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Navier–Stokes 方程式 II:正則性の判定条件と爆発の研究(Ladyzhenskaya–Prodi–Serrin・Caffarelli–Kohn–Nirenberg・Tao の平均化方程式)

対象読者: Navier–Stokes 方程式 I の内容(Leray–Hopf 弱解、エネルギー等式)と Sobolev 空間、補間不等式(Riesz–Thorin、Hardy–Littlewood–Sobolev)を学んだ人。正則性理論は仮定しません。

前提となる記事:Navier–Stokes 方程式 I:Clay の問題 (A)〜(D) と Leray の弱解、Sobolev 空間:弱微分・埋め込み定理・Rellich のコンパクト性・トレース定理、補間と古典的不等式:Riesz–Thorin・Marcinkiewicz から Hardy–Littlewood–Sobolev へ

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水や空気の流れを表す Navier–Stokes 方程式では、滑らかな解がいつまでも滑らかなまま続くのか、それとも有限の時間で壊れるのかが、まだ分かっていません。この記事は、解が壊れないと言える条件と、壊れるとしたらどのくらいの速さになるはずかを証明つきで整理し、さらに壊れ方の研究の現状を地図としてまとめます。読み終えると、「ここまでは証明されている」「ここから先はまだ分からない」の境目を、自分の言葉で説明できるようになります。

  • 滑らかな解が臨界な混合ノルム LtpLxqL^p_tL^q_x(各時刻に空間で LqL^q ノルムを測り、さらに時間で LpL^p ノルムを取った量。2/p+3/q=12/p+3/q=1、3<q≤∞3\lt q\le\infty)で有界なら、∥∇u∥L2\|\nabla u\|_{L^2} は有界のままで、解は壊れません(Ladyzhenskaya–Prodi–Serrin の条件)。端の q=3q=3 は Escauriaza–Seregin–Šverák の定理です。
  • 時刻 TT で解が壊れるなら、∥∇u(t)∥L2≥c ν3/4(T−t)−1/4\|\nabla u(t)\|_{L^2}\ge c\,\nu^{3/4}(T-t)^{-1/4} より速く発散します(Leray の下界)。
  • エネルギーは優臨界(細かい部分を拡大して見るほど、エネルギーから言えることが減っていく性質)です。「エネルギーが小さければ正則」という型の定理がもしあれば、スケール変換によって問題 (A)(第 9 章の、任意の滑らかな初期値に対して、滑らかでエネルギーが有界な解が全時刻で存在するかという問い)全体が従ってしまいます。エネルギーの評価は細かいスケールで弱くなる一方です。
  • 3 次元の渦度方程式には伸張項 (ω⋅∇)u(\omega\cdot\nabla)u(渦度の向きに流れが引き伸ばされて、渦が強まる効果)があり、2 次元にはありません。
  • 適切な弱解(局所エネルギー不等式を満たす弱解)の特異点集合 SS は、時空で 1 次元の放物型 Hausdorff 測度(放物型の円柱で時空を覆って測る、長さに相当する量)が 00 です(Caffarelli–Kohn–Nirenberg)。この記事では、ε\varepsilon-正則性(勾配のエネルギーが小さい点では解が滑らかになる、という主張)を仮定して被覆の議論の部分を証明します。
  • 爆発の側では、エネルギー恒等式を保つ平均化方程式の爆発(Tao)、凸積分による弱解の非一意性、外力つきの方程式の特異性(Córdoba–Martínez-Zoroa)があります。どれも問題 (A) の否定ではなく、何が証明の障害になるかを示す結果です。

第 9 章 の結論は、「エネルギーの評価は大域的だが弱く、∥∇u∥\|\nabla u\| の評価は強いが局所的」でした。1934 年以降の研究は、この 2 つの間を 3 つの方向から埋めようとしてきました。

第 1 は条件つきの正則性です。解について何を仮定すれば滑らかさが従うかを調べます。答えはスケール変換で不変な量の有界性で、これが Ladyzhenskaya–Prodi–Serrin の条件です。第 2 は部分正則性です。弱解が滑らかでない点の集合がどれだけ小さいかを測ります。第 3 は爆発の構成です。方程式を少し変えた模型や、解のクラスを広げた設定、外力を許した設定で、特異性や非一意性が実際に起こることを示します。

この章は 3 つの方向の主要な結果の地図です。証明できるものは証明し、証明が論文 1 本分を超えるものは主張として出典を付けます。最後の方向が、第 11 章 で読む 2026 年の主張の背景になります。

記号は第 9 章のとおりです。Ω=T3\Omega=\mathbb{T}^3(初期値と外力の平均は 00)または Ω=R3\Omega=\mathbb{R}^3(減衰する滑らかな解)とし、∥⋅∥\|\cdot\| は L2(Ω)L^2(\Omega)、∥⋅∥q\|\cdot\|_q は Lq(Ω)L^q(\Omega) のノルムです。

定義 2.1(混合ノルムと Ladyzhenskaya–Prodi–Serrin の指数)↗

1≤p<∞1\le p\lt\infty、1≤q≤∞1\le q\le\infty に対し ∥u∥Lp(0,T;Lq)=(∫0T∥u(t)∥qpdt)1/p\|u\|_{L^p(0,T;L^q)}=\bigl(\int_0^T\|u(t)\|_q^pdt\bigr)^{1/p} とおく(p=∞p=\infty では sup⁡t∥u(t)∥q\sup_t\|u(t)\|_q)。指数の組 (p,q)(p,q) が

2p+3q=1,3<q≤∞(すなわち p=2qq−3, 2≤p<∞)\frac2p+\frac3q=1,\qquad3\lt q\le\infty\quad\Bigl(\text{すなわち }p=\frac{2q}{q-3},\ 2\le p\lt\infty\Bigr)

を満たすとき Ladyzhenskaya–Prodi–Serrin(LPS)の指数という。端の組は (p,q)=(2,∞)(p,q)=(2,\infty) である。もう一方の端 (∞,3)(\infty,3) は LPS の指数に含めない。

第 9 章の 命題 3.5[Navier–Stokes 方程式 I] と表により、LPS の指数の混合ノルムはスケール変換で不変(臨界)です。

定義 2.2(爆発時刻)↗

(u,p)(u,p) を Ω×[0,T)\Omega\times[0,T) 上の滑らかな解とする。lim sup⁡t↑T∥∇u(t)∥=∞\limsup_{t\uparrow T}\|\nabla u(t)\|=\infty のとき、TT を爆発時刻といい、解は TT で爆発するという。

第 9 章の 定理 7.3[Navier–Stokes 方程式 I](主張のみ)によれば、滑らかな解が TT を越えて延長できないことと、TT が爆発時刻であることは同値です。この章の定理は上の定義だけに基づくので、その主張には依存しません。

3.1. Ladyzhenskaya–Prodi–Serrin の条件

Section titled “3.1. Ladyzhenskaya–Prodi–Serrin の条件”

定理 3.1(Ladyzhenskaya–Prodi–Serrin の判定条件(先験評価))✓

(p,q)(p,q) を LPS の指数とする。qq と Ω\Omega だけで決まる定数 CqC_q があって、Ω×[0,T)\Omega\times[0,T) 上の滑らかな解 (u,p)(u,p)(外力 ff は連続で F:=sup⁡t∥f(t)∥2<∞F:=\sup_t\|f(t)\|^2\lt\infty)について、y(t)=∥∇u(t)∥2y(t)=\|\nabla u(t)\|^2 は

dydt+ν∥Δu∥2≤Cqνp−1 ∥u∥qp y+2ν∥f∥2\frac{dy}{dt}+\nu\|\Delta u\|^2\le\frac{C_q}{\nu^{p-1}}\,\|u\|_q^p\,y+\frac2\nu\|f\|^2

を満たす。したがって ∫0T∥u(t)∥qpdt<∞\int_0^T\|u(t)\|_q^pdt\lt\infty ならば

sup⁡0≤t<T∥∇u(t)∥2≤(∥∇u0∥2+2FTν)exp⁡(Cqνp−1∫0T∥u(t)∥qpdt)<∞\sup_{0\le t\lt T}\|\nabla u(t)\|^2\le\Bigl(\|\nabla u_0\|^2+\frac{2FT}{\nu}\Bigr)\exp\Bigl(\frac{C_q}{\nu^{p-1}}\int_0^T\|u(t)\|_q^pdt\Bigr)\lt\infty

であり、TT は爆発時刻ではない。

この定理の証明の狙いは、非線形項を「係数 ∥u∥qp\|u\|_q^p に y=∥∇u∥2y=\|\nabla u\|^2 を掛けた形」に押さえて、Gronwall の不等式(微分不等式を指数関数で押さえる道具)に持ち込むことです。Hölder の不等式と補間で指数を何度も置き換えるのは、その係数がちょうどスケール変換で不変な量になるように、指数を揃えるためです。

証明(定理 3.1)

第 9 章の 命題 7.1[Navier–Stokes 方程式 I] の証明と同じく、方程式と −Δu-\Delta u の内積から

12dydt+ν∥Δu∥2=⟨(u⋅∇)u,Δu⟩−⟨f,Δu⟩\frac12\frac{dy}{dt}+\nu\|\Delta u\|^2=\langle(u\cdot\nabla)u,\Delta u\rangle-\langle f,\Delta u\rangle

です。違いは非線形項の評価の仕方だけです。

q=∞q=\infty の場合(p=2p=2)。 ∣⟨(u⋅∇)u,Δu⟩∣≤∥u∥∞∥∇u∥ ∥Δu∥≤ν4∥Δu∥2+1ν∥u∥∞2y|\langle(u\cdot\nabla)u,\Delta u\rangle|\le\|u\|_\infty\|\nabla u\|\,\|\Delta u\|\le\frac\nu4\|\Delta u\|^2+\frac1\nu\|u\|_\infty^2y です。

3<q<∞3\lt q\lt\infty の場合。 1r=12−1q\frac1r=\frac12-\frac1q とおくと 2<r<62\lt r\lt6 で、Hölder の不等式(指数 q,r,2q,r,2。定理 4.2[L^p 空間と関数解析への導入])により ∣⟨(u⋅∇)u,Δu⟩∣≤∥u∥q∥∇u∥r∥Δu∥|\langle(u\cdot\nabla)u,\Delta u\rangle|\le\|u\|_q\|\nabla u\|_r\|\Delta u\| です。θ=1−3q\theta=1-\frac3q とおくと 1r=θ2+1−θ6\frac1r=\frac\theta2+\frac{1-\theta}6 で、∣g∣r=∣g∣rθ∣g∣r(1−θ)|g|^r=|g|^{r\theta}|g|^{r(1-\theta)} に指数 2rθ\frac{2}{r\theta} と 6r(1−θ)\frac{6}{r(1-\theta)} の Hölder の不等式を使うと ∥g∥r≤∥g∥θ∥g∥61−θ\|g\|_r\le\|g\|^\theta\|g\|_6^{1-\theta} です。g=∂iujg=\partial_iu_j に適用し、∥∇u∥6≤C∥D2u∥=C∥Δu∥\|\nabla u\|_6\le C\|D^2u\|=C\|\Delta u\|(補題 4.3[Navier–Stokes 方程式 I] と 2 回の部分積分)を使うと

∣⟨(u⋅∇)u,Δu⟩∣≤C ∥u∥q y12(1−3q) ∥Δu∥1+3q\lvert\langle(u\cdot\nabla)u,\Delta u\rangle\rvert\le C\,\|u\|_q\,y^{\frac12(1-\frac3q)}\,\|\Delta u\|^{1+\frac3q}

です。Young の不等式 ab≤aαα+bββab\le\frac{a^\alpha}{\alpha}+\frac{b^\beta}{\beta}(補題 4.1[L^p 空間と関数解析への導入])を、α=2qq+3\alpha=\frac{2q}{q+3}、β=2qq−3=p\beta=\frac{2q}{q-3}=p、

a=(αν4)1/α∥Δu∥1+3q,b=(αν4)−1/αC ∥u∥q yq−32qa=\Bigl(\frac{\alpha\nu}{4}\Bigr)^{1/\alpha}\|\Delta u\|^{1+\frac3q},\qquad b=\Bigl(\frac{\alpha\nu}{4}\Bigr)^{-1/\alpha}C\,\|u\|_q\,y^{\frac{q-3}{2q}}

で使います。aα/α=ν4∥Δu∥2a^\alpha/\alpha=\frac\nu4\|\Delta u\|^2 で、bpb^p は yq−32q⋅p=yy^{\frac{q-3}{2q}\cdot p}=y、∥u∥qp\|u\|_q^p、ν−p/α=ν−(q+3)/(q−3)=ν−(p−1)\nu^{-p/\alpha}=\nu^{-(q+3)/(q-3)}=\nu^{-(p-1)} の積の定数倍です(p−1=2q−(q−3)q−3=q+3q−3p-1=\frac{2q-(q-3)}{q-3}=\frac{q+3}{q-3})。よって ∣⟨(u⋅∇)u,Δu⟩∣≤ν4∥Δu∥2+Cq2νp−1∥u∥qpy|\langle(u\cdot\nabla)u,\Delta u\rangle|\le\frac\nu4\|\Delta u\|^2+\frac{C_q}{2\nu^{p-1}}\|u\|_q^py です。q=∞q=\infty の場合もこの形です。

外力の項は ∣⟨f,Δu⟩∣≤ν4∥Δu∥2+1ν∥f∥2|\langle f,\Delta u\rangle|\le\frac\nu4\|\Delta u\|^2+\frac1\nu\|f\|^2 なので、合わせて 2 倍すると最初の不等式です。

後半を示します。T′<TT'\lt T とします。β(t)=Cqν1−p∥u(t)∥qp\beta(t)=C_q\nu^{1-p}\|u(t)\|_q^p は [0,T′][0,T'] で連続です。不等式を積分すると y(t)≤(y(0)+2FTν)+∫0tβ(s)y(s) dsy(t)\le\bigl(y(0)+\frac{2FT}{\nu}\bigr)+\int_0^t\beta(s)y(s)\,ds なので、Gronwall の不等式(補題 3.1[解の存在と一意性])により y(t)≤(y(0)+2FTν)exp⁡∫0T′βy(t)\le\bigl(y(0)+\frac{2FT}{\nu}\bigr)\exp\int_0^{T'}\beta です。T′↑TT'\uparrow T として主張の評価を得ます。

非線形項を「係数 ∥u∥qp\|u\|_q^p × 線形」に書けるかどうかが要点です。第 9 章の評価では係数が y2y^2 になり、それ自身が未知でした。ここでは係数の可積分性を仮定に回しています。

例 3.2(端の指数の意味)

(p,q)=(2,∞)(p,q)=(2,\infty) の条件は ∫0Tsup⁡x∣u(x,t)∣2dt<∞\int_0^T\sup_x|u(x,t)|^2dt\lt\infty です。問題文が「爆発時刻の近くで速度が非有界になる」と述べるのはこの条件の対偶で、しかも速度の上限の 2 乗が時間について可積分でない、という定量的な形で成り立ちます(系 3.3)。

もう一方の端 (∞,3)(\infty,3) は sup⁡t∥u(t)∥3<∞\sup_t\|u(t)\|_3\lt\infty です。上の証明で q=3q=3 とすると θ=0\theta=0、∥Δu∥\|\Delta u\| の指数が 22 になり、Young の不等式で ν∥Δu∥2\nu\|\Delta u\|^2 に吸収できません(∥u∥3\|u\|_3 が小さいときだけ吸収できる)。この端は別の方法を要し、定理 3.5 になります。

系 3.3(爆発の速さの下界(Leray))✓

(u,p)(u,p) を Ω×[0,T)\Omega\times[0,T) 上の滑らかな解、T<∞T\lt\infty を爆発時刻とし、F=sup⁡t∥f(t)∥2<∞F=\sup_t\|f(t)\|^2\lt\infty とする。C0C_0 を 命題 7.1[Navier–Stokes 方程式 I] の定数、CqC_q を 定理 3.1 の定数とする。

(i) すべての 0≤t<T0\le t\lt T で

∥∇u(t)∥2+y∗≥(ν32C0)1/2(T−t)−1/2,y∗=(2ν2FC0)1/3.\|\nabla u(t)\|^2+y_*\ge\Bigl(\frac{\nu^3}{2C_0}\Bigr)^{1/2}(T-t)^{-1/2},\qquad y_*=\Bigl(\frac{2\nu^2F}{C_0}\Bigr)^{1/3}.

とくに f=0f=0 なら ∥∇u(t)∥≥c ν3/4(T−t)−1/4\|\nabla u(t)\|\ge c\,\nu^{3/4}(T-t)^{-1/4}(c=(2C0)−1/4c=(2C_0)^{-1/4})。

(ii) LPS の指数 (p,q)(p,q) について、すべての t<Tt\lt T で ∫tT∥u(s)∥qpds=∞\int_t^T\|u(s)\|_q^pds=\infty であり、

lim sup⁡s↑T (T−s)q−32q∥u(s)∥q≥(νp−12Cq)1/p=cq νq+32q.\limsup_{s\uparrow T}\,(T-s)^{\frac{q-3}{2q}}\|u(s)\|_q\ge\Bigl(\frac{\nu^{p-1}}{2C_q}\Bigr)^{1/p}=c_q\,\nu^{\frac{q+3}{2q}} .

(i) の証明の考え方は次のとおりです。∥∇u∥2\|\nabla u\|^2 の増え方が、自分自身の 3 乗の定数倍以下で押さえられるとします。このとき逆数を取って −2-2 乗の形にすると、時間微分が定数で押さえられる量になり、そのまま積分できます。発散する時刻が TT だと分かっているので、そこから TT に近づく速さの下界が出ます。

証明(系 3.3)

(i) y=∥∇u∥2y=\|\nabla u\|^2、Y=y+y∗Y=y+y_* とおきます。Y3≥y3+y∗3Y^3\ge y^3+y_*^3 と C0ν−3y∗3=2F/νC_0\nu^{-3}y_*^3=2F/\nu から

Y′=y′≤C0ν3y3+2Fν≤C0ν3Y3Y'=y'\le\frac{C_0}{\nu^3}y^3+\frac{2F}{\nu}\le\frac{C_0}{\nu^3}Y^3

です。y∗>0y_*\gt0 なら Y>0Y\gt0 で (Y−2)′=−2Y′Y−3≥−2C0ν−3(Y^{-2})'=-2Y'Y^{-3}\ge-2C_0\nu^{-3}、t<s<Tt\lt s\lt T で積分して Y(t)−2≤Y(s)−2+2C0ν−3(s−t)Y(t)^{-2}\le Y(s)^{-2}+2C_0\nu^{-3}(s-t) です。爆発時刻の定義により Y(sn)→∞Y(s_n)\to\infty となる sn↑Ts_n\uparrow T があるので、s=sns=s_n として極限を取ると Y(t)−2≤2C0ν−3(T−t)Y(t)^{-2}\le2C_0\nu^{-3}(T-t)、すなわち主張です。f=0f=0(y∗=0y_*=0)のときは、δ>0\delta\gt0 に対する Y=y+δY=y+\delta で同じ計算をして δ→0\delta\to0 とします。

(ii) 定理 3.1 の対偶から、∫0T∥u∥qp=∞\int_0^T\|u\|_q^p=\infty です。t<Tt\lt T について [0,t][0,t] 上の積分は有限(解は [0,t][0,t] で滑らか)なので ∫tT∥u∥qp=∞\int_t^T\|u\|_q^p=\infty です。

後半を示します。κ>0\kappa\gt0 と t0<Tt_0\lt T があって [t0,T)[t_0,T) 上で ∥u(s)∥q≤κ(T−s)−1/p\|u(s)\|_q\le\kappa(T-s)^{-1/p} が成り立つとします。定理 3.1 の微分不等式を t0t_0 から積分して Gronwall の不等式を使うと、a=Cqν1−pκpa=C_q\nu^{1-p}\kappa^p として

y(s)≤(y(t0)+2FTν)exp⁡(a∫t0sdσT−σ)=(y(t0)+2FTν)(T−t0T−s)ay(s)\le\Bigl(y(t_0)+\frac{2FT}{\nu}\Bigr)\exp\Bigl(a\int_{t_0}^s\frac{d\sigma}{T-\sigma}\Bigr)=\Bigl(y(t_0)+\frac{2FT}{\nu}\Bigr)\Bigl(\frac{T-t_0}{T-s}\Bigr)^{a}

です。一方 (i) から y(s)≥(ν3/2C0)1/2(T−s)−1/2−y∗y(s)\ge(\nu^3/2C_0)^{1/2}(T-s)^{-1/2}-y_* です。a<12a\lt\frac12 なら s↑Ts\uparrow T で矛盾するので、a≥12a\ge\frac12、すなわち κ≥(νp−1/2Cq)1/p\kappa\ge(\nu^{p-1}/2C_q)^{1/p} です。したがって、これより小さい任意の κ\kappa について、∥u(s)∥q>κ(T−s)−1/p\|u(s)\|_q\gt\kappa(T-s)^{-1/p} となる ss が TT のいくらでも近くにあります。1p=q−32q\frac1p=\frac{q-3}{2q}、p−1p=q+32q\frac{p-1}{p}=\frac{q+3}{2q} なので主張の式です。

注意 3.4(各時刻での下界と次元解析)

Leray は (ii) を、lim sup⁡\limsup ではなくすべての t<Tt\lt T での下界 ∥u(t)∥q≥cqν(q+3)/(2q)(T−t)−(q−3)/(2q)\|u(t)\|_q\ge c_q\nu^{(q+3)/(2q)}(T-t)^{-(q-3)/(2q)} として示しました(参考文献 [1]。LqL^q の初期値に対する局所解の存在時間の下界を使います。その理論は Rikai に無いので、ここでは lim sup⁡\limsup の形で証明しました)。定数の ν\nu 依存は次元解析で決まります。長さを L\mathsf{L}、時間を T\mathsf{T} とすると ∥u∥q\|u\|_q は L1+3/qT−1\mathsf{L}^{1+3/q}\mathsf{T}^{-1}、ν\nu は L2T−1\mathsf{L}^2\mathsf{T}^{-1} の次元をもち、νa(T−t)−b\nu^a(T-t)^{-b} が ∥u∥q\|u\|_q と同じ次元になるのは 2a=1+3q2a=1+\frac3q、a+b=1a+b=1、すなわち a=q+32qa=\frac{q+3}{2q}、b=q−32qb=\frac{q-3}{2q} のときだけです。(i) の ν3/4(T−t)−1/4\nu^{3/4}(T-t)^{-1/4} も同じく、∥∇u∥\|\nabla u\| の次元 L3/2T−1\mathsf{L}^{3/2}\mathsf{T}^{-1} から決まります。

定理 3.5(Escauriaza–Seregin–Šverák の定理)※

ν>0\nu\gt0、f=0f=0 とする。uu が R3×(0,T)\mathbb{R}^3\times(0,T) 上の Leray–Hopf の弱解で u∈L∞(0,T;L3(R3))u\in L^\infty(0,T;L^3(\mathbb{R}^3)) ならば、uu は R3×(0,T]\mathbb{R}^3\times(0,T] で滑らかである。同じことだが、滑らかな解が有限の時刻 TT で爆発するなら lim sup⁡t↑T∥u(t)∥L3=∞\limsup_{t\uparrow T}\|u(t)\|_{L^3}=\infty である。

注意 3.6(主張のみとする理由)

定理 3.5 は主張のみです。出典は参考文献 [3] です。証明は、特異点があると仮定してその点の周りで解を拡大し、極限として得られる解に、放物型方程式の後ろ向き一意性(Carleman 型の評価による)と一意接続性を適用して矛盾を導きます。エネルギー評価と補間だけでは届かない端点で、定理 3.1 とは別の道具立てになるため、ここでは主張にとどめます。この定理は外力なしの方程式についてのものです。

定理 3.7(Beale–Kato–Majda の判定条件)※

ν≥0\nu\ge0、f=0f=0、s≥3s\ge3 とする。u∈C([0,T);Hs(R3))u\in C([0,T);H^s(\mathbb{R}^3)) が Navier–Stokes 方程式(ν>0\nu\gt0)または Euler 方程式(ν=0\nu=0)の解で、渦度 ω=curl⁡u\omega=\operatorname{curl}u が ∫0T∥ω(t)∥∞dt<∞\int_0^T\|\omega(t)\|_\infty dt\lt\infty を満たすならば、解は TT を越えて同じクラスで延長できる。

注意 3.8(主張のみとする理由)

定理 3.7 は主張のみです。出典は J. T. Beale, T. Kato, A. Majda, Communications in Mathematical Physics 94 (1984), 61–66 です。証明の核は対数型の不等式 ∥∇u∥∞≤C(1+∥ω∥∞(1+log⁡+∥u∥H3)+∥ω∥2)\|\nabla u\|_\infty\le C\bigl(1+\|\omega\|_\infty(1+\log^+\|u\|_{H^3})+\|\omega\|_2\bigr) で、特異積分作用素の評価(Rikai に未収録)を要します。Euler 方程式の特異性の研究では、この条件の破れ ∫0T∥ω∥∞dt=∞\int_0^T\|\omega\|_\infty dt=\infty が「爆発した」ことの標準的な定義になっています。

判定条件の主なものを表にします。どの条件も、スケール変換で不変な量の有界性です。

条件仮定する量指数の関係文献
LPSu∈LtpLxqu\in L^p_tL^q_x2/p+3/q=12/p+3/q=1、3<q≤∞3\lt q\le\inftyProdi 1959、Serrin 1962、Ladyzhenskaya 1967(定理 3.1)
端点u∈Lt∞Lx3u\in L^\infty_tL^3_x2/p+3/q=12/p+3/q=1、q=3q=3Escauriaza–Seregin–Šverák 2003(定理 3.5)
渦度ω∈Lt1Lx∞\omega\in L^1_tL^\infty_x—Beale–Kato–Majda 1984(定理 3.7)
速度勾配∇u∈LtpLxq\nabla u\in L^p_tL^q_x2/p+3/q=22/p+3/q=2、q>3/2q\gt3/2Beirão da Veiga 1995
圧力p∈LtaLxbp\in L^a_tL^b_x2/a+3/b=22/a+3/b=2、b>3/2b\gt3/2Berselli–Galdi 2002
速度の 1 成分u3∈LtpLxqu_3\in L^p_tL^q_x2/p+3/q≤1/22/p+3/q\le1/2、q>6q\gt6Neustupa–Novotný–Penel 2002(その後、指数の改良が続いている)

下の 3 行は文献の主張を引いたもので、この記事では証明しません。速度勾配と圧力の行の「22」は、∇u\nabla u と pp がスケール変換でそれぞれ λ2\lambda^2 倍になることに対応します。1 成分の条件だけは不変な指数(11)に届いておらず、そこを埋めるのが研究課題になっています。

4.1. エネルギーが優臨界であることの帰結

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特異点が疑われる点の周りを、顕微鏡のように拡大して見ることを考えます。この節で示すのは、拡大するほど、全体のエネルギーの上界から言えることがどんどん弱くなる、という事実です。下の命題 (i) の第 3 式のように、L3L^3 ノルムは拡大しても変わりません。一方、エネルギー(L2L^2 ノルムの 2 乗)は、拡大した半径 rr の逆数倍だけ大きく見えます。このずれが「優臨界」の中身です。

命題 4.1(優臨界な量による評価は細かいスケールで弱くなる)✓

d=3d=3 とする。

(i) uu を R3×(a,b)\mathbb{R}^3\times(a,b) 上の滑らかな解、z0=(x0,t0)z_0=(x_0,t_0)、r>0r\gt0 とし、拡大 u(r)(y,s)=r u(x0+ry, t0+r2s)u^{(r)}(y,s)=r\,u(x_0+ry,\,t_0+r^2s) を考える(外力を r3f(x0+ry,t0+r2s)r^3f(x_0+ry,t_0+r^2s) に替えた同じ粘性の方程式の解である)。B1B_1 を単位球、Q1=B1×(−1,1)Q_1=B_1\times(-1,1)、Qr(z0)=Br(x0)×(t0−r2,t0+r2)Q_r(z_0)=B_r(x_0)\times(t_0-r^2,t_0+r^2) とすると

∫B1∣u(r)(y,s)∣2dy=1r∫Br(x0)∣u(x,t0+r2s)∣2dx,∬Q1∣∇u(r)∣2=1r∬Qr(z0)∣∇u∣2,\int_{B_1}|u^{(r)}(y,s)|^2dy=\frac1r\int_{B_r(x_0)}|u(x,t_0+r^2s)|^2dx,\qquad\iint_{Q_1}|\nabla u^{(r)}|^2=\frac1r\iint_{Q_r(z_0)}|\nabla u|^2,∫B1∣u(r)(y,s)∣3dy=∫Br(x0)∣u(x,t0+r2s)∣3dx.\int_{B_1}|u^{(r)}(y,s)|^3dy=\int_{B_r(x_0)}|u(x,t_0+r^2s)|^3dx .

したがって、uu のエネルギーの上界 EE から拡大した解 u(r)u^{(r)} について分かるのは ∫B1∣u(r)∣2≤E/r\int_{B_1}|u^{(r)}|^2\le E/r だけで、r→0r\to0 で発散する。

(ii) ν>0\nu\gt0、f=0f=0 とする。もし定数 ε0>0\varepsilon_0\gt0 があって、条件 (4) を満たし ∥u0∥L2≤ε0\|u_0\|_{L^2}\le\varepsilon_0 である任意の滑らかな発散なしベクトル場 u0u_0 に対して、(6)(7) を満たす大域解が存在するならば、命題 (A) が成り立つ。L2L^2 ノルムを、N(λu0(λ ⋅))=λσN(u0)N(\lambda u_0(\lambda\,\cdot))=\lambda^\sigma N(u_0)(σ<0\sigma\lt0)を満たす任意の量 NN に替えても同じである。

証明(命題 4.1)

(i) 方程式を満たすことは、平行移動と 命題 3.5[Navier–Stokes 方程式 I] (i)(λ=r\lambda=r)です。積分は x=x0+ryx=x_0+ry、dx=r3dydx=r^3dy と置換して ∫B1r2∣u(x0+ry,⋅)∣2dy=r2−3∫Br(x0)∣u∣2dx\int_{B_1}r^2|u(x_0+ry,\cdot)|^2dy=r^{2-3}\int_{B_r(x_0)}|u|^2dx、∫B1r3∣u(x0+ry,⋅)∣3dy=∫Br(x0)∣u∣3dx\int_{B_1}r^3|u(x_0+ry,\cdot)|^3dy=\int_{B_r(x_0)}|u|^3dx です。勾配は ∇yu(r)=r2(∇u)\nabla_yu^{(r)}=r^2(\nabla u) で、t=t0+r2st=t_0+r^2s、dx dt=r5dy dsdx\,dt=r^5dy\,ds から ∬Q1r4∣∇u∣2dy ds=r4−5∬Qr(z0)∣∇u∣2dx dt\iint_{Q_1}r^4|\nabla u|^2dy\,ds=r^{4-5}\iint_{Q_r(z_0)}|\nabla u|^2dx\,dt です。

(ii) u0u_0 を (4) を満たす任意の滑らかな発散なしベクトル場とします。λ≥1\lambda\ge1 に対し u0λ(x)=λu0(λx)u_0^\lambda(x)=\lambda u_0(\lambda x) は滑らかで発散なし、(4) を満たし(∣∂αu0λ(x)∣=λ1+∣α∣∣(∂αu0)(λx)∣≤λ1+∣α∣CαK(1+∣x∣)−K|\partial^\alpha u_0^\lambda(x)|=\lambda^{1+|\alpha|}|(\partial^\alpha u_0)(\lambda x)|\le\lambda^{1+|\alpha|}C_{\alpha K}(1+|x|)^{-K})、∥u0λ∥=λ−1/2∥u0∥\|u_0^\lambda\|=\lambda^{-1/2}\|u_0\| です。λ\lambda を大きく取って ∥u0λ∥≤ε0\|u_0^\lambda\|\le\varepsilon_0 とすると、仮定により初期値 u0λu_0^\lambda の大域解 (v,P)(v,P) で (6)(7) を満たすものがあります。u(x,t)=λ−1v(x/λ,t/λ2)u(x,t)=\lambda^{-1}v(x/\lambda,t/\lambda^2)、p(x,t)=λ−2P(x/λ,t/λ2)p(x,t)=\lambda^{-2}P(x/\lambda,t/\lambda^2) とおくと、命題 3.5[Navier–Stokes 方程式 I] (i)(λ\lambda を 1/λ1/\lambda に替える)により (u,p)(u,p) は R3×[0,∞)\mathbb{R}^3\times[0,\infty) 上の滑らかな解で、u(x,0)=λ−1u0λ(x/λ)=u0(x)u(x,0)=\lambda^{-1}u_0^\lambda(x/\lambda)=u_0(x)、∫∣u(x,t)∣2dx=λ∫∣v(y,t/λ2)∣2dy\int|u(x,t)|^2dx=\lambda\int|v(y,t/\lambda^2)|^2dy は有界です。よって (A) が成り立ちます。一般の NN でも、N(u0λ)=λσN(u0)→0N(u_0^\lambda)=\lambda^\sigma N(u_0)\to0 なので同じです。

(ii) は、優臨界な量の小ささが条件として意味を持たないことを言っています。2 次元ではエネルギーが臨界なので、この議論は使えず、実際エネルギーの評価から正則性が出ます。3 次元で既知の「小さい初期値なら大域解」(第 9 章の 定理 7.5[Navier–Stokes 方程式 I])は、すべて臨界な量についてのものです。(i) は同じことを局所的に見たもので、特異点の候補の周りで解を拡大するほど、エネルギーから分かることは減っていきます。定理 5.2 が 1r∬Qr∣∇u∣2\frac1r\iint_{Q_r}|\nabla u|^2 というちょうど不変な組み合わせを使うのはこのためです。

命題 4.2(渦度方程式と伸張項)✓

(u,p)(u,p) を Ω×[0,T)\Omega\times[0,T) 上の滑らかな解(d=3d=3)、ω=curl⁡u\omega=\operatorname{curl}u、S=12(∇u+(∇u)T)S=\frac12(\nabla u+(\nabla u)^{\mathsf T})(ひずみ速度テンソル)とする。このとき

∂tω+(u⋅∇)ω=(ω⋅∇)u+νΔω+curl⁡f,\partial_t\omega+(u\cdot\nabla)\omega=(\omega\cdot\nabla)u+\nu\Delta\omega+\operatorname{curl}f,ddt∥ω∥2=2∫Ωω⋅Sω dx−2ν∥∇ω∥2+2⟨curl⁡f,ω⟩.\frac{d}{dt}\|\omega\|^2=2\int_\Omega\omega\cdot S\omega\,dx-2\nu\|\nabla\omega\|^2+2\langle\operatorname{curl}f,\omega\rangle .

u=(u1(x1,x2),u2(x1,x2),0)u=(u_1(x_1,x_2),u_2(x_1,x_2),0) の形の(2 次元の)流れでは (ω⋅∇)u=0(\omega\cdot\nabla)u=0 である。

証明(命題 4.2)

恒等式 (u⋅∇)u=∇∣u∣22−u×ω(u\cdot\nabla)u=\nabla\frac{|u|^2}{2}-u\times\omega の回転を取ります。勾配の回転は 00 で、ベクトル解析の公式 curl⁡(u×ω)=u div⁡ω−ω div⁡u+(ω⋅∇)u−(u⋅∇)ω\operatorname{curl}(u\times\omega)=u\,\operatorname{div}\omega-\omega\,\operatorname{div}u+(\omega\cdot\nabla)u-(u\cdot\nabla)\omega に div⁡ω=0\operatorname{div}\omega=0、div⁡u=0\operatorname{div}u=0 を入れると curl⁡[(u⋅∇)u]=(u⋅∇)ω−(ω⋅∇)u\operatorname{curl}[(u\cdot\nabla)u]=(u\cdot\nabla)\omega-(\omega\cdot\nabla)u です。curl⁡∇p=0\operatorname{curl}\nabla p=0、curl⁡Δu=Δω\operatorname{curl}\Delta u=\Delta\omega なので第 1 式を得ます。

第 1 式と ω\omega の内積を積分します。∫(u⋅∇)ω⋅ω=12∫u⋅∇∣ω∣2=0\int(u\cdot\nabla)\omega\cdot\omega=\frac12\int u\cdot\nabla|\omega|^2=0、∫Δω⋅ω=−∥∇ω∥2\int\Delta\omega\cdot\omega=-\|\nabla\omega\|^2 です(補題 3.2[Navier–Stokes 方程式 I] と同じ部分積分)。伸張項は ∫ωi∂iujωj\int\omega_i\partial_iu_j\omega_j で、ωiωj\omega_i\omega_j が i,ji,j について対称なので ∂iuj\partial_iu_j をその対称部分 SijS_{ij} に替えてよく、∫ω⋅Sω\int\omega\cdot S\omega です。2 倍して第 2 式です。

2 次元の流れでは ω=(0,0,∂1u2−∂2u1)\omega=(0,0,\partial_1u_2-\partial_2u_1) で、(ω⋅∇)u=ω3∂3u=0(\omega\cdot\nabla)u=\omega_3\partial_3u=0 です。

ω⋅Sω\omega\cdot S\omega は、渦度の方向に流体が引き伸ばされる(SS の正の固有方向に ω\omega が向く)と正になり、渦度を増幅します。Burgers 渦(第 9 章の例)はこの増幅と粘性の拡散が釣り合った定常解でした。スカラー量の移流拡散方程式には最大値原理(定理 3.1[熱方程式] の型)があり、2 次元の渦度はそれに従います。3 次元の渦度と速度には、伸張項と圧力のために最大値原理がありません。

例 4.3(伸張の 1 次元模型(Constantin–Lax–Majda))

伸張項だけを残した 1 次元の模型 ∂tω=ω Hω\partial_t\omega=\omega\,\mathcal{H}\omega(H\mathcal{H} は Hilbert 変換。∇u\nabla u が ω\omega の特異積分で書けることの類似)を考えます。Hilbert 変換の恒等式 H(ωHω)=12((Hω)2−ω2)\mathcal{H}(\omega\mathcal{H}\omega)=\frac12\bigl((\mathcal{H}\omega)^2-\omega^2\bigr) により、z=Hω+iωz=\mathcal{H}\omega+i\omega は各点で ∂tz=12z2\partial_tz=\frac12z^2 を満たし、z(x,t)=z0(x)1−t2z0(x)z(x,t)=\dfrac{z_0(x)}{1-\frac t2z_0(x)} と解けます。ω0=cos⁡x\omega_0=\cos x なら Hω0=sin⁡x\mathcal{H}\omega_0=\sin x で

ω(x,t)=4cos⁡x4−4tsin⁡x+t2,Hω(x,t)=4sin⁡x−2t4−4tsin⁡x+t2\omega(x,t)=\frac{4\cos x}{4-4t\sin x+t^2},\qquad\mathcal{H}\omega(x,t)=\frac{4\sin x-2t}{4-4t\sin x+t^2}

です。分母は x=π/2x=\pi/2 で (2−t)2(2-t)^2 になり、t↑2t\uparrow2 で 00 に近づきます。x=π2+ξx=\frac\pi2+\xi の近くでは ω≈−4ξ/((2−t)2+2tξ2)\omega\approx-4\xi/((2-t)^2+2t\xi^2) で、sup⁡x∣ω(x,t)∣\sup_x|\omega(x,t)| は (2−t)−1(2-t)^{-1} の速さで発散します。爆発は ω0(x)=0\omega_0(x)=0 かつ Hω0(x)>0\mathcal{H}\omega_0(x)\gt0 の点で、時刻 2/Hω0(x)2/\mathcal{H}\omega_0(x) に起こります。この模型は移流項 u⋅∇ωu\cdot\nabla\omega と粘性を落としているので、3 次元の方程式については何も証明しませんが、伸張項だけなら有限時間で発散しうることを具体的に見せます。

例 4.4(Burgers 方程式との対比)

1 次元の ∂tu+u∂xu=ν∂x2u\partial_tu+u\partial_xu=\nu\partial_x^2u は、非線形項の形が Navier–Stokes 方程式に似ています。ν>0\nu\gt0 ではスカラーの移流拡散方程式として最大値原理が成り立ち、sup⁡∣u(t)∣≤sup⁡∣u0∣\sup|u(t)|\le\sup|u_0|、解は大域的に滑らかです。ν=0\nu=0 では特性曲線 x=x0+tu0(x0)x=x_0+tu_0(x_0) に沿って uu が一定で、∂xu=u0′/(1+tu0′)\partial_xu=u_0'/(1+tu_0') は t=−1/min⁡u0′t=-1/\min u_0' で発散します(衝撃波)。Navier–Stokes 方程式が Burgers 方程式より難しいのは、圧力が非局所的で、速度の成分ごとの最大値原理を壊すからです。

5. 部分正則性:特異点集合の大きさ

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5.1. 適切な弱解と放物型 Hausdorff 測度

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定義 5.1(適切な弱解・放物型円柱・特異点集合)↗

D⊂R3×RD\subset\mathbb{R}^3\times\mathbb{R} を開集合、ν>0\nu\gt0 とする。

  • (u,p)(u,p) が DD 上の適切な弱解(suitable weak solution)であるとは、u∈Lt∞Lx2∩Lt2Hx1u\in L^\infty_tL^2_x\cap L^2_tH^1_x、p∈L3/2p\in L^{3/2}(いずれも DD のコンパクト部分集合の上で)であり、Navier–Stokes 方程式と div⁡u=0\operatorname{div}u=0 を超関数の意味で満たし、さらに局所エネルギー不等式: すべての ϕ∈Cc∞(D)\phi\in C_c^\infty(D)、ϕ≥0\phi\ge0 について
2ν∬∣∇u∣2ϕ dx dt≤∬(∣u∣2(∂tϕ+νΔϕ)+(∣u∣2+2p) u⋅∇ϕ+2(u⋅f)ϕ)dx dt2\nu\iint|\nabla u|^2\phi\,dx\,dt\le\iint\Bigl(|u|^2(\partial_t\phi+\nu\Delta\phi)+(|u|^2+2p)\,u\cdot\nabla\phi+2(u\cdot f)\phi\Bigr)dx\,dt

を満たすことをいう。

  • z=(x,t)z=(x,t)、r>0r\gt0 に対し放物型円柱を Qr(z)=Br(x)×(t−r2,t+r2)Q_r(z)=B_r(x)\times(t-r^2,t+r^2) とする。
  • E⊂R3×RE\subset\mathbb{R}^3\times\mathbb{R}、k≥0k\ge0、δ>0\delta\gt0 に対し Pδk(E)=inf⁡{∑irik:E⊂⋃iQri(zi), ri<δ}\mathcal{P}^k_\delta(E)=\inf\bigl\{\sum_ir_i^k:E\subset\bigcup_iQ_{r_i}(z_i),\ r_i\lt\delta\bigr\}(可算個の円柱による被覆についての下限)、Pk(E)=lim⁡δ→0Pδk(E)\mathcal{P}^k(E)=\lim_{\delta\to0}\mathcal{P}^k_\delta(E) とおき、kk 次元の放物型 Hausdorff 測度という。
  • 点 z∈Dz\in D は、ある近傍で uu が本質的に有界であるとき正則点、そうでないとき特異点という。特異点の全体を特異点集合 SS と書く。正則点の全体は開集合なので、SS は DD の中で閉じている。

局所エネルギー不等式は、滑らかな解なら方程式に 2uϕ2u\phi を掛けて部分積分することで等式として得られます。弱解ではその計算が正当化できないので、不等式を定義に入れます。時間の長さ r2r^2 は 命題 4.1 の拡大と同じ放物型のスケールです。空間 3 次元・時間 1 次元の時空は、この数え方では 3+2=53+2=5 次元です。

局所エネルギー不等式の左辺は粘性によるエネルギーの散逸、右辺は ϕ\phi の台の中でのエネルギーの出入り(移流・圧力・外力による分)をまとめたものです。弱解では解が滑らかでないので、等式の計算をそのまま正当化できず、このように不等式の形で要請します。

定理 5.2(ε-正則性(Caffarelli–Kohn–Nirenberg))※

絶対定数 ε>0\varepsilon\gt0 があって次が成り立つ。ν=1\nu=1、f=0f=0 とし、(u,p)(u,p) を DD 上の適切な弱解、z∈Dz\in D とする。

lim sup⁡r→0 1r∬Qr(z)∣∇u∣2dx dt<ε\limsup_{r\to0}\ \frac1r\iint_{Q_r(z)}|\nabla u|^2dx\,dt\lt\varepsilon

ならば、zz は正則点である。

注意 5.3(主張のみとする理由)

定理 5.2 は主張のみです。出典は参考文献 [4] の Proposition 2 です(原論文は時間について非対称な円柱 Br(x)×(t−78r2,t+18r2)B_r(x)\times(t-\frac78r^2,t+\frac18r^2) を使います。これは Qr(z)Q_r(z) に含まれるので、上の形の仮定は原論文の仮定を導きます)。証明は、局所エネルギー不等式から出発して、スケール不変な量 1r∬∣∇u∣2\frac1r\iint|\nabla u|^2、1r2∬∣u∣3\frac1{r^2}\iint|u|^3、1r2∬∣p∣3/2\frac1{r^2}\iint|p|^{3/2} の間の反復評価を組み立てるもので、論文の大半を占めます。F.-H. Lin による短い別証明(参考文献 [5])は、圧力を L3/2L^{3/2} で扱い、背理法とコンパクト性を使います。

ε\varepsilon-正則性から特異点集合の大きさを出す部分は、測度論の議論で、ここで証明できます。

補題 5.4(放物型円柱の有限 Vitali 被覆補題)✓

放物型円柱の有限族 Qr1(z1),…,QrN(zN)Q_{r_1}(z_1),\ldots,Q_{r_N}(z_N) から、互いに交わらない部分族 Qri1(zi1),…,Qrim(zim)Q_{r_{i_1}}(z_{i_1}),\ldots,Q_{r_{i_m}}(z_{i_m}) で

⋃i=1NQri(zi)⊂⋃j=1mQ3rij(zij)\bigcup_{i=1}^NQ_{r_i}(z_i)\subset\bigcup_{j=1}^mQ_{3r_{i_j}}(z_{i_j})

となるものが選べる。

証明(補題 5.4)

球の場合(補題 4.3[補間と古典的不等式])と同じ貪欲な選び方をします。半径が最大の円柱を選び、それと交わる円柱をすべて捨て、残りから半径が最大のものを選ぶ、という操作を繰り返します。有限回で終わり、選ばれた円柱は互いに交わりません。捨てられた円柱 Qr′(z′)Q_{r'}(z') は、ある選ばれた円柱 Qr(z)Q_r(z) と交わり、r′≤rr'\le r です。z=(x,t)z=(x,t)、z′=(x′,t′)z'=(x',t') とすると、交わりがあることから ∣x−x′∣<r+r′≤2r|x-x'|\lt r+r'\le2r、∣t−t′∣<r2+r′2≤2r2|t-t'|\lt r^2+r'^2\le2r^2 です。したがって Qr′(z′)Q_{r'}(z') の任意の点 (ξ,τ)(\xi,\tau) は ∣ξ−x∣<r′+2r≤3r|\xi-x|\lt r'+2r\le3r、∣τ−t∣<r′2+2r2≤3r2<(3r)2|\tau-t|\lt r'^2+2r^2\le3r^2\lt(3r)^2 を満たし、Q3r(z)Q_{3r}(z) に入ります。

命題 5.5(ε-正則性から 𝒫¹(S) = 0 へ)△

D⊂R3×RD\subset\mathbb{R}^3\times\mathbb{R} を開集合、g≥0g\ge0 を DD 上の可積分関数、ε>0\varepsilon\gt0 とする。S⊂DS\subset D が DD の中で閉じていて、すべての z∈Sz\in S で

lim sup⁡r→0 1r∬Qr(z)g dx dt≥ε\limsup_{r\to0}\ \frac1r\iint_{Q_r(z)}g\,dx\,dt\ge\varepsilon

を満たすならば、SS の 4 次元 Lebesgue 測度は 00 で、P1(S)=0\mathcal{P}^1(S)=0 である。

とくに、定理 5.2 を仮定すると、∬D∣∇u∣2<∞\iint_D|\nabla u|^2\lt\infty である適切な弱解(ν=1\nu=1、f=0f=0)の特異点集合 SS は P1(S)=0\mathcal{P}^1(S)=0 を満たす。

証明の筋道は次のとおりです。特異点の周りには、勾配のエネルギーが少なくとも ε\varepsilon だけ入った小さな円柱がいくらでも取れます。それらから互いに交わらないものを選ぶと、半径の和が全エネルギー ∬g\iint g の定数倍で押さえられます。半径をいくらでも小さく取れるので、特異点集合を覆う円柱の半径の和をいくらでも小さくでき、測度が 00 になります。第 1 段から第 4 段は、この筋道をコンパクト集合ごとに厳密にしたものです。

証明(命題 5.5)

第 1 段(コンパクト集合への帰着)。 Kn={z∈S:∣z∣≤n, dist⁡(z,R4∖D)≥1/n}K_n=\{z\in S:|z|\le n,\ \operatorname{dist}(z,\mathbb{R}^4\setminus D)\ge1/n\} はコンパクトで S=⋃nKnS=\bigcup_nK_n です。可算個の被覆を合わせれば Pδ1(S)≤∑nPδ1(Kn)\mathcal{P}^1_\delta(S)\le\sum_n\mathcal{P}^1_\delta(K_n) で、Pδ1≤P1\mathcal{P}^1_\delta\le\mathcal{P}^1 なので、各コンパクト集合 K⊂SK\subset S について ∣K∣=0|K|=0 と P1(K)=0\mathcal{P}^1(K)=0 を示せば十分です。

第 2 段(被覆)。 K⊂SK\subset S をコンパクト、VV を K⊂V⊂DK\subset V\subset D となる開集合、δ>0\delta\gt0 とします。各 z∈Kz\in K について、仮定の lim sup⁡\limsup が ε\varepsilon 以上なので、いくらでも小さい rr で 1r∬Qr(z)g≥ε2\frac1r\iint_{Q_r(z)}g\ge\frac\varepsilon2 となるものがあります。VV は開集合なので、そのような r=rz<δr=r_z\lt\delta を Qrz(z)⊂VQ_{r_z}(z)\subset V となるように選べます。{Qrz(z)}z∈K\{Q_{r_z}(z)\}_{z\in K} は KK の開被覆なので有限部分被覆があり、補題 5.4 により、その中から互いに交わらない Qj=Qrj(zj)Q_j=Q_{r_j}(z_j)(j=1,…,mj=1,\ldots,m)を K⊂⋃jQ3rj(zj)K\subset\bigcup_jQ_{3r_j}(z_j) となるように選べます。QjQ_j は互いに交わらず VV に含まれるので

∑jrj≤2ε∑j∬Qjg≤2ε∬Vg.\sum_jr_j\le\frac2\varepsilon\sum_j\iint_{Q_j}g\le\frac2\varepsilon\iint_Vg .

半径 3rj<3δ3r_j\lt3\delta の円柱で KK を覆ったので

P3δ1(K)≤∑j3rj≤6ε∬Vg.\mathcal{P}^1_{3\delta}(K)\le\sum_j3r_j\le\frac6\varepsilon\iint_Vg .

第 3 段(Lebesgue 測度が 00)。 ∣Qρ∣=4π3ρ3⋅2ρ2=8π3ρ5|Q_\rho|=\frac{4\pi}{3}\rho^3\cdot2\rho^2=\frac{8\pi}{3}\rho^5 なので、V=DV=D として

∣K∣≤∑j∣Q3rj(zj)∣=8π3∑j(3rj)5≤8π3 35 δ4∑jrj≤8π⋅353⋅2ε δ4∬Dg|K|\le\sum_j|Q_{3r_j}(z_j)|=\frac{8\pi}{3}\sum_j(3r_j)^5\le\frac{8\pi}{3}\,3^5\,\delta^4\sum_jr_j\le\frac{8\pi\cdot3^5}{3}\cdot\frac{2}{\varepsilon}\,\delta^4\iint_Dg

です。δ→0\delta\to0 として ∣K∣=0|K|=0 です。

第 4 段(P1(K)=0\mathcal{P}^1(K)=0)。 Vn={z:dist⁡(z,K)<1/n}V_n=\{z:\operatorname{dist}(z,K)\lt1/n\} は開集合で、nn が大きければ DD に含まれ、⋂nVn=K\bigcap_nV_n=K です。g1Vn→g1Kg\mathbf{1}_{V_n}\to g\mathbf{1}_K が各点で成り立ち、gg で抑えられるので、優収束定理(定理 7.3[ルベーグ積分の定義と収束定理])により ∬Vng→∬Kg=0\iint_{V_n}g\to\iint_Kg=0 です(第 3 段)。第 2 段を V=VnV=V_n で使うと P3δ1(K)≤6ε∬Vng→0\mathcal{P}^1_{3\delta}(K)\le\frac6\varepsilon\iint_{V_n}g\to0 で、P3δ1(K)=0\mathcal{P}^1_{3\delta}(K)=0 がすべての δ\delta で成り立ちます。よって P1(K)=0\mathcal{P}^1(K)=0 です。

後半。 定理 5.2 の対偶により、特異点 z∈Sz\in S では lim sup⁡r→01r∬Qr(z)∣∇u∣2≥ε\limsup_{r\to0}\frac1r\iint_{Q_r(z)}|\nabla u|^2\ge\varepsilon です。SS は DD の中で閉じている(定義 5.1)ので、g=∣∇u∣2g=|\nabla u|^2 として前半を使えます。

第 3 段で r5≤δ4rr^5\le\delta^4r と書けたこと、つまり「1r∬∣∇u∣2\frac1r\iint|\nabla u|^2 の指数 11」が、そのまま特異点集合の次元の上界 11 になっています。不変な量の rr の指数が次元を決めます。

定理 5.6(Caffarelli–Kohn–Nirenberg の部分正則性定理)※

ν>0\nu\gt0、f=0f=0 とする。

(i) 発散なしの任意の u0∈L2(R3)u_0\in L^2(\mathbb{R}^3) に対し、R3×(0,∞)\mathbb{R}^3\times(0,\infty) 上の適切な弱解で、初期値 u0u_0 をもつ Leray–Hopf の弱解であるものが存在する。

(ii) 適切な弱解の特異点集合 SS は P1(S)=0\mathcal{P}^1(S)=0 を満たす。

注意 5.7(主張のみとする理由と歴史)

定理 5.6 は主張のみです。出典は参考文献 [4] です。(ii) は 定理 5.2(主張のみ)と 命題 5.5(この記事で証明)から従います。(i) は Leray の構成を、局所エネルギー不等式が極限で保たれるように行うもので、圧力の評価を要します。先行する結果として Scheffer(1976〜1977 年)が特異点集合の Hausdorff 次元の評価を与えており、Caffarelli–Kohn–Nirenberg はそれを P1(S)=0\mathcal{P}^1(S)=0 に改良しました。Lin の別証明が参考文献 [5] です。P1(S)=0\mathcal{P}^1(S)=0 は、時空の曲線 {(ϕ(t),t)}\{(\phi(t),t)\} が特異点集合に含まれないことを導きます(演習 8.1)。この評価は 1982 年から改良されていません(対数因子の改良を除く)。

Leray は 1934 年の論文で、爆発する解の候補として、スケール変換で自分自身に移る解を提案しました。

定義 6.1(後ろ向きの自己相似解)↗

T∈RT\in\mathbb{R}、U:R3→R3U:\mathbb{R}^3\to\mathbb{R}^3、P:R3→RP:\mathbb{R}^3\to\mathbb{R} に対し、t<Tt\lt T で

u(x,t)=1T−t U(xT−t),p(x,t)=1T−t P(xT−t)u(x,t)=\frac{1}{\sqrt{T-t}}\,U\Bigl(\frac{x}{\sqrt{T-t}}\Bigr),\qquad p(x,t)=\frac{1}{T-t}\,P\Bigl(\frac{x}{\sqrt{T-t}}\Bigr)

の形の解を後ろ向きの自己相似解、(U,P)(U,P) をそのプロファイルという。t>Tt\gt T で t−T\sqrt{t-T} を使った同じ形の解を前向きの自己相似解という。

命題 6.2(プロファイルの方程式とノルムの振る舞い)✓

U,PU,P を滑らかとし、(u,p)(u,p) を 定義 6.1 で定める。

(i) (u,p)(u,p) が t<Tt\lt T で f=0f=0 の Navier–Stokes 方程式を満たすことは、(U,P)(U,P) が y∈R3y\in\mathbb{R}^3 について

−νΔU+12U+12(y⋅∇)U+(U⋅∇)U+∇P=0,div⁡U=0-\nu\Delta U+\frac12U+\frac12(y\cdot\nabla)U+(U\cdot\nabla)U+\nabla P=0,\qquad\operatorname{div}U=0

を満たすことと同値である。

(ii) τ=T−t\tau=T-t として、1≤q≤∞1\le q\le\infty について

∥u(t)∥q=τ3−q2q∥U∥q,∥∇u(t)∥2=τ−1/2∥∇U∥2.\|u(t)\|_q=\tau^{\frac{3-q}{2q}}\|U\|_q,\qquad\|\nabla u(t)\|^2=\tau^{-1/2}\|\nabla U\|^2 .

とくにエネルギーは 12∥u(t)∥2=12τ1/2∥U∥2→0\frac12\|u(t)\|^2=\frac12\tau^{1/2}\|U\|^2\to0、∥u(t)∥3=∥U∥3\|u(t)\|_3=\|U\|_3 は一定、∥u(t)∥∞=τ−1/2∥U∥∞\|u(t)\|_\infty=\tau^{-1/2}\|U\|_\infty である。

(iii) U∈H1(R3)U\in H^1(\mathbb{R}^3)、U≠0U\ne0 ならば、uu のエネルギーは有界で ν∫T−1T∥∇u∥2dt<∞\nu\int_{T-1}^T\|\nabla u\|^2dt\lt\infty、∥∇u(t)∥\|\nabla u(t)\| は 系 3.3 (i) の下界と同じ速さ τ−1/4\tau^{-1/4} で発散し、∥u(t)∥3\|u(t)\|_3 は有界である。

証明(命題 6.2)

(i) y=xτ−1/2y=x\tau^{-1/2} とおきます。∂t=−∂τ\partial_t=-\partial_\tau で、∂τ(τ−1/2)=−12τ−3/2\partial_\tau(\tau^{-1/2})=-\frac12\tau^{-3/2}、∂τy=−12τ−1y\partial_\tau y=-\frac12\tau^{-1}y なので

∂tu=−∂τ[τ−1/2U(y)]=12τ−3/2U+12τ−3/2(y⋅∇)U.\partial_tu=-\partial_\tau\bigl[\tau^{-1/2}U(y)\bigr]=\frac12\tau^{-3/2}U+\frac12\tau^{-3/2}(y\cdot\nabla)U .

空間微分は 1 回ごとに τ−1/2\tau^{-1/2} が掛かるので、(u⋅∇)u=τ−1/2τ−1/2τ−1/2(U⋅∇)U(u\cdot\nabla)u=\tau^{-1/2}\tau^{-1/2}\tau^{-1/2}(U\cdot\nabla)U、Δu=τ−1/2τ−1ΔU\Delta u=\tau^{-1/2}\tau^{-1}\Delta U、∇p=τ−1τ−1/2∇P\nabla p=\tau^{-1}\tau^{-1/2}\nabla P、div⁡u=τ−1div⁡U\operatorname{div}u=\tau^{-1}\operatorname{div}U です。すべての項に τ−3/2\tau^{-3/2} が共通に掛かるので、方程式は主張のプロファイル方程式と同値です。

(ii) x=τ1/2yx=\tau^{1/2}y、dx=τ3/2dydx=\tau^{3/2}dy から ∫∣u∣qdx=τ−q/2τ3/2∫∣U∣qdy\int|u|^qdx=\tau^{-q/2}\tau^{3/2}\int|U|^qdy で、qq 乗根を取ると τ−12+32q=τ3−q2q\tau^{-\frac12+\frac{3}{2q}}=\tau^{\frac{3-q}{2q}} です。∇u=τ−1(∇U)(y)\nabla u=\tau^{-1}(\nabla U)(y) から ∥∇u∥2=τ−2τ3/2∥∇U∥2\|\nabla u\|^2=\tau^{-2}\tau^{3/2}\|\nabla U\|^2 です。

(iii) (ii) から ∥u(t)∥2=τ1/2∥U∥2≤∥U∥2\|u(t)\|^2=\tau^{1/2}\|U\|^2\le\|U\|^2(τ≤1\tau\le1)、∫01τ−1/2dτ=2<∞\int_0^1\tau^{-1/2}d\tau=2\lt\infty、∥∇u(t)∥=τ−1/4∥∇U∥\|\nabla u(t)\|=\tau^{-1/4}\|\nabla U\| です。∥U∥3≤2∥U∥1/2∥∇U∥1/2<∞\|U\|_3\le2\|U\|^{1/2}\|\nabla U\|^{1/2}\lt\infty(補題 4.3[Navier–Stokes 方程式 I] を、H1H^1 での稠密性で延ばしたもの。定理 2.4[Sobolev 空間])なので ∥u(t)∥3=∥U∥3\|u(t)\|_3=\|U\|_3 は有界です。

(iii) は、自己相似な爆発がエネルギーの評価とも爆発の速さの下界とも矛盾しないことを示しています。排除するには別の議論が要ります。

定理 6.3(自己相似な爆発の不在(Nečas–Růžička–Šverák))※

ν>0\nu\gt0 とする。命題 6.2 (i) のプロファイル方程式の弱解 U∈L3(R3)U\in L^3(\mathbb{R}^3) は U≡0U\equiv0 に限る。

注意 6.4(主張のみとする理由)

定理 6.3 は主張のみです。出典は参考文献 [6] です。証明は、Π=12∣U∣2+P+12y⋅U\Pi=\frac12|U|^2+P+\frac12y\cdot U という量がプロファイル方程式のもとで楕円型の最大値原理を満たすことを見つけるもので、UU の遠方での減衰を得るための正則性理論を要します。Tsai(1998 年)は仮定を、局所的なエネルギーの有限性にまで弱めました。U∈H1U\in H^1 なら U∈L3U\in L^3 なので(命題 6.2 (iii))、Leray が提案した形の爆発は起こりません。∥u(t)∥3\|u(t)\|_3 が一定であることから、この結論は 定理 3.5 とも整合します。ただし「厳密に自己相似」でない、近似的・離散的に自己相似な爆発は、この定理では排除されません。

Navier–Stokes 方程式(ν=1\nu=1、f=0f=0)は、双線形作用素 B(u,v)=−12P[(u⋅∇)v+(v⋅∇)u]B(u,v)=-\frac12\mathbb{P}\bigl[(u\cdot\nabla)v+(v\cdot\nabla)u\bigr] を使って ∂tu=Δu+B(u,u)\partial_tu=\Delta u+B(u,u) と書けます。エネルギー等式は ⟨B(u,u),u⟩=0\langle B(u,u),u\rangle=0 から従い、第 9 章と前節までの評価は、この恒等式と、BB が満たす Hölder・Sobolev 型の評価だけから出ていました。

次の定義の「平均化」は、BB の前後に、向きを変える回転、大きさを変える伸縮、周波数ごとに掛け算をするフィルター(Fourier 乗数)をはさみ、それらの選び方について平均を取る、という操作です。BB の細かい構造を変えた模型を作る操作、と読めば十分です。

定義 7.1(平均化された Navier–Stokes 方程式)↗

双線形作用素 B~\tilde B が BB の平均化であるとは、回転 RjR_j、伸縮 DjD_j、次数 00 の Fourier 乗数 mj(D)m_j(D)(j=1,2,3j=1,2,3)を確率変数として

B~(u,v)=E[m3(D)R3D3 B(m1(D)R1D1u, m2(D)R2D2v)]\tilde B(u,v)=\mathbb{E}\Bigl[m_3(D)R_3D_3\,B\bigl(m_1(D)R_1D_1u,\ m_2(D)R_2D_2v\bigr)\Bigr]

の形に書けることをいう(期待値は回転・伸縮・乗数の選び方についての平均)。∂tu=Δu+B~(u,u)\partial_tu=\Delta u+\tilde B(u,u) を平均化された Navier–Stokes 方程式という。

定理 7.2(平均化された方程式の有限時間爆発(Tao))※

BB の平均化 B~\tilde B で、エネルギー恒等式 ⟨B~(u,u),u⟩=0\langle\tilde B(u,u),u\rangle=0 を満たし、BB が満たす調和解析の評価(LpL^p・Sobolev 空間での双線形評価)をすべて満たすものと、Schwartz 級で発散なしの初期値 u0u_0 があって、∂tu=Δu+B~(u,u)\partial_tu=\Delta u+\tilde B(u,u)、u(0)=u0u(0)=u_0 の滑らかな解は有限時間で爆発する(大域的な滑らかな解は存在しない)。

注意 7.3(主張のみとする理由)

定理 7.2 は主張のみです。出典は参考文献 [7] です。構成は、Fourier 空間の 2 進的なスケールごとに少数のモードを置き、あるスケールのエネルギーが次のスケールへ遅れを伴って急激に移るように B~\tilde B の係数を設計するものです。移る時間がスケールごとに等比的に短くなるので、無限個のスケールを有限時間で通過します。エネルギーが広いスケールに拡散せず、塊のまま移ることが要点で、そのための係数の設計が論文の中心です。

系 7.4(エネルギー恒等式と調和解析の評価だけでは (A) は証明できない)△

定理 7.2 を仮定する。C\mathcal{C} を、エネルギー恒等式と、BB と同じ調和解析の評価を満たす双線形作用素の全体とする。「すべての B′∈CB'\in\mathcal{C} について、∂tu=Δu+B′(u,u)\partial_tu=\Delta u+B'(u,u) は Schwartz 級の初期値に対して大域的な滑らかな解をもつ」という命題は偽である。したがって、命題 (A) の証明は、BB がもち C\mathcal{C} のすべての元がもつわけではない性質を、どこかで使わなければならない。

証明(系 7.4)

定理 7.2 の B~\tilde B は C\mathcal{C} に属し、ある Schwartz 級の初期値に対して大域的な滑らかな解をもちません。これが反例です。後半は対偶です。(A) の証明が C\mathcal{C} の元に共通の性質だけを使うなら、同じ証明が B~\tilde B にも通用して前半に反します。

BB に固有の性質としては、渦度の輸送の構造(命題 4.2)、循環やヘリシティに関わる恒等式などが候補になります。この系は、第 9 章の 命題 7.1[Navier–Stokes 方程式 I] や 定理 3.1 の型の議論をいくら精密にしても (A) に届かないことの、厳密な言い方です。

例 7.5(2 進模型のエネルギー恒等式)

Tao の構成の出発点である 2 進模型(Katz–Pavlović の型)を見ます。スケール λ−n\lambda^{-n}(λ>1\lambda\gt1)の振幅を Xn(t)X_n(t) とし

dXndt=−λ2nαXn+λn−1Xn−12−λnXnXn+1(n≥1, X0=0)\frac{dX_n}{dt}=-\lambda^{2n\alpha}X_n+\lambda^{n-1}X_{n-1}^2-\lambda^nX_nX_{n+1}\qquad(n\ge1,\ X_0=0)

とおきます。非線形項のエネルギーへの寄与は

∑nXn(λn−1Xn−12−λnXnXn+1)=∑nλn−1Xn−12Xn−∑nλnXn2Xn+1=0\sum_nX_n\bigl(\lambda^{n-1}X_{n-1}^2-\lambda^nX_nX_{n+1}\bigr)=\sum_n\lambda^{n-1}X_{n-1}^2X_n-\sum_n\lambda^nX_n^2X_{n+1}=0

で、2 つの和は添字を 1 つずらすと一致します。12∑Xn2\frac12\sum X_n^2 は散逸項だけで減り、命題 3.3[Navier–Stokes 方程式 I] と同じ形です。エネルギーはスケール nn から n+1n+1 へ速さ λnXn2Xn+1\lambda^nX_n^2X_{n+1} で流れます。この模型では、エネルギーが多くのスケールに広がってしまい、散逸の指数 α\alpha が Navier–Stokes 方程式に対応する値のときに爆発するかどうかは単純には決まりません。Tao はスケールごとのモードを数個に増やし、下の図のように「前のスケールが空になってから次が動き出す」回路を組みました。

スケール nn + 1n + 2n + 3滞在時間 tt / ct / c²t / c³合計 t (1 + 1/c + 1/c² + …) は有限(c は 1 より大きい)
スケールの連鎖によるエネルギーの移動(模式図)。各スケールの滞在時間が等比的に短くなり、無限個のスケールを有限時間で通過する。

定理 7.6(有限エネルギーの弱解の非一意性(Buckmaster–Vicol))※

ν>0\nu\gt0、f=0f=0 とする。β>0\beta\gt0 があって、任意の滑らかな関数 e:[0,T]→[0,∞)e:[0,T]\to[0,\infty) に対し、T3×[0,T]\mathbb{T}^3\times[0,T] 上の Navier–Stokes 方程式の超関数の意味の解 v∈C([0,T];Hβ(T3))v\in C([0,T];H^\beta(\mathbb{T}^3)) で、すべての tt で ∫T3∣v(x,t)∣2dx=e(t)\int_{\mathbb{T}^3}|v(x,t)|^2dx=e(t) となるものが存在する。とくに、このクラスの弱解は初期値で決まらない。

定理 7.7(外力つきの Leray–Hopf 弱解の非一意性(Albritton–Brué–Colombo))※

T>0T\gt0 と外力 f∈L1(0,T;L2(R3))f\in L^1(0,T;L^2(\mathbb{R}^3)) があって、初期値 00・外力 ff の Navier–Stokes 方程式は、R3×(0,T)\mathbb{R}^3\times(0,T) 上に相異なる 2 つの適切な Leray–Hopf の弱解をもつ。

注意 7.8(主張のみとする理由と、2 つの結果の違い)

定理 7.6 と 定理 7.7 は主張のみです。出典は参考文献 [8] と [9] です。前者は凸積分(高周波の振動を逐次加え、その 2 次の相互作用で誤差を打ち消していく方法。Euler 方程式での Onsager 予想の解決に使われた)によります。得られる解はエネルギー不等式を満たすとは限らず、∇v∈Lt2Lx2\nabla v\in L^2_tL^2_x も保証されないので、Leray–Hopf の弱解ではありません。後者は、相似変数で不安定な渦を作り、その不安定性から 2 つ目の解を分岐させます。解は Leray–Hopf のクラスに入りますが、外力は初期時刻で特異(Lt1Lx2L^1_tL^2_x には入るが滑らかではない)です。どちらも、滑らかな初期値と滑らかな外力に対する解の一意性・正則性(問題 (A)〜(D))については何も言いません。第 9 章の 定理 8.2[Navier–Stokes 方程式 I] により、滑らかな解がある間は Leray–Hopf の弱解は一意だからです。

7.3. Euler 方程式と外力つきの特異性

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定理 7.9(C1,αC^{1,α} の初期値に対する Euler 方程式の特異性(Elgindi))※

α>0\alpha\gt0 と、発散なしで軸対称・旋回なしの初期速度 u0∈C1,α(R3)u_0\in C^{1,\alpha}(\mathbb{R}^3) があって、外力なしの 3 次元 Euler 方程式の C1,αC^{1,\alpha} 級の局所解は有限時間 TT で特異になる(∫0T∥ω(t)∥∞dt=∞\int_0^T\|\omega(t)\|_\infty dt=\infty)。

定理 7.10(外力つきの方程式の有限時間特異性(Córdoba–Martínez-Zoroa、Córdoba–Martínez-Zoroa–Zheng))※

(i) (外力つき Euler)小さい ϵ>0\epsilon\gt0 に対し、T>0T\gt0 と、[0,T][0,T] 上一様に C1,12−ϵ∩L2C^{1,\frac12-\epsilon}\cap L^2 に属する外力 ff があって、R3×[0,T)\mathbb{R}^3\times[0,T) 上の外力つき 3 次元非圧縮 Euler 方程式の解 uu で、t<Tt\lt T では原点以外で滑らか、かつ ∫0T∥∇u(t)∥∞dt=∞\int_0^T\|\nabla u(t)\|_\infty dt=\infty となるものが存在する。

(ii) (弱散逸 Navier–Stokes)散逸を −ν∣∇∣γu-\nu|\nabla|^{\gamma}u に替えた方程式について、0≤γ<γ0=(22−87)/90\le\gamma\lt\gamma_0=(22-8\sqrt7)/9 ならば、T>0T\gt0 と外力 f∈L1(0,T;C1,ϵ)∩L∞(0,T;L2)f\in L^1(0,T;C^{1,\epsilon})\cap L^\infty(0,T;L^2) があって、t<Tt\lt T で滑らかかつエネルギー有限な解 uu で、t↑Tt\uparrow T のとき ∫0t∥∇u∥∞ds→∞\int_0^t\|\nabla u\|_\infty ds\to\infty となるものが存在する。

注意 7.11(主張のみとする理由と位置づけ)

定理 7.9 と 定理 7.10 は主張のみです。出典は参考文献 [10]〜[12] です。定理 7.10 の文は、[11](arXiv:2309.08495)と [12](arXiv:2407.06776)の題と要旨に書かれている範囲で述べました(外力の正則性のクラスは題のとおり。本文の定理の細部はこの記事の執筆時点で照合していません)。γ0=(22−87)/9≈0.093\gamma_0=(22-8\sqrt7)/9\approx0.093 で、Navier–Stokes 方程式の γ=2\gamma=2 からは遠い値です。

Elgindi の結果は、初期値の滑らかさを C1,αC^{1,\alpha}(α\alpha は小さい)に下げた設定で、自己相似的な爆発を構成します。滑らかな初期値に対しては、境界のある領域での軸対称 Euler 方程式について Chen–Hou が計算機援用証明による爆発を発表しています(arXiv:2210.07191、arXiv:2305.05660。区間演算による厳密な数値評価を使う証明で、その考え方は 浮動小数点と区間演算 の章にあります)。

Córdoba と Martínez-Zoroa の系列は方針が異なり、外力を許す代わりに、外力の正則性を保ったまま特異性を作ります。小さいスケールの渦層を、大きいスケールのひずみで順に増幅していく多段の構成で、自己相似性を使いません。外力をどこまで滑らかにできるか、粘性をどこまで強くできるか、がこの系列の物差しです。外力が C∞C^\infty で、散逸が通常の Δ\Delta(γ=2\gamma=2)なら、それは問題 (C) そのものになります。第 11 章 で読む主張は、この位置にあります。

年結果性格
1934Leray: 弱解の存在、爆発の速さの下界、自己相似解の提案出発点
1959〜1967Prodi・Serrin・Ladyzhenskaya: 臨界な混合ノルムによる判定条件条件つき正則性
1982Caffarelli–Kohn–Nirenberg: P1(S)=0\mathcal{P}^1(S)=0部分正則性
1984Beale–Kato–Majda: 渦度による判定条件条件つき正則性
1996Nečas–Růžička–Šverák: 自己相似な爆発の不在爆発の筋書きの排除
2003Escauriaza–Seregin–Šverák: 端点 Lt∞Lx3L^\infty_tL^3_x条件つき正則性
2016Tao: 平均化された方程式の爆発証明方法への障害
2019Buckmaster–Vicol: 有限エネルギーの弱解の非一意性弱いクラスでの非一意性
2021Elgindi: C1,αC^{1,\alpha} の初期値での Euler の特異性低い正則性での爆発
2022Albritton–Brué–Colombo: 外力つき Leray–Hopf 弱解の非一意性特異な外力での非一意性
2023〜Córdoba–Martínez-Zoroa ほか: 外力つきの特異性外力の正則性を上げる系列

演習 8.1標準

E⊂R3×RE\subset\mathbb{R}^3\times\mathbb{R} が P1(E)=0\mathcal{P}^1(E)=0 を満たすとする。a<ba\lt b と写像 ϕ:[a,b]→R3\phi:[a,b]\to\mathbb{R}^3(連続性は仮定しない)について、{(ϕ(t),t):a≤t≤b}⊂E\{(\phi(t),t):a\le t\le b\}\subset E とはならないことを示せ。

解答

含まれるとします。P1(E)=0\mathcal{P}^1(E)=0 なので、任意の δ∈(0,1)\delta\in(0,1) について、半径 ri<δr_i\lt\delta の円柱 Qri(zi)Q_{r_i}(z_i) による EE の被覆で ∑iri<1\sum_ir_i\lt1 となるものがあります。各円柱の時間方向の射影は長さ 2ri22r_i^2 の区間で、被覆はグラフ {(ϕ(t),t)}\{(\phi(t),t)\} を覆うので、これらの区間は [a,b][a,b] を覆います。Lebesgue 測度の劣加法性から b−a≤∑i2ri2≤2δ∑iri<2δb-a\le\sum_i2r_i^2\le2\delta\sum_ir_i\lt2\delta です。δ\delta は任意なので b−a≤0b-a\le0 となり矛盾です。この議論は P2(E)=0\mathcal{P}^2(E)=0 でも通ります。P1(E)=0\mathcal{P}^1(E)=0 はそれより強く、特異点が「各時刻にちょうど 1 点ずつ、時間の区間にわたって」存在する筋書きを排除します。

演習 8.2易

定理 3.1 の微分不等式(f=0f=0)の両辺が、スケール変換 u↦uλu\mapsto u_\lambda のもとで同じ倍率になることを確かめよ。

解答

yλ(t)=∥∇uλ(t)∥2=λ y(λ2t)y_\lambda(t)=\|\nabla u_\lambda(t)\|^2=\lambda\,y(\lambda^2t)(第 9 章のスケールの表)なので、ddtyλ=λ3y′(λ2t)\frac{d}{dt}y_\lambda=\lambda^3y'(\lambda^2t) です。∥Δuλ∥2=λ6−3∥Δu∥2=λ3∥Δu∥2\|\Delta u_\lambda\|^2=\lambda^{6-3}\|\Delta u\|^2=\lambda^3\|\Delta u\|^2。右辺は ∥uλ∥qp yλ=λp(1−3/q)λ ∥u∥qpy\|u_\lambda\|_q^p\,y_\lambda=\lambda^{p(1-3/q)}\lambda\,\|u\|_q^py で、2/p+3/q=12/p+3/q=1 から p(1−3/q)=2p(1-3/q)=2、よって λ3\lambda^3 倍です。3 つの項がすべて λ3\lambda^3 倍なので、不等式は変換で保たれます。LPS の指数の関係式は、この釣り合いの条件そのものです。

演習 8.3標準

後ろ向きの自己相似解(定義 6.1、U≠0U\ne0、U∈LqU\in L^q)について、LPS の指数 (p,q)(p,q) に対する ∫T−1T∥u(t)∥qpdt\int_{T-1}^T\|u(t)\|_q^pdt を計算し、定理 3.1 と 系 3.3 (ii) に合うことを確かめよ。

解答

命題 6.2 (ii) により ∥u(t)∥q=τ−q−32q∥U∥q=τ−1/p∥U∥q\|u(t)\|_q=\tau^{-\frac{q-3}{2q}}\|U\|_q=\tau^{-1/p}\|U\|_q(1p=q−32q\frac1p=\frac{q-3}{2q})です。よって ∫T−1T∥u∥qpdt=∥U∥qp∫01τ−1dτ=∞\int_{T-1}^T\|u\|_q^pdt=\|U\|_q^p\int_0^1\tau^{-1}d\tau=\infty で、対数的に発散します。LPS の条件はちょうど破れており、判定条件と矛盾しません。また (T−t)1/p∥u(t)∥q=∥U∥q(T-t)^{1/p}\|u(t)\|_q=\|U\|_q は一定で、系 3.3 (ii) の lim sup⁡\limsup の下界は「∥U∥q≥cqν(q+3)/(2q)\|U\|_q\ge c_q\nu^{(q+3)/(2q)}」という、プロファイルの大きさの下界になります。自己相似解は、爆発の速さの下界をすべての指数で同時に、指数の意味でちょうど実現する解です。

演習 8.4易

命題 4.1 (ii) の議論を 2 次元で行うと、どこで破綻するか。

解答

2 次元では ∥λu0(λ ⋅)∥L2=λ1−2/2∥u0∥=∥u0∥\|\lambda u_0(\lambda\,\cdot)\|_{L^2}=\lambda^{1-2/2}\|u_0\|=\|u_0\| で、スケール変換でエネルギーを小さくできません。したがって「エネルギーが小さければ大域解がある」から「すべての初期値で大域解がある」は導けません。2 次元ではエネルギーが臨界なので、その小ささは実質的な条件になりえます(実際には 2 次元では小ささの仮定なしに大域解があります。第 9 章の 定理 6.2[Navier–Stokes 方程式 I])。

  1. J. Leray, “Sur le mouvement d’un liquide visqueux emplissant l’espace”, Acta Mathematica 63 (1934), 193–248. doi:10.1007/BF02547354
  2. J. Serrin, “On the interior regularity of weak solutions of the Navier–Stokes equations”, Archive for Rational Mechanics and Analysis 9 (1962), 187–195.
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  4. L. Caffarelli, R. Kohn, L. Nirenberg, “Partial regularity of suitable weak solutions of the Navier–Stokes equations”, Communications on Pure and Applied Mathematics 35 (1982), 771–831. doi:10.1002/cpa.3160350604
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  13. C. L. Fefferman, “Existence and smoothness of the Navier–Stokes equation”, Clay Mathematics Institute の問題文。https://www.claymath.org/wp-content/uploads/2022/06/navierstokes.pdf

このテーマの 100 本ノック(50 問)

執筆: Claude Code(Opus 5.5)、Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 2 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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