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フェルミオン Fock 空間と正準反交換関係:有界な生成消滅作用素・Jordan–Wigner 変換・電子陽電子の Fock 空間

対象読者: 本テーマ第 1〜4 章のボソン側の Fock 空間論と、反対称テンソル積、行列式、C* 環の基本的な言葉を学んだ博士課程の人。CAR の表現論は仮定しません。

前提となる記事:Segal 場・Weyl 作用素・コヒーレント状態:解析ベクトルによる自己共役性と Fock 表現の既約性

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電子のように「同じ状態に 2 個は入れない」粒子がたくさんあるとき、その全体の状態をどう数学的に扱えばよいかを調べる章です。粒子の入れ替えで符号が変わるように状態空間を作ると、同じ状態を 2 回使うと自動的に 00 になり、この禁止則が式の中に組み込まれます。読み終えると、粒子を 1 個増やす・減らす操作の満たす規則を示せ、小さな系ではそれを行列で具体的に書き下せるようになります。

  • 複素 Hilbert 空間 H\mathcal{H} 上のフェルミオン Fock 空間 Ff(H)=⨁n≥0∧nH\mathcal{F}_{\mathrm{f}}(\mathcal{H})=\bigoplus_{n\ge 0}\wedge^n\mathcal{H} を反対称テンソル積から作り、Slater 行列式 f1∧⋯∧fnf_1\wedge\cdots\wedge f_n の内積が Gram 行列式 det⁡(⟨fi,gj⟩)\det(\langle f_i,g_j\rangle) になることを示します。
  • 生成・消滅作用素 b(f)∗b(f)^*, b(f)b(f) は正準反交換関係(CAR) {b(f),b(g)∗}=⟨f,g⟩\{b(f),b(g)^*\}=\langle f,g\rangle, {b(f),b(g)}=0\{b(f),b(g)\}=0 を満たし、CAR だけから ∥b(f)∥=∥f∥\|b(f)\|=\|f\| が従います。ボソンと違ってフェルミオンの場の作用素は有界です。
  • 第二量子化 Γf(U)\Gamma_{\mathrm{f}}(U), dΓf(A)\mathrm{d}\Gamma_{\mathrm{f}}(A) はボソンと同じ形で定義でき、dΓf(A)=∑i,j⟨ei,Aej⟩b(ei)∗b(ej)\mathrm{d}\Gamma_{\mathrm{f}}(A)=\sum_{i,j}\langle e_i,Ae_j\rangle b(e_i)^*b(e_j) と書けます。固有値は AA の相異なる固有値の和で、基底状態は Slater 行列式です。
  • dim⁡H=m<∞\dim\mathcal{H}=m<\infty なら、CAR の表現はすべて Fock 表現の直和にユニタリ同値です。Fock 表現は 2m2^m 次元のスピン鎖 (C2)⊗m(\mathbb{C}^2)^{\otimes m} に Jordan–Wigner 変換で実現され、XX スピン鎖が自由フェルミオンに写ります。
  • 電子・陽電子の Fock 空間 Ff(H+)⊗Ff(H−)\mathcal{F}_{\mathrm{f}}(\mathcal{H}_+)\otimes\mathcal{F}_{\mathrm{f}}(\mathcal{H}_-) 上に、Klein 因子 (−1)N+(-1)^{N_+}(電子の個数の偶奇で符号を付け、電子側と陽電子側の作用素を反交換させるための因子)を挟んで Dirac 場の CAR 表現を作ります。負エネルギー部分が無限次元なら、この表現は H\mathcal{H} 上の Fock 表現と同値になりません(Dirac の海)。

Pauli の排他原理は「同じ 1 粒子状態に 2 個の電子は入れない」と述べます。多粒子の波動関数を粒子の入れ替えについて反対称にすれば、同じ状態を 2 回使った Slater 行列式は 00 になり、排他原理は自動的に満たされます。前の章までに扱ったボソン Fock 空間 Fb(H)\mathcal{F}_{\mathrm{b}}(\mathcal{H}) の「対称」を「反対称」に替えたものが、フェルミオンの多粒子空間です。

形の上ではボソンの議論をなぞるだけですが、結果は質的に違います。第一に、生成・消滅作用素が有界になり、定義域の議論がほとんど要らなくなります。第二に、自由度が有限なら Fock 空間は有限次元 2m2^m で、CAR の代数は行列代数そのものです。これがスピン鎖とフェルミオン系を行き来する Jordan–Wigner 変換の背景です。第三に、Dirac 方程式の負エネルギー解をどう扱うかという問題(Dirac の海)が、「CAR の表現をどれにするか」という問題として正確に定式化されます。

本章は Segal 場・Weyl 作用素・コヒーレント状態 までのボソンの議論を前提にし、反対称テンソル積の基本事項は 対称・反対称テンソル積と多粒子の Hilbert 空間 の内容を使います。ここでは必要な範囲を自己完結的に確認します。

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執筆: Claude Code(Opus 5.5)、Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 3 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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