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Feynman–Kac 表示と場の模型の汎関数積分:Nelson 模型と Pauli–Fierz 模型

対象読者: 本テーマ第 1〜7 章の内容と、Brown 運動・確率過程の基礎、Schrödinger 作用素の半群を学んだ博士課程の人。Feynman–Kac 公式は仮定しません。

前提となる記事:厳密くりこみ群:ブロックスピン変換と多スケール解析

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粒子が光やスカラー場のような場と力を及ぼし合うとき、その振る舞いを調べる一つの方法は、粒子が時間とともにたどる道筋(経路)を考え、起こりうるすべての経路についての平均をとることです。この記事は、虚数時間の時間発展がそのような「経路の平均」で書けること、そして場の効果が、粒子の経路の異なる時刻どうしのあいだの引力として現れることを見ます。読み終えると、基底エネルギーが下がるか下がらないかといった性質を、経路の重みが大きくなるか小さくなるかから読み取れるようになります。

  • Schrödinger 作用素 H=−12MΔ+VH=-\frac1{2M}\Delta+V の熱半群は、Brown 運動の期待値 (e−tHf)(x)=Ex[e−∫0tV(Bs)dsf(Bt)](e^{-tH}f)(x)=\mathbb{E}^x\bigl[e^{-\int_0^tV(B_s)\mathrm{d}s}f(B_t)\bigr] で表せます(Feynman–Kac 公式)。Trotter 積公式と Brown 運動の Markov 性から直接導け、半群が正値性改良(非負で 00 でない関数を、うつすと至るところ正の関数にする性質)であることがすぐに読み取れます。
  • 自由ボソン場の半群 e−tHbe^{-tH_{\mathrm{b}}} も Euclid 場(無限次元の Ornstein–Uhlenbeck 過程。平均の値へ引き戻されながら揺らぐ、定常なガウス過程のこと)の Markov 性で表せます。Nelson 模型ではこの 2 つを組み合わせ、場の変数がガウスなので積分し尽くすと、粒子の経路だけの汎関数積分 exp⁡(∫0T ⁣∫0TW(Bt−Bs,t−s) ds dt)\exp\bigl(\int_0^T\!\int_0^TW(B_t-B_s,t-s)\,\mathrm{d}s\,\mathrm{d}t\bigr) が残ります(Feynman–Kac–Nelson 表示)。
  • ペア・ポテンシャル WW を見ると、静止した源の基底エネルギー −λ22∥ω−1χ∥2-\frac{\lambda^2}2\|\omega^{-1}\chi\|^2、真空との重なり e−λ22∥ω−3/2χ∥2e^{-\frac{\lambda^2}2\|\omega^{-3/2}\chi\|^2}(赤外正則性。波長の長いボソンの寄与が発散しないための条件 ω−3/2χ∈L2\omega^{-3/2}\chi\in L^2)、紫外の対数発散 −4πMλ2log⁡Λ-4\pi M\lambda^2\log\Lambda が、すべて経路積分の言葉で読み取れます。
  • Pauli–Fierz 模型ではベクトルポテンシャルとの結合が確率積分の位相 e−ie ξ(KT)e^{-\mathrm{i}e\,\xi(K_T)} として現れます(Feynman–Kac–Itô 表示、Hiroshima)。位相の絶対値は 11 なので反磁性不等式 ∣⟨Φ,e−THPFΨ⟩∣≤⟨∣Φ∣,e−THPF(0)∣Ψ∣⟩|\langle\Phi,e^{-TH_{\mathrm{PF}}}\Psi\rangle|\le\langle|\Phi|,e^{-TH_{\mathrm{PF}}(0)}|\Psi|\rangle が従い、基底エネルギーは結合によって下がりません。
  • 経路空間の Gibbs 測度(経路の起こりやすさを、相互作用のエネルギーで重みづけした確率測度)を使うと、Nelson 模型の基底状態のボソン数分布が EP[exp⁡(−2(1−e−β)∫−∞0 ⁣∫0∞W)]\mathbb{E}_P[\exp(-2(1-e^{-\beta})\int_{-\infty}^0\!\int_0^\infty W)] で表され、真空との重なりの下界や平均ボソン数の上界が経路の評価から出ます(Betz–Hiroshima–Lőrinczi–Minlos–Spohn)。

フォック空間のテーマでは、Nelson 模型 と Pauli–Fierz 模型 を作用素論で調べました。自己共役性は Kato–Rellich で、基底状態の存在は HVZ 型の議論と赤外条件で扱えました。しかし、基底状態の一意性や、結合を強くしたときの基底エネルギーの単調性のような「定性的な」性質は、作用素の評価だけでは手が届きにくい問題です。

汎関数積分はここで力を発揮します。半群 e−tHe^{-tH} の行列要素を経路空間の積分で書くと、正値性(Perron–Frobenius)、位相の絶対値の評価(反磁性)、凸性や相関不等式のような確率論の道具がそのまま使えます。さらに場の自由度はガウスなので積分し尽くすことができ、無限自由度の問題が「粒子 1 個の経路に、自分自身の過去との時間非局所な相互作用が働く問題」に帰着します。これは統計力学の言葉では 1 次元の長距離相互作用をもつ Gibbs 測度の問題で、前章までの構成的場の理論の技術が使える形です。

この章では、Feynman–Kac 公式を Trotter 積公式から導くところから始め、Euclid 場を経由して Nelson 模型の経路積分表示を証明し、Pauli–Fierz 模型の表示とその帰結、Gibbs 測度による基底状態の解析へと進みます。

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執筆: Claude Code(Opus 5.5)、Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 3 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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