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熱方程式:基本解・放物型最大値原理・熱半群 e^{tΔ}・Feynman–Kac 公式

対象読者: 本テーマ第 1 章(調和関数・平均値の性質)と、ルベーグ積分、強連続半群の基礎、ブラウン運動の定義を学んだ修士課程の人。偏微分方程式の古典解は既知とします。

前提となる記事:ラプラス方程式と調和関数:平均値の性質・最大値原理・Harnack の不等式・Green 関数、1 径数ユニタリ群と強連続半群:Stone・Hille–吉田・Trotter 積公式、マルチンゲールとブラウン運動:公平な賭けから連続時間の確率過程へ

生 Markdown

熱い一点から熱がまわりに広がっていく様子を、式で正確に追う記事です。最初は一点に集めた熱が、時間がたつとどのような形に広がるのか。次に、初期の温度が決まれば後の温度がただ一つに決まるのか。最後に、この広がり方を「粒子がでたらめに動いたときの平均」として読み直します。読み終えると、熱方程式の解を具体的な式で書け、確率論の表示との関係が分かります。

  • 熱方程式 ∂tu=Δu\partial_tu=\Delta u の基本解(熱核)Φ(x,t)=(4πt)−n/2e−∣x∣2/4t\Phi(x,t)=(4\pi t)^{-n/2}e^{-|x|^2/4t} は、総量 11 の正の Gauss 関数で、t→0t\to0 で原点に集中します。Φ(⋅,t)∗g\Phi(\cdot,t)*g は有界連続な初期値 gg の Cauchy 問題を解き、t>0t\gt0 で直ちに C∞C^\infty になります。
  • 有界な柱状領域では、熱方程式の解は最大値を放物境界(底面と側面)でとります。全空間では、増大度 ∣u∣≤Aea∣x∣2|u|\le Ae^{a|x|^2} を課すと同じ最大値原理が成り立ち、Cauchy 問題の解はこの範囲で一意です。
  • Ptf=Φ(⋅,t)∗fP_tf=\Phi(\cdot,t)*f は各 LpL^p 上の正値な縮小半群で、1≤p<∞1\le p\lt\infty では強連続です。L2L^2 では自己共役作用素 Δ\Delta の半群 etΔe^{t\Delta} に一致し、Cc2C_c^2 関数上で生成子(1t(Ptf−f)\frac1t(P_tf-f) の t→0t\to0 での極限として得られる作用素)は Δ\Delta です。ここで強連続とは、各 ff について t→0t\to0 で Ptf→fP_tf\to f となることです。
  • Brown 運動 BB を使うと Ptf(x)=E[f(x+2Bt)]P_tf(x)=E[f(x+\sqrt2B_t)] で、熱方程式は「粒子の拡散の期待値」です。有界連続なポテンシャル VV については、Trotter 積公式(et(A+B)e^{t(A+B)} を etAe^{tA} と etBe^{tB} の交互の積で近似する公式)から Feynman–Kac 公式 e−t(−Δ+V)f(x)=E[e−∫0tV(x+2Bs)dsf(x+2Bt)]e^{-t(-\Delta+V)}f(x)=E\bigl[e^{-\int_0^tV(x+\sqrt2B_s)ds}f(x+\sqrt2B_t)\bigr] が出ます。

熱方程式 ∂tu=Δu\partial_tu=\Delta u は、温度や濃度が「高いところから低いところへ、勾配に比例して流れる」という法則(Fourier の法則・Fick の法則)と保存則を組み合わせたものです。前章の調和関数はその定常解でした。

熱方程式には、波動方程式と対照的な 2 つの特徴があります。一つは平滑化で、初期値がどれほど荒くても t>0t\gt0 では解が C∞C^\infty になります。もう一つは無限の伝播速度で、初期値が原点の近くにしかなくても、t>0t\gt0 ではすべての点で解が正になります。どちらも熱核 Φ\Phi が全空間で正の滑らかな関数であることから来ます。

もう一つの見方は確率論です。Φ(⋅,t)\Phi(\cdot,t) は分散 2t2t の正規分布の密度なので、熱方程式の解は「Brown 運動する粒子が時刻 tt にいる場所での初期値の期待値」です。この見方を Schrödinger 作用素 −Δ+V-\Delta+V に延ばしたのが Feynman–Kac 公式で、量子力学の虚時間発展を経路の上の積分として書き表します。本章では、この公式を作用素論(Trotter 積公式)と Brown 運動の有限次元分布だけから証明します。

以下、Rn×(0,T]\mathbb{R}^n\times(0,T] のような集合の上の関数 u(x,t)u(x,t) について、u,∂tu,∂iu,∂i∂juu,\partial_tu,\partial_iu,\partial_i\partial_ju が連続であることを u∈C2,1u\in C^{2,1} と書きます。

定義 2.1(熱方程式の基本解(熱核))↗

x∈Rnx\in\mathbb{R}^n、t>0t\gt0 について

Φ(x,t)=1(4πt)n/2exp⁡(−∣x∣24t)\Phi(x,t)=\frac1{(4\pi t)^{n/2}}\exp\Bigl(-\frac{|x|^2}{4t}\Bigr)

とおき、熱核(熱方程式の基本解)という。Φt=Φ(⋅,t)\Phi_t=\Phi(\cdot,t) とも書く。

補題 2.2(熱核の性質)✓

  1. Φ∈C∞(Rn×(0,∞))\Phi\in C^\infty(\mathbb{R}^n\times(0,\infty))、Φ>0\Phi\gt0 で、∂tΦ=ΔΦ\partial_t\Phi=\Delta\Phi。
  2. すべての t>0t\gt0 で ∫RnΦ(x,t) dx=1\int_{\mathbb{R}^n}\Phi(x,t)\,dx=1。
  3. すべての δ>0\delta\gt0 で ∫∣x∣≥δΦ(x,t) dx→0\int_{|x|\ge\delta}\Phi(x,t)\,dx\to0(t→0t\to0)。
  4. Φt∗Φs=Φt+s\Phi_t*\Phi_s=\Phi_{t+s}(t,s>0t,s\gt0)。
証明(補題 2.2)

(1) ∂tΦ=(−n2t+∣x∣24t2)Φ\partial_t\Phi=\bigl(-\frac n{2t}+\frac{|x|^2}{4t^2}\bigr)\Phi、∂iΦ=−xi2tΦ\partial_i\Phi=-\frac{x_i}{2t}\Phi、∂i2Φ=(−12t+xi24t2)Φ\partial_i^2\Phi=\bigl(-\frac1{2t}+\frac{x_i^2}{4t^2}\bigr)\Phi で、ii について足すと一致します。

(2) Φt(x)=∏i=1n(4πt)−1/2e−xi2/4t\Phi_t(x)=\prod_{i=1}^n(4\pi t)^{-1/2}e^{-x_i^2/4t} と分かれるので、Fubini の定理と Gauss 積分 ∫Re−ay2dy=π/a\int_{\mathbb{R}}e^{-a y^2}dy=\sqrt{\pi/a}(定理 3.3[広義積分・パラメータ積分とガンマ関数])で 11 です。

(3) x=t zx=\sqrt t\,z と変数変換(系 3.5[ℝ^d の変数変換公式と極座標])すると ∫∣x∣≥δΦt dx=∫∣z∣≥δ/tΦ1(z) dz\int_{|x|\ge\delta}\Phi_t\,dx=\int_{|z|\ge\delta/\sqrt t}\Phi_1(z)\,dz で、Φ1\Phi_1 は可積分なので優収束定理で 00 に収束します。

(4) 積の形に分かれるので n=1n=1 で示せば十分です。平方完成

(x−y)24t+y24s=t+s4ts(y−s xt+s)2+x24(t+s)\frac{(x-y)^2}{4t}+\frac{y^2}{4s}=\frac{t+s}{4ts}\Bigl(y-\frac{s\,x}{t+s}\Bigr)^2+\frac{x^2}{4(t+s)}

と Gauss 積分から ∫RΦt(x−y)Φs(y) dy=14πts4πtst+s e−x2/4(t+s)=Φt+s(x)\int_{\mathbb{R}}\Phi_t(x-y)\Phi_s(y)\,dy=\frac1{4\pi\sqrt{ts}}\sqrt{\frac{4\pi ts}{t+s}}\,e^{-x^2/4(t+s)}=\Phi_{t+s}(x) です。

(3) は「t→0t\to0 で Φt\Phi_t が原点に集中する」こと、(4) は「時間 ss 拡散してから時間 tt 拡散するのは、時間 t+st+s 拡散するのと同じ」ことを言っています。Φt\Phi_t の分散は ∫∣x∣2Φt dx=2nt\int|x|^2\Phi_t\,dx=2nt で、広がりは t\sqrt t に比例します(演習)。

左の熱核は t が小さいと細く高く、大きいと低く広がりますが、面積は常に 1 です。右は区間 (−1,1)(-1,1) の指示関数 gg に Φt\Phi_t を畳み込んだ Φt∗g\Phi_t*g で、角のある初期値が直ちになめらかになる様子が見えます。

左のパネルでは熱核が時間とともに細く高い山から低く広い山へ変わり、面積は 1 のまま。右のパネルでは区間の指示関数が角の取れた山になって低く広がる。
t を 0.02 から 4 まで増やしたときの熱核 Φ(x, t)(左)と、段差のある初期値 g への畳み込み Φ(·, t)*g(右)。面積は 1 のまま、山は低く広がる

定理 2.3(Cauchy 問題の解)✓

g∈C(Rn)g\in C(\mathbb{R}^n) が有界であるとし、

u(x,t)=∫RnΦ(x−y,t) g(y) dy(x∈Rn, t>0)u(x,t)=\int_{\mathbb{R}^n}\Phi(x-y,t)\,g(y)\,dy\qquad(x\in\mathbb{R}^n,\ t\gt0)

とおく。このとき u∈C∞(Rn×(0,∞))u\in C^\infty(\mathbb{R}^n\times(0,\infty))、∂tu=Δu\partial_tu=\Delta u、sup⁡∣u∣≤sup⁡∣g∣\sup|u|\le\sup|g| で、すべての x0x_0 について lim⁡(x,t)→(x0,0), t>0u(x,t)=g(x0)\lim_{(x,t)\to(x_0,0),\,t\gt0}u(x,t)=g(x_0) である。

証明(定理 2.3)

滑らかさ。 ∂tk∂xαΦ(x−y,t)\partial_t^k\partial_x^\alpha\Phi(x-y,t) は t−m×t^{-m}\times(x−yx-y の多項式)×Φ(x−y,t)\times\Phi(x-y,t) の有限和です。∣x∣≤R|x|\le R、t1≤t≤t2t_1\le t\le t_2 の範囲では、∣y∣≥2R|y|\ge2R で ∣x−y∣≥∣y∣/2|x-y|\ge|y|/2 なので、これは C(1+∣y∣)Ne−∣y∣2/16t2C(1+|y|)^Ne^{-|y|^2/16t_2} で一様に抑えられ、可積分です。gg は有界なので、積分記号下の微分(系 7.4[ルベーグ積分の定義と収束定理])を繰り返して u∈C∞u\in C^\infty、補題 2.2 の (1) から ∂tu−Δu=∫(∂t−Δ)Φ(x−y,t)g(y) dy=0\partial_tu-\Delta u=\int(\partial_t-\Delta)\Phi(x-y,t)g(y)\,dy=0 です。∣u∣≤sup⁡∣g∣∫Φt=sup⁡∣g∣|u|\le\sup|g|\int\Phi_t=\sup|g| も (2) から出ます。

初期値。 ε>0\varepsilon\gt0 に対し、∣y−x0∣<δ|y-x_0|\lt\delta なら ∣g(y)−g(x0)∣<ε|g(y)-g(x_0)|\lt\varepsilon となる δ\delta をとります。∣x−x0∣<δ/2|x-x_0|\lt\delta/2 なら、∣y−x0∣≥δ|y-x_0|\ge\delta のとき ∣y−x∣≥δ/2|y-x|\ge\delta/2 なので、(2) から

∣u(x,t)−g(x0)∣≤∫Φ(x−y,t)∣g(y)−g(x0)∣ dy≤ε+2sup⁡∣g∣∫∣w∣≥δ/2Φ(w,t) dw|u(x,t)-g(x_0)|\le\int\Phi(x-y,t)|g(y)-g(x_0)|\,dy\le\varepsilon+2\sup|g|\int_{|w|\ge\delta/2}\Phi(w,t)\,dw

です。(3) から最後の項は t→0t\to0 で 00 に収束します。

g≥0g\ge0 が原点の近くでだけ正でも、t>0t\gt0 では至るところ u>0u\gt0 です。熱は「無限の速さ」で伝わります。

U⊂RnU\subset\mathbb{R}^n を有界な開集合、T>0T\gt0 とし、放物柱 UT=U×(0,T]U_T=U\times(0,T] と放物境界 ΓT=UˉT∖UT\Gamma_T=\bar U_T\setminus U_T(底面 Uˉ×{0}\bar U\times\{0\} と側面 ∂U×[0,T]\partial U\times[0,T])を考えます。上面 U×{T}U\times\{T\} は UTU_T に含まれ、境界には数えません。

xtU_Tt = T(上面は U_T に含む)t = 0(底面)側面 ∂U × [0, T]
放物柱 U_T と放物境界 Γ_T(太線)。最大値は底面か側面でとられ、上面ではとられない

定理 3.1(有界領域での弱最大値原理)✓

u∈C2,1(UT)∩C(UˉT)u\in C^{2,1}(U_T)\cap C(\bar U_T) が UTU_T で ∂tu−Δu≤0\partial_tu-\Delta u\le0 を満たすなら、max⁡UˉTu=max⁡ΓTu\max_{\bar U_T}u=\max_{\Gamma_T}u である。

証明(定理 3.1)

ε>0\varepsilon\gt0 について w=u−εtw=u-\varepsilon t とおくと ∂tw−Δw≤−ε<0\partial_tw-\Delta w\le-\varepsilon\lt0 です。ww の UˉT\bar U_T 上の最大値(コンパクト性から存在)が (x0,t0)∈UT(x_0,t_0)\in U_T でとられたとします。x0x_0 は UU の内点なので、各方向の 1 変数関数として 2 階微分を見れば ∂i2w(x0,t0)≤0\partial_i^2w(x_0,t_0)\le0、よって Δw≤0\Delta w\le0 です。t0<Tt_0\lt T なら ∂tw=0\partial_tw=0、t0=Tt_0=T なら左側からの差分商を見て ∂tw≥0\partial_tw\ge0 です。いずれにせよ ∂tw−Δw≥0\partial_tw-\Delta w\ge0 となり矛盾します。よって max⁡UˉTw=max⁡ΓTw\max_{\bar U_T}w=\max_{\Gamma_T}w で、

max⁡UˉTu≤max⁡UˉTw+εT=max⁡ΓTw+εT≤max⁡ΓTu+εT\max_{\bar U_T}u\le\max_{\bar U_T}w+\varepsilon T=\max_{\Gamma_T}w+\varepsilon T\le\max_{\Gamma_T}u+\varepsilon T

です。ε→0\varepsilon\to0 とします。

上面を境界に含めないのが要点です。上面の点は「未来から情報を受けない」ので、内部の点と同じ扱いになります。−u-u に使えば最小値の主張も出るので、初期値と側面の値が同じ 2 つの解は一致します(初期値・境界値問題の一意性)。

全空間では、領域が有界でないので放物境界は底面だけになりますが、解の増大度を制限しないと最大値原理は成り立ちません(注意 3.4)。

次の定理の証明では、有界領域の最大値原理を、半径 rr の柱の上で補助関数 vv に使います。vv は、解 uu から、熱方程式を満たし ∣x−y∣|x-y| が大きいほど急に大きくなる関数を引いたものです。引く関数が側面で uu の増大を上回るので、側面での vv は十分小さくなり、最大値は底面でしかとれなくなります。時間が長いときは、短い区間に分けて同じ議論を繰り返します。

定理 3.2(全空間での最大値原理)✓

u∈C2,1(Rn×(0,T])∩C(Rn×[0,T])u\in C^{2,1}(\mathbb{R}^n\times(0,T])\cap C(\mathbb{R}^n\times[0,T]) が ∂tu=Δu\partial_tu=\Delta u を満たし、ある A,a>0A,a\gt0 について u(x,t)≤Aea∣x∣2u(x,t)\le Ae^{a|x|^2} であるとする。このとき sup⁡Rn×[0,T]u=sup⁡Rnu(⋅,0)\sup_{\mathbb{R}^n\times[0,T]}u=\sup_{\mathbb{R}^n}u(\cdot,0) である。

証明(定理 3.2)

M=sup⁡u(⋅,0)M=\sup u(\cdot,0) とし、M<∞M\lt\infty としてよい。

4aT<14aT\lt1 の場合。 4a(T+ε)<14a(T+\varepsilon)\lt1 となる ε>0\varepsilon\gt0 をとり、14(T+ε)=a+γ\frac1{4(T+\varepsilon)}=a+\gamma(γ>0\gamma\gt0)とおきます。y∈Rny\in\mathbb{R}^n、μ>0\mu\gt0 を固定し

v(x,t)=u(x,t)−μ (T+ε−t)−n/2exp⁡(∣x−y∣24(T+ε−t))v(x,t)=u(x,t)-\mu\,(T+\varepsilon-t)^{-n/2}\exp\Bigl(\frac{|x-y|^2}{4(T+\varepsilon-t)}\Bigr)

とおきます。第 2 項の関数 hh は、s=T+ε−ts=T+\varepsilon-t、z=x−yz=x-y として ∂th=(n2s+∣z∣24s2)h=Δh\partial_th=\bigl(\frac n{2s}+\frac{|z|^2}{4s^2}\bigr)h=\Delta h を満たす(補題 2.2 の (1) と同じ計算)ので、∂tv=Δv\partial_tv=\Delta v です。r>0r\gt0 について柱 B(y,r)×(0,T]B(y,r)\times(0,T] に 定理 3.1 を使います。底面では v≤u≤Mv\le u\le M です。側面 ∣x−y∣=r|x-y|=r では、T+ε−t≤T+εT+\varepsilon-t\le T+\varepsilon から

v≤Aea(∣y∣+r)2−μ(T+ε)−n/2e(a+γ)r2v\le Ae^{a(|y|+r)^2}-\mu(T+\varepsilon)^{-n/2}e^{(a+\gamma)r^2}

で、γ>0\gamma\gt0 なので rr が十分大きければ右辺は MM 以下です。よって v(y,t)≤Mv(y,t)\le M、すなわち u(y,t)≤M+μ(T+ε−t)−n/2u(y,t)\le M+\mu(T+\varepsilon-t)^{-n/2} で、μ→0\mu\to0 とすれば u(y,t)≤Mu(y,t)\le M です。

一般の場合。 T1=1/(8a)T_1=1/(8a) として、[0,T1][0,T_1]、[T1,2T1][T_1,2T_1]、… に順に前半を適用します(各区間の初期時刻を 00 とみなせばよい)。

系 3.3(Cauchy 問題の一意性)✓

g∈C(Rn)g\in C(\mathbb{R}^n) とする。∂tu=Δu\partial_tu=\Delta u(t∈(0,T]t\in(0,T])、u(⋅,0)=gu(\cdot,0)=g を満たす u∈C2,1(Rn×(0,T])∩C(Rn×[0,T])u\in C^{2,1}(\mathbb{R}^n\times(0,T])\cap C(\mathbb{R}^n\times[0,T]) で、ある A,aA,a について ∣u(x,t)∣≤Aea∣x∣2|u(x,t)|\le Ae^{a|x|^2} となるものは高々一つである。特に、有界な gg に対しては 定理 2.3 の解が唯一の有界な解である。

証明(系 3.3)

2 つの解の差 ww は初期値 00 で同じ形の増大度をもつので、定理 3.2 を ww と −w-w に使えば w=0w=0 です。

次の注意は、増大度の条件を外すと一意性が壊れる例です。初期値 00 のまま、時間がたつと遠方で非常に大きくなる解が作れます。

注意 3.4(増大度の条件は外せない)

Tychonoff は、初期値 00 で恒等的に 00 でない R×(0,∞)\mathbb{R}\times(0,\infty) 上の熱方程式の解を構成しました。u(x,t)=∑k≥0g(k)(t)(2k)!x2ku(x,t)=\sum_{k\ge0}\frac{g^{(k)}(t)}{(2k)!}x^{2k}、g(t)=e−t−αg(t)=e^{-t^{-\alpha}}(α>1\alpha\gt1)がそれで、∣x∣→∞|x|\to\infty で ea∣x∣2e^{a|x|^2} より速く増大します。構成と収束の評価は F. John の教科書の第 7 章にあります。

定義 4.1(熱半群)↗

1≤p≤∞1\le p\le\infty、f∈Lp(Rn)f\in L^p(\mathbb{R}^n) について P0f=fP_0f=f、t>0t\gt0 では Ptf=Φt∗fP_tf=\Phi_t*f、すなわち (Ptf)(x)=∫Φ(x−y,t)f(y) dy(P_tf)(x)=\int\Phi(x-y,t)f(y)\,dy とおく。

定理 4.2(熱半群の性質)✓

1≤p≤∞1\le p\le\infty とする。

  1. ∥Ptf∥p≤∥f∥p\|P_tf\|_p\le\|f\|_p。f≥0f\ge0 なら Ptf≥0P_tf\ge0 で、Pt1=1P_t1=1。
  2. PtPs=Pt+sP_tP_s=P_{t+s}(t,s≥0t,s\ge0)。
  3. 1≤p<∞1\le p\lt\infty なら、f∈Lpf\in L^p について ∥Ptf−f∥p→0\|P_tf-f\|_p\to0(t→0t\to0)。したがって t↦Ptft\mapsto P_tf は [0,∞)[0,\infty) から LpL^p への連続写像である。
  4. t>0t\gt0 なら Ptf∈C∞(Rn)P_tf\in C^\infty(\mathbb{R}^n) で、(x,t)↦Ptf(x)(x,t)\mapsto P_tf(x) は Rn×(0,∞)\mathbb{R}^n\times(0,\infty) で熱方程式を満たす。
  5. f∈Cc2(Rn)f\in C_c^2(\mathbb{R}^n) なら 1t(Ptf−f)→Δf\frac1t(P_tf-f)\to\Delta f(t→0t\to0)が LpL^p で(p<∞p\lt\infty)、また一様に成り立つ。
証明(定理 4.2)

(1) Φt(y) dy\Phi_t(y)\,dy は確率測度なので、Hölder の不等式(定理 4.2[L^p 空間と関数解析への導入])で ∣Ptf(x)∣p≤∫Φt(y)∣f(x−y)∣p dy|P_tf(x)|^p\le\int\Phi_t(y)|f(x-y)|^p\,dy です。xx で積分して Tonelli の定理(定理 3.3[直積測度と Fubini–Tonelli の定理])を使えば ∥Ptf∥pp≤∥f∥pp\|P_tf\|_p^p\le\|f\|_p^p です(p=∞p=\infty は直接)。正値性と Pt1=1P_t1=1 は Φt>0\Phi_t\gt0 と 補題 2.2 の (2) です。

(2) Fubini の定理で積分の順序を交換し、補題 2.2 の (4) を使います。

(3) (1) と同じ評価で

∥Ptf−f∥pp≤∫Φt(y) ∥τyf−f∥pp dy=∫Φ1(z) ∥τtzf−f∥pp dz\|P_tf-f\|_p^p\le\int\Phi_t(y)\,\|\tau_yf-f\|_p^p\,dy=\int\Phi_1(z)\,\|\tau_{\sqrt tz}f-f\|_p^p\,dz

です(τyf=f(⋅−y)\tau_yf=f(\cdot-y))。Cc∞C_c^\infty が LpL^p で稠密(補題 2.2[Schwartz 空間と緩増加超関数])でコンパクト台の連続関数は一様連続なので、∥τyf−f∥p→0\|\tau_yf-f\|_p\to0(y→0y\to0)です。被積分関数は 2p∥f∥ppΦ12^p\|f\|_p^p\Phi_1 で抑えられるので、優収束定理で右辺は 00 に収束します。t>0t\gt0 での連続性は (2) と (1) から ∥Pt+hf−Ptf∥p≤∥P∣h∣f−f∥p\|P_{t+h}f-P_tf\|_p\le\|P_{|h|}f-f\|_p の形に帰着します。

(4) 定理 2.3 の証明で、∂xα∂tkΦ(x−⋅,t)\partial^\alpha_x\partial_t^k\Phi(x-\cdot,t) が局所一様に Lp′L^{p'} の関数で抑えられること(p′p' は共役指数)を使えば同じです。

(5) u=Ptfu=P_tf について、積分記号下の微分で Δ(Φt∗f)=Φt∗Δf\Delta(\Phi_t*f)=\Phi_t*\Delta f なので ∂tPtf=ΔPtf=PtΔf\partial_tP_tf=\Delta P_tf=P_t\Delta f です。Δf\Delta f は有界で一様連続なので、定理 2.3 の証明から PsΔf→ΔfP_s\Delta f\to\Delta f は一様で、Ptf(x)−f(x)=∫0tPsΔf(x) dsP_tf(x)-f(x)=\int_0^tP_s\Delta f(x)\,ds が成り立ちます。よって

Ptf−ft−Δf=1t∫0t(PsΔf−Δf)ds\frac{P_tf-f}t-\Delta f=\frac1t\int_0^t\bigl(P_s\Delta f-\Delta f\bigr)ds

で、右辺は一様に 00 に収束します。LpL^p では、gs=PsΔf−Δfg_s=P_s\Delta f-\Delta f とおいて Hölder の不等式 ∣1t∫0tgs ds∣p≤1t∫0t∣gs∣pds\bigl|\frac1t\int_0^tg_s\,ds\bigr|^p\le\frac1t\int_0^t|g_s|^pds を xx で積分し Tonelli の定理を使うと、右辺の LpL^p ノルムの pp 乗は sup⁡0<s≤t∥gs∥pp\sup_{0\lt s\le t}\|g_s\|_p^p 以下で、(3) から 00 に収束します。

(1)〜(3) は、(Pt)(P_t) が LpL^p(p<∞p\lt\infty)上の強連続な縮小半群(定義 4.1[1 径数ユニタリ群と強連続半群])であることを言っています。(5) は、その生成子が Cc2C_c^2 上で Δ\Delta に一致することです。L2L^2 では、Fourier 変換で対角化される自己共役作用素 Δ\Delta(定義域 H2(Rn)H^2(\mathbb{R}^n))のスペクトル計算による etΔe^{t\Delta} が、まさにこの畳み込みに一致します(例 5.2[1 径数ユニタリ群と強連続半群])。以下 L2L^2 上では Pt=etΔP_t=e^{t\Delta} と書きます。

(5) の「生成子」は、半群の時間微分にあたるものです。ff を PtP_t で tt だけ動かした変化 Ptf−fP_tf-f を tt で割って t→0t\to0 とすると、熱方程式の右辺 Δf\Delta f が現れる、というのが (5) の内容です。また (3) の証明の要点は、平行移動 τy\tau_y で ff が LpL^p のノルムでほとんど動かないこと(Cc∞C_c^\infty で近似して確かめる)と、Φt\Phi_t が t→0t\to0 で原点に集中することの 2 つです。

Bt=(Bt1,…,Btn)B_t=(B_t^1,\ldots,B_t^n) を nn 次元の標準 Brown 運動(独立な nn 個の 1 次元標準 Brown 運動 定義 5.1[マルチンゲールとブラウン運動] を並べたもの)とし、x∈Rnx\in\mathbb{R}^n に対して Xsx=x+2BsX_s^x=x+\sqrt2B_s とおきます。Xtx−x=2BtX_t^x-x=\sqrt2B_t の各成分は独立で分散 2t2t の正規分布に従うので、XtxX_t^x の分布の密度は y↦Φ(y−x,t)y\mapsto\Phi(y-x,t) です。

命題 5.1(熱半群の確率論的表示)✓

0=t0<t1<⋯<tN0=t_0\lt t_1\lt\cdots\lt t_N とし、F:(Rn)N→RF:(\mathbb{R}^n)^N\to\mathbb{R} を有界なボレル可測関数(または非負可測関数)とすると

E[F(Xt1x,…,XtNx)]=∫F(y1,…,yN)∏k=1NΦ(yk−yk−1,tk−tk−1) dy1⋯dyN(y0=x).E\bigl[F(X^x_{t_1},\ldots,X^x_{t_N})\bigr]=\int F(y_1,\ldots,y_N)\prod_{k=1}^N\Phi(y_k-y_{k-1},t_k-t_{k-1})\,dy_1\cdots dy_N\qquad(y_0=x).

特に ff が有界可測なら Ptf(x)=E[f(Xtx)]P_tf(x)=E[f(X_t^x)] である。

証明(命題 5.1)

増分 Zk=Xtkx−Xtk−1x=2(Btk−Btk−1)Z_k=X^x_{t_k}-X^x_{t_{k-1}}=\sqrt2(B_{t_k}-B_{t_{k-1}}) は独立で、それぞれ密度 Φ(⋅,tk−tk−1)\Phi(\cdot,t_k-t_{k-1}) をもちます(Brown 運動の独立増分と正規増分)。よって (Z1,…,ZN)(Z_1,\ldots,Z_N) の同時密度は積 ∏kΦ(zk,tk−tk−1)\prod_k\Phi(z_k,t_k-t_{k-1}) です。Xtkx=x+z1+⋯+zkX^x_{t_k}=x+z_1+\cdots+z_k なので、F(x+z1,…,x+z1+⋯+zN)F(x+z_1,\ldots,x+z_1+\cdots+z_N) の期待値をこの密度で書き、変数変換 yk=x+z1+⋯+zky_k=x+z_1+\cdots+z_k(ヤコビアン 11)をすれば主張の式です。

右辺は、核 Φ(yk−yk−1,tk−tk−1)\Phi(y_k-y_{k-1},t_k-t_{k-1}) の積分作用素を順に施したものです。たとえば N=2N=2 なら、時刻 t1t_1 の位置 y1y_1 を経由して時刻 t2t_2 の位置 y2y_2 に着く確率密度が Φ(y1−x,t1)Φ(y2−y1,t2−t1)\Phi(y_1-x,t_1)\Phi(y_2-y_1,t_2-t_1) で、y2y_2 から y1y_1 の順に積分すれば作用素を交互に施した形になります。たとえば F(y1,…,yN)=f1(y1)⋯fN(yN)F(y_1,\ldots,y_N)=f_1(y_1)\cdots f_N(y_N) なら、右辺は Pt1(f1Pt2−t1(f2⋯PtN−tN−1fN))(x)P_{t_1}\bigl(f_1P_{t_2-t_1}(f_2\cdots P_{t_N-t_{N-1}}f_N)\bigr)(x) です(fkf_k の掛け算と PP を交互に施す)。これが Brown 運動のMarkov 性の解析的な表現です。

次の定理の証明の筋は 3 段です。まず Trotter 積公式で e−tHe^{-tH} を、熱半群 eτΔe^{\tau\Delta} と掛け算 e−τVe^{-\tau V} を交互に施す作用素の NN 回の積の極限として表します。次にこの積を、前節の Brown 運動の表示で期待値に書き直します。最後に N→∞N\to\infty で、和が積分 ∫0tV(Xsx) ds\int_0^tV(X_s^x)\,ds になります。

定理 5.2(Feynman–Kac 公式(有界連続ポテンシャル))✓

V:Rn→RV:\mathbb{R}^n\to\mathbb{R} を有界連続関数とし、H=−Δ+VH=-\Delta+V を L2(Rn)L^2(\mathbb{R}^n) 上の作用素(定義域は −Δ-\Delta と同じ)とする。HH は下に有界な自己共役作用素で、f∈L2∩L∞f\in L^2\cap L^\infty、t≥0t\ge0 について、ほとんどすべての xx で

(e−tHf)(x)=E[exp⁡(−∫0tV(Xsx) ds)f(Xtx)](e^{-tH}f)(x)=E\Bigl[\exp\Bigl(-\int_0^tV(X_s^x)\,ds\Bigr)f(X_t^x)\Bigr]

が成り立つ。

証明(定理 5.2)

自己共役性。 VV の掛け算は有界な自己共役作用素なので、相対限界 00 の摂動として Kato–Rellich の定理(定理 3.2[自己共役性の判定])から HH は D(−Δ)D(-\Delta) 上で自己共役、H≥−∥V∥∞H\ge-\|V\|_\infty です。

Trotter 積公式。 A=−Δ≥0A=-\Delta\ge0、B=VB=V はともに下に有界な自己共役作用素で、A+B=HA+B=H は D(A)∩D(B)=D(A)D(A)\cap D(B)=D(A) 上で自己共役です。定理 6.1[1 径数ユニタリ群と強連続半群] の 2 から、τ=t/N\tau=t/N として

e−tHf=lim⁡N→∞(eτΔe−τV)Nf(L2 で)e^{-tH}f=\lim_{N\to\infty}\bigl(e^{\tau\Delta}e^{-\tau V}\bigr)^Nf\qquad(L^2\text{ で})

です。e−τVe^{-\tau V} は関数 e−τVe^{-\tau V} の掛け算です。

有限次元分布で書く。 命題 5.1 の後の注意(tk=kτt_k=k\tau、fk=e−τVf_k=e^{-\tau V}、最後だけ fN=e−τVff_N=e^{-\tau V}f)から

(eτΔe−τV)Nf(x)=E[exp⁡(−τ∑k=1NV(Xkτx))f(Xtx)]\bigl(e^{\tau\Delta}e^{-\tau V}\bigr)^Nf(x)=E\Bigl[\exp\Bigl(-\tau\sum_{k=1}^NV(X^x_{k\tau})\Bigr)f(X^x_t)\Bigr]

が、すべての xx で成り立ちます。

極限。 確率 11 で s↦Xsxs\mapsto X^x_s は連続なので、V(Xsx)V(X^x_s) は [0,t][0,t] 上連続で、Riemann 和 τ∑kV(Xkτx)\tau\sum_kV(X^x_{k\tau}) は ∫0tV(Xsx) ds\int_0^tV(X^x_s)\,ds に収束します。被積分関数は et∥V∥∞∥f∥∞e^{t\|V\|_\infty}\|f\|_\infty で抑えられるので、優収束定理から右辺は各 xx で主張の右辺に収束します。右辺の関数列は一様に有界なので、各有界集合 DD 上では優収束定理により L2(D)L^2(D) でも収束します。一方、左辺は L2L^2 で、したがって L2(D)L^2(D) で e−tHfe^{-tH}f に収束します。L2(D)L^2(D) での極限は一意なので、DD 上ほとんど至るところ両辺は一致し、DD は任意です。

右辺は、Brown 運動の経路 s↦Xsxs\mapsto X^x_s ごとに重み e−∫0tVe^{-\int_0^tV} をつけた平均で、経路積分の数学的に厳密な形です。V≥0V\ge0 なら重みは 11 以下で、∣e−tHf∣≤etΔ∣f∣|e^{-tH}f|\le e^{t\Delta}|f| が直ちにわかります。Schrödinger 作用素の基底状態の正値性や、場の理論の Euclid 経路積分(Euclid 経路積分)は、この表示の延長線上にあります。VV が有界でない場合(Coulomb ポテンシャルなど)への拡張には、Trotter 積公式の形式版と単調収束の議論が要ります。

注意 5.3(偏微分方程式としての読み方)

u(x,t)=(e−tHf)(x)u(x,t)=(e^{-tH}f)(x) は、形式的には ∂tu=Δu−Vu\partial_tu=\Delta u-Vu、u(⋅,0)=fu(\cdot,0)=f の解です。V=0V=0 のとき公式は 命題 5.1 の Ptf(x)=E[f(Xtx)]P_tf(x)=E[f(X^x_t)] に戻ります。XxX^x の生成子が Δ\Delta(12Δ\frac12\Delta ではない)になるように 2\sqrt2 を入れているので、確率論の文献の 12Δ\frac12\Delta の規約と比べるときは時間を 22 倍します。

演習 6.1易

∫Rn∣x∣2Φ(x,t) dx=2nt\int_{\mathbb{R}^n}|x|^2\Phi(x,t)\,dx=2nt を示せ。また u(x,t)=∣x∣2+2ntu(x,t)=|x|^2+2nt が熱方程式の解であることを確かめよ。

解答

Φt\Phi_t は各成分が独立な分散 2t2t の正規分布の密度の積なので、∫xi2Φt dx=2t\int x_i^2\Phi_t\,dx=2t、足して 2nt2nt です。直接計算するなら n=1n=1 で ∫y2e−y2/4tdy=2t4πt\int y^2e^{-y^2/4t}dy=2t\sqrt{4\pi t}(部分積分と Gauss 積分)です。後半は ∂tu=2n\partial_tu=2n、Δ∣x∣2=2n\Delta|x|^2=2n です。前半は後半と Pt(∣x∣2)(0)=E∣Xt0∣2P_t(|x|^2)(0)=E|X^0_t|^2 からも読めます。

演習 6.2標準

UU を滑らかな境界をもつ有界領域とし、w∈C2,1(Uˉ×[0,T])w\in C^{2,1}(\bar U\times[0,T]) が ∂tw=Δw\partial_tw=\Delta w、∂U\partial U 上で w=0w=0 を満たすとする。E(t)=∫Uw(x,t)2dxE(t)=\int_Uw(x,t)^2dx が単調減少であることを示し、初期値・境界値問題の一意性をエネルギーの方法で証明せよ。

解答

積分記号下で微分し、Green の公式(系 2.2[ラプラス方程式と調和関数])と境界で w=0w=0 を使うと

E′(t)=2∫Uw ∂tw dx=2∫UwΔw dx=−2∫U∣∇w∣2dx≤0E'(t)=2\int_Uw\,\partial_tw\,dx=2\int_Uw\Delta w\,dx=-2\int_U|\nabla w|^2dx\le0

です。2 つの解の差 ww は E(0)=0E(0)=0 なので E(t)=0E(t)=0、よって w=0w=0 です。最大値原理と違い、この方法は L2L^2 の量だけを使うので、第 4 章の弱解の理論にそのまま延びます。

演習 6.3標準

f∈L1(Rn)f\in L^1(\mathbb{R}^n) なら ∥Ptf∥∞≤(4πt)−n/2∥f∥1\|P_tf\|_\infty\le(4\pi t)^{-n/2}\|f\|_1 を示せ。f≥0f\ge0 のとき、∫Ptf=∫f\int P_tf=\int f と合わせて、この評価が「総量を保ったまま t\sqrt t の幅に広がる」ことの定量的な表現であることを説明せよ。

解答

Φt≤(4πt)−n/2\Phi_t\le(4\pi t)^{-n/2} なので ∣Ptf(x)∣≤(4πt)−n/2∫∣f∣|P_tf(x)|\le(4\pi t)^{-n/2}\int|f| です。∫Ptf=∫f\int P_tf=\int f は Tonelli の定理と ∫Φt=1\int\Phi_t=1 から出ます。総量 mm が体積 ∼tn/2\sim t^{n/2} の領域に広がれば高さは ∼mt−n/2\sim mt^{-n/2} で、評価はこの次元解析と一致します。

演習 6.4難

V1≤V2V_1\le V_2 を有界連続関数、Hj=−Δ+VjH_j=-\Delta+V_j とする。f≥0f\ge0、f∈L2∩L∞f\in L^2\cap L^\infty なら、ほとんど至るところ 0≤e−tH2f≤e−tH1f0\le e^{-tH_2}f\le e^{-tH_1}f であることを示せ。VV が定数 cc のときに 定理 5.2 の両辺がともに e−ctPtfe^{-ct}P_tf になることも確かめよ。

解答

定理 5.2 の右辺で、各経路について 0≤exp⁡(−∫0tV2)≤exp⁡(−∫0tV1)0\le\exp(-\int_0^tV_2)\le\exp(-\int_0^tV_1) なので、f≥0f\ge0 を掛けて期待値をとれば主張です。V=cV=c なら exp⁡(−∫0tc ds)=e−ct\exp(-\int_0^tc\,ds)=e^{-ct} は確定値で、右辺は e−ctE[f(Xtx)]=e−ctPtf(x)e^{-ct}E[f(X^x_t)]=e^{-ct}P_tf(x)。左辺は、H=−Δ+cH=-\Delta+c と −Δ-\Delta がスペクトル計算で e−tH=e−ctetΔe^{-tH}=e^{-ct}e^{t\Delta} を満たすことから同じです。

  • L. C. Evans, Partial Differential Equations, 2nd ed., American Mathematical Society, 2010 — Chapter 2.3(基本解・最大値原理・一意性)。
  • F. John, Partial Differential Equations, 4th ed., Springer, 1982 — Chapter 7(熱方程式と Tychonoff の例)。
  • B. Simon, Functional Integration and Quantum Physics, 2nd ed., AMS Chelsea Publishing, 2005 — Part I(Feynman–Kac 公式)。
  • I. Karatzas, S. E. Shreve, Brownian Motion and Stochastic Calculus, 2nd ed., Springer, 1991 — Section 4.4(Feynman–Kac 公式)。
  • 俣野博・神保道夫『熱・波動と微分方程式』岩波書店、2004 — 熱方程式の章。

このテーマの 100 本ノック(50 問)

執筆: Claude Code(Opus 5.5)、Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 3 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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