# CCR・CAR 代数と準自由状態：Araki–Woods 表現と無限自由度の非同値性

> Weyl 代数と CAR 代数を C* 環として定義し、CAR 代数の一意性と単純性を証明する。ゲージ不変な準自由状態の存在条件を Araki–Woods・Araki–Wyss 表現の構成で示し、Fock 状態・温度状態・凝縮状態の表現が互いに素であることを巨視的観測量で証明する。
> https://rikai.mugen-giken.com/mathematics/operator-algebras/ccr-car-algebras

## 0. この記事の要点

光や電子のような粒子が無数に集まった系を、数学として正確に扱うための土台を作る章です。粒子を増やしたり減らしたりする操作の規則を、特定の表現に頼らず「代数」として先に定め、そこから温度のある状態や凝縮した状態を作ります。読み終えると、粒子が無数にあるときには、温度や凝縮の違いが互いに行き来できない別々の表現を与える、ということを説明できるようになります。

- **Weyl 代数** $\mathcal{W}(\mathcal{V})$ は、Weyl 関係 $W(f)W(g)=e^{-i\sigma(f,g)/2}W(f+g)$ を満たす[ユニタリ](/mathematics/functional-analysis/bounded-operators#def-operator-classes)元が生成する $C^*$ 環です。$\sigma$ が非退化なら同型を除いて一意で単純ですが、$\|W(f)-W(g)\|=2$（$f\ne g$）なので $f\mapsto W(f)$ はノルム連続でなく、自由時間発展は $C^*$ 力学系（時間を動かしたとき、各元がノルムの意味で連続に動く系）になりません。
- **CAR 代数** $\mathrm{CAR}(\mathcal{H})$ は $\{a(f),a(g)^*\}=\langle f,g\rangle$, $\{a(f),a(g)\}=0$ から生成される $C^*$ 環です。$\|a(f)\|=\|f\|$ が代数関係だけから従い、有限次元部分空間ごとに行列環 $M_{2^n}(\mathbb{C})$ になるので、$\mathrm{CAR}(\mathcal{H})$ は一意かつ単純です。
- **ゲージ不変な準自由状態**（粒子数を保つ位相の回転 $a\mapsto e^{i\phi}a$ で変わらない状態）は 2 点関数で決まる Gauss 型の状態です。CAR では 2 点作用素 $T$ が $0\le T\le1$ を満たすことが存在の必要十分条件、CCR では $T\ge0$ です。存在は 2 つの Fock 空間の[テンソル積](/mathematics/functional-analysis/tensor-products-direct-integrals#def-hilbert-tensor-product)上の **Araki–Woods 表現**（ボソン）と **Araki–Wyss 表現**（フェルミオン）で具体的に示します。
- 自由フェルミ気体の時間発展について、$(\tau,\beta)$-KMS 状態の 2 点関数は Fermi–Dirac 分布 $T=(1+e^{\beta H})^{-1}$ に限られ、[KMS 状態](/mathematics/operator-algebras/kms-states#def-kms-state)はこの準自由状態ただ 1 つです。
- 無限自由度では、Fock 状態・温度状態・凝縮状態（位相 $\theta$ ごと）の GNS 表現は互いに素です。遠くに平行移動した Weyl 作用素の平均という「巨視的観測量」が、表現ごとに異なるスカラーに強収束することで区別できます。有限自由度ではこの区別は消えます。

<Aside type="tip" title="この記事で使う事前知識">

- **表現**: $C^*$ 環の元を Hilbert 空間上の有界作用素として実現する対応のこと。→ [表現](/mathematics/operator-algebras/states-and-gns#def-representation)
- **KMS 状態**: 時間発展のもとでの熱平衡を、代数と時間発展だけで表した状態。→ [KMS 状態](/mathematics/operator-algebras/kms-states#def-kms-state)
- **ユニタリ**: 内積を保つ可逆な作用素（$U^*U=UU^*=1$）。→ [ユニタリ](/mathematics/functional-analysis/bounded-operators#def-operator-classes)
- **自己共役作用素**: 実数値のスペクトルを持つ作用素で、観測量や時間発展の生成子を表す。→ [自己共役作用素](/mathematics/functional-analysis/self-adjoint-extensions#def-self-adjoint)
- **Hilbert 空間**: 内積を持つ完備なベクトル空間。→ [Hilbert 空間](/mathematics/functional-analysis/hilbert-spaces#def-hilbert-space)

</Aside>

## 1. 動機

前章 [KMS 状態と熱平衡](/mathematics/operator-algebras/kms-states) では、熱平衡を観測量の代数と時間発展だけで定義しました。この定義を自由ボース気体・自由フェルミ気体に適用するには、正準交換関係（CCR）と正準反交換関係（CAR）を「表現を選ぶ前の代数」として定式化しておく必要があります。理由は 2 つあります。

1 つ目は、無限自由度では CCR・CAR の表現が一意でないことです（[CCR の表現](/physics/fock-space/ccr-representations)、[フェルミオン Fock 空間](/physics/fock-space/fermion-fock-space)）。Fock 空間で計算を始めると、温度状態や凝縮状態は Fock 空間の密度行列では書けず、別の表現を手で作ることになります。代数を先に定め、状態から GNS 構成で表現を作れば、すべての状態を同じ舞台で比較できます。

2 つ目は、ボソンの場の作用素が非有界なので、そのままでは $C^*$ 環を作れないことです。そこで有界なユニタリ $W(f)=e^{i\Phi(f)}$ を生成元に取ります（Weyl 形式）。フェルミオンでは CAR から $\|a(f)\|=\|f\|$ が従い、生成・消滅作用素そのものが有界なので、この問題は起きません。この違いは、2 つの代数の性質（ノルム連続性、可分性、時間発展の連続性）にそのまま現れます。

この章ではまず 2 つの代数を定義して一意性・単純性を示し、次に準自由状態を定義して、存在を具体的な表現の構成で証明します。最後に、温度や凝縮の有無が異なる状態の表現が互いに素であることを示します。準同値性の一般的な判定（Hilbert–Schmidt 条件）は次章 [表現の準同値と準自由状態の判定](/mathematics/operator-algebras/quasi-equivalence) で扱います。

記法: 1 粒子空間 $\mathcal{H}$ は複素 [Hilbert 空間](/mathematics/functional-analysis/hilbert-spaces#def-hilbert-space)で、内積は第 1 変数について共役線形です。$\mathcal{F}_{\mathrm{b}}(\mathcal{H})$, $\mathcal{F}_{\mathrm{f}}(\mathcal{H})$ はボソン・フェルミオン Fock 空間、$\Omega$ は真空、$W(f)=e^{i\Phi_{\mathrm{S}}(f)}$ は Fock 空間上の Weyl 作用素で、$\langle\Omega,W(f)\Omega\rangle=e^{-\|f\|^2/4}$（<Ref to="physics/fock-space/segal-field-weyl#cor-vacuum-expectation" />）です。$C$ は $\mathcal{H}$ 上の共役子（<Ref to="physics/fock-space/bogoliubov-transformations#def-conjugation" />）で、$\langle Cf,Cg\rangle=\langle g,f\rangle$ を満たします。

（この章の続きは購入者向けです。）
