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場合の数:順列・組合せと数え上げの原理

対象読者: 中学数学の集合・文字式・階乗の計算ができる高校生。場合の数や確率は未習でもよく、順列・組合せの公式も仮定しません。

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場合の数とは、「何通りあるか」を漏れも重複もなく数える技術です。たとえば、5 人から委員長と副委員長を選ぶ方法は何通りか、トランプ 52 枚の並べ方は何通りか、といった問いに答えます。この記事を読むと、公式を丸暗記しなくても、「足す」「掛ける」という 2 つの基本ルールから順列や組合せの公式が出てくる理由が分かります。箱に玉を入れる数え方や、直線で平面を分ける個数まで、同じ考え方で数えられるようになります。以下の箇条書きは、その内容を専門用語でまとめたものです。

  • 数え上げの土台は 2 つの原理だけです。和の法則(重ならない場合を足す)と積の法則(段階を踏む選び方を掛ける)。この記事ではこれを有限集合の元の個数の定理として証明し、残りの公式をすべてここから導きます。
  • 順列 n(n−1)⋯(n−k+1)n(n-1)\cdots(n-k+1)、組合せ (nk)\binom nk、円順列 (n−1)!(n-1)!、同じものを含む順列 n!n1!⋯nr!\dfrac{n!}{n_1!\cdots n_r!}、重複組合せ (n+k−1k)\binom{n+k-1}{k} は、「各値が同じ個数ずつ重なっている写像で割る」という 1 つの考え方で統一的に証明できます。
  • 包除原理を使うと、全射の個数 ∑j(−1)j(Kj)(K−j)N\sum_j(-1)^j\binom Kj(K-j)^N と完全順列の個数が出ます。
  • 玉と箱の数え方(玉・箱が区別できるか、入れ方の条件は何か)は 3×4=123\times4=12 通りの表になります。全部の欄を証明つきで埋めます。
  • 直線 nn 本が一般の位置にあるとき平面は 1+n+(n2)1+n+\binom n2 個、平面 nn 枚が一般の位置にあるとき空間は (n0)+(n1)+(n2)+(n3)\binom n0+\binom n1+\binom n2+\binom n3 個の領域に分かれます。
  • 平面上のどの 3 点も同一直線上にない 5 点からは、必ず凸四角形をつくる 4 点が選べます(ハッピーエンド問題)。

「場合の数」は高校数学で最初に出会う難所です。公式の数は多く、問題ごとに使い分けが違い、数え間違い(重複や漏れ)も起きやすい。しかし公式は互いに無関係ではありません。順列も組合せも円順列も、**「数えやすいものを数えて、重なりの個数で割る」か「数えやすい段階に分けて掛ける」**かのどちらかで出てきます。

この記事は、その考え方を最初に定理として固定します。後の記事(確率)では「同様に確からしい事象の確率は、場合の数の比」になるので、数え方が正しいことは確率の正しさに直結します。

注意: 高校の教科書では、これらの公式は「図や例から明らか」とされることが多い。ここでは、段階を分けるとは何か、重ならないとは何か、を集合と写像の言葉で言い切ります。

N={1,2,… }\mathbb{N}=\{1,2,\dots\}、[n]={1,2,…,n}[n]=\{1,2,\dots,n\}([0]=∅[0]=\varnothing)とします。

定義 2.1(有限集合の元の個数)↗

集合 AA から [n][n] への全単射があるとき、AA は有限集合であるといい、その nn を AA の元の個数(要素の個数)といって ∣A∣|A| と書く。空集合の元の個数は 00 である。

「nn は AA から決まるか」を確かめておきます。これは鳩の巣原理から出ます。

命題 2.2(元の個数は一意に定まる)✓

集合 AA から [n][n] への全単射と [m][m] への全単射があるならば n=mn=m である。

証明(命題 2.2)

全単射 α:A→[n]\alpha:A\to[n]、β:A→[m]\beta:A\to[m] をとると、β∘α−1:[n]→[m]\beta\circ\alpha^{-1}:[n]\to[m] は全単射である。n>mn>m とすると、この写像は [n][n] から元の個数の少ない [m][m] への単射になり、鳩の巣原理(定理 7.5)[数え上げと母関数](1 で k=1k=1)に反する。同様に逆写像 α∘β−1:[m]→[n]\alpha\circ\beta^{-1}:[m]\to[n] を考えて m>nm>n も起こらない。よって n=mn=m である。

以下、有限集合を A,B,…A,B,\dots と書くときは、いつも有限集合を考えます。部分集合 B⊆AB\subseteq A も有限集合です(A→[n]A\to[n] の全単射を制限して、順序を詰めれば B→[m]B\to[m] の全単射が作れるため)。

定理 3.1(和の法則・積の法則)✓

  1. (和の法則)A1,…,AmA_1,\dots,A_m が互いに交わらない有限集合ならば ∣A1∪⋯∪Am∣=∣A1∣+⋯+∣Am∣\bigl|A_1\cup\cdots\cup A_m\bigr|=|A_1|+\cdots+|A_m|。
  2. (積の法則)∣A×B∣=∣A∣ ∣B∣|A\times B|=|A|\,|B|。
  3. (逆像が同じ大きさのときの原理)写像 f:A→Bf:A\to B について、すべての b∈Bb\in B で ∣f−1(b)∣=c|f^{-1}(b)|=c (同じ値)ならば ∣A∣=c ∣B∣|A|=c\,|B|。
  4. (補集合の原理)B⊆AB\subseteq A ならば ∣A∖B∣=∣A∣−∣B∣|A\setminus B|=|A|-|B|。
証明(定理 3.1)
  1. まず m=2m=2 を示す。∣A∣=a|A|=a、∣B∣=b|B|=b、全単射 α:A→[a]\alpha:A\to[a]、β:B→[b]\beta:B\to[b] をとる。A∩B=∅A\cap B=\varnothing なので、γ(x)=α(x)\gamma(x)=\alpha(x)(x∈Ax\in A)、γ(x)=a+β(x)\gamma(x)=a+\beta(x)(x∈Bx\in B)で γ:A∪B→[a+b]\gamma:A\cup B\to[a+b] が定まり、[a][a] と {a+1,…,a+b}\{a+1,\dots,a+b\} に分けて見れば全単射である。よって ∣A∪B∣=a+b|A\cup B|=a+b。一般の mm は、A1∪⋯∪Am−1A_1\cup\cdots\cup A_{m-1} と AmA_m が交わらないことを使った mm についての帰納法で出る。
  2. A×B=⋃x∈A({x}×B)A\times B=\bigcup_{x\in A}\bigl(\{x\}\times B\bigr) は互いに交わらない和であり、各 {x}×B\{x\}\times B は y↦(x,y)y\mapsto(x,y) で BB と全単射だから元の個数 ∣B∣|B| である。1. より ∣A×B∣=∑x∈A∣B∣=∣A∣ ∣B∣|A\times B|=\sum_{x\in A}|B|=|A|\,|B|。
  3. A=⋃b∈Bf−1(b)A=\bigcup_{b\in B}f^{-1}(b) は互いに交わらない和で、各項の元の個数が cc なので、1. より ∣A∣=c ∣B∣|A|=c\,|B|。
  4. A=(A∖B)∪BA=(A\setminus B)\cup B は互いに交わらない和なので、1. より ∣A∣=∣A∖B∣+∣B∣|A|=|A\setminus B|+|B|。
  1. が今回の主役です。「∣A∣|A| が数えにくいとき、AA から数えやすい BB への写像 ff を作り、各 bb の逆像が同じ大きさ cc だと示せば、∣A∣=c∣B∣|A|=c|B|」という道具です。この記事の定理の多くは、これを使っています。

ここで逆像 f−1(b)f^{-1}(b) とは、bb に写る AA の元全体の集合のことです。たとえば AA を生徒 30 人、BB を 5 つのクラス、ff を各生徒の所属クラスとします。どのクラスの逆像(そのクラスの生徒全員)も 6 人ならば、全員の数は 6×5=306\times5=30 だと分かります。

命題 3.2(写像の個数)✓

有限集合 X,YX,Y について、XX から YY への写像全体の集合 YXY^X の元の個数は ∣Y∣∣X∣|Y|^{|X|} である。XX が kk 元集合ならば YXY^X は直積 YkY^k と同一視でき、∣Yk∣=∣Y∣k|Y^k|=|Y|^k である。

証明(命題 3.2)

∣X∣=k|X|=k についての帰納法。k=0k=0 のとき、空写像がちょうど 1 つあり ∣Y∣0=1|Y|^0=1。k≥1k\ge1 とし、x0∈Xx_0\in X を 1 つ選び X′=X∖{x0}X'=X\setminus\{x_0\} とおく。f↦(f∣X′,f(x0))f\mapsto(f|_{X'},f(x_0)) は YXY^X から YX′×YY^{X'}\times Y への全単射である。帰納法の仮定と 定理 3.1 の 2. より ∣YX∣=∣Y∣k−1⋅∣Y∣|Y^X|=|Y|^{k-1}\cdot|Y|。

とくに有限集合 AA の部分集合は 2∣A∣2^{|A|} 個です(べき集合の元の個数(定理 3.8)[数学の国語])。

例 3.3(数え間違いの典型を全単射で直す)

「5 人から委員長 1 人と副委員長 1 人を選ぶ」を、「先に 2 人を選んで((52)=10\binom52=10)、次に役を決める」と考えると 10×2=2010\times2=20 通り、「先に委員長(5 通り)、次に副委員長(4 通り)」と考えると 5×4=205\times4=20 通りで一致します。一方、「委員長を 5 通りで決め、副委員長を 5 通りで決める」と数えて 25 通りとするのは、委員長と副委員長が同じ人になる 5 通りを含めた誤りです。 どちらが正しいかは、数えたい集合 A={(x,y):x≠y}A=\{(x,y):x\neq y\} を明示すれば決まります。A=([5]×[5])∖{(x,x)}A=([5]\times[5])\setminus\{(x,x)\} なので、定理 3.1 の 4. から 25−5=2025-5=20。「何の集合の元の個数を数えているのか」を書くのが、数え間違いを防ぐ最初の一歩です。

定義 4.1(順列)↗

kk 元集合から nn 元集合への単射を、nn 個から kk 個を取り出す順列(正確には kk 個の順序つき選び方)といい、その個数を nPk{}_nP_k と書く。k=nk=n の単射(=全単射)は nn 個の並べ替えである。n!=n(n−1)⋯2⋅1n!=n(n-1)\cdots2\cdot1(0!=10!=1)。

定理 4.2(順列の個数)✓

0≤k≤n0\le k\le n のとき nPk=n(n−1)⋯(n−k+1)=n!(n−k)!{}_nP_k=n(n-1)\cdots(n-k+1)=\dfrac{n!}{(n-k)!}。k>nk>n のとき nPk=0{}_nP_k=0。とくに nn 個の並べ替えは n!n! 通りである。

証明(定理 4.2)

k>nk>n のとき、鳩の巣原理(定理 7.5[数え上げと母関数])により単射がない。k≤nk\le n とし、kk についての帰納法で、「任意の nn 元集合 XX について、[k]→X[k]\to X の単射は n(n−1)⋯(n−k+1)n(n-1)\cdots(n-k+1) 個」を示す。k=0k=0 は空写像 1 個。 k≥1k\ge1 とする。単射 f:[k]→Xf:[k]\to X を f(k)=xf(k)=x の値で分類する。f(k)=xf(k)=x となる単射の集合は、f↦f∣[k−1]f\mapsto f|_{[k-1]} により、[k−1]→X∖{x}[k-1]\to X\setminus\{x\} の単射全体と全単射対応する(ff が単射なら f∣[k−1]f|_{[k-1]} の像は xx を含まないから)。X∖{x}X\setminus\{x\} は n−1n-1 元なので、帰納法の仮定でその個数は (n−1)(n−2)⋯(n−k+1)(n-1)(n-2)\cdots(n-k+1)。xx は nn 通りで、逆像が互いに交わらず元の個数が等しいから 定理 3.1 の 1. により、全体は n⋅(n−1)⋯(n−k+1)n\cdot(n-1)\cdots(n-k+1) である。

定理 4.3(組合せの個数)✓

nn 元集合の kk 元部分集合の個数 (nk)\binom nk(二項係数(定義 7.1)[数え上げと母関数])は、0≤k≤n0\le k\le n で

(nk)=nPkk!=n!k! (n−k)!\binom nk=\frac{{}_nP_k}{k!}=\frac{n!}{k!\,(n-k)!}

である。すなわち k!(nk)=nPkk!\binom nk={}_nP_k。

証明(定理 4.3)

nn 元集合 XX について、単射 f:[k]→Xf:[k]\to X の全体 II から、kk 元部分集合の全体 S\mathcal{S} への写像 Φ(f)=f([k])\Phi(f)=f([k]) を考える。Φ\Phi は全射である。部分集合 SS の逆像 Φ−1(S)\Phi^{-1}(S) は、SS への全単射 [k]→S[k]\to S 全体であり、その個数は 定理 4.2 で kk 元集合の並べ替えとして k!k! 個。定理 3.1 の 3. より ∣I∣=k! ∣S∣|I|=k!\,|\mathcal{S}|、すなわち nPk=k!(nk){}_nP_k=k!\binom nk。後半は 定理 4.2 から従う(命題 7.2[数え上げと母関数] の閉じた式とも一致する)。

組合せで頻出の対称性 (nk)=(nn−k)\binom nk=\binom n{n-k} は、「kk 個を選ぶ」ことと「選ばない n−kn-k 個を選ぶ」ことの全単射(補集合をとる)です。

例 4.4(階乗の大きさ)

10!=362880010!=3628800、20!=2432902008176640000≈2.4×101820!=2432902008176640000\approx2.4\times10^{18}、52!≈8.07×106752!\approx8.07\times10^{67}。トランプ 52 枚の並べ方の個数は 52!52! で、宇宙の歴史の秒数(約 4×10174\times10^{17})よりはるかに大きい。「全部を書き出して調べる」方法が、場合の数が大きくなると使えないことが分かります。

5. 円順列・じゅず順列・同じものを含む順列

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異なる nn 個のものを円形に並べる、回すと一致するものは同じとみなす、という数え方です。座席に番号をつけた並べ方を Zn={0,1,…,n−1}\mathbb{Z}_n=\{0,1,\dots,n-1\} (nn を法とする整数)から物の集合 XX(∣X∣=n|X|=n)への全単射 ff とし、回転 ρ(i)=i+1\rho(i)=i+1 に対して f∼f∘ρjf\sim f\circ\rho^j を「同じ円順列」とします。

小さな例で見ると、3 人 A, B, C を円に並べる並べ方は 3!=63!=6 通りありますが、回すと重なるもの(ABC, BCA, CAB の 3 つ、ACB, CBA, BAC の 3 つ)を同じとみなすと 2 通りで、(3−1)!=2(3-1)!=2 と合います。以下の証明は「並べ方 n!n! 通りは、回して重なる nn 個ずつの組に分かれる」ことを示して nn で割るものです。Zn\mathbb{Z}_n は、nn で割った余りで整数を分類したもの、つまり円卓の nn 個の席に番号を振ったものと思ってください。

定理 5.1(円順列とじゅず順列)✓

n≥1n\ge1 個の異なるものの円順列は (n−1)!(n-1)! 通り。n≥3n\ge3 のとき、裏返して重なるものも同じとみなすじゅず順列は (n−1)!2\dfrac{(n-1)!}{2} 通りである。

証明(定理 5.1)

並べ方の全体 Bij(Zn,X)\mathrm{Bij}(\mathbb{Z}_n,X) は 定理 4.2 から n!n! 個である。 円順列: f∼f′f\sim f' を f′=f∘ρjf'=f\circ\rho^j となる jj があること、と定める。これは同値関係であり(ρj\rho^j の合成と逆が ρ\rho のべきで書ける)、類の個数が答えである。ff の類 {f∘ρj:0≤j<n}\{f\circ\rho^j:0\le j<n\} の元の個数は nn である:f∘ρi=f∘ρjf\circ\rho^i=f\circ\rho^j なら ff が単射なので ρi=ρj\rho^i=\rho^j で、i≡j(modn)i\equiv j\pmod n だから、0≤i,j<n0\le i,j<n では i=ji=j。そこで類を対応させる写像の逆像がすべて nn 個で、定理 3.1 の 3. により類の個数は n!/n=(n−1)!n!/n=(n-1)!。 じゅず順列: σ(i)=−i\sigma(i)=-i とおき、G={ρj}∪{σρj}G=\{\rho^j\}\cup\{\sigma\rho^j\} とする(σρj(x)=−(x+j)\sigma\rho^j(x)=-(x+j))。GG は合成で閉じる(σρjσρk=ρk−j\sigma\rho^j\sigma\rho^k=\rho^{k-j} など)。n≥3n\ge3 のとき GG の 2n2n 個の写像は互いに異なる:ρj\rho^j どうし、σρj\sigma\rho^j どうしは異なり、もし σρj=ρi\sigma\rho^j=\rho^i なら x=0,1x=0,1 を代入して −j=i-j=i、−1−j=1+i-1-j=1+i より 2≡0(modn)2\equiv0\pmod n となって n≤2n\le2 に反する。f∼f′f\sim f' を f′=f∘gf'=f\circ g(g∈Gg\in G)と定めると、類の元の個数は 2n2n なので、類の個数は n!/(2n)=(n−1)!/2n!/(2n)=(n-1)!/2。

定理 5.2(同じものを含む順列)✓

n=n1+⋯+nrn=n_1+\cdots+n_r とし、rr 種類の文字を第 ii 種が nin_i 個ずつ並べる並べ方(長さ nn の列)の個数は

n!n1! n2!⋯nr!.\frac{n!}{n_1!\,n_2!\cdots n_r!}.
証明(定理 5.2)

[n][n] を連続した区間 B1,…,BrB_1,\dots,B_r(∣Bi∣=ni|B_i|=n_i)に分ける。[n][n] の並べ替え π:[n]→[n]\pi:[n]\to[n](全部で n!n! 個)に、列 w(π)=(w1,…,wn)w(\pi)=(w_1,\dots,w_n)、wp=i  ⟺  π(p)∈Biw_p=i\iff\pi(p)\in B_i を対応させる。w(π)w(\pi) は第 ii 種が nin_i 個の列である。逆に列 ww が与えられたとき、w(π)=ww(\pi)=w となる π\pi は、各 ii について「wp=iw_p=i となる位置の集合(nin_i 元)から BiB_i への全単射」を選ぶことと同じなので、n1!⋯nr!n_1!\cdots n_r! 個ある(積の法則)。逆像の大きさが一定だから、定理 3.1 の 3. で列の個数は n!/(n1!⋯nr!)n!/(n_1!\cdots n_r!)。

例 5.3(A, A, B, B, C の並べ替え)

5 文字を並べる並べ方は 5!2! 2! 1!=30\dfrac{5!}{2!\,2!\,1!}=30 通り。隣り合う A がないものは、B, B, C の並べ方 3!2!=3\dfrac{3!}{2!}=3 通りの 4 つの隙間から A の位置 2 箇所を選んで 3×(42)=183\times\binom42=18 通り。「A が隣り合う」場合は 30−18=1230-18=12 通りで、A, A を 1 つのかたまりにして A’, B, B, C を並べる 4!2!=12\dfrac{4!}{2!}=12 と一致します。

定理 6.1(重複組合せ)✓

n≥1n\ge1、k≥0k\ge0 のとき、非負整数 x1,…,xnx_1,\dots,x_n で x1+⋯+xn=kx_1+\cdots+x_n=k を満たす組の個数は (n+k−1k)\binom{n+k-1}{k} である。また、正の整数の解の個数は (k−1n−1)\binom{k-1}{n-1}(k≥nk\ge n)である。

証明の方針は、解の組を「kk 個の玉と n−1n-1 本の仕切りを一列に並べた、長さ n+k−1n+k-1 の列」に対応させ、仕切りの位置を選ぶ問題(組合せ)に直すことです。sis_i は ii 番目の仕切りの位置を表します。たとえば n=3n=3、k=2k=2 で (x1,x2,x3)=(1,0,1)(x_1,x_2,x_3)=(1,0,1) なら、列は「玉 仕切り 仕切り 玉」で、仕切りの位置は s1=2s_1=2、s2=3s_2=3 です。

証明(定理 6.1)

(x1,…,xn)(x_1,\dots,x_n) に対し si=x1+⋯+xi+is_i=x_1+\cdots+x_i+i(1≤i≤n−11\le i\le n-1)とおくと、1≤s1<s2<⋯<sn−1≤n+k−11\le s_1<s_2<\cdots<s_{n-1}\le n+k-1(si+1−si=xi+1+1≥1s_{i+1}-s_i=x_{i+1}+1\ge1、sn−1≤k+n−1s_{n-1}\le k+n-1)なので、{s1,…,sn−1}\{s_1,\dots,s_{n-1}\} は [n+k−1][n+k-1] の (n−1)(n-1) 元部分集合である。逆に (n−1)(n-1) 元部分集合 s1<⋯<sn−1s_1<\cdots<s_{n-1} から x1=s1−1x_1=s_1-1、xi=si−si−1−1x_i=s_i-s_{i-1}-1(2≤i≤n−12\le i\le n-1)、xn=n+k−1−sn−1x_n=n+k-1-s_{n-1} を作ると、これらは非負整数で和は kk になり、2 つの操作は互いに逆である。したがって解の個数は (n+k−1n−1)=(n+k−1k)\binom{n+k-1}{n-1}=\binom{n+k-1}{k}(定理 4.3 と (mj)=(mm−j)\binom mj=\binom m{m-j})。n=1n=1 のときは ss が空で、解は x1=kx_1=k の 1 つだけ((kk)=1\binom kk=1)である。正の解は yi=xi−1y_i=x_i-1 と置き換えて、y1+⋯+yn=k−ny_1+\cdots+y_n=k-n の非負解の個数 (k−1k−n)=(k−1n−1)\binom{k-1}{k-n}=\binom{k-1}{n-1}。

この対応は「玉を kk 個、仕切りを n−1n-1 本、並べる」という高校の説明(星と棒)の、数学的な言い直しです。

定理 6.2(最短経路の数)✓

格子点 (0,0)(0,0) から (a,b)(a,b) へ、右(RR)か上(UU)への 1 歩ずつで進む経路は (a+ba)\binom{a+b}{a} 通りである。

証明(定理 6.2)

経路は、RR を aa 個、UU を bb 個含む長さ a+ba+b の列と 1 対 1 に対応する。その個数は 定理 5.2 で (a+b)!a! b!=(a+ba)\dfrac{(a+b)!}{a!\,b!}=\binom{a+b}{a}。

(0,0)(5,4)(2,2)
格子点 (0,0) から (5,4) への最短経路の 1 つ(太線)。(2,2) を通る経路は 6 × 10 = 60 通り

例 6.3(途中の点を通る経路)

(0,0)(0,0) から (5,4)(5,4) への最短経路は (94)=126\binom94=126 通り。(2,2)(2,2) を通るものは、(0,0)→(2,2)(0,0)\to(2,2) が (42)=6\binom42=6 通り、(2,2)→(5,4)(2,2)\to(5,4) が (52)=10\binom52=10 通りで、積の法則により 6060 通りです(通る点が 1 つなので、この 60 通りは重なりません)。

7. 包除原理の使い方:全射と完全順列

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包除原理(定理 4.1[半順序集合と Möbius 反転])は、「少なくとも 1 つの条件に反するもの」を「どの条件にも反しないもの」の個数に変換します。ここでは、その使い方を 2 つの定理で見ます。

定理 7.1(全射の個数)✓

N≥1N\ge1、K≥1K\ge1 とする。[N][N] から [K][K] への全射の個数は

∑j=0K(−1)j(Kj)(K−j)N\sum_{j=0}^{K}(-1)^j\binom Kj(K-j)^N

である。

証明(定理 7.1)

XX を [N]→[K][N]\to[K] の写像全体(命題 3.2 で KNK^N 個)とし、Ai={f∈X: i∉f([N])}A_i=\{f\in X:\ i\notin f([N])\}(i∈[K]i\in[K])とおく。全射の集合は X∖⋃iAiX\setminus\bigcup_iA_i である。S⊆[K]S\subseteq[K] について AS=⋂i∈SAiA_S=\bigcap_{i\in S}A_i は [N]→[K]∖S[N]\to[K]\setminus S の写像の全体なので ∣AS∣=(K−∣S∣)N|A_S|=(K-|S|)^N。包除原理(定理 4.1)[半順序集合と Möbius 反転] により、全射の個数は ∑S⊆[K](−1)∣S∣(K−∣S∣)N\sum_{S\subseteq[K]}(-1)^{|S|}(K-|S|)^N。∣S∣=j|S|=j となる SS は (Kj)\binom Kj 個なので、題意の式になる。

命題 7.2(完全順列の個数)✓

nn 個の並べ替え π\pi で、どの ii についても π(i)≠i\pi(i)\ne i となるもの(完全順列)の個数 DnD_n は

Dn=n!∑k=0n(−1)kk!D_n=n!\sum_{k=0}^n\frac{(-1)^k}{k!}

である。

証明(命題 7.2)

XX を [n][n] の並べ替え全体(n!n! 個)、Ai={π:π(i)=i}A_i=\{\pi:\pi(i)=i\} とする。S⊆[n]S\subseteq[n] について ASA_S は SS の元を固定する並べ替えで、残り n−∣S∣n-|S| 個の並べ替えと同一視できるので ∣AS∣=(n−∣S∣)!|A_S|=(n-|S|)!(定理 4.2)。包除原理(定理 4.1)[半順序集合と Möbius 反転] により Dn=∑S(−1)∣S∣(n−∣S∣)!=∑k=0n(−1)k(nk)(n−k)!=∑k=0n(−1)kn!/k!D_n=\sum_{S}(-1)^{|S|}(n-|S|)!=\sum_{k=0}^n(-1)^k\binom nk(n-k)!=\sum_{k=0}^n(-1)^kn!/k!。

D4=24−24+12−4+1=9D_4=24-24+12-4+1=9、D5=44D_5=44、D6=265D_6=265。比 Dn/n!D_n/n! は ∑(−1)k/k!\sum(-1)^k/k! に急速に近づきます(確率の記事で再び現れます)。

NN 個の玉を KK 個の箱に入れる入れ方を、次の 3 つの選択で分類します。

  • 玉が区別できるか(できる=D、できない=I)。
  • 箱が区別できるか(D か I)。
  • 入れ方の条件:制限なし/単射(どの箱にも高々 1 個)/全射(どの箱にも少なくとも 1 個)。

入れ方を写像 f:[N]→[K]f:[N]\to[K] で表します(玉 pp を箱 f(p)f(p) に入れる)。玉が区別できないとは、[N][N] の並べ替えで移り合う写像を同じとみなすこと(各箱の個数 (n1,…,nK)(n_1,\dots,n_K) だけが問題)、箱が区別できないとは、[K][K] の並べ替えで移り合う写像を同じとみなすことです。

やさしく言えば、「区別できる」とは玉や箱に番号や名前が付いていること、「区別できない」とは見分けがつかず、入れ替えても同じ入れ方だと考えることです。まず N=2N=2、K=2K=2(制限なし)で見ます。玉 D・箱 D は 22=42^2=4 通り。玉 I・箱 D は箱ごとの個数が (2,0),(1,1),(0,2)(2,0),(1,1),(0,2) の 3 通り。玉 D・箱 I は「2 個が同じ箱」「別々の箱」の 2 通り。玉 I・箱 I は個数の組 {2,0}\{2,0\} と {1,1}\{1,1\} の 2 通りです。以下の定理は、これを一般の N,KN,K で数えたものです。

定義 8.1(第 2 種 Stirling 数と整数の分割)↗

  1. NN 元集合を、空でない部分集合(ブロック)に、順序を区別せずに互いに交わらないように分割する分け方のうち、ブロックがちょうど KK 個のものの個数を第 2 種 Stirling 数 S(N,K)S(N,K) とする(S(0,0)=1S(0,0)=1、N≥1N\ge1 で S(N,0)=0S(N,0)=0、K≥1K\ge1 で S(0,K)=0S(0,K)=0)。
  2. 自然数 NN を、順序を区別せずにちょうど KK 個の正の整数の和として表す表し方(N=n1+⋯+nKN=n_1+\cdots+n_K、n1≥⋯≥nK≥1n_1\ge\cdots\ge n_K\ge1)の個数を pK(N)p_K(N) とする(p0(0)=1p_0(0)=1、m≥1m\ge1 で p0(m)=0p_0(m)=0、pK(0)=0p_K(0)=0 (K≥1K\ge1))。

命題 8.2(Stirling 数と分割数の漸化式)✓

N,K≥1N,K\ge1 について

S(N,K)=S(N−1,K−1)+K S(N−1,K),pK(N)=pK−1(N−1)+pK(N−K).S(N,K)=S(N-1,K-1)+K\,S(N-1,K),\qquad p_K(N)=p_{K-1}(N-1)+p_K(N-K).

ただし pK(m)=0p_K(m)=0(m<0m<0)とする。

証明(命題 8.2)

SS の漸化式: [N][N] の KK ブロックへの分割を、元 NN が単独のブロックをなすかどうかで分ける。単独なら、残りは [N−1][N-1] の K−1K-1 ブロックへの分割で、S(N−1,K−1)S(N-1,K-1) 通り。そうでなければ、NN を除いた [N−1][N-1] の KK ブロックへの分割に、NN を KK 個のブロックのどれかに加える KK 通りで、K S(N−1,K)K\,S(N-1,K) 通り(逆に NN を除けば元に戻る)。 pp の漸化式: KK 個の正の整数への分割を、最小の項が 11 かどうかで分ける。最小の項が 11 なら、その 1 を除いて N−1N-1 の K−1K-1 個への分割になる(逆に 11 を加えれば元に戻る)。最小の項が 22 以上なら、すべての項から 11 を引いて N−KN-K の KK 個への分割になる(逆に 11 ずつ加えれば元に戻る)。それぞれ pK−1(N−1)p_{K-1}(N-1)、pK(N−K)p_K(N-K) 通り。

定理 8.3(12 通りの数え方)✓

N,K≥1N,K\ge1 とする。玉の入れ方の個数は、次の表のとおりである。

制限なし単射(各箱に高々 1 個)全射(各箱に 1 個以上)
玉 D・箱 DKNK^NK!(K−N)!\dfrac{K!}{(K-N)!}(N≤KN\le K、それ以外は 00)K! S(N,K)=∑j=0K(−1)j(Kj)(K−j)NK!\,S(N,K)=\sum_{j=0}^K(-1)^j\binom Kj(K-j)^N
玉 I・箱 D(N+K−1N)\binom{N+K-1}{N}(KN)\binom KN(N≤KN\le K、それ以外は 00)(N−1K−1)\binom{N-1}{K-1}
玉 D・箱 I∑j=1KS(N,j)\sum_{j=1}^{K}S(N,j)11(N≤KN\le K)、00(N>KN>K)S(N,K)S(N,K)
玉 I・箱 I∑j=1Kpj(N)\sum_{j=1}^{K}p_j(N)11(N≤KN\le K)、00(N>KN>K)pK(N)p_K(N)
証明(定理 8.3)

同一視の確認: 2 つの写像 f,gf,g が、玉の並べ替え π\pi と箱の並べ替え τ\tau を許して g=τ∘f∘πg=\tau\circ f\circ\pi と移り合うことを、玉が区別できなければ π\pi だけ、箱が区別できなければ τ\tau だけ許して、「同じ入れ方」とみなす。各箱の個数 (nj)=(∣f−1(j)∣)(n_j)=(|f^{-1}(j)|) が一致すれば玉の並べ替えで移り合い(各箱の玉を同じ個数ずつ対応させればよい)、ff の逆像のつくる [N][N] の分割(空でない逆像の全体)が一致すれば、空でない逆像どうしを対応させる箱の並べ替え(空の箱どうしも対応させて [K][K] 全体の並べ替えに延ばせる)で移り合う。逆も明らかなので、以下の同一視は次の 3 つの言い換えになる:玉 I・箱 D は各箱の個数の組 (n1,…,nK)(n_1,\dots,n_K)、玉 D・箱 I は [N][N] の(高々 KK ブロックの)分割、玉 I・箱 I は個数の組を並べ替えて同じとみなしたもの、すなわち NN の分割。 玉 D・箱 D: 入れ方は写像 [N]→[K][N]\to[K] そのもの。制限なしは 命題 3.2 で KNK^N。単射は 定理 4.2(N≤KN\le K、N>KN>K は鳩の巣原理で 0)。全射の個数は 定理 7.1 の式に一致する。さらに全射 ff に、その逆像の分割 {f−1(b)}\{f^{-1}(b)\}(KK 個のブロック)を対応させると、全射の集合から「KK ブロックの分割」の集合への全射になり、1 つの分割の逆像は、KK 個のブロックに箱の名前 1,…,K1,\dots,K を 1 つずつ割り当てる方法の個数 K!K! に等しい。定理 3.1 の 3. より全射の個数は K! S(N,K)K!\,S(N,K)。 玉 I・箱 D: 入れ方は各箱の個数 (n1,…,nK)(n_1,\dots,n_K)(n1+⋯+nK=Nn_1+\cdots+n_K=N)。制限なしは 定理 6.1 で (N+K−1N)\binom{N+K-1}{N}。全射は nj≥1n_j\ge1 なので正の解の個数 (N−1K−1)\binom{N-1}{K-1}。単射は nj∈{0,1}n_j\in\{0,1\} で和が NN なので、1 が入る NN 個の箱の選び方 (KN)\binom KN(定理 4.3)。 玉 D・箱 I: 入れ方は箱の名前を忘れた「玉の集合 [N][N] の分割」(空の箱は見えない)。ブロックの個数 jj は 1≤j≤K1\le j\le K で、制限なしは ∑j=1KS(N,j)\sum_{j=1}^KS(N,j)。全射は空の箱がないことで、ちょうど KK ブロック、S(N,K)S(N,K)。単射はすべてのブロックが 1 個の玉だけからなる分割で、そのような分割はちょうど 1 つあり(N≤KN\le K)、N>KN>K では箱が足りず 0。 玉 I・箱 I: 入れ方は箱の個数を並べた多重集合、すなわち NN の分割(空の箱は見えない)。ちょうど jj 個の正の整数への分割が pj(N)p_j(N) 個なので、制限なしは ∑j=1Kpj(N)\sum_{j=1}^Kp_j(N)、全射は pK(N)p_K(N)。単射は全部の項が 1 の分割ただ 1 つ(N≤KN\le K)、N>KN>K では 0。

例 8.4(N=4N=4、K=3K=3 の表)

値を計算すると次のとおり。S(4,1)=1S(4,1)=1、S(4,2)=7S(4,2)=7、S(4,3)=6S(4,3)=6。p1(4)=1p_1(4)=1、p2(4)=2p_2(4)=2、p3(4)=1p_3(4)=1。

制限なし単射全射
玉 D・箱 D8181003636
玉 I・箱 D15150033
玉 D・箱 I14140066
玉 I・箱 I440011

44 個の玉を 33 個の箱に入れて空の箱を許さないと、玉 D・箱 D で 3636 通り。これは 3! S(4,3)=6×63!\,S(4,3)=6\times6 とも、34−3⋅24+3=363^4-3\cdot2^4+3=36 とも合います。

直線 nn 本で平面はいくつの領域に分かれるでしょうか。直観的な数え方(「新しい直線は nn 個の交点で n+1n+1 個に切れ、領域が n+1n+1 個増える」)を、定義から証明します。

d=1,2,3d=1,2,3 とし、Rd\mathbb{R}^d の超平面 Hi={gi=0}H_i=\{g_i=0\}(gig_i は定数でない 1 次式。d=1d=1 は点、d=2d=2 は直線、d=3d=3 は平面)を nn 個とります(超平面とは、直線や平面のように、空間を 2 つの側に分ける平らな図形のことです)。符号の組 ε∈{+1,−1}n\varepsilon\in\{+1,-1\}^n に対し Rε={x:εigi(x)>0 (i=1,…,n)}R_\varepsilon=\{x:\varepsilon_ig_i(x)>0\ (i=1,\dots,n)\} とおき、空でない RεR_\varepsilon を(これら nn 個の超平面が作る)領域、その個数を rd(H1,…,Hn)r_d(H_1,\dots,H_n) と書きます。RεR_\varepsilon は有限個の開半空間の共通部分なので凸であり、異なる領域は超平面で隔てられます。

定義 9.1(一般の位置)↗

d=2d=2 の直線 nn 本が一般の位置にあるとは、どの 2 本も平行でなく、どの 3 本も 1 点で交わらないこと。d=3d=3 の平面 nn 枚が一般の位置にあるとは、どの 2 枚も平行でなく(一致もせず)、どの 3 枚もちょうど 1 点で交わり、どの 4 枚も共通点をもたないこと。d=1d=1 では nn 個の点が互いに異なること。

次の補題は、直線を 1 本足すと、領域が「その直線が通り抜ける領域の数」だけ増える、という事実を式にしたものです。たとえば 2 本の直線が作る 4 個の領域に、その 2 本と交わる 3 本目を引くと、3 本目は 2 つの交点で 3 つの区間に切られ、3 個の領域を通り抜けるので、領域は 4+3=74+3=7 個になります(公式 1+3+(32)=71+3+\binom32=7 と一致します)。証明では、領域が凸(領域内の 2 点を結ぶ線分が領域からはみ出さない)という性質を使います。

補題 9.2(超平面を 1 つ加えたときの領域の増え方)✓

H={g=0}H=\{g=0\} を新しい超平面とし、H1,…,HnH_1,\dots,H_n のどれとも平行でない(H∩Hi≠∅H\cap H_i\ne\varnothing、Hi≠HH_i\neq H)とする。Hi∩HH_i\cap H は HH の中の超平面(d=2d=2 なら点、d=3d=3 なら直線)である。このとき

rd(H1,…,Hn,H)=rd(H1,…,Hn)+rd−1(H∩H1,…,H∩Hn)r_d(H_1,\dots,H_n,H)=r_d(H_1,\dots,H_n)+r_{d-1}\bigl(H\cap H_1,\dots,H\cap H_n\bigr)

(右辺の第 2 項は、HH の中で H∩HiH\cap H_i が作る領域の個数)。

証明(補題 9.2)

H1,…,HnH_1,\dots,H_n の領域 Rε≠∅R_\varepsilon\ne\varnothing を 1 つ取り、HH との関係で調べる。 (a) Rε∩H=∅R_\varepsilon\cap H=\varnothing のとき。RεR_\varepsilon は凸で、gg は連続(1 次式)なので、gg は RεR_\varepsilon 上で符号を変えない(g(p)>0>g(q)g(p)>0>g(q) なら線分 pqpq 上で g=0g=0 となる点が RεR_\varepsilon にあることになるため)。よって新しい領域のうち RεR_\varepsilon の中にあるものは、g>0g>0 の側か g<0g<0 の側かのちょうど一方で、1 個。 (b) Rε∩H≠∅R_\varepsilon\cap H\ne\varnothing のとき。p∈Rε∩Hp\in R_\varepsilon\cap H をとると RεR_\varepsilon は開集合なので pp のまわりの小球を含み、その小球は g>0g>0 の点も g<0g<0 の点も含む。よって新しい領域が 2 個。 したがって増える領域の数は、HH に交わる RεR_\varepsilon の個数である。Rε∩H={x∈H:εigi(x)>0}R_\varepsilon\cap H=\{x\in H:\varepsilon_ig_i(x)>0\} で、gi∣Hg_i|_H は仮定より HH 上の定数でない 1 次式(HiH_i が HH と平行でないため)であり、その零点集合が H∩HiH\cap H_i である。よって Rε∩H≠∅R_\varepsilon\cap H\ne\varnothing となる ε\varepsilon の個数は、HH の中の超平面 H∩HiH\cap H_i の領域の個数に等しい。

定理 9.3(直線と平面による分割)✓

一般の位置にある nn 個の超平面について、領域の個数は

rd=∑j=0d(nj)(d=1,2,3)r_d=\sum_{j=0}^{d}\binom nj\qquad(d=1,2,3)

である。とくに、一般の位置にある直線 nn 本は平面を 1+n+(n2)=n2+n+221+n+\binom n2=\dfrac{n^2+n+2}{2} 個の領域に分け、一般の位置にある平面 nn 枚は空間を 1+n+(n2)+(n3)1+n+\binom n2+\binom n3 個の領域に分ける。

証明(定理 9.3)

d=1d=1: 相異なる nn 点 t1<⋯<tnt_1<\cdots<t_n を零点とする 1 次式の符号の組は、tt より小さい点の個数 0,1,…,n0,1,\dots,n で決まり、どれも実現されるので n+1=(n0)+(n1)n+1=\binom n0+\binom n1 個。 d=2,3d=2,3: nn についての帰納法。n=0n=0 なら領域は全空間 1 個で (00)=1\binom00=1。n≥1n\ge1 とし、H=HnH=H_n を最後に加える超平面とみなす。一般の位置の仮定より、HH は他の超平面と平行でない(d=2d=2:どの 2 本も平行でない。d=3d=3:定義でどの 2 枚も平行でも一致でもない。n≤2n\le2 のときも、この条件が要る)。また H∩H1,…,H∩Hn−1H\cap H_1,\dots,H\cap H_{n-1} は HH の中で一般の位置にある(d=2d=2:n−1n-1 個の相異なる点。2 直線 Hi,HjH_i,H_j が HH 上の同じ点で交われば 3 本が共点になってしまう。d=3d=3:HH の中の 2 直線 H∩Hi,H∩HjH\cap H_i,H\cap H_j は H∩Hi∩HjH\cap H_i\cap H_j がちょうど 1 点なので、ちょうど 1 点で交わり、3 直線が共点なら HH を含む 4 枚が共点になって矛盾)。補題 9.2 により rd(n)=rd(n−1)+rd−1(n−1)r_d(n)=r_d(n-1)+r_{d-1}(n-1)。帰納法の仮定(d−1d-1 については n−1n-1 個で、dd については n−1n-1 個で成り立つ)から

rd(n)=∑j=0d(n−1j)+∑j=0d−1(n−1j)=(n−10)+∑j=1d[(n−1j)+(n−1j−1)]=∑j=0d(nj).r_d(n)=\sum_{j=0}^d\binom{n-1}{j}+\sum_{j=0}^{d-1}\binom{n-1}{j}=\binom{n-1}0+\sum_{j=1}^d\Bigl[\binom{n-1}{j}+\binom{n-1}{j-1}\Bigr]=\sum_{j=0}^d\binom nj.

最後は Pascal の漸化式(命題 7.2[数え上げと母関数])である。

例 9.4(平面 4 枚で空間は 15 個)

平面 n=1,2,3,4,5n=1,2,3,4,5 枚で空間は 2,4,8,15,262,4,8,15,26 個の領域に分かれます。2n2^n に見えて、n=4n=4 で 1616 ではなく 1515 になります。平行な 2 本の直線は 3 個にしか平面を分けない(1+2+1=41+2+1=4 の公式より少ない)ように、一般の位置からずれると個数は減ります(平行な平面 2 枚が空間を 3 個にしか分けないのも同じです)。

注意 9.5

円による平面の分割(どの 2 円もちょうど 2 点で交わり、どの 3 円も共有点をもたない場合、n2−n+2n^2-n+2 個)は、領域が凸でないので上の議論はそのまま使えません。平面グラフの Euler の公式 V−E+F=2V-E+F=2 を使うと証明できます(Euler の公式は 命題 3.1[四色定理] にあります)。ただし、辺が曲線なので、直線の場合にはない Jordan の曲線定理の類の議論が要ります。この記事は証明を与えないため、定理にはせず、公式だけを注意として記します。

10. ハッピーエンド問題(5 点)

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平面上の 4 点が凸位置にあるとは、どの 1 点も他の 3 点がつくる三角形(内部と周を含む)に含まれないことです。このとき 4 点は凸四角形の頂点をなします。

平面上の有限個の点 SS について、SS の点の凸結合(∑λsPs\sum\lambda_sP_s、λs≥0\lambda_s\ge0、∑λs=1\sum\lambda_s=1)全体を conv(S)\mathrm{conv}(S) と書きます(SS を含む最小の凸集合、つまり「SS を囲む輪ゴムの内側」です)。

補題 10.1(凸包をつくる最小の点集合)✓

有限集合 SS に対し、部分集合 T⊆ST\subseteq S で、conv(T)=conv(S)\mathrm{conv}(T)=\mathrm{conv}(S) であり、かつ TT のどの点 PP も conv(T∖{P})\mathrm{conv}(T\setminus\{P\}) に含まれないものが存在する。

証明(補題 10.1)

conv(T)=conv(S)\mathrm{conv}(T)=\mathrm{conv}(S) となる T⊆ST\subseteq S のうち、元の個数が最小のものをとる(T=ST=S が候補なので存在する)。もし P∈TP\in T が conv(T∖{P})\mathrm{conv}(T\setminus\{P\}) に含まれるなら、TT の点の凸結合に現れる PP を T∖{P}T\setminus\{P\} の凸結合で置き換えることで conv(T∖{P})=conv(T)=conv(S)\mathrm{conv}(T\setminus\{P\})=\mathrm{conv}(T)=\mathrm{conv}(S) となり、TT の最小性に反する。

定理 10.2(ハッピーエンド問題(5 点))✓

平面上の 5 点で、どの 3 点も同一直線上にないものは、4 点を選んで凸位置にできる(凸四角形をつくれる)。

証明の方針は、5 点を輪ゴムで囲んだとき、輪ゴムの角になる点だけを残した集合 TT の大きさで分けることです。TT が 4 点以上ならそこから 4 点を選べば済みます。TT が 3 点(三角形)のときは、残りの 2 点が三角形の内側にあることを使い、2 点を通る直線が三角形の頂点を 1 点と 2 点に分けることから、凸位置の 4 点を見つけます。

証明(定理 10.2)

5 点の集合を SS とし、補題 10.1 の TT をとる。∣T∣≤2|T|\le2 だと S⊆conv(S)=conv(T)S\subseteq\mathrm{conv}(S)=\mathrm{conv}(T) が 1 本の線分に入り、3 点共線に反する。よって ∣T∣≥3|T|\ge3。 ∣T∣≥4|T|\ge4 のとき: TT から 4 点を選ぶ。どの点 PP も P∉conv(T∖{P})P\notin\mathrm{conv}(T\setminus\{P\}) であり、他の 3 点の三角形はこの凸包に含まれるから、PP は他の 3 点の三角形に入らない。よって凸位置。 ∣T∣=3|T|=3 のとき: T={A,B,C}T=\{A,B,C\}(3 点共線でないので三角形をなす)、SS の残りを D,FD,F とおく。D,F∈conv(S)=conv(A,B,C)D,F\in\mathrm{conv}(S)=\mathrm{conv}(A,B,C) で、D,FD,F は A,B,CA,B,C のどれとも異なる。 (i) 直線 DFDF は A,B,CA,B,C のどれも通らない(3 点共線に反する)。gg を直線 DFDF を零点とする 1 次式とすると、g(A),g(B),g(C)≠0g(A),g(B),g(C)\neq0。3 つが全部同符号だとすると、その凸結合である g(D)g(D) も 00 でなくなり g(D)=0g(D)=0 に反する。よって符号は 2 対 1 に分かれる。AA だけが別の側、B,CB,C が同じ側とする(他の場合は文字を入れ替える)。 (ii) B∉conv(C,D,F)B\notin\mathrm{conv}(C,D,F) である。A,B,CA,B,C は 1 直線上にないので、β(A)=β(C)=0\beta(A)=\beta(C)=0、β(B)=1\beta(B)=1 となる 1 次式 β\beta がある。conv(A,B,C)\mathrm{conv}(A,B,C) の点では β\beta の値は凸結合における BB の重みなので 0≤β≤10\le\beta\le1 で、β(X)=1\beta(X)=1 となるのは X=BX=B のときに限る。もし B=λC+μD+νFB=\lambda C+\mu D+\nu F(λ,μ,ν≥0\lambda,\mu,\nu\ge0、和は 1)なら 1=β(B)=μβ(D)+νβ(F)1=\beta(B)=\mu\beta(D)+\nu\beta(F) だが、β(D),β(F)<1\beta(D),\beta(F)<1 なので右辺は μ+ν≤1\mu+\nu\le1 未満(μ=ν=0\mu=\nu=0 なら 00)で矛盾する。同様に C∉conv(B,D,F)C\notin\mathrm{conv}(B,D,F)。 (iii) D∉conv(B,C,F)D\notin\mathrm{conv}(B,C,F) である。もし D∈conv(B,C,F)D\in\mathrm{conv}(B,C,F) なら、3 点共線がないので D=λB+μC+νFD=\lambda B+\mu C+\nu F(λ,μ,ν>0\lambda,\mu,\nu>0、和は 1)と書け、D−F=λ(B−F)+μ(C−F)D-F=\lambda(B-F)+\mu(C-F)。g(x)=ℓ(x)+cg(x)=\ell(x)+c(ℓ\ell は 1 次の部分)とすると ℓ(D−F)=g(D)−g(F)=0\ell(D-F)=g(D)-g(F)=0 なので 0=λℓ(B−F)+μℓ(C−F)=λg(B)+μg(C)0=\lambda\ell(B-F)+\mu\ell(C-F)=\lambda g(B)+\mu g(C)(g(F)=0g(F)=0)。λ,μ>0\lambda,\mu>0 なので g(B),g(C)g(B),g(C) は異符号になり、B,CB,C が同じ側という (i) に反する。F∉conv(B,C,D)F\notin\mathrm{conv}(B,C,D) も同様。 (ii)(iii) より B,C,D,FB,C,D,F は凸位置である。

注意 10.3

一般に、どの 3 点も同一直線上にない 2m−2+12^{m-2}+1 個の点は mm 角形の凸位置の部分集合を含む、というのが Erdős–Szekeres 予想です。m=4m=4(5 点)は上の定理で、m=5m=5(9 点)と m=6m=6(17 点)でも成り立つことが知られています。一般の mm については 2m+o(m)2^{m+o(m)} の上界が知られている段階です(Suk, “On the Erdős–Szekeres convex polygon problem”, J. Amer. Math. Soc. 30 (2017))。予想の全体は未解決のため、ここでは定理にしません。

  • 母関数(形式的冪級数)による数え上げ、指数公式、Lagrange 反転と Cayley の木の公式は 数え上げと母関数、包除原理の一般化(半順序集合上の Möbius 反転)は 半順序集合と Möbius 反転 で学びます。
  • 12 通りの数え方は、対称群の作用による軌道の個数の問題に一般化されます(Burnside の補題・Pólya の数え上げ)。
  • 平面や空間の超平面配置の領域の個数は、超平面配置の特性多項式と Möbius 関数で一般に表されます(Zaslavsky の定理)。
  • ハッピーエンド問題は組合せ幾何と Ramsey 型の問題の入口です。

演習 12.1易

男子 4 人、女子 4 人が円形のテーブルに座る。回転して一致するものは同じとみなす。男女が交互に座る座り方は何通りか。

解答

先に男子 4 人の円順列(定理 5.1)を決める。(4−1)!=6(4-1)!=6 通り。男子の間の 4 つの空き席に女子を並べる並べ方は 4!=244!=24 通り。男子を先に固定した時点で回転が消えているので、積の法則で 6×24=1446\times24=144 通り。

演習 12.2標準

x1+x2+x3+x4=10x_1+x_2+x_3+x_4=10 を満たす非負整数の組のうち、x1≥2x_1\ge2 かつ x2≥1x_2\ge1 を満たすものは何個あるか。

解答

y1=x1−2y_1=x_1-2、y2=x2−1y_2=x_2-1 と置くと、y1,y2,x3,x4≥0y_1,y_2,x_3,x_4\ge0 で y1+y2+x3+x4=7y_1+y_2+x_3+x_4=7。定理 6.1 より (7+4−17)=(103)=120\binom{7+4-1}{7}=\binom{10}{3}=120 個。

演習 12.3標準

区別できる 5 個の玉を、区別できる 3 個の箱に、空の箱がないように入れる入れ方は何通りか。また箱を区別しない場合は何通りか。

解答

定理 7.1 から 35−3⋅25+3⋅15−0=243−96+3=1503^5-3\cdot2^5+3\cdot1^5-0=243-96+3=150 通り。箱を区別しないと、定理 8.3 の(玉 D・箱 I)全射の欄から S(5,3)=150/3!=25S(5,3)=150/3!=25 通り。

演習 12.4標準

一般の位置にある平面 55 枚が空間を分ける領域の個数を求めよ。

解答

定理 9.3 から 1+5+(52)+(53)=1+5+10+10=261+5+\binom52+\binom53=1+5+10+10=26 個。

  1. Ronald L. Graham, Donald E. Knuth, Oren Patashnik, Concrete Mathematics, 2nd ed., Addison-Wesley, 1994 — 第 5 章(二項係数)、第 6 章(Stirling 数)。
  2. Richard P. Stanley, Enumerative Combinatorics, Volume 1, 2nd ed., Cambridge University Press, 2012 — 第 1 章(玉と箱の 12 通りの数え方 §1.9)。
  3. Martin Aigner, Günter M. Ziegler, Proofs from THE BOOK, Springer — 鳩の巣原理と二重の数え上げ、Erdős–Szekeres の章。
  4. Jiří Matoušek, Lectures on Discrete Geometry, Springer, 2002 — 超平面配置と凸位置の点の章。
  5. W. Morris, V. Soifer, “The Erdős–Szekeres problem on points in convex position — a survey”, Bull. Amer. Math. Soc. 37 (2000).

このテーマの 100 本ノック(80 問)

執筆: Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 2 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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