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弱い相互作用とニュートリノ:Fermi 理論から V−A、CKM 行列、ニュートリノ振動まで

対象読者: 本テーマ第 1・2 章(原子核、ハドロンとクォーク模型)と、場の量子論のディラック場の量子化(反交換関係、C/P/T)を学んだ人。ファインマン則の基本は既知とします。

前提となる記事:原子核:結合エネルギーの質量公式から、殻模型・α/β/γ 崩壊・核反応まで、ハドロンとクォーク模型:保存則・アイソスピン・SU(3) からクォークの存在まで、ディラック場の量子化:反交換関係・C/P/T・伝播関数・Majorana 場

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原子核やミューオンが別の粒子に変わる「崩壊」は、電磁気力でも強い力でも起こせない現象で、第 4 の力である「弱い力」が担っています。この記事では、その力のはたらき方を最小限の仮定で書き下し、ミューオンの寿命や、粒子の種類が飛んでいる間に入れ替わるニュートリノ振動といった実験の数値が、計算で出せることを見ます。読み終えると、弱い力の特徴(左巻きの粒子だけに効くこと)と、世代の混合から何が起こるかを式で追えるようになります。

  • 核の β 崩壊やミューオン崩壊は、Fermi の 4 点相互作用 GFG_F で記述できます。ゴールデンルールから β 崩壊の電子スペクトルと Q5Q^5 則が、ファインマン則からミューオン寿命 Γ=GF2mμ5/(192π3)\Gamma=G_F^2m_\mu^5/(192\pi^3) が導けます。数値は τμ=2.19 μs\tau_\mu=2.19\,\mu\mathrm s を再現します。
  • 荷電カレントは V−A 構造、すなわち左巻きの成分だけが結合する形をもち、パリティ(空間を鏡のように反転する操作)に対する対称性が最大限に破れます。この構造は、パイ中間子崩壊の分岐比 Γ(π→eν)/Γ(π→μν)=1.28×10−4\Gamma(\pi\to e\nu)/\Gamma(\pi\to\mu\nu)=1.28\times10^{-4}(ヘリシティ抑制)を予言し、実験と合います。
  • クォークの質量固有状態と弱い固有状態の混合は CKM 行列で表されます。nn 世代のユニタリ行列の物理的な自由度は、混合角 n(n−1)/2n(n-1)/2 個と位相 (n−1)(n−2)/2(n-1)(n-2)/2 個です。CP 非保存には 33 世代が必要で、その大きさは Jarlskog 不変量 JJ にまとまります。
  • ニュートリノにも同様の混合があり、質量固有状態の位相差が ニュートリノ振動を生みます。2 世代では P=sin⁡22θsin⁡2(Δm2L/4E)P=\sin^22\theta\sin^2(\Delta m^2L/4E)、3 世代の CP の非対称度は 16Jsin⁡Δ21sin⁡Δ32sin⁡Δ3116J\sin\Delta_{21}\sin\Delta_{32}\sin\Delta_{31} です。物質中では電子数密度が混合角を変えます(MSW 効果。物質中を通るニュートリノが電子から受ける影響で、混合のしかたが変わる現象のことです)。

原子核の β 崩壊では、核の電荷が 11 だけ変わり電子が放出されます。1914 年からのチャドウィックの測定は、この電子のエネルギーが連続スペクトルであることを示しました。2 体崩壊なら電子のエネルギーは一つの値に決まるはずです。パウリ(1930)は、もう一つの中性で軽い粒子(ニュートリノ)が一緒に出ていると仮定してこれを救い、フェルミ(1934)が、これを 4 個の粒子が 1 点で相互作用する場の理論にまとめました。この理論は、1950 年代にパリティの破れが発見されて V−A 理論に書き換えられ、1960 年代には、WW ボソンを交換する電弱理論の低エネルギー極限として理解されました(次の章で扱います)。

この記事では、前半(第 2〜3 節)でこの相互作用の形と効果を、GFG_F と V−A の二つのパラメータで定式化し、後半(第 4〜5 節)で、世代間の混合(CKM 行列とニュートリノ混合)とその帰結である CP 非保存・ニュートリノ振動を扱います。使うのは、ディラック場の量子化(ディラック場)、ファインマン則による崩壊率の公式(ファインマン則と LSZ)、核の β 崩壊のエネルギー収支(原子核)です。以下 ℏ=c=1\hbar=c=1 とし、計量は (+,−,−,−)(+,-,-,-)、γ5=iγ0γ1γ2γ3\gamma^5=i\gamma^0\gamma^1\gamma^2\gamma^3 です。

定義 2.1(Fermi の 4 点相互作用(V−A 型))↗

ミューオンの崩壊 μ−→νμ+e−+νˉe\mu^-\to\nu_\mu+e^-+\bar\nu_e の相互作用ラグランジアンを

LF=−GF2 [νˉμγμ(1−γ5)μ][eˉγμ(1−γ5)νe]+h.c.\mathcal L_{\mathrm F}=-\frac{G_F}{\sqrt2}\,\bigl[\bar\nu_\mu\gamma^\mu(1-\gamma^5)\mu\bigr]\bigl[\bar e\gamma_\mu(1-\gamma^5)\nu_e\bigr]+\mathrm{h.c.}

と定める。GFG_F は Fermi 結合定数(次元 [質量]−2[\text{質量}]^{-2})で、実測値は GF=1.1664×10−5 GeV−2G_F=1.1664\times10^{-5}\,\mathrm{GeV}^{-2} である。ここで場の記号はそれぞれの粒子の場を表す。核の β 崩壊 n→p e−νˉen\to p\,e^-\bar\nu_e では、μ→n\mu\to n、νμ→p\nu_\mu\to p と読み替え、結合を GFVudG_FV_{ud}(ハドロンの構造補正を除く)にする。

(1−γ5)(1-\gamma^5) という因子は、あとで説明するように、左巻きの成分だけを取り出します。まず、この形の相互作用が含意する 2 つの定量的な結果を見ます。

命題 2.2(β 崩壊の電子スペクトルと Q5Q^5 則)✓

核の β 崩壊 (Z,A)→(Z+1,A)+e−+νˉe(Z,A)\to(Z+1,A)+e^-+\bar\nu_e で、核の反跳とニュートリノの質量、クーロン補正を無視し、核の行列要素 MN\mathcal M_N(結合の規格化因子を含む)がエネルギーによらないとする。電子の全エネルギーを EE、運動量を pp とすると、崩壊率の分布は

dΓdE=G2∣MN∣22π3  p E (E0−E)2(me≤E≤E0)\frac{d\Gamma}{dE}=\frac{G^2|\mathcal M_N|^2}{2\pi^3}\;p\,E\,(E_0-E)^2\qquad(m_e\le E\le E_0)

(E0=Q+meE_0=Q+m_e は電子の全エネルギーの上限で、QQ は β 崩壊の Q 値(命題 4.1)[原子核] である。ニュートリノのエネルギーは Eν=E0−EE_\nu=E_0-E)。Q≫meQ\gg m_e では全崩壊率は Γ∝Q5\Gamma\propto Q^5(サージェントの法則)である。ここで G=GFVudG=G_FV_{ud} とする。

証明(命題 2.2)

Fermi の黄金律(定理 5.4)[時間発展と時間依存摂動論] により Γ=2π∣Vfi∣2ρ\Gamma=2\pi|V_{fi}|^2\rho である。体積 VV の箱で規格化すると、電子とニュートリノの運動量 p,pν\boldsymbol p,\boldsymbol p_\nu の状態密度は V d3p/(2π)3V\,d^3p/(2\pi)^3 と V d3pν/(2π)3V\,d^3p_\nu/(2\pi)^3 で、4 点相互作用の行列要素は Vfi=GMN/VV_{fi}=G\mathcal M_N/V(4 つの粒子の波動関数の規格化因子の積)だから、VV は消えて

dΓ=2πG2∣MN∣2∫d3p(2π)3d3pν(2π)3 δ(E0−E−Eν),d\Gamma=2\pi G^2|\mathcal M_N|^2\int\frac{d^3p}{(2\pi)^3}\frac{d^3p_\nu}{(2\pi)^3}\,\delta(E_0-E-E_\nu),

E0E_0 は電子とニュートリノに分配される全エネルギーである。質量ゼロのニュートリノでは Eν=pνE_\nu=p_\nu で、d3pν=4πpν2dpνd^3p_\nu=4\pi p_\nu^2dp_\nu を δ\delta 関数で積分すると 4πEν24\pi E_\nu^2、d3p=4πp2dpd^3p=4\pi p^2dp なので

dΓ=2πG2∣MN∣2(4π)2(2π)6 p2 dp Eν2=G2∣MN∣22π3 p2Eν2 dp.d\Gamma=2\pi G^2|\mathcal M_N|^2\frac{(4\pi)^2}{(2\pi)^6}\,p^2\,dp\,E_\nu^2=\frac{G^2|\mathcal M_N|^2}{2\pi^3}\,p^2E_\nu^2\,dp.

p dp=E dEp\,dp=E\,dE より dΓ=G2∣MN∣22π3 pE Eν2 dEd\Gamma=\frac{G^2|\mathcal M_N|^2}{2\pi^3}\,pE\,E_\nu^2\,dE を得る(Eν=E0−EE_\nu=E_0-E)。mem_e を無視すると p=Ep=E、E0=QE_0=Q で、全崩壊率は Γ=G2∣MN∣22π3∫0QE2(Q−E)2dE\Gamma=\frac{G^2|\mathcal M_N|^2}{2\pi^3}\int_0^QE^2(Q-E)^2dE、∫0QE2(Q−E)2dE=Q5(13−24+15)=Q5/30\int_0^QE^2(Q-E)^2dE=Q^5\bigl(\tfrac13-\tfrac24+\tfrac15\bigr)=Q^5/30 から Γ∝Q5\Gamma\propto Q^5 である。

この結果から、クーリー・プロット((dN/dE)/(pE)\sqrt{(dN/dE)/(pE)} を EE の関数として描いたもの)は (Q−E)(Q-E) に比例する直線になり、EE 軸との交点が QQ を与えます(質量があれば端点付近でこの直線が曲がるので、ニュートリノ質量の測定法になります)。連続スペクトルは、3 体崩壊で EeE_e が 00 から QQ まで動くことの現れです。

定理 2.3(ミューオンの崩壊率)✓

電子質量を無視する近似で、定義 2.1 の相互作用が与える μ−→νμe−νˉe\mu^-\to\nu_\mu e^-\bar\nu_e の崩壊率は

Γ=GF2 mμ5192π3\Gamma=\frac{G_F^2\,m_\mu^5}{192\pi^3}

である。

証明に 2 つの補題を使います。1 つ目は、ミューオン崩壊の振幅の 2 乗のスピン和が、2 つの γ 行列のトレースの積として出てくるので、その積を内積の積 (a⋅c)(b⋅d)(a\cdot c)(b\cdot d) の形にまとめるためのものです。2 つ目は、質量ゼロの 2 粒子(2 個のニュートリノ)の位相空間を、テンソル kαk′βk^\alpha k'^\beta を掛けて積分するためのものです。どちらも計算の道具で、定理の内容そのものは次の証明で使われる形だけ追えば十分です。

補題 2.4(V−A のトレース縮約)✓

任意の 4 元ベクトル a,b,c,da,b,c,d に対し、

tr[a̸γμb̸γν(1−γ5)]  tr[c̸γμd̸γν(1−γ5)]=64 (a⋅c)(b⋅d)\mathrm{tr}\bigl[\not{a}\gamma^\mu\not{b}\gamma^\nu(1-\gamma^5)\bigr]\;\mathrm{tr}\bigl[\not{c}\gamma_\mu\not{d}\gamma_\nu(1-\gamma^5)\bigr]=64\,(a\cdot c)(b\cdot d)

が成り立つ。

証明(補題 2.4)

γ 行列のトレース(補題 7.1)[摂動論とファインマン則] により tr[a̸γμb̸γν]=4(aμbν+aνbμ−gμνa ⁣⋅ ⁣b)≡Sμν\mathrm{tr}[\not a\gamma^\mu\not b\gamma^\nu]=4(a^\mu b^\nu+a^\nu b^\mu-g^{\mu\nu}a\!\cdot\!b)\equiv S^{\mu\nu}。γ5\gamma^5 を含む項は tr[γ5γαγμγβγν]=−4iϵαμβν\mathrm{tr}[\gamma^5\gamma^\alpha\gamma^\mu\gamma^\beta\gamma^\nu]=-4i\epsilon^{\alpha\mu\beta\nu}(定理 2.2[アノマリーとインスタントン]。ϵ0123=+1\epsilon^{0123}=+1。γ0γ1γ2γ3=−iγ5\gamma^0\gamma^1\gamma^2\gamma^3=-i\gamma^5 から tr[γ5γ0γ1γ2γ3]=−4i\mathrm{tr}[\gamma^5\gamma^0\gamma^1\gamma^2\gamma^3]=-4i となることで符号が決まる。ローレンツ群とポアンカレ群と同じ規約)で、tr[a̸γμb̸γν(1−γ5)]=Sμν+4iϵαμβνaαbβ≡Sμν+Aμν\mathrm{tr}[\not a\gamma^\mu\not b\gamma^\nu(1-\gamma^5)]=S^{\mu\nu}+4i\epsilon^{\alpha\mu\beta\nu}a_\alpha b_\beta\equiv S^{\mu\nu}+A^{\mu\nu}(AA は μν\mu\nu について反対称)。第 2 のトレースも同じ形で Sμν′+Aμν′S'_{\mu\nu}+A'_{\mu\nu}。対称×反対称は 00 になるので、積は S ⁣⋅ ⁣S′+A ⁣⋅ ⁣A′S\!\cdot\!S'+A\!\cdot\!A' である。 SμνSμν′=16[(aμbν+aνbμ−gμνa ⁣⋅ ⁣b)(cμdν+cνdμ−gμνc ⁣⋅ ⁣d)]S^{\mu\nu}S'_{\mu\nu}=16\bigl[(a^\mu b^\nu+a^\nu b^\mu-g^{\mu\nu}a\!\cdot\!b)(c_\mu d_\nu+c_\nu d_\mu-g_{\mu\nu}c\!\cdot\!d)\bigr] を展開する。2(a ⁣⋅ ⁣c)(b ⁣⋅ ⁣d)+2(a ⁣⋅ ⁣d)(b ⁣⋅ ⁣c)−4(a ⁣⋅ ⁣b)(c ⁣⋅ ⁣d)+4(a ⁣⋅ ⁣b)(c ⁣⋅ ⁣d)2(a\!\cdot\!c)(b\!\cdot\!d)+2(a\!\cdot\!d)(b\!\cdot\!c)-4(a\!\cdot\!b)(c\!\cdot\!d)+4(a\!\cdot\!b)(c\!\cdot\!d)(最後の 2 項は gμνgμν=4g^{\mu\nu}g_{\mu\nu}=4 から)なので S ⁣⋅ ⁣S′=32[(a ⁣⋅ ⁣c)(b ⁣⋅ ⁣d)+(a ⁣⋅ ⁣d)(b ⁣⋅ ⁣c)]S\!\cdot\!S'=32\bigl[(a\!\cdot\!c)(b\!\cdot\!d)+(a\!\cdot\!d)(b\!\cdot\!c)\bigr]。 反対称部分は A ⁣⋅ ⁣A′=(4i)2ϵαμβνϵγμδνaαbβcγdδA\!\cdot\!A'=(4i)^2\epsilon^{\alpha\mu\beta\nu}\epsilon_{\gamma\mu\delta\nu}a_\alpha b_\beta c^\gamma d^\delta で、恒等式 ϵαμβνϵγμδν=−2(δγαδδβ−δδαδγβ)\epsilon^{\alpha\mu\beta\nu}\epsilon_{\gamma\mu\delta\nu}=-2(\delta^\alpha_\gamma\delta^\beta_\delta-\delta^\alpha_\delta\delta^\beta_\gamma)(補題 2.1[アノマリーとインスタントン] の縮約で、両方の ϵ\epsilon の添字を μν\mu\nu が先頭に来るように並べ替えたもの)を使うと A ⁣⋅ ⁣A′=32[(a ⁣⋅ ⁣c)(b ⁣⋅ ⁣d)−(a ⁣⋅ ⁣d)(b ⁣⋅ ⁣c)]A\!\cdot\!A'=32\bigl[(a\!\cdot\!c)(b\!\cdot\!d)-(a\!\cdot\!d)(b\!\cdot\!c)\bigr]。合計して 64(a ⁣⋅ ⁣c)(b ⁣⋅ ⁣d)64(a\!\cdot\!c)(b\!\cdot\!d) を得る。

補題 2.5(質量ゼロの 2 粒子の位相空間積分)✓

時間的な 4 元ベクトル qq に対し

∫d3k2k0d3k′2k′0 δ4(q−k−k′) kαk′β=π24(q2gαβ+2qαqβ)\int\frac{d^3k}{2k^0}\frac{d^3k'}{2k'^0}\,\delta^4(q-k-k')\,k^\alpha k'^\beta=\frac{\pi}{24}\bigl(q^2g^{\alpha\beta}+2q^\alpha q^\beta\bigr)

である(k2=k′2=0k^2=k'^2=0)。

証明(補題 2.5)

左辺は qq のみに依存するローレンツ共変な対称テンソルなので Iαβ=Aq2gαβ+BqαqβI^{\alpha\beta}=Aq^2g^{\alpha\beta}+Bq^\alpha q^\beta の形である(不変測度と不変なデルタ関数から)。まず I0=∫d3k2k0d3k′2k′0δ4(q−k−k′)I_0=\int\frac{d^3k}{2k^0}\frac{d^3k'}{2k'^0}\delta^4(q-k-k') を qq の静止系で求める。k′=−kk'=-k、k0=k′0=∣k∣k^0=k'^0=|\boldsymbol k| で、I0=∫4πk2dk4k2δ(q2−2k)=π2I_0=\int\frac{4\pi k^2dk}{4k^2}\delta(\sqrt{q^2}-2k)=\frac\pi2。次に縮約をとる。gαβIαβg_{\alpha\beta}I^{\alpha\beta} では k ⁣⋅ ⁣k′=q2/2k\!\cdot\!k'=q^2/2(q2=(k+k′)2=2k ⁣⋅ ⁣k′q^2=(k+k')^2=2k\!\cdot\!k')より q22I0=4Aq2+Bq2\frac{q^2}2I_0=4Aq^2+Bq^2 なので 4A+B=π44A+B=\frac\pi4。qαqβIαβq_\alpha q_\beta I^{\alpha\beta} では (q ⁣⋅ ⁣k)(q ⁣⋅ ⁣k′)=(q2/2)2(q\!\cdot\!k)(q\!\cdot\!k')=(q^2/2)^2(q ⁣⋅ ⁣k=k ⁣⋅ ⁣k′=q2/2q\!\cdot\!k=k\!\cdot\!k'=q^2/2 ゆえ)より q44I0=(A+B)q4\frac{q^4}4I_0=(A+B)q^4、すなわち A+B=π8A+B=\frac\pi8。連立して A=π24A=\frac\pi{24}、B=π12B=\frac\pi{12} を得る。

証明(定理 2.3)

μ−(p)→νμ(k) e−(p′) νˉe(k′)\mu^-(p)\to\nu_\mu(k)\,e^-(p')\,\bar\nu_e(k') の振幅は、定義 2.1 から M=GF2[uˉ(k)γμ(1−γ5)u(p)][uˉ(p′)γμ(1−γ5)v(k′)]\mathcal M=\frac{G_F}{\sqrt2}\bigl[\bar u(k)\gamma^\mu(1-\gamma^5)u(p)\bigr]\bigl[\bar u(p')\gamma_\mu(1-\gamma^5)v(k')\bigr] である。スピン和(定理 3.3)[ディラック場の量子化] ∑uuˉ=p̸+m\sum u\bar u=\not p+m、∑vvˉ≠k′\sum v\bar v=\not k'(質量ゼロ)を使う。第 1 因子の絶対値の 2 乗のスピン和は tr[k̸γμ(1−γ5)(p̸+mμ)γν(1−γ5)]\mathrm{tr}[\not k\gamma^\mu(1-\gamma^5)(\not p+m_\mu)\gamma^\nu(1-\gamma^5)] で、(1−γ5)γν(1−γ5)=γν(1+γ5)(1−γ5)=0(1-\gamma^5)\gamma^\nu(1-\gamma^5)=\gamma^\nu(1+\gamma^5)(1-\gamma^5)=0 から質量の項は消え、(1−γ5)p̸γν(1−γ5)=p̸γν(1−γ5)2=2p̸γν(1−γ5)(1-\gamma^5)\not p\gamma^\nu(1-\gamma^5)=\not p\gamma^\nu(1-\gamma^5)^2=2\not p\gamma^\nu(1-\gamma^5) から 2 tr[k̸γμp̸γν(1−γ5)]2\,\mathrm{tr}[\not k\gamma^\mu\not p\gamma^\nu(1-\gamma^5)]。第 2 因子も同様に 2 tr[̸p′γμ̸k′γν(1−γ5)]2\,\mathrm{tr}[\not p'\gamma_\mu\not k'\gamma_\nu(1-\gamma^5)]。補題 2.4 で a=k,b=p,c=p′,d=k′a=k,b=p,c=p',d=k' とおくと、スピン和は GF22⋅4⋅64 (k ⁣⋅ ⁣p′)(p ⁣⋅ ⁣k′)\frac{G_F^2}2\cdot4\cdot64\,(k\!\cdot\!p')(p\!\cdot\!k')、始状態のスピン平均 12\frac12 を掛けて

⟨∣M∣2⟩=64 GF2 (p ⁣⋅ ⁣k′)(p′ ⁣⋅ ⁣k).\langle|\mathcal M|^2\rangle=64\,G_F^2\,(p\!\cdot\!k')(p'\!\cdot\!k).

崩壊率の公式(定理 6.1)[摂動論とファインマン則] から Γ=12m∫d3p′(2π)32E′d3k(2π)32k0d3k′(2π)32k′0(2π)4δ4(p−p′−k−k′)⟨∣M∣2⟩\Gamma=\frac1{2m}\int\frac{d^3p'}{(2\pi)^32E'}\frac{d^3k}{(2\pi)^32k^0}\frac{d^3k'}{(2\pi)^32k'^0}(2\pi)^4\delta^4(p-p'-k-k')\langle|\mathcal M|^2\rangle。q=p−p′q=p-p' とおいてニュートリノについて 補題 2.5 を使うと、∫(p ⁣⋅ ⁣k′)(p′ ⁣⋅ ⁣k)=pβpα′Iαβ=π24[q2(p ⁣⋅ ⁣p′)+2(p′ ⁣⋅ ⁣q)(p ⁣⋅ ⁣q)]\int(p\!\cdot\!k')(p'\!\cdot\!k)=p_\beta p'_\alpha I^{\alpha\beta}=\frac\pi{24}\bigl[q^2(p\!\cdot\!p')+2(p'\!\cdot\!q)(p\!\cdot\!q)\bigr]。ミューオンの静止系で p ⁣⋅ ⁣p′=mE′p\!\cdot\!p'=mE'(m=mμm=m_\mu)、q2=m2−2mE′q^2=m^2-2mE'、p′ ⁣⋅ ⁣q=mE′p'\!\cdot\!q=mE'、p ⁣⋅ ⁣q=m2−mE′p\!\cdot\!q=m^2-mE' なので括弧の中は mE′(m2−2mE′)+2mE′(m2−mE′)=3m3E′−4m2E′2mE'(m^2-2mE')+2mE'(m^2-mE')=3m^3E'-4m^2E'^2。電子の質量を無視して d3p′=4πE′2dE′d^3p'=4\pi E'^2dE' とし、電子のエネルギーの上限が m/2m/2 であること(他の 2 粒子が逆向きに出るとき)を使うと

Γ=12m64GF2(2π)5π24∫0m/24πE′22E′(3m3E′−4m2E′2)dE′=12m64GF232π5π24⋅2π[m3E′3−m2E′4]0m/2.\Gamma=\frac1{2m}\frac{64G_F^2}{(2\pi)^5}\frac\pi{24}\int_0^{m/2}\frac{4\pi E'^2}{2E'}\bigl(3m^3E'-4m^2E'^2\bigr)dE'=\frac1{2m}\frac{64G_F^2}{32\pi^5}\frac\pi{24}\cdot2\pi\Bigl[m^3E'^3-m^2E'^4\Bigr]_0^{m/2}.

括弧は m6/8−m6/16=m6/16m^6/8-m^6/16=m^6/16 で、係数は 12m⋅64GF232π5⋅π24⋅2π⋅m616=GF2m5192π3\frac1{2m}\cdot\frac{64G_F^2}{32\pi^5}\cdot\frac\pi{24}\cdot2\pi\cdot\frac{m^6}{16}=\frac{G_F^2m^5}{192\pi^3} である。

例 2.6(ミューオン寿命から GFG_F を測る)

mμ=0.10566 GeVm_\mu=0.10566\,\mathrm{GeV} では mμ5=1.317×10−5 GeV5m_\mu^5=1.317\times10^{-5}\,\mathrm{GeV}^5、GF2=1.360×10−10 GeV−4G_F^2=1.360\times10^{-10}\,\mathrm{GeV}^{-4} で、Γ=1.360×10−10×1.317×10−5192π3=3.01×10−19 GeV\Gamma=\dfrac{1.360\times10^{-10}\times1.317\times10^{-5}}{192\pi^3}=3.01\times10^{-19}\,\mathrm{GeV}、τ=ℏ/Γ=6.582×10−25 GeV s3.01×10−19 GeV=2.19×10−6 s\tau=\hbar/\Gamma=\dfrac{6.582\times10^{-25}\,\mathrm{GeV\,s}}{3.01\times10^{-19}\,\mathrm{GeV}}=2.19\times10^{-6}\,\mathrm s です。実測の 2.197 μs2.197\,\mu\mathrm s と 0.5%0.5\% 以内で一致し、逆に寿命から GFG_F が最も精度よく決まります。

注意 2.7(Fermi 理論の限界とボソン交換)

GFG_F の次元が [質量]−2[\text{質量}]^{-2} であることから、νμe−→μ−νe\nu_\mu e^-\to\mu^-\nu_e の断面積は次元解析で σ∼GF2s\sigma\sim G_F^2s と書け、ss とともに増大します。散乱の部分波の断面積はユニタリ性により 16π/s16\pi/s 程度を超えられないので、s∼GF−1/2∼300 GeV\sqrt s\sim G_F^{-1/2}\sim300\,\mathrm{GeV} 〜 1 TeV1\,\mathrm{TeV} で理論は破綻します。この解決が、質量 MWM_W のベクトルボソンの交換です。質量 MWM_W の WW の伝播関数 −igμν/(q2−MW2)-ig_{\mu\nu}/(q^2-M_W^2) は ∣q2∣≪MW2|q^2|\ll M_W^2 で igμν/MW2ig_{\mu\nu}/M_W^2 と近似でき、頂点が g22γμ(1−γ5)\dfrac{g}{2\sqrt2}\gamma^\mu(1-\gamma^5) のとき、GF2=g28MW2\dfrac{G_F}{\sqrt2}=\dfrac{g^2}{8M_W^2} を得ます。MW=gv/2M_W=gv/2 なら GF=1/(2v2)G_F=1/(\sqrt2v^2)、v=246 GeVv=246\,\mathrm{GeV} となり、GFG_F の逆数の平方根が弱いスケールを与えます(第 4 章)。

1956 年、リーとヤンは、弱い相互作用でのパリティ保存が実験的に確かめられていないことを指摘しました。パリティ変換 PP は空間座標の反転 x→−x\boldsymbol x\to-\boldsymbol x で、位置・運動量のような極性ベクトルは符号を変え、角運動量・スピンのような軸性ベクトルは符号を変えません。

命題 3.1(パリティ保存の検証可能な帰結)✓

相互作用がパリティを保存するなら、偏極した核(スピン J\boldsymbol J)の崩壊で放出される電子の運動量 p\boldsymbol p の角分布に、J ⁣⋅ ⁣p\boldsymbol J\!\cdot\!\boldsymbol p に比例する項は現れない。すなわち、前方と後方への放出は等確率である。

証明(命題 3.1)

PP のもとで p→−p\boldsymbol p\to-\boldsymbol p(極性)、J→J\boldsymbol J\to\boldsymbol J(軸性)だから、J ⁣⋅ ⁣p→−J ⁣⋅ ⁣p\boldsymbol J\!\cdot\!\boldsymbol p\to-\boldsymbol J\!\cdot\!\boldsymbol p(擬スカラー)。パリティが保存されるなら、観測される確率分布 w(p;J)w(\boldsymbol p;\boldsymbol J) は PP の下で不変、w(p;J)=w(−p;J)w(\boldsymbol p;\boldsymbol J)=w(-\boldsymbol p;\boldsymbol J) である。cos⁡θ=J^ ⁣⋅ ⁣p^\cos\theta=\hat{\boldsymbol J}\!\cdot\!\hat{\boldsymbol p} について w(cos⁡θ)=w(−cos⁡θ)w(\cos\theta)=w(-\cos\theta) で、奇関数の cos⁡θ\cos\theta の項(1+acos⁡θ1+a\cos\theta の aa)は 00 になる。

ウー(1957)は、低温で偏極させた 60Co^{60}\mathrm{Co} の β 崩壊 60Co(5+)→60Ni∗(4+)+e−+νˉe^{60}\mathrm{Co}(5^+)\to{}^{60}\mathrm{Ni}^*(4^+)+e^-+\bar\nu_e で、電子が核スピンと逆向きに優先的に出ることを見つけました。分布は 1+acos⁡θ1+a\cos\theta で、a≈−v/ca\approx-v/c です。V−A の構造から、この符号と大きさは次のようにわかります。ここで鍵になるのは、粒子が進む向きに対してスピンがどちらを向いているか(ヘリシティ)で、質量ゼロなら、弱い力は「スピンが進行方向と逆向き」の粒子(左巻き)だけに作用します。反粒子はその逆で、スピンが進行方向と同じ向き(右巻き)のものだけに作用します。

定義 3.2(カイラリティとヘリシティ)↗

ディラックスピノルの左巻き成分を ψL=PLψ\psi_L=P_L\psi、右巻き成分を ψR=PRψ\psi_R=P_R\psi とする。PL,R=12(1∓γ5)P_{L,R}=\tfrac12(1\mp\gamma^5)。V−A 相互作用 ψˉ′γμ(1−γ5)ψ=2 ψˉ′γμPLψ\bar\psi'\gamma^\mu(1-\gamma^5)\psi=2\,\bar\psi'\gamma^\mu P_L\psi は、左巻きの成分だけが参加する(ワイルスピノルとディラックスピノル(定義 5.4)[ローレンツ群・ポアンカレ群と粒子の分類])。質量ゼロの粒子ではカイラリティがヘリシティ(運動方向のスピン成分)に等しく、粒子は左巻き(ヘリシティ −12-\tfrac12)、反粒子は右巻き(ヘリシティ +12+\tfrac12)になる。

例 3.3(60Co^{60}\mathrm{Co} の電子の角分布)

核のスピンを zz 方向に偏極させると Jz=5J_z=5 で、崩壊後の 60Ni∗^{60}\mathrm{Ni}^* は J=4J=4 です。スピン保存から、e−e^- と νˉe\bar\nu_e は合わせてスピン Jz=+1J_z=+1 を運び出す必要があります(軌道角運動量の寄与を無視。許容遷移)。最大の JzJ_z をもつには、2 つのレプトンのスピンがともに +z+z を向きます。V−A により e−e^- は左巻き(スピンと運動量が逆向き、v→cv\to c)、νˉe\bar\nu_e は右巻き(スピンと運動量が同じ向き)なので、e−e^- は −z-z へ、νˉe\bar\nu_e は +z+z へ放出されます。つまり電子は核スピンと逆向きに出て、a=−1a=-1(v≈cv\approx c)です。v<cv<c では有限のヘリシティ −v/c-v/c だけ薄まり a=−v/ca=-v/c となります。パリティが保存されるなら a=0a=0 のはずでした(命題 3.1)。

核反ν_e(右巻き)運動 +ze⁻(左巻き)運動 −zスピン +zスピン +z核スピン +z
ウーの実験での向き(許容遷移、v≈c)。太い矢印が運動の向き、細い矢印がスピンの向き。核スピンは +z に偏極している。e⁻ は左巻きなので −z へ飛びスピンは +z、反ニュートリノは右巻きなので +z へ飛びスピンも +z。

次に、V−A の構造をはっきり示すのが、荷電パイ中間子の崩壊です。

定理 3.4(π−→ℓ−νˉℓ\pi^-\to\ell^-\bar\nu_\ell の崩壊率とヘリシティ抑制)✓

パイ中間子の崩壊定数 fπf_\pi(約 130 MeV130\,\mathrm{MeV})を、ハドロンの荷電カレントの真空–パイ中間子行列要素の大きさ ∣⟨0∣Jhadμ∣π−(p)⟩∣=fπpμ|\langle0|J^\mu_{\mathrm{had}}|\pi^-(p)\rangle|=f_\pi p^\mu で定義し、VudV_{ud} を結合に含める。V−A 相互作用のもとで、π−→ℓ−νˉℓ\pi^-\to\ell^-\bar\nu_\ell(ℓ=e,μ\ell=e,\mu、ニュートリノは質量ゼロ)の崩壊率は

Γ(π→ℓν)=GF2∣Vud∣2fπ28π mπ mℓ2(1−mℓ2mπ2)2\Gamma(\pi\to\ell\nu)=\frac{G_F^2|V_{ud}|^2f_\pi^2}{8\pi}\,m_\pi\,m_\ell^2\Bigl(1-\frac{m_\ell^2}{m_\pi^2}\Bigr)^2

であり、電子とミューオンの比は

Γ(π→eν)Γ(π→μν)=me2mμ2(mπ2−me2mπ2−mμ2)2=1.28×10−4\frac{\Gamma(\pi\to e\nu)}{\Gamma(\pi\to\mu\nu)}=\frac{m_e^2}{m_\mu^2}\Bigl(\frac{m_\pi^2-m_e^2}{m_\pi^2-m_\mu^2}\Bigr)^2=1.28\times10^{-4}

(最低次)である。

証明(定理 3.4)

ハドロンの部分は、パイ中間子が 1 つの 4 元ベクトル pμp^\mu しか持たないことから ⟨0∣Jhadμ∣π(p)⟩∝fπpμ\langle0|J^\mu_{\mathrm{had}}|\pi(p)\rangle\propto f_\pi p^\mu の形になる(ローレンツ共変性とパリティ。JhadμJ^\mu_{\mathrm{had}} の軸性部分のみが寄与する)。レプトン側の流れと合わせて、振幅は M=GF2Vudfπ pμ uˉ(pℓ)γμ(1−γ5)v(pν)\mathcal M=\frac{G_F}{\sqrt2}V_{ud}f_\pi\,p_\mu\,\bar u(p_\ell)\gamma^\mu(1-\gamma^5)v(p_\nu) となる。p=pℓ+pνp=p_\ell+p_\nu を代入する。uˉ(pℓ)̸pℓ=mℓuˉ(pℓ)\bar u(p_\ell)\not p_\ell=m_\ell\bar u(p_\ell) と、̸pνv(pν)=0\not p_\nu v(p_\nu)=0(質量ゼロ)、γ5\gamma^5 と ̸pν\not p_\nu の反可換性より

uˉ (̸pℓ+̸pν)(1−γ5)v=mℓ uˉ(1−γ5)v+uˉ(1+γ5)̸pνv=mℓ uˉ(1−γ5)v.\bar u\,\bigl(\not p_\ell+\not p_\nu\bigr)(1-\gamma^5)v=m_\ell\,\bar u(1-\gamma^5)v+\bar u(1+\gamma^5)\not p_\nu v=m_\ell\,\bar u(1-\gamma^5)v.

したがって M∝mℓ\mathcal M\propto m_\ell である。スピン和は ∑∣uˉ(1−γ5)v∣2=tr[(̸pℓ+mℓ)(1−γ5)̸pν(1+γ5)]=2 tr[(̸pℓ+mℓ)̸pν(1+γ5)]=8 pℓ ⁣⋅ ⁣pν\sum|\bar u(1-\gamma^5)v|^2=\mathrm{tr}[(\not p_\ell+m_\ell)(1-\gamma^5)\not p_\nu(1+\gamma^5)]=2\,\mathrm{tr}[(\not p_\ell+m_\ell)\not p_\nu(1+\gamma^5)]=8\,p_\ell\!\cdot\!p_\nu。ここで (1−γ5)̸pν(1+γ5)=2̸pν(1+γ5)(1-\gamma^5)\not p_\nu(1+\gamma^5)=2\not p_\nu(1+\gamma^5) を使い、γ5\gamma^5 や奇数個の γ\gamma を含むトレースは 00 とした。pℓ ⁣⋅ ⁣pν=(mπ2−mℓ2)/2p_\ell\!\cdot\!p_\nu=(m_\pi^2-m_\ell^2)/2 だから ∑∣M∣2=GF22∣Vud∣2fπ2mℓ2⋅4(mπ2−mℓ2)\sum|\mathcal M|^2=\frac{G_F^2}2|V_{ud}|^2f_\pi^2m_\ell^2\cdot4(m_\pi^2-m_\ell^2)。崩壊幅は 2 体崩壊の公式(命題 6.1)[ハドロンとクォーク模型] Γ=p∗8πmπ2∑∣M∣2\Gamma=\dfrac{p^*}{8\pi m_\pi^2}\sum|\mathcal M|^2 に p∗=(mπ2−mℓ2)/(2mπ)p^*=(m_\pi^2-m_\ell^2)/(2m_\pi) を入れて、主張の式を得る。比は GF,fπ,VudG_F,f_\pi,V_{ud} が共通で打ち消され、me=0.511m_e=0.511、mμ=105.66m_\mu=105.66、mπ=139.57 MeVm_\pi=139.57\,\mathrm{MeV} を入れると (0.511/105.66)2×[(19479.8−0.26)/(19479.8−11164.0)]2=2.339×10−5×5.486=1.283×10−4(0.511/105.66)^2\times\bigl[(19479.8-0.26)/(19479.8-11164.0)\bigr]^2=2.339\times10^{-5}\times5.486=1.283\times10^{-4} である。

軽い電子への崩壊が、位相空間が大きいにもかかわらず 10−410^{-4} に抑えられる理由は、ヘリシティで説明できます。パイ中間子は spin 0\mathrm{spin}\ 0 なので、ℓ−\ell^- と νˉℓ\bar\nu_\ell は反対向きに出てスピンが互いに打ち消さなければなりません。V−A により νˉℓ\bar\nu_\ell は右巻き(ヘリシティ +12+\tfrac12)で、したがって ℓ−\ell^- も同じヘリシティ +12+\tfrac12 でなければなりません。ところが V−A は左巻きカイラリティだけを結合させるので、質量ゼロの極限では右巻きヘリシティの ℓ−\ell^- は作れません。mℓ≠0m_\ell\ne0 の分だけ、右巻きヘリシティの成分が mℓ/Em_\ell/E の大きさで混ざるので、振幅が mℓm_\ell に比例します。もしレプトンの側に擬スカラー型の結合(ℓˉγ5ν\bar\ell\gamma^5\nu の形)があれば、この抑制は起こりません。実測の比は (1.230±0.004)×10−4(1.230\pm0.004)\times10^{-4} で、最低次の予言との差は放射補正で説明されます。

荷電カレントの結合 W+W^+ が uu 型クォークと dd 型クォークの間をつなぐとき、質量が確定した状態(質量固有状態)の組合せが、世代をまたいで結合します。質量行列を対角化するユニタリ変換が uu 型と dd 型で異なると、その不一致が混合行列として現れるのです。

定義 4.1(CKM 行列と PMNS 行列)↗

uu 型クォーク (u,c,t)(u,c,t) と dd 型クォーク (d,s,b)(d,s,b) の質量固有状態に対し、荷電カレントは

JCCμ=∑i,juˉiγμ(1−γ5) Vij djJ^\mu_{\mathrm{CC}}=\sum_{i,j}\bar u_i\gamma^\mu(1-\gamma^5)\,V_{ij}\,d_j

と書かれる。3×33\times3 のユニタリ行列 VV を CKM 行列(Cabibbo–小林–益川)という。レプトンでは、荷電レプトン ℓα=(e,μ,τ)\ell_\alpha=(e,\mu,\tau) と質量固有状態のニュートリノ νi\nu_i について ∑α,iℓˉαγμ(1−γ5)Uαiνi\sum_{\alpha,i}\bar\ell_\alpha\gamma^\mu(1-\gamma^5)U_{\alpha i}\nu_i とし、UU を PMNS 行列(Pontecorvo–牧–中川–坂田)という。ニュートリノのフレーバー状態は να=∑iUαiνi\nu_\alpha=\sum_iU_{\alpha i}\nu_i である。

次の定理は、混合行列の中の数のうち「本当に観測にかかるもの」が何個あるかを数えるものです。クォーク場に位相をかけても質量項やほかの相互作用の形は変わらない(証明の中で確かめます)ので、その分だけ行列の成分の位相は見かけ上の自由度になります。これを引いた残りが、実験で決める必要のあるパラメータです。

注意 4.2(混合行列の起源)

質量行列 Mu,MdM_u,M_d を Mu=Uu DuWu†M_u=U_u^{\,}D_uW_u^\dagger、Md=UdDdWd†M_d=U_dD_dW_d^\dagger(DD は実対角、U,WU,W はユニタリ)と分解して質量固有状態に移ると、荷電カレントは Uu†UdU_u^\dagger U_d を挟む形になります。したがって V=Uu†UdV=U_u^\dagger U_d で、ユニタリです。UU の中の位相の一部は、クォーク場の位相の取り直しで消せますが、全部は消せないというのが次の定理です。

定理 4.3(混合行列の物理的パラメータ数)✓

nn 世代の混合行列(n×nn\times n ユニタリ)のうち、場の位相の取り直しで変わらない独立なパラメータは (n−1)2(n-1)^2 個で、その内訳は混合角 12n(n−1)\tfrac12n(n-1) 個と、複素位相 12(n−1)(n−2)\tfrac12(n-1)(n-2) 個である。特に n=2n=2 では角 11 個・位相 00 個、n=3n=3 では角 33 個・位相 11 個である。

証明(定理 4.3)

n×nn\times n のユニタリ行列は n2n^2 個の実パラメータをもつ(n2n^2 個の複素数 2n22n^2 に対し、V†V=1V^\dagger V=1 が n2n^2 個の実条件を課す)。uu 型の nn 個と dd 型の nn 個のクォーク場に、独立な位相 ui→eiϕiuiu_i\to e^{i\phi_i}u_i、dj→eiχjdjd_j\to e^{i\chi_j}d_j をかけても質量項とその他の相互作用は不変で、荷電カレントの係数だけが Vij→e−iϕiVijeiχjV_{ij}\to e^{-i\phi_i}V_{ij}e^{i\chi_j} と変わる。2n2n 個の位相のうち、すべてを等しく cc にとる変換(ϕi=χj=c\phi_i=\chi_j=c)は VV を変えないので、独立に行列を変える位相は 2n−12n-1 個である。したがって物理的パラメータは n2−(2n−1)=(n−1)2n^2-(2n-1)=(n-1)^2 個。 そのうち、すべての成分を実数にしたとき(VV が実直交行列)の自由度は直交行列の次元 12n(n−1)\tfrac12n(n-1) で、これが混合角の数である(実の行列では位相の取り直しは符号の変更しかできず、角を変えない)。残りが複素位相の数で、(n−1)2−12n(n−1)=12(n−1)(n−2)(n-1)^2-\tfrac12n(n-1)=\tfrac12(n-1)(n-2) である。

n=2n=2 では位相が 00 個、つまり適当な位相の取り直しで VV を実直交行列(カビボ角 θC\theta_C の回転)にできます。CP 変換は結合 VijV_{ij} を Vij∗V_{ij}^* にするので、VV を実にできるなら CP は保存します。CP 非保存には n≥3n\ge3 世代が必要だ、というのが小林と益川(1973)の洞察で、当時は u,d,su,d,s と cc の 2 世代しか知られていませんでした。

定理 4.4(Jarlskog 不変量)✓

3×33\times3 ユニタリ行列 VV について、位相の取り直しに依存しない量

Jαβ;ij=Im(VαiVβjVαj∗Vβi∗)J_{\alpha\beta;ij}=\mathrm{Im}\bigl(V_{\alpha i}V_{\beta j}V_{\alpha j}^*V_{\beta i}^*\bigr)

は、すべての α,β,i,j\alpha,\beta,i,j について共通の実数 JJ を使って Jαβ;ij=J∑γ,kϵαβγϵijkJ_{\alpha\beta;ij}=J\sum_{\gamma,k}\epsilon_{\alpha\beta\gamma}\epsilon_{ijk} と書ける。標準パラメータ化(混合角 θ12,θ23,θ13\theta_{12},\theta_{23},\theta_{13}、位相 δ\delta)では

J=c12c23c132 s12s23s13 sin⁡δJ=c_{12}c_{23}c_{13}^2\,s_{12}s_{23}s_{13}\,\sin\delta

(sij=sin⁡θijs_{ij}=\sin\theta_{ij}、cij=cos⁡θijc_{ij}=\cos\theta_{ij})である。J≠0J\ne0 ならば、どんな位相の取り直しでも VV を実にできない(したがって CP は保存しない)。

証明(定理 4.4)

位相の取り直し Vαi→e−iϕαVαieiχiV_{\alpha i}\to e^{-i\phi_\alpha}V_{\alpha i}e^{i\chi_i} で、積 VαiVβjVαj∗Vβi∗V_{\alpha i}V_{\beta j}V^*_{\alpha j}V^*_{\beta i} は位相 e−iϕα+iχi−iϕβ+iχj+iϕα−iχj+iϕβ−iχi=1e^{-i\phi_\alpha+i\chi_i-i\phi_\beta+i\chi_j+i\phi_\alpha-i\chi_j+i\phi_\beta-i\chi_i}=1 となり不変である。定義から Jαβ;ijJ_{\alpha\beta;ij} は α↔β\alpha\leftrightarrow\beta と i↔ji\leftrightarrow j のそれぞれについて反対称である(入れ替えると積が複素共役になる)。 ユニタリ性 ∑jVβjVαj∗=δαβ\sum_jV_{\beta j}V_{\alpha j}^*=\delta_{\alpha\beta} は、α≠β\alpha\ne\beta では 00 である。これに VαiVβi∗V_{\alpha i}V^*_{\beta i} をかけると ∑jVαiVβjVαj∗Vβi∗=0\sum_jV_{\alpha i}V_{\beta j}V^*_{\alpha j}V^*_{\beta i}=0 となり、虚部をとって ∑jJαβ;ij=0\sum_jJ_{\alpha\beta;ij}=0 を得る(各 ii について)。α=β\alpha=\beta や i=ji=j では反対称性から J=0J=0。 固定した α≠β\alpha\ne\beta に対し、Aij=Jαβ;ijA_{ij}=J_{\alpha\beta;ij} は 3×33\times3 の反対称行列で各行の和が 00 である。A12=aA_{12}=a、A13=bA_{13}=b、A23=cA_{23}=c とおくと、第 1 行 a+b=0a+b=0、第 2 行 −a+c=0-a+c=0 だから b=−ab=-a、c=ac=a で、Aij=a∑kϵijkA_{ij}=a\sum_k\epsilon_{ijk} である(A12=A23=A31=aA_{12}=A_{23}=A_{31}=a)。同様に i,ji,j を固定して α,β\alpha,\beta について反対称で、和が 00(∑βJαβ;ij=0\sum_\beta J_{\alpha\beta;ij}=0 はユニタリ性 ∑βVβjVβi∗=δij\sum_\beta V_{\beta j}V^*_{\beta i}=\delta_{ij} から)なので、aa 自身が αβ\alpha\beta について a=J∑γϵαβγa=J\sum_\gamma\epsilon_{\alpha\beta\gamma} の形になる。これが主張の前半である。 標準パラメータ化の成分は Vus=s12c13V_{us}=s_{12}c_{13}、Vub=s13e−iδV_{ub}=s_{13}e^{-i\delta}、Vcb=s23c13V_{cb}=s_{23}c_{13}、Vcs=c12c23−s12s23s13eiδV_{cs}=c_{12}c_{23}-s_{12}s_{23}s_{13}e^{i\delta} で、J=Juc;sb=Im(VusVcbVub∗Vcs∗)J=J_{uc;sb}=\mathrm{Im}(V_{us}V_{cb}V_{ub}^*V_{cs}^*) を計算する(順序を α=u\alpha=u、β=c\beta=c、i=si=s、j=bj=b ととる)。Vub∗=s13eiδV_{ub}^*=s_{13}e^{i\delta}、Vcs∗=c12c23−s12s23s13e−iδV_{cs}^*=c_{12}c_{23}-s_{12}s_{23}s_{13}e^{-i\delta} から積は s12s23c132s13[c12c23eiδ−s12s23s13]s_{12}s_{23}c_{13}^2s_{13}\bigl[c_{12}c_{23}e^{i\delta}-s_{12}s_{23}s_{13}\bigr] で、虚部は c12c23s12s23c132s13sin⁡δc_{12}c_{23}s_{12}s_{23}c_{13}^2s_{13}\sin\delta。最後に、VV を位相の取り直しで実にできれば、不変量 JJ は実数の積の虚部で 00 になる。対偶が主張の後半である。

例 4.5(CKM 行列の JJ)

実測値 s12=0.225s_{12}=0.225、s23=0.042s_{23}=0.042、s13=0.0037s_{13}=0.0037、δ=1.14 rad\delta=1.14\,\mathrm{rad}(sin⁡δ=0.91\sin\delta=0.91)では、c12c23c132=0.974×0.999×1.000=0.973c_{12}c_{23}c_{13}^2=0.974\times0.999\times1.000=0.973 なので J=0.973×0.225×0.042×0.0037×0.91=3.1×10−5J=0.973\times0.225\times0.042\times0.0037\times0.91=3.1\times10^{-5} です。位相 δ≈65∘\delta\approx65^\circ は大きいにもかかわらず、混合角が小さいため CP 非保存の大きさ JJ は 3×10−53\times10^{-5} と小さくなります。角が最大のとき、JJ は 1/(63)=0.0961/(6\sqrt3)=0.096 を超えられません。クォークの CP 非保存はこの値の 3×10−43\times10^{-4} 倍です。

(0, 0)(1, 0)(ρ̄, η̄)γβαV_cd V_cb*(規格化した底辺 = 1)V_ud V_ub*V_td V_tb*
ユニタリティ三角形。ユニタリ性 V_ud V_ub* + V_cd V_cb* + V_td V_tb* = 0 は複素平面上の三角形をなし、V_cd V_cb* で規格化すると頂点は (0,0)、(1,0)、(ρ̄, η̄) になる。規格化する前の三角形の面積は常に |J|/2。

三角形の面積が ∣J∣/2|J|/2 になることは、辺 z1=VudVub∗z_1=V_{ud}V_{ub}^*、z2=VcdVcb∗z_2=V_{cd}V_{cb}^* が z1+z2+z3=0z_1+z_2+z_3=0 を満たす三角形をなし、面積が 12∣Im(z1∗z2)∣\tfrac12|\mathrm{Im}(z_1^*z_2)| であることと、Im(z1∗z2)=Im(VubVcdVud∗Vcb∗)=Juc;bd\mathrm{Im}(z_1^*z_2)=\mathrm{Im}(V_{ub}V_{cd}V_{ud}^*V_{cb}^*)=J_{uc;bd} が 定理 4.4 により ±J\pm J に等しいことから従います。この三角形の 3 つの角 α,β,γ\alpha,\beta,\gamma を B 中間子の崩壊で測定することで、CKM 行列が整合的か(三角形が閉じるか)が検証されています。

ニュートリノは、荷電レプトンと対になるフレーバーの状態 νe,νμ,ντ\nu_e,\nu_\mu,\nu_\tau で生成・検出されますが、真空中を伝わるのは質量の定まった状態 ν1,ν2,ν3\nu_1,\nu_2,\nu_3 です。両者の食い違い(定義 4.1 の UU)が、伝わる間にフレーバーが変わるニュートリノ振動を生みます。

定理 5.1(ニュートリノ振動の確率)✓

質量固有状態 νi\nu_i(質量 mim_i)が同じ運動量で、超相対論的に(E≫miE\gg m_i)、距離 LL だけ伝わるとき、フレーバー α\alpha で生成された状態がフレーバー β\beta として検出される確率は

P(να→νβ)=δαβ−4∑i>jRe Wijαβsin⁡2Δij+2∑i>jIm Wijαβsin⁡2ΔijP(\nu_\alpha\to\nu_\beta)=\delta_{\alpha\beta}-4\sum_{i>j}\mathrm{Re}\,W^{\alpha\beta}_{ij}\sin^2\Delta_{ij}+2\sum_{i>j}\mathrm{Im}\,W^{\alpha\beta}_{ij}\sin2\Delta_{ij}

である。ここで Wijαβ=UβiUαi∗Uβj∗UαjW^{\alpha\beta}_{ij}=U_{\beta i}U^*_{\alpha i}U^*_{\beta j}U_{\alpha j}、Δij=Δmij2L4E\Delta_{ij}=\dfrac{\Delta m^2_{ij}L}{4E}、Δmij2=mi2−mj2\Delta m^2_{ij}=m_i^2-m_j^2 である。反ニュートリノでは U→U∗U\to U^*、すなわち虚部の項の符号が反転する。

証明(定理 5.1)

始状態 ∣να⟩=∑iUαi∗∣νi⟩|\nu_\alpha\rangle=\sum_iU^*_{\alpha i}|\nu_i\rangle (να=∑iUαiνi\nu_\alpha=\sum_iU_{\alpha i}\nu_i の双対)の各成分は、距離 LL で位相 e−iϕie^{-i\phi_i}、ϕi=EiT−pL\phi_i=E_iT-pL を得る。運動量 pp が共通なら Ei=p2+mi2≃p+mi2/2pE_i=\sqrt{p^2+m_i^2}\simeq p+m_i^2/2p で、T≃LT\simeq L(超相対論的)、E≃pE\simeq p とすると、ϕi≃mi2L/2E\phi_i\simeq m_i^2L/2E に(共通の位相を除いて)等しい。検出振幅は Aαβ=⟨νβ∣να(L)⟩=∑iUβiUαi∗e−iϕi\mathcal A_{\alpha\beta}=\langle\nu_\beta|\nu_\alpha(L)\rangle=\sum_iU_{\beta i}U^*_{\alpha i}e^{-i\phi_i} で、確率は P=∣A∣2=∑i,jUβiUαi∗Uβj∗Uαj e−i(ϕi−ϕj)P=|\mathcal A|^2=\sum_{i,j}U_{\beta i}U^*_{\alpha i}U^*_{\beta j}U_{\alpha j}\,e^{-i(\phi_i-\phi_j)}。i=ji=j の項と i≠ji\ne j の項に分ける。i>ji>j のペアと i<ji<j のペアは互いに複素共役になるので、Wij=UβiUαi∗Uβj∗UαjW_{ij}=U_{\beta i}U^*_{\alpha i}U^*_{\beta j}U_{\alpha j} として

P=∑i∣Uαi∣2∣Uβi∣2+2∑i>jRe[Wije−iθij],θij=ϕi−ϕj=Δmij2L2E=2Δij.P=\sum_i|U_{\alpha i}|^2|U_{\beta i}|^2+2\sum_{i>j}\mathrm{Re}\bigl[W_{ij}e^{-i\theta_{ij}}\bigr],\quad\theta_{ij}=\phi_i-\phi_j=\frac{\Delta m^2_{ij}L}{2E}=2\Delta_{ij}.

Re[We−iθ]=ReWcos⁡θ+ImWsin⁡θ\mathrm{Re}[We^{-i\theta}]=\mathrm{Re}W\cos\theta+\mathrm{Im}W\sin\theta である。ユニタリ性 ∑iUβiUαi∗=δαβ\sum_iU_{\beta i}U^*_{\alpha i}=\delta_{\alpha\beta} の絶対値の 2 乗をとると δαβ=∑i∣Uαi∣2∣Uβi∣2+2∑i>jReWij\delta_{\alpha\beta}=\sum_i|U_{\alpha i}|^2|U_{\beta i}|^2+2\sum_{i>j}\mathrm{Re}W_{ij} だから、第 1 項を δαβ−2∑i>jReWij\delta_{\alpha\beta}-2\sum_{i>j}\mathrm{Re}W_{ij} に置き換えると、cos⁡θ−1=−2sin⁡2(θ/2)=−2sin⁡2Δij\cos\theta-1=-2\sin^2(\theta/2)=-2\sin^2\Delta_{ij} から主張の式が出る。反ニュートリノの混合は UU の代わりに U∗U^* を使うので、W→W∗W\to W^* となり、ImW\mathrm{Im}W の符号だけが反転する。

系 5.2(2 世代の振動)✓

2 つのフレーバーが回転角 θ\theta の実直交行列で混合するとき、α≠β\alpha\ne\beta に対し

P(να→νβ)=sin⁡22θ sin⁡2 ⁣(Δm2L4E)=sin⁡22θ sin⁡2 ⁣(1.267 Δm2[eV2] L[km]/E[GeV]).P(\nu_\alpha\to\nu_\beta)=\sin^22\theta\,\sin^2\!\Bigl(\frac{\Delta m^2L}{4E}\Bigr)=\sin^22\theta\,\sin^2\!\bigl(1.267\,\Delta m^2[\mathrm{eV}^2]\,L[\mathrm{km}]/E[\mathrm{GeV}]\bigr).
証明(系 5.2)

U=(cos⁡θsin⁡θ−sin⁡θcos⁡θ)U=\begin{pmatrix}\cos\theta&\sin\theta\\-\sin\theta&\cos\theta\end{pmatrix}(実)では W21αβ=Uβ2Uα2Uβ1Uα1W^{\alpha\beta}_{21}=U_{\beta2}U_{\alpha2}U_{\beta1}U_{\alpha1} が実で、α=e\alpha=e、β=μ\beta=\mu なら Uμ2Ue2Uμ1Ue1=cos⁡θ⋅sin⁡θ⋅(−sin⁡θ)⋅cos⁡θ=−14sin⁡22θU_{\mu2}U_{e2}U_{\mu1}U_{e1}=\cos\theta\cdot\sin\theta\cdot(-\sin\theta)\cdot\cos\theta=-\tfrac14\sin^22\theta。定理 5.1 で虚部は 00、P=−4⋅(−14sin⁡22θ)sin⁡2Δ21=sin⁡22θsin⁡2Δ21P=-4\cdot(-\tfrac14\sin^22\theta)\sin^2\Delta_{21}=\sin^22\theta\sin^2\Delta_{21}。数係数は、ℏc=1.973×10−16 GeV m\hbar c=1.973\times10^{-16}\,\mathrm{GeV\,m} を使い、Δm2=1 eV2=10−18 GeV2\Delta m^2=1\,\mathrm{eV}^2=10^{-18}\,\mathrm{GeV}^2、L=1 km=103 m=5.068×1018 GeV−1L=1\,\mathrm{km}=10^3\,\mathrm m=5.068\times10^{18}\,\mathrm{GeV}^{-1} の組で Δm2L/(4E)=10−18×5.068×1018/4/E=1.267/E[GeV]\Delta m^2L/(4E)=10^{-18}\times5.068\times10^{18}/4/E=1.267/E[\mathrm{GeV}] から出る。

例 5.3(実験の数値)

大気ニュートリノ・加速器ニュートリノでは ∣Δm322∣=2.5×10−3 eV2|\Delta m^2_{32}|=2.5\times10^{-3}\,\mathrm{eV}^2、sin⁡22θ23≈1\sin^22\theta_{23}\approx1 です。振動の第 1 極大は 1.267Δm2L/E=π/21.267\Delta m^2L/E=\pi/2 で、E=1 GeVE=1\,\mathrm{GeV} なら L=496 kmL=496\,\mathrm{km}。T2K 実験(L=295 kmL=295\,\mathrm{km}、ピークエネルギー E=0.6 GeVE=0.6\,\mathrm{GeV})では位相が 1.267×2.5×10−3×295/0.6=1.56≈π/21.267\times2.5\times10^{-3}\times295/0.6=1.56\approx\pi/2 で、ミューニュートリノの生き残りはほぼ 00 です。原子炉ニュートリノ(L=1.6 kmL=1.6\,\mathrm{km}、E=4 MeVE=4\,\mathrm{MeV})では位相が 1.271.27、sin⁡22θ13=0.086\sin^22\theta_{13}=0.086 から欠損は 0.086×sin⁡2(1.27)=7.8%0.086\times\sin^2(1.27)=7.8\% で、Daya Bay などが約 8%8\% の欠損を測定しました。

質量二乗差 Δm2\Delta m^2 を動かすと、振動の周期がどう変わるかを見てみましょう。青い曲線が現れる位置(第 1 極大)に注目してください。

距離 L に対するミューニュートリノの転換確率の曲線。質量二乗差を小さい値から大きい値へ動かすと、波の周期が縮み、第 1 極大の位置が 1240 km から 248 km へ近づいていく。
2 世代の振動確率 (、)。 を から へ増やすと、第 1 極大の距離が に従って縮む。破線は (第 1 極大 )。

3 世代では、虚部の項が CP 非保存を担います。

系 5.4(ニュートリノの CP 非対称度)✓

3 世代の振動で α≠β\alpha\ne\beta のとき、ニュートリノと反ニュートリノの振動確率の差は

P(να→νβ)−P(νˉα→νˉβ)=16 J∑γϵαβγ  sin⁡Δ21sin⁡Δ32sin⁡Δ31P(\nu_\alpha\to\nu_\beta)-P(\bar\nu_\alpha\to\bar\nu_\beta)=16\,J\sum_\gamma\epsilon_{\alpha\beta\gamma}\;\sin\Delta_{21}\sin\Delta_{32}\sin\Delta_{31}

である(JJ は 定理 4.4 を V=UV=U に適用したもの)。

証明(系 5.4)

定理 5.1 により、差は 4∑i>jImWijsin⁡2Δij4\sum_{i>j}\mathrm{Im}W_{ij}\sin2\Delta_{ij} である。Wij=UαjUβiUαi∗Uβj∗W_{ij}=U_{\alpha j}U_{\beta i}U^*_{\alpha i}U^*_{\beta j} は 定理 4.4 の積の i↔ji\leftrightarrow j を入れ替えたもの、すなわち ImWij=Jαβ;ji=−Jϵαβγϵijk\mathrm{Im}W_{ij}=J_{\alpha\beta;ji}=-J\epsilon_{\alpha\beta\gamma}\epsilon_{ijk} である。組 (i,j)=(2,1),(3,1),(3,2)(i,j)=(2,1),(3,1),(3,2) について ϵijk\epsilon_{ijk} は ϵ213=−1\epsilon_{213}=-1、ϵ312=+1\epsilon_{312}=+1、ϵ321=−1\epsilon_{321}=-1 だから、∑i>jImWijsin⁡2Δij=Jϵαβγ[sin⁡2Δ21−sin⁡2Δ31+sin⁡2Δ32]\sum_{i>j}\mathrm{Im}W_{ij}\sin2\Delta_{ij}=J\epsilon_{\alpha\beta\gamma}\bigl[\sin2\Delta_{21}-\sin2\Delta_{31}+\sin2\Delta_{32}\bigr]。Δ31=Δ21+Δ32\Delta_{31}=\Delta_{21}+\Delta_{32} なので、a=Δ21a=\Delta_{21}、b=Δ32b=\Delta_{32} として sin⁡2a+sin⁡2b−sin⁡2(a+b)=4sin⁡asin⁡bsin⁡(a+b)\sin2a+\sin2b-\sin2(a+b)=4\sin a\sin b\sin(a+b)(和積公式から。sin⁡2a+sin⁡2b=2sin⁡(a+b)cos⁡(a−b)\sin2a+\sin2b=2\sin(a+b)\cos(a-b)、sin⁡2(a+b)=2sin⁡(a+b)cos⁡(a+b)\sin2(a+b)=2\sin(a+b)\cos(a+b) で、差は 2sin⁡(a+b)[cos⁡(a−b)−cos⁡(a+b)]=4sin⁡(a+b)sin⁡asin⁡b2\sin(a+b)[\cos(a-b)-\cos(a+b)]=4\sin(a+b)\sin a\sin b)。ゆえに差は 4Jϵ⋅4sin⁡Δ21sin⁡Δ32sin⁡Δ314J\epsilon\cdot4\sin\Delta_{21}\sin\Delta_{32}\sin\Delta_{31} である。

したがって、ニュートリノの CP 非保存を測るには J≠0J\ne0 のほかに、3 つの質量二乗差がすべて非零で、Δij\Delta_{ij} がどれも小さすぎないことが要ります。レプトンの混合角(sin⁡2θ12=0.307\sin^2\theta_{12}=0.307、sin⁡2θ23≈0.55\sin^2\theta_{23}\approx0.55、sin⁡2θ13=0.022\sin^2\theta_{13}=0.022)では JJ の最大値は 定理 4.4 の式で c12s12c23s23c132s13=0.033c_{12}s_{12}c_{23}s_{23}c_{13}^2s_{13}=0.033 となり、クォークの 3×10−53\times10^{-5} より 3 桁大きく、δ\delta が大きければ CP 非保存の効果が大きいことが期待されます(現在の実験で δ\delta を測定中です)。

太陽や地球の内部を通るニュートリノは、電子から前方散乱を受けます。νe\nu_e だけが荷電カレントで電子と相互作用できるので(νμ,ντ\nu_\mu,\nu_\tau は中性カレントのみで、これは 3 つの世代に共通な位相として落ちる)、ポテンシャル V=2GFNeV=\sqrt2G_FN_e(NeN_e は電子数密度)が νe\nu_e のみに加わります。ヴォルフェンシュタイン(1978)が指摘しました。この値は、4 点相互作用 定義 2.1 をフィアツ(Fierz)変換で [νˉeγμ(1−γ5)νe][eˉγμ(1−γ5)e][\bar\nu_e\gamma^\mu(1-\gamma^5)\nu_e][\bar e\gamma_\mu(1-\gamma^5)e] の形に書き換え、電子の背景について平均すると、静止した非偏極の電子では ⟨eˉγμe⟩=Neδμ0\langle\bar e\gamma^\mu e\rangle=N_e\delta^{\mu0} のみが残ることから導かれます(Fierz 変換は 定理 2.4[アノマリーとインスタントン]、この平均の計算は 例 2.5[アノマリーとインスタントン])。数値は V=7.63×10−14 eV×(ρ/g cm−3)YeV=7.63\times10^{-14}\,\mathrm{eV}\times(\rho/\mathrm{g\,cm^{-3}})Y_e です。

定理 5.5(2 世代の物質中の混合(MSW 効果))✓

2 つのフレーバー (νe,νx)(\nu_e,\nu_x) が、真空の質量二乗差 Δm2=m22−m12\Delta m^2=m_2^2-m_1^2、混合角 θ\theta で混合し、電子数密度 NeN_e が一定の物質中を伝わるとする。A=2EV/Δm2A=2EV/\Delta m^2(V=2GFNeV=\sqrt2G_FN_e)と定めると、物質中の質量固有状態は混合角 θm\theta_m と質量二乗差 Δmm2\Delta m^2_m:

tan⁡2θm=sin⁡2θcos⁡2θ−A,Δmm2=Δm2(cos⁡2θ−A)2+sin⁡22θ\tan2\theta_m=\frac{\sin2\theta}{\cos2\theta-A},\qquad\Delta m^2_m=\Delta m^2\sqrt{(\cos2\theta-A)^2+\sin^22\theta}

をもつ。A=cos⁡2θA=\cos2\theta のとき sin⁡22θm=1\sin^22\theta_m=1(共鳴)で、Δmm2\Delta m^2_m は最小になる。

証明(定理 5.5)

フレーバー基底での時間発展のハミルトニアンは、真空では質量行列から Hvac=12EU diag(m12,m22) UTH_{\mathrm{vac}}=\dfrac1{2E}U\,\mathrm{diag}(m_1^2,m_2^2)\,U^{\mathsf T}、U=(cos⁡θsin⁡θ−sin⁡θcos⁡θ)U=\begin{pmatrix}\cos\theta&\sin\theta\\-\sin\theta&\cos\theta\end{pmatrix} で、定数項を除いて Hvac=Δm24E(−cos⁡2θsin⁡2θsin⁡2θcos⁡2θ)H_{\mathrm{vac}}=\dfrac{\Delta m^2}{4E}\begin{pmatrix}-\cos2\theta&\sin2\theta\\\sin2\theta&\cos2\theta\end{pmatrix}((1,1)(1,1) 成分は 12E(m12cos⁡2θ+m22sin⁡2θ)=m12+m224E−Δm24Ecos⁡2θ\frac1{2E}(m_1^2\cos^2\theta+m_2^2\sin^2\theta)=\frac{m_1^2+m_2^2}{4E}-\frac{\Delta m^2}{4E}\cos2\theta から)。物質のポテンシャルは diag(V,0)=V2+V2σ3\mathrm{diag}(V,0)=\frac V2+\frac V2\sigma_3 で、V2=Δm24EA\frac V2=\frac{\Delta m^2}{4E}A なので、単位行列に比例する部分を除いて

H=Δm24E[(A−cos⁡2θ) σ3+sin⁡2θ σ1]H=\frac{\Delta m^2}{4E}\Bigl[(A-\cos2\theta)\,\sigma_3+\sin2\theta\,\sigma_1\Bigr]

(σ1,3\sigma_{1,3} はパウリ行列)。エルミート行列のスペクトル定理(定理 4.2)[スペクトル定理] により、この実対称行列は回転で対角化され、固有値は ±Δm24E(A−cos⁡2θ)2+sin⁡22θ\pm\frac{\Delta m^2}{4E}\sqrt{(A-\cos2\theta)^2+\sin^22\theta} で、差が Δmm22E\frac{\Delta m^2_m}{2E} に等しい。回転角 θm\theta_m は H∝−cos⁡2θmσ3+sin⁡2θmσ1H\propto-\cos2\theta_m\sigma_3+\sin2\theta_m\sigma_1 の形から cos⁡2θm=cos⁡2θ−A(cos⁡2θ−A)2+sin⁡22θ\cos2\theta_m=\dfrac{\cos2\theta-A}{\sqrt{(\cos2\theta-A)^2+\sin^22\theta}}、sin⁡2θm=sin⁡2θ⋯\sin2\theta_m=\dfrac{\sin2\theta}{\sqrt{\cdots}} と決まり、tan⁡2θm\tan2\theta_m の式を得る。A=cos⁡2θA=\cos2\theta では cos⁡2θm=0\cos2\theta_m=0 である。

例 5.6(太陽ニュートリノ)

太陽の中心では ρ≈150 g cm−3\rho\approx150\,\mathrm{g\,cm^{-3}}、Ye≈0.67Y_e\approx0.67 で V=7.7×10−12 eVV=7.7\times10^{-12}\,\mathrm{eV} です。エネルギー E=10 MeVE=10\,\mathrm{MeV} の 8B^8\mathrm B ニュートリノでは、Δm212=7.4×10−5 eV2\Delta m^2_{21}=7.4\times10^{-5}\,\mathrm{eV}^2 から A=2×107×7.7×10−12/7.4×10−5=2.1A=2\times10^7\times7.7\times10^{-12}/7.4\times10^{-5}=2.1 です。sin⁡2θ12=0.307\sin^2\theta_{12}=0.307 では cos⁡2θ=0.39\cos2\theta=0.39、sin⁡2θ=0.92\sin2\theta=0.92 なので tan⁡2θm=0.92/(0.39−2.1)=−0.54\tan2\theta_m=0.92/(0.39-2.1)=-0.54、θm=76∘\theta_m=76^\circ となり、νe\nu_e はほぼ純粋に ν2\nu_2 の物質中の固有状態(sin⁡2θm=0.94\sin^2\theta_m=0.94)として生成されます。密度がゆっくり変わる(断熱)なら、固有状態の成分は変わらないまま太陽の表面に出て真空の固有状態につながるので、地球に届いて νe\nu_e として検出される確率は cos⁡2θcos⁡2θm+sin⁡2θsin⁡2θm=0.693×0.06+0.307×0.94=0.33\cos^2\theta\cos^2\theta_m+\sin^2\theta\sin^2\theta_m=0.693\times0.06+0.307\times0.94=0.33 です(振動の位相が平均されるとして)。観測された 8B^8\mathrm B ニュートリノの νe\nu_e の割合 ≈0.3\approx0.3〜0.350.35 とよく合います。真空振動の予想値 1−12sin⁡22θ=0.581-\tfrac12\sin^22\theta=0.58 ではこの欠損は説明できません。

注意 5.7(ニュートリノの質量)

振動が起こるには Δm2≠0\Delta m^2\ne0、つまり少なくとも 2 つのニュートリノが質量をもたねばなりません。素粒子の標準模型(第 4 章)のニュートリノは質量ゼロなので、振動の発見(スーパーカミオカンデ 1998、SNO 2001)は標準模型を超える最初の確かな実験的証拠になりました。振動は質量二乗の差しか与えないため、質量そのものの尺度は β 崩壊のスペクトルの端点(命題 2.2 のクーリー・プロットの曲がり)や宇宙論で測られ、上限は eV の桁以下です。質量項が、ディラック型(右巻きニュートリノを導入)かマイオラナ型(ニュートリノ=反ニュートリノ)かは、ニュートリノを出さない二重 β 崩壊の探索で決まります。

演習 6.1標準

定理 3.4 の式を使って π+→μ+νμ\pi^+\to\mu^+\nu_\mu の崩壊幅から π+\pi^+ の寿命を見積もれ。GF=1.1664×10−5 GeV−2G_F=1.1664\times10^{-5}\,\mathrm{GeV}^{-2}、∣Vud∣=0.974|V_{ud}|=0.974、fπ=130.4 MeVf_\pi=130.4\,\mathrm{MeV}、mπ=139.57 MeVm_\pi=139.57\,\mathrm{MeV}、mμ=105.66 MeVm_\mu=105.66\,\mathrm{MeV}、ℏ=6.582×10−25 GeV s\hbar=6.582\times10^{-25}\,\mathrm{GeV\,s}。(π→μν\pi\to\mu\nu が分岐比 99.99%99.99\% を占める。)

解答

GF2∣Vud∣2fπ2/(8π)=1.3605×10−10×0.9487×0.017004/25.133=8.73×10−14 GeV−2G_F^2|V_{ud}|^2f_\pi^2/(8\pi)=1.3605\times10^{-10}\times0.9487\times0.017004/25.133=8.73\times10^{-14}\,\mathrm{GeV}^{-2}。mπmμ2=0.13957×0.011164=1.558×10−3 GeV3m_\pi m_\mu^2=0.13957\times0.011164=1.558\times10^{-3}\,\mathrm{GeV}^3、(1−mμ2/mπ2)2=(1−0.5731)2=0.1822(1-m_\mu^2/m_\pi^2)^2=(1-0.5731)^2=0.1822。積は 8.73×10−14×1.558×10−3×0.1822=2.48×10−17 GeV8.73\times10^{-14}\times1.558\times10^{-3}\times0.1822=2.48\times10^{-17}\,\mathrm{GeV}。寿命は τ=6.582×10−25/2.48×10−17=2.65×10−8 s\tau=6.582\times10^{-25}/2.48\times10^{-17}=2.65\times10^{-8}\,\mathrm s。実測 2.60×10−8 s2.60\times10^{-8}\,\mathrm s とよく合う。

演習 6.2易

Δm322=2.5×10−3 eV2\Delta m^2_{32}=2.5\times10^{-3}\,\mathrm{eV}^2、sin⁡22θ23=1\sin^22\theta_{23}=1 のとき、E=2 GeVE=2\,\mathrm{GeV} のミューニュートリノが L=1000 kmL=1000\,\mathrm{km} 飛んだ後の生き残り確率を求めよ。

解答

位相は 1.267×2.5×10−3×1000/2=1.5841.267\times2.5\times10^{-3}\times1000/2=1.584。sin⁡2(1.584)=0.9999\sin^2(1.584)=0.9999 に近く、P(νμ→νμ)=1−1×0.9999≈0P(\nu_\mu\to\nu_\mu)=1-1\times0.9999\approx0。(ほぼ完全に ντ\nu_\tau に変わる。)

演習 6.3標準

4 世代の混合行列の混合角と位相の数を 定理 4.3 から求めよ。また 2 世代では VV を位相の取り直しで実直交行列にできることを、成分を使って示せ。

解答

n=4n=4: 角 12⋅4⋅3=6\tfrac12\cdot4\cdot3=6 個、位相 12⋅3⋅2=3\tfrac12\cdot3\cdot2=3 個(物理パラメータ合計 9=(4−1)29=(4-1)^2)。n=2n=2: V=(V11V12V21V22)V=\begin{pmatrix}V_{11}&V_{12}\\V_{21}&V_{22}\end{pmatrix} をユニタリとして、uu 型の位相 ϕ1,ϕ2\phi_1,\phi_2 と dd 型の位相 χ1,χ2\chi_1,\chi_2 で行を e−iϕie^{-i\phi_i}、列を eiχje^{i\chi_j} 倍できる。第 1 行と第 1 列の成分を実正にするように ϕ1,χ1\phi_1,\chi_1 を取り、第 2 行を ϕ2\phi_2 で調整して V21V_{21} を実にする。ユニタリ性(行の直交性)から第 2 列の成分は (V12,V22)=(sin⁡θ,cos⁡θ)eiχ(V_{12},V_{22})=(\sin\theta,\cos\theta)e^{i\chi} の形に固定され、χ2\chi_2 で位相を消すと実の回転行列になる。

演習 6.4易

標準パラメータ化で、θ12=13.0∘\theta_{12}=13.0^\circ、θ23=2.4∘\theta_{23}=2.4^\circ、θ13=0.21∘\theta_{13}=0.21^\circ、δ=65∘\delta=65^\circ のとき JJ を求めよ。

解答

s12=0.225s_{12}=0.225、c12=0.974c_{12}=0.974、s23=0.0419s_{23}=0.0419、c23=0.9991c_{23}=0.9991、s13=0.00367s_{13}=0.00367、c132=1.0000c_{13}^2=1.0000、sin⁡65∘=0.906\sin65^\circ=0.906。J=0.974×0.9991×1.0×0.225×0.0419×0.00367×0.906=3.05×10−5J=0.974\times0.9991\times1.0\times0.225\times0.0419\times0.00367\times0.906=3.05\times10^{-5}。

  • David Griffiths, Introduction to Elementary Particles, 2nd ed., Wiley-VCH, 2008 — 弱い相互作用の章(ミューオン崩壊の計算、CKM 行列、ニュートリノ振動)。
  • Carlo Giunti and Chung W. Kim, Fundamentals of Neutrino Physics and Astrophysics, Oxford University Press, 2007 — 振動の一般公式と物質効果。
  • C. S. Wu et al., “Experimental Test of Parity Conservation in Beta Decay”, Phys. Rev. 105 (1957), 1413–1415。
  • M. Kobayashi and T. Maskawa, “CP-Violation in the Renormalizable Theory of Weak Interaction”, Prog. Theor. Phys. 49 (1973), 652–657。
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  • L. Wolfenstein, “Neutrino oscillations in matter”, Phys. Rev. D 17 (1978), 2369–2374。

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執筆: Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 2 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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