コンテンツにスキップ

CCR・CAR 代数と準自由状態:Araki–Woods 表現と無限自由度の非同値性

対象読者: 本テーマ第 1〜6 章の内容(C*-代数、GNS 構成、KMS 状態まで)と、Fock 空間・生成消滅演算子の初歩を学んだ人。CCR・CAR の代数は仮定しません。

前提となる記事:KMS 状態と熱平衡:Gibbs 状態を解析的な境界条件で特徴づける

生 Markdown

光や電子のような粒子が無数に集まった系を、数学として正確に扱うための土台を作る章です。粒子を増やしたり減らしたりする操作の規則を、特定の表現に頼らず「代数」として先に定め、そこから温度のある状態や凝縮した状態を作ります。読み終えると、粒子が無数にあるときには、温度や凝縮の違いが互いに行き来できない別々の表現を与える、ということを説明できるようになります。

  • Weyl 代数 W(V)\mathcal{W}(\mathcal{V}) は、Weyl 関係 W(f)W(g)=e−iσ(f,g)/2W(f+g)W(f)W(g)=e^{-i\sigma(f,g)/2}W(f+g) を満たすユニタリ元が生成する C∗C^* 環です。σ\sigma が非退化なら同型を除いて一意で単純ですが、∥W(f)−W(g)∥=2\|W(f)-W(g)\|=2(f≠gf\ne g)なので f↦W(f)f\mapsto W(f) はノルム連続でなく、自由時間発展は C∗C^* 力学系(時間を動かしたとき、各元がノルムの意味で連続に動く系)になりません。
  • CAR 代数 CAR(H)\mathrm{CAR}(\mathcal{H}) は {a(f),a(g)∗}=⟨f,g⟩\{a(f),a(g)^*\}=\langle f,g\rangle, {a(f),a(g)}=0\{a(f),a(g)\}=0 から生成される C∗C^* 環です。∥a(f)∥=∥f∥\|a(f)\|=\|f\| が代数関係だけから従い、有限次元部分空間ごとに行列環 M2n(C)M_{2^n}(\mathbb{C}) になるので、CAR(H)\mathrm{CAR}(\mathcal{H}) は一意かつ単純です。
  • ゲージ不変な準自由状態(粒子数を保つ位相の回転 a↦eiϕaa\mapsto e^{i\phi}a で変わらない状態)は 2 点関数で決まる Gauss 型の状態です。CAR では 2 点作用素 TT が 0≤T≤10\le T\le1 を満たすことが存在の必要十分条件、CCR では T≥0T\ge0 です。存在は 2 つの Fock 空間のテンソル積上の Araki–Woods 表現(ボソン)と Araki–Wyss 表現(フェルミオン)で具体的に示します。
  • 自由フェルミ気体の時間発展について、(τ,β)(\tau,\beta)-KMS 状態の 2 点関数は Fermi–Dirac 分布 T=(1+eβH)−1T=(1+e^{\beta H})^{-1} に限られ、KMS 状態はこの準自由状態ただ 1 つです。
  • 無限自由度では、Fock 状態・温度状態・凝縮状態(位相 θ\theta ごと)の GNS 表現は互いに素です。遠くに平行移動した Weyl 作用素の平均という「巨視的観測量」が、表現ごとに異なるスカラーに強収束することで区別できます。有限自由度ではこの区別は消えます。

前章 KMS 状態と熱平衡 では、熱平衡を観測量の代数と時間発展だけで定義しました。この定義を自由ボース気体・自由フェルミ気体に適用するには、正準交換関係(CCR)と正準反交換関係(CAR)を「表現を選ぶ前の代数」として定式化しておく必要があります。理由は 2 つあります。

1 つ目は、無限自由度では CCR・CAR の表現が一意でないことです(CCR の表現、フェルミオン Fock 空間)。Fock 空間で計算を始めると、温度状態や凝縮状態は Fock 空間の密度行列では書けず、別の表現を手で作ることになります。代数を先に定め、状態から GNS 構成で表現を作れば、すべての状態を同じ舞台で比較できます。

2 つ目は、ボソンの場の作用素が非有界なので、そのままでは C∗C^* 環を作れないことです。そこで有界なユニタリ W(f)=eiΦ(f)W(f)=e^{i\Phi(f)} を生成元に取ります(Weyl 形式)。フェルミオンでは CAR から ∥a(f)∥=∥f∥\|a(f)\|=\|f\| が従い、生成・消滅作用素そのものが有界なので、この問題は起きません。この違いは、2 つの代数の性質(ノルム連続性、可分性、時間発展の連続性)にそのまま現れます。

この章ではまず 2 つの代数を定義して一意性・単純性を示し、次に準自由状態を定義して、存在を具体的な表現の構成で証明します。最後に、温度や凝縮の有無が異なる状態の表現が互いに素であることを示します。準同値性の一般的な判定(Hilbert–Schmidt 条件)は次章 表現の準同値と準自由状態の判定 で扱います。

記法: 1 粒子空間 H\mathcal{H} は複素 Hilbert 空間で、内積は第 1 変数について共役線形です。Fb(H)\mathcal{F}_{\mathrm{b}}(\mathcal{H}), Ff(H)\mathcal{F}_{\mathrm{f}}(\mathcal{H}) はボソン・フェルミオン Fock 空間、Ω\Omega は真空、W(f)=eiΦS(f)W(f)=e^{i\Phi_{\mathrm{S}}(f)} は Fock 空間上の Weyl 作用素で、⟨Ω,W(f)Ω⟩=e−∥f∥2/4\langle\Omega,W(f)\Omega\rangle=e^{-\|f\|^2/4}(系 6.3[Segal 場・Weyl 作用素・コヒーレント状態])です。CC は H\mathcal{H} 上の共役子(定義 2.1[Bogoliubov 変換と Shale の定理])で、⟨Cf,Cg⟩=⟨g,f⟩\langle Cf,Cg\rangle=\langle g,f\rangle を満たします。

ここから先は有料(買い切り ¥200)の内容です。

この章は博士課程以上・研究水準の内容です。続き(定義・定理・証明・例・演習)は ¥200 の買い切りで、他の有料章と 100 本ノックも含めてすべて読めます。無料の章は最後まで読めます。

購入する ログイン

このテーマの 100 本ノック(100 問)

執筆: Claude Code(Opus 5.5)、Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 4 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

この記事の誤りを報告する ・運営: 夢現技研合同会社 ・料金 ・利用条件 ・特定商取引法に基づく表記

© 2026 夢現技研合同会社 ・コード例は MIT ライセンスです。