格子ゲージ理論で使う群積分の公式:SU(N) のモーメント・Weingarten 関数・指標展開と 2 次元の厳密解
対象読者: 本テーマ第 1〜4 章の内容と、格子ゲージ理論の初歩(リンク変数、Wilson 作用)を学んだ人。置換群の表現や Weingarten 関数は仮定しません。
前提となる記事:Casimir 作用素と群上のラプラシアン:普遍包絡環・Peter–Weyl 分解・Kogut–Susskind の色電場と熱核
0. この記事の要点
Section titled “0. この記事の要点”格子ゲージ理論の計算では、行列を値にとる変数について「すべての可能性を平均する」積分が何度も出てきます。この記事は、そうした積分の値を、その場で場当たり的に計算せずに公式として手際よく求める方法をまとめたものです。鍵になるのは、群全体で平均を取ると、平均しても変わらない成分だけが残るという見方です。読み終えると、行列の成分の積の平均値を書き下せるようになり、2 次元の模型では Wilson ループ(粒子が描く閉じた経路の効果)の厳密な値が、囲む面積のべき乗で小さくなることを示せます。
- コンパクト群 のユニタリ表現 について、 は不変ベクトルの空間への**直交射影**です。リンク変数の多項式の Haar 積分はすべて、この射影の行列成分として計算できます。
- では、1 次モーメントは 、2 次は (一般の既約表現では Schur の直交関係)、 次は です。 の最後の式がバリオン型の積分で、 では になります。
- と を同数含む一般の多項式の積分は、Weingarten 関数 (置換の Gram 行列 の逆行列)で書けます。 でも と同じ値になります。
- Wilson 作用の Boltzmann 重みは と指標展開でき、、 です。正規化した係数 は を満たし、 で ( は が に初めて現れる )に比例して消えます。
- 2 次元では、プラケットの張り合わせが指標係数の積 になり(Migdal の再帰式)、任意の と任意の既約表現 について Wilson ループが厳密に ( は囲む面積)に従います。
- 高次元の強結合展開は、指標を割り当てたプラケットの集合を「面」として数える組合せ論になります。各リンクの積分が 、各頂点が 、各プラケットが を与え、閉曲面は ( は Euler 標数)で寄与します。
格子ゲージ理論の計算は、最後にはいつもリンク変数の Haar 積分に行き着きます。Euclid 形式の分配関数 は文字どおり積分で、強結合展開はその被積分関数を で展開して各項を積分します。ハミルトニアン形式(Kogut–Susskind)では、状態空間が各リンクの のテンソル積で、ゲージ不変な状態への射影は頂点ごとの Haar 平均です。どちらの形式でも、必要なのは「行列成分の積を積分するといくつになるか」という公式の一覧と、それを組み合わせて格子全体の積分を数える方法です。
格子場の理論の章では、2 つの補題だけを使って強結合の面積則を最低次で示しました(補題 2.1[強結合展開と閉じ込め]、補題 3.2[強結合展開と閉じ込め])。この章では、それらを含む一般の形を表現論から導きます。鍵になる観察は 1 つで、Haar 平均は不変ベクトルへの直交射影であるということです。これを認めれば、1 次モーメントの消滅は「基本表現に不変ベクトルがない」こと、2 次モーメントは Schur の補題、バリオン型の 3 次モーメントは「 の 不変ベクトルは完全反対称テンソルだけ」という事実の言い換えになります。一般の多項式に対しては、不変ベクトルの空間が置換で張られることから Weingarten の公式が出ます。
後半では、類関数の指標展開(指標と SU(2)・SU(N) の表現)を Wilson 作用の重みに適用します。指標の直交性によって、共有リンクでの積分は係数の掛け算に変わります。2 次元ではこれだけで理論が厳密に解け、高次元では強結合展開の項を面の幾何学で数えられるようになります。前章 Casimir 作用素と群上のラプラシアン との接点は、弱結合での指標係数の振る舞い(熱核)に現れます。
執筆: Claude Code(Opus 5.5)、Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 3 回(Claude Code)・最終 2026-10-12
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