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Kuratowski の定理:マイナーと平面性の判定

対象読者: 本テーマ第 1〜4 章(連結度・Menger の定理、平面グラフと Euler の公式)の内容を学んだ人。3-連結性や縮約の操作は本章で導入するので仮定しません。

前提となる記事:平面グラフ:Euler の公式・双対・五色定理、連結度とネットワークフロー:Menger の定理・最大フロー最小カット定理

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点と線でできた図を、線が途中で交わらないように紙の上に描き直せるか、という問いを扱います。たとえば 3 軒の家と 3 つの設備(水道・ガス・電気)をどの家からどの設備へも線でつなごうとすると、どう工夫しても線が交わってしまいます。この記事は、交わらずに描ける図と描けない図を分ける条件を与え、描けない図には必ず、この家と設備の図か、5 つの点がどれも互いにつながった図が(線の途中に点を足した形で)隠れていることを示します。読み終えると、描けないことの証拠を、有限個の図との比較として示せるようになります。

  • グラフ GG が平面的であるためには、K5K_5 の細分(辺の途中に頂点を足したもの)も K3,3K_{3,3} の細分も部分グラフに含まないことが必要十分です(Kuratowski の定理)。「細分を含まない」を「マイナーに含まない」(辺を縮めたり、辺や頂点を消したりして得られるグラフに含まない)に替えても同じです(Wagner の定理)。
  • 証明は 2 段です。第 1 段では、3-連結で K5K_5・K3,3K_{3,3} をマイナーに含まないグラフに、辺がすべて線分で面がすべて凸多角形の描画を、頂点数についての帰納法で作ります。帰納法を回すのは「3-連結グラフには、縮約しても 3-連結な辺がある」という補題です。
  • 第 2 段では、K5K_5・K3,3K_{3,3} の細分を含まないグラフに、その性質を保ったまま辺を足せるだけ足すと 3-連結になることを示し、第 1 段に帰着します。
  • 副産物として、平面的グラフは辺をすべて線分にして描けます(Fáry の定理)。
  • 3-連結な平面的グラフでは、面の境界は「弦をもたず、取り除いてもグラフが連結なままの閉路」として、描画によらずに決まります(Whitney の一意性定理)。
  • すべての頂点を外面の境界に置いて描けるグラフ(外平面的グラフ)は、K4K_4 と K2,3K_{2,3} をマイナーに含まないグラフです。

平面グラフの章では、Euler の公式から K5K_5 と K3,3K_{3,3} が平面的でないことを示しました(系 3.4[平面グラフ])。平面的なグラフの辺の途中に頂点を足しても、辺や頂点を取り除いても平面的なままですから、K5K_5 や K3,3K_{3,3} の辺を道に置き換えたもの(細分)を部分グラフに含むグラフも、平面的ではありません。

では逆に、平面的でないグラフには、必ず K5K_5 か K3,3K_{3,3} の細分が隠れているのでしょうか。Kuratowski が 1930 年に示したのは、そのとおりだということです。平面に描けない理由は、突き詰めればこの 2 つのグラフしかありません。

この定理が強いのは、「描けない」という、あらゆる描き方についての否定的な主張に、有限の証拠(細分を 1 つ見せれば済む)を与えるからです。平面的であることの証拠は描画 1 つ、平面的でないことの証拠は細分 1 つで、どちらも検算できます。「ある有限個のグラフを含まない」という形の特徴づけは、この章の最後に触れるマイナーの理論の出発点にもなりました。

証明は Thomassen による方法に従います。位相の議論を増やさず、連結度についての組合せ的な補題と、凸多角形についての初等的な幾何だけで進めます。得られる描画が線分だけでできているので、Fáry の定理もついてきます。

2. 準備:記法と平面グラフの事実

Section titled “2. 準備:記法と平面グラフの事実”

グラフは有限・単純・無向とします。記法は道・閉路・木の章のとおりで、∣G∣|G| は頂点の個数、N(v)N(v) は近傍、d(v)d(v) は次数、G−SG-S は頂点集合 SS を除いたグラフです。kk-連結・分離集合の定義は 定義 2.1[連結度とネットワークフロー] に従います。相異なる 2 頂点を結ぶ道の組が内素であるとは、どの 2 本も端点以外に頂点を共有しないことです。

平面グラフは、頂点を平面 R2\mathbb{R}^2 の相異なる点、辺を両端点を結ぶ折れ線の弧として描いたもので、辺の内点は他の辺とも頂点とも交わらないものです(平面グラフの章)。平面グラフとして描けるグラフを平面的といいます。平面グラフ GG の点集合(頂点と辺の和集合)も GG と書き、R2∖G\mathbb{R}^2\setminus G の連結成分を面、有界でないただ 1 つの面を外面、それ以外を内面と呼びます。面の境界は、面の閉包から面を除いた集合で、GG の部分グラフの点集合です(定義 2.6[平面グラフ])。すべての頂点を閉包に含む面があるように描けるグラフを外平面的といいます(定義 6.4[平面グラフ])。

平面グラフの章から使う事実は次の 6 つです。

この章の位相的な議論は、次の 2 つの補題に集約します。

補題 2.1(閉路で囲まれた面)✓

GG を平面グラフ、ZZ を GG の閉路とし、R2∖Z\mathbb{R}^2\setminus Z の 2 つの連結成分を R0,R1R_0,R_1 とする。

  1. GG の面 ff の境界が ZZ ならば、f=R0f=R_0 または f=R1f=R_1 である。
  2. RiR_i が GG の点を含まなければ、RiR_i は GG の面で、その境界は ZZ である。
証明(補題 2.1)

1: ff は連結で ZZ と交わらないので、R0,R1R_0,R_1 の一方、たとえば R0R_0 に含まれます。ff は開集合です。また ff の閉包から ff を除いた集合は境界 ZZ で、R0R_0 と交わらないので、ff は R0R_0 の中で閉集合でもあります。R0R_0 は連結で f≠∅f\ne\varnothing ですから f=R0f=R_0 です。

2: RiR_i は連結で GG と交わらないので、ある面 ff に含まれます。ff は連結で Z⊆GZ\subseteq G と交わらないので R2∖Z\mathbb{R}^2\setminus Z の 1 つの連結成分に含まれ、それは RiR_i を含むので RiR_i 自身です。よって f=Rif=R_i で、その境界は 補題 2.7[平面グラフ] により ZZ です。

補題 2.2(3 本の道でできた平面グラフの面)✓

相異なる 2 頂点 a,ba,b を結ぶ内素な 3 本の道 P1,P2,P3P_1,P_2,P_3 の和 Θ=P1∪P2∪P3\Theta=P_1\cup P_2\cup P_3 が平面グラフであるとする。このとき Θ\Theta の面はちょうど 3 つで、その境界は P1∪P2P_1\cup P_2、P1∪P3P_1\cup P_3、P2∪P3P_2\cup P_3 である。

証明(補題 2.2)

Θ\Theta は単純グラフなので、長さ 1 の道は高々 1 本で、どの 2 本の和も閉路です。Θ\Theta の閉路は、ある道の内点(Θ\Theta での次数は 2)を通ればその道全体を含むので、3 本のうち何本かの和です。1 本では閉路にならず、3 本では aa の次数が 3 になるので、Θ\Theta の閉路は Pi∪PjP_i\cup P_j の 3 つだけです。どの 2 頂点も共通の閉路に乗るので、Θ\Theta は 2-連結です(定理 3.2[連結度とネットワークフロー])。頂点数を n′n' とすると辺は n′+1n'+1 本なので、定理 3.1[平面グラフ] から面は 33 つで、各面の境界は閉路です(命題 4.2[平面グラフ])。

3 つの面の境界は相異なります。実際、2 つの面が同じ閉路 Pi∪PjP_i\cup P_j を境界にもつとすると、残る道 PkP_k の辺は、残る 1 つの面の境界にしか含まれず、「閉路に乗る辺はちょうど 2 つの面の境界に含まれる」(補題 2.10[平面グラフ])に反します。閉路は 3 つしかないので、3 つの面の境界は 3 つの閉路をちょうど 1 回ずつ尽くします。

閉路 ZZ に対し、両端だけが ZZ の上にあり、ZZ の辺を使わない長さ 1 以上の道を ZZ-道と呼びます。長さ 1 の ZZ-道は ZZ の弦です。

次の補題は、閉路 ZZ の「内側」と「外側」のどちらに ZZ-道を描くか、についての補題です。直感的には、円周上に p1,q1,p2,q2p_1,q_1,p_2,q_2 の順に並ぶ端点をもつ 2 本の道は、同じ側に描くと交わってしまうので、必ず反対の側に描かれる、ということです。

補題 2.3(交差する位置の Z-道は同じ側にない)✓

GG を平面グラフ、ZZ を GG の閉路、P,QP,Q を頂点を共有しない 2 本の ZZ-道とする。PP の両端を p1,p2p_1,p_2、QQ の両端を q1,q2q_1,q_2 とし、q1q_1 と q2q_2 が Z−{p1,p2}Z-\{p_1,p_2\} の異なる連結成分に属するとする。このとき、PP の内点(端点以外の点)と QQ の内点は、R2∖Z\mathbb{R}^2\setminus Z の異なる連結成分に含まれる。

証明(補題 2.3)

ZZ の p1p_1 から p2p_2 への 2 本の道を Z1,Z2Z_1,Z_2 とし、q1q_1 が Z1Z_1 の内点、q2q_2 が Z2Z_2 の内点であるとします。平面グラフ Θ=Z∪P\Theta=Z\cup P を考えます。

Θ\Theta は、p1p_1 と p2p_2 を結ぶ内素な 3 本の道 Z1,Z2,PZ_1,Z_2,P の和です。補題 2.2 により、Θ\Theta の面は、境界が Z=Z1∪Z2Z=Z_1\cup Z_2 の面 f0f_0、Z1∪PZ_1\cup P の面 f1f_1、Z2∪PZ_2\cup P の面 f2f_2 の 3 つです。

補題 2.1 の 1 により、f0f_0 は R2∖Z\mathbb{R}^2\setminus Z の連結成分の 1 つ R0R_0 に等しく、PP の内点は f0f_0 にも ZZ にも属さないので、もう一方の成分 R1R_1 にあります。

QQ の内点の全体は連結で、Θ\Theta と交わりません(QQ は PP と頂点を共有せず、ZZ とは両端でしか交わらない)。よって 1 つの面に含まれます。それが f1f_1 だとすると、q1,q2q_1,q_2 は f1f_1 の閉包 f1∪Z1∪Pf_1\cup Z_1\cup P に属し、PP の上にはないので、どちらも Z1Z_1 の上にあります。これは q2q_2 が Z2Z_2 の内点であることに反します。f2f_2 でも同様です。したがって QQ の内点は f0=R0f_0=R_0 にあり、PP の内点は R1R_1 にあります。

定義 3.1(細分・位相的マイナー)↗

グラフ XX の各辺 uvuv を、uu と vv を結ぶ長さ 1 以上の道で置き換えて得られるグラフを XX の細分という。ただし、置き換える道の内点は新しく足す頂点で、異なる辺に対応する道は内点を共有しない。XX の細分を総称して TXTX と書く。TXTX の中で、もとの XX の頂点を分岐点、辺に対応する道を細分された辺という。

グラフ GG が XX のある細分と同型な部分グラフを含むとき、XX は GG の位相的マイナーであるといい、「GG は TXTX を含む」と書く。

定義 3.2(縮約・マイナー・禁止マイナー)↗

辺 e=xye=xy の縮約 G/eG/e は、GG から x,yx,y を除いて新しい頂点 vev_e を足し、vev_e を (N(x)∪N(y))∖{x,y}(N(x)\cup N(y))\setminus\{x,y\} の各頂点と隣接させたグラフである(xx と yy の共通の隣接点への辺は 1 本にまとめる)。

グラフ XX が GG のマイナーであるとは、互いに交わらない空でない集合 Vx⊆V(G)V_x\subseteq V(G)(x∈V(X)x\in V(X))で、各 G[Vx]G[V_x] が連結で、xy∈E(X)xy\in E(X) ならば VxV_x と VyV_y を結ぶ GG の辺があるものが取れることをいう。VxV_x を枝集合、族 (Vx)(V_x) を XX の模型と呼ぶ。

グラフの族 P\mathcal{P} がマイナーで閉じるとは、G∈PG\in\mathcal{P} のマイナーがすべて P\mathcal{P} に属することをいう。このとき、P\mathcal{P} に属さないグラフのうち、マイナーの関係について極小なものを P\mathcal{P} の禁止マイナーという。

補題 3.3(マイナーの基本性質)✓

  1. XX が YY のマイナーで、YY が GG のマイナーなら、XX は GG のマイナーである。
  2. XX が GG のマイナーであるためには、GG のある部分グラフから辺の縮約を有限回くり返して XX と同型なグラフが得られることが必要十分である。
  3. GG が TXTX を含めば、XX は GG のマイナーである。
証明(補題 3.3)

1: YY の中の XX の模型を (Ux)(U_x)、GG の中の YY の模型を (Vy)(V_y) とし、Wx=⋃y∈UxVyW_x=\bigcup_{y\in U_x}V_y とおきます。Y[Ux]Y[U_x] が連結で、YY の各辺に対して対応する枝集合の間に GG の辺があり、各 G[Vy]G[V_y] が連結なので、G[Wx]G[W_x] は連結です。xx′∈E(X)xx'\in E(X) なら UxU_x と Ux′U_{x'} の間に YY の辺 yy′yy' があり、Vy⊆WxV_y\subseteq W_x と Vy′⊆Wx′V_{y'}\subseteq W_{x'} の間に GG の辺があります。WxW_x たちは互いに交わりません。

2(十分性): 部分グラフ H⊆GH\subseteq G は、1 点集合 Vv={v}V_v=\{v\} を枝集合として GG のマイナーです。G/eG/e(e=abe=ab)は、Vve={a,b}V_{v_e}=\{a,b\} と残りの 1 点集合を枝集合として GG のマイナーです。あとは 1 をくり返し使います。

2(必要性): 模型 (Vx)(V_x) を取り、各 G[Vx]G[V_x] の全域木 TxT_x(系 4.5[道・閉路・木])と、XX の各辺 xyxy に対して VxV_x と VyV_y を結ぶ辺 exye_{xy} を 1 本ずつ選びます。これらの頂点と辺からなる部分グラフを HH とします。木の辺の総数についての帰納法で、HH から縮約で XX が得られることを示します。木の辺がなければ、各 VxV_x は 1 点で、HH は XX と同型です。木の辺 ab∈E(Tx)ab\in E(T_x) があれば、H/abH/ab では VxV_x を (Vx∖{a,b})∪{vab}(V_x\setminus\{a,b\})\cup\{v_{ab}\} に、TxT_x を Tx/abT_x/ab に替えると同じ形の構造が得られ(木の辺を縮約したものは木で、枝集合の間の辺は 1 本のままです)、木の辺は 1 本減ります。

3: TXTX の細分された辺ごとに端点の一方を選び、その道の内点をすべて、選んだ端点の枝集合に入れます。分岐点 xx の枝集合 VxV_x は、xx と、xx から出る何本かの道の一部からなり、連結です。xy∈E(X)xy\in E(X) なら、対応する道の最後の辺が VxV_x と VyV_y を結びます。

3.2. 平面性はマイナーで保たれる

Section titled “3.2. 平面性はマイナーで保たれる”

次の命題の 3(辺を縮約しても平面的)は、描画上で辺の両端点を寄せ合わせて 1 点にしても、ほかの辺とぶつからないことを確かめるものです。証明が長いのは、その「ぶつからない」ことを、辺のまわりの細い帯状の領域と距離を使って確かめるためです。

命題 3.4(平面性は部分グラフ・細分・縮約で保たれる)✓

  1. 平面的グラフの部分グラフは平面的である。
  2. XX が平面的であることと、XX の細分が平面的であることは同値である。
  3. GG が平面的なら、どの辺 ee についても G/eG/e は平面的である。

したがって、平面的グラフのマイナーは平面的で、平面的グラフは K5K_5 も K3,3K_{3,3} も、マイナーにも位相的マイナーにも含まない。

証明(命題 3.4)

1: 描画から頂点と辺を消せば、部分グラフの描画になります。

2: XX の描画で、辺の弧の内点に頂点を置けば、その辺を 2 本に分けた細分の描画になります。くり返せば任意の細分が描けます。逆に細分の描画では、細分された辺をなす弧をつなげたものが 1 本の折れ線の弧で、これを XX の辺とすれば XX の描画です。

3: e=xye=xy とし、GG の描画で ee をなす折れ線の線分の本数 kk についての帰納法で示します。

k=1k=1 の場合. ee は線分 [x,y][x,y] です。δ>0\delta>0 に対し N={p∈R2:dist⁡(p,[x,y])≤δ}N=\{p\in\mathbb{R}^2:\operatorname{dist}(p,[x,y])\le\delta\} とおきます。線分は凸集合なので、p↦dist⁡(p,[x,y])p\mapsto\operatorname{dist}(p,[x,y]) は凸関数です(p,p′p,p' に最も近い [x,y][x,y] の点を c,c′c,c' とすると、λp+(1−λ)p′\lambda p+(1-\lambda)p' から点 λc+(1−λ)c′∈[x,y]\lambda c+(1-\lambda)c'\in[x,y] までの距離は λ∣p−c∣+(1−λ)∣p′−c′∣\lambda|p-c|+(1-\lambda)|p'-c'| 以下です)。したがって、点 yy から出る半直線 t↦y+tut\mapsto y+tu(t≥0t\ge0、uu は単位ベクトル)に沿った g(t)=dist⁡(y+tu,[x,y])g(t)=\operatorname{dist}(y+tu,[x,y]) は凸で、g(0)=0g(0)=0、t→∞t\to\infty で g(t)→∞g(t)\to\infty です。g(t1)=δg(t_1)=\delta となる t1>0t_1>0 があり、凸性から 0≤t<t10\le t<t_1 では g(t)≤(t/t1)δ<δg(t)\le(t/t_1)\delta<\delta、t>t1t>t_1 では δ=g(t1)≤(t1/t)g(t)\delta=g(t_1)\le(t_1/t)g(t) より g(t)>δg(t)>\delta です。つまり、yy から出る半直線は NN の境界 ∂N={g=δ}\partial N=\{g=\delta\} とちょうど 1 点で交わり、そこまでは NN の内部にあります。xx についても同じです。

xx に接続する ee 以外の辺を f1,…,faf_1,\dots,f_a とし、fif_i の最初の線分を [x,pi][x,p_i]、fif_i のうち pip_i から先の部分を KiK_i とします。yy に接続する ee 以外の辺 h1,…,hbh_1,\dots,h_b についても、最初の線分 [y,rj][y,r_j] と残りの部分 LjL_j を同様に定めます。x,yx,y 以外の頂点と、xx にも yy にも接続しない辺の和集合を K0K_0 とします。K0,Ki,LjK_0,K_i,L_j はどれもコンパクトで、線分 [x,y][x,y] と交わりません(辺どうしは共通の端点でしか交わらず、KiK_i は xx を、LjL_j は yy を含みません)。そこで δ\delta を、これらと [x,y][x,y] との距離のどれよりも小さく取ります。

すると NN は K0,Ki,LjK_0,K_i,L_j と交わりません。pi∈Kip_i\in K_i は NN の外にあるので、線分 [x,pi][x,p_i] は ∂N\partial N とちょうど 1 点 qiq_i で交わり、fi∩N=[x,qi]f_i\cap N=[x,q_i] です。同様に hj∩N=[y,sj]h_j\cap N=[y,s_j] となる点 sj∈∂Ns_j\in\partial N があります。辺どうしは端点以外で交わらないので、点 q1,…,qa,s1,…,sbq_1,\dots,q_a,s_1,\dots,s_b は相異なります。

新しい描画を作ります。NN の外は変えず、NN の中では、線分 [x,y][x,y] と [x,qi][x,q_i] を消して、線分 [y,qi][y,q_i](i=1,…,ai=1,\dots,a)を描きます。NN の中に残るのは、点 yy から ∂N\partial N の相異なる点 qi,sjq_i,s_j への線分だけです。yy から出る半直線は ∂N\partial N と 1 点でしか交わらないので、これらの線分は相異なる半直線の上にあり、yy 以外で交わりません。また、端点 qi,sjq_i,s_j を除いて NN の内部にあるので、NN の外の部分とも交わりません。こうして、xx に接続していた辺がすべて yy に接続する多重グラフの平面描画が得られます。xx と yy の共通の隣接点 uu への 2 本の辺の一方を消せば、yy を vev_e と読み替えた G/eG/e の描画です。

k≥2k\ge2 の場合. ee の xx 側の最初の折れ点 bb に頂点を置いて ee を 2 本の辺 xbxb と byby に分けたグラフ G′′G'' を考えます(2 により平面描画です)。辺 xbxb は線分なので、k=1k=1 の場合の構成で G′′/xbG''/xb の描画が得られます。bb の次数は 2 なので G′′/xbG''/xb は GG と同型で(bb が xx の役をします)、この描画での ee は、もとの ee から最初の線分を除いた k−1k-1 本の線分からなります。帰納法の仮定から G/eG/e は平面的です。

最後の主張を示します。GG が平面的で XX がそのマイナーなら、補題 3.3 の 2 により XX は GG の部分グラフから縮約のくり返しで得られるので、1 と 3 から平面的です。K5K_5 と K3,3K_{3,3} は平面的でない(系 3.4[平面グラフ])ので、GG のマイナーではありません。位相的マイナーならマイナーでもある(補題 3.3 の 3)ので、位相的マイナーでもありません。

3.3. マイナーと位相的マイナーの関係

Section titled “3.3. マイナーと位相的マイナーの関係”

TXTX を含めば XX はマイナーですが、逆は一般には成り立ちません。Petersen グラフは K5K_5 をマイナーに含みますが、最大次数が 3 なので、次数 4 の分岐点を 5 つ必要とする TK5TK_5 は含みません(例 3.7)。それでも、K5K_5 と K3,3K_{3,3} をまとめて扱えば、2 つの概念は一致します。

次の 2 つの補題のねらいは、マイナーの模型(頂点を寄せ集めた塊の族)から、道だけでできた細分を取り出すことです。そのために、各塊 VxV_x の中から必要な頂点だけを残した木を取り、外から入ってくる辺をその木の先端につけて数えます。

補題 3.5(枝集合の中の木)✓

(Vx)(V_x) を GG の中の XX の模型とし、XX の各辺 xyxy に対して、VxV_x と VyV_y を結ぶ GG の辺 exye_{xy} を 1 本ずつ固定する。このとき、各 x∈V(X)x\in V(X) について G[Vx]G[V_x] の部分グラフである木 TxT_x で、次を満たすものがある。TxT_x に、xx に接続する XX の辺 xyxy に対応する辺 exye_{xy} と、その VyV_y 側の端点(外端と呼ぶ)をすべて付け足したグラフ Tx+T_x^+ は木で、外端はどれも Tx+T_x^+ の葉である。さらに dX(x)≥2d_X(x)\ge2 なら、Tx+T_x^+ の葉は外端だけである。

また、2 頂点以上の木では、葉の個数を ℓ\ell とすると

∑v: d(v)≥3(d(v)−2)=ℓ−2\sum_{v:\,d(v)\ge3}\bigl(d(v)-2\bigr)=\ell-2

が成り立つ。

証明(補題 3.5)

exye_{xy} の VxV_x 側の端点の全体を AxA_x とします。G[Vx]G[V_x] は連結なので全域木をもち(系 4.5[道・閉路・木])、AxA_x を含む G[Vx]G[V_x] の部分木が存在します(Ax=∅A_x=\varnothing のときは 1 頂点の木を取ります)。そのうち頂点数が最小のものを TxT_x とします。TxT_x が 2 頂点以上で、葉 vv が AxA_x に属さなければ、Tx−vT_x-v も AxA_x を含む木で、最小性に反します。よって、TxT_x が 2 頂点以上なら葉はすべて AxA_x に属します。

Tx+T_x^+ は、木 TxT_x に次数 1 の頂点(外端。異なる yy の外端は異なる VyV_y に属するので相異なる)を付け足したものなので木で、外端は葉です。dX(x)≥2d_X(x)\ge2 とします。TxT_x が 1 頂点なら、その頂点の Tx+T_x^+ での次数は dX(x)≥2d_X(x)\ge2 です。TxT_x が 2 頂点以上なら、TxT_x の葉は AxA_x に属するので Tx+T_x^+ では次数 2 以上、葉でない頂点はもともと次数 2 以上です。どちらの場合も、外端以外は葉ではありません。

後半を示します。頂点数 N≥2N\ge2 の木の辺は N−1N-1 本(定理 4.4[道・閉路・木])なので、握手補題(補題 2.2[道・閉路・木])から ∑v(d(v)−2)=2(N−1)−2N=−2\sum_v(d(v)-2)=2(N-1)-2N=-2 です。連結なので次数 0 の頂点はなく、葉は −1-1、次数 2 の頂点は 00 を寄与するので、∑d(v)≥3(d(v)−2)−ℓ=−2\sum_{d(v)\ge3}(d(v)-2)-\ell=-2 です。

補題 3.6(マイナーと位相的マイナー)✓

  1. Δ(X)≤3\Delta(X)\le3 のとき、XX が GG のマイナーならば、GG は TXTX を含む。
  2. GG が K5K_5 をマイナーに含めば、GG は TK5TK_5 か TK3,3TK_{3,3} を含む。
  3. GG が K5K_5 か K3,3K_{3,3} をマイナーに含むことと、GG が TK5TK_5 か TK3,3TK_{3,3} を含むことは同値である。
証明(補題 3.6)

木について次の事実を使います。木 TT の頂点 bb から相異なる葉 ℓ1,ℓ2\ell_1,\ell_2 への道が bb 以外の頂点 cc を共有すれば、bb から最も遠い共有点の次数は 3 以上である。 実際、木の中の道は一意(定理 4.4[道・閉路・木])なので、2 本の道は bb からある頂点 c′c' まで一致し、そこから先は頂点を共有しません。c′≠bc'\ne b なら、c′c' には bb 側の辺と、ℓ1\ell_1 側・ℓ2\ell_2 側の相異なる 2 辺が接続します。

1: 補題 3.5 の木 TxT_x、Tx+T_x^+ を取り、各 xx に頂点 bx∈V(Tx)b_x\in V(T_x) を次のように定めます。dX(x)=3d_X(x)=3 のとき、Tx+T_x^+ の葉は外端の 3 個だけなので、同じ補題の等式から ∑d≥3(d−2)=1\sum_{d\ge3}(d-2)=1、すなわち次数 3 の頂点がちょうど 1 つあり、他は次数 2 以下です。それを bxb_x とします(外端は葉なので bx∈V(Tx)b_x\in V(T_x) です)。dX(x)≤2d_X(x)\le2 のときは TxT_x の頂点を任意に 1 つ選んで bxb_x とします。

XX の辺 xyxy に対し、Tx+T_x^+ の中で bxb_x から exye_{xy} の外端への道を Px,yP_{x,y} とします。xx に接続する相異なる辺 xy,xy′xy,xy' について、Px,yP_{x,y} と Px,y′P_{x,y'} は bxb_x しか共有しません。dX(x)=3d_X(x)=3 のときは、bxb_x 以外に次数 3 以上の頂点がないので、冒頭の事実から従います。dX(x)=2d_X(x)=2 のときは、Tx+T_x^+ は葉が 2 個で次数 3 以上の頂点をもたない木、すなわち 2 つの外端を結ぶ道で、Px,yP_{x,y} と Px,y′P_{x,y'} はその道を bxb_x で 2 つに分けたものです。

Qxy=Px,y∪Py,xQ_{xy}=P_{x,y}\cup P_{y,x} は、bxb_x から VxV_x の中を通り、辺 exye_{xy} を渡り、VyV_y の中を通って byb_y に至る道です。XX の相異なる辺に対する QQ は、共通の端点 bxb_x 以外に頂点を共有しません(同じ VxV_x の中では上で見たとおりで、異なる枝集合は交わりません)。よって ⋃Qxy\bigcup Q_{xy} に、辺をもたない xx の bxb_x を加えたものは、bxb_x を分岐点とする XX の細分です。

2: K5K_5 の模型 V1,…,V5V_1,\dots,V_5 と 補題 3.5 の木 Ti+T_i^+ を取ります。Ti+T_i^+ の葉は外端の 4 個だけなので ∑d≥3(d−2)=2\sum_{d\ge3}(d-2)=2 で、次数 4 の頂点が 1 つあるか、次数 3 の頂点が 2 つあるかのどちらかです。

すべての ii で次数 4 の頂点 bib_i がある場合、bib_i 以外の頂点の次数は 2 以下なので、bib_i から 4 つの外端への道は bib_i しか共有しません。1 と同じく QijQ_{ij} を作れば TK5TK_5 が得られます。

ある ii、たとえば i=5i=5 で、T5+T_5^+ に次数 3 の頂点が 2 つある場合を考えます。それらを u,wu,w とし、T5+T_5^+ の中の uu から ww への道の、uu に接続する辺を gg とします。T5+−gT_5^+-g は 2 つの木に分かれ、uu を含むほうを T′T'、ww を含むほうを T′′T'' とします。T′T' では uu の次数は 2 で、他の頂点の次数は T5+T_5^+ でのものと同じです。T′T' は次数 3 以上の頂点をもたないので、補題 3.5 の等式から葉はちょうど 2 個で、それは T5+T_5^+ の葉、すなわち外端です。番号を付け替えて、T′T' の外端が V1,V2V_1,V_2 に、T′′T'' の外端が V3,V4V_3,V_4 に属するとします。

U′=V(T′)∩V5U'=V(T')\cap V_5、U′′=V(T′′)∩V5U''=V(T'')\cap V_5 とおきます。木から葉を除いても連結なので、G[U′]G[U'] と G[U′′]G[U''] は連結です。6 つの集合を

{U′, V3, V4},{U′′, V1, V2}\{U',\ V_3,\ V_4\},\qquad\{U'',\ V_1,\ V_2\}

の 2 組に分けると、異なる組の集合の間には必ず GG の辺があります。U′U' と U′′U'' の間には gg、U′U' と V1,V2V_1,V_2 の間・U′′U'' と V3,V4V_3,V_4 の間には外端への辺、V3,V4V_3,V_4 と V1,V2V_1,V_2 の間には K5K_5 の模型の辺があるからです。これは K3,3K_{3,3} の模型です。Δ(K3,3)=3\Delta(K_{3,3})=3 なので、1 から GG は TK3,3TK_{3,3} を含みます。

3: TK5TK_5 か TK3,3TK_{3,3} を含めば、補題 3.3 の 3 からマイナーに含みます。逆に、K3,3K_{3,3} をマイナーに含めば 1 から TK3,3TK_{3,3} を含み、K5K_5 をマイナーに含めば 2 から TK5TK_5 か TK3,3TK_{3,3} を含みます。

例 3.7(Petersen グラフの中の TK3,3TK_{3,3} と K5K_5)

Petersen グラフの頂点を 0,…,90,\dots,9 とし、外側の五角形 0 1 2 3 40\,1\,2\,3\,4、内側の星形 5 7 9 6 85\,7\,9\,6\,8、スポーク i (i+5)i\,(i+5)(i=0,…,4i=0,\dots,4)を辺とします。15 本の辺は

01, 12, 23, 34, 40,57, 79, 96, 68, 85,05, 16, 27, 38, 4901,\ 12,\ 23,\ 34,\ 40,\quad 57,\ 79,\ 96,\ 68,\ 85,\quad 05,\ 16,\ 27,\ 38,\ 49

です。

TK3,3TK_{3,3}. 頂点 00 を除くと、1,4,51,4,5 の次数が 2 になります。11 は 22 と 66 の間、44 は 33 と 99 の間、55 は 77 と 88 の間の内点と見ると、残りの 6 頂点 2,3,6,7,8,92,3,6,7,8,9 を分岐点とするグラフの「辺」は

2–6, 2–3, 2–7,3–9, 3–8,6–9, 6–8,7–8, 7–92\text{–}6,\ 2\text{–}3,\ 2\text{–}7,\quad 3\text{–}9,\ 3\text{–}8,\quad 6\text{–}9,\ 6\text{–}8,\quad 7\text{–}8,\ 7\text{–}9

の 9 本です。A={2,8,9}A=\{2,8,9\}、B={3,6,7}B=\{3,6,7\} とおくと、22 の相手は 6,3,76,3,7、88 の相手は 3,6,73,6,7、99 の相手は 3,6,73,6,7 で、AA の各頂点が BB の全頂点と結ばれています。つまり Petersen グラフから 1 頂点を除いたものは K3,3K_{3,3} の細分で、Petersen グラフは平面的ではありません。

K5K_5 マイナー. 枝集合を Vi={i,i+5}V_i=\{i,i+5\}(i=0,…,4i=0,\dots,4)とします。各 ViV_i はスポークで連結です。ViV_i と Vi+1V_{i+1} は外側の辺 i (i+1)i\,(i+1) で、ViV_i と Vi+2V_{i+2} は内側の辺 (i+5) (i+7)(i+5)\,(i+7) で結ばれています(添字は 5 を法とします)。5 つの枝集合のどの 2 つの間にも辺があるので、K5K_5 はマイナーです。

TK5TK_5 は含まない. TK5TK_5 の分岐点の次数は 4 ですが、Petersen グラフは 3-正則です。補題 3.6 の 2 が「TK5TK_5 か TK3,3TK_{3,3}」としか言えない理由がここにあります。

例 3.8(超立方体 Q4Q_4 は平面的でない)

Q4Q_4 は頂点が {0,1}4\{0,1\}^4 の 16 個、辺が「1 座標だけ異なる 2 頂点」の 16⋅4/2=3216\cdot4/2=32 本のグラフです。二部グラフなので奇閉路をもたず(定理 3.3[道・閉路・木])、内周は 4 です。平面的だとすると、系 3.3[平面グラフ] から辺は 4(16−2)/(4−2)=284(16-2)/(4-2)=28 本以下でなければならず、32>2832>28 に反します。したがって 定理 6.5 により、Q4Q_4 は TK5TK_5 か TK3,3TK_{3,3} を含みます(具体的に見つけるのは 演習 8.1 です)。

Kuratowski の定理の証明は、頂点数についての帰納法です。帰納法では、小さいグラフに移っても仮定(3-連結性)が保たれなければなりません。それを保証するのが次の補題です。

証明の方針は背理法です。縮約すると 3-連結でなくなる辺ばかりだと仮定すると、どの辺にも 3 頂点の分離集合が付いてきます。その分離集合が生む連結成分のうち最小のものに注目すると、そこからさらに小さい成分が見つかり、最小性に反します。

補題 4.1(縮約できる辺(Thomassen))✓

頂点数が 5 以上の 3-連結グラフ GG には、G/eG/e も 3-連結であるような辺 ee がある。

証明(補題 4.1)

そのような辺がないと仮定して矛盾を導きます。

手順 1(どの辺も 3 点の分離集合に含まれる). 辺 xyxy を任意に取ります。∣G/xy∣=∣G∣−1≥4|G/xy|=|G|-1\ge4 なので、G/xyG/xy が 3-連結でないとは、2 個以下の頂点からなる分離集合 SS があることです。

vxy∉Sv_{xy}\notin S とすると、S⊆V(G)∖{x,y}S\subseteq V(G)\setminus\{x,y\} で、G−SG-S は GG の 3-連結性から連結です。(G/xy)−S=(G−S)/xy(G/xy)-S=(G-S)/xy で、連結グラフの辺を縮約しても連結です(歩道の中の x,yx,y を vxyv_{xy} に置き換えれば歩道になります)。これは SS が分離集合であることに反するので、vxy∈Sv_{xy}\in S です。S={vxy}S=\{v_{xy}\} とすると、G−{x,y}=(G/xy)−vxyG-\{x,y\}=(G/xy)-v_{xy} が非連結になり、GG の 3-連結性に反します。よって S={vxy,z}S=\{v_{xy},z\} と書け、G−{x,y,z}=(G/xy)−SG-\{x,y,z\}=(G/xy)-S は非連結です。

以上から、どの辺 xyxy にも、{x,y,z}\{x,y,z\} が GG の分離集合になる頂点 zz があります。このとき、x,y,zx,y,z のそれぞれは、G−{x,y,z}G-\{x,y,z\} のどの連結成分にも隣接点をもちます。たとえば xx が成分 CC に隣接点をもたなければ、{y,z}\{y,z\} が CC を残りから分離し、3-連結性に反するからです。

手順 2(最小の成分を取る). 辺 xyxy、頂点 zz、G−{x,y,z}G-\{x,y,z\} の連結成分 CC の組のうち、∣C∣|C| が最小のものを取ります。zz は CC に隣接点 vv をもちます。辺 zvzv に手順 1 を適用すると、{z,v,w}\{z,v,w\} が分離集合になる頂点 ww があります。

手順 3(もっと小さい成分が見つかる). x,yx,y のうち ww と異なるものは、G−{z,v,w}G-\{z,v,w\} に残ります(x,yx,y は zz とも、CC の頂点 vv とも異なります)。xx と yy は隣接するので、両方残る場合も同じ連結成分に属します。G−{z,v,w}G-\{z,v,w\} の連結成分は 2 つ以上あるので、xx も yy も含まない成分 DD があります。

手順 1 の最後の注意から、vv は DD に隣接点 uu をもちます。v∈Cv\in C の隣接点は C∪{x,y,z}C\cup\{x,y,z\} に属し、DD は x,y,zx,y,z を含まないので、u∈Cu\in C です。DD は G−{x,y,z}G-\{x,y,z\} の連結な部分グラフで CC と交わるので、D⊆CD\subseteq C です。一方 v∈C∖Dv\in C\setminus D ですから ∣D∣<∣C∣|D|<|C| です。辺 zvzv、頂点 ww、成分 DD の組は ∣C∣|C| の最小性に反します。

例 4.2(車輪グラフと K3,3K_{3,3})

中心 hh と閉路 v1v2⋯vnv1v_1v_2\cdots v_nv_1(n≥3n\ge3)からなり、hh がすべての viv_i と隣接するグラフを車輪 WnW_n といいます(W3=K4W_3=K_4)。n≥4n\ge4 のとき、スポーク hv1hv_1 を縮約すると、新しい頂点は v2,…,vnv_2,\dots,v_n のすべてと隣接しますが、外周は v1v_1 を失って道 v2v3⋯vnv_2v_3\cdots v_n になります。このグラフでは v2v_2 の隣接点が新しい頂点と v3v_3 の 2 つしかないので、3-連結ではありません(3-連結なら最小次数は 3 以上です。定理 2.2[連結度とネットワークフロー])。一方、外周の辺 v1v2v_1v_2 を縮約すると、新しい頂点は h,v3,vnh,v_3,v_n と隣接し、得られるのは Wn−1W_{n-1} で、これは 3-連結です。縮約できる辺は「ある」のであって、どの辺でもよいわけではありません。

K3,3K_{3,3} では、どの辺 a1b1a_1b_1 を縮約しても、新しい頂点が残りの 4 頂点 a2,a3,b2,b3a_2,a_3,b_2,b_3 のすべてと隣接し、4 頂点は閉路 a2b2a3b3a_2b_2a_3b_3 をなすので、W4W_4 になります。

5. 3-連結の場合:凸な描画を作る

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この節の目標は 定理 5.6 です。証明の地図を先に書きます。

  • 縮約できる辺 e=xye=xy を取り、H=G/eH=G/e の凸な描画を帰納法の仮定から得る。
  • 縮約でできた頂点 zz の隣接点は、H−zH-z のある面の境界の閉路 CC に並ぶ。その中で、xx の隣接点と yy の隣接点がどう並ぶかで 3 通りに分ける。
  • 共通の隣接点が 3 個以上なら TK5TK_5、xx の隣接点 2 個と yy の隣接点 2 個が交互に並べば TK3,3TK_{3,3} が見つかり、仮定に反する。
  • 残る場合は、yy の隣接点が、xx の隣り合う 2 つの隣接点の間にまとまっている。このとき xx を zz の位置に置き、yy を zz のすぐ近くの適切な方向に置けば、GG の凸な描画になる(補題 5.5)。
xyxyxy共通の隣接点が 3 個2 個ずつが交互に並ぶy の側がまとまっている
縮約でできた頂点を x と y に開くときの 3 つの場合。円は閉路 C、黒丸は x の隣接点、白丸は y の隣接点、二重丸は共通の隣接点。左と中央では辺が交わり、それぞれ K₅・K₃,₃ の細分が現れる。右は交わらずに開ける。

平面の 3 点 a,b,ca,b,c に対し

[a,b,c]=det⁡(b−a, c−a)[a,b,c]=\det(b-a,\ c-a)

とおきます。[a,b,c]>0[a,b,c]>0 は、cc が有向直線 a→ba\to b の左側に厳密にあることと同値です。鏡映 ρ\rho では [ρa,ρb,ρc]=−[a,b,c][\rho a,\rho b,\rho c]=-[a,b,c] です。

定義 5.1(狭義凸の位置・凸な描画)↗

平面の点の巡回列 (v1,…,vr)(v_1,\dots,v_r)(r≥3r\ge3)が狭義凸の位置にあるとは、添字を rr を法として読むとき、すべての ii とすべての j≠i,i+1j\ne i,i+1 について [vi,vi+1,vj]>0[v_i,v_{i+1},v_j]>0 となることをいう。逆順の列がこの条件を満たすときも、狭義凸の位置にあるという。

平面グラフの描画が凸な描画であるとは、どの辺も線分で、どの面の境界も閉路であり、その閉路の頂点を閉路の順に並べた列が狭義凸の位置にあることをいう。

次の補題は、「狭義凸の位置にある点列」が、ふつうの意味の凸多角形(内側が囲まれ、対角線が内側を通る図形)を定めることを、行列式 [a,b,c][a,b,c] の符号だけで確かめるものです。図の上では明らかな事実ですが、以降の補題で内部や角領域を座標で扱うので、ここで一度証明しておきます。結論の 1〜4 だけ頭に入れておけば、証明を読み飛ばしても先の議論は追えます。

補題 5.2(狭義凸の位置にある点列の定める凸多角形)✓

(v1,…,vr)(v_1,\dots,v_r)(r≥3r\ge3)が狭義凸の位置にあるとする。線分 [vi,vi+1][v_i,v_{i+1}](1≤i≤r1\le i\le r。この多角形の辺と呼ぶ)の和集合を ZZ とし、

Π=conv⁡{v1,…,vr}={∑j=1rtjvj: tj≥0, ∑j=1rtj=1}\Pi=\operatorname{conv}\{v_1,\dots,v_r\}=\Bigl\{\sum_{j=1}^rt_jv_j:\ t_j\ge0,\ \sum_{j=1}^rt_j=1\Bigr\}

を凸多角形(凸包)と呼ぶ。巡回列の中で隣り合わない 2 頂点を結ぶ線分を対角線と呼ぶ。

  1. v1,…,vrv_1,\dots,v_r は相異なり、相異なる 2 本の辺が交わるのは、巡回列で続く 2 本が共通の端点で交わる場合だけである。したがって ZZ は折れ線の閉曲線である。その内部は Π∖Z\Pi\setminus Z、外部は R2∖Π\mathbb{R}^2\setminus\Pi である。すべての ii と j≠i,i+1j\ne i,i+1 で [vi,vi+1,vj]>0[v_i,v_{i+1},v_j]>0 となる向きに列を読むとき、Π=⋂i{p:[vi,vi+1,p]≥0}\Pi=\bigcap_i\{p:[v_i,v_{i+1},p]\ge0\}、Π∖Z=⋂i{p:[vi,vi+1,p]>0}\Pi\setminus Z=\bigcap_i\{p:[v_i,v_{i+1},p]>0\} である。
  2. 対角線の点は、両端を除いて ZZ の内部にある。
  3. z=viz=v_i とし、巡回列での両隣を a,ba,b とする。a−za-z と b−zb-z は一次独立である。平面の点を p=z+λ(a−z)+μ(b−z)p=z+\lambda(a-z)+\mu(b-z) と書くとき、p∈Πp\in\Pi ならば λ≥0\lambda\ge0 かつ μ≥0\mu\ge0、pp が ZZ の内部にあれば λ>0\lambda>0 かつ μ>0\mu>0 である。zz 以外の頂点では (λ,μ)≠(0,0)(\lambda,\mu)\ne(0,0) である。Λ={z+λ(a−z)+μ(b−z):λ>0, μ>0}\Lambda=\{z+\lambda(a-z)+\mu(b-z):\lambda>0,\ \mu>0\} は、半直線 za,zbza,zb が平面から切り取る 2 つの開いた角領域のうちの一方で、その開きは π\pi 未満、もう一方の開きは π\pi より大きい。さらに、ある δ>0\delta>0 があって、Λ\Lambda の点で zz からの距離が δ\delta 未満のものはすべて ZZ の内部にある。
  4. 凸な描画の面の境界の閉路の点集合を ZZ とすると(頂点の列は狭義凸の位置にある)、その面が内面ならば面は ZZ の内部に等しく、外面ならば ZZ の外部に等しい。
証明(補題 5.2)

列を逆順にしても、ZZ、Π\Pi、辺、対角線、両隣の組 {a,b}\{a,b\} は変わらず、1 の最後の文以外の主張は列の向きによりません(3 は aa と bb、λ\lambda と μ\mu を同時に入れ替えても同じ主張です)。そこで、すべての ii と j≠i,i+1j\ne i,i+1 で [vi,vi+1,vj]>0[v_i,v_{i+1},v_j]>0 であると仮定します。添字は rr を法として読みます。

fi(p)=[vi,vi+1,p]=det⁡(vi+1−vi, p−vi)f_i(p)=[v_i,v_{i+1},p]=\det(v_{i+1}-v_i,\ p-v_i) とおきます。fif_i は pp の 1 次式なので、s+t=1s+t=1 のとき fi(sp+tq)=sfi(p)+tfi(q)f_i(sp+tq)=sf_i(p)+tf_i(q) が成り立ちます(t1+⋯+tr=1t_1+\dots+t_r=1 のときの fi(∑jtjvj)=∑jtjfi(vj)f_i(\sum_jt_jv_j)=\sum_jt_jf_i(v_j) も同様です)。また fi(vi)=fi(vi+1)=0f_i(v_i)=f_i(v_{i+1})=0 で、仮定からそれ以外の頂点 vjv_j では fi(vj)>0f_i(v_j)>0 です。r≥3r\ge3 なので、i−1,i,i+1i-1,i,i+1 は rr を法として相異なります。次のようにおきます。

P=⋂i{p:fi(p)≥0},U=⋂i{p:fi(p)>0},W=R2∖P=⋃i{p:fi(p)<0}.P=\bigcap_i\{p:f_i(p)\ge0\},\qquad U=\bigcap_i\{p:f_i(p)>0\},\qquad W=\mathbb{R}^2\setminus P=\bigcup_i\{p:f_i(p)<0\}.

頂点は相異なる. j≠i,i+1j\ne i,i+1 なら fi(vj)>0=fi(vi)f_i(v_j)>0=f_i(v_i) なので vj≠viv_j\ne v_i です。vi=vi+1v_i=v_{i+1} なら fif_i は恒等的に 00 になり、fi(vi+2)>0f_i(v_{i+2})>0 に反します。

辺の上での fkf_k の値. q=(1−t)vi+tvi+1q=(1-t)v_i+tv_{i+1}(0≤t≤10\le t\le1)を辺 [vi,vi+1][v_i,v_{i+1}] の点とし、k≠ik\ne i とします。fk(q)=(1−t)fk(vi)+tfk(vi+1)f_k(q)=(1-t)f_k(v_i)+tf_k(v_{i+1}) で、2 つの項はどちらも 00 以上です。fk(vi)=0f_k(v_i)=0 となるのは i∈{k,k+1}i\in\{k,k+1\}、すなわち(k≠ik\ne i なので)k=i−1k=i-1 のときだけで、fk(vi+1)=0f_k(v_{i+1})=0 となるのは k=i+1k=i+1 のときだけです。i−1≠i+1i-1\ne i+1 なので、両方が 00 になることはありません。したがって

  • k=i−1k=i-1 なら fk(q)=tfk(vi+1)f_k(q)=tf_k(v_{i+1}) で、fk(q)=0f_k(q)=0 となるのは q=viq=v_i のときだけ、
  • k=i+1k=i+1 なら fk(q)=(1−t)fk(vi)f_k(q)=(1-t)f_k(v_i) で、fk(q)=0f_k(q)=0 となるのは q=vi+1q=v_{i+1} のときだけ、
  • それ以外の k≠ik\ne i では fk(q)>0f_k(q)>0

です。とくに Z⊆PZ\subseteq P で、ZZ のどの点でも少なくとも 1 つの fif_i が 00 になるので Z∩U=∅Z\cap U=\varnothing です。

辺どうしの交わり. qq が相異なる 2 本の辺 [vi,vi+1][v_i,v_{i+1}] と [vk,vk+1][v_k,v_{k+1}] の両方に属するとします。fkf_k は辺 [vk,vk+1][v_k,v_{k+1}] の上で 00 なので fk(q)=0f_k(q)=0 です。上のことから、k=i−1k=i-1 で q=viq=v_i であるか、k=i+1k=i+1 で q=vi+1q=v_{i+1} であるかのどちらかです。どちらも、続く 2 本の辺が共通の端点で交わる場合です。頂点は相異なるので、ZZ は v1,v2,…,vr,v1v_1,v_2,\dots,v_r,v_1 の順に線分でつないだ、自分自身と交わらない折れ線の閉曲線です。

P=U∪ZP=U\cup Z. U∪Z⊆PU\cup Z\subseteq P は済んでいます。p∈P∖Up\in P\setminus U とすると、ある ii で fi(p)=0f_i(p)=0 です。vi+1−vi≠0v_{i+1}-v_i\ne0 で det⁡(vi+1−vi, p−vi)=0\det(v_{i+1}-v_i,\ p-v_i)=0 なので、実数 tt があって p=vi+t(vi+1−vi)=(1−t)vi+tvi+1p=v_i+t(v_{i+1}-v_i)=(1-t)v_i+tv_{i+1} と書けます。fi−1(p)=tfi−1(vi+1)≥0f_{i-1}(p)=tf_{i-1}(v_{i+1})\ge0 と fi−1(vi+1)>0f_{i-1}(v_{i+1})>0 から t≥0t\ge0、fi+1(p)=(1−t)fi+1(vi)≥0f_{i+1}(p)=(1-t)f_{i+1}(v_i)\ge0 と fi+1(vi)>0f_{i+1}(v_i)>0 から t≤1t\le1 です。よって pp は辺 [vi,vi+1][v_i,v_{i+1}] の上にあり、p∈Zp\in Z です。

内部と外部. いま示したことから、R2∖Z\mathbb{R}^2\setminus Z は交わらない 2 つの集合 UU と WW の和集合です。どちらも開集合です(fif_i は連続です)。UU は空ではありません。重心 g=1r∑jvjg=\frac1r\sum_jv_j について fi(g)=1r∑jfi(vj)f_i(g)=\frac1r\sum_jf_i(v_j) で、和の各項は 00 以上、j=i+2j=i+2 の項は正だからです。WW は空でなく、有界でもありません。t>0t>0 のとき f1(v1+t(v1−v3))=(1+t)f1(v1)−tf1(v3)=−tf1(v3)<0f_1(v_1+t(v_1-v_3))=(1+t)f_1(v_1)-tf_1(v_3)=-tf_1(v_3)<0 だからです。

補題 2.7[平面グラフ] から、R2∖Z\mathbb{R}^2\setminus Z の連結成分は、有界な内部と非有界な外部のちょうど 2 つです。連結成分 RR は連結で、R∩UR\cap U と R∩WR\cap W は RR を覆う交わらない開集合なので、一方は空です。つまり各成分は UU か WW のどちらかに含まれます。UU も WW も空でないので、2 つの成分の一方が UU に、他方が WW に含まれ、UU と WW はそれぞれ 1 つの成分に一致します。WW は有界でないので外部、UU が内部です。とくに UU は有界で、P=U∪ZP=U\cup Z も有界です。

Π=P\Pi=P. p=∑jtjvj∈Πp=\sum_jt_jv_j\in\Pi なら fi(p)=∑jtjfi(vj)≥0f_i(p)=\sum_jt_jf_i(v_j)\ge0 なので Π⊆P\Pi\subseteq P です。逆を示します。辺の点は 2 頂点の凸結合なので Z⊆ΠZ\subseteq\Pi です。p∈Up\in U とします。f1(v1)=0f_1(v_1)=0 なので p≠v1p\ne v_1 です。t≥0t\ge0 に対し g(t)=v1+t(p−v1)g(t)=v_1+t(p-v_1) とおき、T={t≥0:g(t)∈P}T=\{t\ge0:g(t)\in P\} とします。fk(g(t))=(1−t)fk(v1)+tfk(p)f_k(g(t))=(1-t)f_k(v_1)+tf_k(p) は tt の 1 次式なので、TT は閉集合で、1∈T1\in T です。∣g(t)−v1∣=t∣p−v1∣|g(t)-v_1|=t|p-v_1| と PP の有界性から TT は有界です。そこで t∗=max⁡T≥1t^*=\max T\ge1 が取れます。q=g(t∗)∈P=U∪Zq=g(t^*)\in P=U\cup Z です。q∈Uq\in U なら、すべての kk で fk(g(t∗))>0f_k(g(t^*))>0 なので、連続性から t∗t^* より少し大きい tt でもすべての fk(g(t))>0f_k(g(t))>0 となり、t∗t^* の最大性に反します。よって q∈Zq\in Z で、q=(1−s)vk+svk+1q=(1-s)v_k+sv_{k+1}(0≤s≤10\le s\le1)と書けます。すると

p=(1−1t∗)v1+1t∗q=(1−1t∗)v1+1−st∗vk+st∗vk+1p=\Bigl(1-\frac1{t^*}\Bigr)v_1+\frac1{t^*}q=\Bigl(1-\frac1{t^*}\Bigr)v_1+\frac{1-s}{t^*}v_k+\frac{s}{t^*}v_{k+1}

は頂点の凸結合で、p∈Πp\in\Pi です。以上で Π=P\Pi=P、Π∖Z=U\Pi\setminus Z=U、R2∖Π=W\mathbb{R}^2\setminus\Pi=W となり、1 が示されました。

2. vi,vjv_i,v_j を隣り合わない 2 頂点とします。各 kk について fk(vi)≥0f_k(v_i)\ge0、fk(vj)≥0f_k(v_j)\ge0 です。fkf_k が 00 になる頂点は vk,vk+1v_k,v_{k+1} だけで、この 2 つは隣り合うので、fk(vi)f_k(v_i) と fk(vj)f_k(v_j) の少なくとも一方は正です。したがって 0<t<10<t<1 のとき fk((1−t)vi+tvj)=(1−t)fk(vi)+tfk(vj)>0f_k((1-t)v_i+tv_j)=(1-t)f_k(v_i)+tf_k(v_j)>0 で、対角線の両端以外の点は UU に属します。

3. a=vi−1a=v_{i-1}、b=vi+1b=v_{i+1} とします。Δ=det⁡(b−z, a−z)\Delta=\det(b-z,\ a-z) とおくと、

[a,z,b]=det⁡(z−a, b−a)=det⁡(z−a, b−z)=det⁡(b−z, a−z)=Δ[a,z,b]=\det(z-a,\ b-a)=\det(z-a,\ b-z)=\det(b-z,\ a-z)=\Delta

です(2 番目の等号は b−a=(b−z)+(z−a)b-a=(b-z)+(z-a) から)。[a,z,b]=fi−1(vi+1)>0[a,z,b]=f_{i-1}(v_{i+1})>0 なので Δ>0\Delta>0 で、a−za-z と b−zb-z は一次独立です。したがって平面の点 pp は p=z+λ(a−z)+μ(b−z)p=z+\lambda(a-z)+\mu(b-z) とただ 1 通りに書けて、

fi(p)=det⁡(b−z, p−z)=λΔ,fi−1(p)=det⁡(z−a, p−a)=det⁡(z−a, p−z)=μdet⁡(z−a, b−z)=μΔf_i(p)=\det(b-z,\ p-z)=\lambda\Delta,\qquad f_{i-1}(p)=\det(z-a,\ p-a)=\det(z-a,\ p-z)=\mu\det(z-a,\ b-z)=\mu\Delta

です。p∈Π=Pp\in\Pi=P なら fi(p),fi−1(p)≥0f_i(p),f_{i-1}(p)\ge0 なので λ,μ≥0\lambda,\mu\ge0、p∈Up\in U なら λ,μ>0\lambda,\mu>0 です。(λ,μ)=(0,0)(\lambda,\mu)=(0,0) となる点は zz だけです。

u(θ)=(cos⁡θ,sin⁡θ)u(\theta)=(\cos\theta,\sin\theta) と書くと det⁡(u(σ),u(τ))=sin⁡(τ−σ)\det(u(\sigma),u(\tau))=\sin(\tau-\sigma) です。b−z=ρbu(β)b-z=\rho_bu(\beta)、a−z=ρau(β+θ)a-z=\rho_au(\beta+\theta)(ρa,ρb>0\rho_a,\rho_b>0、0≤θ<2π0\le\theta<2\pi)と表すと、Δ=ρaρbsin⁡θ>0\Delta=\rho_a\rho_b\sin\theta>0 から 0<θ<π0<\theta<\pi です。zz 以外の点 p=z+ρu(β+s)p=z+\rho u(\beta+s)(ρ>0\rho>0、0≤s<2π0\le s<2\pi)について

λΔ=det⁡(b−z, p−z)=ρbρsin⁡s,μΔ=det⁡(p−z, a−z)=ρρasin⁡(θ−s)\lambda\Delta=\det(b-z,\ p-z)=\rho_b\rho\sin s,\qquad \mu\Delta=\det(p-z,\ a-z)=\rho\rho_a\sin(\theta-s)

です。λ>0\lambda>0 は 0<s<π0<s<\pi と同値で、このとき −π<θ−s<π-\pi<\theta-s<\pi なので、μ>0\mu>0 は s<θs<\theta と同値です。よって Λ\Lambda は 0<s<θ0<s<\theta を満たす点の全体、すなわち半直線 zbzb から反時計回りに半直線 zaza までの開いた角領域で、開きは θ<π\theta<\pi です。もう一方の角領域は θ<s<2π\theta<s<2\pi で、開きは 2π−θ>π2\pi-\theta>\pi です。

最後に、λ>0\lambda>0、μ>0\mu>0、λ+μ<1\lambda+\mu<1 とすると、p=(1−λ−μ)z+λa+μbp=(1-\lambda-\mu)z+\lambda a+\mu b で、各 kk について

fk(p)=(1−λ−μ)fk(z)+λfk(a)+μfk(b)f_k(p)=(1-\lambda-\mu)f_k(z)+\lambda f_k(a)+\mu f_k(b)

です。係数はすべて正、fk(z),fk(a),fk(b)f_k(z),f_k(a),f_k(b) は 00 以上で、fkf_k が 00 になる頂点は 2 つだけなので、相異なる 3 頂点 z,a,bz,a,b のどれかでは正です。よって fk(p)>0f_k(p)>0 で、p∈Up\in U です。δ=Δ/(∣a−z∣+∣b−z∣)\delta=\Delta/(|a-z|+|b-z|) とおきます。∣det⁡(x,y)∣≤∣x∣∣y∣|\det(x,y)|\le|x||y| なので、∣p−z∣<δ|p-z|<\delta ならば

∣λ∣+∣μ∣=∣det⁡(b−z, p−z)∣+∣det⁡(p−z, a−z)∣Δ≤(∣a−z∣+∣b−z∣) ∣p−z∣Δ<1|\lambda|+|\mu|=\frac{|\det(b-z,\ p-z)|+|\det(p-z,\ a-z)|}{\Delta}\le\frac{(|a-z|+|b-z|)\,|p-z|}{\Delta}<1

です。したがって Λ\Lambda の点で zz からの距離が δ\delta 未満のものは UU に属します。

4. 凸な描画では辺は線分なので、面 ff の境界の閉路の点集合は、その頂点の列の定める折れ線の閉曲線 ZZ です。補題 2.1 の 1 から、ff は ZZ の内部か外部に等しくなります。内部は有界、外部は非有界です。内面は有界なので内部に、外面は非有界なので外部に等しくなります。

補題 5.3(狭義凸の位置は小さな変更で保たれる)✓

(v1,…,vr)(v_1,\dots,v_r) が狭義凸の位置にあり、すべての i,j≠i,i+1i,j\ne i,i+1 で [vi,vi+1,vj]>0[v_i,v_{i+1},v_j]>0 とする。

  1. ある ε0>0\varepsilon_0>0 があって、1 つの頂点 viv_i を、viv_i からの距離が ε0\varepsilon_0 未満の点に取り替えた列も、同じ不等式を満たす。
  2. 連続する 3 頂点を a,z,ba,z,b(この順)とし、ベクトル dd が [a,z,z+d]<0[a,z,z+d]<0 かつ [z,b,z+d]>0[z,b,z+d]>0 を満たすとする。このとき、十分小さいすべての ε>0\varepsilon>0 について、aa と zz の間に p=z+εdp=z+\varepsilon d を挿入した列 (…,a,p,z,b,… )(\dots,a,p,z,b,\dots) は同じ不等式を満たす。
  3. dd が [a,z,z+d]>0[a,z,z+d]>0 かつ [z,b,z+d]<0[z,b,z+d]<0 を満たすなら、十分小さいすべての ε>0\varepsilon>0 について、zz と bb の間に p=z+εdp=z+\varepsilon d を挿入した列 (…,a,z,p,b,… )(\dots,a,z,p,b,\dots) は同じ不等式を満たす。
証明(補題 5.3)

1: 条件は、頂点の座標の連続関数についての有限個の狭義の不等式です。1 点を少し動かしても、すべて保たれます。

2: 調べる不等式は「各辺 s→ts\to t について、s,ts,t 以外の頂点が厳密に左側にある」です。p−z=εdp-z=\varepsilon d に注意して、辺ごとに確かめます。

  • pp を端点としない辺. もとの列の辺のうち a→za\to z 以外のものです。pp 以外の頂点については仮定のとおりです。pp については、辺 z→bz\to b では [z,b,p]=ε[z,b,z+d]>0[z,b,p]=\varepsilon[z,b,z+d]>0、それ以外の辺 s→ts\to t(zz を端点としない)では [s,t,z]>0[s,t,z]>0 なので、ε\varepsilon が小さければ [s,t,p]>0[s,t,p]>0 です。
  • 辺 a→pa\to p. zz 以外の頂点 vv(≠a,p\ne a,p)は [a,z,v]>0[a,z,v]>0 を満たすので、ε\varepsilon が小さければ [a,p,v]>0[a,p,v]>0 です。zz については [a,p,z]=det⁡(z−a+εd, z−a)=εdet⁡(d, z−a)=−ε[a,z,z+d]>0[a,p,z]=\det(z-a+\varepsilon d,\ z-a)=\varepsilon\det(d,\ z-a)=-\varepsilon[a,z,z+d]>0 です。
  • 辺 p→zp\to z. 頂点 v≠p,zv\ne p,z について [p,z,v]=det⁡(−εd, v−z−εd)=εdet⁡(v−z, d)[p,z,v]=\det(-\varepsilon d,\ v-z-\varepsilon d)=\varepsilon\det(v-z,\ d) です。補題 5.2 の 3 から v−z=λ(a−z)+μ(b−z)v-z=\lambda(a-z)+\mu(b-z)(λ,μ≥0\lambda,\mu\ge0、同時には 00 でない)と書け、det⁡(a−z,d)=−[a,z,z+d]>0\det(a-z,d)=-[a,z,z+d]>0、det⁡(b−z,d)=[z,b,z+d]>0\det(b-z,d)=[z,b,z+d]>0 なので、det⁡(v−z,d)>0\det(v-z,d)>0 です。

3: 鏡映 ρ\rho で写し、列を逆順にします。[ρs,ρt,ρv]=−[s,t,v][\rho s,\rho t,\rho v]=-[s,t,v] なので、逆順の列 (…,ρb,ρz,ρa,… )(\dots,\rho b,\rho z,\rho a,\dots) は定義の不等式を満たします。ρb,ρz,ρa\rho b,\rho z,\rho a を 2 の a,z,ba,z,b とし、ρd\rho d を dd として 2 を適用します。必要な条件は [ρb,ρz,ρz+ρd]<0[\rho b,\rho z,\rho z+\rho d]<0 と [ρz,ρa,ρz+ρd]>0[\rho z,\rho a,\rho z+\rho d]>0、すなわち [b,z,z+d]>0[b,z,z+d]>0 と [z,a,z+d]<0[z,a,z+d]<0 で、[b,z,z+d]=det⁡(z−b,d)=−[z,b,z+d][b,z,z+d]=\det(z-b,d)=-[z,b,z+d]、[z,a,z+d]=det⁡(a−z,d)=−[a,z,z+d][z,a,z+d]=\det(a-z,d)=-[a,z,z+d] から、仮定と同値です。得られた列 (…,ρb,ρp,ρz,ρa,… )(\dots,\rho b,\rho p,\rho z,\rho a,\dots) をもう一度鏡映して逆順にすれば、(…,a,z,p,b,… )(\dots,a,z,p,b,\dots) が定義の不等式を満たします。

補題 5.4(閉路上の順序と、頂点のまわりの方向の順序)✓

HH を平面グラフ、zz をその頂点とし、zz に接続する辺はすべて線分であるとする。CC を H−zH-z の閉路、a,b,c,da,b,c,d を CC の上にある zz の相異なる隣接点とする。cc と dd が C−{a,b}C-\{a,b\} の同じ連結成分に属するならば、zz から見た cc の方向と dd の方向は、2 本の半直線 za,zbza,zb が平面から切り取る 2 つの開いた角領域のうち、同じほうに入る。

証明(補題 5.4)

CC の aa から bb への 2 本の道のうち、c,dc,d を含まないほうを RR とし、閉路 K=zaRbzK=zaRbz を考えます。KK は折れ線の閉曲線なので、R2∖K\mathbb{R}^2\setminus K は 2 つの連結成分からなり、どちらの境界も KK 全体です(補題 2.7[平面グラフ])。

zz を中心とする十分小さい円板 BB は、KK と 2 本の半径(線分 za,zbza,zb の一部)でしか交わりません(補題 2.4[平面グラフ] を平面グラフ KK に使います)。B∖KB\setminus K は 2 つの開いた扇形で、それぞれ連結なので、R2∖K\mathbb{R}^2\setminus K の 1 つの成分に含まれます。zz はどちらの成分の境界にも属するので、どちらの成分も BB と交わります。したがって 2 つの扇形は異なる成分に含まれます。

cc の方向と dd の方向が異なる角領域に入ると仮定します。線分 zczc から zz を除いた部分は連結で、KK と交わりません(zczc は KK の辺と zz でしか交わらず、cc は KK の上にありません)。zz の近くでは一方の扇形に入るので、cc はその扇形を含む成分に属します。同様に dd はもう一方の扇形を含む成分に属し、cc と dd は R2∖K\mathbb{R}^2\setminus K の異なる成分にあります。ところが、CC の中の cc から dd への道で a,ba,b を通らないものは、KK と交わらない連結集合で cc と dd を結びます。これは矛盾です。

次の補題は、§5 冒頭の地図の最後の場合にあたります。縮約でできた頂点 zz を 2 点 x,yx,y に開き戻すとき、xx の隣接点と yy の隣接点が zz のまわりで混ざっていなければ、xx を zz の位置に、yy を zz のすぐ近くに置いて、凸な描画を保てる、という内容です。yy を置く方向を角度で選ぶため、証明は場合分けが続きます。

補題 5.5(頂点を開いても凸な描画が作れる場合)✓

グラフ HH が凸な描画をもち、zz を次数 3 以上の頂点とする。N(z)=Nx∪NyN(z)=N_x\cup N_y、∣Nx∣≥2|N_x|\ge2、∣Ny∣≥2|N_y|\ge2 とし、H−zH-z に 2 頂点 x,yx,y と辺 xyxy を足して、xx を NxN_x の各頂点と、yy を NyN_y の各頂点と隣接させたグラフを GG とする。次の 2 条件を仮定する。

  • ∣Nx∩Ny∣≤2|N_x\cap N_y|\le2。
  • 相異なる 4 頂点 x′,x′′∈Nxx',x''\in N_x、u,v∈Nyu,v\in N_y で、zz から見た uu の方向と vv の方向が、半直線 zx′,zx′′zx',zx'' の切り取る 2 つの開いた角領域の異なるほうに入るものは存在しない。

このとき GG は凸な描画をもつ。

証明(補題 5.5)

HH の凸な描画を固定し、その点集合を DD と書きます。

手順 0(zz のまわりの面). zz の隣接点を zz のまわりの反時計回りの順に u1,…,udu_1,\dots,u_d(d≥3d\ge3)とします。zz を中心とする小さい円板 B(z,r)B(z,r) は、DD と dd 本の半径でしか交わらず、残りは dd 個の開いた扇形です(補題 2.4[平面グラフ])。uju_j と uj+1u_{j+1} の間の扇形は連結なので 1 つの面に含まれ、その面の境界の閉路は、扇形の縁にある辺 zujzu_j と zuj+1zu_{j+1} を含みます。閉路が zz で使う辺は 2 本なので、この面の境界の多角形で zz の両隣は uju_j と uj+1u_{j+1} です。d≥3d\ge3 なので、異なる扇形は異なる面に含まれます。この面が内面なら、面は多角形の内部に等しく(補題 5.2 の 4)、多角形の内部は半直線 zuj,zuj+1zu_j,zu_{j+1} の切り取る開き π\pi 未満の角領域に含まれるので(同じ補題の 3)、扇形の中心角は π\pi 未満です。外面なら、面は多角形の外部に等しく、開き π\pi 未満の角領域の点のうち zz に十分近いものは多角形の内部にあるので(同じ補題の 3)、扇形はもう一方の角領域に含まれ、中心角は π\pi より大きくなります。

手順 1(配置の整理). NxN_x の頂点を zz のまわりの反時計回りに x1,…,xkx_1,\dots,x_k(k≥2k\ge2)とし、半直線 zxizx_i から zxi+1zx_{i+1} までの開いた角領域を WiW_i とします(添字は kk を法とします)。2 番目の仮定を x′=xix'=x_i、x′′=xi+1x''=x_{i+1} に使うと、Ny∖NxN_y\setminus N_x の頂点の方向はすべて同じ WiW_i に入り、Ny∖Nx≠∅N_y\setminus N_x\ne\varnothing ならば Ny∩Nx⊆{xi,xi+1}N_y\cap N_x\subseteq\{x_i,x_{i+1}\} です。Ny⊆NxN_y\subseteq N_x のときは、1 番目の仮定から ∣Ny∣=2|N_y|=2 で、2 番目の仮定から NyN_y の 2 頂点は NxN_x の中で隣り合い、Ny={xi,xi+1}N_y=\{x_i,x_{i+1}\} と書けます。

以下、zz を原点とし、半直線 zxizx_i の方向を角 00 として、方向を反時計回りの角 θ∈[0,2π)\theta\in[0,2\pi) で表します。xi+1x_{i+1} の角を ψ∈(0,2π)\psi\in(0,2\pi)、Ny∖NxN_y\setminus N_x の頂点を角の小さい順に w1,…,wmw_1,\dots,w_m(m≥0m\ge0)、その角を 0<θ1<⋯<θm<ψ0<\theta_1<\dots<\theta_m<\psi とします。w0=xiw_0=x_i、wm+1=xi+1w_{m+1}=x_{i+1}、θ0=0\theta_0=0、θm+1=ψ\theta_{m+1}=\psi とおき、zwlzw_l と zwl+1zw_{l+1} の間の扇形を含む面を glg_l、その境界の多角形を Πl\Pi_l とします(0≤l≤m0\le l\le m)。NyN_y の頂点を取り付け先と呼びます。それは w1,…,wmw_1,\dots,w_m と、xi,xi+1x_i,x_{i+1} のうち NyN_y に属するものです。取り付け先の角の最小値を θL\theta_L、最大値を θR\theta_R とします。xi∈Nyx_i\in N_y なら θL=0\theta_L=0、そうでなければ θL=θ1\theta_L=\theta_1 で、θR\theta_R も同様です。取り付け先は 2 個以上あるので θL<θR\theta_L<\theta_R です。

手順 2(外面の位置). 仮定は xx と yy について対称です(2 番目の仮定は「半直線 zu,zvzu,zv が x′x' と x′′x'' の方向を分ける」と言っても同じです)。角 θR\theta_R から反時計回りに角 θL+2π\theta_L+2\pi までの開いた角領域を W′W' とします。Nx∖NyN_x\setminus N_y の頂点は、WiW_i の閉包の外にある xjx_j と、xi,xi+1x_i,x_{i+1} のうち NyN_y に属さないものです。その方向はすべて W′W' に入り、Nx∩NyN_x\cap N_y の頂点は W′W' の両端にしか現れません。つまり、xx と yy の役割を入れ替えると、WiW_i の役をするのは W′W' です。W′W' に含まれる扇形の面は、WiW_i の外の面と、xi∉Nyx_i\notin N_y のときの g0g_0、xi+1∉Nyx_{i+1}\notin N_y のときの gmg_m です。

外面が g0,…,gmg_0,\dots,g_m のどれかであるとします。それが W′W' に含まれなければ、xx と yy の役割を入れ替えることで、外面は g0,…,gmg_0,\dots,g_m に現れなくなります。W′W' に含まれるのは、「外面が g0g_0 で xi∉Nyx_i\notin N_y」か「外面が gmg_m で xi+1∉Nyx_{i+1}\notin N_y」の場合だけで、後者は鏡映で前者に移ります。したがって、次の 2 つの場合だけを考えれば十分です。

  • 場合 I: g0,…,gmg_0,\dots,g_m はすべて内面である。
  • 場合 II: g0g_0 が外面で、xi∉Nyx_i\notin N_y である(このとき m≥1m\ge1、θL=θ1>π\theta_L=\theta_1>\pi で、g1,…,gmg_1,\dots,g_m は内面)。

手順 3(yy を置く方向). 角 φ\varphi を次の開区間から、どの θl\theta_l とも異なるように選びます。

  • 場合 I: max⁡(θL, ψ−π)<φ<min⁡(θR, π)\max(\theta_L,\ \psi-\pi)<\varphi<\min(\theta_R,\ \pi)。
  • 場合 II: π<φ<θ1\pi<\varphi<\theta_1。

場合 I の区間が空でないことを確かめます。θL<θR\theta_L<\theta_R と ψ−π<π\psi-\pi<\pi は済んでいます。θL<π\theta_L<\pi は、θL=0\theta_L=0 なら明らかで、θL=θ1\theta_L=\theta_1 なら g0g_0 が内面なので中心角 θ1<π\theta_1<\pi です。ψ−π<θR\psi-\pi<\theta_R は、θR=ψ\theta_R=\psi なら明らかで、θR=θm\theta_R=\theta_m なら gmg_m が内面なので ψ−θm<π\psi-\theta_m<\pi です。

どちらの場合も、0<φ<ψ0<\varphi<\psi で、すべての取り付け先 qq(角を θ(q)\theta(q) とする)について

∣θ(q)−φ∣<π|\theta(q)-\varphi|<\pi

が成り立ちます。場合 I では θ(q)≥θL≥0>φ−π\theta(q)\ge\theta_L\ge0>\varphi-\pi と θ(q)≤θR≤ψ<φ+π\theta(q)\le\theta_R\le\psi<\varphi+\pi から、場合 II では θ(q)≤ψ<2π<φ+π\theta(q)\le\psi<2\pi<\varphi+\pi と θ(q)≥θ1>φ>φ−π\theta(q)\ge\theta_1>\varphi>\varphi-\pi から従います。

d=(cos⁡φ,sin⁡φ)d=(\cos\varphi,\sin\varphi)、p=z+εdp=z+\varepsilon d とおき、新しい描画を次のように定めます。zz の位置に xx を置き、辺 zw1,…,zwmzw_1,\dots,zw_m を消し(DD からこれらを除いた点集合を D′D' とします)、点 pp に yy を置いて、pp と zz、pp と各取り付け先を線分で結びます。ε\varepsilon は以下の有限個の条件を満たすように小さく取ります。

手順 4(新しい線分は交わらない). 取り付け先 qq を固定し、三角形 T=conv⁡{z,p,q}T=\operatorname{conv}\{z,p,q\} を考えます。φ≠θ(q)\varphi\ne\theta(q) なので TT はつぶれていません。TT の点は線分 [z,q][z,q] からの距離が ε\varepsilon 以下です。D′D' を 3 つに分けて、TT との交わりを調べます。

  • zz にも qq にも接続しない辺と、z,qz,q 以外の頂点の和集合は、コンパクトで線分 [z,q][z,q](HH の辺)と交わらないので、正の距離があります。ε\varepsilon がそれより小さければ TT と交わりません。
  • qq に接続する zqzq 以外の辺は、qq から zz への方向と異なる方向に出る線分です。TT は qq を頂点とし q→zq\to z の方向を含む角領域に含まれ、その開きは ε→0\varepsilon\to0 で 00 に近づくので、ε\varepsilon が小さければ、これらの辺と TT の交わりは qq だけです。
  • zz に接続する D′D' の辺は zxjzx_j です。TT は zz を頂点とし、角が θ(q)\theta(q) と φ\varphi の間(差は π\pi 未満)の方向からなる閉じた角領域に含まれ、この範囲は [0,ψ][0,\psi] に収まります。xjx_j の角は 00 か ψ\psi か [0,ψ][0,\psi] の外なので、zxjzx_j が TT と zz 以外で交わるのは、q=xjq=x_j で zxjzx_j が TT の辺 [z,q][z,q] そのものであるときだけです。

線分 [p,q][p,q] は TT に含まれ、zz を通らず、[z,q][z,q] とは qq でしか交わりません。よって [p,q]∩D′={q}[p,q]\cap D'=\{q\} です。線分 [p,z][p,z] は B(z,r)B(z,r) の中にあり(ε<r\varepsilon<r)、方向 φ∈(0,ψ)\varphi\in(0,\psi) は D′D' の辺の方向ではないので、[p,z]∩D′={z}[p,z]\cap D'=\{z\} です。pp から出る 2 本の線分 [p,q],[p,q′][p,q],[p,q'] が同じ半直線の上にあれば、一方が他方の端点(D′D' の点)を内点に含むことになり、いま示したことに反します。よって新しい線分どうしは pp でしか交わらず、新しい描画は GG の、辺がすべて線分の平面描画です。その点集合を D′′D'' と書きます。

手順 5(面の候補). GG の閉路を次のように並べます。

  • (α) wlw_l と wl+1w_{l+1} がともに取り付け先である ll(0≤l≤m0\le l\le m)について、Πl\Pi_l の頂点 zz を pp に取り替えた閉路。
  • (β) xi∈Nyx_i\in N_y のとき三角形 pzxipzx_i。xi+1∈Nyx_{i+1}\in N_y のとき三角形 pzxi+1pzx_{i+1}。
  • (γ) xi∉Nyx_i\notin N_y のとき、Π0\Pi_0 の w1w_1 と zz の間に pp を挿入した閉路。xi+1∉Nyx_{i+1}\notin N_y のとき、Πm\Pi_m の zz と wmw_m の間に pp を挿入した閉路。

取り付け先を角の順に並べると、(α) は隣り合う取り付け先の組ごとに 1 つで ∣Ny∣−1|N_y|-1 個、(β) と (γ) は両端に 1 つずつで合わせて 2 個、全部で ∣Ny∣+1|N_y|+1 個です。glg_l が内面のとき、Πl\Pi_l を反時計回りに読むと z,wl,…,wl+1z,w_l,\dots,w_{l+1} の順です。

これらが狭義凸の位置にあること. (α) は 補題 5.3 の 1 から、ε\varepsilon が小さければ成り立ちます。(β) は、φ≠0,π\varphi\ne0,\pi(xix_i の側)、φ≠ψ,ψ−π\varphi\ne\psi,\psi-\pi(xi+1x_{i+1} の側)なので、つぶれていない三角形です。(γ) には同じ補題の 2 と 3 を使います。u(θ)=(cos⁡θ,sin⁡θ)u(\theta)=(\cos\theta,\sin\theta) と書くと det⁡(u(θ),d)=sin⁡(φ−θ)\det(u(\theta),d)=\sin(\varphi-\theta) です。

  • 場合 I の xix_i の側: Π0\Pi_0 で zz の前が a=w1a=w_1、後が b=xib=x_i です。補題の 2 の条件は [a,z,z+d]=det⁡(z−w1,d)<0[a,z,z+d]=\det(z-w_1,d)<0 と [z,b,z+d]=det⁡(xi−z,d)>0[z,b,z+d]=\det(x_i-z,d)>0、すなわち sin⁡(φ−θ1)>0\sin(\varphi-\theta_1)>0 と sin⁡φ>0\sin\varphi>0 で、θ1<φ<π\theta_1<\varphi<\pi から成り立ちます。
  • xi+1x_{i+1} の側(場合 I・II 共通。gmg_m は内面): Πm\Pi_m で zz の前が a=xi+1a=x_{i+1}、後が b=wmb=w_m です。補題の 3 の条件は det⁡(z−xi+1,d)>0\det(z-x_{i+1},d)>0 と det⁡(wm−z,d)<0\det(w_m-z,d)<0、すなわち sin⁡(φ−ψ)<0\sin(\varphi-\psi)<0 と sin⁡(φ−θm)<0\sin(\varphi-\theta_m)<0 です。場合 I では ψ−π<φ<θm<ψ\psi-\pi<\varphi<\theta_m<\psi、場合 II では ψ−π<π<φ<θ1≤θm<ψ\psi-\pi<\pi<\varphi<\theta_1\le\theta_m<\psi なので、φ−ψ\varphi-\psi も φ−θm\varphi-\theta_m も (−π,0)(-\pi,0) に入ります。
  • 場合 II の xix_i の側: g0g_0 は外面で、Π0\Pi_0 を反時計回りに読むと zz の前が a=xia=x_i、後が b=w1b=w_1 です。補題の 3 の条件は det⁡(z−xi,d)>0\det(z-x_i,d)>0 と det⁡(w1−z,d)<0\det(w_1-z,d)<0、すなわち sin⁡φ<0\sin\varphi<0 と sin⁡(φ−θ1)<0\sin(\varphi-\theta_1)<0 で、π<φ<θ1<2π\pi<\varphi<\theta_1<2\pi から成り立ちます。

内側が空であること. 場合 II の xix_i の側の (γ) を除く候補 ZZ について、ZZ の囲む凸多角形の内部に D′′D'' の点がないことを示します。

まず頂点です。ZZ が Πl\Pi_l から作られていれば、conv⁡(Z)\operatorname{conv}(Z) は Πl\Pi_l の囲む閉じた凸多角形 Π‾l\overline\Pi_l と pp の凸包に含まれ、その点は Π‾l\overline\Pi_l からの距離が ε\varepsilon 以下です。ZZ に乗らない HH の頂点 v≠zv\ne z は、Π‾l\overline\Pi_l に属しません(内部は面、境界上の頂点は Πl\Pi_l の頂点です)。ε\varepsilon をその距離より小さく取れば、vv は conv⁡(Z)\operatorname{conv}(Z) に入りません。三角形 pzxipzx_i では、Π‾l\overline\Pi_l を線分 [z,xi][z,x_i] に替えて同じ議論をします。zz が頂点でない候補は (α) だけです。(α) の ZZ を反時計回りに読むと p,wl,…,wl+1p,w_l,\dots,w_{l+1} で、zz が内部にあれば [p,wl,z]>0[p,w_l,z]>0 かつ [wl+1,p,z]>0[w_{l+1},p,z]>0 です。計算すると [p,wl,z]=−εdet⁡(wl−z,d)[p,w_l,z]=-\varepsilon\det(w_l-z,d)、[wl+1,p,z]=εdet⁡(wl+1−z,d)[w_{l+1},p,z]=\varepsilon\det(w_{l+1}-z,d) なので、sin⁡(φ−θl)<0\sin(\varphi-\theta_l)<0 かつ sin⁡(φ−θl+1)>0\sin(\varphi-\theta_{l+1})>0 です。∣θl−φ∣<π|\theta_l-\varphi|<\pi、∣θl+1−φ∣<π|\theta_{l+1}-\varphi|<\pi と合わせると θl+1<φ<θl\theta_{l+1}<\varphi<\theta_l となり、θl<θl+1\theta_l<\theta_{l+1} に反します。pp はどの候補でも頂点です。以上で、内部に GG の頂点はありません。

次に辺です。辺の内点が ZZ の内部にあるとします。辺は端点を除いて ZZ と交わらず(平面描画です)、連結なので、端点を除いて ZZ の内部に含まれ、両端は ZZ の頂点です。狭義凸なので、この辺は ZZ の対角線です。pp から出る対角線なら、もう一方の端は ZZ の上にある取り付け先で、ZZ での pp の両隣以外のものです。ところが Πl\Pi_l の上の取り付け先は wl,wl+1w_l,w_{l+1} のほかにありません(ほかの取り付け先 ww が Πl\Pi_l の上にあれば、HH の辺 zwzw が Πl\Pi_l の対角線になり、内点が面 glg_l に入ってしまいます)。pp を端点としない対角線は HH の辺で、両端が Πl\Pi_l の頂点です。Πl\Pi_l で隣り合わなければ、内点が glg_l に入って矛盾します。Πl\Pi_l で隣り合うのに ZZ で隣り合わないのは、(γ) での zz と w1w_1(または wmw_m)だけで、辺 zw1zw_1、zwmzw_m は GG にはありません。

したがって、補題 2.1 の 2 により、これらの候補の内部はどれも GG の面です。

残りの面. HH の面のうち g0,…,gmg_0,\dots,g_m 以外のもの gg を考えます。辺 zwlzw_l(1≤l≤m1\le l\le m)を境界に含む面は、その両側の扇形を含む gl−1g_{l-1} と glg_l だけです(補題 2.10[平面グラフ])。したがって gg の境界の閉路は辺 zw1,…,zwmzw_1,\dots,zw_m を含まず、GG の閉路でもあります(zz を xx と読みます)。gg は D′⊆DD'\subseteq D の点を含みません。pp から出る新しい線分は、D′D' と端点(zz または取り付け先)でしか交わらないので、端点を除いた部分は gg の境界(D′D' の部分集合)と交わらない連結集合です。この部分は pp を含み、pp 自身は g0,…,gmg_0,\dots,g_m の扇形か消した辺の上にあって gg に属しません。gg の境界と交わらない連結集合は gg に含まれるか gg と交わらないかのどちらかなので、新しい線分は gg と交わらず、gg は GG の面です(補題 2.1 の 2)。

面の個数を数えます。c=∣Nx∩Ny∣c=|N_x\cap N_y| とすると、∣V(G)∣=∣V(H)∣+1|V(G)|=|V(H)|+1、∣E(G)∣=∣E(H)∣+1+c|E(G)|=|E(H)|+1+c です。また H=G/xyH=G/xy で、辺を縮約しても連結成分の個数は変わらないので、GG と HH の連結成分の個数は等しくなります。系 3.2[平面グラフ] から GG の面は HH の面より cc 個多くなります。∣Ny∣=m+c|N_y|=m+c です。

  • 場合 I: HH の面のうち g0,…,gmg_0,\dots,g_m 以外の全部と、候補 m+c+1m+c+1 個が GG の面で、合わせて HH の面の数より cc 個多い。これで GG の面をすべて尽くしています。
  • 場合 II: HH の面のうち g0,…,gmg_0,\dots,g_m 以外(すべて内面)と、xix_i の側の (γ) を除く候補 m+cm+c 個が GG の面で、GG の面の数より 1 つ少ない。残る 1 つが外面です。xix_i の側の (γ) の閉路 Z0Z_0 は、外面の多角形 Π0\Pi_0 に pp を挿入した狭義凸な多角形で、その凸包は Π‾0\overline\Pi_0 と pp を含みます。外面 g0g_0 は Π0\Pi_0 の外部 R2∖Π‾0\mathbb{R}^2\setminus\overline\Pi_0 に等しく(補題 5.2 の 1 と 4)、DD の点を含まないので、D′⊆DD'\subseteq D は Π‾0\overline\Pi_0 に含まれます。新しい線分は pp と Π‾0\overline\Pi_0 の点を結ぶので、D′′D'' 全体が conv⁡(Z0)\operatorname{conv}(Z_0) に含まれます。したがって Z0Z_0 の外部は GG の点を含まず、補題 2.1 の 2 により境界が Z0Z_0 の面、すなわち外面です。

どちらの場合も、GG のすべての面の境界は狭義凸の位置にある閉路です。

定理 5.6(3-連結グラフの凸な描画)✓

GG を 3-連結グラフとする。GG が K5K_5 も K3,3K_{3,3} もマイナーに含まなければ、GG は凸な描画をもつ。とくに GG は平面的である。

証明(定理 5.6)

∣G∣|G| についての帰納法です(定理 3.2[証明の技術])。3-連結なら ∣G∣≥4|G|\ge4 です。

∣G∣=4|G|=4 のとき. 3-連結なら最小次数が 3 以上(定理 2.2[連結度とネットワークフロー])なので G=K4G=K_4 です。3 頂点を (0,0),(4,0),(0,4)(0,0),(4,0),(0,4) に、残りを (1,1)(1,1) に置いて辺を線分で描けば、面は 3 つの三角形の内部と、外側の三角形の外部で、凸な描画です。

∣G∣≥5|G|\ge5 のとき. 補題 4.1 により、H=G/eH=G/e が 3-連結であるような辺 e=xye=xy があります。HH は GG のマイナーなので、HH のマイナーは GG のマイナーで(補題 3.3)、HH も K5K_5・K3,3K_{3,3} をマイナーに含みません。帰納法の仮定から HH は凸な描画をもちます。縮約でできた頂点を zz とし、Nx=NG(x)∖{y}N_x=N_G(x)\setminus\{y\}、Ny=NG(y)∖{x}N_y=N_G(y)\setminus\{x\} とおくと、NH(z)=Nx∪NyN_H(z)=N_x\cup N_y で、GG の最小次数は 3 以上なので ∣Nx∣,∣Ny∣≥2|N_x|,|N_y|\ge2、HH の最小次数も 3 以上なので dH(z)≥3d_H(z)\ge3 です。GG は、HH から 補題 5.5 の操作で得られるグラフです。

閉路 CC. H−zH-z は 2-連結です(HH が 3-連結なので、H−zH-z は 3 頂点以上で、さらに 1 頂点を除いても連結です)。HH の描画から zz とその辺を除いた H−zH-z の描画で、点 zz を含む面を FF とすると、その境界は閉路 CC です(命題 4.2[平面グラフ])。zz の隣接点 uu はすべて CC の上にあります。線分 zuzu から uu を除いた部分は連結で、H−zH-z の描画と交わらず、zz を含むので FF に含まれ、uu は FF の閉包に属して FF には属さないからです。CC は G−{x,y}=H−zG-\{x,y\}=H-z の閉路でもあります。

場合 (a): ∣Nx∩Ny∣≥3|N_x\cap N_y|\ge3. 共通の隣接点 u,v,wu,v,w を取ります。CC は u,v,wu,v,w によって 3 本の道に分かれます。これらと、辺 xyxy、xu,xv,xwxu,xv,xw、yu,yv,ywyu,yv,yw を合わせると、x,y,u,v,wx,y,u,v,w を分岐点とする K5K_5 の細分になります。補題 3.3 の 3 から K5K_5 が GG のマイナーになり、仮定に反します。

場合 (b): 交互に並ぶ. 相異なる x′,x′′∈Nxx',x''\in N_x、u,v∈Nyu,v\in N_y で、zz から見た uu と vv の方向が、半直線 zx′,zx′′zx',zx'' の切り取る異なる角領域に入るものがあるとします。補題 5.4 の対偶から、uu と vv は C−{x′,x′′}C-\{x',x''\} の異なる連結成分に属します。つまり CC の上で x′,u,x′′,vx',u,x'',v はこの巡回順に並び、CC は 4 本の道 x′Cux'Cu、uCx′′uCx''、x′′Cvx''Cv、vCx′vCx' に分かれます。これらと、辺 xyxy、xx′,xx′′xx',xx''、yu,yvyu,yv を合わせると、{x,u,v}\{x,u,v\} と {y,x′,x′′}\{y,x',x''\} を 2 つの側とする K3,3K_{3,3} の細分になります(xx は y,x′,x′′y,x',x'' と辺で、uu は yy と辺で、x′,x′′x',x'' と CC の道で結ばれ、vv も同様です)。これも仮定に反します。

場合 (c): どちらでもない. このとき 補題 5.5 の 2 つの仮定が成り立つので、GG は凸な描画をもちます。

注意 5.7(「狭義」を課す理由)

面の多角形の頂点で角がちょうど π\pi になることを許すと、頂点を少し動かしただけで凸でなくなることがあり、帰納法の「yy を zz の近くに置く」操作が正当化できません。狭義凸の位置という開いた条件にしておくことで、補題 5.3 が使えます。3-連結でないグラフでは、狭義の条件を満たす描画がないことがあります(例 6.9)。

6. 一般の場合:辺を足せるだけ足すと 3-連結になる

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この節では、TK5TK_5 も TK3,3TK_{3,3} も含まないグラフを Kuratowski 部分グラフをもたないグラフと呼びます。そのようなグラフ GG が、隣接しないどの 2 頂点 a,ba,b についても G+abG+ab が TK5TK_5 か TK3,3TK_{3,3} を含むとき、GG は辺極大であるといいます。証明の地図は次のとおりです。

  • 辺極大なグラフが 3-連結でなければ、2 頂点 x,yx,y で 2 つの部分 G1,G2G_1,G_2 に分かれ、xyxy は辺で、G1,G2G_1,G_2 も辺極大である(補題 6.3)。
  • 帰納法の仮定と前節の定理から、G1,G2G_1,G_2 は凸な描画をもつ。辺 xyxy の乗る面に頂点を 1 つ足しても平面的である。
  • G1G_1 と G2G_2 にまたがる辺 z1z2z_1z_2 を足すと Kuratowski 部分グラフができるが、それを GiG_i に頂点を 1 つ足したグラフの中に移せて、矛盾する(補題 6.4)。

細分の一部を辺で置き換える操作を、補題にしておきます。

補題 6.1(細分された辺の一部を辺で置き換える)✓

KK を単純グラフ XX の細分とし、PP を KK の中の長さ 2 以上の道で、内点がどれも分岐点でないものとする。PP の両端を u,wu,w とし、gg を uu と ww を結ぶ辺とする。このとき gg は KK の辺ではなく、KK から PP の内点を除いて辺 gg を足したグラフは、同じ分岐点をもつ XX の細分である。

証明(補題 6.1)

分岐点でない頂点は、ちょうど 1 本の細分された辺の内点で、その両隣も同じ細分された辺の上にあります。したがって PP は、ある細分された辺 QQ の一部です。

g∈E(K)g\in E(K) と仮定し、gg を含む細分された辺を Q′Q' とします。Q′=QQ'=Q なら、道 QQ の中に PP と gg からなる閉路ができて矛盾です。Q′≠QQ'\ne Q なら、QQ と Q′Q' は 2 頂点 u,wu,w を共有します。異なる細分された辺が共有できるのは共通の端点(分岐点)だけで、XX は単純グラフなので、異なる 2 辺が共有する端点は高々 1 つです。これも矛盾です。

g∉E(K)g\notin E(K) なので、QQ の中の PP を辺 gg に取り替えると、同じ両端をもつ短い道になります。他の細分された辺は変わらないので、得られるグラフは XX の細分です。

K5K_5 と K3,3K_{3,3} については、次の事実を使います。確かめるのは有限個の場合です。

補題 6.2(K5K_5・K3,3K_{3,3} の中の内素な道)✓

  1. K5K_5 のどの 2 頂点も、4 本の内素な道で結ばれる。K3,3K_{3,3} のどの 2 頂点も、3 本の内素な道で結ばれる。
  2. K3,3K_{3,3} の頂点の 2 元集合 {u,u′}\{u,u'\} と {v,v′}\{v,v'\} が交わらなければ、一端が {u,u′}\{u,u'\}、他端が {v,v′}\{v,v'\} に属する 4 本の道で、どの 2 本も端点以外に頂点を共有せず、内点が u,u′,v,v′u,u',v,v' のどれとも異なるものがある。

細分 TK5TK_5、TK3,3TK_{3,3} の分岐点についても、同じことが成り立つ。

証明(補題 6.2)

K3,3K_{3,3} の 2 つの側を {a1,a2,a3}\{a_1,a_2,a_3\}、{b1,b2,b3}\{b_1,b_2,b_3\} とします。

1: K5K_5 の 2 頂点 s,ts,t は、辺 stst と、残りの 3 頂点 rr ごとの道 srtsrt で結ばれます。K3,3K_{3,3} で同じ側の a1,a2a_1,a_2 は 3 本の道 a1bja2a_1b_ja_2(j=1,2,3j=1,2,3)で、異なる側の a1,b1a_1,b_1 は辺 a1b1a_1b_1 と道 a1b2a2b1a_1b_2a_2b_1、a1b3a3b1a_1b_3a_3b_1 で結ばれます。

2: 2 つの側を入れ替える対称性と、各側の中での番号の付け替えによって、次の 3 通りに帰着します。

  • {a1,a2}\{a_1,a_2\} と {b1,b2}\{b_1,b_2\}: 4 本の辺 a1b1,a1b2,a2b1,a2b2a_1b_1,a_1b_2,a_2b_1,a_2b_2。
  • {a1,a2}\{a_1,a_2\} と {a3,b1}\{a_3,b_1\}: 辺 a1b1a_1b_1、a2b1a_2b_1 と、道 a1b2a3a_1b_2a_3、a2b3a3a_2b_3a_3。
  • {a1,b1}\{a_1,b_1\} と {a2,b2}\{a_2,b_2\}: 辺 a1b2a_1b_2、b1a2b_1a_2 と、道 a1b3a2a_1b_3a_2、b1a3b2b_1a_3b_2。

({a1,b1}\{a_1,b_1\} と {a2,a3}\{a_2,a_3\} の場合は、2 番目の場合で 2 つの集合の役割を入れ替えたものです。)細分では、各辺を対応する細分された辺に取り替えれば、同じ性質の道が得られます。

補題 6.3(辺極大なグラフは 2 点で貼り合わされている)✓

GG を、頂点数 4 以上で Kuratowski 部分グラフをもたない辺極大なグラフとし、3-連結でないとする。このとき、隣接する 2 頂点 x,yx,y と、GG の誘導部分グラフ G1,G2G_1,G_2 で、次を満たすものがある。

  1. G=G1∪G2G=G_1\cup G_2、V(G1)∩V(G2)={x,y}V(G_1)\cap V(G_2)=\{x,y\} で、Ai=V(Gi)∖{x,y}A_i=V(G_i)\setminus\{x,y\} は空でなく、A1A_1 と A2A_2 を結ぶ辺はない。
  2. xx も yy も、A1A_1 と A2A_2 のそれぞれに隣接点をもつ。
  3. G1G_1 と G2G_2 は、Kuratowski 部分グラフをもたない辺極大なグラフである。
証明(補題 6.3)

GG は頂点数 4 以上で 3-連結でないので、2 個以下の頂点からなる分離集合があります。そのうち最小のものを SS とし、G−SG-S の連結成分 CC を 1 つ取って、G1=G[V(C)∪S]G_1=G[V(C)\cup S]、G2=G−V(C)G_2=G-V(C)、Ai=V(Gi)∖SA_i=V(G_i)\setminus S とおきます。A1,A2A_1,A_2 は空でなく、A1A_1 と A2A_2 を結ぶ辺はありません。SS は最小なので、SS の各頂点 ss は G−SG-S のどの連結成分にも隣接点をもちます(そうでなければ S∖{s}S\setminus\{s\} が分離集合になります)。

XX を K5K_5 か K3,3K_{3,3} とし、KK を GG に 1 本の辺 ee を足したグラフ G+eG+e の中の XX の細分とします。A1A_1 と A2A_2 を結ぶ G+eG+e の道は、SS の頂点を内点に含むか、ee が A1A_1 と A2A_2 を結ぶ辺であって ee を通ります。この「通り道」が合わせて 2 つ以下なら、KK の分岐点が A1A_1 と A2A_2 の両方にあることはありません。両方にあれば、補題 6.2 の 1 による 3 本の内素な道が、それぞれ別の通り道を使わなければならないからです。以下、足す辺 ee はどれもこの条件を満たします。また、分岐点がすべて V(G1)V(G_1) にあるとき、KK の頂点 a∈A2a\in A_2 は分岐点でなく、aa を内点とする細分された辺を aa から両方向にたどると、A2A_2 を出るまでの部分は、両端が通り道(SS の頂点、または ee の A1A_1 側の端点)にあり内点が A2A_2 に含まれる道になります。これを A2A_2 への寄り道と呼びます。

S≠∅S\ne\varnothing. S=∅S=\varnothing とし、a1∈A1a_1\in A_1、a2∈A2a_2\in A_2 を結ぶ辺 ee を足します。辺極大なので G+eG+e は細分 KK を含み、K⊈GK\not\subseteq G なので e∈E(K)e\in E(K) です。通り道は ee の 1 つだけなので、分岐点はすべて一方の側、たとえば A1A_1 にあります。a2a_2 を通る寄り道は両端が通り道になければなりませんが、通り道は 1 つしかなく、道の両端は異なるので矛盾です。

∣S∣≠1|S|\ne1. S={v}S=\{v\} とし、vv の隣接点 v1∈A1v_1\in A_1、v2∈A2v_2\in A_2 を結ぶ辺 e=v1v2e=v_1v_2 を足します。G+eG+e の中の細分 KK は ee を含みます。通り道は vv と ee の 2 つなので、分岐点はすべて一方の側、たとえば V(G1)V(G_1) にあります。A2A_2 への寄り道は、両端が vv と v1v_1 で、v1v_1 からは辺 ee を通って A2A_2 に入る道 P=v1v2⋯vP=v_1v_2\cdots v です。ee は 1 本しかなく、e∈E(K)e\in E(K) なので、寄り道はちょうど 1 本です。補題 6.1 により、PP を GG の辺 vv1vv_1 に取り替えたものは XX の細分で、G1⊆GG_1\subseteq G に含まれます。これは GG が Kuratowski 部分グラフをもたないことに反します。

S={x,y}S=\{x,y\} で xy∈E(G)xy\in E(G). ∣S∣=2|S|=2 が分かったので S={x,y}S=\{x,y\} とします。xy∉E(G)xy\notin E(G) と仮定して e=xye=xy を足すと、G+eG+e の中の細分 KK は ee を含みます。通り道は x,yx,y の 2 つなので、分岐点はすべて、たとえば V(G1)V(G_1) にあります。A2A_2 への寄り道があれば、それは xx と yy を結ぶ長さ 2 以上の道で、補題 6.1 から辺 xy=exy=e は KK の辺でないことになり、矛盾です。よって K⊆G1+eK\subseteq G_1+e です。A2A_2 に含まれる G−SG-S の連結成分を 1 つ取ると、xx も yy もそこに隣接点をもつので、内点がその成分に含まれる xx から yy への道 P′P' があります。KK の辺 ee を P′P' に取り替えると、P′P' の内点は KK に現れないので、やはり XX の細分で、GG に含まれます。矛盾です。したがって xy∈E(G)xy\in E(G) です。

これで 1 と 2 が示されました。

G1,G2G_1,G_2 は辺極大. G1G_1 は GG の部分グラフなので Kuratowski 部分グラフをもちません。G1G_1 の隣接しない 2 頂点を結ぶ辺 e′e' を足すと、G+e′G+e' は細分 K∋e′K\ni e' を含みます。通り道は x,yx,y の 2 つで、分岐点はすべて V(G1)V(G_1) にあるか、すべて V(G2)V(G_2) にあります。

  • すべて V(G1)V(G_1) にある場合。A2A_2 への寄り道は xx と yy を結ぶ道で、高々 1 本です(2 本あれば、どちらも細分された辺の一部で、同じ細分された辺の中に xx から yy への部分が 2 つあるか、異なる 2 本の細分された辺が 2 頂点を共有するかになり、補題 6.1 の証明と同じく矛盾します)。あれば GG の辺 xyxy に取り替えます(補題 6.1)。得られる細分は G1+e′G_1+e' に含まれます。
  • すべて V(G2)V(G_2) にある場合。同様に、A1A_1 への寄り道(e′e' を含むかもしれません)を辺 xyxy に取り替えると、G2⊆GG_2\subseteq G に含まれる細分が得られます。寄り道がなければ、K⊆G2+e′K\subseteq G_2+e' で、e′e' の両端は V(G1)∩V(G2)={x,y}V(G_1)\cap V(G_2)=\{x,y\} に属することになりますが、xyxy はすでに辺なので、これは起こりません。どちらにしても GG が Kuratowski 部分グラフをもたないことに反するので、この場合は起こりません。

よって G1+e′G_1+e' は TK5TK_5 か TK3,3TK_{3,3} を含み、G1G_1 は辺極大です。G2G_2 も同様です。

補題 6.4(辺極大なら 3-連結)✓

頂点数 4 以上で Kuratowski 部分グラフをもたない辺極大なグラフは、3-連結である。

証明(補題 6.4)

頂点数 ∣G∣|G| についての帰納法です(定理 4.3[証明の技術])。

∣G∣=4|G|=4. TK5TK_5 は 5 頂点以上、TK3,3TK_{3,3} は 6 頂点以上なので、4 頂点のグラフにはどんな辺を足しても Kuratowski 部分グラフはできません。辺極大なら G=K4G=K_4 で、3-連結です。

∣G∣≥5|G|\ge5. GG が 3-連結でないと仮定し、補題 6.3 の x,y,G1,G2,A1,A2x,y,G_1,G_2,A_1,A_2 を取ります。

手順 1(GiG_i に 1 頂点を足したグラフは平面的). 各 ii について、頂点 zi∈Aiz_i\in A_i をうまく選ぶと、GiG_i に新しい頂点 viv_i と 3 本の辺 vix,viy,viziv_ix,v_iy,v_iz_i を足したグラフ Gi+G_i^+ が平面的になることを示します。∣Gi∣=3|G_i|=3 なら、AiA_i の唯一の頂点 cc は x,yx,y の両方と隣接するので GiG_i は三角形で、zi=cz_i=c とすれば Gi+=K4G_i^+=K_4 は平面的です。∣Gi∣≥4|G_i|\ge4 なら、GiG_i は辺極大なので帰納法の仮定から 3-連結で、TK5TK_5 も TK3,3TK_{3,3} も含まないので 補題 3.6 の 3 から K5K_5・K3,3K_{3,3} をマイナーに含まず、定理 5.6 により凸な描画をもちます。辺 xyxy は 2 つの面の境界に含まれる(補題 2.10[平面グラフ])ので、その少なくとも一方は内面です。その境界の凸多角形の、x,yx,y 以外の頂点を ziz_i とし、多角形の内部に点 viv_i を取って x,y,zix,y,z_i と線分で結びます。3 本の線分は凸多角形の内部(面)を通り、viv_i でしか交わらないので、Gi+G_i^+ の平面描画が得られます。

命題 3.4 により、Gi+G_i^+ も、Gi+G_i^+ から辺 vixv_ix または viyv_iy を縮約したグラフ(GiG_i に辺 xzixz_i または yziyz_i を足したもの)も、Kuratowski 部分グラフをもちません。

手順 2(またぐ辺を足す). z1z_1 と z2z_2 は隣接しないので、辺極大性から G+z1z2G+z_1z_2 は K5K_5 か K3,3K_{3,3} の細分 KK を含み、e=z1z2∈E(K)e=z_1z_2\in E(K) です。A1A_1 と A2A_2 を結ぶ G+eG+e の道は、xx か yy を内点に含むか、ee を通ります。通り道は 3 つです。AiA_i にある分岐点の個数を βi\beta_i とします。

KK が TK5TK_5 のとき、β1≥1\beta_1\ge1 かつ β2≥1\beta_2\ge1 なら、補題 6.2 の 1 の 4 本の内素な道が別々の通り道を使うことになり、矛盾です。KK が TK3,3TK_{3,3} のとき、β1≥2\beta_1\ge2 かつ β2≥2\beta_2\ge2 なら、同じ補題の 2 の 4 本の道(端点は A1∪A2A_1\cup A_2 にあるので通り道の頂点 x,yx,y ではなく、内点は互いに共有されません)が別々の通り道を使うことになり、矛盾です。したがって、番号を付け替えれば、次のどちらかです。

  • 場合 A: β2=0\beta_2=0。
  • 場合 B: KK は TK3,3TK_{3,3} で、β2=1\beta_2=1。

場合 A. KK の頂点で A2A_2 にあるものは分岐点でなく、補題 6.3 の証明と同じく、A2A_2 への寄り道(内点が A2A_2 に含まれ、両端が x,y,z1x,y,z_1 のうちの 2 つである道。z1z_1 を端とするものは辺 ee から始まる)の内点です。同じ 2 頂点を両端とする寄り道は 2 本なく、z1z_1 を端とするものは ee を使うのでちょうど 1 本です。その他方の端が xx であるとします(yy のときも同様です)。この寄り道を辺 z1xz_1x に、xx と yy を結ぶ寄り道があればそれを辺 xyxy に取り替えると、補題 6.1 により、G1G_1 に辺 xz1xz_1 を足したグラフに含まれる細分が得られます。これは手順 1 に反します。

場合 B. A2A_2 にある唯一の分岐点を vv とします。vv から出る 3 本の細分された辺は、他端の分岐点が V(G1)V(G_1) にあるので A2A_2 を出ます。それぞれについて、vv から見て最初に A2A_2 の外に出る頂点は xx、yy、または(ee を渡って)z1z_1 で、3 本は vv 以外で交わらないので、この 3 頂点がちょうど 1 回ずつ現れます。KK のうち A2A_2 にある残りの頂点は分岐点でなく、ee はすでに使われているので、xx と yy を結ぶ寄り道の内点です。

KK から A2A_2 の頂点をすべて除き、新しい頂点 v1v_1 と辺 v1x,v1y,v1z1v_1x,v_1y,v_1z_1 を足し、xx と yy を結ぶ寄り道があれば辺 xyxy を足します(補題 6.1)。vv から x,y,z1x,y,z_1 までの 3 本の道が 3 本の辺に置き換わっただけなので、得られるグラフは v1v_1 を分岐点の 1 つとする K3,3K_{3,3} の細分で、G1+G_1^+ に含まれます。これも手順 1 に反します。

どちらの場合も矛盾するので、GG は 3-連結です。

定理 6.5(Kuratowski の定理)✓

グラフ GG について、次は同値である。

  1. GG は平面的である。
  2. GG は K5K_5 の細分も K3,3K_{3,3} の細分も部分グラフに含まない。
証明(定理 6.5)

(1)⇒(2)(1)\Rightarrow(2) は 命題 3.4 です。

(2)⇒(1)(2)\Rightarrow(1). ∣G∣≤3|G|\le3 なら GG は K3K_3 の部分グラフで、三角形として描けます。∣G∣≥4|G|\ge4 とします。GG に、Kuratowski 部分グラフができない限り辺を足し続けます。辺の数は有限なので、この操作は止まり、GG を全域部分グラフとして含む辺極大なグラフ G′G' が得られます。補題 6.4 により G′G' は 3-連結で、補題 3.6 の 3 により K5K_5 も K3,3K_{3,3} もマイナーに含みません。定理 5.6 から G′G' は凸な描画をもち、平面的です。その部分グラフ GG も平面的です(命題 3.4 の 1)。

系 6.6(Wagner の定理)✓

グラフ GG が平面的であるためには、K5K_5 も K3,3K_{3,3} も GG のマイナーでないことが必要十分である。

証明(系 6.6)

補題 3.6 の 3 により、「K5K_5 も K3,3K_{3,3} もマイナーでない」は「TK5TK_5 も TK3,3TK_{3,3} も含まない」と同値で、後者は 定理 6.5 により平面的であることと同値です。

系 6.7(Fáry の定理)✓

平面的グラフは、辺がすべて線分である平面描画をもつ。

証明(系 6.7)

∣G∣≤3|G|\le3 なら、頂点を一直線上にない点に置いて辺を線分で描けます。∣G∣≥4|G|\ge4 のとき、定理 6.5 の (2)⇒(1)(2)\Rightarrow(1) の証明で得た G′G' の凸な描画は、辺がすべて線分です。GG は G′G' の全域部分グラフなので、GG に無い辺を消せば GG の描画になります。

命題 6.8(三角形分割への埋め込み)✓

頂点数 4 以上の平面的グラフ GG に対し、GG を全域部分グラフとして含むグラフ G′G' と、G′G' の凸な描画で、内面の境界がすべて長さ 3 の閉路であるものが存在する。

証明(命題 6.8)

定理 6.5 の証明の G′G' と、その凸な描画を取ります。内面の境界の凸多角形 Π\Pi が 4 頂点以上をもつとし、Π\Pi で隣り合わない 2 頂点 u,vu,v を取ります。uv∈E(G′)uv\in E(G') なら、辺 uvuv は線分で Π\Pi の対角線なので、内点が Π\Pi の内部、すなわち面に入ってしまいます(補題 5.2 の 2 と 4)。よって uv∉E(G′)uv\notin E(G') です。このとき対角線 [u,v][u,v] を描き足せば G′+uvG'+uv の平面描画になるので、G′+uvG'+uv は平面的で、命題 3.4 から Kuratowski 部分グラフをもちません。これは G′G' の辺極大性に反します。したがって内面の境界はすべて三角形です。

Fáry の定理には、極大平面グラフ(三角形分割)から次数 5 以下の頂点を除いて帰納法を回す、Kuratowski の定理を経由しない古典的な証明もあります。ここでは、3-連結の場合の定理が線分による描画を直接与えるので、系として得られました。命題 6.8 は彩色の章で、平面的グラフのリスト彩色に使います。

例 6.9(K3,3K_{3,3} から 1 辺を除いたグラフ)

K3,3K_{3,3} から辺 a3b3a_3b_3 を除いたグラフ GG を考えます。a3a_3 の隣接点は b1,b2b_1,b_2、b3b_3 の隣接点は a1,a2a_1,a_2 です。頂点を

a3=(3,0),b1=(0,3),a1=(−3,0),b2=(0,−3),a2=(−1,0),b3=(−2,0)a_3=(3,0),\quad b_1=(0,3),\quad a_1=(-3,0),\quad b_2=(0,-3),\quad a_2=(-1,0),\quad b_3=(-2,0)

に置き、8 本の辺を線分で描くと、辺は交わりません。面は 4 つで(n−m+f=6−8+4=2n-m+f=6-8+4=2)、境界は

  • 外面: a3b1a1b2a_3b_1a_1b_2(正方形)、
  • a3b1a2b2a_3b_1a_2b_2(凧形で、狭義凸の位置)、
  • b1a1b3a2b_1a_1b_3a_2 と a1b2a2b3a_1b_2a_2b_3

です。最後の 2 つでは a1,b3,a2a_1,b_3,a_2 が一直線上に並び、b3b_3 での角が π\pi になります。図形としては三角形で凸ですが、狭義凸の位置ではありません。

これは避けられません。b3b_3 の次数は 2 なので、b3b_3 を通る面は 2 つで、b3b_3 での 2 つの角の和は 2π2\pi です。両方が内面なら、少なくとも一方の角は π\pi 以上になります。一方を外面にすれば b3b_3 は救えますが、a3a_3 も次数 2 で同じ事情にあり、両方を外面の境界に置くには、外面の境界が b1a3b2b_1a_3b_2 と a1b3a2a_1b_3a_2 をともに含む閉路、すなわち 6 頂点すべてを通る a3b1a1b3a2b2a_3b_1a_1b_3a_2b_2 か a3b1a2b3a1b2a_3b_1a_2b_3a_1b_2 でなければなりません。前者では残る 2 辺 a1b2a_1b_2 と a2b1a_2b_1 が、後者では a1b1a_1b_1 と a2b2a_2b_2 が、閉路の上で端点が交互に並ぶ弦なので、補題 2.3 により、ともに内部に描くことはできません。GG は 3-連結でない({b1,b2}\{b_1,b_2\} が a3a_3 を切り離す)ので、定理 5.6 と矛盾はしません。

注意 6.10(グラフマイナー定理)

Wagner の定理は、「平面的」というマイナーで閉じた性質が、有限個(2 個)の禁止マイナーで特徴づけられることを述べています。Wagner は、マイナーで閉じたどんなグラフの族にも有限個の禁止マイナーしかないだろうと予想しました。これは Robertson と Seymour が連作論文 “Graph minors”(第 1 論文は 1983 年、予想を証明した第 20 論文は 2004 年)で証明し、グラフマイナー定理と呼ばれています。同じことですが、「有限グラフの無限列 G1,G2,…G_1,G_2,\dots には、GiG_i が GjG_j のマイナーになる i<ji<j が必ずある」という主張です。証明は連作全体で数百ページに及び、この章の範囲を大きく超えるので、ここでは主張だけを紹介します。本テーマの定理の証明には使いません。出典は参考文献の Robertson–Seymour の論文と、Diestel の教科書の第 12 章です。

7. 描画の一意性と外平面的グラフ

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平面的グラフの描画は一般には何通りもあり、どの閉路が面の境界になるかも描画によって変わります(例 7.2)。3-連結なら、そうはなりません。

定理 7.1(Whitney の一意性定理)✓

GG を 3-連結な平面グラフ、CC を GG の閉路とする。CC が GG のある面の境界であるためには、次の 2 つが成り立つことが必要十分である。

  1. CC は弦をもたない(CC は誘導部分グラフである)。
  2. G−V(C)G-V(C) は連結である。

とくに、3-連結な平面的グラフでは、どの閉路が面の境界になるかは描画によらない。

証明(定理 7.1)

R2∖C\mathbb{R}^2\setminus C の 2 つの連結成分を R0,R1R_0,R_1 とします。

十分性. 1 と 2 を仮定します。G−V(C)G-V(C) が空なら、1 から G=CG=C となり、3-連結であることに反します。G−V(C)G-V(C) は空でない連結グラフなので、その点集合は連結で、CC と交わらず、R0,R1R_0,R_1 の一方、たとえば R1R_1 に含まれます。CC の辺でない GG の辺は、1 から少なくとも一方の端 uu が CC の外にあります。その辺から CC の上の端点を除いたものは連結で、CC と交わらず、u∈R1u\in R_1 を含むので、R1R_1 に含まれます。以上から R0R_0 は GG の点を含まず、補題 2.1 の 2 により、境界が CC の面です。

必要性. CC が面 ff の境界であるとします。補題 2.1 の 1 から f=R0f=R_0 としてよく、R0R_0 は GG の点を含みません。

1 を示す. CC が弦 g=p1p2g=p_1p_2 をもつと仮定します。p1,p2p_1,p_2 は CC で隣り合わないので、C−{p1,p2}C-\{p_1,p_2\} は空でない 2 つの道 Z1∘,Z2∘Z_1^\circ,Z_2^\circ に分かれます。GG は 3-連結なので G−{p1,p2}G-\{p_1,p_2\} は連結で、Z1∘Z_1^\circ の頂点から Z2∘Z_2^\circ の頂点への道があります。そのうち最短のもの QQ を取ると、QQ の内点は CC の上になく、辺は CC の辺ではありません(Z1∘Z_1^\circ と Z2∘Z_2^\circ を直接結ぶ CC の辺はありません)。つまり QQ は CC-道で、gg と頂点を共有せず、両端は C−{p1,p2}C-\{p_1,p_2\} の異なる成分にあります。補題 2.3 により、gg の内点と QQ の内点は R0,R1R_0,R_1 の異なるほうにあり、どちらかが R0R_0 に入ります。これは R0R_0 が GG の点を含まないことに反します。

2 を示す. u,u′u,u' を CC の外の相異なる頂点とします。GG は 3-連結なので、uu と u′u' は 3 本の内素な道 P1,P2,P3P_1,P_2,P_3 で結ばれます(系 5.5[連結度とネットワークフロー])。Θ=P1∪P2∪P3\Theta=P_1\cup P_2\cup P_3 の面は 3 つで、境界は Pi∪PjP_i\cup P_j です(補題 2.2)。ff は連結で Θ⊆G\Theta\subseteq G と交わらないので、Θ\Theta の 1 つの面 ϕ\phi に含まれます。ϕ\phi の境界が P1∪P2P_1\cup P_2 であるとすると、

C⊆f‾⊆ϕ‾=ϕ∪P1∪P2C\subseteq\overline f\subseteq\overline\phi=\phi\cup P_1\cup P_2

です。P3P_3 の内点は Θ\Theta の点なので ϕ\phi に属さず、P1∪P2P_1\cup P_2 にも属しません。よって P3P_3 の内点は CC の上になく、両端 u,u′u,u' も CC の外なので、P3P_3 は G−V(C)G-V(C) の中の道です。したがって G−V(C)G-V(C) は連結です(CC の外の頂点が 1 つだけのときも連結です。1 つもないことは、1 と G≠CG\ne C からありません)。

最後の主張は、条件 1・2 が描画を使わずに述べられていることから従います。

例 7.2(3-連結でないと面の境界は描画で変わる)

2 頂点 a,ba,b を、辺 abab(P1P_1)と、長さ 2, 3, 4 の道 P2,P3,P4P_2,P_3,P_4 の、合わせて 4 本の内素な道で結んだグラフ GG を考えます。{a,b}\{a,b\} が分離集合なので、GG は 2-連結ですが 3-連結ではありません。aa を左、bb を右に置き、4 本の道を上から順に弧として描くと、面の境界は上下に隣り合う 2 本の道の和と、いちばん上といちばん下の道の和(外面)です。

  • 上から P1,P2,P3,P4P_1,P_2,P_3,P_4 の順に描くと、面の境界の長さは P1∪P2P_1\cup P_2 の 33、P2∪P3P_2\cup P_3 の 55、P3∪P4P_3\cup P_4 の 77、P4∪P1P_4\cup P_1 の 55 です。
  • 上から P1,P3,P2,P4P_1,P_3,P_2,P_4 の順に描くと、P1∪P3P_1\cup P_3 の 44、P3∪P2P_3\cup P_2 の 55、P2∪P4P_2\cup P_4 の 66、P4∪P1P_4\cup P_1 の 55 です。

長さ 3 の閉路 P1∪P2P_1\cup P_2 は、前者では面の境界で、後者ではそうではありません。定理 7.1 の条件で見ると、G−V(P1∪P2)G-V(P_1\cup P_2) は P3P_3 と P4P_4 の内点からなる非連結なグラフで、条件 2 が破れています。2 点 a,ba,b で切り離される部分を「裏返す」ことができるのが、描画が一意でない理由です。

注意 7.3(閉路マトロイドによる平面性の判定)

グラフの森を独立集合とするマトロイド(定義 8.1[グラフと行列式]、命題 8.4[グラフと行列式])を使うと、平面性には別の特徴づけがあります。連結な平面グラフ GG とその幾何的双対 G∗G^* では、GG の全域木の補集合が G∗G^* の全域木に対応します(平面グラフの章)。Whitney は逆に、「全域木の補集合を基とするマトロイド(双対マトロイド)が、あるグラフの閉路マトロイドになる」ことが平面的であることと同値であることを示しました。禁止マイナーによる特徴づけは、マトロイドにも広がります。たとえば、あるグラフの閉路マトロイドになるマトロイドは、5 個の禁止マイナーで特徴づけられます(Tutte)。ここでは関連を述べるにとどめます。

注意 7.4(3-連結グラフの作り方と、平面性の判定アルゴリズム)

補題 4.1 を逆に読むと、3-連結グラフはどれも、K4K_4 から「頂点を 2 つに開く」操作をくり返して得られます。Tutte はこれを精密にして、3-連結グラフは車輪から、辺を足す操作と、次数 4 以上の頂点を次数 3 以上の 2 頂点に開く操作だけで作れることを示しました(車輪定理、1961 年)。

平面性は、頂点数に比例する時間で判定できます。最初の線形時間アルゴリズムは Hopcroft と Tarjan によるもの(1974 年)で、深さ優先探索で見つけた閉路に残りの部分を内側・外側へ埋め込んでいきます。平面的でないときに Kuratowski 部分グラフを出力するアルゴリズムも知られています。グラフの探索そのものはグラフアルゴリズムの記事にあります。

系 7.5(外平面的グラフの特徴づけ)✓

グラフ GG が外平面的であるためには、K4K_4 も K2,3K_{2,3} も GG のマイナーでないことが必要十分である。

証明(系 7.5)

必要性. GG が外平面的で、K4K_4 か K2,3K_{2,3} をマイナーに含むと仮定します。どちらも最大次数が 3 なので、補題 3.6 の 1 から、GG は K4K_4 か K2,3K_{2,3} の細分 KK を部分グラフに含みます。GG の描画で、全頂点を閉包に含む面を f0f_0 とします。この描画から KK 以外を消すと、f0f_0 は連結で KK と交わらないので KK のある面 f0′f_0' に含まれ、KK の頂点はすべて f0′f_0' の閉包にあり、KK の点なので f0′f_0' の境界にあります。KK は 2-連結です(K4K_4 のどの 2 辺も共通の閉路に乗り、K2,3K_{2,3} は 3 本の内素な道の和なので、細分のどの 2 頂点も共通の閉路に乗ります。定理 3.2[連結度とネットワークフロー])。したがって f0′f_0' の境界は閉路 ZZ で(命題 4.2[平面グラフ])、ZZ は KK の全頂点を通ります。f0′f_0' は R2∖Z\mathbb{R}^2\setminus Z の連結成分の 1 つに等しく(補題 2.1)、KK の点を含みません。

KK が K2,3K_{2,3} の細分のとき、KK は 2 つの分岐点を結ぶ、長さ 2 以上の 3 本の内素な道の和です。その閉路は 2 本の道の和で(補題 2.2 の証明)、残る 1 本の内点を通らないので、全頂点を通る閉路はありません。矛盾です。

KK が K4K_4 の細分のとき、頂点数を n′n' とすると辺は n′+2n'+2 本なので、ZZ に乗らない辺はちょうど 2 本です。ZZ の上で次数 3 の頂点(4 つの分岐点)は、それぞれ ZZ に乗らない辺をちょうど 1 本もつので、2 本の辺は分岐点を 2 つずつ結ぶ ZZ の弦 b1b2b_1b_2 と b3b4b_3b_4 です。KK の細分された辺は、この 2 本と、ZZ を 4 つの分岐点で分けた 4 本の道です。K4K_4 ではどの 2 つの分岐点も細分された辺で結ばれるので、b1b2b_1b_2 と b3b4b_3b_4 以外の 4 組 b1b3,b1b4,b2b3,b2b4b_1b_3,b_1b_4,b_2b_3,b_2b_4 が ZZ の上で隣り合い、ZZ の上の巡回順は b1,b3,b2,b4b_1,b_3,b_2,b_4 です。補題 2.3 により、2 本の弦の内点は R2∖Z\mathbb{R}^2\setminus Z の異なる成分にあり、一方は f0′f_0' に入ります。矛盾です。

十分性. K4K_4 も K2,3K_{2,3} も GG のマイナーでないとします。GG に新しい頂点 v∗v^* を足して全頂点と隣接させたグラフを G∗G^* とします。G∗G^* が K5K_5 の模型をもてば、v∗v^* を含む枝集合(なければ任意の 1 つ)を除いた 4 つの枝集合は GG の中の K4K_4 の模型です。K3,3K_{3,3} の模型をもてば、同様に 1 つ除いて K2,3K_{2,3} の模型が得られます。どちらも仮定に反するので、系 6.6 から G∗G^* は平面的で、系 6.7 から辺がすべて線分の描画をもちます。

その描画で v∗v^* を原点とします。GG の頂点 uu は、線分 v∗uv^*u が辺なので、相異なる方向にあります(同じ方向に 2 頂点があれば、一方が他方への辺の上に乗ります)。各頂点 uu を、原点から uu の方向にある単位円周上の点 u^\hat u に置き、GG の各辺 uwuw を弦 [u^,w^][\hat u,\hat w] で描きます。これが平面描画であることを示します。弦は端点以外で円周と交わらないので、他の頂点を通りません。端点を共有する 2 本の弦は、その端点でしか交わりません。端点を共有しない 2 本の弦 [u^1,u^2][\hat u_1,\hat u_2] と [u^3,u^4][\hat u_3,\hat u_4] は、u^3,u^4\hat u_3,\hat u_4 が円周から u^1,u^2\hat u_1,\hat u_2 を除いた同じ弧にあれば、直線 u^1u^2\hat u_1\hat u_2 の同じ側に厳密にあるので交わりません。

残るのは、GG の辺 u1u2u_1u_2 と u3u4u_3u_4 で、u^3\hat u_3 と u^4\hat u_4 が異なる弧にある場合です。これが起こらないことを示します。u1u_1 と u2u_2 の方向が正反対なら、v∗v^* が辺 u1u2u_1u_2 の上に乗ってしまうので、そうではなく、v∗,u1,u2v^*,u_1,u_2 はつぶれていない三角形 TT をなします。TT の 3 辺は G∗G^* の辺です。仮定から、u3,u4u_3,u_4 の一方、たとえば u3u_3 の方向は角 u1v∗u2u_1v^*u_2 の内側に、u4u_4 の方向は外側にあります。線分 v∗u3v^*u_3 から v∗v^* を除いた部分は、v∗v^* の近くで TT の内部にあり、TT の辺と交わらないので、u3u_3 は TT の内部にあります。u4u_4 は角の外側にあるので TT の外です。すると辺 u3u4u_3u_4 は TT の内部の点と外部の点を結ぶ線分で、TT の境界と交わります。これは、G∗G^* の描画で辺が端点以外で交わらないことに反します。

こうして、GG の頂点がすべて単位円周の上にあり、辺がすべて弦である平面描画が得られました。閉じた単位円板の外側は連結で、描画と交わらないので 1 つの面(外面)に含まれ、各頂点 u^\hat u はその閉包にあります。よって全頂点が外面の閉包にあり、GG は外平面的です。

証明から、外平面的グラフは「頂点を円周上に並べ、辺を交わらない弦として描けるグラフ」だと分かります。平面グラフの章の美術館定理は、この形の描画(多角形の三角形分割)についての定理でした。

演習 8.1標準

超立方体 Q4Q_4(例 3.8)が K3,3K_{3,3} をマイナーに含むことを、模型を具体的に与えて示せ。頂点は 00000000 から 11111111 までの 4 桁の 2 進列で表す。

解答

枝集合を次のように取ります。

A1={0000},A2={0011, 0111},A3={1101, 1100, 1110},B1={0001, 0101},B2={0010, 0110},B3={1000, 1001, 1011, 1010}.\begin{aligned} &A_1=\{0000\},\quad A_2=\{0011,\ 0111\},\quad A_3=\{1101,\ 1100,\ 1110\},\\ &B_1=\{0001,\ 0101\},\quad B_2=\{0010,\ 0110\},\quad B_3=\{1000,\ 1001,\ 1011,\ 1010\}. \end{aligned}

合わせて 14 頂点で、互いに交わりません。各集合の中は、00110011–01110111、11011101–11001100–11101110、00010001–01010101、00100010–01100110、10001000–10011001–10111011–10101010 と 1 桁ずつ違う頂点の列になっているので連結です。AiA_i と BjB_j の間の辺は次のとおりです。

B1B_1B2B_2B3B_3
A1A_100000000–0001000100000000–0010001000000000–10001000
A2A_200110011–0001000100110011–0010001000110011–10111011
A3A_311011101–0101010111101110–0110011011001100–10001000

9 組すべてに辺があるので、K3,3K_{3,3} は Q4Q_4 のマイナーです。Δ(K3,3)=3\Delta(K_{3,3})=3 なので、補題 3.6 の 1 から Q4Q_4 は TK3,3TK_{3,3} も含みます。

演習 8.2易

K5K_5 から 1 辺を除いたグラフ K5−K_5^- は 3-連結で平面的である。3-連結であることを確かめ、凸な描画を座標で与えよ。

解答

除く辺を abab とし、残りの 3 頂点を c1,c2,c3c_1,c_2,c_3 とします。a,ba,b はそれぞれ c1,c2,c3c_1,c_2,c_3 と隣接し、c1,c2,c3c_1,c_2,c_3 は互いに隣接します。

3-連結性. 頂点は 5 個なので、どの 2 頂点を除いても残りの 3 頂点が連結であることを言えば十分です。残る 3 頂点が a,ba,b の両方を含めば、3 つ目は cjc_j で、a,ba,b の両方と隣接します。そうでなければ、残る 3 頂点のうち少なくとも 2 つは cc で、互いに隣接し、残りの 1 頂点とも隣接します。

描画. 辺は 9 本なので、面は n−m+f=5−9+f=2n-m+f=5-9+f=2 から 6 個で、2m=18=3⋅62m=18=3\cdot6 からどれも三角形です。aa と bb を両方とも三角形 c1c2c3c_1c_2c_3 の内部に置くことはできません(aa を内部に置いて 3 頂点と結ぶと 3 つの小三角形に分かれ、bb はそのどれかに入るので、その小三角形の頂点でない cjc_j に辺を交えずには届きません)。そこで aa を外面の境界に置きます。

a=(0,0),c1=(12,0),c2=(6,12),c3=(6,3),b=(7,5).a=(0,0),\quad c_1=(12,0),\quad c_2=(6,12),\quad c_3=(6,3),\quad b=(7,5).

外側の三角形は a c1 c2a\,c_1\,c_2 です。c3=(6,3)c_3=(6,3) は、y>0y>0、2x+y=15<242x+y=15<24(直線 c1c2c_1c_2 の aa の側)、y<2xy<2x(直線 ac2ac_2 の c1c_1 の側)を満たすので内部にあり、3 頂点と結ぶと三角形 ac1c3ac_1c_3、c1c2c3c_1c_2c_3、c2ac3c_2ac_3 に分かれます。b=(7,5)b=(7,5) が三角形 c1c2c3c_1c_2c_3 の内部にあることは、3 辺に対する符号で確かめられます。

[c1,c2,b]=det⁡((−6,12),(−5,5))=−30+60=30>0,[c2,c3,b]=det⁡((0,−9),(1,−7))=0+9=9>0,[c3,c1,b]=det⁡((6,−3),(1,2))=12+3=15>0.\begin{aligned} [c_1,c_2,b]&=\det\bigl((-6,12),(-5,5)\bigr)=-30+60=30>0,\\ [c_2,c_3,b]&=\det\bigl((0,-9),(1,-7)\bigr)=0+9=9>0,\\ [c_3,c_1,b]&=\det\bigl((6,-3),(1,2)\bigr)=12+3=15>0. \end{aligned}

bb を c1,c2,c3c_1,c_2,c_3 と線分で結ぶと、内面は ac1c3ac_1c_3、c2ac3c_2ac_3、c1c2bc_1c_2b、c2c3bc_2c_3b、c3c1bc_3c_1b の 5 つの三角形、外面の境界は三角形 ac1c2ac_1c_2 で、合わせて 6 面です。つぶれていない三角形の 3 頂点は狭義凸の位置にあるので、これは凸な描画です。

演習 8.3標準

頂点数 n≥2n\ge2 の外平面的グラフの辺の数は 2n−32n-3 以下であることを示せ。系 7.5 の証明で得た「頂点を円周上に置き、辺を交わらない弦で描く」描画を使ってよい。

解答

nn についての帰納法で、凸 nn 角形の頂点を結ぶ、端点以外で交わらない線分(辺と対角線)は高々 2n−32n-3 本であることを示します。円周上の nn 点は狭義凸の位置にあるので、これで十分です。

n=2n=2 なら線分は 1 本、n=3n=3 なら高々 3 本で、主張は正しい。n≥4n\ge4 とします。対角線が 1 本もなければ、線分は多角形の辺の nn 本以下で、n≤2n−3n\le2n-3 です。対角線 [vi,vj][v_i,v_j] があれば、それは頂点を vi,…,vjv_i,\dots,v_j の n1n_1 個と vj,…,viv_j,\dots,v_i の n2n_2 個に分けます(n1+n2=n+2n_1+n_2=n+2、n1,n2≥3n_1,n_2\ge3)。他の線分は [vi,vj][v_i,v_j] と交わらないので、両端がどちらか一方の組に入ります(両端が 2 つの組に分かれる線分は、端点が vi,vjv_i,v_j と交互に並ぶ弦で、[vi,vj][v_i,v_j] と交わります)。それぞれの組は凸多角形の頂点なので、帰納法の仮定から線分は 2n1−32n_1-3 本以下と 2n2−32n_2-3 本以下です。[vi,vj][v_i,v_j] は両方に数えられているので、全体では

(2n1−3)+(2n2−3)−1=2(n+2)−7=2n−3(2n_1-3)+(2n_2-3)-1=2(n+2)-7=2n-3

本以下です。

K4K_4 は n=4n=4 で辺が 6>56>5、K2,3K_{2,3} は n=5n=5 で辺が 6≤76\le7 です。前者はこの評価だけで外平面的でないと分かりますが、後者は分かりません。K2,3K_{2,3} が外平面的でないことは、系 7.5 の証明のとおり、全頂点を通る閉路がないことから従います。

演習 8.4標準

立方体のグラフ Q3Q_3 は 3-連結で平面的である。定理 7.1 を使って、Q3Q_3 の長さ 4 の閉路 6 個がすべて面の境界であり、長さ 6 の閉路はどれも面の境界でないことを示せ。

解答

Q3Q_3 の頂点は {0,1}3\{0,1\}^3 の 8 個です。まず 3-連結性を確かめます。Q3Q_3 は、x3=0x_3=0 の 4 頂点の閉路、x3=1x_3=1 の 4 頂点の閉路と、対応する頂点どうしを結ぶ 4 本の辺からなります。2 頂点を除くとします。同じ閉路から 2 つ除いた場合、もう一方の閉路は無傷で連結で、残った頂点はどれも無傷の閉路に相手をもちます。1 つずつ除いた場合、どちらの閉路も 3 頂点の道になって連結で、4 本の対応の辺のうち壊れるのは高々 2 本なので、2 つの道は結ばれています。どちらの場合も連結です。

長さ 4 の閉路は、1 つの座標を固定した 4 頂点が作るもので、座標 3 通りと値 2 通りで 6 個です。たとえば C={x3=0}C=\{x_3=0\} の 4 頂点の閉路を取ると、CC の対角にある 2 頂点は 2 座標が異なるので隣接せず、弦はありません。Q3−V(C)Q_3-V(C) は {x3=1}\{x_3=1\} の 4 頂点の閉路で連結です。定理 7.1 から CC は面の境界です。

面の個数は n−m+f=8−12+f=2n-m+f=8-12+f=2 から 66 なので、面の境界はこの 6 個で尽きます。したがって長さ 6 の閉路は面の境界ではありません。定理の条件で直接確かめることもできます。長さ 6 の閉路 C′C' は 6 頂点を通り、残りは 2 頂点です。Q3Q_3 は 3-正則で、C′C' の各頂点は C′C' の外か弦に 1 本の辺を出します。C′C' に弦がなければ、6 本の辺がすべて残りの 2 頂点に入りますが、2 頂点が受けられるのは次数の和 66 から互いを結ぶ辺の分を引いた本数までで、6 本を受けるには 2 頂点が隣接していない必要があります。このとき Q3−V(C′)Q_3-V(C') は辺のない 2 頂点で非連結です。弦があれば条件 1 が破れます。どちらにしても C′C' は面の境界ではありません。

  • R. Diestel, Graph Theory, 5th ed., Graduate Texts in Mathematics 173, Springer, 2017 — 3.2 節(3-連結グラフと縮約できる辺)、4.2・4.3 節(面の境界と描画の一意性)、4.4 節(Kuratowski の定理)、第 12 章(グラフマイナー定理)。
  • C. Thomassen, “Kuratowski’s theorem”, Journal of Graph Theory 5 (1981), 225–241 — 3-連結グラフの凸な描画を帰納法で作る証明。
  • K. Kuratowski, “Sur le problème des courbes gauches en topologie”, Fundamenta Mathematicae 15 (1930), 271–283.
  • K. Wagner, “Über eine Eigenschaft der ebenen Komplexe”, Mathematische Annalen 114 (1937), 570–590.
  • N. Robertson and P. D. Seymour, “Graph minors. XX. Wagner’s conjecture”, Journal of Combinatorial Theory, Series B 92 (2004), 325–357.
  • J. Hopcroft and R. Tarjan, “Efficient planarity testing”, Journal of the ACM 21 (1974), 549–568.

このテーマの 100 本ノック(50 問)

執筆: Claude Code(Opus 5.5)、Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 3 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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