量子力学では、位置や運動量は観測量(エルミート作用素)ですが、時間は方程式に外から入る目盛りとして扱われます。そのため「時間を測る」という話は怪しく聞こえるかもしれません。しかし実験室では、粒子が標的に捕まっていた時間、励起状態が崩壊するまでの時間、波束の到着の遅れが、ナノ秒やそれより短い精度で実際に測られています。この記事では、それらの量がどう定義され、どの定理で計算でき、どの実験で確かめられたのかを順に説明します。
時間の作用素を素朴に作ろうとすると、エネルギーが下に有界なことと衝突します(Pauli の定理)。それでも「時刻の差」や「時刻の分布」は、エネルギー表示の位相と振幅から矛盾なく定義できます。
エネルギーで重ね合わせた信号の 時刻の重心 は、エネルギー表示の振幅の位相の微分の平均で表せます(補題 2.2 )。これを散乱に使うと、出ていく波束の到着時刻の遅れが、S 行列 S = e 2 i δ S=e^{2i\delta} S = e 2 i δ から作る τ ( E ) = 2 ℏ δ ′ ( E ) \tau(E)=2\hbar\,\delta'(E) τ ( E ) = 2ℏ δ ′ ( E ) の平均に厳密に等しくなります(Wigner–Eisenbud の時間遅延、定理 3.3 )。
Breit–Wigner 共鳴の近くでは τ \tau τ は Lorentz 型で、ピークは 4 ℏ / Γ 4\hbar/\Gamma 4ℏ/Γ 、共鳴の分布で平均すると 2 ℏ / Γ 2\hbar/\Gamma 2ℏ/Γ です。散乱振幅の位相は δ \delta δ なので、散乱された波だけの遅れはその半分で、平均は寿命 ℏ / Γ \hbar/\Gamma ℏ/Γ に一致します(命題 4.1 ・命題 4.2 )。
Lorentz 型のエネルギー分布からは厳密な指数則 P ( t ) = e − Γ t / ℏ P(t)=e^{-\Gamma t/\hbar} P ( t ) = e − Γ t /ℏ が出ます(命題 4.3 )。しかし有限のエネルギー分散をもつ状態は短時間では時間の 2 乗でしか減らず(系 5.1 )、しきい値でエネルギーの密度が λ n \lambda^n λ n のように立ち上がるなら長時間ではべき則 t − 2 ( n + 1 ) t^{-2(n+1)} t − 2 ( n + 1 ) が残ります(定理 5.2 )。
単一の Rb 原子による光散乱で、遅延 42 ± 2 42\pm2 42 ± 2 ns が測られています(理論の上限 2 / Γ = 52 2/\Gamma=52 2/Γ = 52 ns)。パルスの帯域で平均した公式と光 Bloch 方程式の数値は、その差の 6 割ほどを説明します。寿命と自然幅の一致、長時間のべき則、短時間の非指数崩壊も観測されています。
位置 x x x と運動量 p p p は、どちらも観測量を表す自己共役作用素で、正準交換関係 [ x , p ] = i ℏ [x,p]=i\hbar [ x , p ] = i ℏ を満たします。同じ考えで時間とエネルギーの組 ( T , H ) (T,H) ( T , H ) を作り、「時刻を測る作用素 T T T 」を考えたくなります。時間を t t t だけ進めると時計の読みが t t t だけ進む、という性質を式にすると e i t H / ℏ T e − i t H / ℏ = T + t e^{itH/\hbar}Te^{-itH/\hbar}=T+t e i t H /ℏ T e − i t H /ℏ = T + t です。
ところが Pauli は 1933 年の量子力学の解説(Handbuch der Physik の項目)で、この素朴な考えがうまくいかないことを指摘しました。上の関係を満たす自己共役な T T T があると、H H H のスペクトルは実数全体にならなければなりません。現実のハミルトニアンは下に有界(基底エネルギーがある)なので、そのような T T T はありません。正確な形は 定理 4.1[時間作用素と Weyl 関係] で証明されています。
それでも実験では時間に関する量が測られています。代表的なものを並べます。
量 何を測るか 理論の入口 遅延時間 散乱された波束が、標的が無い場合よりどれだけ遅れて届くか 散乱の位相のエネルギー微分(§3) 寿命 励起状態が崩壊するまでの平均時間 共鳴の幅 Γ \Gamma Γ と ℏ / Γ \hbar/\Gamma ℏ/Γ (§4) 崩壊の時間分布 崩壊が起きた時刻の分布そのもの 生存確率 P ( t ) P(t) P ( t ) (§5) 到着時刻・滞在時間 粒子が検出器に届く時刻、領域に留まる時間 本記事では扱わない
これらはどれも「時刻を測る自己共役作用素の固有値」ではありません。到着の遅れは、エネルギーごとの位相のずれを重ね合わせたときに現れる量で、寿命は時間発展の振幅の減り方から読む量です。この記事の主題は、こうした量が量子力学の内部で正確に定義され、理論と実験が数値で比べられることを示すことです。
歴史を簡単にたどります。Gamow(1928)は α \alpha α 崩壊を、原子核のポテンシャルの壁を通り抜けるトンネル効果として説明し、準安定な状態の寿命を複素数のエネルギーで表しました。Weisskopf と Wigner(1930)は、原子の励起状態の自然放出で、指数則と自然幅(Lorentz 型のスペクトル線)が対になって出ることを示しました。Breit と Wigner(1936)は、中性子の捕獲の共鳴を、幅 Γ \Gamma Γ の Lorentz 型の断面積で表しました。Eisenbud は 1948 年の学位論文で、散乱の位相のエネルギー微分が波束の遅れを与えることに気づき、Wigner(1955)がこれを因果律と結びつけて論じました。Smith(1960)は多チャネルの散乱に一般化した寿命行列 Q = − i ℏ S ∗ d S / d E Q=-i\hbar\,S^{*}\,dS/dE Q = − i ℏ S ∗ d S / d E を導入し、その固有値を共鳴状態の寿命と読みました。
この記事で使う事前知識
位相のずれと S 行列要素 : 中心力ポテンシャルの部分波は、遠方で自由な波から位相 δ l \delta_l δ l だけずれます。S l = e 2 i δ l S_l=e^{2i\delta_l} S l = e 2 i δ l です。→ 位相のずれ 、S 行列要素
Breit–Wigner の公式 : 共鳴の近くの S 行列と断面積の形。→ 定理 6.2[散乱理論]
Fourier 変換と Plancherel の定理 : b ^ ( ξ ) = ∫ b ( x ) e − i x ξ d x \hat b(\xi)=\int b(x)e^{-ix\xi}dx b ^ ( ξ ) = ∫ b ( x ) e − i x ξ d x と ∥ b ^ ∥ 2 2 = 2 π ∥ b ∥ 2 2 \|\hat b\|_2^2=2\pi\|b\|_2^2 ∥ b ^ ∥ 2 2 = 2 π ∥ b ∥ 2 2 。→ Fourier 変換 、定理 4.1[ℝⁿ 上のフーリエ変換]
生存振幅 : 時刻 t t t に状態がもとの状態に見いだされる振幅 ⟨ φ , e − i t H / ℏ φ ⟩ \langle\varphi,e^{-itH/\hbar}\varphi\rangle ⟨ φ , e − i t H /ℏ φ ⟩ 。→ 生存振幅と生存確率
ある場所に置いた検出器で、時刻 t t t に観測される波の振幅を考えます。エネルギー E E E の定常波は時間について e − i E t / ℏ e^{-iEt/\hbar} e − i E t /ℏ で振動するので、いろいろなエネルギーの成分を重ね合わせた信号は
f ( t ) = ∫ R b ( E ) e − i E t / ℏ d E f(t)=\int_{\mathbb{R}}b(E)\,e^{-iEt/\hbar}\,dE f ( t ) = ∫ R b ( E ) e − i E t /ℏ d E
の形に書けます。b ( E ) b(E) b ( E ) はその場所での各エネルギー成分の振幅(エネルギー表示の振幅)です。∣ f ( t ) ∣ 2 |f(t)|^2 ∣ f ( t ) ∣ 2 は時刻 t t t にその場所で波が見いだされる強さなので、その重心を「信号の時刻」と呼ぶのが自然です。
定義 2.1 (信号の時刻の重心 ) ↗
b ∈ C c 1 ( R ) b\in C^1_c(\mathbb{R}) b ∈ C c 1 ( R ) (連続微分可能で台がコンパクトな複素数値関数)で b ≠ 0 b\ne0 b = 0 とする。f ( t ) = ∫ R b ( E ) e − i E t / ℏ d E f(t)=\int_{\mathbb{R}}b(E)e^{-iEt/\hbar}dE f ( t ) = ∫ R b ( E ) e − i E t /ℏ d E を b b b の 信号 、
⟨ t ⟩ [ b ] = ∫ R t ∣ f ( t ) ∣ 2 d t ∫ R ∣ f ( t ) ∣ 2 d t \langle t\rangle[b]=\frac{\int_{\mathbb{R}}t\,|f(t)|^2\,dt}{\int_{\mathbb{R}}|f(t)|^2\,dt} ⟨ t ⟩ [ b ] = ∫ R ∣ f ( t ) ∣ 2 d t ∫ R t ∣ f ( t ) ∣ 2 d t を信号の 時刻の重心 と呼ぶ(分子・分母が有限であることは 補題 2.2 で示す)。
時刻の重心は、エネルギー表示の振幅だけから計算できます。これがこの記事のすべての計算の出発点です。
補題 2.2 (時刻の重心のエネルギー表示 ) ✓
b ∈ C c 1 ( R ) b\in C^1_c(\mathbb{R}) b ∈ C c 1 ( R ) 、b ≠ 0 b\ne0 b = 0 とし、f f f をその信号とする。このとき f f f と t f ( t ) tf(t) t f ( t ) は L 2 ( R ) L^2(\mathbb{R}) L 2 ( R ) に属し、
∫ R ∣ f ( t ) ∣ 2 d t = 2 π ℏ ∫ R ∣ b ( E ) ∣ 2 d E , ∫ R t ∣ f ( t ) ∣ 2 d t = 2 π ℏ 2 ∫ R I m ( b ( E ) ‾ b ′ ( E ) ) d E . \int_{\mathbb{R}}|f(t)|^2dt=2\pi\hbar\int_{\mathbb{R}}|b(E)|^2dE,\qquad \int_{\mathbb{R}}t\,|f(t)|^2dt=2\pi\hbar^2\int_{\mathbb{R}}\mathrm{Im}\bigl(\overline{b(E)}\,b'(E)\bigr)\,dE . ∫ R ∣ f ( t ) ∣ 2 d t = 2 π ℏ ∫ R ∣ b ( E ) ∣ 2 d E , ∫ R t ∣ f ( t ) ∣ 2 d t = 2 π ℏ 2 ∫ R Im ( b ( E ) b ′ ( E ) ) d E . したがって
⟨ t ⟩ [ b ] = ℏ ∫ I m ( b ˉ b ′ ) d E ∫ ∣ b ∣ 2 d E . \langle t\rangle[b]=\hbar\,\frac{\int\mathrm{Im}(\bar b\,b')\,dE}{\int|b|^2\,dE}. ⟨ t ⟩ [ b ] = ℏ ∫ ∣ b ∣ 2 d E ∫ Im ( b ˉ b ′ ) d E . とくに b = ∣ b ∣ e i χ b=|b|e^{i\chi} b = ∣ b ∣ e i χ と C 1 C^1 C 1 級の位相 χ \chi χ で書けるところでは I m ( b ˉ b ′ ) = ∣ b ∣ 2 χ ′ \mathrm{Im}(\bar b\,b')=|b|^2\chi' Im ( b ˉ b ′ ) = ∣ b ∣ 2 χ ′ なので、⟨ t ⟩ [ b ] \langle t\rangle[b] ⟨ t ⟩ [ b ] は位相の微分 ℏ χ ′ \hbar\chi' ℏ χ ′ を重み ∣ b ∣ 2 |b|^2 ∣ b ∣ 2 で平均したものである。
証明(補題 2.2) Fourier 変換 の記法 b ^ ( ξ ) = ∫ b ( E ) e − i E ξ d E \hat b(\xi)=\int b(E)e^{-iE\xi}dE b ^ ( ξ ) = ∫ b ( E ) e − i E ξ d E を使うと f ( t ) = b ^ ( t / ℏ ) f(t)=\hat b(t/\hbar) f ( t ) = b ^ ( t /ℏ ) です。b b b は有界で台がコンパクトなので b ∈ L 1 ∩ L 2 b\in L^1\cap L^2 b ∈ L 1 ∩ L 2 で、定理 4.1[ℝⁿ 上のフーリエ変換] の 1 から ∫ ∣ b ^ ( ξ ) ∣ 2 d ξ = 2 π ∫ ∣ b ∣ 2 d E \int|\hat b(\xi)|^2d\xi=2\pi\int|b|^2dE ∫ ∣ b ^ ( ξ ) ∣ 2 d ξ = 2 π ∫ ∣ b ∣ 2 d E です。変数を t = ℏ ξ t=\hbar\xi t = ℏ ξ と変えると ∫ ∣ f ( t ) ∣ 2 d t = ℏ ∫ ∣ b ^ ( ξ ) ∣ 2 d ξ = 2 π ℏ ∫ ∣ b ∣ 2 d E \int|f(t)|^2dt=\hbar\int|\hat b(\xi)|^2d\xi=2\pi\hbar\int|b|^2dE ∫ ∣ f ( t ) ∣ 2 d t = ℏ ∫ ∣ b ^ ( ξ ) ∣ 2 d ξ = 2 π ℏ ∫ ∣ b ∣ 2 d E で、第 1 式が出ます。
内積 ⟨ c , d ⟩ = ∫ c ˉ d \langle c,d\rangle=\int\bar c\,d ⟨ c , d ⟩ = ∫ c ˉ d について、L 1 ∩ L 2 L^1\cap L^2 L 1 ∩ L 2 の関数 c , d c,d c , d で ⟨ c ^ , d ^ ⟩ = 2 π ⟨ c , d ⟩ \langle\hat c,\hat d\rangle=2\pi\langle c,d\rangle ⟨ c ^ , d ^ ⟩ = 2 π ⟨ c , d ⟩ が成り立ちます。実際、ノルムの等式を d + i k c d+i^{k}c d + i k c (k = 0 , 1 , 2 , 3 k=0,1,2,3 k = 0 , 1 , 2 , 3 )に使い、偏極恒等式 4 ⟨ c , d ⟩ = ∑ k = 0 3 i k ∥ d + i k c ∥ 2 4\langle c,d\rangle=\sum_{k=0}^{3}i^{k}\|d+i^{k}c\|^2 4 ⟨ c , d ⟩ = ∑ k = 0 3 i k ∥ d + i k c ∥ 2 に代入すればよいです。
次に b ′ b' b ′ も連続で台がコンパクトなので b ′ ∈ L 1 ∩ L 2 b'\in L^1\cap L^2 b ′ ∈ L 1 ∩ L 2 です。部分積分(境界項は台がコンパクトなので消える)から
b ′ ^ ( ξ ) = ∫ b ′ ( E ) e − i E ξ d E = i ξ ∫ b ( E ) e − i E ξ d E = i ξ b ^ ( ξ ) , \widehat{b'}(\xi)=\int b'(E)e^{-iE\xi}dE=i\xi\int b(E)e^{-iE\xi}dE=i\xi\,\hat b(\xi), b ′ ( ξ ) = ∫ b ′ ( E ) e − i E ξ d E = i ξ ∫ b ( E ) e − i E ξ d E = i ξ b ^ ( ξ ) , すなわち ξ b ^ ( ξ ) = ( − i b ′ ) ^ ( ξ ) \xi\hat b(\xi)=\widehat{(-ib')}(\xi) ξ b ^ ( ξ ) = ( − i b ′ ) ( ξ ) です。よって t f ( t ) = ℏ ξ b ^ ( ξ ) ∣ ξ = t / ℏ = ℏ ( − i b ′ ) ^ ( t / ℏ ) tf(t)=\hbar\,\xi\hat b(\xi)|_{\xi=t/\hbar}=\hbar\,\widehat{(-ib')}(t/\hbar) t f ( t ) = ℏ ξ b ^ ( ξ ) ∣ ξ = t /ℏ = ℏ ( − i b ′ ) ( t /ℏ ) も L 2 L^2 L 2 に属し、t ∣ f ( t ) ∣ 2 = f ( t ) ‾ ⋅ t f ( t ) t|f(t)|^2=\overline{f(t)}\cdot tf(t) t ∣ f ( t ) ∣ 2 = f ( t ) ⋅ t f ( t ) は 2 つの L 2 L^2 L 2 関数の積として可積分です。同じ変数変換と上の内積の等式から
∫ t ∣ f ( t ) ∣ 2 d t = ℏ ∫ b ^ ( ξ ) ‾ ℏ ( − i b ′ ) ^ ( ξ ) d ξ = 2 π ℏ 2 ∫ b ˉ ( − i b ′ ) d E = − 2 π i ℏ 2 ∫ b ˉ b ′ d E . \int t|f(t)|^2dt=\hbar\int\overline{\hat b(\xi)}\;\hbar\,\widehat{(-ib')}(\xi)\,d\xi=2\pi\hbar^2\int\bar b\,(-ib')\,dE=-2\pi i\hbar^2\int\bar b\,b'\,dE . ∫ t ∣ f ( t ) ∣ 2 d t = ℏ ∫ b ^ ( ξ ) ℏ ( − i b ′ ) ( ξ ) d ξ = 2 π ℏ 2 ∫ b ˉ ( − i b ′ ) d E = − 2 π i ℏ 2 ∫ b ˉ b ′ d E . 最後に ∫ b ˉ b ′ d E \int\bar b\,b'\,dE ∫ b ˉ b ′ d E の実部は 1 2 ∫ ( ∣ b ∣ 2 ) ′ d E = 0 \frac12\int(|b|^2)'\,dE=0 2 1 ∫ ( ∣ b ∣ 2 ) ′ d E = 0 (台がコンパクト)なので、∫ b ˉ b ′ d E = i ∫ I m ( b ˉ b ′ ) d E \int\bar b\,b'\,dE=i\int\mathrm{Im}(\bar b\,b')\,dE ∫ b ˉ b ′ d E = i ∫ Im ( b ˉ b ′ ) d E で、− 2 π i ℏ 2 ⋅ i ∫ I m ( b ˉ b ′ ) = 2 π ℏ 2 ∫ I m ( b ˉ b ′ ) -2\pi i\hbar^2\cdot i\int\mathrm{Im}(\bar b b')=2\pi\hbar^2\int\mathrm{Im}(\bar b\,b') − 2 π i ℏ 2 ⋅ i ∫ Im ( b ˉ b ′ ) = 2 π ℏ 2 ∫ Im ( b ˉ b ′ ) です。これが第 2 式で、比をとると重心の式になります。b = ∣ b ∣ e i χ b=|b|e^{i\chi} b = ∣ b ∣ e i χ のところでは b ˉ b ′ = ∣ b ∣ ∣ b ∣ ′ + i ∣ b ∣ 2 χ ′ \bar b\,b'=|b|\,|b|'+i|b|^2\chi' b ˉ b ′ = ∣ b ∣ ∣ b ∣ ′ + i ∣ b ∣ 2 χ ′ なので I m ( b ˉ b ′ ) = ∣ b ∣ 2 χ ′ \mathrm{Im}(\bar b\,b')=|b|^2\chi' Im ( b ˉ b ′ ) = ∣ b ∣ 2 χ ′ です。
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この補題の意味を一言で言うと「時刻はエネルギー表示の位相の傾きとして読める」です。たとえば実数値の c c c に位相を掛けた b ( E ) = c ( E ) e i E t 0 / ℏ b(E)=c(E)e^{iEt_0/\hbar} b ( E ) = c ( E ) e i E t 0 /ℏ の信号は f ( t ) = ∫ c ( E ) e − i E ( t − t 0 ) / ℏ d E f(t)=\int c(E)e^{-iE(t-t_0)/\hbar}dE f ( t ) = ∫ c ( E ) e − i E ( t − t 0 ) /ℏ d E で、c c c の信号を時間の向きに t 0 t_0 t 0 だけずらしたものです。補題の式でも χ ′ = t 0 / ℏ \chi'=t_0/\hbar χ ′ = t 0 /ℏ から ⟨ t ⟩ [ b ] = t 0 \langle t\rangle[b]=t_0 ⟨ t ⟩ [ b ] = t 0 となり(演習 8.1 )、両者は一致します。符号に注意してください。信号を e − i E t / ℏ e^{-iEt/\hbar} e − i E t /ℏ で作っているので、位相が E E E とともに 増える ほど信号は 遅れ ます。
エネルギー表示の振幅に、別の関数 F ( E ) F(E) F ( E ) を掛けて得られる信号を考えます。F F F は、標的での散乱や原子の応答のように、各エネルギー成分にかかる「伝達の係数」です。
命題 2.3 (伝達係数による重心のずれ ) ✓
a ∈ C c 1 ( R ) a\in C^1_c(\mathbb{R}) a ∈ C c 1 ( R ) 、a ≠ 0 a\ne0 a = 0 とし、F F F を a a a の台を含む開集合上の C 1 C^1 C 1 級関数で、a a a の台の上で F ≠ 0 F\ne0 F = 0 とする。φ ′ ( E ) = I m ( F ′ ( E ) / F ( E ) ) \varphi'(E)=\mathrm{Im}\bigl(F'(E)/F(E)\bigr) φ ′ ( E ) = Im ( F ′ ( E ) / F ( E ) ) と置く(F = ∣ F ∣ e i φ F=|F|e^{i\varphi} F = ∣ F ∣ e i φ と書けるところでは位相 φ \varphi φ の微分)。
a a a が実数値関数に定数の位相を掛けたもの(I m ( a ˉ a ′ ) = 0 \mathrm{Im}(\bar a\,a')=0 Im ( a ˉ a ′ ) = 0 )なら、⟨ t ⟩ [ a ] = 0 \langle t\rangle[a]=0 ⟨ t ⟩ [ a ] = 0 で、
⟨ t ⟩ [ a F ] = ℏ ∫ ∣ a ∣ 2 ∣ F ∣ 2 φ ′ d E ∫ ∣ a ∣ 2 ∣ F ∣ 2 d E . \langle t\rangle[aF]=\hbar\,\frac{\int|a|^2|F|^2\,\varphi'\,dE}{\int|a|^2|F|^2\,dE}. ⟨ t ⟩ [ a F ] = ℏ ∫ ∣ a ∣ 2 ∣ F ∣ 2 d E ∫ ∣ a ∣ 2 ∣ F ∣ 2 φ ′ d E .
∣ F ∣ = 1 |F|=1 ∣ F ∣ = 1 が a a a の台の上で成り立つなら、一般の a a a について
⟨ t ⟩ [ a F ] − ⟨ t ⟩ [ a ] = ℏ ∫ ∣ a ∣ 2 φ ′ d E ∫ ∣ a ∣ 2 d E . \langle t\rangle[aF]-\langle t\rangle[a]=\hbar\,\frac{\int|a|^2\,\varphi'\,dE}{\int|a|^2\,dE}. ⟨ t ⟩ [ a F ] − ⟨ t ⟩ [ a ] = ℏ ∫ ∣ a ∣ 2 d E ∫ ∣ a ∣ 2 φ ′ d E .
証明(命題 2.3) a F ∈ C c 1 ( R ) aF\in C^1_c(\mathbb{R}) a F ∈ C c 1 ( R ) で、a F ‾ ( a F ) ′ = ∣ F ∣ 2 a ˉ a ′ + ∣ a ∣ 2 F ˉ F ′ \overline{aF}\,(aF)'=|F|^2\,\bar a\,a'+|a|^2\,\bar F\,F' a F ( a F ) ′ = ∣ F ∣ 2 a ˉ a ′ + ∣ a ∣ 2 F ˉ F ′ です。F ˉ F ′ = ∣ F ∣ 2 ( F ′ / F ) \bar F F'=|F|^2\,(F'/F) F ˉ F ′ = ∣ F ∣ 2 ( F ′ / F ) なので、虚部をとって
I m ( a F ‾ ( a F ) ′ ) = ∣ F ∣ 2 I m ( a ˉ a ′ ) + ∣ a ∣ 2 ∣ F ∣ 2 φ ′ . \mathrm{Im}\bigl(\overline{aF}(aF)'\bigr)=|F|^2\,\mathrm{Im}(\bar a\,a')+|a|^2|F|^2\,\varphi' . Im ( a F ( a F ) ′ ) = ∣ F ∣ 2 Im ( a ˉ a ′ ) + ∣ a ∣ 2 ∣ F ∣ 2 φ ′ . 1 では第 1 項が消えるので、補題 2.2 から主張の式が出ます。F ≡ 1 F\equiv1 F ≡ 1 とおけば ⟨ t ⟩ [ a ] = 0 \langle t\rangle[a]=0 ⟨ t ⟩ [ a ] = 0 です。2 では ∣ a F ∣ = ∣ a ∣ |aF|=|a| ∣ a F ∣ = ∣ a ∣ で、第 1 項は I m ( a ˉ a ′ ) \mathrm{Im}(\bar a\,a') Im ( a ˉ a ′ ) そのものなので、補題 2.2 を a F aF a F と a a a に使って差をとれば主張の式になります。
∎
S 行列要素 S ( E ) = e 2 i δ ( E ) S(E)=e^{2i\delta(E)} S ( E ) = e 2 i δ ( E ) は絶対値が 1 なので、S ‾ S ′ \overline{S}S' S S ′ は純虚数です(∣ S ∣ 2 = 1 |S|^2=1 ∣ S ∣ 2 = 1 を微分すると 2 R e ( S ˉ S ′ ) = 0 2\,\mathrm{Re}(\bar S S')=0 2 Re ( S ˉ S ′ ) = 0 )。
定義 3.1 (Wigner–Eisenbud の時間遅延 ) ↗
開区間 J J J 上の C 1 C^1 C 1 級関数 S : J → C S:J\to\mathbb{C} S : J → C で ∣ S ∣ = 1 |S|=1 ∣ S ∣ = 1 のものに対し、
τ ( E ) = − i ℏ S ( E ) ‾ S ′ ( E ) ( E ∈ J ) \tau(E)=-i\hbar\,\overline{S(E)}\,S'(E)\qquad(E\in J) τ ( E ) = − i ℏ S ( E ) S ′ ( E ) ( E ∈ J ) を Wigner–Eisenbud の時間遅延 (Wigner 遅延)と呼ぶ。τ \tau τ は実数値で、S = e 2 i δ S=e^{2i\delta} S = e 2 i δ と C 1 C^1 C 1 級の位相 δ \delta δ で書けるなら τ ( E ) = 2 ℏ δ ′ ( E ) \tau(E)=2\hbar\,\delta'(E) τ ( E ) = 2ℏ δ ′ ( E ) である。
最後の等式は S ˉ S ′ = e − 2 i δ ⋅ 2 i δ ′ e 2 i δ = 2 i δ ′ \bar S S'=e^{-2i\delta}\cdot2i\delta'e^{2i\delta}=2i\delta' S ˉ S ′ = e − 2 i δ ⋅ 2 i δ ′ e 2 i δ = 2 i δ ′ から出ます。τ \tau τ の定義に位相 δ \delta δ を使わないのは、δ \delta δ が π \pi π の整数倍だけの不定性をもつのに対して、S ˉ S ′ \bar S S' S ˉ S ′ はその不定性に左右されないからです。
主定理の状況を設定します。s s s 波(角運動量 0 0 0 )の動径方程式で、ポテンシャルが有限の範囲 r ≤ R r\le R r ≤ R にだけあるとします。動径関数 u ( r ) u(r) u ( r ) (波動関数は u ( r ) / r u(r)/r u ( r ) / r )は、r ≥ R r\ge R r ≥ R では自由な方程式 − u ′ ′ = k 2 u -u''=k^2u − u ′′ = k 2 u を満たすので、入ってくる球面波 e − i k r e^{-ikr} e − ik r と出ていく球面波 e i k r e^{ikr} e ik r の組み合わせです。
定義 3.2 (仮定 (W) ) ↗
m > 0 m>0 m > 0 とし、E = ℏ 2 k 2 / 2 m E=\hbar^2k^2/2m E = ℏ 2 k 2 /2 m (k > 0 k>0 k > 0 )で E E E と k k k を対応させる。U U U を r > R r\gt R r > R で 0 0 0 となる動径ポテンシャルとし、開区間 J ⊂ ( 0 , ∞ ) J\subset(0,\infty) J ⊂ ( 0 , ∞ ) と C 1 C^1 C 1 級関数 S : J → C S:J\to\mathbb{C} S : J → C 、∣ S ∣ = 1 |S|=1 ∣ S ∣ = 1 があって、各 E ∈ J E\in J E ∈ J について動径方程式 − u ′ ′ + U ( r ) u = k 2 u -u''+U(r)u=k^2u − u ′′ + U ( r ) u = k 2 u の原点で正則な解 u E u_E u E が
u E ( r ) = e − i k r − S ( E ) e i k r ( r ≥ R ) u_E(r)=e^{-ik r}-S(E)\,e^{ik r}\qquad(r\ge R) u E ( r ) = e − ik r − S ( E ) e ik r ( r ≥ R ) と書けるとする。これを 仮定 (W) と呼ぶ。
仮定 (W) の S S S は、s s s 波の S 行列要素 S 0 = e 2 i δ 0 S_0=e^{2i\delta_0} S 0 = e 2 i δ 0 です。ポテンシャルが無ければ u E = e − i k r − e i k r = − 2 i sin k r u_E=e^{-ikr}-e^{ikr}=-2i\sin kr u E = e − ik r − e ik r = − 2 i sin k r で S = 1 S=1 S = 1 です。
a ∈ C c 1 ( J ) a\in C^1_c(J) a ∈ C c 1 ( J ) をとり、定常解を重ね合わせて
ψ ( r , t ) = ∫ J a ( E ) u E ( r ) e − i E t / ℏ d E \psi(r,t)=\int_J a(E)\,u_E(r)\,e^{-iEt/\hbar}\,dE ψ ( r , t ) = ∫ J a ( E ) u E ( r ) e − i E t /ℏ d E
とします。各成分は時間に依存する動径方程式を満たし、a a a の台がコンパクトなので積分の下で微分できて、ψ \psi ψ も同じ方程式を満たします。遠くの点 r ≥ R r\ge R r ≥ R では、ψ \psi ψ は入ってくる部分と出ていく部分に分かれます。
ψ i n ( r , t ) = ∫ a ( E ) e − i k r e − i E t / ℏ d E , ψ o u t ( r , t ) = − ∫ a ( E ) S ( E ) e i k r e − i E t / ℏ d E . \psi_{\mathrm{in}}(r,t)=\int a(E)\,e^{-ik r}e^{-iEt/\hbar}dE,\qquad
\psi_{\mathrm{out}}(r,t)=-\int a(E)\,S(E)\,e^{ik r}e^{-iEt/\hbar}dE . ψ in ( r , t ) = ∫ a ( E ) e − ik r e − i E t /ℏ d E , ψ out ( r , t ) = − ∫ a ( E ) S ( E ) e ik r e − i E t /ℏ d E .
出ていく部分を、ポテンシャルが無いとき(S ≡ 1 S\equiv1 S ≡ 1 )の出ていく部分 ψ o u t 0 \psi^{0}_{\mathrm{out}} ψ out 0 と比べます。
定理 3.3 (Wigner–Eisenbud の時間遅延の公式 ) ✓
仮定 (W) のもとで a ∈ C c 1 ( J ) a\in C^1_c(J) a ∈ C c 1 ( J ) 、a ≠ 0 a\ne0 a = 0 とし、r ≥ R r\ge R r ≥ R を固定する。ψ o u t ( r , ⋅ ) \psi_{\mathrm{out}}(r,\cdot) ψ out ( r , ⋅ ) と ψ o u t 0 ( r , ⋅ ) \psi^{0}_{\mathrm{out}}(r,\cdot) ψ out 0 ( r , ⋅ ) のエネルギー表示の振幅を b ( E ) = − a ( E ) S ( E ) e i k ( E ) r b(E)=-a(E)S(E)e^{ik(E)r} b ( E ) = − a ( E ) S ( E ) e ik ( E ) r 、b 0 ( E ) = − a ( E ) e i k ( E ) r b_0(E)=-a(E)e^{ik(E)r} b 0 ( E ) = − a ( E ) e ik ( E ) r とする。このとき
⟨ t ⟩ [ b ] − ⟨ t ⟩ [ b 0 ] = ∫ J ∣ a ( E ) ∣ 2 τ ( E ) d E ∫ J ∣ a ( E ) ∣ 2 d E \langle t\rangle[b]-\langle t\rangle[b_0]=\frac{\int_J|a(E)|^2\,\tau(E)\,dE}{\int_J|a(E)|^2\,dE} ⟨ t ⟩ [ b ] − ⟨ t ⟩ [ b 0 ] = ∫ J ∣ a ( E ) ∣ 2 d E ∫ J ∣ a ( E ) ∣ 2 τ ( E ) d E が成り立つ。すなわち、出ていく波束が点 r r r を通る時刻の重心は、ポテンシャルが無いときより、Wigner 遅延 τ = 2 ℏ δ ′ \tau=2\hbar\delta' τ = 2ℏ δ ′ を ∣ a ∣ 2 |a|^2 ∣ a ∣ 2 で平均した分だけ遅れる。この差は r ≥ R r\ge R r ≥ R によらない。
証明(定理 3.3) k ( E ) = 2 m E / ℏ k(E)=\sqrt{2mE}/\hbar k ( E ) = 2 m E /ℏ は J ⊂ ( 0 , ∞ ) J\subset(0,\infty) J ⊂ ( 0 , ∞ ) 上で C 1 C^1 C 1 級なので、b 0 = − a e i k r b_0=-ae^{ikr} b 0 = − a e ik r は C c 1 ( J ) C^1_c(J) C c 1 ( J ) に属します。b = b 0 S b=b_0S b = b 0 S で、∣ S ∣ = 1 |S|=1 ∣ S ∣ = 1 です。命題 2.3 の 2 を a a a の代わりに b 0 b_0 b 0 、F = S F=S F = S として使うと、∣ b 0 ∣ = ∣ a ∣ |b_0|=|a| ∣ b 0 ∣ = ∣ a ∣ なので
⟨ t ⟩ [ b ] − ⟨ t ⟩ [ b 0 ] = ℏ ∫ ∣ a ∣ 2 I m ( S ′ / S ) d E ∫ ∣ a ∣ 2 d E \langle t\rangle[b]-\langle t\rangle[b_0]=\hbar\,\frac{\int|a|^2\,\mathrm{Im}(S'/S)\,dE}{\int|a|^2\,dE} ⟨ t ⟩ [ b ] − ⟨ t ⟩ [ b 0 ] = ℏ ∫ ∣ a ∣ 2 d E ∫ ∣ a ∣ 2 Im ( S ′ / S ) d E です。∣ S ∣ = 1 |S|=1 ∣ S ∣ = 1 から 1 / S = S ˉ 1/S=\bar S 1/ S = S ˉ で、S ˉ S ′ \bar S S' S ˉ S ′ は純虚数なので ℏ I m ( S ′ / S ) = ℏ I m ( S ˉ S ′ ) = − i ℏ S ˉ S ′ = τ \hbar\,\mathrm{Im}(S'/S)=\hbar\,\mathrm{Im}(\bar S S')=-i\hbar\,\bar S S'=\tau ℏ Im ( S ′ / S ) = ℏ Im ( S ˉ S ′ ) = − i ℏ S ˉ S ′ = τ です(定義 3.1 )。右辺は r r r を含まないので、差は r r r によりません。
∎
この定理は近似を含みません。波束の幅についても、δ \delta δ の変化の速さについても、何も仮定していません。代わりに、遅れは τ ( E ) \tau(E) τ ( E ) そのものではなく、波束のエネルギー分布 ∣ a ∣ 2 |a|^2 ∣ a ∣ 2 での平均として現れます。エネルギーの幅が狭い波束では、平均が中心のエネルギーでの値に近づきます。
系 3.4 (狭帯域の極限 ) ✓
J J J を開区間、F F F を J J J 上の C 1 C^1 C 1 級関数、E 0 ∈ J E_0\in J E 0 ∈ J で F ( E 0 ) ≠ 0 F(E_0)\ne0 F ( E 0 ) = 0 とし、φ ′ = I m ( F ′ / F ) \varphi'=\mathrm{Im}(F'/F) φ ′ = Im ( F ′ / F ) とする。実数値の χ ∈ C c 1 ( R ) \chi\in C^1_c(\mathbb{R}) χ ∈ C c 1 ( R ) 、χ ≠ 0 \chi\ne0 χ = 0 をとり、a ε ( E ) = χ ( ( E − E 0 ) / ε ) a_\varepsilon(E)=\chi\bigl((E-E_0)/\varepsilon\bigr) a ε ( E ) = χ ( ( E − E 0 ) / ε ) と置く。このとき
lim ε → + 0 ⟨ t ⟩ [ a ε F ] = ℏ φ ′ ( E 0 ) . \lim_{\varepsilon\to+0}\langle t\rangle[a_\varepsilon F]=\hbar\,\varphi'(E_0). ε → + 0 lim ⟨ t ⟩ [ a ε F ] = ℏ φ ′ ( E 0 ) . とくに仮定 (W) のもとで χ \chi χ を実数値にとると、定理 3.3 の遅れは ε → + 0 \varepsilon\to+0 ε → + 0 で τ ( E 0 ) = 2 ℏ δ ′ ( E 0 ) \tau(E_0)=2\hbar\delta'(E_0) τ ( E 0 ) = 2ℏ δ ′ ( E 0 ) に収束する。
証明(系 3.4) χ \chi χ の台が [ − L , L ] [-L,L] [ − L , L ] に含まれるとします。F F F は連続で F ( E 0 ) ≠ 0 F(E_0)\ne0 F ( E 0 ) = 0 なので、ε \varepsilon ε が十分小さければ [ E 0 − ε L , E 0 + ε L ] ⊂ J [E_0-\varepsilon L,E_0+\varepsilon L]\subset J [ E 0 − ε L , E 0 + ε L ] ⊂ J で、そこで F ≠ 0 F\ne0 F = 0 です。a ε a_\varepsilon a ε は実数値なので 命題 2.3 の 1 が使え、E = E 0 + ε u E=E_0+\varepsilon u E = E 0 + ε u と変数を変えると
⟨ t ⟩ [ a ε F ] = ℏ ∫ − L L χ ( u ) 2 ∣ F ( E 0 + ε u ) ∣ 2 φ ′ ( E 0 + ε u ) d u ∫ − L L χ ( u ) 2 ∣ F ( E 0 + ε u ) ∣ 2 d u \langle t\rangle[a_\varepsilon F]=\hbar\,\frac{\int_{-L}^{L}\chi(u)^2\,|F(E_0+\varepsilon u)|^2\,\varphi'(E_0+\varepsilon u)\,du}{\int_{-L}^{L}\chi(u)^2\,|F(E_0+\varepsilon u)|^2\,du} ⟨ t ⟩ [ a ε F ] = ℏ ∫ − L L χ ( u ) 2 ∣ F ( E 0 + ε u ) ∣ 2 d u ∫ − L L χ ( u ) 2 ∣ F ( E 0 + ε u ) ∣ 2 φ ′ ( E 0 + ε u ) d u です。∣ F ∣ 2 |F|^2 ∣ F ∣ 2 と φ ′ = I m ( F ′ / F ) \varphi'=\mathrm{Im}(F'/F) φ ′ = Im ( F ′ / F ) は E 0 E_0 E 0 の近くで連続なので、被積分関数は [ − L , L ] [-L,L] [ − L , L ] 上で一様に χ ( u ) 2 ∣ F ( E 0 ) ∣ 2 φ ′ ( E 0 ) \chi(u)^2|F(E_0)|^2\varphi'(E_0) χ ( u ) 2 ∣ F ( E 0 ) ∣ 2 φ ′ ( E 0 ) と χ ( u ) 2 ∣ F ( E 0 ) ∣ 2 \chi(u)^2|F(E_0)|^2 χ ( u ) 2 ∣ F ( E 0 ) ∣ 2 に収束します。分母の極限 ∣ F ( E 0 ) ∣ 2 ∫ χ 2 |F(E_0)|^2\int\chi^2 ∣ F ( E 0 ) ∣ 2 ∫ χ 2 は正なので、比は ℏ φ ′ ( E 0 ) \hbar\varphi'(E_0) ℏ φ ′ ( E 0 ) に収束します。後半は、b 0 = − a ε e i k r b_0=-a_\varepsilon e^{ikr} b 0 = − a ε e ik r が実数値でないので、定理 3.3 の右辺を直接使います。右辺は ∫ χ ( u ) 2 τ ( E 0 + ε u ) d u / ∫ χ 2 \int\chi(u)^2\tau(E_0+\varepsilon u)du/\int\chi^2 ∫ χ ( u ) 2 τ ( E 0 + ε u ) d u / ∫ χ 2 で、τ \tau τ の連続性から τ ( E 0 ) \tau(E_0) τ ( E 0 ) に収束します。
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例 3.5 (剛体球:遅延は負になりうる )
半径 a a a の剛体球(r < a r\lt a r < a に入れない)の s s s 波では、r ≥ a r\ge a r ≥ a で u = sin k ( r − a ) u=\sin k(r-a) u = sin k ( r − a ) に比例するので δ 0 = − k a \delta_0=-ka δ 0 = − k a です(剛体球の例 )。d k / d E = m / ( ℏ 2 k ) = 1 / ( ℏ v ) dk/dE=m/(\hbar^2k)=1/(\hbar v) d k / d E = m / ( ℏ 2 k ) = 1/ ( ℏ v ) (v = ℏ k / m v=\hbar k/m v = ℏ k / m は速さ)なので
τ ( E ) = 2 ℏ d δ 0 d E = − 2 ℏ a d k d E = − 2 a v . \tau(E)=2\hbar\frac{d\delta_0}{dE}=-2\hbar a\frac{dk}{dE}=-\frac{2a}{v}. τ ( E ) = 2ℏ d E d δ 0 = − 2ℏ a d E d k = − v 2 a . 遅延は負、つまり波束は自由な場合より 2 a / v 2a/v 2 a / v だけ早く戻ってきます。自由な s s s 波は原点まで行って戻りますが、剛体球では半径 a a a の表面で跳ね返るので、往復の距離が 2 a 2a 2 a だけ短くなるからです。
Wigner(1955)は、相互作用が半径 a a a の外で消えているなら、このような「早まり」には限界があり、τ \tau τ はおおよそ − 2 a / v -2a/v − 2 a / v より大きく負にはなれないことを因果律から論じました。出ていく波が入ってくる前に出ることはない、という要請です。逆に正の側には上限がなく、共鳴の近くで τ \tau τ は大きくなります。それを次の節で計算します。
共鳴では粒子がポテンシャルの内側にしばらく捕まってから出てくるので、波束は遅れるはずです。その遅れを、Breit–Wigner 型の S 行列(定理 6.2[散乱理論] 、背景の位相は 0 0 0 とする)について計算します。
命題 4.1 (Breit–Wigner 共鳴の時間遅延 ) ✓
E r ∈ R E_r\in\mathbb{R} E r ∈ R 、Γ > 0 \Gamma\gt0 Γ > 0 とし、
S ( E ) = E − E r − i Γ / 2 E − E r + i Γ / 2 ( E ∈ R ) S(E)=\frac{E-E_r-i\Gamma/2}{E-E_r+i\Gamma/2}\qquad(E\in\mathbb{R}) S ( E ) = E − E r + i Γ/2 E − E r − i Γ/2 ( E ∈ R ) とする。このとき Wigner 遅延は
τ ( E ) = ℏ Γ ( E − E r ) 2 + Γ 2 / 4 \tau(E)=\frac{\hbar\,\Gamma}{(E-E_r)^2+\Gamma^2/4} τ ( E ) = ( E − E r ) 2 + Γ 2 /4 ℏ Γ で、次が成り立つ。
τ \tau τ は E = E r E=E_r E = E r で最大値 4 ℏ / Γ 4\hbar/\Gamma 4ℏ/Γ をとり、∣ E − E r ∣ = Γ / 2 |E-E_r|=\Gamma/2 ∣ E − E r ∣ = Γ/2 でその半分になる。
∫ R τ ( E ) d E = 2 π ℏ \int_{\mathbb{R}}\tau(E)\,dE=2\pi\hbar ∫ R τ ( E ) d E = 2 π ℏ 。
Lorentz 分布 L ( E ) = Γ / 2 π ( E − E r ) 2 + Γ 2 / 4 L(E)=\dfrac{\Gamma/2\pi}{(E-E_r)^2+\Gamma^2/4} L ( E ) = ( E − E r ) 2 + Γ 2 /4 Γ/2 π (∫ L = 1 \int L=1 ∫ L = 1 )で平均すると ∫ R L ( E ) τ ( E ) d E = 2 ℏ Γ \int_{\mathbb{R}}L(E)\,\tau(E)\,dE=\dfrac{2\hbar}{\Gamma} ∫ R L ( E ) τ ( E ) d E = Γ 2ℏ 。
証明(命題 4.1) x = E − E r x=E-E_r x = E − E r 、g = Γ / 2 g=\Gamma/2 g = Γ/2 と書きます。S = ( x − i g ) / ( x + i g ) S=(x-ig)/(x+ig) S = ( x − i g ) / ( x + i g ) を微分すると S ′ = ( x + i g ) − ( x − i g ) ( x + i g ) 2 = 2 i g ( x + i g ) 2 S'=\dfrac{(x+ig)-(x-ig)}{(x+ig)^2}=\dfrac{2ig}{(x+ig)^2} S ′ = ( x + i g ) 2 ( x + i g ) − ( x − i g ) = ( x + i g ) 2 2 i g なので、S ˉ = 1 / S \bar S=1/S S ˉ = 1/ S を使って
S ˉ S ′ = S ′ S = x + i g x − i g ⋅ 2 i g ( x + i g ) 2 = 2 i g x 2 + g 2 , τ = − i ℏ S ˉ S ′ = 2 ℏ g x 2 + g 2 = ℏ Γ ( E − E r ) 2 + Γ 2 / 4 \bar S S'=\frac{S'}{S}=\frac{x+ig}{x-ig}\cdot\frac{2ig}{(x+ig)^2}=\frac{2ig}{x^2+g^2},\qquad \tau=-i\hbar\,\bar S S'=\frac{2\hbar g}{x^2+g^2}=\frac{\hbar\Gamma}{(E-E_r)^2+\Gamma^2/4} S ˉ S ′ = S S ′ = x − i g x + i g ⋅ ( x + i g ) 2 2 i g = x 2 + g 2 2 i g , τ = − i ℏ S ˉ S ′ = x 2 + g 2 2ℏ g = ( E − E r ) 2 + Γ 2 /4 ℏΓ です。1 は分母が x = 0 x=0 x = 0 で最小値 g 2 g^2 g 2 をとり、x 2 = g 2 x^2=g^2 x 2 = g 2 で 2 g 2 2g^2 2 g 2 になることから出ます(最大値は 2 ℏ g / g 2 = 4 ℏ / Γ 2\hbar g/g^2=4\hbar/\Gamma 2ℏ g / g 2 = 4ℏ/Γ )。2 は ∫ d x / ( x 2 + g 2 ) = π / g \int dx/(x^2+g^2)=\pi/g ∫ d x / ( x 2 + g 2 ) = π / g から 2 ℏ g ⋅ π / g = 2 π ℏ 2\hbar g\cdot\pi/g=2\pi\hbar 2ℏ g ⋅ π / g = 2 π ℏ です。3 は x = g tan θ x=g\tan\theta x = g tan θ と置換すると ∫ R d x ( x 2 + g 2 ) 2 = g − 3 ∫ − π / 2 π / 2 cos 2 θ d θ = π 2 g 3 \int_{\mathbb{R}}\dfrac{dx}{(x^2+g^2)^2}=g^{-3}\int_{-\pi/2}^{\pi/2}\cos^2\theta\,d\theta=\dfrac{\pi}{2g^3} ∫ R ( x 2 + g 2 ) 2 d x = g − 3 ∫ − π /2 π /2 cos 2 θ d θ = 2 g 3 π なので
∫ L τ d x = g π ⋅ 2 ℏ g ∫ d x ( x 2 + g 2 ) 2 = 2 ℏ g 2 π ⋅ π 2 g 3 = ℏ g = 2 ℏ Γ \int L\,\tau\,dx=\frac{g}{\pi}\cdot2\hbar g\int\frac{dx}{(x^2+g^2)^2}=\frac{2\hbar g^2}{\pi}\cdot\frac{\pi}{2g^3}=\frac{\hbar}{g}=\frac{2\hbar}{\Gamma} ∫ L τ d x = π g ⋅ 2ℏ g ∫ ( x 2 + g 2 ) 2 d x = π 2ℏ g 2 ⋅ 2 g 3 π = g ℏ = Γ 2ℏ です。
∎
2 は、共鳴を通過するあいだに位相 δ \delta δ がちょうど π \pi π だけ増えること(∫ 2 ℏ δ ′ d E = 2 π ℏ \int2\hbar\delta'\,dE=2\pi\hbar ∫ 2ℏ δ ′ d E = 2 π ℏ )の言い換えです。共鳴の幅 Γ \Gamma Γ が狭いほど、この決まった総量が狭い範囲に集まり、遅延のピークが高くなります。
実験で見えるのは、出ていく波の全体とは限りません。出ていく波 − S e i k r -Se^{ikr} − S e ik r は、ポテンシャルが無くても出ていく波 − e i k r -e^{ikr} − e ik r と、散乱で新しく生まれた波 − ( S − 1 ) e i k r -(S-1)e^{ikr} − ( S − 1 ) e ik r の和です。標的から横方向に散乱された光を測る実験では、後者だけが検出器に届きます。部分波の散乱振幅 f l = ( S l − 1 ) / ( 2 i k ) f_l=(S_l-1)/(2ik) f l = ( S l − 1 ) / ( 2 ik ) (定理 4.4[散乱理論] の展開係数)の位相の微分は、次のとおり τ \tau τ のちょうど半分です。
命題 4.2 (散乱振幅の位相の微分 ) ✓
開区間 J ⊂ ( 0 , ∞ ) J\subset(0,\infty) J ⊂ ( 0 , ∞ ) 上の C 1 C^1 C 1 級関数 S S S で ∣ S ∣ = 1 |S|=1 ∣ S ∣ = 1 、S ≠ 1 S\ne1 S = 1 とし、k ( E ) = 2 m E / ℏ k(E)=\sqrt{2mE}/\hbar k ( E ) = 2 m E /ℏ 、F ( E ) = S ( E ) − 1 2 i k ( E ) F(E)=\dfrac{S(E)-1}{2ik(E)} F ( E ) = 2 ik ( E ) S ( E ) − 1 と置く。
I m ( F ′ / F ) = τ 2 ℏ \mathrm{Im}\bigl(F'/F\bigr)=\dfrac{\tau}{2\hbar} Im ( F ′ / F ) = 2ℏ τ 。S = e 2 i δ S=e^{2i\delta} S = e 2 i δ と書けば、これは δ ′ \delta' δ ′ に等しい。
仮定 (W) のもとで E 0 ∈ J E_0\in J E 0 ∈ J 、r ≥ R r\ge R r ≥ R とし、系 3.4 の a ε a_\varepsilon a ε をとる。散乱された波 − a ε ( S − 1 ) e i k r -a_\varepsilon(S-1)e^{ikr} − a ε ( S − 1 ) e ik r と自由に出ていく波 − a ε e i k r -a_\varepsilon e^{ikr} − a ε e ik r の時刻の重心の差は、ε → + 0 \varepsilon\to+0 ε → + 0 で τ ( E 0 ) / 2 = ℏ δ ′ ( E 0 ) \tau(E_0)/2=\hbar\,\delta'(E_0) τ ( E 0 ) /2 = ℏ δ ′ ( E 0 ) に収束する。
証明(命題 4.2)
F ′ / F = S ′ S − 1 − k ′ k F'/F=\dfrac{S'}{S-1}-\dfrac{k'}{k} F ′ / F = S − 1 S ′ − k k ′ で、k ′ / k k'/k k ′ / k は実数なので I m ( F ′ / F ) = I m ( S ′ / ( S − 1 ) ) \mathrm{Im}(F'/F)=\mathrm{Im}\bigl(S'/(S-1)\bigr) Im ( F ′ / F ) = Im ( S ′ / ( S − 1 ) ) です。定義 3.1 から S ˉ S ′ = i τ / ℏ \bar S S'=i\tau/\hbar S ˉ S ′ = i τ /ℏ 、すなわち S ′ = ( i τ / ℏ ) S S'=(i\tau/\hbar)S S ′ = ( i τ /ℏ ) S なので、S ′ S − 1 = i τ ℏ ⋅ S S − 1 \dfrac{S'}{S-1}=\dfrac{i\tau}{\hbar}\cdot\dfrac{S}{S-1} S − 1 S ′ = ℏ i τ ⋅ S − 1 S です。ここで ∣ S ∣ = 1 |S|=1 ∣ S ∣ = 1 から S ˉ = 1 / S \bar S=1/S S ˉ = 1/ S で、
S S − 1 + ( S S − 1 ) ‾ = S S − 1 + 1 / S 1 / S − 1 = S S − 1 + 1 1 − S = 1 \frac{S}{S-1}+\overline{\Bigl(\frac{S}{S-1}\Bigr)}=\frac{S}{S-1}+\frac{1/S}{1/S-1}=\frac{S}{S-1}+\frac{1}{1-S}=1 S − 1 S + ( S − 1 S ) = S − 1 S + 1/ S − 1 1/ S = S − 1 S + 1 − S 1 = 1 なので R e ( S / ( S − 1 ) ) = 1 2 \mathrm{Re}\bigl(S/(S-1)\bigr)=\frac12 Re ( S / ( S − 1 ) ) = 2 1 です。τ \tau τ は実数なので I m ( i τ ℏ ⋅ S S − 1 ) = τ ℏ R e S S − 1 = τ 2 ℏ \mathrm{Im}\bigl(\frac{i\tau}{\hbar}\cdot\frac{S}{S-1}\bigr)=\frac{\tau}{\hbar}\,\mathrm{Re}\frac{S}{S-1}=\frac{\tau}{2\hbar} Im ( ℏ i τ ⋅ S − 1 S ) = ℏ τ Re S − 1 S = 2ℏ τ です。τ = 2 ℏ δ ′ \tau=2\hbar\delta' τ = 2ℏ δ ′ (定義 3.1 )から後半が出ます。
2 つの波のエネルギー表示の振幅は a ε F 1 a_\varepsilon F_1 a ε F 1 、a ε F 0 a_\varepsilon F_0 a ε F 0 で、F 1 = − ( S − 1 ) e i k r = − 2 i k F e i k r F_1=-(S-1)e^{ikr}=-2ik\,F\,e^{ikr} F 1 = − ( S − 1 ) e ik r = − 2 ik F e ik r 、F 0 = − e i k r F_0=-e^{ikr} F 0 = − e ik r です。どちらも J J J 上で C 1 C^1 C 1 級で、E 0 E_0 E 0 で 0 0 0 になりません。I m ( F 0 ′ / F 0 ) = k ′ r \mathrm{Im}(F_0'/F_0)=k'r Im ( F 0 ′ / F 0 ) = k ′ r 、I m ( F 1 ′ / F 1 ) = I m ( F ′ / F ) + k ′ r \mathrm{Im}(F_1'/F_1)=\mathrm{Im}(F'/F)+k'r Im ( F 1 ′ / F 1 ) = Im ( F ′ / F ) + k ′ r (− 2 i k -2ik − 2 ik の対数微分 k ′ / k k'/k k ′ / k は実数)です。系 3.4 を F 1 F_1 F 1 と F 0 F_0 F 0 に使って差をとると、極限は ℏ I m ( F ′ / F ) ( E 0 ) = τ ( E 0 ) / 2 \hbar\,\mathrm{Im}(F'/F)(E_0)=\tau(E_0)/2 ℏ Im ( F ′ / F ) ( E 0 ) = τ ( E 0 ) /2 で、1 から ℏ δ ′ ( E 0 ) \hbar\delta'(E_0) ℏ δ ′ ( E 0 ) です。
∎
Breit–Wigner の場合、散乱された波の遅延 ℏ δ ′ = τ / 2 \hbar\delta'=\tau/2 ℏ δ ′ = τ /2 はピークで 2 ℏ / Γ 2\hbar/\Gamma 2ℏ/Γ 、Lorentz 分布での平均で ℏ / Γ \hbar/\Gamma ℏ/Γ です。次の図で、2 つの遅延の大きさを比べてください。
-3 -2 -1 0 1 2 3 0 1 2 3 4 (E − E_r) / Γ Γ × 遅延 / ħ 2ħδ′(全 S 行列の位相) ħδ′(散乱振幅の位相) Lorentz 平均 2 Lorentz 平均 1 Lorentz 分布(重み) Breit–Wigner 共鳴の近くの 2 種類の遅延(縦軸は Γ/ħ を掛けた値)。実線は全 S 行列の位相から作る Wigner 遅延 2ħδ′(ピーク 4ħ/Γ)、破線は散乱振幅の位相の微分 ħδ′(ピーク 2ħ/Γ)。網かけは共鳴の Lorentz 分布で、これで平均するとそれぞれ 2ħ/Γ と ħ/Γ になる。
遅延の平均 ℏ / Γ \hbar/\Gamma ℏ/Γ が「寿命」と呼ばれる理由を、時間発展の側から見ます。エネルギーの分布が Lorentz 型の状態は、厳密に指数関数で崩壊します。
命題 4.3 (Lorentz 分布から指数則へ ) ✓
E r ∈ R E_r\in\mathbb{R} E r ∈ R 、Γ > 0 \Gamma\gt0 Γ > 0 とし、L ( E ) = Γ / 2 π ( E − E r ) 2 + Γ 2 / 4 L(E)=\dfrac{\Gamma/2\pi}{(E-E_r)^2+\Gamma^2/4} L ( E ) = ( E − E r ) 2 + Γ 2 /4 Γ/2 π とする。このとき、すべての t ∈ R t\in\mathbb{R} t ∈ R について
∫ R L ( E ) e − i E t / ℏ d E = e − i E r t / ℏ e − Γ ∣ t ∣ / 2 ℏ \int_{\mathbb{R}}L(E)\,e^{-iEt/\hbar}\,dE=e^{-iE_rt/\hbar}\,e^{-\Gamma|t|/2\hbar} ∫ R L ( E ) e − i E t /ℏ d E = e − i E r t /ℏ e − Γ∣ t ∣/2ℏ が成り立つ。とくに、スペクトル測度が密度 L L L をもつ状態の生存確率は P ( t ) = e − Γ ∣ t ∣ / ℏ P(t)=e^{-\Gamma|t|/\hbar} P ( t ) = e − Γ∣ t ∣/ℏ である。
証明(命題 4.3) γ = Γ / 2 ℏ \gamma=\Gamma/2\hbar γ = Γ/2ℏ と置き、g ( t ) = e − γ ∣ t ∣ g(t)=e^{-\gamma|t|} g ( t ) = e − γ ∣ t ∣ とします。g ∈ L 1 ( R ) g\in L^1(\mathbb{R}) g ∈ L 1 ( R ) で、その Fourier 変換は
g ^ ( ξ ) = ∫ 0 ∞ e − ( γ + i ξ ) t d t + ∫ 0 ∞ e − ( γ − i ξ ) t d t = 1 γ + i ξ + 1 γ − i ξ = 2 γ γ 2 + ξ 2 \hat g(\xi)=\int_0^\infty e^{-(\gamma+i\xi)t}dt+\int_0^\infty e^{-(\gamma-i\xi)t}dt=\frac1{\gamma+i\xi}+\frac1{\gamma-i\xi}=\frac{2\gamma}{\gamma^2+\xi^2} g ^ ( ξ ) = ∫ 0 ∞ e − ( γ + i ξ ) t d t + ∫ 0 ∞ e − ( γ − i ξ ) t d t = γ + i ξ 1 + γ − i ξ 1 = γ 2 + ξ 2 2 γ です。g ^ \hat g g ^ も可積分なので、定理 3.3[ℝⁿ 上のフーリエ変換] から、ほとんどすべての t t t で g ( t ) = 1 2 π ∫ g ^ ( ξ ) e i t ξ d ξ g(t)=\frac1{2\pi}\int\hat g(\xi)e^{it\xi}d\xi g ( t ) = 2 π 1 ∫ g ^ ( ξ ) e i t ξ d ξ です。右辺は優収束定理により t t t について連続で、g g g も連続なので、等式はすべての t t t で成り立ちます。
一方、E = E r + ℏ x E=E_r+\hbar x E = E r + ℏ x と変数を変えると、Γ / 2 = ℏ γ \Gamma/2=\hbar\gamma Γ/2 = ℏ γ から L ( E ) d E = ℏ γ / π ℏ 2 ( x 2 + γ 2 ) ℏ d x = 1 2 π g ^ ( x ) d x L(E)\,dE=\dfrac{\hbar\gamma/\pi}{\hbar^2(x^2+\gamma^2)}\hbar\,dx=\dfrac{1}{2\pi}\hat g(x)\,dx L ( E ) d E = ℏ 2 ( x 2 + γ 2 ) ℏ γ / π ℏ d x = 2 π 1 g ^ ( x ) d x なので
∫ L ( E ) e − i E t / ℏ d E = e − i E r t / ℏ 1 2 π ∫ g ^ ( x ) e − i x t d x = e − i E r t / ℏ g ( − t ) = e − i E r t / ℏ e − γ ∣ t ∣ \int L(E)e^{-iEt/\hbar}dE=e^{-iE_rt/\hbar}\,\frac1{2\pi}\int\hat g(x)e^{-ixt}dx=e^{-iE_rt/\hbar}\,g(-t)=e^{-iE_rt/\hbar}e^{-\gamma|t|} ∫ L ( E ) e − i E t /ℏ d E = e − i E r t /ℏ 2 π 1 ∫ g ^ ( x ) e − i x t d x = e − i E r t /ℏ g ( − t ) = e − i E r t /ℏ e − γ ∣ t ∣ です。生存振幅はスペクトル測度の Fourier 変換(生存振幅と生存確率 の定義の直後の式)なので、絶対値の 2 乗をとって P ( t ) = e − 2 γ ∣ t ∣ = e − Γ ∣ t ∣ / ℏ P(t)=e^{-2\gamma|t|}=e^{-\Gamma|t|/\hbar} P ( t ) = e − 2 γ ∣ t ∣ = e − Γ∣ t ∣/ℏ です。
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例 4.4 (崩壊の時刻の分布と遅延の平均 )
命題 4.3 の状態が時刻 0 0 0 に用意されたとします。t ≥ 0 t\ge0 t ≥ 0 で P ( t ) = e − Γ t / ℏ P(t)=e^{-\Gamma t/\hbar} P ( t ) = e − Γ t /ℏ なので、時刻 t t t までに崩壊している確率は 1 − P ( t ) 1-P(t) 1 − P ( t ) 、崩壊の時刻の確率密度は w ( t ) = − P ′ ( t ) = ( Γ / ℏ ) e − Γ t / ℏ w(t)=-P'(t)=(\Gamma/\hbar)e^{-\Gamma t/\hbar} w ( t ) = − P ′ ( t ) = ( Γ/ℏ ) e − Γ t /ℏ です。その平均と標準偏差はどちらも
∫ 0 ∞ t w ( t ) d t = ℏ Γ , ( ∫ 0 ∞ t 2 w d t − ℏ 2 Γ 2 ) 1 / 2 = ℏ Γ \int_0^\infty t\,w(t)\,dt=\frac{\hbar}{\Gamma},\qquad\Bigl(\int_0^\infty t^2w\,dt-\frac{\hbar^2}{\Gamma^2}\Bigr)^{1/2}=\frac{\hbar}{\Gamma} ∫ 0 ∞ t w ( t ) d t = Γ ℏ , ( ∫ 0 ∞ t 2 w d t − Γ 2 ℏ 2 ) 1/2 = Γ ℏ です。この ℏ / Γ \hbar/\Gamma ℏ/Γ が 寿命 です。散乱された波の遅延 ℏ δ ′ \hbar\delta' ℏ δ ′ を共鳴の Lorentz 分布で平均した値(命題 4.2 と 命題 4.1 の 3 から ℏ / Γ \hbar/\Gamma ℏ/Γ )と一致します。また、時刻 0 0 0 から e − i E r t / ℏ − Γ t / 2 ℏ e^{-iE_rt/\hbar-\Gamma t/2\hbar} e − i E r t /ℏ − Γ t /2ℏ で振動しながら減る信号のエネルギー表示は 1 / ( E − E r + i Γ / 2 ) 1/(E-E_r+i\Gamma/2) 1/ ( E − E r + i Γ/2 ) に比例し、この振幅は台がコンパクトではありませんが、補題 2.2 と同じ形の重みつき平均を形式的に計算すると、やはり ℏ / Γ \hbar/\Gamma ℏ/Γ になります。共鳴の「捕まっている時間」と、崩壊の「待ち時間」は同じ量の 2 つの顔です。
命題 4.3 の厳密な指数則は、エネルギーが − ∞ -\infty − ∞ から + ∞ +\infty + ∞ まで広がる Lorentz 分布から出ました。現実の系では (i) エネルギーの分散が有限で、(ii) エネルギーは下に有界です。それぞれが指数則を短時間と長時間で壊します。
系 5.1 (短時間では指数則にならない ) ✓
H H H を自己共役作用素、φ ∈ D ( H ) \varphi\in D(H) φ ∈ D ( H ) を単位ベクトルとし、P ( t ) = ∣ ⟨ φ , e − i t H / ℏ φ ⟩ ∣ 2 P(t)=|\langle\varphi,e^{-itH/\hbar}\varphi\rangle|^2 P ( t ) = ∣ ⟨ φ , e − i t H /ℏ φ ⟩ ∣ 2 とする。このとき、γ > 0 \gamma\gt0 γ > 0 と t 0 > 0 t_0\gt0 t 0 > 0 で、0 ≤ t ≤ t 0 0\le t\le t_0 0 ≤ t ≤ t 0 のすべてで P ( t ) = e − γ t P(t)=e^{-\gamma t} P ( t ) = e − γ t となるものは存在しない。
証明(系 5.1) 命題 5.4[共鳴] の 1 を H / ℏ H/\hbar H /ℏ に使うと、Δ = Δ H / ℏ \Delta=\Delta H/\hbar Δ = Δ H /ℏ として P ( t ) = 1 − Δ 2 t 2 + o ( t 2 ) P(t)=1-\Delta^2t^2+o(t^2) P ( t ) = 1 − Δ 2 t 2 + o ( t 2 ) (t → 0 t\to0 t → 0 )なので、( 1 − P ( t ) ) / t = Δ 2 t + o ( t ) → 0 (1-P(t))/t=\Delta^2t+o(t)\to0 ( 1 − P ( t )) / t = Δ 2 t + o ( t ) → 0 です(t → + 0 t\to+0 t → + 0 )。もし 0 ≤ t ≤ t 0 0\le t\le t_0 0 ≤ t ≤ t 0 で P ( t ) = e − γ t P(t)=e^{-\gamma t} P ( t ) = e − γ t なら ( 1 − e − γ t ) / t → γ > 0 (1-e^{-\gamma t})/t\to\gamma\gt0 ( 1 − e − γ t ) / t → γ > 0 で、矛盾します。
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Lorentz 分布の状態は ∫ E 2 L ( E ) d E = ∞ \int E^2L(E)\,dE=\infty ∫ E 2 L ( E ) d E = ∞ なので D ( H ) D(H) D ( H ) に入らず、この系とは矛盾しません。有限のエネルギー分散 Δ H \Delta H Δ H をもつ状態は、t ≲ ℏ / Δ H t\lesssim\hbar/\Delta H t ≲ ℏ/Δ H の短時間では 1 − P ( t ) ≈ ( Δ H ) 2 t 2 / ℏ 2 1-P(t)\approx(\Delta H)^2t^2/\hbar^2 1 − P ( t ) ≈ ( Δ H ) 2 t 2 / ℏ 2 と時間の 2 乗でしか減りません。測定を頻繁に繰り返すと崩壊が止まる量子 Zeno 効果(命題 5.5[共鳴] )は、この 2 次則から出ます。
下の図は、解ける模型での数値計算です。Friedrichs 模型 で、離散準位 E 0 = 1 E_0=1 E 0 = 1 を、エネルギー E ≥ 0 E\ge0 E ≥ 0 の連続状態に強さ λ \lambda λ で結合させ、結合の状態密度を ρ v ( E ) = E 2 e − E \rho_v(E)=E^2e^{-E} ρ v ( E ) = E 2 e − E とします(ℏ = 1 \hbar=1 ℏ = 1 )。離散準位の状態 φ \varphi φ のスペクトル測度の密度は、Friedrichs 模型のレゾルベント公式(定理 8.5[共鳴] )の境界値から ρ φ ( E ) = λ 2 ρ v ( E ) / ∣ d λ ( E + i 0 ) ∣ 2 \rho_\varphi(E)=\lambda^2\rho_v(E)/|d_\lambda(E+i0)|^2 ρ φ ( E ) = λ 2 ρ v ( E ) /∣ d λ ( E + i 0 ) ∣ 2 と求まり、これを数値で Fourier 変換して生存確率を得ています。黄金律の崩壊率は Γ = 2 π λ 2 ρ v ( E 0 ) \Gamma=2\pi\lambda^2\rho_v(E_0) Γ = 2 π λ 2 ρ v ( E 0 ) 、エネルギーの分散は Δ H = λ ∥ v ∥ = 2 λ \Delta H=\lambda\|v\|=\sqrt2\,\lambda Δ H = λ ∥ v ∥ = 2 λ です。
10⁻⁴ 10⁻³ 10⁻² 10⁻¹ 1 1 10⁻² 10⁻⁴ 10⁻⁶ Γt 1 − P(t) 数値計算 (ΔH)²t²(短時間の 2 次則) Γt(指数則の初期の傾き) 同じ模型で λ = 0.08 とした 1 − P(t) の両対数グラフ。Γt が 10⁻² より小さい時期は (ΔH)²t² に沿い(短時間の 2 次則)、Γt ≈ 0.1 では指数則の初期の傾き Γt に近づく。Γ は黄金律の値、ΔH = √2 λ。
エネルギーが下に有界、つまりしきい値 E t h E_{\mathrm{th}} E th より下に状態が無いと、長時間では指数則が必ず破れます。Khalfin(1958)が示したこの事実の一般形は 定理 5.7[共鳴] にあります(Hardy 空間の理論を使います)。ここでは、しきい値の近くの密度の形から尾の形を 具体的に 求める初等的な版を証明します。
定理 5.2 (しきい値によるべき則の尾 ) ✓
n ≥ 0 n\ge0 n ≥ 0 を整数、E t h ∈ R E_{\mathrm{th}}\in\mathbb{R} E th ∈ R とし、単位ベクトル φ \varphi φ のスペクトル測度が密度 ρ \rho ρ をもち、ρ ( E ) = 0 \rho(E)=0 ρ ( E ) = 0 (E < E t h E\lt E_{\mathrm{th}} E < E th )、ρ ( E t h + λ ) = λ n h ( λ ) \rho(E_{\mathrm{th}}+\lambda)=\lambda^n h(\lambda) ρ ( E th + λ ) = λ n h ( λ ) (λ ≥ 0 \lambda\ge0 λ ≥ 0 )と書けるとする。ここで h ∈ C n + 2 ( [ 0 , ∞ ) ) h\in C^{n+2}([0,\infty)) h ∈ C n + 2 ([ 0 , ∞ )) とし、G ( λ ) = λ n h ( λ ) G(\lambda)=\lambda^nh(\lambda) G ( λ ) = λ n h ( λ ) の j j j 階導関数(0 ≤ j ≤ n + 2 0\le j\le n+2 0 ≤ j ≤ n + 2 )はすべて [ 0 , ∞ ) [0,\infty) [ 0 , ∞ ) で可積分で、λ → ∞ \lambda\to\infty λ → ∞ で 0 0 0 に収束するとする。このとき t ≠ 0 t\ne0 t = 0 について
⟨ φ , e − i t H / ℏ φ ⟩ = e − i E t h t / ℏ [ n ! h ( 0 ) ( ℏ i t ) n + 1 + R ( t ) ] , ∣ R ( t ) ∣ ≤ ( ℏ ∣ t ∣ ) n + 2 ( ∣ G ( n + 1 ) ( 0 ) ∣ + ∫ 0 ∞ ∣ G ( n + 2 ) ∣ d λ ) . \langle\varphi,e^{-itH/\hbar}\varphi\rangle=e^{-iE_{\mathrm{th}}t/\hbar}\Bigl[\,n!\,h(0)\Bigl(\frac{\hbar}{it}\Bigr)^{n+1}+R(t)\Bigr],\qquad |R(t)|\le\Bigl(\frac{\hbar}{|t|}\Bigr)^{n+2}\Bigl(|G^{(n+1)}(0)|+\int_0^\infty|G^{(n+2)}|\,d\lambda\Bigr). ⟨ φ , e − i t H /ℏ φ ⟩ = e − i E th t /ℏ [ n ! h ( 0 ) ( i t ℏ ) n + 1 + R ( t ) ] , ∣ R ( t ) ∣ ≤ ( ∣ t ∣ ℏ ) n + 2 ( ∣ G ( n + 1 ) ( 0 ) ∣ + ∫ 0 ∞ ∣ G ( n + 2 ) ∣ d λ ) . とくに h ( 0 ) ≠ 0 h(0)\ne0 h ( 0 ) = 0 なら、生存確率は t → ∞ t\to\infty t → ∞ で P ( t ) = ( n ! h ( 0 ) ) 2 ( ℏ / t ) 2 ( n + 1 ) ( 1 + O ( 1 / t ) ) P(t)=\bigl(n!\,h(0)\bigr)^2(\hbar/t)^{2(n+1)}\bigl(1+O(1/t)\bigr) P ( t ) = ( n ! h ( 0 ) ) 2 ( ℏ/ t ) 2 ( n + 1 ) ( 1 + O ( 1/ t ) ) となり、どんな γ > 0 \gamma\gt0 γ > 0 についても e − γ t e^{-\gamma t} e − γ t より遅く減る。
証明(定理 5.2) μ = t / ℏ ≠ 0 \mu=t/\hbar\ne0 μ = t /ℏ = 0 と置きます。生存振幅はスペクトル測度の Fourier 変換なので、E = E t h + λ E=E_{\mathrm{th}}+\lambda E = E th + λ として
⟨ φ , e − i t H / ℏ φ ⟩ = e − i E t h μ ∫ 0 ∞ G ( λ ) e − i μ λ d λ \langle\varphi,e^{-itH/\hbar}\varphi\rangle=e^{-iE_{\mathrm{th}}\mu}\int_0^\infty G(\lambda)e^{-i\mu\lambda}d\lambda ⟨ φ , e − i t H /ℏ φ ⟩ = e − i E th μ ∫ 0 ∞ G ( λ ) e − i μ λ d λ です。K ∈ C 1 ( [ 0 , ∞ ) ) K\in C^1([0,\infty)) K ∈ C 1 ([ 0 , ∞ )) で K K K と K ′ K' K ′ が可積分、K ( λ ) → 0 K(\lambda)\to0 K ( λ ) → 0 (λ → ∞ \lambda\to\infty λ → ∞ )なら、部分積分から
∫ 0 ∞ K ( λ ) e − i μ λ d λ = [ K ( λ ) e − i μ λ − i μ ] 0 ∞ + 1 i μ ∫ 0 ∞ K ′ ( λ ) e − i μ λ d λ = K ( 0 ) i μ + 1 i μ ∫ 0 ∞ K ′ ( λ ) e − i μ λ d λ \int_0^\infty K(\lambda)e^{-i\mu\lambda}d\lambda=\Bigl[\frac{K(\lambda)e^{-i\mu\lambda}}{-i\mu}\Bigr]_0^\infty+\frac1{i\mu}\int_0^\infty K'(\lambda)e^{-i\mu\lambda}d\lambda=\frac{K(0)}{i\mu}+\frac1{i\mu}\int_0^\infty K'(\lambda)e^{-i\mu\lambda}d\lambda ∫ 0 ∞ K ( λ ) e − i μ λ d λ = [ − i μ K ( λ ) e − i μ λ ] 0 ∞ + i μ 1 ∫ 0 ∞ K ′ ( λ ) e − i μ λ d λ = i μ K ( 0 ) + i μ 1 ∫ 0 ∞ K ′ ( λ ) e − i μ λ d λ です。これを K = G , G ′ , … , G ( n + 1 ) K=G,G',\dots,G^{(n+1)} K = G , G ′ , … , G ( n + 1 ) に順に使うと(仮定からどれも条件を満たす)
∫ 0 ∞ G e − i μ λ d λ = ∑ j = 0 n + 1 G ( j ) ( 0 ) ( i μ ) j + 1 + 1 ( i μ ) n + 2 ∫ 0 ∞ G ( n + 2 ) e − i μ λ d λ . \int_0^\infty Ge^{-i\mu\lambda}d\lambda=\sum_{j=0}^{n+1}\frac{G^{(j)}(0)}{(i\mu)^{j+1}}+\frac1{(i\mu)^{n+2}}\int_0^\infty G^{(n+2)}e^{-i\mu\lambda}d\lambda . ∫ 0 ∞ G e − i μ λ d λ = j = 0 ∑ n + 1 ( i μ ) j + 1 G ( j ) ( 0 ) + ( i μ ) n + 2 1 ∫ 0 ∞ G ( n + 2 ) e − i μ λ d λ . Leibniz の公式 G ( j ) = ∑ i ( j i ) ( λ n ) ( i ) h ( j − i ) G^{(j)}=\sum_{i}\binom{j}{i}(\lambda^n)^{(i)}h^{(j-i)} G ( j ) = ∑ i ( i j ) ( λ n ) ( i ) h ( j − i ) で λ = 0 \lambda=0 λ = 0 とおくと、( λ n ) ( i ) (\lambda^n)^{(i)} ( λ n ) ( i ) は i = n i=n i = n のときだけ 0 0 0 でない値 n ! n! n ! をとるので、G ( j ) ( 0 ) = 0 G^{(j)}(0)=0 G ( j ) ( 0 ) = 0 (j < n j\lt n j < n )、G ( n ) ( 0 ) = n ! h ( 0 ) G^{(n)}(0)=n!\,h(0) G ( n ) ( 0 ) = n ! h ( 0 ) です。よって和の中で残るのは j = n j=n j = n と j = n + 1 j=n+1 j = n + 1 の項で、
∫ 0 ∞ G e − i μ λ d λ = n ! h ( 0 ) ( i μ ) n + 1 + R , R = G ( n + 1 ) ( 0 ) ( i μ ) n + 2 + 1 ( i μ ) n + 2 ∫ 0 ∞ G ( n + 2 ) e − i μ λ d λ \int_0^\infty Ge^{-i\mu\lambda}d\lambda=\frac{n!\,h(0)}{(i\mu)^{n+1}}+R,\qquad R=\frac{G^{(n+1)}(0)}{(i\mu)^{n+2}}+\frac1{(i\mu)^{n+2}}\int_0^\infty G^{(n+2)}e^{-i\mu\lambda}d\lambda ∫ 0 ∞ G e − i μ λ d λ = ( i μ ) n + 1 n ! h ( 0 ) + R , R = ( i μ ) n + 2 G ( n + 1 ) ( 0 ) + ( i μ ) n + 2 1 ∫ 0 ∞ G ( n + 2 ) e − i μ λ d λ となり、∣ e − i μ λ ∣ = 1 |e^{-i\mu\lambda}|=1 ∣ e − i μ λ ∣ = 1 から R R R の評価が出ます。1 / ( i μ ) = ℏ / ( i t ) 1/(i\mu)=\hbar/(it) 1/ ( i μ ) = ℏ/ ( i t ) です。後半は、h ( 0 ) ≠ 0 h(0)\ne0 h ( 0 ) = 0 なら ∣ n ! h ( 0 ) ( ℏ / t ) n + 1 + R ∣ 2 = ( n ! h ( 0 ) ) 2 ( ℏ / t ) 2 ( n + 1 ) ( 1 + O ( 1 / t ) ) |n!h(0)(\hbar/t)^{n+1}+R|^2=(n!h(0))^2(\hbar/t)^{2(n+1)}(1+O(1/t)) ∣ n ! h ( 0 ) ( ℏ/ t ) n + 1 + R ∣ 2 = ( n ! h ( 0 ) ) 2 ( ℏ/ t ) 2 ( n + 1 ) ( 1 + O ( 1/ t )) であることと、t 2 ( n + 1 ) e − γ t → 0 t^{2(n+1)}e^{-\gamma t}\to0 t 2 ( n + 1 ) e − γ t → 0 から出ます。
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しきい値で密度が λ n \lambda^n λ n のように立ち上がると、生存確率は t − 2 ( n + 1 ) t^{-2(n+1)} t − 2 ( n + 1 ) で減ります。立ち上がりが滑らかなほど(n n n が大きいほど)尾は速く減りますが、指数関数には決してなりません。n n n は、しきい値(自然放出なら光子のエネルギー 0 0 0 )の近くでの状態密度と結合の形で決まります。たとえば水素原子の 2 P 2P 2 P 状態の自然放出を扱った模型の計算では、尾は t − 4 t^{-4} t − 4 (n = 1 n=1 n = 1 にあたる)と報告されています。
整数でない指数も、次の厳密に解ける例で現れます。
命題 5.3 (ガンマ分布の密度:全時間でべき則 ) ✓
β > − 1 \beta\gt-1 β > − 1 、Λ > 0 \Lambda\gt0 Λ > 0 とし、スペクトル測度の密度が ρ ( E ) = E β e − E / Λ Γ ( β + 1 ) Λ β + 1 \rho(E)=\dfrac{E^\beta e^{-E/\Lambda}}{\Gamma(\beta+1)\Lambda^{\beta+1}} ρ ( E ) = Γ ( β + 1 ) Λ β + 1 E β e − E /Λ (E > 0 E\gt0 E > 0 、E ≤ 0 E\le0 E ≤ 0 では 0 0 0 )であるとする。ここで Γ ( β + 1 ) = ∫ 0 ∞ x β e − x d x \Gamma(\beta+1)=\int_0^\infty x^\beta e^{-x}dx Γ ( β + 1 ) = ∫ 0 ∞ x β e − x d x はガンマ関数である。このとき
⟨ φ , e − i t H / ℏ φ ⟩ = ( 1 + i Λ t ℏ ) − ( β + 1 ) , P ( t ) = ( 1 + Λ 2 t 2 ℏ 2 ) − ( β + 1 ) \langle\varphi,e^{-itH/\hbar}\varphi\rangle=\Bigl(1+\frac{i\Lambda t}{\hbar}\Bigr)^{-(\beta+1)},\qquad P(t)=\Bigl(1+\frac{\Lambda^2t^2}{\hbar^2}\Bigr)^{-(\beta+1)} ⟨ φ , e − i t H /ℏ φ ⟩ = ( 1 + ℏ i Λ t ) − ( β + 1 ) , P ( t ) = ( 1 + ℏ 2 Λ 2 t 2 ) − ( β + 1 ) が成り立つ(べきは主値。1 + i Λ t / ℏ 1+i\Lambda t/\hbar 1 + i Λ t /ℏ は右半平面にある)。
証明(命題 5.3) s ( t ) = 1 / Λ + i t / ℏ s(t)=1/\Lambda+it/\hbar s ( t ) = 1/Λ + i t /ℏ (R e s > 0 \mathrm{Re}\,s\gt0 Re s > 0 )と置き、I ( t ) = ∫ 0 ∞ E β e − s ( t ) E d E I(t)=\int_0^\infty E^\beta e^{-s(t)E}dE I ( t ) = ∫ 0 ∞ E β e − s ( t ) E d E とします。∣ E β + 1 e − s E ∣ = E β + 1 e − E / Λ |E^{\beta+1}e^{-sE}|=E^{\beta+1}e^{-E/\Lambda} ∣ E β + 1 e − s E ∣ = E β + 1 e − E /Λ は可積分で t t t によらないので、積分の下で微分できて I ′ ( t ) = − i ℏ ∫ 0 ∞ E β + 1 e − s E d E I'(t)=-\frac{i}{\hbar}\int_0^\infty E^{\beta+1}e^{-sE}dE I ′ ( t ) = − ℏ i ∫ 0 ∞ E β + 1 e − s E d E です。部分積分(β + 1 > 0 \beta+1\gt0 β + 1 > 0 なので E = 0 E=0 E = 0 の境界項は 0 0 0 、E → ∞ E\to\infty E → ∞ でも 0 0 0 )から ∫ 0 ∞ E β + 1 e − s E d E = β + 1 s I ( t ) \int_0^\infty E^{\beta+1}e^{-sE}dE=\frac{\beta+1}{s}I(t) ∫ 0 ∞ E β + 1 e − s E d E = s β + 1 I ( t ) なので、I ′ ( t ) = − i ( β + 1 ) ℏ s I ( t ) I'(t)=-\frac{i(\beta+1)}{\hbar s}I(t) I ′ ( t ) = − ℏ s i ( β + 1 ) I ( t ) です。
主値のべき s β + 1 = e ( β + 1 ) L o g s s^{\beta+1}=e^{(\beta+1)\mathrm{Log}\,s} s β + 1 = e ( β + 1 ) Log s は右半平面で正則で、d d t s β + 1 = ( β + 1 ) s β ⋅ i ℏ \frac{d}{dt}s^{\beta+1}=(\beta+1)s^{\beta}\cdot\frac{i}{\hbar} d t d s β + 1 = ( β + 1 ) s β ⋅ ℏ i です。よって J ( t ) = s ( t ) β + 1 I ( t ) J(t)=s(t)^{\beta+1}I(t) J ( t ) = s ( t ) β + 1 I ( t ) について
J ′ ( t ) = i ( β + 1 ) ℏ s β I − s β + 1 i ( β + 1 ) ℏ s I = 0 J'(t)=\frac{i(\beta+1)}{\hbar}s^{\beta}I-s^{\beta+1}\frac{i(\beta+1)}{\hbar s}I=0 J ′ ( t ) = ℏ i ( β + 1 ) s β I − s β + 1 ℏ s i ( β + 1 ) I = 0 で、J J J は定数です。t = 0 t=0 t = 0 では s = 1 / Λ s=1/\Lambda s = 1/Λ で、E = Λ x E=\Lambda x E = Λ x と置換すると I ( 0 ) = Λ β + 1 Γ ( β + 1 ) I(0)=\Lambda^{\beta+1}\Gamma(\beta+1) I ( 0 ) = Λ β + 1 Γ ( β + 1 ) 、J ( 0 ) = Γ ( β + 1 ) J(0)=\Gamma(\beta+1) J ( 0 ) = Γ ( β + 1 ) です。よって I ( t ) = Γ ( β + 1 ) s − ( β + 1 ) I(t)=\Gamma(\beta+1)s^{-(\beta+1)} I ( t ) = Γ ( β + 1 ) s − ( β + 1 ) で、Λ > 0 \Lambda\gt0 Λ > 0 から ( Λ s ) β + 1 = Λ β + 1 s β + 1 (\Lambda s)^{\beta+1}=\Lambda^{\beta+1}s^{\beta+1} ( Λ s ) β + 1 = Λ β + 1 s β + 1 なので
∫ ρ ( E ) e − i E t / ℏ d E = I ( t ) Γ ( β + 1 ) Λ β + 1 = ( Λ s ) − ( β + 1 ) = ( 1 + i Λ t ℏ ) − ( β + 1 ) \int\rho(E)e^{-iEt/\hbar}dE=\frac{I(t)}{\Gamma(\beta+1)\Lambda^{\beta+1}}=(\Lambda s)^{-(\beta+1)}=\Bigl(1+\frac{i\Lambda t}{\hbar}\Bigr)^{-(\beta+1)} ∫ ρ ( E ) e − i E t /ℏ d E = Γ ( β + 1 ) Λ β + 1 I ( t ) = ( Λ s ) − ( β + 1 ) = ( 1 + ℏ i Λ t ) − ( β + 1 ) です。絶対値は ∣ 1 + i Λ t / ℏ ∣ − ( β + 1 ) = ( 1 + Λ 2 t 2 / ℏ 2 ) − ( β + 1 ) / 2 |1+i\Lambda t/\hbar|^{-(\beta+1)}=(1+\Lambda^2t^2/\hbar^2)^{-(\beta+1)/2} ∣1 + i Λ t /ℏ ∣ − ( β + 1 ) = ( 1 + Λ 2 t 2 / ℏ 2 ) − ( β + 1 ) /2 なので、2 乗して P ( t ) P(t) P ( t ) の式を得ます。
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この例では指数則の時期がまったく無く、短時間の 2 次の減少(t ≲ ℏ / Λ t\lesssim\hbar/\Lambda t ≲ ℏ/Λ )のあとすぐに P ∼ ( ℏ / Λ t ) 2 ( β + 1 ) P\sim(\hbar/\Lambda t)^{2(\beta+1)} P ∼ ( ℏ/Λ t ) 2 ( β + 1 ) になります。現実の共鳴では、しきい値の尾(べき則)と共鳴の極(指数則)が重なり、指数関数が尾より小さくなった時刻からべき則が見えてきます。次の図は 5.1 と同じ Friedrichs 模型で、λ = 0.3 \lambda=0.3 λ = 0.3 としたものです。しきい値の近くで ρ φ ( E ) ≈ E 2 h ( E ) \rho_\varphi(E)\approx E^2h(E) ρ φ ( E ) ≈ E 2 h ( E ) (n = 2 n=2 n = 2 )なので、定理 5.2 は ∣ A ( t ) ∣ ≈ 2 h ( 0 ) / t 3 |A(t)|\approx2h(0)/t^3 ∣ A ( t ) ∣ ≈ 2 h ( 0 ) / t 3 を予言し、h ( 0 ) = λ 2 / ∣ d λ ( 0 ) ∣ 2 h(0)=\lambda^2/|d_\lambda(0)|^2 h ( 0 ) = λ 2 /∣ d λ ( 0 ) ∣ 2 から係数は 0.217 0.217 0.217 です。
0 20 40 60 80 100 1 10⁻⁵ 10⁻¹⁰ 10⁻¹⁵ Γt 生存確率 P(t) 数値計算 指数則(Γt = 10〜30 であてはめ) べき則の予言 (0.217 / t³)² Friedrichs 模型(E₀ = 1、結合の状態密度 E²e^(−E)、λ = 0.3、ħ = 1)の生存確率の片対数グラフ。Γt ≈ 10〜30 では指数則に乗り(あてはめた減衰率は黄金律の値の 0.90 倍で、結合が弱くないためのずれ)、Γt ≈ 40 を境にべき則 (0.217/t³)² に移る。境目の振動は共鳴の極の寄与としきい値の寄与の干渉で、数値誤差ではない。点線は定理の主要項の値で、上界ではない。
短時間の 2 次則、中間の指数則、長時間のべき則という 3 段階が、不安定な状態の生存確率の一般的な姿です。ただし、べき則が現れるのは典型的に生存確率が極端に小さくなってからで、上の模型でも 10 − 15 10^{-15} 1 0 − 15 程度です。これが長時間の破れの観測を難しくしてきました。
ここまでの理論の量が、どの実験で、どの精度で確かめられたかを見ます。どの実験でも「何の位相・何の確率を測っているか」を区別することが大切です。
Bourgain ほか(2013)は、光ピンセットで捕まえた 1 個の 87 ^{87} 87 Rb 原子に、共鳴(D2 線、波長 780 nm)に近い弱い光のパルスを当て、横方向に散乱された光子の到着時刻を数えました。励起状態の寿命は 1 / Γ = 26 1/\Gamma=26 1/Γ = 26 ns です(ここでは Γ \Gamma Γ を角振動数の単位で書き、ℏ \hbar ℏ を省きます)。
弱い光に対して 2 準位原子は線形に応答し、散乱される光の振幅は原子の分極率 ∝ 1 / ( ω 0 − ω − i Γ / 2 ) \propto1/(\omega_0-\omega-i\Gamma/2) ∝ 1/ ( ω 0 − ω − i Γ/2 ) に比例します。これは Breit–Wigner 型の散乱振幅で、その位相の微分は 命題 4.2 の ℏ δ ′ \hbar\delta' ℏ δ ′ にあたり、
τ W ( ω ) = 2 / Γ 1 + 4 ( ω − ω 0 ) 2 / Γ 2 \tau_W(\omega)=\frac{2/\Gamma}{1+4(\omega-\omega_0)^2/\Gamma^2} τ W ( ω ) = 1 + 4 ( ω − ω 0 ) 2 / Γ 2 2/Γ
です。共鳴でのピークは 2 / Γ ≈ 52 2/\Gamma\approx52 2/Γ ≈ 52 ns です。測っているのは 散乱振幅 の位相の遅れであって、全 S 行列 S = e 2 i δ S=e^{2i\delta} S = e 2 i δ の位相の遅れ τ = 2 ℏ δ ′ \tau=2\hbar\delta' τ = 2ℏ δ ′ (ピーク 4 / Γ 4/\Gamma 4/Γ )ではないことに注意してください。散乱されずに通り抜けた光は、横方向の検出器には届かないからです。
実験のパルスは強度の標準偏差が Δ t = 66 \Delta t=66 Δ t = 66 ns のガウス型で、ピーク強度は飽和強度の 0.1 0.1 0.1 倍でした。共鳴での遅延の測定値は 42 ± 2 42\pm2 42 ± 2 ns で、52 52 52 ns より小さくなっています。差の主な原因は、パルスの帯域が線幅に比べて十分狭くないこと(Δ t ≫ 1 / Γ \Delta t\gg1/\Gamma Δ t ≫ 1/Γ が成り立っていない)です。命題 2.3 の 1 は、まさにこの状況の答えを与えます。入射パルスの振幅は実数値のガウス関数で、その周波数分布は ∣ a ( ω ) ∣ 2 ∝ e − 2 Δ t 2 ( ω − ω L ) 2 |a(\omega)|^2\propto e^{-2\Delta t^2(\omega-\omega_L)^2} ∣ a ( ω ) ∣ 2 ∝ e − 2Δ t 2 ( ω − ω L ) 2 (ω L \omega_L ω L はパルスの中心周波数)です。伝達係数 F F F を分極率にとると、散乱光の時刻の重心のずれは、τ W \tau_W τ W を重み ∣ a ∣ 2 ∣ F ∣ 2 |a|^2|F|^2 ∣ a ∣ 2 ∣ F ∣ 2 で平均したものになります。数値で計算すると共鳴で 47.5 47.5 47.5 ns です。光 Bloch 方程式(2 準位原子の密度行列の方程式)を、同じガウス型パルスで数値的に解くと、ごく弱い光では励起確率の重心の遅れが 47.4 47.4 47.4 ns で、上の平均と一致します。飽和強度の 0.1 0.1 0.1 倍では非弾性散乱の寄与で 46.2 46.2 46.2 ns に下がります。論文では、測定したパルスの形をそのまま使い、遷移周波数のわずかなずれ(チャープ、毎マイクロ秒 5 5 5 MHz)を当てはめた光 Bloch 方程式の解が 42 42 42 ns を与え、測定と一致しています。私たちの単純化した計算(ガウス型のパルス、チャープなし)では、残りの約 4 4 4 ns は説明できません。
-3 -2 -1 0 1 2 3 0 10 20 30 40 50 離調 (ω_L − ω_0) / Γ 遅延(ns) 連続光の理論 τ_W パルスで平均(弱い光の極限) 光 Bloch 方程式(I/I_sat = 0.1) 測定 42 ± 2 ns 単一の Rb 原子が散乱した光パルスの遅延。破線は連続光の理論 τ_W(ピーク 2/Γ = 52 ns)、実線はガウス型パルス(強度の標準偏差 66 ns)の帯域で平均した値(弱い光の極限)、白丸は同じパルスでの光 Bloch 方程式の数値解(飽和強度の 0.1 倍、チャープなし)、黒四角は共鳴での測定値 42 ± 2 ns(Bourgain ほか 2013)。曲線と白丸は本記事での計算で、論文の図の再現ではない。
命題 4.3 は、時間の側の寿命 ℏ / Γ \hbar/\Gamma ℏ/Γ と、エネルギーの側の線幅 Γ \Gamma Γ が同じ 1 つの数で決まることを述べています。これを 2 通りの独立な測定で確かめた例が、ナトリウムの 3 p 2 P 3 / 2 3p\,{}^2P_{3/2} 3 p 2 P 3/2 準位です。
測定の方法 寿命 文献 レーザー冷却した原子のスペクトル線の幅から換算 16.237 ( 35 ) 16.237(35) 16.237 ( 35 ) nsOates, Vogel, Hall (1996) 高速の原子線で、励起後の発光の減衰を時間領域で測定 16.254 ( 22 ) 16.254(22) 16.254 ( 22 ) nsVolz ほか (1996)
括弧内は最後の桁の不確かさです。2 つの値の差 0.017 0.017 0.017 ns は、不確かさを合成した 0.04 0.04 0.04 ns より小さく、周波数領域と時間領域の測定が 0.1 % 0.1\% 0.1% 程度で一致しています。これは Weisskopf–Wigner の理論(Lorentz 型の線形と指数則が対になること)の精密な検証です。
長時間の破れは、生存確率が 10 − 10 10^{-10} 1 0 − 10 を大きく下回ってから現れるのが典型なので、長く観測されませんでした。Rothe、Hintschich、Monkman(2006)は、溶液中の有機分子の発光の減衰を、多数の寿命にわたる広いダイナミックレンジで測り、指数則の後にべき則 P ( t ) ∝ t − μ P(t)\propto t^{-\mu} P ( t ) ∝ t − μ が現れることを報告しました。Martorell、Muga、Sprung(2008)のまとめによれば、指数 μ \mu μ は試料により 2.08 2.08 2.08 から 4.07 4.07 4.07 までの整数でない値をとり、凍らせた溶液中の白金ポルフィリン(PtOEP)だけが μ = 4 \mu=4 μ = 4 でした。
定理 5.2 では、しきい値での立ち上がり λ n \lambda^n λ n (n n n は整数)が μ = 2 ( n + 1 ) \mu=2(n+1) μ = 2 ( n + 1 ) を与えます。整数でない μ \mu μ は、命題 5.3 のように立ち上がりが λ β \lambda^\beta λ β (β = μ / 2 − 1 \beta=\mu/2-1 β = μ /2 − 1 )となる状況に対応します。Martorell らは、長距離の尾をもつポテンシャルによる散乱が連続的な指数を生む機構を提案しています。どの機構が実際の分子で働いているかは、この記事の範囲を超えます。
短時間の 2 次則(系 5.1 )は、Wilkinson ほか(1997)が、加速する光格子のポテンシャルに捕まった冷たいナトリウム原子のトンネル崩壊で観測しました。崩壊の初期に、生存確率が指数則からはっきりずれる時期が見えています。この時期の長さは、5.1 の議論のとおりエネルギー分布の広がりで決まります。同じグループの Fischer、Gutiérrez-Medina、Raizen(2001)は、トンネル崩壊を一定の間隔で中断する(測定する)ことで、崩壊が遅くなる Zeno 効果と、逆に速くなる反 Zeno 効果を観測しました。中断の間隔が 2 次則の時期より短いと崩壊が抑えられる、というのが 命題 5.5[共鳴] の内容です。
§1 で見たように、Pauli の定理(定理 4.1[時間作用素と Weyl 関係] )は、下に有界なハミルトニアンに対して自己共役な時間作用素を禁じます。しかし条件を少し弱めた 強時間作用素 (弱 Weyl 関係を満たす対称作用素)は、たとえば絶対連続スペクトルをもつ系で存在しえます。この記事の量との関係は次のとおりです。
強時間作用素 T T T があり、φ \varphi φ がその定義域に入るなら、生存確率は P ( t ) ≤ 4 ( Δ φ T ) 2 / t 2 P(t)\le4(\Delta_\varphi T)^2/t^2 P ( t ) ≤ 4 ( Δ φ T ) 2 / t 2 を満たします(定理 6.2[時間作用素と Weyl 関係] 、単位は ℏ = 1 \hbar=1 ℏ = 1 )。少なくとも t − 2 t^{-2} t − 2 の速さで減るということで、定理 5.2 のべき則の尾(n ≥ 0 n\ge0 n ≥ 0 なら t − 2 ( n + 1 ) t^{-2(n+1)} t − 2 ( n + 1 ) 以上の速さ)と矛盾しません。Δ φ T \Delta_\varphi T Δ φ T は時間の揺らぎの大きさで、崩壊の時間尺度の上限の役をします。
時間とエネルギーの不確定性関係 Δ φ T Δ φ H ≥ 1 / 2 \Delta_\varphi T\,\Delta_\varphi H\ge1/2 Δ φ T Δ φ H ≥ 1/2 は、時間作用素があればその揺らぎについて正確に成り立ちます(定理 6.5[時間作用素と Weyl 関係] )。時間作用素を使わない形としては、生存確率が 1 / 2 1/2 1/2 になるまでの時間がエネルギーの分散で下から抑えられる Mandelstam–Tamm の不等式(定理 6.6[時間作用素と Weyl 関係] )があります。
Wigner 遅延は時刻そのものではなく、ポテンシャルがある場合と無い場合の 時刻の差 です。定理 3.3 の証明が示すとおり、この差はエネルギー表示の位相だけで決まり、時間作用素の存在を前提にしません。
「時間の作用素」をめぐる困難は、絶対的な時刻を自己共役作用素の固有値として読もうとするところにあります。遅延・寿命・崩壊の時刻の分布は、どれもその困難を避けて定義でき、実際に測られています。
演習 8.1 易
実数値の c ∈ C c 1 ( R ) c\in C^1_c(\mathbb{R}) c ∈ C c 1 ( R ) 、c ≠ 0 c\ne0 c = 0 と t 0 ∈ R t_0\in\mathbb{R} t 0 ∈ R について、b ( E ) = c ( E ) e i E t 0 / ℏ b(E)=c(E)e^{iEt_0/\hbar} b ( E ) = c ( E ) e i E t 0 /ℏ とする。補題 2.2 を使って ⟨ t ⟩ [ b ] = t 0 \langle t\rangle[b]=t_0 ⟨ t ⟩ [ b ] = t 0 を示し、信号 f f f を直接書いても同じ結論になることを確かめよ。
解答 b ′ = c ′ e i E t 0 / ℏ + i t 0 ℏ c e i E t 0 / ℏ b'=c'e^{iEt_0/\hbar}+\frac{it_0}{\hbar}c\,e^{iEt_0/\hbar} b ′ = c ′ e i E t 0 /ℏ + ℏ i t 0 c e i E t 0 /ℏ なので b ˉ b ′ = c c ′ + i t 0 ℏ c 2 \bar b\,b'=cc'+\frac{it_0}{\hbar}c^2 b ˉ b ′ = c c ′ + ℏ i t 0 c 2 、I m ( b ˉ b ′ ) = t 0 ℏ c 2 \mathrm{Im}(\bar b\,b')=\frac{t_0}{\hbar}c^2 Im ( b ˉ b ′ ) = ℏ t 0 c 2 です。補題 2.2 から ⟨ t ⟩ [ b ] = ℏ ⋅ t 0 ℏ ∫ c 2 / ∫ c 2 = t 0 \langle t\rangle[b]=\hbar\cdot\frac{t_0}{\hbar}\int c^2/\int c^2=t_0 ⟨ t ⟩ [ b ] = ℏ ⋅ ℏ t 0 ∫ c 2 / ∫ c 2 = t 0 です。直接には f ( t ) = ∫ c ( E ) e − i E ( t − t 0 ) / ℏ d E = f c ( t − t 0 ) f(t)=\int c(E)e^{-iE(t-t_0)/\hbar}dE=f_c(t-t_0) f ( t ) = ∫ c ( E ) e − i E ( t − t 0 ) /ℏ d E = f c ( t − t 0 ) (f c f_c f c は c c c の信号)で、c c c が実数値なので ⟨ t ⟩ [ c ] = 0 \langle t\rangle[c]=0 ⟨ t ⟩ [ c ] = 0 (補題 2.2 で I m ( c c ′ ) = 0 \mathrm{Im}(c\,c')=0 Im ( c c ′ ) = 0 )、したがって f f f の重心は t 0 t_0 t 0 です。
演習 8.2 標準
半径 a a a の剛体球の外側に共鳴があり、s s s 波の S 行列が S ( E ) = e − 2 i k a E − E r − i Γ / 2 E − E r + i Γ / 2 S(E)=e^{-2ika}\,\dfrac{E-E_r-i\Gamma/2}{E-E_r+i\Gamma/2} S ( E ) = e − 2 ik a E − E r + i Γ/2 E − E r − i Γ/2 で与えられるとする。Wigner 遅延 τ ( E ) \tau(E) τ ( E ) を求め、共鳴 E = E r E=E_r E = E r で遅延が正になる条件を、速さ v = ℏ k / m v=\hbar k/m v = ℏ k / m を使って書け。
解答 S = S 1 S 2 S=S_1S_2 S = S 1 S 2 (∣ S 1 ∣ = ∣ S 2 ∣ = 1 |S_1|=|S_2|=1 ∣ S 1 ∣ = ∣ S 2 ∣ = 1 )なら S ˉ S ′ = S ˉ 1 S 1 ′ + S ˉ 2 S 2 ′ \bar S S'=\bar S_1S_1'+\bar S_2S_2' S ˉ S ′ = S ˉ 1 S 1 ′ + S ˉ 2 S 2 ′ なので、遅延は和になります。例 3.5 と同じ計算で S 1 = e − 2 i k a S_1=e^{-2ika} S 1 = e − 2 ik a の遅延は − 2 a / v -2a/v − 2 a / v 、命題 4.1 から S 2 S_2 S 2 の遅延は ℏ Γ / ( ( E − E r ) 2 + Γ 2 / 4 ) \hbar\Gamma/((E-E_r)^2+\Gamma^2/4) ℏΓ/ (( E − E r ) 2 + Γ 2 /4 ) です。よって
τ ( E ) = − 2 a v + ℏ Γ ( E − E r ) 2 + Γ 2 / 4 \tau(E)=-\frac{2a}{v}+\frac{\hbar\Gamma}{(E-E_r)^2+\Gamma^2/4} τ ( E ) = − v 2 a + ( E − E r ) 2 + Γ 2 /4 ℏΓ で、τ ( E r ) = − 2 a / v + 4 ℏ / Γ > 0 \tau(E_r)=-2a/v+4\hbar/\Gamma\gt0 τ ( E r ) = − 2 a / v + 4ℏ/Γ > 0 となる条件は ℏ / Γ > a / ( 2 v ) \hbar/\Gamma\gt a/(2v) ℏ/Γ > a / ( 2 v ) 、つまり寿命が、粒子が距離 a / 2 a/2 a /2 を進む時間より長いことです。狭い共鳴ほど遅延は正になりやすく、幅の広い共鳴では剛体球による早まりが勝つことがあります。
演習 8.3 標準
ℏ = 1 \hbar=1 ℏ = 1 とし、スペクトル測度の密度が ρ ( E ) = E e − E \rho(E)=Ee^{-E} ρ ( E ) = E e − E (E > 0 E\gt0 E > 0 )である状態を考える。(1) 命題 5.3 を使って生存振幅を厳密に求めよ。(2) 定理 5.2 の主要項と比べ、差が O ( t − 3 ) O(t^{-3}) O ( t − 3 ) であることを確かめよ。
解答 (1) β = 1 \beta=1 β = 1 、Λ = 1 \Lambda=1 Λ = 1 で Γ ( 2 ) = 1 \Gamma(2)=1 Γ ( 2 ) = 1 なので、密度は 命題 5.3 の形そのもので、生存振幅は ( 1 + i t ) − 2 (1+it)^{-2} ( 1 + i t ) − 2 、生存確率は ( 1 + t 2 ) − 2 (1+t^2)^{-2} ( 1 + t 2 ) − 2 です。
(2) 定理 5.2 で E t h = 0 E_{\mathrm{th}}=0 E th = 0 、n = 1 n=1 n = 1 、h ( λ ) = e − λ h(\lambda)=e^{-\lambda} h ( λ ) = e − λ (G = λ e − λ G=\lambda e^{-\lambda} G = λ e − λ とその導関数は可積分で 0 0 0 に収束する)なので、主要項は 1 ! h ( 0 ) / ( i t ) 2 = − 1 / t 2 1!\,h(0)/(it)^2=-1/t^2 1 ! h ( 0 ) / ( i t ) 2 = − 1/ t 2 です。差は
1 ( 1 + i t ) 2 − 1 ( i t ) 2 = ( i t ) 2 − ( 1 + i t ) 2 ( 1 + i t ) 2 ( i t ) 2 = − 1 + 2 i t ( 1 + i t ) 2 ( i t ) 2 \frac1{(1+it)^2}-\frac1{(it)^2}=\frac{(it)^2-(1+it)^2}{(1+it)^2(it)^2}=-\frac{1+2it}{(1+it)^2(it)^2} ( 1 + i t ) 2 1 − ( i t ) 2 1 = ( 1 + i t ) 2 ( i t ) 2 ( i t ) 2 − ( 1 + i t ) 2 = − ( 1 + i t ) 2 ( i t ) 2 1 + 2 i t で、∣ t ∣ → ∞ |t|\to\infty ∣ t ∣ → ∞ では分子が 2 ∣ t ∣ 2|t| 2∣ t ∣ 程度、分母が ∣ t ∣ 4 |t|^4 ∣ t ∣ 4 程度なので O ( t − 3 ) O(t^{-3}) O ( t − 3 ) です。定理の評価では G ′ ′ ( 0 ) = − 2 G''(0)=-2 G ′′ ( 0 ) = − 2 、∫ 0 ∞ ∣ G ′ ′ ′ ∣ d λ = ∫ 0 ∞ ∣ 3 − λ ∣ e − λ d λ = 2 + 2 e − 3 \int_0^\infty|G'''|d\lambda=\int_0^\infty|3-\lambda|e^{-\lambda}d\lambda=2+2e^{-3} ∫ 0 ∞ ∣ G ′′′ ∣ d λ = ∫ 0 ∞ ∣3 − λ ∣ e − λ d λ = 2 + 2 e − 3 から ∣ R ( t ) ∣ ≤ ( 4 + 2 e − 3 ) / ∣ t ∣ 3 |R(t)|\le(4+2e^{-3})/|t|^3 ∣ R ( t ) ∣ ≤ ( 4 + 2 e − 3 ) /∣ t ∣ 3 で、実際の差(大きな t t t で約 2 / ∣ t ∣ 3 2/|t|^3 2/∣ t ∣ 3 )と整合します。
E. P. Wigner, “Lower limit for the energy derivative of the scattering phase shift”, Physical Review 98 (1955), 145–147. doi:10.1103/PhysRev.98.145
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R. Bourgain, J. Pellegrino, S. Jennewein, Y. R. P. Sortais, A. Browaeys, “Direct measurement of the Wigner time delay for the scattering of light by a single atom”, Optics Letters 38 (2013), 1963–1965. doi:10.1364/OL.38.001963 、arXiv:1210.0389
C. W. Oates, K. R. Vogel, J. L. Hall, “High precision linewidth measurement of laser-cooled atoms: resolution of the Na 3p ²P₃/₂ lifetime discrepancy”, Physical Review Letters 76 (1996), 2866. doi:10.1103/PhysRevLett.76.2866 (時間領域の値は同じ号の U. Volz ほか, 2862, doi:10.1103/PhysRevLett.76.2862 )
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