多項式 1,x,x2,… を、互いに「直角」な(内積が 0 になる)多項式の列に作り直す話です。作り直した列は、どんな重みを選んでも同じ形の漸化式に従い、その零点は数値積分の最も効率のよい節点になります。読み終えると、この漸化式と零点の性質を自分で導き、Hermite・Legendre など名前のついた多項式を一つの枠組みで扱えるようになります。
- 実数直線上の(有限個の点に集中しない)測度 μ に対し、⟨p,q⟩=∫pqdμ で Gram–Schmidt を 1,x,x2,… に施すと、直交多項式 Pn が一意に定まります。
- 直交多項式は必ず三項漸化式 xPn=Pn+1+αnPn+βnPn−1 に従います。直交性だけからこの形が出ます。
- 漸化式を畳み込むと Christoffel–Darboux 公式が得られ、これから Pn の零点が実で単純なこと、Pn と Pn+1 の零点が交互に並ぶことが従います。
- Pn の零点を節点とする Gauss 求積は、n 点で 2n−1 次の多項式まで厳密です。重みは全て正で、節点と重みはヤコビ行列(対角線とその両隣にだけ成分のある行列。三重対角行列)の固有値と固有ベクトルから求まります。
- Hermite・Laguerre・Legendre・Jacobi の各多項式は、重みが Pearson 型の微分方程式を満たすという共通の構造をもち、Rodrigues の公式の一つの証明で直交性・ノルム・微分方程式がまとめて得られます。
多項式で関数を近似する基本の道具は Taylor 展開ですが、「区間全体でほどよく近い」近似には向きません。区間 [−1,1] 上で最小二乗の意味で最もよい多項式近似を作ろうとすると、単項式 1,x,x2,… ではなく、互いに直交する多項式の列を基底に取るのが自然です。
直交多項式は応用上も至るところに現れます。調和振動子の固有関数には Hermite 多項式が、水素原子の動径部分には Laguerre 多項式が、中心力場の角度部分には Legendre 多項式が現れます。数値積分では、n 点で 2n−1 次まで厳密な Gauss 求積の節点が直交多項式の零点です。
この記事は、特殊関数と漸近解析のテーマの最初の章です。テーマ全体の流れは次のとおりです。
- この章: 一般の測度に対する直交多項式の理論と、古典的な四つの族。
- 次の章: 球面上の調和関数(球面調和関数)。そこでは Legendre 多項式が主役になり、加法定理と平面波の部分波展開が証明されます。
- 続く章: Bessel・Airy・Whittaker 関数と、特殊関数の漸近評価、漸近解析の一般的な手法、WKB 近似。
次の定義の測度 μ は、「積分でどこをどれだけ重く数えるか」を決めるものです。たとえば dμ=dx なら普通の積分、dμ=e−x2dx なら原点付近を重く数える積分になります。測度論の細部は使わず、積分 ∫fdμ が普通の積分のように計算できると思って読めば十分です。条件 (ii)(有限個の点に集中しない)は、内積が 0 になる零でない多項式が出てしまわないための条件で、定義のすぐ後に理由を説明します。
定義 2.1(測度と内積)↗
μ を R 上の正の Borel 測度で、次を満たすものとする。(i) すべての k≥0 について ∫∣x∣kdμ<∞。(ii) μ は有限個の点に集中しない(すなわち、任意の有限集合 F について μ(R∖F)>0)。μ の台(μ がほぼ全て集中する最小の閉集合)の凸包の内部を Iμ と書く。実係数多項式 p,q に対し
⟨p,q⟩=∫p(x)q(x)dμ(x),h(p)=⟨p,p⟩とおく。R[x]k で次数が k 以下の実多項式全体を表す。
(ii) により、零でない多項式 p については p2>0 が有限個の点を除いて成り立つので ⟨p,p⟩>0 です。したがって ⟨⋅,⋅⟩ は R[x] 上の内積になります。
定理 2.2(直交多項式の存在と一意性)✓
最高次の係数が 1 の多項式の列 (Pn)n≥0 で、degPn=n かつ Pn⊥R[x]n−1 を満たすものがただ一つ存在する。hn=⟨Pn,Pn⟩>0 とおく。
証明(定理 2.2)
1,x,x2,… に Gram–Schmidt の直交化(定理 6.1[内積空間とグラム・シュミット直交化])を施せば、Pn=xn−∑k<nhk⟨xn,Pk⟩Pk として、互いに直交して degPn=n、最高次の係数 1 のものが得られます。一意性: 別の列 (Qn) があるとき、Pn−Qn は次数が n 未満で R[x]n−1 に直交するので、自分自身と直交して 0 です。
∎
Pn は 1,x,…,xn−1 の張る空間(=R[x]n−1)の直交補空間における xn 方向の元です。P0,…,Pn は R[x]n の直交基底なので、p∈R[x]n は p=∑k≤nhk⟨p,Pk⟩Pk と展開できます。
例 2.3(区間 [−1,1] 上の一様測度)
dμ=dx とすると、P0=1、P1=x、P2=x2−31 です。実際 ⟨x2,1⟩=32、⟨1,1⟩=2 なので P2=x2−22/3=x2−31 です。後で見るように、これは Legendre 多項式の最高次係数を 1 にそろえたものです。
定理 3.1(三項漸化式)✓
n≥0 について
xPn(x)=Pn+1(x)+αnPn(x)+βnPn−1(x)(P−1=0, β0=0)が成り立つ。ここで αn=hn⟨xPn,Pn⟩∈R、βn=hn−1hn>0(n≥1)である。
証明(定理 3.1)
xPn−Pn+1 は次数が n 以下なので、P0,…,Pn で展開できます。係数は hk⟨xPn−Pn+1,Pk⟩=hk⟨xPn,Pk⟩=hk⟨Pn,xPk⟩ で、ここで内積が x の掛け算について対称であること(∫xPnPkdμ の対称性)を使いました。k≤n−2 なら xPk の次数は n−1 以下なので ⟨Pn,xPk⟩=0 です。k=n の係数が αn です。k=n−1 では、xPn−1=Pn+(次数≤n−1) より ⟨Pn,xPn−1⟩=hn なので、係数は hn/hn−1=βn です。
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この形が成り立つのは、掛け算 x が内積について対称であるという一点によります。逆に βn>0 の三項漸化式で作った多項式列は、ある測度の直交多項式になります(Favard の定理。ここでは使わないので証明は省きます)。
定理 4.1(Christoffel–Darboux の公式)✓
n≥0 と実数 x=y について
k=0∑nhkPk(x)Pk(y)=hn1⋅x−yPn+1(x)Pn(y)−Pn(x)Pn+1(y).また
k=0∑nhkPk(x)2=hn1(Pn+1′(x)Pn(x)−Pn′(x)Pn+1(x))>0.
証明(定理 4.1)
定理 3.1 を x で書いたものに Pk(y) を掛け、x と y を入れ替えたものを引くと、αk の項が消えて
(x−y)Pk(x)Pk(y)=[Pk+1(x)Pk(y)−Pk(x)Pk+1(y)]−βk[Pk(x)Pk−1(y)−Pk−1(x)Pk(y)]です。Dk=Pk+1(x)Pk(y)−Pk(x)Pk+1(y)(D−1=0)とおくと、右辺は Dk−βkDk−1 です。両辺を hk で割り βk/hk=1/hk−1 を使うと
(x−y)hkPk(x)Pk(y)=hkDk−hk−1Dk−1で、k=0,…,n について足すと右辺は望遠鏡和になり第 1 式を得ます。第 2 式は第 1 式で y→x の極限をとったもので、x−yPn+1(x)Pn(y)−Pn(x)Pn+1(y) の y→x の極限が Pn+1′(x)Pn(x)−Pn′(x)Pn+1(x) だからです。正であることは、左辺が P02/h0=1/h0>0 を含む平方和であることから従います。
∎
左辺 Kn(x,y)=∑k<nhkPk(x)Pk(y)(和を n−1 までとしたもの)は、R[x]n−1 の再生核です。実際、q∈R[x]n−1 を q=∑k<nckPk(ck=⟨q,Pk⟩/hk)と展開すれば
∫Kn(x,y)q(y)dμ(y)=q(x)
が成り立ちます。再生核とは、このように積分すると元の多項式をそのまま返す関数のことです。この性質が Gauss 求積の重みの計算で効きます。
次の定理の証明の方針は、背理法です。符号が変わる零点が n 個より少ないと仮定して、それらを零点にもつ低次の多項式 q を作ります。すると Pn と q の積は符号が変わらず、積分が 0 にならないのに、直交性からは 0 になるはずだ、という矛盾が出ます。
定理 5.1(零点は実・単純・台の内側)✓
Pn(n≥1)の n 個の零点は全て実数で互いに異なり、Iμ の内部に含まれる。
証明(定理 5.1)
Iμ の中にある、奇数重複度の Pn の実零点を x1,…,xm とし、q(x)=∏i=1m(x−xi) とおきます。m≤n です。Pnq は Iμ の中で符号を変えません(符号が変わるのは奇数重複度の零点だけで、それは全て q の零点として打ち消されているから)。したがって Pnq は Iμ の上で ≥0 か ≤0 の一方で、連続性により閉包でも同じです。μ は Iμ の閉包に集中しているので、∫Pnqdμ の被積分関数は符号が一定で、零でない多項式なので有限個の点を除いて 0 でなく、条件 (ii) から ∫Pnqdμ=0 です。
m<n なら q∈R[x]n−1 なので ⟨Pn,q⟩=0 となり矛盾します。よって m=n で、Pn は Iμ の中に奇数重複度の零点を n 個(重複度を数えて少なくとも n)もちます。次数が n なので、これが全ての零点で、全て単純で実です。
∎
定理 5.2(零点の交互性)✓
Pn+1 の零点を ξ1<⋯<ξn+1、Pn の零点を x1<⋯<xn とすると
ξ1<x1<ξ2<x2<⋯<xn<ξn+1である。
証明(定理 5.2)
定理 4.1 の第 2 式から、全ての実数 x で Pn+1′(x)Pn(x)−Pn′(x)Pn+1(x)>0 です。x=ξj を代入すると Pn+1(ξj)=0 なので Pn+1′(ξj)Pn(ξj)>0、すなわち Pn(ξj) の符号は Pn+1′(ξj) の符号に等しいです。ξj は 定理 5.1 により単純零点なので、隣り合う零点で Pn+1′ の符号は交互に変わります(Pn+1 が ξj で符号を変えるため)。したがって Pn(ξ1),…,Pn(ξn+1) の符号は交互で、中間値の定理により各区間 (ξj,ξj+1)(n 個)に Pn の零点が少なくとも一つあります。Pn の零点は全部で n 個なので、各区間にちょうど一つで、それ以外にはありません。
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Legendre 多項式 P₃(白丸)と P₄(黒丸)の零点。P₄ の零点の間に P₃ の零点がちょうど一つずつ入っている。
積分 ∫fdμ を、有限個の点での値の重みつき和で近似する公式 ∑i=1nwif(xi) を求積公式といいます。n 個の節点を勝手に取ると、重みをうまく選べば n−1 次の多項式まで厳密にできます。節点を Pn の零点に取ると、次数が倍近くまで上がります。次の定理に出る Lagrange の補間基底 ℓi は、節点 xi で 1、ほかの節点で 0 になる n−1 次の多項式のことです。
定理 6.1(Gauss 求積)✓
x1<⋯<xn を Pn の零点とし、ℓi(x)=∏j=ixi−xjx−xj を Lagrange の補間基底、wi=∫ℓidμ とする。
- 任意の p∈R[x]2n−1 について ∫pdμ=∑i=1nwip(xi)。
- wi=∫ℓi2dμ>0 であり、wi=1/∑k=0n−1hkPk(xi)2。
- n 点の求積公式(節点・重みは任意)で、R[x]2n の全ての多項式に対して厳密なものは存在しない。
証明(定理 6.1)
1: p∈R[x]2n−1 を Pn で割って p=qPn+r(degq≤n−1、degr≤n−1)と書きます。⟨q,Pn⟩=0 なので ∫pdμ=∫rdμ です。r は次数が n−1 以下なので、節点での値から補間公式 r=∑ir(xi)ℓi で復元でき、∫rdμ=∑iwir(xi) です。Pn(xi)=0 より r(xi)=p(xi) なので、1 が従います。
2: ℓi2 の次数は 2n−2 なので 1 を適用でき、∫ℓi2dμ=∑jwjℓi(xj)2=wi です。これは ℓi=0 より正です。さらに、定理 4.1 の第 1 式で y=xi とし Pn(xi)=0 を使うと、Kn(x,xi)=∑k<nhkPk(x)Pk(xi)=hn−1(x−xi)Pn(x)Pn−1(xi) です(n を n−1 に取り替えた形)。これは xj(j=i)で 0 になる次数 n−1 の多項式なので、Kn(⋅,xi)=Kn(xi,xi)ℓi です。再生核の性質(q=1)により 1=∫Kn(x,xi)dμ(x)=Kn(xi,xi)wi で、2 が従います。
3: 節点が y1,…,yn の公式があるとし、p=∏i(x−yi)2∈R[x]2n をとると ∑iwip(yi)=0 ですが、∫pdμ>0 です。
∎
節点と重みは、固有値問題としても得られます。考え方は、三項漸化式を k=0,…,n−1 について縦に並べると行列とベクトルの関係の形になり、Pn(x)=0 のときに余りの項が消えて固有値の式 Av=λv になる、ということです。正規直交化した多項式 p^k=Pk/hk に対して 定理 3.1 は
xp^k=βk+1p^k+1+αkp^k+βkp^k−1
となります(hk+1/hk=βk+1、βkhk−1/hk=βk)。これを成分とする n×n の三重対角行列
Jn=α0β1β1α1⋱β2⋱βn−1⋱αn−1
をヤコビ行列といいます。実対称行列です。
定理 6.3(Golub–Welsch:零点と重みはヤコビ行列から)✓
Jn の固有値は Pn の n 個の零点 x1,…,xn で、xi に対する長さ 1 の固有ベクトルの第 1 成分を ui とすると、Gauss 求積の重みは wi=h0ui2=μ(R)ui2 である。
証明(定理 6.3)
v(x)=(p^0(x),…,p^n−1(x))T とおきます。上の漸化式を k=0,…,n−1 に使うと Jnv(x)=xv(x)−βnp^n(x)en(en は第 n 単位ベクトル)です。Pn(x)=0 なら v(x)(第 1 成分 p^0=h0−1/2=0 なので零ベクトルではない)が固有値 x の固有ベクトルです。零点は n 個あり単純なので、これで Jn の n 個の固有値が尽くされます。
xi の固有ベクトルは v(xi) の定数倍です。長さ 1 に正規化すると第 1 成分は ui=p^0/∥v(xi)∥、∥v(xi)∥2=∑k<nhkPk(xi)2=1/wi(定理 6.1 の 2)なので、ui2=h0wi です。
∎
例 6.4(Chebyshev の重みと等重み求積)
dμ=1−x2dx((−1,1))とします。x=cosθ とおくと Tm(cosθ)=cosmθ で多項式 Tm(次数 m、最高次係数 2m−1)が定まります(cos(m+1)θ+cos(m−1)θ=2cosθcosmθ から Tm+1=2xTm−Tm−1)。置換積分により ⟨Tm,Tl⟩=∫0πcosmθcoslθdθ=0(m=l)なので、21−nTn が μ の直交多項式 Pn です。零点は xk=cos2n(2k−1)π です。重みは全て等しく wk=π/n です。確かめるには、R[x]2n−1 の基底 T0,…,T2n−1 について nπ∑kTm(xk)=∫Tmdμ を見れば十分です。右辺は πδm0、左辺は m=0 で π、0<m<2n では nπRe∑k=1neim(2k−1)π/2n で、等比級数の和は m が偶数なら 0、奇数なら純虚数 i/sin2nmπ になるので、実部は 0 です。重みは ℓi に厳密性を適用すれば wi=∫ℓidμ と決まるので、定理 6.1 の Gauss 重みもこの π/n です。
Hermite・Laguerre・Legendre・Jacobi の各多項式を、共通の枠組みで扱います。次の定義では、重み w の形を二つの多項式 σ(次数 2 以下)と τ(次数 1)で指定します。Pearson の方程式 (σw)′=τw は、その w が満たす微分方程式です。四つの族は、この σ,τ の選び方の違いにすぎず、後の表でその対応を確かめます。
定義 7.1(古典的な重み)↗
開区間 (a,b)(端点は無限でもよい)上の正の C1 級関数 w が、次数が高々 2 の多項式 σ(x)=s2x2+s1x+s0 と次数がちょうど 1 の多項式 τ(x)=t1x+t0 について
(σw)′=τw(Pearson の方程式)を満たし、さらに (B) 全ての j≥0 について xjσ(x)w(x)→0 (x→a+, x→b−) と、全ての j について ∫xjwdx<∞ が成り立つとき、w を古典的な重みという。dμ=wdx とする。
定理 7.2(Rodrigues の公式)✓
古典的な重みに対して yn(x)=w(x)1dxndn[σ(x)nw(x)] とおく。
- yn は次数 n 以下の多項式で、xn の係数は ℓn=∏j=n−12n−2(t1+js2) である。
- degp<n の多項式 p について ∫pynwdx=0。
- ℓn=0 なら degyn=n で、yn/ℓn は μ の直交多項式 Pn であり、∫yn2wdx=(−1)nn!ℓn∫σnwdx。
- 微分方程式 σPn′′+τPn′=(n(n−1)s2+nt1)Pn が成り立つ。
証明(定理 7.2)
補題: 0≤k≤n について dxkdk[σnw]=σn−kwqn,k となる多項式 qn,k(次数 ≤k)が存在する。k=0 は qn,0=1 です。Pearson の方程式から m≥1 に対し (σmw)′=σm−1(τ+(m−1)σ′)w です((σmw)′=σm−1(σw)′+(m−1)σm−1σ′w)。これを k<n の qn,k に使うと、dxd[σn−kwqn,k]=σn−k−1w[(τ+(n−k−1)σ′)qn,k+σqn,k′] で、括弧の中は次数 ≤k+1 です。これが qn,k+1 です。
1: 補題で k=n とすると yn=qn,n は次数 ≤n の多項式です。括弧の最高次係数の漸化式は、qn,k の xk の係数を ck とすると ck+1=(t1+(n−k−1)⋅2s2+ks2)ck=(t1+(2n−k−2)s2)ck です。c0=1 から cn=∏k=0n−1(t1+(2n−k−2)s2)=ℓn です。
2: ∫p(σnw)(n)dx を部分積分で n 回変形します。境界項は p(i)(σnw)(n−1−i) の形で、補題により (σnw)(n−1−i)=σi⋅σwqn,n−1−i(n−1−i≤n−1 なので σn−(n−1−i)=σi+1)です。これに多項式を掛けたものが条件 (B) により端点で 0 になります。よって ∫pynwdx=(−1)n∫p(n)σnwdx で、degp<n なら p(n)=0 です。
3: ℓn=0 なら 1 より degyn=n で、2 より yn⊥R[x]n−1 なので 定理 2.2 の一意性により yn/ℓn=Pn です。ノルムは 2 と同じ部分積分を p=yn(次数 n)に適用して、∫yn2wdx=(−1)n∫yn(n)σnwdx、yn(n)=n!ℓn から従います。
4: 作用素 Ly=σy′′+τy′ は、Pearson の方程式から Ly=w1(σwy′)′ と書け、R[x]k を R[x]k に写します。部分積分と (B) により ⟨Lp,q⟩=−∫σwp′q′dx=⟨p,Lq⟩ で L は対称です。q∈R[x]n−1 について ⟨LPn,q⟩=⟨Pn,Lq⟩=0 なので、LPn∈R[x]n は R[x]n−1 に直交し、LPn=cPn です。最高次係数を比べて c=n(n−1)s2+nt1 です。
∎
四つの族がこの枠組みに入ることを確かめます。
| 名前 | 区間 | 重み w | σ | τ | ℓn=0 の条件 |
|---|
| Hermite Hn | R | e−x2 | 1 | −2x | s2=0、t1=−2 |
| Laguerre Ln(α) | (0,∞) | xαe−x(α>−1) | x | α+1−x | s2=0、t1=−1 |
| Legendre Pn | (−1,1) | 1 | 1−x2 | −2x | t1+js2=−(2+j) |
| Jacobi Pn(α,β) | (−1,1) | (1−x)α(1+x)β(α,β>−1) | 1−x2 | β−α−(α+β+2)x | t1+js2=−(α+β+2+j) |
どの場合も ℓn=0 です。Legendre は Jacobi の α=β=0 で、Jacobi の α+β+2+j>0 は α,β>−1 から従います。(B) は、Hermite では e−x2xj→0、Laguerre では xα+1e−xxj→0(x→0 は α+1>0 による)、Legendre・Jacobi では σw=(1−x)α+1(1+x)β+1→0 から確かめられます。
標準的な規格化は次のとおりです。
- Hermite: Hn=(−1)nyn=(−1)nex2dxndne−x2。ℓn=(−2)n なので最高次係数は 2n、∫Hn2e−x2dx=n!2nπ(定理 7.2 の 3 で ∫e−x2dx=π を使う)。
- Laguerre: Ln(α)=n!1yn=n!1x−αexdxndn(xn+αe−x)。ℓn=(−1)n、∫(Ln(α))2xαe−xdx=n!Γ(n+α+1)(∫xn+αe−xdx=Γ(n+α+1))。
- Legendre(標準の規格化の多項式は、最高次係数を 1 にそろえた Pn と区別して Pn と書く): Pn=2nn!1dxndn(x2−1)n。(x2−1)n=(−1)n(1−x2)n なので Pn=2nn!(−1)nyn。ℓn=(−1)nn!(2n)!、最高次係数 2n(n!)2(2n)!、∫−11Pn2dx=2n+12。
- Jacobi: Pn(α,β)=2nn!(−1)nyn。ノルムは (2n+α+β+1)n!Γ(n+α+β+1)2α+β+1Γ(n+α+1)Γ(n+β+1) で、Beta 積分を使って同様に計算できます。
命題 7.3(Legendre 多項式の基本事項)✓
- ∫−11Pn2dx=2n+12。
- Pn(1)=1、Pn(−1)=(−1)n。
- Pn は Legendre の微分方程式 ((1−x2)y′)′+n(n+1)y=0 を満たす。
証明(命題 7.3)
1: yn=dxndn(1−x2)n と 定理 7.2 の 3 から ∫yn2dx=(−1)nn!ℓn∫−11(1−x2)ndx=(2n)!In、In=∫−11(1−x2)ndx です。部分積分 In=In−1−∫x⋅x(1−x2)n−1dx=In−1−2nIn(x(1−x2)n−1=−2n1dxd(1−x2)n を使う)より In=2n+12nIn−1、I0=2 なので In=(2n+1)!22n+1(n!)2 です。Pn=2nn!(−1)nyn を二乗して、∫Pn2dx=22n(n!)2(2n)!In=2n+12 です。
2: (x2−1)n=(x−1)n(x+1)n の n 階微分を Leibniz の公式で書くと、x=1 で零にならないのは (x−1)n に n 回の微分が全て当たる項 n!(x+1)n だけで、x=1 で n!2n です。よって Pn(1)=1。(x2−1)n が偶関数なので n 階微分は偶奇性 (−1)n をもち、Pn(−1)=(−1)n です。
3: 定理 7.2 の 4 で σ=1−x2、τ=−2x、s2=−1、t1=−2 です。(σy′)′=σy′′+σ′y′=σy′′+τy′ なので、定理 7.2 の 4 は ((1−x2)y′)′=(n(n−1)(−1)+n(−2))y=−n(n+1)y を意味します。Pn は Pn の定数倍なので同じ式を満たします。
∎
例 7.4(三項漸化式の具体形)
測度が偶な Hermite と Legendre では αn=0 で、定理 3.1 の βn=hn/hn−1(hn は最高次係数を 1 にそろえた多項式のノルム二乗)を計算するだけです。
Hermite: Pn=2−nHn なので hn=2−2n⋅n!2nπ=n!π/2n、βn=n/2 です。xPn=Pn+1+2nPn−1 に Pn=2−nHn を代入して、Hn+1=2xHn−2nHn−1 を得ます。
Legendre: 最高次係数を λn=2n(n!)2(2n)! とすると λn/λn−1=n2n−1、βn=2n+12n−1(λnλn−1)2=(2n+1)(2n−1)n2 です。Pn=λnPn で書き直すと (2n+1)xPn=(n+1)Pn+1+nPn−1 です。
Laguerre: Rodrigues の公式を Leibniz 則で展開すると yn=∑k(kn)(−1)kΓ(k+α+1)Γ(n+α+1)xk で、xn の係数は (−1)n、xn−1 の係数は (−1)n−1n(n+α) です。最高次係数を 1 にした Qn=(−1)nyn=xn−n(n+α)xn−1+⋯ について、漸化式の xn の係数を比べると αn=−n(n+α)+(n+1)(n+1+α)=2n+1+α、βn=h(Qn)/h(Qn−1)=n(n+α) です。Qn=(−1)nn!Ln(α) を代入して (n+1)Ln+1(α)=(2n+1+α−x)Ln(α)−(n+α)Ln−1(α) を得ます。
Jacobi 多項式の三項漸化式も、同じ方法(ノルムの比と次高次係数)で αn,βn が求まります。具体形は Szegő の本の 4.5 節にあります。
演習 8.1易
Legendre の測度で、最高次係数を 1 にそろえた P3 を漸化式から求め、零点を計算せよ。
解答
例 7.4 より βn=(2n+1)(2n−1)n2 で、αn=0 です。P2=x2−31(例 2.3)、β2=154 なので P3=xP2−β2P1=x3−3x−154x=x3−53x です。零点は 0,±3/5≈±0.7746 で、図の値と一致します。
演習 8.2標準
Legendre の測度の 3 点 Gauss 求積の節点と重みを求め、∫−11x4dx に適用して検算せよ。
解答
節点は 演習 8.1 の零点 0,±3/5 です。対称性より重みは w0 と、± の二つに共通の w1 です。次数 5 以下で厳密(定理 6.1 の 1)なので 1 と x2 に使うと w0+2w1=2、2w1⋅53=32 で、w1=95、w0=98 です。x4 では 2⋅95⋅(53)2=910⋅259=52=∫−11x4dx で一致します。
演習 8.3難
定理 6.1 の重みについて、wi=Pn−1(xi)Pn′(xi)hn−1 を示せ。
解答
定理 4.1 の第 2 式で n を n−1 に取り替えると ∑k<nhkPk(x)2=hn−11(Pn′(x)Pn−1(x)−Pn−1′(x)Pn(x)) です。x=xi では Pn(xi)=0 なので右辺は hn−1Pn′(xi)Pn−1(xi) です。定理 6.1 の 2 の wi=1/∑k<nPk(xi)2/hk に代入します。
- Gábor Szegő, Orthogonal Polynomials, 4th edition, American Mathematical Society, 1975 — 第 II 章(一般論)、第 III–V 章(古典的な族)。
- Theodore S. Chihara, An Introduction to Orthogonal Polynomials, Gordon and Breach, 1978 — 第 I 章(三項漸化式と Favard の定理)。
- Philip J. Davis, Philip Rabinowitz, Methods of Numerical Integration, 2nd edition, Academic Press, 1984 — 第 2 章(Gauss 求積)。
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- Mourad E. H. Ismail, Classical and Quantum Orthogonal Polynomials in One Variable, Cambridge University Press, 2005.