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第二量子化作用素 Γ(U) と dΓ(A):関手性・自己共役性・スペクトル

対象読者: 本テーマ第 1〜2 章のボソン Fock 空間と生成・消滅作用素を学び、自己共役作用素のスペクトル定理とユニタリ群を知っている博士課程の人。

前提となる記事:ボソン Fock 空間と生成・消滅作用素:閉性・正準交換関係・数作用素による評価

生 Markdown

光子や素粒子が何個もいる状態のエネルギーは、粒子 1 個ぶんのエネルギーを個数ぶん足したもの、と物理では素朴に考えます。この記事は、その「1 個のものを全体に持ち上げる」手続きを、数学として破綻なく書き下す話です。持ち上げ方には「各粒子に同じ操作を掛ける」ものと「各粒子のエネルギーを足す」ものの 2 種類があり、両者がきれいに結びつくことを示します。読み終えると、自由場のハミルトニアンの定義域・スペクトル・粒子を作る作用素との関係を、正確な言葉で述べられるようになります。

  • 1 粒子空間 H\mathcal{H} 上のノルム 11 以下の作用素(縮小作用素)CC から、ボソン Fock 空間上の縮小作用素 Γ(C)=⨁nC⊗n\Gamma(C)=\bigoplus_n C^{\otimes n} が作れます。Γ(CD)=Γ(C)Γ(D)\Gamma(CD)=\Gamma(C)\Gamma(D)、Γ(C)∗=Γ(C∗)\Gamma(C)^*=\Gamma(C^*) が成り立ち、ユニタリはユニタリに、射影は射影に移ります。
  • 自己共役作用素 AA からは、各粒子に AA を施して足した作用素の直和 dΓ(A)\mathrm{d}\Gamma(A) が作れます。dΓ(A)\mathrm{d}\Gamma(A) は自己共役で、eitdΓ(A)=Γ(eitA)e^{it\mathrm{d}\Gamma(A)}=\Gamma(e^{itA}) です。数作用素は N=dΓ(1)N=\mathrm{d}\Gamma(1)、自由場のハミルトニアンは H0=dΓ(ω)H_0=\mathrm{d}\Gamma(\omega) です。
  • 交換関係 [dΓ(A),a(f)∗]=a(Af)∗[\mathrm{d}\Gamma(A),a(f)^*]=a(Af)^*、[dΓ(A),a(f)]=−a(Af)[\mathrm{d}\Gamma(A),a(f)]=-a(Af) が、有限粒子ベクトルの上で成り立ちます。「dΓ(A)\mathrm{d}\Gamma(A) は AfAf の粒子 1 個ぶんだけエネルギーを足す」という物理の直観の正確な形です。
  • σ(dΓ(A))\sigma(\mathrm{d}\Gamma(A)) は {0}\{0\} と、σ(A)\sigma(A) の元の有限和全体の和集合の閉包です。点スペクトルも同じ形で、σ(A)\sigma(A) を σp(A)\sigma_{\mathrm{p}}(A) に置き換えたものになります。
  • A≥m>0A\ge m>0 なら dΓ(A)≥mN\mathrm{d}\Gamma(A)\ge mN で、dΓ(A)\mathrm{d}\Gamma(A) の定義域は NN の定義域に含まれます。m=0m=0(質量ゼロ)ではこの評価が壊れることを反例で確かめます。

場の量子論の教科書では、自由場のハミルトニアンを

H0=∫ω(k) a†(k)a(k) dkH_0=\int\omega(\boldsymbol{k})\,a^\dagger(\boldsymbol{k})a(\boldsymbol{k})\,\mathrm{d}\boldsymbol{k}

と書きます(スカラー場の正準量子化)。a(k)a(\boldsymbol{k}) は作用素値超関数(点ごとの値ではなく、関数で積分して初めて作用素になるもの)なので、この式はそのままでは作用素を定めません。しかし H0H_0 が nn 粒子状態に作用する仕方は明快で、各粒子のエネルギー ω(kj)\omega(\boldsymbol{k}_j) を足すだけです。つまり H0H_0 は「1 粒子のハミルトニアン ω\omega を、粒子の数だけ足し合わせて Fock 空間全体に持ち上げたもの」です。

この持ち上げを、1 粒子空間の作用素から Fock 空間の作用素を作る一般的な手続きとして定式化したのが第二量子化です。持ち上げ方は 2 通りあります。ユニタリ時間発展 e−itωe^{-it\omega} のような「群の元」は、各粒子に同じものを掛けて積で持ち上げます(Γ\Gamma)。ハミルトニアン ω\omega のような「生成子」は、各粒子に施して和で持ち上げます(dΓ\mathrm{d}\Gamma)。両者が eitdΓ(A)=Γ(eitA)e^{it\mathrm{d}\Gamma(A)}=\Gamma(e^{itA}) で結びつくことが本章の中心です。この式は、Lie 群の表現とその微分表現の関係と同じ形をしています。

次の図は、粒子数ごとの層を積み重ねた Fock 空間に、2 通りの持ち上げ方がどう作用するかを並べたものです。

n 粒子層Γ(C):積で持ち上げるdΓ(A):和で持ち上げる0 粒子(真空)1 粒子2 粒子3 粒子そのまま(1 倍)CC ⊗ CC ⊗ C ⊗ C0AA⊗1 + 1⊗AA⊗1⊗1 + 1⊗A⊗1 + 1⊗1⊗A
Γ は各層に C を粒子の数だけ掛け(積)、dΓ は各層で 1 粒子ぶんの A を足し合わせる(和)。どちらも粒子数を変えない。

数理物理では、第二量子化作用素は相互作用模型の「無摂動部分」として必ず現れます。Nelson 模型や Pauli–Fierz 模型のハミルトニアンは Hparticle⊗1+1⊗dΓ(ω)+HintH_{\mathrm{particle}}\otimes1+1\otimes\mathrm{d}\Gamma(\omega)+H_{\mathrm{int}} の形をしており、自己共役性や基底状態の存在を論じるには、dΓ(ω)\mathrm{d}\Gamma(\omega) の定義域・スペクトル・生成消滅作用素との関係を正確に知っている必要があります。本章はその基礎を整えます。

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執筆: Claude Code(Opus 5.5)、Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 3 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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