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電磁波と光学:媒質中の波、フレネルの式、導波管、干渉と回折

対象読者: 本テーマ第 4 章のマクスウェル方程式と電磁波、第 7 章の物質中の電磁場(D・H と境界条件)を学んだ人。学部のフーリエ解析と複素数の初歩を知っていると読みやすく、幾何光学は仮定しません。

前提となる記事:物質中の電磁場:分極・磁化と D・H、境界条件、エネルギー、マクスウェル方程式と電磁波:4 本の式から光速が出てくるまで

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ガラスに入った光はなぜ曲がるのか、水面の照り返しはなぜ偏光サングラスで消えるのか、光ファイバーはなぜ曲げても光が漏れないのか。この記事は、こうした身近な現象の土台にある反射・屈折・全反射を、マクスウェル方程式と物質中の境界条件から説明します(回折では、これに開口についての近似を加えます)。読み終えると、反射と屈折の法則、金属管の中を電磁波が通る条件、スリットを通った光がつくる縞の形を、式から導けるようになります。

  • 一様で線形・等方な媒質の中でも、電磁場は波動方程式を満たします。速さは真空の cc ではなく v=1/εμ=c/nv=1/\sqrt{\varepsilon\mu}=c/n で、屈折率は n=εrμrn=\sqrt{\varepsilon_r\mu_r} です。導電性がある場合は波数が複素数になり、波は深さ δ=2/(μσω)\delta=\sqrt{2/(\mu\sigma\omega)} 程度で減衰します(表皮効果)。
  • 2 つの透明な媒質の界面での反射と屈折は、物質中の電磁場で証明した境界条件から導けます。入射波・反射波・透過波の界面方向の位相がそろう条件から反射の法則とスネルの法則が、振幅の接続条件からフレネルの式が出ます。
  • フレネルの式の帰結として、pp 偏光の反射がちょうど消えるブリュースター角(tan⁡θB=n2/n1\tan\theta_B=n_2/n_1)と、屈折率の大きい側から入るときの全反射が説明されます。全反射では反射率が 1 でも、界面の向こう側に減衰する波(エバネッセント波)がしみ出します。
  • 完全導体の壁で囲まれた導波管では、横方向の固有値問題が 1 つ解けるたびに 1 つのモードが決まり、各モードに遮断周波数があります。位相速度(波の山の動く速さ)は cc より速く、群速度(波のかたまりの動く速さ)とエネルギー速度は cc より遅く、積は c2c^2 です。
  • 干渉と回折は同じ現象です。ヘルムホルツ方程式(波動方程式を単色の波に限った式)の解に対する積分公式(グリーンの恒等式から証明できる)に開口の仮定を入れ、遠方で近似すると、単スリットは sinc2\mathrm{sinc}^2 の、二重スリットは cos⁡2\cos^2 の縞の強度分布を与えます。

1. 動機:光は電磁波である、の先へ

Section titled “1. 動機:光は電磁波である、の先へ”

マクスウェル方程式と電磁波 で、真空中の電磁場が速さ cc で伝わる横波であることを示しました。ところが、私たちが日常で出会う光は、ガラスの中で曲がり、水面で反射し、スリットを抜けて縞をつくり、光ファイバーの中を何キロも進みます。これらはすべて、物質が入ったときのマクスウェル方程式の帰結です。

物質中の電磁場 で、物質を ε,μ\varepsilon,\mu という 2 つの定数にまとめた方程式と、界面で場がつながる条件を手に入れました。この記事ではそれを 3 つの舞台に適用します。

  1. 無限に広い一様な媒質(§3)と、2 つの媒質の界面(§4)。
  2. 金属の壁に囲まれた管(§5)。
  3. 障害物のある空間(§6)。

どれも「方程式を解き、境界で場をつなぐ」という同じ手順で解けます。違いは、境界の形と、使う境界条件だけです。


単色の波、つまり時間依存性が cos⁡(ωt+位相)\cos(\omega t+\text{位相}) の形の場だけを考えます。実の場を複素関数の実部として E(x,t)=Re[E(x)e−iωt]\boldsymbol{E}(\boldsymbol{x},t)=\mathrm{Re}\bigl[\boldsymbol{E}(\boldsymbol{x})e^{-i\omega t}\bigr] と書きます。マクスウェル方程式は線形なので、複素場がそれを満たすなら実部も満たします。時間微分は ∂t→−iω\partial_t\to-i\omega に置き換わります。

2 つの量の積(たとえばポインティング・ベクトル)は非線形なので、実部をとってから掛けなければなりません。1 周期の時間平均は

⟨Re(ae−iωt) Re(be−iωt)⟩=12Re(abˉ)\bigl\langle\mathrm{Re}(ae^{-i\omega t})\,\mathrm{Re}(be^{-i\omega t})\bigr\rangle=\frac12\mathrm{Re}(a\bar b)

です。実際、Re(ae−iωt)=12(ae−iωt+aˉeiωt)\mathrm{Re}(ae^{-i\omega t})=\frac12(ae^{-i\omega t}+\bar ae^{i\omega t}) なので積は 14(abe−2iωt+abˉ+aˉb+aˉbˉe2iωt)\frac14(a b e^{-2i\omega t}+a\bar b+\bar ab+\bar a\bar be^{2i\omega t})、e±2iωte^{\pm2i\omega t} の項は 1 周期で平均すると消え、残るのは 14(abˉ+aˉb)=12Re(abˉ)\frac14(a\bar b+\bar ab)=\frac12\mathrm{Re}(a\bar b) です。

媒質は一様(ε,μ\varepsilon,\mu が場所によらない)、線形・等方(D=εE\boldsymbol{D}=\varepsilon\boldsymbol{E}、B=μH\boldsymbol{B}=\mu\boldsymbol{H})とし、与える周波数 ω\omega の範囲では ε,μ\varepsilon,\mu は定数(分散を無視)とします。自由電荷・自由電流はないとします(導電性は §3.3 で扱います)。


定理 3.1(媒質中の波動方程式)✓

一様な線形等方媒質で ρf=0\rho_f=0、Jf=0\boldsymbol{J}_f=\boldsymbol{0} のとき、C2C^2 級の場 E,B\boldsymbol{E},\boldsymbol{B} は

∇2E=εμ ∂2E∂t2,∇2B=εμ ∂2B∂t2\nabla^2\boldsymbol{E}=\varepsilon\mu\,\frac{\partial^2\boldsymbol{E}}{\partial t^2},\qquad\nabla^2\boldsymbol{B}=\varepsilon\mu\,\frac{\partial^2\boldsymbol{B}}{\partial t^2}

を満たす。位相速度は v=1/εμ=c/nv=1/\sqrt{\varepsilon\mu}=c/n、n=εrμrn=\sqrt{\varepsilon_r\mu_r}(屈折率)である。

証明の方針は、真空で光速を出した計算の ε0μ0\varepsilon_0\mu_0 を εμ\varepsilon\mu に置き換えるだけです。

証明(定理 3.1)

定理 6.2[物質中の電磁場] の方程式は、D=εE\boldsymbol{D}=\varepsilon\boldsymbol{E}、H=B/μ\boldsymbol{H}=\boldsymbol{B}/\mu、ρf=0\rho_f=0、Jf=0\boldsymbol{J}_f=\boldsymbol{0} のもとで ∇⋅E=0\nabla\cdot\boldsymbol{E}=0、∇⋅B=0\nabla\cdot\boldsymbol{B}=0、∇×E=−∂tB\nabla\times\boldsymbol{E}=-\partial_t\boldsymbol{B}、∇×B=εμ ∂tE\nabla\times\boldsymbol{B}=\varepsilon\mu\,\partial_t\boldsymbol{E} となり、真空のマクスウェル方程式の ε0μ0\varepsilon_0\mu_0 を εμ\varepsilon\mu に替えただけの形です。そこで 定理 4.1[マクスウェル方程式と電磁波] と同じ計算を行います。補題 2.5[マクスウェル方程式と電磁波] と ∇⋅E=0\nabla\cdot\boldsymbol{E}=0 より ∇×(∇×E)=−∇2E\nabla\times(\nabla\times\boldsymbol{E})=-\nabla^2\boldsymbol{E} で、一方 ∇×(∇×E)=−∂t(∇×B)=−εμ ∂t2E\nabla\times(\nabla\times\boldsymbol{E})=-\partial_t(\nabla\times\boldsymbol{B})=-\varepsilon\mu\,\partial_t^2\boldsymbol{E} です。B\boldsymbol{B} も同様です。波動方程式 ∇2f=v−2∂t2f\nabla^2f=v^{-2}\partial_t^2f の速さは v=1/εμv=1/\sqrt{\varepsilon\mu} で、ε0μ0=1/c2\varepsilon_0\mu_0=1/c^2 より v=c/εrμrv=c/\sqrt{\varepsilon_r\mu_r} です。

ガラスでは n≈1.5n\approx1.5 で、光速は 2×108 m/s2\times10^8\,\mathrm{m/s} ほどです。水の静電的な εr≈80\varepsilon_r\approx80 から 80≈9\sqrt{80}\approx9 と予想される屈折率が、可視光では実際には 1.331.33 なのは、水分子の電気的応答が光の周波数(1015 Hz10^{15}\,\mathrm{Hz})では追従できず、ε\varepsilon が周波数に依存するからです。これを分散といいます。この記事では、考える周波数での ε(ω)\varepsilon(\omega) の値をそのまま ε\varepsilon として使います。

命題 3.2(媒質中の平面波)✓

実ベクトル k\boldsymbol{k} と複素ベクトル E0\boldsymbol{E}_0 について、E=E0ei(k⋅x−ωt)\boldsymbol{E}=\boldsymbol{E}_0e^{i(\boldsymbol{k}\cdot\boldsymbol{x}-\omega t)} が 定理 3.1 の前提の方程式系の解になる(B\boldsymbol{B} を適当に選べる)ための必要十分条件は、

k⋅E0=0,∣k∣=nωc\boldsymbol{k}\cdot\boldsymbol{E}_0=0,\qquad|\boldsymbol{k}|=\frac{n\omega}{c}

である。このとき B=k×E/ω\boldsymbol{B}=\boldsymbol{k}\times\boldsymbol{E}/\omega、H=B/μ\boldsymbol{H}=\boldsymbol{B}/\mu で、E,H,k\boldsymbol{E},\boldsymbol{H},\boldsymbol{k} は互いに直交し、∣H∣=∣E∣/Z|\boldsymbol{H}|=|\boldsymbol{E}|/Z(Z=μ/εZ=\sqrt{\mu/\varepsilon} は媒質の波動インピーダンス)である。時間平均のポインティング・ベクトルは

⟨S⟩=12Re(E×Hˉ)=∣E0∣22Z k^,\langle\boldsymbol{S}\rangle=\frac12\mathrm{Re}(\boldsymbol{E}\times\bar{\boldsymbol{H}})=\frac{|\boldsymbol{E}_0|^2}{2Z}\,\hat{\boldsymbol{k}} ,

非磁性媒質(μ=μ0\mu=\mu_0)では強度は I=∣⟨S⟩∣=12nε0c ∣E0∣2I=|\langle\boldsymbol{S}\rangle|=\frac12n\varepsilon_0c\,|\boldsymbol{E}_0|^2 である。

証明(命題 3.2)

∇→ik\nabla\to i\boldsymbol{k}、∂t→−iω\partial_t\to-i\omega と置きます。∇⋅E=0\nabla\cdot\boldsymbol{E}=0 は k⋅E0=0\boldsymbol{k}\cdot\boldsymbol{E}_0=0、ファラデーの法則 ∇×E=−∂tB\nabla\times\boldsymbol{E}=-\partial_t\boldsymbol{B} は ik×E=iωBi\boldsymbol{k}\times\boldsymbol{E}=i\omega\boldsymbol{B} すなわち B=k×E/ω\boldsymbol{B}=\boldsymbol{k}\times\boldsymbol{E}/\omega(これが ∇⋅B=0\nabla\cdot\boldsymbol{B}=0 も満たす)、アンペール・マクスウェルの法則 ∇×B=εμ ∂tE\nabla\times\boldsymbol{B}=\varepsilon\mu\,\partial_t\boldsymbol{E} は ik×B=−iωεμEi\boldsymbol{k}\times\boldsymbol{B}=-i\omega\varepsilon\mu\boldsymbol{E} となります。左辺に B\boldsymbol{B} を入れ、k⋅E=0\boldsymbol{k}\cdot\boldsymbol{E}=0 のときの k×(k×E)=−∣k∣2E\boldsymbol{k}\times(\boldsymbol{k}\times\boldsymbol{E})=-|\boldsymbol{k}|^2\boldsymbol{E} を使うと −∣k∣2E/ω=−ωεμE-|\boldsymbol{k}|^2\boldsymbol{E}/\omega=-\omega\varepsilon\mu\boldsymbol{E}、つまり ∣k∣2=εμω2=n2ω2/c2|\boldsymbol{k}|^2=\varepsilon\mu\omega^2=n^2\omega^2/c^2 です。逆向きも同じ式変形をたどれます。

直交性は B=k×E/ω\boldsymbol{B}=\boldsymbol{k}\times\boldsymbol{E}/\omega から、大きさは ∣H∣=∣k∣∣E∣/(ωμ)=εμ∣E∣/μ=∣E∣/Z|\boldsymbol{H}|=|\boldsymbol{k}||\boldsymbol{E}|/(\omega\mu)=\sqrt{\varepsilon\mu}|\boldsymbol{E}|/\mu=|\boldsymbol{E}|/Z です。時間平均は §2 の公式から 12Re(E×Hˉ)\frac12\mathrm{Re}(\boldsymbol{E}\times\bar{\boldsymbol{H}}) で、E×(k^×Eˉ)=k^∣E∣2\boldsymbol{E}\times(\hat{\boldsymbol{k}}\times\bar{\boldsymbol{E}})=\hat{\boldsymbol{k}}|\boldsymbol{E}|^2(k^⋅E=0\hat{\boldsymbol{k}}\cdot\boldsymbol{E}=0 より)から ∣E0∣22Zk^\frac{|\boldsymbol{E}_0|^2}{2Z}\hat{\boldsymbol{k}} を得ます。非磁性では 1/Z=ε/μ0=nε0/μ0=nε0c1/Z=\sqrt{\varepsilon/\mu_0}=n\sqrt{\varepsilon_0/\mu_0}=n\varepsilon_0c です。

波動インピーダンス ZZ とは、波の中で電場と磁場の大きさがどんな比になっているかを表す、媒質ごとの定数です。

金属のように自由電荷が動ける媒質では、オームの法則 Jf=σE\boldsymbol{J}_f=\sigma\boldsymbol{E}(σ\sigma は電気伝導度)を構成方程式に加えます。電荷保存則と 定理 4.2[物質中の電磁場] から ∂tρf=−σρf/ε\partial_t\rho_f=-\sigma\rho_f/\varepsilon となるので、自由電荷は時間 ε/σ\varepsilon/\sigma(銅で 10−19 s10^{-19}\,\mathrm{s} ほど)で消え、ρf=0\rho_f=0 としてよいことが分かります。

命題 3.3(導電性媒質中の平面波と表皮厚さ)✓

Jf=σE\boldsymbol{J}_f=\sigma\boldsymbol{E}、ρf=0\rho_f=0 の一様な媒質では、E=E0ei(kz−ωt)\boldsymbol{E}=\boldsymbol{E}_0e^{i(kz-\omega t)}(E0⊥ez\boldsymbol{E}_0\perp\boldsymbol{e}_z)が解になる条件は、複素波数 kk が

k2=εμω2(1+iσεω)k^2=\varepsilon\mu\omega^2\Bigl(1+\frac{i\sigma}{\varepsilon\omega}\Bigr)

を満たすことである。良導体(σ≫εω\sigma\gg\varepsilon\omega)では k≈(1+i)/δk\approx(1+i)/\delta、δ=2/(μσω)\delta=\sqrt{2/(\mu\sigma\omega)} で、振幅は e−z/δe^{-z/\delta} で減衰する。

証明(命題 3.3)

∇×B=μJf+εμ∂tE=μσE+εμ∂tE\nabla\times\boldsymbol{B}=\mu\boldsymbol{J}_f+\varepsilon\mu\partial_t\boldsymbol{E}=\mu\sigma\boldsymbol{E}+\varepsilon\mu\partial_t\boldsymbol{E} の回転をとり、定理 3.1 の証明と同じ手順で ∇2E=εμ ∂t2E+μσ ∂tE\nabla^2\boldsymbol{E}=\varepsilon\mu\,\partial_t^2\boldsymbol{E}+\mu\sigma\,\partial_t\boldsymbol{E} を得ます。∇→ikez\nabla\to ik\boldsymbol{e}_z、∂t→−iω\partial_t\to-i\omega で −k2=−εμω2−iμσω-k^2=-\varepsilon\mu\omega^2-i\mu\sigma\omega、すなわち k2=εμω2+iμσωk^2=\varepsilon\mu\omega^2+i\mu\sigma\omega です。σ≫εω\sigma\gg\varepsilon\omega では k2≈iμσωk^2\approx i\mu\sigma\omega で、i=eiπ/2i=e^{i\pi/2} の平方根 eiπ/4=(1+i)/2e^{i\pi/4}=(1+i)/\sqrt2 から k≈(1+i)μσω/2=(1+i)/δk\approx(1+i)\sqrt{\mu\sigma\omega/2}=(1+i)/\delta です。eikz=eiz/δe−z/δe^{ikz}=e^{iz/\delta}e^{-z/\delta} より主張を得ます。

銅(σ=5.8×107 S/m\sigma=5.8\times10^7\,\mathrm{S/m}、μ≈μ0\mu\approx\mu_0)の表皮厚さは、60 Hz60\,\mathrm{Hz} で約 8.5 mm8.5\,\mathrm{mm}、1 GHz1\,\mathrm{GHz} で約 2.1 μm2.1\,\mu\mathrm{m} です。高周波では電流が導体の表面の薄い層にしか流れません。


以下、2 つの媒質はどちらも非磁性(μ=μ0\mu=\mu_0)で透明(n1,n2n_1,n_2 は実数)とします。界面を z=0z=0 とし、z<0z<0 に媒質 1(屈折率 n1n_1)、z>0z>0 に媒質 2(n2n_2)があります。媒質 1 から平面波が入射します。

入射: Eiei(ki⋅x−ωt),反射: Erei(kr⋅x−ωt),透過: Etei(kt⋅x−ωt).\text{入射:}\ \boldsymbol{E}_ie^{i(\boldsymbol{k}_i\cdot\boldsymbol{x}-\omega t)},\quad\text{反射:}\ \boldsymbol{E}_re^{i(\boldsymbol{k}_r\cdot\boldsymbol{x}-\omega t)},\quad\text{透過:}\ \boldsymbol{E}_te^{i(\boldsymbol{k}_t\cdot\boldsymbol{x}-\omega t)}.

媒質が線形で時間に依らないので、3 つの波の角周波数は同じ ω\omega です。命題 3.2 により ∣ki∣=∣kr∣=n1ω/c|\boldsymbol{k}_i|=|\boldsymbol{k}_r|=n_1\omega/c、∣kt∣=n2ω/c|\boldsymbol{k}_t|=n_2\omega/c です。界面での接続条件は E∥\boldsymbol{E}_\parallel、H∥\boldsymbol{H}_\parallel の連続(定理 7.1[物質中の電磁場]、自由電荷・自由電流なし)で、z=0z=0 上の任意の点 ξ=(x,y)\boldsymbol{\xi}=(x,y) と時刻で成り立つ必要があります。ここで次の補題を使います。補題の中身は「異なる波数の波は互いに打ち消し合えない」というだけのことで、証明は線形代数の道具でそれを確かめる技術的なものです。結論だけ受け取って先へ進んでも構いません。

補題 4.1(指数関数の一次独立性)✓

q1,…,qN∈R2q_1,\dots,q_N\in\mathbb{R}^2 が互いに異なるとき、複素数 c1,…,cNc_1,\dots,c_N について、すべての ξ∈R2\boldsymbol{\xi}\in\mathbb{R}^2 で ∑jcjeiqj⋅ξ=0\sum_jc_je^{i\boldsymbol{q}_j\cdot\boldsymbol{\xi}}=0 ならば c1=⋯=cN=0c_1=\dots=c_N=0 である。

証明(補題 4.1)

qj−ql\boldsymbol{q}_j-\boldsymbol{q}_l (j≠lj\ne l) のすべてと直交しない方向 v\boldsymbol{v} を取れます(有限個の直線以外の方向)。すると λj=qj⋅v\lambda_j=\boldsymbol{q}_j\cdot\boldsymbol{v} は互いに異なります。ξ=sv\boldsymbol{\xi}=s\boldsymbol{v} として ss の関数 ∑jcjeiλjs=0\sum_jc_je^{i\lambda_js}=0 を s=0s=0 で m=0,…,N−1m=0,\dots,N-1 回微分すると ∑jcjλjm=0\sum_jc_j\lambda_j^m=0 で、係数行列は互いに異なる λj\lambda_j のヴァンデルモンド行列です。その行列式は ∏j<l(λl−λj)≠0\prod_{j<l}(\lambda_l-\lambda_j)\ne0 なので cj=0c_j=0 です。

接続条件は、たとえば Ei∥eiki∥⋅ξ+Er∥eikr∥⋅ξ=Et∥eikt∥⋅ξ\boldsymbol{E}_{i\parallel}e^{i\boldsymbol{k}_i^\parallel\cdot\boldsymbol{\xi}}+\boldsymbol{E}_{r\parallel}e^{i\boldsymbol{k}_r^\parallel\cdot\boldsymbol{\xi}}=\boldsymbol{E}_{t\parallel}e^{i\boldsymbol{k}_t^\parallel\cdot\boldsymbol{\xi}} の形で(H\boldsymbol{H} も同様)、k∥\boldsymbol{k}^\parallel は波数ベクトルの界面に平行な成分です。補題 4.1 により、接線波数が異なる指数関数の係数は個別に 00 でなければなりません。入射波は横波で振幅が 00 でなく、Ei∥\boldsymbol{E}_{i\parallel} と Hi∥\boldsymbol{H}_{i\parallel} のうち少なくとも一方は 00 ではない(両方とも法線方向なら、E⊥H\boldsymbol{E}\perp\boldsymbol{H} に反する)ので、入射波の接線波数は反射波か透過波のどちらかと一致します。一致しない波は、E∥\boldsymbol{E}_\parallel と H∥\boldsymbol{H}_\parallel の両方の係数が 00、つまり存在しません。したがって、存在する波はすべて同じ接線波数 k∥\boldsymbol{k}^\parallel をもちます。

定理 4.2(反射の法則とスネルの法則)✓

入射角 θi\theta_i、反射角 θr\theta_r、屈折角 θt\theta_t を法線(zz 軸)と波数ベクトルのなす角とする。反射波と透過波がともに存在するとき、波数ベクトルはすべて入射面(ki\boldsymbol{k}_i と法線がはる平面)内にあり、

θr=θi,n1sin⁡θi=n2sin⁡θt.\theta_r=\theta_i,\qquad n_1\sin\theta_i=n_2\sin\theta_t .
証明(定理 4.2)

同じ接線波数 k∥\boldsymbol{k}^\parallel をもち、反射波と透過波の接線波数は入射波と一致するので、kr,kt\boldsymbol{k}_r,\boldsymbol{k}_t も ki\boldsymbol{k}_i と同じ入射面内にあります(残る成分は法線成分 kzk_z だけで、符号は進む向きで決まる)。xx 軸を入射面内の界面方向に取ると、∣k∥∣=n1ωcsin⁡θi|\boldsymbol{k}^\parallel|=\frac{n_1\omega}{c}\sin\theta_i(入射波)=n1ωcsin⁡θr=\frac{n_1\omega}{c}\sin\theta_r(反射波)=n2ωcsin⁡θt=\frac{n_2\omega}{c}\sin\theta_t(透過波)です。0≤θr≤π/20\le\theta_r\le\pi/2 としたとき、最初の等号から θr=θi\theta_r=\theta_i、2 つ目の等号から n1sin⁡θi=n2sin⁡θtn_1\sin\theta_i=n_2\sin\theta_t です。

媒質 1(n₁)媒質 2(n₂)θᵢθᵣθₜ入射反射透過
反射と屈折。3 つの波の接線方向の波数(x 成分)が等しいことが、反射の法則とスネルの法則を与える。

振幅の関係は、接続条件を直接解いて求めます。方針は単純で、界面で連続な量が 2 つ(電場の接線成分と磁場の接線成分)あるので、未知数の反射波と透過波の振幅 2 つについての連立一次方程式を解くだけです。後の証明は成分と符号の計算が続きますが、各偏光で書き下す式は 2 本だけです。入射面(xzxz 面)に対して偏光を 2 つに分けます。

  • ss 偏光(TE): 電場が入射面に垂直(yy 方向)。
  • pp 偏光(TM): 磁場が入射面に垂直(yy 方向)で、電場は入射面内にある。

一般の偏光は両者の重ね合わせで、境界条件は線形なので 2 つは独立に扱えます。

定理 4.3(フレネルの式)✓

a=n1cos⁡θia=n_1\cos\theta_i、b=n2cos⁡θtb=n_2\cos\theta_t とおく。

ss 偏光: 反射と透過の電場振幅比は

rs=ErEi=n1cos⁡θi−n2cos⁡θtn1cos⁡θi+n2cos⁡θt,ts=EtEi=2n1cos⁡θin1cos⁡θi+n2cos⁡θt.r_s=\frac{E_r}{E_i}=\frac{n_1\cos\theta_i-n_2\cos\theta_t}{n_1\cos\theta_i+n_2\cos\theta_t},\qquad t_s=\frac{E_t}{E_i}=\frac{2n_1\cos\theta_i}{n_1\cos\theta_i+n_2\cos\theta_t}.

pp 偏光: 磁場 HyH_y の反射振幅比と、電場の透過振幅比は

rp=HrHi=n2cos⁡θi−n1cos⁡θtn2cos⁡θi+n1cos⁡θt,tp=EtEi=2n1cos⁡θin2cos⁡θi+n1cos⁡θt.r_p=\frac{H_r}{H_i}=\frac{n_2\cos\theta_i-n_1\cos\theta_t}{n_2\cos\theta_i+n_1\cos\theta_t},\qquad t_p=\frac{E_t}{E_i}=\frac{2n_1\cos\theta_i}{n_2\cos\theta_i+n_1\cos\theta_t}.
証明(定理 4.3)

k=(kx,0,kz)=nωc(sin⁡θ,0,±cos⁡θ)\boldsymbol{k}=(k_x,0,k_z)=\frac{n\omega}{c}(\sin\theta,0,\pm\cos\theta) とします。命題 3.2 から H=nμ0ck^×E\boldsymbol{H}=\dfrac{n}{\mu_0c}\hat{\boldsymbol{k}}\times\boldsymbol{E} で、逆に E=−μ0cnk^×H\boldsymbol{E}=-\dfrac{\mu_0c}{n}\hat{\boldsymbol{k}}\times\boldsymbol{H} です。

ss 偏光。 E=Eey\boldsymbol{E}=E\boldsymbol{e}_y。k^×ey=(∓cos⁡θ,0,sin⁡θ)\hat{\boldsymbol{k}}\times\boldsymbol{e}_y=(\mp\cos\theta,0,\sin\theta) (複号は kzk_z の符号)より、Hx=∓ncos⁡θμ0cEH_x=\mp\dfrac{n\cos\theta}{\mu_0c}E です。入射波(kz>0k_z>0)では Hix=−n1cos⁡θiμ0cEiH_{ix}=-\frac{n_1\cos\theta_i}{\mu_0c}E_i、反射波(kz<0k_z<0、θr=θi\theta_r=\theta_i)では Hrx=+n1cos⁡θiμ0cErH_{rx}=+\frac{n_1\cos\theta_i}{\mu_0c}E_r、透過波では Htx=−n2cos⁡θtμ0cEtH_{tx}=-\frac{n_2\cos\theta_t}{\mu_0c}E_t です。z=0z=0 で接線成分 EyE_y と HxH_x が連続なので

Ei+Er=Et,−n1cos⁡θi(Ei−Er)=−n2cos⁡θtEt.E_i+E_r=E_t,\qquad-n_1\cos\theta_i(E_i-E_r)=-n_2\cos\theta_tE_t .

すなわち a(Ei−Er)=bEta(E_i-E_r)=bE_t で、Et=Ei+ErE_t=E_i+E_r を代入すると a(Ei−Er)=b(Ei+Er)a(E_i-E_r)=b(E_i+E_r)、Er=a−ba+bEiE_r=\dfrac{a-b}{a+b}E_i、Et=2aa+bEiE_t=\dfrac{2a}{a+b}E_i です。

pp 偏光。 H=Hey\boldsymbol{H}=H\boldsymbol{e}_y。Ex=−μ0cn(k^×H)x=−μ0cnH⋅(∓cos⁡θ)E_x=-\dfrac{\mu_0c}{n}(\hat{\boldsymbol{k}}\times\boldsymbol{H})_x=-\dfrac{\mu_0c}{n}H\cdot(\mp\cos\theta) より、Eix=μ0cn1cos⁡θi HiE_{ix}=\frac{\mu_0c}{n_1}\cos\theta_i\,H_i、Erx=−μ0cn1cos⁡θi HrE_{rx}=-\frac{\mu_0c}{n_1}\cos\theta_i\,H_r、Etx=μ0cn2cos⁡θt HtE_{tx}=\frac{\mu_0c}{n_2}\cos\theta_t\,H_t です。接線成分 HyH_y と ExE_x の連続は

Hi+Hr=Ht,cos⁡θin1(Hi−Hr)=cos⁡θtn2Ht.H_i+H_r=H_t,\qquad\frac{\cos\theta_i}{n_1}(H_i-H_r)=\frac{\cos\theta_t}{n_2}H_t .

Ht=Hi+HrH_t=H_i+H_r を代入して Hr(cos⁡θin1+cos⁡θtn2)=Hi(cos⁡θin1−cos⁡θtn2)H_r\Bigl(\dfrac{\cos\theta_i}{n_1}+\dfrac{\cos\theta_t}{n_2}\Bigr)=H_i\Bigl(\dfrac{\cos\theta_i}{n_1}-\dfrac{\cos\theta_t}{n_2}\Bigr)、よって rp=n2cos⁡θi−n1cos⁡θtn2cos⁡θi+n1cos⁡θtr_p=\dfrac{n_2\cos\theta_i-n_1\cos\theta_t}{n_2\cos\theta_i+n_1\cos\theta_t} です。透過波の磁場は Ht=(1+rp)Hi=2n2cos⁡θin2cos⁡θi+n1cos⁡θtHiH_t=(1+r_p)H_i=\dfrac{2n_2\cos\theta_i}{n_2\cos\theta_i+n_1\cos\theta_t}H_i で、電場の大きさは ∣E∣=μ0cn∣H∣|E|=\frac{\mu_0c}{n}|H| なので Et/Ei=(n1/n2)(Ht/Hi)E_t/E_i=(n_1/n_2)(H_t/H_i) より tpt_p を得ます。

法線成分(DzD_z と BzB_z)の連続は、これらの解が自動的に満たします。ss 偏光では Dz=0D_z=0、Bz=kxEy/ωB_z=k_xE_y/\omega で、kxk_x が 3 つの波で等しいことと EyE_y の連続から従います。pp 偏光では Bz=0B_z=0、Dz=εEz=−(nsin⁡θ/c)HyD_z=\varepsilon E_z=-(n\sin\theta/c)H_y で、nsin⁡θn\sin\theta が両側で等しい(スネルの法則)ことと HyH_y の連続から従います。

系 4.4(ブリュースター角)✓

n1≠n2n_1\ne n_2 のとき、tan⁡θB=n2/n1\tan\theta_B=n_2/n_1 となる入射角 θB\theta_B で rp=0r_p=0 である。このとき θB+θt=π/2\theta_B+\theta_t=\pi/2 で、反射光は ss 偏光だけになる。

証明(系 4.4)

tan⁡θi=n2/n1\tan\theta_i=n_2/n_1 のとき sin⁡θi=n2/n12+n22\sin\theta_i=n_2/\sqrt{n_1^2+n_2^2}、cos⁡θi=n1/n12+n22\cos\theta_i=n_1/\sqrt{n_1^2+n_2^2} です。スネルの法則から sin⁡θt=n1n2sin⁡θi=n1n12+n22\sin\theta_t=\dfrac{n_1}{n_2}\sin\theta_i=\dfrac{n_1}{\sqrt{n_1^2+n_2^2}}、したがって cos⁡θt=n2n12+n22=sin⁡θi\cos\theta_t=\dfrac{n_2}{\sqrt{n_1^2+n_2^2}}=\sin\theta_i(θt<π/2\theta_t<\pi/2 のとき)で θt=π/2−θi\theta_t=\pi/2-\theta_i です。このとき n2cos⁡θi=n1n2n12+n22=n1cos⁡θtn_2\cos\theta_i=\dfrac{n_1n_2}{\sqrt{n_1^2+n_2^2}}=n_1\cos\theta_t で、rpr_p の分子は 00 です。

空気からガラス(n=1.5n=1.5)への入射では θB=arctan⁡1.5≈56.3∘\theta_B=\arctan1.5\approx56.3^\circ で、水面や路面の反射光(ギラつき)を偏光サングラスが切るのは、反射光がこの付近で ss 偏光(水平偏光)に偏っているためです。

命題 4.5(反射率と透過率)✓

反射率 RR を反射波の強度の入射波の強度に対する比、透過率 TT を透過波が界面の法線方向に運ぶ時間平均エネルギーの流れの、入射波の同じ量に対する比とする。ss、pp 偏光のいずれでも

R=∣r∣2,T=n2cos⁡θtn1cos⁡θi ∣t∣2,R+T=1.R=|r|^2,\qquad T=\frac{n_2\cos\theta_t}{n_1\cos\theta_i}\,|t|^2,\qquad R+T=1 .
証明(命題 4.5)

命題 3.2 から、時間平均のエネルギーの流れの大きさは 12nε0c∣E∣2\frac12n\varepsilon_0c|E|^2 で、zz 方向成分はそれに cos⁡θ\cos\theta を掛けたものです。反射波は同じ媒質中を同じ角度で進むので R=∣Er/Ei∣2=∣r∣2R=|E_r/E_i|^2=|r|^2 (pp 偏光でも ∣Er/Ei∣=∣Hr/Hi∣|E_r/E_i|=|H_r/H_i|)、透過波は T=n2cos⁡θt∣Et∣2n1cos⁡θi∣Ei∣2T=\dfrac{n_2\cos\theta_t|E_t|^2}{n_1\cos\theta_i|E_i|^2} です。ss 偏光では a=n1cos⁡θia=n_1\cos\theta_i、b=n2cos⁡θtb=n_2\cos\theta_t として T=ba⋅4a2(a+b)2=4ab(a+b)2T=\dfrac ba\cdot\dfrac{4a^2}{(a+b)^2}=\dfrac{4ab}{(a+b)^2}、R=(a−b)2(a+b)2R=\dfrac{(a-b)^2}{(a+b)^2} で、R+T=(a−b)2+4ab(a+b)2=1R+T=\dfrac{(a-b)^2+4ab}{(a+b)^2}=1 です。pp 偏光では a′=n2cos⁡θia'=n_2\cos\theta_i、b′=n1cos⁡θtb'=n_1\cos\theta_t とおくと T=n2cos⁡θtn1cos⁡θi⋅4n12cos⁡2θi(a′+b′)2=4a′b′(a′+b′)2T=\dfrac{n_2\cos\theta_t}{n_1\cos\theta_i}\cdot\dfrac{4n_1^2\cos^2\theta_i}{(a'+b')^2}=\dfrac{4a'b'}{(a'+b')^2} で、同様に R+T=1R+T=1 です。

垂直入射 θi=θt=0\theta_i=\theta_t=0 では、どちらの偏光でも R=(n1−n2n1+n2)2R=\bigl(\dfrac{n_1-n_2}{n_1+n_2}\bigr)^2 です。空気(11)とガラス(1.51.5)の界面では R=(0.5/2.5)2=0.04R=(0.5/2.5)^2=0.04 で、片面で 4% が反射されます。

命題 4.6(全反射とエバネッセント波)✓

n1>n2n_1>n_2 で n1sin⁡θi>n2n_1\sin\theta_i>n_2(臨界角 θc=arcsin⁡(n2/n1)\theta_c=\arcsin(n_2/n_1) を超える)とする。このとき実数の屈折角 θt\theta_t は存在せず、透過側の場は界面に沿って進みながら zz 方向に指数的に減衰する波 eikxxe−κze^{ik_xx}e^{-\kappa z}、κ=ωcn12sin⁡2θi−n22\kappa=\dfrac\omega c\sqrt{n_1^2\sin^2\theta_i-n_2^2} になり、∣rs∣=∣rp∣=1|r_s|=|r_p|=1、T=0T=0 である。

証明(命題 4.6)

透過波の接線波数は入射波と同じ kx=n1ωcsin⁡θik_x=\frac{n_1\omega}{c}\sin\theta_i で、∣kt∣2=kx2+kz2=n22ω2c2|\boldsymbol{k}_t|^2=k_x^2+k_z^2=\frac{n_2^2\omega^2}{c^2} より kz2=ω2c2(n22−n12sin⁡2θi)<0k_z^2=\frac{\omega^2}{c^2}(n_2^2-n_1^2\sin^2\theta_i)<0 です。kz=iκk_z=i\kappa(κ>0\kappa>0、z→∞z\to\infty で有界な枝)となり、場は eikxx−κze^{ik_xx-\kappa z} に比例します。このとき cos⁡θt=kz/∣kt∣=iκc/(n2ω)\cos\theta_t=k_z/|\boldsymbol{k}_t|=i\kappa c/(n_2\omega) は純虚数で、ss 偏光では rs=a−ib′a+ib′r_s=\dfrac{a-ib'}{a+ib'}(a=n1cos⁡θia=n_1\cos\theta_i、b′=κc/ωb'=\kappa c/\omega はともに実数)、よって ∣rs∣=1|r_s|=1 です。pp 偏光も同様に分子分母が互いに複素共役となり ∣rp∣=1|r_p|=1 です。エバネッセント波のポインティング・ベクトルの zz 成分の時間平均は、E\boldsymbol{E} と H\boldsymbol{H} の位相差が π/2\pi/2 になって 00 です(R=1R=1 とも整合します)。

ガラス(n=1.5n=1.5)から空気への臨界角は arcsin⁡(1/1.5)≈41.8∘\arcsin(1/1.5)\approx41.8^\circ です。波長 600 nm600\,\mathrm{nm} の光が 45∘45^\circ で入射するとき、κ=2π600 nm1.52sin⁡245∘−1≈3.7×10−3 nm−1\kappa=\frac{2\pi}{600\,\mathrm{nm}}\sqrt{1.5^2\sin^245^\circ-1}\approx3.7\times10^{-3}\,\mathrm{nm}^{-1} で、しみ出す距離 1/κ1/\kappa は約 270 nm270\,\mathrm{nm} です。光ファイバーが曲げても光を漏らさないのは、この全反射によります。

媒質 1媒質 2(透過側)z=01/κ振幅 ∝ e^(−κz)z
全反射のときの透過側の場の振幅。界面(z=0)から離れるにつれて e^{-κz} で減衰し、距離 1/κ で 1/e になる。

金属の管の中を電磁波が伝わる場合を考えます。電子レンジやレーダーで使われる、マイクロ波を運ぶ管の話です。管は壁が完全導体(σ→∞\sigma\to\infty)で、内部は真空で、断面は軸 zz に沿って一定とします。

補題 5.1(完全導体の境界条件)✓

時間変化する場に対して、完全導体の内部では E=0\boldsymbol{E}=\boldsymbol{0}、B=0\boldsymbol{B}=\boldsymbol{0} である。壁の外向き(導体から真空へ向かう)単位法線を n\boldsymbol{n} とすると、真空側の壁の表面で

n×E=0,n⋅B=0\boldsymbol{n}\times\boldsymbol{E}=\boldsymbol{0},\qquad\boldsymbol{n}\cdot\boldsymbol{B}=0

が成り立つ。

証明(補題 5.1)

導体内の E\boldsymbol{E} が 00 でないと、有限の電場が無限の伝導度 σ\sigma により無限大の電流を流すので、E=0\boldsymbol{E}=\boldsymbol{0} です。ファラデーの法則から ∂tB=−∇×E=0\partial_t\boldsymbol{B}=-\nabla\times\boldsymbol{E}=\boldsymbol{0} で、振動する場には時間によらない成分がないので B=0\boldsymbol{B}=\boldsymbol{0} です。定理 7.1[物質中の電磁場] で、導体側の値が E2=B2=0\boldsymbol{E}_2=\boldsymbol{B}_2=\boldsymbol{0} なので、真空側の接線成分 E∥\boldsymbol{E}_\parallel と法線成分 BnB_n は 00 です。

管の内部では ρ=0\rho=0、J=0\boldsymbol{J}=\boldsymbol{0} で、時間依存性 e−iωte^{-i\omega t} の単色の場は ∇×E=iωB\nabla\times\boldsymbol{E}=i\omega\boldsymbol{B}、∇×B=−(iω/c2)E\nabla\times\boldsymbol{B}=-(i\omega/c^2)\boldsymbol{E} を満たします。zz 依存性が eikze^{ikz} の波を考え、場を E=Et+Ezez\boldsymbol{E}=\boldsymbol{E}_t+E_z\boldsymbol{e}_z のように断面内の成分(添字 tt)と zz 成分に分け、断面内の勾配を ∇t=(∂x,∂y)\nabla_t=(\partial_x,\partial_y) とします。次の命題のねらいは、進行方向の成分 Ez,BzE_z,B_z さえ分かれば、断面内の成分はすべてそこから計算で決まる、ということです。そのため以降は Ez,BzE_z,B_z だけを求めれば足ります。証明の外積の計算は、その代数的な確認です。

命題 5.2(縦成分から横成分が決まる)✓

γ2:=ω2/c2−k2≠0\gamma^2:=\omega^2/c^2-k^2\ne0 のとき、

Et=iγ2[k∇tEz−ω ez×∇tBz],Bt=iγ2[k∇tBz+ωc2 ez×∇tEz]\boldsymbol{E}_t=\frac{i}{\gamma^2}\Bigl[k\nabla_tE_z-\omega\,\boldsymbol{e}_z\times\nabla_tB_z\Bigr],\qquad\boldsymbol{B}_t=\frac{i}{\gamma^2}\Bigl[k\nabla_tB_z+\frac{\omega}{c^2}\,\boldsymbol{e}_z\times\nabla_tE_z\Bigr]

であり、f=Ezf=E_z と f=Bzf=B_z は断面上で (∇t2+γ2)f=0(\nabla_t^2+\gamma^2)f=0 を満たす。

証明(命題 5.2)

2 つの回転の式の断面内成分をとります。∇=∇t+ikez\nabla=\nabla_t+ik\boldsymbol{e}_z で、∇×(Ezez)=∇tEz×ez=−ez×∇tEz\nabla\times(E_z\boldsymbol{e}_z)=\nabla_tE_z\times\boldsymbol{e}_z=-\boldsymbol{e}_z\times\nabla_tE_z なので

(a)  ik ez×Et−ez×∇tEz=iωBt,(b)  ik ez×Bt−ez×∇tBz=−iωc2Et\text{(a)}\ \ ik\,\boldsymbol{e}_z\times\boldsymbol{E}_t-\boldsymbol{e}_z\times\nabla_tE_z=i\omega\boldsymbol{B}_t,\qquad\text{(b)}\ \ ik\,\boldsymbol{e}_z\times\boldsymbol{B}_t-\boldsymbol{e}_z\times\nabla_tB_z=-\frac{i\omega}{c^2}\boldsymbol{E}_t

です(∇t×Et\nabla_t\times\boldsymbol{E}_t は zz 方向なので断面内成分には現れません)。(a) に左から ez×\boldsymbol{e}_z\times を掛け、断面内のベクトル V\boldsymbol{V} について ez×(ez×V)=−V\boldsymbol{e}_z\times(\boldsymbol{e}_z\times\boldsymbol{V})=-\boldsymbol{V} であることを使うと、−ikEt+∇tEz=iω ez×Bt-ik\boldsymbol{E}_t+\nabla_tE_z=i\omega\,\boldsymbol{e}_z\times\boldsymbol{B}_t です。これを (b) に代入して

kω(−ikEt+∇tEz)−ez×∇tBz=−iωc2Et\frac k\omega\bigl(-ik\boldsymbol{E}_t+\nabla_tE_z\bigr)-\boldsymbol{e}_z\times\nabla_tB_z=-\frac{i\omega}{c^2}\boldsymbol{E}_t

すなわち iγ2ωEt=ez×∇tBz−kω∇tEz\dfrac{i\gamma^2}{\omega}\boldsymbol{E}_t=\boldsymbol{e}_z\times\nabla_tB_z-\dfrac k\omega\nabla_tE_z となり、Et\boldsymbol{E}_t の式を得ます。(a),(b) は置き換え E→cB\boldsymbol{E}\to c\boldsymbol{B}、cB→−Ec\boldsymbol{B}\to-\boldsymbol{E} で互いに移り合うので、Bt\boldsymbol{B}_t の式は同じ置き換えで得られます。

zz 成分については、真空中の各成分が波動方程式 ∇2f=c−2∂t2f\nabla^2f=c^{-2}\partial_t^2f を満たし(定理 4.1[マクスウェル方程式と電磁波])、f∝ei(kz−ωt)f\propto e^{i(kz-\omega t)} なので (∇t2−k2+ω2/c2)f=0(\nabla_t^2-k^2+\omega^2/c^2)f=0 です。

断面が 0<x<a0<x<a、0<y<b0<y<b の矩形の管を考えます。TM と TE は、磁場(TM)または電場(TE)の進行方向成分が 00 のモードという意味で、添字の m,nm,n は x,yx,y 方向に断面内で立つ定在波の半波長の数を表します。以下の証明の大半は、この形の場が壁の条件を満たすことの確認です。

定理 5.3(矩形導波管のモード)✓

γmn2=π2(m2/a2+n2/b2)\gamma_{mn}^2=\pi^2\bigl(m^2/a^2+n^2/b^2\bigr) とし、k2=ω2/c2−γmn2k^2=\omega^2/c^2-\gamma_{mn}^2 とする。次の場は 補題 5.1 の壁の境界条件を満たす真空のマクスウェル方程式の解である。

  • TMmn_{mn} モード(m,n≥1m,n\ge1): Bz=0B_z=0、Ez=E0sin⁡mπxasin⁡nπyb ei(kz−ωt)E_z=E_0\sin\dfrac{m\pi x}{a}\sin\dfrac{n\pi y}{b}\,e^{i(kz-\omega t)}。
  • TEmn_{mn} モード(m,n≥0m,n\ge0、(m,n)≠(0,0)(m,n)\ne(0,0)): Ez=0E_z=0、Bz=B0cos⁡mπxacos⁡nπyb ei(kz−ωt)B_z=B_0\cos\dfrac{m\pi x}{a}\cos\dfrac{n\pi y}{b}\,e^{i(kz-\omega t)}。

横成分は 命題 5.2 で与えられる。

証明(定理 5.3)

ψ=sin⁡(mπx/a)sin⁡(nπy/b)\psi=\sin(m\pi x/a)\sin(n\pi y/b) も ψ=cos⁡(mπx/a)cos⁡(nπy/b)\psi=\cos(m\pi x/a)\cos(n\pi y/b) も ∇t2ψ=−γmn2ψ\nabla_t^2\psi=-\gamma_{mn}^2\psi を満たすので、命題 5.2 の最後の条件は γ=γmn\gamma=\gamma_{mn} のとき満たされます。γmn>0\gamma_{mn}>0 なので横成分の式も使えます。

壁での条件を確かめます。壁の接線方向(断面内)を s^\hat{\boldsymbol{s}}、法線を n^\hat{\boldsymbol{n}} とします。TM: Ez=0E_z=0 が 4 つの壁すべてで成り立ち(x=0,ax=0,a では sin⁡=0\sin=0、y=0,by=0,b では sin⁡=0\sin=0)、断面内の接線成分は s^⋅Et=(ik/γ2)∂sEz=0\hat{\boldsymbol{s}}\cdot\boldsymbol{E}_t=(ik/\gamma^2)\partial_sE_z=0 です。Bz=0B_z=0 なので Bt=iωc2γ2ez×∇tEz\boldsymbol{B}_t=\frac{i\omega}{c^2\gamma^2}\boldsymbol{e}_z\times\nabla_tE_z の法線成分は n^⋅(ez×∇Ez)=∇Ez⋅(n^×ez)∝∂sEz=0\hat{\boldsymbol{n}}\cdot(\boldsymbol{e}_z\times\nabla E_z)=\nabla E_z\cdot(\hat{\boldsymbol{n}}\times\boldsymbol{e}_z)\propto\partial_sE_z=0 です。TE: Ez=0E_z=0 は自明、s^⋅Et=−iωγ2s^⋅(ez×∇tBz)=∓iωγ2∂nBz\hat{\boldsymbol{s}}\cdot\boldsymbol{E}_t=-\frac{i\omega}{\gamma^2}\hat{\boldsymbol{s}}\cdot(\boldsymbol{e}_z\times\nabla_tB_z)=\mp\frac{i\omega}{\gamma^2}\partial_nB_z で、cos⁡\cos 関数の壁での法線微分(x=0,ax=0,a での ∂xcos⁡(mπx/a)∝sin⁡=0\partial_x\cos(m\pi x/a)\propto\sin=0 など)は 00 なので成り立ちます。Bn=ikγ2∂nBz=0B_n=\frac{ik}{\gamma^2}\partial_nB_z=0 も同じ理由で成り立ちます。

注意 5.4

矩形管の場がこれらのモードの重ね合わせですべて尽くされること(固有関数の完全性)は、本記事では認めます。断面上の関数 sin⁡mπxasin⁡nπyb\sin\frac{m\pi x}{a}\sin\frac{n\pi y}{b} や cos⁡mπxacos⁡nπyb\cos\frac{m\pi x}{a}\cos\frac{n\pi y}{b} の系が L2L^2 で完全であることは、偶・奇拡張を周期関数と見たフーリエ級数の完全性(Parseval の等式(定理 5.1)[フーリエ級数] の L2L^2 完全性、多次元は 命題 7.1[フーリエ級数])から従います。また、E,B の縦成分がどちらも 00 でない場は、TM と TE の重ね合わせとして得られます。

命題 5.5(中空の導波管は TEM 波を運ばない)✓

単連結な断面をもつ中空の完全導体管の中に、Ez=Bz=0E_z=B_z=0 で k=ω/c≠0k=\omega/c\ne 0 となる(γ=0\gamma=0 の)非自明な場は存在しない。

証明(命題 5.5)

Ez=Bz=0E_z=B_z=0 のとき、(a) より Bt=1cez×Et\boldsymbol{B}_t=\frac1c\boldsymbol{e}_z\times\boldsymbol{E}_t です。ファラデーの法則の zz 成分は (∇t×Et)z=iωBz=0(\nabla_t\times\boldsymbol{E}_t)_z=i\omega B_z=0、∇⋅E=0\nabla\cdot\boldsymbol{E}=0 は ∇t⋅Et=−ikEz=0\nabla_t\cdot\boldsymbol{E}_t=-ikE_z=0 です。単連結な断面では回転のないベクトル場はスカラー関数の勾配なので(補題 2.1[電磁ポテンシャルとゲージ変換] の 2 次元版)、Et=−∇tϕ\boldsymbol{E}_t=-\nabla_t\phi、∇t2ϕ=0\nabla_t^2\phi=0 です。壁で s^⋅Et=0\hat{\boldsymbol{s}}\cdot\boldsymbol{E}_t=0 ですから ϕ\phi は連結な境界上で一定で、定理 3.1[静電場の境界値問題] (a) により断面全体で ϕ\phi は定数、Et=0\boldsymbol{E}_t=\boldsymbol{0} です。

TEM 波とは、電場も磁場も進行方向の成分をもたない波のことで、単連結とは断面に穴がないということです。同軸ケーブルのように導体が 2 つ以上あれば断面が単連結でなくなり、境界上の定数が導体ごとに異なってよいので TEM 波が可能になります。中空の管には遮断周波数があり、それより低い周波数の波は通りません。

分散関係は k2=ω2/c2−γmn2k^2=\omega^2/c^2-\gamma_{mn}^2 で、遮断周波数 ωmn=cγmn\omega_{mn}=c\gamma_{mn} を境に性質が変わります。

  • ω>ωmn\omega>\omega_{mn}: kk は実数で、ei(kz−ωt)e^{i(kz-\omega t)} は zz 方向に伝わる波です。
  • ω<ωmn\omega<\omega_{mn}: k=iκk=i\kappa (κ=γmn2−ω2/c2\kappa=\sqrt{\gamma_{mn}^2-\omega^2/c^2}) は純虚数で、場は e−κze^{-\kappa z} で減衰し、波は伝わりません。

最も低い遮断周波数をもつモードが基本モードで、a>ba>b の矩形管では TE10_{10} です(ω10=πc/a\omega_{10}=\pi c/a)。

命題 5.6(TE10_{10} モードの速度)✓

TE10_{10} モードの場は

Ey=E0sin⁡πxa ei(kz−ωt),Bx=−kωEy,Bz=−iπaωE0cos⁡πxa ei(kz−ωt)E_y=E_0\sin\frac{\pi x}{a}\,e^{i(kz-\omega t)},\qquad B_x=-\frac k\omega E_y,\qquad B_z=-\frac{i\pi}{a\omega}E_0\cos\frac{\pi x}{a}\,e^{i(kz-\omega t)}

(他の成分は 00)である。位相速度 vp=ω/kv_p=\omega/k と群速度 vg=dω/dkv_g=d\omega/dk は

vp=c1−ω102/ω2>c,vg=c1−ω102ω2<c,vpvg=c2v_p=\frac{c}{\sqrt{1-\omega_{10}^2/\omega^2}}>c,\qquad v_g=c\sqrt{1-\frac{\omega_{10}^2}{\omega^2}}<c,\qquad v_pv_g=c^2

で、時間平均のエネルギーの輸送速度(単位長さあたりのエネルギーに対する、断面を通る電力の比)は vgv_g に等しい。

証明(命題 5.6)

命題 5.2 に Bz=B0cos⁡(πx/a)B_z=B_0\cos(\pi x/a)、Ez=0E_z=0、γ=π/a\gamma=\pi/a を代入すると、Ey=iωγ2⋅πaB0sin⁡πxa=iωaπB0sin⁡πxaE_y=\dfrac{i\omega}{\gamma^2}\cdot\dfrac{\pi}{a}B_0\sin\dfrac{\pi x}{a}=\dfrac{i\omega a}{\pi}B_0\sin\dfrac{\pi x}a、よって B0=−iπaωE0B_0=-\dfrac{i\pi}{a\omega}E_0 とおけば EyE_y の式を得ます。Bx=ikγ2∂xBz=−kωE0sin⁡πxaB_x=\dfrac{ik}{\gamma^2}\partial_xB_z=-\dfrac k\omega E_0\sin\dfrac{\pi x}{a} です。

分散関係 ω2=c2k2+ω102\omega^2=c^2k^2+\omega_{10}^2 から、vp=ω/k=ω/ω2/c2−ω102/c2=c/1−ω102/ω2v_p=\omega/k=\omega/\sqrt{\omega^2/c^2-\omega_{10}^2/c^2}=c/\sqrt{1-\omega_{10}^2/\omega^2}、両辺を微分して ω dω=c2k dk\omega\,d\omega=c^2k\,dk だから vg=c2k/ω=c2/vpv_g=c^2k/\omega=c^2/v_p です。

エネルギー輸送を計算します。zz 方向の時間平均ポインティング・ベクトルは ⟨Sz⟩=12μ0Re(ExBˉy−EyBˉx)=12μ0kω∣Ey∣2\langle S_z\rangle=\frac{1}{2\mu_0}\mathrm{Re}(E_x\bar B_y-E_y\bar B_x)=\frac{1}{2\mu_0}\frac k\omega|E_y|^2 で、断面積分した電力は P=k2μ0ω∣E0∣2ab2P=\dfrac{k}{2\mu_0\omega}|E_0|^2\dfrac{ab}{2} です。単位長さあたりのエネルギーは、時間平均の密度 14ε0∣E∣2+14μ0∣B∣2\frac14\varepsilon_0|\boldsymbol{E}|^2+\frac{1}{4\mu_0}|\boldsymbol{B}|^2 の断面積分で、

U=ab8∣E0∣2[ε0+1μ0ω2(k2+π2a2)]=ab8∣E0∣2[ε0+ε0]=ab ε0∣E0∣24U=\frac{ab}{8}|E_0|^2\Bigl[\varepsilon_0+\frac{1}{\mu_0\omega^2}\Bigl(k^2+\frac{\pi^2}{a^2}\Bigr)\Bigr]=\frac{ab}{8}|E_0|^2\bigl[\varepsilon_0+\varepsilon_0\bigr]=\frac{ab\,\varepsilon_0|E_0|^2}{4}

です(sin⁡2\sin^2 と cos⁡2\cos^2 の xx での積分が a/2a/2、yy では bb、k2+π2/a2=ω2/c2k^2+\pi^2/a^2=\omega^2/c^2、1/(μ0c2)=ε01/(\mu_0c^2)=\varepsilon_0)。比は P/U=kμ0ε0ω=c2kω=vgP/U=\dfrac{k}{\mu_0\varepsilon_0\omega}=\dfrac{c^2k}{\omega}=v_g です。

位相速度が cc を超えるのは、位相の模様が壁で反射を繰り返す波の重ね合わせとして生じる見かけの速度だからで、情報もエネルギーも運びません。実際にエネルギーが進む速さは vg<cv_g<c です。

例 5.7(X バンドの標準導波管 WR-90)

a=22.86 mma=22.86\,\mathrm{mm}、b=10.16 mmb=10.16\,\mathrm{mm} の矩形管では、遮断周波数 fmn=c2m2/a2+n2/b2f_{mn}=\dfrac c2\sqrt{m^2/a^2+n^2/b^2} は TE10_{10} が 6.56 GHz6.56\,\mathrm{GHz}、TE20_{20} が 13.1 GHz13.1\,\mathrm{GHz}、TE01_{01} が 14.8 GHz14.8\,\mathrm{GHz}、TE11_{11}/TM11_{11} が 16.1 GHz16.1\,\mathrm{GHz} です。したがって 6.566.56–13.1 GHz13.1\,\mathrm{GHz} の間では TE10_{10} だけが伝わり、単一モードの運用ができます。10 GHz10\,\mathrm{GHz} では 1−(6.56/10)2=0.755\sqrt{1-(6.56/10)^2}=0.755 で、vg=0.755cv_g=0.755c、vp=1.32cv_p=1.32c です。


6.1. ヘルムホルツ・キルヒホッフの積分公式

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単色の波の場の 1 成分 u(x)e−iωtu(\boldsymbol{x})e^{-i\omega t} は、真空中で (∇2+k2)u=0(\nabla^2+k^2)u=0(k=ω/ck=\omega/c)を満たします(定理 4.1[マクスウェル方程式と電磁波])。この方程式の解を、領域の境界上の値から復元する公式があります。

定理 6.1(ヘルムホルツ・キルヒホッフの積分公式)✓

VV を境界が区分的に滑らかな有界領域とし、u∈C2(V‾)u\in C^2(\overline V) が VV で (∇2+k2)u=0(\nabla^2+k^2)u=0 を満たすとする。P∈VP\in V とし、R=∣x−P∣R=|\boldsymbol{x}-P|、G=eikR/RG=e^{ikR}/R、n\boldsymbol{n} を外向き単位法線とすると

u(P)=14π∮∂V(G ∂nu−u ∂nG) dS.u(P)=\frac{1}{4\pi}\oint_{\partial V}\bigl(G\,\partial_nu-u\,\partial_nG\bigr)\,dS .
証明(定理 6.1)

Vϵ=V∖Bϵ(P)‾V_\epsilon=V\setminus\overline{B_\epsilon(P)} に グリーンの第二恒等式(命題 2.2)[静電場の境界値問題] を φ=u\varphi=u、ψ=G\psi=G で使います。R>0R>0 で (∇2+k2)G=0(\nabla^2+k^2)G=0 (GG は RR のみの関数で、∇2G=R−1(RG)′′=−k2G\nabla^2G=R^{-1}(RG)''=-k^2G)なので、∫Vϵ(u∇2G−G∇2u) dV=∫Vϵ(−k2uG+k2Gu) dV=0\int_{V_\epsilon}(u\nabla^2G-G\nabla^2u)\,dV=\int_{V_\epsilon}(-k^2uG+k^2Gu)\,dV=0 です。したがって

0=∮∂V(u ∂nG−G ∂nu)dS+∮∣x−P∣=ϵ(u ∂νG−G ∂νu)dS,0=\oint_{\partial V}\bigl(u\,\partial_nG-G\,\partial_nu\bigr)dS+\oint_{|\boldsymbol{x}-P|=\epsilon}\bigl(u\,\partial_\nu G-G\,\partial_\nu u\bigr)dS ,

ν\nu は VϵV_\epsilon からみた外向き、つまり PP に向かう向きで、∂ν=−∂R\partial_\nu=-\partial_R です。小球面上で G=eikϵ/ϵG=e^{ik\epsilon}/\epsilon、∂νG=(ϵ−2−ikϵ−1)eikϵ\partial_\nu G=(\epsilon^{-2}-ik\epsilon^{-1})e^{ik\epsilon} ですから、面積 4πϵ24\pi\epsilon^2 と uu の連続性から ∮u ∂νG dS→4πu(P)\oint u\,\partial_\nu G\,dS\to4\pi u(P)、∣∮G ∂νu dS∣≤4πϵ2⋅ϵ−1sup⁡∣∇u∣→0\bigl|\oint G\,\partial_\nu u\,dS\bigr|\le4\pi\epsilon^2\cdot\epsilon^{-1}\sup|\nabla u|\to0 です。ϵ→0\epsilon\to0 として整理すれば公式を得ます。

この公式は、穴のあいたスクリーンの向こう側の場を、開口上の値から求めるのに使えます。ただし開口上の本当の場の値は分からないので、次の 3 つの仮定で「開口では入射波そのまま、影では 0」と見なして計算を閉じるのがねらいです。キルヒホッフの近似として、(i) 開口上では uu と ∂nu\partial_nu が障害物がないときの入射波の値に等しい、(ii) スクリーンの影の面では u=∂nu=0u=\partial_nu=0、(iii) 無限遠の半球面からの寄与は 00、の 3 つを仮定します(厳密には成り立たない近似です。開口の縁の近くで場が乱れるためで、開口の大きさが波長より十分大きいときに良い近似になります)。スクリーンを z=0z=0 の平面にし、z>0z>0 側に観測点 PP、z<0z<0 側から +z+z 方向に垂直入射する平面波 uinc=u0eikzu_{\mathrm{inc}}=u_0e^{ikz} を考えると、開口上で ∂nu=−∂zu=−iku0\partial_nu=-\partial_zu=-iku_0(VV は z>0z>0 の領域で外向き法線は −ez-\boldsymbol{e}_z)、∂nG=−∂zG≈ikcos⁡χ G\partial_nG=-\partial_zG\approx ik\cos\chi\,G(χ\chi は法線と開口から PP への方向のなす角、kR≫1kR\gg1 で 1/R1/R の項を落とした)なので、

u(P)≈−iku04π∫AeikRR(1+cos⁡χ)dS.u(P)\approx-\frac{iku_0}{4\pi}\int_A\frac{e^{ikR}}{R}\bigl(1+\cos\chi\bigr)dS .

遠方で見る回折をフラウンホーファー回折といい、ここでは光路の差を一次の項だけで近似して積分を簡単にします。観測点が開口から十分遠く、方向 r^\hat{\boldsymbol{r}} に距離 rr にあるとします。開口上の点 x′\boldsymbol{x}' からの距離は

R=∣rr^−x′∣=r−r^⋅x′+∣x′∣2−(r^⋅x′)22r+⋯R=|r\hat{\boldsymbol{r}}-\boldsymbol{x}'|=r-\hat{\boldsymbol{r}}\cdot\boldsymbol{x}'+\frac{|\boldsymbol{x}'|^2-(\hat{\boldsymbol{r}}\cdot\boldsymbol{x}')^2}{2r}+\cdots

と展開できます。開口の大きさを DD として kD2/(2r)≪1kD^2/(2r)\ll1(フラウンホーファー条件)なら第 3 項以降の位相への寄与は無視でき、小角度では 1+cos⁡χ≈21+\cos\chi\approx2、1/R≈1/r1/R\approx1/r としてよいので、

命題 6.2(フラウンホーファー回折)✓

キルヒホッフの近似とフラウンホーファー条件のもとで

u(P)≈−iu0λeikrr∫Ae−ik r^⋅x′ dS′,λ=2πku(P)\approx-\frac{iu_0}{\lambda}\frac{e^{ikr}}{r}\int_Ae^{-ik\,\hat{\boldsymbol{r}}\cdot\boldsymbol{x}'}\,dS' ,\qquad\lambda=\frac{2\pi}{k}

である。すなわち回折像の振幅は、開口の形の(空間)フーリエ変換で与えられる(フーリエ変換の定義(定義 2.1)[ℝⁿ 上のフーリエ変換] を参照)。

証明(命題 6.2)

上の近似を u(P)≈−iku04π∫AeikRR(1+cos⁡χ) dSu(P)\approx-\frac{iku_0}{4\pi}\int_A\frac{e^{ikR}}{R}(1+\cos\chi)\,dS に代入します。eikR≈eikre−ikr^⋅x′e^{ikR}\approx e^{ikr}e^{-ik\hat{\boldsymbol{r}}\cdot\boldsymbol{x}'}、(1+cos⁡χ)/R≈2/r(1+\cos\chi)/R\approx2/r で、係数は −ik4π⋅2=−ik2π=−iλ-\frac{ik}{4\pi}\cdot2=-\frac{ik}{2\pi}=-\frac i\lambda です。

例 6.3(単スリットと二重スリット)

xx 方向の幅が aa、yy 方向に十分長いスリットを考え、観測方向が xx 軸となす角を使って r^⋅x′=x′sin⁡θ\hat{\boldsymbol{r}}\cdot\boldsymbol{x}'=x'\sin\theta とします。命題 6.2 の積分は

∫−a/2a/2e−ikx′sin⁡θdx′=2sin⁡(kasin⁡θ/2)ksin⁡θ=a sin⁡ββ,β=πasin⁡θλ\int_{-a/2}^{a/2}e^{-ikx'\sin\theta}dx'=\frac{2\sin(ka\sin\theta/2)}{k\sin\theta}=a\,\frac{\sin\beta}{\beta},\qquad\beta=\frac{\pi a\sin\theta}{\lambda}

で、強度は I(θ)=I(0)(sin⁡ββ)2I(\theta)=I(0)\Bigl(\dfrac{\sin\beta}{\beta}\Bigr)^2 です。暗線は asin⁡θ=mλa\sin\theta=m\lambda(m=±1,±2,…m=\pm1,\pm2,\dots)に現れ、中央の明部の角幅は 2λ/a2\lambda/a です。たとえば a=0.05 mma=0.05\,\mathrm{mm}、λ=500 nm\lambda=500\,\mathrm{nm}、スクリーンまで 1 m1\,\mathrm{m} なら、中央の明部の幅は 2λL/a=2 cm2\lambda L/a=2\,\mathrm{cm} で、フラウンホーファー条件 a2/(λL)≈0.005≪1a^2/(\lambda L)\approx0.005\ll1 も満たされています。スリットを狭くするほど像が広がります。

中心間隔 dd の同じ 2 本のスリットでは、積分が 2 つの区間 [±d/2−a/2, ±d/2+a/2][\pm d/2-a/2,\ \pm d/2+a/2] に分かれ、それぞれ a sinc βa\,\mathrm{sinc}\,\beta に位相 e∓ikdsin⁡θ/2e^{\mp ikd\sin\theta/2} が付くので、和は 2a sin⁡ββcos⁡(πdsin⁡θλ)2a\,\frac{\sin\beta}{\beta}\cos\bigl(\frac{\pi d\sin\theta}{\lambda}\bigr) になり、

I(θ)=I(0)cos⁡2(πdsin⁡θλ)(sin⁡ββ)2I(\theta)=I(0)\cos^2\Bigl(\frac{\pi d\sin\theta}{\lambda}\Bigr)\Bigl(\frac{\sin\beta}{\beta}\Bigr)^2

です。明線は dsin⁡θ=mλd\sin\theta=m\lambda、スクリーン上の縞の間隔は小角度で λL/d\lambda L/d です(λ=550 nm\lambda=550\,\mathrm{nm}、d=0.5 mmd=0.5\,\mathrm{mm}、L=1 mL=1\,\mathrm{m} で 1.1 mm1.1\,\mathrm{mm})。cos⁡2\cos^2 が干渉縞、sinc2\mathrm{sinc}^2 が各スリットの回折による包絡線です。

前半ではスリットの幅 aa を広げ、後半では間隔 dd を広げます。破線の包絡線(回折)は aa だけで決まり、その内側の細かい縞(干渉)は dd だけで決まることを見てください。

横軸 sinθ、縦軸強度の二重スリットの強度分布。前半はスリット幅 a を 0.05 mm から 0.20 mm に広げると破線の包絡線が狭くなり、後半は間隔 d を 0.10 mm から 0.50 mm に広げると包絡線は変わらず内側の縞が細かくなる。
二重スリットの強度 I(θ)。a を広げると包絡線が狭まり、d を広げると縞が細かくなる(λ = 500 nm)。

2 つの波が干渉するとき、複素振幅を A1=I1A_1=\sqrt{I_1}、A2=I2eiδA_2=\sqrt{I_2}e^{i\delta} とすると、合成強度は ∣A1+A2∣2=I1+I2+2I1I2cos⁡δ|A_1+A_2|^2=I_1+I_2+2\sqrt{I_1I_2}\cos\delta です(δ\delta は位相差)。

例 6.4(反射防止膜の条件)

屈折率 n2n_2 のガラスの上に、屈折率 ncn_c(1<nc<n21<n_c<n_2)、厚さ dd の薄膜をつけ、空気(n1=1n_1=1)側から垂直入射させます。膜の表面での反射の振幅比は 定理 4.3 の垂直入射の場合で r1=n1−ncn1+ncr_1=\dfrac{n_1-n_c}{n_1+n_c}、ガラスとの境界では r2=nc−n2nc+n2r_2=\dfrac{n_c-n_2}{n_c+n_2} で、n1<nc<n2n_1<n_c<n_2 なので両方とも負(同じ符号)です。膜の中を往復した波は光路 2ncd2n_cd ぶん余分に進むので位相が 2kncd=4πncdλ2kn_cd=\dfrac{4\pi n_cd}{\lambda} だけ遅れます。2 つの反射波が逆位相で打ち消し合うのは、遅れが π\pi のとき、すなわち

d=λ4ncd=\frac{\lambda}{4n_c}

(4 分の 1 波長膜)のときで、振幅も等しい(r1=r2r_1=r_2)なら完全に消えます。r1=r2r_1=r_2 を整理すると (nc−n1)(n2+nc)=(n2−nc)(nc+n1)(n_c-n_1)(n_2+n_c)=(n_2-n_c)(n_c+n_1) から nc2=n1n2n_c^2=n_1n_2 です。膜内の多重反射まで含めた反射振幅は r1+r2eiϕ1+r1r2eiϕ\dfrac{r_1+r_2e^{i\phi}}{1+r_1r_2e^{i\phi}}(ϕ\phi は往復の位相遅れ)で、ϕ=π\phi=\pi では r1−r21−r1r2\dfrac{r_1-r_2}{1-r_1r_2} となり、r1=r2r_1=r_2 で厳密に 00 になります。以下の数値は 2 つの反射波だけを足した近似です。MgF2_2(nc=1.38n_c=1.38)膜をガラス(n2=1.52n_2=1.52)につけた場合は、理想値 1.52=1.23\sqrt{1.52}=1.23 より少し大きく、残りの反射は約 1.2%1.2\%(無反射の 4.3%4.3\% から減る)です(演習)。


演習 7.1易

空気(n1=1n_1=1)から水(n2=1.33n_2=1.33)への入射で、ブリュースター角と、そのときの屈折角を求めよ。また水から空気へ向かうときの臨界角を求めよ。

解答

系 4.4 より θB=arctan⁡1.33≈53.1∘\theta_B=\arctan1.33\approx53.1^\circ。屈折角は θt=90∘−θB≈36.9∘\theta_t=90^\circ-\theta_B\approx36.9^\circ(sin⁡θt=sin⁡θB/1.33=0.7996/1.33≈0.601\sin\theta_t=\sin\theta_B/1.33=0.7996/1.33\approx0.601 と整合)。臨界角は arcsin⁡(1/1.33)≈48.8∘\arcsin(1/1.33)\approx48.8^\circ です。

演習 7.2標準

海水(σ≈4 S/m\sigma\approx4\,\mathrm{S/m}、ε≈80ε0\varepsilon\approx80\varepsilon_0、μ≈μ0\mu\approx\mu_0)の中を伝わる 1 kHz1\,\mathrm{kHz} の電磁波の表皮厚さを求め、この周波数が良導体の近似の範囲にあることを確かめよ。潜水艦に向けた通信に超長波(VLF)以下の低い周波数が使われる理由を述べよ。

解答

ω=2π×103\omega=2\pi\times10^3 で σ/(εω)=4/(80×8.85×10−12×6283)≈9×105≫1\sigma/(\varepsilon\omega)=4/(80\times8.85\times10^{-12}\times6283)\approx9\times10^5\gg1 なので 命題 3.3 の近似が使えます。δ=2/(μ0σω)=2/(1.257×10−6×4×6283)≈8.0 m\delta=\sqrt{2/(\mu_0\sigma\omega)}=\sqrt{2/(1.257\times10^{-6}\times4\times6283)}\approx8.0\,\mathrm{m} です。δ∝ω−1/2\delta\propto\omega^{-1/2} なので周波数が高いと数 cm〜数 m で減衰し、潜水艦まで届きません。水中に届かせるには数十 Hz〜数 kHz の低い周波数が必要です(そのかわり情報量は小さい)。

演習 7.3標準

波長 550 nm550\,\mathrm{nm} の光に対して、MgF2_2(nc=1.38n_c=1.38)の反射防止膜を n2=1.52n_2=1.52 のガラスにつけるとき、膜厚と、多重反射を無視したときの反射率を求めよ。膜がない場合と比較せよ。

解答

d=λ/(4nc)=550/(4×1.38)≈99.6 nmd=\lambda/(4n_c)=550/(4\times1.38)\approx99.6\,\mathrm{nm}。r1=1−1.382.38=−0.1597r_1=\dfrac{1-1.38}{2.38}=-0.1597、r2=1.38−1.522.90=−0.0483r_2=\dfrac{1.38-1.52}{2.90}=-0.0483。膜内を往復した波は位相が π\pi 遅れるので合成の反射振幅は r1+r2eiπ=−0.1597+0.0483=−0.1114r_1+r_2e^{i\pi}=-0.1597+0.0483=-0.1114 で、反射率は 0.11142≈1.2%0.1114^2\approx1.2\% です。膜がなければ ((1.52−1)/(2.52))2=4.3%((1.52-1)/(2.52))^2=4.3\% です。完全な無反射にならないのは r1≠r2r_1\ne r_2(nc≠n2n_c\ne\sqrt{n_2})のためです。

演習 7.4難

導波管の壁の間隔が aa の一次元的な場合として、2 枚の平行な完全導体板 x=0x=0、x=ax=a の間を zz 方向に伝わる TE モード(EyE_y のみ)を考える。Ey=sin⁡(mπx/a)ei(kz−ωt)E_y=\sin(m\pi x/a)e^{i(kz-\omega t)} が解になる条件を求め、波が 2 つの平面波の重ね合わせであることを示して、遮断周波数の意味を説明せよ。

解答

波動方程式から −(mπ/a)2−k2+ω2/c2=0-(m\pi/a)^2-k^2+\omega^2/c^2=0 で k2=ω2/c2−(mπ/a)2k^2=\omega^2/c^2-(m\pi/a)^2、壁(x=0,ax=0,a)で Ey=0E_y=0 は満たされています。sin⁡(mπx/a)=12i(eimπx/a−e−imπx/a)\sin(m\pi x/a)=\dfrac{1}{2i}\bigl(e^{im\pi x/a}-e^{-im\pi x/a}\bigr) なので、場は波数ベクトル (±mπ/a,0,k)(\pm m\pi/a,0,k) をもつ 2 つの平面波の差で、板の間を斜めに反射しながら進む波です。波数ベクトルの大きさは ω/c\omega/c で、zz 成分 k=ω2/c2−(mπ/a)2k=\sqrt{\omega^2/c^2-(m\pi/a)^2} が実数になるには、xx 成分 mπ/a≤ω/cm\pi/a\le\omega/c が必要です。ω=cmπ/a\omega=cm\pi/a は波が板に垂直に往復するだけで zz 方向に進まない境目で、これが遮断周波数です。


  • J. D. Jackson『電磁気学(原書第 3 版)』(Classical Electrodynamics, 3rd ed., Wiley, 1999)— 第 7 章(平面波、反射と屈折、分散)、第 8 章(導波管)、第 10 章(回折)。
  • M. Born, E. Wolf, Principles of Optics, 7th ed., Cambridge University Press, 1999 — 第 1 章(電磁理論)、第 8 章(回折の基礎理論)。
  • E. Hecht, Optics, 5th ed., Pearson, 2017 — 反射・屈折、干渉、回折の章。
  • D. J. Griffiths, Introduction to Electrodynamics, 4th ed., Cambridge University Press, 2017 — 第 9 章(電磁波)。
  • L. D. Landau, E. M. Lifshitz, Electrodynamics of Continuous Media, 2nd ed., Pergamon Press, 1984 — 電磁波の伝播の章。

このテーマの 100 本ノック(100 問)

執筆: Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 2 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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