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準備 1:ゲージ場のブロック平均と平均化された輪郭変数 — Bałaban『Averaging operations for lattice gauge theories』(1985) の結果

対象読者: 格子ゲージ理論(リンク変数・プラケット・Haar 測度)、行列 Lie 群の指数・対数と BCH 公式、ブロックスピンのくりこみ群の初歩を学んだ博士課程以上。原論文は読んでいなくてよい。

前提となる記事:格子ゲージ場:Wilson 作用・Haar 測度・Elitzur の定理、格子上の微分形式とゲージ固定:離散 Hodge 分解・トーロン・Gribov 問題

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格子の上のゲージ場を、細かい格子から粗い格子へ、ブロックごとに平均して移す操作を定める章です。何度くり返しても場が暴れず、解析的に扱えることを示します。後続の Bałaban の論文はすべて、ここで得た評価を部品として使います。

  • ゲージ場のくりこみ群は、細かい格子の配置 UU を粗い格子の配置 U‾\overline U に移す平均操作で定義されます。Bałaban の平均は、ブロックの中の LdL^d 本の輪郭のホロノミーの対数を平均し、指数に戻す操作で、ゲージ共変 (Uu‾)=(U‾)u(\overline{U^u})=(\overline U)^u かつ局所的です(定義 3.1、命題 3.5)。
  • プラケットが ∣U(∂p)−1∣<α0\lvert U(\partial p)-1\rvert\lt\alpha_0 を満たせば、1 回の平均で ∣U‾(∂p′)−1∣<L2α0+C0(L2α0)2\lvert\overline U(\partial p')-1\rvert\lt L^2\alpha_0+C_0(L^2\alpha_0)^2 です。kk 回の平均では ∣U(∂p)−1∣<α0η2\lvert U(\partial p)-1\rvert\lt\alpha_0\eta^2(η=L−k\eta=L^{-k})から ∣U‾k(∂p)−1∣<2α0\lvert\overline U^k(\partial p)-1\rvert\lt2\alpha_0 が出ます(原論文 Proposition 1・2、命題 4.2)。鍵は、四辺の輪郭の和が L×LL\times L の正方形の境界に組み直される線形の恒等式です(補題 4.1)。
  • 背景場 U0U_0 のまわりで U=eiηAU0U=e^{i\eta A}U_0 と書き、ブロックごとにゲージを付け替えると、相対的な kk 回平均の対数 Qk(U0,ηA)Q_k(U_0,\eta A) は AA の解析関数で、線形部分は標準のブロック平均 QkQ_k に O(α0)O(\alpha_0) の補正を足したもの、2 次以上は C2∣A∣2C_2\lvert A\rvert^2 で抑えられ、定数は kk によりません(Proposition 3・4、命題 6.4)。汎関数微分も η\eta によらず有界です(Proposition 5、命題 6.5)。
  • 付け替えた合成平均は、1 回ずつの付け替え平均の合成に等しく(原論文 (92)、命題 5.4)、これから 2 つの配置の平均の差が元の差の O(1)O(1) 倍で抑えられること(Proposition 6・7、命題 7.1)が出ます。
  • ゲージ変換にも同じ型の平均が定義でき、積や正則なゲージ変換との積に対して、スケールに合った評価が保たれます(Proposition 8–10)。さらに後続論文で使う Euclid 共変な平均(Federbush の群平均、命題 3.3)と、δ 関数の線形化(命題 6.7)を証明します。

Wilson 流のくりこみ群は、格子間隔 η\eta の配置についての関数 ρ(U)\rho(U) を、格子間隔 LηL\eta の配置についての関数

ρ′(V)=∫dU δ(V U‾−1)ρ(U)\rho'(V)=\int dU\,\delta\bigl(V\,\overline U^{-1}\bigr)\rho(U)

に移す積分変換です。ここで dUdU はボンドごとの Haar 測度の積、U‾\overline U は UU をブロックごとに平均した粗い配置です。ゲージ理論ではこの平均に二つの要請があります。第一に、ρ\rho がゲージ不変なら ρ′\rho' もゲージ不変であること。これは平均がゲージ変換と可換 Uu‾=(U‾)u\overline{U^u}=(\overline U)^{u} なら成り立ちます(命題 3.5)。第二に、単位元の近くの配置 U=eiAU=e^{iA} では、1ilog⁡U‾\tfrac1i\log\overline U が AA の線形なブロック平均で近似されること。線形な(Abel 的な)理論では、ブロック平均 QQ の下での Gauss 積分の計算(命題 3.2[厳密くりこみ群])がくりこみ群の 1 段の骨格であり、非可換な理論でもこの骨格を「小さい場」の上で使いたいからです。

Bałaban は 1984–85 年の一連の論文で、この二つを満たす具体的な平均を定め、それがくりこみ群の反復に耐えること、すなわち「正則な配置の平均を何度とっても、スケールに見合った意味で正則なまま」で「平均は場について解析的」であることを示しました。本章で読む論文 T. Bałaban, “Averaging operations for lattice gauge theories”, Commun. Math. Phys. 98 (1985) 17–51 がその部分です。プロパゲータの論文(CMP 95・96)、正則配置の空間の論文(CMP 99)、変分問題の論文(CMP 102)と並び、3 次元の紫外安定性(CMP 102)と、4 次元の小場の有効作用・クラスター展開・大場のくりこみ(CMP 109, 116, 119, 122)の技術的な土台になっています。

平均 U‾\overline U のプラケット変数は、UU のプラケット変数から直接は決まりません。U‾(c)\overline U(c) は粗いボンド cc に沿った輪郭のホロノミーの平均で、粗いプラケット p′p' のまわりの 4 つの平均の積 U‾(∂p′)\overline U(\partial p') が 11 に近いことは、「4 辺の輪郭を合わせると L×LL\times L の正方形を囲む閉路になる」という幾何に依存します。線形化すれば輪郭の和は正確に正方形の境界の和になり、正方形の中の L2L^2 枚のプラケットの和に書き直せます(Stokes の定理の格子版)。このため 1 回の平均でプラケットの大きさはほぼ L2L^2 倍になり、kk 回で L2k=η−2L^{2k}=\eta^{-2} 倍です。したがって出発点で ∣U(∂p)−1∣<α0η2\lvert U(\partial p)-1\rvert\lt\alpha_0\eta^2 と仮定すれば、粗い格子では O(α0)O(\alpha_0) に収まります(Proposition 2)。物理的には、η−2(U(∂p)−1)\eta^{-2}(U(\partial p)-1) が場の強さ FμνF_{\mu\nu} に当たり、それが O(α0)O(\alpha_0) であるという連続極限に整合的な条件です。

線形化の側も同様に非自明です。平均の線形部分は、背景場 U0U_0 が自明でなければ平行移動 R(U0(Γ))R(U_0(\Gamma)) を含み、標準のブロック平均 QQ から O(α0)O(\alpha_0) ずれます。このずれを kk 回積み重ねても発散しないこと、とくに (1+O(α0L2jη2))(1+O(\alpha_0L^{2j}\eta^2)) の積が jj について収束することが、Proposition 4・5 の要点です。

1.3. 4 次元のくりこみ群での使われ方

Section titled “1.3. 4 次元のくりこみ群での使われ方”

本テーマの後続の章(Bałaban の RG I–III と Large field renormalization I・II、Dimock の QED₃)では、本章の結果が次の形で使われます。

本章の主張使われ方
命題 4.2小場領域で粗い配置 V=U‾kV=\overline U^k が正則であること。大場の特性関数の冗長性の議論
命題 3.5、命題 3.6くりこみ変換がゲージ不変性・格子 Euclid 不変性を保つこと
命題 6.4、命題 6.5δ 関数の線形化、Ward 恒等式の導出での平均操作の微分
命題 7.1最小配置と配置の差、背景場の取り替えの評価
命題 3.3Euclid 共変な軸ゲージ固定で使う平均化された輪郭変数

量子電磁力学 QED₄ のような可換理論では、Lie 環は可換で BCH の補正が消え、本章の非線形評価の多くは自明になります。それでも平均の幾何(輪郭の組み直しと L2L^2 のスケーリング)は同じで、Dimock の QED₃ の多段ブロック平均は本章の線形部分とまったく同じ構造をもちます。本章の評価は次元によらないので、3 次元と 4 次元で同じものを使えます。

1.4. 本章の構成と原論文との対応

Section titled “1.4. 本章の構成と原論文との対応”
原論文本章
§A (16)–(41)§2.2–§2.4 の補題(補題 2.2、補題 2.3、補題 2.5、補題 2.6)。原論文の gg 関数による導関数の計算は、Cauchy 評価(補題 2.4)に置き換えます
§B (42)–(54), Prop. 1・2定義 3.1、命題 4.2
§C (55)–(108), (92)命題 5.3、命題 5.4
§D Prop. 3・4・5命題 6.3、命題 6.4、命題 6.5
§E Prop. 6・7命題 7.1、命題 7.2
§F Prop. 8・9・10, (207)–(214)命題 8.3、命題 8.4、命題 8.5
RG I (0.5)–(0.12)命題 3.3、定義 3.4、命題 3.6
RG I (2.4) 型命題 6.7

原論文は定数を O(1)O(1) で書き、「容易に」「同様に」で多くの段を省いています。本章ではすべての段を書き、定数の依存性(dd だけか、dd と LL か)を明示します。原論文と主張の形が違うところは、その場の注意に書きます。

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執筆: Claude Code(Opus 5.5)・監査 1 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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