導来圏と全導来関手:擬同型を可逆にして導来関手を一つの関手にする
対象読者: 本テーマの三角圏の章と導来関手・δ 関手の章を学んだ人。圏の局所化や Verdier 商は仮定せず、本文で構成します。
前提となる記事:三角圏とホモトピー圏の三角構造:写像錐を公理にする、導来関手と δ 関手:比較定理・Grothendieck の普遍性・Ext と Tor の平衡性
0. この記事の要点
Section titled “0. この記事の要点”複体の圏では、見かけの違う二つの複体が「同じコホモロジーをもつ」ために同じものと見なしたい場面がよく出てきます。たとえば整数 に、割り算を分数として形式的に付け加えると になるように、「同じコホモロジーをもつ射(擬同型)」を形式的に逆向きにも使えるようにした圏を作る、というのがこの記事の話です。読み終えると、Ext が Hom として読めること、導来関手の合成が一つの等式で書けることが分かります。
- 圏 の射の族 が乗法系(分数計算の条件)を満たすと、 の射を形式的に可逆にした(逆射を付け加えた)局所化 が「分数」 の圏として作れます。その Hom はフィルター余極限で、 が加法圏なら局所化も加法圏です。
- 三角圏 の充満三角部分圏 について、錐が に入る射の全体は乗法系で、その局所化 は三角圏になります(Verdier 商)。
- アーベル圏 の導来圏 は、ホモトピー圏 の非輪状複体による Verdier 商、すなわち擬同型(コホモロジーを変えない鎖写像)を可逆にした圏です。 は に充満忠実に入り、短完全列はすべて完全三角形を与えます。
- が十分に入射対象をもてば、下に有界な入射複体のホモトピー圏 は と圏同値です。とくに の Hom は小さい集合と全単射にあり、 です。
- 加法関手 の全右導来関手 を、 から への Kan 拡張として普遍性で定義し、その存在、、合成の公式 を示します。
- 大域次元が 1 以下のアーベル圏では、コホモロジーが有界な対象はコホモロジーのシフトの直和 と同型です。
導来関手と δ 関手 では、加法関手 の右導来関手を、入射分解 をとって と定めました。分解は比較定理によってホモトピーを除いて一意で、その一意性を各次数の に落としてから使っていました。しかし をばらばらの関手の族として扱うと、次の二つの点で情報が失われます。
一つは、分解そのもの(複体 )が をとる前にもっている情報です。二つの関手の合成 の導来関手は、 と からは決まらず、それを結ぶのが Grothendieck のスペクトル系列でした。複体の水準では、合成は単に「 をもう一度分解して を施す」ことです。もう一つは、分解の取り方の自由度です。 とその入射分解 は「同じもの」と見なしたいのですが、 は擬同型であってホモトピー同値ではありません。
Grothendieck と Verdier(1960 年代)は、複体の圏で擬同型を形式的に可逆にした圏、導来圏を導入してこの二つの問題を同時に解きました。導来圏の中では で、導来関手は という一つの三角関手になり、合成は という等式になります。Ext は Hom になり、長完全列は完全三角形から出ます。代数幾何学の Serre 双対・Grothendieck 双対、表現論の導来同値は、この言葉で述べられます。
この記事では、圏の局所化という一般的な操作(分数の圏)から始め、三角圏とホモトピー圏の三角構造 の三角圏の公理と組み合わせて導来圏を作ります。局所化の構成は素朴ですが、合成が well-defined であることの確認が長いので、細部は Appendix に回します。
記号は前の章までと同じです。複体は上付きの添字(定義 2.1[鎖複体とホモトピー圏])、ホモトピー圏は 定義 4.3[鎖複体とホモトピー圏]、写像錐は 定義 5.1[鎖複体とホモトピー圏]、三角圏は 定義 2.2[三角圏とホモトピー圏の三角構造] の意味です。対象 を次数 に置いた複体を と書き、 は次数 に を置いた複体です。
2. 圏の局所化と分数計算
Section titled “2. 圏の局所化と分数計算”2.1. 乗法系と局所化
Section titled “2.1. 乗法系と局所化”圏 の射の集合 について、次の条件を考える。
- (S1) すべての恒等射は に属し、 は合成で閉じている。
- (S2) が に属し、 が射なら、 に属する と射 で となるものがある。
- (S3) 平行な射 と に属する が を満たせば、 に属する で となるものがある。
(S2)・(S3) の矢印をすべて逆にした条件を (S2)・(S3) とする。すなわち (S2) は「 が に属し なら、 に属する と で となるものがある」、(S3) は「()なら となる がある」である。(S1)〜(S3) を満たす を分数計算を許すといい、さらに (S2)・(S3) も満たすとき乗法系という。
(S2) は「 を右に、 を左に書いた を、 の形に書き直せる」という条件(Ore 条件)で、(S3) は「 を右から打ち消せるなら、 を左から掛けて等しくできる」という簡約の条件です。
次の図は (S2) の可換な四角形です。 の逆を右に置いた形 を、逆を左に置いた形 に取り替えるには、この四角形が必要になります。
圏 と射の集合 について、圏 と関手 の組が による局所化であるとは、次の 2 条件を満たすことをいう。
- すべての について は同型である。
- の射をすべて同型に送る任意の関手 に対し、 を満たす関手 がただ一つ存在する。
局所化は、2 の普遍性により圏の同型を除いて一意です。
を圏、 を分数計算を許す射の集合とする。
- 対象 について、組 ( は の射、)の上の関係 を「射 、 で かつ となるものがある」で定めると、 は同値関係である。 の類を と書く( と読む)。
- 対象を と同じにし、 を類 の集合、合成を
と定めた圏 と、 で定まる関手 は、 による局所化である。このとき である。 3. であることと、 となる が存在することは同値である。 4. 任意の圏 と関手 について、 は全単射 である。 5. が乗法系なら、 のすべての射は ()の形に書け、 であることと となる が存在することは同値である。
証明は Appendix A に置きます。要点は、()を対象とし、 を満たす を射とする圏 が(宇宙を一つ大きくすれば)フィルター圏になり、 が関手 のフィルター余極限になることです。1 の関係は、極限と余極限 で集合のフィルター余極限を記述した関係(命題 6.3[極限と余極限])そのものです。
ここでいう宇宙とは、集合として扱ってよい範囲を決める大きな集合のことで、「小さい」はその範囲に収まる大きさという意味です。細かい集合論の話なので、分からなければ読み飛ばして構いません。
が小さくなくても は集合ですが、固定した宇宙 について小さいとは限りません。 を元として含む宇宙 (公理 2.2[圏・関手・自然変換])をとれば について小さい集合です(命題 2.3[圏・関手・自然変換])。導来圏の Hom が実際に について小さいかどうかは、5 節で入射対象を使って調べます。
を加法圏、 を分数計算を許す射の集合とする。
- 2 つの射 は共通の を使って 、 と書け、 によって はアーベル群になる。
- この加法で は加法圏、 は加法関手である。
- が加法圏への加法関手で の射を同型に送るなら、定義 2.2 の も加法関手である。
証明(命題 2.4)
1. Appendix A で示すとおり(定理 2.3 の証明)、 はフィルター圏 上の図式 、 の での余極限で、推移写像 はアーベル群の準同型である。 は宇宙 について小さいので、極限と余極限 の 系 6.5[極限と余極限] の 1(、宇宙 で適用する)により、2 元を同じ の元で代表して和をとる演算はアーベル群の構造で、各 は準同型である。
2. 合成の双線形性を示す。 について:共通の で書いた 、 に、同じ ()を使って合成すると で、和は 。 について:共通の で書いた 、 に対し、(S2) を と に使って ()を、さらに と に使って ()を得る。 とおくと 、 で、 なので、三つの合成はそれぞれ 、、 で、最後が前二つの和である。
は を対象 の成分として余極限に送る写像なので準同型である。加法関手は双積の等式 、(定義 3.2[加法圏とアーベル圏])を保つので、 は の有限双積(0 個の場合の零対象を含む)を双積に送る。 の対象はすべて の像なので、任意の有限個の対象が双積をもち、 は加法圏である(定義 3.4[加法圏とアーベル圏])。
3. である(定理 2.3 の 2 の )。共通の で書いた 2 元について なので加法的である。
局所化の Hom を計算する基本的な道具は次の補題です。「 の射に関して局所的」な対象への Hom は、局所化しても変わりません。
を圏、 を分数計算を許す射の集合とし、対象 は次の条件を満たすとする: に属する任意の について、 は全単射である。このとき、すべての対象 について は全単射である。
証明(補題 2.5)
()について、仮定から を満たす がただ一つある。写像 が well-defined であることを示す。定理 2.3 の 1 の関係は、 を ()に取り替える操作で生成される( なら、ある で )。 なので、 の単射性から 、よって 。
である。逆に で は同型なので 、したがって 。よって は の逆写像である。
3. Verdier 商
Section titled “3. Verdier 商”この節では を三角圏、 をその充満三角部分圏(定義 4.6[三角圏とホモトピー圏の三角構造])とします。射 について、完全三角形 の は同型を除いて一意で(系 3.5[三角圏とホモトピー圏の三角構造])、 は同型で閉じているので、「」は三角形の選び方によりません。 となる射全体を と書きます。
次の定理は、錐が に入る射だけを「逆向きにも使ってよい射」として分数の圏を作ると、それがまた三角圏になる、というものです。証明は (S1)〜(S3) を一つずつ、錐を作って三角圏の公理 TR3・TR4 で射を補う形で確かめていきます。
TR1 (c) で の完全三角形 をとると、回転が完全なので TR2 (b) により も完全です。すなわち、任意の射は、ある完全三角形の 2 番目の射になります。以下この事実を断らずに使います。
を三角圏、 を充満三角部分圏とする。
- は乗法系(定義 2.1)であり、 なら である。
- は加法圏で、、 から誘導される互いに逆な加法関手 、 をもつ。 の像の完全三角形と同型な三角形を完全三角形とすると、 は三角圏で、 は( によって)三角関手である。
- なら であり、 は の による Verdier 商(定義 4.8[三角圏とホモトピー圏の三角構造])である。
証明(定理 3.1)
1, (S1). の錐は (TR1 (b))。、 が に属するとき、それぞれの錐 と の錐 に TR4 を使うと完全三角形 が得られる。これを 2 回回転した は完全で、 なので 、よって 。
1, (S2). (錐 )と をとる。完全三角形 をとり(上の注意)、 を完全三角形 に入れる(TR1 (c)。シフトは圏の同型なので第 3 項は )。 の回転 は完全なので の錐は 、すなわち 。二つの三角形の間に は を満たすので、TR3 から で となるものがある。
1, (S3). 、 の錐 とし、 とおく。完全三角形 に 命題 3.2[三角圏とホモトピー圏の三角構造] の 2( の完全性)を使うと、 から となる がある。完全三角形 をとると (命題 3.1[三角圏とホモトピー圏の三角構造] の 1)なので 、すなわち 。回転から の錐は である。
1, (S2)・(S3). (S2):(完全三角形 、)と について、 を 2 番目の射とする完全三角形 をとると 。両方を回転した三角形 、 の間に は を満たすので、TR3 から で (回転の第 3 の射は 、)となるものがあり、 が を満たす。(S3):(、錐 )なら、 は完全三角形 について 命題 3.2[三角圏とホモトピー圏の三角構造] の 1 から ()と書け、 を 2 番目の射とする完全三角形 をとると 、よって で、 の錐は 。シフトで閉じていること: の完全三角形 について、系 3.9[三角圏とホモトピー圏の三角構造] から は完全で、これは によって と同型なので、後者も完全である(TR1 (a))。 はシフトで閉じているので 、すなわち 。
2. 命題 2.4 により は加法圏で は加法関手。 は の射を同型に送るので(1)、 を満たす加法関手 がただ一つあり、 も同様で、 と一意性から互いに逆である。TR1 (a) は定義そのもの、(b) は を に施せばよい。(c):射 (、)について、完全三角形 をとると、三角形 は によって の像と同型なので完全である。TR2 (a): はシフトと可換で なので、 の像の三角形の回転は回転の像であり、同型な三角形の回転は同型である。TR3 と TR4 は Appendix B の 補題 8.5 と 補題 8.6 で示す。TR2 (b) は TR1・TR2 (a)・TR3 から従う(補題 3.8[三角圏とホモトピー圏の三角構造])。 が三角関手であることは完全三角形の定義そのものである。
3. なら、完全三角形 (命題 3.1[三角圏とホモトピー圏の三角構造] の 3 と同型)から の錐は で、 は に属し、。普遍性: を、 の対象を零対象に送る三角関手とする。 と完全三角形 ()について、 の像は完全三角形で 。 は完全三角形 から像の三角形への三角形の射( による)で、第 1・第 3 成分が同型なので 命題 3.4[三角圏とホモトピー圏の三角構造] から は同型である。よって となる関手 がただ一つあり、命題 2.4 の 3 から加法関手である。 の構造の自然同型 は から への自然同型なので、定理 2.3 の 4 により となる自然変換 がただ一つあり、逆も同様に持ち上がるので自然同型である。 は の像の完全三角形を の像の完全三角形に送り、同型な三角形を同型な三角形に送るので、 は三角関手で、 と の一意性はすでに示した。
4. 導来圏
Section titled “4. 導来圏”以下 をアーベル圏とし、 について をホモトピー圏(無印・下に有界・上に有界・有界)とします。 は三角圏です(定理 5.5[三角圏とホモトピー圏の三角構造])。非輪状複体のなす充満部分圏を と書きます。
は の厚い部分圏であり、 の射が擬同型であることと、その錐が非輪状であること、すなわち に属することは同値である。したがって擬同型の全体 は の乗法系で、シフトで閉じている。
証明(命題 4.1)
はコホモロジー的関手で である(命題 5.6[三角圏とホモトピー圏の三角構造] の 1)。 の完全三角形は頂点が に入る の完全三角形なので、その制限もコホモロジー的で、命題 4.7[三角圏とホモトピー圏の三角構造] によりすべての が消える対象、すなわち非輪状複体のなす部分圏は厚い。錐についての同値は 命題 5.6[三角圏とホモトピー圏の三角構造] の 3(標準三角形については 系 5.4[鎖複体とホモトピー圏])である。最後の主張は 定理 3.1 の 1 による。
をアーベル圏とする。
- は三角圏で、 は三角関手である。 の射 について、 が同型であることと が擬同型であることは同値である。
- 擬同型を同型に送る関手 は、関手 によって とただ一通りに分解する。 が三角関手なら も三角関手である。
- は を経由してコホモロジー的関手 を与え、 である。
証明(定理 4.3)
では、次数ごとに分裂しない短完全列は完全三角形を与えませんでした(三角圏とホモトピー圏の三角構造 の例)。導来圏ではすべての短完全列が完全三角形を与えます。
証明(補題 4.4)
は鎖写像である:()。命題 5.2[鎖複体とホモトピー圏] の 4 を 、 に使うと、 は鎖写像 である。次数 で は、 と の双積なので完全で、命題 2.2[鎖複体とホモトピー圏] の 4 により は短完全列である。 はホモトピー同値なので は可縮で(命題 5.5[鎖複体とホモトピー圏])、非輪状である(命題 4.2[鎖複体とホモトピー圏] の 3)。コホモロジーの長完全列(定理 3.1[鎖複体とホモトピー圏])から はすべて同型である。
標準三角形 は の完全三角形で、 である。 で送った三角形は、 によって主張の三角形と同型なので、TR1 (a) から完全である。
証明(命題 4.5)
忠実. 定理 4.3 の 3 の と合成すると なので忠実である。
充満. を の射とする。定理 2.3 の 5 により ( は擬同型、)と書ける。 で なので、命題 6.2[鎖複体とホモトピー圏] により切り詰めの包含 (定義 6.1[鎖複体とホモトピー圏])は擬同型で、 である。 は次数 以上で なので、 から ()への鎖写像は との合成が になる射 、すなわち からの射と同じもので、零ホモトピックなものは だけである(ホモトピーの成分は と )。したがって鎖写像 は での値で決まる。 とおくと、 と は での値が等しいので鎖写像として等しく、。
本質的な像. の同型は を保つので、像の対象は で を満たす。逆にそのような について、 と は 命題 6.2[鎖複体とホモトピー圏] から擬同型である。 は次数 以上で なので、 は次数 だけにある複体 で、 である。よって で 。
例 4.6(K(A) と D(A) で Hom が異なる)
で、 を (次数 )とします。射影 は擬同型で、 では ですが、 では同型ではありません(鎖複体とホモトピー圏 の例で、 から への鎖写像は しかないことを見ました)。Hom も変わります。 は、次数 の への鎖写像が次数 の から出ないので ですが、下の 系 5.5 から です。この でない射は、短完全列 から 補題 4.4 で得られる三角形の第 3 の射です(演習 8.2)。
5. 入射複体と D⁺(A)
Section titled “5. 入射複体と D⁺(A)”導来圏の射は分数 で、そのままでは計算しにくい対象です。この節では、下に有界な入射複体が 補題 2.5 の意味で「局所的」であり、そこへの Hom はホモトピー類で計算できることを示します。射影対象・入射対象と「十分にもつ」は 射影対象・入射対象と Grothendieck 圏 の 定義 3.1[射影対象・入射対象と Grothendieck 圏]・定義 3.4[射影対象・入射対象と Grothendieck 圏] の意味です。
補題 5.1(非輪状複体から入射複体への射は零ホモトピック)✓
を、ある について で となり、各 が入射対象である複体とする。非輪状な複体 から への任意の鎖写像は零ホモトピックである。すなわち 。
証明(補題 5.1)
を鎖写像とする。 で となるものを、 についての帰納法で作る。 では なので とおき、このとき で なので等式は成り立つ。 について ()が作られ、次数 までの等式が成り立つとする。 は
を満たす。 は で完全なので(補題 2.1[導来関手と δ 関手] の 1)、延長補題(補題 2.4[導来関手と δ 関手])を列 と入射対象 に使うと、 となる がある。これは次数 の等式 である。
証明(補題 5.2)
、 とし、 が誘導する射を とする。補題 2.6[鎖複体とホモトピー圏] により、 は の核と同一視でき( は mono)、 である( は epi)。この同一視は鎖写像と可換である。以下の「元」は 定義 6.1[加法圏とアーベル圏] の意味で、その操作は 定理 6.3[加法圏とアーベル圏] の規則による。
について次を満たす ()、()、()を帰納的に作る:(a) は入射対象で なら 、、(定義されている範囲で)、(b) で は同型、(c) が誘導する は mono。 では を入射対象 に mono で埋め込めばよい(十分に入射対象をもつ)。
で作られたとし、、 の押し出し、すなわち の余核 をとり、、 とおく()。mono ( は入射対象)をとって 、 と定める。 は から、 は から従い、(a) が成り立つ。 である。
(b) を まで. は を核 ( は mono)に制限したものである。 は mono なので制限も mono。epi を示す。 となる元 について なので、 の核は の像だから となる元 がある(規則 5)。射影 、 を施すと 、 で、規則 1 から 、すなわち は の元である。規則 3 により制限は epi で、平衡性から同型である。
(c) を で. 、 で、 は が誘導する射である。 が を満たすとする。(、)と書け、 は の像に入るので 、 が mono なので 。規則 6 を と 、 に使うと、 を満たす元 で、 から となるものがある。(規則 5)なので で、。規則 2 により は mono である。
各段の選択には選択公理(公理 3.1[選択公理と Zorn の補題])を使う。こうして得られる鎖写像 はすべての で が同型である。
のとき、これは入射分解の存在(命題 2.3[導来関手と δ 関手])の複体版です。
以下、 を、 の対象で、各項が入射対象である下に有界な複体と で同型なもののなす充満部分圏とします。
をアーベル圏とし、 とする。
- 任意の について は全単射であり、 について も全単射である。
- が十分に入射対象をもつなら、 は の充満三角部分圏であり、合成 は三角関手で、圏同値である。
証明(定理 5.3)
1. Hom の全単射性は の同型で保たれるので、 は各項が入射対象の下に有界な複体としてよい。補題 2.5 の条件を確かめる。擬同型 について、完全三角形 の は非輪状である(命題 4.1)。 はコホモロジー的なので(命題 3.2[三角圏とホモトピー圏の三角構造])、命題 4.2[三角圏とホモトピー圏の三角構造] の 2 から完全列
がある。、 は非輪状なので両端は で(補題 5.1)、 は全単射である。補題 2.5 から主張が従う。 でも同じ議論が使える( に限るだけ)。
2. 零対象を含み、同型とシフトで閉じていることは定義から分かる。完全三角形 で が入射複体 と同型なら、射 に対応する鎖写像 の標準三角形の錐 は下に有界で、入射対象の有限積なので入射対象である(命題 3.3[射影対象・入射対象と Grothendieck 圏])。錐の一意性(系 3.5[三角圏とホモトピー圏の三角構造])から で、。よって充満三角部分圏で、その完全三角形は の完全三角形なので、包含と の合成は三角関手である。1 によりこの合成は充満忠実で、補題 5.2 により任意の は擬同型 をもち、 で だから本質的全射である。定理 6.2[圏・関手・自然変換] により圏同値である。
証明(系 5.4)
包含は擬同型を擬同型に送るので、定理 4.3 の 2 により関手 が誘導される。 について擬同型 (補題 5.2)をとると、可換図式
( は外側の二つを結ぶ)の矢印はすべて全単射である(定理 5.3 の 1 と、 が同型であること)。よって は Hom の全単射を与える。 は鎖写像の小さい集合の商なので小さく(命題 2.3[圏・関手・自然変換])、 はこれと全単射にある。分数の類 そのものは大きい集合なので、 が文字どおり の元になるわけではない。その代わり、 は局所的に小さい圏 (Hom は上と同じ理由で小さい)と圏同値である(定理 5.3 の 2)。
証明(系 5.5)
Ext の定義で選んだ の入射分解 (定義 2.2[導来関手と δ 関手])は、増強複体が非輪状なので(補題 2.1[導来関手と δ 関手] の 1)鎖写像 として擬同型で、 で 。定理 5.3 の 1 から 。鎖写像 は、 への射 で を満たすもので、零ホモトピックなのは ()の形のものである(シフトの微分の符号は核と像を変えない)。これは複体 の 次コホモロジーで、定義 6.1[導来関手と δ 関手] の 1 の である。 についての自然性は、どちらも の射との合成で作用することから従う。
についての自然性も、射 の入射分解への持ち上げ(定理 3.1[導来関手と δ 関手])を使えば同様に確かめられます。こうして Ext は「導来圏の中で をずらしたものへの Hom」になり、Ext の長完全列は 補題 4.4 の完全三角形に を施した長完全列として得られます。
注意 5.6(Yoneda 積と合成)
、 という合成は、系 5.5 により Ext の積 を与えます。これは長さ と の完全列をつなぐ Yoneda 積と一致し、また Yoneda の意味の (長さ の拡大の同値類)は と一致します( の場合は Ext と拡大の章で扱います)。このテーマでは使わないので証明は扱いません。文献は Weibel の第 3 章 §4・第 10 章 §7、Kashiwara–Schapira の第 13 章です。
6. 全導来関手
Section titled “6. 全導来関手”加法関手 は三角関手 を誘導します(命題 5.9[三角圏とホモトピー圏の三角構造]。下に有界な複体は下に有界な複体に移ります)。しかし は一般に擬同型を保たないので、 上の関手にはなりません。ここで求めたいのは、 を擬同型について修正して、 上に降ろしたものです。そこで「 上の関手で に最も近いもの」を、Kan 拡張と前層の圏 の Kan 拡張として定義します。
をアーベル圏、 を加法関手とし、、 を局所化関手とする。関手 と自然変換 の組が、 の に沿った左 Kan 拡張(定義 3.1[Kan 拡張と前層の圏] の 1)であるとき、 を の全右導来関手という。すなわち、任意の関手 と自然変換 に対し、 となる がただ一つ存在する。
全右導来関手は普遍射なので、存在すれば自然同型を除いて一意です(命題 4.6[米田の補題と表現可能関手])。 は小さい圏ではなく、Kan 拡張の各点の公式(定理 3.3[Kan 拡張と前層の圏])はそのままでは使えません。存在は入射複体を使って直接示します。
が十分に入射対象をもつとし、 を加法関手とする。各 に、擬同型 ( は各項が入射対象の下に有界な複体)を一つずつ選ぶ(補題 5.2)。
- の射 に、 を満たすただ一つの をとり、、、 と定めると、 は全右導来関手である。
- なら は同型である。
- は三角関手である。
証明(定理 6.2)
1. の存在と一意性は 定理 5.3 の 1( の全単射)による。一意性から 、 で、 は関手である( は関手)。 の自然性: の射 について、()は を満たし、両辺は から への の射なので、再び 定理 5.3 の 1 の単射性から 。 を施して で送ると 。
普遍性: と が与えられたとする。 は同型なので
と定める。 の自然性を に使うと なので 。 の自然性: なので、 の自然性を に使って
一意性: も を満たすとする。2 により は同型なので は決まり、 の自然性を同型 に使えば も決まる。
2. なら は の対象の間の射で、 は同型なので、定理 5.3 の 2(充満忠実な関手は同型を反映する。補題 4.6[圏・関手・自然変換])により の同型である。関手 は同型を保つので、 は同型である。
3. 加法性: は加法関手なので(命題 2.4) で、持ち上げの一意性から 。 と は加法的なので は加法関手である。シフトとの可換性: を を満たすただ一つの射とする( も入射複体)。逆向きも同様に持ち上がるので は の同型で、 は自然同型である(自然性は 1 と同じく持ち上げの一意性から)。
完全三角形を保つこと: の完全三角形は、鎖写像 の標準三角形 の像と同型なので、それについて示せばよい。 は を で満たすので、ホモトピーをとって 補題 5.2[三角圏とホモトピー圏の三角構造] を使うと、鎖写像 で が標準三角形の射になるものがある。コホモロジーの長完全列(命題 5.6[三角圏とホモトピー圏の三角構造] の 1)と五項補題(系 7.2[加法圏とアーベル圏])から は擬同型で、 は入射複体である(定理 5.3 の 2 の証明)。 を で定めると の同型である(2 と同じ理由)。持ち上げの一意性から で 、(、 は の標準三角形の射)が成り立つ。実際、両辺を または と合成して で送ると一致し、定理 5.3 の 1 の単射性が使える。したがって は、三角形 から、 の標準三角形の による像への同型である(加法関手は写像錐を写像錐に、標準三角形を標準三角形に送る。命題 5.9[三角圏とホモトピー圏の三角構造])。後者は完全なので前者も完全である。
注意 6.3(Kan 拡張としての全導来関手)
定義 6.1 は Deligne が SGA 4 で与えた定式化です。 を「 を局所化に沿って左 Kan 拡張したもの」と見ると、右導来関手が左Kan 拡張であることに戸惑うかもしれません。これは、 が「近似の方向」を表しているためです。たとえば が左完全なら の は同型で、 は を高次の項で「補った」ものです。左導来関手 は双対的に右 Kan 拡張で定義されます。各点の公式は一般には成り立ちませんが、 を「 から出る擬同型 全体にわたる の Ind 対象」とみなす各点版の定式化もあります(Deligne)。上の証明は、入射複体が擬同型について「終対象」の役割を果たすので、その Ind 対象が実際の対象 で表されることを使ったものと読めます。
定理 6.2 の状況で、 について、 について自然な同型 がある。ここで右辺は 定義 5.1[導来関手と δ 関手] の右導来関手である。
証明(系 6.4)
を の定義で選んだ入射分解とする(定理 6.2 の と区別するため と書く)。系 5.5 の証明と同じく、鎖写像 は擬同型である。 を で定めると、定理 6.2 の 2 の証明と同じく の同型で、 はホモトピー同値、したがって擬同型である(命題 4.2[鎖複体とホモトピー圏] の 3)。よって ( は 上で定まる。定理 4.3 の 3)。自然性: について、 は の持ち上げ から作られ(定理 5.2[導来関手と δ 関手] の 1 によりその選び方によらない)、 と ()は、どちらも で送って と合成すると を与え( を使う)、 は同型なので の像が等しい。定理 5.3 の 1 の単射性から で等しい。 を施せば可換性が得られる。
こうして、ばらばらの関手 は一つの三角関手 のコホモロジーとして得られます。導来関手の長完全列は、補題 4.4 の完全三角形を三角関手 で送り、コホモロジー的関手 の長完全列(命題 4.2[三角圏とホモトピー圏の三角構造])をとったものです。 に適用すれば で、系 5.5 と合わせると Ext が二通りに導来圏で表されます。
が十分に入射対象をもつとし、 を加法関手、 を左完全関手とする。 が の入射対象を 非輪状対象(定義 5.4[導来関手と δ 関手])に送るなら、関手 の自然同型 がある。
証明(命題 6.5)
に使う擬同型を と書く。 について 、 で、比較の射 が同型であることを示す。
の錐 は下に有界な非輪状複体で(系 5.4[鎖複体とホモトピー圏])、各項 は 非輪状である。実際 は仮定から、入射対象 は 定理 5.2[導来関手と δ 関手] の 3 から 非輪状で、 は加法関手(同定理の 1)なので双積を双積に送る(命題 3.7[加法圏とアーベル圏])。補題 5.5[導来関手と δ 関手] により は非輪状である。加法関手は写像錐を保つので で、 は擬同型、 は同型である。
自然性: について、 で、 は を満たす。定理 5.3 の 1 の単射性から で で、 を施すと 。
注意 6.6(Grothendieck のスペクトル系列との関係)
命題 6.5 は、 をとる前の水準での合成公式です。右辺 のコホモロジーを から計算しようとすると、複体 の超コホモロジーのスペクトル系列が現れ、これが Grothendieck のスペクトル系列 です。導来圏の言葉では、合成公式そのものは等式で、スペクトル系列は「その等式をコホモロジーで読むための計算手段」という位置づけになります。スペクトル系列の構成と収束は、このテーマのスペクトル系列の 2 章で扱います(定理 5.1[Grothendieck のスペクトル系列と超コホモロジー])。
7. 大域次元 1 以下のアーベル圏
Section titled “7. 大域次元 1 以下のアーベル圏”証明(命題 7.1)
となる の個数についての帰納法で示す。個数が なら は擬同型で 。そうでないとき、 となる最大の を とする。 で なので、命題 6.2[鎖複体とホモトピー圏] により は擬同型で、。 は の部分複体で、商複体 との短完全列 がある。コホモロジーの長完全列(定理 3.1[鎖複体とホモトピー圏])と 命題 6.2[鎖複体とホモトピー圏]( で 、 で )から、 のコホモロジーは次数 だけにあり である。命題 4.5 をシフトして使うと である。
補題 4.4 から完全三角形 が得られる。帰納法の仮定から なので、 は成分
で決まる(双積への射は成分で決まり、シフトは Hom の同型を与え、最後は 系 5.5)。 なので で、大域次元が 以下なら射影次元はすべて 以下だから、命題 6.5[導来関手と δ 関手] によりこの Ext は である。よって で、命題 4.4[三角圏とホモトピー圏の三角構造] から となり、主張が従う。
例 7.2(体とアーベル群の場合)
(a) 体 上では、三角圏とホモトピー圏の三角構造 の例で見たとおり、複体はホモトピー圏ですでに と同型で、擬同型はすべて同型です。したがって は圏の同型で、 は有限個の次数だけが でない次数付きベクトル空間の圏と圏同値です。
(b) は十分に射影対象と入射対象をもち(命題 5.1[射影対象・入射対象と Grothendieck 圏])、任意のアーベル群は自由アーベル群からの全射を受け、その核は自由アーベル群の部分群なので自由です(補題 3.1[コホモロジーと双対性])。よって射影次元は 以下で、大域次元は 以下です。命題 7.1 により、コホモロジーが有界な複体はアーベル群のシフトの直和に同型です。ただし射は次数ごとの準同型の組だけではありません。たとえば は、 の間の準同型では見えない射です(例 4.6)。対象は「コホモロジーで分類」できても、圏としては次数付きアーベル群の圏と同値ではありません。
注意 7.3(非有界な複体と強化)
この記事では入射複体を下に有界な場合に限りました。非有界な複体では 補題 5.1 の帰納法が始められず、各項が入射的でも とは限りません。そこで「すべての非輪状複体 について 」を定義とする K 入射複体を使い、Grothendieck 圏では任意の複体が K 入射複体と擬同型であることを示します(Spaltenstein、Serpé)。これにより非有界な も定義できます。また、導来圏の錐が関手的でない問題(三角圏の章の注意)は、複体のなす dg 圏や安定 圏を使った強化で解消されます。どちらも高次圏論のテーマで扱う予定です。文献は Kashiwara–Schapira の第 14 章、Lurie『Higher Algebra』第 1 章です。
鎖写像 について、 で となるのは、擬同型 で が零ホモトピックになるものが存在するときであり、またそのときに限ることを示せ。さらに で、零ホモトピックでない鎖写像 で となる例を挙げよ。
解答
定理 2.3 の 3 を に使えば、 は「 で となる擬同型 がある」ことと同値です。
例: を、短完全列 を次数 に置いた複体とし、 とします。 は非輪状ですが可縮ではないので(鎖複体とホモトピー圏 の例)、 は零ホモトピックではありません。一方 は擬同型で なので、 です。実際 では です。
演習 8.2標準
短完全列 に 補題 4.4 を適用して得られる の完全三角形 について、 を示せ。さらに が の生成元であることを示せ。
解答
なら、命題 4.4[三角圏とホモトピー圏の三角構造] により は でレトラクション をもちます。命題 4.5 から ( は準同型)と書け、忠実性から ですが、 は解をもたないので矛盾です。よって です。系 5.5 により で、これは位数 の群です(導来関手と δ 関手 の Abel 群の Ext の計算)。 でない元は一つしかないので、 は生成元です。
- J.-L. Verdier, Des catégories dérivées des catégories abéliennes, Astérisque 239, Société Mathématique de France, 1996 — 導来圏と Verdier 商の原論文(1967 年の学位論文)。
- R. Hartshorne, Residues and Duality, Lecture Notes in Mathematics 20, Springer, 1966 — 第 I 章(導来圏と導来関手)。
- P. Gabriel, M. Zisman, Calculus of Fractions and Homotopy Theory, Ergebnisse der Mathematik 35, Springer, 1967 — 第 I 章(分数の圏)。
- C. A. Weibel, An Introduction to Homological Algebra, Cambridge Studies in Advanced Mathematics 38, Cambridge University Press, 1994 — 第 10 章。
- M. Kashiwara, P. Schapira, Categories and Sheaves, Grundlehren der mathematischen Wissenschaften 332, Springer, 2006 — 第 7 章(局所化)、第 10 章(三角圏と Verdier 商)、第 13 章(導来圏)。
- A. Neeman, Triangulated Categories, Annals of Mathematics Studies 148, Princeton University Press, 2001 — 第 2 章(Verdier 商)。
Appendix A: 分数の圏の構成
Section titled “Appendix A: 分数の圏の構成”この Appendix では 定理 2.3 を証明します。
証明(定理 2.3)
1. 対象 について、圏 を、対象は の射 の組 、 から への射は を満たす の射 として定める。 を元として含む宇宙 をとると(公理 2.2[圏・関手・自然変換])、 は について小さい(命題 2.3[圏・関手・自然変換])。 はフィルター圏(定義 6.1[極限と余極限])である。(i) がある(S1)。(ii) 、 について、(S2) を と に使うと ()となる 、 があり、 なので 、 は への射である。(iii) 平行な射 は を満たすので、(S3) から となる があり、 は から への射である。関手 、 について、命題 6.3[極限と余極限](宇宙 で適用する)の関係は 1 の そのものなので、 は同値関係で、類の集合はこの関手の余極限である。とくに なら で、 なら、ある について である。
2, 合成の well-defined 性. ()と ()について、、 を満たす組 を補完と呼ぶ。
(a) 補完によらない:二つの補完 、 について、(S2) を と に使って ()を得る。 なので、(S3) から となる がある。、 とおくと 、 なので 。
(b) 第 1 因子の代表によらない:1 の最後の注意から、 を ()に取り替えても変わらないことを示せばよい。 の補完 をとると、 は の補完で、どちらで計算しても である。(a) により主張が従う。
(c) 第 2 因子の代表によらない: を ()に取り替える。 の補完 に対し、(S2) を と に使って ()を得ると、 は の補完で()、合成は 。 なので 1 の注意から 。
2, 圏であること. 結合法則:()を加える。 の補完 と の補完 をとり、(S2) を と に使って ()を得る。 は の補完で()、 は の補完である()。どちらの順に合成しても になる。恒等射は で、 は の補完、 は の補完なので、単位法則が成り立つ。
2, Q と普遍性. は の補完なので で、 は関手である。()について、 は の逆射である。実際 (1 の注意で )、(補完 )。。 の射を同型に送る について、 は well-defined である:()に取り替えると、 は同型で、。補完 から なので は合成を保ち、。 なので、 を満たす関手はこれしかない。
3. は「 かつ となる がある」ことである。
4. は対象の上で恒等なので は単射。 について、成分 は についての自然性を満たし、 についての自然性 から逆射 についての自然性も従う。 の射は の形なので、 は自然変換 である。
5. (、)に (S2) を使うと、 となる ()と があり、。後半:3 の から (S3) で となる が得られ、逆に なら が同型なので 。
Appendix B: Verdier 商の TR3 と TR4
Section titled “Appendix B: Verdier 商の TR3 と TR4”この Appendix では 定理 3.1 の状況で、 と書きます。
証明(補題 8.4)
1: の完全三角形 ()と 、 に TR4(定義 2.2[三角圏とホモトピー圏の三角構造])を合成 について使うと、 が三角形の射になる と、完全三角形 が得られる。回転 が完全なので の錐は で、。2:合成 に TR4 を使うと、 が三角形の射になる と完全三角形 ()が得られ、。
証明(補題 8.5)
TR3 の主張は三角形の同型で移るので、完全三角形が の完全三角形 、 の像で、、 が の射で を満たす場合を示せばよい。定理 2.3 の 5 により 、(、 は の射)と書ける。(S2) を と に使うと、 となる 、 がある。すると
なので、5 の後半から となる がある。、、 とおくと、 で 、 で、 である。
の完全三角形 と、 の完全三角形 をとる。補題 8.4 の 2 から 、同じ補題の 1 から が三角形の射で 。合成 の成分はすべて に属するので、 で送ると三角形の同型になる。一方 は を満たすので、 の TR3 から三角形の射 がある。 で送った射と、上の同型の逆との合成
は から への三角形の射である。
証明(補題 8.6)
補題 8.5 と TR1・TR2 (a) により は三角圏の章の条件 (P) を満たすので、錐の一意性(系 3.5[三角圏とホモトピー圏の三角構造])が使える。
取り替えの原理. TR4 の結論は次の二つの取り替えで保たれる。(i) 与えられた 3 つの完全三角形を、最初の 2 項を固定した三角形の同型 などで取り替える:新しい三角形に対しては 、 が条件を満たす。たとえば 、、同様に 、 で、最後の三角形は によって元の三角形と同型である(第 3 の正方形は )。(ii) 合成可能な組 を、同型 で可換に結ばれた組 (、)に取り替える:三角形を同型で移せば、(i) と同じ計算で 、 が移る。
帰着. 、 を の射とする。(、、)、(、、)と書くと、同型 によって は と可換に結ばれる。(ii) により について示せばよい。、、 の の完全三角形の像は完全三角形で、錐の一意性から与えられた三角形と (i) の形の同型で結ばれるので、(i) によりそれらの像について示せばよい。 の TR4 で得られる 、 と完全三角形を で送れば、 は三角関手なのでそれが求めるものである。
執筆: Claude Code(Opus 5.5)、Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 3 回(Claude Code)・最終 2026-10-12
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