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Wick 積と Nelson の評価:d=2 の :φ⁴: の存在と exp(−V) の可積分性、d=3 で破れる理由

対象読者: 本テーマ第 1 章(無限次元ガウス測度と Euclid 自由場)の内容と、Hermite 多項式・Sobolev 空間を学んだ博士課程の人。Wick 積や超縮小性は仮定しません。

前提となる記事:無限次元のガウス測度と Euclid 自由場:Hermite 展開による構成・標本の正則性・Nelson の Markov 性

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ランダムな場の「ある点での値」を 2 乗や 4 乗しようとすると、素朴にはその期待値が無限大になってしまいます。この記事は、期待値にあたる部分をあらかじめ引き去るという処方(Wick 積)で、2 次元ではこの無限大がきれいに消えて意味のある確率変数が得られること、そしてそれを指数の肩に載せた e−Ve^{-V} もきちんと積分できることを示し、3 次元ではなぜ同じ手が通じないのかを説明します。

  • ガウス測度 μC\mu_C に関する Wick 積 : ⁣ϕ(g1)⋯ϕ(gn) ⁣::\!\phi(g_1)\cdots\phi(g_n)\!: は、Wick 指数関数 : ⁣eϕ(g) ⁣:  =eϕ(g)−12⟨g,Cg⟩:\!e^{\phi(g)}\!:\;=e^{\phi(g)-\frac12\langle g,Cg\rangle} の多重微分係数として定義され、1 変数では確率論の Hermite 多項式 σnHen(ϕ(g)/σ)\sigma^n\mathrm{He}_n(\phi(g)/\sigma) です。Wick 積は共分散の取り方に依存し、共分散を替えると低次の Wick 積が有限個足されます。
  • Wick の定理: Wick 積の積の期待値は、同じ Wick 積の中の対を結ばない完全対合(自己ループのない Feynman 図形)についての共分散の積の和です。Wick 順序付けとは、自己ループ(tadpole)を取り除くことにほかなりません。
  • d=2d=2 では、紫外切断 κ\kappa をつけた場の分散 cκc_\kappa は 12πlog⁡κ\frac{1}{2\pi}\log\kappa で発散しますが、Wick 冪 : ⁣ϕκn ⁣:(f):\!\phi_\kappa^n\!:(f) は κ→∞\kappa\to\infty で L2L^2 収束し、極限 : ⁣ϕn ⁣:(f):\!\phi^n\!:(f) の 2 次モーメントは n!∬f(x)C(x−y)nf(y)n!\iint f(x)C(x-y)^nf(y) です。対数特異性のどの冪も 2 次元で可積分だからです。超縮小性によりすべての LpL^p で収束します。
  • Nelson の評価: PP が偶数次で最高次係数が正、g≥0g\ge0 なら、V=  : ⁣P(ϕ) ⁣:(g)V=\;:\!P(\phi)\!:(g) について e−V∈Lp(μC)e^{-V}\in L^p(\mu_C)(p<∞p<\infty)。切断した VκV_\kappa の下界 −B(log⁡κ)n-B(\log\kappa)^n と、LpL^p ノルムの差 ∥V−Vκ∥p≲(p−1)nκ−1/4\|V-V_\kappa\|_p\lesssim(p-1)^n\kappa^{-1/4} を、pp と κ\kappa を連動させて組み合わせると、裾の確率が二重指数的に小さくなります。
  • d=3d=3 では C(x)∼∣x∣−1C(x)\sim|x|^{-1} なので CnC^n は n≥3n\ge3 で局所可積分でなく、: ⁣ϕ4 ⁣:(f):\!\phi^4\!:(f) は確率変数として存在しません。真空エネルギー(1 次発散)と質量(対数発散)のくりこみが必要になり、Nelson の論法は使えません。

P(ϕ)2P(\phi)_2 模型の Euclid 測度は、形式的には

dν(ϕ)=1Z e−λ∫Λϕ(x)4dx dμC(ϕ)d\nu(\phi)=\frac1Z\,e^{-\lambda\int_\Lambda\phi(x)^4dx}\,d\mu_C(\phi)

です。ところが 前章 の 定理 5.2[無限次元のガウス測度と Euclid 自由場] により、d≥2d\ge2 では μC\mu_C の標本は関数ではなく、ϕ(x)4\phi(x)^4 は意味をもちません。場を滑らかにした ϕκ\phi_\kappa を使えば ∫ϕκ4\int\phi_\kappa^4 は定義できますが、E[ϕκ(x)2]=cκ→∞E[\phi_\kappa(x)^2]=c_\kappa\to\infty なので、κ→∞\kappa\to\infty の極限は存在しません。

物理の処方は「正規順序積」: ⁣ϕ4 ⁣::\!\phi^4\!: で、Fock 空間では生成作用素を左に、消滅作用素を右に並べることでした。確率論の側では、これはガウス測度に関する Hermite 多項式です。本章では、(1) Wick 積の代数とモーメントの公式、(2) d=2d=2 で Wick 冪が切断を外しても確率変数として残ること、(3) さらに e−Ve^{-V} が可積分であること(Nelson の評価)を示します。(3) が P(ϕ)2P(\phi)_2 の構成(第 3 章)の出発点です。最後に、d=3d=3 でこの方法が破れる理由を調べ、第 9 章 への動機とします。

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執筆: Claude Code(Opus 5.5)、Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 2 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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