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無限次元のガウス測度と Euclid 自由場:Hermite 展開による構成・標本の正則性・Nelson の Markov 性

対象読者: 学部の測度論・確率論(確率空間、ガウス分布)と Hilbert 空間論、Schwartz 空間と Fourier 変換を学んだ博士課程の人。無限次元ガウス測度や場の量子論の知識は仮定しません。

前提となる記事:対称・反対称テンソル積と多粒子の Hilbert 空間:対称化作用素・次元公式・パウリの排他律、Wightman 公理と再構成定理:作用素値超関数・Wightman 関数・Reeh–Schlieder の定理、確率空間とコルモゴロフの公理:確率を「全測度 1 の測度」として定義する、Hilbert 空間の基礎:射影定理・リースの表現定理・正規直交基底

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時空の各点に値をもつ「場」を、サイコロを振るように確率的に選ぶ方法を作る、という話です。変数が有限個なら正規分布の密度を書けば済みますが、無限個の変数では密度の書き方がありません。そこでこの記事では、平均や分散にあたる情報だけを指定して確率の測り方を作り、できた「ランダムな場」がどれほどぎざぎざか、場をどの方向にずらしても確率の測り方が大きくは変わらないのはどんなときか、を順に調べます。読み終えると、無限次元のガウス測度を自分で構成でき、自由場の標本が普通の関数にならない理由を説明できるようになります。

  • Schwartz 空間 S(Rd)\mathcal{S}(\mathbb{R}^d) は Hermite 関数の展開係数の重み付き ℓ2\ell^2 ノルムの族で位相が決まり、そのノルムの間の埋め込みは重みの差が d/2d/2 を超えれば Hilbert–Schmidt です。これを使うと、連続な共分散をもつガウス測度を S′(Rd)\mathcal{S}'(\mathbb{R}^d) 上に具体的に構成でき、測度がどの負の Sobolev 型空間に集中するかまでわかります。
  • 共分散 C=(−Δ+m2)−1C=(-\Delta+m^2)^{-1}(m>0m>0)のガウス測度 μC\mu_C が Euclid 自由場です。2 点関数 C(x−y)C(x-y) は熱核の積分で書け、d=2d=2 で対数、d≥3d\ge3 で ∣x−y∣2−d|x-y|^{2-d} の特異性をもち、遠方で指数減衰します。d=2d=2 で m=0m=0 にすると測度そのものが存在しません。
  • d≥2d\ge2 では μC\mu_C-a.s. に標本 ϕ\phi は局所 2 乗可積分な関数ではなく、χϕ∈H−s\chi\phi\in H^{-s} となるのは s>(d−2)/2s>(d-2)/2 のときです。d=1d=1 では標本は連続関数に取れ、定常 Ornstein–Uhlenbeck 過程になります。
  • Cameron–Martin 空間は Sobolev 空間 H1(Rd)H^1(\mathbb{R}^d)(作用が有限な配位の空間)です。h∈H1h\in H^1 による平行移動は密度 exp⁡(ϕ((−Δ+m2)h)−12∥h∥H12)\exp(\phi((-\Delta+m^2)h)-\frac12\|h\|_{H^1}^2) で絶対連続、h∉H1h\notin H^1 なら特異です。典型的な標本の作用は無限大です。
  • C−1=−Δ+m2C^{-1}=-\Delta+m^2 が局所的な微分作用素であることから、Nelson の Markov 性(境界の σ 加法族を与えれば内と外が条件付き独立。つまり境界での場の値が分かれば、内側と外側は互いに影響しない)が H−1H^{-1} の中の直交射影の台の議論で証明でき、超平面の場が反射で不変であることと合わせて反射正値性がもう一度得られます。

自由スカラー場の Euclid 版の経路積分は、形式的には

dμC(ϕ)=1Zexp⁡(−12∫Rd(∣∇ϕ(x)∣2+m2ϕ(x)2)dx)∏x∈Rddϕ(x)d\mu_C(\phi)=\frac1Z\exp\Bigl(-\frac12\int_{\mathbb{R}^d}\bigl(|\nabla\phi(x)|^2+m^2\phi(x)^2\bigr)dx\Bigr)\prod_{x\in\mathbb{R}^d}d\phi(x)

と書かれます。無限次元には Lebesgue 測度がないので右辺の各因子は意味をもちませんが、全体は「共分散 (−Δ+m2)−1(-\Delta+m^2)^{-1} の中心化ガウス測度」として意味をもちます。構成的場の理論はここから出発し、相互作用 e−V(ϕ)e^{-V(\phi)} を掛けた測度を作ります。そのためにはまず、この測度がどこに乗っているか(標本がどれほど滑らかでないか)を正確に知る必要があります。次章で扱う Wick 積と紫外発散は、まさに標本が関数でないことの帰結です。

既刊の章との関係を整理しておきます。ガウス測度と Q 空間表示 では、実 Hilbert 空間上のガウス確率過程と Bochner–Minlos の定理(定理 3.4[ガウス測度と Q 空間表示]。完全な証明は 定理 5.1[核型空間と Bochner–Minlos の定理])を扱い、主に時刻 00 の場(空間 d−1d-1 次元)を考えました。Euclid 場の理論と Osterwalder–Schrader 再構成 では Euclid 自由場を定義し(定義 5.1[Euclid 場の理論と Osterwalder–Schrader 再構成])、核の分解から反射正値性を示し、Markov 性は注意として述べるにとどめました。本章では時空 dd 次元の場について、測度をガウスの場合に限って完全に構成し、標本の正則性・Cameron–Martin 空間・Markov 性を証明します。

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執筆: Claude Code(Opus 5.5)、Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 3 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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