ge s(X/e-1)=c|\xi|^{1/s}-s なので主張を得ます(k=0k=0 のときは自明な評価 ∣f^∣≤2LC|\hat f|\le2LC と一致する)。

コンパクト台と速い Fourier 減衰は両立の限界があり、e−c∣ξ∣e^{-c|\xi|}(指数減衰)まで達すると f^\hat f は帯状領域で正則になり、ff は実解析的、したがってコンパクト台にはなれません。Gevrey 窓 s>1s\gt1 はこの限界のぎりぎり手前を実現するもので、時間・周波数の両方で局在した窓関数(数値計算のスムーズな切り落とし、Haag–Ruelle 散乱理論の時間平均など)に使われます。

演習 8.1易

(a) F(z)=−1/zF(z)=-1/z の Nevanlinna 表示を求めよ。(b) F(z)=log⁡zF(z)=\log z(C∖(−∞,0]\mathbb{C}\setminus(-\infty,0] 上の主枝)について、Im F(x+i0)\mathrm{Im}\,F(x+i0) を計算し、Stieltjes の反転公式から μ=1(−∞,0)(t) dt\mu=\mathbf{1}_{(-\infty,0)}(t)\,dt を導け。

解答

(a) Im(−1/z)=y/∣z∣2≥0\mathrm{Im}(-1/z)=y/|z|^2\ge0 です。−1z=10−z-\frac1z=\frac1{0-z} なので μ=δ0\mu=\delta_0、a=Re F(i)=Re i=0a=\mathrm{Re}\,F(i)=\mathrm{Re}\,i=0、b=lim⁡−1/(iy)iy=0b=\lim\frac{-1/(iy)}{iy}=0 で、t1+t2\frac t{1+t^2} の項は t=0t=0 で消えます。

(b) Imlog⁡(x+iε)=arg⁡(x+iε)∈(0,π)\mathrm{Im}\log(x+i\varepsilon)=\arg(x+i\varepsilon)\in(0,\pi) は ε↓0\varepsilon\downarrow0 で x<0x\lt0 なら π\pi、x>0x\gt0 なら 00 に、各コンパクト区間上で(00 を含まなければ一様に)有界収束します。反転公式から、00 を含まない (a,b)(a,b) について μ((a,b))=1π∫abπ1x<0dx\mu((a,b))=\frac1\pi\int_a^b\pi\mathbf{1}_{x\lt0}dx です。原点の近くでも被積分関数は π\pi 以下なので μ({0})=0\mu(\{0\})=0 です。∫1t<01+t2dt=π2<∞\int\frac{\mathbf{1}_{t\lt0}}{1+t^2}dt=\frac\pi2\lt\infty を確かめておきます。

演習 8.2易

F(z)=1z+iF(z)=\frac1{z+i} が H2(C+)H^2(\mathbb{C}_+) に入ることを直接確かめ、定理 3.2 の gg が g(ξ)=−2πi e−ξ1ξ>0g(\xi)=-2\pi i\,e^{-\xi}\mathbf{1}_{\xi\gt0} であることを示せ。

解答

∫∣F(x+iy)∣2dx=∫dxx2+(y+1)2=πy+1≤π\int|F(x+iy)|^2dx=\int\frac{dx}{x^2+(y+1)^2}=\frac\pi{y+1}\le\pi です。Im a>0\mathrm{Im}\,a\gt0 なら ∫0∞eiaξdξ=ia\int_0^\infty e^{ia\xi}d\xi=\frac ia なので、12π∫0∞(−2πi)e−ξeizξdξ=−i∫0∞ei(z+i)ξdξ=−i⋅iz+i=1z+i\frac1{2\pi}\int_0^\infty(-2\pi i)e^{-\xi}e^{iz\xi}d\xi=-i\int_0^\infty e^{i(z+i)\xi}d\xi=-i\cdot\frac i{z+i}=\frac1{z+i} です。∥g∥22/(2π)=2π∫0∞e−2ξdξ=π=∥F∥H22\|g\|_2^2/(2\pi)=2\pi\int_0^\infty e^{-2\xi}d\xi=\pi=\|F\|_{H^2}^2 も確かめられます。

演習 8.3標準

命題 7.5 を Mk=(k!)2M_k=(k!)^2 に使ったとき、得られる関数の台の長さの上界を求めよ。また ψ(t)=e−1/t\psi(t)=e^{-1/t}(t>0t\gt0)、ψ(t)=0\psi(t)=0(t≤0t\le0)が [0,1][0,1] 上で Gevrey 類 G2G^2 に入ることを、Cauchy の積分公式で ψ(k)(t)\psi^{(k)}(t) を半径 t/2t/2 の円上の積分で表して示せ。

解答

ak=Mk−1/Mk=k−2a_k=M_{k-1}/M_k=k^{-2} なので a=π2/6a=\pi^2/6、台は [0,1+π2/6][0,1+\pi^2/6] に入ります。t>0t\gt0 について e−1/ze^{-1/z} は ∣z−t∣≤t/2|z-t|\le t/2 で正則です。円 ∣z−t∣=t/2|z-t|=t/2 上で Re z≥t/2\mathrm{Re}\,z\ge t/2、∣z∣≤3t/2|z|\le3t/2 なので Re(1/z)=Re z/∣z∣2≥t/29t2/4=29t\mathrm{Re}(1/z)=\mathrm{Re}\,z/|z|^2\ge\frac{t/2}{9t^2/4}=\frac{2}{9t}、すなわち ∣e−1/z∣≤e−2/(9t)|e^{-1/z}|\le e^{-2/(9t)} です。Cauchy の評価(命題 4.1[正則関数の強力な性質])から ∣ψ(k)(t)∣≤k! (2/t)ke−2/(9t)|\psi^{(k)}(t)|\le k!\,(2/t)^ke^{-2/(9t)} です。u=1/tu=1/t とおくと sup⁡u>0uke−2u/9=(9k/(2e))k≤(9/2)kk!\sup_{u\gt0}u^ke^{-2u/9}=(9k/(2e))^k\le(9/2)^kk!(kk≤ekk!k^k\le e^kk!)なので ∣ψ(k)(t)∣≤9k(k!)2|\psi^{(k)}(t)|\le9^k(k!)^2 で、t≤0t\le0 では ψ(k)=0\psi^{(k)}=0 です。

  • W. Rudin, Real and Complex Analysis, 3rd ed., McGraw-Hill, 1987 — 第 19 章(Paley–Wiener の定理、Denjoy–Carleman の定理)。
  • P. Koosis, Introduction to H_p Spaces, 2nd ed., Cambridge University Press, 1998 — 第 VI 章・第 VIII 章(上半平面の Hardy 空間)。
  • Y. Katznelson, An Introduction to Harmonic Analysis, 3rd ed., Cambridge University Press, 2004 — 第 III 章(共役関数)、第 VI 章(Paley–Wiener)。
  • L. Hörmander, The Analysis of Linear Partial Differential Operators I, 2nd ed., Springer, 1990 — 第 1.3 節(準解析類と Denjoy–Carleman の定理)、第 7.3 節(Paley–Wiener–Schwartz)。
  • G. Teschl, Mathematical Methods in Quantum Mechanics, 2nd ed., American Mathematical Society, 2014 — 第 3.4 節(Herglotz 関数と Stieltjes 反転公式)。

このテーマの 100 本ノック(100 問)

執筆: Claude Code(Opus 5.5)、Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 4 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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