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自己共役性の判定:Kato–Rellich・KLMN・Friedrichs 拡大・Nelson の可換子定理

対象読者: 本テーマ第 8 章までの内容(自己共役作用素、スペクトルの分類)と、ソボレフ空間の初歩やフーリエ変換を知っている人。摂動論や二次形式は仮定しません。

前提となる記事:スペクトルの分類:点・連続・本質スペクトルと Weyl の判定法

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量子力学のエネルギーを表す式(たとえば水素原子の −Δ−1/∣x∣-\Delta - 1/|x|)は、式を書いただけでは「どの関数に対して意味をもつか」が決まらず、そのままでは時間発展の計算に使えません。この記事は、式にきちんとした定義域を与えて「自己共役」という良い性質をもたせてよいかを、定義どおりに調べずに判定する道具を、証明つきで 5 つ紹介します。読み終えると、水素原子やデルタ関数の形のポテンシャルのハミルトニアンが確かに意味をもつ理由を説明できるようになります。以下の箇条書きは、5 つの道具の予告です。

  • 対称作用素 AA が自己共役であることは、ある zz について Ran(A−z)\mathrm{Ran}(A-z) と Ran(A−zˉ)\mathrm{Ran}(A-\bar{z}) がともに全空間になることと同値です。本記事の判定法はすべて、この「値域が全体になる」ことを別の言葉で保証する道具です。
  • Kato–Rellich の定理: 自己共役な AA に、相対限界が 11 未満の対称摂動 BB を加えても、A+BA+B は同じ定義域 D(A)D(A) の上で自己共役で、下に有界性も保たれます。R3\mathbb{R}^3 の水素原子 −Δ−1/∣x∣-\Delta - 1/|x| はこれで片づきます。
  • 表現定理: 下に有界な閉二次形式と下に有界な自己共役作用素は 1 対 1 に対応します。これを使うと、作用素としては意味を持たない摂動(デルタ関数ポテンシャルなど)も、形式の限界が 11 未満なら自己共役作用素を定めます(KLMN の定理)。
  • Friedrichs 拡大: 下に有界な対称作用素は、形式を閉包することで、下界を保ったまま自己共役作用素へ拡大できます。区間上の −d2/dx2-d^2/dx^2 からは Dirichlet 境界条件が自然に選ばれます。
  • Nelson の可換子定理と解析ベクトル定理は、摂動論に頼らず、比較用の作用素 NN との交換子や、指数級数の収束から本質的自己共役性を導きます。場の量子論のハミルトニアンや場の作用素に使われる道具です。

量子力学では、観測量は自己共役作用素で、時間発展は Stone の定理によって自己共役なハミルトニアン HH の生成するユニタリ群 e−itHe^{-itH} で与えられます(1 径数ユニタリ群と強連続半群)。対称なだけの作用素からはユニタリ群が作れず、自己共役拡大が複数あればダイナミクスが一意に決まりません。ですから「この形式的なハミルトニアンは、どの定義域で自己共役か」は物理の前提そのものです。

ところが自己共役性を定義どおり A=A∗A = A^* と確かめるのは、D(A∗)D(A^*) を具体的に求める必要があり、ほとんどの場合現実的ではありません。対称作用素と自己共役拡大 で見た不足指数の計算も、常微分作用素のように解が書ける場合を除けば困難です。

そこで、「よく分かっている自己共役作用素 AA(たとえば Fourier 変換で対角化できる −Δ-\Delta)からの摂動」として扱う、あるいは「二次形式(エネルギー)のほうから作用素を作る」という二つの戦略が生まれました。前者が Kato–Rellich、後者が KLMN と Friedrichs 拡大です。どちらも量子力学の数学的基礎づけ(Kato による原子のハミルトニアンの自己共役性の証明、1951 年)から始まった理論です。さらに、摂動として小さくない相互作用を扱うために Nelson が交換子を使う判定法を作りました。

本記事では H\mathcal{H} を複素 Hilbert 空間とし、内積 ⟨⋅,⋅⟩\langle\cdot,\cdot\rangle は第 1 変数について共役線形、第 2 変数について線形とします。作用素はすべて線形で、定義域 D(A)D(A) は特に断らない限り稠密です。閉作用素・閉包・共役作用素の定義は 非有界作用素、スペクトル定理と関数計算は スペクトル定理と関数計算 を前提にします。

定義 2.1(対称・自己共役・本質的自己共役)↗

稠密な定義域をもつ作用素 AA が対称であるとは、すべての φ,ψ∈D(A)\varphi,\psi\in D(A) について ⟨φ,Aψ⟩=⟨Aφ,ψ⟩\langle \varphi, A\psi\rangle = \langle A\varphi,\psi\rangle が成り立つこと、すなわち A⊂A∗A\subset A^* であることをいう。A=A∗A = A^* のとき AA は自己共役であるという。対称作用素 AA の閉包 Aˉ\bar{A} が自己共役であるとき、AA は本質的自己共役であるという。自己共役作用素 TT と部分空間 D⊂D(T)D\subset D(T) について、T∣DT|_D が本質的自己共役であるとき DD を TT の芯(core)という。作用素 AA が下に有界であるとは、ある γ∈R\gamma\in\mathbb{R} があってすべての ψ∈D(A)\psi\in D(A) について ⟨ψ,Aψ⟩≥γ∥ψ∥2\langle\psi, A\psi\rangle \ge \gamma\|\psi\|^2 となることをいい、A≥γA\ge\gamma と書く。

なお、D(A)D(A) は作用素が意味をもつ関数の集まりで、「芯」とは、その一部分だけ見ても AA の全体が(極限をとれば)復元できるような部分空間のことです。

以下の判定法の土台は次の命題です。

命題 2.2(自己共役性の基本判定)✓

AA を対称作用素とする。

  1. ある z∈Cz\in\mathbb{C} について Ran(A−z)=Ran(A−zˉ)=H\mathrm{Ran}(A-z) = \mathrm{Ran}(A-\bar{z}) = \mathcal{H} ならば、AA は自己共役である。特に zz が実数なら条件は Ran(A−z)=H\mathrm{Ran}(A-z)=\mathcal{H} の一つでよい。
  2. 実数 μ≠0\mu\neq 0 と ψ∈D(A)\psi\in D(A) について ∥(A−iμ)ψ∥2=∥Aψ∥2+μ2∥ψ∥2\|(A-i\mu)\psi\|^2 = \|A\psi\|^2 + \mu^2\|\psi\|^2 が成り立つ。
  3. Ker(A∗−i)=Ker(A∗+i)={0}\mathrm{Ker}(A^*-i) = \mathrm{Ker}(A^*+i) = \{0\} ならば、AA は本質的自己共役である。
証明(命題 2.2)

(1) A⊂A∗A\subset A^* なので D(A∗)⊂D(A)D(A^*)\subset D(A) を示せばよい。ψ∈D(A∗)\psi\in D(A^*) を取る。仮定 Ran(A−zˉ)=H\mathrm{Ran}(A-\bar{z})=\mathcal{H} から、(A−zˉ)φ=(A∗−zˉ)ψ(A-\bar{z})\varphi = (A^*-\bar{z})\psi となる φ∈D(A)\varphi\in D(A) がある。A⊂A∗A\subset A^* より (A∗−zˉ)(ψ−φ)=0(A^*-\bar{z})(\psi-\varphi)=0 である。一方、一般に Ker(A∗−zˉ)=Ran(A−z)⊥\mathrm{Ker}(A^*-\bar{z}) = \mathrm{Ran}(A-z)^\perp であり(χ∈Ker(A∗−zˉ)\chi\in\mathrm{Ker}(A^*-\bar z) と η∈D(A)\eta\in D(A) について ⟨χ,(A−z)η⟩=⟨(A∗−zˉ)χ,η⟩=0\langle\chi,(A-z)\eta\rangle = \langle (A^*-\bar{z})\chi,\eta\rangle = 0、逆も同じ計算)、仮定 Ran(A−z)=H\mathrm{Ran}(A-z)=\mathcal{H} からこれは {0}\{0\} である。よって ψ=φ∈D(A)\psi=\varphi\in D(A)。

(2) 展開すると交差項は iμ(⟨Aψ,ψ⟩−⟨ψ,Aψ⟩)i\mu(\langle A\psi,\psi\rangle - \langle\psi,A\psi\rangle) で、AA が対称なので 00 になる。

(3) (1) の証明中の等式 Ker(A∗∓i)=Ran(A±i)⊥\mathrm{Ker}(A^*\mp i) = \mathrm{Ran}(A\pm i)^\perp により Ran(A±i)\mathrm{Ran}(A\pm i) は稠密である。Aˉ\bar{A} は対称で、(2) から ∥(Aˉ±i)ψ∥≥∥ψ∥\|(\bar{A}\pm i)\psi\|\ge\|\psi\| なので、Aˉ\bar{A} が閉であることと合わせて Ran(Aˉ±i)\mathrm{Ran}(\bar{A}\pm i) は閉集合である。これは稠密な Ran(A±i)\mathrm{Ran}(A\pm i) を含むので H\mathcal{H} に一致し、(1) を z=iz=i として Aˉ\bar{A} に適用すればよい。

3. 相対有界性と Kato–Rellich の定理

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定義 3.1(相対有界性と相対限界)↗

A,BA, B を H\mathcal{H} 上の作用素とする。D(A)⊂D(B)D(A)\subset D(B) であり、定数 a,b≥0a, b\ge 0 があってすべての ψ∈D(A)\psi\in D(A) について

∥Bψ∥≤a∥Aψ∥+b∥ψ∥\|B\psi\| \le a\|A\psi\| + b\|\psi\|

が成り立つとき、BB は AA 有界(相対有界)であるという。このような aa の下限を BB の AA に関する相対限界という。

相対限界が a0a_0 であっても、a=a0a=a_0 で不等式が成り立つとは限らないことに注意してください(a↓a0a\downarrow a_0 のとき一般に b→∞b\to\infty)。

相対限界は「BB が AA に比べてどれだけ大きいか」の目盛りです。たとえば 3 次元で A=−ΔA=-\Delta、BB が 1/∣x∣1/|x| の掛け算なら、BB の影響は AA よりずっと小さく、相対限界は 00 になります(掛け算ならいつも小さい、というわけではありません)。次の Kato–Rellich の定理は、この目盛りが 11 未満なら、足し算で自己共役性が壊れないと保証します。証明の方針は、A+B−iμA+B-i\mu を (1+K)(A−iμ)(1+K)(A-i\mu) と因数分解し、KK のノルムを 11 未満にして 1+K1+K を Neumann 級数で逆転させる、というものです(μ\mu を大きく取ると KK が小さくなります)。

定理 3.2(Kato–Rellich の定理)✓

AA を自己共役作用素、BB を対称作用素とし、BB は AA 有界で、ある a<1a<1 と b≥0b\ge 0 についてすべての ψ∈D(A)\psi\in D(A) で ∥Bψ∥≤a∥Aψ∥+b∥ψ∥\|B\psi\|\le a\|A\psi\|+b\|\psi\| が成り立つとする。このとき次が成り立つ。

  1. D(A+B)=D(A)D(A+B)=D(A) 上の A+BA+B は自己共役である。
  2. D0⊂D(A)D_0\subset D(A) が AA の芯ならば、D0D_0 は A+BA+B の芯である。
  3. A≥γA\ge\gamma ならば A+B≥γ−max⁡{ b/(1−a), a∣γ∣+b }A+B \ge \gamma - \max\{\, b/(1-a),\ a|\gamma|+b \,\} である。
証明(定理 3.2)

A+BA+B は稠密な D(A)D(A) 上で定義され、対称作用素の和なので対称である。

(1) 実数 μ≠0\mu\neq 0 と φ∈H\varphi\in\mathcal{H} を取り、ψ=(A−iμ)−1φ∈D(A)\psi=(A-i\mu)^{-1}\varphi\in D(A) とおく。命題 2.2 (2) から ∥Aψ∥≤∥φ∥\|A\psi\|\le\|\varphi\|、∥ψ∥≤∥φ∥/∣μ∣\|\psi\|\le\|\varphi\|/|\mu| なので、相対有界性から

∥B(A−iμ)−1φ∥≤(a+b∣μ∣)∥φ∥.\|B(A-i\mu)^{-1}\varphi\| \le \Bigl(a + \frac{b}{|\mu|}\Bigr)\|\varphi\|.

a<1a<1 なので、∣μ∣|\mu| を十分大きく取れば K=B(A−iμ)−1K = B(A-i\mu)^{-1} は ∥K∥<1\|K\|<1 を満たす有界作用素で、1+K1+K は Neumann 級数により H\mathcal{H} 上の全単射である。D(A)D(A) 上で

A+B−iμ=(1+K)(A−iμ)A+B-i\mu = (1+K)(A-i\mu)

が成り立ち、A−iμA-i\mu は D(A)D(A) から H\mathcal{H} への全単射(AA の自己共役性)なので Ran(A+B−iμ)=H\mathrm{Ran}(A+B-i\mu)=\mathcal{H}。μ\mu を −μ-\mu に替えても同じなので、命題 2.2 (1) により A+BA+B は自己共役である。

(2) T=(A+B)∣D0T=(A+B)|_{D_0} とおく。ψ∈D(A)\psi\in D(A) に対し、芯の定義から ψn∈D0\psi_n\in D_0 で ψn→ψ\psi_n\to\psi、Aψn→AψA\psi_n\to A\psi となるものがある。相対有界性から ∥B(ψn−ψ)∥≤a∥A(ψn−ψ)∥+b∥ψn−ψ∥→0\|B(\psi_n-\psi)\|\le a\|A(\psi_n-\psi)\|+b\|\psi_n-\psi\|\to 0 なので Tψn→(A+B)ψT\psi_n\to(A+B)\psi。よって A+B⊂TˉA+B\subset\bar{T}。逆に T⊂A+BT\subset A+B で A+BA+B は (1) より閉なので Tˉ⊂A+B\bar{T}\subset A+B。したがって Tˉ=A+B\bar{T}=A+B は自己共役である。

(3) λ<γ\lambda<\gamma とし d=γ−λ>0d=\gamma-\lambda>0 とおく。スペクトル定理による関数計算で、∥(A−λ)−1∥≤1/d\|(A-\lambda)^{-1}\|\le 1/d、∥A(A−λ)−1∥≤sup⁡x≥γ∣x∣/(x−λ)\|A(A-\lambda)^{-1}\| \le \sup_{x\ge\gamma}|x|/(x-\lambda) である。この上限は max⁡{1,∣γ∣/d}\max\{1,|\gamma|/d\} 以下である。実際、λ≤0\lambda\le 0 のとき、x≥0x\ge 0 では x/(x−λ)≤1x/(x-\lambda)\le 1、γ≤x<0\gamma\le x<0 では −x/(x−λ)-x/(x-\lambda) が xx について減少(導関数が λ/(x−λ)2≤0\lambda/(x-\lambda)^2\le 0)なので ∣γ∣/d|\gamma|/d 以下である。0<λ<γ0<\lambda<\gamma のときは x/(x−λ)x/(x-\lambda) が xx について減少するので上限は γ/d\gamma/d である。したがって

∥B(A−λ)−1∥≤amax⁡{1,∣γ∣d}+bd.\|B(A-\lambda)^{-1}\| \le a\max\Bigl\{1,\frac{|\gamma|}{d}\Bigr\} + \frac{b}{d}.

右辺が 11 未満となるのは a+b/d<1a + b/d<1 かつ (a∣γ∣+b)/d<1(a|\gamma|+b)/d<1 のとき、すなわち d>max⁡{b/(1−a),a∣γ∣+b}d>\max\{b/(1-a), a|\gamma|+b\} のときである。このとき (1) と同じ因数分解 A+B−λ=(1+B(A−λ)−1)(A−λ)A+B-\lambda = (1+B(A-\lambda)^{-1})(A-\lambda) により λ\lambda は A+BA+B のレゾルベント集合に入る。こうして λ0=γ−max⁡{b/(1−a),a∣γ∣+b}\lambda_0 = \gamma-\max\{b/(1-a), a|\gamma|+b\} より小さい実数はすべて σ(A+B)\sigma(A+B) に属さない。自己共役作用素のスペクトルは実数なので σ(A+B)⊂[λ0,∞)\sigma(A+B)\subset[\lambda_0,\infty) であり、スペクトル定理から A+B≥λ0A+B\ge\lambda_0。

定理の使いどころは、BB の作用が「AA の微分の階数より低い」ことを Sobolev 型の不等式で確かめる場面です。R3\mathbb{R}^3 では次の補題が鍵になります。以下、Fourier 変換を ψ^(k)=(2π)−3/2∫e−ik⋅xψ(x) dx\hat\psi(k) = (2\pi)^{-3/2}\int e^{-ik\cdot x}\psi(x)\,dx とし、−Δ-\Delta は D(−Δ)=H2(R3)={ψ∈L2:∣k∣2ψ^∈L2}D(-\Delta) = H^2(\mathbb{R}^3) = \{\psi\in L^2 : |k|^2\hat\psi\in L^2\} 上の作用素 (−Δψ)∧(k)=∣k∣2ψ^(k)(-\Delta\psi)^\wedge(k) = |k|^2\hat\psi(k) とします。これは Fourier 変換で掛け算作用素にユニタリ同値なので自己共役で、Cc∞(R3)C_c^\infty(\mathbb{R}^3) を芯にもちます。

次の補題のねらいは、関数の最大値(原点での値など)を、−Δ-\Delta の大きさ ∥Δψ∥\|\Delta\psi\| と ∥ψ∥\|\psi\| で押さえることです。これがあれば、1/∣x∣1/|x| のように原点で発散するポテンシャルでも、−Δ-\Delta に比べて小さい摂動だと言えます。証明は、Fourier 変換した側で積分を Cauchy–Schwarz の不等式で評価するだけです。

補題 3.3(H² 関数の一様評価)✓

ψ∈H2(R3)\psi\in H^2(\mathbb{R}^3) は有界連続関数(の代表元)をもち、任意の r>0r>0 について

∥ψ∥∞≤c r−1/2∥Δψ∥+c r3/2∥ψ∥,c=(2π)−3/2π\|\psi\|_\infty \le c\, r^{-1/2}\|\Delta\psi\| + c\, r^{3/2}\|\psi\|,\qquad c=(2\pi)^{-3/2}\pi

が成り立つ。特に任意の a>0a>0 に対して、aa に依存する bb があって ∥ψ∥∞≤a∥Δψ∥+b∥ψ∥\|\psi\|_\infty\le a\|\Delta\psi\|+b\|\psi\| となる。

証明(補題 3.3)

Cauchy–Schwarz の不等式から

∫∣ψ^(k)∣ dk≤(∫dk(∣k∣2+r2)2)1/2∥(∣k∣2+r2)ψ^∥.\int|\hat\psi(k)|\,dk \le \Bigl(\int\frac{dk}{(|k|^2+r^2)^2}\Bigr)^{1/2}\bigl\|(|k|^2+r^2)\hat\psi\bigr\|.

極座標で ∫R3(∣k∣2+r2)−2dk=4π∫0∞k2(k2+r2)−2dk=4π⋅π/(4r)=π2/r\int_{\mathbb{R}^3}(|k|^2+r^2)^{-2}dk = 4\pi\int_0^\infty k^2(k^2+r^2)^{-2}dk = 4\pi\cdot\pi/(4r) = \pi^2/r。また Plancherel の定理より ∥(∣k∣2+r2)ψ^∥≤∥Δψ∥+r2∥ψ∥\|(|k|^2+r^2)\hat\psi\|\le\|\Delta\psi\|+r^2\|\psi\|。よって ψ^∈L1\hat\psi\in L^1 で、反転公式 ψ(x)=(2π)−3/2∫eik⋅xψ^(k) dk\psi(x) = (2\pi)^{-3/2}\int e^{ik\cdot x}\hat\psi(k)\,dk の右辺は連続で ∥ψ∥∞≤(2π)−3/2∥ψ^∥1\|\psi\|_\infty\le(2\pi)^{-3/2}\|\hat\psi\|_1 を満たす。以上を組み合わせれば主張の評価を得る。rr を大きく取れば第 1 項の係数はいくらでも小さくなる。

系 3.4(L2+L∞L² + L^∞ ポテンシャル(加藤の定理))✓

VV を R3\mathbb{R}^3 上の実数値可測関数で、V=V1+V2V = V_1+V_2、V1∈L2(R3)V_1\in L^2(\mathbb{R}^3)、V2∈L∞(R3)V_2\in L^\infty(\mathbb{R}^3) と分解できるものとする。このとき −Δ+V-\Delta+V は D(−Δ)=H2(R3)D(-\Delta)=H^2(\mathbb{R}^3) 上で自己共役かつ下に有界であり、Cc∞(R3)C_c^\infty(\mathbb{R}^3) 上で本質的自己共役である。

証明(系 3.4)

掛け算作用素 VV は実数値なので、H2H^2 上で対称である。ψ∈H2(R3)\psi\in H^2(\mathbb{R}^3) に対し、補題 3.3 から

∥Vψ∥≤∥V1∥2∥ψ∥∞+∥V2∥∞∥ψ∥≤a∥V1∥2∥Δψ∥+(b∥V1∥2+∥V2∥∞)∥ψ∥\|V\psi\| \le \|V_1\|_2\|\psi\|_\infty + \|V_2\|_\infty\|\psi\| \le a\|V_1\|_2\|\Delta\psi\| + (b\|V_1\|_2+\|V_2\|_\infty)\|\psi\|

で、a>0a>0 は任意なので VV の −Δ-\Delta に関する相対限界は 00 である。特に H2⊂D(V)H^2\subset D(V)。−Δ≥0-\Delta\ge 0 なので 定理 3.2 の (1)(3) から自己共役性と下に有界性が、Cc∞C_c^\infty が −Δ-\Delta の芯であることと (2) から本質的自己共役性が従う。

例 3.5(水素原子のハミルトニアン)

V(x)=−1/∣x∣V(x) = -1/|x| を V1=V⋅1{∣x∣≤1}V_1 = V\cdot 1_{\{|x|\le 1\}} と V2=V⋅1{∣x∣>1}V_2 = V\cdot 1_{\{|x|>1\}} に分ける。∥V1∥22=4π∫01r−2r2dr=4π<∞\|V_1\|_2^2 = 4\pi\int_0^1 r^{-2}r^2dr = 4\pi<\infty、∥V2∥∞=1\|V_2\|_\infty = 1 なので 系 3.4 が使え、−Δ−1/∣x∣-\Delta-1/|x| は H2(R3)H^2(\mathbb{R}^3) 上で自己共役、下に有界、Cc∞(R3)C_c^\infty(\mathbb{R}^3) 上で本質的自己共役である。結合定数 Z>0Z>0 を掛けた −Δ−Z/∣x∣-\Delta - Z/|x| も同様で、ZZ の大きさに制限はない(相対限界が 00 だから)。原子番号 ZZ、電子 nn 個の原子のハミルトニアンも、各項が R3n\mathbb{R}^{3n} 上で −Δ-\Delta に関して相対限界 00 であることを同じ補題から示せる(加藤の定理)。

次に、相対限界が 11 に達すると何が起こるかを見ます。

例 3.6(相対限界がちょうど 1 で自己共役性が壊れる例)

AA を非有界な自己共役作用素とし、B=−AB=-A(D(B)=D(A)D(B)=D(A))とする。BB は対称で ∥Bψ∥=1⋅∥Aψ∥+0⋅∥ψ∥\|B\psi\| = 1\cdot\|A\psi\|+0\cdot\|\psi\| なので、BB は AA 有界で相対限界は 11 である(a=1a=1 で不等式が成り立つ)。ところが A+BA+B は D(A)D(A) 上の零作用素である。AA が非有界なら D(A)≠HD(A)\neq\mathcal{H}(閉グラフ定理)なので、D(A)D(A) 上の零作用素は閉でなく、したがって自己共役ではない。その閉包は H\mathcal{H} 上の零作用素なので、この例では本質的自己共役性までは壊れていない。

実は、a=1a=1 で ∥Bψ∥≤∥Aψ∥+b∥ψ∥\|B\psi\|\le\|A\psi\|+b\|\psi\| が成り立つ場合には、A+BA+B は D(A)D(A) 上で常に本質的自己共役であることが知られている(Wüst の定理、Reed–Simon II 第 X 章)。a<1a<1 を a=1a=1 に緩めると、失われるのは「D(A)D(A) 上でそのまま閉であること」である。

注意 3.7

Kato–Rellich の定理は Rellich(1939 年、解析的摂動論の文脈)と加藤敏夫(1951 年、原子のハミルトニアン)による。相対限界が 11 以上の場合や、VV が Lloc2L^2_{\mathrm{loc}} に入らないほど特異な場合には、次節の二次形式の方法が有効になる。

定義 4.1(下に有界な閉二次形式)↗

稠密な部分空間 Q(q)⊂HQ(q)\subset\mathcal{H} 上の写像 q:Q(q)×Q(q)→Cq: Q(q)\times Q(q)\to\mathbb{C} が第 1 変数について共役線形、第 2 変数について線形であるとき、qq を二次形式(半双線形形式)といい、Q(q)Q(q) を形式定義域という。q(φ,ψ)=q(ψ,φ)‾q(\varphi,\psi)=\overline{q(\psi,\varphi)} のとき対称という。対称な qq が下に有界であるとは、ある M≥0M\ge 0 についてすべての ψ∈Q(q)\psi\in Q(q) で q(ψ,ψ)≥−M∥ψ∥2q(\psi,\psi)\ge -M\|\psi\|^2 となることをいう。このとき

∥ψ∥+12=q(ψ,ψ)+(M+1)∥ψ∥2\|\psi\|_{+1}^2 = q(\psi,\psi) + (M+1)\|\psi\|^2

は Q(q)Q(q) 上のノルムで、Q(q)Q(q) がこのノルムで完備なとき qq は閉であるという。qq が閉形式に拡張できるとき閉包可能といい、最小の閉拡大を閉包 qˉ\bar{q} という。閉形式 qq に対し、∥⋅∥+1\|\cdot\|_{+1} で Q(q)Q(q) において稠密な部分空間を形式芯という。

二次形式は「エネルギーの測り方」で、作用素 HH に対する ⟨φ,Hψ⟩\langle\varphi,H\psi\rangle に当たります。次の表現定理は、作用素より先に形式(エネルギー)だけ与えられていても、下に有界で閉じていれば対応する自己共役作用素が一つ決まる、と述べます。証明の方針は、形式から作った内積の Hilbert 空間で Riesz の表現定理を使い、有界な作用素 KK を作って、その逆 K−1K^{-1} を HH の候補にすることです。逆をとるのは、有界な作用素は扱いやすい一方、求めたいエネルギー作用素は非有界だからです。

∥⋅∥+1\|\cdot\|_{+1} は内積 q(φ,ψ)+(M+1)⟨φ,ψ⟩q(\varphi,\psi)+(M+1)\langle\varphi,\psi\rangle から来るノルムで、∥ψ∥≤∥ψ∥+1\|\psi\|\le\|\psi\|_{+1} を満たします。閉であるかどうかは MM の選び方によりません(異なる MM に対するノルムは同値です)。

定理 4.2(表現定理)✓

qq を稠密な定義域 Q(q)Q(q) をもつ、下に有界(q≥−Mq\ge -M)な対称閉形式とする。このとき次を満たす自己共役作用素 HH がただ一つ存在する。

  1. D(H)⊂Q(q)D(H)\subset Q(q) であり、すべての φ∈Q(q)\varphi\in Q(q)、ψ∈D(H)\psi\in D(H) について q(φ,ψ)=⟨φ,Hψ⟩q(\varphi,\psi) = \langle\varphi, H\psi\rangle。
  2. H≥−MH\ge -M であり、Q(q)=D((H+M)1/2)Q(q) = D((H+M)^{1/2})、かつ q(φ,ψ)=⟨(H+M)1/2φ,(H+M)1/2ψ⟩−M⟨φ,ψ⟩q(\varphi,\psi) = \langle (H+M)^{1/2}\varphi,(H+M)^{1/2}\psi\rangle - M\langle\varphi,\psi\rangle。特に D(H)D(H) は qq の形式芯である。
  3. ψ∈Q(q)\psi\in Q(q) と f∈Hf\in\mathcal{H} がすべての φ∈Q(q)\varphi\in Q(q) について q(φ,ψ)=⟨φ,f⟩q(\varphi,\psi)=\langle\varphi,f\rangle を満たすなら、ψ∈D(H)\psi\in D(H) かつ Hψ=fH\psi=f。

逆に、自己共役作用素 H≥−MH\ge -M に対して (2) の右辺で定まる形式は、D((H+M)1/2)D((H+M)^{1/2}) を定義域とする下に有界な閉形式である。

証明(定理 4.2)

q′=q+(M+1)⟨⋅,⋅⟩q' = q+(M+1)\langle\cdot,\cdot\rangle とおくと、qq が閉であることから H+1=(Q(q),q′)\mathcal{H}_{+1} = (Q(q), q') は Hilbert 空間である。

作用素 KK の構成。 f∈Hf\in\mathcal{H} に対し、φ↦⟨f,φ⟩\varphi\mapsto\langle f,\varphi\rangle は ∣⟨f,φ⟩∣≤∥f∥∥φ∥+1|\langle f,\varphi\rangle|\le\|f\|\|\varphi\|_{+1} より H+1\mathcal{H}_{+1} 上の有界線形汎関数である。Riesz の表現定理から、q′(Kf,φ)=⟨f,φ⟩q'(Kf,\varphi)=\langle f,\varphi\rangle、すなわち共役を取って q′(φ,Kf)=⟨φ,f⟩q'(\varphi,Kf)=\langle\varphi,f\rangle がすべての φ∈Q(q)\varphi\in Q(q) で成り立つ Kf∈Q(q)Kf\in Q(q) がただ一つある。KK は線形で、∥Kf∥2≤∥Kf∥+12=⟨Kf,f⟩≤∥Kf∥∥f∥\|Kf\|^2\le\|Kf\|_{+1}^2 = \langle Kf,f\rangle\le\|Kf\|\|f\| から ∥K∥≤1\|K\|\le 1。さらに(φ=Kf\varphi=Kf、φ=Kg\varphi=Kg を代入して)⟨g,Kf⟩=q′(Kg,Kf)=q′(Kf,Kg)‾=⟨f,Kg⟩‾=⟨Kg,f⟩\langle g,Kf\rangle = q'(Kg,Kf) = \overline{q'(Kf,Kg)} = \overline{\langle f,Kg\rangle} = \langle Kg,f\rangle なので KK は有界自己共役で、⟨f,Kf⟩=∥Kf∥+12≥0\langle f,Kf\rangle = \|Kf\|_{+1}^2\ge 0。Kf=0Kf=0 なら ⟨φ,f⟩=0\langle\varphi,f\rangle=0 がすべての φ∈Q(q)\varphi\in Q(q) で成り立ち、Q(q)Q(q) の稠密性から f=0f=0。

HH の定義。 KK は単射な自己共役作用素なので Ran(K)⊥=Ker(K)={0}\mathrm{Ran}(K)^\perp = \mathrm{Ker}(K)=\{0\} で、逆 H′=K−1H' = K^{-1} は D(H′)=Ran(K)D(H')=\mathrm{Ran}(K) 上の自己共役作用素である(グラフが KK のグラフの成分の入れ替えで、入れ替えは共役を取る操作と可換だから)。H=H′−(M+1)H = H'-(M+1) とおく。ψ=Kf∈D(H)\psi = Kf\in D(H) と φ∈Q(q)\varphi\in Q(q) について q′(φ,ψ)=⟨φ,f⟩=⟨φ,H′ψ⟩q'(\varphi,\psi) = \langle\varphi,f\rangle = \langle\varphi,H'\psi\rangle なので (1) が成り立つ。φ=ψ\varphi=\psi とすると ⟨ψ,Hψ⟩=q(ψ,ψ)≥−M∥ψ∥2\langle\psi,H\psi\rangle = q(\psi,\psi)\ge -M\|\psi\|^2 で H≥−MH\ge -M。

(3)。 仮定から q′(φ,ψ)=⟨φ,f+(M+1)ψ⟩q'(\varphi,\psi) = \langle\varphi, f+(M+1)\psi\rangle なので、KK の一意性から ψ=K(f+(M+1)ψ)∈Ran(K)=D(H)\psi = K(f+(M+1)\psi)\in\mathrm{Ran}(K)=D(H) で、H′ψ=f+(M+1)ψH'\psi = f+(M+1)\psi、すなわち Hψ=fH\psi=f。

(2)。 まず D(H)D(H) は H+1\mathcal{H}_{+1} で稠密である。実際 φ∈Q(q)\varphi\in Q(q) がすべての ff について 0=q′(Kf,φ)=⟨f,φ⟩0=q'(Kf,\varphi)=\langle f,\varphi\rangle を満たせば φ=0\varphi=0。ψ∈D(H)\psi\in D(H) について ∥ψ∥+12=⟨ψ,H′ψ⟩=∥H′1/2ψ∥2\|\psi\|_{+1}^2 = \langle\psi,H'\psi\rangle = \|H'^{1/2}\psi\|^2 で、これは H′1/2H'^{1/2} のグラフノルム (∥H′1/2ψ∥2+∥ψ∥2)1/2(\|H'^{1/2}\psi\|^2+\|\psi\|^2)^{1/2} と同値である(∥ψ∥≤∥ψ∥+1\|\psi\|\le\|\psi\|_{+1})。D(H′)D(H') は H′1/2H'^{1/2} の芯(スペクトル定理)なので、D(H′)D(H') の ∥⋅∥+1\|\cdot\|_{+1} に関する完備化は、H\mathcal{H} の部分空間として Q(q)Q(q) にも D(H′1/2)D(H'^{1/2}) にも一致する(どちらのノルムも ∥⋅∥\|\cdot\| を上から押さえるので、同じ Cauchy 列は H\mathcal{H} で同じ極限をもつ)。よって Q(q)=D(H′1/2)=D((H+M)1/2)Q(q)=D(H'^{1/2})=D((H+M)^{1/2}) で、形式の等式は D(H)D(H) 上の等式を連続性で延長して得る。

一意性。 H~\tilde{H} も (1) を満たす自己共役作用素とする。ψ∈D(H~)\psi\in D(\tilde{H}) について q(φ,ψ)=⟨φ,H~ψ⟩q(\varphi,\psi) = \langle\varphi,\tilde{H}\psi\rangle なので、(3) から ψ∈D(H)\psi\in D(H)、Hψ=H~ψH\psi=\tilde{H}\psi。すなわち H~⊂H\tilde{H}\subset H。自己共役作用素は真の対称拡大をもたないので(H~⊂H\tilde{H}\subset H から H=H∗⊂H~∗=H~H = H^*\subset\tilde{H}^*=\tilde{H})、H~=H\tilde{H}=H。

逆の主張は、(H+M)1/2(H+M)^{1/2} が閉作用素であることから、その定義域がグラフノルムで完備であることに帰着する。

定義 5.1(形式の意味での相対有界性)↗

H≥0H\ge 0 を自己共役作用素、β\beta を Q(H)=D(H1/2)Q(H) = D(H^{1/2}) を含む定義域をもつ対称二次形式とする。定数 a,b≥0a,b\ge 0 があってすべての ψ∈D(H1/2)\psi\in D(H^{1/2}) について

∣β(ψ,ψ)∣≤a∥H1/2ψ∥2+b∥ψ∥2|\beta(\psi,\psi)| \le a\|H^{1/2}\psi\|^2 + b\|\psi\|^2

が成り立つとき、β\beta は**HH 形式有界であるといい、このような aa の下限を形式限界**という。

定理 5.2(KLMN の定理)✓

H≥0H\ge 0 を自己共役作用素、β\beta を HH 形式有界な対称二次形式とし、ある a<1a<1 と b≥0b\ge 0 について 定義 5.1 の不等式が成り立つとする。このとき

q(φ,ψ)=⟨H1/2φ,H1/2ψ⟩+β(φ,ψ),Q(q)=D(H1/2)q(\varphi,\psi) = \langle H^{1/2}\varphi, H^{1/2}\psi\rangle + \beta(\varphi,\psi),\qquad Q(q) = D(H^{1/2})

は下に有界(q≥−bq\ge -b)な閉形式であり、したがって 定理 4.2 により qq に対応する自己共役作用素 Hβ≥−bH_\beta\ge -b がただ一つ存在する。さらに H1/2H^{1/2} の任意の芯は qq の形式芯である。

証明(定理 5.2)

仮定から q(ψ,ψ)≥(1−a)∥H1/2ψ∥2−b∥ψ∥2≥−b∥ψ∥2q(\psi,\psi)\ge (1-a)\|H^{1/2}\psi\|^2 - b\|\psi\|^2\ge -b\|\psi\|^2。M=bM=b とした形式ノルムを ∥ψ∥+12=q(ψ,ψ)+(b+1)∥ψ∥2\|\psi\|_{+1}^2 = q(\psi,\psi)+(b+1)\|\psi\|^2 とすると

(1−a)(∥H1/2ψ∥2+∥ψ∥2)≤∥ψ∥+12≤(1+a)∥H1/2ψ∥2+(2b+1)∥ψ∥2.(1-a)\bigl(\|H^{1/2}\psi\|^2+\|\psi\|^2\bigr) \le \|\psi\|_{+1}^2 \le (1+a)\|H^{1/2}\psi\|^2 + (2b+1)\|\psi\|^2.

左の不等式では 1≥1−a1\ge 1-a を、右の不等式では β\beta の評価をそのまま使った。よって ∥⋅∥+1\|\cdot\|_{+1} は H1/2H^{1/2} のグラフノルムと同値である。H1/2H^{1/2} は閉作用素なので D(H1/2)D(H^{1/2}) はグラフノルムで完備であり、したがって qq は閉である。芯についての主張も、ノルムの同値性から直ちに従う。qq が対称であることは、β\beta と ⟨H1/2⋅,H1/2⋅⟩\langle H^{1/2}\cdot,H^{1/2}\cdot\rangle が対称であることから従う。

KLMN は Kato, Lions, Lax, Milgram, Nelson の頭文字です。作用素の和 H+BH+B が意味をもたなくても、形式の和は意味をもつ、というのがこの定理の価値です。なお、BB が作用素として HH 有界で相対限界 aa なら形式限界は aa 以下になるので(Kato の教科書第 VI 章)、KLMN は Kato–Rellich より適用範囲が広い判定法です。ただし KLMN の結論は「形式和に対応する作用素がある」ことだけで、D(Hβ)D(H_\beta) がどうなっているかは教えてくれません。

例 5.3(1 次元のデルタ関数ポテンシャル)

H=L2(R)\mathcal{H}=L^2(\mathbb{R})、H=−d2/dx2H = -d^2/dx^2(D(H)=H2(R)D(H)=H^2(\mathbb{R})、D(H1/2)=H1(R)D(H^{1/2})=H^1(\mathbb{R})、∥H1/2ψ∥=∥ψ′∥\|H^{1/2}\psi\|=\|\psi'\|)とし、α∈R\alpha\in\mathbb{R} に対して β(φ,ψ)=α φ(0)‾ψ(0)\beta(\varphi,\psi) = \alpha\,\overline{\varphi(0)}\psi(0) とおく。ψ∈H1(R)\psi\in H^1(\mathbb{R}) は絶対連続な代表元をもち ∣x∣→∞|x|\to\infty で 00 に収束するので、

∣ψ(0)∣2=−∫0∞ddx∣ψ(x)∣2dx≤2∥ψ∥∥ψ′∥≤ε∥ψ′∥2+ε−1∥ψ∥2(ε>0).|\psi(0)|^2 = -\int_0^\infty\frac{d}{dx}|\psi(x)|^2dx \le 2\|\psi\|\|\psi'\| \le \varepsilon\|\psi'\|^2+\varepsilon^{-1}\|\psi\|^2\quad(\varepsilon>0).

したがって β\beta の形式限界は 00 で、定理 5.2 により「−d2/dx2+αδ-d^2/dx^2+\alpha\delta」が下に有界な自己共役作用素として定まる。一方 ψ↦ψ(0)δ\psi\mapsto\psi(0)\delta は L2L^2 に値をとる作用素ではないので、Kato–Rellich は適用できない。

対称作用素は、一般には自己共役拡大が複数あったり、全くなかったりします。ただし下に有界なら、前節の表現定理を使って、形式を閉じることで自己共役拡大が一つ選べる、というのが次の定理です。証明の最初の山場は、形式のノルム ∥⋅∥+1\|\cdot\|_{+1} で完備化したとき、元の空間 H\mathcal{H} の中の別々のベクトルに潰れてしまわない(H\mathcal{H} に単射に写る)ことの確認です。これが言えないと、完備化が H\mathcal{H} の部分空間として扱えず、形式が「閉包可能」にならないためです。

定理 6.1(Friedrichs 拡大)✓

SS を稠密な定義域をもつ対称作用素で、ある M≥0M\ge 0 について S≥−MS\ge -M であるとする。このとき次が成り立つ。

  1. D(S)D(S) 上の形式 qS(φ,ψ)=⟨φ,Sψ⟩q_S(\varphi,\psi)=\langle\varphi,S\psi\rangle は閉包可能で、閉包 qˉS\bar{q}_S も qˉS≥−M\bar{q}_S\ge -M を満たす。
  2. qˉS\bar{q}_S に 定理 4.2 で対応する自己共役作用素 SFS_{\mathrm{F}} は SS の拡大であり、SF≥−MS_{\mathrm{F}}\ge -M である(Friedrichs 拡大)。
  3. SS の自己共役拡大 TT で D(T)⊂Q(qˉS)D(T)\subset Q(\bar{q}_S) を満たすものは SFS_{\mathrm{F}} だけである。
証明(定理 6.1)

q′=qS+(M+1)⟨⋅,⋅⟩q' = q_S + (M+1)\langle\cdot,\cdot\rangle は D(S)D(S) 上の正定値な内積で、∥ψ∥+12=q′(ψ,ψ)≥∥ψ∥2\|\psi\|_{+1}^2 = q'(\psi,\psi)\ge\|\psi\|^2。

(1) D(S)D(S) の ∥⋅∥+1\|\cdot\|_{+1} による完備化 H+1\mathcal{H}_{+1} から H\mathcal{H} への自然な写像(∥⋅∥≤∥⋅∥+1\|\cdot\|\le\|\cdot\|_{+1} により定まる)が単射であることを示せばよい。ψn∈D(S)\psi_n\in D(S) が ∥⋅∥+1\|\cdot\|_{+1} で Cauchy 列で、H\mathcal{H} で ψn→0\psi_n\to 0 とする。∥ψn∥+1≤C\|\psi_n\|_{+1}\le C とし、ε>0\varepsilon>0 に対して n,m≥Nn,m\ge N なら ∥ψn−ψm∥+1<ε\|\psi_n-\psi_m\|_{+1}<\varepsilon となる NN を取る。q′q' に対する Cauchy–Schwarz の不等式から、n,m≥Nn,m\ge N で

∥ψn∥+12=q′(ψn−ψm,ψn)+q′(ψm,ψn)≤εC+∣⟨(S+M+1)ψm,ψn⟩∣.\|\psi_n\|_{+1}^2 = q'(\psi_n-\psi_m,\psi_n)+q'(\psi_m,\psi_n) \le \varepsilon C + \bigl|\langle (S+M+1)\psi_m,\psi_n\rangle\bigr|.

ここで q′(ψm,ψn)=q′(ψn,ψm)‾=⟨ψn,(S+M+1)ψm⟩‾q'(\psi_m,\psi_n) = \overline{q'(\psi_n,\psi_m)} = \overline{\langle\psi_n,(S+M+1)\psi_m\rangle} を使った。mm を固定して n→∞n\to\infty とすると最後の項は 00 に収束するので lim sup⁡n∥ψn∥+12≤εC\limsup_n\|\psi_n\|_{+1}^2\le\varepsilon C。ε\varepsilon は任意なので ∥ψn∥+1→0\|\psi_n\|_{+1}\to 0。よって H+1\mathcal{H}_{+1} は H\mathcal{H} の部分空間 Q(qˉS)Q(\bar{q}_S) と同一視でき、qˉS\bar{q}_S はその上の閉形式である。下界 −M-M は連続性で保たれる。

(2) ψ∈D(S)\psi\in D(S) を固定する。φ∈D(S)\varphi\in D(S) なら qˉS(φ,ψ)=⟨φ,Sψ⟩\bar{q}_S(\varphi,\psi)=\langle\varphi,S\psi\rangle で、両辺は φ\varphi について ∥⋅∥+1\|\cdot\|_{+1} 連続(右辺は ∥⋅∥\|\cdot\| 連続でさえある)なので、この等式はすべての φ∈Q(qˉS)\varphi\in Q(\bar{q}_S) で成り立つ。定理 4.2 (3) から ψ∈D(SF)\psi\in D(S_{\mathrm{F}})、SFψ=SψS_{\mathrm{F}}\psi=S\psi。下界は表現定理 (2) による。

(3) TT を SS の自己共役拡大で D(T)⊂Q(qˉS)D(T)\subset Q(\bar{q}_S) とする。ψ∈D(T)\psi\in D(T)、φ∈D(S)\varphi\in D(S) について qˉS(φ,ψ)=qˉS(ψ,φ)‾=⟨ψ,Sφ⟩‾=⟨Sφ,ψ⟩=⟨Tφ,ψ⟩=⟨φ,Tψ⟩\bar{q}_S(\varphi,\psi) = \overline{\bar{q}_S(\psi,\varphi)} = \overline{\langle\psi,S\varphi\rangle} = \langle S\varphi,\psi\rangle = \langle T\varphi,\psi\rangle = \langle\varphi,T\psi\rangle。(2) と同じく φ\varphi について連続性で Q(qˉS)Q(\bar{q}_S) 全体に延長でき、表現定理 (3) から T⊂SFT\subset S_{\mathrm{F}}。両者は自己共役なので T=SFT=S_{\mathrm{F}}(表現定理の一意性の証明と同じ議論)。

例 6.2(区間上のラプラシアンと Dirichlet 条件)

H=L2(0,1)\mathcal{H}=L^2(0,1)、S=−d2/dx2S=-d^2/dx^2、D(S)=Cc∞(0,1)D(S)=C_c^\infty(0,1) とする。部分積分で ⟨ψ,Sψ⟩=∥ψ′∥2≥0\langle\psi,S\psi\rangle = \|\psi'\|^2\ge 0。形式ノルムは (∥ψ′∥2+∥ψ∥2)1/2(\|\psi'\|^2+\|\psi\|^2)^{1/2} で、Cc∞(0,1)C_c^\infty(0,1) のこのノルムでの閉包は H01(0,1)H^1_0(0,1)(両端で 00 となる H1H^1 関数)である。ψ∈H2(0,1)∩H01(0,1)\psi\in H^2(0,1)\cap H^1_0(0,1) なら、φ∈H01\varphi\in H^1_0 に対して部分積分の境界項が消えて qˉS(φ,ψ)=⟨φ,−ψ′′⟩\bar{q}_S(\varphi,\psi) = \langle\varphi,-\psi''\rangle となるので、表現定理 (3) から SFψ=−ψ′′S_{\mathrm{F}}\psi=-\psi''。こうして Friedrichs 拡大は Dirichlet 境界条件のラプラシアン(定義域 H2∩H01H^2\cap H^1_0)になる。Neumann 条件など他の自己共役拡大も存在するが(不足指数は (2,2)(2,2))、それらの定義域は H01H^1_0 に収まらない。

注意 6.3

Friedrichs 拡大は、SS の下に有界な自己共役拡大のうち形式の意味で「最大」のものである(Krein の理論。形式定義域が最小で、下界は SS の下界と同じ)。また SS が本質的自己共役なら自己共役拡大は Sˉ\bar{S} だけなので、SF=SˉS_{\mathrm{F}}=\bar{S} となる。

7. Nelson の可換子定理と解析ベクトル定理

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摂動論の判定法は「BB が AA に比べて小さい」ことを要求します。場の量子論の相互作用はしばしば自由ハミルトニアンに比べて小さくありません。そこで、自己共役で扱いやすい作用素 N≥1N\ge 1(典型的には数作用素や自由ハミルトニアンに 11 を足したもの)を物差しにして、「AA は NN 程度の大きさで、AA と NN の交換子は NN の半分程度の大きさ」という条件から本質的自己共役性を引き出すのが Nelson の可換子定理です。

定理 7.1(Nelson の可換子定理)✓

NN を N≥1N\ge 1 を満たす自己共役作用素とし、DD を NN の芯とする。AA を D(A)=DD(A)=D の対称作用素とし、定数 c,d≥0c,d\ge 0 があってすべての ψ∈D\psi\in D で

(i)  ∥Aψ∥≤c∥Nψ∥,(ii)  ∣⟨Aψ,Nψ⟩−⟨Nψ,Aψ⟩∣≤d ∥N1/2ψ∥2\text{(i)}\ \ \|A\psi\|\le c\|N\psi\|,\qquad \text{(ii)}\ \ \bigl|\langle A\psi,N\psi\rangle - \langle N\psi,A\psi\rangle\bigr| \le d\,\|N^{1/2}\psi\|^2

が成り立つとする。このとき AA は DD 上で本質的自己共役である。

証明(定理 7.1)

ステップ 1(D(N)D(N) への延長)。 ψ∈D(N)\psi\in D(N) に対し、芯の定義から ψn∈D\psi_n\in D で ψn→ψ\psi_n\to\psi、Nψn→NψN\psi_n\to N\psi となるものがある。(i) から AψnA\psi_n は Cauchy 列なので ψ∈D(Aˉ)\psi\in D(\bar{A}) で Aˉψ=lim⁡Aψn\bar{A}\psi=\lim A\psi_n。また ∥N1/2χ∥2=⟨χ,Nχ⟩≤∥χ∥∥Nχ∥\|N^{1/2}\chi\|^2=\langle\chi,N\chi\rangle\le\|\chi\|\|N\chi\| から N1/2ψn→N1/2ψN^{1/2}\psi_n\to N^{1/2}\psi。よって (i)(ii) は AA を Aˉ\bar{A}、DD を D(N)D(N) に替えても成り立つ。

ステップ 2(不足空間が自明)。 命題 2.2 (3) により、A∗φ=iφA^*\varphi = i\varphi または A∗φ=−iφA^*\varphi=-i\varphi を満たす φ\varphi が 00 しかないことを示せばよい。A∗φ=iφA^*\varphi=i\varphi とし(−i-i の場合も同様)、ε>0\varepsilon>0 に対して φε=(1+εN)−1φ∈D(N)\varphi_\varepsilon = (1+\varepsilon N)^{-1}\varphi\in D(N) とおく。A∗=Aˉ∗A^*=\bar{A}^* なので

⟨Aˉφε,φ⟩=⟨φε,A∗φ⟩=i⟨φε,φ⟩=i⟨φ,(1+εN)−1φ⟩→i∥φ∥2(ε→0).\langle\bar{A}\varphi_\varepsilon,\varphi\rangle = \langle\varphi_\varepsilon,A^*\varphi\rangle = i\langle\varphi_\varepsilon,\varphi\rangle = i\langle\varphi,(1+\varepsilon N)^{-1}\varphi\rangle \to i\|\varphi\|^2\quad(\varepsilon\to 0).

他方 φ=φε+εNφε\varphi = \varphi_\varepsilon+\varepsilon N\varphi_\varepsilon を代入すると ⟨Aˉφε,φ⟩=⟨Aˉφε,φε⟩+ε⟨Aˉφε,Nφε⟩\langle\bar{A}\varphi_\varepsilon,\varphi\rangle = \langle\bar{A}\varphi_\varepsilon,\varphi_\varepsilon\rangle + \varepsilon\langle\bar{A}\varphi_\varepsilon,N\varphi_\varepsilon\rangle。第 1 項は Aˉ\bar{A} が対称なので実数である。第 2 項の虚部は、ステップ 1 の (ii) により

∣Im ε⟨Aˉφε,Nφε⟩∣=ε2∣⟨Aˉφε,Nφε⟩−⟨Nφε,Aˉφε⟩∣≤d2 ε⟨φε,Nφε⟩\Bigl|\mathrm{Im}\,\varepsilon\langle\bar{A}\varphi_\varepsilon,N\varphi_\varepsilon\rangle\Bigr| = \frac{\varepsilon}{2}\bigl|\langle\bar{A}\varphi_\varepsilon,N\varphi_\varepsilon\rangle-\langle N\varphi_\varepsilon,\bar{A}\varphi_\varepsilon\rangle\bigr| \le \frac{d}{2}\,\varepsilon\langle\varphi_\varepsilon,N\varphi_\varepsilon\rangle

で押さえられる。関数計算で ε⟨φε,Nφε⟩=⟨φ,gε(N)φ⟩\varepsilon\langle\varphi_\varepsilon,N\varphi_\varepsilon\rangle = \langle\varphi, g_\varepsilon(N)\varphi\rangle、gε(x)=εx/(1+εx)2g_\varepsilon(x)=\varepsilon x/(1+\varepsilon x)^2 であり、0≤gε≤1/40\le g_\varepsilon\le 1/4、各 xx で gε(x)→0g_\varepsilon(x)\to 0 なので、スペクトル測度に関する優収束定理からこれは 00 に収束する。両辺の虚部を比べて ∥φ∥2=lim⁡ε→0Im⟨Aˉφε,φ⟩=0\|\varphi\|^2 = \lim_{\varepsilon\to 0}\mathrm{Im}\langle\bar{A}\varphi_\varepsilon,\varphi\rangle = 0。

(i) は D(N)⊂D(Aˉ)D(N)\subset D(\bar{A}) を保証するためだけに使われ、本質は (ii) にあります。交換子の評価が N1/2N^{1/2} の二乗、つまり「NN より半分低い次数」で済むことが、正則化 φε\varphi_\varepsilon を外す極限で効いています。

注意 7.2

同じ仮定のもとで、Aˉ\bar{A} は NN の任意の芯の上で本質的自己共役であることも示せる(ステップ 1 から、NN の芯上の AA の閉包はすべて D(N)D(N) を含み同じ閉包をもつ)。原論文は Nelson(1972 年)で、Reed–Simon II 第 X 章に Glimm–Jaffe の議論とあわせた形で収録されている。Fock 空間上の Segal 場 ΦS(f)\Phi_{\mathrm{S}}(f) や P(ϕ)2P(\phi)_2 模型の相互作用を含むハミルトニアンに対し、NN を数作用素 +1+1 や自由ハミルトニアン +1+1 として適用するのが典型例である。

例 7.3(ダイレーション生成子)

H=L2(R)\mathcal{H}=L^2(\mathbb{R}) で xx を位置の掛け算作用素、p=−i d/dxp=-i\,d/dx とし、N=p2+x2+1N = p^2+x^2+1(調和振動子に 11 を足したもの)とする。NN は Hermite 関数 hnh_n を固有ベクトルにもち Nhn=(2n+2)hnNh_n=(2n+2)h_n で、D=span{hn}D=\mathrm{span}\{h_n\} は NN の芯である。A=xp+pxA = xp+px とおく。消滅・生成作用素 a=(x+ip)/2a=(x+ip)/\sqrt{2}、a∗=(x−ip)/2a^*=(x-ip)/\sqrt{2} を使うと A=−i(a2−a∗2)A = -i(a^2-a^{*2}) で、∥a2hn∥=n(n−1)\|a^2h_n\|=\sqrt{n(n-1)}、∥a∗2hn∥=(n+1)(n+2)≤n+2\|a^{*2}h_n\|=\sqrt{(n+1)(n+2)}\le n+2 から、直交性を使って ∥Aψ∥≤2∥(n+2)ψ∥≤2∥Nψ∥\|A\psi\|\le 2\|(n+2)\psi\|\le 2\|N\psi\|(nn は hnh_n に nn を掛ける作用素)。また [p2,x]=−2ip[p^2,x]=-2ip、[x2,p]=2ix[x^2,p]=2ix から DD 上で [A,N]=−4i(x2−p2)[A,N] = -4i(x^2-p^2) となり、

∣⟨Aψ,Nψ⟩−⟨Nψ,Aψ⟩∣=4∣⟨ψ,(x2−p2)ψ⟩∣≤4⟨ψ,Nψ⟩=4∥N1/2ψ∥2.\bigl|\langle A\psi,N\psi\rangle-\langle N\psi,A\psi\rangle\bigr| = 4\bigl|\langle\psi,(x^2-p^2)\psi\rangle\bigr| \le 4\langle\psi,N\psi\rangle = 4\|N^{1/2}\psi\|^2.

定理 7.1 から AA は DD 上で本質的自己共役である。Aˉ/2\bar{A}/2 は (e−itAˉ/2ψ)(x)=e−t/2ψ(e−tx)(e^{-i t\bar{A}/2}\psi)(x) = e^{-t/2}\psi(e^{-t}x) というスケール変換のユニタリ群を生成する。

なお、数作用素とは Fock 空間(粒子数が不定の系の状態空間)で粒子の個数を数える作用素のことで、NN にはその例を考えると見通しがよくなります。

もう一つの判定法は、指数級数 eitAψ=∑n(it)nAnψ/n!e^{itA}\psi=\sum_n (it)^nA^n\psi/n! が収束するベクトルを数えるものです。

定義 7.4(解析ベクトル)↗

作用素 AA について、ψ∈⋂n≥1D(An)\psi\in\bigcap_{n\ge 1}D(A^n) であって、ある t>0t>0 で

∑n=0∞∥Anψ∥n! tn<∞\sum_{n=0}^\infty\frac{\|A^n\psi\|}{n!}\,t^n<\infty

となるとき、ψ\psi を AA の解析ベクトルという。

次の定理の証明では、空間を二倍にして A⊕(−A)A\oplus(-A) を考えます。AA 自身では不足指数が等しいか分かりませんが、AA と −A-A を並べると不足部分空間を入れ替えるユニタリ写像が作れ(不足指数が等しくなり)、自己共役拡大の存在を使えるからです。

定理 7.5(Nelson の解析ベクトル定理)✓

AA を対称作用素とする。D(A)D(A) が AA の解析ベクトルからなる全体集合(線形包が稠密な集合)を含むならば、AA は本質的自己共役である。

証明(定理 7.5)

S⊂D(A)S\subset D(A) を解析ベクトルからなる全体集合とします。系 4.4[対称作用素と自己共役拡大] により Ker(A∗−i)=Ker(A∗+i)={0}\mathrm{Ker}(A^*-i)=\mathrm{Ker}(A^*+i)=\{0\} を示せば十分です。A∗φ=iφA^*\varphi=i\varphi とし、φ⊥S\varphi\perp S を示します(A∗φ=−iφA^*\varphi=-i\varphi の場合は下の ese^{s} が e−se^{-s} に変わるだけです)。

ステップ 1:広い空間での自己共役拡大。 H⊕H\mathcal{H}\oplus\mathcal{H} 上の作用素 T=A⊕(−A)T=A\oplus(-A)(定義域 D(A)⊕D(A)D(A)\oplus D(A))は対称で、閉包は Aˉ⊕(−Aˉ)\bar A\oplus(-\bar A)、共役は T∗=A∗⊕(−A∗)T^*=A^*\oplus(-A^*) です(成分ごとに確かめられます)。不足部分空間は

Ker(T∗−i)=Ker(A∗−i)⊕Ker(A∗+i),Ker(T∗+i)=Ker(A∗+i)⊕Ker(A∗−i)\mathrm{Ker}(T^*-i)=\mathrm{Ker}(A^*-i)\oplus\mathrm{Ker}(A^*+i),\qquad\mathrm{Ker}(T^*+i)=\mathrm{Ker}(A^*+i)\oplus\mathrm{Ker}(A^*-i)

で、成分の入れ替え (u,v)↦(v,u)(u,v)\mapsto(v,u) が前者から後者へのユニタリ写像を与えます。定理 5.4[対称作用素と自己共役拡大] の 2 により、Tˉ\bar T の、したがって TT の自己共役拡大 BB が存在します。Jψ=(ψ,0)J\psi=(\psi,0) とおくと ψ∈D(A)\psi\in D(A) で BJψ=JAψBJ\psi=JA\psi なので、帰納的に ψ∈⋂nD(An)\psi\in\bigcap_nD(A^n) なら Jψ∈D(Bn)J\psi\in D(B^n)、BnJψ=JAnψB^nJ\psi=JA^n\psi です。

ステップ 2:解析関数。 ψ∈S\psi\in S とし、∑n∥Anψ∥tn/n!<∞\sum_n\|A^n\psi\|t^n/n!<\infty となる t>0t>0 を取ります。χ=Jψ\chi=J\psi、U(s)=eisBU(s)=e^{isB}(定理 6.3[スペクトル定理と関数計算])とし、

f(s)=⟨Jφ,U(s)χ⟩(s∈R)f(s)=\langle J\varphi,U(s)\chi\rangle\qquad(s\in\mathbb{R})

とおきます。∣f(s)∣≤∥φ∥∥ψ∥|f(s)|\le\|\varphi\|\|\psi\| です。定理 6.3[スペクトル定理と関数計算] の 2 を Bkχ∈D(B)B^k\chi\in D(B) に繰り返し使うと、ff は無限回微分可能で f(n)(s)=in⟨Jφ,U(s)Bnχ⟩f^{(n)}(s)=i^n\langle J\varphi,U(s)B^n\chi\rangle、とくに ∣f(n)(s)∣≤∥φ∥∥Anψ∥|f^{(n)}(s)|\le\|\varphi\|\|A^n\psi\| がすべての ss で成り立ちます。定理 5.3[平均値の定理とテイラーの定理] を ff の実部と虚部に使うと、∣s∣<t|s|<t のとき剰余は ∥φ∥∥ANψ∥∣s∣N/N!→0\|\varphi\|\|A^N\psi\||s|^N/N!\to0 で抑えられるので、任意の s0∈Rs_0\in\mathbb{R} で

f(s0+s)=∑n≥0f(n)(s0)n!sn(∣s∣<t)f(s_0+s)=\sum_{n\ge0}\frac{f^{(n)}(s_0)}{n!}s^n\qquad(|s|<t)

です。

ステップ 3:原点での係数。 A∗φ=iφA^*\varphi=i\varphi と An−1ψ∈D(A)A^{n-1}\psi\in D(A) から ⟨φ,Anψ⟩=⟨A∗φ,An−1ψ⟩=−i⟨φ,An−1ψ⟩\langle\varphi,A^n\psi\rangle=\langle A^*\varphi,A^{n-1}\psi\rangle=-i\langle\varphi,A^{n-1}\psi\rangle、よって ⟨φ,Anψ⟩=(−i)n⟨φ,ψ⟩\langle\varphi,A^n\psi\rangle=(-i)^n\langle\varphi,\psi\rangle です。したがって f(n)(0)=in⟨φ,Anψ⟩=⟨φ,ψ⟩f^{(n)}(0)=i^n\langle\varphi,A^n\psi\rangle=\langle\varphi,\psi\rangle で、∣s∣<t|s|<t では f(s)=es⟨φ,ψ⟩f(s)=e^s\langle\varphi,\psi\rangle です。

ステップ 4:全直線への延長。 g(s)=f(s)−es⟨φ,ψ⟩g(s)=f(s)-e^s\langle\varphi,\psi\rangle も各点で半径 tt の Taylor 展開をもちます。g=0g=0 となる区間 [0,r)[0,r) の上限を r∗r^* とし、r∗<∞r^*<\infty と仮定します。s0=r∗−t/2s_0=r^*-t/2 の近くで g≡0g\equiv0 なので g(n)(s0)=0g^{(n)}(s_0)=0(全 nn)、よって gg は (s0−t,s0+t)∋r∗+t/2(s_0-t,s_0+t)\ni r^*+t/2 で 00 になり、r∗r^* の定義に反します。ゆえに s≥0s\ge0 で f(s)=es⟨φ,ψ⟩f(s)=e^s\langle\varphi,\psi\rangle です。ff は有界なので ⟨φ,ψ⟩=0\langle\varphi,\psi\rangle=0 です。

ψ∈S\psi\in S は任意で SS は全体集合なので φ=0\varphi=0 です。

注意 7.6

原論文は Nelson, “Analytic vectors”(1959 年)で、Reed–Simon II 第 X 章にも証明がある。上の証明の筋道を言い直すと次のとおり。解析ベクトル ψ\psi に対し、∣t∣|t| が小さければ U(t)ψ=∑n(it)nAnψ/n!U(t)\psi=\sum_n(it)^nA^n\psi/n! が収束し、AA の対称性から ∥U(t)ψ∥\|U(t)\psi\| は ∥ψ∥\|\psi\| に等しい。A∗φ=iφA^*\varphi=i\varphi とすると ⟨φ,Anψ⟩=(−i)n⟨φ,ψ⟩\langle\varphi,A^n\psi\rangle = (-i)^n\langle\varphi,\psi\rangle なので ⟨φ,U(t)ψ⟩=et⟨φ,ψ⟩\langle\varphi,U(t)\psi\rangle = e^{t}\langle\varphi,\psi\rangle となる。U(t)ψU(t)\psi をすべての実数 tt へ等長性を保って延長できることを示すのが技術的な核心で、それができれば ∣et⟨φ,ψ⟩∣≤∥φ∥∥ψ∥|e^t\langle\varphi,\psi\rangle|\le\|\varphi\|\|\psi\| が全 tt で成り立つことから ⟨φ,ψ⟩=0\langle\varphi,\psi\rangle=0 となり、全体性から φ=0\varphi=0 を得る。

例 7.7(Hermite 関数は位置作用素の解析ベクトル)

例 7.3 の記号で x=(a+a∗)/2x = (a+a^*)/\sqrt{2} である。a,a∗a, a^* は span{h0,…,hm}\mathrm{span}\{h_0,\dots,h_m\} 上でノルム m+1\sqrt{m+1} 以下なので、∥xkhn∥≤2k/2(n+k)!/n!\|x^kh_n\|\le 2^{k/2}\sqrt{(n+k)!/n!}。この級数の隣接項の比は t2(n+k+1)/(k+1)→0t\sqrt{2(n+k+1)}/(k+1)\to 0 なので、すべての t>0t>0 で ∑k∥xkhn∥tk/k!<∞\sum_k\|x^kh_n\|t^k/k!<\infty。したがって span{hn}\mathrm{span}\{h_n\} 上の xx と、Fourier 変換で移した pp は本質的自己共役である。

最後に、本記事の判定法の使い分けを表にまとめます。

判定法仮定の要点結論定義域の情報
Kato–Rellich対称な BB の相対限界が 11 未満A+BA+B が自己共役、下界も評価できるD(A+B)=D(A)D(A+B)=D(A) と分かる
KLMN形式限界が 11 未満形式和に対応する自己共役作用素がある形式定義域だけが分かる
Friedrichs 拡大SS が下に有界な対称作用素下界を保つ自己共役拡大がある形式定義域が qSq_S の閉包の定義域
Nelson の可換子定理NN による評価と交換子評価本質的自己共役NN の芯が AA の芯になる
解析ベクトル定理解析ベクトルが全体集合をなす本質的自己共役解析ベクトルの線形包が芯

上の二つは「既知の作用素からの小さなずれ」、Friedrichs 拡大は「拡大の選び方」、下の二つは「小さくない作用素を別の物差しで測る」ための道具だと考えると整理しやすいでしょう。Friedrichs 拡大だけは自己共役拡大の存在を与えるのみで、元の作用素が本質的自己共役かどうかについては何も言わない点に注意してください。物理で Rd\mathbb{R}^d 全体の Schrödinger 作用素を扱うときは、まず Kato–Rellich を試し、ポテンシャルが特異すぎれば KLMN に移る、という順に考えるのが実用的です。

演習 8.1易

AA を閉作用素、BB を AA 有界で ∥Bψ∥≤a∥Aψ∥+b∥ψ∥\|B\psi\|\le a\|A\psi\|+b\|\psi\|(a<1a<1)とする。D(A)D(A) 上の A+BA+B が閉作用素であることを示せ。

解答

ψ∈D(A)\psi\in D(A) について ∥(A+B)ψ∥≥∥Aψ∥−∥Bψ∥≥(1−a)∥Aψ∥−b∥ψ∥\|(A+B)\psi\|\ge\|A\psi\|-\|B\psi\|\ge(1-a)\|A\psi\|-b\|\psi\|、また ∥(A+B)ψ∥≤(1+a)∥Aψ∥+b∥ψ∥\|(A+B)\psi\|\le(1+a)\|A\psi\|+b\|\psi\|。よって ∥(A+B)ψ∥+∥ψ∥\|(A+B)\psi\|+\|\psi\| と ∥Aψ∥+∥ψ∥\|A\psi\|+\|\psi\| は D(A)D(A) 上の同値なノルムである(左の不等式から (1−a)∥Aψ∥≤∥(A+B)ψ∥+b∥ψ∥(1-a)\|A\psi\|\le\|(A+B)\psi\|+b\|\psi\|)。AA が閉であることは D(A)D(A) がグラフノルムで完備であることと同値なので、同値なノルムでも完備であり、A+BA+B は閉である。

演習 8.2易

0<β<3/20<\beta<3/2 とする。−Δ−∣x∣−β-\Delta-|x|^{-\beta} が H2(R3)H^2(\mathbb{R}^3) 上で自己共役かつ下に有界であることを示せ。β=3/2\beta=3/2 ではこの議論のどこが破れるか。

解答

V1=∣x∣−β1{∣x∣≤1}V_1 = |x|^{-\beta}1_{\{|x|\le1\}}、V2=∣x∣−β1{∣x∣>1}V_2 = |x|^{-\beta}1_{\{|x|>1\}} とすると ∥V2∥∞=1\|V_2\|_\infty=1、∥V1∥22=4π∫01r2−2βdr=4π/(3−2β)<∞\|V_1\|_2^2 = 4\pi\int_0^1 r^{2-2\beta}dr = 4\pi/(3-2\beta)<\infty。よって 系 3.4 が適用できる。β=3/2\beta=3/2 では ∫01r−1dr=∞\int_0^1 r^{-1}dr=\infty で V1∉L2V_1\notin L^2 となり、どのように分解しても原点近傍の部分が L2L^2 に入らないので、この系は使えない(β<2\beta<2 である限り Hardy の不等式と KLMN を使えば形式の意味では扱える)。

演習 8.3標準

例 5.3 で α<0\alpha<0 とし、κ=−α/2>0\kappa=-\alpha/2>0、ψ(x)=e−κ∣x∣\psi(x)=e^{-\kappa|x|} とおく。定理 4.2 (3) を用いて、ψ\psi が HβH_\beta の固有値 −α2/4-\alpha^2/4 の固有ベクトルであることを示せ。

解答

ψ∈H1(R)\psi\in H^1(\mathbb{R}) で、x>0x>0 で ψ′=−κψ\psi'=-\kappa\psi、x<0x<0 で ψ′=κψ\psi'=\kappa\psi。φ∈H1(R)\varphi\in H^1(\mathbb{R}) に対し、(0,∞)(0,\infty) と (−∞,0)(-\infty,0) に分けて部分積分すると(無限遠の境界項は φψ→0\varphi\psi\to 0 で消える)

∫0∞φ′‾ψ′dx=κφ(0)‾−κ2∫0∞φ‾ψ dx,∫−∞0φ′‾ψ′dx=κφ(0)‾−κ2∫−∞0φ‾ψ dx.\int_0^\infty\overline{\varphi'}\psi'dx = \kappa\overline{\varphi(0)} - \kappa^2\int_0^\infty\overline{\varphi}\psi\,dx,\qquad \int_{-\infty}^0\overline{\varphi'}\psi'dx = \kappa\overline{\varphi(0)} - \kappa^2\int_{-\infty}^0\overline{\varphi}\psi\,dx.

よって q(φ,ψ)=2κφ(0)‾−κ2⟨φ,ψ⟩+αφ(0)‾ψ(0)q(\varphi,\psi) = 2\kappa\overline{\varphi(0)} - \kappa^2\langle\varphi,\psi\rangle + \alpha\overline{\varphi(0)}\psi(0)。ψ(0)=1\psi(0)=1、2κ+α=02\kappa+\alpha=0 なので q(φ,ψ)=⟨φ,−κ2ψ⟩q(\varphi,\psi) = \langle\varphi,-\kappa^2\psi\rangle がすべての φ∈Q(q)=H1\varphi\in Q(q)=H^1 で成り立つ。表現定理 (3) から ψ∈D(Hβ)\psi\in D(H_\beta)、Hβψ=−κ2ψ=−(α2/4)ψH_\beta\psi=-\kappa^2\psi=-(\alpha^2/4)\psi。

演習 8.4標準

例 6.2 の SS について、(a) Friedrichs 拡大 SFS_{\mathrm{F}} は SF≥π2S_{\mathrm{F}}\ge\pi^2 を満たすことを示せ。(b) Neumann ラプラシアン TT(D(T)={ψ∈H2(0,1):ψ′(0)=ψ′(1)=0}D(T)=\{\psi\in H^2(0,1):\psi'(0)=\psi'(1)=0\}、Tψ=−ψ′′T\psi=-\psi'')は自己共役拡大であるが SFS_{\mathrm{F}} と異なることを、定理 6.1 (3) と関連づけて説明せよ。

解答

(a) {2sin⁡(nπx)}n≥1\{\sqrt{2}\sin(n\pi x)\}_{n\ge1} は L2(0,1)L^2(0,1) の正規直交基底で、ψ∈H01(0,1)\psi\in H^1_0(0,1) の係数を cnc_n とすると、部分積分(境界項は ψ(0)=ψ(1)=0\psi(0)=\psi(1)=0 で消える)から ψ′\psi' の {2cos⁡(nπx)}\{\sqrt{2}\cos(n\pi x)\} に関する係数は nπcnn\pi c_n。Bessel の不等式より ∥ψ′∥2≥∑n2π2∣cn∣2≥π2∥ψ∥2\|\psi'\|^2\ge\sum n^2\pi^2|c_n|^2\ge\pi^2\|\psi\|^2。表現定理 (2) から ⟨ψ,SFψ⟩=∥ψ′∥2≥π2∥ψ∥2\langle\psi,S_{\mathrm{F}}\psi\rangle=\|\psi'\|^2\ge\pi^2\|\psi\|^2。(b) 定数関数 11 は D(T)D(T) に入り T1=0T1=0 なので TT は固有値 00 をもち、T≥π2T\ge\pi^2 ではない。よって T≠SFT\neq S_{\mathrm{F}}。これは (3) と整合する: 1∉H01(0,1)=Q(qˉS)1\notin H^1_0(0,1)=Q(\bar{q}_S) なので D(T)⊄Q(qˉS)D(T)\not\subset Q(\bar{q}_S) である。

  • M. Reed, B. Simon, Methods of Modern Mathematical Physics II: Fourier Analysis, Self-Adjointness, Academic Press, 1975 — 第 X 章(Kato–Rellich、KLMN、Friedrichs 拡大、Nelson の可換子定理と解析ベクトル定理)。
  • T. Kato, Perturbation Theory for Linear Operators, 2nd ed., Springer, 1976 — 第 V 章(相対有界摂動)、第 VI 章(二次形式と表現定理)。
  • K. Schmüdgen, Unbounded Self-adjoint Operators on Hilbert Space, Springer, 2012 — 摂動による自己共役性、半有界形式、解析ベクトルの各章。
  • E. Nelson, “Analytic vectors”, Annals of Mathematics 70 (1959), 572–615.
  • T. Kato, “Fundamental properties of Hamiltonian operators of Schrödinger type”, Transactions of the American Mathematical Society 70 (1951), 195–211.
  • 新井朝雄『ヒルベルト空間と量子力学』共立出版、1997。

このテーマの 100 本ノック(100 問)

執筆: Claude Code(Opus 5.5)、Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 2 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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