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振動と波動:減衰・強制振動と共鳴から基準モード、弦の波動方程式、群速度まで

対象読者: 本テーマ第 1・3 章(ニュートン力学、ラグランジュ形式)と、学部の線形代数(対称行列の対角化)・定数係数の常微分方程式・複素数を学んだ人。偏微分方程式は仮定しません。

前提となる記事:ニュートン力学の基礎:三法則から運動量・エネルギー保存則へ、ラグランジュ形式の力学:最小作用の原理からオイラー・ラグランジュ方程式へ

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ブランコは押さなければ少しずつ止まり、リズムを合わせて押すと大きく揺れます。ギターの弦は、押さえる位置で音の高さが変わります。この記事は、こうした「揺れ」がどう減っていくか、外から揺らすとなぜ特定のリズムで大きく揺れるか、揺れるものがつながると何が起こるか、それが空間を伝わる「波」になる様子を、数式で順に確かめます。読み終えると、減衰・共鳴・弦の振動数・波の進む速さを自分で計算できるようになります。

  • 減衰振動 x¨+2βx˙+ω02x=0\ddot x+2\beta\dot x+\omega_0^2x=0 は、β<ω0\beta<\omega_0(不足減衰)・β=ω0\beta=\omega_0(臨界減衰)・β>ω0\beta>\omega_0(過減衰)の 3 型に分かれます。変換 x=e−βtyx=e^{-\beta t}y で、3 つとも y¨+(ω02−β2)y=0\ddot y+(\omega_0^2-\beta^2)y=0 に帰着します(定理 2.1)。
  • 周期的な外力を加えると、十分時間が経ったあとの応答は外力と同じ振動数の定常振動です。その振幅は ωr=ω02−2β2\omega_r=\sqrt{\omega_0^2-2\beta^2} で最大になり、吸収パワー(外力が単位時間あたりに与えるエネルギー)は ω0\omega_0 で最大になって半値全幅(ピークの高さが半分になる 2 点の間隔)がちょうど 2β2\beta です(定理 3.1, 定理 3.2)。
  • 自由度が複数の振動系 Mx¨=−KxM\ddot{\boldsymbol{x}}=-K\boldsymbol{x} は、実対称行列の対角化により、互いに独立な単振動(基準モード。系全体が 1 つの振動数でそろって揺れる動き方)の重ね合わせに分解されます(定理 4.1)。
  • 質点が NN 個の鎖の基準振動数は ωk=2κ/m sin⁡kπ2(N+1)\omega_k=2\sqrt{\kappa/m}\,\sin\frac{k\pi}{2(N+1)} です。連続極限で弦の波動方程式 utt=c2uxxu_{tt}=c^2u_{xx} になり、一般解は F(x−ct)+G(x+ct)F(x-ct)+G(x+ct)、固定端の弦の振動は ωn=nπc/L\omega_n=n\pi c/L の定在波の重ね合わせです(定理 5.1, 定理 5.3)。
  • 振動数が波数に依存する(分散のある)波では、波束(いくつかの波を重ねてできた、ひとかたまりの波)の包絡線(かたまりの輪郭)は位相速度 ω/k\omega/k(波の山が進む速さ)ではなく群速度 dω/dkd\omega/dk(かたまり全体が進む速さ)で進みます。誤差の評価つきで証明します(定理 6.2)。

1. 動機:なぜ振動と波動をまとめて学ぶのか

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ニュートン力学の基礎では、ばねにつながれた質点の単振動 x¨=−ω02x\ddot x=-\omega_0^2x を解きました(定理 5.2[ニュートン力学の基礎])。この方程式は力学のあらゆる場所に現れます。平衡点のまわりで位置エネルギーを 2 次まで展開すれば、どんな系も微小振動では調和振動子になるからです。

しかし現実の振動は、純粋な単振動から 3 つの点でずれます。第 1 に、摩擦や空気抵抗でエネルギーが失われます(減衰)。第 2 に、外から力が加えられ続けることがあります(強制振動)。ブランコを押す、橋が風で揺れる、ラジオの同調回路が電波を拾う、といった場面です。第 3 に、振動する部分が 1 つではなく、互いにつながって影響し合います(連成)。

連成する部分の数を増やしていくと、振動は空間を伝わる波になります。弦、音、水面、光は、どれも「無数の調和振動子が隣と連成したもの」として理解できます。この記事の後半はその道筋です。最後に、波の速さが振動数によって違う(分散)とき、「波の速さ」という言葉が 1 つの意味に定まらなくなることを見ます。波束が運ぶエネルギーや情報の速度は群速度で、位相の山が進む速度とは別物です。

この記事で使う数学は、定数係数の線形常微分方程式と、実対称行列の対角化(系 4.3[スペクトル定理])です。

質量 mm の質点に、復元力 −kx-kx と、速度に比例する抵抗力 −γx˙-\gamma\dot x が働くとします。ω0=k/m\omega_0=\sqrt{k/m}、β=γ/(2m)\beta=\gamma/(2m) と置くと、運動方程式は

x¨+2βx˙+ω02x=0(β≥0, ω0>0)\ddot x+2\beta\dot x+\omega_0^2x=0\qquad(\beta\ge0,\ \omega_0>0)

です。β\beta を減衰率、ω0\omega_0 を固有角振動数と呼びます。

定理 2.1(減衰振動の一般解)✓

上の方程式の一般解は次のとおりである。A,BA,B は任意定数。

  1. β<ω0\beta<\omega_0(不足減衰): x=e−βt(Acos⁡ωdt+Bsin⁡ωdt)x=e^{-\beta t}\left(A\cos\omega_dt+B\sin\omega_dt\right)、ただし ωd=ω02−β2\omega_d=\sqrt{\omega_0^2-\beta^2}。
  2. β=ω0\beta=\omega_0(臨界減衰): x=e−βt(A+Bt)x=e^{-\beta t}(A+Bt)。
  3. β>ω0\beta>\omega_0(過減衰): x=e−βt(Acosh⁡κt+Bsinh⁡κt)x=e^{-\beta t}\left(A\cosh\kappa t+B\sinh\kappa t\right)、ただし κ=β2−ω02\kappa=\sqrt{\beta^2-\omega_0^2}。

初期条件 x(0)=x0x(0)=x_0, x˙(0)=v0\dot x(0)=v_0 に対する係数は、1 では A=x0A=x_0, B=(v0+βx0)/ωdB=(v_0+\beta x_0)/\omega_d である。

証明(定理 2.1)

x=e−βtyx=e^{-\beta t}y と置くと、x˙=e−βt(y˙−βy)\dot x=e^{-\beta t}(\dot y-\beta y)、x¨=e−βt(y¨−2βy˙+β2y)\ddot x=e^{-\beta t}(\ddot y-2\beta\dot y+\beta^2y) なので

x¨+2βx˙+ω02x=e−βt(y¨−2βy˙+β2y+2βy˙−2β2y+ω02y)=e−βt(y¨+(ω02−β2)y)\ddot x+2\beta\dot x+\omega_0^2x=e^{-\beta t}\left(\ddot y-2\beta\dot y+\beta^2y+2\beta\dot y-2\beta^2y+\omega_0^2y\right)=e^{-\beta t}\left(\ddot y+(\omega_0^2-\beta^2)y\right)

です。したがって xx が解であることと、yy が y¨+(ω02−β2)y=0\ddot y+(\omega_0^2-\beta^2)y=0 を満たすことは同値です。この方程式の解は、ω02−β2>0\omega_0^2-\beta^2>0 なら Acos⁡ωdt+Bsin⁡ωdtA\cos\omega_dt+B\sin\omega_dt(定理 5.2[ニュートン力学の基礎])、=0=0 なら y¨=0\ddot y=0 より A+BtA+Bt、<0<0 なら y¨=κ2y\ddot y=\kappa^2y より Acosh⁡κt+Bsinh⁡κtA\cosh\kappa t+B\sinh\kappa t です。最後の場合、これらが任意の初期条件を満たせること(y(0)=Ay(0)=A, y˙(0)=κB\dot y(0)=\kappa B)と、初期値問題の解が一意であること(命題 4.1[ニュートン力学の基礎])から、これが一般解のすべてです。1 の係数は y(0)=x0y(0)=x_0, y˙(0)=v0+βx0\dot y(0)=v_0+\beta x_0 から決まります。

不足減衰の解は、振幅が e−βte^{-\beta t} で減っていく振動です。振動数は無減衰のときの ω0\omega_0 より少し低い ωd\omega_d になります。エネルギー E=12mx˙2+12kx2E=\frac12m\dot x^2+\frac12kx^2 の時間変化は E˙=mx˙(x¨+ω02x)=−2mβx˙2≤0\dot E=m\dot x(\ddot x+\omega_0^2x)=-2m\beta\dot x^2\le0 で、減衰が弱い(β≪ω0\beta\ll\omega_0)ときは 1 周期のあいだに EE は約 e−2βTe^{-2\beta T} 倍、つまり割合 2βT=4πβ/ω02\beta T=4\pi\beta/\omega_0 だけ失われます。この割合の逆数を使って、Q 値を

Q=ω02βQ=\frac{\omega_0}{2\beta}

と定めます。1 周期あたりに失うエネルギー割合が 2π/Q2\pi/Q になります。

例 2.2(音叉の減衰)

振動数 440 Hz440\ \mathrm{Hz} の音叉で、Q 値が 10001000 だとします。ω0=2π×440=2.76×103 s−1\omega_0=2\pi\times440=2.76\times10^3\ \mathrm{s^{-1}} から β=ω0/(2Q)=1.38 s−1\beta=\omega_0/(2Q)=1.38\ \mathrm{s^{-1}} です。振幅は 1/β≈0.72 s1/\beta\approx0.72\ \mathrm{s} ごとに 1/e1/e になり、エネルギーは 1/(2β)≈0.36 s1/(2\beta)\approx0.36\ \mathrm{s} ごとに 1/e1/e になります。e−1.38t=0.1e^{-1.38t}=0.1 とすると t=1.7 st=1.7\ \mathrm{s} ですので、叩いてから約 1.71.7 秒で振幅が 1/101/10 に落ちます。

臨界減衰は、振動せずに最も速く平衡に戻る条件です。不足減衰では ωd\omega_d で振動し続け、過減衰では遅い方の指数 e−(β−κ)te^{-(\beta-\kappa)t} が支配的になって戻りが遅くなります。ドアクローザーや計器の針の制動を臨界減衰付近に設計するのはこのためです。

tx10
3 つの減衰の型の変位 x(t)(ω₀=1、初期条件は x(0)=1, 速度 0)。細い線:不足減衰(β=0.2)は振動しながら減る。太い線:臨界減衰(β=1)は振動せず最も速く 0 に戻る。破線:過減衰(β=2)は振動せずゆっくり戻る

減衰振動子に、角振動数 ω\omega の周期的な外力を加えます。単位質量あたりの力の振幅を ff として

x¨+2βx˙+ω02x=fcos⁡ωt(β>0)\ddot x+2\beta\dot x+\omega_0^2x=f\cos\omega t\qquad(\beta>0)

を考えます。

定理 3.1(強制振動の定常解)✓

この方程式の一般解は、特解

xp(t)=A(ω)cos⁡(ωt−δ),A(ω)=f(ω02−ω2)2+4β2ω2,δ=arg⁡(ω02−ω2+2iβω)∈(0,π)x_p(t)=A(\omega)\cos(\omega t-\delta),\qquad A(\omega)=\frac{f}{\sqrt{(\omega_0^2-\omega^2)^2+4\beta^2\omega^2}},\qquad \delta=\arg\left(\omega_0^2-\omega^2+2i\beta\omega\right)\in(0,\pi)

に、同次方程式の一般解(定理 2.1)を足したものである。同次解は t→∞t\to\infty で 00 に収束する。

証明(定理 3.1)

x=Re (Zeiωt)x=\mathrm{Re}\,(Ze^{i\omega t}) を代入します。実数係数の線形方程式なので、複素方程式 z¨+2βz˙+ω02z=feiωt\ddot z+2\beta\dot z+\omega_0^2z=fe^{i\omega t} の解の実部が元の解です。z=Zeiωtz=Ze^{i\omega t} とすると (−ω2+2iβω+ω02)Z=f(-\omega^2+2i\beta\omega+\omega_0^2)Z=f なので

Z=fω02−ω2+2iβω=fD e−iδ,D=(ω02−ω2)2+4β2ω2Z=\frac{f}{\omega_0^2-\omega^2+2i\beta\omega}=\frac{f}{\sqrt{D}}\,e^{-i\delta},\qquad D=(\omega_0^2-\omega^2)^2+4\beta^2\omega^2

です。虚部 2βω>02\beta\omega>0 より偏角 δ∈(0,π)\delta\in(0,\pi) で、Re(Zeiωt)=(f/D)cos⁡(ωt−δ)\mathrm{Re}(Ze^{i\omega t})=(f/\sqrt D)\cos(\omega t-\delta) が特解です。非同次方程式の 2 つの解の差は同次方程式の解なので、一般解は特解 + 同次解です。同次解の減衰は 定理 2.1 の形から従います(不足・臨界では因子 e−βte^{-\beta t}、過減衰では e−βtcosh⁡κte^{-\beta t}\cosh\kappa t などが e−(β−κ)te^{-(\beta-\kappa)t} 程度で、κ<β\kappa<\beta なので 00 に収束)。

過渡的な同次解が消えたあとの運動は、初期条件にまったく依存しません。位相の遅れ δ\delta は、ω≪ω0\omega\ll\omega_0 で 00(外力に追従)、ω=ω0\omega=\omega_0 で π/2\pi/2、ω≫ω0\omega\gg\omega_0 で π\pi(逆位相)となります。

定理 3.2(共鳴の条件と共鳴曲線の幅)✓

定常解について次が成り立つ。

  1. ω02>2β2\omega_0^2>2\beta^2 のとき、振幅 A(ω)A(\omega) は ωr=ω02−2β2\omega_r=\sqrt{\omega_0^2-2\beta^2} で最大値 Amax⁡=f2βω02−β2A_{\max}=\dfrac{f}{2\beta\sqrt{\omega_0^2-\beta^2}} をとる。ω02≤2β2\omega_0^2\le2\beta^2 のとき、A(ω)A(\omega) は ω\omega について単調減少である。
  2. 質量 mm の質点が外力 mfcos⁡ωtmf\cos\omega t から受け取る時間平均のパワーは Pˉ(ω)=mf2βω2(ω02−ω2)2+4β2ω2\bar P(\omega)=\dfrac{mf^2\beta\omega^2}{(\omega_0^2-\omega^2)^2+4\beta^2\omega^2} で、ω=ω0\omega=\omega_0 で最大値 mf2/(4β)mf^2/(4\beta) をとり、半値(Pˉmax⁡/2\bar P_{\max}/2)になる 2 つの角振動数の差は厳密に 2β2\beta である。

証明の方針です。1 は、分母 DD を s=ω2s=\omega^2 の 2 次関数とみて、DD が最小になる点を探します。A=f/DA=f/\sqrt D なので、DD が最小のとき振幅が最大です。2 は、外力が単位時間あたりにする仕事(力 × 速度)を 1 周期で平均してパワーの式を作り、それが最大値の半分になる 2 点を求めます。

証明(定理 3.2)
  1. s=ω2≥0s=\omega^2\ge0 と置くと D=(ω02−s)2+4β2sD=(\omega_0^2-s)^2+4\beta^2s、dD/ds=−2(ω02−s)+4β2dD/ds=-2(\omega_0^2-s)+4\beta^2 です。DD は ss の下に凸な 2 次関数で、最小点は s=ω02−2β2s=\omega_0^2-2\beta^2 です。これが s≥0s\ge0 に入る条件は ω02≥2β2\omega_0^2\ge2\beta^2(等号のときは端点)。最小値は Dmin⁡=4β2ω02−4β4=4β2(ω02−β2)D_{\min}=4\beta^2\omega_0^2-4\beta^4=4\beta^2(\omega_0^2-\beta^2) で、A=f/DA=f/\sqrt D より最大値が出ます。ω02≤2β2\omega_0^2\le2\beta^2 では s≥0s\ge0 で dD/ds≥0dD/ds\ge0 なので DD は単調増加し、AA は単調減少です。
  2. 力 F=mfcos⁡ωtF=mf\cos\omega t と速度 x˙p=−Aωsin⁡(ωt−δ)\dot x_p=-A\omega\sin(\omega t-\delta) の積の 1 周期平均をとります。cos⁡ωtsin⁡(ωt−δ)=12[sin⁡(2ωt−δ)−sin⁡δ]\cos\omega t\sin(\omega t-\delta)=\frac12\left[\sin(2\omega t-\delta)-\sin\delta\right] で、第 1 項の平均は 00 です。よって Pˉ=12mfAωsin⁡δ\bar P=\frac12mfA\omega\sin\delta。sin⁡δ=2βω/D\sin\delta=2\beta\omega/\sqrt D と A=f/DA=f/\sqrt D を代入すると、Pˉ=mf2βω2/D\bar P=mf^2\beta\omega^2/D です。ω2/D=1/[(ω02−ω2ω)2+4β2]\omega^2/D=1/\left[\left(\frac{\omega_0^2-\omega^2}{\omega}\right)^2+4\beta^2\right] と書けるので、最大は ω02=ω2\omega_0^2=\omega^2 のときで Pˉmax⁡=mf2/(4β)\bar P_{\max}=mf^2/(4\beta)。半値の条件は (ω02−ω2ω)2=4β2\left(\frac{\omega_0^2-\omega^2}{\omega}\right)^2=4\beta^2、すなわち ω02−ω2=±2βω\omega_0^2-\omega^2=\pm2\beta\omega です。正の解は ω±=ω02+β2±β\omega_\pm=\sqrt{\omega_0^2+\beta^2}\pm\beta なので、ω+−ω−=2β\omega_+-\omega_-=2\beta です。

注意 3.3

定理 3.2 の 2. の半値全幅 2β2\beta と共鳴中心 ω0\omega_0 の比は、定義 Q=ω0/(2β)Q=\omega_0/(2\beta) により 2β/ω0=1/Q2\beta/\omega_0=1/Q です。Q 値が高い系ほど共鳴曲線が鋭く、特定の振動数だけに強く応答します。音叉や水晶振動子の高い Q 値は、振動数の基準として使える鋭さの源です。

例 3.4(減衰がないときの共鳴:振幅は時間に比例して増える)

β=0\beta=0 で ω=ω0\omega=\omega_0 のとき、定常解の公式は発散します。方程式 x¨+ω02x=fcos⁡ω0t\ddot x+\omega_0^2x=f\cos\omega_0t の特解は x=f t2ω0sin⁡ω0tx=\dfrac{f\,t}{2\omega_0}\sin\omega_0t です。実際、x¨=fcos⁡ω0t−fω0t2sin⁡ω0t\ddot x=f\cos\omega_0t-\dfrac{f\omega_0t}{2}\sin\omega_0t なので、x¨+ω02x=fcos⁡ω0t\ddot x+\omega_0^2x=f\cos\omega_0t が成り立ちます。振幅 ft/(2ω0)ft/(2\omega_0) は時間に比例して増え続け、現実には抵抗や非線形性で頭打ちになります。

例 3.5(共鳴曲線の数値)

ω0=10 s−1\omega_0=10\ \mathrm{s^{-1}}, β=1 s−1\beta=1\ \mathrm{s^{-1}} のとき、Q=5Q=5 です。振幅の最大は ωr=100−2=9.90 s−1\omega_r=\sqrt{100-2}=9.90\ \mathrm{s^{-1}} で、Amax⁡=f/(299)=f/19.9A_{\max}=f/(2\sqrt{99})=f/19.9。静的な応答は f/ω02=f/100f/\omega_0^2=f/100 なので、共鳴で約 5.05.0 倍に増幅されます。QQ に近い倍率になるのは、減衰が弱いときの一般的な性質です。

自由度 nn の系が安定な平衡点のまわりで微小振動するとき、運動エネルギーと位置エネルギーを 2 次形式

T=12x˙TMx˙,U=12xTKxT=\tfrac12\dot{\boldsymbol{x}}^{\mathsf T}M\dot{\boldsymbol{x}},\qquad U=\tfrac12\boldsymbol{x}^{\mathsf T}K\boldsymbol{x}

で近似できます。x\boldsymbol{x} は平衡点からのずれ、M,KM,K は定数の実対称行列で、MM は正定値、KK は正定値(安定な平衡)とします。ラグランジュ方程式(定理 3.4[ラグランジュ形式の力学])は

Mx¨=−KxM\ddot{\boldsymbol{x}}=-K\boldsymbol{x}

になります。

定理 4.1(基準モードへの分解)✓

M,KM,K が実対称正定値行列ならば、正の数 ω12,…,ωn2\omega_1^2,\ldots,\omega_n^2 と、sjTMsk=δjk\boldsymbol{s}_j^{\mathsf T}M\boldsymbol{s}_k=\delta_{jk} を満たすベクトル s1,…,sn\boldsymbol{s}_1,\ldots,\boldsymbol{s}_n が存在して、Ksk=ωk2MskK\boldsymbol{s}_k=\omega_k^2M\boldsymbol{s}_k となる。方程式 Mx¨=−KxM\ddot{\boldsymbol{x}}=-K\boldsymbol{x} の一般解は

x(t)=∑k=1nsk(akcos⁡ωkt+bksin⁡ωkt)\boldsymbol{x}(t)=\sum_{k=1}^n\boldsymbol{s}_k\left(a_k\cos\omega_kt+b_k\sin\omega_kt\right)

である。ωk\omega_k を基準振動数、sk\boldsymbol{s}_k を基準モードという。

証明の方針です。MM が単位行列なら、KK を対角化するだけで独立な単振動に分かれます。MM が単位行列でないので、まず変数を取り替えて(MM の平方根 M1/2M^{1/2} を使います)MM を単位行列の形に直し、そのあとで対称行列の対角化を使います。

証明(定理 4.1)

MM は実対称正定値なので、直交行列 PP により M=P diag(m1,…,mn) PTM=P\,\mathrm{diag}(m_1,\ldots,m_n)\,P^{\mathsf T}(mj>0m_j>0)と対角化されます(系 4.3[スペクトル定理])。M1/2=P diag(mj) PTM^{1/2}=P\,\mathrm{diag}(\sqrt{m_j})\,P^{\mathsf T} と置くと、これは実対称正定値で M1/2M1/2=MM^{1/2}M^{1/2}=M です。y=M1/2x\boldsymbol{y}=M^{1/2}\boldsymbol{x} と変数変換すると、方程式は y¨=−K~y\ddot{\boldsymbol{y}}=-\tilde K\boldsymbol{y}、K~=M−1/2KM−1/2\tilde K=M^{-1/2}KM^{-1/2} になります。K~\tilde K も実対称で、v≠0\boldsymbol{v}\neq\boldsymbol{0} に対して vTK~v=(M−1/2v)TK(M−1/2v)>0\boldsymbol{v}^{\mathsf T}\tilde K\boldsymbol{v}=(M^{-1/2}\boldsymbol{v})^{\mathsf T}K(M^{-1/2}\boldsymbol{v})>0 なので正定値です。再び 系 4.3[スペクトル定理] により、直交行列 Q=(q1⋯qn)Q=(\boldsymbol{q}_1\cdots\boldsymbol{q}_n) が存在して QTK~Q=diag(ω12,…,ωn2)Q^{\mathsf T}\tilde KQ=\mathrm{diag}(\omega_1^2,\ldots,\omega_n^2)、固有値は正定値性から正です。

ξ=QTy\boldsymbol{\xi}=Q^{\mathsf T}\boldsymbol{y} と置くと、各成分は独立に ξ¨k=−ωk2ξk\ddot\xi_k=-\omega_k^2\xi_k を満たし、その一般解は akcos⁡ωkt+bksin⁡ωkta_k\cos\omega_kt+b_k\sin\omega_kt です。x=M−1/2Qξ\boldsymbol{x}=M^{-1/2}Q\boldsymbol{\xi} なので、sk=M−1/2qk\boldsymbol{s}_k=M^{-1/2}\boldsymbol{q}_k と置けば、sjTMsk=qjTqk=δjk\boldsymbol{s}_j^{\mathsf T}M\boldsymbol{s}_k=\boldsymbol{q}_j^{\mathsf T}\boldsymbol{q}_k=\delta_{jk}、Ksk=M1/2K~M1/2M−1/2qk=ωk2MskK\boldsymbol{s}_k=M^{1/2}\tilde KM^{1/2}M^{-1/2}\boldsymbol{q}_k=\omega_k^2M\boldsymbol{s}_k が成り立ち、上の一般解の形になります。

基準モードの座標 ξk\xi_k では、全エネルギーが ∑k(12ξ˙k2+12ωk2ξk2)\sum_k\left(\frac12\dot\xi_k^2+\frac12\omega_k^2\xi_k^2\right) に分離します。連成振動は、互いに独立な nn 個の調和振動子の和であるということです。

同じ質量 mm、同じ長さ ll の 2 つの振り子を、ばね定数 κ\kappa のばねで連結します。微小角では水平変位 x1,x2x_1,x_2 に対して

mx¨1=−mglx1−κ(x1−x2),mx¨2=−mglx2−κ(x2−x1)m\ddot x_1=-\frac{mg}{l}x_1-\kappa(x_1-x_2),\qquad m\ddot x_2=-\frac{mg}{l}x_2-\kappa(x_2-x_1)

です。和と差をとると、x±=x1±x2x_\pm=x_1\pm x_2 について x¨+=−glx+\ddot x_+=-\frac{g}{l}x_+、x¨−=−(gl+2κm)x−\ddot x_-=-\left(\frac gl+\frac{2\kappa}{m}\right)x_- となり、基準振動数は ωs=g/l\omega_s=\sqrt{g/l}(2 つが同位相)と ωa=g/l+2κ/m\omega_a=\sqrt{g/l+2\kappa/m}(逆位相)です。

例 4.2(結合振り子のうなり)

振り子 1 を距離 aa だけずらして静かに放し、振り子 2 は静止から始めます。x+(0)=x−(0)=ax_+(0)=x_-(0)=a, 速度は 00 なので x+=acos⁡ωstx_+=a\cos\omega_st, x−=acos⁡ωatx_-=a\cos\omega_at で、

x1=a2(cos⁡ωst+cos⁡ωat)=acos⁡(ωa−ωs)t2cos⁡(ωa+ωs)t2,x2=asin⁡(ωa−ωs)t2sin⁡(ωa+ωs)t2x_1=\frac a2(\cos\omega_st+\cos\omega_at)=a\cos\frac{(\omega_a-\omega_s)t}{2}\cos\frac{(\omega_a+\omega_s)t}{2},\quad x_2=a\sin\frac{(\omega_a-\omega_s)t}{2}\sin\frac{(\omega_a+\omega_s)t}{2}

です。包絡線が cos⁡\cos と sin⁡\sin で入れ替わるので、振り子 1 の振動が止まって振り子 2 に完全にエネルギーが移るまで t=π/(ωa−ωs)t=\pi/(\omega_a-\omega_s) かかります。g/l=9.8 s−2g/l=9.8\ \mathrm{s^{-2}}, κ/m=0.5 s−2\kappa/m=0.5\ \mathrm{s^{-2}} とすると ωs=3.131\omega_s=3.131, ωa=3.286 s−1\omega_a=3.286\ \mathrm{s^{-1}} で、この時間は約 20 s20\ \mathrm{s} です。

質量 mm の NN 個の質点が、ばね定数 κ\kappa のばねで一直線につながれ、両端は壁に固定されているとします(質点 00 と N+1N+1 は壁で u0=uN+1=0u_0=u_{N+1}=0)。jj 番目の質点の縦(または横)変位を uju_j とすると

mu¨j=κ(uj+1−2uj+uj−1)(j=1,…,N)m\ddot u_j=\kappa\left(u_{j+1}-2u_j+u_{j-1}\right)\qquad(j=1,\ldots,N)

です。

命題 4.3(鎖の基準モード)✓

この系の基準振動数と基準モードは、k=1,…,Nk=1,\ldots,N について

ωk=2κm sin⁡kπ2(N+1),uj(k)∝sin⁡jkπN+1\omega_k=2\sqrt{\frac{\kappa}{m}}\,\sin\frac{k\pi}{2(N+1)},\qquad u_j^{(k)}\propto\sin\frac{jk\pi}{N+1}

である。

証明の方針です。両端が壁に固定されているので、全体が同じ振動数でそろって揺れる動きを考え、位置に関して sin⁡\sin の形、時間に関して cos⁡ωt\cos\omega t の形をもつものを仮定して代入してみます。式が成り立つように ω\omega を決め、端の条件から θ\theta の値を決めます。

証明(命題 4.3)

θ=kπ/(N+1)\theta=k\pi/(N+1) と置き、uj=sin⁡(jθ)cos⁡ωtu_j=\sin(j\theta)\cos\omega t を代入します。sin⁡((j+1)θ)+sin⁡((j−1)θ)=2sin⁡(jθ)cos⁡θ\sin((j+1)\theta)+\sin((j-1)\theta)=2\sin(j\theta)\cos\theta なので、右辺は κ⋅2(cos⁡θ−1)sin⁡(jθ)cos⁡ωt\kappa\cdot2(\cos\theta-1)\sin(j\theta)\cos\omega t です。したがって mω2=2κ(1−cos⁡θ)=4κsin⁡2(θ/2)m\omega^2=2\kappa(1-\cos\theta)=4\kappa\sin^2(\theta/2)、つまり ω=2κ/msin⁡(θ/2)\omega=2\sqrt{\kappa/m}\sin(\theta/2) のとき解になります。境界条件 u0=0u_0=0 は sin⁡0=0\sin0=0 で自動的に満たされ、uN+1=sin⁡((N+1)θ)=0u_{N+1}=\sin((N+1)\theta)=0 は θ=kπ/(N+1)\theta=k\pi/(N+1) のときに成り立ちます。k=1,…,Nk=1,\ldots,N では θ/2∈(0,π/2)\theta/2\in(0,\pi/2) で sin⁡(θ/2)\sin(\theta/2) は単調増加なので、NN 個の異なる正の振動数が得られます。系は NN 自由度なので、定理 4.1 の基準モードはちょうど NN 個であり、これで全部です。

質点の間隔を aa とすると、鎖の長さは L=(N+1)aL=(N+1)a です。波数を q=kπ/Lq=k\pi/L と書けば θ=qa\theta=qa で、ω=2κ/m sin⁡(qa/2)\omega=2\sqrt{\kappa/m}\,\sin(qa/2) という分散関係になります。qa≪1qa\ll1 では ω≈aκ/m q\omega\approx a\sqrt{\kappa/m}\,q で、振動数が波数に比例します。これが次節の弦の波動方程式に対応する極限です。

張力 TT、線密度 μ\mu の弦が、xx 軸上の平衡位置から微小な横変位 u(x,t)u(x,t) で振動しているとします。区間 [x,x+dx][x,x+dx] の部分を考えると、両端の張力は弦に沿った向きに働きます。横方向の力は、傾きが小さく(角度 θ\theta が小さいときは sin⁡θ\sin\theta と tan⁡θ\tan\theta がほぼ等しく、tan⁡θ\tan\theta は弦の傾き uxu_x のことです)sin⁡θ≈tan⁡θ=ux\sin\theta\approx\tan\theta=u_x のとき

T ux(x+dx,t)−T ux(x,t)≈T uxx dxT\,u_x(x+dx,t)-T\,u_x(x,t)\approx T\,u_{xx}\,dx

です。水平方向の力は T(cos⁡θ2−cos⁡θ1)=O(ux2)T(\cos\theta_2-\cos\theta_1)=O(u_x^2) で無視できます。質量 μ dx\mu\,dx の運動方程式 μ dx utt=Tuxx dx\mu\,dx\,u_{tt}=Tu_{xx}\,dx から

utt=c2uxx,c=T/μu_{tt}=c^2u_{xx},\qquad c=\sqrt{T/\mu}

を得ます。これが波動方程式です。命題 4.3 の鎖で、質点の質量を m=μam=\mu a、ばねの強さを κ=T/a\kappa=T/a ととり、a→0a\to0 とすると、mu¨j=κ(uj+1−2uj+uj−1)m\ddot u_j=\kappa(u_{j+1}-2u_j+u_{j-1}) の右辺は T a uxxT\,a\,u_{xx} に近づき、同じ方程式が得られます。このとき aκ/m=T/μ=ca\sqrt{\kappa/m}=\sqrt{T/\mu}=c です。

定理 5.1(ダランベールの解)✓

u(x,t)u(x,t) が R×R\mathbb{R}\times\mathbb{R} 上の C2C^2 級関数で utt=c2uxxu_{tt}=c^2u_{xx} を満たすなら、ある C2C^2 級関数 F,GF,G が存在して

u(x,t)=F(x−ct)+G(x+ct)u(x,t)=F(x-ct)+G(x+ct)

と書ける。初期条件 u(x,0)=u0(x)u(x,0)=u_0(x), ut(x,0)=v0(x)u_t(x,0)=v_0(x) に対しては

u(x,t)=12[u0(x−ct)+u0(x+ct)]+12c∫x−ctx+ctv0(s) dsu(x,t)=\frac12\left[u_0(x-ct)+u_0(x+ct)\right]+\frac1{2c}\int_{x-ct}^{x+ct}v_0(s)\,ds

である。

証明(定理 5.1)

ξ=x−ct\xi=x-ct, η=x+ct\eta=x+ct とし、u(x,t)=w(ξ,η)u(x,t)=w(\xi,\eta) と書きます。連鎖律で ux=wξ+wηu_x=w_\xi+w_\eta, ut=c(−wξ+wη)u_t=c(-w_\xi+w_\eta)、さらに uxx=wξξ+2wξη+wηηu_{xx}=w_{\xi\xi}+2w_{\xi\eta}+w_{\eta\eta}, utt=c2(wξξ−2wξη+wηη)u_{tt}=c^2(w_{\xi\xi}-2w_{\xi\eta}+w_{\eta\eta}) なので、utt−c2uxx=−4c2wξηu_{tt}-c^2u_{xx}=-4c^2w_{\xi\eta} です。よって wξη=0w_{\xi\eta}=0 で、∂η(wξ)=0\partial_\eta(w_\xi)=0 より wξw_\xi は ξ\xi だけの関数 φ(ξ)\varphi(\xi) です。F(ξ)=∫ξφF(\xi)=\int^\xi\varphi と置けば w−F(ξ)w-F(\xi) は ξ\xi によらず、η\eta だけの関数 G(η)G(\eta) になります。 初期条件から F(x)+G(x)=u0(x)F(x)+G(x)=u_0(x), −cF′(x)+cG′(x)=v0(x)-cF'(x)+cG'(x)=v_0(x) です。前者を微分して連立すると F′=12u0′−12cv0F'=\frac12u_0'-\frac1{2c}v_0, G′=12u0′+12cv0G'=\frac12u_0'+\frac1{2c}v_0 なので、積分して F(x)=12u0(x)−12c∫0xv0+CF(x)=\frac12u_0(x)-\frac1{2c}\int_0^xv_0+C, G(x)=12u0(x)+12c∫0xv0−CG(x)=\frac12u_0(x)+\frac1{2c}\int_0^xv_0-C(CC は定数)。これを F(x−ct)+G(x+ct)F(x-ct)+G(x+ct) に入れると CC が消えて公式になります。

解は、形を変えずに右に進む波 F(x−ct)F(x-ct) と左に進む波 G(x+ct)G(x+ct) の和です。速さはどちらも c=T/μc=\sqrt{T/\mu} で、波形によらず、振動数にも依存しません。これは弦が分散しない媒質であるということです。

長さ LL の弦の両端 x=0,Lx=0,L を固定した(u(0,t)=u(L,t)=0u(0,t)=u(L,t)=0)場合を考えます。まず、エネルギーの保存を示しておきます。

命題 5.2(弦のエネルギー保存と解の一意性)✓

固定端の弦の解(C2C^2 級)について、エネルギー E=∫0L(12μut2+12Tux2)dxE=\displaystyle\int_0^L\left(\tfrac12\mu u_t^2+\tfrac12Tu_x^2\right)dx は時間によらない。したがって、同じ初期条件をもつ解は一意である。

証明(命題 5.2)

dEdt=∫0L(μututt+Tuxuxt)dx\dfrac{dE}{dt}=\displaystyle\int_0^L(\mu u_tu_{tt}+Tu_xu_{xt})dx で、μutt=Tuxx\mu u_{tt}=Tu_{xx} を使うと被積分関数は T(utuxx+uxuxt)=T ∂x(utux)T(u_tu_{xx}+u_xu_{xt})=T\,\partial_x(u_tu_x) です。よって dE/dt=T[utux]0L=0dE/dt=T\left[u_tu_x\right]_0^L=0(固定端では ut=0u_t=0)。2 つの解の差 ww も同じ方程式と境界条件を満たし、初期条件がともに 00 なので E[w](0)=0E[w](0)=0 です。E[w]E[w] は常に 00 で、被積分関数は非負なので wt≡0w_t\equiv0, wx≡0w_x\equiv0、よって ww は定数で初期値 00 より w≡0w\equiv0 です。

定理 5.3(固定端の弦の基準振動)✓

固定端の弦の方程式 utt=c2uxxu_{tt}=c^2u_{xx} について、変数分離解 u=X(x) Y(t)u=X(x)\,Y(t)(自明でないもの)は、整数 n≥1n\ge1 を用いて

un(x,t)=sin⁡nπxL(ancos⁡ωnt+bnsin⁡ωnt),ωn=nπcLu_n(x,t)=\sin\frac{n\pi x}{L}\left(a_n\cos\omega_nt+b_n\sin\omega_nt\right),\qquad\omega_n=\frac{n\pi c}{L}

の形に限られる。有限個の和 u=∑n=1Nunu=\sum_{n=1}^{N}u_n もまた解であり、初期条件が u0=∑nαnsin⁡nπxLu_0=\sum_n\alpha_n\sin\frac{n\pi x}{L}, v0=∑nβnsin⁡nπxLv_0=\sum_n\beta_n\sin\frac{n\pi x}{L} のときの解は、an=αna_n=\alpha_n, bn=βn/ωnb_n=\beta_n/\omega_n で与えられ、命題 5.2 により唯一である。

証明の方針です。変数分離とは、解を「位置だけの関数 × 時間だけの関数」の積 X(x)Y(t)X(x)Y(t) と仮定して代入する方法です。代入すると、左辺は tt だけ、右辺は xx だけの式になります。両者が等しいなら、どちらも xx にも tt にもよらない定数でなければなりません。こうして 2 つの常微分方程式に分かれ、固定端の条件から sin⁡nπxL\sin\frac{n\pi x}{L} の形が決まります。

証明(定理 5.3)

u=X(x)Y(t)u=X(x)Y(t) を utt=c2uxxu_{tt}=c^2u_{xx} に入れ、XY≠0XY\ne0 の点で割ると Y′′/(c2Y)=X′′/XY''/(c^2Y)=X''/X で、左辺は tt だけ、右辺は xx だけの関数なので共通の定数 −λ-\lambda に等しくなります。X′′+λX=0X''+\lambda X=0, X(0)=X(L)=0X(0)=X(L)=0 に XX を掛けて [0,L][0,L] で積分し、部分積分すると ∫0LX′2dx=λ∫0LX2dx\int_0^LX'^2dx=\lambda\int_0^LX^2dx です。X≢0X\not\equiv0 なので λ>0\lambda>0。λ=ν2\lambda=\nu^2 と置いて X=Asin⁡νx+Bcos⁡νxX=A\sin\nu x+B\cos\nu x、X(0)=0X(0)=0 より B=0B=0、X(L)=0X(L)=0 より sin⁡νL=0\sin\nu L=0 なので ν=nπ/L\nu=n\pi/L です。Y′′=−c2ν2YY''=-c^2\nu^2Y より Y=acos⁡ωnt+bsin⁡ωntY=a\cos\omega_nt+b\sin\omega_nt, ωn=nπc/L\omega_n=n\pi c/L。重ね合わせは方程式の線形性から従います。初期条件については、u(x,0)=∑ansin⁡nπxLu(x,0)=\sum a_n\sin\frac{n\pi x}{L}, ut(x,0)=∑ωnbnsin⁡nπxLu_t(x,0)=\sum\omega_nb_n\sin\frac{n\pi x}{L} と比べて係数が決まります。

一般の初期条件では、sin⁡nπxL\sin\frac{n\pi x}{L}(n≥1n\ge1)が [0,L][0,L] 上の関数の正規直交基底(奇拡張して周期 2L2L のフーリエ級数にすることに相当、例 6.5[Hilbert 空間の基礎])になることを用い、an=2L∫0Lu0sin⁡nπxLdxa_n=\frac2L\int_0^Lu_0\sin\frac{n\pi x}{L}dx, bn=2ωnL∫0Lv0sin⁡nπxLdxb_n=\frac2{\omega_nL}\int_0^Lv_0\sin\frac{n\pi x}{L}dx とした無限級数が解を与えます。項別微分が許される十分な滑らかさが必要ですが、ここでは深入りしません。

基準振動数が ωn=nω1\omega_n=n\omega_1(整数比)になることが、弦楽器の音が調和的に響く理由です。n=1n=1 が基音、n=2,3,…n=2,3,\ldots が倍音です。

例 5.4(ギターの弦の基音)

長さ L=0.65 mL=0.65\ \mathrm{m} のギターの弦に張力 T=70 NT=70\ \mathrm{N} がかかっていて、線密度が μ=4.0×10−3 kg/m\mu=4.0\times10^{-3}\ \mathrm{kg/m} だとします。c=70/(4.0×10−3)=132 m/sc=\sqrt{70/(4.0\times10^{-3})}=132\ \mathrm{m/s} で、基音は f1=c/(2L)=132/1.3=102 Hzf_1=c/(2L)=132/1.3=102\ \mathrm{Hz} です。弦を L/2L/2 に押さえれば長さが半分になって f=204 Hzf=204\ \mathrm{Hz}(1 オクターブ上)になります。

実際の媒質では、波の速さが振動数に依存します。鎖の分散関係 ω=2κ/msin⁡(qa/2)\omega=2\sqrt{\kappa/m}\sin(qa/2) はその例です。

定義 6.1(分散関係・位相速度・群速度)↗

平面波 ei(qx−ωt)e^{i(qx-\omega t)} が方程式を満たす条件から決まる関係 ω=ω(q)\omega=\omega(q) を分散関係という。ω(q)/q\omega(q)/q を位相速度、dω/dqd\omega/dq を群速度という。波数 qq は xx 方向の空間振動数の 2π2\pi 倍である。

位相速度 vp=ω/qv_p=\omega/q と群速度 vg=dω/dqv_g=d\omega/dq の間には、ω=qvp\omega=qv_p を qq で微分して

vg=vp+q dvpdqv_g=v_p+q\,\frac{dv_p}{dq}

という関係があります。分散がない(vpv_p が qq によらない)ときだけ両者は一致します。

定理 6.2(波束の包絡線は群速度で進む)✓

ω(q)\omega(q) が C2C^2 級で、∣ω′′∣≤W|\omega''|\le W とする。波数 q0q_0 のまわり ∣q−q0∣≤Δ|q-q_0|\le\Delta に台をもつ可積分関数 A(q)A(q) に対し、波束 u(x,t)=∫A(q) ei(qx−ω(q)t)dqu(x,t)=\displaystyle\int A(q)\,e^{i(qx-\omega(q)t)}dq は、vg=ω′(q0)v_g=\omega'(q_0), ω0=ω(q0)\omega_0=\omega(q_0) として

u(x,t)=ei(q0x−ω0t) Φ(x−vgt)+ρ(x,t),Φ(y)=∫A(q0+s) eisydsu(x,t)=e^{i(q_0x-\omega_0t)}\,\Phi(x-v_gt)+\rho(x,t),\qquad\Phi(y)=\int A(q_0+s)\,e^{isy}ds

と書け、誤差は ∣ρ(x,t)∣≤WΔ22 ∣t∣∫∣A∣ dq|\rho(x,t)|\le\dfrac{W\Delta^2}{2}\,|t|\displaystyle\int|A|\,dq をみたす。

主張を言い換えます。台とは、A(q)A(q) が 00 でない波数の範囲のことです。ここでは q0q_0 のまわりの幅 Δ\Delta の範囲だけに限ります。可積分とは、積分が有限の値をもつことです。波束はこの範囲の波数の平面波を重ねたものです。定理は、波束が「ei(q0x−ω0t)e^{i(q_0x-\omega_0t)} という細かい振動に、形 Φ\Phi の包絡線がかかったもの」とみなせて、その包絡線が速さ ω′(q0)\omega'(q_0) で形を保って進む、と述べています。証明では ω(q)\omega(q) を q0q_0 のまわりで 1 次の項までで近似し、残りが誤差の項 ρ\rho になります。

証明(定理 6.2)

q=q0+sq=q_0+s と置き、テイラーの定理で ω(q)=ω0+vgs+R(s)\omega(q)=\omega_0+v_gs+R(s)、∣R(s)∣≤12Ws2|R(s)|\le\frac12Ws^2 と書きます。すると

u=ei(q0x−ω0t)∫A(q0+s) eis(x−vgt) e−iR(s)t dsu=e^{i(q_0x-\omega_0t)}\int A(q_0+s)\,e^{is(x-v_gt)}\,e^{-iR(s)t}\,ds

です。∣e−iRt−1∣≤∣R∣ ∣t∣≤12WΔ2∣t∣|e^{-iR t}-1|\le|R|\,|t|\le\frac12W\Delta^2|t|(∣eiϑ−1∣≤∣ϑ∣|e^{i\vartheta}-1|\le|\vartheta|)なので、e−iRte^{-iRt} を 11 で置き換えた誤差は ρ\rho の評価の通りです。置き換えた積分が ei(q0x−ω0t)Φ(x−vgt)e^{i(q_0x-\omega_0t)}\Phi(x-v_gt) です。

誤差の評価から、∣t∣≪1/(WΔ2)|t|\ll1/(W\Delta^2) の間は、波束の包絡線 ∣Φ∣|\Phi| の形が崩れずに速さ vgv_g で進むことがわかります。この時間より長いと、2 階微分 ω′′\omega'' の効果で波束が広がります(分散による波束の拡散)。位相の山は包絡線の中を速さ vpv_p で動くので、波束の中で山が現れたり消えたりして見えます。エネルギーや情報を運ぶのは包絡線のほうです。

例 6.3(分散関係のいろいろ)

(1) 弦: ω=cq\omega=cq で vp=vg=cv_p=v_g=c。分散なし。

(2) 鎖: ω=2κ/msin⁡(qa/2)\omega=2\sqrt{\kappa/m}\sin(qa/2) より vp=aκ/m sin⁡(qa/2)qa/2v_p=a\sqrt{\kappa/m}\,\dfrac{\sin(qa/2)}{qa/2}, vg=aκ/mcos⁡(qa/2)v_g=a\sqrt{\kappa/m}\cos(qa/2)。長波長で c=aκ/mc=a\sqrt{\kappa/m} に近づき、境界の qa=πqa=\pi で vg=0v_g=0 になります。波数が大きいほどエネルギーが運ばれなくなります。

(3) 深い水の重力波: ω=gq\omega=\sqrt{gq} より vp=g/qv_p=\sqrt{g/q}, vg=12g/q=12vpv_g=\frac12\sqrt{g/q}=\frac12v_p。船が作る波の先端に近い群は、山の動きの半分の速さで進みます。

(4) プラズマ中の電磁波: ω2=ωp2+c2q2\omega^2=\omega_p^2+c^2q^2 を微分して ω dω=c2q dq\omega\,d\omega=c^2q\,dq。よって vg=c2q/ωv_g=c^2q/\omega、vp=ω/qv_p=\omega/q で vpvg=c2v_pv_g=c^2。vp>cv_p>c ですが vg<cv_g<c なので、相対論と矛盾しません。

qω破線:位相速度(割線の傾き)実線:群速度(接線の傾き)π/a
鎖の分散関係 ω(q):原点と点を結ぶ線の傾きが位相速度、接線の傾きが群速度。曲線が上に凸なので群速度は位相速度より小さい

演習 7.1易

減衰振動子の振幅が 10 周期で最初の 1/e1/e に減ったとします(β≪ω0\beta\ll\omega_0 とする)。Q 値を求めてください。

解答

10 周期は t=10⋅2π/ω0t=10\cdot2\pi/\omega_0 で、振幅は e−βte^{-\beta t} で減衰します。βt=1\beta t=1 より β=ω0/(20π)\beta=\omega_0/(20\pi)、Q=ω0/(2β)=10π≈31Q=\omega_0/(2\beta)=10\pi\approx31 です。

演習 7.2標準

電気回路や機械系で、強制振動の定常振幅 A(ω)A(\omega)(定理 3.1)が最大値の 1/21/\sqrt2 になる 2 つの角振動数の差を、β≪ω0\beta\ll\omega_0 の近似で求めてください。

解答

D=(ω02−ω2)2+4β2ω2D=(\omega_0^2-\omega^2)^2+4\beta^2\omega^2 が最小値の 2 倍になる条件です。ω\omega が ω0\omega_0 に近いとき ω02−ω2≈2ω0(ω0−ω)\omega_0^2-\omega^2\approx2\omega_0(\omega_0-\omega), 4β2ω2≈4β2ω024\beta^2\omega^2\approx4\beta^2\omega_0^2 なので、D≈4ω02[(ω0−ω)2+β2]D\approx4\omega_0^2\left[(\omega_0-\omega)^2+\beta^2\right] です。最小値は 4ω02β24\omega_0^2\beta^2 で、その 2 倍になるのは (ω0−ω)2=β2(\omega_0-\omega)^2=\beta^2、すなわち ω=ω0±β\omega=\omega_0\pm\beta です。差は 2β=ω0/Q2\beta=\omega_0/Q で、パワー共鳴(定理 3.2)の半値全幅と一致します。

演習 7.3標準

質量 mm の 2 つの質点を、ばね定数 kk のばね 2 本(両端の壁へ)とばね定数 κ\kappa のばね 1 本(質点間)で直線上につなぎます。基準振動数と基準モードを求めてください。

解答

変位を x1,x2x_1,x_2 とすると mx¨1=−kx1−κ(x1−x2)m\ddot x_1=-kx_1-\kappa(x_1-x_2), mx¨2=−kx2−κ(x2−x1)m\ddot x_2=-kx_2-\kappa(x_2-x_1) です。辺々を足すと m(x¨1+x¨2)=−k(x1+x2)m(\ddot x_1+\ddot x_2)=-k(x_1+x_2) なので ω1=k/m\omega_1=\sqrt{k/m}(モード (1,1)(1,1))。引くと m(x¨1−x¨2)=−(k+2κ)(x1−x2)m(\ddot x_1-\ddot x_2)=-(k+2\kappa)(x_1-x_2) なので ω2=(k+2κ)/m\omega_2=\sqrt{(k+2\kappa)/m}(モード (1,−1)(1,-1))です。定理 4.1 の形では、M=mEM=mE, K=(k+κ−κ−κk+κ)K=\begin{pmatrix}k+\kappa&-\kappa\\-\kappa&k+\kappa\end{pmatrix} の固有値と一致します。

演習 7.4難

水面の重力・表面張力波の分散関係は ω2=gq+σρq3\omega^2=gq+\dfrac{\sigma}{\rho}q^3 です(σ\sigma は表面張力、ρ\rho は密度、深い水の場合)。位相速度 vpv_p が最小になる波数と、そのときの vpv_p を求め、そこで群速度が位相速度に等しいことを示してください。水では σ=0.072 N/m\sigma=0.072\ \mathrm{N/m}, ρ=1000 kg/m3\rho=1000\ \mathrm{kg/m^3}, g=9.8 m/s2g=9.8\ \mathrm{m/s^2} です。

解答

vp2=ω2/q2=g/q+(σ/ρ)qv_p^2=\omega^2/q^2=g/q+(\sigma/\rho)q。qq で微分して 00 とおくと −g/q2+σ/ρ=0-g/q^2+\sigma/\rho=0、q∗=ρg/σ=9800/0.072=369 m−1q_*=\sqrt{\rho g/\sigma}=\sqrt{9800/0.072}=369\ \mathrm{m^{-1}}(波長 2π/q∗=1.7 cm2\pi/q_*=1.7\ \mathrm{cm})。そこで vp2=2gσ/ρv_p^2=2\sqrt{g\sigma/\rho}、vp=(4gσ/ρ)1/4=(2.82×10−3)1/4=0.23 m/sv_p=(4g\sigma/\rho)^{1/4}=(2.82\times10^{-3})^{1/4}=0.23\ \mathrm{m/s} です。群速度は vg=vp+q dvp/dqv_g=v_p+q\,dv_p/dq で、q∗q_* では dvp/dq=0dv_p/dq=0 なので vg=vpv_g=v_p です。水面を静かに引っかいたときに、この波長より長い波は重力で、短い波は表面張力で伝わります。

  • L. D. ランダウ, E. M. リフシッツ『力学』(広重徹・水戸巌訳)東京図書 — 第 5 章(微小振動)。
  • H. J. Pain, The Physics of Vibrations and Waves, 6th ed., Wiley, 2005.
  • H. Georgi, The Physics of Waves, Prentice Hall, 1993.
  • G. B. Whitham, Linear and Nonlinear Waves, Wiley, 1974 — 群速度と波束の章。

このテーマの 100 本ノック(100 問)

執筆: Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 2 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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