# Wick 積と Nelson の評価：d=2 の :φ⁴: の存在と exp(−V) の可積分性、d=3 で破れる理由

> ガウス測度に関する Wick 積を Hermite 多項式と生成関数で定義し、Wick の定理（図形公式）を証明する。d=2 で紫外切断を外した :φⁿ:(f) が全 L^p に属することを示し、超縮小性による Nelson の評価で exp(−V) の可積分性を証明し、d=3 で破れる理由を説明する。
> https://rikai.mugen-giken.com/physics/constructive-qft/wick-products-nelson

## 0. この記事の要点

ランダムな場の「ある点での値」を 2 乗や 4 乗しようとすると、素朴にはその期待値が無限大になってしまいます。この記事は、期待値にあたる部分をあらかじめ引き去るという処方（Wick 積）で、2 次元ではこの無限大がきれいに消えて意味のある確率変数が得られること、そしてそれを指数の肩に載せた $e^{-V}$ もきちんと積分できることを示し、3 次元ではなぜ同じ手が通じないのかを説明します。

- ガウス測度 $\mu_C$ に関する **Wick 積** $:\!\phi(g_1)\cdots\phi(g_n)\!:$ は、Wick 指数関数 $:\!e^{\phi(g)}\!:\;=e^{\phi(g)-\frac12\langle g,Cg\rangle}$ の多重微分係数として定義され、1 変数では確率論の Hermite 多項式 $\sigma^n\mathrm{He}_n(\phi(g)/\sigma)$ です。Wick 積は共分散の取り方に依存し、共分散を替えると低次の Wick 積が有限個足されます。
- **Wick の定理**: Wick 積の積の期待値は、同じ Wick 積の中の対を結ばない完全対合（自己ループのない Feynman 図形）についての共分散の積の和です。Wick 順序付けとは、自己ループ（tadpole）を取り除くことにほかなりません。
- $d=2$ では、紫外切断 $\kappa$ をつけた場の分散 $c_\kappa$ は $\frac{1}{2\pi}\log\kappa$ で発散しますが、Wick 冪 $:\!\phi_\kappa^n\!:(f)$ は $\kappa\to\infty$ で $L^2$ 収束し、極限 $:\!\phi^n\!:(f)$ の 2 次モーメントは $n!\iint f(x)C(x-y)^nf(y)$ です。対数特異性のどの冪も 2 次元で可積分だからです。超縮小性によりすべての $L^p$ で収束します。
- **Nelson の評価**: $P$ が偶数次で最高次係数が正、$g\ge0$ なら、$V=\;:\!P(\phi)\!:(g)$ について $e^{-V}\in L^p(\mu_C)$（$p<\infty$）。切断した $V_\kappa$ の下界 $-B(\log\kappa)^n$ と、$L^p$ ノルムの差 $\|V-V_\kappa\|_p\lesssim(p-1)^n\kappa^{-1/4}$ を、$p$ と $\kappa$ を連動させて組み合わせると、裾の確率が二重指数的に小さくなります。
- $d=3$ では $C(x)\sim|x|^{-1}$ なので $C^n$ は $n\ge3$ で局所可積分でなく、$:\!\phi^4\!:(f)$ は確率変数として存在しません。真空エネルギー（1 次発散）と質量（対数発散）のくりこみが必要になり、Nelson の論法は使えません。

<Aside type="tip" title="この記事で使う事前知識">

- **ガウス測度と自由場**: 無限次元の空間上で、各測定が正規分布に従うように定めた確率測度。共分散 $C$ が測度を決めます。→ [前章](/physics/constructive-qft/gaussian-free-field)
- **Hermite 多項式**: 正規分布に付随する多項式列で、本章では $e^{sx-s^2/2}$ を $s$ で展開した係数として定めます（§3）。
- **ガウス Hilbert 空間**: 測度上の線形な確率変数 $\phi(g)$ たちがつくる Hilbert 空間。→ [ガウス Hilbert 空間](/physics/constructive-qft/gaussian-analysis#def-isonormal-process)
- **Wick 冪とカオス**: 期待値にあたる部分を引いた冪と、その次数ごとの分解。→ [Wick 冪](/physics/fock-space/gaussian-measures-q-space#def-wick-product)
- **正規順序**: 生成作用素を左、消滅作用素を右に並べ替える操作。→ [正規順序](/physics/qft/canonical-quantization#def-normal-ordering)
- **数作用素**: Fock 空間で粒子の個数を数える作用素。→ [数作用素](/physics/fock-space/boson-fock-space#def-number-operator)

</Aside>

## 1. 動機

$P(\phi)_2$ 模型の Euclid 測度は、形式的には
$$
d\nu(\phi)=\frac1Z\,e^{-\lambda\int_\Lambda\phi(x)^4dx}\,d\mu_C(\phi)
$$
です。ところが [前章](/physics/constructive-qft/gaussian-free-field) の <Ref to="physics/constructive-qft/gaussian-free-field#thm-free-field-not-function" /> により、$d\ge2$ では $\mu_C$ の標本は関数ではなく、$\phi(x)^4$ は意味をもちません。場を滑らかにした $\phi_\kappa$ を使えば $\int\phi_\kappa^4$ は定義できますが、$E[\phi_\kappa(x)^2]=c_\kappa\to\infty$ なので、$\kappa\to\infty$ の極限は存在しません。

物理の処方は「[正規順序](/physics/qft/canonical-quantization#def-normal-ordering)積」$:\!\phi^4\!:$ で、[Fock 空間](/physics/qft/why-quantum-field-theory#def-fock-space)では生成作用素を左に、消滅作用素を右に並べることでした。確率論の側では、これはガウス測度に関する Hermite 多項式です。本章では、(1) Wick 積の代数とモーメントの公式、(2) $d=2$ で Wick 冪が切断を外しても確率変数として残ること、(3) さらに $e^{-V}$ が可積分であること（Nelson の評価）を示します。(3) が $P(\phi)_2$ の構成（[第 3 章](/physics/constructive-qft/p-phi-2)）の出発点です。最後に、$d=3$ でこの方法が破れる理由を調べ、[第 9 章](/physics/constructive-qft/phi4-3-stochastic-quantization) への動機とします。

（この章の続きは購入者向けです。）
