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Sturm–Liouville 問題と Green 関数:振動定理・固有関数展開の完備性と、変数分離法(弦の振動・熱伝導)

対象読者: 本テーマ第 2〜3 章の内容と、学部の線形代数・解析学に加え、ヒルベルト空間とコンパクト作用素の基礎を学んだ人。偏微分方程式の知識は仮定しません。

前提となる記事:解の存在と一意性:Picard–Lindelöf・Peano・Gronwall と初期値への依存、線形微分方程式系:基本解行列・行列指数関数・Liouville の公式・Floquet の定理・Laplace 変換法、コンパクト作用素・Hilbert–Schmidt 作用素・トレースクラス:特異値で測る作用素の大きさ

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ギターの弦を両端で止めて弾くと、決まった高さの音(基音とその倍音)だけが出ます。この記事は、なぜ「特別な値だけ」が現れるのかを、弦のように単純でない一般の場合にも通用する形で調べます。読み終えると、そうした特別な値とそのときの振動の形が無数に並ぶこと、任意の振動がそれらの重ね合わせで書けることが分かります。

  • Sturm–Liouville 問題 −(py′)′+qy=λwy-(py')'+qy=\lambda wy、y(a)=y(b)=0y(a)=y(b)=0 は、「方程式が解を持つような λ\lambda(固有値)と、そのときの解(固有関数)を求める」問題です。弦の振動、量子力学の井戸型ポテンシャル、熱伝導の変数分離に現れます。
  • Sturm の比較定理:係数が大きい方程式の解は、より速く振動します。これは Wronskian に似た量(2 つの解 y,zy,z を組み合わせた p(y′z−yz′)p(y'z-yz'))の微分を調べるだけで証明できます。
  • 振動定理:固有値は単純で λ1<λ2<⋯→∞\lambda_1<\lambda_2<\cdots\to\infty と並び、nn 番目の固有関数は開区間にちょうど n−1n-1 個の零点を持ちます。Prüfer 変換(解を極座標で見る)で、固有値が「角度が nπn\pi に達する λ\lambda」として特徴づけられます。
  • Green 関数:Ly=fLy=f の境界値問題の解が、積分核 G(x,t)G(x,t) で y=∫G(x,t)f(t) dty=\int G(x,t)f(t)\,dt と書けます。核は連続で対称です。
  • 完備性:この積分作用素は Hilbert–Schmidt 作用素(とくにコンパクト作用素で自己共役)で、核が 00 なので、Hilbert–Schmidt の定理から固有関数が L2L^2 の正規直交基底をなします。三角関数系の完全性(Fourier 級数)もここから出ます。1 次元 Schrödinger 作用素のスペクトル論への入口です。
  • 変数分離法(§7):区間上の弦の振動 utt=uxxu_{tt}=u_{xx} と熱伝導 ut=uxxu_t=u_{xx} の解は、固有関数 sin⁡(nπx/ℓ)\sin(n\pi x/\ell) の級数で与えられます。係数の減衰を部分積分で評価して項別微分を正当化し、一意性はエネルギー保存と最大値原理(熱方程式の解の最大値は、初めの時刻か両端でしか取られない、という性質)から出ます。弦ではモードの振幅が保たれ、熱では高い振動数ほど速く減衰します。

弦の振動を考えます。長さ ℓ\ell の弦が両端で固定されているとき、変位 u(x,t)u(x,t) は波動方程式 utt=c2uxxu_{tt}=c^2u_{xx} を満たします。変数分離 u=y(x)T(t)u=y(x)T(t) をすると、y′′=−λyy''=-\lambda y(λ\lambda は分離定数)、y(0)=y(ℓ)=0y(0)=y(\ell)=0 が出てきます。λ\lambda が特別な値 λn=(nπ/ℓ)2\lambda_n=(n\pi/\ell)^2 のときだけ、境界条件を満たす y≠0y\ne0 が存在し、それが弦の基準振動 sin⁡(nπx/ℓ)\sin(n\pi x/\ell) です。一般の振動はこれらの重ね合わせ(Fourier 正弦級数)で書けます。

ここには数学的な問いが 3 つあります。

  1. 固有値の構造:固有値はどんな集合か(離散的か、単純か、上に有界でないか)。
  2. 固有関数の形:nn 番目の固有関数は、sin⁡(nπx/ℓ)\sin(n\pi x/\ell) のように n−1n-1 個の零点を持つのか。
  3. 完全性:固有関数の重ね合わせで、任意の関数が(L2L^2 の意味で)展開できるのか。

係数が一定の場合は三角関数で直接分かります。しかし p,q,wp,q,w が変数関数だと、解は一般に公式で書けません。そこで必要になるのが、方程式の構造だけを使った議論です。前半(比較定理、Prüfer 変換)は常微分方程式の道具だけで、後半(Green 関数、完備性)は関数解析の道具が主役になります。常微分方程式と作用素論の橋渡しがこの記事の主題です。

以下、[a,b][a,b] を有界閉区間、p∈C1[a,b]p\in C^1[a,b]、q,w∈C[a,b]q,w\in C[a,b] を実数値とし、p>0p>0、w>0w>0 とします。作用素 Ly=−(py′)′+qyLy=-(py')'+qy を考え、Sturm–Liouville 問題(Dirichlet 境界条件)

Ly=λ w yon [a,b],y(a)=y(b)=0(SL)Ly=\lambda\,w\,y\quad\text{on }[a,b],\qquad y(a)=y(b)=0\tag{SL}

を扱います。ここで y(a)=y(b)=0y(a)=y(b)=0 は、区間の両端で解が 00 になる条件(Dirichlet 境界条件)です。y≢0y\not\equiv0 が (SL) を満たすとき λ\lambda を固有値、yy を固有関数といいます。

補題 2.1(Lagrange の恒等式)✓

u,v∈C2[a,b]u,v\in C^2[a,b] に対し ∫ab(Lu⋅v−u⋅Lv) dx=[p (uv′−u′v)]ab\displaystyle\int_a^b(Lu\cdot v-u\cdot Lv)\,dx=\Bigl[p\,(uv'-u'v)\Bigr]_a^b である。とくに u(a)=u(b)=v(a)=v(b)=0u(a)=u(b)=v(a)=v(b)=0 なら 00 である。

証明(補題 2.1)

Lu⋅v−u⋅Lv=−(pu′)′v+u(pv′)′=[p(uv′−u′v)]′Lu\cdot v-u\cdot Lv=-(pu')'v+u(pv')'=\bigl[p(uv'-u'v)\bigr]' です((p(uv′−u′v))′=u(pv′)′−(pu′)′v(p(uv'-u'v))'=u(pv')'-(pu')'v を確かめる:(puv′)′=u′pv′+u(pv′)′(puv')'=u'pv'+u(pv')'、(pu′v)′=(pu′)′v+pu′v′(pu'v)'=(pu')'v+pu'v' なので差は u(pv′)′−(pu′)′vu(pv')'-(pu')'v)。積分します。

命題 2.2(固有値の基本性質)✓

  1. 固有値は実数で、実数値の固有関数が取れる。
  2. 異なる固有値の固有関数は重み ww に関して直交する:∫abw φψ dx=0\int_a^bw\,\varphi\psi\,dx=0。
  3. 各固有値の固有空間は 1 次元である(単純)。
証明(命題 2.2)

(1)(2) 複素数値関数を許すと、λ\lambda が固有値で yy が固有関数のとき、LL の係数が実数なので yˉ\bar y は固有値 λˉ\bar\lambda の固有関数です。補題 2.1 を u=yu=y、v=yˉv=\bar y に使うと 0=∫(Ly yˉ−y Lyˉ)=(λ−λˉ)∫w∣y∣20=\int(Ly\,\bar y-y\,L\bar y)=(\lambda-\bar\lambda)\int w|y|^2 で、w>0w>0、y≢0y\not\equiv0 から λ=λˉ\lambda=\bar\lambda です。実固有値に対して yy の実部・虚部も同じ方程式を満たすので実数値の固有関数が取れます。異なる固有値 λ≠μ\lambda\ne\mu の固有関数 φ,ψ\varphi,\psi に対し 0=∫(Lφ ψ−φ Lψ)=(λ−μ)∫wφψ0=\int(L\varphi\,\psi-\varphi\,L\psi)=(\lambda-\mu)\int w\varphi\psi です。

(3) 2 つの固有関数 y1,y2y_1,y_2 はともに y(a)=0y(a)=0 を満たし、線形方程式の初期値問題は (y(a),y′(a))(y(a),y'(a)) で一意に定まる(定理 2.1[線形微分方程式系])ので、y2′(a)/y1′(a)y_2'(a)/y_1'(a) を比(y1′(a)≠0y_1'(a)\ne0、さもなくば y1≡0y_1\equiv0)とする定数倍の関係にあります。

定理 3.1(Sturm の比較定理)✓

p>0p>0 を C1C^1 級、g1,g2g_1,g_2 を連続で g1≤g2g_1\le g_2 とし、y,zy,z をそれぞれ (py′)′+g1y=0(py')'+g_1y=0、(pz′)′+g2z=0(pz')'+g_2z=0 の実数値の自明でない解とする。α<β\alpha<\beta が yy の隣り合う零点なら、zz は (α,β)(\alpha,\beta) に零点を持つか、あるいは g1=g2g_1=g_2([α,β][\alpha,\beta] 上)かつ zz は yy の定数倍である。

証明(定理 3.1)

零点では y′≠0y'\ne0 です(y(α)=y′(α)=0y(\alpha)=y'(\alpha)=0 なら一意性より y≡0y\equiv0)。yy を −1-1 倍して (α,β)(\alpha,\beta) で y>0y>0 としてよく、このとき y′(α)>0y'(\alpha)>0、y′(β)<0y'(\beta)<0 です。zz が (α,β)(\alpha,\beta) に零点をもたないと仮定して、符号を取り替えて z>0z>0 とします。

(p(y′z−yz′))′=(py′)′z−y(pz′)′=−g1yz+g2yz=(g2−g1)yz≥0\bigl(p(y'z-yz')\bigr)'=(py')'z-y(pz')'=-g_1yz+g_2yz=(g_2-g_1)yz\ge0

を [α,β][\alpha,\beta] で積分すると、左辺は

p(β)y′(β)z(β)−p(α)y′(α)z(α)≤0p(\beta)y'(\beta)z(\beta)-p(\alpha)y'(\alpha)z(\alpha)\le0

です(z(α),z(β)≥0z(\alpha),z(\beta)\ge0、y′(β)<0<y′(α)y'(\beta)<0<y'(\alpha))。一方、右辺 ∫(g2−g1)yz≥0\int(g_2-g_1)yz\ge0 なので、両方が 00 です。したがって (g2−g1)yz≡0(g_2-g_1)yz\equiv0 で、yz>0yz>0 より g1=g2g_1=g_2。また y′(β)z(β)=0y'(\beta)z(\beta)=0 から z(β)=0z(\beta)=0、同様に z(α)=0z(\alpha)=0 となり、zz と yy は同じ方程式で α\alpha で零なので定数倍です(一意性)。

系 3.2(零点の分離)✓

g1=g2g_1=g_2 とし、y1,y2y_1,y_2 を一次独立な 2 つの実解とする。y1y_1 の隣り合う零点の間には y2y_2 の零点がちょうど 1 つある。

証明(系 3.2)

定理 3.1 で g1=g2g_1=g_2、y=y1y=y_1、z=y2z=y_2 とすると、y2y_2 は y1y_1 の定数倍でない(一次独立)ので、y2y_2 は (α,β)(\alpha,\beta) に零点を持ちます。もし (α,β)(\alpha,\beta) に y2y_2 の零点が 2 つあれば、役割を入れ替えて、その間に y1y_1 の零点があることになり、α,β\alpha,\beta が隣り合う零点であることに反します。ゆえにちょうど 1 つです。

例 3.3(振動の速さの比較)

y′′+q(x)y=0y''+q(x)y=0(p=1p=1)で q(x)≥m2>0q(x)\ge m^2>0 なら、任意の自明でない解は長さ π/m\pi/m の任意の区間に零点を持ちます。z=sin⁡(m(x−c))z=\sin(m(x-c)) は z′′+m2z=0z''+m^2z=0 の解で、その隣り合う零点の間隔は π/m\pi/m です。定理 3.1 の y=zy=z(g1=m2g_1=m^2)、比較対象の g2=q≥m2g_2=q\ge m^2 を使います。qq が大きいほど速く振動する、という直観のとおりです。

比較定理は解が「どれだけ振動するか」を比べますが、固有値問題では、固有値 λ\lambda を動かしたとき零点の数がどう変わるかを知りたいのです。そのために、解の位相を追跡するPrüfer 変換を使います。

λ∈R\lambda\in\mathbb{R} を固定し、uu を Lu=λwuLu=\lambda wu、u(a)=0u(a)=0、p(a)u′(a)=1p(a)u'(a)=1 の解、v=pu′v=pu' とします。すると

u′=vp,v′=(q−λw)u(4.1)u'=\frac vp,\qquad v'=(q-\lambda w)u\tag{4.1}

です。(u,v)≠(0,0)(u,v)\ne(0,0)(さもなくば u≡0u\equiv0)なので、(u,v)(u,v) を極座標 (u,v)=r(sin⁡θ,cos⁡θ)(u,v)=r(\sin\theta,\cos\theta) で表したときの角度 θ\theta を追跡できます。

次の補題は、この角度 θ\theta がそれだけで閉じた 1 本の微分方程式を満たすことを述べます。ねらいは、uu の零点(sin⁡θ=0\sin\theta=0)を、θ\theta が π\pi の整数倍になる瞬間として数えられるようにすることです。

補題 4.1(Prüfer 変換)✓

F(x,θ,λ)=cos⁡2θp(x)+(λw(x)−q(x))sin⁡2θF(x,\theta,\lambda)=\dfrac{\cos^2\theta}{p(x)}+\bigl(\lambda w(x)-q(x)\bigr)\sin^2\theta とし、θ\theta を θ′=F(x,θ,λ)\theta'=F(x,\theta,\lambda)、θ(a)=0\theta(a)=0 の解とする。このとき θ\theta は [a,b][a,b] 全体で存在し、r(x)=exp⁡∫axsin⁡θcos⁡θ (1/p+q−λw) dsr(x)=\exp\int_a^x\sin\theta\cos\theta\,(1/p+q-\lambda w)\,ds に対して (u,v)=r(sin⁡θ,cos⁡θ)(u,v)=r(\sin\theta,\cos\theta) が成り立つ。

証明(補題 4.1)

FF は θ\theta について C∞C^\infty で ∣F∣≤sup⁡(1/p)+sup⁡∣λw−q∣|F|\le\sup(1/p)+\sup|\lambda w-q| と有界なので、系 6.2[解の存在と一意性] により θ\theta は [a,b][a,b] 全体で存在します。(u~,v~)=r(sin⁡θ,cos⁡θ)(\tilde u,\tilde v)=r(\sin\theta,\cos\theta) とおくと、r′/r=sin⁡θcos⁡θ(1/p+q−λw)r'/r=\sin\theta\cos\theta(1/p+q-\lambda w) と θ′=F\theta'=F を用いて

u~′=rcos⁡θ[sin⁡2θ(1p+q−λw)+cos⁡2θp+(λw−q)sin⁡2θ]=v~p,\tilde u'=r\cos\theta\Bigl[\sin^2\theta\Bigl(\tfrac1p+q-\lambda w\Bigr)+\tfrac{\cos^2\theta}{p}+(\lambda w-q)\sin^2\theta\Bigr]=\frac{\tilde v}{p},v~′=rsin⁡θ[cos⁡2θ(1p+q−λw)−cos⁡2θp−(λw−q)sin⁡2θ]=(q−λw)u~\tilde v'=r\sin\theta\Bigl[\cos^2\theta\Bigl(\tfrac1p+q-\lambda w\Bigr)-\tfrac{\cos^2\theta}{p}-(\lambda w-q)\sin^2\theta\Bigr]=(q-\lambda w)\tilde u

と計算できます。初期値 (u~,v~)(a)=(0,1)=(u,v)(a)(\tilde u,\tilde v)(a)=(0,1)=(u,v)(a) なので、(4.1) の解の一意性から (u~,v~)=(u,v)(\tilde u,\tilde v)=(u,v) です。

したがって u(x)=0u(x)=0 であることと sin⁡θ(x)=0\sin\theta(x)=0(θ(x)∈πZ\theta(x)\in\pi\mathbb{Z})であることは同値です。θ(x)=kπ\theta(x)=k\pi となる点では θ′=1/p>0\theta'=1/p>0 なので、θ\theta は各 kπk\pi を上向きにだけ横切ります。θ(a)=0\theta(a)=0 で θ′(a)>0\theta'(a)>0 なので、x>ax>a で θ(x)>0\theta(x)>0 であり、θ\theta が kπk\pi を越えたあと、それ以下に戻ることもありません。ゆえに

uu の (a,b)(a,b) における零点の数は #{k≥1:kπ<θ(b;λ)}\#\{k\ge1:k\pi<\theta(b;\lambda)\} に等しい。u(b)=0u(b)=0 となる(λ\lambda が固有値である)ことは θ(b;λ)∈{π,2π,… }\theta(b;\lambda)\in\{\pi,2\pi,\dots\} と同値で、θ(b;λ)=nπ\theta(b;\lambda)=n\pi のとき零点はちょうど n−1n-1 個。

次の定理の証明の方針です。λ\lambda を動かすと、右端 bb での角度 Θ(λ)\Theta(\lambda) が動きます。(i) Θ\Theta が λ\lambda とともに増えること、(ii) λ\lambda が十分負なら π\pi 未満であること、(iii) λ\lambda が十分大きければいくらでも大きくなること、を示し、Θ=nπ\Theta=n\pi となる λ\lambda を中間値の定理で拾います。(ii)(iii) で記号が多いのは、θ\theta の進む速さ θ′=F\theta'=F を、λ\lambda の符号に応じて上から、または下から押さえるためです。

定理 4.2(振動定理)✓

(SL) の固有値は、単純で実数の列 λ1<λ2<λ3<⋯\lambda_1<\lambda_2<\lambda_3<\cdots、λn→∞\lambda_n\to\infty をなし、これ以外に固有値はない。λn\lambda_n の固有関数は (a,b)(a,b) にちょうど n−1n-1 個の零点を持つ。

証明(定理 4.2)

関数 Θ(λ)=θ(b;λ)\Theta(\lambda)=\theta(b;\lambda) を調べます。

(i) Θ\Theta は連続かつ狭義単調増加。 FF は (θ,λ)(\theta,\lambda) について C1C^1 級なので、パラメータに関する微分可能依存性(定理 8.1[解の存在と一意性] に λ′=0\lambda'=0 を連立する)により、ϑ=∂θ/∂λ\vartheta=\partial\theta/\partial\lambda は存在して ϑ′=Fθϑ+wsin⁡2θ\vartheta'=F_\theta\vartheta+w\sin^2\theta、ϑ(a)=0\vartheta(a)=0 を満たします。これは 1 階線形方程式なので(定理 4.2[常微分方程式の初等解法])

ϑ(x)=∫axexp⁡(∫sxFθ) w(s)sin⁡2θ(s) ds>0(x>a)\vartheta(x)=\int_a^x\exp\Bigl(\int_s^xF_\theta\Bigr)\,w(s)\sin^2\theta(s)\,ds>0\qquad(x>a)

です(θ(a)=0\theta(a)=0、θ′(a)>0\theta'(a)>0 より sin⁡2θ>0\sin^2\theta>0 が aa の右近傍にある)。よって Θ′(λ)=ϑ(b)>0\Theta'(\lambda)=\vartheta(b)>0 です。

(ii) λ→−∞\lambda\to-\infty で Θ<π\Theta<\pi。 δ∈(0,π/2)\delta\in(0,\pi/2) をとり、m=min⁡wm=\min w、P=min⁡pP=\min p、μ=max⁡∣q∣\mu=\max|q| とおきます。m∣λ∣>μ+1/(Psin⁡2δ)m|\lambda|>\mu+1/(P\sin^2\delta) なる λ<0\lambda<0 では、θ\theta が最初に δ\delta に達する点 x1x_1 があれば θ′(x1)=cos⁡2δ/p+(λw−q)sin⁡2δ≤1/P−(m∣λ∣−μ)sin⁡2δ<0\theta'(x_1)=\cos^2\delta/p+(\lambda w-q)\sin^2\delta\le1/P-(m|\lambda|-\mu)\sin^2\delta<0 ですが、θ\theta が初めて δ\delta に達するなら θ′(x1)≥0\theta'(x_1)\ge0 のはずで矛盾です。ゆえに θ<δ<π\theta<\delta<\pi で Θ(λ)<π\Theta(\lambda)<\pi です。

(iii) λ→+∞\lambda\to+\infty で Θ→∞\Theta\to\infty。 自然数 NN をとり、λm≥μ\lambda m\ge\mu とすれば F≥cos⁡2θ/p≥0F\ge\cos^2\theta/p\ge0 なので θ\theta は単調非減少です。小さな ε∈(0,π/4)\varepsilon\in(0,\pi/4) をとります。θ\theta が kπk\pi の ε\varepsilon 近傍にあるとき cos⁡2θ≥1/2\cos^2\theta\ge1/2 なので θ′≥1/(2max⁡p)\theta'\ge1/(2\max p)、その近傍を通り抜ける時間は 4εmax⁡p4\varepsilon\max p 以下です。近傍の外では sin⁡2θ≥(2ε/π)2\sin^2\theta\ge(2\varepsilon/\pi)^2 で θ′≥(λm−μ)(2ε/π)2\theta'\ge(\lambda m-\mu)(2\varepsilon/\pi)^2 なので、1 つの隙間 π\pi を通る時間は π3/(4ε2(λm−μ))\pi^3/(4\varepsilon^2(\lambda m-\mu)) 以下です。θ\theta が 00 から NπN\pi に達する全時間は、近傍で (N+1)⋅4εmax⁡p(N+1)\cdot4\varepsilon\max p、隙間で Nπ3/(4ε2(λm−μ))N\pi^3/(4\varepsilon^2(\lambda m-\mu)) 以下ですから、ε\varepsilon を前者が (b−a)/2(b-a)/2 以下になるよう、次に λ\lambda を後者が (b−a)/2(b-a)/2 未満になるよう選べば、θ\theta は bb までに NπN\pi に達します。Θ(λ)≥Nπ\Theta(\lambda)\ge N\pi です。

結論。 (i)–(iii) と中間値の定理により、各 n≥1n\ge1 に対し Θ(λ)=nπ\Theta(\lambda)=n\pi となる λ=λn\lambda=\lambda_n がただ 1 つあり、Θ\Theta の増加性から λ1<λ2<⋯\lambda_1<\lambda_2<\cdots です。固有値はこれらに限られます。λn≤Λ\lambda_n\le\Lambda が無限個あれば nπ=Θ(λn)≤Θ(Λ)<∞n\pi=\Theta(\lambda_n)\le\Theta(\Lambda)<\infty に反するので λn→∞\lambda_n\to\infty。単純性は 命題 2.2、零点の個数は上の枠内の記述です。

1πλ₁2πλ₂3πλ₃4πλ₄λ →θ(b; λ)
図 1. p = w = 1、q = 0、[a, b] = [0, 1] の場合の Prüfer 角 θ(b; λ)。λ について単調増加で、水平線 nπ と交わる λ が固有値 λₙ = (nπ)²。

この場合 (u,v)=(sin⁡(λ x)/λ, cos⁡(λ x))(u,v)=(\sin(\sqrt\lambda\,x)/\sqrt\lambda,\ \cos(\sqrt\lambda\,x)) で、(u,v)=r(sin⁡θ,cos⁡θ)(u,v)=r(\sin\theta,\cos\theta) ですから、θ(x;λ)\theta(x;\lambda) は複素数 cos⁡(λ x)+i sin⁡(λ x)/λ\cos(\sqrt\lambda\,x)+i\,\sin(\sqrt\lambda\,x)/\sqrt\lambda の偏角を、x=0x=0 で 00 になるように xx に沿って連続につないだものです。Θ(λ)\Theta(\lambda) はその x=1x=1 での値で、固有値は λn=(nπ)2\lambda_n=(n\pi)^2 です。

以下、00 は (SL) の固有値でないと仮定します(一般の場合は §6 の最後で qq を q−cwq-cw に取り替えて帰着させます)。

u1,u2u_1,u_2 を Lui=0Lu_i=0 の解で、u1(a)=0u_1(a)=0、u1′(a)=1/p(a)u_1'(a)=1/p(a) および u2(b)=0u_2(b)=0、u2′(b)=1/p(b)u_2'(b)=1/p(b) を満たすものとします。u1,u2u_1,u_2 は一次独立です(u1(b)=0u_1(b)=0 だと u1u_1 が λ=0\lambda=0 の固有関数になる)。

W=p (u1u2′−u1′u2)W=p\,(u_1u_2'-u_1'u_2) は定数で、00 ではありません。実際 W′=u1(pu2′)′−(pu1′)′u2=u1qu2−qu1u2=0W'=u_1(pu_2')'-(pu_1')'u_2=u_1qu_2-qu_1u_2=0 で、W=W(a)=−p(a)u1′(a)u2(a)=−u2(a)W=W(a)=-p(a)u_1'(a)u_2(a)=-u_2(a)、u2(a)=0u_2(a)=0 だと u2u_2 が固有関数になってしまうので W≠0W\ne0 です。

次の GG は、Ly=fLy=f を解く公式を作るために置きます。x≤tx\le t の側では左端の条件を満たす u1u_1、x≥tx\ge t の側では右端の条件を満たす u2u_2 を使い、x=tx=t で貼り合わせた形です。この形で本当に解が得られることは、すぐ後の定理で確かめます。

定義 5.1(Green 関数)↗

G(x,t)=−1W u1(min⁡{x,t}) u2(max⁡{x,t})(x,t∈[a,b])G(x,t)=-\frac{1}{W}\,u_1(\min\{x,t\})\,u_2(\max\{x,t\})\qquad(x,t\in[a,b])

を (SL) の(λ=0\lambda=0 での)Green 関数という。GG は [a,b]2[a,b]^2 上で連続かつ実数値で対称:G(x,t)=G(t,x)G(x,t)=G(t,x)。

定理 5.2(Green 関数による境界値問題の解)✓

f∈C[a,b]f\in C[a,b] とする。y(x)=∫abG(x,t)f(t) dty(x)=\displaystyle\int_a^bG(x,t)f(t)\,dt は Ly=fLy=f、y(a)=y(b)=0y(a)=y(b)=0 を満たす C2C^2 級の唯一の解である。

証明(定理 5.2)

定義により

y(x)=−1W[u2(x)∫axu1f dt+u1(x)∫xbu2f dt]y(x)=-\frac1W\Bigl[u_2(x)\int_a^xu_1f\,dt+u_1(x)\int_x^bu_2f\,dt\Bigr]

です。微分すると、積分の上端・下端から出る項 u2u1f−u1u2fu_2u_1f-u_1u_2f が打ち消し合うので

y′(x)=−1W[u2′(x)∫axu1f+u1′(x)∫xbu2f]y'(x)=-\frac1W\Bigl[u_2'(x)\int_a^xu_1f+u_1'(x)\int_x^bu_2f\Bigr]

です。もう一度 pp を掛けて微分すると((pui′)′=qui(pu_i')'=qu_i)

(py′)′=−1W[qu2∫axu1f+qu1∫xbu2f+p(u2′u1−u1′u2)f]=qy−f(py')'=-\frac1W\Bigl[qu_2\int_a^xu_1f+qu_1\int_x^bu_2f+p(u_2'u_1-u_1'u_2)f\Bigr]=qy-f

です。ゆえに Ly=−(py′)′+qy=fLy=-(py')'+qy=f です。y(a)=−1Wu1(a)∫abu2f=0y(a)=-\frac1Wu_1(a)\int_a^bu_2f=0、y(b)=0y(b)=0 も同様です。一意性:2 つの解の差は Ly=0Ly=0、y(a)=y(b)=0y(a)=y(b)=0 を満たし、00 は固有値でないので 00 です。

例 5.3(−y″ = f の Green 関数)

p=w=1p=w=1、q=0q=0、[a,b]=[0,ℓ][a,b]=[0,\ell] では u1=xu_1=x、u2=x−ℓu_2=x-\ell、W=x⋅1−1⋅(x−ℓ)=ℓW=x\cdot1-1\cdot(x-\ell)=\ell で

G(x,t)=min⁡{x,t}(ℓ−max⁡{x,t})ℓG(x,t)=\frac{\min\{x,t\}\bigl(\ell-\max\{x,t\}\bigr)}{\ell}

です。たとえば f≡1f\equiv1 なら y=∫0ℓG dt=x(ℓ−x)/2y=\int_0^\ell G\,dt=x(\ell-x)/2 で、確かに −y′′=1-y''=1、y(0)=y(ℓ)=0y(0)=y(\ell)=0 です。G(x,⋅)G(x,\cdot) は、xx に置いた単位の力に対する弦(張力 1)の静的な変位を表します。

重み ww つきの L2L^2 空間 H=L2((a,b);w dx)H=L^2((a,b);w\,dx)(内積 ⟨f,g⟩w=∫wfgˉ dx\langle f,g\rangle_w=\int wf\bar g\,dx)を考えます。

定理 6.1(固有関数展開の完備性)✓

(SL) の固有関数を φ1,φ2,…\varphi_1,\varphi_2,\dots(φn\varphi_n は λn\lambda_n の実数値固有関数で ∥φn∥w=1\|\varphi_n\|_w=1)とすると、{φn}n≥1\{\varphi_n\}_{n\ge1} は HH の正規直交基底である。すなわち任意の f∈Hf\in H について

f=∑n=1∞⟨f,φn⟩w φn(H の意味で),∥f∥w2=∑n∣⟨f,φn⟩w∣2f=\sum_{n=1}^{\infty}\langle f,\varphi_n\rangle_w\,\varphi_n\quad(H\text{ の意味で}),\qquad\|f\|_w^2=\sum_n|\langle f,\varphi_n\rangle_w|^2

が成り立つ。

証明の方針です。Green 関数を核とする積分作用素 KK を作ると、KK は LL の逆にあたります。KK はコンパクトな自己共役作用素なので、Hilbert–Schmidt の定理から固有ベクトルの正規直交系が得られ、KK の核(Kf=0Kf=0 となる ff の全体)が {0}\{0\} ならそれが HH 全体の基底になります。最後に、KK の固有ベクトルが (SL) の固有関数と同じものだと確かめます。途中の Ker⁡K={0}\operatorname{Ker}K=\{0\} の部分は、Kf=0Kf=0 の式を微分して連立方程式に直し、h=wfh=wf がほとんど至るところ 00 であることを導いています。

証明(定理 6.1)

帰着。 c∈Rc\in\mathbb{R} に対し qq を q−cwq-cw に取り替えると、Ly=λwyLy=\lambda wy は (L−cw)y=(λ−c)wy(L-cw)y=(\lambda-c)wy となるだけで、固有関数は変わらず固有値が cc ずれます。定理 4.2 により固有値は下に有界なので、c<λ1c<\lambda_1 ととれば新しい問題の固有値はすべて正で、00 は固有値ではありません。よって §5 の仮定を満たすとしてよいです。

積分作用素。 (Kf)(x)=∫abG(x,t)f(t)w(t) dt(Kf)(x)=\int_a^bG(x,t)f(t)w(t)\,dt とします。U:H→L2(a,b)U:H\to L^2(a,b)、Uf=wfUf=\sqrt wf はユニタリで、UKU−1UKU^{-1} は積分核 k(x,t)=w(x) G(x,t)w(t)k(x,t)=\sqrt{w(x)}\,G(x,t)\sqrt{w(t)} をもつ積分作用素です。kk は [a,b]2[a,b]^2 上で連続・実数値・対称なので L2([a,b]2)L^2([a,b]^2) に属し、定理 6.4[コンパクト作用素・Hilbert–Schmidt 作用素・トレースクラス] により Hilbert–Schmidt 作用素、命題 6.3[コンパクト作用素・Hilbert–Schmidt 作用素・トレースクラス] の 3 によりコンパクトで、核の対称性から自己共役です。したがって KK は HH 上のコンパクト自己共役作用素です。

Ker⁡K={0}\operatorname{Ker}K=\{0\}。 Kf=0Kf=0 とし、h=wf∈L1h=wf\in L^1 とおきます。A(x)=∫axu1hA(x)=\int_a^xu_1h、B(x)=∫xbu2hB(x)=\int_x^bu_2h(絶対連続)に対し、Kf(x)=−1W[u2A+u1B]=0Kf(x)=-\frac1W[u_2A+u_1B]=0 がすべての xx で成り立ちます。微分(a.e.)すると u2′A+u1′B+(u2u1−u1u2)h=u2′A+u1′B=0u_2'A+u_1'B+(u_2u_1-u_1u_2)h=u_2'A+u_1'B=0 で、これは連続関数なので全 xx で成り立ちます。連立方程式

u2A+u1B=0,u2′A+u1′B=0u_2A+u_1B=0,\qquad u_2'A+u_1'B=0

の係数行列式は u2u1′−u1u2′=−W/p≠0u_2u_1'-u_1u_2'=-W/p\ne0 なので A=B=0A=B=0 です。A′=u1h=0A'=u_1h=0、B′=−u2h=0B'=-u_2h=0(a.e.)で、u1,u2u_1,u_2 に共通の零点はない(一次独立な解は共通の零点を持たない)ので h=0h=0 a.e.、w>0w>0 から f=0f=0 です。

固有関数と K の固有ベクトル。 定理 4.2[コンパクト作用素・Hilbert–Schmidt 作用素・トレースクラス] の 3 により、H=Ker⁡K⊕span⁡‾{en}H=\operatorname{Ker}K\oplus\overline{\operatorname{span}}\{e_n\}(ene_n は KK の 00 でない固有値の固有ベクトル)で、Ker⁡K=0\operatorname{Ker}K=0 から {en}\{e_n\} は完全です。Ke=μeKe=\mu e(μ≠0\mu\ne0)なら、KK の像は連続関数なので e=μ−1Kee=\mu^{-1}Ke は連続で、したがって 定理 5.2 を f=μ−1wef=\mu^{-1}we に使えて e∈C2e\in C^2、Le=μ−1weLe=\mu^{-1}we、e(a)=e(b)=0e(a)=e(b)=0、すなわち ee は固有値 λ=1/μ\lambda=1/\mu の (SL) の固有関数です。逆に (SL) の固有関数 φ\varphi(固有値 λ≠0\lambda\ne0)に対し Lφ=λwφL\varphi=\lambda w\varphi なので 定理 5.2 の一意性から φ=λKφ\varphi=\lambda K\varphi です。こうして (SL) の固有関数と KK の固有ベクトルは対応します。固有値は単純(命題 2.2)で、λn\lambda_n の固有関数は規格化した φn\varphi_n だけなので、{φn}\{\varphi_n\} が HH の正規直交基底です。

命題 6.2(正弦関数系の完全性)✓

ℓ>0\ell>0 とする。−y′′=λy-y''=\lambda y、y(0)=y(ℓ)=0y(0)=y(\ell)=0 の固有値は λn=(nπ/ℓ)2\lambda_n=(n\pi/\ell)^2(n=1,2,…n=1,2,\dots)で、φn(x)=2/ℓ sin⁡(nπx/ℓ)\varphi_n(x)=\sqrt{2/\ell}\,\sin(n\pi x/\ell) は λn\lambda_n の規格化された固有関数である。{φn}n≥1\{\varphi_n\}_{n\ge1} は L2(0,ℓ)L^2(0,\ell) の正規直交基底である。

証明(命題 6.2)

これは (SL) で p=w=1p=w=1、q=0q=0、[a,b]=[0,ℓ][a,b]=[0,\ell] とした場合です。(SL) の固有値は実数なので(命題 2.2)、λ∈R\lambda\in\mathbb{R} を考えれば十分です。λ\lambda を固定し、sλs_\lambda を λ>0\lambda>0 なら sin⁡(λ x)/λ\sin(\sqrt\lambda\,x)/\sqrt\lambda、λ=0\lambda=0 なら xx、λ<0\lambda<0 なら sinh⁡(−λ x)/−λ\sinh(\sqrt{-\lambda}\,x)/\sqrt{-\lambda} と置くと、sλs_\lambda は −y′′=λy-y''=\lambda y、y(0)=0y(0)=0、y′(0)=1y'(0)=1 を満たします。yy が −y′′=λy-y''=\lambda y、y(0)=0y(0)=0 を満たせば、y−y′(0)sλy-y'(0)s_\lambda は同じ方程式の解で初期値 (0,0)(0,0) をもつので、1 階系 (y,y′)′=(y′,−λy)(y,y')'=(y',-\lambda y) の解の一意性(定理 2.1[線形微分方程式系])から恒等的に 00、すなわち y=y′(0)sλy=y'(0)s_\lambda です。したがって λ\lambda が固有値であることは sλ(ℓ)=0s_\lambda(\ell)=0 と同値です。λ≤0\lambda\le0 では sλ(ℓ)=ℓs_\lambda(\ell)=\ell または sinh⁡(−λ ℓ)/−λ\sinh(\sqrt{-\lambda}\,\ell)/\sqrt{-\lambda} で正なので固有値ではありません。λ>0\lambda>0 では sin⁡(λ ℓ)=0\sin(\sqrt\lambda\,\ell)=0、すなわち λ ℓ=nπ\sqrt\lambda\,\ell=n\pi(n≥1n\ge1)のときに限り固有値です。固有関数は sin⁡(nπx/ℓ)\sin(n\pi x/\ell) の定数倍で、∫0ℓsin⁡2(nπx/ℓ) dx=∫0ℓ1−cos⁡(2nπx/ℓ)2 dx=ℓ2\int_0^\ell\sin^2(n\pi x/\ell)\,dx=\int_0^\ell\frac{1-\cos(2n\pi x/\ell)}2\,dx=\frac\ell2 なので φn\varphi_n は規格化されています。固有値は小さい順に λ1<λ2<⋯\lambda_1<\lambda_2<\cdots と並ぶので、定理 6.1 により {φn}\{\varphi_n\} は L2(0,ℓ)L^2(0,\ell) の正規直交基底です。

例 6.3(Fourier 正弦級数の完全性)

p=w=1p=w=1、q=0q=0、[a,b]=[0,ℓ][a,b]=[0,\ell] では、命題 6.2 のとおり −y′′=λy-y''=\lambda y、y(0)=y(ℓ)=0y(0)=y(\ell)=0 の固有値は λn=(nπ/ℓ)2\lambda_n=(n\pi/\ell)^2、規格化した固有関数は φn=2/ℓ sin⁡(nπx/ℓ)\varphi_n=\sqrt{2/\ell}\,\sin(n\pi x/\ell) で、{φn}\{\varphi_n\} は L2(0,ℓ)L^2(0,\ell) の正規直交基底です。つまり任意の f∈L2(0,ℓ)f\in L^2(0,\ell) は Fourier 正弦級数で展開でき、Parseval の等式が成り立ちます。三角関数系の完全性は、微分方程式の構造から出てきました。

注意 6.4(作用素論との関係)

p=w=1p=w=1 のとき (SL) は区間上の 1 次元 Schrödinger 作用素 H=−d2/dx2+qH=-d^2/dx^2+q(Dirichlet 境界条件)の固有値問題です。証明の核心は、HH の逆 K=H−1K=H^{-1} がコンパクト自己共役作用素で、固有値がコンパクト作用素の固有値の逆数として離散的に並ぶ、という点でした。HH 自身は非有界な自己共役作用素ですが、レゾルベント (H−z)−1(H-z)^{-1} がコンパクトなので、そのスペクトルは固有値だけからなります(スペクトルの分類 の言葉では、本質スペクトルが空)。区間が無限に延びる場合は、この議論がそのままでは使えず、連続スペクトルが現れます。

7. 変数分離法:弦の振動と熱伝導

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冒頭の動機に戻ります。区間 (0,ℓ)(0,\ell) の両端で 00 になる境界条件のもとで、偏微分方程式 utt=uxxu_{tt}=u_{xx}(弦の振動)と ut=uxxu_t=u_{xx}(熱伝導)を、変数分離法(u=y(x)T(t)u=y(x)T(t) とおく)で解きます。y′′=−λyy''=-\lambda y、y(0)=y(ℓ)=0y(0)=y(\ell)=0 の固有値・固有関数が、例 6.3 の λn=kn2\lambda_n=k_n^2、kn=nπℓk_n=\frac{n\pi}\ell、φn=2/ℓ sin⁡knx\varphi_n=\sqrt{2/\ell}\,\sin k_nx です。以下、k=knk=k_n と略記し、ψn=2/ℓcos⁡knx\psi_n=\sqrt{2/\ell}\cos k_nx とします({ψn}n≥1\{\psi_n\}_{n\ge1} は L2(0,ℓ)L^2(0,\ell) の正規直交系です。∫0ℓcos⁡knxcos⁡kmx dx\int_0^\ell\cos k_nx\cos k_mx\,dx は n≠mn\ne m で 00、n=mn=m で ℓ2\frac\ell2)。波の速さが cc の方程式 utt=c2uxxu_{tt}=c^2u_{xx} は、時間を ctct に取り替えて同じ形になります。

まず、係数の減衰を評価する補題です。級数を項ごとに微分して utt=uxxu_{tt}=u_{xx} を確かめるには、微分で出る n2n^2 倍の因子に負けないほど、係数 ana_n が速く小さくなる必要があります。補題は、初期形 u0u_0 がなめらかなほど ana_n が速く減ることを、部分積分で示します。これにより級数が一様収束し、項別微分が許されます。

補題 7.1(正弦係数の減衰)✓

u0∈C2[0,ℓ]u_0\in C^2[0,\ell] で u0(0)=u0(ℓ)=0u_0(0)=u_0(\ell)=0 なら、an=2ℓ∫0ℓu0sin⁡knx dxa_n=\frac2\ell\int_0^\ell u_0\sin k_nx\,dx は an=−1kn22ℓ δna_n=-\frac1{k_n^2}\sqrt{\frac2\ell}\,\delta_n(δn=⟨u0′′,φn⟩\delta_n=\langle u_0'',\varphi_n\rangle、∑δn2≤∥u0′′∥22\sum\delta_n^2\le\|u_0''\|_2^2)を満たし、∑n∣an∣<∞\sum_n|a_n|<\infty である。さらに u0∈C3[0,ℓ]u_0\in C^3[0,\ell] で u0′′(0)=u0′′(ℓ)=0u_0''(0)=u_0''(\ell)=0 なら、an=−1kn32ℓ γna_n=-\frac1{k_n^3}\sqrt{\frac2\ell}\,\gamma_n(γn=⟨u0′′′,ψn⟩\gamma_n=\langle u_0''',\psi_n\rangle、∑γn2≤∥u0′′′∥22\sum\gamma_n^2\le\|u_0'''\|_2^2)で、∑nn2∣an∣<∞\sum_nn^2|a_n|<\infty である。

証明(補題 7.1)

部分積分を使います。u0(0)=u0(ℓ)=0u_0(0)=u_0(\ell)=0 なので ∫0ℓu0sin⁡kx dx=[−u0cos⁡kxk]0ℓ+1k∫0ℓu0′cos⁡kx dx=1k∫0ℓu0′cos⁡kx dx\int_0^\ell u_0\sin kx\,dx=\Bigl[-\frac{u_0\cos kx}k\Bigr]_0^\ell+\frac1k\int_0^\ell u_0'\cos kx\,dx=\frac1k\int_0^\ell u_0'\cos kx\,dx です。同様に sin⁡kℓ=sin⁡nπ=0\sin k\ell=\sin n\pi=0 から ∫0ℓu0′cos⁡kx dx=−1k∫0ℓu0′′sin⁡kx dx\int_0^\ell u_0'\cos kx\,dx=-\frac1k\int_0^\ell u_0''\sin kx\,dx なので、an=−2ℓk2∫u0′′sin⁡kx dx=−1k22ℓ δna_n=-\frac2{\ell k^2}\int u_0''\sin kx\,dx=-\frac1{k^2}\sqrt{\frac2\ell}\,\delta_n です。ベッセルの不等式(定理 6.2[Hilbert 空間の基礎])から ∑δn2≤∥u0′′∥22\sum\delta_n^2\le\|u_0''\|_2^2 で、Cauchy–Schwarz の不等式から ∑∣an∣≤C(∑1n4)1/2(∑δn2)1/2<∞\sum|a_n|\le C\bigl(\sum\frac1{n^4}\bigr)^{1/2}\bigl(\sum\delta_n^2\bigr)^{1/2}<\infty です(CC は ℓ\ell だけで決まる定数)。後半:u0′′(0)=u0′′(ℓ)=0u_0''(0)=u_0''(\ell)=0 なら ∫0ℓu0′′sin⁡kx dx=[−u0′′cos⁡kxk]0ℓ+1k∫0ℓu0′′′cos⁡kx dx=1k∫0ℓu0′′′cos⁡kx dx\int_0^\ell u_0''\sin kx\,dx=\Bigl[-\frac{u_0''\cos kx}k\Bigr]_0^\ell+\frac1k\int_0^\ell u_0'''\cos kx\,dx=\frac1k\int_0^\ell u_0'''\cos kx\,dx です。したがって an=−1k32ℓ γna_n=-\frac1{k^3}\sqrt{\frac2\ell}\,\gamma_n で、∑n2∣an∣≤C′∑∣γn∣n≤C′(∑1n2)1/2(∑γn2)1/2<∞\sum n^2|a_n|\le C'\sum\frac{|\gamma_n|}n\le C'\bigl(\sum\frac1{n^2}\bigr)^{1/2}\bigl(\sum\gamma_n^2\bigr)^{1/2}<\infty です。

定理 7.2(弦の振動の変数分離解)✓

u0∈C3[0,ℓ]u_0\in C^3[0,\ell] で u0(0)=u0(ℓ)=u0′′(0)=u0′′(ℓ)=0u_0(0)=u_0(\ell)=u_0''(0)=u_0''(\ell)=0、u1∈C2[0,ℓ]u_1\in C^2[0,\ell] で u1(0)=u1(ℓ)=0u_1(0)=u_1(\ell)=0 とする。係数を an=2ℓ∫0ℓu0sin⁡knx dxa_n=\frac2\ell\int_0^\ell u_0\sin k_nx\,dx、bn=2ℓ∫0ℓu1sin⁡knx dxb_n=\frac2\ell\int_0^\ell u_1\sin k_nx\,dx として

u(x,t)=∑n=1∞(ancos⁡knt+bnknsin⁡knt)sin⁡knxu(x,t)=\sum_{n=1}^\infty\Bigl(a_n\cos k_nt+\frac{b_n}{k_n}\sin k_nt\Bigr)\sin k_nx

は [0,ℓ]×R[0,\ell]\times\mathbb{R} 上で C2C^2 級で、utt=uxxu_{tt}=u_{xx}、u(0,t)=u(ℓ,t)=0u(0,t)=u(\ell,t)=0、u(x,0)=u0(x)u(x,0)=u_0(x)、ut(x,0)=u1(x)u_t(x,0)=u_1(x) を満たす。さらに、t≥0t\ge0 でこれらを満たす C2C^2 級の解は uu だけである。

証明(定理 7.2)

係数. 補題 7.1 から ∑n2∣an∣<∞\sum n^2|a_n|<\infty、∑∣an∣<∞\sum|a_n|<\infty です。u1u_1 には同じ補題の前半(u0→u1u_0\to u_1)を適用して bn=−1k22ℓ ⟨u1′′,φn⟩b_n=-\frac1{k^2}\sqrt{\frac2\ell}\,\langle u_1'',\varphi_n\rangle で、∑n∣bn∣≤C∑∣⟨u1′′,φn⟩∣n<∞\sum n|b_n|\le C\sum\frac{|\langle u_1'',\varphi_n\rangle|}n<\infty です。

項別微分. 級数の各項の x,tx,t に関する 2 階までの偏導関数は、絶対値が k2∣an∣+k∣bn∣k^2|a_n|+k|b_n| 以下(たとえば ∂x2\partial_x^2 の項は k2∣ancos⁡kt+bnksin⁡kt∣≤k2∣an∣+k∣bn∣k^2\bigl|a_n\cos kt+\frac{b_n}k\sin kt\bigr|\le k^2|a_n|+k|b_n|、∂t∂x\partial_t\partial_x の項も同様。0 階・1 階の項は k≥1k\ge1 のときこの量で抑えられ、k<1k<1 となる有限個の nn は収束に影響しない)です。∑(k2∣an∣+k∣bn∣)<∞\sum(k^2|a_n|+k|b_n|)<\infty なので、M 判定法(系 6.4[関数列と一様収束])と項別微分(定理 7.3[関数列と一様収束])により、uu は C2C^2 級で偏導関数は項別に計算できます。∂t2\partial_t^2 の項と ∂x2\partial_x^2 の項はどちらも −k2(⋯ )sin⁡kx-k^2(\cdots)\sin kx で一致するので utt=uxxu_{tt}=u_{xx} です。sin⁡0=sin⁡knℓ=0\sin0=\sin k_n\ell=0 から境界条件も成り立ちます。

初期条件. u(x,0)=∑ansin⁡knxu(x,0)=\sum a_n\sin k_nx は一様収束で連続関数 vv に収束し、その正弦係数は ana_n です(一様収束は項別積分できる)。u0u_0 も同じ正弦係数をもちます。p=w=1p=w=1、q=0q=0 の (SL) では、λ≤0\lambda\le0 だと y=αx+βy=\alpha x+\beta または αsinh⁡(−λ x)+βcosh⁡(−λ x)\alpha\sinh(\sqrt{-\lambda}\,x)+\beta\cosh(\sqrt{-\lambda}\,x) が両端で 00 になるのは y=0y=0 だけで、λ>0\lambda>0 だと y(0)=0y(0)=0 から y=αsin⁡(λ x)y=\alpha\sin(\sqrt\lambda\,x)、y(ℓ)=0y(\ell)=0 から λ ℓ∈πN\sqrt\lambda\,\ell\in\pi\mathbb{N} なので、固有値は kn2k_n^2、規格化した固有関数は φn\varphi_n だけです。したがって {φn}\{\varphi_n\} が完全(定理 6.1)であることから u0−v∈L2u_0-v\in L^2 はすべての φn\varphi_n と直交し、u0=vu_0=v ほとんど至るところ、連続関数なので至るところです。同様に ut(x,0)=∑bnsin⁡knx=u1u_t(x,0)=\sum b_n\sin k_nx=u_1 です。

一意性. 二つの解の差は、初期値・境界値が 00 の波動方程式の解で、系 5.2[波動方程式] を U=(0,ℓ)U=(0,\ell)(n=1n=1)に適用すると 00 です。

例 7.3(基準振動の重ね合わせ)

u0(x)=14(3sin⁡πxℓ−sin⁡3πxℓ)=sin⁡3πxℓu_0(x)=\frac14\bigl(3\sin\frac{\pi x}\ell-\sin\frac{3\pi x}\ell\bigr)=\sin^3\frac{\pi x}\ell、u1=0u_1=0 は仮定を満たします(u0′′=π24ℓ2(−3sin⁡πxℓ+9sin⁡3πxℓ)u_0''=\frac{\pi^2}{4\ell^2}\bigl(-3\sin\frac{\pi x}\ell+9\sin\frac{3\pi x}\ell\bigr) は端点で 00)。a1=34a_1=\frac34、a3=−14a_3=-\frac14、他は 00 なので

u(x,t)=34cos⁡πtℓ sin⁡πxℓ−14cos⁡3πtℓ sin⁡3πxℓu(x,t)=\frac34\cos\frac{\pi t}\ell\,\sin\frac{\pi x}\ell-\frac14\cos\frac{3\pi t}\ell\,\sin\frac{3\pi x}\ell

です。基本振動(振動数 πℓ\frac\pi\ell)と 3 倍の倍音が重なり、t=0t=0 で u=sin⁡3πxℓu=\sin^3\frac{\pi x}\ell、周期 2ℓ2\ell で元に戻ります。端点で u0′′≠0u_0''\ne0 となる初期形(たとえば u0=x(ℓ−x)u_0=x(\ell-x))では、an∼n−3a_n\sim n^{-3} で ∑n2∣an∣=∞\sum n^2|a_n|=\infty となり、この証明の項別微分が使えません。実際、u0=x(ℓ−x)u_0=x(\ell-x) を奇関数で周期 2ℓ2\ell に拡張した関数 GG は端点で 22 階微分が跳び(G′′=−2G''=-2 と +2+2)、d’Alembert の公式(定理 2.1[波動方程式])の解 12(G(x+t)+G(x−t))\frac12\bigl(G(x+t)+G(x-t)\bigr) は、跳びの点を特性線に沿って運ぶので C2C^2 級になりません。

熱方程式は同じ固有関数を使い、時間部分が cos⁡,sin⁡\cos,\sin の代わりに指数関数になります。

定理 7.4(熱伝導の変数分離解)✓

u0∈C2[0,ℓ]u_0\in C^2[0,\ell] で u0(0)=u0(ℓ)=0u_0(0)=u_0(\ell)=0 とし、an=2ℓ∫0ℓu0sin⁡knx dxa_n=\frac2\ell\int_0^\ell u_0\sin k_nx\,dx とおく。

u(x,t)=∑n=1∞an e−kn2tsin⁡knxu(x,t)=\sum_{n=1}^\infty a_n\,e^{-k_n^2t}\sin k_nx

は [0,ℓ]×[0,∞)[0,\ell]\times[0,\infty) で連続、[0,ℓ]×(0,∞)[0,\ell]\times(0,\infty) で C∞C^\infty 級で、ut=uxxu_t=u_{xx}、u(0,t)=u(ℓ,t)=0u(0,t)=u(\ell,t)=0、u(x,0)=u0(x)u(x,0)=u_0(x) を満たす。さらに、u∈C2,1((0,ℓ)×(0,T])∩C([0,ℓ]×[0,T])u\in C^{2,1}((0,\ell)\times(0,T])\cap C([0,\ell]\times[0,T]) でこれらを満たすものは、各 T>0T>0 で uu だけである。

証明(定理 7.4)

補題 7.1 から ∑∣an∣<∞\sum|a_n|<\infty で、∣ane−k2tsin⁡kx∣≤∣an∣|a_ne^{-k^2t}\sin kx|\le|a_n| から級数は [0,ℓ]×[0,∞)[0,\ell]\times[0,\infty) で一様収束し、uu は連続です。u(x,0)=∑ansin⁡knx=u0u(x,0)=\sum a_n\sin k_nx=u_0 は、定理 7.2 の証明の初期条件と同じ議論(完全性)です。t≥t0>0t\ge t_0>0 では、∂tp∂xq\partial_t^p\partial_x^q の項の絶対値は k2p+q∣an∣e−k2t0≤Cn2p+qe−π2n2t0/ℓ2∣an∣k^{2p+q}|a_n|e^{-k^2t_0}\le Cn^{2p+q}e^{-\pi^2n^2t_0/\ell^2}|a_n| で、nre−cn2n^re^{-cn^2} は nn について有界(∑n∣an∣<∞\sum_n|a_n|<\infty なので級数全体が収束)なので、任意階の偏導関数の項別級数が一様収束し、M 判定法(系 6.4[関数列と一様収束])と項別微分(定理 7.3[関数列と一様収束])を繰り返し使って u∈C∞u\in C^\infty で、ut=∑−k2ane−k2tsin⁡kx=uxxu_t=\sum-k^2a_ne^{-k^2t}\sin kx=u_{xx} です。境界条件は sin⁡0=sin⁡nπ=0\sin0=\sin n\pi=0 から従います。一意性は、二つの解の差 ww が熱方程式を満たし、放物境界 ΓT\Gamma_T で 00 なので、定理 3.1[熱方程式] を ww と −w-w に使って w≡0w\equiv0 です。

例 7.5(高い振動数ほど速く消える)

u0(x)=sin⁡πxℓ+sin⁡3πxℓu_0(x)=\sin\frac{\pi x}\ell+\sin\frac{3\pi x}\ell では u(x,t)=e−π2t/ℓ2sin⁡πxℓ+e−9π2t/ℓ2sin⁡3πxℓu(x,t)=e^{-\pi^2t/\ell^2}\sin\frac{\pi x}\ell+e^{-9\pi^2t/\ell^2}\sin\frac{3\pi x}\ell です。第 3 モードは第 1 モードの 99 倍の速さで減衰するので、十分時間が経つと形は基本モード sin⁡πxℓ\sin\frac{\pi x}\ell に近づきます。弦の場合は各モードの振幅が保たれる(エネルギー保存)のと対照的に、熱では高い振動数ほど速く散逸して解が滑らかになる(t>0t>0 で C∞C^\infty)というのが、2 つの方程式の違いの源です。

演習 8.1易

q≥0q\ge0 とする。(SL) の固有値はすべて正であることを示せ。(したがって 00 は固有値ではなく、Green 関数が存在する。)

解答

φ\varphi を実数値の固有関数とすると、部分積分と φ(a)=φ(b)=0\varphi(a)=\varphi(b)=0 により λ∫wφ2=∫(Lφ)φ=∫(pφ′2+qφ2)≥0\lambda\int w\varphi^2=\int(L\varphi)\varphi=\int(p\varphi'^2+q\varphi^2)\ge0 です。∫wφ2>0\int w\varphi^2>0 なので λ≥0\lambda\ge0。λ=0\lambda=0 なら φ′≡0\varphi'\equiv0 から φ\varphi は定数で、φ(a)=0\varphi(a)=0 により φ≡0\varphi\equiv0 となり矛盾です。ゆえに λ>0\lambda>0 です。

演習 8.2標準

y′′+q(x)y=0y''+q(x)y=0 で q(x)≥4q(x)\ge4 とする。[0,π][0,\pi] 上の自明でない実数値の解は、[0,π][0,\pi] に異なる零点を少なくとも 2 つ持つことを示せ。

解答

z(x)=sin⁡2xz(x)=\sin2x は z′′+4z=0z''+4z=0 の解で、零点 0,π/2,π0,\pi/2,\pi を持ちます。定理 3.1 を、zz を「yy」(g1=4g_1=4)、考える解を「zz」(g2=q≥4g_2=q\ge4)として、zz の隣り合う零点 (0,π/2)(0,\pi/2) と (π/2,π)(\pi/2,\pi) に適用します。考える解 yy が sin⁡2x\sin2x の定数倍でないなら、yy は開区間 (0,π/2)(0,\pi/2) と (π/2,π)(\pi/2,\pi) の両方に零点を持ち、これらは異なる点です。定数倍なら零点 0,π/2,π0,\pi/2,\pi を持ちます。いずれにしても異なる零点が 2 つ以上あります。

演習 8.3標準

−y′′+y=f-y''+y=f、y(0)=y(1)=0y(0)=y(1)=0 の Green 関数を求めよ。

解答

u1=sinh⁡xu_1=\sinh x、u2=sinh⁡(x−1)u_2=\sinh(x-1) です(u1′(0)=1u_1'(0)=1、u2′(1)=1u_2'(1)=1)。W=u1u2′−u1′u2=sinh⁡xcosh⁡(x−1)−cosh⁡xsinh⁡(x−1)=sinh⁡(x−(x−1))=sinh⁡1W=u_1u_2'-u_1'u_2=\sinh x\cosh(x-1)-\cosh x\sinh(x-1)=\sinh(x-(x-1))=\sinh1 です。したがって

G(x,t)=−sinh⁡(min⁡{x,t}) sinh⁡(max⁡{x,t}−1)sinh⁡1=sinh⁡(min⁡{x,t}) sinh⁡(1−max⁡{x,t})sinh⁡1G(x,t)=-\frac{\sinh(\min\{x,t\})\,\sinh(\max\{x,t\}-1)}{\sinh1}=\frac{\sinh(\min\{x,t\})\,\sinh(1-\max\{x,t\})}{\sinh1}

です。00 は固有値でない(演習 8.1、q=1≥0q=1\ge0)ので前提を満たし、G≥0G\ge0 で、解は f≥0f\ge0 なら y≥0y\ge0 です。

演習 8.4標準

ℓ=π\ell=\pi、u0(x)=x(π−x)u_0(x)=x(\pi-x) として 定理 7.4 の解を求め、t=0t=0、x=π2x=\frac\pi2 を代入して ∑k≥0(−1)k(2k+1)3=π332\sum_{k\ge0}\frac{(-1)^k}{(2k+1)^3}=\frac{\pi^3}{32} を導け。

解答

∫0πx(π−x)sin⁡nx dx=2(1−(−1)n)n3\int_0^\pi x(\pi-x)\sin nx\,dx=\frac{2(1-(-1)^n)}{n^3}(部分積分を 2 回)なので an=2π⋅2(1−(−1)n)n3=4(1−(−1)n)πn3a_n=\frac2\pi\cdot\frac{2(1-(-1)^n)}{n^3}=\frac{4(1-(-1)^n)}{\pi n^3}、すなわち nn が奇数で 8πn3\frac8{\pi n^3}、偶数で 00 です。u0∈C2u_0\in C^2 で u0(0)=u0(π)=0u_0(0)=u_0(\pi)=0 なので 定理 7.4 が使え、u(x,t)=8π∑k≥0e−(2k+1)2t(2k+1)3sin⁡(2k+1)xu(x,t)=\frac8\pi\sum_{k\ge0}\frac{e^{-(2k+1)^2t}}{(2k+1)^3}\sin(2k+1)x です。t=0t=0、x=π2x=\frac\pi2 では u0(π2)=π24u_0(\frac\pi2)=\frac{\pi^2}4、sin⁡(2k+1)π2=(−1)k\sin\frac{(2k+1)\pi}2=(-1)^k なので π24=8π∑k(−1)k(2k+1)3\frac{\pi^2}4=\frac8\pi\sum_k\frac{(-1)^k}{(2k+1)^3} で、結論の値 π332\frac{\pi^3}{32} を得ます。

  • E. A. Coddington and N. Levinson, Theory of Ordinary Differential Equations, McGraw-Hill, 1955 — Chapter 7(Sturm–Liouville 問題の固有値と固有関数)。
  • P. Hartman, Ordinary Differential Equations, SIAM, 2002 — Chapter XI(振動理論)。
  • G. Teschl, Ordinary Differential Equations and Dynamical Systems, American Mathematical Society, 2012 — Chapter 5(Sturm–Liouville 理論、Prüfer 変換)。
  • 吉田耕作・加藤敏夫『大学演習 常微分方程式』裳華房 — 境界値問題。
  • M. Reed and B. Simon, Methods of Modern Mathematical Physics I: Functional Analysis, Academic Press, 1972 — Chapter VI(コンパクト作用素とHilbert–Schmidtの定理)。

このテーマの 100 本ノック(50 問)

執筆: Claude Code(Sonnet 5.5)、Claude Code(Opus 5.5)・監査 4 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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