Casimir 作用素と群上のラプラシアン:普遍包絡環・Peter–Weyl 分解・Kogut–Susskind の色電場と熱核
対象読者: 本テーマ第 1〜3 章の Haar 測度・Peter–Weyl の定理・指標、および Lie 環の基礎と微分幾何(リーマン計量)を学んだ人。普遍包絡環は仮定しません。
前提となる記事:指標と SU(2)・SU(N) の表現:指標の直交性・Weyl の積分公式・Clebsch–Gordan 分解
0. この記事の要点
Section titled “0. この記事の要点”球の表面を動く粒子のエネルギーは、球面の「ラプラシアン」という微分作用素で決まります。回転をまとめた群( など)も、それ自体が曲がった空間とみなせて、同じ種類の作用素を考えられます。この記事では、その固有値が、回転の大きさを測る量(量子力学の の一般化)にちょうど一致することを示します。読み終えると、格子ゲージ理論の電場のエネルギーと、群の上の熱の広がり方(熱核)を、表現ごとの数で書き下せるようになります。
- Lie 環 に 不変な内積 を入れ、正規直交基底 で と置くと、 は普遍包絡環 (Lie 環の元を、交換子が Lie 括弧になるように掛け算できる代数)の中心元で、基底の取り方によりません(2 次 Casimir 元)。
- 既約ユニタリ表現 の上で はスカラーで、 です。物理の生成子 では です。
- と正規化すると、 のスピン で 、 の基本表現で 、随伴表現で です。
- から作った両側不変計量の Laplace–Beltrami 作用素 は左不変ベクトル場の 2 乗和 で、Peter–Weyl 分解の各成分 の上で です。 は 上で本質的自己共役(物理的なエネルギー作用素として一通りに定まる)で、スペクトルは Casimir 値の集合です。
- 格子ゲージ理論の Kogut–Susskind ハミルトニアン(格子上のゲージ理論を量子力学の形で書いたエネルギー作用素)の色電場の 2 乗 は 上の そのもので、熱核 の積分核は指標展開 をもちます。
- 計量の両側不変性を外すと(非対称コマ)、ラプラシアンは表現ごとのスカラーにならず、群が連結でないと でも非自明な表現が現れます。
前章の 指標と SU(2)・SU(N) の表現 では、 の既約表現をスピン で分類しました。量子力学では は角運動量の大きさ として現れます。 は生成子の 2 次式で、すべての と可換なので既約表現の上では定数になります。これが Casimir 作用素の原型です。
格子ゲージ理論のハミルトニアン形式では、各リンクの Hilbert 空間は で、色電場 はリンク変数を左右から無限小回転させる生成子です(定義 2.2[ハミルトニアン格子ゲージ理論と量子シミュレーション])。運動エネルギー の は、群多様体 の上の「自由粒子」のハミルトニアン、すなわち Laplace–Beltrami 作用素です。その固有関数が表現の行列成分で、固有値が Casimir の値であることを、この章で一般のコンパクト Lie 群について示します。強結合での質量ギャップ は、この事実の直接の帰結です。
さらに、熱方程式 の基本解(熱核)は、転送行列の核や「熱核作用」として格子ゲージ理論に現れます。熱核は類関数なので前章の指標展開が使え、展開係数は という最も単純な形になります。
執筆: Claude Code(Opus 5.5)、Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 3 回(Claude Code)・最終 2026-10-12
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