多項式は、零点がわかれば (z−a1)(z−a2)⋯ という積に分けられます。この記事は、零点が無限個ある関数でも同じように「零点の積」に分けられるか、という素朴な疑問から始まります。その答えを使って、sin を無限個の因子の積で書き、階乗 n! を複素数に拡げたガンマ関数をつくり、素数の研究に現れるゼータ関数の対称性までを証明します。読み終えると、これらの公式がどの道具からどう出てくるかを自分で追えるようになります。
- 無限積 ∏(1+an) は ∑∣an∣<∞ のとき収束し、零点は因子の零点だけです。正則関数の無限積は局所一様収束(コンパクトな範囲ごとに一様に収束すること)で正則になります。
- Weierstrass の因数分解定理:複素平面上に(無限遠でだけ集積する)点列が与えられれば、その点列をちょうど零点にもつ整関数が、素因子 Ep(z)=(1−z)exp(z+2z2+⋯+pzp)(収束を助けるための補正つきの因子)の無限積で作れます。任意の整関数は、零点から作った無限積と eg の積に書けます。
- Mittag-Leffler の定理:極と主要部(極の近くでの発散の部分)を勝手に指定した有理型関数が存在します。例として πcotπz=z1+∑n≥1z2−n22z を留数定理で証明し、そこから sinπz=πz∏(1−z2/n2) と ζ(2)=π2/6 を導きます。
- ガンマ関数 Γ(z)=∫0∞tz−1e−tdt は、全平面の有理型関数に延びます。Gauss の極限公式、1/Γ の無限積、相反公式 Γ(z)Γ(1−z)=π/sinπz、実軸上の Stirling の公式(誤差 ≤1/(12x) つき)を証明します。
- ζ 関数は、テータ関数の変換則(Poisson 積分を使って示す)から全平面へ解析接続(定義域を拡げること)され、π−s/2Γ(s/2)ζ(s) が s↔1−s で不変(関数等式)になります。
多項式 p(z) は零点 a1,…,an を使って c∏(z−ak) と因数分解されます(代数学の基本定理、定理 4.3[正則関数の強力な性質])。整関数 f に対して、同じことは起こるでしょうか。零点は無限個あってよく、たとえば sinπz は整数全体に零点をもちます。「∏(z−n)」は発散しますから、収束するように因子を調整する必要があります。この調整が素因子 Ep で、Weierstrass はこれで「零点の分布は任意に指定できる」ことを示しました。
同じ発想は極にも使えます。零点が与えられた整関数が作れるなら、極と主要部を与えた有理型関数も作れます(Mittag-Leffler)。この 2 つの定理が、整関数と有理型関数を「零点と極で決まるもの」と見る視点の出発点です。
その応用が特殊関数です。階乗 n! を複素数へ補間する Γ(z) は、極が 0,−1,−2,… にあるので、1/Γ が零点が負の整数だけの整関数として Weierstrass の積で書けます。さらに素数の分布を支配するリーマンの ζ 関数の関数等式が、Γ とテータ関数から出てきます。
広義積分はルベーグ積分として扱います。
補題 3.1(Log(1+w) の評価)✓
∣w∣≤21 ならば Log(1+w)=∑k≥1k(−1)k+1wk であり、∣Log(1+w)∣≤2∣w∣ である。
証明(補題 3.1)
Log(1+w) は D(0,1) 上正則で(定理 6.9[正則関数とコーシー・リーマンの関係式])、Log1=0、導関数は 1+w1=∑k≥0(−w)k です。テイラー展開の係数は導関数の係数を積分したものなので上の級数を得ます。∣w∣≤21 で ∑k(−1)k+1wk≤∑k≥1∣w∣k=1−∣w∣∣w∣≤2∣w∣ です。
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命題 3.2(正則関数の無限積)✓
Ω を開集合、an を Ω 上の正則関数とし、任意のコンパクト集合 K⊂Ω に対して ∑nsupK∣an∣<∞ とする。このとき部分積 PN=∏n=1N(1+an) は Ω 上で局所一様収束し、極限 P は正則である。P(z)=0 となるのは、ある n で 1+an(z)=0 のとき、かつそのときに限る。さらに P(z)=0 の点で
P(z)P′(z)=n=1∑∞1+an(z)an′(z)で、右辺は局所一様収束する。
証明(命題 3.2)
D⊂Ω を閉円板とします。∑supD∣an∣<∞ から項は 0 に収束するので、n>N で supD∣an∣≤21 となる N が取れます。n>N では 補題 3.1 により ℓn=Log(1+an) は D 上連続(内部で正則)で ∣ℓn∣≤2∣an∣ です。ワイエルシュトラスの M 判定法(系 6.4[関数列と一様収束] と同じ論法)で ∑n>Nℓn は D 上一様収束し、極限 L は内部で正則です(定理 5.2[偏角の原理と Rouché の定理])。∏N<n≤M(1+an)=exp(∑N<n≤Mℓn)→eL が一様に成り立ち(exp は有界集合上で一様連続)、
P=n≤N∏(1+an)⋅eLです。eL=0 ですから、P の零点は有限個の因子 1+an(n≤N)の零点です。対数微分は、P′/P=∑n≤N1+anan′+L′ と、L′=∑n>Nℓn′=∑n>N1+anan′(導関数の収束)から従います。
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∏(1−z/an) は、∑1/∣an∣<∞ でなければ収束しません。収束を保証するために、各因子に「exp の多項式」を掛けて、z→0 での振る舞いを 1 に近づけます。
定義 4.1(素因子)↗
整数 p≥0 に対して
Ep(z)=(1−z)exp(z+2z2+⋯+pzp)(E0(z)=1−z)を素因子という。Ep は整関数で、零点は z=1 だけ(単純)である。
補題 4.2(素因子の評価)✓
∣z∣≤1 ならば ∣1−Ep(z)∣≤∣z∣p+1 である。
証明(補題 4.2)
p=0 は自明(1−E0=z)です。p≥1 とし g(z)=∑k=1pzk/k とおきます。g′=1+z+⋯+zp−1 と (1−z)g′=1−zp から
Ep′(z)=eg(−1+(1−z)g′)=−zpeg(z).g のテイラー係数は非負なので eg=∑j≥0djzj の dj≥0 です。Ep(0)=1 ですから項別積分して
1−Ep(z)=j≥0∑j+p+1djzj+p+1=zp+1j≥0∑αjzj(αj≥0).∣z∣≤1 で ∑αjzj≤∑αj で、z=1 を代入すると ∑αj=1−Ep(1)=1 です。
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次の定理で n 番目の因子に En−1 を使うのは、n が大きいほど ∣z/an∣ が小さい範囲で En−1 が 1 に近づく速さを上げ、∑2−n のような収束する級数で抑えるためです。次数を n−1 と選ぶのは、補題で出る ∣z/an∣n の形に合わせるための最も単純な選び方です。
定理 4.3(零点の指定(Weierstrass))✓
(an)n≥1 を 0 でない複素数の列で、重複を許し、有限個か、または ∣an∣→∞ とする。このとき
P(z)=n∏En−1(anz)は C 上で局所一様収束して整関数となり、その零点は an の各値を、列に現れる回数だけの位数でとる。
証明(定理 4.3)
有限個なら自明なので無限列とします。R>0 を取ります。∣an∣≥2R となる n≥n0 では、∣z∣≤R で ∣z/an∣≤21 ですから 補題 4.2 で
1−En−1(z/an)≤(∣an∣R)n≤2−nです。∑2−n<∞ なので 命題 3.2(an(z)=En−1(z/an)−1)が使え、∣z∣<R で局所一様収束して正則です。零点は各因子 En−1(z/an) の零点 z=an のみで、位数は重複度の通りです。
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定理 4.4(整関数の因数分解)✓
f≡0 を整関数とし、0 での零点の位数を m≥0、0 以外の零点を重複度の回数だけ並べて a1,a2,… とする。このとき整関数 g が存在して
f(z)=zmeg(z)n∏En−1(anz)が成り立つ。
証明(定理 4.4)
f の零点は集積点をもたない(一致の定理、定理 7.3[正則関数の強力な性質])ので、各有界集合に高々有限個です。よって零点は ∣a1∣≤∣a2∣≤⋯ と並べられ、無限個なら ∣an∣→∞ です。定理 4.3 の P を取ります。h=f/(zmP) は零点を除いて正則で、各零点で分子・分母の位数が一致するため、除去可能特異点定理(命題 6.3[正則関数の強力な性質])により整関数に延び、どこでも零になりません。h′/h は整関数なので、冪級数を項別積分して原始関数 g をもちます(定理 5.2[正則関数の強力な性質])。(he−g)′=e−g(h′−g′h)=0 から he−g は定数 ec、すなわち h=eg+c です。
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定理 5.1(Mittag-Leffler の定理)✓
b1,b2,… を相異なる 0 でない複素数の列で、有限個か、または ∣bn∣→∞ とする。各 n について Pn(z)=∑k=1mncn,k(z−bn)−k を与える。このとき C 上の有理型関数 F で、極の集合がちょうど {bn:Pn=0} であり、各 bn で F−Pn が正則となるものが存在する。
証明(定理 5.1)
Pn は D(0,∣bn∣) で正則なので、そのテイラー展開は ∣z∣≤∣bn∣/2 で一様収束し、テイラー多項式 Tn を、sup∣z∣≤∣bn∣/2∣Pn(z)−Tn(z)∣<2−n となるように選べます。F=∑n(Pn−Tn) とします。R>0 を取ると、∣bn∣≥2R の項は ∣z∣≤R で絶対値が 2−n 未満なので、その和は ∣z∣<R で一様収束して正則(定理 5.2[偏角の原理と Rouché の定理])です。残りの有限個の項は有理型で、極は bn のみです。したがって F は有理型で、bn における主要部は Pn です。
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具体的な極の指定として、sinπz の零点(整数)に対応する πcotπz を調べます。cotπz=cosπz/sinπz は、sinπz=0⟺e2πiz=1⟺z∈Z より整数に単純極をもち、ζ=n での留数は πcosπnπcosπn=1 です。
次の命題の証明の方針は、整数に極をもつ πcotπζ に ζ(ζ−z)z を掛けた関数を正方形の周に沿って積分することです。掛ける因子は、ζ=z に極をつくって求める πcotπz を留数として取り出し、かつ ζ が大きいところで 1/ζ2 のように小さくなって周回積分を 0 に行かせるために置きます。正方形を大きくすれば、整数の極の留数が部分分数の各項になります。
命題 5.3(cot の部分分数展開)✓
z∈C∖Z について
πcotπz=z1+n=1∑∞z2−n22z,右辺の級数は C∖Z の任意のコンパクト集合上で一様収束する。
証明(命題 5.3)
cot の評価。 sin(a+ib)=sinacoshb+icosasinhb なので ∣sin(a+ib)∣2=sin2a+sinh2b、同様に ∣cos(a+ib)∣2=cos2a+sinh2b です。N を自然数、CN を頂点 ±(N+21)±i(N+21) の正方形の周(反時計回り)とします。縦の辺 Reζ=±(N+21) では sin2(πReζ)=1、cos2=0 なので ∣cotπζ∣2=1+sinh2sinh2≤1。横の辺 ∣Imζ∣=N+21 では s=sinh2(πImζ)≥sinh2(π/2) として ∣cotπζ∣2=sin2+scos2+s≤s1+s=coth2(πImζ)≤coth2(2π)<4 です。よって CN 上で ∣πcotπζ∣≤2π。
留数計算。 z∈/Z を固定し、N>∣z∣ を取ります。
G(ζ)=ζ(ζ−z)zπcotπζを、凸な(したがって単連結な)領域 D={∣Reζ∣<N+1, ∣Imζ∣<N+1} で考えます。D 内の極は、ζ=z、ζ=0、ζ=n(0<∣n∣≤N)で、すべて CN の内部にあります。ζ=z での留数は πcotπz。ζ=n=0 では cot の留数 1 から n(n−z)z=n−z1−n1。ζ=0 では、πcotπζ−ζ1=ζ1(sin(πζ)/(πζ)cosπζ−1) の括弧は偶関数で 0 で消えるので πcotπζ−ζ1 は 0 で正則かつ値が 0 です。したがって G の 0 の周りの特異部は ζ2(ζ−z)z の部分で、留数は dζdζ−zzζ=0=−z1 です。留数定理(定理 5.1[留数定理と定積分への応用])により
πcotπz−z1+0<∣n∣≤N∑(n−z1−n1)=2πi1∮CNG(ζ)dζ=:IN.n と −n の項をまとめると n−z1−n+z1=n2−z22z ですから、πcotπz=z1+∑n=1Nz2−n22z+IN です。
IN→0。 CN 上で ∣ζ∣≥N+21、∣ζ−z∣≥N+21−∣z∣、周の長さは 8(N+21) なので、ML 不等式で
∣IN∣≤2π1⋅8(N+21)⋅(N+21)(N+21−∣z∣)∣z∣⋅2π=N+21−∣z∣8∣z∣→0.一様収束は、コンパクト集合 K⊂C∖Z で ∣2z/(z2−n2)∣≤cK/n2(n 大)から M 判定法で従います。
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系 5.4(sin の無限積)✓
すべての z∈C で
sinπz=πzn=1∏∞(1−n2z2).
証明(系 5.4)
P(z)=πz∏n≥1(1−z2/n2) とします。an(z)=−z2/n2 はコンパクト集合上で ∑sup∣an∣<∞ なので 命題 3.2 が使え、P は整関数で、零点はちょうど整数(各々単純)です。z∈/Z で
P(z)P′(z)=z1+n≥1∑1−z2/n2−2z/n2=z1+n≥1∑z2−n22z=πcotπz=sinπz(sinπz)′です(命題 5.3)。したがって C∖Z 上で (sinπz/P(z))′=P(z)sinπz(πcotπz−PP′)=0 です。C∖Z は連結なので sinπz/P(z) は定数で、z→0 で πzsinπz→1 と ∏(1−z2/n2)→1 から定数は 1 です。両辺は整関数で、整数でも連続性から等号が成り立ちます。
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例 5.5(ζ(2) と ζ(4))
∣z∣<1 で z2−n22z=−n22z⋅1−z2/n21=−2∑k≥1n2kz2k−1 であり、n,k について絶対収束するので和の順序を入れ替えられ(定理 7.11[級数と収束判定])、命題 5.3 から
πzcotπz=1−2k≥1∑ζ(2k)z2k,ζ(s)=n≥1∑n−s.他方、wcotw=1−w2/6+w4/120−⋯1−w2/2+w4/24−⋯=1−3w2−45w4−⋯ (分母を払って係数を比べる)。w=πz とおいて z2,z4 の係数を比較すると 2ζ(2)=π2/3、2ζ(4)=π4/45、すなわち
ζ(2)=6π2,ζ(4)=90π4.
定義 6.1(ガンマ関数)↗
Rez>0 に対して
Γ(z)=∫0∞tz−1e−tdtと定める(tz−1=e(z−1)lnt)。
定理 6.2(ガンマ関数の解析接続と関数等式)✓
Γ は Rez>0 で正則で、Γ(z+1)=zΓ(z)、Γ(n+1)=n! が成り立つ。Γ は C 全体の有理型関数に延び、極は z=0,−1,−2,… のみで、すべて単純極である。z=−k での留数は k!(−1)k である。
証明(定理 6.2)
正則性。 n≥2 に対し Γn(z)=∫1/nntz−1e−tdt とします。tz−1=∑k≥0k!((z−1)lnt)k は t∈[1/n,n] と ∣z∣≤ρ について一様収束するので項別積分でき、Γn(z)=∑kk!(z−1)k∫1/nn(lnt)ke−tdt は係数が ∣⋅∣≤n(lnn)k で抑えられた、収束半径 ∞ の冪級数、すなわち整関数です。0<a≤Rez≤b では
∣Γ(z)−Γn(z)∣≤∫01/nta−1dt+∫n∞tb−1e−tdt→0で一様収束するので、定理 5.2[偏角の原理と Rouché の定理] により Γ は Rez>0 で正則です。
関数等式。 部分積分 ∫εMtze−tdt=[−tze−t]εM+z∫εMtz−1e−tdt で、Rez>0 なら境界項は ε→0、M→∞ で 0 に行きます。Γ(1)=1 と合わせて Γ(n+1)=n! です。
解析接続。 k≥1 に対し Rez>−k、z∈/{0,−1,…,−k+1} で Γ(k)(z)=z(z+1)⋯(z+k−1)Γ(z+k) と定めると、関数等式から Rez>0 で Γ に一致し、共通領域で Γ(k+1)=Γ(k) です。これらを貼り合わせて有理型関数を得ます。z=−k は Γ(k+1)(z)=z(z+1)⋯(z+k)Γ(z+k+1) の定義域 Rez>−k−1 に入り、そこでは分母の因子 (z+k) だけが零になるので、Γ(1)=1 から留数は (−k)(−k+1)⋯(−1)1=k!(−1)k です。
∎
定理 6.3(Gauss の極限公式)✓
z∈/{0,−1,−2,…} について
Γ(z)=n→∞limgn(z),gn(z)=z(z+1)⋯(z+n)n!nz.
証明(定理 6.3)
Rez>0。 J(n,z)=∫01(1−s)nsz−1ds とおくと、部分積分で J(n,z)=znJ(n−1,z+1)、J(0,z)=z1 なので J(n,z)=z(z+1)⋯(z+n)n! です。t=ns と置換して
gn(z)=nzJ(n,z)=∫0n(1−nt)ntz−1dt.0≤(1−t/n)n≤e−t(1−x≤e−x)、かつ (1−t/n)n→e−t で、優関数 tRez−1e−t は可積分なので、優収束定理(定理 7.3[ルベーグ積分の定義と収束定理])から gn(z)→Γ(z) です。
一般の z。 定義から zgn(z)=(z+1)⋯(z+n)n!nz=gn(z+1)nz+n+1 です。gn(z+1)→Γ(z+1) なら gn(z)→Γ(z+1)/z=Γ(z) です(定理 6.2)。Rez>0 から出発して Rez>−1,−2,… と帰納すれば、すべての z で成り立ちます。
∎
定理 6.4(1/Γ の無限積)✓
Euler 定数 γ=limn→∞(1+21+⋯+n1−lnn) について
Γ(z)1=zeγzn=1∏∞(1+nz)e−z/nであり、右辺は整関数である。特に Γ は零点をもたない。
証明(定理 6.4)
dn=∑k≤nk1−lnn とおくと、dn+1−dn=n+11−ln(1+n1)<0(ln(1+n1)=∫nn+1xdx>n+11)、また lnn=∫1nxdx<∑k<nk1 から dn>0 で、dn は単調減少かつ有界なので収束します(γ の存在)。
gn(z)1=zn−z∏k=1n(1+kz)=zezdn∏k=1n(1+kz)e−z/k です。(1+w)e−w=E1(−w) なので 補題 4.2 から ∣1−(1+kz)e−z/k∣≤∣z/k∣2(∣z∣≤k)、コンパクト集合上で ∑ksup∣z∣2/k2<∞ です。命題 3.2 から積は局所一様収束して整関数となり、n→∞ で 1/gn は整関数 Φ(z)=zeγz∏(⋯) に収束します。定理 6.3 により極でない z では Φ(z)=1/Γ(z)、極 z=−k では n≥k で 1/gn(−k)=0 なので Φ(−k)=0 です。以上で、極でない z について Φ(z)Γ(z)=1 が成り立ちます。
∎
定理 6.5(相反公式)✓
z∈C∖Z について
Γ(z)Γ(1−z)=sinπzπ.特に Γ(21)=π。
証明(定理 6.5)
定理 6.4 の積を z と −z で掛けると、指数部分 eγze−γz=1 と e−z/nez/n=1 が消えて
Γ(z)Γ(−z)1=−z2n≥1∏(1−n2z2)=−πzsinπzです(系 5.4)。よって Γ(z)Γ(−z)=−zsinπzπ で、Γ(1−z)=−zΓ(−z) を使えば主張です。z=21 で Γ(21)2=π、積分の定義から Γ(21)>0 なので Γ(21)=π です。
∎
Stirling の公式は、Γ(x) が x の大きいところで 2πxx−1/2e−x にほぼ等しいという主張です。証明は、この主要部を引いた残り μ(x) を調べます。μ(x)−μ(x+1) が小さく計算できるのでその和が収束すること、収束先が定数であること、その定数が Wallis 型の積から ln2π と決まることの順に進みます。
定理 6.6(Stirling の公式(実軸))✓
x>0 に対して、0<ϑ(x)<1 をみたす ϑ(x) が存在して
Γ(x)=2πxx−21e−xeϑ(x)/(12x)が成り立つ。特に n!∼2πn(n/e)n(n→∞)である。
証明(定理 6.6)
μ(x)=lnΓ(x)−(x−21)lnx+x とおきます。
(1) 漸化式。 Γ(x+1)=xΓ(x) から g(x):=μ(x)−μ(x+1)=(x+21)ln(1+x1)−1。
(2) 評価。 t=2x+11∈(0,1) とすると x+21=2t1、1+x1=1−t1+t で、ln1−t1+t=2∑j≥02j+1t2j+1 から
g(x)=3t2+5t4+⋯,0<g(x)<3t2j≥0∑t2j=3(1−t2)t2=12x(x+1)1.(3) 極限の存在。 (1) と (2) から、μ(x)−μ(x+N)=∑k<Ng(x+k) は N について増加し、0<⋅<∑k<N12(x+k)(x+k+1)1=121(x1−x+N1)<12x1 です。よって λ(x)=limN→∞μ(x+N) が存在し、0<μ(x)−λ(x)<12x1 です(各項の不等式が狭義なので和も狭義)。
(4) λ は定数。 Γ(x+N)=Γ(x)x(x+1)⋯(x+N−1) と 定理 6.3(n=N−1)から (N−1)!(N−1)xx(x+1)⋯(x+N−1)→Γ(x)1 なので、Γ(N)NxΓ(x+N)→1 です。したがって lnΓ(x+N)−lnΓ(N)=xlnN+o(1)。一方
(x+N−21)ln(x+N)−(N−21)lnN=xlnN+(x+N−21)ln(1+Nx)=xlnN+x+o(1)なので μ(x+N)−μ(N)→0、すなわち λ(x)=limNμ(N)=:λ0 はすべての x>0 で同じです。
(5) λ0=ln2π。 cn=eμ(n)→C=eλ0 とすると、n!=nΓ(n)=cnnn+21e−n です。系 5.4 で z=21 とすると 1=2π∏k≥1(1−4k21)、つまり
Wn:=k=1∏n(2k−1)(2k+1)(2k)2→2π.∏k≤n(2k)2=(2nn!)2、∏k≤n(2k−1)=2nn!(2n)! から Wn=((2n)!)2(2n+1)24n(n!)4 で、n!=cnnn+21e−n と (2n)!=c2n(2n)2n+21e−2n を代入すると Wn=2c2n2(2n+1)cn4n→4C2 です。よって C2=2π。
(3) と (4)、(5) を合わせると μ(x)=ln2π+(μ(x)−λ(x)) で主張が従います。
∎
例 6.8(Γ の特殊値と留数)
Γ(21)=π と関数等式から Γ(25)=23⋅21π=43π、Γ(−21)=−1/2Γ(1/2)=−2π です。z=−2 での留数は 定理 6.2 で 2!(−1)2=21。また相反公式で z=41 とすると Γ(41)Γ(43)=sin(π/4)π=π2 です。
補題 7.1(ガウス関数の Fourier 変換)✓
t>0、k∈R について
∫−∞∞e−πtx2e−2πikxdx=t−1/2e−πk2/t.
証明(補題 7.1)
まず t=1 とします。f(z)=e−πz2 は整関数で、長方形 [−M,M]×[0,ξ] の周上の積分は 0 です(コーシーの積分定理)。縦の辺では ∣f(±M+iy)∣=e−π(M2−y2)≤e−π(M2−ξ2) なので、ML 不等式で寄与は M→∞ で 0 に行き、∫Re−π(x+iξ)2dx=∫Re−πx2dx=1 です(最後の等号は 定理 3.3[広義積分・パラメータ積分とガンマ関数] と置換)。e−π(x+iξ)2=eπξ2e−πx2e−2πiξx ですから ∫e−πx2e−2πiξxdx=e−πξ2。一般の t は x=y/t の置換で ξ=k/t とすれば得られます。
∎
補題 7.2(Fourier 係数が絶対収束する連続周期関数)✓
F:R→C を周期 1 の連続関数とし、F^(k)=∫01F(x)e−2πikxdx が ∑k∣F^(k)∣<∞ をみたすとする。このとき すべての x で F(x)=∑k∈ZF^(k)e2πikx である。
証明(補題 7.2)
F が実数値のとき示せば、実部と虚部に分けて一般の場合が従います(それぞれの Fourier 係数は F^(±k) の組合せで、同じく絶対総和可能)。φ(θ)=F(θ/2π) は周期 2π の連続関数で、その Fourier 係数 2π1∫φe−ikθdθ は F^(k) です。定理 4.4[調和関数と Poisson 積分] の Poisson 積分 ur(ψ)=2π1∫Pr(ψ−θ)φ(θ)dθ は、補題 4.2[調和関数と Poisson 積分] の 1 の級数(一様収束)を使うと ∑kF^(k)r∣k∣eikψ に等しく、r→1 で φ(ψ) に収束します(境界での連続性)。∑∣F^(k)∣<∞ なので M 判定法から ∑kF^(k)r∣k∣eikψ→∑kF^(k)eikψ で、極限が一致して主張を得ます。
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定理 7.3(テータ関数の変換則)✓
θ(t)=∑n∈Ze−πn2t(t>0)は θ(1/t)=tθ(t) をみたす。
証明(定理 7.3)
Ft(x)=∑n∈Ze−πt(x+n)2 は、x が有界集合を動くとき一様収束する級数なので連続で、周期 1 です。Fourier 係数は、[0,1] で項別積分して y=x+n と置換すると e−2πikx=e−2πiky なので
F^t(k)=n∑∫nn+1e−πty2e−2πikydy=∫Re−πty2e−2πikydy=t−1/2e−πk2/t(補題 7.1)で、絶対総和可能です。補題 7.2 を x=0 で使えば ∑ne−πtn2=t−1/2∑ke−πk2/t、つまり θ(t)=t−1/2θ(1/t) です。
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ここまでの準備で、ζ 関数の関数等式を示します。方針は、ζ を Γ を使った積分 ∫0∞ψ(t)ts/2−1dt で表し、積分区間を t<1 と t>1 に分けて、テータ関数の変換則で t<1 の側を t>1 の側へ移すことです。移した結果が s と 1−s について対称になるので、関数等式と解析接続が同時に出ます。
定理 7.4(ζ 関数の解析接続と関数等式)✓
ζ(s)=∑n≥1n−s(Res>1)は C 全体の有理型関数に延び、極は s=1 のみで、単純極、留数 1 である。ξ(s)=π−s/2Γ(s/2)ζ(s) は
ξ(s)=ξ(1−s)をみたす。また ζ(0)=−21、ζ(−2k)=0(k≥1)である。
証明(定理 7.4)
ψ(t)=∑n≥1e−πn2t=21(θ(t)−1) とおきます。定理 7.3 から
ψ(1/t)=tψ(t)+2t−1(t>0).Res>1 での積分表示。 u=πn2t と置換して π−s/2Γ(s/2)n−s=∫0∞e−πn2tts/2−1dt です。n について和を取り(正の項の和で、Res>1 なら絶対収束、優収束定理)、
ξ(s)=∫0∞ψ(t)ts/2−1dt=∫1∞ψ(t)ts/2−1dt+∫01ψ(t)ts/2−1dt.後半に t=1/u を代入し、上の変換則を使うと
∫01ψ(t)t2s−1dt=∫1∞ψ(u)u21−s−1du+21∫1∞(u−2s−21−u−2s−1)du,最後の積分は 21(s−12−s2)=s−11−s1 です。よって
ξ(s)=s−11−s1+J(s),J(s)=∫1∞ψ(t)(t2s−1+t21−s−1)dt.J は整関数。 ψ(t)≤1−e−πe−πt(t≥1)なので、J は ∫1M の部分の M→∞ での極限で、各 ∫1M は Γn と同様に s の冪級数(整関数)、収束は局所一様なので 定理 5.2[偏角の原理と Rouché の定理] から J は整関数です。
接続と対称性。 右辺 s−11−s1+J(s) は C 上有理型で、極は s=0,1 の単純極のみです。s↦1−s で s−11−s1↦−s1+s−11、J(1−s)=J(s) で不変なので、ξ(s)=ξ(1−s) です。ζ(s)=πs/2ξ(s)/Γ(s/2) は 1/Γ が整関数(定理 6.4)なので C 上有理型で、Res>1 で級数に一致するので(一致の定理)接続です。
極と特殊値。 s=1 で ξ∼s−11、π1/2/Γ(21)=1 から留数 1。s=0 では ξ∼−s1、Γ(s/2)∼s2 から ζ(0)=−21 で極ではありません。s=−2k では ξ は正則(極は 0,1 のみ)、Γ(s/2) は極ですから 1/Γ(s/2)=0 で ζ(−2k)=0 です。
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演習 8.1標準
cosπz=∏n≥1(1−(2n−1)24z2) を示せ。
解答
sin2πz=2sinπzcosπz と 系 5.4 から、cosπz=2sinπzsin2πz=2πz∏n≥1(1−z2/n2)2πz∏n≥1(1−4z2/n2) です(z∈/Z)。分子の積を n=2m(偶数)と n=2m−1(奇数)に分けると、絶対収束する積なので順序を入れ替えられ、偶数の因子は 1−4m24z2=1−m2z2 で分母とちょうど打ち消し合います。残る奇数の因子が求める積です。整関数どうしの等式は連続性で整数点にも延びます。
演習 8.2標準
Stirling の公式(定理 6.6)を使って、中心二項係数について (n2n)∼πn4n(n→∞)を示せ。
解答
(n2n)=(n!)2(2n)!∼2πn(n/e)2n4πn(2n/e)2n=2πn2πn4n=πn4n です。
演習 8.3標準
実数 y について Γ(21+iy)2=coshπyπ を示せ。
解答
定義から Rez>0 で Γ(zˉ)=Γ(z) です(tzˉ−1=tz−1)。よって Γ(21+iy)Γ(21−iy)=∣Γ(21+iy)∣2 です。定理 6.5 で z=21+iy とすると Γ(z)Γ(1−z)=Γ(21+iy)Γ(21−iy)=sin(π/2+iπy)π=cos(iπy)π=coshπyπ です。
演習 8.4標準
関数等式と ζ(2)=π2/6 を使って ζ(−1)=−121 を示せ。
解答
ξ(−1)=ξ(2) です。左辺は π1/2Γ(−21)ζ(−1)=π1/2⋅(−2π)ζ(−1)=−2πζ(−1) (例 6.8)、右辺は π−1Γ(1)ζ(2)=π−1⋅6π2=6π です。したがって ζ(−1)=−121。ここで級数 1+2+3+⋯ が収束するのではなく、ζ(s) を解析接続した値であることに注意してください。
- L. V. Ahlfors, Complex Analysis, 3rd ed., McGraw-Hill, 1979 — 第 5 章 §2(無限積)と §3(Weierstrass の定理、Mittag-Leffler の定理)、第 5 章 §2.4(Γ 関数)。
- W. Rudin, Real and Complex Analysis, 3rd ed., McGraw-Hill, 1987 — 第 15 章(無限積と Weierstrass の因数分解)、第 8 章(Γ 関数と Stirling の公式)。
- E. M. Stein and R. Shakarchi, Complex Analysis, Princeton University Press, 2003 — 第 5 章(整関数)と第 6 章(Γ 関数と ζ 関数)。
- E. T. Whittaker and G. N. Watson, A Course of Modern Analysis, 4th ed., Cambridge University Press, 1927 — 第 12 章(Γ 関数)。
- H. M. Edwards, Riemann’s Zeta Function, Academic Press, 1974 — 第 1 章(関数等式のテータ関数による証明)。
執筆: Claude Code(Sonnet 5.5)、Claude Code(Opus 5.5)・監査 3 回(Claude Code)・最終 2026-10-12