コンテンツにスキップ

Gauss 解析の道具:Mehler 公式、Gross の対数 Sobolev 不等式と Nelson の超縮小性、キュムラントと Malliavin 微分

対象読者: 本テーマ第 2 章(Wick 積と Nelson の評価)の内容と、Q 空間表示、Hermite 多項式、半群の基礎を学んだ博士課程の人。対数 Sobolev 不等式は仮定しません。

前提となる記事:Wick 積と Nelson の評価:d=2 の :φ⁴: の存在と exp(−V) の可積分性、d=3 で破れる理由、ガウス測度と Q 空間表示:Wiener–伊藤–Segal 同型と超縮小性

生 Markdown

ノイズのように揺らぐ量(ガウス型の乱数)を無限個まとめて扱うとき、「時間とともにノイズが混ざり合って関数が平らになっていく」様子を調べると、関数の可積分性について、次元に左右されない強い評価が得られます。この記事はその評価を証明し、ガウス型の乱数を扱う場の理論でよく使う道具(期待値の変化の公式、相関を「つながった」部分だけで数える公式、確率制御による変分公式)も合わせて整理します。読み終えると、あとの章で使う不等式が何に基づいているかを、自分で追えるようになります。

  • ガウス測度上の Ornstein–Uhlenbeck 半群(ノイズを少しずつ混ぜて関数を平均化していく操作の族)Pt=e−tNP_t=e^{-tN} は、Mehler 公式 Ptf(x)=∫f(e−tx+1−e−2t y) dγ(y)P_tf(x)=\int f(e^{-t}x+\sqrt{1-e^{-2t}}\,y)\,d\gamma(y) で具体的に書けます。この表示から、不変性・LpL^p 縮小性・正値性と、交換関係 ∇Ptf=e−tPt∇f\nabla P_tf=e^{-t}P_t\nabla f がすぐに出ます。
  • Gross の対数 Sobolev 不等式 Ent(g2)≤2∫∣∇g∣2dγ\mathrm{Ent}(g^2)\le2\int|\nabla g|^2d\gamma を、交換関係と Cauchy–Schwarz の不等式だけを使う Bakry–Émery の半群論法で証明します。定数 22 が次元によらないことが、無限次元に持ち上がる理由です。
  • Nelson の超縮小性 ∥e−tNF∥q≤∥F∥p\|e^{-tN}F\|_q\le\|F\|_p(e−2t≤p−1q−1e^{-2t}\le\frac{p-1}{q-1})は、t↦∥Ptf∥1+(p−1)e2tt\mapsto\|P_tf\|_{1+(p-1)e^{2t}} を微分して対数 Sobolev 不等式を当てはめれば得られます。有限次元から無限次元へは条件付き期待値で近似します。これで Q 空間の章で主張だけを述べた超縮小性定理が閉じます。
  • Malliavin 微分(ガウス変数についての多項式を、ガウス変数の方向に微分する操作)DD は E∥DF∥2=⟨F,NF⟩E\|DF\|^2=\langle F,NF\rangle を満たし、カオス展開の核は Stroock の公式 fn=1n!E[DnF]f_n=\frac1{n!}E[D^nF] で与えられます。対数 Sobolev 不等式は Ent(F2)≤2E∥DF∥2\mathrm{Ent}(F^2)\le2E\|DF\|^2 の形で無限次元でも成り立ちます。
  • 共分散を動かしたときの期待値の変化は Price の公式 ddsE[F(Xs)]=12∑ijC˙ijE[∂i∂jF(Xs)]\frac{d}{ds}E[F(X_s)]=\frac12\sum_{ij}\dot C_{ij}E[\partial_i\partial_jF(X_s)] で、Wick 積の積のキュムラントは Leonov–Shiryaev 公式 により「連結な図形」だけの和になります。最後に、場の理論の測度を変分問題として書く Boué–Dupuis 公式 −log⁡E[e−F(B)]=inf⁡uE[F(B+∫u)+12∫∣u∣2]-\log E[e^{-F(B)}]=\inf_uE[F(B+\int u)+\frac12\int|u|^2] を、区分定数ドリフトの Cameron–Martin 公式と熱半群による値関数を使って証明します。

Wick 積と Nelson の評価 では、nn 次カオスの元について ∥G∥p≤(p−1)n/2∥G∥2\|G\|_p\le(p-1)^{n/2}\|G\|_2 という評価が決定的な役割を果たしました。これは Nelson の超縮小性定理から 1 行で出ますが、その超縮小性定理自体は ガウス測度と Q 空間表示 で主張と筋道しか述べていません。本章の第一の目的は、その証明を完全に与えることです。

超縮小性は「時間 tt だけ Ornstein–Uhlenbeck 過程を走らせると、関数の可積分性が LpL^p から LqL^q に上がる」という主張で、無限次元のガウス測度について次元によらない形で成り立つ点に価値があります。証明の鍵は、ガウス測度に対する対数 Sobolev 不等式です。通常の Sobolev 不等式は次元とともに定数が悪化しますが、対数 Sobolev 不等式の定数は次元によらず、テンソル積で安定です。この「次元に依存しない」という性質が、場の理論のように自由度が無限にある系で Gauss 解析が使える理由です。

構成的場の理論では、ほかにもいくつかのガウス測度の道具が繰り返し使われます。共分散を補間したときの期待値の微分公式(Price の公式。くりこみ群やガウス比較不等式で使う)、Wick 積の積のキュムラントを連結図形で表す公式(Leonov–Shiryaev。クラスター展開の打ち切り相関関数に現れる)、カオス展開を微分で表す Malliavin 解析、そして −log⁡Z-\log Z を確率制御の変分問題として書く Boué–Dupuis 公式です。本章はこれらを 1 か所にまとめます。

ここから先は有料(買い切り ¥200)の内容です。

この章は博士課程以上・研究水準の内容です。続き(定義・定理・証明・例・演習)は ¥200 の買い切りで、他の有料章と 100 本ノックも含めてすべて読めます。無料の章は最後まで読めます。

購入する ログイン

このテーマの 100 本ノック(100 問)

執筆: Claude Code(Opus 5.5)、Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 4 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

この記事の誤りを報告する ・運営: 夢現技研合同会社 ・料金 ・利用条件 ・特定商取引法に基づく表記

© 2026 夢現技研合同会社 ・コード例は MIT ライセンスです。