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Feller 過程と Feynman–Kac:生成子・Kato クラス・基底状態変換・Stratonovich 積分

対象読者: 本テーマのコルモゴロフの拡張定理、確率微分方程式(伊藤積分)の章と、強連続半群(ストーンの定理、ヒレ・吉田の定理)を学んだ人。シュレディンガー作用素の初歩があると読みやすくなります。

前提となる記事:Kolmogorov の拡張定理と連続性定理:有限次元分布から Wiener 測度へ、1 径数ユニタリ群と強連続半群:Stone・Hille–吉田・Trotter 積公式、確率微分方程式:伊藤積分はなぜ「未来を見ない」のか

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この記事の主題は、ランダムに動く粒子の平均的な振る舞いを、関数から関数への操作として扱う方法です。たとえば粒子が位置 xx から出発して時間 tt 後にいる場所での、ある量 ff の平均を、出発点 xx の関数として並べると、熱が広がるときと同じ形の操作になります。さらに粒子の通った道に沿って重みを掛けて平均すると、量子力学の Schrödinger 作用素が時間発展させる様子を、道についての平均として書けます。読み終えると、その公式がどこまで特異なポテンシャルで意味をもつか、また基底状態を使うとなぜ再びランダムな動きの話に戻せるかを説明できます。

  • Brown 運動の Markov 性(定理 2.2)は、時刻 ss 以降の道が「位置 XsX_s から新しく出発した Brown 運動」と同じ法則をもつことです。ここから、関数に作用する半群 Ptf(x)=Ex[f(Xt)]P_tf(x)=E_x[f(X_t)] が得られます。
  • Feller 半群は C0(E)C_0(E) 上の正値・縮小・強連続な半群です(定義 3.1)。生成子は正の最大値原理を満たし(命題 3.2)、半群は生成子で一意に決まります(定理 3.4)。Brown 運動の生成子は 12Δ\frac12\Delta です(定理 3.5)。
  • Feynman–Kac 公式 TtVf(x)=Ex[e−∫0tV(Xs)dsf(Xt)]T^V_tf(x)=E_x\bigl[e^{-\int_0^tV(X_s)ds}f(X_t)\bigr] は、有界一様連続な VV では 12Δ−V\frac12\Delta-V の生成する半群です(定理 4.2)。Kato クラスの VV(Coulomb ポテンシャルを含む)では、Khasminskii の補題(補題 4.5)が指数モーメントを抑え、半群が意味をもちます(定理 4.6)。
  • Doob の h 変換は、Qth=eλthQ_th=e^{\lambda t}h を満たす正の関数 hh で核を h(y)/h(x)h(y)/h(x) 倍して Markov 半群に直す操作です(定理 5.2)。Schrödinger 作用素の基底状態 ψ\psi で行うと、ドリフト ∇log⁡ψ\nabla\log\psi をもつ拡散が得られます(基底状態変換、定理 5.4)。
  • Stratonovich 積分は台形則の Riemann 和の極限で、伊藤積分との差は 12∫f′(Bs)ds\frac12\int f'(B_s)ds です(定理 6.2)。その代わり通常の連鎖律が成り立ちます(系 6.3)。

量子力学の Schrödinger 作用素 H=−12Δ+VH=-\frac12\Delta+V の熱半群 e−tHe^{-tH} は、Brown 運動の道についての期待値で書けます。これが Feynman–Kac 公式で、構成的場の量子論では作用素の問題(自己共役性、基底状態の一意性、相関関数の評価)を確率論の問題に翻訳する基本の道具です(Feynman–Kac 公式と場の模型)。その記事では有界連続な VV について Trotter 積公式から L2L^2 の等式を示しました。本稿は、同じ公式を確率過程の側から組み立て直します。

組み立ての材料は三つあります。第一は半群と生成子です。Markov 過程の情報は Ptf(x)=Ex[f(Xt)]P_tf(x)=E_x[f(X_t)] という作用素の族に集約され、その微分 A=ddtPt∣t=0A=\frac{d}{dt}P_t|_{t=0} が過程の「無限小の動き」を表します。Brown 運動なら A=12ΔA=\frac12\Delta です。第二はポテンシャルによる重みです。道に沿って e−∫Ve^{-\int V} の重みを掛けると、生成子は A−VA-V に変わります。ただし水素原子の Coulomb ポテンシャル −1/∣x∣-1/|x| のように VV が特異だと、重みの期待値が有限かどうかから問題になります。これを解決するのが Kato クラスと Khasminskii の補題です。第三はh 変換です。重み付きの半群は確率を保存しませんが、基底状態で割り直すと再び Markov 過程になり、量子力学の基底状態が「平衡分布 ψ2dx\psi^2dx をもつ拡散過程」として見えます。

最後の Stratonovich 積分は、ドリフトをもつ拡散を幾何的に(座標によらず)書くときに現れる積分です。伊藤積分と 12\frac12 の補正だけ異なるという関係を、Riemann 和から直接証明します。

Kolmogorov の拡張定理と連続性定理 の 定理 7.2[Kolmogorov の拡張定理と連続性定理] で作った道の空間を使います。Ω=Wd=C([0,∞),Rd)\Omega=W^d=C([0,\infty),\mathbb{R}^d)、Xt(w)=w(t)X_t(w)=w(t) を座標過程、F=B(Wd)\mathcal{F}=\mathcal{B}(W^d)、Ft=σ(Xs:s≤t)\mathcal{F}_t=\sigma(X_s:s\le t)、Px=WxP_x=\mathbb{W}_x(xx から出発する dd 次元 Brown 運動の法則)、ExE_x をその期待値とします。シフト θs:Wd→Wd\theta_s:W^d\to W^d を (θsw)(t)=w(s+t)(\theta_sw)(t)=w(s+t) で定めると、Xt∘θs=Xs+tX_t\circ\theta_s=X_{s+t} なので θs\theta_s は可測です(補題 7.1[Kolmogorov の拡張定理と連続性定理])。(t,w)↦w(t)(t,w)\mapsto w(t) は連続なので、ボレル関数 VV について (s,w)↦V(Xs(w))(s,w)\mapsto V(X_s(w)) は B([0,∞))⊗F\mathcal{B}([0,\infty))\otimes\mathcal{F}-可測で、Tonelli の定理が使えます。

dd 次元 Brown 運動の増分 Xt1−Xt0,…,Xtk−Xtk−1X_{t_1}-X_{t_0},\ldots,X_{t_k}-X_{t_{k-1}}(t0<⋯<tkt_0<\cdots<t_k)は独立で Xt−Xs∼N(0,(t−s)Id)X_t-X_s\sim N(0,(t-s)I_d) です。成分ごとの増分ベクトルは独立な Gauss ベクトルなので全体が Gauss ベクトルで、異なる時間区間どうしの共分散が 00 だからです(命題 5.3[特性関数と Gauss ベクトル])。

次の補題は、過去の情報で決まる変数 YY と、過去と独立な変数 ZZ があるとき、YY を固定した値とみなして ZZ だけについて平均してよい、という主張です。直後の Markov 性の証明で使います。

補題 2.1(独立な変数の凍結)✓

G⊂F\mathcal{G}\subset\mathcal{F} を部分 σ-加法族、YY を G\mathcal{G}-可測な Rd\mathbb{R}^d 値確率変数、ZZ を G\mathcal{G} と独立な可測空間 (M,M)(M,\mathcal{M}) 値確率変数、Φ:Rd×M→[0,∞]\Phi:\mathbb{R}^d\times M\to[0,\infty] を B(Rd)⊗M\mathcal{B}(\mathbb{R}^d)\otimes\mathcal{M}-可測とする。g(y)=E[Φ(y,Z)]g(y)=E[\Phi(y,Z)] とおくと gg は可測で、E[Φ(Y,Z)∣G]=g(Y)E[\Phi(Y,Z)\mid\mathcal{G}]=g(Y)。Φ\Phi が有界な場合も同じ。

証明(補題 2.1)

Φ=1A×B\Phi=\mathbf 1_{A\times B} のとき g(y)=1A(y)P(Z∈B)g(y)=\mathbf 1_A(y)P(Z\in B) で、G∈GG\in\mathcal{G} について 1G1A(Y)\mathbf 1_G\mathbf 1_A(Y) は G\mathcal{G}-可測、1B(Z)\mathbf 1_B(Z) はそれと独立なので E[1G1A(Y)1B(Z)]=E[1G1A(Y)]P(Z∈B)=E[1Gg(Y)]E[\mathbf 1_G\mathbf 1_A(Y)\mathbf 1_B(Z)]=E[\mathbf 1_G\mathbf 1_A(Y)]P(Z\in B)=E[\mathbf 1_Gg(Y)] です。等式 E[1G1C(Y,Z)]=E[1GgC(Y)]E[\mathbf 1_G\mathbf 1_C(Y,Z)]=E[\mathbf 1_Gg_C(Y)](gC(y)=P((y,Z)∈C)g_C(y)=P((y,Z)\in C))が成り立つ CC の全体は λ-系で、長方形(π-系)を含むので、定理 4.4[測度空間と Carathéodory の拡張定理] によりすべての C∈B(Rd)⊗MC\in\mathcal{B}(\mathbb{R}^d)\otimes\mathcal{M} で成り立ちます。gCg_C の可測性は 補題 3.1[直積測度と Fubini–Tonelli の定理] から従います。線形性で非負単関数へ、単調収束定理で非負可測関数へ広がります。有界な Φ\Phi は正部分と負部分に分けます。

定理 2.2(Brown 運動の Markov 性)✓

F:Wd→[0,∞]F:W^d\to[0,\infty](または有界)を可測関数、s≥0s\ge0、x∈Rdx\in\mathbb{R}^d とする。PxP_x-ほとんど確実に

Ex[F∘θs∣Fs]=EXs[F],E_x\bigl[F\circ\theta_s\mid\mathcal{F}_s\bigr]=E_{X_s}[F],

ここで右辺は関数 y↦Ey[F]y\mapsto E_y[F] に y=Xsy=X_s を代入したものである。

証明(定理 2.2)

PxP_x の下で Wt=Xs+t−XsW_t=X_{s+t}-X_s とおくと、θsX=Xs+W\theta_sX=X_s+W です。WW は連続で W0=0W_0=0、増分は XX の時刻 ss 以降の増分なので独立かつ N(0,(t−u)Id)N(0,(t-u)I_d) で、dd 次元標準 Brown 運動です。定理 7.2[Kolmogorov の拡張定理と連続性定理] の一意性から WW の法則は W\mathbb{W} です。

WW が Fs\mathcal{F}_s と独立であることを示します。r1<⋯<rk≤sr_1<\cdots<r_k\le s と 0<u1<⋯<um0<u_1<\cdots<u_m について、(Xr1,…,Xrk)(X_{r_1},\ldots,X_{r_k}) は X0=xX_0=x と時刻 ss 以前の増分の関数、(Wu1,…,Wum)(W_{u_1},\ldots,W_{u_m}) は時刻 ss 以降の増分の関数なので、両者は独立です。{(Xri)i∈B}\{(X_{r_i})_i\in B\} の形の事象全体と {(Wuj)j∈B′}\{(W_{u_j})_j\in B'\} の形の事象全体はそれぞれ π-系で、Fs\mathcal{F}_s と σ(W)\sigma(W) を生成します。一方の π-系の元 AA を固定すると P(A∩B)=P(A)P(B)P(A\cap B)=P(A)P(B) を満たす BB は λ-系なので、定理 4.4[測度空間と Carathéodory の拡張定理] を二回使えば Fs\mathcal{F}_s と σ(W)\sigma(W) は独立です。

Φ(y,w)=F(y+w)\Phi(y,w)=F(y+w) は連続写像 (y,w)↦y+w(y,w)\mapsto y+w と FF の合成なので可測です(Rd×Wd\mathbb{R}^d\times W^d は可分距離空間なので、ボレル集合族は直積 σ-加法族に等しい。補題 2.2[Kolmogorov の拡張定理と連続性定理] と同じ議論)。補題 2.1 を Y=XsY=X_s、Z=WZ=W に使うと Ex[F(Xs+W)∣Fs]=g(Xs)E_x[F(X_s+W)\mid\mathcal{F}_s]=g(X_s)、g(y)=∫F(y+w) W(dw)=Ey[F]g(y)=\int F(y+w)\,\mathbb{W}(dw)=E_y[F] です。

以下 EE は局所コンパクトな可分距離空間、C0(E)C_0(E) は無限遠で消える連続関数の空間(一様ノルム)です(Riesz–Markov–角谷の表現定理 の記号)。

Feller 半群は、Ptf(x)=Ex[f(Xt)]P_tf(x)=E_x[f(X_t)](出発点 xx から時間 tt 後の ff の平均)を作る操作 f↦Ptff\mapsto P_tf の性質を、過程そのものから切り離して取り出したものです。

定義 3.1(Feller 半群)↗

C0(E)C_0(E) 上の線形作用素の族 (Tt)t≥0(T_t)_{t\ge0} が Feller 半群であるとは、次を満たすことをいう。

  1. T0=IT_0=I、Tt+s=TtTsT_{t+s}=T_tT_s(s,t≥0s,t\ge0)。
  2. (正値性・劣 Markov 性)0≤f≤10\le f\le1 ならば 0≤Ttf≤10\le T_tf\le1。
  3. (強連続性)すべての f∈C0(E)f\in C_0(E) で ∥Ttf−f∥→0\|T_tf-f\|\to0(t↓0t\downarrow0)。

その生成子 AA を 定義 4.1[1 径数ユニタリ群と強連続半群] と同じく、D(A)={f∣lim⁡t↓0(Ttf−f)/tD(A)=\{f\mid\lim_{t\downarrow0}(T_tf-f)/t が C0(E)C_0(E) で存在}\}、AfAf をその極限で定める。

Riesz–Markov–角谷の定理(定理 4.1[Radon 測度と Riesz–Markov–角谷の表現定理])を f↦Ttf(x)f\mapsto T_tf(x) に使うと、全質量 11 以下の測度 Pt(x,dy)P_t(x,dy) で Ttf(x)=∫f(y)Pt(x,dy)T_tf(x)=\int f(y)P_t(x,dy) と書けます。これが推移確率で、Pt(x,E)<1P_t(x,E)<1 は「時刻 tt までに消滅(無限遠へ脱出)する確率」です。

次の命題の (3) の直感は、ff が最大になる点では、平均をとっても値は上がらない(Ttf(x0)≤f(x0)T_tf(x_0)\le f(x_0))ので、その点での時間変化の割合 Af(x0)Af(x_0) は正になれない、ということです。

命題 3.2(Feller 半群の基本性質)✓

(Tt)(T_t) を Feller 半群、AA をその生成子とする。

  1. ∥Tt∥≤1\|T_t\|\le1 で、t↦Ttft\mapsto T_tf はすべての t≥0t\ge0 で連続である。
  2. D(A)D(A) は稠密、AA は閉作用素で、f∈D(A)f\in D(A) なら Ttf∈D(A)T_tf\in D(A)、ddtTtf=ATtf=TtAf\frac{d}{dt}T_tf=AT_tf=T_tAf、Ttf−f=∫0tTsAf dsT_tf-f=\int_0^tT_sAf\,ds。λ>0\lambda>0 なら (λ−A)−1f=∫0∞e−λtTtf dt(\lambda-A)^{-1}f=\int_0^\infty e^{-\lambda t}T_tf\,dt、∥(λ−A)−1∥≤1/λ\|(\lambda-A)^{-1}\|\le1/\lambda。
  3. (正の最大値原理)f∈D(A)f\in D(A) が x0x_0 で最大値 f(x0)≥0f(x_0)\ge0 をとるならば Af(x0)≤0Af(x_0)\le0。
  4. (散逸性)f∈D(A)f\in D(A)、λ>0\lambda>0 ならば ∥(λ−A)f∥≥λ∥f∥\|(\lambda-A)f\|\ge\lambda\|f\|。
証明(命題 3.2)

(1) ∥f∥≤1\|f\|\le1 とし f=f+−f−f=f^+-f^- と分けると、f±f^\pm は C0(E)C_0(E) の元で値は [0,1][0,1] です。条件 2 から ∣Ttf∣≤Ttf++Ttf−=Tt∣f∣≤1|T_tf|\le T_tf^++T_tf^-=T_t|f|\le1。連続性は ∥Tt+hf−Ttf∥=∥Tt(Thf−f)∥≤∥Thf−f∥\|T_{t+h}f-T_tf\|=\|T_t(T_hf-f)\|\le\|T_hf-f\| と、h<0h<0 の側も ∥Ttf−Tt−∣h∣f∥≤∥T∣h∣f−f∥\|T_{t}f-T_{t-|h|}f\|\le\|T_{|h|}f-f\| から従います。

(2) (Tt)(T_t) は縮小半群なので、命題 4.2[1 径数ユニタリ群と強連続半群] を M=1M=1、ω=0\omega=0 で使えます(その (3) の証明は ∥T(t)∥≤Meωt\|T(t)\|\le Me^{\omega t} を満たす任意の組で通用します)。∥∫0∞e−λtTtf dt∥≤∫0∞e−λtdt ∥f∥=∥f∥/λ\|\int_0^\infty e^{-\lambda t}T_tf\,dt\|\le\int_0^\infty e^{-\lambda t}dt\,\|f\|=\|f\|/\lambda です。

(3) 正値性から Ttf≤Ttf+T_tf\le T_tf^+ で、f+/f(x0)f^+/f(x_0)(f(x0)>0f(x_0)>0 のとき)は値が [0,1][0,1] なので Ttf+≤f(x0)T_tf^+\le f(x_0)。f(x0)=0f(x_0)=0 なら f+=0f^+=0 です。いずれも Ttf(x0)≤f(x0)T_tf(x_0)\le f(x_0) で、(Ttf(x0)−f(x0))/t≤0(T_tf(x_0)-f(x_0))/t\le0 の極限をとれば Af(x0)≤0Af(x_0)\le0。

(4) f≠0f\ne0 とし、∣f∣|f| は C0(E)C_0(E) の元なので最大値をとる点 x0x_0 があります。−f-f に取り替えて f(x0)=∥f∥f(x_0)=\|f\| とすると、(3) から (λf−Af)(x0)≥λ∥f∥(\lambda f-Af)(x_0)\ge\lambda\|f\|。

逆に、稠密な定義域をもち正の最大値原理を満たす作用素 AA について、ある λ>0\lambda>0 で λ−A\lambda-A の値域が稠密なら、AA の閉包は Feller 半群を生成します(Hille–吉田の定理 定理 4.3[1 径数ユニタリ群と強連続半群] の Feller 版。Ethier–Kurtz の第 4 章。本稿では使いません)。Feller 半群からは、右連続で左極限をもつ道の Markov 過程が作れることも知られています。本稿で扱う過程はすべて Brown 運動から作るので、この一般論には立ち入りません。

半群が生成子で決まることは、次の初等的な補題で示せます。

補題 3.3(右微分が 0 の連続関数)✓

F:[0,t]→RF:[0,t]\to\mathbb{R} が連続で、各 s∈[0,t)s\in[0,t) で右微分 D+F(s)=lim⁡h↓0(F(s+h)−F(s))/hD^+F(s)=\lim_{h\downarrow0}(F(s+h)-F(s))/h が存在して 00 ならば、FF は定数である。

証明(補題 3.3)

ε>0\varepsilon>0 を固定し、ϕ(s)=F(s)−F(0)−εs\phi(s)=F(s)-F(0)-\varepsilon s、s∗=sup⁡{s∈[0,t]∣ϕ≤0 on [0,s]}s^*=\sup\{s\in[0,t]\mid\phi\le0\text{ on }[0,s]\} とします。ϕ\phi は連続なので ϕ(s∗)≤0\phi(s^*)\le0。s∗<ts^*<t なら、D+ϕ(s∗)=−ε<0D^+\phi(s^*)=-\varepsilon<0 から s∗s^* の右の近くで ϕ(s)<ϕ(s∗)≤0\phi(s)<\phi(s^*)\le0 となり、s∗s^* の定義に反します。よって F(s)−F(0)≤εsF(s)-F(0)\le\varepsilon s。−F-F にも同じ議論を使い、ε→0\varepsilon\to0 とすれば F(s)=F(0)F(s)=F(0) です。

定理 3.4(半群は生成子で決まる)✓

(Tt)(T_t)、(St)(S_t) を同じ生成子 AA(定義域を含めて同じ)をもつ C0(E)C_0(E) 上の Feller 半群とすると、すべての tt で Tt=StT_t=S_t。

証明(定理 3.4)

f∈D(A)f\in D(A)、t>0t>0、x∈Ex\in E を固定し、F(s)=(Tt−sSsf)(x)F(s)=(T_{t-s}S_sf)(x)(0≤s≤t0\le s\le t)とします。FF は 命題 3.2 (1) と縮小性から連続です。0<h<t−s0<h<t-s について

Tt−s−hSs+hf−Tt−sSsfh=Tt−s−h(Ss+hf−Ssfh−ASsf)+Tt−s−hASsf−Tt−sSsf−Tt−s−hSsfh.\frac{T_{t-s-h}S_{s+h}f-T_{t-s}S_sf}{h}=T_{t-s-h}\Bigl(\frac{S_{s+h}f-S_sf}{h}-AS_sf\Bigr)+T_{t-s-h}AS_sf-\frac{T_{t-s}S_sf-T_{t-s-h}S_sf}{h}.

第 1 項はノルムが括弧の中のノルム以下で 00 に収束します。Ssf∈D(A)S_sf\in D(A) なので 命題 3.2 (2) から r↦TrSsfr\mapsto T_rS_sf は微分 TrASsfT_rAS_sf をもち、第 3 項は Tt−sASsfT_{t-s}AS_sf に収束します。第 2 項も同じ極限に収束するので、D+F(s)=0D^+F(s)=0 です。補題 3.3 から Ttf(x)=F(0)=F(t)=Stf(x)T_tf(x)=F(0)=F(t)=S_tf(x)。D(A)D(A) は稠密で TtT_t、StS_t は有界なので Tt=StT_t=S_t です。

定理 3.5(Brown 運動の Feller 半群)✓

Ptf(x)=Ex[f(Xt)]=∫Rdpt(x−y)f(y) dyP_tf(x)=E_x[f(X_t)]=\int_{\mathbb{R}^d}p_t(x-y)f(y)\,dy、pt(z)=(2πt)−d/2e−∣z∣2/(2t)p_t(z)=(2\pi t)^{-d/2}e^{-|z|^2/(2t)} は C0(Rd)C_0(\mathbb{R}^d) 上の Feller 半群である。その生成子 AA は、ff と 2 階までの偏導関数がすべて C0(Rd)C_0(\mathbb{R}^d) に属する関数の空間 C02(Rd)C_0^2(\mathbb{R}^d) を定義域に含み、そこで Af=12ΔfAf=\frac12\Delta f。

証明(定理 3.5)

C0C_0 を保つこと。 B=X−xB=X-x は PxP_x の下で標準 Brown 運動なので Ptf(x)=E0[f(x+Xt)]P_tf(x)=E_0[f(x+X_t)]。xn→xx_n\to x なら f(xn+Xt)→f(x+Xt)f(x_n+X_t)\to f(x+X_t)、∣x∣→∞|x|\to\infty なら f(x+Xt)→0f(x+X_t)\to0 で、どちらも ∥f∥\|f\| で押さえられるので、優収束定理から PtfP_tf は連続で無限遠で消えます。

半群性。 Markov 性(定理 2.2)を F=f(Xs)F=f(X_s) に使うと、Pt+sf(x)=Ex[Ex[f(Xs)∘θt∣Ft]]=Ex[Psf(Xt)]=PtPsf(x)P_{t+s}f(x)=E_x\bigl[E_x[f(X_s)\circ\theta_t\mid\mathcal{F}_t]\bigr]=E_x[P_sf(X_t)]=P_tP_sf(x)。正値性と Pt1=1P_t1=1 は明らかです。

強連続性。 ff は一様連続(C0C_0 の関数)なので、連続度 ωf(δ)=sup⁡∣y∣≤δsup⁡x∣f(x+y)−f(x)∣→0\omega_f(\delta)=\sup_{|y|\le\delta}\sup_x|f(x+y)-f(x)|\to0。∣Ptf(x)−f(x)∣≤E0∣f(x+Xt)−f(x)∣≤ωf(δ)+2∥f∥P0(∣Xt∣>δ)|P_tf(x)-f(x)|\le E_0|f(x+X_t)-f(x)|\le\omega_f(\delta)+2\|f\|P_0(|X_t|>\delta) で、右辺は xx によらず t→0t\to0 で ωf(δ)\omega_f(\delta) に収束し、δ\delta は任意です。

生成子。 f∈C02f\in C_0^2 とし、Hesse 行列 ∇2f\nabla^2f の連続度を ω(δ)\omega(\delta) とします(各成分が C0C_0 なので一様連続)。Taylor の定理から f(x+y)=f(x)+∇f(x)⋅y+12yT∇2f(x)y+r(x,y)f(x+y)=f(x)+\nabla f(x)\cdot y+\frac12y^{\mathsf T}\nabla^2f(x)y+r(x,y)、∣r(x,y)∣≤12∣y∣2ω(∣y∣)⋅d|r(x,y)|\le\frac12|y|^2\omega(|y|)\cdot d です(剰余は中間点の Hesse 行列との差で、行列ノルムを成分の最大値の dd 倍で押さえた)。y=Xty=X_t として E0E_0 をとると、E0[Xt]=0E_0[X_t]=0、E0[XtiXtj]=tδijE_0[X^i_tX^j_t]=t\delta_{ij} から

∣Ptf(x)−f(x)t−12Δf(x)∣≤d2tE0[∣Xt∣2ω(∣Xt∣)]≤d2(ω(δ) d+2∥∇2f∥max⁡tE0[∣Xt∣2;∣Xt∣>δ]).\Bigl|\frac{P_tf(x)-f(x)}{t}-\frac12\Delta f(x)\Bigr|\le\frac{d}{2t}E_0\bigl[|X_t|^2\omega(|X_t|)\bigr]\le\frac d2\Bigl(\omega(\delta)\,d+\frac{2\|\nabla^2f\|_{\max}}{t}E_0\bigl[|X_t|^2;|X_t|>\delta\bigr]\Bigr).

Cauchy–Schwarz の不等式で E0[∣Xt∣2;∣Xt∣>δ]≤(E0∣Xt∣4)1/2P0(∣Xt∣>δ)1/2≤Ct⋅(dt/δ2)1/2E_0[|X_t|^2;|X_t|>\delta]\le(E_0|X_t|^4)^{1/2}P_0(|X_t|>\delta)^{1/2}\le Ct\cdot(dt/\delta^2)^{1/2} なので、最後の項は t→0t\to0 で 00 です。δ\delta は任意なので、xx について一様に (Ptf−f)/t→12Δf(P_tf-f)/t\to\frac12\Delta f です。

命題 3.6(Dynkin のマルチンゲール)✓

f∈D(A)f\in D(A)(AA は Brown 運動の生成子)ならば、すべての xx で

Mt=f(Xt)−f(X0)−∫0tAf(Xu) duM_t=f(X_t)-f(X_0)-\int_0^tAf(X_u)\,du

は PxP_x の下で (Ft)(\mathcal{F}_t)-マルチンゲールである。

証明(命題 3.6)

MtM_t は有界な適合過程です。s<ts<t、G∈FsG\in\mathcal{F}_s とします。Markov 性から Ex[f(Xt);G]=Ex[Pt−sf(Xs);G]E_x[f(X_t);G]=E_x[P_{t-s}f(X_s);G]、Fubini の定理と Markov 性から Ex[∫stAf(Xu)du;G]=∫stEx[Pu−sAf(Xs);G] du=Ex[∫0t−sPrAf(Xs)dr;G]E_x[\int_s^tAf(X_u)du;G]=\int_s^tE_x[P_{u-s}Af(X_s);G]\,du=E_x[\int_0^{t-s}P_rAf(X_s)dr;G]。命題 3.2 (2) の Pt−sf−f=∫0t−sPrAf drP_{t-s}f-f=\int_0^{t-s}P_rAf\,dr を点 XsX_s で評価する(点での評価は C0C_0 上の連続線形汎関数)と、Ex[Mt−Ms;G]=0E_x[M_t-M_s;G]=0 を得ます。

f∈C02f\in C^2_0 のとき、これは伊藤の公式(定理 5.2[確率微分方程式])の確率積分の項がマルチンゲールであることと同じ内容です。生成子は「f(Xt)f(X_t) からマルチンゲールを引いた残りのドリフト」として、過程の無限小の動きを表します。

可測関数 V:Rd→RV:\mathbb{R}^d\to\mathbb{R} と有界可測関数 ff に対し、期待値が意味をもつとき

TtVf(x)=Ex[e−∫0tV(Xs) dsf(Xt)]T^V_tf(x)=E_x\Bigl[e^{-\int_0^tV(X_s)\,ds}f(X_t)\Bigr]

と書きます。これを Feynman–Kac 半群と呼びます。まず半群性は Markov 性だけから出ます。

補題 4.1(Feynman–Kac 半群の半群性)✓

可測関数 VV が、すべての t≥0t\ge0 で cV(t)=sup⁡xEx[e∫0t∣V(Xs)∣ds]<∞c_V(t)=\sup_xE_x\bigl[e^{\int_0^t|V(X_s)|ds}\bigr]<\infty を満たすとする。このとき有界可測な ff について TtVfT^V_tf は well-defined な有界可測関数で ∣TtVf∣≤cV(t)∥f∥|T^V_tf|\le c_V(t)\|f\|、さらに Tt+sVf=TtV(TsVf)T^V_{t+s}f=T^V_t(T^V_sf)。

証明(補題 4.1)

評価は ∣e−∫Vf(Xt)∣≤e∫∣V∣∥f∥|e^{-\int V}f(X_t)|\le e^{\int|V|}\|f\| から従います。Φ(w)=e−∫0tV(w(s))dsf(w(t))\Phi(w)=e^{-\int_0^tV(w(s))ds}f(w(t)) とおくと TtVf(x)=∫Φ(x+w) W(dw)T_t^Vf(x)=\int\Phi(x+w)\,\mathbb{W}(dw) で、xx についての可測性は Fubini の定理によります。f≥0f\ge0 として示せば十分です(一般には f=f+−f−f=f^+-f^-)。F=e−∫0sV(Xr)drf(Xs)F=e^{-\int_0^sV(X_r)dr}f(X_s) とおくと F∘θt=e−∫tt+sV(Xr)drf(Xt+s)F\circ\theta_t=e^{-\int_t^{t+s}V(X_r)dr}f(X_{t+s}) です。e−∫0tV(Xr)dre^{-\int_0^tV(X_r)dr} は非負の Ft\mathcal{F}_t-可測変数なので、非負変数についての取り出し(定理 4.4[条件付き期待値] を単調収束定理で非負の場合に広げたもの)と 定理 2.2 から

Tt+sVf(x)=Ex[e−∫0tV(Xr)dr Ex[F∘θt∣Ft]]=Ex[e−∫0tV(Xr)dr TsVf(Xt)]=TtV(TsVf)(x).T^V_{t+s}f(x)=E_x\Bigl[e^{-\int_0^tV(X_r)dr}\,E_x[F\circ\theta_t\mid\mathcal{F}_t]\Bigr]=E_x\Bigl[e^{-\int_0^tV(X_r)dr}\,T^V_sf(X_t)\Bigr]=T^V_t(T^V_sf)(x).

定理 4.2(Feynman–Kac 公式(有界一様連続なポテンシャル))✓

VV を Rd\mathbb{R}^d 上の有界かつ一様連続な実数値関数とし、AA を Brown 運動の生成子(定理 3.5)とする。(TtV)(T^V_t) は C0(Rd)C_0(\mathbb{R}^d) 上の強連続半群で ∥TtV∥≤et∥V∥\|T^V_t\|\le e^{t\|V\|} を満たし、その生成子は A−VA-V(定義域 D(A)D(A))である。すなわち TtV=et(A−V)T^V_t=e^{t(A-V)} であり、f∈C02f\in C^2_0 なら u(t,x)=TtVf(x)u(t,x)=T^V_tf(x) は ∂tu=12Δu−Vu\partial_tu=\frac12\Delta u-Vu の解である。

証明は三段です。まず (TtV)(T^V_t) が強連続半群であることを確かめ、次にその生成子が A−VA-V を拡張することを計算し、最後に定義域がちょうど D(A)D(A) に一致することを、VV を掛ける作用素が小さい摂動であることから示します。

証明(定理 4.2)

半群であること。 cV(t)≤et∥V∥c_V(t)\le e^{t\|V\|} なので 補題 4.1 が使えます。f∈C0f\in C_0 なら、VV、ff の連続性と優収束定理から TtVfT^V_tf は連続で、∣TtVf∣≤et∥V∥Pt∣f∣|T^V_tf|\le e^{t\|V\|}P_t|f| から無限遠で消えます。∥TtVf−Ptf∥≤∥f∥(et∥V∥−1)\|T^V_tf-P_tf\|\le\|f\|(e^{t\|V\|}-1) と 定理 3.5 から強連続です。

生成子が A−VA-V を拡張すること。 f∈D(A)f\in D(A) とします。a=∫0tV(Xs)dsa=\int_0^tV(X_s)ds とおくと ∣a∣≤t∥V∥|a|\le t\|V\| で、∣e−a−1+a∣≤12a2e∣a∣|e^{-a}-1+a|\le\frac12a^2e^{|a|} なので

TtVf−ft−Ptf−ft=−Ex[at f(Xt)]+O(t)(x について一様).\frac{T^V_tf-f}{t}-\frac{P_tf-f}{t}=-E_x\Bigl[\frac at\,f(X_t)\Bigr]+O(t)\quad(\text{x について一様}).

∣Ex[V(Xs)f(Xt)]−V(x)f(x)∣≤∥f∥Ex∣V(Xs)−V(x)∣+∥V∥Ex∣f(Xt)−f(x)∣\bigl|E_x[V(X_s)f(X_t)]-V(x)f(x)\bigr|\le\|f\|E_x|V(X_s)-V(x)|+\|V\|E_x|f(X_t)-f(x)| で、定理 3.5 の強連続性の証明と同じく、VV と ff の一様連続性から右辺は s,t→0s,t\to0 で xx について一様に 00 に収束します。よって Ex[atf(Xt)]=1t∫0tEx[V(Xs)f(Xt)]ds→V(x)f(x)E_x[\frac at f(X_t)]=\frac1t\int_0^tE_x[V(X_s)f(X_t)]ds\to V(x)f(x) が一様に成り立ち、f∈D(AV)f\in D(A^V)、AVf=Af−VfA^Vf=Af-Vf です(AVA^V は (TtV)(T^V_t) の生成子)。

定義域の一致。 λ>∥V∥\lambda>\|V\| とします。∥(λ−A)−1∥≤1/λ\|(\lambda-A)^{-1}\|\le1/\lambda(命題 3.2 (2))なので、掛け算作用素 VV との積は ∥V(λ−A)−1∥<1\|V(\lambda-A)^{-1}\|<1 で、I+V(λ−A)−1I+V(\lambda-A)^{-1} は Neumann 級数で可逆です。よって λ−A+V=(I+V(λ−A)−1)(λ−A)\lambda-A+V=(I+V(\lambda-A)^{-1})(\lambda-A) は D(A)D(A) から C0C_0 への全単射です。一方 ∥TtV∥≤et∥V∥\|T^V_t\|\le e^{t\|V\|} なので、命題 4.2[1 径数ユニタリ群と強連続半群] (3) から λ−AV\lambda-A^V は D(AV)D(A^V) 上で単射です。g∈D(AV)g\in D(A^V) に対し (λ−A+V)g′=(λ−AV)g(\lambda-A+V)g'=(\lambda-A^V)g となる g′∈D(A)g'\in D(A) を取ると、AV⊃A−VA^V\supset A-V から (λ−AV)(g−g′)=0(\lambda-A^V)(g-g')=0、よって g=g′∈D(A)g=g'\in D(A) です。

VV が有界連続なら、定理 2.1[Feynman–Kac 表示と場の模型の汎関数積分] は L2(Rd)L^2(\mathbb{R}^d) 上で e−tHf=TtVfe^{-tH}f=T^V_tf(H=−12Δ+VH=-\frac12\Delta+V)を示しています。定理 4.2 はその C0C_0 版で、Trotter 積公式を使わず、生成子の計算と定義域の一致だけで同じ等式を得ています。

V(x)=−1/∣x∣V(x)=-1/|x|(d=3d=3)のような特異なポテンシャルでは、∫0tV(Xs)ds\int_0^tV(X_s)ds が有限か、e−∫Ve^{-\int V} が可積分かがまず問題です。

定義 4.3(Kato クラス(確率論的な定義))↗

可測関数 V:Rd→RV:\mathbb{R}^d\to\mathbb{R} が

lim⁡t↓0sup⁡x∈RdEx[∫0t∣V(Xs)∣ ds]=0\lim_{t\downarrow0}\sup_{x\in\mathbb{R}^d}E_x\Bigl[\int_0^t|V(X_s)|\,ds\Bigr]=0

を満たすとき、VV は Kato クラスに属するという。

Ex∫0t∣V(Xs)∣ds=∫∣V(y)∣∫0tps(x−y) ds dyE_x\int_0^t|V(X_s)|ds=\int|V(y)|\int_0^tp_s(x-y)\,ds\,dy(Tonelli)なので、これは ∣V∣|V| と「短時間の Green 関数」の畳み込みが一様に小さいという条件です。d≥3d\ge3 では ∫0∞ps(z)ds\int_0^\infty p_s(z)ds が cd∣z∣2−dc_d|z|^{2-d} になることから、この条件は Schrödinger 作用素 の 定義 4.1[シュレーディンガー作用素の自己共役性と束縛状態] と同値になります(Aizenman–Simon の定理。本稿では同値性を証明せず、確率論的な定義のほうを使います)。式に出てくる ∫0tps(x−y) ds\int_0^tp_s(x-y)\,ds は、粒子が時間 tt までに yy の近くで過ごす時間の、単位体積あたりの平均を表します。

例 4.4(Coulomb ポテンシャルは Kato クラス)

d=3d=3、V(x)=−1/∣x∣V(x)=-1/|x| とします。Z∼N(0,I3)Z\sim N(0,I_3) について E∣Z∣−1=∫0∞r−1(2π)−3/2e−r2/24πr2dr=2/πE|Z|^{-1}=\int_0^\infty r^{-1}(2\pi)^{-3/2}e^{-r^2/2}4\pi r^2dr=\sqrt{2/\pi} なので、E0∣Xs∣−1=2/(πs)E_0|X_s|^{-1}=\sqrt{2/(\pi s)} です。x≠0x\ne0 では、∣y∣−1|y|^{-1} の球面平均が 1/max⁡(∣x∣,r)≤1/r1/\max(|x|,r)\le1/r であること(Newton の定理。Lieb–Loss の第 9 章)から Ex∣Xs∣−1≤E0∣Xs∣−1E_x|X_s|^{-1}\le E_0|X_s|^{-1}。したがって

sup⁡xEx∫0tds∣Xs∣≤∫0t2πs ds=22tπ→0.\sup_xE_x\int_0^t\frac{ds}{|X_s|}\le\int_0^t\sqrt{\frac{2}{\pi s}}\,ds=2\sqrt{\frac{2t}{\pi}}\to0 .

一方 V=−1/∣x∣2V=-1/|x|^2 では E0∣Xs∣−2=1/sE_0|X_s|^{-2}=1/s で、∫0tds/s=∞\int_0^t ds/s=\infty となり Kato クラスに入りません。

Coulomb ポテンシャルは原点付近で非有界なので、道ごとに ∫∣V∣\int|V| を押さえることはできず、e∫∣V∣e^{\int|V|} の平均が有限かどうかは自明ではありません。次の補題は、平均 Ex∫WE_x\int W が 1 より小さく押さえられれば、指数の平均も押さえられる、と述べます。証明は指数を ∑nIn/n!\sum_nI^n/n! に展開し、nn 重積分を帰納法で αn\alpha^n 以下と評価します。

補題 4.5(Khasminskii の補題)✓

W≥0W\ge0 を可測関数とし、t>0t>0 について α=sup⁡xEx∫0tW(Xs) ds<1\alpha=\sup_xE_x\int_0^tW(X_s)\,ds<1 とする。このとき

sup⁡xEx[e∫0tW(Xs)ds]≤11−α.\sup_xE_x\Bigl[e^{\int_0^tW(X_s)ds}\Bigr]\le\frac1{1-\alpha}.
証明(補題 4.5)

I=∫0tW(Xs)dsI=\int_0^tW(X_s)ds とします。被積分関数の対称性から

Inn!=∫0<s1<⋯<sn<tW(Xs1)⋯W(Xsn) ds1⋯dsn.\frac{I^n}{n!}=\int_{0<s_1<\cdots<s_n<t}W(X_{s_1})\cdots W(X_{s_n})\,ds_1\cdots ds_n .

gn(r,y)=Ey∫0<s1<⋯<sn<r∏iW(Xsi) dsg_n(r,y)=E_y\int_{0<s_1<\cdots<s_n<r}\prod_iW(X_{s_i})\,ds とおき、sup⁡ygn(t,y)≤αn\sup_yg_n(t,y)\le\alpha^n を帰納法で示します。n=1n=1 は仮定です。gn(r,y)g_n(r,y) は rr について非減少です。s1s_1 を外に出して内側の積分を Φt−s1∘θs1\Phi_{t-s_1}\circ\theta_{s_1}(Φr(w)=∫0<u2<⋯<un<r∏W(w(ui))du\Phi_r(w)=\int_{0<u_2<\cdots<u_n<r}\prod W(w(u_i))du)と書くと、Tonelli の定理と 定理 2.2(非負の汎関数)から

gn(t,x)=∫0tEx[W(Xs1) gn−1(t−s1,Xs1)]ds1≤sup⁡ygn−1(t,y)⋅Ex∫0tW(Xs1)ds1≤αn−1⋅α.g_n(t,x)=\int_0^tE_x\bigl[W(X_{s_1})\,g_{n-1}(t-s_1,X_{s_1})\bigr]ds_1\le\sup_yg_{n-1}(t,y)\cdot E_x\int_0^tW(X_{s_1})ds_1\le\alpha^{n-1}\cdot\alpha .

単調収束定理で和をとると ExeI=∑nEx[In/n!]≤∑nαn=1/(1−α)E_xe^I=\sum_n E_x[I^n/n!]\le\sum_n\alpha^n=1/(1-\alpha)。

定理 4.6(Kato クラスのポテンシャルの Feynman–Kac 半群)✓

VV を Kato クラスの関数とする。

  1. 定数 C,cC,c があって sup⁡xEx[e∫0t∣V(Xs)∣ds]≤Cect\sup_xE_x\bigl[e^{\int_0^t|V(X_s)|ds}\bigr]\le Ce^{ct}(すべての t≥0t\ge0)。特に PxP_x-ほとんど確実に ∫0t∣V(Xs)∣ds<∞\int_0^t|V(X_s)|ds<\infty。
  2. 有界可測な ff について TtVfT^V_tf は well-defined で ∥TtVf∥∞≤Cect∥f∥∞\|T^V_tf\|_\infty\le Ce^{ct}\|f\|_\infty、かつ Tt+sV=TtVTsVT^V_{t+s}=T^V_tT^V_s。
  3. VnV_n が可測で ∣Vn∣≤∣V∣|V_n|\le|V|、ルベーグ測度についてほとんど至るところ Vn→VV_n\to V ならば、すべての t>0t>0、xx と有界可測な ff について TtVnf(x)→TtVf(x)T^{V_n}_tf(x)\to T^V_tf(x)。特に VV の切断 Vn=max⁡(−n,min⁡(V,n))V_n=\max(-n,\min(V,n)) について成り立つ。
証明(定理 4.6)

(1) t0>0t_0>0 を sup⁡xEx∫0t0∣V(Xs)∣ds≤12\sup_xE_x\int_0^{t_0}|V(X_s)|ds\le\frac12 となるように取ると、補題 4.5 から sup⁡xExe∫0t0∣V∣≤2\sup_xE_xe^{\int_0^{t_0}|V|}\le2。補題 4.1 の証明と同じく Markov 性で区間 [0,t0][0,t_0]、[t0,2t0][t_0,2t_0]、… に分けると sup⁡xExe∫0kt0∣V∣≤2k\sup_xE_xe^{\int_0^{kt_0}|V|}\le2^k。k=⌈t/t0⌉k=\lceil t/t_0\rceil として C=2C=2、c=(log⁡2)/t0c=(\log2)/t_0 が取れます。

(2) (1) から cV(t)≤Cect<∞c_V(t)\le Ce^{ct}<\infty なので 補題 4.1 です。

(3) 収束しない点の集合 NN はルベーグ零集合です。s>0s>0 では XsX_s の PxP_x の下の分布は密度 ps(⋅−x)p_s(\cdot-x) をもつので、Ex∫0t1N(Xs)ds=0E_x\int_0^t\mathbf 1_N(X_s)ds=0。よって PxP_x-ほとんど確実に、ほとんどすべての s∈[0,t]s\in[0,t] で Xs∉NX_s\notin N で、そこでは Vn(Xs)→V(Xs)V_n(X_s)\to V(X_s)。(1) から ∫0t∣V(Xs)∣ds<∞\int_0^t|V(X_s)|ds<\infty も成り立つので、ss についての優収束定理から ∫0tVn(Xs)ds→∫0tV(Xs)ds\int_0^tV_n(X_s)ds\to\int_0^tV(X_s)ds(a.s.)。∣e−∫Vnf(Xt)∣≤e∫∣V∣∥f∥|e^{-\int V_n}f(X_t)|\le e^{\int|V|}\|f\| は (1) により可積分なので、ω\omega についての優収束定理から結論を得ます。

注意 4.7

Kato クラスの VV では、VV は −12Δ-\frac12\Delta に関して形式限界 00 の摂動です(定理 4.2[シュレーディンガー作用素の自己共役性と束縛状態])。形式和として定まる自己共役作用素 H=−12Δ∔VH=-\frac12\Delta\dotplus V について、L2L^2 上で e−tHf=TtVfe^{-tH}f=T^V_tf が成り立ちます(Simon の総説 “Schrödinger semigroups” の §B、Aizenman–Simon)。証明は、切断 VnV_n について有界な場合の公式を使い、作用素の側では形式の単調収束定理、道の側では 定理 4.6 (3) で極限をとるものです。形式の単調収束定理が Rikai にまだないので、本稿ではこの同定を主張にとどめます。TtVT^V_t は L∞L^\infty から有界連続関数への作用素(強 Feller 性)にもなりますが、これも証明しません。

Feynman–Kac 半群は TtV1≠1T^V_t1\ne1 なので確率を保存しません。正の固有関数で「ゲージ変換」すると、確率を保存する半群に戻せます。

定義 5.1(正値核の半群)↗

可測空間 (E,E)(E,\mathcal{E}) 上の核の族 (Qt)t≥0(Q_t)_{t\ge0}(各 Qt(x,⋅)Q_t(x,\cdot) は有限測度、各 AA で x↦Qt(x,A)x\mapsto Q_t(x,A) は可測、sup⁡xQt(x,E)<∞\sup_xQ_t(x,E)<\infty)が Q0(x,⋅)=δxQ_0(x,\cdot)=\delta_x と Chapman–Kolmogorov 方程式 Qt+s(x,A)=∫Qt(x,dy)Qs(y,A)Q_{t+s}(x,A)=\int Q_t(x,dy)Q_s(y,A) を満たすとき、正値核の半群という。Qtf(x)=∫f(y)Qt(x,dy)Q_tf(x)=\int f(y)Q_t(x,dy) と書く。Qt(x,E)=1Q_t(x,E)=1 がすべての t,xt,x で成り立つとき Markov 半群という。

VV が Kato クラスなら TtV(x,A)=Ex[e−∫0tV(Xs)ds;Xt∈A]T^V_t(x,A)=E_x[e^{-\int_0^tV(X_s)ds};X_t\in A] は正値核の半群です(定理 4.6 (2))。

h(y)/h(x)h(y)/h(x) を掛けるのは、Qth=eλthQ_th=e^{\lambda t}h のとき、e−λte^{-\lambda t} と合わせて核の全質量がちょうど 11 になるようにするためです。確率を保存する半群に戻す操作と考えてください。

定理 5.2(Doob の h 変換)✓

(Qt)(Q_t) を正値核の半群、h:E→(0,∞)h:E\to(0,\infty) を可測関数、λ∈R\lambda\in\mathbb{R} とし、すべての tt で Qth=eλthQ_th=e^{\lambda t}h(左辺が有限であることを含む)とする。

Qth(x,dy)=e−λth(y)h(x)Qt(x,dy)Q^h_t(x,dy)=e^{-\lambda t}\frac{h(y)}{h(x)}Q_t(x,dy)

は Markov 半群である。さらに点 xx と関数 ff(hfhf が QtQ_t について可積分)について、lim⁡t↓0(Qt(hf)(x)−h(x)f(x))/t=G(x)\lim_{t\downarrow0}(Q_t(hf)(x)-h(x)f(x))/t=G(x) が存在すれば

lim⁡t↓0Qthf(x)−f(x)t=G(x)h(x)−λf(x).\lim_{t\downarrow0}\frac{Q^h_tf(x)-f(x)}{t}=\frac{G(x)}{h(x)}-\lambda f(x).
証明(定理 5.2)

Qth(x,E)=e−λtQth(x)/h(x)=1Q^h_t(x,E)=e^{-\lambda t}Q_th(x)/h(x)=1。可測性は Qt(x,⋅)Q_t(x,\cdot) の性質から従います。Chapman–Kolmogorov 方程式は

∫Qth(x,dy)Qsh(y,A)=∫e−λth(y)h(x)Qt(x,dy) e−λsQs(h1A)(y)h(y)=e−λ(t+s)h(x)Qt+s(h1A)(x)=Qt+sh(x,A).\int Q^h_t(x,dy)Q^h_s(y,A)=\int e^{-\lambda t}\frac{h(y)}{h(x)}Q_t(x,dy)\,e^{-\lambda s}\frac{Q_s(h\mathbf 1_A)(y)}{h(y)}=\frac{e^{-\lambda(t+s)}}{h(x)}Q_{t+s}(h\mathbf 1_A)(x)=Q^h_{t+s}(x,A).

生成子の式は Qthf−f=e−λth−1(Qt(hf)−hf)+(e−λt−1)fQ^h_tf-f=e^{-\lambda t}h^{-1}\bigl(Q_t(hf)-hf\bigr)+(e^{-\lambda t}-1)f を tt で割れば得られます。

例 5.3(ドリフトをもつ Brown 運動)

Qt=PtQ_t=P_t(Brown 運動)、θ∈Rd\theta\in\mathbb{R}^d、h(x)=e⟨θ,x⟩h(x)=e^{\langle\theta,x\rangle} とします。正規分布の積率母関数から Pth=e∣θ∣2t/2hP_th=e^{|\theta|^2t/2}h です。平方完成すると

Pthf(x)=e−∣θ∣2t/2∫f(y)e⟨θ,y−x⟩pt(y−x) dy=∫f(y)pt(y−x−θt) dy=E0f(x+θt+Xt),P^h_tf(x)=e^{-|\theta|^2t/2}\int f(y)e^{\langle\theta,y-x\rangle}p_t(y-x)\,dy=\int f(y)p_t(y-x-\theta t)\,dy=E_0f(x+\theta t+X_t),

つまり h 変換はドリフト θ\theta の Brown 運動 x+θt+Btx+\theta t+B_t で、生成子は 12Δ+θ⋅∇\frac12\Delta+\theta\cdot\nabla です。道の空間では、Ft\mathcal{F}_t 上で PxP_x に密度 e⟨θ,Xt−x⟩−∣θ∣2t/2e^{\langle\theta,X_t-x\rangle-|\theta|^2t/2} を掛けた測度がこの過程の法則で、密度は指数マルチンゲール(定理 6.1[マルチンゲールとブラウン運動] (c))です。

Schrödinger 作用素 H=−12Δ+VH=-\frac12\Delta+V の基底状態 ψ>0\psi>0、Hψ=EψH\psi=E\psi は、Feynman–Kac 半群の固有関数 TtVψ=e−EtψT^V_t\psi=e^{-Et}\psi になるはずです。これを確かめてから h 変換を適用します。

定理 5.4(基底状態変換)✓

VV を Rd\mathbb{R}^d 上の有界かつ一様連続な関数とし、ψ∈C2(Rd)\psi\in C^2(\mathbb{R}^d) は ψ>0\psi>0 で、ψ\psi と 2 階までの偏導関数が有界であり、ある E∈RE\in\mathbb{R} について

−12Δψ+Vψ=Eψ-\tfrac12\Delta\psi+V\psi=E\psi

を満たすとする。このとき

  1. すべての t≥0t\ge0 で TtVψ=e−EtψT^V_t\psi=e^{-Et}\psi。
  2. Ptψf=eEtψ−1TtV(ψf)P^\psi_tf=e^{Et}\psi^{-1}T^V_t(\psi f) は Markov 半群である。
  3. f∈Cc2(Rd)f\in C^2_c(\mathbb{R}^d) なら、各点 xx で lim⁡t↓0Ptψf(x)−f(x)t=12Δf(x)+∇log⁡ψ(x)⋅∇f(x)\displaystyle\lim_{t\downarrow0}\frac{P^\psi_tf(x)-f(x)}{t}=\frac12\Delta f(x)+\nabla\log\psi(x)\cdot\nabla f(x)。
  4. さらに ψ∈L2(Rd)\psi\in L^2(\mathbb{R}^d) なら、測度 ψ(x)2dx\psi(x)^2dx は (Ptψ)(P^\psi_t) の不変測度である:有界可測な ff について ∫Ptψf ψ2dx=∫fψ2dx\int P^\psi_tf\,\psi^2dx=\int f\psi^2dx。
証明(定理 5.4)

(1) xx を固定し g(s)=TsVψ(x)g(s)=T^V_s\psi(x) とします。道の連続性と優収束定理(被積分関数は es∥V∥∥ψ∥e^{s\|V\|}\|\psi\| 以下)から gg は連続です。定理 4.6 (2) の半群性(有界な VV は Kato クラス)から g(s+h)−g(s)=TsV(ThVψ−ψ)(x)g(s+h)-g(s)=T^V_s(T^V_h\psi-\psi)(x) です。各点 yy で

ThVψ(y)−ψ(y)h=Phψ(y)−ψ(y)h+Ey[e−∫0hV(Xs)ds−1hψ(Xh)]→12Δψ(y)−V(y)ψ(y)=−Eψ(y).\frac{T^V_h\psi(y)-\psi(y)}{h}=\frac{P_h\psi(y)-\psi(y)}{h}+E_y\Bigl[\frac{e^{-\int_0^hV(X_s)ds}-1}{h}\psi(X_h)\Bigr]\to\tfrac12\Delta\psi(y)-V(y)\psi(y)=-E\psi(y).

第 1 項の収束は 定理 3.5 の生成子の計算を点 yy で行えば(Hesse 行列の連続性だけで)得られ、Taylor の定理から ∣Phψ−ψ∣/h≤d22∥∇2ψ∥max⁡|P_h\psi-\psi|/h\le\frac{d^2}2\|\nabla^2\psi\|_{\max} と一様に有界です。第 2 項の収束は VV、ψ\psi の連続性と優収束定理により、有界性は ∥V∥eh∥V∥∥ψ∥\|V\|e^{h\|V\|}\|\psi\| です。TsVT^V_s は有界な重み e−∫0sVe^{-\int_0^sV} をもつ期待値なので、優収束定理から右微分 D+g(s)=TsV(−Eψ)(x)=−Eg(s)D^+g(s)=T^V_s(-E\psi)(x)=-Eg(s)。F(s)=eEsg(s)F(s)=e^{Es}g(s) は連続で D+F=0D^+F=0 なので、補題 3.3 により F(s)=F(0)=ψ(x)F(s)=F(0)=\psi(x) です。

(2) (1) と 定理 5.2(Qt=TtVQ_t=T^V_t、h=ψh=\psi、λ=−E\lambda=-E)から従います。

(3) ψf∈Cc2⊂D(A)\psi f\in C^2_c\subset D(A) なので、定理 4.2 から (TtV(ψf)−ψf)/t→12Δ(ψf)−Vψf(T^V_t(\psi f)-\psi f)/t\to\frac12\Delta(\psi f)-V\psi f(一様に)。定理 5.2 の生成子の式に代入し、12Δ(ψf)=12fΔψ+∇ψ⋅∇f+12ψΔf\frac12\Delta(\psi f)=\frac12f\Delta\psi+\nabla\psi\cdot\nabla f+\frac12\psi\Delta f と 12Δψ−Vψ+Eψ=0\frac12\Delta\psi-V\psi+E\psi=0 を使うと

12Δ(ψf)−Vψfψ+Ef=12Δf+∇ψψ⋅∇f+fψ(12Δψ−Vψ+Eψ)=12Δf+∇log⁡ψ⋅∇f.\frac{\frac12\Delta(\psi f)-V\psi f}{\psi}+Ef=\frac12\Delta f+\frac{\nabla\psi}{\psi}\cdot\nabla f+\frac{f}{\psi}\Bigl(\frac12\Delta\psi-V\psi+E\psi\Bigr)=\frac12\Delta f+\nabla\log\psi\cdot\nabla f .

(4) 定理 2.1[Feynman–Kac 表示と場の模型の汎関数積分](M=1M=1)により、L2L^2 の元 ϕ\phi について e−tHϕ=TtVϕe^{-tH}\phi=T^V_t\phi(a.e.)で、e−tHe^{-tH} は自己共役です。ψ\psi と ψf\psi f は L2L^2 に属するので、(1) を使って

∫Ptψf ψ2dx=eEt⟨ψ,e−tH(ψf)⟩=eEt⟨e−tHψ,ψf⟩=eEt⟨e−Etψ,ψf⟩=∫fψ2dx.\int P^\psi_tf\,\psi^2dx=e^{Et}\langle\psi,e^{-tH}(\psi f)\rangle=e^{Et}\langle e^{-tH}\psi,\psi f\rangle=e^{Et}\langle e^{-Et}\psi,\psi f\rangle=\int f\psi^2dx .

基底状態変換で、量子力学の基底状態 ψ\psi は「ドリフト ∇log⁡ψ\nabla\log\psi で原点付近に引き戻される拡散」に、確率密度 ψ2\psi^2 はその拡散の平衡分布(時間発展で分布が変わらない測度。定理 5.4 (4))に対応します。Feynman–Kac 半群の「確率が減る(V>0V>0)・増える(V<0V<0)」という重みが、ドリフトに吸収されたわけです。

例 5.5(Pöschl–Teller ポテンシャル)

d=1d=1、V(x)=−sech⁡2xV(x)=-\operatorname{sech}^2x、ψ(x)=sech⁡x\psi(x)=\operatorname{sech}x とします。ψ′=−sech⁡xtanh⁡x\psi'=-\operatorname{sech}x\tanh x、ψ′′=sech⁡x (1−2sech⁡2x)\psi''=\operatorname{sech}x\,(1-2\operatorname{sech}^2x) なので

−12ψ′′+Vψ=−12sech⁡x+sech⁡3x−sech⁡3x=−12ψ,-\tfrac12\psi''+V\psi=-\tfrac12\operatorname{sech}x+\operatorname{sech}^3x-\operatorname{sech}^3x=-\tfrac12\psi ,

すなわち E=−12E=-\frac12 です。VV は導関数が有界なので一様連続、ψ\psi と導関数は有界で ψ∈L2\psi\in L^2 なので、定理 5.4 がすべて使えます。変換後の生成子は 12f′′−tanh⁡(x)f′\frac12f''-\tanh(x)f' で、原点から離れるほど強く(最大で速さ 11 で)引き戻すドリフトをもち、平衡分布は 12sech⁡2x dx\frac12\operatorname{sech}^2x\,dx です(∫sech⁡2x dx=2\int\operatorname{sech}^2x\,dx=2)。

0ψ² = sech²x / 2x
Pöschl–Teller ポテンシャルの基底状態変換:平衡密度 sech²(x)/2(曲線)とドリフト −tanh x(矢印)。ドリフトは原点に向かい、|x| が大きいところで速さ 1 に近づく

調和振動子 V(x)=12x2V(x)=\frac12x^2、ψ=e−x2/2\psi=e^{-x^2/2} に同じ計算をすると、生成子 12f′′−xf′\frac12f''-xf' の Ornstein–Uhlenbeck 過程と平衡分布 N(0,12)N(0,\frac12) が得られます。ただし VV が非有界なので 定理 5.4 の仮定を満たさず、この場合の正当化には別の議論(Mehler 核の直接計算など)が要ります。

以下 d=1d=1 とし、(Bt)(B_t) を標準 Brown 運動、(Ft)(\mathcal{F}_t) をその自然なフィルトレーションとします。[0,T][0,T] の分割 Δ:0=t0<t1<⋯<tn=T\Delta:0=t_0<t_1<\cdots<t_n=T の幅を ∣Δ∣=max⁡i(ti+1−ti)|\Delta|=\max_i(t_{i+1}-t_i)、ΔBi=Bti+1−Bti\Delta B_i=B_{t_{i+1}}-B_{t_i}、hi=ti+1−tih_i=t_{i+1}-t_i と書きます。

定義 6.1(Stratonovich 積分)↗

連続関数 ff について、台形則の Riemann 和

SΔ(f)=∑i=0n−1f(Bti)+f(Bti+1)2 ΔBiS_\Delta(f)=\sum_{i=0}^{n-1}\frac{f(B_{t_i})+f(B_{t_{i+1}})}{2}\,\Delta B_i

が ∣Δ∣→0|\Delta|\to0 のとき確率収束するならば、その極限を ∫0Tf(Bs)∘dBs\int_0^Tf(B_s)\circ dB_s と書き、Stratonovich 積分という。

左端点 f(Bti)f(B_{t_i}) を使う和は伊藤積分に収束し(下の証明の第 1 段)、右端点との平均を使う和は別の極限をもちます。Riemann–Stieltjes 積分なら端点の選び方によらないはずのところで差が出るのは、Brown 運動の道が有界変動でないからです(系 3.2[確率微分方程式])。

定理 6.2(Stratonovich 積分と伊藤積分の関係)✓

f∈C2(R)f\in C^2(\mathbb{R}) で f′f'、f′′f'' が有界ならば、∫0Tf(Bs)∘dBs\int_0^Tf(B_s)\circ dB_s が存在して

∫0Tf(Bs)∘dBs=∫0Tf(Bs) dBs+12∫0Tf′(Bs) ds.\int_0^Tf(B_s)\circ dB_s=\int_0^Tf(B_s)\,dB_s+\frac12\int_0^Tf'(B_s)\,ds .

収束は L1(P)L^1(P) で起こる。

証明(定理 6.2)

SΔ(f)=LΔ+RΔS_\Delta(f)=L_\Delta+R_\Delta、LΔ=∑if(Bti)ΔBiL_\Delta=\sum_if(B_{t_i})\Delta B_i、RΔ=12∑i(f(Bti+1)−f(Bti))ΔBiR_\Delta=\frac12\sum_i\bigl(f(B_{t_{i+1}})-f(B_{t_i})\bigr)\Delta B_i と分けます。

(1) LΔ→∫0Tf(B) dBL_\Delta\to\int_0^Tf(B)\,dB(L2L^2)。 ∣f(x)∣≤∣f(0)∣+∥f′∥∣x∣|f(x)|\le|f(0)|+\|f'\||x| なので f(B)f(B) は L2[0,T]\mathcal{L}^2[0,T] に属し、XtΔ=∑if(Bti)1(ti,ti+1](t)X^\Delta_t=\sum_if(B_{t_i})\mathbf 1_{(t_i,t_{i+1}]}(t) は単純過程で LΔ=∫XΔdBL_\Delta=\int X^\Delta dB です(定義 4.2[確率微分方程式])。E∣f(Bt)−f(Bti)∣2≤∥f′∥2(t−ti)E|f(B_t)-f(B_{t_i})|^2\le\|f'\|^2(t-t_i) から E∫0T∣f(Bt)−XtΔ∣2dt≤∥f′∥2T∣Δ∣→0E\int_0^T|f(B_t)-X^\Delta_t|^2dt\le\|f'\|^2T|\Delta|\to0。伊藤等長性(定理 4.7[確率微分方程式])により E∣LΔ−∫f(B)dB∣2→0E|L_\Delta-\int f(B)dB|^2\to0。

(2) RΔ→12∫0Tf′(Bs)dsR_\Delta\to\frac12\int_0^Tf'(B_s)ds(L1L^1)。 Taylor の定理から f(Bti+1)−f(Bti)=f′(Bti)ΔBi+rif(B_{t_{i+1}})-f(B_{t_i})=f'(B_{t_i})\Delta B_i+r_i、∣ri∣≤12∥f′′∥(ΔBi)2|r_i|\le\frac12\|f''\|(\Delta B_i)^2。よって

2RΔ=∑if′(Bti)hi+∑if′(Bti)((ΔBi)2−hi)+∑iriΔBi.2R_\Delta=\sum_if'(B_{t_i})h_i+\sum_if'(B_{t_i})\bigl((\Delta B_i)^2-h_i\bigr)+\sum_ir_i\Delta B_i .

第 1 項は連続関数 s↦f′(Bs)s\mapsto f'(B_s) の Riemann 和なので各道で ∫0Tf′(Bs)ds\int_0^Tf'(B_s)ds に収束し、∥f′∥T\|f'\|T で押さえられるので L1L^1 でも収束します。第 2 項の各項 ξi\xi_i について、i<ji<j なら ξif′(Btj)\xi_if'(B_{t_j}) は Ftj\mathcal{F}_{t_j}-可測で (ΔBj)2−hj(\Delta B_j)^2-h_j は Ftj\mathcal{F}_{t_j} と独立で平均 00 なので、命題 4.5[条件付き期待値] から E[ξiξj]=0E[\xi_i\xi_j]=0。E[ξi2]≤∥f′∥2Var((ΔBi)2)=2∥f′∥2hi2E[\xi_i^2]\le\|f'\|^2\mathrm{Var}((\Delta B_i)^2)=2\|f'\|^2h_i^2 なので、E∣∑ξi∣2≤2∥f′∥2T∣Δ∣→0E|\sum\xi_i|^2\le2\|f'\|^2T|\Delta|\to0。第 3 項は E∑∣riΔBi∣≤12∥f′′∥∑iE∣ΔBi∣3=12∥f′′∥ E∣Z∣3∑ihi3/2≤12∥f′′∥E∣Z∣3 T∣Δ∣1/2→0E\sum|r_i\Delta B_i|\le\frac12\|f''\|\sum_iE|\Delta B_i|^3=\frac12\|f''\|\,E|Z|^3\sum_ih_i^{3/2}\le\frac12\|f''\|E|Z|^3\,T|\Delta|^{1/2}\to0(Z∼N(0,1)Z\sim N(0,1))。

系 6.3(Stratonovich 積分の連鎖律)✓

F∈C3(R)F\in C^3(\mathbb{R}) で F′′F''、F′′′F''' が有界ならば

F(BT)−F(B0)=∫0TF′(Bs)∘dBs.F(B_T)-F(B_0)=\int_0^TF'(B_s)\circ dB_s .
証明(系 6.3)

伊藤の公式(定理 5.2[確率微分方程式]、f(t,x)=F(x)f(t,x)=F(x)、X=BX=B)から F(BT)−F(B0)=∫0TF′(B)dB+12∫0TF′′(B)dsF(B_T)-F(B_0)=\int_0^TF'(B)dB+\frac12\int_0^TF''(B)ds。定理 6.2 を f=F′f=F'(f′=F′′f'=F''、f′′=F′′′f''=F''' は有界)に使えば、右辺は ∫0TF′(B)∘dB\int_0^TF'(B)\circ dB です。

伊藤積分はマルチンゲールになる(未来を見ない)代わりに連鎖律に補正項 12F′′\frac12F'' が付き、Stratonovich 積分は連鎖律がそのまま成り立つ代わりにマルチンゲール性を失います。微分方程式で書けば、Stratonovich 形 dX=σ(X)∘dB+b(X)dtdX=\sigma(X)\circ dB+b(X)dt は伊藤形 dX=σ(X)dB+(b+12σσ′)(X)dtdX=\sigma(X)dB+\bigl(b+\frac12\sigma\sigma'\bigr)(X)dt と同じ解をもち、生成子は 12(σ∂x)2+b∂x\frac12(\sigma\partial_x)^2+b\partial_x と「ベクトル場の 2 乗」で書けます((σ∂x)2f=σ2f′′+σσ′f′(\sigma\partial_x)^2f=\sigma^2f''+\sigma\sigma'f')。座標変換で形が変わらないので、多様体上の Brown 運動や、磁場中の粒子の Feynman–Kac–伊藤公式は Stratonovich 形で書くのが自然です。滑らかな近似の極限が Stratonovich 解になるという Wong–Zakai の定理(Brown 運動の道を滑らかな道で近似した方程式の解が、近似を細かくしたときに収束する先を述べる定理)も、この形の自然さを示しています(本稿では証明しません)。

演習 7.1標準

d=1d=1 とし、g∈C0(R)g\in C_0(\mathbb{R})、λ>0\lambda>0、κ=2λ\kappa=\sqrt{2\lambda} とする。u(x)=1κ∫e−κ∣x−y∣g(y) dyu(x)=\frac1\kappa\int e^{-\kappa|x-y|}g(y)\,dy が C2C^2 級で λu−12u′′=g\lambda u-\frac12u''=g を満たすことを確かめよ。命題 3.2 (2) と合わせると、これは Brown 運動の半群の Laplace 変換 ∫0∞e−λtPtg dt\int_0^\infty e^{-\lambda t}P_tg\,dt の明示式を与える(u∈C02u\in C^2_0 のとき)。

解答

u(x)=1κ(e−κx∫−∞xeκyg(y)dy+eκx∫x∞e−κyg(y)dy)u(x)=\frac1\kappa\bigl(e^{-\kappa x}\int_{-\infty}^xe^{\kappa y}g(y)dy+e^{\kappa x}\int_x^\infty e^{-\kappa y}g(y)dy\bigr) と書くと、微分して u′(x)=−e−κx∫−∞xeκyg dy+eκx∫x∞e−κyg dyu'(x)=-e^{-\kappa x}\int_{-\infty}^xe^{\kappa y}g\,dy+e^{\kappa x}\int_x^\infty e^{-\kappa y}g\,dy(境界項 1κg(x)−1κg(x)\frac1\kappa g(x)-\frac1\kappa g(x) は打ち消す)。もう一度微分すると u′′=κ2u−2gu''=\kappa^2u-2g。よって 12u′′=λu−g\frac12u''=\lambda u-g。u∈C02u\in C^2_0 のとき、(λ−A)u=g(\lambda-A)u=g と (λ−A)(\lambda-A) の単射性(命題 3.2 (4))から u=(λ−A)−1g=∫0∞e−λtPtg dtu=(\lambda-A)^{-1}g=\int_0^\infty e^{-\lambda t}P_tg\,dt です。

演習 7.2易

d=1d=1、θ>0\theta>0、h(x)=cosh⁡(θx)h(x)=\cosh(\theta x) とする。Pth=eθ2t/2hP_th=e^{\theta^2t/2}h を示し、h 変換の生成子が 12f′′+θtanh⁡(θx)f′\frac12f''+\theta\tanh(\theta x)f' であることを確かめよ。例 5.5 のドリフトと向きを比べよ。

解答

cosh⁡(θx)=12(eθx+e−θx)\cosh(\theta x)=\frac12(e^{\theta x}+e^{-\theta x}) で、例 5.3 から Pte±θx=eθ2t/2e±θxP_te^{\pm\theta x}=e^{\theta^2t/2}e^{\pm\theta x}。h∈C2h\in C^2 と 12h′′=θ22h\frac12h''=\frac{\theta^2}2h から、定理 5.2 の式で G=12(hf)′′G=\frac12(hf)''(f∈Cc2f\in C^2_c)、λ=θ2/2\lambda=\theta^2/2 として (hf)′′2h−θ22f=12f′′+h′hf′=12f′′+θtanh⁡(θx)f′\frac{(hf)''}{2h}-\frac{\theta^2}2f=\frac12f''+\frac{h'}hf'=\frac12f''+\theta\tanh(\theta x)f'。ドリフトは原点から離れる向きで、Pöschl–Teller の引き戻すドリフト −tanh⁡x-\tanh x と逆です(GG の存在は、hf∈Cc2⊂D(A)hf\in C^2_c\subset D(A) と 定理 3.5 による)。

演習 7.3易

∫0TBs∘dBs=12BT2\int_0^TB_s\circ dB_s=\frac12B_T^2 を定義から直接示し、伊藤積分 ∫0TBs dBs\int_0^TB_s\,dB_s を求めよ。

解答

f(x)=xf(x)=x では SΔ=∑i12(Bti+Bti+1)(Bti+1−Bti)=12∑i(Bti+12−Bti2)=12BT2S_\Delta=\sum_i\frac12(B_{t_i}+B_{t_{i+1}})(B_{t_{i+1}}-B_{t_i})=\frac12\sum_i(B_{t_{i+1}}^2-B_{t_i}^2)=\frac12B_T^2 と、分割によらず厳密に一致します。定理 6.2 から ∫0TB dB=12BT2−12∫0T1 ds=12(BT2−T)\int_0^TB\,dB=\frac12B_T^2-\frac12\int_0^T1\,ds=\frac12(B_T^2-T)。

演習 7.4標準

d=1d=1、W=c1[−1,1]W=c\mathbf 1_{[-1,1]}(c>0c>0)とする。sup⁡xEx∫0tW(Xs)ds≤ct\sup_xE_x\int_0^tW(X_s)ds\le ct を示し、ct<1ct<1 のとき 補題 4.5 の評価と、自明な評価 Exe∫0tW≤ectE_xe^{\int_0^tW}\le e^{ct} を比べよ。この WW では Khasminskii の補題が不要な理由と、Coulomb ポテンシャル(例 4.4)では必要な理由を説明せよ。

解答

0≤W≤c0\le W\le c なので ∫0tW(Xs)ds≤ct\int_0^tW(X_s)ds\le ct、したがって Exe∫W≤ectE_xe^{\int W}\le e^{ct} が各道の評価から出ます。Khasminskii の評価 1/(1−ct)1/(1-ct) は ecte^{ct} 以上(e−ct≥1−cte^{-ct}\ge1-ct)なので、有界な WW では自明な評価のほうが良いです。Coulomb の場合は ∫0t∣Xs∣−1ds\int_0^t|X_s|^{-1}ds が道ごとには有界でなく(原点の近くを通る道ほど大きい)、各道の評価が使えません。期待値 Ex∫0t∣Xs∣−1dsE_x\int_0^t|X_s|^{-1}ds は一様に小さい(例 4.4)ので、Khasminskii の補題がその平均の情報を指数モーメントに持ち上げます。

  • Stewart N. Ethier, Thomas G. Kurtz『Markov Processes: Characterization and Convergence』Wiley、1986 — 第 4 章(Feller 半群、正の最大値原理、生成子による特徴づけ)。
  • Daniel Revuz, Marc Yor『Continuous Martingales and Brownian Motion』(第 3 版)Springer、1999 — 第 III 章(Markov 過程と Feller 過程)。
  • Barry Simon, “Schrödinger semigroups”, Bulletin of the American Mathematical Society (N.S.) 7 (1982), 447–526.
  • M. Aizenman, B. Simon, “Brownian motion and Harnack inequality for Schrödinger operators”, Communications on Pure and Applied Mathematics 35 (1982), 209–273.
  • J. L. Doob, “Conditional Brownian motion and the boundary limits of harmonic functions”, Bulletin de la Société Mathématique de France 85 (1957), 431–458.
  • Elliott H. Lieb, Michael Loss『Analysis』(第 2 版)American Mathematical Society、2001 — 第 9 章(Newton の定理)。

このテーマの 100 本ノック(100 問)

執筆: Claude Code(Opus 5.5)、Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 2 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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