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Jordan の曲線定理と Jordan–Brouwer の分離定理:特異ホモロジーで平面と球面の分離を証明する

対象読者: 本テーマ第 2 章の特異ホモロジー(Mayer–Vietoris 完全列)と、位相空間の連結性・コンパクト性を学んだ人。平面曲線の位相的な議論は仮定しません。

前提となる記事:特異ホモロジー:連続写像の単体で穴を数え、ホモトピー不変性・切除・Mayer–Vietoris を証明する、連結性:「ひとつながり」を開集合で測り、中間値の定理を位相の言葉で証明する、コンパクト性:有限部分被覆で捉える「有界閉集合」の一般化

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紙に、自分と交わらない閉じた輪を一本描くと、紙は輪の内側と外側に分かれます。輪がどんなに複雑でも、内側と外側がちょうど一つずつになることは、図では当たり前に見えても、きちんと示すには工夫が要ります。この記事では、穴の数を数えるホモロジーを使って、このことを任意の次元で証明します。読み終えると、「連続で重ならないだけの曲線」について、内側と外側の存在を論理で説明できるようになります。

  • 平面の単純閉曲線 CC は、平面をちょうど二つの連結成分(有界な内部と非有界な外部)に分け、CC はどちらの成分の境界にもなります(Jordan の曲線定理、定理 4.2)。
  • 一般に、SnS^n に埋め込まれた (n−1)(n-1) 次元球面は SnS^n を二つの成分に分け、各成分のホモロジーは一点と同じです(Jordan–Brouwer の分離定理、定理 4.1)。
  • 鍵は、埋め込まれた円板の補集合は「穴がない」(定理 3.1 (a))、埋め込まれた kk 次元球面の補集合は (n−k−1)(n-k-1) 次元の穴を一つだけ持つ(同 (b))という計算です。証明は Mayer–Vietoris 完全列と、特異鎖が有限個の単体からなる(コンパクトな台を持つ)ことだけを使います。
  • 同じ計算から領域不変性(Rn\mathbb{R}^n の開集合から Rn\mathbb{R}^n への連続な単射は開写像、定理 5.1)が従います。
  • 埋め込みは連続な単射であれば何でもよく、曲線の滑らかさは仮定しません。そのため、フラクタルのような曲線にもそのまま適用できます。

「平面上の、自分と交わらない閉じた曲線は、平面を内側と外側に分ける」という主張は、図を描けば当たり前に見えます。しかし、曲線は連続な単射の像というだけで、いたるところ微分できないものや、面積が正のもの(Osgood 曲線。曲線なのに平面の中で面積を持つもの)さえあります。そのような曲線の「内側」が何か、それが一つしかないのはなぜかを、図に頼らずに示すのは簡単ではありません。

この定理は解析の多くの場所で暗黙に使われます。平面の力学系の Poincaré–Bendixson の定理では、軌道の弧と横断線分が作る閉曲線が平面を二つに分け、軌道が片側に閉じ込められることを使います(安定性・力学系・特性曲線法)。曲面論の回転数定理と Gauss–Bonnet の定理では、単純閉曲線が囲む領域の「内部」を使います(曲線と曲面)。本記事は、これらが前提とする平面の位相を、特異ホモロジーの道具で証明します。

ホモロジーの言葉では、「二つに分かれる」は H0H_0 が Z2\mathbb{Z}^2 であること、つまり簡約ホモロジー H~0\tilde H_0 が Z\mathbb{Z} であることです。したがって補集合のホモロジーを計算できれば十分です。

SnS^n の部分集合 KK について、KK の補集合を Sn∖KS^n\setminus K と書きます。埋め込みとは、像の上への同相写像になる連続写像です。コンパクト空間から Hausdorff 空間への連続な単射は、像の上への同相写像です(系 6.5[コンパクト性])。したがって DkD^k や SkS^k から SnS^n への連続な単射は埋め込みで、その像はコンパクト、ゆえに閉集合であり、補集合は開集合です。

次の補題は、増大する開集合の列の合併を扱うための道具です。特異鎖は特異単体(標準単体からの連続写像)の有限個の一次結合なので、その像は有限個のコンパクト集合の合併になり、増大する開集合の列のどこかで必ず収まる、という内容です。3 節の二分法の最後で使います。

補題 2.1(特異鎖のコンパクト性)✓

X=⋃mUmX=\bigcup_mU_m を開集合の増大列 U1⊆U2⊆⋯U_1\subseteq U_2\subseteq\cdots の合併とする。XX の任意の特異鎖はある C∗(Um)C_*(U_m) に入る。したがって、α∈H~i(U1)\alpha\in\tilde H_i(U_1) の H~i(X)\tilde H_i(X) での像が 00 ならば、ある mm で α\alpha の H~i(Um)\tilde H_i(U_m) での像が 00 である。

証明(補題 2.1)

鎖は有限個の特異単体 σj\sigma_j の一次結合で、像 ⋃jσj(Δ)\bigcup_j\sigma_j(\Delta) はコンパクトです(定理 6.1[コンパクト性])。これは開被覆 {Um}\{U_m\} の有限個で覆われ、増大列なので一つの UmU_m に入ります。後半: α=[z]\alpha=[z]、z∈C~i(U1)z\in\tilde C_i(U_1) が XX で z=∂cz=\partial c となるなら、cc の入る UmU_m で z=∂cz=\partial c です(i=0i=0 のときも、簡約鎖複体で同じ)。

補題 2.2(球面の開集合の成分)✓

W⊆SnW\subseteq S^n を開集合とする。WW の道連結成分は開集合で、WW の連結成分と一致する。特に H0(W)H_0(W) は連結成分の集合上の自由アーベル群である。

証明(補題 2.2)

SnS^n の各点は(立体射影のチャートで)開球と同相な近傍の基本系を持ち、開球は道連結です。x∈Wx\in W の、WW に含まれるそのような近傍は xx の道連結成分に含まれるので、道連結成分は開集合です。各道連結成分の補集合は他の道連結成分の合併なので開、よって道連結成分は WW の開かつ閉な連結集合(定理 7.3[連結性])であり、連結成分に一致します。後半は 命題 2.4[特異ホモロジー] です。

定理 3.1(埋め込まれた円板と球面の補集合)✓

(a) h:Dk→Snh:D^k\to S^n が埋め込みならば、すべての ii で H~i(Sn∖h(Dk))=0\tilde H_i(S^n\setminus h(D^k))=0。 (b) h:Sk→Snh:S^k\to S^n が埋め込みで k<nk<n ならば、H~i(Sn∖h(Sk))≅Z\tilde H_i(S^n\setminus h(S^k))\cong\mathbb{Z} (i=n−k−1i=n-k-1)、それ以外の ii では 00。

証明の方針です。(a) は、立方体の像 h(Ik)h(I^k) を半分に切って、補集合に消えないサイクルが残る側を選ぶ操作を繰り返し、最後に一枚低次元の面まで縮めて矛盾を導きます(下の図)。(b) は、球面 SkS^k を二つの閉半球に分け、(a) で補集合に穴がないことを使って、Mayer–Vietoris 完全列から次元を一つ下げます。そのとき補集合の共通部分と合併は、集合の演算(和集合の補集合は補集合の共通部分、共通部分の補集合は補集合の和集合)と、hh が単射で h(D+)∩h(D−)=h(Sk−1)h(D_+)\cap h(D_-)=h(S^{k-1}) となることから得られます。

まず、補集合が空でないことを確かめておきます。h(Dk)=Snh(D^k)=S^n なら hh は同相 Dk≅SnD^k\cong S^n を与えますが、DkD^k は可縮で H~n(Sn)≅Z\tilde H_n(S^n)\cong\mathbb{Z}(定理 6.1[特異ホモロジー])なので不可能です。同様に k<nk<n なら H~n(Sk)=0\tilde H_n(S^k)=0 から h(Sk)≠Snh(S^k)\ne S^n です。したがって以下の Mayer–Vietoris 完全列で、共通部分が空でないという簡約版の仮定(定理 5.4[特異ホモロジー])が満たされます。

証明(定理 3.1)

(a) DkD^k は立方体 IkI^k と同相なので、h:Ik→Snh:I^k\to S^n として kk の帰納法で示します。k=0k=0 では SnS^n から一点を除いたもので、立体射影で Rn\mathbb{R}^n と同相、可縮です(系 4.2[特異ホモロジー])。

k≥1k\ge1 とし、閉区間 J⊆IJ\subseteq I に対して YJ=Sn∖h(Ik−1×J)Y_J=S^n\setminus h(I^{k-1}\times J)(開集合)とおきます。00 でない α∈H~i(YI)\alpha\in\tilde H_i(Y_I) があると仮定して矛盾を導きます。J=[a,b]J=[a,b]、c=(a+b)/2c=(a+b)/2 とすると、hh の単射性から

Y[a,c]∪Y[c,b]=Y{c},Y[a,c]∩Y[c,b]=Y[a,b].Y_{[a,c]}\cup Y_{[c,b]}=Y_{\{c\}},\qquad Y_{[a,c]}\cap Y_{[c,b]}=Y_{[a,b]}.

Ik−1×{c}≅Ik−1I^{k-1}\times\{c\}\cong I^{k-1} なので帰納法の仮定から H~∗(Y{c})=0\tilde H_*(Y_{\{c\}})=0 で、簡約 Mayer–Vietoris 完全列

0=H~i+1(Y{c})→H~i(Y[a,b])→H~i(Y[a,c])⊕H~i(Y[c,b])→H~i(Y{c})=00=\tilde H_{i+1}(Y_{\{c\}})\to\tilde H_i(Y_{[a,b]})\to\tilde H_i(Y_{[a,c]})\oplus\tilde H_i(Y_{[c,b]})\to\tilde H_i(Y_{\{c\}})=0

から、包含による写像は同型です。よって α\alpha の H~i(Y[a,c])\tilde H_i(Y_{[a,c]}) か H~i(Y[c,b])\tilde H_i(Y_{[c,b]}) での像の少なくとも一方は 00 でありません。これを繰り返して、閉区間の減少列 I=J0⊃J1⊃⋯I=J_0\supset J_1\supset\cdots(JmJ_m の長さ 2−m2^{-m})で、α\alpha の H~i(YJm)\tilde H_i(Y_{J_m}) での像が 00 でないものを得ます。⋂mJm={p}\bigcap_mJ_m=\{p\} とすると、hh が単射なので h(Ik−1×{p})=⋂mh(Ik−1×Jm)h(I^{k-1}\times\{p\})=\bigcap_mh(I^{k-1}\times J_m)、すなわち Y{p}=⋃mYJmY_{\{p\}}=\bigcup_mY_{J_m} は開集合の増大列の合併です。帰納法の仮定から H~i(Y{p})=0\tilde H_i(Y_{\{p\}})=0 なので α\alpha の像は 00 で、補題 2.1 によりある mm で α\alpha の H~i(YJm)\tilde H_i(Y_{J_m}) での像が 00 になり、矛盾です。

(b) kk の帰納法。k=0k=0: h(S0)h(S^0) は 2 点で、補集合は Rn\mathbb{R}^n から一点を除いたものと同相、Sn−1S^{n-1} にホモトピー同値なので、定理 6.1[特異ホモロジー] から主張が成り立ちます。1≤k<n1\le k<n とし、SkS^k を閉半球 D+,D−D_+,D_-(どちらも DkD^k と同相)に分けると D+∩D−=Sk−1D_+\cap D_-=S^{k-1}(赤道)です。A=Sn∖h(D+)A=S^n\setminus h(D_+)、B=Sn∖h(D−)B=S^n\setminus h(D_-) は開集合で、

A∩B=Sn∖h(Sk),A∪B=Sn∖h(Sk−1).A\cap B=S^n\setminus h(S^k),\qquad A\cup B=S^n\setminus h(S^{k-1}).

(a) から H~∗(A)=H~∗(B)=0\tilde H_*(A)=\tilde H_*(B)=0 なので、簡約 Mayer–Vietoris 完全列の連結準同型 H~i+1(A∪B)→H~i(A∩B)\tilde H_{i+1}(A\cup B)\to\tilde H_i(A\cap B) は同型です。帰納法の仮定(h∣Sk−1h|_{S^{k-1}} は Sk−1S^{k-1} の埋め込み)から、H~i+1(A∪B)\tilde H_{i+1}(A\cup B) は i+1=n−(k−1)−1i+1=n-(k-1)-1、すなわち i=n−k−1i=n-k-1 のときだけ Z\mathbb{Z} です。

(a) の k=1k=1, n=2n=2 の場合は「弧は平面(球面)を分けない」という主張です。曲線を閉じない限り、補集合はつながったままです。

h(Iᵏ⁻¹ × J₀)J₂pα ≠ 0 が残る側を選び続けるJ₀ ⊃ J₁ ⊃ J₂ ⊃ … → {p}面 h(Iᵏ⁻¹×{p}) の補集合では α = 0
(a) の証明の二分法。h(Iᵏ) の補集合で消えないサイクル α は、二等分した片側の補集合でも消えない。区間を縮めていくと一枚の面 h(Iᵏ⁻¹×{p}) に行き着くが、その補集合では α は境界になり、境界を与える鎖はコンパクトなので、ある段階ですでに境界になっている。

4. Jordan–Brouwer の分離定理と Jordan の曲線定理

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定理 4.1(Jordan–Brouwer の分離定理)✓

n≥1n\ge1、h:Sn−1→Snh:S^{n-1}\to S^n を埋め込み、Σ=h(Sn−1)\Sigma=h(S^{n-1}) とする。このとき

  1. Sn∖ΣS^n\setminus\Sigma はちょうど二つの連結成分 U,VU,V を持ち、どちらも開集合で道連結である。
  2. H~∗(U)=H~∗(V)=0\tilde H_*(U)=\tilde H_*(V)=0。
  3. Σ\Sigma の各点は UU の閉包と VV の閉包の両方に属する。したがって U‾=U∪Σ\overline U=U\cup\Sigma、V‾=V∪Σ\overline V=V\cup\Sigma で、Σ\Sigma は UU と VV の共通の境界である。

(1)(2) は 3 節の計算から直ちに従います。(3) のねらいは、Σ\Sigma のどの点の近くにも内側 UU と外側 VV の両方の点がある、つまり Σ\Sigma が両方の本当の境界であることです。方針は、点 xx の近くの小さな弧だけを残して他を取り除いても補集合がつながるので、UU から VV へ行く道はその小さな弧の近くを通るしかない、というものです。道が Σ\Sigma に初めて触れるまでは Σ\Sigma を横切っていないので、その間は UU の中にいます。なお球冠とは、球面を平面で切ったときの小さな帽子状の部分です。

証明(定理 4.1)

(1)(2) 定理 3.1 (b) を k=n−1k=n-1 で使うと、H~0(Sn∖Σ)≅Z\tilde H_0(S^n\setminus\Sigma)\cong\mathbb{Z}、H~i=0\tilde H_i=0 (i≥1i\ge1)。よって H0≅Z2H_0\cong\mathbb{Z}^2 で、補題 2.2 から連結成分はちょうど二つで、開かつ道連結です。Hi(Sn∖Σ)=Hi(U)⊕Hi(V)H_i(S^n\setminus\Sigma)=H_i(U)\oplus H_i(V)(命題 2.4[特異ホモロジー])から i≥1i\ge1 で Hi(U)=Hi(V)=0H_i(U)=H_i(V)=0。

(3) x=h(y)∈Σx=h(y)\in\Sigma と xx の開近傍 NN を取ります。hh の連続性から、yy を中心とする小さな閉じた球冠 A⊆Sn−1A\subseteq S^{n-1} で h(A)⊆Nh(A)\subseteq N となるものがあります。B=Sn−1∖int⁡AB=S^{n-1}\setminus\operatorname{int}A も閉じた球冠で、Dn−1D^{n-1} と同相です(n=1n=1 なら A={y}A=\{y\}、BB は残りの一点)。定理 3.1 (a) から H~0(Sn∖h(B))=0\tilde H_0(S^n\setminus h(B))=0、つまり Sn∖h(B)S^n\setminus h(B) は道連結です。u∈Uu\in U, v∈Vv\in V を結ぶ道 γ:[0,1]→Sn∖h(B)\gamma:[0,1]\to S^n\setminus h(B) を取ります。γ\gamma は Σ\Sigma と交わります(交わらなければ u,vu,v は Sn∖ΣS^n\setminus\Sigma の同じ成分に入る)が、交わる点は Σ∖h(B)⊆h(A)⊆N\Sigma\setminus h(B)\subseteq h(A)\subseteq N にあります。t∗=inf⁡{t:γ(t)∈Σ}t^*=\inf\{t:\gamma(t)\in\Sigma\} とすると、Σ\Sigma は閉集合なので γ(t∗)∈Σ∩N\gamma(t^*)\in\Sigma\cap N、t∗>0t^*>0 で、γ([0,t∗))\gamma([0,t^*)) は uu を含む Sn∖ΣS^n\setminus\Sigma の連結集合なので UU に入ります。NN は開集合なので、t∗t^* に近い t<t∗t<t^* で γ(t)∈N∩U\gamma(t)\in N\cap U。よって NN は UU と交わり、x∈U‾x\in\overline U。VV についても、道を逆にたどれば同じです。最後に、VV は開集合で UU と交わらないので U‾∩V=∅\overline U\cap V=\varnothing、よって U‾=U∪Σ\overline U=U\cup\Sigma。

UuvVh(A)x太線 h(A) 以外の曲線 h(B) は取り除いても補集合がつながる
(3) の議論。x の近くの小さな弧 h(A) だけを残し、残りの大きな弧 h(B) を取り除くと補集合はつながる。U から V への道は h(A) を通るしかないので、U と V の点が x のすぐ近くまで来る。

平面の場合に言い換えます。Rn\mathbb{R}^n を立体射影で Sn∖{∞}S^n\setminus\{\infty\} と同一視します。

定理 4.2(Jordan の曲線定理)✓

n≥2n\ge2、h:Sn−1→Rnh:S^{n-1}\to\mathbb{R}^n を連続な単射、Σ=h(Sn−1)\Sigma=h(S^{n-1}) とする。Rn∖Σ\mathbb{R}^n\setminus\Sigma はちょうど二つの連結成分を持ち、一方は有界(内部)、他方は非有界(外部)で、どちらも開集合かつ道連結、Σ\Sigma はどちらの成分の境界でもある。内部 UU は H~∗(U)=0\tilde H_*(U)=0 を満たす。特に n=2n=2 のとき、平面の単純閉曲線は平面を内部と外部の二つの領域に分ける。

証明(定理 4.2)

Σ⊆Rn⊆Sn\Sigma\subseteq\mathbb{R}^n\subseteq S^n に 定理 4.1 を使い、Sn∖Σ=U⊔VS^n\setminus\Sigma=U\sqcup V、∞∈V\infty\in V とします。Σ\Sigma はコンパクトなので、ある RR で Σ⊆{∣x∣≤R}\Sigma\subseteq\{|x|\le R\}。{∣x∣>R}∪{∞}\{|x|>R\}\cup\{\infty\} は連結(SnS^n の開球と同相)で Σ\Sigma と交わらず ∞\infty を含むので VV に入り、したがって U⊆{∣x∣≤R}U\subseteq\{|x|\le R\} は有界で、V∖{∞}V\setminus\{\infty\} は非有界です。

V∖{∞}V\setminus\{\infty\} が道連結であることを示します。W={∣x∣>R}∪{∞}W=\{|x|>R\}\cup\{\infty\}、W′={∣x∣>2R}∪{∞}W'=\{|x|>2R\}\cup\{\infty\} とします。x∈V∖{∞}x\in V\setminus\{\infty\} から ∞\infty への VV 内の道 γ\gamma に対し、γ\gamma が初めて W′‾\overline{W'} に入る時刻を t1t_1 とすると、∞\infty は W′‾\overline{W'} の内点なので γ(t1)≠∞\gamma(t_1)\ne\infty、すなわち γ(t1)\gamma(t_1) は ∣x∣≥2R|x|\ge2R を満たす点(t1>0t_1>0 なら ∣x∣=2R|x|=2R 上の点)で、γ([0,t1])\gamma([0,t_1]) は ∞\infty を通りません。W∖{∞}={∣x∣>R}W\setminus\{\infty\}=\{|x|>R\} は n≥2n\ge2 で道連結で VV に含まれるので、xx は V∖{∞}V\setminus\{\infty\} の中で ∣x∣=2R|x|=2R 上の固定した一点と結べます。したがって Rn∖Σ=U⊔(V∖{∞})\mathbb{R}^n\setminus\Sigma=U\sqcup(V\setminus\{\infty\}) はちょうど二つの成分を持ちます。境界の主張は 定理 4.1 (3) の閉包を Rn\mathbb{R}^n で取り直したもの、H~∗(U)=0\tilde H_*(U)=0 は同 (2) です。

注意 4.3

n=2n=2 では、内部の閉包は閉円板と同相であることが知られています(Schoenflies の定理)。n≥3n\ge3 ではこれが成り立たず、補集合の一方の成分が単連結でない埋め込み S2→S3S^2\to S^3(Alexander の角付き球面)があります。定理 4.1 (2) が保証するのは、成分のホモロジーが自明であることまでです。どちらも本記事では証明しません(参考文献の Hatcher 第 2.B 節)。

定理 5.1(領域不変性)✓

U⊆RnU\subseteq\mathbb{R}^n を開集合、h:U→Rnh:U\to\mathbb{R}^n を連続な単射とする。このとき h(U)h(U) は開集合で、h:U→h(U)h:U\to h(U) は同相写像である。

証明(定理 5.1)

x∈Ux\in U を取り、閉球 D={∣y−x∣≤r}⊆UD=\{|y-x|\le r\}\subseteq U、その境界の球面を SS とします。Rn⊆Sn\mathbb{R}^n\subseteq S^n と見ると、h∣Sh|_S は Sn−1S^{n-1} の埋め込みなので、定理 4.1 から Sn∖h(S)S^n\setminus h(S) はちょうど二つの連結成分を持ちます。一方、hh は単射なので

Sn∖h(S)=(Sn∖h(D))⊔h(int⁡D)S^n\setminus h(S)=\bigl(S^n\setminus h(D)\bigr)\sqcup h(\operatorname{int}D)

で、右辺の第 1 項は 定理 3.1 (a) により空でなく道連結、第 2 項は連結集合 int⁡D\operatorname{int}D の連続像なので連結です(定理 5.1[連結性])。空でない二つの連結集合で、成分がちょうど二つの空間を互いに素に覆っているので、これらが二つの連結成分そのものです。定理 4.1 (1) から成分は SnS^n の開集合なので、h(int⁡D)h(\operatorname{int}D) は h(x)h(x) を含む開集合です。したがって h(U)h(U) は開集合です。同じ議論を UU の任意の開集合に適用すれば hh は開写像で、逆写像 h−1:h(U)→Uh^{-1}:h(U)\to U は連続です。

系 5.2(球面は同じ次元の空間に単射で入らない)✓

n≥1n\ge1 のとき、連続な単射 Sn→RnS^n\to\mathbb{R}^n は存在しない。また m≠nm\ne n なら Rm\mathbb{R}^m の空でない開集合と Rn\mathbb{R}^n の開集合は同相でない。

証明(系 5.2)

h:Sn→Rnh:S^n\to\mathbb{R}^n が連続な単射なら、2 点 p≠qp\ne q について Sn∖{p}S^n\setminus\{p\}, Sn∖{q}S^n\setminus\{q\} はどちらも Rn\mathbb{R}^n と同相(立体射影)なので、定理 5.1 から h(Sn)=h(Sn∖{p})∪h(Sn∖{q})h(S^n)=h(S^n\setminus\{p\})\cup h(S^n\setminus\{q\}) は開集合です。コンパクトなので閉集合でもあり、空でないので、Rn\mathbb{R}^n が連結(任意の 2 点が線分 t↦(1−t)x+tyt\mapsto(1-t)x+ty で結ばれる道連結空間なので、定理 7.3[連結性])であることから Rn\mathbb{R}^n 全体です。しかし Rn\mathbb{R}^n はコンパクトでないので矛盾。後半: m<nm<n とし、f:O→O′f:O\to O' を Rm\mathbb{R}^m の開集合から Rn\mathbb{R}^n の開集合への同相とします。Rm⊆Rn\mathbb{R}^m\subseteq\mathbb{R}^n と見て、f−1:O′→O⊆Rnf^{-1}:O'\to O\subseteq\mathbb{R}^n は連続な単射なので、像 OO は Rn\mathbb{R}^n の開集合のはずですが、OO は超平面 Rm\mathbb{R}^m に含まれ、Rn\mathbb{R}^n の開集合ではありません。

例 5.3(応用の例)

(a) Poincaré–Bendixson の定理の証明(定理 5.4[安定性・力学系・特性曲線法])では、軌道の弧と横断線分からなる単純閉曲線 CC が平面を二つに分けること、および線分の内部の点の十分小さい近傍では線分の両側が異なる成分に属することを使います。後者は 定理 4.2 の境界の主張から従います。線分上の点 xx の小さな円板 NN から CC を除くと二つの半円板になり、どちらも連結なのでそれぞれ一つの成分に入りますが、xx はどちらの成分の閉包にも入るので、二つの半円板は異なる成分に属します。 (b) チャートの次元の一意性は、座標変換が C1C^1 級なら連鎖律で示せますが(命題 3.8[微分可能多様体の定義])、座標変換が連続なだけの場合(注意 3.9[微分可能多様体の定義])は 系 5.2 の後半そのものです。

演習 6.1標準

平面上の 2 点 p≠qp\ne q を、端点以外で互いに交わらない三本の弧 a,b,ca,b,c で結んだ図形 Θ\Theta(θ 字形)を考える。S2∖ΘS^2\setminus\Theta がちょうど三つの連結成分を持つことを示せ。

解答

A=S2∖(a∪b)A=S^2\setminus(a\cup b)、B=S2∖(b∪c)B=S^2\setminus(b\cup c) とおく。a∪ba\cup b, b∪cb\cup c は単純閉曲線なので開集合で、A∩B=S2∖ΘA\cap B=S^2\setminus\Theta、A∪B=S2∖bA\cup B=S^2\setminus b((a∪b)∩(b∪c)=b(a\cup b)\cap(b\cup c)=b)。定理 3.1 (a) から H~∗(S2∖b)=0\tilde H_*(S^2\setminus b)=0、定理 4.1 から H~0(A)=H~0(B)=Z\tilde H_0(A)=\tilde H_0(B)=\mathbb{Z}。簡約 Mayer–Vietoris 完全列 0=H~1(A∪B)→H~0(A∩B)→H~0(A)⊕H~0(B)→H~0(A∪B)=00=\tilde H_1(A\cup B)\to\tilde H_0(A\cap B)\to\tilde H_0(A)\oplus\tilde H_0(B)\to\tilde H_0(A\cup B)=0 から H~0(S2∖Θ)≅Z2\tilde H_0(S^2\setminus\Theta)\cong\mathbb{Z}^2、すなわち成分は三つ(補題 2.2)。

演習 6.2易

K⊆S3K\subseteq S^3 を結び目(S1S^1 の埋め込みの像)とする。S3∖KS^3\setminus K のホモロジーを求めよ。結び目がほどけているかどうかで答えは変わるか。

解答

定理 3.1 (b) で k=1,n=3k=1,n=3 とすると、H~1(S3∖K)≅Z\tilde H_1(S^3\setminus K)\cong\mathbb{Z}、他は 00。答えは結び目の種類によらない。ホモロジーは結び目を区別できず、区別には補集合の基本群などが要る。

演習 6.3標準

連続な単射 f:Rn→Rnf:\mathbb{R}^n\to\mathbb{R}^n について、ff が全射でなくても f(Rn)f(\mathbb{R}^n) は開集合であることを確かめ、f(x)=x/(1+∣x∣)f(x)=x/(1+|x|) を例にとって f(Rn)f(\mathbb{R}^n) を求めよ。また ff が固有写像(コンパクト集合の逆像がコンパクト)なら ff は全射であることを示せ。

解答

定理 5.1 から f(Rn)f(\mathbb{R}^n) は開集合。例では ∣f(x)∣=∣x∣/(1+∣x∣)<1|f(x)|=|x|/(1+|x|)<1 で、yy (∣y∣<1|y|<1) に対し x=y/(1−∣y∣)x=y/(1-|y|) が逆像なので、f(Rn)f(\mathbb{R}^n) は開単位球。固有なら f(Rn)f(\mathbb{R}^n) は閉集合でもある: f(xk)→yf(x_k)\to y なら {f(xk)}∪{y}\{f(x_k)\}\cup\{y\} はコンパクトで、その逆像に xkx_k が入るので部分列が xx に収束し f(x)=yf(x)=y。空でない開かつ閉な集合なので Rn\mathbb{R}^n 全体(例 7.4[連結性])。

  • A. Hatcher, Algebraic Topology, Cambridge University Press, 2002 — 第 2.B 節(球面の補集合のホモロジー、Jordan–Brouwer の分離定理、領域不変性、Alexander の角付き球面)。
  • J. R. Munkres, Topology, 2nd ed., Prentice Hall, 2000 — 第 61–63 節(平面の分離定理と Jordan の曲線定理)。
  • 田村一郎『トポロジー』岩波書店、1972 — Jordan の曲線定理の章。
  • W. Fulton, Algebraic Topology: A First Course, Springer GTM 153, 1995 — 第 II 部(Jordan の曲線定理の初等的な証明)。

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執筆: Claude Code(Opus 5.5)、Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 3 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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