曲がった面の上で、場所ごとに向きを変える矢印をどう微分すればよいか、という問いがこの記事の出発点です。平らな平面なら矢印の成分を座標ごとに微分すれば済みますが、球面のように曲がっていると、場所ごとに矢印の置かれる平面が違うため、そのままでは引き算ができません。この記事では、その引き算を可能にする仕組み(接続)を定め、長さを測る約束(計量)が決まれば、捩れがなく計量と両立するという条件でその仕組みがただ一つに決まることを示し、最後に球面の上で矢印を運ぶと一周して向きがずれることを計算します。
Riemann 計量 は各接空間に内積を滑らかに与えるもので、どの多様体にも存在します(定理 3.6 )。証明は局所的な内積を 1 の分割 で貼り合わせるだけで、内積の全体が凸集合であることが効いています。計量を正の関数倍する共形変換 は角度を保ち、角度を保つ写像はちょうど共形写像です(命題 3.4 )。
接空間 T p M T_pM T p M と T q M T_qM T q M は別のベクトル空間なので、ベクトル場を「微分」するには追加の構造が要ります。それがアフィン接続(共変微分) ∇ \nabla ∇ です。接続は第 1 引数について点ごと(テンソル的。点 p p p での値が X X X の p p p での値だけで決まる、ということ)、第 2 引数について Leibniz 則を満たします(命題 4.2 )。
接続があれば、曲線に沿ったベクトル場の共変微分 D t D_t D t が一意に定まります(定理 4.3 )。
計量と両立し捩れのない接続はただ一つです(Levi-Civita 接続 、定理 5.2 )。証明は Koszul の公式 で ∇ \nabla ∇ を計量と Lie 括弧 だけで書き表すことです。成分では Christoffel 記号(座標で書いたときの接続の係数のこと)の公式になります。
曲線に沿って D t V = 0 D_tV=0 D t V = 0 となるように運ぶのが平行移動 で、Levi-Civita 接続の平行移動は内積を保つ線形同型です(定理 6.3 )。球面の緯線を一周すると、ベクトルは囲む面積 2 π ( 1 − cos θ 0 ) 2\pi(1-\cos\theta_0) 2 π ( 1 − cos θ 0 ) だけ回転します(例 6.4 )。
この記事で使う事前知識
1 の分割 : 台が局所有限で、和が 1 1 1 になる非負の滑らかな関数の族。局所的に作ったものを貼り合わせる道具。→ 部分多様体と正則値定理
Lie 括弧 : ベクトル場 X , Y X,Y X , Y から作るベクトル場 [ X , Y ] [X,Y] [ X , Y ] 。関数 f f f に対し [ X , Y ] f = X ( Y f ) − Y ( X f ) [X,Y]f=X(Yf)-Y(Xf) [ X , Y ] f = X ( Y f ) − Y ( X f ) で定まる。→ Lie 括弧
接ベクトル : 多様体上の点を通る曲線の、その点での速度を表すベクトル。→ 接ベクトル
チャート : 多様体の一部を R n \mathbb{R}^n R n の開集合と同一視する座標近傍。→ チャート
埋め込み部分多様体 : R N \mathbb{R}^N R N の中に滑らかに収まっている多様体(球面など)。→ 埋め込み部分多様体
正規直交基底 : 長さが 1 1 1 で互いに直交するベクトルからなる基底。
R n \mathbb{R}^n R n では、ベクトル場 Y Y Y を方向 v v v に微分するには、成分ごとに方向微分すれば済みます。これは、異なる点の接ベクトル を平行移動で同一視できるからです。曲面や一般の多様体ではこの同一視が無く、座標成分を微分した量 ∂ i Y j \partial_iY^j ∂ i Y j は座標変換で余分な項を生み、テンソルになりません。実際、共変と反変の変換則(命題 4.3)[ベクトル場と微分形式] にしたがって Y j Y^j Y j を変換すると、∂ i Y j \partial_iY^j ∂ i Y j には変換行列の 2 階微分が混ざります。
異なる点の接空間は別々のベクトル空間。点 p の矢印 Y(p) と点 q の矢印 Y(q) は別の空間に入っているので、差 Y(q) − Y(p) はそのままでは意味を持たない。
この欠陥を補うのが接続です。一般相対論では、重力場は時空の計量 g μ ν g_{\mu\nu} g μν として表され、自由落下する粒子は「加速度 ∇ γ ˙ γ ˙ \nabla_{\dot\gamma}\dot\gamma ∇ γ ˙ γ ˙ が 0 0 0 」の曲線(測地線)を描きます。この加速度を定義するのが Levi-Civita 接続で、その存在と一意性が本記事の中心定理です。物理の側では 時空のテンソルと測地線 が座標成分で同じ定理を扱っています。ここでは座標によらない形で述べ、Riemann 計量(正定値)の場合に証明します。証明は不定値計量(Lorentz 計量)でも一字一句そのまま通ります。
接続にはもう一つの顔があります。ゲージ理論のゲージ場は、主束の接続にほかなりません。本記事の接続はその特別な場合(構造群が G L ( n , R ) GL(n,\mathbb{R}) G L ( n , R ) や O ( n ) O(n) O ( n ) の場合)で、一般論は 主束と接続 の章で扱います。
M M M を n n n 次元の滑らかな多様体とし、滑らかなベクトル場全体を X ( M ) \mathfrak{X}(M) X ( M ) 、滑らかな関数全体を C ∞ ( M ) C^\infty(M) C ∞ ( M ) と書きます。ベクトル場の定義と滑らかさの判定は ベクトル場と微分形式 に従います(定義 3.1[ベクトル場と微分形式] )。
( 0 , k ) (0,k) ( 0 , k ) 型テンソル場とは、各点 p p p に多重線形写像 T p : ( T p M ) k → R T_p\colon(T_pM)^k\to\mathbb{R} T p : ( T p M ) k → R を与え、局所座標での成分 T i 1 ⋯ i k = T ( ∂ i 1 , … , ∂ i k ) T_{i_1\cdots i_k}=T(\partial_{i_1},\dots,\partial_{i_k}) T i 1 ⋯ i k = T ( ∂ i 1 , … , ∂ i k ) が滑らかなものです。( 1 , k ) (1,k) ( 1 , k ) 型は値が T p M T_pM T p M に入るものです。テンソル場 T T T はベクトル場の上の写像 X ( M ) k → C ∞ ( M ) \mathfrak{X}(M)^k\to C^\infty(M) X ( M ) k → C ∞ ( M ) (あるいは X ( M ) \mathfrak{X}(M) X ( M ) )を与え、これは各引数について C ∞ ( M ) C^\infty(M) C ∞ ( M ) 線形 です。逆が成り立つことが、以後何度も使う判定法です。
次の補題のねらいは、「ベクトル場に関数を掛けても、その関数倍がそのまま外に出る演算は、各点ではその点のベクトルの値しか見ていない」ことの保証です。後の節では、ベクトル場を微分する演算が点ごとの量(テンソル)かどうかを、この補題で判定します。証明は、点 p p p でゼロになるベクトル場を、座標ベクトル場の関数倍の和に分けて、そのゼロになる成分が掛かった項を消す、という流れです。
補題 2.1 (テンソル判定補題 ) ✓
写像 T : X ( M ) k → C ∞ ( M ) \mathcal{T}\colon\mathfrak{X}(M)^k\to C^\infty(M) T : X ( M ) k → C ∞ ( M ) が各引数について C ∞ ( M ) C^\infty(M) C ∞ ( M ) 線形であるとする。すなわち T ( … , f X + g Y , … ) = f T ( … , X , … ) + g T ( … , Y , … ) \mathcal{T}(\dots,fX+gY,\dots)=f\,\mathcal{T}(\dots,X,\dots)+g\,\mathcal{T}(\dots,Y,\dots) T ( … , f X + g Y , … ) = f T ( … , X , … ) + g T ( … , Y , … ) が成り立つとする。このとき ( 0 , k ) (0,k) ( 0 , k ) 型テンソル場 T T T がただ一つ存在して、T ( X 1 , … , X k ) ( p ) = T p ( X 1 ∣ p , … , X k ∣ p ) \mathcal{T}(X_1,\dots,X_k)(p)=T_p(X_1|_p,\dots,X_k|_p) T ( X 1 , … , X k ) ( p ) = T p ( X 1 ∣ p , … , X k ∣ p ) となる。値が X ( M ) \mathfrak{X}(M) X ( M ) の場合も同様である。
証明(補題 2.1) k = 1 k=1 k = 1 の場合を示せば、各引数について同じ議論を繰り返すだけです。示すべきことは「X p = 0 X_p=0 X p = 0 なら T ( X ) ( p ) = 0 \mathcal{T}(X)(p)=0 T ( X ) ( p ) = 0 」です。これが言えれば、T ( X ) ( p ) \mathcal{T}(X)(p) T ( X ) ( p ) は X p X_p X p だけで決まり、T p ( v ) = T ( X ) ( p ) T_p(v)=\mathcal{T}(X)(p) T p ( v ) = T ( X ) ( p ) (X X X は X p = v X_p=v X p = v となる任意のベクトル場)が well-defined な線形写像になります。
局所性。 まず X X X が p p p の近傍 U U U で 0 0 0 なら T ( X ) ( p ) = 0 \mathcal{T}(X)(p)=0 T ( X ) ( p ) = 0 を示します。p p p の近くで 1 1 1 、台が U U U に含まれる滑らかな関数 ψ \psi ψ を取ります(p p p の閉近傍 A ⊂ U A\subset U A ⊂ U に 系 6.4[部分多様体と正則値定理] を適用)。( 1 − ψ ) X = X (1-\psi)X=X ( 1 − ψ ) X = X なので、C ∞ ( M ) C^\infty(M) C ∞ ( M ) 線形性から T ( X ) ( p ) = ( 1 − ψ ( p ) ) T ( X ) ( p ) = 0 \mathcal{T}(X)(p)=(1-\psi(p))\,\mathcal{T}(X)(p)=0 T ( X ) ( p ) = ( 1 − ψ ( p )) T ( X ) ( p ) = 0 です。
点ごと。 X p = 0 X_p=0 X p = 0 とし、p p p のまわりのチャート ( U , x 1 , … , x n ) (U,x^1,\dots,x^n) ( U , x 1 , … , x n ) を取って U U U 上で X = ∑ i X i ∂ i X=\sum_iX^i\partial_i X = ∑ i X i ∂ i と書きます。上の ψ \psi ψ (台が U U U に含まれ p p p の近くで 1 1 1 )を用いて、M M M 全体で定義されたベクトル場 E i = ψ ∂ i E_i=\psi\partial_i E i = ψ ∂ i と関数 f i = ψ X i f^i=\psi X^i f i = ψ X i を作ります(U U U の外では 0 0 0 と定める)。すると X − ∑ i f i E i X-\sum_if^iE_i X − ∑ i f i E i は p p p の近傍で 0 0 0 なので、局所性により
T ( X ) ( p ) = ∑ i f i ( p ) T ( E i ) ( p ) = ∑ i X i ( p ) T ( E i ) ( p ) = 0 \mathcal{T}(X)(p)=\sum_if^i(p)\,\mathcal{T}(E_i)(p)=\sum_iX^i(p)\,\mathcal{T}(E_i)(p)=0 T ( X ) ( p ) = i ∑ f i ( p ) T ( E i ) ( p ) = i ∑ X i ( p ) T ( E i ) ( p ) = 0 です。最後に X p = 0 X_p=0 X p = 0 すなわち X i ( p ) = 0 X^i(p)=0 X i ( p ) = 0 を使いました。T T T の成分は T i = T ( E i ) T_i=\mathcal{T}(E_i) T i = T ( E i ) (p p p の近くで)なので滑らかです。
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この補題の対偶として、「C ∞ ( M ) C^\infty(M) C ∞ ( M ) 線形でない」演算は点ごとの量になりません。ベクトル場の方向微分 Y ↦ X Y Y\mapsto XY Y ↦ X Y や Lie 括弧 Y ↦ [ X , Y ] Y\mapsto[X,Y] Y ↦ [ X , Y ] は Y Y Y について C ∞ ( M ) C^\infty(M) C ∞ ( M ) 線形でなく(命題 2.2[ベクトル場の流れ・Lie 微分・Frobenius の定理] (3))、X X X の値 X p X_p X p だけでは決まりません。接続の定義はちょうどこの性質を部分的に取り込んだものです。
定義 3.1 (Riemann 計量 ) ↗
多様体 M M M 上の Riemann 計量 g g g とは、対称な ( 0 , 2 ) (0,2) ( 0 , 2 ) 型テンソル場で、各点 p p p で g p g_p g p が T p M T_pM T p M 上の正定値内積であるものをいう。( M , g ) (M,g) ( M , g ) を Riemann 多様体 という。局所座標では g = ∑ i , j g i j d x i ⊗ d x j g=\sum_{i,j}g_{ij}\,dx^i\otimes dx^j g = ∑ i , j g ij d x i ⊗ d x j と書き、( g i j ) (g_{ij}) ( g ij ) は各点で正定値対称行列、その逆行列を ( g i j ) (g^{ij}) ( g ij ) と書く。g p ( v , w ) g_p(v,w) g p ( v , w ) を ⟨ v , w ⟩ \langle v,w\rangle ⟨ v , w ⟩ とも書く。
正定値の代わりに非退化(符号 ( − , + , … , + ) (-,+,\dots,+) ( − , + , … , + ) )を要求したものが擬 Riemann 計量(Lorentz 計量)です。以下、存在定理(定理 3.6 )以外の結果は非退化性だけで証明でき、そのまま一般相対論に使えます。
例 3.2 (Riemann 計量の例 )
Euclid 計量 。R n \mathbb{R}^n R n で g = ∑ i ( d x i ) 2 g=\sum_i(dx^i)^2 g = ∑ i ( d x i ) 2 、すなわち g i j = δ i j g_{ij}=\delta_{ij} g ij = δ ij 。
誘導計量 。M ⊂ R N M\subset\mathbb{R}^N M ⊂ R N が埋め込み部分多様体(定義 4.1[部分多様体と正則値定理] )なら、T p M ⊂ R N T_pM\subset\mathbb{R}^N T p M ⊂ R N に Euclid 内積を制限すると Riemann 計量になる。単位球面 S 2 S^2 S 2 を極座標 ( θ , φ ) ↦ ( sin θ cos φ , sin θ sin φ , cos θ ) (\theta,\varphi)\mapsto(\sin\theta\cos\varphi,\sin\theta\sin\varphi,\cos\theta) ( θ , φ ) ↦ ( sin θ cos φ , sin θ sin φ , cos θ ) で表すと、∂ θ , ∂ φ \partial_\theta,\partial_\varphi ∂ θ , ∂ φ の内積を計算して g = d θ 2 + sin 2 θ d φ 2 g=d\theta^2+\sin^2\theta\,d\varphi^2 g = d θ 2 + sin 2 θ d φ 2 を得る。
双曲平面 。上半平面 H = { ( x , y ) : y > 0 } \mathbb{H}=\{(x,y):y>0\} H = {( x , y ) : y > 0 } に g = ( d x 2 + d y 2 ) / y 2 g=(dx^2+dy^2)/y^2 g = ( d x 2 + d y 2 ) / y 2 。境界 y = 0 y=0 y = 0 に近づくほど長さが拡大される。
左不変計量 。Lie 群 G G G の単位元の接空間 g \mathfrak{g} g に内積を一つ決め、左移動で各点に運ぶと滑らかな計量が得られる(リー群とリー環 の左不変ベクトル場の基底を使えば成分が定数になる)。
例 3 の双曲計量は Euclid 計量に正の関数 1 / y 2 1/y^2 1/ y 2 を掛けたものでした。長さは変えるが角度は変えない、というこの関係に名前を付けておきます。
証明(命題 3.4) (1 ⇒ 2) 角 θ \theta θ は cos θ = g ( v , w ) / g ( v , v ) g ( w , w ) \cos\theta=g(v,w)/\sqrt{g(v,v)g(w,w)} cos θ = g ( v , w ) / g ( v , v ) g ( w , w ) で定まり、分子・分母がどちらも λ ( p ) 2 \lambda(p)^2 λ ( p ) 2 倍されるので変わりません。(2 ⇒ 3) 直角が直角に移ります。
(3 ⇒ 1) L = d ϕ p L=d\phi_p L = d ϕ p は線形同型です。T p M T_pM T p M の g g g に関する正規直交基底 e 1 , … , e n e_1,\dots,e_n e 1 , … , e n を取ると、L e i Le_i L e i は互いに直交します。また i ≠ j i\ne j i = j について g ( e i + e j , e i − e j ) = 1 − 1 = 0 g(e_i+e_j,e_i-e_j)=1-1=0 g ( e i + e j , e i − e j ) = 1 − 1 = 0 なので
0 = h ( L ( e i + e j ) , L ( e i − e j ) ) = h ( L e i , L e i ) − h ( L e j , L e j ) 0=h\bigl(L(e_i+e_j),L(e_i-e_j)\bigr)=h(Le_i,Le_i)-h(Le_j,Le_j) 0 = h ( L ( e i + e j ) , L ( e i − e j ) ) = h ( L e i , L e i ) − h ( L e j , L e j ) で、c = h ( L e i , L e i ) > 0 c=h(Le_i,Le_i)>0 c = h ( L e i , L e i ) > 0 は i i i によりません。よって双線形性から h ( L v , L w ) = c g ( v , w ) h(Lv,Lw)=c\,g(v,w) h ( Lv , L w ) = c g ( v , w ) です。λ ( p ) = c \lambda(p)=\sqrt c λ ( p ) = c と置くと、p p p の近くで 0 0 0 にならない滑らかなベクトル場 X X X について λ 2 = h ( d ϕ X , d ϕ X ) / g ( X , X ) \lambda^2=h(d\phi X,d\phi X)/g(X,X) λ 2 = h ( d ϕX , d ϕX ) / g ( X , X ) なので λ \lambda λ は滑らかです。
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共形変換で Levi-Civita 接続がどう変わるかは、演習 7.2 で計算します。2 次元では任意の Riemann 計量が局所的に Euclid 計量と共形同値(等温座標の存在)であり、n ≥ 3 n\ge3 n ≥ 3 では R n \mathbb{R}^n R n の開集合の間の共形写像は Möbius 変換に限られる(Liouville の定理)ことが知られています。どちらも本サイトではまだ扱っていません。
定理 3.6 (Riemann 計量の存在 ) ✓
(Hausdorff かつ第二可算な)任意の滑らかな多様体 M M M は Riemann 計量を持つ。
証明(定理 3.6) M M M のアトラス { ( U α , ϕ α ) } \{(U_\alpha,\phi_\alpha)\} {( U α , ϕ α )} を取ります。各 U α U_\alpha U α 上では、座標の Euclid 計量 g α = ∑ i ( d x α i ) 2 g_\alpha=\sum_i(dx_\alpha^i)^2 g α = ∑ i ( d x α i ) 2 が Riemann 計量です。被覆 { U α } \{U_\alpha\} { U α } に従属する 1 の分割 { ρ j } \{\rho_j\} { ρ j } を取ります(定理 6.3[部分多様体と正則値定理] )。すなわち ρ j ≥ 0 \rho_j\ge0 ρ j ≥ 0 、supp ρ j ⊂ U α ( j ) \operatorname{supp}\rho_j\subset U_{\alpha(j)} supp ρ j ⊂ U α ( j ) 、台の族は局所有限で ∑ j ρ j = 1 \sum_j\rho_j=1 ∑ j ρ j = 1 です。
g = ∑ j ρ j g α ( j ) g=\sum_j\rho_j\,g_{\alpha(j)} g = j ∑ ρ j g α ( j ) と置きます(ρ j g α ( j ) \rho_jg_{\alpha(j)} ρ j g α ( j ) は U α ( j ) U_{\alpha(j)} U α ( j ) の外で 0 0 0 と定めて M M M 上のテンソル場とみなす)。局所有限性により各点の近傍では有限和なので、g g g は滑らかな対称 ( 0 , 2 ) (0,2) ( 0 , 2 ) テンソル場です。正定値性を確かめます。v ∈ T p M v\in T_pM v ∈ T p M 、v ≠ 0 v\ne0 v = 0 とすると、各項は ρ j ( p ) g α ( j ) ( v , v ) ≥ 0 \rho_j(p)g_{\alpha(j)}(v,v)\ge0 ρ j ( p ) g α ( j ) ( v , v ) ≥ 0 で、ρ j ( p ) > 0 \rho_j(p)>0 ρ j ( p ) > 0 となる j j j が少なくとも一つある(和が 1 1 1 だから)ので、その項は正です。よって g p ( v , v ) > 0 g_p(v,v)>0 g p ( v , v ) > 0 です。
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計量があれば曲線の長さが定まります。区分的に滑らかな曲線 γ : [ a , b ] → M \gamma\colon[a,b]\to M γ : [ a , b ] → M に対し
L ( γ ) = ∫ a b g ( γ ˙ ( t ) , γ ˙ ( t ) ) d t L(\gamma)=\int_a^b\sqrt{g(\dot\gamma(t),\dot\gamma(t))}\,dt L ( γ ) = ∫ a b g ( γ ˙ ( t ) , γ ˙ ( t )) d t
と置きます。単調な C 1 C^1 C 1 級のパラメータ変換 t = ϕ ( s ) t=\phi(s) t = ϕ ( s ) で L L L が変わらないことは、置換積分 ∫ ∣ γ ˙ ( ϕ ( s ) ) ∣ ∣ ϕ ′ ( s ) ∣ d s \int|\dot\gamma(\phi(s))|\,|\phi'(s)|\,ds ∫ ∣ γ ˙ ( ϕ ( s )) ∣ ∣ ϕ ′ ( s ) ∣ d s から従います。2 点を結ぶ曲線の長さの下限が Riemann 距離 d ( p , q ) d(p,q) d ( p , q ) で、これが多様体の位相を与える距離であることは 測地線と完備性 の章で示します。
定義 4.1 (アフィン接続(共変微分) ) ↗
M M M 上のアフィン接続 とは、写像 ∇ : X ( M ) × X ( M ) → X ( M ) \nabla\colon\mathfrak{X}(M)\times\mathfrak{X}(M)\to\mathfrak{X}(M) ∇ : X ( M ) × X ( M ) → X ( M ) 、( X , Y ) ↦ ∇ X Y (X,Y)\mapsto\nabla_XY ( X , Y ) ↦ ∇ X Y で、次を満たすものをいう。
X X X について C ∞ ( M ) C^\infty(M) C ∞ ( M ) 線形:∇ f X + g X ′ Y = f ∇ X Y + g ∇ X ′ Y \nabla_{fX+gX'}Y=f\nabla_XY+g\nabla_{X'}Y ∇ f X + g X ′ Y = f ∇ X Y + g ∇ X ′ Y 。
Y Y Y について R \mathbb{R} R 線形。
Leibniz 則:∇ X ( f Y ) = ( X f ) Y + f ∇ X Y \nabla_X(fY)=(Xf)\,Y+f\,\nabla_XY ∇ X ( f Y ) = ( X f ) Y + f ∇ X Y 。
∇ X Y \nabla_XY ∇ X Y を Y Y Y の X X X 方向の共変微分 という。
この定義の読み方です。条件 1 は、X X X 方向の微分が点ごとに(点 p p p での X X X の値だけで)決まるという、方向微分らしい性質です。条件 3 は、通常の積の微分則 ( f g ) ′ = f ′ g + f g ′ (fg)'=f'g+fg' ( f g ) ′ = f ′ g + f g ′ の一般化です。R n \mathbb{R}^n R n の成分ごとの方向微分は、まさにこの 3 条件を満たします。
R n \mathbb{R}^n R n の成分ごとの方向微分 ∇ ˉ X Y = ∑ j ( X Y j ) ∂ j \bar\nabla_XY=\sum_j(XY^j)\partial_j ∇ ˉ X Y = ∑ j ( X Y j ) ∂ j はアフィン接続です。これを平坦接続 と呼びます。
命題 4.2 (接続の局所性と Christoffel 記号 ) ✓
∇ \nabla ∇ をアフィン接続とする。
( ∇ X Y ) p (\nabla_XY)_p ( ∇ X Y ) p は X p X_p X p と、p p p の任意の近傍上の Y Y Y の値だけで決まる。とくに ∇ \nabla ∇ は開集合 U U U 上の接続 ∇ ∣ U \nabla|_U ∇ ∣ U を誘導する。
チャート ( U , x i ) (U,x^i) ( U , x i ) で ∇ ∂ i ∂ j = ∑ k Γ i j k ∂ k \nabla_{\partial_i}\partial_j=\sum_k\Gamma^k_{ij}\partial_k ∇ ∂ i ∂ j = ∑ k Γ ij k ∂ k により滑らかな関数 Γ i j k \Gamma^k_{ij} Γ ij k (Christoffel 記号 )を定めると、
∇ X Y = ∑ k ( X Y k + ∑ i , j Γ i j k X i Y j ) ∂ k . \nabla_XY=\sum_k\Bigl(XY^k+\sum_{i,j}\Gamma^k_{ij}X^iY^j\Bigr)\partial_k. ∇ X Y = k ∑ ( X Y k + i , j ∑ Γ ij k X i Y j ) ∂ k .
二つの接続の差 A ( X , Y ) = ∇ X Y − ∇ X ′ Y A(X,Y)=\nabla_XY-\nabla'_XY A ( X , Y ) = ∇ X Y − ∇ X ′ Y は ( 1 , 2 ) (1,2) ( 1 , 2 ) 型テンソル場である。逆に接続 ∇ \nabla ∇ と ( 1 , 2 ) (1,2) ( 1 , 2 ) テンソル場 A A A に対し ∇ + A \nabla+A ∇ + A は接続である。
任意の多様体はアフィン接続を持つ。
証明(命題 4.2) (1) X X X についての主張は性質 1 と 補題 2.1 の議論(C ∞ ( M ) C^\infty(M) C ∞ ( M ) 線形なら点ごと)そのものです。Y Y Y について、Y Y Y が p p p の近傍 U U U で 0 0 0 なら ( ∇ X Y ) p = 0 (\nabla_XY)_p=0 ( ∇ X Y ) p = 0 を示します。p p p の近くで 1 1 1 、台が U U U に含まれる ψ \psi ψ を取ると ψ Y = 0 \psi Y=0 ψ Y = 0 なので、Leibniz 則から 0 = ∇ X ( ψ Y ) p = ( X p ψ ) Y p + ψ ( p ) ( ∇ X Y ) p = ( ∇ X Y ) p 0=\nabla_X(\psi Y)_p=(X_p\psi)Y_p+\psi(p)(\nabla_XY)_p=(\nabla_XY)_p 0 = ∇ X ( ψ Y ) p = ( X p ψ ) Y p + ψ ( p ) ( ∇ X Y ) p = ( ∇ X Y ) p です(Y p = 0 Y_p=0 Y p = 0 、ψ ( p ) = 1 \psi(p)=1 ψ ( p ) = 1 )。U U U 上の Y Y Y については、ψ Y \psi Y ψ Y を M M M 上に延ばして定義すればよく、局所性により ψ \psi ψ の取り方によりません。
(2) 性質 1、3 から ∇ X Y = ∑ i X i ∇ ∂ i ( ∑ j Y j ∂ j ) = ∑ i , j X i ( ( ∂ i Y j ) ∂ j + Y j Γ i j k ∂ k ) \nabla_XY=\sum_iX^i\nabla_{\partial_i}\bigl(\sum_jY^j\partial_j\bigr)=\sum_{i,j}X^i\bigl((\partial_iY^j)\partial_j+Y^j\Gamma^k_{ij}\partial_k\bigr) ∇ X Y = ∑ i X i ∇ ∂ i ( ∑ j Y j ∂ j ) = ∑ i , j X i ( ( ∂ i Y j ) ∂ j + Y j Γ ij k ∂ k ) です。
(3) A ( X , f Y ) = ( X f ) Y + f ∇ X Y − ( X f ) Y − f ∇ X ′ Y = f A ( X , Y ) A(X,fY)=(Xf)Y+f\nabla_XY-(Xf)Y-f\nabla'_XY=fA(X,Y) A ( X , f Y ) = ( X f ) Y + f ∇ X Y − ( X f ) Y − f ∇ X ′ Y = f A ( X , Y ) で Leibniz 項が打ち消し合うので、A A A は両引数について C ∞ ( M ) C^\infty(M) C ∞ ( M ) 線形です。補題 2.1 によりテンソル場です。逆は定義の 3 条件を確かめるだけです。
(4) 各チャート U α U_\alpha U α 上では座標の平坦接続 ∇ α \nabla^\alpha ∇ α (Γ = 0 \Gamma=0 Γ = 0 )が接続です。定理 3.6 の証明と同じ 1 の分割 { ρ j } \{\rho_j\} { ρ j } で ∇ X Y = ∑ j ρ j ∇ X α ( j ) Y \nabla_XY=\sum_j\rho_j\nabla^{\alpha(j)}_XY ∇ X Y = ∑ j ρ j ∇ X α ( j ) Y と置くと、性質 1、2 は明らかで、Leibniz 則は ∑ j ρ j ( ( X f ) Y + f ∇ X α ( j ) Y ) = ( X f ) Y + f ∇ X Y \sum_j\rho_j\bigl((Xf)Y+f\nabla^{\alpha(j)}_XY\bigr)=(Xf)Y+f\nabla_XY ∑ j ρ j ( ( X f ) Y + f ∇ X α ( j ) Y ) = ( X f ) Y + f ∇ X Y となります。ここで ∑ j ρ j = 1 \sum_j\rho_j=1 ∑ j ρ j = 1 を使いました。係数の和が 1 1 1 であることが本質で、接続の全体は線形空間ではなく、( 1 , 2 ) (1,2) ( 1 , 2 ) テンソル場の空間をモデルとするアフィン空間です。
∎
Christoffel 記号 Γ i j k \Gamma^k_{ij} Γ ij k の意味は、定義のとおり「座標の基底ベクトル ∂ j \partial_j ∂ j を ∂ i \partial_i ∂ i 方向に動かしたとき、基底ベクトルそのものがどれだけ変わるか」を基底 ∂ k \partial_k ∂ k で測った係数です。平らな空間の直交座標では基底が動かないので Γ = 0 \Gamma=0 Γ = 0 ですが、極座標のように基底が場所ごとに向きを変える座標では 0 0 0 になりません。また (4) で係数の和が 1 1 1 であることが本質なのは、接続をただ足すと Leibniz 則の項 ( X f ) Y (Xf)Y ( X f ) Y が重複して 2 ( X f ) Y 2(Xf)Y 2 ( X f ) Y になり、条件 3 が崩れるからです。
座標変換 x ~ \tilde x x ~ のもとでの Christoffel 記号の変換則は、(2) の式が座標によらないことから
Γ ~ a b c = ∑ i , j , k ∂ x i ∂ x ~ a ∂ x j ∂ x ~ b ∂ x ~ c ∂ x k Γ i j k + ∑ k ∂ 2 x k ∂ x ~ a ∂ x ~ b ∂ x ~ c ∂ x k \tilde\Gamma^c_{ab}=\sum_{i,j,k}\frac{\partial x^i}{\partial\tilde x^a}\frac{\partial x^j}{\partial\tilde x^b}\frac{\partial\tilde x^c}{\partial x^k}\Gamma^k_{ij}+\sum_k\frac{\partial^2x^k}{\partial\tilde x^a\partial\tilde x^b}\frac{\partial\tilde x^c}{\partial x^k} Γ ~ ab c = i , j , k ∑ ∂ x ~ a ∂ x i ∂ x ~ b ∂ x j ∂ x k ∂ x ~ c Γ ij k + k ∑ ∂ x ~ a ∂ x ~ b ∂ 2 x k ∂ x k ∂ x ~ c
となります。最後の非斉次項が、Γ \Gamma Γ がテンソルでないこと、そして ∂ i Y j \partial_iY^j ∂ i Y j の変換の「余分な項」を打ち消す役割を担っていることを示しています。
次に、曲線に沿ったベクトル場を微分します。滑らかな曲線 γ : I → M \gamma\colon I\to M γ : I → M に沿ったベクトル場 とは、各 t t t に V ( t ) ∈ T γ ( t ) M V(t)\in T_{\gamma(t)}M V ( t ) ∈ T γ ( t ) M を滑らかに対応させるものです(座標成分 V k ( t ) V^k(t) V k ( t ) が滑らか)。その全体を X ( γ ) \mathfrak{X}(\gamma) X ( γ ) と書きます。速度 γ ˙ \dot\gamma γ ˙ は典型例です。V V V が M M M 上のベクトル場 Y Y Y の制限 V ( t ) = Y γ ( t ) V(t)=Y_{\gamma(t)} V ( t ) = Y γ ( t ) になっているとき、V V V は延長可能 であるといいます。曲線が自分自身と交わる場合などには延長可能でない V V V もあるので、次の定理が必要です。
定理 4.3 (曲線に沿った共変微分 ) ✓
∇ \nabla ∇ を M M M のアフィン接続、γ : I → M \gamma\colon I\to M γ : I → M を滑らかな曲線とする。このとき R \mathbb{R} R 線形写像 D t : X ( γ ) → X ( γ ) D_t\colon\mathfrak{X}(\gamma)\to\mathfrak{X}(\gamma) D t : X ( γ ) → X ( γ ) で次を満たすものがただ一つ存在する。
Leibniz 則:f ∈ C ∞ ( I ) f\in C^\infty(I) f ∈ C ∞ ( I ) に対し D t ( f V ) = f ˙ V + f D t V D_t(fV)=\dot fV+fD_tV D t ( f V ) = f ˙ V + f D t V 。
V V V が Y ∈ X ( M ) Y\in\mathfrak{X}(M) Y ∈ X ( M ) から延長可能なら D t V ( t ) = ∇ γ ˙ ( t ) Y D_tV(t)=\nabla_{\dot\gamma(t)}Y D t V ( t ) = ∇ γ ˙ ( t ) Y 。
座標では
D t V = ∑ k ( V ˙ k ( t ) + ∑ i , j Γ i j k ( γ ( t ) ) γ ˙ i ( t ) V j ( t ) ) ∂ k ∣ γ ( t ) . D_tV=\sum_k\Bigl(\dot V^k(t)+\sum_{i,j}\Gamma^k_{ij}(\gamma(t))\,\dot\gamma^i(t)V^j(t)\Bigr)\partial_k\big|_{\gamma(t)}. D t V = k ∑ ( V ˙ k ( t ) + i , j ∑ Γ ij k ( γ ( t )) γ ˙ i ( t ) V j ( t ) ) ∂ k γ ( t ) .
証明(定理 4.3) 一意性。 D t D_t D t が 1、2 を満たすとします。命題 4.2 (1) と同じ議論(隆起関数を掛ける)で、D t V ( t 0 ) D_tV(t_0) D t V ( t 0 ) は t 0 t_0 t 0 の近傍での V V V だけで決まります。γ ( t 0 ) \gamma(t_0) γ ( t 0 ) のまわりのチャートで V ( t ) = ∑ j V j ( t ) ∂ j ∣ γ ( t ) V(t)=\sum_jV^j(t)\partial_j|_{\gamma(t)} V ( t ) = ∑ j V j ( t ) ∂ j ∣ γ ( t ) と書くと、各 ∂ j ∣ γ ( t ) \partial_j|_{\gamma(t)} ∂ j ∣ γ ( t ) は座標ベクトル場 ∂ j \partial_j ∂ j (を隆起関数で M M M 上に延ばしたもの)から延長可能です。よって 1、2 から
D t V = ∑ j V ˙ j ∂ j + ∑ j V j ∇ γ ˙ ∂ j = ∑ j V ˙ j ∂ j + ∑ i , j V j γ ˙ i Γ i j k ∂ k D_tV=\sum_j\dot V^j\partial_j+\sum_jV^j\nabla_{\dot\gamma}\partial_j=\sum_j\dot V^j\partial_j+\sum_{i,j}V^j\dot\gamma^i\Gamma^k_{ij}\partial_k D t V = j ∑ V ˙ j ∂ j + j ∑ V j ∇ γ ˙ ∂ j = j ∑ V ˙ j ∂ j + i , j ∑ V j γ ˙ i Γ ij k ∂ k となり、表示の式に一致します。したがって D t D_t D t は存在すれば一意です。
存在。 各チャート内では表示の式で D t D_t D t を定義します。1 は積の微分から、2 は 命題 4.2 (2) に X = γ ˙ X=\dot\gamma X = γ ˙ を代入した式から従います。二つのチャートの重なりでは、どちらの定義も 1、2 を満たすので、いま示した一意性により一致します。よって I I I 全体で D t D_t D t が定まります。
∎
接続は無数にあります。計量があるとき、そこから自然な一つを選び出す条件が次の二つです。
定義 5.1 (捩れと計量との両立 ) ↗
アフィン接続 ∇ \nabla ∇ の捩れ を T ( X , Y ) = ∇ X Y − ∇ Y X − [ X , Y ] T(X,Y)=\nabla_XY-\nabla_YX-[X,Y] T ( X , Y ) = ∇ X Y − ∇ Y X − [ X , Y ] と定める(補題 2.1 により ( 1 , 2 ) (1,2) ( 1 , 2 ) テンソル場)。T = 0 T=0 T = 0 のとき ∇ \nabla ∇ は捩れがない (対称である)という。座標では T = 0 T=0 T = 0 は Γ i j k = Γ j i k \Gamma^k_{ij}=\Gamma^k_{ji} Γ ij k = Γ j i k と同値である。
Riemann 多様体 ( M , g ) (M,g) ( M , g ) 上の接続 ∇ \nabla ∇ が計量と両立する とは、すべての X , Y , Z ∈ X ( M ) X,Y,Z\in\mathfrak{X}(M) X , Y , Z ∈ X ( M ) に対して
X ⟨ Y , Z ⟩ = ⟨ ∇ X Y , Z ⟩ + ⟨ Y , ∇ X Z ⟩ X\langle Y,Z\rangle=\langle\nabla_XY,Z\rangle+\langle Y,\nabla_XZ\rangle X ⟨ Y , Z ⟩ = ⟨ ∇ X Y , Z ⟩ + ⟨ Y , ∇ X Z ⟩ が成り立つことをいう。
T T T が C ∞ ( M ) C^\infty(M) C ∞ ( M ) 線形であることは、T ( X , f Y ) = ( X f ) Y + f ∇ X Y − f ∇ Y X − ( f [ X , Y ] + ( X f ) Y ) = f T ( X , Y ) T(X,fY)=(Xf)Y+f\nabla_XY-f\nabla_YX-\bigl(f[X,Y]+(Xf)Y\bigr)=fT(X,Y) T ( X , f Y ) = ( X f ) Y + f ∇ X Y − f ∇ Y X − ( f [ X , Y ] + ( X f ) Y ) = f T ( X , Y ) から確かめられます(Lie 括弧の Leibniz 則 命題 2.2[ベクトル場の流れ・Lie 微分・Frobenius の定理] (3) を使用)。座標では [ ∂ i , ∂ j ] = 0 [\partial_i,\partial_j]=0 [ ∂ i , ∂ j ] = 0 なので T ( ∂ i , ∂ j ) = ∑ k ( Γ i j k − Γ j i k ) ∂ k T(\partial_i,\partial_j)=\sum_k(\Gamma^k_{ij}-\Gamma^k_{ji})\partial_k T ( ∂ i , ∂ j ) = ∑ k ( Γ ij k − Γ j i k ) ∂ k です。
定理 5.2 (Riemann 幾何の基本定理(Levi-Civita) ) ✓
Riemann 多様体 ( M , g ) (M,g) ( M , g ) 上に、捩れがなく計量と両立するアフィン接続 ∇ \nabla ∇ がただ一つ存在する。これを Levi-Civita 接続 という。∇ \nabla ∇ は Koszul の公式
2 ⟨ ∇ X Y , Z ⟩ = X ⟨ Y , Z ⟩ + Y ⟨ Z , X ⟩ − Z ⟨ X , Y ⟩ + ⟨ [ X , Y ] , Z ⟩ − ⟨ [ Y , Z ] , X ⟩ + ⟨ [ Z , X ] , Y ⟩ \begin{aligned}
2\langle\nabla_XY,Z\rangle={}&X\langle Y,Z\rangle+Y\langle Z,X\rangle-Z\langle X,Y\rangle\\
&+\langle[X,Y],Z\rangle-\langle[Y,Z],X\rangle+\langle[Z,X],Y\rangle
\end{aligned} 2 ⟨ ∇ X Y , Z ⟩ = X ⟨ Y , Z ⟩ + Y ⟨ Z , X ⟩ − Z ⟨ X , Y ⟩ + ⟨[ X , Y ] , Z ⟩ − ⟨[ Y , Z ] , X ⟩ + ⟨[ Z , X ] , Y ⟩ で特徴づけられ、座標では
Γ i j k = 1 2 ∑ l g k l ( ∂ i g j l + ∂ j g i l − ∂ l g i j ) . \Gamma^k_{ij}=\frac12\sum_lg^{kl}\bigl(\partial_ig_{jl}+\partial_jg_{il}-\partial_lg_{ij}\bigr). Γ ij k = 2 1 l ∑ g k l ( ∂ i g j l + ∂ j g i l − ∂ l g ij ) .
証明の方針です。一意性は、二つの条件を使って ⟨ ∇ X Y , Z ⟩ \langle\nabla_XY,Z\rangle ⟨ ∇ X Y , Z ⟩ を g g g と Lie 括弧だけの式(Koszul の公式)に書き換えられることを示します。式の中に ∇ \nabla ∇ が残らないので、条件を満たす接続は一通りしかありえません。存在は、その公式の右辺で ∇ X Y \nabla_XY ∇ X Y を定義し、接続の 3 条件と、捩れなし・計量と両立の二つが成り立つことを確かめます。
証明(定理 5.2) 一意性(Koszul の公式の導出)。 ∇ \nabla ∇ が捩れなしで計量と両立するとします。両立条件を ( X , Y , Z ) (X,Y,Z) ( X , Y , Z ) を巡回させて 3 回書きます。
X ⟨ Y , Z ⟩ = ⟨ ∇ X Y , Z ⟩ + ⟨ Y , ∇ X Z ⟩ , Y ⟨ Z , X ⟩ = ⟨ ∇ Y Z , X ⟩ + ⟨ Z , ∇ Y X ⟩ , Z ⟨ X , Y ⟩ = ⟨ ∇ Z X , Y ⟩ + ⟨ X , ∇ Z Y ⟩ . \begin{aligned}
X\langle Y,Z\rangle&=\langle\nabla_XY,Z\rangle+\langle Y,\nabla_XZ\rangle,\\
Y\langle Z,X\rangle&=\langle\nabla_YZ,X\rangle+\langle Z,\nabla_YX\rangle,\\
Z\langle X,Y\rangle&=\langle\nabla_ZX,Y\rangle+\langle X,\nabla_ZY\rangle.
\end{aligned} X ⟨ Y , Z ⟩ Y ⟨ Z , X ⟩ Z ⟨ X , Y ⟩ = ⟨ ∇ X Y , Z ⟩ + ⟨ Y , ∇ X Z ⟩ , = ⟨ ∇ Y Z , X ⟩ + ⟨ Z , ∇ Y X ⟩ , = ⟨ ∇ Z X , Y ⟩ + ⟨ X , ∇ Z Y ⟩ . 1 式目 + + + 2 式目 − - − 3 式目を作り、捩れなしの条件 ∇ X Z − ∇ Z X = [ X , Z ] \nabla_XZ-\nabla_ZX=[X,Z] ∇ X Z − ∇ Z X = [ X , Z ] 、∇ Y Z − ∇ Z Y = [ Y , Z ] \nabla_YZ-\nabla_ZY=[Y,Z] ∇ Y Z − ∇ Z Y = [ Y , Z ] 、∇ Y X = ∇ X Y − [ X , Y ] \nabla_YX=\nabla_XY-[X,Y] ∇ Y X = ∇ X Y − [ X , Y ] を使って ∇ X Y \nabla_XY ∇ X Y 以外を括弧に置き換えると、
X ⟨ Y , Z ⟩ + Y ⟨ Z , X ⟩ − Z ⟨ X , Y ⟩ = 2 ⟨ ∇ X Y , Z ⟩ − ⟨ [ X , Y ] , Z ⟩ + ⟨ [ Y , Z ] , X ⟩ + ⟨ Y , [ X , Z ] ⟩ X\langle Y,Z\rangle+Y\langle Z,X\rangle-Z\langle X,Y\rangle=2\langle\nabla_XY,Z\rangle-\langle[X,Y],Z\rangle+\langle[Y,Z],X\rangle+\langle Y,[X,Z]\rangle X ⟨ Y , Z ⟩ + Y ⟨ Z , X ⟩ − Z ⟨ X , Y ⟩ = 2 ⟨ ∇ X Y , Z ⟩ − ⟨[ X , Y ] , Z ⟩ + ⟨[ Y , Z ] , X ⟩ + ⟨ Y , [ X , Z ]⟩ です。⟨ Y , [ X , Z ] ⟩ = − ⟨ [ Z , X ] , Y ⟩ \langle Y,[X,Z]\rangle=-\langle[Z,X],Y\rangle ⟨ Y , [ X , Z ]⟩ = − ⟨[ Z , X ] , Y ⟩ に注意して移項すると Koszul の公式になります。右辺は g g g と Lie 括弧だけで書けていて ∇ \nabla ∇ を含みません。計量は非退化なので、すべての Z Z Z に対する ⟨ ∇ X Y , Z ⟩ \langle\nabla_XY,Z\rangle ⟨ ∇ X Y , Z ⟩ の値が ∇ X Y \nabla_XY ∇ X Y を決めます。よって ∇ \nabla ∇ は一意です。
存在。 Koszul の公式の右辺を K ( X , Y , Z ) K(X,Y,Z) K ( X , Y , Z ) と書きます。X , Y X,Y X , Y を固定すると、Z ↦ K ( X , Y , Z ) Z\mapsto K(X,Y,Z) Z ↦ K ( X , Y , Z ) は C ∞ ( M ) C^\infty(M) C ∞ ( M ) 線形です。実際、Z Z Z を f Z fZ f Z に置き換えると、
X ⟨ Y , f Z ⟩ = f X ⟨ Y , Z ⟩ + ( X f ) ⟨ Y , Z ⟩ , Y ⟨ f Z , X ⟩ = f Y ⟨ Z , X ⟩ + ( Y f ) ⟨ Z , X ⟩ , − f Z ⟨ X , Y ⟩ , − ⟨ [ Y , f Z ] , X ⟩ = − f ⟨ [ Y , Z ] , X ⟩ − ( Y f ) ⟨ Z , X ⟩ , ⟨ [ f Z , X ] , Y ⟩ = f ⟨ [ Z , X ] , Y ⟩ − ( X f ) ⟨ Z , Y ⟩ \begin{aligned}
&X\langle Y,fZ\rangle=f\,X\langle Y,Z\rangle+(Xf)\langle Y,Z\rangle,\quad Y\langle fZ,X\rangle=f\,Y\langle Z,X\rangle+(Yf)\langle Z,X\rangle,\\
&-fZ\langle X,Y\rangle,\quad -\langle[Y,fZ],X\rangle=-f\langle[Y,Z],X\rangle-(Yf)\langle Z,X\rangle,\\
&\langle[fZ,X],Y\rangle=f\langle[Z,X],Y\rangle-(Xf)\langle Z,Y\rangle
\end{aligned} X ⟨ Y , f Z ⟩ = f X ⟨ Y , Z ⟩ + ( X f ) ⟨ Y , Z ⟩ , Y ⟨ f Z , X ⟩ = f Y ⟨ Z , X ⟩ + ( Y f ) ⟨ Z , X ⟩ , − f Z ⟨ X , Y ⟩ , − ⟨[ Y , f Z ] , X ⟩ = − f ⟨[ Y , Z ] , X ⟩ − ( Y f ) ⟨ Z , X ⟩ , ⟨[ f Z , X ] , Y ⟩ = f ⟨[ Z , X ] , Y ⟩ − ( X f ) ⟨ Z , Y ⟩ で、f f f の微分を含む項は打ち消し合います。補題 2.1 により Z ↦ K ( X , Y , Z ) Z\mapsto K(X,Y,Z) Z ↦ K ( X , Y , Z ) は 1 形式で、計量による同一視(T p M ≅ T p ∗ M T_pM\cong T_p^*M T p M ≅ T p ∗ M )で 2 ⟨ W , Z ⟩ = K ( X , Y , Z ) 2\langle W,Z\rangle=K(X,Y,Z) 2 ⟨ W , Z ⟩ = K ( X , Y , Z ) となるベクトル場 W W W がただ一つ定まります。これを ∇ X Y \nabla_XY ∇ X Y と定義します。
あとは接続の公理と二つの条件を確かめます。同様の計算で K ( f X , Y , Z ) = f K ( X , Y , Z ) K(fX,Y,Z)=fK(X,Y,Z) K ( f X , Y , Z ) = f K ( X , Y , Z ) (X X X について C ∞ ( M ) C^\infty(M) C ∞ ( M ) 線形)、K ( X , f Y , Z ) = f K ( X , Y , Z ) + 2 ( X f ) ⟨ Y , Z ⟩ K(X,fY,Z)=fK(X,Y,Z)+2(Xf)\langle Y,Z\rangle K ( X , f Y , Z ) = f K ( X , Y , Z ) + 2 ( X f ) ⟨ Y , Z ⟩ (Leibniz 則)が示せます。後者は、X ⟨ f Y , Z ⟩ X\langle fY,Z\rangle X ⟨ f Y , Z ⟩ から ( X f ) ⟨ Y , Z ⟩ (Xf)\langle Y,Z\rangle ( X f ) ⟨ Y , Z ⟩ 、⟨ [ X , f Y ] , Z ⟩ \langle[X,fY],Z\rangle ⟨[ X , f Y ] , Z ⟩ から ( X f ) ⟨ Y , Z ⟩ (Xf)\langle Y,Z\rangle ( X f ) ⟨ Y , Z ⟩ が出て、Y Y Y を微分する項は − Z ⟨ X , f Y ⟩ -Z\langle X,fY\rangle − Z ⟨ X , f Y ⟩ の − ( Z f ) ⟨ X , Y ⟩ -(Zf)\langle X,Y\rangle − ( Z f ) ⟨ X , Y ⟩ と − ⟨ [ f Y , Z ] , X ⟩ -\langle[fY,Z],X\rangle − ⟨[ f Y , Z ] , X ⟩ の + ( Z f ) ⟨ Y , X ⟩ +(Zf)\langle Y,X\rangle + ( Z f ) ⟨ Y , X ⟩ が打ち消すことによります。
捩れについては K ( X , Y , Z ) − K ( Y , X , Z ) K(X,Y,Z)-K(Y,X,Z) K ( X , Y , Z ) − K ( Y , X , Z ) を計算すると、計量の微分の項は打ち消し、括弧の項から 2 ⟨ [ X , Y ] , Z ⟩ 2\langle[X,Y],Z\rangle 2 ⟨[ X , Y ] , Z ⟩ が残るので ∇ X Y − ∇ Y X = [ X , Y ] \nabla_XY-\nabla_YX=[X,Y] ∇ X Y − ∇ Y X = [ X , Y ] です。両立性については K ( X , Y , Z ) + K ( X , Z , Y ) K(X,Y,Z)+K(X,Z,Y) K ( X , Y , Z ) + K ( X , Z , Y ) を計算すると、2 X ⟨ Y , Z ⟩ 2X\langle Y,Z\rangle 2 X ⟨ Y , Z ⟩ だけが残るので ⟨ ∇ X Y , Z ⟩ + ⟨ ∇ X Z , Y ⟩ = X ⟨ Y , Z ⟩ \langle\nabla_XY,Z\rangle+\langle\nabla_XZ,Y\rangle=X\langle Y,Z\rangle ⟨ ∇ X Y , Z ⟩ + ⟨ ∇ X Z , Y ⟩ = X ⟨ Y , Z ⟩ です。
Christoffel 記号。 X = ∂ i X=\partial_i X = ∂ i 、Y = ∂ j Y=\partial_j Y = ∂ j 、Z = ∂ l Z=\partial_l Z = ∂ l とすると括弧はすべて 0 0 0 で、Koszul の公式は 2 ∑ k g k l Γ i j k = ∂ i g j l + ∂ j g i l − ∂ l g i j 2\sum_kg_{kl}\Gamma^k_{ij}=\partial_ig_{jl}+\partial_jg_{il}-\partial_lg_{ij} 2 ∑ k g k l Γ ij k = ∂ i g j l + ∂ j g i l − ∂ l g ij となります。両辺に g m l g^{ml} g m l を掛けて l l l について和を取れば公式を得ます。
∎
捩れなしの条件は「無限小の平行四辺形が閉じる」こと、計量との両立は「平行移動が長さと角度を保つ」ことを表します(後者は 定理 6.3 で示します)。二つを合わせると接続の自由度(n 2 ( n + 1 ) / 2 n^2(n+1)/2 n 2 ( n + 1 ) /2 個の Γ \Gamma Γ のうち計量の 1 1 1 階微分で決まらない分)が消え、計量だけから接続が定まる、というのがこの定理の意味です。
例 5.3 (Christoffel 記号の計算 )
平面の極座標 。g = d r 2 + r 2 d θ 2 g=dr^2+r^2d\theta^2 g = d r 2 + r 2 d θ 2 、g r r = 1 g_{rr}=1 g r r = 1 、g θ θ = r 2 g_{\theta\theta}=r^2 g θ θ = r 2 。公式から Γ θ θ r = − 1 2 ∂ r g θ θ = − r \Gamma^r_{\theta\theta}=-\tfrac12\partial_rg_{\theta\theta}=-r Γ θ θ r = − 2 1 ∂ r g θ θ = − r 、Γ r θ θ = Γ θ r θ = 1 2 g θ θ ∂ r g θ θ = 1 / r \Gamma^\theta_{r\theta}=\Gamma^\theta_{\theta r}=\tfrac12g^{\theta\theta}\partial_rg_{\theta\theta}=1/r Γ r θ θ = Γ θ r θ = 2 1 g θ θ ∂ r g θ θ = 1/ r 、他は 0 0 0 。これは平坦接続を極座標で書いたもので、命題 4.2 (2) の非斉次項が座標の曲がりから生じていることを示している。
球面 。g = d θ 2 + sin 2 θ d φ 2 g=d\theta^2+\sin^2\theta\,d\varphi^2 g = d θ 2 + sin 2 θ d φ 2 では Γ φ φ θ = − sin θ cos θ \Gamma^\theta_{\varphi\varphi}=-\sin\theta\cos\theta Γ φφ θ = − sin θ cos θ 、Γ θ φ φ = Γ φ θ φ = cot θ \Gamma^\varphi_{\theta\varphi}=\Gamma^\varphi_{\varphi\theta}=\cot\theta Γ θ φ φ = Γ φθ φ = cot θ 、他は 0 0 0 。
双曲平面 。g = ( d x 2 + d y 2 ) / y 2 g=(dx^2+dy^2)/y^2 g = ( d x 2 + d y 2 ) / y 2 では g x x = g y y = y − 2 g_{xx}=g_{yy}=y^{-2} g xx = g y y = y − 2 で、Γ x y x = Γ y x x = − 1 / y \Gamma^x_{xy}=\Gamma^x_{yx}=-1/y Γ x y x = Γ y x x = − 1/ y 、Γ x x y = 1 / y \Gamma^y_{xx}=1/y Γ xx y = 1/ y 、Γ y y y = − 1 / y \Gamma^y_{yy}=-1/y Γ y y y = − 1/ y 、他は 0 0 0 。たとえば Γ x x y = 1 2 g y y ( − ∂ y g x x ) = 1 2 y 2 ⋅ 2 y − 3 = 1 / y \Gamma^y_{xx}=\tfrac12g^{yy}(-\partial_yg_{xx})=\tfrac12y^2\cdot2y^{-3}=1/y Γ xx y = 2 1 g y y ( − ∂ y g xx ) = 2 1 y 2 ⋅ 2 y − 3 = 1/ y 。
部分多様体の上では、Levi-Civita 接続は「外の空間の微分を接空間へ射影したもの」です。
命題 5.4 (部分多様体の Levi-Civita 接続 ) ✓
M ⊂ R N M\subset\mathbb{R}^N M ⊂ R N を埋め込み部分多様体とし、誘導計量を与える。p ∈ M p\in M p ∈ M で π p : R N → T p M \pi_p\colon\mathbb{R}^N\to T_pM π p : R N → T p M を直交射影とする。X , Y ∈ X ( M ) X,Y\in\mathfrak{X}(M) X , Y ∈ X ( M ) を R N \mathbb{R}^N R N のベクトル場 X ˉ , Y ˉ \bar X,\bar Y X ˉ , Y ˉ に(M M M の近傍で)延長し、
( ∇ X Y ) p = π p ( ∇ ˉ X p Y ˉ ) (\nabla_XY)_p=\pi_p\bigl(\bar\nabla_{X_p}\bar Y\bigr) ( ∇ X Y ) p = π p ( ∇ ˉ X p Y ˉ ) と置く(∇ ˉ \bar\nabla ∇ ˉ は R N \mathbb{R}^N R N の平坦接続)。これは延長の取り方によらず、M M M の Levi-Civita 接続に一致する。
証明(命題 5.4) ∇ ˉ X p Y ˉ = d d t ∣ 0 Y ˉ ( c ( t ) ) \bar\nabla_{X_p}\bar Y=\frac{d}{dt}\big|_{0}\bar Y(c(t)) ∇ ˉ X p Y ˉ = d t d 0 Y ˉ ( c ( t )) (c c c は c ˙ ( 0 ) = X p \dot c(0)=X_p c ˙ ( 0 ) = X p となる M M M 内の曲線)は M M M 上の Y ˉ = Y \bar Y=Y Y ˉ = Y の値だけで決まるので、延長によりません。接続の公理は ∇ ˉ \bar\nabla ∇ ˉ の公理と π p \pi_p π p の線形性から従います。
計量との両立:⟨ Y , Z ⟩ \langle Y,Z\rangle ⟨ Y , Z ⟩ は R N \mathbb{R}^N R N の内積の M M M への制限なので、X ⟨ Y , Z ⟩ = ⟨ ∇ ˉ X Y ˉ , Z ⟩ + ⟨ Y , ∇ ˉ X Z ˉ ⟩ X\langle Y,Z\rangle=\langle\bar\nabla_X\bar Y,Z\rangle+\langle Y,\bar\nabla_X\bar Z\rangle X ⟨ Y , Z ⟩ = ⟨ ∇ ˉ X Y ˉ , Z ⟩ + ⟨ Y , ∇ ˉ X Z ˉ ⟩ です。Z ∈ T p M Z\in T_pM Z ∈ T p M なので ⟨ ∇ ˉ X Y ˉ , Z ⟩ = ⟨ π p ∇ ˉ X Y ˉ , Z ⟩ \langle\bar\nabla_X\bar Y,Z\rangle=\langle\pi_p\bar\nabla_X\bar Y,Z\rangle ⟨ ∇ ˉ X Y ˉ , Z ⟩ = ⟨ π p ∇ ˉ X Y ˉ , Z ⟩ で、両立条件を得ます。
捩れなし:平坦接続について ∇ ˉ X ˉ Y ˉ − ∇ ˉ Y ˉ X ˉ = [ X ˉ , Y ˉ ] \bar\nabla_{\bar X}\bar Y-\bar\nabla_{\bar Y}\bar X=[\bar X,\bar Y] ∇ ˉ X ˉ Y ˉ − ∇ ˉ Y ˉ X ˉ = [ X ˉ , Y ˉ ] が成り立ちます。X ˉ , Y ˉ \bar X,\bar Y X ˉ , Y ˉ が M M M に接しているので [ X ˉ , Y ˉ ] [\bar X,\bar Y] [ X ˉ , Y ˉ ] も M M M 上で M M M に接し、[ X , Y ] [X,Y] [ X , Y ] に一致します(括弧は M M M 上の関数への作用で決まるため)。射影して ∇ X Y − ∇ Y X = [ X , Y ] \nabla_XY-\nabla_YX=[X,Y] ∇ X Y − ∇ Y X = [ X , Y ] です。定理 5.2 の一意性から Levi-Civita 接続です。
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Levi-Civita 接続は等長写像と可換です。ϕ : ( M , g ) → ( N , h ) \phi\colon(M,g)\to(N,h) ϕ : ( M , g ) → ( N , h ) が微分同相で ϕ ∗ h = g \phi^*h=g ϕ ∗ h = g なら、ϕ ∗ \phi_* ϕ ∗ で N N N の Levi-Civita 接続を M M M に引き戻した接続も捩れなしで g g g と両立するので、一意性から ϕ ∗ ( ∇ X Y ) = ∇ ϕ ∗ X ϕ ∗ Y \phi_*(\nabla_XY)=\nabla_{\phi_*X}\phi_*Y ϕ ∗ ( ∇ X Y ) = ∇ ϕ ∗ X ϕ ∗ Y です。計量から一意に決まる量は、すべて等長写像で保たれます。
接続は 1 形式やテンソル場にも自然に延びます。1 形式 ω \omega ω に対しては、縮約と Leibniz 則が両立するように
( ∇ X ω ) ( Y ) = X ( ω ( Y ) ) − ω ( ∇ X Y ) (\nabla_X\omega)(Y)=X\bigl(\omega(Y)\bigr)-\omega(\nabla_XY) ( ∇ X ω ) ( Y ) = X ( ω ( Y ) ) − ω ( ∇ X Y )
と定め、( 0 , k ) (0,k) ( 0 , k ) テンソル場 T T T には ( ∇ X T ) ( Y 1 , … , Y k ) = X ( T ( Y 1 , … , Y k ) ) − ∑ i T ( … , ∇ X Y i , … ) (\nabla_XT)(Y_1,\dots,Y_k)=X\bigl(T(Y_1,\dots,Y_k)\bigr)-\sum_iT(\dots,\nabla_XY_i,\dots) ( ∇ X T ) ( Y 1 , … , Y k ) = X ( T ( Y 1 , … , Y k ) ) − ∑ i T ( … , ∇ X Y i , … ) と定めます。右辺が Y i Y_i Y i について C ∞ ( M ) C^\infty(M) C ∞ ( M ) 線形であることは、∇ X ( f Y i ) \nabla_X(fY_i) ∇ X ( f Y i ) の Leibniz 項が X ( f T ( … ) ) X(f\,T(\dots)) X ( f T ( … )) の ( X f ) (Xf) ( X f ) の項と打ち消すことから確かめられ、補題 2.1 によりテンソル場になります。この記法では、計量と両立する条件は
( ∇ X g ) ( Y , Z ) = X ⟨ Y , Z ⟩ − ⟨ ∇ X Y , Z ⟩ − ⟨ Y , ∇ X Z ⟩ = 0 , (\nabla_Xg)(Y,Z)=X\langle Y,Z\rangle-\langle\nabla_XY,Z\rangle-\langle Y,\nabla_XZ\rangle=0, ( ∇ X g ) ( Y , Z ) = X ⟨ Y , Z ⟩ − ⟨ ∇ X Y , Z ⟩ − ⟨ Y , ∇ X Z ⟩ = 0 ,
すなわち ∇ g = 0 \nabla g=0 ∇ g = 0 と簡潔に書けます。物理の文献でよく見る ∇ μ g ν ρ = 0 \nabla_\mu g_{\nu\rho}=0 ∇ μ g ν ρ = 0 はこの成分表示です。
命題 5.5 (発散の座標表示 ) ✓
( M , g ) (M,g) ( M , g ) を Riemann 多様体、∇ \nabla ∇ を Levi-Civita 接続とし、ベクトル場 X X X の発散 を div X = tr ( v ↦ ∇ v X ) \operatorname{div}X=\operatorname{tr}(v\mapsto\nabla_vX) div X = tr ( v ↦ ∇ v X ) と定める。座標 ( x i ) (x^i) ( x i ) で ∣ g ∣ = det ( g i j ) |g|=\det(g_{ij}) ∣ g ∣ = det ( g ij ) と書くと
div X = 1 ∣ g ∣ ∑ i ∂ i ( ∣ g ∣ X i ) . \operatorname{div}X=\frac{1}{\sqrt{|g|}}\sum_i\partial_i\bigl(\sqrt{|g|}\,X^i\bigr). div X = ∣ g ∣ 1 i ∑ ∂ i ( ∣ g ∣ X i ) . とくに関数 f f f の Laplace–Beltrami 作用素 Δ f = div grad f \Delta f=\operatorname{div}\operatorname{grad}f Δ f = div grad f は Δ f = ∣ g ∣ − 1 / 2 ∑ i , j ∂ i ( ∣ g ∣ g i j ∂ j f ) \Delta f=|g|^{-1/2}\sum_{i,j}\partial_i\bigl(\sqrt{|g|}\,g^{ij}\partial_jf\bigr) Δ f = ∣ g ∣ − 1/2 ∑ i , j ∂ i ( ∣ g ∣ g ij ∂ j f ) である。
証明(命題 5.5) 命題 4.2 (2) から ∇ ∂ i X = ∑ k ( ∂ i X k + ∑ j Γ i j k X j ) ∂ k \nabla_{\partial_i}X=\sum_k(\partial_iX^k+\sum_j\Gamma^k_{ij}X^j)\partial_k ∇ ∂ i X = ∑ k ( ∂ i X k + ∑ j Γ ij k X j ) ∂ k なので、トレースは div X = ∑ i ∂ i X i + ∑ i , j Γ i j i X j \operatorname{div}X=\sum_i\partial_iX^i+\sum_{i,j}\Gamma^i_{ij}X^j div X = ∑ i ∂ i X i + ∑ i , j Γ ij i X j です。定理 5.2 の公式で k = i k=i k = i として和を取ると、g i l g^{il} g i l の対称性により第 1 項と第 3 項が打ち消し合い、
∑ i Γ i j i = 1 2 ∑ i , l g i l ∂ j g i l = 1 2 tr ( G − 1 ∂ j G ) , G = ( g i l ) \sum_i\Gamma^i_{ij}=\frac12\sum_{i,l}g^{il}\partial_jg_{il}=\frac12\operatorname{tr}\bigl(G^{-1}\partial_jG\bigr),\qquad G=(g_{il}) i ∑ Γ ij i = 2 1 i , l ∑ g i l ∂ j g i l = 2 1 tr ( G − 1 ∂ j G ) , G = ( g i l ) となります。行列式の微分の公式 ∂ j det G = det G ⋅ tr ( G − 1 ∂ j G ) \partial_j\det G=\det G\cdot\operatorname{tr}(G^{-1}\partial_jG) ∂ j det G = det G ⋅ tr ( G − 1 ∂ j G ) (余因子展開 定理 5.2[行列式とその性質] を各成分で微分して得られる)から、これは ∂ j log ∣ g ∣ \partial_j\log\sqrt{|g|} ∂ j log ∣ g ∣ に等しいです。よって div X = ∑ j ( ∂ j X j + X j ∂ j log ∣ g ∣ ) = ∣ g ∣ − 1 / 2 ∑ j ∂ j ( ∣ g ∣ X j ) \operatorname{div}X=\sum_j\bigl(\partial_jX^j+X^j\partial_j\log\sqrt{|g|}\bigr)=|g|^{-1/2}\sum_j\partial_j(\sqrt{|g|}X^j) div X = ∑ j ( ∂ j X j + X j ∂ j log ∣ g ∣ ) = ∣ g ∣ − 1/2 ∑ j ∂ j ( ∣ g ∣ X j ) です。後半は grad f = ∑ i , j g i j ( ∂ j f ) ∂ i \operatorname{grad}f=\sum_{i,j}g^{ij}(\partial_jf)\partial_i grad f = ∑ i , j g ij ( ∂ j f ) ∂ i を代入するだけです。
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たとえば平面の極座標では ∣ g ∣ = r \sqrt{|g|}=r ∣ g ∣ = r なので Δ f = r − 1 ∂ r ( r ∂ r f ) + r − 2 ∂ θ 2 f \Delta f=r^{-1}\partial_r(r\partial_rf)+r^{-2}\partial_\theta^2f Δ f = r − 1 ∂ r ( r ∂ r f ) + r − 2 ∂ θ 2 f となり、微積分でおなじみの式が接続の言葉から出てきます。発散と体積形式の関係(L X v o l = ( div X ) v o l L_X\mathrm{vol}=(\operatorname{div}X)\mathrm{vol} L X vol = ( div X ) vol )や、Δ \Delta Δ を微分形式に広げた Hodge Laplacian は Hodge 理論 の章で扱います。
定義 6.1 (平行なベクトル場と平行移動 ) ↗
γ : I → M \gamma\colon I\to M γ : I → M に沿ったベクトル場 V V V が D t V = 0 D_tV=0 D t V = 0 を満たすとき、V V V は γ \gamma γ に沿って平行 であるという。t 0 , t 1 ∈ I t_0,t_1\in I t 0 , t 1 ∈ I と v ∈ T γ ( t 0 ) M v\in T_{\gamma(t_0)}M v ∈ T γ ( t 0 ) M に対し、V ( t 0 ) = v V(t_0)=v V ( t 0 ) = v となる平行な V V V の値 V ( t 1 ) V(t_1) V ( t 1 ) を対応させる写像 P t 0 → t 1 γ : T γ ( t 0 ) M → T γ ( t 1 ) M P_{t_0\to t_1}^\gamma\colon T_{\gamma(t_0)}M\to T_{\gamma(t_1)}M P t 0 → t 1 γ : T γ ( t 0 ) M → T γ ( t 1 ) M を平行移動 という。
定理 6.2 (平行移動の存在と線形性 ) ✓
∇ \nabla ∇ をアフィン接続、γ : I → M \gamma\colon I\to M γ : I → M を滑らかな曲線とする。任意の t 0 ∈ I t_0\in I t 0 ∈ I 、v ∈ T γ ( t 0 ) M v\in T_{\gamma(t_0)}M v ∈ T γ ( t 0 ) M に対し、V ( t 0 ) = v V(t_0)=v V ( t 0 ) = v となる γ \gamma γ に沿った平行なベクトル場 V V V が I I I 全体でただ一つ存在する。P t 0 → t 1 γ P^\gamma_{t_0\to t_1} P t 0 → t 1 γ は線形同型で、P t 1 → t 2 γ ∘ P t 0 → t 1 γ = P t 0 → t 2 γ P^\gamma_{t_1\to t_2}\circ P^\gamma_{t_0\to t_1}=P^\gamma_{t_0\to t_2} P t 1 → t 2 γ ∘ P t 0 → t 1 γ = P t 0 → t 2 γ を満たす。
証明(定理 6.2) γ \gamma γ の像がひとつのチャートに収まる区間 J J J 上では、定理 4.3 の座標表示から、D t V = 0 D_tV=0 D t V = 0 は
V ˙ k ( t ) = − ∑ i , j Γ i j k ( γ ( t ) ) γ ˙ i ( t ) V j ( t ) ( k = 1 , … , n ) \dot V^k(t)=-\sum_{i,j}\Gamma^k_{ij}(\gamma(t))\dot\gamma^i(t)\,V^j(t)\quad(k=1,\dots,n) V ˙ k ( t ) = − i , j ∑ Γ ij k ( γ ( t )) γ ˙ i ( t ) V j ( t ) ( k = 1 , … , n ) という V = ( V 1 , … , V n ) V=(V^1,\dots,V^n) V = ( V 1 , … , V n ) についての線形常微分方程式 V ˙ = A ( t ) V \dot V=A(t)V V ˙ = A ( t ) V で、係数 A ( t ) A(t) A ( t ) は J J J 上連続です。定理 2.1[線形微分方程式系] により、任意の初期値に対して J J J 全体で解がただ一つ存在し、解は初期値に線形に依存します。
I I I 全体へは次のように延ばします。t 0 t_0 t 0 から出発し、解が定義できる t ≥ t 0 t\ge t_0 t ≥ t 0 の上限を t ∗ t^* t ∗ とし、t ∗ t^* t ∗ が I I I の右端より手前だと仮定します。γ ( t ∗ ) \gamma(t^*) γ ( t ∗ ) のまわりのチャートに含まれる区間 J ∋ t ∗ J\ni t^* J ∋ t ∗ を取り、J J J 内の t ∗ t^* t ∗ より手前の点 s s s での値を初期値として J J J 上で解き直すと、解は J J J 全体に延び、共通部分では一意性により一致します。これは t ∗ t^* t ∗ の定義に反します。左側も同様です。
線形性は各チャートでの線形性の合成から、合成則は一意性から従います(P t 0 → t 1 P_{t_0\to t_1} P t 0 → t 1 で運んだ値を初期値とする平行な場は、もとの平行な場と一致する)。逆写像は P t 1 → t 0 P_{t_1\to t_0} P t 1 → t 0 なので同型です。
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定理 6.3 (Levi-Civita 接続の平行移動は等長 ) ✓
( M , g ) (M,g) ( M , g ) 上のアフィン接続 ∇ \nabla ∇ について、次は同値である。
∇ \nabla ∇ は計量と両立する。
任意の曲線 γ \gamma γ と γ \gamma γ に沿ったベクトル場 V , W V,W V , W について d d t ⟨ V , W ⟩ = ⟨ D t V , W ⟩ + ⟨ V , D t W ⟩ \frac{d}{dt}\langle V,W\rangle=\langle D_tV,W\rangle+\langle V,D_tW\rangle d t d ⟨ V , W ⟩ = ⟨ D t V , W ⟩ + ⟨ V , D t W ⟩ 。
任意の曲線に沿った平行移動は内積を保つ線形同型(等長写像)である。
証明の方針です。1 ⇒ 2 は、座標で積の微分を実行し、両立条件で g g g の微分を接続に置き換えます。2 ⇒ 3 は、平行なら D t V = 0 D_tV=0 D t V = 0 なので内積の微分が 0 0 0 になる、というだけです。3 ⇒ 1 では、出発点の正規直交基底を平行移動して得た基底(動いても正規直交のまま)でベクトル場を展開し、内積の微分を成分の微分に帰着させます。
証明(定理 6.3) 1 ⇒ 2。 座標で V = ∑ V j ∂ j V=\sum V^j\partial_j V = ∑ V j ∂ j 、W = ∑ W l ∂ l W=\sum W^l\partial_l W = ∑ W l ∂ l と書くと、⟨ V , W ⟩ = ∑ V j W l g j l ( γ ( t ) ) \langle V,W\rangle=\sum V^jW^lg_{jl}(\gamma(t)) ⟨ V , W ⟩ = ∑ V j W l g j l ( γ ( t )) です。積の微分で
d d t ⟨ V , W ⟩ = ∑ V ˙ j W l g j l + ∑ V j W ˙ l g j l + ∑ V j W l γ ˙ i ∂ i g j l . \frac{d}{dt}\langle V,W\rangle=\sum\dot V^jW^lg_{jl}+\sum V^j\dot W^lg_{jl}+\sum V^jW^l\dot\gamma^i\partial_ig_{jl}. d t d ⟨ V , W ⟩ = ∑ V ˙ j W l g j l + ∑ V j W ˙ l g j l + ∑ V j W l γ ˙ i ∂ i g j l . 両立条件を X = ∂ i X=\partial_i X = ∂ i 、Y = ∂ j Y=\partial_j Y = ∂ j 、Z = ∂ l Z=\partial_l Z = ∂ l に適用すると ∂ i g j l = ⟨ ∇ ∂ i ∂ j , ∂ l ⟩ + ⟨ ∂ j , ∇ ∂ i ∂ l ⟩ \partial_ig_{jl}=\langle\nabla_{\partial_i}\partial_j,\partial_l\rangle+\langle\partial_j,\nabla_{\partial_i}\partial_l\rangle ∂ i g j l = ⟨ ∇ ∂ i ∂ j , ∂ l ⟩ + ⟨ ∂ j , ∇ ∂ i ∂ l ⟩ で、これを代入して 定理 4.3 の座標表示と比べると右辺は ⟨ D t V , W ⟩ + ⟨ V , D t W ⟩ \langle D_tV,W\rangle+\langle V,D_tW\rangle ⟨ D t V , W ⟩ + ⟨ V , D t W ⟩ です。
2 ⇒ 3。 V , W V,W V , W が平行なら d d t ⟨ V , W ⟩ = 0 \frac{d}{dt}\langle V,W\rangle=0 d t d ⟨ V , W ⟩ = 0 なので内積は一定です。
3 ⇒ 1。 p ∈ M p\in M p ∈ M 、X p ≠ 0 X_p\ne0 X p = 0 とし、γ ˙ ( 0 ) = X p \dot\gamma(0)=X_p γ ˙ ( 0 ) = X p の曲線を取ります。T p M T_pM T p M の正規直交基底 e 1 , … , e n e_1,\dots,e_n e 1 , … , e n を平行移動して E i ( t ) E_i(t) E i ( t ) を作ると、3 により各 t t t で正規直交基底です。Y , Z Y,Z Y , Z を γ \gamma γ に沿って Y = ∑ a i E i Y=\sum a^iE_i Y = ∑ a i E i 、Z = ∑ b i E i Z=\sum b^iE_i Z = ∑ b i E i と展開すると、D t Y = ∑ a ˙ i E i D_tY=\sum\dot a^iE_i D t Y = ∑ a ˙ i E i (D t E i = 0 D_tE_i=0 D t E i = 0 と Leibniz 則)なので
X p ⟨ Y , Z ⟩ = d d t ∣ 0 ∑ i a i b i = ∑ i ( a ˙ i b i + a i b ˙ i ) ( 0 ) = ⟨ ∇ X p Y , Z ⟩ + ⟨ Y , ∇ X p Z ⟩ X_p\langle Y,Z\rangle=\frac{d}{dt}\Big|_0\sum_ia^ib^i=\sum_i(\dot a^ib^i+a^i\dot b^i)(0)=\langle\nabla_{X_p}Y,Z\rangle+\langle Y,\nabla_{X_p}Z\rangle X p ⟨ Y , Z ⟩ = d t d 0 i ∑ a i b i = i ∑ ( a ˙ i b i + a i b ˙ i ) ( 0 ) = ⟨ ∇ X p Y , Z ⟩ + ⟨ Y , ∇ X p Z ⟩ です。X p = 0 X_p=0 X p = 0 なら両辺 0 0 0 です。
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平行移動から接続を復元することもできます。γ ( 0 ) = p \gamma(0)=p γ ( 0 ) = p 、γ ˙ ( 0 ) = X p \dot\gamma(0)=X_p γ ˙ ( 0 ) = X p とすると
( ∇ X Y ) p = d d t ∣ t = 0 P t → 0 γ ( Y γ ( t ) ) . (\nabla_XY)_p=\frac{d}{dt}\Big|_{t=0}P^\gamma_{t\to0}\bigl(Y_{\gamma(t)}\bigr). ( ∇ X Y ) p = d t d t = 0 P t → 0 γ ( Y γ ( t ) ) .
実際、平行な基底 E i ( t ) E_i(t) E i ( t ) で Y γ ( t ) = ∑ a i ( t ) E i ( t ) Y_{\gamma(t)}=\sum a^i(t)E_i(t) Y γ ( t ) = ∑ a i ( t ) E i ( t ) と書けば P t → 0 Y γ ( t ) = ∑ a i ( t ) e i P_{t\to0}Y_{\gamma(t)}=\sum a^i(t)e_i P t → 0 Y γ ( t ) = ∑ a i ( t ) e i で、その微分 ∑ a ˙ i ( 0 ) e i \sum\dot a^i(0)e_i ∑ a ˙ i ( 0 ) e i は D t Y ( 0 ) = ∇ X p Y D_tY(0)=\nabla_{X_p}Y D t Y ( 0 ) = ∇ X p Y です。接続とは「無限小の平行移動」であり、平行移動とは「接続を積分したもの」です。
例 6.4 (球面の緯線に沿った平行移動 )
単位球面 S 2 S^2 S 2 の余緯度 θ 0 ∈ ( 0 , π ) \theta_0\in(0,\pi) θ 0 ∈ ( 0 , π ) の緯線 γ ( t ) = ( θ 0 , t ) \gamma(t)=(\theta_0,t) γ ( t ) = ( θ 0 , t ) 、t ∈ [ 0 , 2 π ] t\in[0,2\pi] t ∈ [ 0 , 2 π ] を考える。V = a ∂ θ + b ∂ φ V=a\,\partial_\theta+b\,\partial_\varphi V = a ∂ θ + b ∂ φ とすると、例 5.3 の Christoffel 記号と γ ˙ = ∂ φ \dot\gamma=\partial_\varphi γ ˙ = ∂ φ から、平行性は
a ˙ − sin θ 0 cos θ 0 b = 0 , b ˙ + cot θ 0 a = 0. \dot a-\sin\theta_0\cos\theta_0\,b=0,\qquad\dot b+\cot\theta_0\,a=0. a ˙ − sin θ 0 cos θ 0 b = 0 , b ˙ + cot θ 0 a = 0. 正規直交枠 e θ = ∂ θ e_\theta=\partial_\theta e θ = ∂ θ 、e φ = ∂ φ / sin θ 0 e_\varphi=\partial_\varphi/\sin\theta_0 e φ = ∂ φ / sin θ 0 に関する成分 A = a A=a A = a 、B = b sin θ 0 B=b\sin\theta_0 B = b sin θ 0 では A ˙ = cos θ 0 B \dot A=\cos\theta_0\,B A ˙ = cos θ 0 B 、B ˙ = − cos θ 0 A \dot B=-\cos\theta_0\,A B ˙ = − cos θ 0 A となり、( A , B ) (A,B) ( A , B ) は角速度 cos θ 0 \cos\theta_0 cos θ 0 で時計回りに回転する。一周後、ベクトルは枠 ( e θ , e φ ) (e_\theta,e_\varphi) ( e θ , e φ ) に対して角 − 2 π cos θ 0 -2\pi\cos\theta_0 − 2 π cos θ 0 だけ回っている。枠自体は一周して元に戻るので、平行移動 P 0 → 2 π P_{0\to2\pi} P 0 → 2 π は T γ ( 0 ) S 2 T_{\gamma(0)}S^2 T γ ( 0 ) S 2 の角
− 2 π cos θ 0 ≡ 2 π ( 1 − cos θ 0 ) ( m o d 2 π ) -2\pi\cos\theta_0\equiv2\pi(1-\cos\theta_0)\pmod{2\pi} − 2 π cos θ 0 ≡ 2 π ( 1 − cos θ 0 ) ( mod 2 π ) の回転である。2 π ( 1 − cos θ 0 ) 2\pi(1-\cos\theta_0) 2 π ( 1 − cos θ 0 ) は緯線が囲む北側の球帽の面積に等しい。赤道(θ 0 = π / 2 \theta_0=\pi/2 θ 0 = π /2 )は大円で、回転角は 0 0 0 である。
緯線に沿った平行移動。出発点のベクトル(実線)は一周後、球帽の面積に等しい角だけ回転して戻る(破線)。
この例では、閉曲線を一周する平行移動が恒等写像にならず、そのずれが囲む領域の「曲がり具合の総量」で決まっています。この現象を無限小にしたものが曲率で、曲率テンソル の章の主題です。量子力学の Berry 位相も、まったく同じ構造(直線束の接続のホロノミー)を持っています。
演習 7.1 易
双曲平面 ( H , ( d x 2 + d y 2 ) / y 2 ) (\mathbb{H},(dx^2+dy^2)/y^2) ( H , ( d x 2 + d y 2 ) / y 2 ) で、虚軸 γ ( t ) = ( 0 , e t ) \gamma(t)=(0,e^t) γ ( t ) = ( 0 , e t ) に沿って ∂ x \partial_x ∂ x 方向のベクトル v = ∂ x ∣ ( 0 , 1 ) v=\partial_x|_{(0,1)} v = ∂ x ∣ ( 0 , 1 ) を平行移動すると、γ ( t ) \gamma(t) γ ( t ) での値はどうなるか。長さが保たれることも確かめよ。
解答 V = a ∂ x + b ∂ y V=a\partial_x+b\partial_y V = a ∂ x + b ∂ y 、γ ˙ = e t ∂ y \dot\gamma=e^t\partial_y γ ˙ = e t ∂ y 、y = e t y=e^t y = e t です。例 5.3 (3) と 定理 4.3 の式から
a ˙ + Γ y x x γ ˙ y a = a ˙ − 1 e t e t a = a ˙ − a = 0 , b ˙ + Γ y y y γ ˙ y b = b ˙ − b = 0 \dot a+\Gamma^x_{yx}\dot\gamma^y a=\dot a-\tfrac1{e^t}e^ta=\dot a-a=0,\qquad\dot b+\Gamma^y_{yy}\dot\gamma^yb=\dot b-b=0 a ˙ + Γ y x x γ ˙ y a = a ˙ − e t 1 e t a = a ˙ − a = 0 , b ˙ + Γ y y y γ ˙ y b = b ˙ − b = 0 (Γ y x y = 0 \Gamma^y_{yx}=0 Γ y x y = 0 、Γ y y x = 0 \Gamma^x_{yy}=0 Γ y y x = 0 )。a ( 0 ) = 1 a(0)=1 a ( 0 ) = 1 、b ( 0 ) = 0 b(0)=0 b ( 0 ) = 0 から a = e t a=e^t a = e t 、b = 0 b=0 b = 0 で、V ( t ) = e t ∂ x V(t)=e^t\partial_x V ( t ) = e t ∂ x です。長さは ∣ V ∣ 2 = e 2 t ⋅ y − 2 = e 2 t e − 2 t = 1 |V|^2=e^{2t}\cdot y^{-2}=e^{2t}e^{-2t}=1 ∣ V ∣ 2 = e 2 t ⋅ y − 2 = e 2 t e − 2 t = 1 で一定です。座標成分は増えますが、計量が y − 2 y^{-2} y − 2 で縮むので長さは保たれます(定理 6.3 )。
演習 7.3 標準
R 3 \mathbb{R}^3 R 3 の接続 ∇ X Y = ∇ ˉ X Y + 1 2 X × Y \nabla_XY=\bar\nabla_XY+\tfrac12X\times Y ∇ X Y = ∇ ˉ X Y + 2 1 X × Y (× \times × はベクトル積、∇ ˉ \bar\nabla ∇ ˉ は平坦接続)を考える。(a) ∇ \nabla ∇ は Euclid 計量と両立することを示せ。(b) 捩れを求めよ。(c) x 3 x^3 x 3 軸に沿った単位速度の直線 γ ( t ) = ( 0 , 0 , t ) \gamma(t)=(0,0,t) γ ( t ) = ( 0 , 0 , t ) に沿う平行移動を求めよ。
解答 (a) ⟨ X × Y , Z ⟩ + ⟨ Y , X × Z ⟩ = det ( X , Y , Z ) + det ( X , Z , Y ) = 0 \langle X\times Y,Z\rangle+\langle Y,X\times Z\rangle=\det(X,Y,Z)+\det(X,Z,Y)=0 ⟨ X × Y , Z ⟩ + ⟨ Y , X × Z ⟩ = det ( X , Y , Z ) + det ( X , Z , Y ) = 0 なので、∇ ˉ \bar\nabla ∇ ˉ の両立性がそのまま ∇ \nabla ∇ に移ります。
(b) T ( X , Y ) = 1 2 X × Y − 1 2 Y × X + ( ∇ ˉ X Y − ∇ ˉ Y X − [ X , Y ] ) = X × Y T(X,Y)=\tfrac12X\times Y-\tfrac12Y\times X+(\bar\nabla_XY-\bar\nabla_YX-[X,Y])=X\times Y T ( X , Y ) = 2 1 X × Y − 2 1 Y × X + ( ∇ ˉ X Y − ∇ ˉ Y X − [ X , Y ]) = X × Y で 0 0 0 ではありません。したがって 定理 5.2 の一意性は捩れなしの条件なしには成り立ちません。
(c) γ ˙ = e 3 \dot\gamma=e_3 γ ˙ = e 3 なので平行性は V ˙ = − 1 2 e 3 × V \dot V=-\tfrac12e_3\times V V ˙ = − 2 1 e 3 × V 、すなわち ( V ˙ 1 , V ˙ 2 , V ˙ 3 ) = ( 1 2 V 2 , − 1 2 V 1 , 0 ) (\dot V^1,\dot V^2,\dot V^3)=(\tfrac12V^2,-\tfrac12V^1,0) ( V ˙ 1 , V ˙ 2 , V ˙ 3 ) = ( 2 1 V 2 , − 2 1 V 1 , 0 ) です。解は e 3 e_3 e 3 軸のまわりの角速度 1 2 \tfrac12 2 1 の回転です。平行移動は等長((a) と 定理 6.3 )ですが、直線に沿ってもベクトルがねじれていきます。これが「捩れ」という名前の由来です。
M. P. do Carmo, Riemannian Geometry , Birkhäuser, 1992 — Chapter 1–2(Riemann 計量、アフィン接続、Levi-Civita 接続)。
J. M. Lee, Introduction to Riemannian Manifolds , 2nd ed., Springer (GTM 176), 2018 — Chapter 2, 4, 5。
S. Kobayashi, K. Nomizu, Foundations of Differential Geometry , Vol. I, Wiley, 1963 — Chapter III, IV。
酒井隆『リーマン幾何学』裳華房、1992 — 第 I 章。
小林昭七『接続の微分幾何とゲージ理論』裳華房、1989 — 第 1 章。
執筆: Claude Code(Opus 5.5)、Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 3 回(Claude Code)・最終 2026-10-12