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ホモトピー群とファイブレーション:長完全列・Hopf ファイブレーションから π₃(SU(2)) = ℤ へ

対象読者: 本テーマ第 1〜3 章の基本群、特異ホモロジー、写像度を学んだ人。高次ホモトピー群やファイブレーションは仮定せず、定義から説明します。

前提となる記事:基本群と被覆空間:ループの代数で穴を数え、π₁(S¹)=ℤ・van Kampen・Galois 対応まで、特異ホモロジー:連続写像の単体で穴を数え、ホモトピー不変性・切除・Mayer–Vietoris を証明する、胞体ホモロジーと写像度:CW 複体で計算し、Brouwer の不動点定理と Lefschetz の不動点定理を証明する

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円周を空間の中に描く写像を変形で分類したものが基本群でした。この記事では、円周の代わりに球面を空間に描き、変形で分類します。これがホモトピー群です。球面の「穴」を数えるこの道具で、S3S^3 から S2S^2 への不思議な写像(Hopf 写像)を調べ、物理のゲージ理論で出てくる整数がなぜ整数になるのかを説明します。

  • nn 次元の立方体の境界を基点に送る写像のホモトピー類として、nn 次ホモトピー群 πn(X,x0)\pi_n(X,x_0) を定義します。n≥2n\ge2 では可換群です(命題 2.4)。
  • 部分空間の対には相対ホモトピー群と長完全列があり(定理 3.3)、ファイブレーション F→E→BF\to E\to B では πn(F)→πn(E)→πn(B)→πn−1(F)→⋯\pi_n(F)\to\pi_n(E)\to\pi_n(B)\to\pi_{n-1}(F)\to\cdots が完全です(定理 3.7)。局所自明なファイバー束(各点の近くで「底空間×ファイバー」の形をしている空間)はファイブレーションです(命題 3.6)。
  • 単体近似から k<nk<n で πk(Sn)=0\pi_k(S^n)=0(命題 2.6)。Hopf ファイブレーション S1→S3→S2S^1\to S^3\to S^2 の長完全列から π2(S2)≅Z\pi_2(S^2)\cong\mathbb{Z}、πn(S3)≅πn(S2)\pi_n(S^3)\cong\pi_n(S^2) (n≥3n\ge3) が出ます(定理 4.3)。
  • 写像度は πn(Sn)→Z\pi_n(S^n)\to\mathbb{Z} の全射準同型です。次章の Hurewicz の定理(ホモトピー群とホモロジー群を結びつける定理)から単射性も従い、π3(SU(2))=π3(S3)≅Z\pi_3(SU(2))=\pi_3(S^3)\cong\mathbb{Z} です(定理 5.3)。
  • 滑らかな g:S3→SU(2)g:S^3\to SU(2) の写像度は 124π2∫tr⁡(g−1dg)3\frac{1}{24\pi^2}\int\operatorname{tr}(g^{-1}dg)^3 で与えられ(例 5.5)、これがゲージ理論のインスタントン数が整数になる理由です。
  • ホモトピー群をすべて同型に写す弱ホモトピー同値を導入し、総空間が弱可縮な主 GG 被覆の底空間(離散群の分類空間 BGBG)では π1=G\pi_1=G、高次は 00 であることを示します(命題 6.5)。RP∞\mathbb{R}P^\infty は B(Z/2)B(\mathbb{Z}/2) です。

基本群はループ(円周からの写像)を変形で分類しました。同じことを球面 SnS^n からの写像で行うのが高次ホモトピー群です。ホモロジーとの違いは、写像そのものを分類する点にあります。そのため計算は格段に難しく、πk(Sn)\pi_k(S^n) は今も全貌が分かっていません。一方で、写像の分類はそのまま物理の量子数になります。

たとえば 4 次元ユークリッド空間上の SU(2)SU(2) ゲージ場で、作用が有限な配位は、無限遠の 3 次元球面上でゲージ変換 g:S3→SU(2)g:S^3\to SU(2) に漸近します。gg のホモトピー類、すなわち π3(SU(2))\pi_3(SU(2)) の元が配位のトポロジカルな種類(インスタントン数)を決めます。π3(SU(2))≅Z\pi_3(SU(2))\cong\mathbb{Z} であることが、この量子数が整数であることの数学的な根拠です。さらに π4(SU(2))≅Z/2\pi_4(SU(2))\cong\mathbb{Z}/2 という事実が Witten の SU(2)SU(2) アノマリーの背景にあります。

計算の主な道具はファイブレーションの長完全列です。S3S^3 は円周 S1S^1 を「ファイバー」として S2S^2 の上に並べたもの(Hopf ファイブレーション)とみなせ、三つの空間のホモトピー群が一本の完全列で結ばれます。

I=[0,1]I=[0,1]、InI^n を nn 次元立方体、∂In\partial I^n をその境界とします。

定義 2.1(ホモトピー群)↗

n≥1n\ge1 とし、πn(X,x0)\pi_n(X,x_0) を、連続写像 f:(In,∂In)→(X,x0)f:(I^n,\partial I^n)\to(X,x_0)(境界を x0x_0 に送る写像)の、境界を x0x_0 に送ったままのホモトピーによる同値類の集合とする。和を

(f+g)(s1,…,sn)={f(2s1,s2,…,sn)(s1≤12)g(2s1−1,s2,…,sn)(s1≥12)(f+g)(s_1,\dots,s_n)=\begin{cases}f(2s_1,s_2,\dots,s_n)&(s_1\le\tfrac12)\\ g(2s_1-1,s_2,\dots,s_n)&(s_1\ge\tfrac12)\end{cases}

で定める。π0(X,x0)\pi_0(X,x_0) は道連結成分の集合(x0x_0 の成分を基点とする)とする。

In/∂In≅SnI^n/\partial I^n\cong S^n なので、πn(X,x0)\pi_n(X,x_0) は基点付き写像 (Sn,s0)→(X,x0)(S^n,s_0)\to(X,x_0) の基点付きホモトピー類の集合とも見なせます。n=1n=1 では基本群(定義 2.3[基本群と被覆空間])です。

基点付き空間どうしの基本的な二つの操作を定義しておきます。和の定義に現れる「立方体を二つに分けて別々の写像を載せる」操作は、一点和を経由する写像として書けます(命題 5.1 の証明)。

定義 2.2(一点和(楔和)とスマッシュ積)↗

基点付き空間 (X,x0)(X,x_0)、(Y,y0)(Y,y_0) に対し、直和 X⊔YX\sqcup Y で x0x_0 と y0y_0 を同一視した商空間を一点和(楔和、ウェッジ和)といい X∨YX\vee Y と書く。X∨YX\vee Y は積 X×YX\times Y の部分空間 X×{y0}∪{x0}×YX\times\{y_0\}\cup\{x_0\}\times Y と同一視する。X×YX\times Y でこの部分空間を一点に潰した商空間

X∧Y=(X×Y)/(X∨Y)X\wedge Y=(X\times Y)/(X\vee Y)

をスマッシュ積といい、潰した点を基点とする。

X,YX,Y がコンパクト Hausdorff なら、X⊔Y→X×{y0}∪{x0}×YX\sqcup Y\to X\times\{y_0\}\cup\{x_0\}\times Y は閉な連続全射なので(閉集合はコンパクト、その像はコンパクトで Hausdorff 空間の中で閉)、二つの見方の位相は一致します(命題 4.3[積位相・商位相と Tychonoff の定理])。

次の命題の方針は二段構えです。積から軸を潰したものから基点を除くと Rm×Rn\mathbb{R}^m\times\mathbb{R}^n になること、そして全体がその一点コンパクト化になることを見ます。ホモトピー群の議論から少し離れた位相の確認なので、結果だけ使うなら証明は読み飛ばせます。

命題 2.3(球面のスマッシュ積)✓

m,n≥1m,n\ge1 について、Sm∧SnS^m\wedge S^n は Sm+nS^{m+n} と同相である。

証明(命題 2.3)

X=SmX=S^m、Y=SnY=S^n とし、基点を北極に取ります。立体射影(補題 5.2[微分可能多様体の定義])により X∖{x0}≅RmX\setminus\{x_0\}\cong\mathbb{R}^m、Y∖{y0}≅RnY\setminus\{y_0\}\cong\mathbb{R}^n です。q:X×Y→X∧Yq:X\times Y\to X\wedge Y を商写像、∗* を基点とします。

開部分集合. O=(X∖{x0})×(Y∖{y0})O=(X\setminus\{x_0\})\times(Y\setminus\{y_0\}) は X×YX\times Y の開集合で、X∨YX\vee Y と交わらないので q−1(q(O))=Oq^{-1}(q(O))=O です。よって q(O)=X∧Y∖{∗}q(O)=X\wedge Y\setminus\{*\} は開集合で、OO の開部分集合 VV についても q−1(q(V))=Vq^{-1}(q(V))=V なので q(V)q(V) は開です。q∣Oq|_O は単射で連続かつ開なので、同相 O≅X∧Y∖{∗}O\cong X\wedge Y\setminus\{*\} を与えます。したがって X∧Y∖{∗}≅Rm×Rn=Rm+nX\wedge Y\setminus\{*\}\cong\mathbb{R}^m\times\mathbb{R}^n=\mathbb{R}^{m+n} です。

コンパクト Hausdorff. X∧YX\wedge Y はコンパクト空間 X×YX\times Y の連続像なのでコンパクトです(定理 6.1[コンパクト性])。X∧Y∖{∗}X\wedge Y\setminus\{*\} の 2 点は、その開部分集合(Rm+n\mathbb{R}^{m+n} と同相で Hausdorff)の中で分離できます。p=q(x,y)≠∗p=q(x,y)\ne* と ∗* を分離するには、x,yx,y のコンパクトな近傍 K⊂X∖{x0}K\subset X\setminus\{x_0\}、L⊂Y∖{y0}L\subset Y\setminus\{y_0\}(Rm\mathbb{R}^m, Rn\mathbb{R}^n の閉球の像)を取ります。K×LK\times L はコンパクトで(Tychonoff の定理 定理 6.2[積位相・商位相と Tychonoff の定理])、X∨YX\vee Y と交わらないので、q(int⁡K×int⁡L)q(\operatorname{int}K\times\operatorname{int}L) は pp の開近傍、X∧Y∖q(K×L)X\wedge Y\setminus q(K\times L) は ∗* の開近傍(逆像 X×Y∖K×LX\times Y\setminus K\times L が開)で、互いに素です。

結論. 一点コンパクト化の一意性(定理 3.2[局所コンパクト空間] の 4)を、Rm+n→X∧Y∖{∗}\mathbb{R}^{m+n}\to X\wedge Y\setminus\{*\} と、立体射影の逆 Rm+n→Sm+n∖{北極}\mathbb{R}^{m+n}\to S^{m+n}\setminus\{\text{北極}\} の両方に適用すると、X∧YX\wedge Y と Sm+nS^{m+n} はどちらも Rm+n\mathbb{R}^{m+n} の一点コンパクト化と同相です。

一点和は「基点だけを共有して並べる」、スマッシュ積は「積から座標軸を潰す」操作です。Rm×Rn=Rm+n\mathbb{R}^m\times\mathbb{R}^n=\mathbb{R}^{m+n} の一点コンパクト化(無限遠に点を 1 つ足して閉じた空間にすること)が上の命題の中身です。S1∧XS^1\wedge X は基点付きの(簡約)懸垂と呼ばれ、命題から S1∧Sn≅Sn+1S^1\wedge S^n\cong S^{n+1} です。

命題 2.4(ホモトピー群の基本性質)✓

  1. πn(X,x0)\pi_n(X,x_0) は上の和で群になる。単位元は定値写像、ff の逆元は −f(s1,… )=f(1−s1,… )-f(s_1,\dots)=f(1-s_1,\dots)。
  2. n≥2n\ge2 なら πn(X,x0)\pi_n(X,x_0) は可換である。
  3. 基点付き写像 φ:(X,x0)→(Y,y0)\varphi:(X,x_0)\to(Y,y_0) は準同型 φ∗[f]=[φf]\varphi_*[f]=[\varphi f] を誘導し、基点付きホモトピックな写像は同じ準同型を誘導する。また πn(X×Y,(x0,y0))≅πn(X,x0)×πn(Y,y0)\pi_n(X\times Y,(x_0,y_0))\cong\pi_n(X,x_0)\times\pi_n(Y,y_0)。
証明(命題 2.4)

(1) 第 1 座標 s1s_1 だけを使った操作なので、命題 2.2[基本群と被覆空間] の基本群の証明(区間の再パラメータ化)が、残りの座標をパラメータとしてそのまま通ります。

(2) f+gf+g は、InI^n を s1s_1 方向に二等分した左半分で ff、右半分で gg を行う写像です。まず ff と gg の定義域を、それぞれ左右の半分の中の小さな立方体に縮め、外側を x0x_0 に送るように変形します(境界は x0x_0 に送られるので連続)。n≥2n\ge2 なら、第 2 座標の方向に余地があるので、二つの小さな立方体を、ff の方を上へ、gg の方を下へ動かしてから左右を入れ替え、元の高さに戻せます(図)。この変形の間、立方体の外は x0x_0 に送られているので、境界条件は保たれます。最後に立方体を元の大きさに戻すと g+fg+f になります。

(3) φ(f+g)=φf+φg\varphi(f+g)=\varphi f+\varphi g と、ホモトピー HH に対する φ∘H\varphi\circ H から。積は成分ごとの写像 (f1,f2)(f_1,f_2) が全単射を与え、和も成分ごとです。

fgfggfgf
n ≥ 2 で f+g ≃ g+f となる理由。灰色の部分は基点に送られる。小さな箱を縦方向にずらせば、互いにぶつからずに入れ替えられる。

補題 2.5(零ホモトピーと円板への拡張)✓

基点付き写像 f:(Sn,s0)→(X,x0)f:(S^n,s_0)\to(X,x_0) について、次は同値である。(i) πn(X,x0)\pi_n(X,x_0) で [f]=0[f]=0。(ii) ff は Dn+1D^{n+1} 上の連続写像に拡張できる。(iii) ff は(基点を固定しない)ホモトピーで定値写像に変形できる。

証明(補題 2.5)

(i)⇒(iii) は明らか。(iii)⇒(ii): H:Sn×I→XH:S^n\times I\to X、H0=fH_0=f、H1≡cH_1\equiv c とします。F(rx)=H(x,1−r)F(rx)=H(x,1-r) (x∈Snx\in S^n, 0≤r≤10\le r\le1) は r=0r=0 で cc なので Dn+1D^{n+1} 上 well-defined で、Sn×I→Dn+1S^n\times I\to D^{n+1}, (x,t)↦(1−t)x(x,t)\mapsto(1-t)x はコンパクト空間から Hausdorff 空間への閉な全射、したがって商写像なので、FF は連続です。(ii)⇒(i): 拡張 FF に対し G(x,t)=F((1−t)x+ts0)G(x,t)=F((1-t)x+ts_0) は G0=fG_0=f、G1≡F(s0)=x0G_1\equiv F(s_0)=x_0、G(s0,t)=x0G(s_0,t)=x_0 を満たす基点付きホモトピーです。

命題 2.6(球面の低次ホモトピー群)✓

0≤k<n0\le k<n なら πk(Sn)=0\pi_k(S^n)=0。

証明(命題 2.6)

k=0k=0 は SnS^n の道連結性(n≥1n\ge1)。k≥1k\ge1 とします。SmS^m は重心からの放射射影で (m+1)(m+1) 単体の境界 ∂Δm+1\partial\Delta^{m+1} と同相なので、Sk=∣K∣S^k=|K|、Sn=∣L∣S^n=|L| と有限単体複体で表します。f:Sk→Snf:S^k\to S^n に 補題 7.4[胞体ホモロジーと写像度] を使うと、単体写像 gg で f≃gf\simeq g(直線ホモトピー)となるものがあります。gg は kk 次元以下の単体を kk 次元以下の単体に写すので、LL の nn 単体の内部の点 pp を取りません。Sn∖{p}S^n\setminus\{p\} は Rn\mathbb{R}^n と同相で可縮なので gg は定値写像にホモトピック、したがって ff も(基点を固定しない意味で)そうです。補題 2.5 から [f]=0[f]=0。

特に SnS^n (n≥2n\ge2) は単連結です(命題 6.3[基本群と被覆空間] の別証明)。

3. 長完全列とファイブレーション

Section titled “3. 長完全列とファイブレーション”

In−1⊂InI^{n-1}\subset I^n を面 {sn=0}\{s_n=0\}、Jn−1J^{n-1} を ∂In\partial I^n からこの面の内部を除いた閉集合(残りの面の合併)とします。

定義 3.1(相対ホモトピー群)↗

x0∈A⊆Xx_0\in A\subseteq X、n≥1n\ge1 とし、πn(X,A,x0)\pi_n(X,A,x_0) を写像 f:(In,∂In,Jn−1)→(X,A,x0)f:(I^n,\partial I^n,J^{n-1})\to(X,A,x_0)(境界を AA に、Jn−1J^{n-1} を x0x_0 に送る)の、この条件を保つホモトピーによる類の集合とする。n≥2n\ge2 では 定義 2.1 と同じ式(第 1 座標で連結)で群になる。∂[f]=[f∣In−1]∈πn−1(A,x0)\partial[f]=[f|_{I^{n-1}}]\in\pi_{n-1}(A,x_0) と定める。

∂\partial は well-defined な写像で、n≥2n\ge2 なら準同型です。πn(X,x0)=πn(X,{x0},x0)\pi_n(X,x_0)=\pi_n(X,\{x_0\},x_0) なので、包含は j∗:πn(X,x0)→πn(X,A,x0)j_*:\pi_n(X,x_0)\to\pi_n(X,A,x_0) を与えます。

次の補題は、πn(X,A,x0)\pi_n(X,A,x_0) の元が 00 であることを、「ホモトピーで動かして像を AA の中に押し込めるか」という見やすい形に言い換えます。長完全列の証明で何度も使います。

補題 3.2(圧縮の判定法)✓

f:(In,∂In,Jn−1)→(X,A,x0)f:(I^n,\partial I^n,J^{n-1})\to(X,A,x_0) について、πn(X,A,x0)\pi_n(X,A,x_0) で [f]=0[f]=0 であることと、ff が ∂In\partial I^n 上で固定したホモトピーで像が AA に入る写像に変形できることは同値である。

証明(補題 3.2)

(⇐\Leftarrow) 像が AA に入る gg に対し gt(s)=g(s1,…,sn−1,t+(1−t)sn)g_t(s)=g(s_1,\dots,s_{n-1},t+(1-t)s_n) は条件を保つホモトピーで(像は AA のまま、Jn−1J^{n-1} の点は Jn−1J^{n-1} の点に移る)、g1g_1 は上面 {sn=1}⊆Jn−1\{s_n=1\}\subseteq J^{n-1} を経由するので定値 x0x_0 です。

(⇒\Rightarrow) F:In×I→XF:I^n\times I\to X を条件を保つ ff から定値写像へのホモトピーとします。FF は Π=In−1×I∪Jn−1×I∪In×{1}\Pi=I^{n-1}\times I\cup J^{n-1}\times I\cup I^n\times\{1\} を AA に送ります。In×{0}I^n\times\{0\} の中心の真下の点 q=(c,−1)q=(c,-1) から放射状に見ると、x∈Inx\in I^n に対し qq から (x,0)(x,0) を通る半直線が箱 In×II^n\times I から出る点 ϕ1(x)∈Π\phi_1(x)\in\Pi が定まり、ϕ1:In→Π\phi_1:I^n\to\Pi は同相で、x∈∂Inx\in\partial I^n では ϕ1(x)=(x,0)\phi_1(x)=(x,0) です。ϕt(x)=(1−t)(x,0)+tϕ1(x)\phi_t(x)=(1-t)(x,0)+t\phi_1(x) とすれば、F∘ϕtF\circ\phi_t は ∂In\partial I^n 上で ff に固定された ff から F∘ϕ1F\circ\phi_1(像は AA)へのホモトピーです。

定理 3.3(対のホモトピー長完全列)✓

x0∈A⊆Xx_0\in A\subseteq X に対し、列

⋯→πn(A,x0)→i∗πn(X,x0)→j∗πn(X,A,x0)→∂πn−1(A,x0)→⋯→π0(X,x0)\cdots\to\pi_n(A,x_0)\xrightarrow{i_*}\pi_n(X,x_0)\xrightarrow{j_*}\pi_n(X,A,x_0)\xrightarrow{\partial}\pi_{n-1}(A,x_0)\to\cdots\to\pi_0(X,x_0)

は完全である(π1(X,A)\pi_1(X,A) 以下では、基点付き集合の意味で「像=定値写像の類の逆像」)。

証明(定理 3.3)

πn(X)\pi_n(X) での完全性. j∗i∗=0j_*i_*=0 は 補題 3.2 の (⇐\Leftarrow)。j∗[f]=0j_*[f]=0 なら (⇒\Rightarrow) により ff は ∂In\partial I^n を固定したまま AA に入る写像 gg にホモトピックで、[f]=i∗[g][f]=i_*[g]。

πn(X,A)\pi_n(X,A) での完全性. ∂j∗=0\partial j_*=0 は f∣In−1f|_{I^{n-1}} が定値だから。∂[f]=0\partial[f]=0 なら、AA の中の基点付きホモトピー H:In−1×I→AH:I^{n-1}\times I\to A で H0=f∣In−1H_0=f|_{I^{n-1}}、H1≡x0H_1\equiv x_0 となるものがあります。InI^n の下に In−1×[−1,0]I^{n-1}\times[-1,0] を継ぎ足し、そこでは (s′,sn)↦H(s′,−sn)(s',s_n)\mapsto H(s',-s_n) とすると、In−1×[−1,1]I^{n-1}\times[-1,1] 上の写像は境界をすべて x0x_0 に送ります(下面は H1H_1、側面は基点付きホモトピー)。縦に縮めて InI^n 上の写像 gg と見ると [g]∈πn(X)[g]\in\pi_n(X) で、継ぎ足した部分を下から少しずつ削るホモトピー(削った後の下面は HH の途中、すなわち AA に入る)によって j∗[g]=[f]j_*[g]=[f]。

πn−1(A)\pi_{n-1}(A) での完全性. i∗∂[f]=0i_*\partial[f]=0: ff 自身が XX の中で f∣In−1f|_{I^{n-1}} から上面(定値 x0x_0)へのホモトピーです。i∗[g]=0i_*[g]=0 なら、XX の中の基点付きホモトピー H:In−1×I→XH:I^{n-1}\times I\to X, H0=gH_0=g, H1≡x0H_1\equiv x_0 を InI^n 上の写像と見ると、∂In\partial I^n を AA に、Jn−1J^{n-1} を x0x_0 に送るので πn(X,A)\pi_n(X,A) の元で、∂[H]=[g]\partial[H]=[g]。

定義 3.4(Serre ファイブレーション)↗

連続写像 p:E→Bp:E\to B が Serre ファイブレーションであるとは、任意の k≥0k\ge0、任意の G:Ik×I→BG:I^k\times I\to B と、Ik×{0}∪∂Ik×II^k\times\{0\}\cup\partial I^k\times I 上の連続写像 G~0\tilde G_0 で pG~0=Gp\tilde G_0=G を満たすものに対し、G~0\tilde G_0 を延長する G~:Ik×I→E\tilde G:I^k\times I\to E で pG~=Gp\tilde G=G となるものが存在することをいう。b0∈Bb_0\in B の上の F=p−1(b0)F=p^{-1}(b_0) をファイバーという。

定義 3.5(ファイバー束)↗

連続な全射 p:E→Bp:E\to B がファイバー FF のファイバー束であるとは、各 b∈Bb\in B に開近傍 UU と同相写像 h:p−1(U)→U×Fh:p^{-1}(U)\to U\times F で pr1∘h=p\mathrm{pr}_1\circ h=p を満たすもの(局所自明化)が存在することをいう。

被覆写像(定義 3.1[基本群と被覆空間])は離散空間をファイバーとするファイバー束です。

次の命題の証明の方針は、底空間の側を十分細かく区切ると、各小片は局所自明化の中に入るので、そこでの持ち上げは「ファイバー方向の成分を延ばすだけ」で作れる、というものです。それを小さな立方体の面の次元の低い順に貼り合わせます。

命題 3.6(ファイバー束はファイブレーション)✓

ファイバー束は Serre ファイブレーションである。

証明(命題 3.6)

まず、立方体 CC について C×IC\times I から C×{0}∪∂C×IC\times\{0\}\cup\partial C\times I へのレトラクション rr があります(C×IC\times I の上方の点 (c,2)(c,2) から放射状に射影する)。

G:Ik×I→BG:I^k\times I\to B と G~0\tilde G_0 が与えられたとします。{G−1(U)}\{G^{-1}(U)\}(UU は局所自明化の開集合)は Ik×II^k\times I の開被覆なので、Lebesgue 数(補題 3.4[基本群と被覆空間])を取り、IkI^k を小さな立方体に、II を区間 [tj,tj+1][t_j,t_{j+1}] に分割して、各 C×[tj,tj+1]C\times[t_j,t_{j+1}] が一つの UU の中に写るようにします。jj について順に、Ik×[tj,tj+1]I^k\times[t_j,t_{j+1}] 上の持ち上げを作ります。IkI^k の分割に現れる立方体の面(頂点、辺、…)を次元の低い順に処理し、mm 次元の面 ee については、e×{tj}∪∂e×[tj,tj+1]e\times\{t_j\}\cup\partial e\times[t_j,t_{j+1}] 上で持ち上げが既に決まっているとします(∂Ik\partial I^k 上の面では、与えられた G~0\tilde G_0 を使う)。e×[tj,tj+1]e\times[t_j,t_{j+1}] は自明化 h:p−1(U)≅U×Fh:p^{-1}(U)\cong U\times F の中に写るので、既知の持ち上げの FF 成分 ϕ\phi を rr で延ばし、G~=h−1(G,ϕ∘r)\tilde G=h^{-1}(G,\phi\circ r) と置けば e×[tj,tj+1]e\times[t_j,t_{j+1}] 上の持ち上げになり、既知の部分と一致します。面の上で一致するので、貼り合わせ補題 補題 7.2[連結性] により連続な持ち上げが得られます。

定理 3.7(ファイブレーションの長完全列)✓

p:E→Bp:E\to B を Serre ファイブレーション、b0∈Bb_0\in B、F=p−1(b0)F=p^{-1}(b_0)、x0∈Fx_0\in F とする。n≥1n\ge1 で p∗:πn(E,F,x0)→πn(B,b0)p_*:\pi_n(E,F,x_0)\to\pi_n(B,b_0) は全単射(n≥2n\ge2 で同型)であり、したがって

⋯→πn(F,x0)→i∗πn(E,x0)→p∗πn(B,b0)→∂πn−1(F,x0)→⋯→π0(E,x0)\cdots\to\pi_n(F,x_0)\xrightarrow{i_*}\pi_n(E,x_0)\xrightarrow{p_*}\pi_n(B,b_0)\xrightarrow{\partial}\pi_{n-1}(F,x_0)\to\cdots\to\pi_0(E,x_0)

は完全である。

証明(定理 3.7)

全射. g:(In,∂In)→(B,b0)g:(I^n,\partial I^n)\to(B,b_0) を、sns_n を(逆向きの)時間とする In−1I^{n-1} のホモトピーと見ます。上面 {sn=1}\{s_n=1\} と側面の合併(=Jn−1=J^{n-1})で持ち上げを定値 x0x_0 と指定すれば(gg はそこで b0b_0)、定義 3.4 から持ち上げ g~:In→E\tilde g:I^n\to E があり、∂In\partial I^n は p−1(b0)=Fp^{-1}(b_0)=F に、Jn−1J^{n-1} は x0x_0 に写ります。p∗[g~]=[g]p_*[\tilde g]=[g]。

単射. f0,f1∈πn(E,F,x0)f_0,f_1\in\pi_n(E,F,x_0) で pf0pf_0 と pf1pf_1 が基点付きホモトピー G:In×I→BG:I^n\times I\to B で結ばれるとします。In×{0}I^n\times\{0\} に f0f_0、In×{1}I^n\times\{1\} に f1f_1、Jn−1×IJ^{n-1}\times I に x0x_0 を指定します。この指定域は In×II^n\times I の境界から面 In−1×II^{n-1}\times I の内部を除いたもので、sns_n を時間、In−1×II^{n-1}\times I(s1,…,sn−1s_1,\dots,s_{n-1} と tt)を立方体と見ると、定義 3.4 の In×{0}∪∂In×II^{n}\times\{0\}\cup\partial I^n\times I の形です(時間を逆向きに読む)。持ち上げ G~\tilde G は面 In−1×II^{n-1}\times I を p−1(b0)=Fp^{-1}(b_0)=F に送るので、f0f_0 と f1f_1 の πn(E,F,x0)\pi_n(E,F,x_0) でのホモトピーです。

最後に、対 (E,F)(E,F) の長完全列 定理 3.3 で πn(E,F)\pi_n(E,F) を p∗p_* により πn(B)\pi_n(B) に置き換えます(πn(E)→πn(E,F)→πn(B)\pi_n(E)\to\pi_n(E,F)\to\pi_n(B) の合成は p∗p_*)。

系 3.8(被覆空間の高次ホモトピー群)✓

被覆写像 p:X~→Xp:\tilde X\to X は n≥2n\ge2 で同型 p∗:πn(X~)→πn(X)p_*:\pi_n(\tilde X)\to\pi_n(X) を誘導する。特に πn(S1)=0\pi_n(S^1)=0 (n≥2n\ge2)、πn(RPm)≅πn(Sm)\pi_n(\mathbb{R}P^m)\cong\pi_n(S^m) (n≥2n\ge2)、πn(SO(3))≅πn(SU(2))\pi_n(SO(3))\cong\pi_n(SU(2)) (n≥2n\ge2)。

証明(系 3.8)

ファイバーは離散なので πn(F)=0\pi_n(F)=0 (n≥1n\ge1)。命題 3.6 と 定理 3.7 から。R→S1\mathbb{R}\to S^1 で R\mathbb{R} は可縮、Sm→RPmS^m\to\mathbb{R}P^m、SU(2)→SO(3)SU(2)\to SO(3)(定理 8.2[行列 Lie 群と指数写像])は被覆です。

S3={(z1,z2)∈C2:∣z1∣2+∣z2∣2=1}S^3=\{(z_1,z_2)\in\mathbb{C}^2:|z_1|^2+|z_2|^2=1\} とし、S2S^2 を Riemann 球面 C∪{∞}\mathbb{C}\cup\{\infty\} と同一視します。

定義 4.1(Hopf 写像)↗

p:S3→S2p:S^3\to S^2 を p(z1,z2)=z1/z2p(z_1,z_2)=z_1/z_2(z2=0z_2=0 なら ∞\infty)で定める。

p(z1,z2)=p(w1,w2)p(z_1,z_2)=p(w_1,w_2) となるのは (w1,w2)=λ(z1,z2)(w_1,w_2)=\lambda(z_1,z_2)(∣λ∣=1|\lambda|=1)のときなので、各ファイバーは円周 S1S^1 です。S3S^3 は互いに絡み合った円周たちで埋め尽くされています。

命題 4.2(Hopf ファイブレーション)✓

p:S3→S2p:S^3\to S^2 はファイバー S1S^1 のファイバー束である。

証明(命題 4.2)

U2=S2∖{∞}=CU_2=S^2\setminus\{\infty\}=\mathbb{C} 上で h(z1,z2)=(z1/z2, z2/∣z2∣)∈C×S1h(z_1,z_2)=(z_1/z_2,\ z_2/|z_2|)\in\mathbb{C}\times S^1 とすると、逆写像は (w,λ)↦(wλ,λ)/1+∣w∣2(w,\lambda)\mapsto(w\lambda,\lambda)/\sqrt{1+|w|^2} で、どちらも連続です(∣z1∣2+∣z2∣2=1|z_1|^2+|z_2|^2=1 から ∣z2∣=1/1+∣w∣2|z_2|=1/\sqrt{1+|w|^2})。U1=S2∖{0}U_1=S^2\setminus\{0\} 上では w=z2/z1w=z_2/z_1 として同様です。

SU(2)={(a−bˉbaˉ):∣a∣2+∣b∣2=1}SU(2)=\left\{\begin{pmatrix}a&-\bar b\\ b&\bar a\end{pmatrix}:|a|^2+|b|^2=1\right\} なので、(a,b)(a,b) を読む写像で SU(2)≅S3SU(2)\cong S^3 です。Hopf 写像は、SU(2)SU(2) をその部分群 U(1)={diag⁡(λ,λˉ)}U(1)=\{\operatorname{diag}(\lambda,\bar\lambda)\} の右作用の軌道で割る写像 SU(2)→SU(2)/U(1)≅S2SU(2)\to SU(2)/U(1)\cong S^2 と同じものです(第 1 列 (a,b)(a,b) が右から diag⁡(λ,λˉ)\operatorname{diag}(\lambda,\bar\lambda) を掛けると λ(a,b)\lambda(a,b) になる)。

定理 4.3(Hopf ファイブレーションの帰結)✓

π2(S2)≅Z\pi_2(S^2)\cong\mathbb{Z} であり、n≥3n\ge3 で p∗:πn(S3)→πn(S2)p_*:\pi_n(S^3)\to\pi_n(S^2) は同型である。

証明(定理 4.3)

命題 4.2 と 命題 3.6 から 定理 3.7 が使え、

πn(S1)→πn(S3)→p∗πn(S2)→∂πn−1(S1)→πn−1(S3)\pi_n(S^1)\to\pi_n(S^3)\xrightarrow{p_*}\pi_n(S^2)\xrightarrow{\partial}\pi_{n-1}(S^1)\to\pi_{n-1}(S^3)

が完全です。n≥3n\ge3 では両端の πn(S1)=πn−1(S1)=0\pi_n(S^1)=\pi_{n-1}(S^1)=0(系 3.8)なので p∗p_* は同型。n=2n=2 では π2(S3)=π1(S3)=0\pi_2(S^3)=\pi_1(S^3)=0(命題 2.6)なので ∂:π2(S2)→π1(S1)\partial:\pi_2(S^2)\to\pi_1(S^1) は同型で、定理 4.1[基本群と被覆空間] から Z\mathbb{Z}。

Sn=In/∂InS^n=I^n/\partial I^n と同一視し、基点付き写像 f:Sn→Snf:S^n\to S^n に写像度 deg⁡f\deg f(定義 5.1[胞体ホモロジーと写像度])を対応させます。写像度はホモトピー不変なので、写像 deg⁡:πn(Sn)→Z\deg:\pi_n(S^n)\to\mathbb{Z} が定まります。

命題 5.1(写像度は準同型)✓

n≥1n\ge1 で deg⁡:πn(Sn)→Z\deg:\pi_n(S^n)\to\mathbb{Z} は全射準同型であり、deg⁡[id]=1\deg[\mathrm{id}]=1。

証明(命題 5.1)

W=Sn∨SnW=S^n\vee S^n(二つの球面を基点で貼ったもの)とし、j1,j2:Sn→Wj_1,j_2:S^n\to W を包含、q1,q2:W→Snq_1,q_2:W\to S^n を他方の球面を基点に潰す写像とします。qajbq_aj_b は a=ba=b なら恒等写像、a≠ba\ne b なら定値写像です。第 2 の球面から基点以外の一点を除いた開集合 AA は第 1 の球面に、同様の BB は第 2 の球面に変位レトラクトし、A∩BA\cap B は可縮です。簡約 Mayer–Vietoris 完全列 定理 5.4[特異ホモロジー] から (j1∗,j2∗):Hn(Sn)2→Hn(W)(j_{1*},j_{2*}):H_n(S^n)^2\to H_n(W) は同型で、したがって (q1∗,q2∗):Hn(W)→Hn(Sn)2(q_{1*},q_{2*}):H_n(W)\to H_n(S^n)^2 もその逆として同型です。

c:In/∂In→Wc:I^n/\partial I^n\to W を、超平面 s1=12s_1=\tfrac12 を基点に潰して左半分を第 1 の球面、右半分を第 2 の球面に写す写像とすると、定義から f+g=(f∨g)∘cf+g=(f\vee g)\circ c。q1cq_1c は [id]+0[\mathrm{id}]+0 を表すので(命題 2.4)恒等写像にホモトピックで、q2cq_2c も同様です。よって (q1∗,q2∗)c∗[Sn]=([Sn],[Sn])=(q1∗,q2∗)(j1∗[Sn]+j2∗[Sn])(q_{1*},q_{2*})c_*[S^n]=([S^n],[S^n])=(q_{1*},q_{2*})(j_{1*}[S^n]+j_{2*}[S^n]) で、c∗[Sn]=j1∗[Sn]+j2∗[Sn]c_*[S^n]=j_{1*}[S^n]+j_{2*}[S^n]。(f∨g)j1=f(f\vee g)j_1=f, (f∨g)j2=g(f\vee g)j_2=g なので

(f+g)∗[Sn]=(f∨g)∗c∗[Sn]=f∗[Sn]+g∗[Sn],(f+g)_*[S^n]=(f\vee g)_*c_*[S^n]=f_*[S^n]+g_*[S^n],

すなわち deg⁡(f+g)=deg⁡f+deg⁡g\deg(f+g)=\deg f+\deg g。deg⁡id=1\deg\mathrm{id}=1 なので deg⁡(k[id])=k\deg(k[\mathrm{id}])=k で全射です。

注意 5.2

写像度の単射性(次章で証明)。 写像 f:Sn→Snf:S^n\to S^n の懸垂 Σf:Sn+1→Sn+1\Sigma f:S^{n+1}\to S^{n+1}(各高さで ff を施す)は準同型 Σ:πn(Sn)→πn+1(Sn+1)\Sigma:\pi_n(S^n)\to\pi_{n+1}(S^{n+1}) を与え、これは同型である(Freudenthal の懸垂定理の最初の範囲、定理 6.3[Hurewicz の定理と Freudenthal の懸垂定理])。同値な内容として、Hopf の写像度定理「Sn→SnS^n\to S^n の二つの写像は、写像度が等しければホモトピック」がある(系 6.2[Hurewicz の定理と Freudenthal の懸垂定理])。どちらも、(n−1)(n-1)-連結な空間で πn≅Hn\pi_n\cong H_n を主張する Hurewicz の定理(定理 5.4[Hurewicz の定理と Freudenthal の懸垂定理])から従う。

定理 5.3(π₃(SU(2)) = ℤ)✓

すべての n≥1n\ge1 について deg⁡:πn(Sn)→Z\deg:\pi_n(S^n)\to\mathbb{Z} は同型であり、特に

π3(SU(2))≅π3(S3)≅Z,π3(SO(3))≅π3(S2)≅Z\pi_3(SU(2))\cong\pi_3(S^3)\cong\mathbb{Z},\qquad \pi_3(SO(3))\cong\pi_3(S^2)\cong\mathbb{Z}

で、π3(SU(2))\pi_3(SU(2)) の生成元は恒等写像、π3(S2)\pi_3(S^2) の生成元は Hopf 写像である。

証明(定理 5.3)

π1(S1)\pi_1(S^1) と π2(S2)\pi_2(S^2) は 定理 4.1[基本群と被覆空間] と 定理 4.3 により無限巡回群です。無限巡回群から Z\mathbb{Z} への全射準同型は同型なので、命題 5.1 から n=1,2n=1,2 で deg⁡\deg は同型です。一般の n≥1n\ge1 では、Hurewicz の定理の帰結 系 6.1[Hurewicz の定理と Freudenthal の懸垂定理] により deg⁡\deg は同型です。SU(2)≅S3SU(2)\cong S^3、π3(SO(3))≅π3(SU(2))\pi_3(SO(3))\cong\pi_3(SU(2))(系 3.8)、π3(S2)≅π3(S3)\pi_3(S^2)\cong\pi_3(S^3)(定理 4.3)で、同型 p∗p_* は [id][\mathrm{id}] を [p][p] に送ります。

写像度は積分で計算できます。de Rham の定理を使うと、次が成り立ちます。

命題 5.4(写像度の積分表示)✓

n≥1n\ge1、f:Sn→Snf:S^n\to S^n を滑らかな写像、ω\omega を SnS^n 上の nn 形式とすると ∫Snf∗ω=deg⁡f∫Snω\int_{S^n}f^*\omega=\deg f\int_{S^n}\omega。

証明(命題 5.4)

de Rham の定理 定理 5.4[コホモロジーと双対性] の同型 HdRn(Sn)≅Hn(Sn;R)H^n_{\mathrm{dR}}(S^n)\cong H^n(S^n;\mathbb{R}) は f∗f^* と可換です。普遍係数定理 定理 3.4[コホモロジーと双対性] の写像 h:Hn(Sn;R)→Hom⁡(Hn(Sn),R)h:H^n(S^n;\mathbb{R})\to\operatorname{Hom}(H_n(S^n),\mathbb{R}) は Hn−1(Sn)H_{n-1}(S^n) が自由なので同型で、h(f∗α)=h(α)∘f∗=deg⁡f⋅h(α)h(f^*\alpha)=h(\alpha)\circ f_*=\deg f\cdot h(\alpha) です。したがって f∗f^* は HdRn(Sn)H^n_{\mathrm{dR}}(S^n) 上で deg⁡f\deg f 倍で、∫Sn\int_{S^n} は HdRn(Sn)H^n_{\mathrm{dR}}(S^n) 上の線形形式(系 5.2[de Rham コホモロジー])なので主張が従います。

次の例の計算の流れは三つです。左移動で不変な 3 形式は単位元での値だけで決まるので、体積形式の定数倍になります。その定数を単位元で計算すると 1212 です。これに S3S^3 の体積 2π22\pi^2 をかけて 24π224\pi^2 を得ます。θ=g−1dg\theta=g^{-1}dg は、gg の変化を左から単位元の近くへ移して測る行列値の 1 形式です。

例 5.5(SU(2) の巻き付き数の積分公式)

SU(2)SU(2) 上の行列値 1 形式 θ=g−1dg\theta=g^{-1}dg(Maurer–Cartan 形式)に対し Ω=tr⁡(θ∧θ∧θ)\Omega=\operatorname{tr}(\theta\wedge\theta\wedge\theta) とおきます。左移動 Lh(g)=hgL_h(g)=hg について Lh∗θ=θL_h^*\theta=\theta なので Ω\Omega も左不変です。単位元での接ベクトル iσ1,iσ2,iσ3i\sigma_1,i\sigma_2,i\sigma_3(Pauli 行列)は、SU(2)≅S3⊂C2=R4SU(2)\cong S^3\subset\mathbb{C}^2=\mathbb{R}^4 の正規直交基底で、θ(iσa)=iσa\theta(i\sigma_a)=i\sigma_a、tr⁡(σ1σ2σ3)=2i\operatorname{tr}(\sigma_1\sigma_2\sigma_3)=2i から

Ω(iσ1,iσ2,iσ3)=∑π∈S3sgn⁡π tr⁡(iσπ1 iσπ2 iσπ3)=∑π(sgn⁡π)2 (−i)(2i)=12.\Omega(i\sigma_1,i\sigma_2,i\sigma_3)=\sum_{\pi\in S_3}\operatorname{sgn}\pi\,\operatorname{tr}(i\sigma_{\pi1}\,i\sigma_{\pi2}\,i\sigma_{\pi3})=\sum_\pi(\operatorname{sgn}\pi)^2\,(-i)(2i)=12.

左乗法 g↦hgg\mapsto hg は第 1 列 (a,b)(a,b) にユニタリ行列 hh を掛ける写像なので、R4\mathbb{R}^4 の等長変換で、SU(2)SU(2) が連結なので向きも保ちます。よって S3S^3 の体積形式 vol\mathrm{vol}((iσ1,iσ2,iσ3)(i\sigma_1,i\sigma_2,i\sigma_3) が正の向きになるように向きを選ぶ)も左不変です。左不変な 3 形式は単位元での値で決まるので Ω=12 vol\Omega=12\,\mathrm{vol}、∫SU(2)Ω=12⋅2π2=24π2\int_{SU(2)}\Omega=12\cdot2\pi^2=24\pi^2(S3S^3 の体積は 2π22\pi^2)。命題 5.4 から、滑らかな g:S3→SU(2)g:S^3\to SU(2) について

deg⁡g=124π2∫S3tr⁡((g−1dg)3)\deg g=\frac1{24\pi^2}\int_{S^3}\operatorname{tr}\bigl((g^{-1}dg)^3\bigr)

です(g∗θ=g−1dgg^*\theta=g^{-1}dg)。左辺は整数なので、右辺の積分は 24π224\pi^2 の整数倍にしかなりません。ゲージ理論ではこれが無限遠でのゲージ変換の巻き付き数、すなわちインスタントン数です。

注意 5.6

π4(S3)≅Z/2\pi_4(S^3)\cong\mathbb{Z}/2(生成元は Hopf 写像 S3→S2S^3\to S^2 の懸垂 S4→S3S^4\to S^3)も知られており、π4(SU(2))≅Z/2\pi_4(SU(2))\cong\mathbb{Z}/2 が Witten の SU(2)SU(2) アノマリーの背景になります(参考文献の Hatcher 第 4.2 節、Witten 1982)。本記事ではこれを証明しません。

6. 弱ホモトピー同値と分類空間

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ホモトピー群がすべて一致する写像は、ホモトピー論の立場からは「同じ空間」とみなしたいものです。その意味を定め、被覆空間の言葉で離散群の分類空間を作ります。

定義 6.1(弱ホモトピー同値・弱可縮)↗

連続写像 f:X→Yf:X\to Y が弱ホモトピー同値であるとは、f∗:π0(X)→π0(Y)f_*:\pi_0(X)\to\pi_0(Y) が全単射で、すべての x∈Xx\in X とすべての n≥1n\ge1 について f∗:πn(X,x)→πn(Y,f(x))f_*:\pi_n(X,x)\to\pi_n(Y,f(x)) が同型であることをいう。空でない空間 XX が弱可縮であるとは、一点への写像が弱ホモトピー同値であること、すなわち XX が道連結で、すべての n≥1n\ge1 と x∈Xx\in X について πn(X,x)=0\pi_n(X,x)=0 であることをいう。

命題 6.2(弱ホモトピー同値の例)✓

  1. 可縮な空間(定義 2.8[基本群と被覆空間])は弱可縮である。
  2. p:E→Bp:E\to B を Serre ファイブレーションで全射とし、すべての b∈Bb\in B についてファイバー p−1(b)p^{-1}(b) が弱可縮であるとする。このとき pp は弱ホモトピー同値である。とくにファイバーが弱可縮なファイバー束の射影は弱ホモトピー同値である。
証明(命題 6.2)

(1) H:X×I→XH:X\times I\to X を idX\mathrm{id}_X から定値写像 cc へのホモトピーとします。道連結性は 命題 2.9[基本群と被覆空間] の 2 です。基点付き写像 f:(Sn,s0)→(X,x)f:(S^n,s_0)\to(X,x) に対し H∘(f×idI)H\circ(f\times\mathrm{id}_I) は ff から定値写像への(基点を固定しない)ホモトピーなので、補題 2.5 から [f]=0[f]=0 です。

(2) x∈Ex\in E、b=p(x)b=p(x)、F=p−1(b)F=p^{-1}(b) とし、定理 3.7 の完全列

πn(F,x)→πn(E,x)→p∗πn(B,b)→∂πn−1(F,x)\pi_n(F,x)\to\pi_n(E,x)\xrightarrow{p_*}\pi_n(B,b)\xrightarrow{\partial}\pi_{n-1}(F,x)

を使います。n≥2n\ge2 では両端が 00 なので p∗p_* は同型です。n=1n=1 では、左端 π1(F)=0\pi_1(F)=0 から p∗p_* の核は自明で(群の準同型なので単射)、右端 π0(F)\pi_0(F) は一点なので ∂\partial の値はつねに基点で、完全性から p∗p_* は全射です。π0\pi_0 について、全射性は pp の全射性から従います。単射性: p(x)p(x) と p(y)p(y) が BB の道 γ\gamma で結ばれているとすると、定義 3.4 を k=0k=0 で使い、γ\gamma を xx から始まる EE の道 γ~\tilde\gamma に持ち上げます。γ~(1)\tilde\gamma(1) と yy は同じファイバー p−1(p(y))p^{-1}(p(y)) にあり、それは道連結なので、xx と yy は EE の同じ道連結成分にあります。最後の主張は 命題 3.6 によります。

注意 6.3

弱ホモトピー同値はホモトピー同値より真に弱い概念です。ただし CW 複体の間の弱ホモトピー同値はホモトピー同値であり(Whitehead の定理)、任意の空間は CW 複体からの弱ホモトピー同値を持つ(CW 近似)ので、ホモトピー群・ホモロジー群を調べる限り弱ホモトピー同値で十分です。どちらも胞体の次元に関する帰納法で示されます(参考文献の Hatcher 第 4.1 節)。本記事では使いません。

次に、離散群 GG について、「総空間が弱可縮な被覆」を考えます。被覆の理論から、底空間のホモトピー群は π1\pi_1 だけが GG として残ります。

定義 6.4(主 G 被覆と分類空間)↗

GG を離散群とする。被覆写像 p:E→Bp:E\to B(定義 3.1[基本群と被覆空間])に、GG が EE に右から同相写像で作用し(e↦ege\mapsto eg)、p(eg)=p(e)p(eg)=p(e) で、各ファイバー p−1(b)p^{-1}(b) の上で単純推移的(任意の e,e′∈p−1(b)e,e'\in p^{-1}(b) に対し e′=ege'=eg となる gg がただ一つある)であるとき、pp を主 GG 被覆という。総空間 EE が弱可縮な主 GG 被覆を普遍主 GG 束と呼んで EG→BGEG\to BG と書き、底空間 BGBG を GG の分類空間という。

命題 6.5(分類空間のホモトピー群)✓

GG を離散群、p:E→Bp:E\to B を総空間 EE が弱可縮な主 GG 被覆とし、e0∈Ee_0\in E、b0=p(e0)b_0=p(e_0) とする。このとき BB は道連結で、

π1(B,b0)≅G,πn(B,b0)=0(n≥2)\pi_1(B,b_0)\cong G,\qquad\pi_n(B,b_0)=0\quad(n\ge2)

である。

証明(命題 6.5)

B=p(E)B=p(E) は道連結空間の連続像なので道連結です。n≥2n\ge2 では、系 3.8 により πn(B)≅πn(E)=0\pi_n(B)\cong\pi_n(E)=0 です。

n=1n=1 を示します。b0b_0 のループ γ\gamma に対し、e0e_0 を始点とする持ち上げ γ~\tilde\gamma(定理 3.6[基本群と被覆空間])の終点は p−1(b0)p^{-1}(b_0) にあるので、γ~(1)=e0gγ\tilde\gamma(1)=e_0g_\gamma となる gγ∈Gg_\gamma\in G がただ一つあります。系 3.7[基本群と被覆空間] により gγg_\gamma は [γ][\gamma] だけで決まります。

準同型. δ\delta をもう一つのループ、δ~\tilde\delta をその e0e_0 始点の持ち上げとします。t↦δ~(t)gγt\mapsto\tilde\delta(t)g_\gamma は連続で(gγg_\gamma の作用は同相写像)、p(δ~(t)gγ)=δ(t)p(\tilde\delta(t)g_\gamma)=\delta(t)、始点は e0gγ=γ~(1)e_0g_\gamma=\tilde\gamma(1) です。持ち上げの一意性(補題 3.5[基本群と被覆空間])から、γ⋅δ\gamma\cdot\delta の e0e_0 始点の持ち上げは γ~\tilde\gamma の後に δ~ gγ\tilde\delta\,g_\gamma をつないだもので、終点は e0gδgγe_0g_\delta g_\gamma です。よって gγ⋅δ=gδgγg_{\gamma\cdot\delta}=g_\delta g_\gamma で、Ψ[γ]=gγ−1\Psi[\gamma]=g_\gamma^{-1} と置くと Ψ([γ][δ])=gγ−1gδ−1=Ψ[γ]Ψ[δ]\Psi([\gamma][\delta])=g_\gamma^{-1}g_\delta^{-1}=\Psi[\gamma]\Psi[\delta] です。

全射. g∈Gg\in G に対し、EE は道連結なので e0e_0 から e0g−1e_0g^{-1} への道 γ~\tilde\gamma があり、γ=pγ~\gamma=p\tilde\gamma は b0b_0 のループで Ψ[γ]=g\Psi[\gamma]=g です。

単射. Ψ[γ]=1\Psi[\gamma]=1 なら γ~\tilde\gamma は閉じているので、命題 3.8[基本群と被覆空間] により [γ][\gamma] は p∗π1(E,e0)p_*\pi_1(E,e_0) に属しますが、EE は弱可縮なので π1(E,e0)=1\pi_1(E,e_0)=1 で、[γ]=1[\gamma]=1 です。

例 6.6(分類空間の例)

(a) G=ZG=\mathbb{Z}: R→S1\mathbb{R}\to S^1、t↦e2πitt\mapsto e^{2\pi it} は、n∈Zn\in\mathbb{Z} が t↦t+nt\mapsto t+n で作用する主 Z\mathbb{Z} 被覆で、R\mathbb{R} は可縮です。よって S1S^1 は BZB\mathbb{Z} で、命題は π1(S1)≅Z\pi_1(S^1)\cong\mathbb{Z}、πn(S1)=0\pi_n(S^1)=0 を再現します。同様に Rn→Tn\mathbb{R}^n\to T^n から TnT^n は BZnB\mathbb{Z}^n です。

(b) G=Z/2G=\mathbb{Z}/2: 有限個の成分を除いて 00 である実数列の空間 R∞\mathbb{R}^\infty に ℓ2\ell^2 ノルムを入れ、単位球面を S∞S^\infty とします。S∞S^\infty は可縮です。実際、右シフト T(x1,x2,… )=(0,x1,x2,… )T(x_1,x_2,\dots)=(0,x_1,x_2,\dots) は線形な等長写像で、x≠0x\ne0 の最後の 0 でない成分の位置が TxTx では 1 つ後ろにずれるので xx と TxTx は一次独立、よって (1−t)x+tTx≠0(1-t)x+tTx\ne0 です。H1(x,t)=(1−t)x+tTx∥(1−t)x+tTx∥H_1(x,t)=\frac{(1-t)x+tTx}{\|(1-t)x+tTx\|} は id\mathrm{id} から T∣S∞T|_{S^\infty} へのホモトピーで、Tx⊥e1Tx\perp e_1 なので (1−t)Tx+te1≠0(1-t)Tx+te_1\ne0 を正規化した H2H_2 は T∣S∞T|_{S^\infty} から定値写像 e1e_1 へのホモトピーです。Z/2\mathbb{Z}/2 を x↦−xx\mapsto-x で作用させた商 RP∞=S∞/{±1}\mathbb{R}P^\infty=S^\infty/\{\pm1\} への射影 pp は主 Z/2\mathbb{Z}/2 被覆です。x∈S∞x\in S^\infty の開近傍 U={y:∥y−x∥<1}U=\{y:\|y-x\|<1\} は −U-U と交わらず(交われば 2=∥2x∥≤∥x−y∥+∥x+y∥<22=\|2x\|\le\|x-y\|+\|x+y\|<2)、pp は開写像(p−1(p(V))=V∪(−V)p^{-1}(p(V))=V\cup(-V))なので p∣Up|_U は p(U)p(U) への同相、p−1(p(U))=U⊔(−U)p^{-1}(p(U))=U\sqcup(-U) です。よって RP∞\mathbb{R}P^\infty は B(Z/2)B(\mathbb{Z}/2) で、π1(RP∞)≅Z/2\pi_1(\mathbb{R}P^\infty)\cong\mathbb{Z}/2、高次のホモトピー群はすべて 00 です。有限次元の RPm\mathbb{R}P^m(m≥2m\ge2)では πm(RPm)≅πm(Sm)≠0\pi_m(\mathbb{R}P^m)\cong\pi_m(S^m)\ne0(系 3.8)なので、次元を無限にすることが本質的です。

注意 6.7

分類空間は離散群に限らず、任意の位相群 GG について、総空間が弱可縮な主 GG 束 EG→BGEG\to BG として定義され、Milnor の構成(GG の無限回の結 G∗G∗⋯G*G*\cdots を使う)で存在が示されます。その意味は普遍性にあります。パラコンパクトな空間 XX 上の主 GG 束の同型類は、写像のホモトピー類 [X,BG][X,BG] と、EGEG の引き戻しによって 1 対 1 に対応します。たとえば BU(1)=CP∞BU(1)=\mathbb{C}P^\infty で、複素直線束は X→CP∞X\to\mathbb{C}P^\infty のホモトピー類で分類され、Chern–Weil 理論 の第 1 Chern 類は、H2(CP∞;Z)≅ZH^2(\mathbb{C}P^\infty;\mathbb{Z})\cong\mathbb{Z} の生成元をこの写像で引き戻した類(を実係数に移したもの)です。これらの証明には束の延長とパラコンパクト性の議論が要り、本サイトではまだ扱っていません(D. Husemoller, Fibre Bundles, 3rd ed., Springer GTM 20, 1994 — 第 4 章)。離散群の場合の別の構成として、群の脈体(特異ホモロジー の単体的集合の節を参照)の幾何的実現があります。

演習 7.1易

π2(RP2)\pi_2(\mathbb{R}P^2) と π3(RP2)\pi_3(\mathbb{R}P^2) を求めよ。

解答

系 3.8 から πn(RP2)≅πn(S2)\pi_n(\mathbb{R}P^2)\cong\pi_n(S^2) (n≥2n\ge2)。定理 4.3 と 定理 5.3 から π2(RP2)≅Z\pi_2(\mathbb{R}P^2)\cong\mathbb{Z}、π3(RP2)≅Z\pi_3(\mathbb{R}P^2)\cong\mathbb{Z}。基本群 π1(RP2)=Z/2\pi_1(\mathbb{R}P^2)=\mathbb{Z}/2 と違い、高次のホモトピー群は被覆で変わらない。

演習 7.2標準

Hopf 写像 p:S3→S2p:S^3\to S^2 が切断(p∘s=idp\circ s=\mathrm{id} となる連続写像 s:S2→S3s:S^2\to S^3)を持たないことを示せ。

解答

切断があれば π2(S2)≅Z\pi_2(S^2)\cong\mathbb{Z} 上で p∗s∗=idp_*s_*=\mathrm{id}(定理 4.3)だが、s∗s_* は π2(S3)=0\pi_2(S^3)=0(命題 2.6)を経由するので 00。矛盾。

演習 7.3標準

SO(n+1)SO(n+1) は Sn⊂Rn+1S^n\subset\mathbb{R}^{n+1} に推移的に作用し、en+1e_{n+1} の固定部分群は SO(n)SO(n) で、SO(n+1)→SnSO(n+1)\to S^n, A↦Aen+1A\mapsto Ae_{n+1} はファイバー SO(n)SO(n) のファイバー束であることが知られている。これを認めて、n≥3n\ge3 で π1(SO(n))≅π1(SO(n+1))\pi_1(SO(n))\cong\pi_1(SO(n+1)) を示せ。また π1(SO(3))\pi_1(SO(3)) を求めよ。

解答

定理 3.7 から π2(Sn)→π1(SO(n))→π1(SO(n+1))→π1(Sn)\pi_2(S^n)\to\pi_1(SO(n))\to\pi_1(SO(n+1))\to\pi_1(S^n) が完全で、n≥3n\ge3 では両端が 00(命題 2.6)なので同型。SU(2)→SO(3)SU(2)\to SO(3) は 2 重被覆で SU(2)≅S3SU(2)\cong S^3 は単連結なので、π1(SO(3))≅Z/2\pi_1(SO(3))\cong\mathbb{Z}/2(定理 7.2[基本群と被覆空間])。したがって n≥3n\ge3 で π1(SO(n))≅Z/2\pi_1(SO(n))\cong\mathbb{Z}/2。

  • A. Hatcher, Algebraic Topology, Cambridge University Press, 2002 — 第 4.1 節(ホモトピー群、長完全列、弱ホモトピー同値と Whitehead の定理)、第 4.2 節(Freudenthal の懸垂定理、ファイバー束と長完全列、Hopf ファイブレーション)、第 1.B 節(K(G,1)K(G,1) 空間)。
  • J. W. Milnor, Topology from the Differentiable Viewpoint, University of Virginia Press, 1965 — 第 7 節(Hopf の写像度定理)。
  • N. Steenrod, The Topology of Fibre Bundles, Princeton University Press, 1951 — ファイバー束とホモトピー列。
  • E. Witten, “An SU(2) anomaly”, Physics Letters B 117 (1982), 324–328. doi:10.1016/0370-2693(82)90728-6
  • 枡田幹也『代数的トポロジー』朝倉書店、2002 — ホモトピー群の章。

このテーマの 100 本ノック(50 問)

執筆: Claude Code(Opus 5.5)、Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 5 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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