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QED の 1 ループ:真空偏極・電子の異常磁気モーメント・Ward–高橋恒等式

対象読者: 本テーマ前章までのファインマン則・LSZ簡約公式とくりこみの基本を学び、ガンマ行列のトレース計算ができる人。次元正則化は未習で構いません。

前提となる記事:摂動論とファインマン則:Wick の定理から LSZ 簡約公式・散乱断面積まで

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電子や光子の振る舞いを精密に測ると、単純な図 1 本の計算では説明できない小さなずれが見つかります。この記事は、そのずれを「仮想的な粒子が輪になって現れる効果」(ループ補正)として計算する章です。電子の磁石としての強さが予想よりわずかに大きいこと、電荷の見え方が観測するエネルギーで変わること、そしてそれらを支えるゲージ不変性の関係式を、具体的な計算で確かめます。読み終えると、1 ループの積分をどう処理するかと、その結果が何を意味するかを説明できるようになります。

  • 1 ループ積分は、ファインマン・パラメータで分母を 1 つにまとめ、ループ運動量を平行移動し、Wick 回転して Euclid 空間の球対称な積分に直すと、すべて 1 つの公式 ∫ddℓE(2π)d1(ℓE2+Δ)n=1(4π)d/2Γ(n−d/2)Γ(n)Δd/2−n\int\frac{d^d\ell_E}{(2\pi)^d}\frac{1}{(\ell_E^2+\Delta)^n}=\frac{1}{(4\pi)^{d/2}}\frac{\Gamma(n-d/2)}{\Gamma(n)}\Delta^{d/2-n} に帰着します。次元正則化はこの右辺を dd について解析接続したもので、ゲージ不変性(平行移動不変性)を保ちます。
  • Ward–高橋恒等式(ゲージ不変性から出る、頂点補正と自己エネルギーの関係式)qμΓμ(p+q,p)=q̸−Σ(p+q)+Σ(p)q_\mu\Gamma^\mu(p+q,p)=\not{q}-\Sigma(p+q)+\Sigma(p) を 1 ループで証明し、そこから頂点と電子場のくりこみ定数が等しいこと Z1=Z2Z_1=Z_2 を導きます。その結果、電荷のくりこみは光子の Z3Z_3 だけで決まり、e=Z31/2e0e=Z_3^{1/2}e_0 はどの荷電粒子にも共通です。
  • 真空偏極は横波 Πμν=(q2gμν−qμqν)Π(q2)\Pi^{\mu\nu}=(q^2g^{\mu\nu}-q^\mu q^\nu)\Pi(q^2) で、Π2(q2)=−2απ∫01dx x(1−x)[2ε−γE+ln⁡4π−ln⁡Δ]\Pi_2(q^2)=-\frac{2\alpha}{\pi}\int_0^1dx\,x(1-x)\big[\frac2\varepsilon-\gamma_E+\ln4\pi-\ln\Delta\big] です。有効結合は −q2≫m2-q^2\gg m^2 で αeff=α/(1−α3πln⁡−q2Am2)\alpha_{\mathrm{eff}}=\alpha/\big(1-\frac{\alpha}{3\pi}\ln\frac{-q^2}{Am^2}\big)、A=e5/3A=e^{5/3} となり、β関数は β(e)=e312π2\beta(e)=\frac{e^3}{12\pi^2} です。結合は高エネルギーで増え、形式的には Landau 極(結合定数が有限のエネルギーで無限大になる点)に達します。
  • 頂点補正の形状因子 F2F_2 は有限で、F2(0)=α2πF_2(0)=\frac{\alpha}{2\pi}(Schwinger の結果)。したがって電子の gg 因子は g=2+απ+O(α2)g=2+\frac{\alpha}{\pi}+O(\alpha^2) です。
  • 頂点補正の F1F_1 は光子質量 μ→0\mu\to0 で赤外発散(エネルギーの極めて低い光子に由来する発散)しますが、検出器で分離できない軟光子の放射を足し合わせると ln⁡μ\ln\mu が相殺します(Bloch–Nordsieck)。光子を 1 個も出さない排他的な断面積は、全次数で見ると 00 です。

1. 動機:ツリーの先にあるもの

Section titled “1. 動機:ツリーの先にあるもの”

前章でファインマン則を導き、e+e−→μ+μ−e^+e^-\to\mu^+\mu^- の断面積をツリーレベルで計算しました。ツリーレベルの答えは古典電磁気学の延長で理解できる部分が大きく、量子論らしさが本格的に現れるのはループからです。QED の 1 ループには、歴史的に場の量子論の信頼性を決定づけた 3 つの結果が含まれています。

  1. 真空偏極:仮想的な電子・陽電子対が電荷を遮蔽し、結合定数がエネルギーとともに変化します。α−1\alpha^{-1} が低エネルギーの 137.036137.036 から ZZ ボソンの質量スケールで約 129129 に下がることは実測されています(くりこみ理論入門の 例 6.5[くりこみ理論入門])。
  2. 異常磁気モーメント:Dirac 方程式は g=2g=2 を予言しますが、1947 年の Kusch–Foley の測定は g/2≈1.00119g/2\approx1.00119 でした。Schwinger は 1948 年にこのずれが α/2π\alpha/2\pi であることを示しました。
  3. Ward 恒等式:ループには紫外発散が現れますが、ゲージ不変性によって発散のうち独立なものが減り、電荷のくりこみが粒子の種類によらないことが保証されます。

一方で、ループ計算は 2 種類の発散に出会います。高運動量で生じる紫外発散はくりこみで吸収し、無質量の光子に由来する赤外発散は観測量の定義を見直すことで消えます。本章はこの 2 つの処理を、具体的な計算として最後まで追いかけます。符号の規約は前章と同じく Peskin–Schroeder に従い、Dμ=∂μ+ieAμD_\mu=\partial_\mu+ieA_\mu、電子の電荷を e=−∣e∣e=-|e|、α=e2/4π\alpha=e^2/4\pi とします(注意 4.6[摂動論とファインマン則])。

Σ(p)Π(q)γ(q)pp′
QED の 1 ループの 1PI 図。左から電子の自己エネルギー Σ、真空偏極 Π、頂点補正 δΓ。破線は内線の光子、波線は外線の光子を表す。

ループ積分の被積分関数は、伝播関数(分母)の積です。このままでは積分しにくいので、まず分母を 1 つの式の冪にまとめます。次の補題はそのための道具です。

補題 2.1(ファインマン・パラメータの公式)✓

n≥1n\ge1 とし、複素数 A1,…,AnA_1,\dots,A_n がすべて同じ開半平面 {A: Re(eiθA)>0}\{A:\ \mathrm{Re}(e^{i\theta}A)\gt0\}(θ\theta は実数)に含まれるとします。このとき

1A1A2⋯An=Γ(n)∫01dx1⋯∫01dxn  δ(∑ixi−1)(x1A1+⋯+xnAn)n\frac{1}{A_1A_2\cdots A_n}=\Gamma(n)\int_0^1dx_1\cdots\int_0^1dx_n\;\frac{\delta\big(\sum_ix_i-1\big)}{\big(x_1A_1+\cdots+x_nA_n\big)^n}

が成り立ちます。特に 1AB=∫01dx[xA+(1−x)B]2\frac{1}{AB}=\int_0^1\frac{dx}{[xA+(1-x)B]^2}、1ABC=2∫01dx dy dz δ(x+y+z−1)[xA+yB+zC]3\frac{1}{ABC}=2\int_0^1dx\,dy\,dz\,\frac{\delta(x+y+z-1)}{[xA+yB+zC]^3} です。

証明(補題 2.1)

両辺とも各 AiA_i について −1-1 次の同次式なので、すべての AiA_i に eiθe^{i\theta} を掛けても等式は変わりません。よって Re Ai>0\mathrm{Re}\,A_i\gt0 の場合に示せば十分です。このとき 1Ai=∫0∞dti e−tiAi\frac{1}{A_i}=\int_0^\infty dt_i\,e^{-t_iA_i} なので

∏i1Ai=∫[0,∞)ndnt  e−∑itiAi\prod_i\frac1{A_i}=\int_{[0,\infty)^n}d^nt\;e^{-\sum_it_iA_i}

です。ti=s xit_i=s\,x_i(s>0s\gt0、∑ixi=1\sum_ix_i=1)と変数変換すると、dnt=sn−1ds dnx δ(∑xi−1)d^nt=s^{n-1}ds\,d^nx\,\delta(\sum x_i-1) です(s=∑tis=\sum t_i を新しい変数に選んだ射影座標のヤコビアン)。ss 積分は ∫0∞ds sn−1e−sX=Γ(n)X−n\int_0^\infty ds\,s^{n-1}e^{-sX}=\Gamma(n)X^{-n}(X=∑xiAiX=\sum x_iA_i、Re X>0\mathrm{Re}\,X\gt0)なので主張を得ます。

Minkowski 空間の伝播関数の分母 k2−m2+iεk^2-m^2+i\varepsilon は虚部が正なので、θ=−π/2\theta=-\pi/2 としてこの補題を使えます。

ファインマン・パラメータでまとめたあと、ループ運動量を ℓ=k+(外線運動量の 1 次結合)\ell=k+(\text{外線運動量の 1 次結合}) と平行移動すると、分母は (ℓ2−Δ+iε)n(\ell^2-\Delta+i\varepsilon)^n の形になります。Δ>0\Delta\gt0 のとき、ℓ0\ell^0 の極 ±(ℓ2+Δ−iε)\pm(\sqrt{\boldsymbol\ell^2+\Delta}-i\varepsilon) は第 2・第 4 象限にあるので、ℓ0\ell^0 の積分路を反時計回りに 90∘90^\circ 回して虚軸に重ねられます。ℓ0=iℓE0\ell^0=i\ell_E^0、ℓ=ℓE\boldsymbol\ell=\boldsymbol\ell_E と置くと ℓ2=−ℓE2\ell^2=-\ell_E^2、d4ℓ=i d4ℓEd^4\ell=i\,d^4\ell_E です。これを Wick 回転と呼びます。

次の定義は、4 次元では発散する積分に、次元 dd を連続的に動かすことで意味を与える方法です。直感的には、積分が収束する小さい dd で答えを式の形で求めておき、その式を d=4d=4 の近くまで延ばして読みます。式がガンマ関数で書けるため、dd が整数でなくても意味をもちます。

定義 2.2(次元正則化)↗

自然数 dd と Δ>0\Delta\gt0 について、dd 次元 Euclid 空間の積分

In(d,Δ)=∫ddℓE(2π)d1(ℓE2+Δ)nI_n(d,\Delta)=\int\frac{d^d\ell_E}{(2\pi)^d}\frac{1}{(\ell_E^2+\Delta)^n}

は d<2nd\lt2n で収束します。その値(定理 2.5)は dd の有理型関数に解析接続でき、極は d=2n,2n+2,…d=2n,2n+2,\dots にあります。次元正則化とは、4 次元で発散するループ積分を、Wick 回転・平行移動のあとこの解析接続で定義し、d=4−εd=4-\varepsilon として ε→0\varepsilon\to0 の極を分離する処方です。結合定数の次元を保つため、dd 次元では ee を e με/2e\,\mu^{\varepsilon/2} に置き換えます(μ\mu は任意の質量スケール)。

補題 2.3(次元正則化の平行移動不変性)✓

f(k)f(k) を、伝播関数の分母 (k+pi)2−mi2+iε(k+p_i)^2-m_i^2+i\varepsilon の積の逆数に kk の多項式を掛けた 1 ループの被積分関数とし、定義 2.2 で ∫ddk(2π)df(k)\int\frac{d^dk}{(2\pi)^d}f(k) を定める。任意の外線運動量 qq について

∫ddk(2π)df(k+q)=∫ddk(2π)df(k).\int\frac{d^dk}{(2\pi)^d}f(k+q)=\int\frac{d^dk}{(2\pi)^d}f(k).
証明(補題 2.3)

定義 2.2 の手順では、分母を 補題 2.1 でまとめると ∑ixi=1\sum_ix_i=1 から ∑ixi((k+pi)2−mi2)=(k+P)2−Δ\sum_ix_i\bigl((k+p_i)^2-m_i^2\bigr)=(k+P)^2-\Delta(P=∑ixipiP=\sum_ix_ip_i、Δ=P2−∑ixipi2+∑iximi2\Delta=P^2-\sum_ix_ip_i^2+\sum_ix_im_i^2 は xix_i、pip_i、mim_i だけで決まる)となり、ℓ=k+P\ell=k+P と平行移動して、分子を ℓ\ell の多項式として書いたうえで ℓ\ell について Wick 回転と解析接続を行います。f(k+q)f(k+q) では pip_i が pi+qp_i+q に変わるだけなので、PP は P+qP+q に、Δ\Delta は (P+q)2−∑ixi(pi+q)2+∑iximi2=P2−∑ixipi2+∑iximi2(P+q)^2-\sum_ix_i(p_i+q)^2+\sum_ix_im_i^2=P^2-\sum_ix_ip_i^2+\sum_ix_im_i^2 で変わらず、ℓ=k+q+P\ell=k+q+P と置くと分子の ℓ\ell の多項式も f(k)f(k) の場合と同じです。したがって定義に現れる ℓ\ell の積分はまったく同じ式になり、値は一致します。

注意 2.4(次元正則化の性質)

こうして定義した「dd 次元積分」は、被積分関数について線形で、積分変数の平行移動で不変で、スケール変換について dd 次元の積分と同じ性質をもちます。逆にこの 3 性質と規格化(Gauss 積分の値)から一意に定まることが知られています(Collins『Renormalization』第 4 章)。平行移動不変性は第 3 節の Ward–高橋恒等式の証明で本質的に使われます。運動量のカットオフはこの性質をもたず、ゲージ不変性を壊します(例 4.3)。γ\gamma 行列は {γμ,γν}=2gμν\{\gamma^\mu,\gamma^\nu\}=2g^{\mu\nu}(gμμ=dg^\mu{}_\mu=d)と tr 1=4\mathrm{tr}\,1=4 をそのまま使います。γ5\gamma^5 は 4 次元に固有なので、本章の計算には現れないようにしています。

定理 2.5(基本積分公式)✓

Δ>0\Delta\gt0、nn を自然数とし、dd を d<2nd\lt2n から解析接続すると

∫ddℓE(2π)d1(ℓE2+Δ)n=1(4π)d/2Γ(n−d2)Γ(n)Δd2−n,∫ddℓE(2π)dℓE2(ℓE2+Δ)n=1(4π)d/2d2Γ(n−d2−1)Γ(n)Δd2−n+1\int\frac{d^d\ell_E}{(2\pi)^d}\frac{1}{(\ell_E^2+\Delta)^n}=\frac{1}{(4\pi)^{d/2}}\frac{\Gamma(n-\frac d2)}{\Gamma(n)}\Delta^{\frac d2-n},\qquad \int\frac{d^d\ell_E}{(2\pi)^d}\frac{\ell_E^2}{(\ell_E^2+\Delta)^n}=\frac{1}{(4\pi)^{d/2}}\frac d2\frac{\Gamma(n-\frac d2-1)}{\Gamma(n)}\Delta^{\frac d2-n+1}

が成り立ちます。Minkowski 空間では、Wick 回転により

∫ddℓ(2π)d1(ℓ2−Δ)n=(−1)ni(4π)d/2Γ(n−d2)Γ(n)Δd2−n,∫ddℓ(2π)dℓ2(ℓ2−Δ)n=(−1)n−1i(4π)d/2d2Γ(n−d2−1)Γ(n)Δd2−n+1\int\frac{d^d\ell}{(2\pi)^d}\frac{1}{(\ell^2-\Delta)^n}=\frac{(-1)^ni}{(4\pi)^{d/2}}\frac{\Gamma(n-\frac d2)}{\Gamma(n)}\Delta^{\frac d2-n},\qquad \int\frac{d^d\ell}{(2\pi)^d}\frac{\ell^2}{(\ell^2-\Delta)^n}=\frac{(-1)^{n-1}i}{(4\pi)^{d/2}}\frac d2\frac{\Gamma(n-\frac d2-1)}{\Gamma(n)}\Delta^{\frac d2-n+1}

です。

証明(定理 2.5)

∫Rde−ℓ2ddℓ=πd/2\int_{\mathbb R^d}e^{-\ell^2}d^d\ell=\pi^{d/2} を極座標で計算すると ∣Sd−1∣∫0∞rd−1e−r2dr=∣Sd−1∣Γ(d/2)/2|S^{d-1}|\int_0^\infty r^{d-1}e^{-r^2}dr=|S^{d-1}|\Gamma(d/2)/2 なので、単位球面の面積は ∣Sd−1∣=2πd/2/Γ(d/2)|S^{d-1}|=2\pi^{d/2}/\Gamma(d/2) です。動径積分は t=r2/Δt=r^2/\Delta、u=1/(1+t)u=1/(1+t) と置くと Beta 関数になり

∫0∞rd−1dr(r2+Δ)n=Δd2−n2∫0∞td2−1dt(1+t)n=Δd2−n2Γ(d2)Γ(n−d2)Γ(n)\int_0^\infty\frac{r^{d-1}dr}{(r^2+\Delta)^n}=\frac{\Delta^{\frac d2-n}}{2}\int_0^\infty\frac{t^{\frac d2-1}dt}{(1+t)^n}=\frac{\Delta^{\frac d2-n}}2\frac{\Gamma(\frac d2)\Gamma(n-\frac d2)}{\Gamma(n)}

です。∣Sd−1∣/(2π)d|S^{d-1}|/(2\pi)^d を掛けると Γ(d/2)\Gamma(d/2) が約分され、πd/2/(2π)d=(4π)−d/2\pi^{d/2}/(2\pi)^d=(4\pi)^{-d/2} から第 1 式を得ます。右辺は dd の有理型関数なので、これが 定義 2.2 の解析接続そのものです。第 2 式は ℓE2(ℓE2+Δ)n=1(ℓE2+Δ)n−1−Δ(ℓE2+Δ)n\frac{\ell_E^2}{(\ell_E^2+\Delta)^n}=\frac{1}{(\ell_E^2+\Delta)^{n-1}}-\frac{\Delta}{(\ell_E^2+\Delta)^n} に第 1 式を適用し、Γ(n−1−d2)Γ(n−1)−Γ(n−d2)Γ(n)=Γ(n−1−d2)Γ(n)[(n−1)−(n−1−d2)]\frac{\Gamma(n-1-\frac d2)}{\Gamma(n-1)}-\frac{\Gamma(n-\frac d2)}{\Gamma(n)}=\frac{\Gamma(n-1-\frac d2)}{\Gamma(n)}\big[(n-1)-(n-1-\frac d2)\big] と整理すれば得られます。Minkowski 版は ddℓ=i ddℓEd^d\ell=i\,d^d\ell_E、ℓ2−Δ=−(ℓE2+Δ)\ell^2-\Delta=-(\ell_E^2+\Delta) を代入したものです。

d=4−εd=4-\varepsilon では Γ(ε/2)=2ε−γE+O(ε)\Gamma(\varepsilon/2)=\frac2\varepsilon-\gamma_E+O(\varepsilon)、Δ−ε/2=1−ε2ln⁡Δ+⋯\Delta^{-\varepsilon/2}=1-\frac\varepsilon2\ln\Delta+\cdots なので、n=2n=2 の積分は

Γ(2−d2)(4π)d/2Δd2−2=116π2[2ε−γE+ln⁡4π−ln⁡Δ]+O(ε)\frac{\Gamma(2-\frac d2)}{(4\pi)^{d/2}}\Delta^{\frac d2-2}=\frac{1}{16\pi^2}\Big[\frac2\varepsilon-\gamma_E+\ln4\pi-\ln\Delta\Big]+O(\varepsilon)

となります(くりこみ理論入門の Appendix と同じ規約です)。

補題 2.6(対称積分と d 次元の γ 行列)✓

ff を ℓ2\ell^2 だけの関数とすると、次元正則化された積分の中で ℓμ↦0\ell^\mu\mapsto0、ℓμℓν↦1dgμνℓ2\ell^\mu\ell^\nu\mapsto\frac1dg^{\mu\nu}\ell^2 と置き換えてよいです。また dd 次元で γνγν=d\gamma^\nu\gamma_\nu=d、γνγμγν=−(d−2)γμ\gamma^\nu\gamma^\mu\gamma_\nu=-(d-2)\gamma^\mu、γνa̸γμb̸γν=−2b̸γμa̸+(4−d)a̸γμb̸\gamma^\nu\not{a}\gamma^\mu\not{b}\gamma_\nu=-2\not{b}\gamma^\mu\not{a}+(4-d)\not{a}\gamma^\mu\not{b} が成り立ちます。

証明(補題 2.6)

ℓ↦−ℓ\ell\mapsto-\ell の不変性から 1 次の積分は 00 です。∫ℓμℓνf\int\ell^\mu\ell^\nu f は Lorentz 共変な 2 階テンソルで外部ベクトルを含まないので CgμνCg^{\mu\nu} の形であり、gμνg_{\mu\nu} で縮約すると C=1d∫ℓ2fC=\frac1d\int\ell^2f です。γ\gamma 行列の等式は反交換関係から順に出ます。γνγμγν=(2gνμ−γμγν)γν=2γμ−dγμ\gamma^\nu\gamma^\mu\gamma_\nu=(2g^{\nu\mu}-\gamma^\mu\gamma^\nu)\gamma_\nu=2\gamma^\mu-d\gamma^\mu。3 つ目は γνa̸γμb̸γν=γνa̸γμ(2bν−γνb̸)=2b̸a̸γμ−γνa̸γμγνb̸\gamma^\nu\not{a}\gamma^\mu\not{b}\gamma_\nu=\gamma^\nu\not{a}\gamma^\mu(2b_\nu-\gamma_\nu\not{b})=2\not{b}\not{a}\gamma^\mu-\gamma^\nu\not{a}\gamma^\mu\gamma_\nu\not{b} と書き、γνa̸γμγν=4aμ−(4−d)a̸γμ\gamma^\nu\not{a}\gamma^\mu\gamma_\nu=4a^\mu-(4-d)\not{a}\gamma^\mu(同じ方法で示せます)と a̸γμ+γμa̸=2aμ\not{a}\gamma^\mu+\gamma^\mu\not{a}=2a^\mu を使うと得られます。

3. くりこみ定数と Ward–高橋恒等式

Section titled “3. くりこみ定数と Ward–高橋恒等式”

この節の目的は、電荷のくりこみが電子の種類や頂点補正の詳細によらないことを示すことです。そのために、まず 3 種類の補正(電子の自己エネルギー、光子の真空偏極、頂点補正)にくりこみ定数 Z1,Z2,Z3Z_1,Z_2,Z_3 を対応させ、次にゲージ不変性から出る関係式を使って Z1=Z2Z_1=Z_2 を導きます。

定義 3.1(1PI 関数とくりこみ定数)↗

裸の結合 e0e_0、裸の質量 m0m_0 で書いた QED の摂動論で、外線を切り取った 1 粒子既約(1PI)図の和を次のように表します。

  • 電子の自己エネルギー Σ(p)\Sigma(p):1PI な電子 2 点図の和を −iΣ(p)-i\Sigma(p) とします。完全な電子の伝播関数は ip̸−m0−Σ(p)\frac{i}{\not{p}-m_0-\Sigma(p)} です。
  • 真空偏極 Πμν(q)\Pi^{\mu\nu}(q):1PI な光子 2 点図の和を iΠμν(q)i\Pi^{\mu\nu}(q) とします。
  • 頂点関数 Γμ(p′,p)\Gamma^\mu(p',p):入射電子 pp、出射電子 p′p'、光子 q=p′−pq=p'-p の 1PI 3 点図の和を −ie0Γμ(p′,p)-ie_0\Gamma^\mu(p',p) とします。最低次は Γμ=γμ\Gamma^\mu=\gamma^\mu です。

物理的質量 mm は m−m0−Σ(p̸=m)=0m-m_0-\Sigma(\not{p}=m)=0 の解です。くりこみ定数を

Z2−1=1−dΣdp̸∣p̸=m,Z3−1=1−Π(0),uˉ(p)Γμ(p,p)u(p)=Z1−1uˉ(p)γμu(p)  (p2=m2)Z_2^{-1}=1-\frac{d\Sigma}{d\not{p}}\Big|_{\not{p}=m},\qquad Z_3^{-1}=1-\Pi(0),\qquad \bar u(p)\Gamma^\mu(p,p)u(p)=Z_1^{-1}\bar u(p)\gamma^\mu u(p)\ \ (p^2=m^2)

で定めます(Π(q2)\Pi(q^2) は 命題 4.1 の横波成分)。Z2,Z3Z_2,Z_3 は完全な伝播関数の極の留数であり、定理 5.2[摂動論とファインマン則] の ZZ にあたります。物理的電荷を e=e0Z1−1Z2Z31/2e=e_0Z_1^{-1}Z_2Z_3^{1/2} で定めます。Z1,Z2Z_1,Z_2 は赤外発散を含むので、必要なときは光子に小さな質量 μ\mu を与えて正則化します。

物理的電荷の定義は、運動量移行 q→0q\to0 の散乱振幅が e2/q2e^2/q^2 になるように選んだものです。2 つの荷電粒子が光子 1 個を交換する振幅は、各頂点の e0Z1−1e_0Z_1^{-1}、LSZ 公式による外線の Z2\sqrt{Z_2} 4 個、光子の伝播関数の留数 Z3Z_3 を掛けた e02Z1−2Z22Z3/q2e_0^2Z_1^{-2}Z_2^2Z_3/q^2 を q→0q\to0 で与えるからです。1 ループでは e0e_0 と ee の差は高次の効果なので、図の中の結合を単に ee と書きます。

次の定理は、頂点補正に光子の運動量 qq を掛けて縮約すると、自己エネルギーの差になるという関係です。証明の方針は、q̸\not{q} を 2 つの電子の伝播関数の逆数の差として書き、頂点の図を伝播関数の差に崩すことです。

定理 3.2(Ward–高橋恒等式(1 ループ))✓

次元正則化した QED の e2e^2 の次数で、光子の伝播関数を任意の共変ゲージにとるとき、任意の(質量殻外の)p,qp,q について

qμΓμ(p+q,p)=q̸−Σ(p+q)+Σ(p),qμΠμν(q)=0q_\mu\Gamma^\mu(p+q,p)=\not{q}-\Sigma(p+q)+\Sigma(p),\qquad q_\mu\Pi^{\mu\nu}(q)=0

が成り立ちます。ここで Γμ=γμ+δΓμ\Gamma^\mu=\gamma^\mu+\delta\Gamma^\mu、Σ\Sigma、Πμν\Pi^{\mu\nu} はそれぞれ e2e^2 の次数の 1 ループ図です。

証明(定理 3.2)

自由電子の伝播関数 S(k)=ik̸−mS(k)=\frac{i}{\not{k}-m} について、q̸=(k̸+q̸−m)−(k̸−m)\not{q}=(\not{k}+\not{q}-m)-(\not{k}-m) と書くと

S(k+q) (−ieq̸) S(k)=−ie⋅i⋅i[1k̸−m−1k̸+q̸−m]=e[S(k)−S(k+q)]S(k+q)\,(-ie\not{q})\,S(k)=-ie\cdot i\cdot i\Big[\frac{1}{\not{k}-m}-\frac{1}{\not{k}+\not{q}-m}\Big]=e\big[S(k)-S(k+q)\big]

です。同様に S(k)(−ieq̸)S(k+q)=e[S(k)−S(k+q)]S(k)(-ie\not{q})S(k+q)=e[S(k)-S(k+q)] です。光子の運動量 ll を積分変数にとり、光子の伝播関数を Dνρ(l)D_{\nu\rho}(l) と書くと、定理 4.5[摂動論とファインマン則] より

−iΣ(p)=∫ddl(2π)d(−ieγν)S(p−l)(−ieγρ)Dνρ(l),−ie δΓμ(p′,p)=∫ddl(2π)d(−ieγν)S(p′−l)(−ieγμ)S(p−l)(−ieγρ)Dνρ(l)-i\Sigma(p)=\int\frac{d^dl}{(2\pi)^d}(-ie\gamma^\nu)S(p-l)(-ie\gamma^\rho)D_{\nu\rho}(l),\qquad -ie\,\delta\Gamma^\mu(p',p)=\int\frac{d^dl}{(2\pi)^d}(-ie\gamma^\nu)S(p'-l)(-ie\gamma^\mu)S(p-l)(-ie\gamma^\rho)D_{\nu\rho}(l)

です。後者に qμq_\mu(p′=p+qp'=p+q)を掛け、上の等式を k=p−lk=p-l で使うと

−ie qμδΓμ=e∫ddl(2π)d(−ieγν)[S(p−l)−S(p+q−l)](−ieγρ)Dνρ(l)=e[−iΣ(p)+iΣ(p+q)]-ie\,q_\mu\delta\Gamma^\mu=e\int\frac{d^dl}{(2\pi)^d}(-ie\gamma^\nu)\big[S(p-l)-S(p+q-l)\big](-ie\gamma^\rho)D_{\nu\rho}(l)=e\big[-i\Sigma(p)+i\Sigma(p+q)\big]

となり、qμδΓμ=Σ(p)−Σ(p+q)q_\mu\delta\Gamma^\mu=\Sigma(p)-\Sigma(p+q) です。qμγμ=q̸q_\mu\gamma^\mu=\not{q} と合わせて第 1 式を得ます。この計算は DνρD_{\nu\rho} の形を使わないので、どの共変ゲージでも成り立ちます。

真空偏極はフェルミオンの閉じたループなので、因子 −1-1 とトレースが付き

iΠμν(q)=−∫ddk(2π)dtr[(−ieγμ)S(k)(−ieγν)S(k+q)]i\Pi^{\mu\nu}(q)=-\int\frac{d^dk}{(2\pi)^d}\mathrm{tr}\big[(-ie\gamma^\mu)S(k)(-ie\gamma^\nu)S(k+q)\big]

です。qνq_\nu を掛けて同じ等式を使うと qνiΠμν=ie2∫tr[γμ(S(k)−S(k+q))]q_\nu i\Pi^{\mu\nu}=ie^2\int\mathrm{tr}[\gamma^\mu(S(k)-S(k+q))] となり、第 2 項で k↦k−qk\mapsto k-q と平行移動すると第 1 項と打ち消し合います。Πμν(q)=Πνμ(−q)\Pi^{\mu\nu}(q)=\Pi^{\nu\mu}(-q) なので qμΠμν=0q_\mu\Pi^{\mu\nu}=0 も同じです。最後の平行移動は 補題 2.3 によって正当化されます。

注意 3.3(全次数の Ward–高橋恒等式)

全次数では、完全な伝播関数 Sfull(p)=ip̸−m0−Σ(p)S_{\mathrm{full}}(p)=\frac{i}{\not{p}-m_0-\Sigma(p)} と完全な頂点について qμΓμ(p+q,p)=q̸−Σ(p+q)+Σ(p)q_\mu\Gamma^\mu(p+q,p)=\not{q}-\Sigma(p+q)+\Sigma(p) が成り立ちます(Ward 1950、高橋 1957。Peskin–Schroeder 第 7 章 §7.4。証明は 系 3.6[Ward–高橋恒等式と Schwinger–Dyson 方程式])。根拠は電流 j^μ=ψˉ^γμψ^\hat j^\mu=\hat{\bar\psi}\gamma^\mu\hat\psi の保存と等時刻交換関係 [j^0(t,x),ψ^(t,y)]=−δ3(x−y)ψ^(t,y)[\hat j^0(t,\boldsymbol x),\hat\psi(t,\boldsymbol y)]=-\delta^3(\boldsymbol x-\boldsymbol y)\hat\psi(t,\boldsymbol y) で、これから

∂μ⟨Ω∣T{j^μ(x)ψ^(x1)ψˉ^(x2)}∣Ω⟩=[−δ4(x−x1)+δ4(x−x2)]⟨Ω∣T{ψ^(x1)ψˉ^(x2)}∣Ω⟩\partial_\mu\langle\Omega|T\{\hat j^\mu(x)\hat\psi(x_1)\hat{\bar\psi}(x_2)\}|\Omega\rangle=\big[-\delta^4(x-x_1)+\delta^4(x-x_2)\big]\langle\Omega|T\{\hat\psi(x_1)\hat{\bar\psi}(x_2)\}|\Omega\rangle

が出ます。時間順序積を微分すると、θ\theta 関数の微分から交換子が現れるからです。これを Fourier 変換して外線を切り取ると上の恒等式になります。図の言葉では、定理 3.2 の証明の「運動量 qq の光子を内線の電子線のすべての位置に挿入した和は、端どうしの差に縮む」という操作を、すべての図で行うことにあたります。外線を質量殻に乗せると右辺の項は 1 粒子極をもたないので消え、定理 6.3[電磁場の量子化とゲージ固定] の S 行列版が得られます。

系 3.4(Z₁ = Z₂)✓

定理 3.2 が成り立つ次数で Z1=Z2Z_1=Z_2 です。したがって物理的電荷は e=Z31/2e0e=Z_3^{1/2}e_0 で、電子の場のくりこみにも頂点補正にもよりません。

証明(系 3.4)

定理 3.2 の両辺を qq で展開して 1 次の項を比べると、Γμ(p,p)=γμ−∂Σ∂pμ\Gamma^\mu(p,p)=\gamma^\mu-\frac{\partial\Sigma}{\partial p_\mu} を得ます。Σ\Sigma は Lorentz 不変性とパリティから Σ(p)=A(p2)p̸+B(p2)m\Sigma(p)=A(p^2)\not{p}+B(p^2)m の形なので

∂Σ∂pμ=Aγμ+2pμ(A′p̸+B′m)\frac{\partial\Sigma}{\partial p_\mu}=A\gamma^\mu+2p^\mu\big(A'\not{p}+B'm\big)

です。p2=m2p^2=m^2 の u(p)u(p) で挟むと、p̸u=mu\not{p}u=mu と Gordon 恒等式(補題 6.1)の q=0q=0 の場合 uˉγμu=pμmuˉu\bar u\gamma^\mu u=\frac{p^\mu}{m}\bar uu から、uˉ∂Σ∂pμu=[A+2m2(A′+B′)]uˉγμu\bar u\frac{\partial\Sigma}{\partial p_\mu}u=\big[A+2m^2(A'+B')\big]\bar u\gamma^\mu u です。一方 Σ\Sigma を p̸\not{p} の関数 A(̸p2)p̸+B(̸p2)mA(\not{p}^2)\not{p}+B(\not{p}^2)m とみると dΣdp̸∣p̸=m=A+2m2A′+2m2B′\frac{d\Sigma}{d\not{p}}\big|_{\not{p}=m}=A+2m^2A'+2m^2B' で、両者は一致します。よって Z1−1=1−dΣdp̸∣p̸=m=Z2−1Z_1^{-1}=1-\frac{d\Sigma}{d\not{p}}\big|_{\not{p}=m}=Z_2^{-1} です。

注意 3.5(電荷のくりこみの普遍性)

系 3.4 により、電荷のくりこみは光子の自己エネルギーだけで決まります。電子と陽子のように相互作用の仕方がまったく違う粒子でも、裸の電荷が等しければ(あるいは整数比なら)物理的電荷も等しい(同じ整数比)ことが、この恒等式から保証されます。水素原子が中性であることは、強い相互作用による陽子の複雑な構造とは無関係です。

この節では、まず光子の自己エネルギー(真空偏極)が横波になることを示し、光子が補正を受けても質量ゼロのままであることを確かめます。証明では、補正を何回挿入した項も同じ形になるので、等比級数として足し上げます。途中に出る PμνP^{\mu\nu} は、qμq^\mu に比例する成分を取り除く射影です。そのあとで、1 ループの真空偏極を実際に計算します。

命題 4.1(真空偏極は横波である)✓

定理 3.2 の下で、Πμν(q)=(q2gμν−qμqν)Π(q2)\Pi^{\mu\nu}(q)=(q^2g^{\mu\nu}-q^\mu q^\nu)\Pi(q^2) と書けるスカラー関数 Π(q2)\Pi(q^2) が存在し、q=0q=0 で正則です。このとき光子の完全な伝播関数は

−iq2(1−Π(q2))(gμν−qμqνq2)+(qμqν に比例する項)\frac{-i}{q^2\big(1-\Pi(q^2)\big)}\Big(g_{\mu\nu}-\frac{q_\mu q_\nu}{q^2}\Big)+(q_\mu q_\nu\text{ に比例する項})

で、q2=0q^2=0 の極は動かず(光子は質量をもたない)、留数は Z3=(1−Π(0))−1Z_3=(1-\Pi(0))^{-1} です。

証明(命題 4.1)

Lorentz 共変性から Πμν=A(q2)gμν+B(q2)qμqν\Pi^{\mu\nu}=A(q^2)g^{\mu\nu}+B(q^2)q^\mu q^\nu です。qμΠμν=(A+q2B)qν=0q_\mu\Pi^{\mu\nu}=(A+q^2B)q^\nu=0 より A=−q2BA=-q^2B で、Π:=−B\Pi:=-B と置けば主張の形です。1 ループの Π2\Pi_2 が q=0q=0 で正則であることは 定理 4.2 の明示式から分かります(m>0m\gt0 なら Δ>0\Delta\gt0)。完全な伝播関数は D=−igq2D=\frac{-ig}{q^2}(ファインマンゲージ)と iΠμνi\Pi^{\mu\nu} の鎖の和です。Pμν=gμν−qμqν/q2P^{\mu\nu}=g^{\mu\nu}-q^\mu q^\nu/q^2 は P2=PP^2=P を満たす射影なので

D (iΠ) D=−iq2 i q2Π P −iq2=−iq2ΠPD\,(i\Pi)\,D=\frac{-i}{q^2}\,i\,q^2\Pi\,P\,\frac{-i}{q^2}=\frac{-i}{q^2}\Pi P

となり、nn 回挿入した項は −iq2ΠnP\frac{-i}{q^2}\Pi^nP です(qμqνq_\mu q_\nu の部分は PP に吸収されず別に残ります)。等比級数を足すと主張の式です。Π\Pi が q2=0q^2=0 で極をもたないことが、極が動かないことの根拠です。

定理 4.2(1 ループの真空偏極)✓

次元正則化(d=4−εd=4-\varepsilon)で、1 ループの真空偏極は

Π2(q2)=−8e2(4π)d/2∫01dx x(1−x)Γ(2−d2)Δ2−d/2=−2απ∫01dx x(1−x)[2ε−γE+ln⁡4π−ln⁡Δμ2]+O(ε)\Pi_2(q^2)=-\frac{8e^2}{(4\pi)^{d/2}}\int_0^1dx\,x(1-x)\frac{\Gamma(2-\frac d2)}{\Delta^{2-d/2}}=-\frac{2\alpha}{\pi}\int_0^1dx\,x(1-x)\Big[\frac2\varepsilon-\gamma_E+\ln4\pi-\ln\frac{\Delta}{\mu^2}\Big]+O(\varepsilon)

です。ここで Δ=m2−x(1−x)q2\Delta=m^2-x(1-x)q^2 で、q2<4m2q^2\lt4m^2 では Δ>0\Delta\gt0 です。

証明(定理 4.2)

定理 3.2 の証明の表式で (−ie)2⋅i2=e2(-ie)^2\cdot i^2=e^2 なので

iΠ2μν(q)=−e2∫ddk(2π)dtr[γμ(k̸+m)γν(k̸+q̸+m)](k2−m2)((k+q)2−m2)i\Pi_2^{\mu\nu}(q)=-e^2\int\frac{d^dk}{(2\pi)^d}\frac{\mathrm{tr}\big[\gamma^\mu(\not{k}+m)\gamma^\nu(\not{k}+\not{q}+m)\big]}{(k^2-m^2)((k+q)^2-m^2)}

です。補題 7.1[摂動論とファインマン則] より、トレースは 4[kμ(k+q)ν+kν(k+q)μ−gμν(k⋅(k+q)−m2)]4\big[k^\mu(k+q)^\nu+k^\nu(k+q)^\mu-g^{\mu\nu}(k\cdot(k+q)-m^2)\big] です。補題 2.1 で分母をまとめると x((k+q)2−m2)+(1−x)(k2−m2)=(k+xq)2−Δx((k+q)^2-m^2)+(1-x)(k^2-m^2)=(k+xq)^2-\Delta なので、ℓ=k+xq\ell=k+xq と置きます。k=ℓ−xqk=\ell-xq を代入し、補題 2.6 で ℓ\ell の 1 次の項を落とし ℓμℓν↦ℓ2gμν/d\ell^\mu\ell^\nu\mapsto\ell^2g^{\mu\nu}/d とすると、分子は

4[−(1−2d)gμνℓ2−2x(1−x)qμqν+gμν(m2+x(1−x)q2)]4\Big[-\Big(1-\frac2d\Big)g^{\mu\nu}\ell^2-2x(1-x)q^\mu q^\nu+g^{\mu\nu}\big(m^2+x(1-x)q^2\big)\Big]

です。定理 2.5 の n=2n=2 の 2 式を比べると、Γ(2−d2)=(1−d2)Γ(1−d2)\Gamma(2-\frac d2)=(1-\frac d2)\Gamma(1-\frac d2) より

−(1−2d)∫ddℓ(2π)dℓ2(ℓ2−Δ)2=−Δ∫ddℓ(2π)d1(ℓ2−Δ)2-\Big(1-\frac2d\Big)\int\frac{d^d\ell}{(2\pi)^d}\frac{\ell^2}{(\ell^2-\Delta)^2}=-\Delta\int\frac{d^d\ell}{(2\pi)^d}\frac{1}{(\ell^2-\Delta)^2}

が成り立ちます。したがって gμνg^{\mu\nu} の係数は −Δ+m2+x(1−x)q2=2x(1−x)q2-\Delta+m^2+x(1-x)q^2=2x(1-x)q^2 となり、分子は実質的に 8x(1−x)(q2gμν−qμqν)8x(1-x)(q^2g^{\mu\nu}-q^\mu q^\nu) です。∫ddℓ(2π)d1(ℓ2−Δ)2=i Γ(2−d/2)(4π)d/2Δ2−d/2\int\frac{d^d\ell}{(2\pi)^d}\frac{1}{(\ell^2-\Delta)^2}=\frac{i\,\Gamma(2-d/2)}{(4\pi)^{d/2}\Delta^{2-d/2}} を掛けて ii で割ると第 1 の等式を得ます。8e216π2=2απ\frac{8e^2}{16\pi^2}=\frac{2\alpha}{\pi} と第 2 節末の展開から第 2 の等式です(e↦eμε/2e\mapsto e\mu^{\varepsilon/2} により ln⁡Δ\ln\Delta が ln⁡(Δ/μ2)\ln(\Delta/\mu^2) になります)。

計算の途中で gμνg^{\mu\nu} の係数が Δ\Delta を含む項と打ち消し合い、q2q^2 に比例する形が残りました。これが 定理 3.2 の横波性の具体的な現れです。次の例は、平行移動不変性をもたない正則化ではこの打ち消しが起こらないことを示します。

例 4.3(運動量カットオフは Ward 恒等式を破る)

q=0q=0 の真空偏極を、Wick 回転したあと ∣kE∣<Λ|k_E|\lt\Lambda で切る 4 次元のカットオフで計算します。q=0q=0 ではトレースは 4[2kμkν−gμν(k2−m2)]4[2k^\mu k^\nu-g^{\mu\nu}(k^2-m^2)] で、4 次元の対称積分 kμkν↦14gμνk2k^\mu k^\nu\mapsto\frac14g^{\mu\nu}k^2 により

iΠμν(0)=−4e2gμν∫d4k(2π)4−12k2+m2(k2−m2)2=−4ie2gμν∫∣kE∣<Λd4kE(2π)412kE2+m2(kE2+m2)2i\Pi^{\mu\nu}(0)=-4e^2g^{\mu\nu}\int\frac{d^4k}{(2\pi)^4}\frac{-\frac12k^2+m^2}{(k^2-m^2)^2}=-4ie^2g^{\mu\nu}\int_{|k_E|\lt\Lambda}\frac{d^4k_E}{(2\pi)^4}\frac{\frac12k_E^2+m^2}{(k_E^2+m^2)^2}

です。u=kE2u=k_E^2 と置くと d4kE(2π)4=u du16π2\frac{d^4k_E}{(2\pi)^4}=\frac{u\,du}{16\pi^2}、u(12u+m2)(u+m2)2=12−m42(u+m2)2\frac{u(\frac12u+m^2)}{(u+m^2)^2}=\frac12-\frac{m^4}{2(u+m^2)^2} なので

Πμν(0)=−e28π2(Λ2−m2)gμν+O(m4Λ2)\Pi^{\mu\nu}(0)=-\frac{e^2}{8\pi^2}\big(\Lambda^2-m^2\big)g^{\mu\nu}+O\Big(\frac{m^4}{\Lambda^2}\Big)

となります。横波なら Πμν(0)=0\Pi^{\mu\nu}(0)=0 のはずなので、これは 定理 3.2 の破れです。命題 4.1 の証明と同じ和をとると伝播関数の分母が q2−Cq^2-C(C=−e28π2(Λ2−m2)C=-\frac{e^2}{8\pi^2}(\Lambda^2-m^2))となり、光子の極が q2=0q^2=0 からずれます。次元正則化では同じ量が 00 になります(第 2 節の n=1,2n=1,2 の公式で (2d−1)∫1k2−m2+2dm2∫1(k2−m2)2=0(\frac2d-1)\int\frac{1}{k^2-m^2}+\frac2dm^2\int\frac{1}{(k^2-m^2)^2}=0 を確かめられます)。壊れたのは「積分変数の平行移動で積分が変わらない」という仮定で、カットオフは 2 次発散の積分でこれを満たしません。

5. 電荷のくりこみと走る結合定数

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この節では、真空偏極の結果から、観測するエネルギーによって値が変わる結合定数(走る結合定数)を導きます。発散する部分は電荷のくりこみに吸収されるので、観測にかかるのは q2q^2 に依存する有限の差だけです。

系 3.4 と 命題 4.1 から、e2=Z3e02=e021−Π(0)e^2=Z_3e_0^2=\frac{e_0^2}{1-\Pi(0)} です。Π2(0)\Pi_2(0) は 2ε\frac2\varepsilon の極をもつので裸の電荷と物理的電荷の比は発散しますが、観測量には差 Π^2(q2)=Π2(q2)−Π2(0)\hat\Pi_2(q^2)=\Pi_2(q^2)-\Pi_2(0) だけが現れます。

定理 5.1(有効結合定数)✓

2 つの荷電粒子が光子 1 個を交換する振幅の、真空偏極の鎖をすべて含めた光子の伝播関数の gμνg_{\mu\nu} の部分は、α2\alpha^2 の次数の誤差を除いて −igμνq2e21−Π^2(q2)\frac{-ig_{\mu\nu}}{q^2}\frac{e^2}{1-\hat\Pi_2(q^2)} です(e02e_0^2 を e2e^2 に吸収)。ここで

Π^2(q2)=−2απ∫01dx x(1−x)ln⁡m2m2−x(1−x)q2\hat\Pi_2(q^2)=-\frac{2\alpha}{\pi}\int_0^1dx\,x(1-x)\ln\frac{m^2}{m^2-x(1-x)q^2}

は有限です。αeff(q2)=α1−Π^2(q2)\alpha_{\mathrm{eff}}(q^2)=\frac{\alpha}{1-\hat\Pi_2(q^2)} と置くと、空間的な運動量移行 −q2≫m2-q^2\gg m^2 で

αeff(q2)=α1−α3πln⁡−q2Am2+O(α2m2−q2ln⁡−q2m2),A=e5/3\alpha_{\mathrm{eff}}(q^2)=\frac{\alpha}{1-\frac{\alpha}{3\pi}\ln\frac{-q^2}{Am^2}}+O\Big(\alpha^2\frac{m^2}{-q^2}\ln\frac{-q^2}{m^2}\Big),\qquad A=e^{5/3}

です。

証明(定理 5.1)

e021−Π(q2)=e021−Π(0)⋅1−Π(0)1−Π(q2)=e21−Π^(q2)+O(e6)\frac{e_0^2}{1-\Pi(q^2)}=\frac{e_0^2}{1-\Pi(0)}\cdot\frac{1-\Pi(0)}{1-\Pi(q^2)}=\frac{e^2}{1-\hat\Pi(q^2)}+O(e^6) です。定理 4.2 の差をとると極と定数が消え、Π^2\hat\Pi_2 の式を得ます。Q2=−q2≫m2Q^2=-q^2\gg m^2 では ln⁡m2m2+x(1−x)Q2=−ln⁡Q2m2−ln⁡x(1−x)+O(m2x(1−x)Q2)\ln\frac{m^2}{m^2+x(1-x)Q^2}=-\ln\frac{Q^2}{m^2}-\ln x(1-x)+O\big(\frac{m^2}{x(1-x)Q^2}\big) です。∫01x(1−x)dx=16\int_0^1x(1-x)dx=\frac16、∫01x(1−x)ln⁡x dx=−14+19=−536\int_0^1x(1-x)\ln x\,dx=-\frac14+\frac19=-\frac5{36}(対称性から ln⁡(1−x)\ln(1-x) も同じ値)を使うと

Π^2=−2απ[−16ln⁡Q2m2+518]=α3π(ln⁡Q2m2−53)\hat\Pi_2=-\frac{2\alpha}{\pi}\Big[-\frac16\ln\frac{Q^2}{m^2}+\frac5{18}\Big]=\frac{\alpha}{3\pi}\Big(\ln\frac{Q^2}{m^2}-\frac53\Big)

です。端点 x→0,1x\to0,1 の近くでは展開が使えませんが、その幅は m2/Q2m^2/Q^2 程度で、被積分関数は x(1−x)ln⁡x(1-x)\ln で抑えられるので、誤差は主張の大きさです。

αeff\alpha_{\mathrm{eff}} は Q2Q^2 とともに増えます。遠くからは電荷が仮想対の分極で遮蔽され、近づくほど裸に近い電荷が見えるからです。この QQ 依存性をスケール μ\mu の関数として表したものが β関数です(定義 6.1[くりこみ理論入門])。

定理 5.2(QED の 1 ループのβ関数)✓

質量 mm の Dirac フェルミオン 1 種類の QED を最小引き算(MS)でくりこみ、e0=με/2Z1Z2−1Z3−1/2e(μ)e_0=\mu^{\varepsilon/2}Z_1Z_2^{-1}Z_3^{-1/2}e(\mu) でくりこまれた結合 e(μ)e(\mu) を定めると

β(e)=μdedμ=e312π2+O(e5),μdαdμ=2α23π+O(α3)\beta(e)=\mu\frac{de}{d\mu}=\frac{e^3}{12\pi^2}+O(e^5),\qquad \mu\frac{d\alpha}{d\mu}=\frac{2\alpha^2}{3\pi}+O(\alpha^3)

です。nfn_f 種類のフェルミオン(電荷 QieQ_ie)があれば係数は ∑iQi2\sum_iQ_i^2 倍になります。

証明(定理 5.2)

MS では ZiZ_i は 1ε\frac1\varepsilon の極だけを含みます。定理 3.2 は次元正則化の各次数で成り立つので、極の部分にも 系 3.4 の議論が通り Z1=Z2Z_1=Z_2 です(直接の計算は演習で確かめます)。Z3=1+Π(0)+O(e4)Z_3=1+\Pi(0)+O(e^4) のうち極だけをとると、定理 4.2 から Π2\Pi_2 の極は −2απ⋅16⋅2ε=−e26π2ε-\frac{2\alpha}{\pi}\cdot\frac16\cdot\frac2\varepsilon=-\frac{e^2}{6\pi^2\varepsilon} なので、Z3=1−e26π2εZ_3=1-\frac{e^2}{6\pi^2\varepsilon} です。よって

e0=με/2e(1+e212π2ε+O(e4))e_0=\mu^{\varepsilon/2}e\Big(1+\frac{e^2}{12\pi^2\varepsilon}+O(e^4)\Big)

です。左辺は μ\mu によらないので、μddμ\mu\frac{d}{d\mu} をとって β=−ε2e+b e3+O(e5)\beta=-\frac\varepsilon2e+b\,e^3+O(e^5) と置くと

0=ε2e(1+e212π2ε)+(−ε2e+be3)(1+3e212π2ε)+O(e5)0=\frac\varepsilon2e\Big(1+\frac{e^2}{12\pi^2\varepsilon}\Big)+\Big(-\frac\varepsilon2e+be^3\Big)\Big(1+\frac{3e^2}{12\pi^2\varepsilon}\Big)+O(e^5)

です。ee の 1 次は打ち消し、e3e^3 の係数から 124π2+b−324π2=0\frac{1}{24\pi^2}+b-\frac{3}{24\pi^2}=0、すなわち b=112π2b=\frac{1}{12\pi^2} を得ます。ε→0\varepsilon\to0 で主張の式です。α\alpha については μdαdμ=2eβ4π=e424π3=2α23π\mu\frac{d\alpha}{d\mu}=\frac{2e\beta}{4\pi}=\frac{e^4}{24\pi^3}=\frac{2\alpha^2}{3\pi} です。フェルミオンごとに真空偏極のループが 1 つ増え、頂点に QiQ_i が 2 回掛かるので係数は ∑Qi2\sum Q_i^2 倍です。

この係数は 定理 5.1 と整合します。αeff−1=α−1−13πln⁡Q2Am2\alpha_{\mathrm{eff}}^{-1}=\alpha^{-1}-\frac{1}{3\pi}\ln\frac{Q^2}{Am^2} を ln⁡Q\ln Q で微分すると dαeffdln⁡Q=2αeff23π\frac{d\alpha_{\mathrm{eff}}}{d\ln Q}=\frac{2\alpha_{\mathrm{eff}}^2}{3\pi} で、MS の β関数と同じ係数です。1 ループの係数はスキームによりません。

例 5.3(Landau 極)

定理 5.2 の方程式を解くと 1α(μ)=1α(μ0)−23πln⁡μμ0\frac{1}{\alpha(\mu)}=\frac{1}{\alpha(\mu_0)}-\frac{2}{3\pi}\ln\frac{\mu}{\mu_0} で、右辺は

μL=μ0exp⁡(3π2α(μ0))\mu_{\mathrm L}=\mu_0\exp\Big(\frac{3\pi}{2\alpha(\mu_0)}\Big)

で 00 になり、α(μ)\alpha(\mu) が発散します。これを Landau 極と呼びます。電子だけを考えて μ0=me\mu_0=m_e、α=1/137.036\alpha=1/137.036 とすると指数は 3π×137.0362≈645.8\frac{3\pi\times137.036}{2}\approx645.8 で、μL≈10280.5me≈10277 GeV\mu_{\mathrm L}\approx10^{280.5}m_e\approx10^{277}\ \mathrm{GeV} です。Planck 質量 ∼1019 GeV\sim10^{19}\ \mathrm{GeV} よりはるかに大きいので、実際の物理には影響しません。ただし原理的には、1 ループの β関数を信じる限り QED は任意に高いエネルギーまで定義できる理論ではありません。α\alpha が大きくなる領域では摂動論そのものが使えないので、この極が実在するかどうかは 1 ループでは決まりません。格子上の数値的研究は、QED が紫外で「自明」(くりこまれた結合が 00 でなければ切断を外せない)であることを示唆しています。非可換ゲージ理論では β関数の符号が逆になり、この問題が起こりません(非可換ゲージ理論の量子化)。

6. 頂点補正と電子の異常磁気モーメント

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補題 6.1(Gordon 恒等式)✓

p2=p′2=m2p^2=p'^2=m^2、q=p′−pq=p'-p、σμν=i2[γμ,γν]\sigma^{\mu\nu}=\frac i2[\gamma^\mu,\gamma^\nu] とすると

uˉ(p′)γμu(p)=uˉ(p′)[(p′+p)μ2m+iσμνqν2m]u(p)\bar u(p')\gamma^\mu u(p)=\bar u(p')\Big[\frac{(p'+p)^\mu}{2m}+\frac{i\sigma^{\mu\nu}q_\nu}{2m}\Big]u(p)

が成り立ちます。

証明(補題 6.1)

uˉ(p′)̸p′=muˉ(p′)\bar u(p')\not{p}'=m\bar u(p')、p̸u(p)=mu(p)\not{p}u(p)=mu(p) より uˉ(p′)γμu(p)=12muˉ(p′)(̸p′γμ+γμp̸)u(p)\bar u(p')\gamma^\mu u(p)=\frac1{2m}\bar u(p')(\not{p}'\gamma^\mu+\gamma^\mu\not{p})u(p) です。γνγμ=gνμ−iσνμ\gamma^\nu\gamma^\mu=g^{\nu\mu}-i\sigma^{\nu\mu} を使うと ̸p′γμ+γμp̸=(p′+p)μ−ipν′σνμ−ipνσμν=(p′+p)μ+iσμν(p′−p)ν\not{p}'\gamma^\mu+\gamma^\mu\not{p}=(p'+p)^\mu-ip'_\nu\sigma^{\nu\mu}-ip_\nu\sigma^{\mu\nu}=(p'+p)^\mu+i\sigma^{\mu\nu}(p'-p)_\nu です。

定義 6.2(形状因子)↗

質量殻上の p,p′p,p' について、頂点関数を

uˉ(p′)Γμ(p′,p)u(p)=uˉ(p′)[γμF1(q2)+iσμνqν2mF2(q2)]u(p)\bar u(p')\Gamma^\mu(p',p)u(p)=\bar u(p')\Big[\gamma^\mu F_1(q^2)+\frac{i\sigma^{\mu\nu}q_\nu}{2m}F_2(q^2)\Big]u(p)

と分解し、F1,F2F_1,F_2 を形状因子と呼びます。Lorentz 共変性、パリティ、定理 6.3[電磁場の量子化とゲージ固定] から、uˉ(p′)Γμu(p)\bar u(p')\Gamma^\mu u(p) はこの 2 項で尽くされます(γμ,(p+p′)μ,qμ\gamma^\mu,(p+p')^\mu,q^\mu の 3 つの構造のうち qμq^\mu は Ward 恒等式で禁止され、(p+p′)μ(p+p')^\mu は 補題 6.1 で γμ\gamma^\mu と σμνqν\sigma^{\mu\nu}q_\nu に直せます)。最低次は F1=1F_1=1、F2=0F_2=0 です。

定義 3.1 の物理的電荷の定義により、くりこまれた頂点では F1(0)=1F_1(0)=1 です。これは q→0q\to0 の極限で電子が電荷 ee の点電荷として振る舞うことを表しています。

ここで知りたいのは、頂点補正が電子の磁石としての強さをどれだけ変えるかです。次の命題では、静的な磁場をかけたときの散乱振幅を、磁気モーメントをもつ粒子のポテンシャル散乱と見比べて、gg 因子を F1(0)F_1(0) と F2(0)F_2(0) で表します。

命題 6.3(g 因子と形状因子)✓

時間によらない外部ベクトルポテンシャル Acl(x)\boldsymbol A_{\mathrm{cl}}(\boldsymbol x) による電子の散乱振幅を、非相対論的極限で q\boldsymbol q の 1 次まで展開すると、ポテンシャル V(x)=−⟨μ⟩⋅B(x)V(\boldsymbol x)=-\langle\boldsymbol\mu\rangle\cdot\boldsymbol B(\boldsymbol x) の Born 近似と一致します。ここで μ=ge2mS\boldsymbol\mu=g\frac{e}{2m}\boldsymbol S、S\boldsymbol S はスピン演算子、

g=2[F1(0)+F2(0)]=2+2F2(0)g=2\big[F_1(0)+F_2(0)\big]=2+2F_2(0)

です。

証明(命題 6.3)

静的な外場なので Acl0=0A^0_{\mathrm{cl}}=0、エネルギーは保存し q0=0q^0=0 です。頂点 −ieγμ-ie\gamma^\mu の外場への結合から、振幅は iM=−ie uˉ(p′)Γμ(p′,p)u(p) A~cl,μ(q)i\mathcal M=-ie\,\bar u(p')\Gamma^\mu(p',p)u(p)\,\tilde A_{\mathrm{cl},\mu}(\boldsymbol q) で、A~cl,μ=(0,−A~cli)\tilde A_{\mathrm{cl},\mu}=(0,-\tilde A^i_{\mathrm{cl}}) なので iM=ie uˉ(p′)Γiu(p) A~cli(q)i\mathcal M=ie\,\bar u(p')\Gamma^iu(p)\,\tilde A^i_{\mathrm{cl}}(\boldsymbol q) です。ここで A~(q)=∫d3x e−iq⋅xA(x)\tilde A(\boldsymbol q)=\int d^3x\,e^{-i\boldsymbol q\cdot\boldsymbol x}A(\boldsymbol x)、q=p′−p\boldsymbol q=\boldsymbol p'-\boldsymbol p です。

スピンに依存する部分。 定義 6.2 の γiF1\gamma^iF_1 に 補題 6.1 を使うと

uˉ(p′)Γiu(p)=uˉ(p′)[(p+p′)i2mF1+iσiνqν2m(F1+F2)]u(p)\bar u(p')\Gamma^iu(p)=\bar u(p')\Big[\frac{(p+p')^i}{2m}F_1+\frac{i\sigma^{i\nu}q_\nu}{2m}\big(F_1+F_2\big)\Big]u(p)

です。第 1 項は非相対論的極限の最低次で uˉ(p′)u(p)≈2m ξ′†ξ\bar u(p')u(p)\approx2m\,\xi'^\dagger\xi に比例し、スピンによりません(軌道運動と外場の結合 p⋅A\boldsymbol p\cdot\boldsymbol A の項です)。第 2 項で q0=0q_0=0、qj=−qjq_j=-q^j、σij=ϵijkΣk\sigma^{ij}=\epsilon^{ijk}\Sigma^k(Σk=diag(σk,σk)\Sigma^k=\mathrm{diag}(\sigma^k,\sigma^k))なので iσiνqν=−iϵijkqjΣki\sigma^{i\nu}q_\nu=-i\epsilon^{ijk}q^j\Sigma^k です。カイラル表示で u(p)≈m(ξ,ξ)Tu(p)\approx\sqrt m(\xi,\xi)^{\mathsf T} とすると uˉ(p′)Σku(p)≈2m ξ′†σkξ\bar u(p')\Sigma^ku(p)\approx2m\,\xi'^\dagger\sigma^k\xi なので、q\boldsymbol q の 1 次までで(Fi(q2)=Fi(0)+O(q2)F_i(q^2)=F_i(0)+O(\boldsymbol q^2))

iMspin=ie⋅F1(0)+F2(0)2m(−iϵijkqj)A~cli⋅2m ξ′†σkξ=e[F1(0)+F2(0)]ϵijkqjA~cli ξ′†σkξi\mathcal M_{\mathrm{spin}}=ie\cdot\frac{F_1(0)+F_2(0)}{2m}\big(-i\epsilon^{ijk}q^j\big)\tilde A^i_{\mathrm{cl}}\cdot2m\,\xi'^\dagger\sigma^k\xi=e\big[F_1(0)+F_2(0)\big]\epsilon^{ijk}q^j\tilde A^i_{\mathrm{cl}}\,\xi'^\dagger\sigma^k\xi

です。B=∇×Acl\boldsymbol B=\nabla\times\boldsymbol A_{\mathrm{cl}} の Fourier 成分は B~k=iϵkabqaA~clb\tilde B^k=i\epsilon^{kab}q^a\tilde A^b_{\mathrm{cl}} で、ϵijkqjA~i=−ϵkabqaA~b=iB~k\epsilon^{ijk}q^j\tilde A^i=-\epsilon^{kab}q^a\tilde A^b=i\tilde B^k ですから、

iMspin=ie[F1(0)+F2(0)] ξ′†σξ⋅B~(q)i\mathcal M_{\mathrm{spin}}=ie\big[F_1(0)+F_2(0)\big]\,\xi'^\dagger\boldsymbol\sigma\xi\cdot\tilde{\boldsymbol B}(\boldsymbol q)

です。

Born 近似との比較。 ポテンシャル V(x)V(\boldsymbol x) の Born 近似の振幅は、相対論的な規格化(状態あたり 2m2m)で iM=−iV~(q)⋅2mi\mathcal M=-i\tilde V(\boldsymbol q)\cdot2m です。V=−⟨μ⟩⋅BV=-\langle\boldsymbol\mu\rangle\cdot\boldsymbol B、μ=ge2mσ2\boldsymbol\mu=g\frac{e}{2m}\frac{\boldsymbol\sigma}{2} なら −iV~⋅2m=ige2 ξ′†σξ⋅B~-i\tilde V\cdot2m=i\frac{ge}{2}\,\xi'^\dagger\boldsymbol\sigma\xi\cdot\tilde{\boldsymbol B} です。上の式と比べると g2=F1(0)+F2(0)\frac g2=F_1(0)+F_2(0)、すなわち g=2[F1(0)+F2(0)]g=2[F_1(0)+F_2(0)] で、くりこまれた頂点の F1(0)=1F_1(0)=1 を代入すれば g=2+2F2(0)g=2+2F_2(0) です。

注意 6.4(g 因子の導出の所在)

導出は Peskin–Schroeder 第 6 章 §6.2 にあります。筋道は次のとおりです。振幅は iM=−ieuˉ(p′)Γi(p′,p)u(p)A~cli(q)i\mathcal M=-ie\bar u(p')\Gamma^i(p',p)u(p)\tilde A^i_{\mathrm{cl}}(\boldsymbol q) で、非相対論的極限 u(p)≈m(ξ,ξ)Tu(p)\approx\sqrt m(\xi,\xi)^{\mathsf T} では γiF1\gamma^iF_1 の項のうちスピンに依存する部分と σijqjF2\sigma^{ij}q_jF_2 の項がともに ξ′†σkqjϵijkξ\xi'^\dagger\sigma^kq^j\epsilon^{ijk}\xi に比例し、合わせて F1(0)+F2(0)F_1(0)+F_2(0) の係数をもちます。これを磁場 B=∇×Acl\boldsymbol B=\nabla\times\boldsymbol A_{\mathrm{cl}} の Fourier 成分で書き直し、ポテンシャル −⟨μ⟩⋅B-\langle\boldsymbol\mu\rangle\cdot\boldsymbol B の Born 振幅と比べると、μ\boldsymbol\mu の係数として em[F1(0)+F2(0)]\frac em[F_1(0)+F_2(0)] が読み取れます。Dirac 方程式の g=2g=2 は F1=1F_1=1、F2=0F_2=0 の場合です。

定理 6.5(Schwinger の異常磁気モーメント)✓

QED の α\alpha の 1 次で、F2(q2)F_2(q^2) は紫外・赤外ともに有限で

F2(q2)=α2π∫01dx dy dz  δ(x+y+z−1)2m2z(1−z)m2(1−z)2−q2xyF_2(q^2)=\frac{\alpha}{2\pi}\int_0^1dx\,dy\,dz\;\delta(x+y+z-1)\frac{2m^2z(1-z)}{m^2(1-z)^2-q^2xy}

です。特に F2(0)=α2πF_2(0)=\frac{\alpha}{2\pi} で、電子の異常磁気モーメントは ae≡g−22=α2π+O(α2)a_e\equiv\frac{g-2}{2}=\frac{\alpha}{2\pi}+O(\alpha^2) です。

証明(定理 6.5)

ファインマンゲージで、光子に赤外正則化の質量 μ\mu を与えます。定理 3.2 の証明の δΓμ\delta\Gamma^\mu の式でループ運動量を電子側の k=p−lk=p-l、k′=k+qk'=k+q にとり、補題 2.6 の γνa̸γμb̸γν\gamma^\nu\not{a}\gamma^\mu\not{b}\gamma_\nu の公式を使うと

uˉ(p′)δΓμu(p)=2ie2∫d4k(2π)4uˉ(p′)[k̸γμ̸k′+m2γμ−2m(k+k′)μ]u(p)((k−p)2−μ2)(k′2−m2)(k2−m2)\bar u(p')\delta\Gamma^\mu u(p)=2ie^2\int\frac{d^4k}{(2\pi)^4}\frac{\bar u(p')\big[\not{k}\gamma^\mu\not{k}'+m^2\gamma^\mu-2m(k+k')^\mu\big]u(p)}{((k-p)^2-\mu^2)(k'^2-m^2)(k^2-m^2)}

です((−i)(−ie)2i2=−ie2(-i)(-ie)^2i^2=-ie^2 に γ\gamma 行列の縮約の −2-2 が掛かります)。dd 次元の補正 (4−d)a̸γμb̸(4-d)\not{a}\gamma^\mu\not{b} は、発散する ℓ2\ell^2 の項に掛かったときだけ有限の寄与を残し、それは γμ\gamma^\mu に比例するので F1F_1 にしか効きません。以下 F2F_2 に必要な部分だけを 4 次元で計算します。

分母。 補題 2.1 で x(k2−m2)+y(k′2−m2)+z((k−p)2−μ2)x(k^2-m^2)+y(k'^2-m^2)+z((k-p)^2-\mu^2) とまとめ、p2=p′2=m2p^2=p'^2=m^2 から出る p⋅q=−q2/2p\cdot q=-q^2/2 を使って平方完成すると、ℓ=k+yq−zp\ell=k+yq-zp について分母は (ℓ2−Δ)3(\ell^2-\Delta)^3、

Δ=−xyq2+(1−z)2m2+zμ2\Delta=-xyq^2+(1-z)^2m^2+z\mu^2

です。Δ\Delta は x↔yx\leftrightarrow y について対称です。

分子。 k=ℓ+ak=\ell+a、k′=ℓ+bk'=\ell+b で a=(1−x)p−yp′a=(1-x)p-yp'、b=−xp+(1−y)p′b=-xp+(1-y)p' です(q=p′−pq=p'-p、x+y+z=1x+y+z=1 で書き直しました)。ℓ\ell の 1 次の項は消え、ℓ\ell の 2 次の項は γμ\gamma^\mu に比例します。残りは uˉ(p′)[a̸γμb̸+m2γμ−2m(a+b)μ]u(p)\bar u(p')[\not{a}\gamma^\mu\not{b}+m^2\gamma^\mu-2m(a+b)^\mu]u(p) で、uˉ(p′)̸p′=muˉ(p′)\bar u(p')\not{p}'=m\bar u(p')、p̸u(p)=mu(p)\not{p}u(p)=mu(p) から

uˉa̸γμb̸u=uˉ[(1−x)p̸−ym]γμ[−xm+(1−y)̸p′]u\bar u\not{a}\gamma^\mu\not{b}u=\bar u\big[(1-x)\not{p}-ym\big]\gamma^\mu\big[-xm+(1-y)\not{p}'\big]u

です。展開した 4 項を、反交換関係 p̸γμ=2pμ−γμp̸\not{p}\gamma^\mu=2p^\mu-\gamma^\mu\not{p}、γμ̸p′=2p′μ−̸p′γμ\gamma^\mu\not{p}'=2p'^\mu-\not{p}'\gamma^\mu と、uˉp̸γμ̸p′u=uˉ(m−q̸)γμ(m+q̸)u\bar u\not{p}\gamma^\mu\not{p}'u=\bar u(m-\not{q})\gamma^\mu(m+\not{q})u に Gordon 恒等式を適用した結果 uˉ[(q2−3m2)γμ+2m(p+p′)μ]u\bar u[(q^2-3m^2)\gamma^\mu+2m(p+p')^\mu]u を使って、γμ\gamma^\mu、(p+p′)μ(p+p')^\mu、qμq^\mu に整理します。(p+p′)μuˉu(p+p')^\mu\bar uu の係数を集めると

12[4m(1−x)(1−y)−2m{x(1−x)+y(1−y)}−2m(2−2x−2y)]=mz(z−1)\frac12\Big[4m(1-x)(1-y)-2m\big\{x(1-x)+y(1-y)\big\}-2m(2-2x-2y)\Big]=mz(z-1)

((1−x)(1−y)=z+xy(1-x)(1-y)=z+xy、x(1−x)+y(1−y)=z(1−z)+2xyx(1-x)+y(1-y)=z(1-z)+2xy を使いました)、qμuˉuq^\mu\bar uu の係数は m(z−2)(x−y)m(z-2)(x-y) です。後者は x↔yx\leftrightarrow y について反対称で Δ\Delta は対称なので、積分すると 00 です(定理 6.3[電磁場の量子化とゲージ固定] と整合します)。

形状因子。 補題 6.1 で (p+p′)μ=2mγμ−iσμνqν(p+p')^\mu=2m\gamma^\mu-i\sigma^{\mu\nu}q_\nu(uu に挟んだ意味で)と置き換えると、iσμνqν/(2m)i\sigma^{\mu\nu}q_\nu/(2m) の係数は 2m2z(1−z)2m^2z(1-z) です。定理 2.5 の n=3n=3、d=4d=4 から ∫d4ℓ(2π)41(ℓ2−Δ)3=−i32π2Δ\int\frac{d^4\ell}{(2\pi)^4}\frac{1}{(\ell^2-\Delta)^3}=\frac{-i}{32\pi^2\Delta} なので

F2(q2)=2ie2⋅2∫dx dy dz δ(x+y+z−1) −i32π2Δ 2m2z(1−z)=α2π∫dx dy dz δ(⋯ )2m2z(1−z)ΔF_2(q^2)=2ie^2\cdot2\int dx\,dy\,dz\,\delta(x+y+z-1)\,\frac{-i}{32\pi^2\Delta}\,2m^2z(1-z)=\frac{\alpha}{2\pi}\int dx\,dy\,dz\,\delta(\cdots)\frac{2m^2z(1-z)}{\Delta}

です。この積分は μ→0\mu\to0 でも有限です(z→1z\to1 で分子が 1−z1-z の 1 次で消え、Δ≈(1−z)2m2\Delta\approx(1-z)^2m^2 の 1 次の零点と打ち消し合います)。F2F_2 は γμ\gamma^\mu に比例しないので、Z1Z_1 による引き算の影響も受けません。q2=0q^2=0 では xx について積分(長さ 1−z1-z)して

F2(0)=α2π∫01dz (1−z)2z(1−z)(1−z)2=α2π∫012z dz=α2πF_2(0)=\frac{\alpha}{2\pi}\int_0^1dz\,(1-z)\frac{2z(1-z)}{(1-z)^2}=\frac{\alpha}{2\pi}\int_0^12z\,dz=\frac{\alpha}{2\pi}

を得ます。命題 6.3 より ae=F2(0)a_e=F_2(0) です。

注意 6.6(実験との比較)

α2π=0.0011614\frac{\alpha}{2\pi}=0.0011614 に対し、実測値は ae=0.00115965218…a_e=0.00115965218\ldots です。差の大部分は α2\alpha^2 の項 −0.328α2π2-0.328\frac{\alpha^2}{\pi^2} で説明され、現在は α5\alpha^5 までの QED の計算と測定が 10 桁以上一致しています。逆に、aea_e の測定は α\alpha の最も精密な決定法の 1 つになっています。Schwinger の 1 ループの値がすでに 0.15% の精度で合っていることは、くりこまれた摂動論が物理的な予言を与えることの最初の決定的な証拠でした。

7. 赤外発散と Bloch–Nordsieck の相殺

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定理 6.5 の計算の γμ\gamma^\mu の項、すなわち F1F_1 は事情が違います。μ→0\mu\to0 で z→1z\to1 の角の近くから ln⁡μ\ln\mu に比例する発散が生じます。

次の命題の証明は長いですが、やることは 2 段です。まず F1F_1 の積分表示を求め、次に μ→0\mu\to0 で発散する部分だけを取り出して、残りが有限に収まることを評価します。

命題 7.1(F₁ の赤外発散)✓

光子質量 μ\mu で正則化すると、μ→0\mu\to0 で

F1(q2)=1−α2πfIR(q2)ln⁡m2μ2+(μ によらない項)+O(α2),fIR(q2)=∫01dξ m2−q2/2m2−q2ξ(1−ξ)−1F_1(q^2)=1-\frac{\alpha}{2\pi}f_{\mathrm{IR}}(q^2)\ln\frac{m^2}{\mu^2}+(\mu\text{ によらない項})+O(\alpha^2),\qquad f_{\mathrm{IR}}(q^2)=\int_0^1d\xi\,\frac{m^2-q^2/2}{m^2-q^2\xi(1-\xi)}-1

です。空間的な q2<0q^2\lt0 で fIR>0f_{\mathrm{IR}}\gt0、−q2→∞-q^2\to\infty で fIR≈ln⁡−q2m2f_{\mathrm{IR}}\approx\ln\frac{-q^2}{m^2} です。

証明(命題 7.1)

q2<4m2q^2\lt4m^2(対生成の閾値より下。散乱の q2≤0q^2\le0 を含む)とし、c(ξ)=m2−q2ξ(1−ξ)c(\xi)=m^2-q^2\xi(1-\xi) と置きます。ξ(1−ξ)≤14\xi(1-\xi)\le\frac14 なので c(ξ)≥min⁡(m2,m2−q24)>0c(\xi)\ge\min(m^2,m^2-\frac{q^2}4)\gt0 です。

F1F_1 の表示。 定理 6.5 の証明の記号で、分子の γμ\gamma^\mu の係数を集めます。uˉp̸γμu=uˉ(2pμ−mγμ)u\bar u\not{p}\gamma^\mu u=\bar u(2p^\mu-m\gamma^\mu)u、uˉγμ̸p′u=uˉ(2p′μ−mγμ)u\bar u\gamma^\mu\not{p}'u=\bar u(2p'^\mu-m\gamma^\mu)u と、そこで求めた uˉp̸γμ̸p′u=uˉ[(q2−3m2)γμ+2m(p+p′)μ]u\bar u\not{p}\gamma^\mu\not{p}'u=\bar u[(q^2-3m^2)\gamma^\mu+2m(p+p')^\mu]u、(p+p′)μ(p+p')^\mu の係数 mz(z−1)mz(z-1) を Gordon 恒等式で γμ\gamma^\mu に直した 2m2z(z−1)2m^2z(z-1) を足すと、ℓ\ell によらない分子の γμ\gamma^\mu の係数は

m2[1+x(1−x)+y(1−y)+xy]+(1−x)(1−y)(q2−3m2)+2m2z(z−1)=(1−x)(1−y)q2+(1−4z+z2)m2m^2\big[1+x(1-x)+y(1-y)+xy\big]+(1-x)(1-y)(q^2-3m^2)+2m^2z(z-1)=(1-x)(1-y)q^2+(1-4z+z^2)m^2

です(x(1−x)+y(1−y)=z(1−z)+2xyx(1-x)+y(1-y)=z(1-z)+2xy、(1−x)(1−y)=z+xy(1-x)(1-y)=z+xy を使いました)。これを N1(x,y,z)N_1(x,y,z) と書きます。F2F_2 のときと同じ係数の計算で、頂点補正の γμ\gamma^\mu の部分は

δF1(q2)=A(q2)+α2π∫dF N1Δ,∫dF=∫01dx dy dz δ(x+y+z−1)\delta F_1(q^2)=A(q^2)+\frac{\alpha}{2\pi}\int dF\,\frac{N_1}{\Delta},\qquad\int dF=\int_0^1dx\,dy\,dz\,\delta(x+y+z-1)

です。A(q2)A(q^2) は ℓ2\ell^2 の項からの寄与で、次元正則化では 2ε\frac2\varepsilon の極と −∫dFln⁡Δ-\int dF\ln\Delta に比例する項からなります。くりこまれた頂点は F1(q2)=1+δF1(q2)−δF1(0)F_1(q^2)=1+\delta F_1(q^2)-\delta F_1(0) です(定義 3.1 の条件 F1(0)=1F_1(0)=1)。

ℓ2\ell^2 の項は μ→0\mu\to0 で有限。 A(q2)−A(0)A(q^2)-A(0) は極が打ち消し合い、∫dF [ln⁡Δ(q2)−ln⁡Δ(0)]\int dF\,[\ln\Delta(q^2)-\ln\Delta(0)] に比例します。y=wξy=w\xi、x=w(1−ξ)x=w(1-\xi)、z=1−wz=1-w と変数変換すると ∫dF=∫01dw w∫01dξ\int dF=\int_0^1dw\,w\int_0^1d\xi、

Δ=w2c(ξ)+(1−w)μ2\Delta=w^2c(\xi)+(1-w)\mu^2

です。∣ln⁡Δ∣≤∣ln⁡(w2cmin⁡)∣+∣ln⁡(cmax⁡+μ2)∣|\ln\Delta|\le|\ln(w^2c_{\min})|+|\ln(c_{\max}+\mu^2)|(μ≤1\mu\le1)は w dw dξw\,dw\,d\xi について可積分なので、優収束定理により μ→0\mu\to0 の極限が存在します。

N1/ΔN_1/\Delta の項。 N1N_1 は多項式で角 x=y=0x=y=0、z=1z=1 での値は q2−2m2q^2-2m^2 なので、∣N1−(q2−2m2)∣≤Kw|N_1-(q^2-2m^2)|\le Kw です。差の部分は w⋅Kww2cmin⁡=Kcmin⁡\frac{w\cdot Kw}{w^2c_{\min}}=\frac{K}{c_{\min}} で抑えられるので、やはり μ→0\mu\to0 の極限をもちます。残りは

(q2−2m2)∫01dξ Iμ(ξ),Iμ(ξ)=∫01w dww2c(ξ)+(1−w)μ2(q^2-2m^2)\int_0^1d\xi\,I_\mu(\xi),\qquad I_\mu(\xi)=\int_0^1\frac{w\,dw}{w^2c(\xi)+(1-w)\mu^2}

です。Jμ(ξ)=∫01w dww2c+μ2=12cln⁡c+μ2μ2J_\mu(\xi)=\int_0^1\frac{w\,dw}{w^2c+\mu^2}=\frac1{2c}\ln\frac{c+\mu^2}{\mu^2} との差は

Iμ−Jμ=∫01μ2w2 dw(w2c+(1−w)μ2)(w2c+μ2) ≥0I_\mu-J_\mu=\int_0^1\frac{\mu^2w^2\,dw}{\big(w^2c+(1-w)\mu^2\big)\big(w^2c+\mu^2\big)}\ \ge0

です。μ≤12\mu\le\frac12 とすると、w≤μw\le\mu の部分は分母が 12μ2⋅μ2\frac12\mu^2\cdot\mu^2 以上なので ∫0μ2w2μ2dw=2μ3\int_0^\mu\frac{2w^2}{\mu^2}dw=\frac{2\mu}3 以下、w≥μw\ge\mu の部分は分母が w4c2w^4c^2 以上なので ∫μ1μ2c2w2dw≤μc2\int_\mu^1\frac{\mu^2}{c^2w^2}dw\le\frac{\mu}{c^2} 以下で、どちらも 00 に収束します。よって

Iμ(ξ)=12c(ξ)ln⁡m2μ2+12c(ξ)ln⁡c(ξ)m2+o(1)I_\mu(\xi)=\frac{1}{2c(\xi)}\ln\frac{m^2}{\mu^2}+\frac1{2c(\xi)}\ln\frac{c(\xi)}{m^2}+o(1)

です。以上をまとめると、μ→0\mu\to0 で

δF1(q2)=−α2π∫01dξ m2−q2/2c(ξ)ln⁡m2μ2+(μ によらない項)+o(1)\delta F_1(q^2)=-\frac{\alpha}{2\pi}\int_0^1d\xi\,\frac{m^2-q^2/2}{c(\xi)}\ln\frac{m^2}{\mu^2}+(\mu\text{ によらない項})+o(1)

です。q2=0q^2=0 では c=m2c=m^2 で被積分関数は 11 なので、F1(q2)=1+δF1(q2)−δF1(0)F_1(q^2)=1+\delta F_1(q^2)-\delta F_1(0) の ln⁡m2μ2\ln\frac{m^2}{\mu^2} の係数は −α2π[∫01m2−q2/2c(ξ)dξ−1]=−α2πfIR(q2)-\frac{\alpha}{2\pi}\big[\int_0^1\frac{m^2-q^2/2}{c(\xi)}d\xi-1\big]=-\frac{\alpha}{2\pi}f_{\mathrm{IR}}(q^2) です。

fIRf_{\mathrm{IR}} の性質。 q2=−Q2<0q^2=-Q^2\lt0 なら被積分関数は m2+Q2/2m2+Q2ξ(1−ξ)\frac{m^2+Q^2/2}{m^2+Q^2\xi(1-\xi)} で、ξ(1−ξ)≤14<12\xi(1-\xi)\le\frac14\lt\frac12 より 11 より大きいので fIR>0f_{\mathrm{IR}}\gt0 です。ϵ=m2/Q2\epsilon=m^2/Q^2 と置くと fIR=(12+ϵ)∫01dξξ(1−ξ)+ϵ−1f_{\mathrm{IR}}=\big(\frac12+\epsilon\big)\int_0^1\frac{d\xi}{\xi(1-\xi)+\epsilon}-1 です。ϵ→0\epsilon\to0 では ∫01dξξ(1−ξ)+ϵ=2ln⁡1ϵ+O(1)\int_0^1\frac{d\xi}{\xi(1-\xi)+\epsilon}=2\ln\frac1\epsilon+O(1)(主要部は ξ=0\xi=0 と ξ=1\xi=1 の近くの ∫0dξξ+ϵ\int_0\frac{d\xi}{\xi+\epsilon} の 2 つの寄与)なので、fIR=ln⁡Q2m2+O(1)=ln⁡−q2m2+O(1)f_{\mathrm{IR}}=\ln\frac{Q^2}{m^2}+O(1)=\ln\frac{-q^2}{m^2}+O(1) です。

注意 7.2(F₁ の赤外発散の導出)

導出は Peskin–Schroeder 第 6 章 §6.4 にあります。F1F_1 の被積分関数で μ\mu に敏感なのは z≈1z\approx1、x≈y≈0x\approx y\approx0 の角だけです。そこで分子の x,y,zx,y,z を角の値に置き、y=(1−z)ξy=(1-z)\xi、w=1−zw=1-z と変数変換すると、∫d(w2)w2c+μ2\int\frac{d(w^2)}{w^2c+\mu^2} の形の積分が現れて ln⁡cμ2\ln\frac{c}{\mu^2} を与えます。Z1Z_1 による引き算(F1(0)=1F_1(0)=1)の分を含めて係数を集めると fIRf_{\mathrm{IR}} になります。

この発散は、μ→0\mu\to0 で e−(p)→e−(p′)e^-(p)\to e^-(p') の弾性散乱断面積が (dσdΩ)0[1−απfIRln⁡m2μ2+⋯]\big(\frac{d\sigma}{d\Omega}\big)_0\big[1-\frac\alpha\pi f_{\mathrm{IR}}\ln\frac{m^2}{\mu^2}+\cdots\big] となって、負の無限大の補正を受けることを意味します。原因は、無質量の光子をいくらでも低いエネルギーで放出できるのに、その過程を数えていないことです。

命題 7.3(軟光子放射の因子化)✓

過程 p→p′p\to p' の振幅を M0\mathcal M_0 とし、さらにエネルギー ∣k∣|\boldsymbol k| の光子 1 個を放射する振幅を M\mathcal M とします。∣k∣→0|\boldsymbol k|\to0 の主要項は

M(p→p′+γ(k,ε))=M0(p→p′)⋅e(p′⋅ε∗p′⋅k−p⋅ε∗p⋅k)\mathcal M(p\to p'+\gamma(k,\varepsilon))=\mathcal M_0(p\to p')\cdot e\Big(\frac{p'\cdot\varepsilon^*}{p'\cdot k}-\frac{p\cdot\varepsilon^*}{p\cdot k}\Big)

で、偏極について和をとった光子 1 個の放射確率は

dσ(p→p′+γ)=dσ(p→p′)⋅d3k(2π)32∣k∣ e2(2p⋅p′(p⋅k)(p′⋅k)−m2(p′⋅k)2−m2(p⋅k)2)d\sigma(p\to p'+\gamma)=d\sigma(p\to p')\cdot\frac{d^3k}{(2\pi)^32|\boldsymbol k|}\,e^2\Big(\frac{2p\cdot p'}{(p\cdot k)(p'\cdot k)}-\frac{m^2}{(p'\cdot k)^2}-\frac{m^2}{(p\cdot k)^2}\Big)

です。

証明(命題 7.3)

出射電子の線から光子が出る図は、M0\mathcal M_0 の出射スピノル uˉ(p′)\bar u(p') を uˉ(p′)(−ieγνεν∗)i(̸p′+k̸+m)(p′+k)2−m2\bar u(p')(-ie\gamma^\nu\varepsilon^*_\nu)\frac{i(\not{p}'+\not{k}+m)}{(p'+k)^2-m^2} に置き換えたものです。k→0k\to0 では分子の k̸\not{k} を落とせ、uˉ(p′)γν(̸p′+m)=uˉ(p′)[2p′ν−(̸p′−m)γν]=2p′νuˉ(p′)\bar u(p')\gamma^\nu(\not{p}'+m)=\bar u(p')[2p'^\nu-(\not{p}'-m)\gamma^\nu]=2p'^\nu\bar u(p')、分母は 2p′⋅k2p'\cdot k です(k2=0k^2=0)。よって因子は (−ie) i 2p′⋅ε∗2p′⋅k=ep′⋅ε∗p′⋅k(-ie)\,i\,\frac{2p'\cdot\varepsilon^*}{2p'\cdot k}=e\frac{p'\cdot\varepsilon^*}{p'\cdot k} です。入射電子の線からの放射は分母が (p−k)2−m2=−2p⋅k(p-k)^2-m^2=-2p\cdot k となるので符号が逆です。内線から出る図は k→0k\to0 で特異にならないので主要項に入りません。偏極和は、Jμ=p′μp′⋅k−pμp⋅kJ^\mu=\frac{p'^\mu}{p'\cdot k}-\frac{p^\mu}{p\cdot k} が kμJμ=0k_\mu J^\mu=0 を満たすので 系 6.5[電磁場の量子化とゲージ固定] により −J⋅J-J\cdot J に置き換えられ、展開すれば主張の式です。光子の位相空間 d3k(2π)32∣k∣\frac{d^3k}{(2\pi)^32|\boldsymbol k|} は 定理 6.1[摂動論とファインマン則] の dΠd\Pi から、運動量保存の変化が O(k)O(k) であることを使って分離しました。

括弧の中は ∣k∣−2|\boldsymbol k|^{-2} に比例するので、d3k∣k∣\frac{d^3k}{|\boldsymbol k|} と合わせて d∣k∣∣k∣\frac{d|\boldsymbol k|}{|\boldsymbol k|} の対数発散が生じます。光子質量 μ\mu から検出器の分解能 EℓE_\ell までの範囲で積分すると、k\boldsymbol k の向きについての平均 ∫dΩ4π\int\frac{d\Omega}{4\pi} が 2fIR(q2)2f_{\mathrm{IR}}(q^2) を与え(Peskin–Schroeder 第 6 章 §6.1・§6.5)、

dσ(p→p′+γ, ∣k∣<Eℓ)=dσ0⋅απfIR(q2)ln⁡Eℓ2μ2d\sigma(p\to p'+\gamma,\ |\boldsymbol k|\lt E_\ell)=d\sigma_0\cdot\frac\alpha\pi f_{\mathrm{IR}}(q^2)\ln\frac{E_\ell^2}{\mu^2}

です。

定理 7.4(Bloch–Nordsieck の相殺)✓

電子が運動量移行 qq で散乱し、全エネルギーが EℓE_\ell 未満の光子をいくつ放射してもよい(検出器が区別しない)とする包含的な断面積は、α\alpha の 1 次で

dσdΩ(p→p′+(軟光子 E<Eℓ))=(dσdΩ)0[1−απfIR(q2)ln⁡m2Eℓ2+(μ によらない項)+O(α2)]\frac{d\sigma}{d\Omega}\Big(p\to p'+(\text{軟光子 }E\lt E_\ell)\Big)=\Big(\frac{d\sigma}{d\Omega}\Big)_0\Big[1-\frac\alpha\pi f_{\mathrm{IR}}(q^2)\ln\frac{m^2}{E_\ell^2}+(\mu\text{ によらない項})+O(\alpha^2)\Big]

となり、光子質量 μ→0\mu\to0 の極限が存在します。

証明(定理 7.4)

散乱なので q2<0q^2\lt0 とし、軟光子近似が使えるように EℓE_\ell は mm と −q2\sqrt{-q^2} に比べて小さいとします(EℓE_\ell に比例して消える補正は「μ\mu によらない項」に含めます)。α\alpha の 1 次では、包含的な断面積は光子を出さない過程の 1 ループまでの断面積と、光子 1 個の放射の木の断面積の和です(光子 2 個以上の放射は O(α2)O(\alpha^2))。

仮想補正。 光子を出さない過程の振幅は、最低次の振幅の γμ\gamma^\mu を Γμ\Gamma^\mu に替え、真空偏極の補正を加えたものです。∣M∣2|\mathcal M|^2 の α\alpha の 1 次の項のうち、F2F_2 の項は 定理 6.5 により赤外有限、真空偏極(定理 4.2)は電子のループで光子質量によりません。残る F1F_1 の項は ∣F1∣2=1+2 Re δF1+O(α2)|F_1|^2=1+2\,\mathrm{Re}\,\delta F_1+O(\alpha^2) を与え、命題 7.1 から

(dσdΩ)仮想=(dσdΩ)0[1−απfIR(q2)ln⁡m2μ2+(μ によらない項)]\Big(\frac{d\sigma}{d\Omega}\Big)_{\text{仮想}}=\Big(\frac{d\sigma}{d\Omega}\Big)_0\Big[1-\frac\alpha\pi f_{\mathrm{IR}}(q^2)\ln\frac{m^2}{\mu^2}+(\mu\text{ によらない項})\Big]

です。

角度平均。 時間的な PP(P0>∣P∣P^0\gt|\boldsymbol P|)について、u=cos⁡θu=\cos\theta として

∫dΩ4π1(P0−∣P∣u)2=12∫−11du(P0−∣P∣u)2=12∣P∣[1P0−∣P∣−1P0+∣P∣]=1P2\int\frac{d\Omega}{4\pi}\frac{1}{(P^0-|\boldsymbol P|u)^2}=\frac12\int_{-1}^1\frac{du}{(P^0-|\boldsymbol P|u)^2}=\frac{1}{2|\boldsymbol P|}\Big[\frac1{P^0-|\boldsymbol P|}-\frac1{P^0+|\boldsymbol P|}\Big]=\frac1{P^2}

です。k=∣k∣(1,n^)k=|\boldsymbol k|(1,\hat{\boldsymbol n}) と書くと p⋅k=∣k∣(p0−p⋅n^)p\cdot k=|\boldsymbol k|(p^0-\boldsymbol p\cdot\hat{\boldsymbol n}) です。補題 2.1 の 1AB=∫01dξ(ξA+(1−ξ)B)2\frac1{AB}=\int_0^1\frac{d\xi}{(\xi A+(1-\xi)B)^2} を使い、Pξ=ξp+(1−ξ)p′P_\xi=\xi p+(1-\xi)p'(時間的なベクトルの凸結合なので時間的)と置くと

∣k∣2∫dΩ4π1(p⋅k)(p′⋅k)=∫01dξPξ2,Pξ2=m2−ξ(1−ξ)q2=c(ξ)|\boldsymbol k|^2\int\frac{d\Omega}{4\pi}\frac{1}{(p\cdot k)(p'\cdot k)}=\int_0^1\frac{d\xi}{P_\xi^2},\qquad P_\xi^2=m^2-\xi(1-\xi)q^2=c(\xi)

です(p⋅p′=m2−q22p\cdot p'=m^2-\frac{q^2}2 から)。同様に ∣k∣2∫dΩ4πm2(p⋅k)2=m2p2=1|\boldsymbol k|^2\int\frac{d\Omega}{4\pi}\frac{m^2}{(p\cdot k)^2}=\frac{m^2}{p^2}=1 です。したがって 命題 7.3 の括弧の角度平均は

1∣k∣2[2(m2−q22)∫01dξc(ξ)−2]=2fIR(q2)∣k∣2\frac1{|\boldsymbol k|^2}\Big[2\Big(m^2-\frac{q^2}2\Big)\int_0^1\frac{d\xi}{c(\xi)}-2\Big]=\frac{2f_{\mathrm{IR}}(q^2)}{|\boldsymbol k|^2}

です。

実放射。 命題 7.3 を光子の運動量について積分します。光子質量 μ\mu の効果は、∣k∣≲μ|\boldsymbol k|\lesssim\mu で被積分関数の ∣k∣−3|\boldsymbol k|^{-3} の特異性を均すことで、対数の係数を変えず、定数の違いだけを生みます。よって

∫μ<∣k∣<Eℓd3k(2π)32∣k∣ e22fIR∣k∣2=4πe2⋅2fIR2(2π)3∫μEℓd∣k∣∣k∣=απfIR(q2)ln⁡Eℓ2μ2\int_{\mu\lt|\boldsymbol k|\lt E_\ell}\frac{d^3k}{(2\pi)^32|\boldsymbol k|}\,e^2\frac{2f_{\mathrm{IR}}}{|\boldsymbol k|^2}=\frac{4\pi e^2\cdot2f_{\mathrm{IR}}}{2(2\pi)^3}\int_\mu^{E_\ell}\frac{d|\boldsymbol k|}{|\boldsymbol k|}=\frac{\alpha}{\pi}f_{\mathrm{IR}}(q^2)\ln\frac{E_\ell^2}{\mu^2}

(e2=4παe^2=4\pi\alpha)で、

(dσdΩ)実=(dσdΩ)0[απfIR(q2)ln⁡Eℓ2μ2+(μ によらない項)]\Big(\frac{d\sigma}{d\Omega}\Big)_{\text{実}}=\Big(\frac{d\sigma}{d\Omega}\Big)_0\Big[\frac\alpha\pi f_{\mathrm{IR}}(q^2)\ln\frac{E_\ell^2}{\mu^2}+(\mu\text{ によらない項})\Big]

です。

和。 −ln⁡m2μ2+ln⁡Eℓ2μ2=−ln⁡m2Eℓ2-\ln\frac{m^2}{\mu^2}+\ln\frac{E_\ell^2}{\mu^2}=-\ln\frac{m^2}{E_\ell^2} なので ln⁡μ2\ln\mu^2 が打ち消し合い、主張の式を得ます。残りの項は μ→0\mu\to0 で極限をもつので、包含的な断面積の μ→0\mu\to0 の極限が存在します。

注意 7.5(相殺の仕組みと全次数への拡張)

α\alpha の 1 次では、命題 7.1 から来る仮想補正 2 Re δF12\,\mathrm{Re}\,\delta F_1 の −απfIRln⁡m2μ2-\frac\alpha\pi f_{\mathrm{IR}}\ln\frac{m^2}{\mu^2} と、命題 7.3 を積分した実放射の +απfIRln⁡Eℓ2μ2+\frac\alpha\pi f_{\mathrm{IR}}\ln\frac{E_\ell^2}{\mu^2} を足すと ln⁡μ2\ln\mu^2 が打ち消し合います。fIRf_{\mathrm{IR}} が両方に共通に現れるのは偶然ではなく、どちらも外線の古典的な電流 JμJ^\mu が作る放射場で決まっているからです。全次数では、nn 個の軟光子の放射確率が 1n!(απfIRln⁡Eℓ2μ2)n\frac{1}{n!}\big(\frac\alpha\pi f_{\mathrm{IR}}\ln\frac{E_\ell^2}{\mu^2}\big)^n となって指数関数に足し上がり、仮想光子の補正も exp⁡(−απfIRln⁡m2μ2)\exp\big(-\frac\alpha\pi f_{\mathrm{IR}}\ln\frac{m^2}{\mu^2}\big) に指数化して、両者の積で μ\mu が消えます(Bloch–Nordsieck 1937、Yennie–Frautschi–Suura 1961。Peskin–Schroeder 第 6 章 §6.5)。理論的な背景は、注意 5.3[摂動論とファインマン則] で述べた「電子の 1 粒子極が軟光子の連続スペクトルに埋もれている」ことにあり、観測可能なのは縮退した状態をまとめた包含的な量だけです。

例 7.6(光子を出さない散乱の確率は 0 である)

注意 7.5 の指数化を認めると、光子を 1 個も放射しない排他的な断面積は

dσdΩ(p→p′ のみ)=(dσdΩ)0exp⁡(−απfIR(q2)ln⁡m2μ2)×(1+⋯ )\frac{d\sigma}{d\Omega}(p\to p'\text{ のみ})=\Big(\frac{d\sigma}{d\Omega}\Big)_0\exp\Big(-\frac\alpha\pi f_{\mathrm{IR}}(q^2)\ln\frac{m^2}{\mu^2}\Big)\times(1+\cdots)

で、q2≠0q^2\ne0 なら fIR>0f_{\mathrm{IR}}\gt0 なので μ→0\mu\to0 で 00 になります。1 次の摂動論で見えた「負の無限大の補正」は、この指数関数の展開の第 1 項です。加速された電荷は必ず無限個の軟光子を放射するので、「光子を出さずに散乱する」という事象には確率がありません。包含的な断面積をとるという仮定(検出器の分解能 Eℓ>0E_\ell\gt0)を外すと、観測量が定義できなくなるのです。古典電磁気学で、加速された電荷の放射スペクトル dIdω\frac{dI}{d\omega} が ω→0\omega\to0 で有限な値に近づき、光子数 1ωdIdω\frac{1}{\omega}\frac{dI}{d\omega} が対数発散することに対応しています。

演習 8.1標準

ファインマンゲージで、1 ループの電子の自己エネルギーが

Σ2(p)=e2(4π)d/2∫01dx [−(d−2)(1−x)p̸+dm]Γ(2−d2)Δ2−d/2,Δ=xm2−x(1−x)p2\Sigma_2(p)=\frac{e^2}{(4\pi)^{d/2}}\int_0^1dx\,\big[-(d-2)(1-x)\not{p}+dm\big]\frac{\Gamma(2-\frac d2)}{\Delta^{2-d/2}},\qquad \Delta=xm^2-x(1-x)p^2

であることを示し、その紫外発散の部分から Z2=1−α4π2ε+(有限)Z_2=1-\frac{\alpha}{4\pi}\frac2\varepsilon+(\text{有限}) を求めてください。さらに 定理 6.5 の証明で γμ\gamma^\mu に比例する ℓ2\ell^2 の項から Z1Z_1 の極を求め、系 3.4 と整合することを確かめてください。

解答

定理 4.5[摂動論とファインマン則] より

−iΣ2(p)=∫ddk(2π)d(−ieγμ)i(k̸+m)k2−m2(−ieγμ)−i(p−k)2=−e2∫ddk(2π)d−(d−2)k̸+dm(k2−m2)(p−k)2-i\Sigma_2(p)=\int\frac{d^dk}{(2\pi)^d}(-ie\gamma^\mu)\frac{i(\not{k}+m)}{k^2-m^2}(-ie\gamma_\mu)\frac{-i}{(p-k)^2}=-e^2\int\frac{d^dk}{(2\pi)^d}\frac{-(d-2)\not{k}+dm}{(k^2-m^2)(p-k)^2}

です(補題 2.6 の γμγνγμ=−(d−2)γν\gamma^\mu\gamma^\nu\gamma_\mu=-(d-2)\gamma^\nu と γμγμ=d\gamma^\mu\gamma_\mu=d)。x(k2−m2)+(1−x)(p−k)2=(k−(1−x)p)2−Δx(k^2-m^2)+(1-x)(p-k)^2=(k-(1-x)p)^2-\Delta なので ℓ=k−(1−x)p\ell=k-(1-x)p として k̸↦(1−x)p̸\not{k}\mapsto(1-x)\not{p} です。定理 2.5 の n=2n=2 を使って ii で割ると主張の式です。

d=4−εd=4-\varepsilon の極は e216π22ε∫01[−2(1−x)p̸+4m]dx=α4π2ε(−p̸+4m)\frac{e^2}{16\pi^2}\frac2\varepsilon\int_0^1[-2(1-x)\not{p}+4m]dx=\frac\alpha{4\pi}\frac2\varepsilon(-\not{p}+4m) なので dΣ2dp̸\frac{d\Sigma_2}{d\not{p}} の極は −α4π2ε-\frac\alpha{4\pi}\frac2\varepsilon で、Z2−1=1+α4π2εZ_2^{-1}=1+\frac\alpha{4\pi}\frac2\varepsilon、Z2=1−α4π2εZ_2=1-\frac\alpha{4\pi}\frac2\varepsilon です。

頂点の ℓ2\ell^2 の項は 2ie2∫ddℓ(2π)d∫dF2(ℓ2−Δ)3(−12ℓ2)γμ2ie^2\int\frac{d^d\ell}{(2\pi)^d}\int dF\frac{2}{(\ell^2-\Delta)^3}\big(-\frac12\ell^2\big)\gamma^\mu で、定理 2.5 の第 2 式(n=3n=3)の極は i16π22ε\frac{i}{16\pi^2}\frac2\varepsilon、∫dx dy dz δ(x+y+z−1)=12\int dx\,dy\,dz\,\delta(x+y+z-1)=\frac12 なので、δF1\delta F_1 の極は 2ie2⋅2⋅(−12)⋅12⋅i16π22ε=α4π2ε2ie^2\cdot2\cdot(-\frac12)\cdot\frac12\cdot\frac{i}{16\pi^2}\frac2\varepsilon=\frac{\alpha}{4\pi}\frac2\varepsilon です。Z1−1=F1(0)Z_1^{-1}=F_1(0)(引き算前)=1+α4π2ε=1+\frac\alpha{4\pi}\frac2\varepsilon なので Z1=1−α4π2εZ_1=1-\frac\alpha{4\pi}\frac2\varepsilon となり、極は Z2Z_2 と一致します。

演習 8.2標準

∣q2∣≪m2|q^2|\ll m^2 で Π^2(q2)≈−α15πq2m2\hat\Pi_2(q^2)\approx-\frac{\alpha}{15\pi}\frac{q^2}{m^2} を示してください。これを使い、静的な Coulomb ポテンシャル V(r)=−αrV(r)=-\frac\alpha r(電荷が逆符号の 2 粒子)が真空偏極によって

V(x)=−αr−4α215m2δ3(x)V(\boldsymbol x)=-\frac{\alpha}{r}-\frac{4\alpha^2}{15m^2}\delta^3(\boldsymbol x)

と補正されることを示してください(Uehling 項。水素原子の 2S2S 準位を下げ、Lamb シフトの一部をなします)。

解答

ln⁡m2m2−x(1−x)q2=−ln⁡(1−x(1−x)q2m2)≈x(1−x)q2m2\ln\frac{m^2}{m^2-x(1-x)q^2}=-\ln\big(1-\frac{x(1-x)q^2}{m^2}\big)\approx\frac{x(1-x)q^2}{m^2} なので、∫01x2(1−x)2dx=B(3,3)=130\int_0^1x^2(1-x)^2dx=B(3,3)=\frac{1}{30} より Π^2≈−2απ⋅130q2m2=−α15πq2m2\hat\Pi_2\approx-\frac{2\alpha}{\pi}\cdot\frac{1}{30}\frac{q^2}{m^2}=-\frac{\alpha}{15\pi}\frac{q^2}{m^2} です。

静的な散乱では q=(0,q)q=(0,\boldsymbol q)、q2=−∣q∣2q^2=-|\boldsymbol q|^2 です。Born 近似で V(r)=−αrV(r)=-\frac\alpha r に対応する運動量空間のポテンシャルは V~(q)=−4πα∣q∣2\tilde V(\boldsymbol q)=-\frac{4\pi\alpha}{|\boldsymbol q|^2} で、定理 5.1 により α\alpha を αeff(−∣q∣2)\alpha_{\mathrm{eff}}(-|\boldsymbol q|^2) に置き換えます。αeff≈α(1+Π^2)=α(1+α15π∣q∣2m2)\alpha_{\mathrm{eff}}\approx\alpha(1+\hat\Pi_2)=\alpha\big(1+\frac{\alpha}{15\pi}\frac{|\boldsymbol q|^2}{m^2}\big) なので

V~(q)=−4πα∣q∣2−4α215m2\tilde V(\boldsymbol q)=-\frac{4\pi\alpha}{|\boldsymbol q|^2}-\frac{4\alpha^2}{15m^2}

です。定数の Fourier 逆変換は δ3(x)\delta^3(\boldsymbol x) なので主張を得ます。符号が負なので、原点で波動関数が 00 でない SS 状態だけが引力的に下がります。

演習 8.3標準

定理 5.1 を電子・ミューオン・タウの 3 種の荷電レプトンに足し合わせ(定理 5.2 の ∑Qi2\sum Q_i^2 と同じ理由で寄与は加算されます)、α=1/137.036\alpha=1/137.036 から空間的な運動量移行 Q=mZ=91.19 GeVQ=m_Z=91.19\ \mathrm{GeV} での αeff−1\alpha_{\mathrm{eff}}^{-1} を求めてください(me=0.000511m_e=0.000511、mμ=0.1057m_\mu=0.1057、mτ=1.777m_\tau=1.777、単位 GeV)。実測の α−1(mZ)≈128.9\alpha^{-1}(m_Z)\approx128.9 との差は何に由来しますか。

解答

1 ループで αeff−1=α−1−13π∑ℓ(ln⁡Q2mℓ2−53)\alpha_{\mathrm{eff}}^{-1}=\alpha^{-1}-\frac{1}{3\pi}\sum_\ell\Big(\ln\frac{Q^2}{m_\ell^2}-\frac53\Big) です。ln⁡mZme=12.09\ln\frac{m_Z}{m_e}=12.09、ln⁡mZmμ=6.76\ln\frac{m_Z}{m_\mu}=6.76、ln⁡mZmτ=3.94\ln\frac{m_Z}{m_\tau}=3.94 なので ∑ln⁡Q2mℓ2=2×22.79=45.58\sum\ln\frac{Q^2}{m_\ell^2}=2\times22.79=45.58 で、53×3=5\frac53\times3=5 を引いて 40.5840.58 です。40.583π=4.31\frac{40.58}{3\pi}=4.31 なので αeff−1(mZ)≈137.04−4.31=132.7\alpha_{\mathrm{eff}}^{-1}(m_Z)\approx137.04-4.31=132.7 です。

残りの約 3.83.8 はクォークのループ(ハドロンの真空偏極)の寄与です。軽いクォークでは質量 mm がよく定義されず摂動論も使えないので、e+e−→e^+e^-\to ハドロンの断面積の実測値から分散関係で求めます。

演習 8.4難

定理 6.5 の F2(q2)F_2(q^2) の式で zz を固定して x,yx,y について積分する前に、−q2=Q2≫m2-q^2=Q^2\gg m^2 での振る舞いを調べ、主要項が F2(q2)≈απm2Q2ln⁡Q2m2F_2(q^2)\approx\frac{\alpha}{\pi}\frac{m^2}{Q^2}\ln\frac{Q^2}{m^2} であることを示してください。この結果は、高エネルギーでの散乱で電子の異常磁気モーメントの効果が見えにくくなることを意味します。

解答

y=(1−z)ηy=(1-z)\eta、x=(1−z)(1−η)x=(1-z)(1-\eta)(0≤η≤10\le\eta\le1)と置くと dx dy δ(⋯ )↦(1−z)dηdx\,dy\,\delta(\cdots)\mapsto(1-z)d\eta、xy=(1−z)2η(1−η)xy=(1-z)^2\eta(1-\eta) で

F2=α2π∫01dz∫01dη 2m2z(1−z)2(1−z)2[m2+Q2η(1−η)]=α2π∫01dz 2z∫01m2 dηm2+Q2η(1−η)F_2=\frac\alpha{2\pi}\int_0^1dz\int_0^1d\eta\,\frac{2m^2z(1-z)^2}{(1-z)^2\big[m^2+Q^2\eta(1-\eta)\big]}=\frac\alpha{2\pi}\int_0^1dz\,2z\int_0^1\frac{m^2\,d\eta}{m^2+Q^2\eta(1-\eta)}

です。zz 積分は 11 です。η\eta 積分は、Q2≫m2Q^2\gg m^2 では η≈0\eta\approx0 と η≈1\eta\approx1 の近くの幅 m2/Q2m^2/Q^2 の領域が支配し、2∫01/2m2dηm2+Q2η≈2m2Q2ln⁡Q2m22\int_0^{1/2}\frac{m^2d\eta}{m^2+Q^2\eta}\approx\frac{2m^2}{Q^2}\ln\frac{Q^2}{m^2} です。よって F2≈α2π2m2Q2ln⁡Q2m2=απm2Q2ln⁡Q2m2F_2\approx\frac{\alpha}{2\pi}\frac{2m^2}{Q^2}\ln\frac{Q^2}{m^2}=\frac{\alpha}{\pi}\frac{m^2}{Q^2}\ln\frac{Q^2}{m^2} で、Q2→∞Q^2\to\infty で 00 に近づきます。q2=0q^2=0 では η\eta 積分が 11 で、定理 6.5 の F2(0)=α2πF_2(0)=\frac{\alpha}{2\pi} に戻ります。

  • M. E. Peskin, D. V. Schroeder『An Introduction to Quantum Field Theory』Addison-Wesley、1995 — 第 6 章(§6.2 形状因子と gg 因子、§6.3 頂点補正、§6.4・§6.5 赤外発散と軟光子)、第 7 章(§7.1 電子の自己エネルギー、§7.4 Ward–高橋恒等式、§7.5 真空偏極と電荷のくりこみ)、第 10 章 §10.3。
  • J. Schwinger, “On quantum-electrodynamics and the magnetic moment of the electron”, Physical Review 73 (1948), 416.
  • F. Bloch, A. Nordsieck, “Note on the radiation field of the electron”, Physical Review 52 (1937), 54.
  • J. C. Ward, “An identity in quantum electrodynamics”, Physical Review 78 (1950), 182. Y. Takahashi, “On the generalized Ward identity”, Il Nuovo Cimento 6 (1957), 371.
  • G. ‘t Hooft, M. Veltman, “Regularization and renormalization of gauge fields”, Nuclear Physics B 44 (1972), 189.
  • J. C. Collins『Renormalization』Cambridge University Press、1984 — 第 4 章(次元正則化)。

このテーマの 100 本ノック(100 問)

執筆: Claude Code(Opus 5.5)、Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 3 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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