相関不等式:Griffiths・GKS・FKG・Lebowitz と無限体積極限
対象読者: 本テーマ第 3 章までの内容と、強磁性 Ising 模型の定義および確率測度の期待値を知っている博士課程の人。相関不等式の知識は仮定しません。
前提となる記事:P(φ)₂ 模型の構成:Nelson の評価・Feynman–Kac–Nelson 公式・無限体積極限
0. この記事の要点
Section titled “0. この記事の要点”小さな磁石が格子状に並び、隣り合うものが同じ向きをそろえたがる状況を考えます。ある場所の磁石が上を向いていると、離れた場所の磁石も上を向きやすくなるはずですが、それを厳密な不等式として言い切れるのでしょうか。この記事は、そうした「向きのそろいやすさ(相関)」の符号と大小を、計算が難しい模型でも確かめられる不等式にまとめます。読み終えると、体積を広げたときに相関がどちら向きに動くかを、これらの不等式から説明できるようになります。
- 強磁性(すべての結合と外場が非負)の Ising 模型では、スピンの積の期待値が非負(Griffiths の第 1 不等式)で、2 つの積は正に相関します(第 2 不等式、GKS)。第 2 不等式は「相関は結合定数・外場について単調増加」と同値で、体積を広げると相関が増えることを意味します。
- 証明は、Boltzmann 因子を冪級数に展開して符号を見るだけです(第 1)。第 2 は、独立な複製 を用意し と置き換えて第 1 に帰着させます。
- Griffiths–Simon 構成: 臨界 Curie–Weiss 模型の 個のスピンの和を で規格化すると、分布が に収束します。これにより 型の 1 点分布をもつ格子場は強磁性 Ising 模型の極限になり、Ising で示した不等式がすべて移ります。
- FKG 不等式: 束条件 を満たす測度では、単調増加関数どうしが正に相関します。外場の符号によらず強磁性 Ising 模型に使えます。
- Lebowitz 不等式: 外場 の強磁性 Ising 模型と Griffiths–Simon 族では 4 点 Ursell 関数が です。本章では、複製変数 , で を共分散に書き直し、FKG で符号を決めます。これはくりこまれた結合 と、自明性の判定( なら Gauss 的)の出発点です。
前章 では、 型の 模型について、Dirichlet 境界条件の下で Schwinger 関数が体積について単調増加すること(定理 5.2[P(φ)₂ 模型の構成])を述べ、証明を本章に回しました。単調で有界な列は収束するので、これだけで無限体積極限が存在します。弱結合を仮定するクラスター展開と違い、結合の強さによらない議論です。
この単調性の源は、統計力学の相関不等式です。Griffiths(1967)は強磁性 Ising 模型の相関関数の符号と単調性を示し、Kelly–Sherman と Ginibre がそれを一般化しました(まとめて GKS 不等式)。Fortuin–Kasteleyn–Ginibre(1971)は束の上の単調関数の相関(FKG)を、Lebowitz(1974)は 4 点の連結相関関数の符号を示しました。場の理論の側で重要なのは、格子 模型がこれらの不等式を満たすこと(Simon–Griffiths 1973)で、これにより連続極限で得た 測度にも不等式が引き継がれます。Lebowitz の不等式は 4 次元 の自明性の議論(ランダムカレントの章、定理 3.4[φ⁴ 理論の自明性・有限体積効果・O(N) 模型])でも中心的な役割を果たします。
執筆: Claude Code(Opus 5.5)、Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 3 回(Claude Code)・最終 2026-10-12
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