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ラプラス方程式と調和関数:平均値の性質・最大値原理・Harnack の不等式・Green 関数

対象読者: 学部のベクトル解析(発散定理・グリーンの公式)と多変数の微積分、ルベーグ積分の基礎を学んだ人。偏微分方程式そのものは初めてでも読めます。

前提となる記事:ベクトル解析と積分定理:グリーン・ガウス・ストークスを一本の線で結ぶ、ストークスの定理:微分と境界の双対性、ルベーグ積分の定義と収束定理:値域を分割して極限と積分を交換する

生 Markdown

熱が行き渡って温度が落ち着いた金属板では、どの点の温度も、そのすぐ周りの温度の平均になっています。この記事は、この素朴な事実を数式で言い直し、そこから「温度の最大値は縁でしか現れない」「縁の温度を決めれば板の中の温度はただ一通りに決まる」ことを導きます。読み終えると、球の中の定常な温度分布を、縁の温度から積分の公式で書き下せるようになります。

  • Δu=0\Delta u=0 を満たす C2C^2 関数(調和関数)は、すべての球面・球の上の平均値に等しくなります(平均値の性質)。逆に、連続で平均値の性質をもつ関数は C∞C^\infty 級の調和関数です。証明に使うのは発散定理だけです。
  • 平均値の性質から、連結な領域の内部で最大値をとる調和関数は定数です(強最大値原理)。ここから Dirichlet 問題の解の一意性と安定性が出ます。
  • 非負の調和関数は、コンパクトな部分集合の上で、最大値と最小値の比が関数によらない定数で抑えられます(Harnack の不等式。非負の調和関数の値は、場所によって極端には変わらないという不等式です)。
  • 基本解 Φ\Phi(原点に置いた点電荷のつくるポテンシャルにあたる関数)との畳み込み Φ∗f\Phi*f は Poisson 方程式 −Δu=f-\Delta u=f を解きます。
  • 有界領域の Green 関数 GG(基本解を、境界で 00 になるように補正した関数)を使うと、調和関数は境界値から u(x)=∫∂ΩK(x,y)u(y) dS(y)u(x)=\int_{\partial\Omega}K(x,y)u(y)\,dS(y) で復元されます。球では鏡像の方法で GG が求まり、Poisson 核(2 次元の場合は複素解析の章にあります)K(x,y)=r2−∣x∣2nωnr∣x−y∣nK(x,y)=\frac{r^2-|x|^2}{n\omega_nr|x-y|^n} が連続な境界値の Dirichlet 問題を解きます。

ラプラス方程式 Δu=∑j=1n∂j2u=0\Delta u=\sum_{j=1}^n\partial_j^2u=0 は、静電ポテンシャル、定常状態の温度分布、張った膜の微小なたわみなど、「時間変化が止まった後の平衡」を記述します。熱方程式 ∂tu=Δu\partial_tu=\Delta u の定常解がまさに調和関数です。平衡では、各点の値は周りの値の平均に等しくなるはずです。この直観を定理にしたのが平均値の性質で、この章のほとんどの結果はそこから出ます。

2 次元では、調和関数は正則関数の実部として 調和関数と Poisson 積分 で扱われています。この章では複素解析を使わず、一般の次元 n≥2n\ge2 で同じ結果を発散定理から導きます。

この記事は、テーマ「偏微分方程式」の最初の章です。テーマ全体の流れは次のとおりです。

  • 古典解の理論(第 1〜3 章): 楕円型(Laplace)、放物型(熱)、双曲型(波動)の代表的な方程式を、明示的な解の公式・最大値原理・エネルギー評価で調べます。3 つの型で、解の滑らかさや情報の伝わり方がまったく異なることを見ます。
  • 弱解の理論(第 4〜5 章): Sobolev 空間の上で、楕円型方程式の解を Hilbert 空間の方法(Lax–Milgram の定理、変分法)で作り、その解が実際には滑らかであること(正則性)を示します。
  • スペクトル(第 6 章): 有界領域の Dirichlet ラプラシアンの固有値の個数が、領域の体積だけで決まる漸近則(Weyl 則)に従うことを証明します。

古典解の章で得た明示公式は、弱解の理論で「解がどのくらい滑らかか」を測る物差しになります。

以下 n≥2n\ge2 とし、B(x,r)={y∈Rn∣∣y−x∣<r}B(x,r)=\{y\in\mathbb{R}^n\mid|y-x|\lt r\}、ωn\omega_n を単位球 B(0,1)B(0,1) の体積とします。Ω⊂Rn\Omega\subset\mathbb{R}^n を開集合とし、Bˉ(x,r)⊂Ω\bar B(x,r)\subset\Omega のような包含を「閉球が Ω\Omega に含まれる」と読みます。

Ω\Omega が滑らかな境界をもつ有界領域であるとは、Ω\Omega が有界な開集合で、閉包 Ωˉ\bar\Omega が Rn\mathbb{R}^n の C∞C^\infty 級境界付き部分多様体(境界 ∂Ω\partial\Omega)であることとします。ν\nu を外向き単位法ベクトル、dSdS を ∂Ω\partial\Omega の面積測度(誘導計量の体積測度)とします。球 B(x,r)B(x,r) や円環 B(x,R)∖Bˉ(x,r)B(x,R)\setminus\bar B(x,r) はこの条件を満たします。このとき Ck(Ωˉ)C^k(\bar\Omega) は、Ωˉ\bar\Omega のある近傍で CkC^k 級の関数の Ωˉ\bar\Omega への制限の全体とします。u∈C1(Ωˉ)u\in C^1(\bar\Omega) の外向き法微分を ∂νu=∇u⋅ν\partial_\nu u=\nabla u\cdot\nu と書きます。

補題 2.1(n 次元の発散定理)✓

Ω\Omega を滑らかな境界をもつ有界領域、XX を Ωˉ\bar\Omega の近傍で定義された C1C^1 級ベクトル場とする。このとき

∫Ωdiv⁡X dx=∫∂ΩX⋅ν dS.\int_\Omega\operatorname{div}X\,dx=\int_{\partial\Omega}X\cdot\nu\,dS .

これはベクトル解析で習う発散定理の nn 次元版です。証明の前半は微分形式を使ってストークスの定理に帰着させる議論で、後半は C1C^1 級のベクトル場を、軟化子(なめらかな山形の関数との畳み込みで、関数を少しずつぼかして滑らかにする操作)で C∞C^\infty 級のもので近似します。内容を知っているなら、主張だけを受け取って次へ進んでも、以降の議論は追えます。

証明(補題 2.1)

XX が C∞C^\infty 級の場合。 体積形式 vol=dx1∧⋯∧dxn\mathrm{vol}=dx_1\wedge\cdots\wedge dx_n との内部積 ω=ιXvol=∑i=1n(−1)i−1Xi dx1∧⋯∧dxi^∧⋯∧dxn\omega=\iota_X\mathrm{vol}=\sum_{i=1}^n(-1)^{i-1}X_i\,dx_1\wedge\cdots\wedge\widehat{dx_i}\wedge\cdots\wedge dx_n を考えます( ^\widehat{\ } は省く因子)。d(Xi dx1∧⋯dxi^⋯∧dxn)=∂iXi dxi∧dx1∧⋯dxi^⋯∧dxnd(X_i\,dx_1\wedge\cdots\widehat{dx_i}\cdots\wedge dx_n)=\partial_iX_i\,dx_i\wedge dx_1\wedge\cdots\widehat{dx_i}\cdots\wedge dx_n で、dxidx_i を先頭から ii 番目に移すと符号 (−1)i−1(-1)^{i-1} が出るので、dω=(div⁡X) vold\omega=(\operatorname{div}X)\,\mathrm{vol} です。境界の点 pp で X=(X⋅ν)ν+X⊤X=(X\cdot\nu)\nu+X^\top(X⊤∈Tp∂ΩX^\top\in T_p\partial\Omega)と分けると、Tp∂ΩT_p\partial\Omega の n−1n-1 本のベクトル v1,…,vn−1v_1,\ldots,v_{n-1} に対し vol(X⊤,v1,…,vn−1)=0\mathrm{vol}(X^\top,v_1,\ldots,v_{n-1})=0 です(nn 本のベクトルが n−1n-1 次元空間に入り一次従属)。(v1,…,vn−1)(v_1,\ldots,v_{n-1}) を誘導された向きの正の正規直交基底にとると vol(ν,v1,…,vn−1)=1\mathrm{vol}(\nu,v_1,\ldots,v_{n-1})=1 で、これは面積形式の値です。したがって ω\omega の ∂Ω\partial\Omega への引き戻しは (X⋅ν) dS(X\cdot\nu)\,dS で、ストークスの定理(定理 6.1[ストークスの定理]、Ωˉ\bar\Omega はコンパクト)から主張が出ます。これは同記事の 3 次元の計算を nn 次元でなぞったものです。

XX が C1C^1 級の場合。 XX が定義された開集合 U⊃ΩˉU\supset\bar\Omega について、χ∈Cc∞(U)\chi\in C_c^\infty(U) で Ωˉ\bar\Omega の近傍で χ=1\chi=1 となるもの(補題 2.3[Schwartz 空間と緩増加超関数])をとり、Y=χXY=\chi X を Rn\mathbb{R}^n 上のコンパクト台の C1C^1 級ベクトル場とみます。軟化子 ρε\rho_\varepsilon(補題 2.1[Schwartz 空間と緩増加超関数])で Yε=ρε∗YY_\varepsilon=\rho_\varepsilon*Y とおくと Yε∈C∞Y_\varepsilon\in C^\infty、∂iYε=ρε∗∂iY\partial_iY_\varepsilon=\rho_\varepsilon*\partial_iY で、YY と ∂iY\partial_iY は一様連続なので Yε→YY_\varepsilon\to Y、div⁡Yε→div⁡Y\operatorname{div}Y_\varepsilon\to\operatorname{div}Y は一様収束です。YεY_\varepsilon に対する等式で ε→0\varepsilon\to0 とすれば、Ωˉ\bar\Omega の近傍で Y=XY=X なので主張が出ます。

系 2.2(Green の公式)✓

Ω\Omega を滑らかな境界をもつ有界領域、u,v∈C2(Ωˉ)u,v\in C^2(\bar\Omega) とする。

∫Ω(vΔu+∇v⋅∇u)dx=∫∂Ωv ∂νu dS,∫Ω(vΔu−uΔv)dx=∫∂Ω(v ∂νu−u ∂νv)dS.\int_\Omega\bigl(v\Delta u+\nabla v\cdot\nabla u\bigr)dx=\int_{\partial\Omega}v\,\partial_\nu u\,dS,\qquad \int_\Omega\bigl(v\Delta u-u\Delta v\bigr)dx=\int_{\partial\Omega}\bigl(v\,\partial_\nu u-u\,\partial_\nu v\bigr)dS .
証明(系 2.2)

X=v∇uX=v\nabla u は C1C^1 級で div⁡X=vΔu+∇v⋅∇u\operatorname{div}X=v\Delta u+\nabla v\cdot\nabla u、X⋅ν=v ∂νuX\cdot\nu=v\,\partial_\nu u なので、補題 2.1 から第 1 式が出ます。第 1 式から u,vu,v を入れ替えた式を引くと第 2 式です。

∂B(x,s)\partial B(x,s) の面積測度は、∂B(0,1)\partial B(0,1) の面積測度を相似写像 z↦x+szz\mapsto x+sz で写して sn−1s^{n-1} 倍したものです(誘導計量が s2s^2 倍になるため)。したがって ∫∂B(x,s)f dS=sn−1∫∂B(0,1)f(x+sz) dS(z)\int_{\partial B(x,s)}f\,dS=s^{n-1}\int_{\partial B(0,1)}f(x+sz)\,dS(z) です。

補題 2.3(球の上の積分の半径微分)✓

ff を Rn\mathbb{R}^n 上の連続関数とすると、F(r)=∫B(x,r)f dyF(r)=\int_{B(x,r)}f\,dy は r>0r\gt0 で微分可能で F′(r)=∫∂B(x,r)f dSF'(r)=\int_{\partial B(x,r)}f\,dS。したがって ∫B(x,r)f dy=∫0r(∫∂B(x,s)f dS)ds\int_{B(x,r)}f\,dy=\int_0^r\Bigl(\int_{\partial B(x,s)}f\,dS\Bigr)ds であり、特に ∂B(x,r)\partial B(x,r) の面積は nωnrn−1n\omega_nr^{n-1} である。

球を半径 ss の球面の重なりとみなして、球の上の積分を球面の上の積分の積み重ねに直す補題です。証明では、まず rr を動かしたときの積分の変化を計算し、被積分関数が div⁡(f(y) y)\operatorname{div}(f(y)\,y) の形になることに気づいて、発散定理で球面の積分に書き換えます。

証明(補題 2.3)

x=0x=0 としてよい。まず f∈C1f\in C^1 とします。変数変換 y=rzy=rz(系 3.5[ℝ^d の変数変換公式と極座標])で F(r)=rn∫B(0,1)f(rz) dzF(r)=r^n\int_{B(0,1)}f(rz)\,dz で、積分記号下で微分して

F′(r)=nrn−1∫B(0,1)f(rz) dz+rn∫B(0,1)z⋅∇f(rz) dz=1r∫B(0,r)(nf+y⋅∇f)dy.F'(r)=nr^{n-1}\int_{B(0,1)}f(rz)\,dz+r^n\int_{B(0,1)}z\cdot\nabla f(rz)\,dz=\frac1r\int_{B(0,r)}\bigl(nf+y\cdot\nabla f\bigr)dy .

右辺の被積分関数は div⁡(f(y) y)\operatorname{div}(f(y)\,y) で、∂B(0,r)\partial B(0,r) 上で y⋅ν=ry\cdot\nu=r なので、補題 2.1 から F′(r)=∫∂B(0,r)f dSF'(r)=\int_{\partial B(0,r)}f\,dS です。一般の連続関数 ff は、Bˉ(0,R+1)\bar B(0,R+1) 上で C1C^1 関数 fk=ρ1/k∗ff_k=\rho_{1/k}*f によって一様近似できます。Fk(r)=∫0rGk(s) dsF_k(r)=\int_0^rG_k(s)\,ds(Gk(s)=∫∂B(0,s)fk dSG_k(s)=\int_{\partial B(0,s)}f_k\,dS)で Fk→FF_k\to F、Gk→GG_k\to G はともに [0,R][0,R] 上一様なので、F(r)=∫0rG(s) dsF(r)=\int_0^rG(s)\,ds で GG は連続、よって F′=GF'=G です。f=1f=1 とすると ddr(ωnrn)\frac{d}{dr}(\omega_nr^n) が面積を与えます。

以下、球面平均と球平均を

Mu(x,r)=1nωnrn−1∫∂B(x,r)u dS,Au(x,r)=1ωnrn∫B(x,r)u dyM_u(x,r)=\frac1{n\omega_nr^{n-1}}\int_{\partial B(x,r)}u\,dS,\qquad A_u(x,r)=\frac1{\omega_nr^n}\int_{B(x,r)}u\,dy

と書きます。補題 2.3 から Au(x,r)=nrn∫0rsn−1Mu(x,s) dsA_u(x,r)=\frac{n}{r^n}\int_0^rs^{n-1}M_u(x,s)\,ds です。

定義 3.1(調和関数・劣調和関数)↗

開集合 Ω⊂Rn\Omega\subset\mathbb{R}^n 上の実数値関数 u∈C2(Ω)u\in C^2(\Omega) が Δu=0\Delta u=0 を満たすとき調和、Δu≥0\Delta u\ge0 を満たすとき劣調和という。

定理 3.2(平均値の性質)✓

u∈C2(Ω)u\in C^2(\Omega)、Bˉ(x,r)⊂Ω\bar B(x,r)\subset\Omega とする。uu が調和なら

u(x)=Mu(x,r)=Au(x,r)u(x)=M_u(x,r)=A_u(x,r)

であり、uu が劣調和なら u(x)≤Mu(x,r)u(x)\le M_u(x,r)、u(x)≤Au(x,r)u(x)\le A_u(x,r) である。

証明の方針は、球面平均を半径 ss の関数 φ(s)\varphi(s) とみて、ss で微分することです。発散定理により φ′\varphi' は球の内部での Δu\Delta u の平均に変わるので、調和なら φ\varphi は定数で、s→0s\to0 の極限である u(x)u(x) に等しくなります。

証明(定理 3.2)

φ(s)=Mu(x,s)=1nωn∫∂B(0,1)u(x+sz) dS(z)\varphi(s)=M_u(x,s)=\frac1{n\omega_n}\int_{\partial B(0,1)}u(x+sz)\,dS(z)(0<s≤r0\lt s\le r)とおきます。積分記号下で微分し、∂B(x,s)\partial B(x,s) 上の外向き法線が z=(y−x)/sz=(y-x)/s であることと 補題 2.1 を使うと

φ′(s)=1nωn∫∂B(0,1)∇u(x+sz)⋅z dS(z)=1nωnsn−1∫∂B(x,s)∂νu dS=1nωnsn−1∫B(x,s)Δu dy=snAΔu(x,s).\varphi'(s)=\frac1{n\omega_n}\int_{\partial B(0,1)}\nabla u(x+sz)\cdot z\,dS(z)=\frac1{n\omega_ns^{n-1}}\int_{\partial B(x,s)}\partial_\nu u\,dS=\frac1{n\omega_ns^{n-1}}\int_{B(x,s)}\Delta u\,dy=\frac sn A_{\Delta u}(x,s).

uu の連続性から φ(s)→u(x)\varphi(s)\to u(x)(s→0s\to0)です。調和なら φ′=0\varphi'=0 なので Mu(x,r)=u(x)M_u(x,r)=u(x)、劣調和なら φ′≥0\varphi'\ge0 なので Mu(x,r)≥u(x)M_u(x,r)\ge u(x) です。球平均の主張は、補題 2.3 の後の式 Au(x,r)=nrn∫0rsn−1Mu(x,s) dsA_u(x,r)=\frac n{r^n}\int_0^rs^{n-1}M_u(x,s)\,ds に代入すれば出ます(nrn∫0rsn−1ds=1\frac n{r^n}\int_0^rs^{n-1}ds=1)。

平均値の性質は、調和性の「積分版」の言い換えです。逆も成り立ち、しかも滑らかさが自動的についてきます。

定理 3.3(平均値の性質の逆と滑らかさ)✓

u∈C(Ω)u\in C(\Omega) が、Bˉ(x,r)⊂Ω\bar B(x,r)\subset\Omega を満たすすべての x,rx,r について u(x)=Mu(x,r)u(x)=M_u(x,r) を満たすなら、u∈C∞(Ω)u\in C^\infty(\Omega) で uu は調和である。特に、調和関数は C∞C^\infty 級である。

証明(定理 3.3)

軟化子 ρε(y)=ε−nρ(y/ε)\rho_\varepsilon(y)=\varepsilon^{-n}\rho(y/\varepsilon) は ∣y∣|y| だけの関数 ρ~ε(∣y∣)\tilde\rho_\varepsilon(|y|) で、台は Bˉ(0,ε)\bar B(0,\varepsilon) です(補題 2.1[Schwartz 空間と緩増加超関数])。Ωε={x∈Ω∣dist⁡(x,∂Ω)>ε}\Omega_\varepsilon=\{x\in\Omega\mid\operatorname{dist}(x,\partial\Omega)\gt\varepsilon\} 上で、補題 2.3 を y↦ρε(x−y)u(y)y\mapsto\rho_\varepsilon(x-y)u(y)(Bˉ(x,ε)⊂Ω\bar B(x,\varepsilon)\subset\Omega の外では 00 とおいた連続関数)に使うと

(ρε∗u)(x)=∫0ερ~ε(s)(∫∂B(x,s)u dS)ds=u(x)∫0ερ~ε(s) nωnsn−1ds=u(x)∫ρε=u(x)(\rho_\varepsilon*u)(x)=\int_0^\varepsilon\tilde\rho_\varepsilon(s)\Bigl(\int_{\partial B(x,s)}u\,dS\Bigr)ds=u(x)\int_0^\varepsilon\tilde\rho_\varepsilon(s)\,n\omega_ns^{n-1}ds=u(x)\int\rho_\varepsilon=u(x)

です。左辺は C∞C^\infty なので u∈C∞(Ωε)u\in C^\infty(\Omega_\varepsilon)、ε\varepsilon は任意なので u∈C∞(Ω)u\in C^\infty(\Omega) です。すると 定理 3.2 の証明の φ\varphi は定数なので、AΔu(x,s)=0A_{\Delta u}(x,s)=0 がすべての小さな ss で成り立ち、s→0s\to0 として Δu(x)=0\Delta u(x)=0 です。後半は 定理 3.2 と前半を合わせたものです。

命題 3.4(調和関数の導関数の評価)✓

uu を Ω\Omega 上の調和関数、Bˉ(x,r)⊂Ω\bar B(x,r)\subset\Omega とする。このとき

∣u(x)∣≤1ωnrn∫B(x,r)∣u∣ dy,∣∂iu(x)∣≤nrmax⁡∂B(x,r)∣u∣(i=1,…,n).|u(x)|\le\frac1{\omega_nr^n}\int_{B(x,r)}|u|\,dy,\qquad|\partial_iu(x)|\le\frac nr\max_{\partial B(x,r)}|u|\quad(i=1,\ldots,n).
証明(命題 3.4)

第 1 式は u(x)=Au(x,r)u(x)=A_u(x,r) から出ます。定理 3.3 により ∂iu\partial_iu も調和なので、∂iu(x)=A∂iu(x,r)\partial_iu(x)=A_{\partial_iu}(x,r) です。補題 2.1 を X=u eiX=u\,e_i に使うと

∣∂iu(x)∣=∣1ωnrn∫∂B(x,r)u νi dS∣≤nωnrn−1ωnrnmax⁡∂B(x,r)∣u∣=nrmax⁡∂B(x,r)∣u∣.|\partial_iu(x)|=\Bigl|\frac1{\omega_nr^n}\int_{\partial B(x,r)}u\,\nu_i\,dS\Bigr|\le\frac{n\omega_nr^{n-1}}{\omega_nr^n}\max_{\partial B(x,r)}|u|=\frac nr\max_{\partial B(x,r)}|u| .

この評価は、調和関数の 11 階導関数が「半径 rr の範囲での振幅を rr で割ったもの」で抑えられることを言っています。第 5 章の Schauder 評価で、この形の評価を繰り返し使います。

定理 4.1(強最大値原理)✓

Ω\Omega を連結な開集合、u∈C2(Ω)u\in C^2(\Omega) を劣調和関数とする。uu が Ω\Omega の内部の点で最大値 sup⁡Ωu\sup_\Omega u をとるなら、uu は定数である。

証明(定理 4.1)

M=sup⁡ΩuM=\sup_\Omega u とし、S={x∈Ω∣u(x)=M}S=\{x\in\Omega\mid u(x)=M\} とおきます。仮定から S≠∅S\ne\varnothing、連続性から SS は Ω\Omega の中で閉です。x∈Sx\in S、Bˉ(x,r)⊂Ω\bar B(x,r)\subset\Omega なら 定理 3.2 により M=u(x)≤Au(x,r)≤MM=u(x)\le A_u(x,r)\le M なので ∫B(x,r)(M−u) dy=0\int_{B(x,r)}(M-u)\,dy=0 で、被積分関数は非負連続なので B(x,r)B(x,r) 上 u=Mu=M です。よって SS は開集合で、Ω\Omega の連結性から S=ΩS=\Omega です。

系 4.2(弱最大値原理)✓

Ω\Omega を有界な開集合、u∈C2(Ω)∩C(Ωˉ)u\in C^2(\Omega)\cap C(\bar\Omega) を劣調和とすると max⁡Ωˉu=max⁡∂Ωu\max_{\bar\Omega}u=\max_{\partial\Omega}u。uu が調和なら min⁡Ωˉu=min⁡∂Ωu\min_{\bar\Omega}u=\min_{\partial\Omega}u も成り立つ。

証明(系 4.2)

Ωˉ\bar\Omega はコンパクトなので最大値 MM がある点 x0x_0 でとられます。x0∈∂Ωx_0\in\partial\Omega なら終わりです。x0∈Ωx_0\in\Omega なら、x0x_0 を含む Ω\Omega の連結成分 UU の上で 定理 4.1 により u=Mu=M です。UU は有界で空でない開集合なので Rn\mathbb{R}^n とは異なり、∂U≠∅\partial U\ne\varnothing で、∂U⊂∂Ω\partial U\subset\partial\Omega です(UU の境界点が Ω\Omega に入ると、その点を含む連結成分が UU と交わり UU に一致してしまう)。連続性から ∂U\partial U 上でも u=Mu=M です。最小値の主張は −u-u に使えば出ます。

系 4.3(Dirichlet 問題の一意性と安定性)✓

Ω\Omega を有界な開集合とする。u1,u2∈C2(Ω)∩C(Ωˉ)u_1,u_2\in C^2(\Omega)\cap C(\bar\Omega) が Ω\Omega で −Δuk=f-\Delta u_k=f、∂Ω\partial\Omega で uk=gku_k=g_k を満たすなら max⁡Ωˉ∣u1−u2∣=max⁡∂Ω∣g1−g2∣\max_{\bar\Omega}|u_1-u_2|=\max_{\partial\Omega}|g_1-g_2|。特に g1=g2g_1=g_2 なら u1=u2u_1=u_2 である。

証明(系 4.3)

w=u1−u2w=u_1-u_2 は調和なので、系 4.2 を ww と −w-w に使います。

有界性は外せません。上半空間 {xn>0}\{x_n\gt0\} では u=xnu=x_n が調和で境界値は 00 ですが、u≠0u\ne0 です。非有界な領域では、無限遠での増大度を制限して初めて一意性が戻ります(演習を参照)。

定理 5.1(Harnack の不等式)✓

Ω\Omega を開集合、VV を連結な開集合で Vˉ\bar V がコンパクトかつ Vˉ⊂Ω\bar V\subset\Omega とする。このとき V,ΩV,\Omega だけで決まる定数 CC があって、Ω\Omega 上の非負の調和関数 uu はすべて

sup⁡Vu≤Cinf⁡Vu\sup_Vu\le C\inf_Vu

を満たす。

証明の方針は次のとおりです。まず、近い 2 点では値が高々 2n2^n 倍しか違わないことを平均値の性質から示します。次に、Vˉ\bar V を有限個の小さな球で覆い、2 点を隣り合う球の鎖でつなぎます。鎖の長さは球の数以下なので、定数 CC は球の数だけで決まります。

証明(定理 5.1)

r=14dist⁡(Vˉ,Rn∖Ω)r=\frac14\operatorname{dist}(\bar V,\mathbb{R}^n\setminus\Omega)(Ω=Rn\Omega=\mathbb{R}^n なら r=1r=1)とします。

一歩分の比較。 z∈Vˉz\in\bar V、∣p−z∣<r|p-z|\lt r なら B(p,r)⊂B(z,2r)B(p,r)\subset B(z,2r) かつ B(z,r)⊂B(p,2r)B(z,r)\subset B(p,2r) で、閉球 Bˉ(z,2r)\bar B(z,2r)、Bˉ(p,2r)\bar B(p,2r) は Ω\Omega に含まれます(∣p−z∣+2r<4r|p-z|+2r\lt4r)。u≥0u\ge0 と 定理 3.2 から

u(z)=1ωn(2r)n∫B(z,2r)u≥12nωnrn∫B(p,r)u=2−nu(p),u(z)=\frac1{\omega_n(2r)^n}\int_{B(z,2r)}u\ge\frac1{2^n\omega_nr^n}\int_{B(p,r)}u=2^{-n}u(p),

同様に u(p)≥2−nu(z)u(p)\ge2^{-n}u(z) です。

鎖でつなぐ。 Vˉ\bar V を有限個の開球 Bi=B(zi,r/2)B_i=B(z_i,r/2)(zi∈Vˉz_i\in\bar V、i=1,…,Ni=1,\ldots,N)で覆います。x,y∈Vx,y\in V を VV 内の連続な道 γ\gamma で結びます(連結な開集合は弧状連結)。γ\gamma と交わる BiB_i 全体を、「交わりがあれば辺で結ぶ」グラフとみると、これは連結です。そうでなければ γ\gamma の像が、交わらない 2 つの開集合(2 つのグループの球の和)に分かれ、像の連結性に反するからです。よって x∈Bi1x\in B_{i_1}、y∈Bimy\in B_{i_m} で、隣り合う球が交わる鎖 Bi1,…,BimB_{i_1},\ldots,B_{i_m}(m≤Nm\le N、相異なる)がとれます。隣り合う中心は ∣zik−zik+1∣<r|z_{i_k}-z_{i_{k+1}}|\lt r を満たすので、一歩分の比較を m+1m+1 回使って

u(x)≥2−nu(zi1)≥2−2nu(zi2)≥⋯≥2−mnu(zim)≥2−(m+1)nu(y)u(x)\ge2^{-n}u(z_{i_1})\ge2^{-2n}u(z_{i_2})\ge\cdots\ge2^{-mn}u(z_{i_m})\ge2^{-(m+1)n}u(y)

です。C=2(N+1)nC=2^{(N+1)n} とすれば、x,yx,y は任意なので主張が出ます。

Harnack の不等式は「非負の調和関数は 1 点の値で VV 全体の大きさが決まる」と言っています。たとえば、u(x0)=0u(x_0)=0 となる点が VV にあれば VV 上 u=0u=0 です(強最大値原理の別証明)。第 5 章で扱う Allegretto–Piepenbrink の定理では、Schrödinger 作用素に対するこの種の不等式が正の解の存在を支えます。

定義 6.1(ラプラス方程式の基本解)↗

x≠0x\ne0 に対し

Φ(x)={−12πlog⁡∣x∣(n=2),1n(n−2)ωn ∣x∣2−n(n≥3)\Phi(x)=\begin{cases}-\dfrac1{2\pi}\log|x| & (n=2),\\[2mm] \dfrac1{n(n-2)\omega_n}\,|x|^{2-n} & (n\ge3)\end{cases}

とおき、Φ\Phi を基本解という。

r=∣x∣r=|x| の関数 rar^a について ∇ra=ara−2x\nabla r^a=ar^{a-2}x、Δra=a(a+n−2)ra−2\Delta r^a=a(a+n-2)r^{a-2} で、Δlog⁡r=(n−2)r−2\Delta\log r=(n-2)r^{-2} です。a=2−na=2-n または n=2n=2 の対数で 00 になるので、Φ\Phi は Rn∖{0}\mathbb{R}^n\setminus\{0\} で調和です。また、どちらの場合も

∇Φ(x)=−xnωn∣x∣n\nabla\Phi(x)=-\frac{x}{n\omega_n|x|^n}

です(n=2n=2 では nωn=2πn\omega_n=2\pi)。補題 2.3 により ∫B(0,R)∣Φ∣ dx=∫0R∣Φ(s)∣ nωnsn−1ds<∞\int_{B(0,R)}|\Phi|\,dx=\int_0^R|\Phi(s)|\,n\omega_ns^{n-1}ds\lt\infty なので、Φ\Phi は局所可積分です。定数は、次の定理で −Δ(Φ∗f)=f-\Delta(\Phi*f)=f がちょうど成り立つように選ばれています。

123r0n = 3n = 2
基本解 Φ の動径方向のグラフ(実線: n = 3 の 1/(4π r)、破線: n = 2 の −log r/(2π))。どちらも原点に近づくと発散する

定理 6.2(Poisson 方程式の解)✓

f∈Cc2(Rn)f\in C_c^2(\mathbb{R}^n) に対し u(x)=∫RnΦ(x−y)f(y) dyu(x)=\int_{\mathbb{R}^n}\Phi(x-y)f(y)\,dy とおくと、u∈C2(Rn)u\in C^2(\mathbb{R}^n) で、Rn\mathbb{R}^n 上 −Δu=f-\Delta u=f が成り立つ。

証明の方針は、Δu(x)\Delta u(x) を、原点のごく近くの小さな球 B(0,ε)B(0,\varepsilon) と、その外側に分けることです。外側は Green の公式で球面の項に直し、ε→0\varepsilon\to0 とすると f(x)f(x) だけが残ります。

証明(定理 6.2)

変数を替えて u(x)=∫Φ(y)f(x−y) dyu(x)=\int\Phi(y)f(x-y)\,dy と書きます。xx が有界集合を動くとき、∂xαf(x−y)\partial^\alpha_xf(x-y)(∣α∣≤2|\alpha|\le2)は有界で yy についての台は一定の有界集合に入るので、局所可積分な Φ\Phi を掛けたものは可積分な優関数をもちます。積分記号下の微分(系 7.4[ルベーグ積分の定義と収束定理])を繰り返して ∂i∂ju(x)=∫Φ(y) ∂i∂jf(x−y) dy\partial_i\partial_ju(x)=\int\Phi(y)\,\partial_i\partial_jf(x-y)\,dy で、これは優収束定理(定理 7.3[ルベーグ積分の定義と収束定理])で連続です。よって u∈C2u\in C^2 です。

xx を固定し、v(y)=f(x−y)v(y)=f(x-y) とおきます。Δxf(x−y)=Δyv(y)\Delta_xf(x-y)=\Delta_yv(y) なので、ε>0\varepsilon\gt0 について

Δu(x)=∫B(0,ε)Φ Δv dy+∫B(0,R)∖B(0,ε)Φ Δv dy=Iε+Jε\Delta u(x)=\int_{B(0,\varepsilon)}\Phi\,\Delta v\,dy+\int_{B(0,R)\setminus B(0,\varepsilon)}\Phi\,\Delta v\,dy=I_\varepsilon+J_\varepsilon

です。ここで RR は vv の台が B(0,R−1)B(0,R-1) に入るように大きくとります。∣Iε∣≤sup⁡∣Δf∣∫B(0,ε)∣Φ∣→0|I_\varepsilon|\le\sup|\Delta f|\int_{B(0,\varepsilon)}|\Phi|\to0 です。JεJ_\varepsilon には円環 U=B(0,R)∖Bˉ(0,ε)U=B(0,R)\setminus\bar B(0,\varepsilon) で 系 2.2 の第 2 式を使います。UU で ΔΦ=0\Delta\Phi=0、外側の球面の近くで v=0v=0 なので

Jε=∫∂B(0,ε)(Φ ∂νv−v ∂νΦ)dSJ_\varepsilon=\int_{\partial B(0,\varepsilon)}\bigl(\Phi\,\partial_\nu v-v\,\partial_\nu\Phi\bigr)dS

で、ν=−y/ε\nu=-y/\varepsilon は UU から見た外向き法線です。第 1 項は ∣Φ(ε)∣sup⁡∣∇f∣⋅nωnεn−1|\Phi(\varepsilon)|\sup|\nabla f|\cdot n\omega_n\varepsilon^{n-1} 以下で、n=2n=2 では ε∣log⁡ε∣\varepsilon|\log\varepsilon|、n≥3n\ge3 では ε\varepsilon の定数倍なので 00 に収束します。第 2 項は ∂νΦ=∇Φ(y)⋅(−y/ε)=1nωnεn−1\partial_\nu\Phi=\nabla\Phi(y)\cdot(-y/\varepsilon)=\frac1{n\omega_n\varepsilon^{n-1}} なので −Mv(0,ε)-M_v(0,\varepsilon) に等しく、vv の連続性から −v(0)=−f(x)-v(0)=-f(x) に収束します。よって Δu(x)=−f(x)\Delta u(x)=-f(x) です。

Φ∗f\Phi*f は「点電荷 f(y) dyf(y)\,dy のつくるポテンシャルの重ね合わせ」です。ff に C2C^2 を課したのは証明を短くするためで、ff が Hölder 連続なら u∈C2u\in C^2 が成り立ちます(第 5 章の Schauder 評価の主題)。一方 ff が連続なだけでは u∈C2u\in C^2 は一般に成り立ちません。

定理 7.1(Green の表現公式)✓

Ω\Omega を滑らかな境界をもつ有界領域、u∈C2(Ωˉ)u\in C^2(\bar\Omega)、x∈Ωx\in\Omega とすると

u(x)=∫∂Ω(Φ(y−x) ∂νu(y)−u(y) ∂νyΦ(y−x))dS(y)−∫ΩΦ(y−x) Δu(y) dy.u(x)=\int_{\partial\Omega}\Bigl(\Phi(y-x)\,\partial_\nu u(y)-u(y)\,\partial_{\nu_y}\Phi(y-x)\Bigr)dS(y)-\int_\Omega\Phi(y-x)\,\Delta u(y)\,dy .
証明(定理 7.1)

Uε=Ω∖Bˉ(x,ε)U_\varepsilon=\Omega\setminus\bar B(x,\varepsilon) に 系 2.2 の第 2 式を uu と Φ(⋅−x)\Phi(\cdot-x) で使います。内側の球面からの寄与は、定理 6.2 の証明と同じ計算で ε→0\varepsilon\to0 のとき u(x)u(x) に収束し(Φ ∂νu\Phi\,\partial_\nu u の項は 00 に、−u ∂νΦ-u\,\partial_\nu\Phi の項は −Mu(x,ε)-M_u(x,\varepsilon) に収束し、移項して u(x)u(x))、体積積分は Φ\Phi の局所可積分性から ∫Ω\int_\Omega に収束します。整理すると主張の式になります。

この公式は、uu が Ω\Omega 内の Δu\Delta u と境界上の uu、∂νu\partial_\nu u で決まることを言います。しかし Dirichlet 問題では ∂νu\partial_\nu u は与えられていません。そこで Φ\Phi を、境界で 00 になるように補正します。

定義 7.2(Green 関数と Poisson 核)↗

Ω\Omega を滑らかな境界をもつ有界領域とする。各 x∈Ωx\in\Omega について、φx∈C2(Ωˉ)\varphi^x\in C^2(\bar\Omega) が Ω\Omega で調和、∂Ω\partial\Omega 上で φx(y)=Φ(y−x)\varphi^x(y)=\Phi(y-x) を満たすとする(補正関数)。このとき

G(x,y)=Φ(y−x)−φx(y)(x∈Ω, y∈Ωˉ, y≠x)G(x,y)=\Phi(y-x)-\varphi^x(y)\qquad(x\in\Omega,\ y\in\bar\Omega,\ y\ne x)

を Ω\Omega の Green 関数、K(x,y)=−∂νyG(x,y)K(x,y)=-\partial_{\nu_y}G(x,y)(y∈∂Ωy\in\partial\Omega)を Poisson 核という。

補正関数は、境界値 Φ(⋅−x)\Phi(\cdot-x) の Dirichlet 問題の解なので、系 4.3 により存在すれば一意です。一般の領域での存在は第 4・5 章の弱解と正則性の理論で示されます。ここでは存在を仮定した帰結と、明示的に作れる球の場合を扱います。

定理 7.3(Green 関数による表示)✓

定義 7.2 の状況で、u∈C2(Ωˉ)u\in C^2(\bar\Omega) と x∈Ωx\in\Omega について

u(x)=∫∂ΩK(x,y) u(y) dS(y)−∫ΩG(x,y) Δu(y) dy.u(x)=\int_{\partial\Omega}K(x,y)\,u(y)\,dS(y)-\int_\Omega G(x,y)\,\Delta u(y)\,dy .

特に uu が調和なら u(x)=∫∂ΩK(x,y)u(y) dS(y)u(x)=\int_{\partial\Omega}K(x,y)u(y)\,dS(y) である。

証明(定理 7.3)

φx\varphi^x は調和なので、系 2.2 の第 2 式から ∫ΩφxΔu dy=∫∂Ω(φx∂νu−u ∂νφx) dS\int_\Omega\varphi^x\Delta u\,dy=\int_{\partial\Omega}(\varphi^x\partial_\nu u-u\,\partial_\nu\varphi^x)\,dS です。これを 定理 7.1 から引くと

u(x)=∫∂Ω(G(x,y) ∂νu−u ∂νyG(x,y))dS(y)−∫ΩG(x,y)Δu dyu(x)=\int_{\partial\Omega}\Bigl(G(x,y)\,\partial_\nu u-u\,\partial_{\nu_y}G(x,y)\Bigr)dS(y)-\int_\Omega G(x,y)\Delta u\,dy

で、∂Ω\partial\Omega 上 G(x,⋅)=0G(x,\cdot)=0 なので第 1 項の前半が消えます。

0xx̃ = x/|x|²y|y| = 1 のとき |x − y| = |x|·|y − x̃|
球の鏡像点。境界の点 y では、x からの距離と鏡像点 x̃ からの距離の比が一定 |x| になる

まず単位球 B=B(0,1)B=B(0,1) を考えます。x∈B∖{0}x\in B\setminus\{0\} の鏡像点を x~=x/∣x∣2\tilde x=x/|x|^2(∣x~∣>1|\tilde x|\gt1)とします。∣y∣=1|y|=1 なら

∣x∣2∣y−x~∣2=∣x∣2−2x⋅y+1=∣x−y∣2|x|^2|y-\tilde x|^2=|x|^2-2x\cdot y+1=|x-y|^2

なので ∣x∣ ∣y−x~∣=∣x−y∣|x|\,|y-\tilde x|=|x-y| です。Φ\Phi は ∣x∣|x| だけの関数なので、φx(y)=Φ(∣x∣(y−x~))\varphi^x(y)=\Phi\bigl(|x|(y-\tilde x)\bigr) は境界で Φ(y−x)\Phi(y-x) に一致します。y↦∣x∣(y−x~)y\mapsto|x|(y-\tilde x) は相似写像で、Bˉ\bar B 上では y≠x~y\ne\tilde x なので、φx\varphi^x は Bˉ\bar B の近傍で調和です(相似写像と合成するとラプラシアンは定数倍されるだけ)。x=0x=0 では φ0\varphi^0 を、単位球面上の Φ\Phi の値に等しい定数とします。

命題 7.4(球の Poisson 核)✓

球 B(0,r)B(0,r) の Poisson 核は

Kr(x,y)=r2−∣x∣2nωn r ∣x−y∣n(∣x∣<r, ∣y∣=r)K_r(x,y)=\frac{r^2-|x|^2}{n\omega_n\,r\,|x-y|^n}\qquad(|x|\lt r,\ |y|=r)

である。Kr>0K_r\gt0 で、∫∂B(0,r)Kr(x,y) dS(y)=1\int_{\partial B(0,r)}K_r(x,y)\,dS(y)=1 が成り立つ。

証明では、鏡像点で作った補正関数 φx\varphi^x を yy で微分して、G=Φ(y−x)−φx(y)G=\Phi(y-x)-\varphi^x(y) の法微分を実際に計算します。∣x∣ ∣y−x~∣=∣x−y∣|x|\,|y-\tilde x|=|x-y| のおかげで分母がそろい、式がきれいにまとまります。

証明(命題 7.4)

r=1r=1 で計算し、一般の rr は相似変換 x↦x/rx\mapsto x/r で得ます(dSdS は rn−1r^{n-1} 倍、法微分は r−1r^{-1} 倍になる)。∇Φ(z)=−z/(nωn∣z∣n)\nabla\Phi(z)=-z/(n\omega_n|z|^n) と ∣x∣ ∣y−x~∣=∣x−y∣|x|\,|y-\tilde x|=|x-y| から

∂yiΦ(y−x)=−yi−xinωn∣x−y∣n,∂yiΦ(∣x∣(y−x~))=−∣x∣2(yi−x~i)nωn∣x−y∣n=−∣x∣2yi−xinωn∣x−y∣n\partial_{y_i}\Phi(y-x)=-\frac{y_i-x_i}{n\omega_n|x-y|^n},\qquad\partial_{y_i}\Phi\bigl(|x|(y-\tilde x)\bigr)=-\frac{|x|^2(y_i-\tilde x_i)}{n\omega_n|x-y|^n}=-\frac{|x|^2y_i-x_i}{n\omega_n|x-y|^n}

です。差をとると ∂yiG(x,y)=−yi(1−∣x∣2)nωn∣x−y∣n\partial_{y_i}G(x,y)=-\frac{y_i(1-|x|^2)}{n\omega_n|x-y|^n} で、ν=y\nu=y との内積をとって K(x,y)=1−∣x∣2nωn∣x−y∣nK(x,y)=\frac{1-|x|^2}{n\omega_n|x-y|^n} です。正値性は明らかです。u≡1u\equiv1 に 定理 7.3 を使うと ∫K(x,y) dS(y)=1\int K(x,y)\,dS(y)=1 が出ます。

n=2n=2、r=1r=1 では K(x,y)=1−∣x∣22π∣x−y∣2K(x,y)=\frac{1-|x|^2}{2\pi|x-y|^2} で、複素解析の Poisson 核 定義 4.1[調和関数と Poisson 積分] と同じものです(dS=dθdS=d\theta)。

定理 7.5(球の Dirichlet 問題)✓

g∈C(∂B(0,r))g\in C(\partial B(0,r)) に対し

u(x)=∫∂B(0,r)Kr(x,y) g(y) dS(y)(∣x∣<r),u(x)=g(x)(∣x∣=r)u(x)=\int_{\partial B(0,r)}K_r(x,y)\,g(y)\,dS(y)\quad(|x|\lt r),\qquad u(x)=g(x)\quad(|x|=r)

とおく。このとき u∈C∞(B(0,r))∩C(Bˉ(0,r))u\in C^\infty(B(0,r))\cap C(\bar B(0,r)) で、uu は B(0,r)B(0,r) で調和である。さらに、このような uu はただ一つである。

証明(定理 7.5)

調和性。 yy を固定し w=x−yw=x-y とおくと、積の微分と Δ∣w∣−n=2n∣w∣−n−2\Delta|w|^{-n}=2n|w|^{-n-2}(定義 6.1 の後の公式で a=−na=-n)から

Δx[(r2−∣x∣2)∣x−y∣−n]=2n∣w∣−n−2[(r2−∣x∣2)+2x⋅(x−y)−∣x−y∣2]=2n∣w∣−n−2(r2−∣y∣2)=0\Delta_x\bigl[(r^2-|x|^2)|x-y|^{-n}\bigr]=2n|w|^{-n-2}\bigl[(r^2-|x|^2)+2x\cdot(x-y)-|x-y|^2\bigr]=2n|w|^{-n-2}\bigl(r^2-|y|^2\bigr)=0

です(∣y∣=r|y|=r)。KrK_r は {∣x∣<r}×∂B(0,r)\{|x|\lt r\}\times\partial B(0,r) 上で xx について C∞C^\infty で、∣x∣≤ρ<r|x|\le\rho\lt r の範囲では導関数が一様に有界なので、積分記号下で何回でも微分でき、u∈C∞u\in C^\infty、Δu=0\Delta u=0 です。

境界での連続性。 y0∈∂B(0,r)y_0\in\partial B(0,r)、ε>0\varepsilon\gt0 とし、∣y−y0∣<δ|y-y_0|\lt\delta なら ∣g(y)−g(y0)∣<ε|g(y)-g(y_0)|\lt\varepsilon となる δ\delta をとります。∣x−y0∣<δ/2|x-y_0|\lt\delta/2 なら、命題 7.4 の ∫Kr=1\int K_r=1、Kr>0K_r\gt0 と、∣y−y0∣≥δ|y-y_0|\ge\delta のとき ∣x−y∣≥δ/2|x-y|\ge\delta/2 であることから

∣u(x)−g(y0)∣≤∫Kr(x,y)∣g(y)−g(y0)∣ dS(y)≤ε+2max⁡∣g∣⋅r2−∣x∣2nωnr(2δ)nnωnrn−1|u(x)-g(y_0)|\le\int K_r(x,y)|g(y)-g(y_0)|\,dS(y)\le\varepsilon+2\max|g|\cdot\frac{r^2-|x|^2}{n\omega_nr}\Bigl(\frac2\delta\Bigr)^nn\omega_nr^{n-1}

です。x→y0x\to y_0 で r2−∣x∣2→0r^2-|x|^2\to0 なので lim sup⁡∣u(x)−g(y0)∣≤ε\limsup|u(x)-g(y_0)|\le\varepsilon です。境界上の点どうしの連続性は gg の連続性そのものです。

一意性。 系 4.3 です。

平均値の性質は x=0x=0 の場合です。Kr(0,y)=1nωnrn−1K_r(0,y)=\frac1{n\omega_nr^{n-1}} なので、Poisson の公式は u(0)=Mu(0,r)u(0)=M_u(0,r) を含んでいます。

演習 8.1易

Rn\mathbb{R}^n 上の有界な調和関数は定数であることを示せ(Liouville の定理)。

解答

∣u∣≤M|u|\le M とします。任意の xx と r>0r\gt0 で Bˉ(x,r)⊂Rn\bar B(x,r)\subset\mathbb{R}^n なので、命題 3.4 から ∣∂iu(x)∣≤nM/r|\partial_iu(x)|\le nM/r です。r→∞r\to\infty として ∇u=0\nabla u=0、Rn\mathbb{R}^n は連結なので uu は定数です。

演習 8.2標準

u∈C(Bˉ(0,r))u\in C(\bar B(0,r)) が B(0,r)B(0,r) で非負かつ調和なら、∣x∣<r|x|\lt r で

rn−2(r−∣x∣)(r+∣x∣)n−1 u(0)≤u(x)≤rn−2(r+∣x∣)(r−∣x∣)n−1 u(0)\frac{r^{n-2}(r-|x|)}{(r+|x|)^{n-1}}\,u(0)\le u(x)\le\frac{r^{n-2}(r+|x|)}{(r-|x|)^{n-1}}\,u(0)

が成り立つことを示せ。

解答

定理 7.5 の一意性から uu は境界値の Poisson 積分です。∣y∣=r|y|=r では r−∣x∣≤∣x−y∣≤r+∣x∣r-|x|\le|x-y|\le r+|x|、r2−∣x∣2=(r−∣x∣)(r+∣x∣)r^2-|x|^2=(r-|x|)(r+|x|) なので

r−∣x∣nωnr(r+∣x∣)n−1≤Kr(x,y)≤r+∣x∣nωnr(r−∣x∣)n−1.\frac{r-|x|}{n\omega_nr(r+|x|)^{n-1}}\le K_r(x,y)\le\frac{r+|x|}{n\omega_nr(r-|x|)^{n-1}} .

u≥0u\ge0 を掛けて積分し、平均値の性質 ∫∂B(0,r)u dS=nωnrn−1u(0)\int_{\partial B(0,r)}u\,dS=n\omega_nr^{n-1}u(0) を使えば主張が出ます。この式は 定理 5.1 の定数を球の場合に具体化したもので、xx が境界に近づくと定数が発散する様子がわかります。

演習 8.3標準

n=3n=3 とし、u=Φ∗1B(0,1)u=\Phi*\mathbf 1_{B(0,1)} とする。∣x∣>1|x|\gt1 で u(x)=13∣x∣u(x)=\frac1{3|x|} となることを示せ。

解答

∣x∣>1|x|\gt1 を固定すると、y↦Φ(x−y)y\mapsto\Phi(x-y) は Bˉ(0,1)\bar B(0,1) の近傍で調和です(Φ\Phi は原点の外で調和)。定理 3.2 の球平均の式から ∫B(0,1)Φ(x−y) dy=ω3Φ(x)=4π3⋅14π∣x∣=13∣x∣\int_{B(0,1)}\Phi(x-y)\,dy=\omega_3\Phi(x)=\frac{4\pi}3\cdot\frac1{4\pi|x|}=\frac1{3|x|} です。一様な密度の球の外側のポテンシャルが、全質量を中心に集めた点のポテンシャルに等しいという Newton の定理です。

演習 8.4難

R+n={xn>0}\mathbb{R}^n_+=\{x_n\gt0\} とし、u∈C2(R+n)∩C(R+n‾)u\in C^2(\mathbb{R}^n_+)\cap C(\overline{\mathbb{R}^n_+}) が調和、境界 {xn=0}\{x_n=0\} で u=0u=0、かつ有界であるとする。u=0u=0 を示せ。u=xnu=x_n の例と比べ、有界性の仮定の役割を説明せよ。

解答

奇関数拡張 u~(x′,xn)=−u(x′,−xn)\tilde u(x',x_n)=-u(x',-x_n)(xn<0x_n\lt0)で u~\tilde u を Rn\mathbb{R}^n 上の有界な連続関数に延ばします(境界で u=0u=0 なので連続)。R(x′,xn)=(x′,−xn)R(x',x_n)=(x',-x_n) を鏡映とすると u~∘R=−u~\tilde u\circ R=-\tilde u です。{xn≠0}\{x_n\ne0\} では u~\tilde u は明らかに調和なので、平面 {xn=0}\{x_n=0\} 上の点 x0x_0 の近くで調和であることを示します。

B=B(x0,r)B=B(x_0,r) とし、vv を境界値 u~∣∂B\tilde u|_{\partial B} の Poisson 積分(定理 7.5)とします。RR は BB を保つ等長写像なので v∘Rv\circ R も BB で調和で、境界値は u~∘R=−u~\tilde u\circ R=-\tilde u です。一意性から v∘R=−vv\circ R=-v、したがって平面上で v=0v=0 です。上半球 B+=B∩{xn>0}B^+=B\cap\{x_n\gt0\} で w=v−uw=v-u は調和、Bˉ+\bar B^+ で連続で、境界の球面部分では v=u~=uv=\tilde u=u、平らな部分では v=u=0v=u=0 なので、∂B+\partial B^+ 上 w=0w=0 です。系 4.2(B+B^+ は有界)を ±w\pm w に使って B+B^+ 上 v=u=u~v=u=\tilde u、下半球でも同様なので、BB 上 u~=v\tilde u=v は調和です。

よって u~\tilde u は Rn\mathbb{R}^n 上の有界な調和関数で、演習 8.1 により定数、平面上の値から 00 です。

u=xnu=x_n は有界でないので Liouville の定理が使えず、実際 u~=xn\tilde u=x_n は Rn\mathbb{R}^n 上の調和関数として定数ではありません。非有界領域の一意性には、無限遠での増大度の制限が必要です。

  • L. C. Evans, Partial Differential Equations, 2nd ed., American Mathematical Society, 2010 — Chapter 2.2(平均値の性質・最大値原理・Green 関数)。
  • D. Gilbarg, N. S. Trudinger, Elliptic Partial Differential Equations of Second Order, Springer, 2001(Classics in Mathematics 版)— Chapter 2。
  • F. John, Partial Differential Equations, 4th ed., Springer, 1982 — Chapter 4。
  • S. Axler, P. Bourdon, W. Ramey, Harmonic Function Theory, 2nd ed., Springer, 2001 — Chapters 1–3(Harnack の不等式と Poisson 核)。
  • 俣野博・神保道夫『熱・波動と微分方程式』岩波書店、2004 — ラプラス方程式の章。

このテーマの 100 本ノック(50 問)

執筆: Claude Code(Opus 5.5)、Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 3 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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