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群の作用と Sylow の定理:数え上げで群の構造を決める

対象読者: 本テーマ第 1〜4 章の群・部分群・ラグランジュの定理・商群・準同型定理を学んだ人。群の作用やシローの定理は仮定しません。

前提となる記事:群の準同型定理:核で潰した商が像と同型になる仕組み

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正方形を回したり裏返したりすると、4 つの頂点は互いに入れ替わります。このように、群の元を「ものを動かす操作」として使い、動いた先がいくつあるかを数えると、群の中身が見えてきます。この記事の素朴な疑問は、群の位数の約数のうち、その大きさの部分群が必ずあるのはどれか、ということです。読み終えると、位数が 15 や 21 のような群の形を、数え上げだけで絞り込めるようになります。

  • 群 GG が集合 XX に作用するとは、GG の各元が XX の置換として振る舞い、積が合成に対応することです。作用は準同型 G→Sym(X)G \to \mathrm{Sym}(X) と同じものです。
  • 軌道・安定化群の公式 ∣G⋅x∣=[G:Gx]|G \cdot x| = [G : G_x] が、数え上げの基本道具です。軌道の個数を数えるバーンサイドの補題は、これの系として得られます。
  • 共役による作用に軌道・安定化群の公式を使うと類等式が出ます。pp 群の中心が自明でないこと、位数 p2p^2 の群がアーベル群であることがここから従います。
  • Sylow の 3 定理は、位数 pamp^a m(p∤mp \nmid m)の有限群 GG に位数 pap^a の部分群が存在し(第 1)、それらがすべて共役で(第 2)、個数 npn_p が np≡1(modp)n_p \equiv 1 \pmod{p} かつ np∣mn_p \mid m を満たす(第 3)ことを述べます。
  • 正規部分群 NN と部分群 HH から群を組み立てる操作が、直積と半直積です。素数 p<qp < q に対し、位数 pqpq の群は巡回群か、p∣q−1p \mid q-1 のときに限って現れる非可換群のどちらかであることが Sylow の定理から決まります。
  • 可解群の性質(部分群・商・拡大で閉じる)と、pp 群や位数 pqpq の群が可解であること、SnS_n(n≥5n \ge 5)が可解でないことを確認します。

ラグランジュの定理は、有限群の部分群の位数が群の位数の約数であることを教えてくれます。しかし逆は成り立ちません。位数 1212 の群 A4A_4 には位数 66 の部分群がありません(命題 8.1[部分群と剰余類])。では、位数の約数のうちどれなら部分群が存在するでしょうか。

答えを与えるのがシローの理論です。素数のべき pap^a が ∣G∣|G| をちょうど割り切る最大のべきなら、位数 pap^a の部分群は必ず存在し、しかも「数え上げ」の制約が、そのような部分群の個数を強く縛ります。この議論の道具が群の作用です。立方体を回す、並び方を入れ替える、群自身の元で共役をとる、といった対称性の操作を、一つの語彙(作用)で扱い、軌道の大きさを数えます。

以下では GG を群、ee をその単位元とします。有限群を主に扱い、準同型定理と商群の知識を前提とします。

定義 2.1(群の作用)↗

群 GG の集合 XX への(左)作用とは、写像 G×X→XG \times X \to X, (g,x)↦g⋅x(g, x) \mapsto g \cdot x であって、次を満たすものをいう。

  1. すべての x∈Xx \in X に対し e⋅x=xe \cdot x = x。
  2. すべての g,h∈Gg, h \in G, x∈Xx \in X に対し (gh)⋅x=g⋅(h⋅x)(gh) \cdot x = g \cdot (h \cdot x)。

x∈Xx \in X に対し、G⋅x={ g⋅x:g∈G }G \cdot x = \{\, g \cdot x : g \in G \,\} を xx の軌道、Gx={ g∈G:g⋅x=x }G_x = \{\, g \in G : g \cdot x = x \,\} を xx の安定化群という。g∈Gg \in G に対し Xg={ x∈X:g⋅x=x }X^g = \{\, x \in X : g \cdot x = x \,\} を gg の固定点集合、XG={ x:g⋅x=x (∀g∈G) }X^G = \{\, x : g \cdot x = x\ (\forall g \in G)\,\} を GG の固定点集合という。

作用は、群の準同型として言い換えられます。XX の全単射写像全体は写像の合成で群 Sym(X)\mathrm{Sym}(X) をなします(X={1,…,n}X = \{1, \ldots, n\} なら対称群 SnS_n、定理 5.1[群論入門])。

命題 2.2(作用と準同型)✓

GG の XX への作用に対し、ρ(g)(x)=g⋅x\rho(g)(x) = g \cdot x で定まる ρ:G→Sym(X)\rho : G \to \mathrm{Sym}(X) は群準同型である。逆に準同型 ρ:G→Sym(X)\rho : G \to \mathrm{Sym}(X) は g⋅x:=ρ(g)(x)g \cdot x := \rho(g)(x) により GG の作用を定める。

証明(命題 2.2)

作用から出発します。各 ρ(g)\rho(g) は全単射です。逆写像は ρ(g−1)\rho(g^{-1}) で、g−1⋅(g⋅x)=(g−1g)⋅x=e⋅x=xg^{-1} \cdot (g \cdot x) = (g^{-1}g) \cdot x = e \cdot x = x と、同様に g⋅(g−1⋅x)=xg \cdot (g^{-1} \cdot x) = x が成り立つからです。また条件 2 は ρ(gh)=ρ(g)∘ρ(h)\rho(gh) = \rho(g) \circ \rho(h) そのものです。逆に準同型 ρ\rho から g⋅x:=ρ(g)(x)g \cdot x := \rho(g)(x) と定めると、ρ(e)=id\rho(e) = \mathrm{id} と ρ(gh)=ρ(g)∘ρ(h)\rho(gh) = \rho(g)\circ\rho(h) から条件 1, 2 が成り立ちます。

例 2.3(代表的な作用)

  1. 左乗法。 GG 自身への作用 g⋅x=gxg \cdot x = gx。軌道は GG 全体(推移的)。
  2. 剰余類への作用。 H≤GH \le G に対し、左剰余類の集合 G/HG/H への作用 g⋅(xH)=(gx)Hg \cdot (xH) = (gx)H。軌道は G/HG/H 全体で、HH 自身(= 剰余類 eHeH)の安定化群は HH です。
  3. 共役による作用。 g⋅x=gxg−1g \cdot x = gxg^{-1}(x∈Gx \in G)。軌道は xx の共役類、安定化群は xx の中心化群 CG(x)={g:gx=xg}C_G(x) = \{ g : gx = xg \} です。H≤GH \le G の共役 gHg−1gHg^{-1} の集合への共役作用では、HH の安定化群は正規化群 NG(H)={g:gHg−1=H}N_G(H) = \{ g : gHg^{-1} = H \} です。
  4. 正方形の頂点への作用。 正方形の対称性の群 D4D_4(位数 88)は頂点の集合 {1,2,3,4}\{1,2,3,4\} に作用し、軌道は全体(頂点 11 の安定化群は恒等写像と対角線についての折り返しの 2 元)です。

軌道は XX を分割します。x∼y⇔y∈G⋅xx \sim y \Leftrightarrow y \in G \cdot x が同値関係だからです(反射律は ee、対称律は x=g−1⋅yx = g^{-1}\cdot y、推移律は作用の積)。なお、軌道が XX 全体になる作用を推移的といいます(上の例 1, 2, 4)。また、例 3 の中心化群 CG(x)C_G(x) は xx と交換できる元の集まり、正規化群 NG(H)N_G(H) は HH を共役で動かしても HH に戻る元の集まりです。

定理 2.4(軌道・安定化群の公式)✓

GG が XX に作用し、x∈Xx \in X とする。GxG_x は GG の部分群で、写像

G/Gx→G⋅x,gGx↦g⋅xG/G_x \to G \cdot x, \qquad gG_x \mapsto g \cdot x

は(左剰余類の集合から軌道への)全単射である。特に GG が有限群なら ∣G⋅x∣=[G:Gx]=∣G∣/∣Gx∣|G \cdot x| = [G : G_x] = |G|/|G_x| である。

証明(定理 2.4)

e∈Gxe \in G_x で、g,h∈Gxg, h \in G_x なら (gh−1)⋅x=g⋅(h−1⋅x)=g⋅x=x(gh^{-1}) \cdot x = g \cdot (h^{-1} \cdot x) = g \cdot x = x(h⋅x=xh \cdot x = x から h−1⋅x=xh^{-1} \cdot x = x)なので部分群です。g⋅x=g′⋅xg \cdot x = g' \cdot x は (g−1g′)⋅x=x(g^{-1}g') \cdot x = x、すなわち g−1g′∈Gxg^{-1}g' \in G_x、すなわち gGx=g′GxgG_x = g'G_x と同値です(補題 5.2[部分群と剰余類])。この同値は、写像が代表元の取り方によらず定まること(⇐\Leftarrow)と単射であること(⇒\Rightarrow)を同時に示し、全射性は軌道の定義です。有限群なら 定理 6.1[部分群と剰余類] から ∣G∣=[G:Gx] ∣Gx∣|G| = [G:G_x]\,|G_x| です。

この定理から、軌道の大きさは群の位数の約数です。群論でこの事実が何度も使われます。たとえば D4D_4 が頂点に推移的に作用し、安定化群の位数が 22 であることから ∣D4∣=4×2=8|D_4| = 4 \times 2 = 8 と位数が求まります。

G_xg₁ G_xg₂ G_xG(左剰余類に分割)xg₁ xg₂ x軌道 G·x
軌道・安定化群の公式。G を G_x の左剰余類に分け、各剰余類を軌道の 1 点に送る

定理 2.5(バーンサイドの補題)✓

有限群 GG が有限集合 XX に作用するとき、軌道の個数は

∣X/G∣=1∣G∣∑g∈G∣Xg∣|X/G| = \frac{1}{|G|} \sum_{g \in G} |X^g|

である(XgX^g は gg の固定点集合)。

証明(定理 2.5)

組 (g,x)(g, x) で g⋅x=xg \cdot x = x となるものの個数 NN を 2 通りに数えます。gg ごとに数えれば N=∑g∣Xg∣N = \sum_g |X^g| です。xx ごとに数えれば N=∑x∣Gx∣N = \sum_x |G_x| で、定理 2.4 により ∣Gx∣=∣G∣/∣G⋅x∣|G_x| = |G|/|G \cdot x| なので

N=∑x∈X∣G∣∣G⋅x∣=∣G∣∑軌道 O∑x∈O1∣O∣=∣G∣⋅∣X/G∣N = \sum_{x \in X} \frac{|G|}{|G\cdot x|} = |G| \sum_{\text{軌道 } O} \sum_{x \in O} \frac{1}{|O|} = |G| \cdot |X/G|

です(各軌道 OO で ∑x∈O1/∣O∣=1\sum_{x \in O} 1/|O| = 1)。両者を比べて補題が従います。

例 2.6(首飾りの数え上げ)

正方形の 4 つの頂点を白か黒で塗る 24=162^4 = 16 通りのうち、回転(C4={e,r,r2,r3}C_4 = \{e, r, r^2, r^3\})で重なるものを同一視した塗り分けの数を求めます。XX = 16 通りの塗り方とします。固定点の個数は、ee で 1616、rr と r3r^3(90°90° 回転)で全頂点が同色の 22 通りずつ、r2r^2(180°180° 回転)で向かい合う頂点が同色の 22=42^2 = 4 通りです。定理 2.5 から

∣X/C4∣=16+2+4+24=6|X/C_4| = \frac{16 + 2 + 4 + 2}{4} = 6

です(全部白、全部黒、黒 1 個、黒 2 個で隣り合う、黒 2 個で向かい合う、黒 3 個、の 6 通り)。

GG が自分自身に共役 g⋅x=gxg−1g \cdot x = gxg^{-1} で作用するとき、固定点の集合は中心 Z(G)={z∈G:zg=gz (∀g∈G)}Z(G) = \{ z \in G : zg = gz\ (\forall g \in G) \} です。それ以外の軌道(共役類)の大きさは、安定化群 CG(x)C_G(x) の指数 [G:CG(x)][G : C_G(x)] です(定理 2.4)。軌道は GG を分割するので、次が得られます。ねらいは、群の位数 ∣G∣|G| を「中心の元の個数」と「共役類の大きさの和」に分けて、約数の条件で制約をかけることです。

定理 3.1(類等式)✓

有限群 GG について、共役類のうち元を 2 個以上含むものから代表元 x1,…,xrx_1, \ldots, x_r を 1 つずつ取ると、

∣G∣=∣Z(G)∣+∑i=1r[G:CG(xi)]|G| = |Z(G)| + \sum_{i=1}^{r} [G : C_G(x_i)]

が成り立つ。ここで各 [G:CG(xi)][G : C_G(x_i)] は 11 より大きく、∣G∣|G| の約数である。

証明(定理 3.1)

共役類は GG の分割を与えます。大きさ 11 の共役類は gxg−1=xgxg^{-1} = x がすべての gg で成り立つ xx、すなわち Z(G)Z(G) の元に対応します。残りの共役類の大きさは 定理 2.4 から [G:CG(xi)][G : C_G(x_i)] で、>1>1 であり、定理 6.1[部分群と剰余類] から ∣G∣|G| を割ります。

素数 pp について、位数が pp のべきの群を pp 群と呼びます。類等式の各項は pp の倍数か、中心の部分だけが違いを生みます。

補題 3.2(p 群の作用の固定点の合同式)✓

PP を pp 群、XX を有限集合とし、PP が XX に作用するとする。このとき ∣X∣≡∣XP∣(modp)|X| \equiv |X^P| \pmod{p} である。

証明(補題 3.2)

各軌道の大きさは ∣P∣|P| の約数なので pp のべきです。大きさ 11 の軌道は固定点で、固定点でない軌道の大きさは pp の倍数です。XX は軌道に分割されるので、∣X∣|X| を 2 種類に分けて足せば ∣X∣≡∣XP∣(modp)|X| \equiv |X^P| \pmod{p} です。

定理 3.3(p 群の中心は自明でない)✓

GG が位数 pnp^n(n≥1n \ge 1)の群ならば、∣Z(G)∣|Z(G)| は pp の倍数で、特に Z(G)≠{e}Z(G) \ne \{e\} である。

証明(定理 3.3)

定理 3.1 で、各 [G:CG(xi)][G:C_G(x_i)] は 11 より大きい pnp^n の約数なので pp の倍数です。∣G∣=pn|G| = p^n も pp の倍数なので、∣Z(G)∣=∣G∣−∑[G:CG(xi)]|Z(G)| = |G| - \sum [G : C_G(x_i)] も pp の倍数です。e∈Z(G)e \in Z(G) より ∣Z(G)∣≥1|Z(G)| \ge 1 なので ∣Z(G)∣≥p|Z(G)| \ge p です。

系 3.4(位数 p² の群はアーベル群)✓

位数 p2p^2 の群はアーベル群である。

次の証明の方針です。中心 ZZ の位数が pp だと仮定すると、商群 G/ZG/Z が巡回群になり、そこから GG がアーベル群になって Z=GZ = G となります。これは ∣Z∣=p|Z| = p に反するので、∣Z∣=p2|Z| = p^2 だと結論します。

証明(系 3.4)

Z=Z(G)Z = Z(G) は正規部分群で、定理 3.3 から ∣Z∣∈{p,p2}|Z| \in \{p, p^2\} です。∣Z∣=p|Z| = p と仮定すると G/ZG/Z は位数 pp の群で、素数位数の群は巡回群なので(系 7.2[部分群と剰余類])gZgZ で生成されます。すると任意の a∈Ga \in G は a=gkza = g^k z(z∈Zz \in Z)の形に書けます。a=gkza = g^k z, b=glz′b = g^l z' に対し ab=gkzglz′=gk+lzz′=baab = g^k z g^l z' = g^{k+l} z z' = ba なので GG はアーベル群、Z=GZ = G となって ∣Z∣=p|Z| = p に反します。よって ∣Z∣=p2|Z| = p^2、すなわち G=ZG = Z はアーベル群です。

GG を有限群とし、∣G∣=pam|G| = p^a m(pp は素数、a≥0a \ge 0, p∤mp \nmid m)と書きます。位数 pap^a の部分群を GG の Sylow pp 部分群といい、その全体を Sylp(G)\mathrm{Syl}_p(G)、個数を npn_p と書きます。

次の補題は、第 1 定理の証明の準備です。第 1 定理では GG の部分集合の個数が (pampa)\binom{p^a m}{p^a} になるので、これが pp で割り切れないことが必要になります。二項係数を pp で割った余りを、標数 pp の多項式環で計算して求めます。

補題 4.1(二項係数の p 進的な性質)✓

(pampa)≡m(modp)\dbinom{p^a m}{p^a} \equiv m \pmod{p} である。特に p∤mp \nmid m なら p∤(pampa)p \nmid \dbinom{p^a m}{p^a} である。

証明(補題 4.1)

体 Fp\mathbb{F}_p 上の多項式環 Fp[x]\mathbb{F}_p[x](標数 pp)で考えます。補題 7.1[多項式環と体の拡大] により (1+x)pa=1+xpa(1+x)^{p^a} = 1 + x^{p^a} です。したがって

(1+x)pam=((1+x)pa)m=(1+xpa)m(1+x)^{p^a m} = \bigl((1+x)^{p^a}\bigr)^m = (1 + x^{p^a})^m

で、xpax^{p^a} の係数を比べると、左辺は (pampa)\binom{p^a m}{p^a}、右辺は (m1)=m\binom{m}{1} = m(右辺に現れる xx のべきは xpajx^{p^a j} だけ)です。

第 1 定理の証明の方針です。部分群をいきなり探すのではなく、GG の部分集合全体に GG を作用させ、軌道の大きさを数えます。大きさが pp で割れない軌道を見つけ、その代表元の安定化群を調べると、それがちょうど位数 pap^a の部分群になります。

定理 4.2(Sylow の第 1 定理(存在))✓

∣G∣=pam|G| = p^a m(p∤mp \nmid m)ならば、GG は位数 pap^a の部分群(Sylow pp 部分群)を持つ。

証明(定理 4.2)

GG の部分集合のうち元の個数が pap^a のもの全体を XX とします。∣X∣=(pampa)|X| = \binom{p^a m}{p^a} は 補題 4.1 により pp で割り切れません。GG は XX に左乗法 g⋅S=gS={gs:s∈S}g \cdot S = gS = \{ gs : s \in S \} で作用します。軌道は XX を分割するので、∣X∣|X| が pp で割れないことから、大きさが pp で割り切れない軌道 OO があります。S∈OS \in O を 1 つ取り、H=GS={g:gS=S}H = G_S = \{ g : gS = S \} とします。

定理 2.4 により ∣G∣=∣O∣ ∣H∣|G| = |O|\,|H| で、pam=∣O∣∣H∣p^a m = |O| |H| かつ p∤∣O∣p \nmid |O| なので pa∣∣H∣p^a \mid |H| です。一方 HH は SS に左乗法で作用します(h∈Hh \in H, s∈Ss \in S なら hs∈hS=Shs \in hS = S)。固定した s∈Ss \in S について H→SH \to S, h↦hsh \mapsto hs は単射(hs=h′shs = h's なら h=h′h = h')なので ∣H∣≤∣S∣=pa|H| \le |S| = p^a です。よって ∣H∣=pa|H| = p^a です。

系 4.3(コーシーの定理)✓

素数 pp が有限群 GG の位数を割るならば、GG には位数 pp の元が存在する。

証明(系 4.3)

定理 4.2 の Sylow pp 部分群 PP(位数 pap^a, a≥1a \ge 1)から x≠ex \ne e を取ります。xx の位数は 系 7.1[部分群と剰余類] から pbp^b(b≥1b \ge 1)の形で、y=xpb−1y = x^{p^{b-1}} の位数は pp です。

定理 4.4(Sylow の第 2 定理(共役))✓

PP を Sylow pp 部分群、QQ を GG の任意の pp 部分群(位数が pp のべきの部分群)とする。このとき g∈Gg \in G で gQg−1⊆PgQg^{-1} \subseteq P となるものが存在する。特に Sylow pp 部分群はすべて互いに共役である。

証明(定理 4.4)

QQ は左剰余類の集合 X=G/PX = G/P に左乗法で作用します。∣X∣=[G:P]=m|X| = [G : P] = m は pp で割れないので、補題 3.2 により ∣XQ∣≡m≢0(modp)|X^Q| \equiv m \not\equiv 0 \pmod{p}、特に固定点 gPgP が存在します。すべての q∈Qq \in Q について qgP=gPqgP = gP、すなわち g−1qg∈Pg^{-1}qg \in P なので、g−1Qg⊆Pg^{-1}Qg \subseteq P です(gg を g−1g^{-1} に取り替えれば主張の形になる)。QQ も Sylow pp 部分群なら ∣g−1Qg∣=∣Q∣=∣P∣|g^{-1}Qg| = |Q| = |P| で、g−1Qg=Pg^{-1}Qg = P です。

第 3 定理の証明の方針です。個数 npn_p の約数の条件は、共役の作用が推移的であることと軌道・安定化群の公式から出ます。np≡1(modp)n_p \equiv 1 \pmod p は、PP 自身を共役で作用させ、固定点が PP ただ 1 つであることを示して、pp 群の作用の固定点の合同式に当てはめます。固定点が PP だけになる部分で、正規化群の中で第 2 定理をもう一度使います。

定理 4.5(Sylow の第 3 定理(個数))✓

∣G∣=pam|G| = p^a m(p∤mp \nmid m)とする。Sylow pp 部分群の個数 npn_p は

np=[G:NG(P)],np∣m,np≡1(modp)n_p = [G : N_G(P)], \qquad n_p \mid m, \qquad n_p \equiv 1 \pmod{p}

を満たす(PP は任意の Sylow pp 部分群)。特に np=1n_p = 1 であることと、Sylow pp 部分群が正規部分群であることは同値である。

証明(定理 4.5)

GG は Sylp(G)\mathrm{Syl}_p(G) に共役で作用し、定理 4.4 により推移的です。PP の安定化群は NG(P)N_G(P) なので 定理 2.4 から np=[G:NG(P)]n_p = [G : N_G(P)] です。P≤NG(P)P \le N_G(P) より [G:P]=[G:NG(P)] [NG(P):P][G:P] = [G : N_G(P)]\,[N_G(P) : P] で、np∣[G:P]=mn_p \mid [G:P] = m です。

次に np≡1n_p \equiv 1 を示します。PP を Sylp(G)\mathrm{Syl}_p(G) に共役で作用させ、補題 3.2 を使うために、固定点が PP ただ 1 つであることを示します。Q∈Sylp(G)Q \in \mathrm{Syl}_p(G) が固定点とすると、すべての x∈Px \in P で xQx−1=QxQx^{-1} = Q、すなわち P≤N:=NG(Q)P \le N := N_G(Q) です。PP と QQ はどちらも NN の位数 pap^a の部分群で、∣N∣|N| は ∣G∣|G| の約数なので、NN の位数の pp 部分は pap^a であり、P,QP, Q は NN の Sylow pp 部分群です。QQ は NN の正規部分群で、定理 4.4 を NN に適用すると PP は NN の中で QQ と共役、QQ は正規なので P=QP = Q です。したがって np=∣Sylp(G)∣≡∣Sylp(G)P∣=1(modp)n_p = |\mathrm{Syl}_p(G)| \equiv |\mathrm{Syl}_p(G)^P| = 1 \pmod{p} です。

最後の主張。np=1n_p = 1 なら PP は唯一の Sylow pp 部分群で、共役 gPg−1gPg^{-1} も Sylow pp 部分群なので gPg−1=PgPg^{-1} = P、つまり正規です。逆に PP が正規なら全共役が PP に等しく、第 2 定理で Sylow pp 部分群は PP だけです。

例 4.6(位数 15 の群)

∣G∣=15=3⋅5|G| = 15 = 3 \cdot 5 とします。n3∣5n_3 \mid 5 かつ n3≡1(mod3)n_3 \equiv 1 \pmod 3 から n3=1n_3 = 1、n5∣3n_5 \mid 3 かつ n5≡1(mod5)n_5 \equiv 1 \pmod 5 から n5=1n_5 = 1 です。Sylow 33 部分群 AA(位数 33)と Sylow 55 部分群 BB(位数 55)はどちらも正規で、A∩B={e}A \cap B = \{e\}(位数が互いに素)です。命題 5.1 により G≅A×B≅Z/3Z×Z/5ZG \cong A \times B \cong \mathbb{Z}/3\mathbb{Z} \times \mathbb{Z}/5\mathbb{Z} で、これは巡回群 Z/15Z\mathbb{Z}/15\mathbb{Z} です(位数 1515 の元 (1,1)(1, 1) がある)。位数 1515 の群は巡回群しかありません。

例 4.7(A₄ で Sylow の定理を確かめる)

∣A4∣=12=22⋅3|A_4| = 12 = 2^2 \cdot 3 です。Sylow 33 部分群は位数 33 で、n3∣4n_3 \mid 4 かつ n3≡1(mod3)n_3 \equiv 1 \pmod 3 なので n3∈{1,4}n_3 \in \{1, 4\} です。A4A_4 には位数 33 の元(3 サイクル)が 88 個あり、位数 33 の部分群 1 つに 2 個ずつ含まれるので、n3=4n_3 = 4 です。Sylow 22 部分群は位数 44 で、クラインの 4 元群 V={e,(1 2)(3 4),(1 3)(2 4),(1 4)(2 3)}V = \{e, (1\,2)(3\,4), (1\,3)(2\,4), (1\,4)(2\,3)\} がその 1 つです。共役は巡回置換の型を保つので VV は A4A_4 の正規部分群で、定理 4.5 により n2=1n_2 = 1 です。第 3 定理の数値条件 n2∣3n_2 \mid 3, n2≡1(mod2)n_2 \equiv 1 \pmod 2 は n2∈{1,3}n_2 \in \{1, 3\} しか与えないので、正規性の確認が個数を 11 に決めています。

Sylow の定理は、群を部分群に分解する手がかりを与えます。逆に、部分群から群を組み立てる方法が直積と半直積です。

命題 5.1(内部直積)✓

N,HN, H を群 GG の正規部分群で N∩H={e}N \cap H = \{e\} を満たすものとする。このとき NH={nh:n∈N,h∈H}NH = \{ nh : n \in N, h \in H \} は GG の部分群で、N×H→NHN \times H \to NH, (n,h)↦nh(n, h) \mapsto nh は群同型である。

証明(命題 5.1)

n∈Nn \in N, h∈Hh \in H に対し、nhn−1h−1=n (hn−1h−1)nhn^{-1}h^{-1} = n\,(hn^{-1}h^{-1}) は NN が正規なので NN に属し、(nhn−1) h−1(nhn^{-1})\,h^{-1} は HH が正規なので HH に属します。よって N∩H={e}N \cap H = \{e\} の元で、nh=hnnh = hn です。したがって (n1h1)(n2h2)=n1n2h1h2(n_1h_1)(n_2h_2) = n_1n_2h_1h_2 となり、(n,h)↦nh(n, h) \mapsto nh は準同型で、像 NHNH は部分群です。核は、nh=enh = e なら n=h−1∈N∩Hn = h^{-1} \in N \cap H で n=h=en = h = e なので自明です。

内部直積で群を認識できるとき、G≅N×HG \cong N \times H と書きます。NN だけが正規で、HH は正規とは限らないときに現れるのが半直積です。

直積では積を成分ごとに計算しますが、半直積では HH の元が NN の元を「動かしてから」掛けます。この動かし方が、NN から NN への同型写像全体がなす群 Aut(N)\mathrm{Aut}(N)(自己同型群)への準同型 θ\theta です。後の例(S3S_3 など)では、折り返しが回転を逆向きにするのがこの動かし方にあたります。

定義 5.2(半直積)↗

N,HN, H を群、θ:H→Aut(N)\theta : H \to \mathrm{Aut}(N) を準同型(θh:=θ(h)\theta_h := \theta(h) は NN の自己同型)とする。集合 N×HN \times H に

(n1,h1)(n2,h2)=(n1 θh1(n2), h1h2)(n_1, h_1)(n_2, h_2) = \bigl(n_1\,\theta_{h_1}(n_2),\ h_1h_2\bigr)

で積を定めたものを半直積といい、N⋊θHN \rtimes_\theta H と書く。

これが群をなすことを確認します。単位元は (e,e)(e, e) です。結合律は

((n1,h1)(n2,h2))(n3,h3)=(n1θh1(n2)θh1h2(n3), h1h2h3),\bigl((n_1,h_1)(n_2,h_2)\bigr)(n_3,h_3) = \bigl(n_1\theta_{h_1}(n_2)\theta_{h_1h_2}(n_3),\ h_1h_2h_3\bigr), (n1,h1)((n2,h2)(n3,h3))=(n1θh1(n2 θh2(n3)), h1h2h3)=(n1θh1(n2)θh1(θh2(n3)), h1h2h3)(n_1,h_1)\bigl((n_2,h_2)(n_3,h_3)\bigr) = \bigl(n_1\theta_{h_1}(n_2\,\theta_{h_2}(n_3)),\ h_1h_2h_3\bigr) = \bigl(n_1\theta_{h_1}(n_2)\theta_{h_1}(\theta_{h_2}(n_3)),\ h_1h_2h_3\bigr)

で、θh1h2=θh1∘θh2\theta_{h_1h_2} = \theta_{h_1}\circ\theta_{h_2} より一致します。逆元は (n,h)−1=(θh−1(n−1),h−1)(n, h)^{-1} = (\theta_{h^{-1}}(n^{-1}), h^{-1}) で与えられます。

命題 5.3(半直積の認識)✓

GG を群、NN を GG の正規部分群、HH を部分群とし、N∩H={e}N \cap H = \{e\} かつ NH=GNH = G とする。θh(n)=hnh−1\theta_h(n) = hnh^{-1} とおくと θ:H→Aut(N)\theta : H \to \mathrm{Aut}(N) は準同型で、G≅N⋊θHG \cong N \rtimes_\theta H である。

証明(命題 5.3)

NN が正規なので θh\theta_h は NN から NN への写像で、準同型 θh(nn′)=θh(n)θh(n′)\theta_h(n n') = \theta_h(n)\theta_h(n')、逆写像 θh−1\theta_{h^{-1}} を持つので自己同型です。θhh′=θh∘θh′\theta_{hh'} = \theta_h \circ \theta_{h'} も明らかです。写像 N⋊θH→GN \rtimes_\theta H \to G, (n,h)↦nh(n, h) \mapsto nh は、全射(NH=GNH = G)、単射(nh=n′h′nh = n'h' なら n′−1n=h′h−1∈N∩H={e}n'^{-1}n = h'h^{-1} \in N \cap H = \{e\})で、

(n1h1)(n2h2)=n1 (h1n2h1−1) h1h2=n1θh1(n2) h1h2(n_1h_1)(n_2h_2) = n_1\,(h_1n_2h_1^{-1})\,h_1h_2 = n_1\theta_{h_1}(n_2)\,h_1h_2

により準同型です。

例 5.4(S₃ と二面体群)

S3=A3⋊⟨(1 2)⟩S_3 = A_3 \rtimes \langle (1\,2) \rangle です。A3={e,(1 2 3),(1 3 2)}A_3 = \{e, (1\,2\,3), (1\,3\,2)\} は正規部分群(指数 22)、H={e,(1 2)}H = \{e, (1\,2)\} は正規でなく、A3∩H={e}A_3 \cap H = \{e\}、∣A3∣∣H∣=6|A_3||H| = 6 です。HH の生成元は A3A_3 に逆元を取る自己同型として作用します((1 2)(1 2 3)(1 2)−1=(1 3 2)(1\,2)(1\,2\,3)(1\,2)^{-1} = (1\,3\,2))。一般に正 nn 角形の対称性の群(二面体群、位数 2n2n)は、回転のなす巡回群 Z/nZ\mathbb{Z}/n\mathbb{Z} と、折り返し(位数 22)の半直積で、折り返しは回転を逆回転に写します。θ\theta が自明なら半直積は直積になります。

素数 p<qp < q に対して位数 pqpq の群を分類しましょう。証明の方針は次のとおりです。まず第 3 定理で Sylow qq 部分群が正規だと分かるので、GG は半直積になります。残る問題は、Z/qZ\mathbb{Z}/q\mathbb{Z} の自己同型群への準同型 θ\theta が何通りあるかで、それが自明かどうかが、巡回群になるか非可換群になるかの分かれ目です。

定理 5.5(位数 pq の群)✓

p<qp < q を素数、GG を位数 pqpq の群とする。

  1. GG の Sylow qq 部分群 QQ は正規部分群で、G≅Q⋊PG \cong Q \rtimes P(PP は Sylow pp 部分群)。
  2. p∤q−1p \nmid q - 1 ならば、GG は巡回群 Z/pqZ\mathbb{Z}/pq\mathbb{Z} に同型である。
  3. p∣q−1p \mid q - 1 ならば、GG は巡回群であるか、非可換群 Z/qZ⋊θZ/pZ\mathbb{Z}/q\mathbb{Z} \rtimes_\theta \mathbb{Z}/p\mathbb{Z}(θ\theta は自明でない準同型)に同型である。後者は存在し、θ\theta のとり方によらず同型を除いてただ 1 つである。
証明(定理 5.5)

(1) 定理 4.5 により nq∣pn_q \mid p かつ nq≡1(modq)n_q \equiv 1 \pmod q です。nq∈{1,p}n_q \in \{1, p\} で、1<p<q1 < p < q なので p≢1(modq)p \not\equiv 1 \pmod q(0<p−1<q0 < p - 1 < q)です。よって nq=1n_q = 1 で、QQ は正規です。PP を Sylow pp 部分群(定理 4.2)とすると、∣Q∩P∣|Q \cap P| は pp と qq の公約数なので Q∩P={e}Q \cap P = \{e\} で、積 QPQP は pqpq 個の相異なる元を持つので QP=GQP = G です(qp=q′p′qp = q'p' なら q′−1q=p′p−1∈Q∩Pq'^{-1}q = p'p^{-1} \in Q \cap P)。命題 5.3 から G≅Q⋊θPG \cong Q \rtimes_\theta P です。

(2)(3) Q≅Z/qZQ \cong \mathbb{Z}/q\mathbb{Z} の自己同型 α\alpha は α(1)=k\alpha(1) = k で決まり、kk は単元((Z/qZ)×(\mathbb{Z}/q\mathbb{Z})^{\times} の元)で、αk∘αl=αkl\alpha_k \circ \alpha_l = \alpha_{kl} です。よって Aut(Q)≅(Z/qZ)×\mathrm{Aut}(Q) \cong (\mathbb{Z}/q\mathbb{Z})^{\times} です。Z/qZ\mathbb{Z}/q\mathbb{Z} は体なので(系 5.5[環と体の基礎])、定理 7.3[多項式環と体の拡大] により Aut(Q)\mathrm{Aut}(Q) は位数 q−1q - 1 の巡回群です。準同型 θ:P→Aut(Q)\theta : P \to \mathrm{Aut}(Q) の像の位数は ∣P∣=p|P| = p と q−1q - 1 を割ります。

p∤q−1p \nmid q - 1 なら θ\theta は自明で、半直積は直積 Z/qZ×Z/pZ\mathbb{Z}/q\mathbb{Z} \times \mathbb{Z}/p\mathbb{Z} です。(1,1)(1, 1) の位数は lcm(q,p)=pq\mathrm{lcm}(q, p) = pq なので巡回群です。p∣q−1p \mid q-1 のとき θ\theta が自明でも同様に巡回群です。θ\theta が自明でないとき、P=⟨y⟩P = \langle y \rangle として α=θ(y)\alpha = \theta(y) は位数 pp の自己同型です。巡回群は各約数の位数の部分群をただ 1 つ持つので、α\alpha と別の自明でない θ′\theta' に対する α′=θ′(y)\alpha' = \theta'(y) は同じ位数 pp の部分群に入り、α′=αk\alpha' = \alpha^k(p∤kp \nmid k)と書けます。kl≡1(modp)kl \equiv 1 \pmod p となる ll を取り、φ:Q⋊θP→Q⋊θ′P\varphi : Q \rtimes_\theta P \to Q \rtimes_{\theta'} P, (n,yi)↦(n,yli)(n, y^i) \mapsto (n, y^{li}) と定めます。θyli′=αkli=αi=θyi\theta'_{y^{li}} = \alpha^{kli} = \alpha^i = \theta_{y^i} なので、

φ((n1,yi)(n2,yj))=(n1αi(n2), yl(i+j))=(n1,yli)(n2,ylj)=φ(n1,yi) φ(n2,yj)\varphi\bigl((n_1,y^i)(n_2,y^j)\bigr) = \bigl(n_1\alpha^i(n_2),\ y^{l(i+j)}\bigr) = (n_1, y^{li})(n_2, y^{lj}) = \varphi(n_1,y^i)\,\varphi(n_2,y^j)

で、φ\varphi は全単射な準同型です。これで一意性が示されました。存在は、位数 q−1q-1 の巡回群 Aut(Q)\mathrm{Aut}(Q) が p∣q−1p \mid q-1 から位数 pp の元を持つことから、自明でない θ\theta が作れることによります。非可換性は、θy≠id\theta_y \ne \mathrm{id} より θy(n)≠n\theta_y(n) \ne n となる nn があり、(e,y)(n,e)=(θy(n),y)≠(n,y)=(n,e)(e,y)(e, y)(n, e) = (\theta_y(n), y) \ne (n, y) = (n, e)(e, y) だからです。

例 5.6(位数 pq の群の例)

(p,q)=(2,3)(p, q) = (2, 3) では p∣q−1=2p \mid q-1 = 2 なので、位数 66 の群は Z/6Z\mathbb{Z}/6\mathbb{Z} と非可換群 S3S_3 の 2 つだけです。(2,5)(2, 5) は Z/10Z\mathbb{Z}/10\mathbb{Z} と D5D_5(位数 1010 の二面体群)、(3,7)(3, 7) は 3∣63 \mid 6 なので位数 2121 の非可換群が 1 つ存在します。(3,5)(3, 5) は 3∤43 \nmid 4 なので、位数 1515 は巡回群のみで、例 4.6 と一致します。

可解群の定義(部分群の列で、各段の商がアーベル群)は、ガロア理論への招待の 定義 5.2[ガロア理論への招待] に従います。群の作用で得た道具を使って、どのような群が可解かを調べましょう。

命題 6.1(可解性は部分群・商群・拡大で保たれる)✓

  1. 可解群の部分群は可解である。
  2. 可解群の商群は可解である。
  3. NN を GG の正規部分群とする。NN と G/NG/N が可解なら GG も可解である。
証明(命題 6.1)

(1) G=G0⊇⋯⊇Gr={e}G = G_0 \supseteq \cdots \supseteq G_r = \{e\} を可解列とし、H≤GH \le G, Hi=H∩GiH_i = H \cap G_i とします。h∈Hih \in H_i, x∈Hi+1x \in H_{i+1} なら hxh−1hxh^{-1} は HH に属し、Gi+1⊴GiG_{i+1} \trianglelefteq G_i より Gi+1G_{i+1} にも属するので、Hi+1⊴HiH_{i+1} \trianglelefteq H_i です。準同型 Hi→Gi/Gi+1H_i \to G_i/G_{i+1}, h↦hGi+1h \mapsto hG_{i+1} の核は Hi∩Gi+1=Hi+1H_i \cap G_{i+1} = H_{i+1} なので、定理 5.1[群の準同型定理] により Hi/Hi+1H_i/H_{i+1} はアーベル群 Gi/Gi+1G_i/G_{i+1} の部分群に同型で、アーベル群です。

(2) π:G→G/N\pi : G \to G/N を自然な射影とし、Gˉi=π(Gi)\bar{G}_i = \pi(G_i) とします。π∣Gi:Gi→Gˉi\pi|_{G_i} : G_i \to \bar{G}_i は全射で、Gi+1⊴GiG_{i+1} \trianglelefteq G_i から Gˉi+1⊴Gˉi\bar{G}_{i+1} \trianglelefteq \bar{G}_i です。合成 Gi→Gˉi→Gˉi/Gˉi+1G_i \to \bar{G}_i \to \bar{G}_i/\bar{G}_{i+1} は全射で Gi+1G_{i+1} を核に含むので、アーベル群 Gi/Gi+1G_i/G_{i+1} からの全射 Gi/Gi+1→Gˉi/Gˉi+1G_i/G_{i+1} \to \bar{G}_i/\bar{G}_{i+1} を誘導し、後者もアーベル群です。

(3) N=N0⊇⋯⊇Ns={e}N = N_0 \supseteq \cdots \supseteq N_s = \{e\} と、G/N=M0⊇⋯⊇Mt={eN}G/N = M_0 \supseteq \cdots \supseteq M_t = \{eN\} を可解列とします。Gj=π−1(Mj)G_j = \pi^{-1}(M_j) とおくと G=G0⊇⋯⊇Gt=NG = G_0 \supseteq \cdots \supseteq G_t = N で、Gj+1⊴GjG_{j+1} \trianglelefteq G_j(正規部分群の逆像は正規)、系 7.2[群の準同型定理] により Gj/Gj+1≅(Gj/N)/(Gj+1/N)=Mj/Mj+1G_j/G_{j+1} \cong (G_j/N)/(G_{j+1}/N) = M_j/M_{j+1} はアーベル群です。G0⊇⋯⊇Gt=N0⊇N1⊇⋯⊇Ns={e}G_0 \supseteq \cdots \supseteq G_t = N_0 \supseteq N_1 \supseteq \cdots \supseteq N_s = \{e\} が GG の可解列です。

定理 6.2(p 群は可解)✓

素数のべきを位数とする群は可解である。

証明(定理 6.2)

位数 pnp^n に関する帰納法で示します。n=0n = 0 は自明です。n≥1n \ge 1 のとき、定理 3.3 により Z=Z(G)≠{e}Z = Z(G) \ne \{e\} で、ZZ はアーベル群(可解、Z⊇{e}Z \supseteq \{e\})、G/ZG/Z は位数が pnp^n より小さい pp 群で帰納法の仮定により可解です。命題 6.1 (3) から GG は可解です。

系 6.3(位数 pq の群は可解)✓

素数 p,qp, q に対して位数 pqpq の群は可解である。

証明(系 6.3)

p=qp = q なら 定理 6.2 です。p<qp < q なら 定理 5.5 (1) で正規部分群 QQ(位数 qq)が取れ、QQ はアーベル群(巡回群)、G/QG/Q は位数 pp でアーベル群なので、G⊇Q⊇{e}G \supseteq Q \supseteq \{e\} が可解列です。

例 6.4(Sₙ の可解性)

S3S_3 は可解で、S4⊇A4⊇V⊇{e}S_4 \supseteq A_4 \supseteq V \supseteq \{e\}(VV はクラインの 4 元群)は商が Z/2Z\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}, Z/3Z\mathbb{Z}/3\mathbb{Z}, VV の可解列です(∣A4/V∣=3|A_4/V| = 3, ∣S4/A4∣=2|S_4/A_4| = 2)。n≥5n \ge 5 では S5≤SnS_5 \le S_n で、命題 6.1[ガロア理論への招待] により S5S_5 は可解でないので、命題 6.1 (1) の対偶から SnS_n も可解でありません。5 次以上の一般の方程式が根号で解けないことの群論的な根拠がここにあります。

注意 6.5(さらに進んだ結果)

位数が paqbp^a q^b(p,qp, q は素数)の形の群が可解であること(バーンサイド)、奇数位数の群が可解であること(ファイト・トンプソン)が知られています。前者は表現論(有限群の表現の指標の理論)を使って証明され、後者は 250 ページを超える論文によります。この記事では証明しません。

演習 7.1易

正方形の 4 つの頂点を 3 色で塗る。回転で重なる塗り方を同一視すると、塗り分けは何通りか。

解答

回転の群 C4={e,r,r2,r3}C_4 = \{e, r, r^2, r^3\} が 34=813^4 = 81 通りの塗り方の集合に作用します。固定点の数は、ee で 8181、r,r3r, r^3 で全頂点同色の 33 通りずつ、r2r^2 で向かい合う頂点が同色の 32=93^2 = 9 通りです。定理 2.5 から (81+3+9+3)/4=24(81 + 3 + 9 + 3)/4 = 24 通りです。

演習 7.2標準

S4S_4 の類等式を求めよ。ただし、S4S_4 の共役類は巡回置換の型で決まるとしてよい。

解答

型 (1,1,1,1)(1,1,1,1)(恒等)は 11 個、型 (2,1,1)(2,1,1)(互換)は (42)=6\binom{4}{2} = 6 個、型 (2,2)(2,2) は 33 個、型 (3,1)(3,1) は 2⋅(43)=82 \cdot \binom{4}{3} = 8 個、型 (4)(4) は 3!=63! = 6 個です。定理 3.1 から

24=1+6+3+8+624 = 1 + 6 + 3 + 8 + 6

です。恒等元だけが大きさ 11 の類なので Z(S4)={e}Z(S_4) = \{e\} です。各項は 2424 の約数になっています(定理 2.4:たとえば互換の中心化群の位数は 24/6=424/6 = 4)。

演習 7.3標準

位数 1212 の群は、正規な Sylow 22 部分群か、正規な Sylow 33 部分群を持つことを示せ。

解答

定理 4.5 から n3∣4n_3 \mid 4 かつ n3≡1(mod3)n_3 \equiv 1 \pmod 3 なので n3∈{1,4}n_3 \in \{1, 4\} です。n3=1n_3 = 1 なら Sylow 33 部分群は正規です。n3=4n_3 = 4 とします。Sylow 33 部分群は位数 33 なので、相異なる 2 つの共通部分は自明で、位数 33 の元は 4×2=84 \times 2 = 8 個あります。位数 44 の Sylow 22 部分群の元の位数は 1,2,41, 2, 4 のいずれかで 33 ではないので、位数 33 でない元は 12−8=412 - 8 = 4 個、その 4 個が Sylow 22 部分群の元のすべてです。したがって Sylow 22 部分群は 1 つだけで、定理 4.5 により正規です。

演習 7.4標準

位数 3030 の単純群は存在しないことを示せ(単純群とは、自明でない真の正規部分群を持たない群)。

解答

定理 4.5 から n5∣6n_5 \mid 6 かつ n5≡1(mod5)n_5 \equiv 1 \pmod 5 で n5∈{1,6}n_5 \in \{1, 6\}、n3∣10n_3 \mid 10 かつ n3≡1(mod3)n_3 \equiv 1 \pmod 3 で n3∈{1,10}n_3 \in \{1, 10\} です。ともに 11 でないとすると、位数 55 の部分群が 66 個あり、素数位数の部分群の共通部分は自明なので位数 55 の元が 6×4=246 \times 4 = 24 個、同様に位数 33 の元が 10×2=2010 \times 2 = 20 個、合計 44>3044 > 30 となって不可能です。よって n5=1n_5 = 1 または n3=1n_3 = 1 で、位数 55 または 33 の正規部分群があり、これは自明でない真の正規部分群なので、位数 3030 の群は単純でありません。

  1. 雪江明彦『代数学 1 群論入門』日本評論社、2010 — 群の作用、Sylow の定理、半直積、可解群の各章。
  2. D. S. Dummit and R. M. Foote, Abstract Algebra, 3rd ed., Wiley, 2004 — Chapter 4(群の作用と Sylow の定理)、Chapter 5(直積と半直積)。
  3. H. Wielandt, “Ein Beweis für die Existenz der Sylowgruppen”, Archiv der Mathematik 10 (1959), 401–402 — §4 の第 1 定理の証明の出典。
  4. L. Sylow, “Théorèmes sur les groupes de substitutions”, Mathematische Annalen 5 (1872), 584–594 — Sylow の定理の原論文。
  5. M. Artin, Algebra, 2nd ed., Pearson, 2011 — 群の作用と Sylow の定理を扱う章。

このテーマの 100 本ノック(100 問)

執筆: Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 2 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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