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級数解と確定特異点:Frobenius 法から Bessel・Legendre・Hermite 方程式まで

対象読者: 本テーマ第 1〜3 章の内容と、学部の解析学(冪級数、級数の収束判定、一様収束)を学んだ人。特殊関数の知識は仮定しません。

前提となる記事:線形微分方程式系:基本解行列・行列指数関数・Liouville の公式・Floquet の定理・Laplace 変換法、級数と収束判定:部分和の極限・4 つの判定法・絶対収束と条件収束、関数列と一様収束:極限と積分・微分はいつ交換できるか

生 Markdown

sin⁡x\sin x や exe^x では書けない方程式の解を、「無限に続く多項式」a0+a1x+a2x2+⋯a_0+a_1x+a_2x^2+\cdots として表すことを考えます。方程式に代入すると係数 ana_n が前の係数から順に決まっていくので、これを調べれば解が本当に存在するか、どの範囲で意味をもつかが分かります。この記事を読むと、物理でよく出る Bessel・Legendre・Hermite の各方程式の解を、自分の手で級数として組み立てられるようになります。

  • 係数が冪級数で書ける線形 2 階方程式 y′′+p(x)y′+q(x)y=0y''+p(x)y'+q(x)y=0 には、冪級数の解が存在します。しかも解の冪級数の収束半径は、係数 p,qp,q の収束半径を下回りません。これを漸化式と優級数(数列の上からの評価)で証明します。
  • 係数に特異性があるとき、確定特異点では xs∑anxnx^{s}\sum a_nx^n の形の解(Frobenius 解)が作れます。指数 ss は決定方程式の根で、2 根の差が整数かどうかで第 2 の解の形が変わります(対数項が現れることがあります)。
  • Bessel 方程式は x=0x=0 が確定特異点で、決定方程式 s2−ν2=0s^2-\nu^2=0 から J±νJ_{\pm\nu} が得られます。ν=1/2\nu=1/2 では対数項が現れず、J1/2J_{1/2} が初等関数になります。
  • Legendre 方程式と Hermite 方程式は x=0x=0 が通常点で、パラメータが整数のとき多項式解(Legendre 多項式、Hermite 多項式)を持ちます。整数でなければ、Legendre の解は x=±1x=\pm1 の一方で必ず非有界になります。物理で「量子化条件」と呼ばれるものの、数学的な源泉です。
  • 以上は第 5 章(Sturm–Liouville)と特殊関数のテーマ(直交多項式、Bessel 関数)の前提になります。

前の章までに、定数係数の線形方程式は完全に解けることを見ました。しかし、物理に現れる線形方程式の多くは変数係数です。球対称なポテンシャルの Schrödinger 方程式は、変数分離すると Legendre 方程式(角度部分)や Bessel 方程式(円筒座標の動径部分)を与え、調和振動子は Hermite 方程式を与えます。これらは sin⁡x\sin x や exe^x のような初等関数では解けません。そこで、新しい関数をそれ自体が満たす方程式から定義する、という発想が出てきます。

最も素朴な方法は、解を冪級数 y=∑anxny=\sum a_nx^n と仮定して方程式に代入し、係数 ana_n の漸化式を作ることです。ここには 2 つの問題があります。

  1. この形式的な級数は本当に収束するのか。収束する範囲はどこまでか。
  2. 係数が x=0x=0 で特異(たとえば 1/x1/x を含む)のとき、冪級数の解はそもそも存在するのか。

1 は優級数の議論で、2 は Frobenius の方法で答えが出ます。どちらも、本質は「漸化式の係数の増大度を評価する」という、解析学の基本的な議論です。

以下、yy は実変数 xx の関数とします(複素数値でもよく、複素変数への拡張は 正則関数のテイラー展開(定理 5.2)[正則関数の強力な性質] の範囲です)。

2. 通常点:解析的な係数の方程式

Section titled “2. 通常点:解析的な係数の方程式”

定義 2.1(解析的な係数)↗

関数 pp が ∣x∣<R|x|<R で p(x)=∑k≥0pkxkp(x)=\sum_{k\ge0}p_kx^k(収束冪級数)と書けるとき、pp は 00 で解析的(収束半径 ≥R\ge R)であるという。方程式

y′′+p(x)y′+q(x)y=0(S)y''+p(x)y'+q(x)y=0\tag{S}

の係数 p,qp,q がともに 00 で解析的なとき、x=0x=0 を通常点という。

収束冪級数の項は有界なので、任意の ρ<R\rho<R に対し M≥1M\ge1 が存在して ∣pk∣,∣qk∣≤Mρ−k|p_k|,|q_k|\le M\rho^{-k}(k≥0k\ge0)が成り立ちます。次の補題が、この記事の収束の議論をすべて受け持ちます。

この補題の役目は、漸化式から決まる係数 ana_n が、等比数列 Kr−nKr^{-n} より速くは大きくならないことを示すことです。そうなれば、冪級数は ∣x∣<r|x|<r で収束します。不等式の左辺は漸化式の左辺から、右辺は「それまでの係数を足し合わせたもの」から来ています。証明は、nn が小さいうちは KK を大きく取って押さえ、あとは帰納法で nn まで同じ評価を引き継ぎます。

補題 2.2(漸化式の増大度の評価)✓

M,ρ,c>0M,\rho,c>0、σ≥0\sigma\ge0 とし、複素数列 (an)n≥0(a_n)_{n\ge0} が、ある n1n_1 以降のすべての n≥n1n\ge n_1 について

c n2 ∣an∣≤M∑k=0n−1ρ−(n−k)(σ+k+1) ∣ak∣c\,n^2\,|a_n|\le M\sum_{k=0}^{n-1}\rho^{-(n-k)}(\sigma+k+1)\,|a_k|

を満たすとする。このとき、任意の r∈(0,ρ)r\in(0,\rho) に対し KK が存在して、すべての nn で ∣an∣≤K r−n|a_n|\le K\,r^{-n} が成り立つ。とくに ∑anxn\sum a_nx^n の収束半径は ρ\rho 以上である。

証明(補題 2.2)

C=∑j≥1(r/ρ)j=r/ρ1−r/ρC=\sum_{j\ge1}(r/\rho)^j=\dfrac{r/\rho}{1-r/\rho} とおき、N0≥n1N_0\ge n_1 を、n≥N0n\ge N_0 ならば c n2≥MC(σ+n)c\,n^2\ge MC(\sigma+n) が成り立つようにとります(左辺は n2n^2、右辺は nn の 1 次式)。K=max⁡k<N0∣ak∣rkK=\max_{k<N_0}|a_k|r^{k} とします。n≥N0n\ge N_0 で、k<nk<n について ∣ak∣≤Kr−k|a_k|\le Kr^{-k} が成り立つとすると、

c n2∣an∣≤MK∑k<nρ−(n−k)r−k(σ+k+1)=MKr−n∑k<n(rρ)n−k(σ+k+1)≤MKC (σ+n) r−n≤c n2Kr−nc\,n^2|a_n|\le MK\sum_{k<n}\rho^{-(n-k)}r^{-k}(\sigma+k+1)=MKr^{-n}\sum_{k<n}\Bigl(\frac r\rho\Bigr)^{n-k}(\sigma+k+1)\le MKC\,(\sigma+n)\,r^{-n}\le c\,n^2Kr^{-n}

です。よって ∣an∣≤Kr−n|a_n|\le Kr^{-n} で、数学的帰納法により全 nn で成り立ちます。

定理 2.3(通常点での冪級数解)✓

(S) の係数が ∣x∣<R|x|<R で解析的であるとする。任意の (a0,a1)(a_0,a_1) に対し、∣x∣<R|x|<R で収束する冪級数 y=∑n≥0anxny=\sum_{n\ge0}a_nx^n で、(S) の解であり y(0)=a0y(0)=a_0、y′(0)=a1y'(0)=a_1 を満たすものがただ 1 つ存在する。(S) の (−R,R)(-R,R) 上のすべての解は、この形をしている。

証明(定理 2.3)

形式的に y=∑anxny=\sum a_nx^n を (S) に代入します。y′=∑(n+1)an+1xny'=\sum(n+1)a_{n+1}x^n、y′′=∑(n+2)(n+1)an+2xny''=\sum(n+2)(n+1)a_{n+2}x^n で、積は Cauchy 積で計算します。xnx^n の係数を比べると

(n+2)(n+1)an+2=−∑k=0n[(k+1)ak+1pn−k+akqn−k](2.1)(n+2)(n+1)a_{n+2}=-\sum_{k=0}^{n}\bigl[(k+1)a_{k+1}p_{n-k}+a_kq_{n-k}\bigr]\tag{2.1}

です。これは a0,a1a_0,a_1 を与えれば a2,a3,…a_2,a_3,\dots を一意に定めます。

収束。 ρ<R\rho<R を固定し ∣pk∣,∣qk∣≤Mρ−k|p_k|,|q_k|\le M\rho^{-k} とします。(2.1) の nn を n−2n-2 に替えると、n≥2n\ge2 で

n(n−1)∣an∣≤M∑k=0n−2ρ−(n−2−k)[(k+1)∣ak+1∣+∣ak∣]≤M(ρ+ρ2)∑j=0n−1ρ−(n−j)(j+1)∣aj∣n(n-1)|a_n|\le M\sum_{k=0}^{n-2}\rho^{-(n-2-k)}\bigl[(k+1)|a_{k+1}|+|a_k|\bigr]\le M(\rho+\rho^2)\sum_{j=0}^{n-1}\rho^{-(n-j)}(j+1)|a_j|

です(k+1k+1 を jj と読み替えると ρ−(n−1−j)=ρ⋅ρ−(n−j)\rho^{-(n-1-j)}=\rho\cdot\rho^{-(n-j)}、ρ−(n−2−k)=ρ2ρ−(n−k)\rho^{-(n-2-k)}=\rho^2\rho^{-(n-k)} を使い、j≤j+1j\le j+1 と k≤k+1k\le k+1 で上から押さえました)。n(n−1)≥n2/2n(n-1)\ge n^2/2(n≥2n\ge2)なので 補題 2.2 の仮定(c=1/2c=1/2、σ=0\sigma=0)が成り立ち、収束半径は ρ\rho 以上です。ρ<R\rho<R は任意だったので収束半径は RR 以上です。

解であること。 収束半径の内側では冪級数は項別微分でき(定理 7.3[関数列と一様収束])、絶対収束する級数の積は Cauchy 積で与えられるので、(2.1) は yy が (S) を満たすことを意味します。

一意性と網羅性。 (S) は線形で、係数は (−R,R)(-R,R) で連続ですから、定理 2.1[線形微分方程式系] により、初期値 (y(0),y′(0))=(a0,a1)(y(0),y'(0))=(a_0,a_1) の解は (−R,R)(-R,R) 上でただ 1 つで、上で作った級数がそれです。

とくに p,qp,q が多項式(R=∞R=\infty)なら、解は整関数(すべての xx で収束する冪級数)になります。

例 2.4(Airy 方程式)

y′′−xy=0y''-xy=0 では p=0p=0、q=−xq=-x で、(2.1) は (n+2)(n+1)an+2=an−1(n+2)(n+1)a_{n+2}=a_{n-1}(n≥1n\ge1)、a2=0a_2=0 になります。したがって a3m=a0/∏j=1m(3j)(3j−1)a_{3m}=a_0\Big/\prod_{j=1}^{m}(3j)(3j-1)、a3m+1=a1/∏j=1m(3j+1)(3j)a_{3m+1}=a_1\Big/\prod_{j=1}^{m}(3j+1)(3j)、a3m+2=0a_{3m+2}=0 のように、a0a_0 と a1a_1 から 3 つおきの係数が独立に決まります。解は R\mathbb{R} 全体で収束します。

y′′+P(x)y′+Q(x)y=0y''+P(x)y'+Q(x)y=0 で P,QP,Q が x=0x=0 で冪級数展開できないとき、通常点ではありません。最も扱いやすい特異性は、PP が 1/x1/x 程度、QQ が 1/x21/x^2 程度の発散にとどまる場合です。たとえば y′′+1xy′+(1−ν2x2)y=0y''+\frac1xy'+\left(1-\frac{\nu^2}{x^2}\right)y=0 のように、係数が x=0x=0 で発散しても、xx や x2x^2 を掛ければ冪級数になる、という状況です。次の定義は、この「掛ければ冪級数になる」を式の形で言い直したものです。

定義 3.1(確定特異点と決定方程式)↗

x=0x=0 が方程式 y′′+P(x)y′+Q(x)y=0y''+P(x)y'+Q(x)y=0 の確定特異点であるとは、p(x)=xP(x)p(x)=xP(x)、q(x)=x2Q(x)q(x)=x^2Q(x) が 00 で解析的(収束半径 ≥R\ge R)、すなわち方程式が

x2y′′+x p(x) y′+q(x) y=0,p=∑pkxk, q=∑qkxk(F)x^2y''+x\,p(x)\,y'+q(x)\,y=0,\qquad p=\sum p_kx^k,\ q=\sum q_kx^k\tag{F}

の形に書けることをいう。2 次方程式

I(s)=s(s−1)+p0s+q0=0I(s)=s(s-1)+p_0s+q_0=0

を決定方程式といい、その根 s1,s2s_1,s_2 を指数という。Re⁡s1≥Re⁡s2\operatorname{Re}s_1\ge\operatorname{Re}s_2 とする。

y=xs∑anxny=x^{s}\sum a_nx^n を (F) に代入します。x2y′′x^2y'' から ∑(s+n)(s+n−1)anxs+n\sum(s+n)(s+n-1)a_nx^{s+n}、xpy′xpy' から ∑jpjxj∑n(s+n)anxs+n\sum_j p_jx^j\sum_n(s+n)a_nx^{s+n}、qyqy から同様の項が出るので、xs+nx^{s+n} の係数を比べて

I(s+n) an=−∑k=0n−1[(s+k)pn−k+qn−k]ak(n≥1),I(s)a0=0(3.1)I(s+n)\,a_n=-\sum_{k=0}^{n-1}\bigl[(s+k)p_{n-k}+q_{n-k}\bigr]a_k\qquad(n\ge1),\qquad I(s)a_0=0\tag{3.1}

を得ます。a0≠0a_0\ne0 とすれば、ss は決定方程式の根でなければなりません。

次の定理の (1) と (2) は、この漸化式を通常点の場合と同じように評価する議論です。(3) と (4) では、2 根が整数だけ離れていると (3.1) の左辺の係数が 00 になって漸化式が使えないので、階数低下法(すでに 1 つ解 y1y_1 が分かっているときに、Wronskian を使って 2 つ目の解を求める方法)で第 2 の解を作ります。

定理 3.2(Frobenius の定理)✓

(F) について、x=0x=0 が確定特異点で、p,qp,q が ∣x∣<R|x|<R で解析的とする。

  1. 指数 s1s_1 に対し、∣x∣<R|x|<R で収束する冪級数 u(x)=∑n≥0anxnu(x)=\sum_{n\ge0}a_nx^n(a0=1a_0=1)で、y1(x)=xs1u(x)y_1(x)=x^{s_1}u(x) が 0<x<R0<x<R で (F) の解となるものが存在する。
  2. s1−s2∉Zs_1-s_2\notin\mathbb{Z} なら、同様に 0<x<R0<x<R 上の解 y2=xs2∑bnxny_2=x^{s_2}\sum b_nx^n(b0=1b_0=1、収束半径 ≥R\ge R)が存在し、y1,y2y_1,y_2 は一次独立である。
  3. s1=s2s_1=s_2 なら、00 の近傍 (0,ρ0)(0,\rho_0) 上の解 y2=y1ln⁡x+xs1∑n≥1cnxny_2=y_1\ln x+x^{s_1}\sum_{n\ge1}c_nx^n が存在する。
  4. s1−s2=N∈{1,2,… }s_1-s_2=N\in\{1,2,\dots\} なら、(0,ρ0)(0,\rho_0) 上に y2=c y1ln⁡x+xs2∑n≥0dnxny_2=c\,y_1\ln x+x^{s_2}\sum_{n\ge0}d_nx^n(cc は定数で 00 のこともある、d0≠0d_0\ne0)の形の解が存在する。3, 4 でも y1,y2y_1,y_2 は一次独立である。ここで ρ0∈(0,R]\rho_0\in(0,R] は、uu を複素変数の関数と見て円板 ∣z∣<ρ0|z|<\rho_0 に零点がないような最大の値である。
証明(定理 3.2)

(1) (3.1) で s=s1s=s_1 とします。I(s)=(s−s1)(s−s2)I(s)=(s-s_1)(s-s_2) より I(s1+n)=n(n+s1−s2)I(s_1+n)=n(n+s_1-s_2) で、∣n+s1−s2∣≥n+Re⁡(s1−s2)≥n|n+s_1-s_2|\ge n+\operatorname{Re}(s_1-s_2)\ge n なので ∣I(s1+n)∣≥n2|I(s_1+n)|\ge n^2 です。したがって ana_n は a0=1a_0=1 から一意に定まり、∣(s1+k)pn−k+qn−k∣≤M(∣s1∣+k+1)ρ−(n−k)|(s_1+k)p_{n-k}+q_{n-k}|\le M(|s_1|+k+1)\rho^{-(n-k)}(ρ<R\rho<R、∣pj∣,∣qj∣≤Mρ−j|p_j|,|q_j|\le M\rho^{-j})から

n2∣an∣≤M∑k<nρ−(n−k)(∣s1∣+k+1)∣ak∣n^2|a_n|\le M\sum_{k<n}\rho^{-(n-k)}(|s_1|+k+1)|a_k|

です。補題 2.2 (c=1c=1、σ=∣s1∣\sigma=|s_1|)から収束半径は ρ\rho 以上、ρ<R\rho<R は任意なので RR 以上です。(3.1) は y1y_1 が (F) を満たすことを意味します。

(2) s=s2s=s_2 とします。I(s2+n)=n(n−(s1−s2))I(s_2+n)=n(n-(s_1-s_2)) は、s1−s2∉Zs_1-s_2\notin\mathbb{Z} より n≥1n\ge1 で 00 になりません。また n≥2∣s1−s2∣n\ge2|s_1-s_2| なら ∣n−(s1−s2)∣≥n/2|n-(s_1-s_2)|\ge n/2 なので、定数 c>0c>0 が存在して ∣I(s2+n)∣≥cn2|I(s_2+n)|\ge cn^2(全 n≥1n\ge1)です。(1) と同じく 補題 2.2 を使い、収束半径が RR 以上の y2y_2 が得られます。xs1−s2x^{s_1-s_2} は定数でないので y1,y2y_1,y_2 は一次独立です。実際、y1/y2=xs1−s2u/vy_1/y_2=x^{s_1-s_2}u/v(v=∑bnxnv=\sum b_nx^n)で、u/vu/v は 00 の近くで 00 でない値 11 から出発する解析関数なので、s1−s2∉Zs_1-s_2\notin\mathbb{Z} ならこの比は定数になりません。

(3), (4) y1=xs1uy_1=x^{s_1}u が既に得られているので、階数低下法を使います。(F) を y′′+(p/x)y′+(q/x2)y=0y''+(p/x)y'+(q/x^2)y=0 と書くと、2 解の Wronskian W=y1y2′−y1′y2W=y_1y_2'-y_1'y_2 は W′=−(p/x)WW'=-(p/x)W を満たします(定理 2.3[線形微分方程式系])。p(x)=p0+xp~(x)p(x)=p_0+x\tilde p(x)(p~\tilde p は解析的)と書くと

W(x)=x−p0g(x),g(x)=exp⁡(−∫0xp~(t) dt)W(x)=x^{-p_0}g(x),\qquad g(x)=\exp\left(-\int_0^x\tilde p(t)\,dt\right)

で、gg は ∣z∣<R|z|<R で正則、g(0)=1g(0)=1 です。y2/y1y_2/y_1 の導関数は (y1y2′−y1′y2)/y12=W/y12(y_1y_2'-y_1'y_2)/y_1^2=W/y_1^2 なので、y2=y1∫W/y12 dxy_2=y_1\displaystyle\int W/y_1^2\,dx とおくと y1y_1 と一次独立な解を与えます(y1y_1 は 0<x<ρ00<x<\rho_0 で零にならないので定義できます)。

s1+s2=1−p0s_1+s_2=1-p_0(I(s)=s2+(p0−1)s+q0I(s)=s^2+(p_0-1)s+q_0 の根の和)なので、N=s1−s2N=s_1-s_2 とすると −p0−2s1=s2−s1−1=−N−1-p_0-2s_1=s_2-s_1-1=-N-1 で

Wy12=x−N−1h(x),h=gu2=∑k≥0hkxk(∣x∣<ρ0),h0=1\frac{W}{y_1^2}=x^{-N-1}h(x),\qquad h=\frac{g}{u^2}=\sum_{k\ge0}h_kx^k\quad(|x|<\rho_0),\quad h_0=1

です(uu は円板 ∣z∣<ρ0|z|<\rho_0 で零点をもたず、g/u2g/u^2 はそこで正則なので、テイラー展開(定理 5.2)[正則関数の強力な性質] の収束円はこの円板を含みます)。項別に積分すると

∫Wy12dx=hNln⁡x+∑k≠Nhkk−Nxk−N\int\frac{W}{y_1^2}dx=h_N\ln x+\sum_{k\ne N}\frac{h_k}{k-N}x^{k-N}

です。y2y_2 にこれを掛けると、y1=xs1uy_1=x^{s_1}u から y2=hN y1ln⁡x+xs1−Nu(x)∑k≠Nhkk−Nxky_2=h_N\,y_1\ln x+x^{s_1-N}u(x)\sum_{k\ne N}\frac{h_k}{k-N}x^k で、s1−N=s2s_1-N=s_2 です。N=0N=0 のときは hN=h0=1h_N=h_0=1 で、∑k≠0\sum_{k\ne0} は k≥1k\ge1 の和なので (3) の形、N≥1N\ge1 のときは k=0k=0 の項が −1/N≠0-1/N\ne0 で (4) の形(c=hNc=h_N)です。

(3) の場合は対数項が必ず現れ(c=1c=1)、(4) の場合は現れるかどうかが hNh_N の値で決まります。現れない例を次節で見ます。

定義 4.1(Bessel 方程式)↗

ν≥0\nu\ge0 に対し

x2y′′+xy′+(x2−ν2)y=0x^2y''+xy'+(x^2-\nu^2)y=0

を Bessel 方程式という。

p=1p=1、q=x2−ν2q=x^2-\nu^2 で、(F) の形です(p0=1p_0=1、q0=−ν2q_0=-\nu^2、q2=1q_2=1、他は 00)。決定方程式は s2−ν2=0s^2-\nu^2=0 で、s1=νs_1=\nu、s2=−νs_2=-\nu です。R=∞R=\infty です。(3.1) は、pj=0p_j=0(j≥1j\ge1)、qj=0q_j=0(j≠0,2j\ne0,2)より

n(n+2ν) an=−an−2(s=ν)n(n+2\nu)\,a_n=-a_{n-2}\qquad(s=\nu)

になります。a1=0a_1=0(n=1n=1:(1+2ν)a1=0(1+2\nu)a_1=0)なので奇数番の係数は 00 で、a2m=(−1)m4m m! (ν+1)ma0a_{2m}=\dfrac{(-1)^m}{4^m\,m!\,(\nu+1)_m}a_0((ν+1)m=(ν+1)(ν+2)⋯(ν+m)(\nu+1)_m=(\nu+1)(\nu+2)\cdots(\nu+m))です。標準的な規格化 a0=1/(2νΓ(ν+1))a_0=1/(2^\nu\Gamma(\nu+1)) により

Jν(x)=∑m=0∞(−1)mm! Γ(m+ν+1)(x2)2m+νJ_\nu(x)=\sum_{m=0}^{\infty}\frac{(-1)^m}{m!\,\Gamma(m+\nu+1)}\left(\frac x2\right)^{2m+\nu}

が第 1 種 Bessel 関数です(a0a_0 の値は解を定数倍するだけなので、この選び方は後の式を簡単にするための約束です。Γ\Gamma はガンマ関数で、ν\nu が非負整数なら Γ(m+ν+1)=(m+ν)!\Gamma(m+\nu+1)=(m+\nu)! です)。定理 3.2 の 1 により、収束半径は無限大(すべての x>0x>0 で収束)です。

51015J₀J₁x
図 1. Bessel 関数 J₀(実線)と J₁(破線)。零点の位置は交互に並び、振幅はゆっくり減衰する。

2ν∉Z2\nu\notin\mathbb{Z} なら s1−s2=2ν∉Zs_1-s_2=2\nu\notin\mathbb{Z} で、定理 3.2 の 2 により第 2 の解は J−νJ_{-\nu} です。ν=0\nu=0 は 3 の場合で、第 2 の解は J0ln⁡x+⋯J_0\ln x+\cdots です。

命題 4.2(半整数次の Bessel 関数)✓

x>0x>0 について

J1/2(x)=2πx sin⁡x,J−1/2(x)=2πx cos⁡x.J_{1/2}(x)=\sqrt{\frac2{\pi x}}\,\sin x,\qquad J_{-1/2}(x)=\sqrt{\frac2{\pi x}}\,\cos x .
証明(命題 4.2)

定理 5.3[広義積分・パラメータ積分とガンマ関数] の Γ(s+1)=sΓ(s)\Gamma(s+1)=s\Gamma(s) と Γ(1/2)=π\Gamma(1/2)=\sqrt\pi を繰り返し使うと、m≥0m\ge0 について

Γ(m+32)=(2m+1)(2m−1)⋯3⋅12m+1π,Γ(m+12)=(2m−1)(2m−3)⋯3⋅12mπ\Gamma\Bigl(m+\frac32\Bigr)=\frac{(2m+1)(2m-1)\cdots3\cdot1}{2^{m+1}}\sqrt\pi,\qquad \Gamma\Bigl(m+\frac12\Bigr)=\frac{(2m-1)(2m-3)\cdots3\cdot1}{2^{m}}\sqrt\pi

です(m=0m=0 の後者は Γ(1/2)=π\Gamma(1/2)=\sqrt\pi そのもの)。m! 2m=2⋅4⋯(2m)m!\,2^m=2\cdot4\cdots(2m) なので、奇数の積と掛け合わせて

m! Γ(m+32)=(2m+1)!22m+1π,m! Γ(m+12)=(2m)!22mπm!\,\Gamma\Bigl(m+\frac32\Bigr)=\frac{(2m+1)!}{2^{2m+1}}\sqrt\pi,\qquad m!\,\Gamma\Bigl(m+\frac12\Bigr)=\frac{(2m)!}{2^{2m}}\sqrt\pi

を得ます。これを J±1/2J_{\pm1/2} の級数に代入すると

J1/2(x)=∑m≥0(−1)m22m+1(2m+1)!π⋅x2m+1/222m+1/2=2πx∑m≥0(−1)mx2m+1(2m+1)!,J_{1/2}(x)=\sum_{m\ge0}\frac{(-1)^m2^{2m+1}}{(2m+1)!\sqrt\pi}\cdot\frac{x^{2m+1/2}}{2^{2m+1/2}}=\sqrt{\frac2{\pi x}}\sum_{m\ge0}\frac{(-1)^mx^{2m+1}}{(2m+1)!},J−1/2(x)=∑m≥0(−1)m22m(2m)!π⋅x2m−1/222m−1/2=2πx∑m≥0(−1)mx2m(2m)!J_{-1/2}(x)=\sum_{m\ge0}\frac{(-1)^m2^{2m}}{(2m)!\sqrt\pi}\cdot\frac{x^{2m-1/2}}{2^{2m-1/2}}=\sqrt{\frac2{\pi x}}\sum_{m\ge0}\frac{(-1)^mx^{2m}}{(2m)!}

です。最後に、右辺の級数が sin⁡x\sin x と cos⁡x\cos x であることを確かめます。sin⁡\sin と cos⁡\cos の導関数は ±sin⁡,±cos⁡\pm\sin,\pm\cos を巡回し、00 での値は 0,1,0,−10,1,0,-1 の繰り返しなので、Taylor の定理(定理 5.3[平均値の定理とテイラーの定理])の nn 次の剰余は、すべての導関数の絶対値が 11 以下であることから ∣x∣n+1/(n+1)!|x|^{n+1}/(n+1)! 以下です。n≥2∣x∣n\ge2|x| なら ∣x∣n+1/(n+1)!≤12⋅∣x∣n/n!|x|^{n+1}/(n+1)!\le\frac12\cdot|x|^n/n! なので剰余は 00 に収束し、Taylor 多項式(上の級数の部分和)は sin⁡x\sin x、cos⁡x\cos x に収束します。

例 4.3(ν = 1/2:対数項が現れない場合)

ν=1/2\nu=1/2 では s1−s2=1∈Zs_1-s_2=1\in\mathbb{Z} で 4 の場合ですが、s=s2=−1/2s=s_2=-1/2 の漸化式は n(n−1)an=−an−2n(n-1)a_n=-a_{n-2} で、n=1n=1 のとき 0⋅a1=00\cdot a_1=0 となり、a1a_1 が自由に選べます。a0,a1a_0,a_1 から 2 つの独立な解が得られ、対数項は不要です(c=0c=0)。実際、a2m=(−1)ma0/(2m)!a_{2m}=(-1)^ma_0/(2m)!、a2m+1=(−1)ma1/(2m+1)!a_{2m+1}=(-1)^ma_1/(2m+1)! で、

y=x−1/2(a0cos⁡x+a1sin⁡x)y=x^{-1/2}\bigl(a_0\cos x+a_1\sin x\bigr)

です。規格化まで合わせたものが 命題 4.2 の J1/2(x)=2/(πx)sin⁡xJ_{1/2}(x)=\sqrt{2/(\pi x)}\sin x、J−1/2(x)=2/(πx)cos⁡xJ_{-1/2}(x)=\sqrt{2/(\pi x)}\cos x です。球 Bessel 関数(3 次元 Helmholtz 方程式の動径解)が三角関数で書けるのは、この例の一般化です。

5. Legendre 方程式と Hermite 方程式

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Legendre 方程式 (1−x2)y′′−2xy′+λy=0(1-x^2)y''-2xy'+\lambda y=0(λ=ℓ(ℓ+1)\lambda=\ell(\ell+1))は y′′−2x1−x2y′+λ1−x2y=0y''-\dfrac{2x}{1-x^2}y'+\dfrac{\lambda}{1-x^2}y=0 と書け、p=−2x/(1−x2)p=-2x/(1-x^2)、q=λ/(1−x2)q=\lambda/(1-x^2) は ∣x∣<1|x|<1 で解析的(R=1R=1)、x=0x=0 は通常点です。定理 2.3 により、冪級数解は ∣x∣<1|x|<1 で収束します。y=∑akxky=\sum a_kx^k を (1−x2)y′′−2xy′+λy=0(1-x^2)y''-2xy'+\lambda y=0 に代入して xkx^k の係数を比べると

(k+2)(k+1)ak+2=(k(k+1)−λ)ak(5.1)(k+2)(k+1)a_{k+2}=\bigl(k(k+1)-\lambda\bigr)a_k\tag{5.1}

を得ます。偶数番と奇数番が独立です。

命題 5.1(Legendre 多項式)✓

λ=ℓ(ℓ+1)\lambda=\ell(\ell+1)、ℓ∈{0,1,2,… }\ell\in\{0,1,2,\dots\} とする。Legendre 方程式は、ℓ\ell 次の多項式解をもち、Pℓ(1)=1P_\ell(1)=1 と規格化したものを Legendre 多項式という。P0=1P_0=1、P1=xP_1=x、P2=12(3x2−1)P_2=\tfrac12(3x^2-1)、P3=12(5x3−3x)P_3=\tfrac12(5x^3-3x) である。

証明(命題 5.1)

ℓ\ell が偶数なら a1=0a_1=0、奇数なら a0=0a_0=0 と取り(反対の偶奇の級数を落とす)、残りの自由な初期係数 a0a_0 または a1a_1 から (5.1) で係数を定めます。k=ℓk=\ell のとき (5.1) の右辺の係数 ℓ(ℓ+1)−λ\ell(\ell+1)-\lambda が 00 なので aℓ+2=0a_{\ell+2}=0、以降 aℓ+4=⋯=0a_{\ell+4}=\cdots=0 で、ℓ\ell 次の多項式 yy になります(aℓ≠0a_\ell\ne0 は、k<ℓk<\ell では k(k+1)−λ≠0k(k+1)-\lambda\ne0 から従います)。

y(1)≠0y(1)\ne0 であることを示します。y(1)=0y(1)=0 とすると y=(x−1)mzy=(x-1)^mz(m≥1m\ge1、zz は多項式で z(1)≠0z(1)\ne0)と書けます。(1−x2)y′′−2xy′+λy(1-x^2)y''-2xy'+\lambda y の (x−1)m−1(x-1)^{m-1} の係数は −2m(m−1)z(1)−2mz(1)=−2m2z(1)≠0-2m(m-1)z(1)-2mz(1)=-2m^2z(1)\ne0 で(λy\lambda y は (x−1)m(x-1)^m 以上)、方程式に反します。よって y(1)≠0y(1)\ne0 で、y(1)=1y(1)=1 に規格化できます。P2P_2 の確認:ℓ=2\ell=2 で a2=0−62a0=−3a0a_2=\frac{0-6}{2}a_0=-3a_0 なので、P2(1)=a0(1−3)=1P_2(1)=a_0(1-3)=1 から a0=−12a_0=-\tfrac12、P2=12(3x2−1)P_2=\tfrac12(3x^2-1) です。他も同様です。

ℓ\ell が非負整数でないときはどうでしょうか。球面上の問題(球面調和関数)では、解が両極 x=±1x=\pm1(x=cos⁡θx=\cos\theta)で有界であることが物理的な要請です。

命題 5.2(Legendre 方程式の量子化)✓

λ≠j(j+1)\lambda\ne j(j+1)(すべての j=0,1,2,…j=0,1,2,\dots)とする。このとき、(−1,1)(-1,1) 上の Legendre 方程式の自明でない解は、x→1−x\to1^- と x→−1+x\to-1^+ の少なくとも一方で非有界である。

この証明の方針は、係数 aka_k が大体 1/k1/k のように減るなら、級数は x=±1x=\pm1 で ∑xk/k\sum x^k/k と同じく対数的に発散する、というものです。発散の主要部を取り出して、2 つの端点で同時に有界にはできないことを示します。

証明(命題 5.2)

偶数解 yey_e(a0=1,a1=0a_0=1,a_1=0)と奇数解 yoy_o(a0=0,a1=1a_0=0,a_1=1)をとります。仮定により (5.1) の係数 k(k+1)−λk(k+1)-\lambda は 0 にならないので、ak≠0a_k\ne0(kk は対応する偶奇)です。(5.1) は

(k+2)ak+2=k ak(1−λk(k+1))(k+2)a_{k+2}=k\,a_k\left(1-\frac{\lambda}{k(k+1)}\right)

と書けるので、bk=kakb_k=ka_k は bk+2=bk(1−εk)b_{k+2}=b_k(1-\varepsilon_k)、εk=λ/(k(k+1))\varepsilon_k=\lambda/(k(k+1)) を満たします。∑∣εk∣<∞\sum|\varepsilon_k|<\infty で、十分大きな kk から因子は正なので、無限積 ∏(1−εk)\prod(1-\varepsilon_k) は 0 でない値に収束し、bk→b∞≠0b_k\to b_\infty\ne0、さらに ∣bk−b∞∣≤C/k|b_k-b_\infty|\le C/k が成り立ちます(積の裾が ∑j≥k∣εj∣≤C′/k\sum_{j\ge k}|\varepsilon_j|\le C'/k で押さえられる)。よって ak=b∞/k+O(k−2)a_k=b_\infty/k+O(k^{-2}) で、O(k−2)O(k^{-2}) の部分の和は ∣x∣≤1|x|\le1 で絶対収束して有界です。したがって(be,bo≠0b_e,b_o\ne0 をそれぞれ偶数番・奇数番の極限として)

ye(x)=−be2ln⁡(1−x2)+O(1),yo(x)=bo2ln⁡1+x1−x+O(1)y_e(x)=-\frac{b_e}{2}\ln(1-x^2)+O(1),\qquad y_o(x)=\frac{b_o}{2}\ln\frac{1+x}{1-x}+O(1)

です(∑k 偶, k≥2xk/k=−12ln⁡(1−x2)\sum_{k\text{ 偶},\,k\ge2}x^k/k=-\tfrac12\ln(1-x^2)、∑k 奇xk/k=12ln⁡1+x1−x\sum_{k\text{ 奇}}x^k/k=\tfrac12\ln\frac{1+x}{1-x})。解 y=αye+βyoy=\alpha y_e+\beta y_o が x→1−x\to1^- で有界なら ln⁡(1−x)\ln(1-x) の係数から αbe+βbo=0\alpha b_e+\beta b_o=0、x→−1+x\to-1^+ で有界なら ln⁡(1+x)\ln(1+x) の係数から −αbe+βbo=0-\alpha b_e+\beta b_o=0 です。2 式から αbe=βbo=0\alpha b_e=\beta b_o=0、すなわち α=β=0\alpha=\beta=0 です。

Hermite 方程式 y′′−2xy′+2νy=0y''-2xy'+2\nu y=0 も x=0x=0 が通常点(p=−2xp=-2x、q=2νq=2\nu は多項式)で、解は整関数です。(2.1) は

(k+2)(k+1)ak+2=2(k−ν)ak(k+2)(k+1)a_{k+2}=2(k-\nu)a_k

です。

命題 5.3(Hermite 多項式)✓

ν=n∈{0,1,2,… }\nu=n\in\{0,1,2,\dots\} のとき、nn 次多項式解があり、最高次の係数が 2n2^n になるように規格化したものを Hermite 多項式 HnH_n という。H0=1H_0=1、H1=2xH_1=2x、H2=4x2−2H_2=4x^2-2、H3=8x3−12xH_3=8x^3-12x である。ν∉{0,1,2,… }\nu\notin\{0,1,2,\dots\} のとき、解は多項式にならない。

証明(命題 5.3)

k=nk=n で右辺が 0 となり、an+2=an+4=⋯=0a_{n+2}=a_{n+4}=\cdots=0 です。ana_n と同じ偶奇の係数だけを残し、反対の偶奇は 0 に取ります。ν∉N0\nu\notin\mathbb{N}_0 のとき、すべての k≥0k\ge0 で k−ν≠0k-\nu\ne0 なので、a0≠0a_0\ne0 なら偶数番の係数がすべて、a1≠0a_1\ne0 なら奇数番の係数がすべて 00 になりません。ゆえに自明でない解は多項式ではありません。規格化の確認:n=2n=2 で a2=2(0−2)2a0=−2a0a_2=\frac{2(0-2)}{2}a_0=-2a_0、最高次 44 から a0=−2a_0=-2、H2=4x2−2H_2=4x^2-2。n=3n=3 で a3=2(1−3)6a1=−23a1a_3=\frac{2(1-3)}{6}a_1=-\tfrac23a_1、最高次 88 から a1=−12a_1=-12、H3=8x3−12xH_3=8x^3-12x です。

注意 5.4(調和振動子との関係)

Hermite 方程式で ν=n\nu=n のとき、ψ=e−x2/2y\psi=e^{-x^2/2}y は −ψ′′+x2ψ=(2n+1)ψ-\psi''+x^2\psi=(2n+1)\psi を満たします(代入すれば確かめられます)。一方、ν∉N0\nu\notin\mathbb{N}_0 のとき、(2.1) の比 ak+2/ak∼2/ka_{k+2}/a_k\sim2/k は ex2e^{x^2} の係数の比と同じ増大度で、解は ex2e^{x^2} 程度に増大します。そのため e−x2/2ye^{-x^2/2}y は L2(R)L^2(\mathbb{R}) に入らず、固有値になれるのは 2n+12n+1 だけ、という量子化条件になります。この増大度の主張は、ここでは立ち入りません(第 5 章の Sturm–Liouville 理論で扱う固有値問題の範囲です)。

演習 6.1易

漸化式 (5.1) から P4(x)P_4(x) を求めよ。

解答

ℓ=4\ell=4、λ=20\lambda=20。a2=0−202a0=−10a0a_2=\frac{0-20}{2}a_0=-10a_0、a4=6−2012a2=−76a2=353a0a_4=\frac{6-20}{12}a_2=-\frac76a_2=\frac{35}3a_0 です。P4(1)=a0(1−10+353)=83a0=1P_4(1)=a_0\bigl(1-10+\tfrac{35}3\bigr)=\tfrac83a_0=1 から a0=38a_0=\tfrac38、P4=18(35x4−30x2+3)P_4=\tfrac18(35x^4-30x^2+3) です。

演習 6.2標準

4xy′′+2y′+y=04xy''+2y'+y=0 を x>0x>0 で Frobenius の方法で解き、cos⁡x\cos\sqrt x、sin⁡x\sin\sqrt x が基本解であることを確認せよ。

解答

x2y′′+12xy′+14xy=0x^2y''+\tfrac12xy'+\tfrac14xy=0 で p0=12p_0=\tfrac12、q0=0q_0=0、q1=14q_1=\tfrac14(他は 0)。決定方程式 I(s)=s(s−1)+12s=s(s−12)I(s)=s(s-1)+\tfrac12s=s(s-\tfrac12) で、指数は s1=12s_1=\tfrac12、s2=0s_2=0(差 12\tfrac12 は整数でない)。(3.1) より I(s+n)an=−14an−1I(s+n)a_n=-\tfrac14a_{n-1}。s=0s=0:n(n−12)an=−14an−1n(n-\tfrac12)a_n=-\tfrac14a_{n-1} すなわち an=−an−12n(2n−1)a_n=-\dfrac{a_{n-1}}{2n(2n-1)} で、an=(−1)n(2n)!a_n=\dfrac{(-1)^n}{(2n)!} なので y=∑(−1)nxn(2n)!=cos⁡xy=\sum\frac{(-1)^nx^n}{(2n)!}=\cos\sqrt x。s=12s=\tfrac12:an=−an−12n(2n+1)a_n=-\dfrac{a_{n-1}}{2n(2n+1)} で an=(−1)n(2n+1)!a_n=\dfrac{(-1)^n}{(2n+1)!}、y=x1/2∑(−1)nxn(2n+1)!=sin⁡xy=x^{1/2}\sum\frac{(-1)^nx^n}{(2n+1)!}=\sin\sqrt x です。

演習 6.3標準

ν=0\nu=0 の Bessel 方程式の s=0s=0 の解 J0J_0 を漸化式から求め、J0(x)=∑m≥0(−1)m(m!)2(x/2)2mJ_0(x)=\sum_{m\ge0}\frac{(-1)^m}{(m!)^2}(x/2)^{2m} を確認せよ。第 2 の解が J0ln⁡xJ_0\ln x を含むことを 定理 3.2 のどの場合として説明せよ。

解答

ν=0\nu=0 で n2an=−an−2n^2a_n=-a_{n-2}、a1=0a_1=0 なので a2m=(−1)m(2m)2(2m−2)2⋯22a0=(−1)m4m(m!)2a0a_{2m}=\dfrac{(-1)^m}{(2m)^2(2m-2)^2\cdots2^2}a_0=\dfrac{(-1)^m}{4^m(m!)^2}a_0、a0=1a_0=1 とすると題意の級数です。指数は s1=s2=0s_1=s_2=0(重根)なので、定理 3.2 の 3 の場合で、第 2 の解は J0(x)ln⁡x+x0∑n≥1cnxnJ_0(x)\ln x+x^0\sum_{n\ge1}c_nx^n の形です。

  • E. A. Coddington and N. Levinson, Theory of Ordinary Differential Equations, McGraw-Hill, 1955 — Chapter 4(特異点を持つ線形方程式、Frobenius の方法)。
  • G. N. Watson, A Treatise on the Theory of Bessel Functions, Cambridge University Press, 1944 — Chapter 3(Bessel 関数の級数表示)。
  • E. T. Whittaker and G. N. Watson, A Course of Modern Analysis, Cambridge University Press, 1927 — Chapters 10, 15, 17。
  • 犬井鉄郎『特殊函数』岩波書店、1962 — Legendre・Bessel・Hermite 方程式。
  • G. Teschl, Ordinary Differential Equations and Dynamical Systems, American Mathematical Society, 2012 — Chapter 4(冪級数解)。

このテーマの 100 本ノック(50 問)

執筆: Claude Code(Sonnet 5.5)、Claude Code(Opus 5.5)・監査 3 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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