太鼓や膜の形のように、領域の縁で値を 0 に固定した方程式を考えます。係数が場所ごとに変わったり領域が複雑だったりすると、解を式で書くことはできません。そこで「方程式を積分した形で満たす」ところまで解の条件をゆるめ、広い関数の空間の中で解を探します。この記事を読むと、そのような解が(係数に適当な条件のもとで)ただ一つ存在することの証明と、解が「エネルギーの最小点」でもあることの証明が分かります。
- 発散形の楕円型方程式 −∑i,j∂j(aij∂iu)+∑ibi∂iu+cu=f を部分積分した形で読み、弱解を Sobolev 空間 H01(Ω) の元として定義します。境界条件 u=0 は「u∈H01」に置き換わります。
- Lax–Milgram の定理: Hilbert 空間上の有界で強圧的な双線形形式 B について、B[u,v]=F(v) はただ一つの解をもちます。Riesz の表現定理の非対称版です。
- Gårding 不等式 β∥u∥H12≤B[u,u]+γ∥u∥L22 により、十分大きな μ で Lu+μu=f が一意に解けます。Rellich のコンパクト性と合わせると Fredholm の択一が成り立ちます。
- Dirichlet 原理: −Δu=f の弱解は、エネルギー ∫(21∣∇w∣2−fw) の H01 での最小点と同じものです。凸で強圧的な積分汎関数は最小点をもち(直接法)、最小点は弱い意味の Euler–Lagrange 方程式を満たします。
- 対称な場合、B は H01 を定義域とする下に有界な閉形式で、表現定理により自己共役作用素(Dirichlet 境界条件つきの L)が決まります。−Δ では Friedrichs 拡大 −ΔD です。
前章までの古典解の理論は、解の公式や最大値原理に頼っていました。しかし、係数が変数に依存する方程式や一般の領域では、解の公式はありません。そこで発想を逆にして、まず「解の候補」を広い関数空間で作り、あとで滑らかさを調べます。存在と正則性を分けるこの方針が、20 世紀の偏微分方程式論の基本戦略です。
起源は Dirichlet 原理です。Riemann は「∫∣∇w∣2 を境界値を固定して最小にする w は調和関数である」と考えて Dirichlet 問題の解の存在を論じましたが、Weierstrass は最小値が達成されるとは限らないと批判しました(下限をとる関数が存在しない汎関数の例を挙げた)。Hilbert は 1900 年頃に最小化列の収束を示して原理を救いました。現代的には、最小化列が**弱収束**する部分列をもち、エネルギーが弱収束に関して下半連続(弱収束の極限で値が大きくならない、という性質)であることが鍵です。完備な Hilbert 空間 H01 を舞台に選ぶことが、Weierstrass の批判への答えになります。
作用素論の側から見ると、この章は 自己共役性の判定 の形式の方法(閉形式の表現定理・Friedrichs 拡大・KLMN の定理)を、具体的な微分作用素に当てはめたものです。
以下、関数はすべて実数値とし、Ω⊂Rn を有界な開集合とします。⟨u,v⟩=∫Ωuvdx、∥u∥=∥u∥L2(Ω) と書きます。Hilbert 空間の結果(Riesz の表現定理、射影定理、弱収束)は実 Hilbert 空間でも同じ証明で成り立つので、そのまま使います。複素 Hilbert 空間で述べられた作用素論の結果(Fredholm の択一定理、閉形式の表現定理)を使うときは、L2(Ω) を複素数値関数の空間に広げ、双線形形式を半双線形に延ばして適用します。係数が実数なので、実数値の関数には実数値の答えが返ります。
Sobolev 空間 の記号で H1(Ω)=W1,2(Ω)、H01(Ω)=W01,2(Ω)(Cc∞(Ω) の H1 ノルムでの閉包)とし、∥u∥H12=∥u∥2+∥∇u∥2 とします(定義 2.1[Sobolev 空間])。H1(Ω) は Hilbert 空間(命題 2.3[Sobolev 空間])で、H01(Ω) はその閉部分空間です。
補題 2.1(Poincaré の不等式)✓
Ω がある方向の幅 d の帯 {a<x1<a+d} に含まれるなら、すべての u∈H01(Ω) について ∥u∥≤d∥∂1u∥ である。特に ∥∇u∥ は H01(Ω) 上で ∥u∥H1 と同値なノルムである。
証明(補題 2.1)
φ∈Cc∞(Ω) を 0 で延長すると、x=(x1,x′) について φ(x)=∫ax1∂1φ(s,x′)ds です。Cauchy–Schwarz の不等式で ∣φ(x)∣2≤d∫aa+d∣∂1φ(s,x′)∣2ds で、x1∈(a,a+d) と x′ について積分すると ∥φ∥2≤d2∥∂1φ∥2 です。両辺は H1 ノルムについて連続なので、閉包 H01(Ω) に延びます。後半は ∥∇u∥2≤∥u∥H12≤(1+d2)∥∇u∥2 からです。
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境界で 0 という条件は外せません。定数関数 1∈H1(Ω) は ∇1=0 ですが ∥1∥=0 です。
係数 aij,bi,c∈L∞(Ω)(1≤i,j≤n)に対し、作用素
Lu=−i,j=1∑n∂j(aij∂iu)+i=1∑nbi∂iu+cu
を考えます。ある θ>0 について、ほとんどすべての x と全ての ξ∈Rn で ∑i,jaij(x)ξiξj≥θ∣ξ∣2 が成り立つとき、L は一様楕円型であるといいます。以下この条件を仮定します。
定義 3.1(弱解)↗
u,v∈H01(Ω) について
B[u,v]=∫Ω(i,j∑aij∂iu∂jv+i∑bi∂iuv+cuv)dxとおく。f∈L2(Ω) に対し、u∈H01(Ω) がすべての v∈H01(Ω) で B[u,v]=⟨f,v⟩ を満たすとき、u を Dirichlet 問題 Lu=f(Ω 内)、u=0(∂Ω 上)の弱解という。
係数が滑らかで u∈C2(Ω) が古典的に Lu=f を満たすなら、v∈Cc∞(Ω) を掛けて部分積分すると(境界項は v の台がコンパクトなので出ない)B[u,v]=⟨f,v⟩ です。Cc∞(Ω) は H01(Ω) で稠密で両辺は v について連続なので、u∈H01 でもあれば弱解です。逆に弱解が滑らかなら古典解であることは、次章の正則性の理論の主題です。
定理 3.2(Lax–Milgram の定理)✓
H を実 Hilbert 空間、B:H×H→R を双線形形式とし、定数 α,β>0 について
∣B[u,v]∣≤α∥u∥∥v∥,B[u,u]≥β∥u∥2(u,v∈H)が成り立つとする。このとき任意の有界線形汎関数 F∈H∗ に対し、すべての v∈H で B[u,v]=F(v) を満たす u∈H がただ一つ存在し、∥u∥≤∥F∥/β である。
証明の方針は次のとおりです。B[u,⋅] を Riesz の表現定理で H の元 Au に直すと、求めるものは Au=f を解くことになります。そこで A が単射で、値域が閉かつ稠密(したがって全体)であることを順に示します。
証明(定理 3.2)
u を固定すると v↦B[u,v] は有界線形汎関数なので、Riesz の表現定理(定理 4.2[Hilbert 空間の基礎])により B[u,v]=⟨Au,v⟩ となる Au∈H がただ一つあります。一意性から A は線形で、∥Au∥=sup∥v∥≤1B[u,v]≤α∥u∥ です。
A は単射で値域は閉。 β∥u∥2≤B[u,u]=⟨Au,u⟩≤∥Au∥∥u∥ から ∥Au∥≥β∥u∥ です。単射性はこれから明らかです。Auk→w なら ∥uk−ul∥≤β−1∥Auk−Aul∥ なので (uk) は Cauchy 列で、極限 u について Au=w です。
値域は稠密。 w⊥A(H) なら 0=⟨Aw,w⟩=B[w,w]≥β∥w∥2 なので w=0 です。系 3.7[Hilbert 空間の基礎] から値域は稠密で、閉なので H 全体です。
結論。 F(v)=⟨f,v⟩ となる f を Riesz の表現定理でとり、u=A−1f とすれば B[u,v]=⟨f,v⟩=F(v) です。一意性は A の単射性、評価は β∥u∥≤∥Au∥=∥f∥=∥F∥ です。
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B が対称なら、B 自身が H の同値な内積で、定理は Riesz の表現定理そのものです。Lax–Milgram の定理の価値は、1 階の項 bi∂iu がある非対称な場合にも使えることにあります。
定理 4.1(Gårding 不等式(エネルギー評価))✓
定数 α,β>0、γ≥0 があって、すべての u,v∈H01(Ω) について
∣B[u,v]∣≤α∥u∥H1∥v∥H1,β∥u∥H12≤B[u,u]+γ∥u∥2.β=θ/2、γ=2θ∥b∥∞2+∥c∥∞+2θ ととれる。ここで ∥b∥∞=esssupx∣b(x)∣(b=(b1,…,bn))である。
証明の途中の不等式 ab≤2θa2+2θ1b2 は、1 階の項に a=∥∇u∥、b=∥b∥∞∥u∥ を当てはめて使います。∥∇u∥ の項を左辺に吸収し、∥u∥2 の項に回すのがねらいです。
証明(定理 4.1)
第 1 式は、各項に Cauchy–Schwarz の不等式を使えば、α を係数の L∞ ノルムの和にとって成り立ちます。第 2 式は、楕円性と、ab≤2θa2+2θ1b2 の形の不等式から
θ∥∇u∥2≤∫∑aij∂iu∂ju=B[u,u]−∫(∑bi∂iu)u−∫cu2≤B[u,u]+2θ∥∇u∥2+2θ∥b∥∞2∥u∥2+∥c∥∞∥u∥2です。2θ∥∇u∥2 を左辺に移し、両辺に 2θ∥u∥2 を足せば主張です。
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定理 4.2(弱解の存在と一意性)✓
定理 4.1 の γ について、μ≥γ なら、任意の f∈L2(Ω) に対し Lu+μu=f の弱解 u∈H01(Ω) がただ一つ存在し、∥u∥H1≤β−1∥f∥ を満たす。さらに b=0、c≥0(a.e.)なら μ=0 でも同じ結論が成り立つ。
証明(定理 4.2)
Bμ[u,v]=B[u,v]+μ⟨u,v⟩ は有界で、定理 4.1 から Bμ[u,u]≥β∥u∥H12 です。F(v)=⟨f,v⟩ は ∣F(v)∣≤∥f∥∥v∥H1 を満たすので、定理 3.2 を H=H01(Ω) に使います。後半は、b=0、c≥0 なら B[u,u]≥θ∥∇u∥2≥1+d2θ∥u∥H12(補題 2.1、d は Ω の直径)なので、同じ議論が μ=0 で使えるからです。
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定理 4.3(Fredholm の択一)✓
次のいずれか一方だけが成り立つ。
- (a) 任意の f∈L2(Ω) に対し、Lu=f の弱解 u∈H01(Ω) がただ一つ存在する。
- (b) Lu=0 が 0 でない弱解 u∈H01(Ω) をもつ。
(b) の場合、Lu=0 の弱解全体は有限次元である。
証明の方針は次のとおりです。前の定理により、γ を足した方程式 Lu+γu=f は常に解けるので、その解を与える写像 G が使えます。G は L2 から H01 への写像ですが、H01 から L2 への包含がコンパクトなので、L2 から L2 への作用素とみるとコンパクトになります。Lu=f を u=K(f+γu) と書き直して整理すると λ=1/γ の形が現れ、コンパクト作用素の Fredholm の択一が使えます。
証明(定理 4.3)
γ>0 を 定理 4.2 のとおりとし(γ=0 なら大きくとり直す)、f∈L2 に Lu+γu=f の弱解を対応させる写像を G:L2→H01 とします。G は有界線形で、包含 H01(Ω)→L2(Ω) はコンパクト(系 5.2[Sobolev 空間])なので、K=G を L2 から L2 への作用素とみたものはコンパクトです(命題 3.2[コンパクト作用素・Hilbert–Schmidt 作用素・トレースクラス])。
u∈H01 が Lu=f の弱解であることは、Lu+γu=f+γu の弱解であること、すなわち u=K(f+γu) と同値です。逆に u∈L2 が u=K(f+γu) を満たせば u∈G(L2)⊂H01 なので、L2 の方程式
(K−γ1)u=−γ1Kfの解と Lu=f の弱解は一致します。定理 5.3[コンパクト作用素・Hilbert–Schmidt 作用素・トレースクラス] を λ=1/γ に使えば、(a) 右辺がどんな L2 の元でも一意に解けるか、(b) Ker(K−1/γ)={0}(有限次元)のどちらかです。(a) の場合は特に −γ1Kf の形の右辺について一意に解け、(b) の核は f=0 の場合、すなわち Lu=0 の弱解全体です。
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第 6 章で見るように、L=−Δ−λ では (b) が起きるのはちょうど λ が Dirichlet ラプラシアンの固有値のときです。
定理 5.1(Dirichlet 原理)✓
f∈L2(Ω) とし、I[w]=∫Ω(21∣∇w∣2−fw)dx(w∈H01(Ω))とおく。u∈H01(Ω) について次は同値である。
- u は −Δu=f の弱解である。すなわち、すべての v∈H01 で ⟨∇u,∇v⟩=⟨f,v⟩。
- I[u]=minw∈H01(Ω)I[w]。
このような u はただ一つ存在する。
証明(定理 5.1)
u,v∈H01 と t∈R について、展開すると
I[u+tv]=I[u]+t(⟨∇u,∇v⟩−⟨f,v⟩)+2t2∥∇v∥2です。1 なら第 2 項が消えるので I[u+v]≥I[u] で、2 が成り立ちます。2 なら t↦I[u+tv] は t=0 で最小なので、t の 1 次の係数は 0 で、1 が成り立ちます。存在と一意性は 定理 4.2(b=0、c=0)からです。
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この定理では存在を Lax–Milgram の定理で得ました。次の定理は、最小点を直接作る方法(直接法)で、非線形の汎関数にも使えます。
定理 5.2(凸積分汎関数の直接法)✓
F:Ω×Rn→R、G:Ω×R→R は、x について可測、p(または z)について凸で C1 級とし、定数 λ>0、C≥0 と g0∈L1(Ω)、g1∈L2(Ω) について次を満たすとする。
λ∣p∣2−g0(x)≤F(x,p)≤C∣p∣2+g0(x),∣∇pF(x,p)∣≤C∣p∣+g1(x),∣G(x,z)∣≤Cz2+g0(x),∣∂zG(x,z)∣≤C∣z∣+g1(x).このとき I[w]=∫Ω(F(x,∇w)+G(x,w))dx は H01(Ω) 上で最小値をとる。
証明は 3 段階です。まず I が下に有界で、最小化列が有界になること(強圧性)を示します。次にその列から弱収束する部分列を取り出します。最後に、凸関数のグラフが接線より上にあることを積分して、極限の値が列の値の極限以下になること(弱下半連続性)を示し、極限が最小点であると結論します。途中で閉線形包(列が張る閉部分空間)に移るのは、そこで弱収束する部分列を取り出し、あとで H01 全体に戻すためです。
証明(定理 5.2)
仮定から I は H01 上の有限な値をとります。
強圧性。 G の凸性から G(x,z)≥G(x,0)+∂zG(x,0)z≥−g0−g1∣z∣ なので、補題 2.1(d は Ω の直径)と Cauchy–Schwarz の不等式から
I[w]≥λ∥∇w∥2−2∥g0∥L1−∥g1∥d∥∇w∥です。よって I は下に有界で、I[w]≤M となる w 全体は H01 で有界です。
最小化列と弱収束。 m=infI とし、I[wk]→m となる列をとると、(wk) は H01 で有界です。(wk) の閉線形包 H0 は可分な Hilbert 空間なので、定理 5.5[Hilbert 空間の基礎] により H0 で弱収束する部分列(同じ記号で書く)と極限 w∈H0⊂H01 があります。H01 の任意の元 z は H0 への射影 Pz と直交成分に分かれ、⟨wk,z⟩H1=⟨wk,Pz⟩H1 なので、wk⇀w は H01 でも成り立ちます。写像 w↦∂iw、w↦w は H01 から L2 への有界線形写像なので、L2 で ∇wk⇀∇w、wk⇀w です。
弱下半連続性。 凸な C1 関数は接平面の上にあるので、F(x,q)≥F(x,p)+∇pF(x,p)⋅(q−p)、G も同様です。p=∇w、q=∇wk として積分すると
I[wk]≥I[w]+∫∇pF(x,∇w)⋅(∇wk−∇w)dx+∫∂zG(x,w)(wk−w)dxです。増大度の仮定から ∇pF(x,∇w)∈L2、∂zG(x,w)∈L2 なので、弱収束から最後の 2 項は 0 に収束します。よって I[w]≤liminfI[wk]=m で、w は最小点です。
∎
証明の 3 段階(強圧性 → 弱コンパクト性 → 弱下半連続性)が直接法の型です。凸性は弱下半連続性のためだけに使いました。凸性がないと、最小化列が細かく振動して下限が達成されないことがあります(Weierstrass の批判の現代版)。
定理 5.3(Euler–Lagrange 方程式)✓
定理 5.2 の仮定のもとで、u∈H01(Ω) について次は同値である。
- u は I の最小点である。
- すべての v∈H01(Ω) で
∫Ω(∇pF(x,∇u)⋅∇v+∂zG(x,u)v)dx=0.すなわち u は −div(∇pF(x,∇u))+∂zG(x,u)=0、u∣∂Ω=0 の弱解である。
証明(定理 5.3)
1 ⇒ 2. j(t)=I[u+tv] は t=0 で最小です。0<∣t∣≤1 について
tF(x,∇u+t∇v)−F(x,∇u)=∫01∇pF(x,∇u+st∇v)⋅∇vdsで、右辺の絶対値は (C(∣∇u∣+∣∇v∣)+g1)∣∇v∣∈L1 で抑えられ、t→0 で ∇pF(x,∇u)⋅∇v に収束します。G の項も同様なので、優収束定理から j は t=0 で微分可能で、j′(0) が 2 の左辺です。最小点なので j′(0)=0 です。
2 ⇒ 1. 定理 5.2 の証明の接平面の不等式を w と u について使うと、I[w]≥I[u]+(2 の左辺で v=w−u)=I[u] です。
∎
例 5.4(変分問題の例)
- F=21∣p∣2、G=−f(x)z(f∈L2): Euler–Lagrange 方程式は −Δu=f で、定理 5.1 に戻ります。
- F=21∑i,jaij(x)pipj(aij=aji、一様楕円型)、G=21c(x)z2−f(x)z(c≥0): 対称な線形方程式 −∑∂j(aij∂iu)+cu=f です。
- F=21∣p∣2、G=logcoshz−f(x)z: G は凸で ∣∂zG∣=∣tanhz−f∣≤1+∣f∣ なので定理が使え、非線形方程式 −Δu+tanhu=f の弱解が得られます。F が狭義凸なので、2 つの最小点 u1,u2 があると 21(u1+u2) で値が真に小さくなり(∇u1=∇u2 のとき)、最小点は一意です。
- 極小曲面の汎関数 F=1+∣p∣2 は凸ですが ∣p∣ の 1 次でしか増えず、強圧性の仮定を満たしません。この場合 H1 では最小化列が有界にならず、有界変動関数の空間に舞台を移す必要があります。
L が対称、すなわち aij=aji、b=0 の場合を考えます。c≥−M(a.e.)とします。
証明(命題 6.1)
Cc∞(Ω) は L2(Ω) で稠密(補題 2.2[Schwartz 空間と緩増加超関数])なので、Q(q) も稠密です。q(u,u)≥−M∥u∥2 は楕円性から出ます。定理 4.1 から、q(u,u)+(M+1)∥u∥2 から来るノルムは H1 ノルムと同値で、H01 は完備なので q は閉です(定義 4.1[自己共役性の判定])。
u∈D(LD)、LDu=f なら、表現定理の 1 から全ての v∈H01 で B[v,u]=⟨v,f⟩、対称性から u は弱解です。逆に弱解なら、表現定理の 3 から u∈D(LD)、LDu=f です。
最後の主張: φ,ψ∈Cc∞(Ω) について q(φ,ψ)=⟨∇φ,∇ψ⟩=⟨φ,−Δψ⟩(部分積分)です。Cc∞ 上の形式の閉包は、ノルムの同値性から H01 上の q に等しいので、Friedrichs 拡大(定理 6.1[自己共役性の判定])の定義の作用素と LD は一致します。
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「境界条件 u=0」は、作用素の定義域にではなく形式の定義域 H01 に組み込まれています。H1(Ω) を形式定義域にとると、自然境界条件(形式の定義域に課さなかった条件が、最小化の結果として自然に出てくるもの)として Neumann 条件 ∂νu=0 が現れます。第 6 章では、この 2 つの形式を比べて固有値を数えます。また、ポテンシャル V が −ΔD に関して形式の意味で相対限界 1 未満なら、KLMN の定理(定理 5.2[自己共役性の判定])で −ΔD+V が自己共役作用素として定まり、V が L∞ に入らない場合(Coulomb ポテンシャルなど)も同じ枠組みで扱えます。
演習 7.1易
μ≥0、f∈L2(Ω) とし、u∈H01(Ω) を −Δu+μu=f の弱解とする。Ω の直径を d として ∥∇u∥≤d∥f∥ を示せ。
解答
v=u を代入すると ∥∇u∥2+μ∥u∥2=⟨f,u⟩≤∥f∥∥u∥≤d∥f∥∥∇u∥(補題 2.1)です。μ∥u∥2≥0 を捨てて ∥∇u∥ で割ります(∇u=0 なら自明)。
演習 7.2標準
H=ℓ2(実数列)、S を右シフト S(u1,u2,…)=(0,u1,u2,…) とし、B[u,v]=⟨Su,v⟩ とおく。B は有界だが、F(v)=v1 に対して B[u,v]=F(v)(全ての v)を満たす u は存在しないことを示せ。定理 3.2 のどの仮定が破れているか答えよ。
解答
∣B[u,v]∣≤∥Su∥∥v∥=∥u∥∥v∥ なので有界です。B[u,v]=v1=⟨e1,v⟩ が全ての v で成り立てば Su=e1 ですが、Su の第 1 成分は常に 0 なので不可能です。B[e1,e1]=⟨e2,e1⟩=0 なので強圧性 B[u,u]≥β∥u∥2 が破れています。証明の中では、A=S の値域が閉だが稠密でない(e1 が直交補空間に入る)ところで議論が止まります。
演習 7.3標準
Ω を滑らかな境界をもつ有界領域、f∈L2(Ω) とし、u∈H1(Ω) が J[w]=∫Ω(21∣∇w∣2+21w2−fw)dx の H1(Ω)(H01 ではない)での最小点であるとする。さらに u∈C2(Ωˉ)、f が連続ならば、Ω で −Δu+u=f、∂Ω で ∂νu=0 が成り立つことを示せ。
解答
定理 5.1 の証明と同じ展開で、全ての v∈H1(Ω) について ⟨∇u,∇v⟩+⟨u,v⟩=⟨f,v⟩ です。v∈Cc∞(Ω) として部分積分すると ∫(−Δu+u−f)v=0 で、補題 2.2[Schwartz 空間と緩増加超関数] の 3 と連続性から Ω で −Δu+u=f です。次に v を多項式(の Ωˉ への制限、H1(Ω) に入る)とし、Green の公式(系 2.2[ラプラス方程式と調和関数])を使うと、方程式から体積項が消えて ∫∂Ωv∂νudS=0 です。多項式はコンパクト集合 ∂Ω 上の連続関数を一様近似できる(定理 4.3[Arzelà–Ascoli と Stone–Weierstrass])ので、v→∂νu と近似して ∫∂Ω(∂νu)2dS=0、よって ∂νu=0 です。境界条件を課さずに最小化すると、境界条件が「自然に」現れます。
- L. C. Evans, Partial Differential Equations, 2nd ed., American Mathematical Society, 2010 — Chapter 6.1–6.2(弱解・Lax–Milgram・エネルギー評価・Fredholm の択一)、Chapter 8.1–8.2(直接法・Euler–Lagrange 方程式)。
- D. Gilbarg, N. S. Trudinger, Elliptic Partial Differential Equations of Second Order, Springer, 2001(Classics in Mathematics 版)— Chapter 8。
- H. Brezis, Functional Analysis, Sobolev Spaces and Partial Differential Equations, Springer, 2011 — Chapters 5 and 9。
- B. Dacorogna, Introduction to the Calculus of Variations, 3rd ed., Imperial College Press, 2015 — 直接法の章。
- M. Reed, B. Simon, Methods of Modern Mathematical Physics II: Fourier Analysis, Self-Adjointness, Academic Press, 1975 — Section X.3(形式の方法と Friedrichs 拡大)。
執筆: Claude Code(Opus 5.5)、Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 2 回(Claude Code)・最終 2026-10-12