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ランダムクラスター表示と浸透:FK 表示・Edwards–Sokal 結合・FKG による比較と長距離模型

対象読者: 本テーマ第 3 章(Ising 模型と Peierls の議論)と、Griffiths・FKG などの相関不等式を学んだ修士課程の人。浸透理論の予備知識は仮定しません。

前提となる記事:Ising 模型と Peierls の議論:1 次元の一意性と 2 次元以上の相の共存、相関不等式:Griffiths・GKS・FKG・Lebowitz と無限体積極限

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磁石の模型で「隣どうしが揃いやすい」という性質を、格子の辺を「つなぐ」「つながない」とランダムに決める問題に言い換えると、磁石の性質が「大きなつながりができるか」という問いに変わります。この記事は、その言い換えを正確に述べ、道や輪郭の数え上げだけで高温・低温での磁化の有無を判定し、さらに遠くまで届く結合のある 1 次元の模型にまで進みます。

  • FK 表示(定理 3.1): qq 状態 Potts 模型(各点が qq 色のどれかをとり、隣り合う点が同じ色だと有利になる模型。q=2q=2 が Ising 模型)は、辺を確率的に開閉するランダムクラスター模型 φp,q(ω)∝∏epeωe(1−pe)1−ωe qk(ω)\varphi_{p,q}(\omega)\propto\prod_ep_e^{\omega_e}(1-p_e)^{1-\omega_e}\,q^{k(\omega)}(kk はクラスターの個数)と、Edwards–Sokal 結合で結ばれます。スピンの相関は連結確率になり、Ising 模型では ⟨σxσy⟩=φ(x↔y)\langle\sigma_x\sigma_y\rangle=\varphi(x\leftrightarrow y)、++ 境界条件の磁化は「境界とつながる確率」です。
  • FKG(定理 4.2): q≥1q\ge1 ならランダムクラスター測度は FKG の束条件を満たします。鍵はクラスターの個数の超モジュラ性(辺が多い配置ほど、辺を 1 本足したときのクラスター数の減り方が小さい、という性質)k(ω∨η)+k(ω∧η)≥k(ω)+k(η)k(\omega\vee\eta)+k(\omega\wedge\eta)\ge k(\omega)+k(\eta) です。
  • 比較不等式(定理 4.4): q≥1q\ge1 では φp,q\varphi_{p,q} は独立浸透 PpP_p で上から、Pp′P_{p'}(p′=p/(p+q(1−p))p'=p/(p+q(1-p)))で下から確率的に抑えられます。これだけで、Ising 模型の高温での磁化の消失(経路の数え上げ)と低温での自発磁化(Peierls の章 の輪郭の数え上げ)が得られます。
  • 長距離模型: 1 次元で ∑rr pr<∞\sum_rr\,p_r<\infty なら浸透は起きません(命題 6.2)。境界の pr∼β/r2p_r\sim\beta/r^2 では、Aizenman–Newman と Aizenman–Chayes–Chayes–Newman(ACCN)が「浸透確率 θ\theta は 00 か θ2β≥1\theta^2\beta\ge1」という二分律を示し、浸透転移と 1/r21/r^2 Ising 模型の磁化が臨界点で不連続であることを導きました(主張と骨格)。

Ising 模型の相関不等式(Griffiths・FKG・Lebowitz)や、ランダムカレント表示 は、スピンの相関を組合せ的な対象(カレントの経路)の言葉に書き換えて評価する方法でした。Fortuin と Kasteleyn(1969–72)は、別の書き換えを見つけました。各辺の Boltzmann 因子を「辺を開く」「閉じる」の和に分解すると、Potts 模型は辺の浸透模型に化け、スピンの長距離秩序は「無限に大きなクラスターがあること」に対応します。

この表示の利点は 3 つあります。(1) スピンの値の対称性によらない議論になり、Ising だけでなく qq 状態 Potts 模型を一様に扱えます。(2) 独立浸透との比較という強力な道具が使えます。(3) Swendsen–Wang のクラスター更新(クラスターごとにまとめてスピンを塗り替えるモンテカルロ法。格子モンテカルロ法)は Edwards–Sokal 結合そのものです。本章では、この表示を証明し、比較不等式から相転移の上下からの評価を導き、最後に長距離模型での不連続転移の話題を紹介します。

G=(V,E)G=(V,E) を有限グラフ、W⊂VW\subset V を(空でもよい)境界の頂点の集合とします。辺の配置 ω∈{0,1}E\omega\in\{0,1\}^E で ωe=1\omega_e=1 の辺を開、00 を閉と呼び、開いた辺の集合も ω\omega と書きます。x↔yx\leftrightarrow y は「xx と yy が開いた辺の道でつながる」を、x↔Wx\leftrightarrow W は「xx が WW のある点とつながる」を表します。k(ω)k(\omega) はグラフ (V,ω)(V,\omega) の連結成分(クラスター、孤立点を含む)の個数、kW(ω)k_W(\omega) はそのうち WW と交わらないものの個数です。

定義 2.1(ランダムクラスター測度)↗

p=(pe)e∈Ep=(p_e)_{e\in E}、pe∈(0,1)p_e\in(0,1)、q>0q>0 について

φp,qW(ω)=1Zp,qW∏e∈Epeωe(1−pe)1−ωe  qkW(ω)\varphi^W_{p,q}(\omega)=\frac1{Z^W_{p,q}}\prod_{e\in E}p_e^{\omega_e}(1-p_e)^{1-\omega_e}\;q^{k_W(\omega)}

をランダムクラスター測度(FK 測度)という。W=∅W=\emptyset のとき(k∅=kk_\emptyset=k)を自由境界条件、W≠∅W\ne\emptyset のときを配線(wired)境界条件と呼ぶ。q=1q=1 では独立な Bernoulli 浸透 PpP_p である。

配線境界条件の名前は、WW と交わるクラスターをすべて 1 つに数える(WW の点を外で配線してつないだと見る)ことから来ています。q>1q>1 ではクラスターが多い配置が優遇され、辺が閉じやすくなります。

Potts 模型. q∈{2,3,… }q\in\{2,3,\dots\}、Je≥0J_e\ge0、β>0\beta>0 とし、σ∈{1,…,q}V\sigma\in\{1,\dots,q\}^V で WW 上は σ≡1\sigma\equiv1 のものに

πW(σ)∝∏e={x,y}∈Eexp⁡(βJe(1{σx=σy}−1))\pi^W(\sigma)\propto\prod_{e=\{x,y\}\in E}\exp\bigl(\beta J_e(\mathbf{1}\{\sigma_x=\sigma_y\}-1)\bigr)

を与えたものを、境界 WW で色 11 に固定した Potts 模型と呼びます。q=2q=2 で色 1,21,2 を +1,−1+1,-1 と読めば、σxσy=2⋅1{σx=σy}−1\sigma_x\sigma_y=2\cdot\mathbf{1}\{\sigma_x=\sigma_y\}-1 なので、結合 Je/2J_e/2 の Ising 模型です。

pe=1−e−βJep_e=1-e^{-\beta J_e} とおくと、各辺の因子は

eβJe(1{σx=σy}−1)=(1−pe)+pe1{σx=σy}e^{\beta J_e(\mathbf{1}\{\sigma_x=\sigma_y\}-1)}=(1-p_e)+p_e\mathbf{1}\{\sigma_x=\sigma_y\}

と分解できます(一致すれば 11、しなければ 1−pe=e−βJe1-p_e=e^{-\beta J_e})。右辺の 2 項を「辺を閉じる」「辺を開く(ただし両端の色が等しいとき)」と読むのが FK 表示の出発点です。

定理 3.1(Edwards–Sokal 結合)✓

q∈{2,3,… }q\in\{2,3,\dots\}、pe=1−e−βJe∈(0,1)p_e=1-e^{-\beta J_e}\in(0,1) とし、WW 上で σ≡1\sigma\equiv1 となる (σ,ω)(\sigma,\omega) に

P(σ,ω)=1Z∏e={x,y}∈E((1−pe)1{ωe=0}+pe1{ωe=1}1{σx=σy})\mathbb{P}(\sigma,\omega)=\frac1{\mathcal{Z}}\prod_{e=\{x,y\}\in E}\Bigl((1-p_e)\mathbf{1}\{\omega_e=0\}+p_e\mathbf{1}\{\omega_e=1\}\mathbf{1}\{\sigma_x=\sigma_y\}\Bigr)

を与える。このとき次が成り立つ。

(i) σ\sigma の周辺分布は Potts 模型 πW\pi^W である。

(ii) ω\omega の周辺分布はランダムクラスター測度 φp,qW\varphi^W_{p,q} である。

(iii) ω\omega を与えたとき、σ\sigma の条件付き分布は「WW と交わるクラスターは色 11、他のクラスターには独立に一様な色を塗り、クラスター内は同色」である。

(iv) σ\sigma を与えたとき、ωe\omega_e は独立で、σx=σy\sigma_x=\sigma_y の辺では確率 pep_e で開、σx≠σy\sigma_x\ne\sigma_y の辺は閉である。

証明(定理 3.1)

(i) σ\sigma を固定して ω\omega について和をとると、辺ごとの和 ∑ωe∈{0,1}\sum_{\omega_e\in\{0,1\}} に分かれ、各辺で (1−pe)+pe1{σx=σy}=eβJe(1{σx=σy}−1)(1-p_e)+p_e\mathbf{1}\{\sigma_x=\sigma_y\}=e^{\beta J_e(\mathbf{1}\{\sigma_x=\sigma_y\}-1)}。

(ii) ω\omega を固定すると、P(σ,ω)≠0\mathbb{P}(\sigma,\omega)\ne0 となるのは開いた辺の両端が同色の σ\sigma、すなわちクラスターごとに一定の σ\sigma で、そのとき値は ∏epeωe(1−pe)1−ωe/Z\prod_ep_e^{\omega_e}(1-p_e)^{1-\omega_e}/\mathcal{Z} です。WW と交わるクラスターの色は 11 に決まり、他の kW(ω)k_W(\omega) 個のクラスターの色は自由なので、そのような σ\sigma は qkW(ω)q^{k_W(\omega)} 個あります。

(iii) (ii) の計算から、ω\omega を固定したとき許される σ\sigma はすべて同じ重みをもち、それはちょうど述べた塗り方です。

(iv) σ\sigma を固定すると P(σ,ω)\mathbb{P}(\sigma,\omega) は辺ごとの因子の積で、σx=σy\sigma_x=\sigma_y の辺の因子は ωe=0,1\omega_e=0,1 に対して 1−pe,pe1-p_e,p_e、σx≠σy\sigma_x\ne\sigma_y の辺では 1−pe,01-p_e,0 です。

系 3.2(相関は連結確率)✓

上の設定で、x,y∈Vx,y\in V について

π∅(σx=σy)=1q+(1−1q)φp,q∅(x↔y),πW(σx=1)=1q+(1−1q)φp,qW(x↔W).\pi^\emptyset(\sigma_x=\sigma_y)=\frac1q+\Bigl(1-\frac1q\Bigr)\varphi^\emptyset_{p,q}(x\leftrightarrow y),\qquad \pi^W(\sigma_x=1)=\frac1q+\Bigl(1-\frac1q\Bigr)\varphi^W_{p,q}(x\leftrightarrow W).

特に q=2q=2(結合 Je/2J_e/2 の Ising 模型)では

⟨σxσy⟩自由=φp,2∅(x↔y),⟨σx⟩W,+=φp,2W(x↔W).\langle\sigma_x\sigma_y\rangle^{\text{自由}}=\varphi^\emptyset_{p,2}(x\leftrightarrow y),\qquad\langle\sigma_x\rangle^{W,+}=\varphi^W_{p,2}(x\leftrightarrow W).
証明(系 3.2)

(iii) から、x↔yx\leftrightarrow y なら σx=σy\sigma_x=\sigma_y、そうでなければ σx,σy\sigma_x,\sigma_y の少なくとも一方は独立に一様な色なので一致する確率は 1/q1/q です(一方が WW につながり色 11 でも同じ)。P\mathbb{P} について平均すれば第 1 式です。第 2 式も同様で、x↔Wx\leftrightarrow W なら σx=1\sigma_x=1、そうでなければ確率 1/q1/q。Ising では ⟨σxσy⟩=2π(σx=σy)−1\langle\sigma_x\sigma_y\rangle=2\pi(\sigma_x=\sigma_y)-1、⟨σx⟩=2π(σx=1)−1\langle\sigma_x\rangle=2\pi(\sigma_x=1)-1 です。

Ising 模型の ++ 境界条件. Zd\mathbb{Z}^d の最近接 Ising 模型(逆温度 β\beta、結合 J>0J>0、h=0h=0)の Λ⋐Zd\Lambda\Subset\mathbb{Z}^d での ++ 境界条件の分布 μΛ+\mu^+_\Lambda(Peierls の章 の 定義 2.1[Ising 模型と Peierls の議論])は、頂点 V=Λ∪∂outΛV=\Lambda\cup\partial^{\mathrm{out}}\Lambda(∂outΛ\partial^{\mathrm{out}}\Lambda は Λ\Lambda の外で Λ\Lambda に隣接する点)、辺 EΛE_\Lambda(少なくとも一方の端点が Λ\Lambda にある最近接対)、W=∂outΛW=\partial^{\mathrm{out}}\Lambda の上の q=2q=2 の Potts 模型(結合 2J2J)です。よって p=1−e−2βJp=1-e^{-2\beta J} として

⟨σ0⟩Λ+=φp,2W(0↔∂outΛ)\langle\sigma_0\rangle^+_\Lambda=\varphi^{W}_{p,2}(0\leftrightarrow\partial^{\mathrm{out}}\Lambda)

です。自発磁化は「原点が遠くの境界とつながる確率」、すなわち配線ランダムクラスター模型の浸透確率です。

{0,1}E\{0,1\}^E に成分ごとの順序を入れ、ω∨η\omega\vee\eta、ω∧η\omega\wedge\eta を成分ごとの最大・最小(開いた辺の集合としては和・共通部分)とします。関数 ff が増加とは ω≤η⇒f(ω)≤f(η)\omega\le\eta\Rightarrow f(\omega)\le f(\eta)、事象が増加とはその指示関数が増加であることです。{x↔y}\{x\leftrightarrow y\} は増加事象です。

次の補題は、辺を足したときにクラスターの個数がどれだけ減るかを比べるもので、FKG の束条件を確かめるのに使う唯一の入力です。直感的には、辺がすでに多い配置では新しい辺が別々のクラスターをつなぐ機会が少なく、クラスター数の減り方も小さくなります。下の図は 4 頂点の四角形での例で、実線が開いた辺です。

ω:k=2η:k=2ω∨η:k=1ω∧η:k=4
四角形の 4 辺のうち、ω は上と右の 2 辺、η は下と左の 2 辺を開いたもの。クラスター数 k を数えると、k(ω∨η)+k(ω∧η)=1+4=5 ≥ 2+2=k(ω)+k(η) となる。

補題 4.1(クラスターの個数の超モジュラ性)✓

すべての ω,η∈{0,1}E\omega,\eta\in\{0,1\}^E と W⊂VW\subset V について

kW(ω∨η)+kW(ω∧η)≥kW(ω)+kW(η).k_W(\omega\vee\eta)+k_W(\omega\wedge\eta)\ge k_W(\omega)+k_W(\eta).

また、WW と交わるクラスターの個数 NW(ω)=k(ω)−kW(ω)N_W(\omega)=k(\omega)-k_W(\omega) は ω\omega について減少である。

証明(補題 4.1)

W=∅W=\emptyset の場合. 辺 e={x,y}e=\{x,y\} を ω\omega(e∉ωe\notin\omega)に加えると、x,yx,y が ω\omega で別のクラスターなら kk は 11 減り、同じなら変わりません。ω⊂η\omega\subset\eta、e∉ηe\notin\eta のとき、η\eta で x,yx,y が別のクラスターなら ω\omega でも別なので(ω\omega のクラスターは η\eta のクラスターを細分する)、

k(ω)−k(ω∪{e})≥k(η)−k(η∪{e}).k(\omega)-k(\omega\cup\{e\})\ge k(\eta)-k(\eta\cup\{e\}).

有限集合 FF(F∩η=∅F\cap\eta=\emptyset)の辺を 1 本ずつ加えてこれを足し合わせると、k(ω)−k(ω∪F)≥k(η)−k(η∪F)k(\omega)-k(\omega\cup F)\ge k(\eta)-k(\eta\cup F)。ω∧η⊂η\omega\wedge\eta\subset\eta、F=ω∖ηF=\omega\setminus\eta に使うと、(ω∧η)∪F=ω(\omega\wedge\eta)\cup F=\omega、η∪F=ω∨η\eta\cup F=\omega\vee\eta なので

k(ω∧η)−k(ω)≥k(η)−k(ω∨η),k(\omega\wedge\eta)-k(\omega)\ge k(\eta)-k(\omega\vee\eta),

これが主張です。

一般の W≠∅W\ne\emptyset. WW の点を結ぶ新しい辺の集合 FWF_W(WW 上の全域木)を加えたグラフを考えると、WW と交わるクラスターはちょうど 1 つにまとまるので kW(ω)=k(ω∪FW)−1k_W(\omega)=k(\omega\cup F_W)-1 です。ω↦ω∪FW\omega\mapsto\omega\cup F_W は ∨\vee と ∧\wedge を保つので、W=∅W=\emptyset の場合に帰着します。

NWN_W の単調性. 辺を加えるとクラスターは合併するだけなので、WW と交わるクラスターの個数は増えません。

定理 4.2(ランダムクラスター測度の FKG 不等式)✓

q≥1q\ge1 ならば、φp,qW\varphi^W_{p,q} は FKG の束条件(定義 5.1[相関不等式])を満たす。したがって増加関数 f,gf,g について φp,qW(fg)≥φp,qW(f)φp,qW(g)\varphi^W_{p,q}(fg)\ge\varphi^W_{p,q}(f)\varphi^W_{p,q}(g)。

証明(定理 4.2)

φ=φp,qW\varphi=\varphi^W_{p,q} はすべての点で正です(pe∈(0,1)p_e\in(0,1))。∣ω∨η∣+∣ω∧η∣=∣ω∣+∣η∣|\omega\vee\eta|+|\omega\wedge\eta|=|\omega|+|\eta| は辺ごとに成り立つので、pep_e の因子は束条件の両辺で打ち消し合い、

φ(ω∨η)φ(ω∧η)φ(ω)φ(η)=qkW(ω∨η)+kW(ω∧η)−kW(ω)−kW(η)≥1\frac{\varphi(\omega\vee\eta)\varphi(\omega\wedge\eta)}{\varphi(\omega)\varphi(\eta)}=q^{k_W(\omega\vee\eta)+k_W(\omega\wedge\eta)-k_W(\omega)-k_W(\eta)}\ge1

です(補題 4.1、q≥1q\ge1)。あとは FKG 不等式(定理 5.3[相関不等式])です。

測度 μ,ν\mu,\nu について、すべての増加関数 ff で μ(f)≤ν(f)\mu(f)\le\nu(f) のとき μ⪯ν\mu\preceq\nu(ν\nu が μ\mu を確率的に優越する)と書きます。比較には次の単純な観察を繰り返し使います。

補題 4.3(増加関数で傾けると大きくなる)✓

μ\mu が FKG の束条件を満たし、g>0g>0 が増加関数ならば、μg=gμ/μ(g)\mu_g=g\mu/\mu(g) について μ⪯μg\mu\preceq\mu_g。g>0g>0 が減少関数なら μg⪯μ\mu_g\preceq\mu。

証明(補題 4.3)

増加関数 ff について、FKG 不等式から μ(fg)≥μ(f)μ(g)\mu(fg)\ge\mu(f)\mu(g)、すなわち μg(f)≥μ(f)\mu_g(f)\ge\mu(f)。gg が減少なら FKG 不等式の後半(定理 5.3[相関不等式])で不等号が逆になります。

次の定理のねらいは、ランダムクラスター測度を、扱いやすい独立浸透で上下から挟むことです。上側の PpP_p は重み qkWq^{k_W} を外したもの、下側の Pp′P_{p'} は、他の辺の状況によらず 1 本の辺が開く条件付き確率の最小値 p′p' をすべての辺に使ったものと読めます(演習の 1 辺の計算がその様子です)。

定理 4.4(比較不等式)✓

q≥1q\ge1 とし、pe′=pepe+q(1−pe)p'_e=\dfrac{p_e}{p_e+q(1-p_e)} とおく。

(i) Pp′⪯φp,qW⪯PpP_{p'}\preceq\varphi^W_{p,q}\preceq P_p(PpP_p は独立な Bernoulli 浸透)。

(ii) φp,q∅⪯φp,qW\varphi^\emptyset_{p,q}\preceq\varphi^W_{p,q}(自由 ⪯\preceq 配線)。

(iii) pe≤p~ep_e\le\tilde p_e(すべての ee)ならば φp,qW⪯φp~,qW\varphi^W_{p,q}\preceq\varphi^W_{\tilde p,q}。

証明(定理 4.4)

(i) 上側. φp,qW\varphi^W_{p,q} は PpP_p を g=qkWg=q^{k_W} で傾けたものです。辺を加えると kWk_W は増えない(クラスターが合併するだけ)ので gg は減少で、PpP_p は束条件を満たす(q=1q=1 の場合)ので 補題 4.3 から φp,qW⪯Pp\varphi^W_{p,q}\preceq P_p。

(i) 下側. pe/(1−pe)=q pe′/(1−pe′)p_e/(1-p_e)=q\,p'_e/(1-p'_e) から

∏epeωe(1−pe)1−ωeqkW(ω)=(∏e1−pe1−pe′)∏epe′ωe(1−pe′)1−ωe  q∣ω∣+kW(ω).\prod_ep_e^{\omega_e}(1-p_e)^{1-\omega_e}q^{k_W(\omega)}=\Bigl(\prod_e\frac{1-p_e}{1-p'_e}\Bigr)\prod_e{p'_e}^{\omega_e}(1-p'_e)^{1-\omega_e}\;q^{|\omega|+k_W(\omega)}.

辺を 1 本加えると ∣ω∣|\omega| は 11 増え、kWk_W は高々 11 減るので ∣ω∣+kW(ω)|\omega|+k_W(\omega) は増加です。よって φp,qW\varphi^W_{p,q} は Pp′P_{p'} を増加関数で傾けたもので、Pp′⪯φp,qWP_{p'}\preceq\varphi^W_{p,q}。

(ii) qkW=qkq−NWq^{k_W}=q^{k}q^{-N_W} で、NWN_W は減少(補題 4.1)なので q−NWq^{-N_W} は増加です。φp,qW\varphi^W_{p,q} は φp,q∅\varphi^\emptyset_{p,q}(定理 4.2 で束条件を満たす)を q−NWq^{-N_W} で傾けたものです。

(iii) φp~,qW\varphi^W_{\tilde p,q} は φp,qW\varphi^W_{p,q} を ∏e(p~e(1−pe)pe(1−p~e))ωe\prod_e\bigl(\frac{\tilde p_e(1-p_e)}{p_e(1-\tilde p_e)}\bigr)^{\omega_e} で傾けたもので、各因子の底は 11 以上なのでこれは増加です。

Zd\mathbb{Z}^d の最近接 Ising 模型(h=0h=0)で p=1−e−2βJp=1-e^{-2\beta J} とおきます。§3 の表示と 定理 4.4 (i) から、すべての有限集合 Λ∋0\Lambda\ni0 について

Pp′(0↔∂outΛ)≤⟨σ0⟩Λ+≤Pp(0↔∂outΛ),p′=p2−p,P_{p'}\bigl(0\leftrightarrow\partial^{\mathrm{out}}\Lambda\bigr)\le\langle\sigma_0\rangle^+_\Lambda\le P_p\bigl(0\leftrightarrow\partial^{\mathrm{out}}\Lambda\bigr),\qquad p'=\frac{p}{2-p},

が成り立ちます(PP はグラフ (V,EΛ)(V,E_\Lambda) 上の独立浸透)。

次の命題は、高温で磁化が消えることを、原点から出る長い開いた道の数え上げで示します。同じ点を二度通らない道(自己回避路)の個数は、1 歩ごとに高々 2d−12d-1 通りの選び方しかないので、(2d−1)p<1(2d-1)p<1 なら長い道が開いている確率は急速に小さくなります。

命題 5.1(経路の数え上げによる高温評価)✓

(2d−1)(1−e−2βJ)<1(2d-1)(1-e^{-2\beta J})<1 ならば、Λn={−n,…,n}d\Lambda_n=\{-n,\dots,n\}^d について ⟨σ0⟩Λn+≤2d2d−1((2d−1)p)n+1→0\langle\sigma_0\rangle^+_{\Lambda_n}\le\frac{2d}{2d-1}\bigl((2d-1)p\bigr)^{n+1}\to0 で、自発磁化 m∗(β)m^*(\beta) は 00 である。

証明(命題 5.1)

0↔∂outΛn0\leftrightarrow\partial^{\mathrm{out}}\Lambda_n なら、00 から出て Λn\Lambda_n の外に達する開いた自己回避路があり、その長さは n+1n+1 以上です。その最初の n+1n+1 歩は長さ n+1n+1 の自己回避路で、その個数は 2d(2d−1)n2d(2d-1)^n 以下(最初の 1 歩は 2d2d 通り、以後は直前の点に戻らないので 2d−12d-1 通り以下)、各路がすべて開である確率は pn+1p^{n+1} です。和の上界をとれば主張の評価になります。m∗=lim⁡n⟨σ0⟩Λn+m^*=\lim_n\langle\sigma_0\rangle^+_{\Lambda_n}(定理 4.2[Ising 模型と Peierls の議論])です。

d=2d=2 ではこの条件は βJ<12log⁡32≈0.203\beta J<\frac12\log\frac32\approx0.203 で、Dobrushin の判定 βJ<artanh⁡14≈0.255\beta J<\operatorname{artanh}\frac14\approx0.255(例 7.6[DLR 条件と Gibbs 測度])より少し弱い結果です。経路の数え上げを独立浸透の臨界値 pc(Zd)p_c(\mathbb{Z}^d) の知識に置き換えれば、p<pcp<p_c で磁化が消えることがわかります。

次の命題は、低温で磁化が残ることを、Peierls の議論と同じ輪郭の数え上げで示します。原点が境界とつながらないとき、原点のクラスターは閉じた辺の閉曲線で囲まれているので、その長さごとに個数を数えて、すべて閉じている確率を足し上げます。

命題 5.2(輪郭の数え上げによる低温評価)✓

d=2d=2 とし、u=e−2βJu=e^{-2\beta J}、y=9(2u1+u)2<1y=9\bigl(\frac{2u}{1+u}\bigr)^2<1 とおく。正方形 Λ={−n,…,n}2\Lambda=\{-n,\dots,n\}^2 について

⟨σ0⟩Λ+≥1−∑j≥22j yj.\langle\sigma_0\rangle^+_\Lambda\ge1-\sum_{j\ge2}2j\,y^j .

特に βJ≥12log⁡11\beta J\ge\frac12\log11 ならば ⟨σ0⟩Λ+≥11/18\langle\sigma_0\rangle^+_\Lambda\ge11/18 で、m∗(β)>0m^*(\beta)>0。

証明(命題 5.2)

1−p′=2(1−p)2−p=2u1+u1-p'=\frac{2(1-p)}{2-p}=\frac{2u}{1+u} です。Pp′P_{p'} のもとで 0↮∂outΛ0\not\leftrightarrow\partial^{\mathrm{out}}\Lambda とし、CC を 00 の開いたクラスターとすると C⊂ΛC\subset\Lambda で、CC から外へ出る辺はすべて閉です。定理 6.1[Ising 模型と Peierls の議論] の証明 (1) と同じく CC の穴を埋めた BB をとると、BB は有限・連結で補集合も連結、0∈B⊂Λ0\in B\subset\Lambda で、∂eB\partial_eB の辺はすべて CC から CC の外への辺なので閉です。独立性から Pp′(∂eB がすべて閉)=(1−p′)∣∂eB∣P_{p'}(\partial_eB\text{ がすべて閉})=(1-p')^{|\partial_eB|} で、同証明 (3) の数え上げ(長さ ℓ\ell の輪郭は ℓ 3ℓ\ell\,3^\ell 個以下、ℓ\ell は 44 以上の偶数)から

Pp′(0↮∂outΛ)≤∑ℓ≥4, ℓ 偶ℓ 3ℓ(1−p′)ℓ=∑j≥22j yj.P_{p'}(0\not\leftrightarrow\partial^{\mathrm{out}}\Lambda)\le\sum_{\ell\ge4,\ \ell\text{ 偶}}\ell\,3^\ell(1-p')^\ell=\sum_{j\ge2}2j\,y^j .

上の下界の不等式と合わせれば主張です。βJ≥12log⁡11\beta J\ge\frac12\log11 なら u≤1/11u\le1/11、2u1+u≤16\frac{2u}{1+u}\le\frac16、y≤14y\le\frac14 で、和は 718\frac7{18} 以下です。

Peierls の議論(定理 6.1[Ising 模型と Peierls の議論])はスピンの反転という Ising に固有の写像を使いましたが、この証明は独立浸透との比較だけを使うので、q≥2q\ge2 の Potts 模型にも同じ形で通ります(p′=p/(p+q(1−p))p'=p/(p+q(1-p)) にするだけ)。

Z\mathbb{Z} の任意の 2 点 x<yx<y を辺で結び、辺 {x,y}\{x,y\} を確率 py−xp_{y-x} で独立に開く長距離浸透を考えます(pr∈[0,1)p_r\in[0,1))。C(0)C(0) を原点の開いたクラスター、θ=P(∣C(0)∣=∞)\theta=P(|C(0)|=\infty) を浸透確率とします。1 次元の最近接浸透(pr=0p_r=0、r≥2r\ge2)では p1<1p_1<1 なら閉じた辺が必ず現れて θ=0\theta=0 ですが、長い辺は閉じた辺を飛び越えます。どのくらい長い辺があれば浸透が起きるかが問題です。

補題 6.1(Kolmogorov の 0-1 法則)✓

(ξi)i∈N(\xi_i)_{i\in\mathbb{N}} を独立な確率変数の列とし、事象 AA がすべての nn について σ(ξi:i>n)\sigma(\xi_i:i>n) に属するとする。このとき P(A)∈{0,1}P(A)\in\{0,1\}。

証明(補題 6.1)

An=σ(ξ1,…,ξn)\mathcal{A}_n=\sigma(\xi_1,\dots,\xi_n) とすると、独立性から An\mathcal{A}_n と σ(ξi:i>n)\sigma(\xi_i:i>n) は独立で、AA は ⋃nAn\bigcup_n\mathcal{A}_n のすべての元と独立です。⋃nAn\bigcup_n\mathcal{A}_n は π-系で σ(ξi:i∈N)∋A\sigma(\xi_i:i\in\mathbb{N})\ni A を生成するので、2 つの測度 B↦P(A∩B)B\mapsto P(A\cap B) と B↦P(A)P(B)B\mapsto P(A)P(B) は π-系の上で一致し、測度の一意性(定理 4.5[測度空間と Carathéodory の拡張定理])から生成された σ-加法族全体で一致します。B=AB=A として P(A)=P(A)2P(A)=P(A)^2。

次の命題の方針は、ある点 k+12k+\frac12 をまたぐ開いた辺が 1 本もない場所が、原点の左右にそれぞれ無限個あれば、原点のクラスターはその間に閉じ込められる、というものです。そのような場所が無限個あることを、0-1 法則と確率の下からの評価で示します。

命題 6.2(短い辺が支配的なら浸透しない)✓

∑r≥1r pr<∞\sum_{r\ge1}r\,p_r<\infty ならば θ=0\theta=0。

証明(命題 6.2)

k∈Zk\in\mathbb{Z} について AkA_k を「x≤k<yx\le k<y となる開いた辺 {x,y}\{x,y\} がない」事象とします。長さ rr の辺で点 k+12k+\frac12 をまたぐものは rr 本なので、独立性から

P(Ak)=∏r≥1(1−pr)r=:δ.P(A_k)=\prod_{r\ge1}(1-p_r)^r=:\delta .

∑rr pr<∞\sum_rr\,p_r<\infty から pr→0p_r\to0 で、pr≤12p_r\le\frac12 では −log⁡(1−pr)≤2pr-\log(1-p_r)\le2p_r なので ∑rr(−log⁡(1−pr))<∞\sum_rr(-\log(1-p_r))<\infty、各因子は正なので δ>0\delta>0 です。

辺に番号を付けて独立な列と見ます。有限個の辺は有限個の AkA_k にしか影響しないので、事象 A+={Ak が無限個の k≥0 で起きる}A^+=\{A_k\text{ が無限個の }k\ge0\text{ で起きる}\} は 補題 6.1 の仮定を満たします。また

P(A+)=lim⁡n→∞P(⋃k≥nAk)≥lim sup⁡kP(Ak)=δ>0P(A^+)=\lim_{n\to\infty}P\Bigl(\bigcup_{k\ge n}A_k\Bigr)\ge\limsup_kP(A_k)=\delta>0

なので P(A+)=1P(A^+)=1。同様に負の側でも、AkA_k が無限個の k<0k<0 で起きる確率は 11 です。両方が起きれば、C(0)C(0) は k−<0≤k+k_-<0\le k_+ となる Ak±A_{k_\pm} により {k−+1,…,k+}\{k_-+1,\dots,k_+\} に閉じ込められて有限です。

系 6.3(短距離的な 1 次元 Ising 模型に自発磁化はない)✓

Z\mathbb{Z} 上の外場 00 の Ising 模型で結合を Jxy=J(∣x−y∣)≥0J_{xy}=J(|x-y|)\ge0、∑rr J(r)<∞\sum_rr\,J(r)<\infty とする。このとき任意の β\beta で lim⁡n⟨σ0⟩{−n,…,n}+=0\lim_n\langle\sigma_0\rangle^+_{\{-n,\dots,n\}}=0。

証明(系 6.3)

§3 の表示を長距離の結合に使います。++ 境界条件は、Λ={−n,…,n}\Lambda=\{-n,\dots,n\} の外の点をすべて WW に含めることに当たり、外の点どうしの結合は分布に影響しないので、外の点を 1 点 ww にまとめ、x∈Λx\in\Lambda と ww を結ぶ辺を「xx から外への辺のどれかが開」と読み替えられます。定理 4.4 (i) から、pr=1−e−2βJ(r)≤2βJ(r)p_r=1-e^{-2\beta J(r)}\le2\beta J(r) の独立長距離浸透について

⟨σ0⟩Λ+≤Pp(0 が Λ の外の点とつながる).\langle\sigma_0\rangle^+_\Lambda\le P_p\bigl(0\text{ が }\Lambda\text{ の外の点とつながる}\bigr).

右辺の事象は nn について減少し、その共通部分は {C(0) は有界でない}={∣C(0)∣=∞}\{C(0)\text{ は有界でない}\}=\{|C(0)|=\infty\} なので、右辺は θ\theta に収束します。∑rr pr≤2β∑rr J(r)<∞\sum_rr\,p_r\le2\beta\sum_rr\,J(r)<\infty なので 命題 6.2 から θ=0\theta=0。(無限個の辺をもつグラフへの比較不等式の適用は、Λ\Lambda の外への辺の確率を有限個の辺にまとめれば有限グラフの場合に帰着します。)

この境界にあるのが pr∼β/r2p_r\sim\beta/r^2 です。∑rr⋅r−2\sum_rr\cdot r^{-2} は対数発散するので 命題 6.2 は使えず、実際 β\beta と短い辺の確率しだいで浸透が起こりえます。

条件 θ2β+≥1\theta^2\beta^+\ge1 に θ\theta の二乗が現れるのは、近くにある 2 つの区間の両方が無限クラスターに属する必要があり、その割合がそれぞれ θ\theta だからです(骨格は後の注意で述べます)。この定理の証明は本章では与えず、主張と骨格だけを述べます。

定理 6.4(1/r² 浸透の二分律(Aizenman–Newman, ACCN の主張))※

1 次元の長距離浸透で sup⁡rpr<1\sup_rp_r<1、β+=lim sup⁡r→∞r2pr<∞\beta^+=\limsup_{r\to\infty}r^2p_r<\infty とする。

(i) β+≤1\beta^+\le1 ならば、短い辺の確率がどれほど 11 に近くても θ=0\theta=0(Aizenman–Newman 1986)。

(ii) θ=0\theta=0 または θ2β+≥1\theta^2\beta^+\ge1(Aizenman–Newman 1986)。

(iii) lim inf⁡rr2pr>1\liminf_rr^2p_r>1 のとき、p1p_1 が十分 11 に近ければ θ>0\theta>0(Newman–Schulman 1986)。

したがって、prp_r をパラメータについて連続かつ単調に増やしていく族では、浸透確率は臨界点で 00 から 1/β+1/\sqrt{\beta^+} 以上へ跳ぶ。Aizenman–Chayes–Chayes–Newman(1988)は、同じ二分律をランダムクラスター表示を通じて結合 J(r)∼J+/r2J(r)\sim J^+/r^2 の 1 次元 Ising・Potts 模型に移し、自発磁化が臨界点で不連続である(Thouless 効果)ことを示した。

注意 6.5(証明の骨格と所在)

証明は本章では与えません(原論文を参照)。骨格は次のとおりです。

  1. ブロックの繰り込み. 長さ LL の区間 2 つが距離 LL 程度離れているとき、その間の辺の本数の期待値は ∑x,yβ/(y−x)2\sum_{x,y}\beta/(y-x)^2 の程度で、LL によらない定数になります(1/r21/r^2 がスケール不変であることの表れ)。各区間で無限クラスターに属する点の割合が θ\theta なら、無限クラスターどうしを結ぶ辺の数はおよそ θ2β\theta^2\beta の定数倍です。
  2. 連結の伝播と切断. θ2β+<1\theta^2\beta^+<1 だと、スケールを L→2L→4L→⋯L\to2L\to4L\to\cdots と上げるごとに「隣のブロックの無限クラスターとつながりそこなう」確率が一定以上残り、それが無限回起きて無限クラスターが切れる、という矛盾を導きます。この評価には、有限体積の連結確率についての再帰的な不等式を使います。
  3. Ising への移植. q≥1q\ge1 のランダムクラスター測度は独立浸透の比較(定理 4.4)と FKG(定理 4.2)を満たすので、独立性の代わりにこれらの単調性を使って同じ議論が通ります。

Dyson(1969)は J(r)∼r−sJ(r)\sim r^{-s}(1<s<21<s<2)の 1 次元 Ising 模型に相転移があることを示し、Fröhlich–Spencer(1982)は s=2s=2 で相転移と Thouless 効果を示しました。s>2s>2 では 系 6.3 により相転移はありません。

演習 7.1易

辺 e={x,y}e=\{x,y\} 以外の辺の配置 ξ\xi を固定したとき、φp,q∅(ωe=1∣ξ)\varphi^\emptyset_{p,q}(\omega_e=1\mid\xi) は、ξ\xi で x↔yx\leftrightarrow y なら pep_e、そうでなければ pe/(pe+q(1−pe))p_e/(p_e+q(1-p_e)) であることを示してください。これと 定理 4.4 (i) の p′p' との関係を説明してください。

解答

ωe=1\omega_e=1 と 00 の重みの比は pe1−peqk(ξ∪{e})−k(ξ)\frac{p_e}{1-p_e}q^{k(\xi\cup\{e\})-k(\xi)} です。ξ\xi で x↔yx\leftrightarrow y なら kk は変わらず比は pe/(1−pe)p_e/(1-p_e)、条件付き確率は pep_e。そうでなければ kk が 11 減り、比は pe/(q(1−pe))p_e/(q(1-p_e))、条件付き確率は pe/(pe+q(1−pe))=pe′p_e/(p_e+q(1-p_e))=p'_e です。q≥1q\ge1 では pe′≤pep'_e\le p_e なので、各辺の条件付き確率はつねに [pe′,pe][p'_e,p_e] に入ります。これは比較 Pp′⪯φ⪯PpP_{p'}\preceq\varphi\preceq P_p の「1 辺ずつの」版で、Holley の不等式を使えばここから 定理 4.4 (i) を導くこともできます。

演習 7.2易

2 頂点 1 辺のグラフで、qq 状態 Potts 模型の π(σx=σy)\pi(\sigma_x=\sigma_y) を直接計算し、系 3.2 の右辺と一致することを確かめてください。

解答

直接計算では、一致する qq 通りの配位の重みが 11、一致しない q(q−1)q(q-1) 通りの重みが e−βJ=1−pe^{-\beta J}=1-p なので π(σx=σy)=qq+q(q−1)(1−p)=11+(q−1)(1−p)\pi(\sigma_x=\sigma_y)=\frac{q}{q+q(q-1)(1-p)}=\frac1{1+(q-1)(1-p)}。ランダムクラスター側では φ(ωe=1)=pqpq+(1−p)q2=pp+q(1−p)\varphi(\omega_e=1)=\frac{pq}{pq+(1-p)q^2}=\frac{p}{p+q(1-p)} で、

1q+(1−1q)pp+q(1−p)=p+q(1−p)+(q−1)pq(p+q(1−p))=qq(p+q(1−p))=11+(q−1)(1−p).\frac1q+\Bigl(1-\frac1q\Bigr)\frac{p}{p+q(1-p)}=\frac{p+q(1-p)+(q-1)p}{q(p+q(1-p))}=\frac{q}{q(p+q(1-p))}=\frac1{1+(q-1)(1-p)}.

演習 7.3標準

定理 3.1 の (iii)(iv) を交互に使う Markov 連鎖(σ\sigma から (iv) で ω\omega を引き、ω\omega から (iii) で新しい σ\sigma を引く)が Potts 模型 πW\pi^W を定常分布にもつことを示してください(Swendsen–Wang 法)。

解答

σ∼πW\sigma\sim\pi^W とすると、(i) から σ\sigma は結合分布 P\mathbb{P} の σ\sigma-周辺分布に従い、(iv) で引いた ω\omega との組 (σ,ω)(\sigma,\omega) は P\mathbb{P} に従います。したがって ω\omega は P\mathbb{P} の ω\omega-周辺分布に従い、(iii) で引いた σ′\sigma' との組 (σ′,ω)(\sigma',\omega) も P\mathbb{P} に従います。よって σ′∼πW\sigma'\sim\pi^W です。1 ステップでクラスター全体の色を一度に変えられるので、臨界点の近くでも 1 点ずつの更新より速く混ざることが知られています。

  • G. Grimmett, The Random-Cluster Model, Springer, 2006 — 第 1 章(Edwards–Sokal 結合)、第 2・3 章(FKG と比較不等式)。
  • H. Duminil-Copin, “Lectures on the Ising and Potts models on the hypercubic lattice”, 2017(講義録). arXiv:1707.00520
  • R. G. Edwards, A. D. Sokal, “Generalization of the Fortuin–Kasteleyn–Swendsen–Wang representation and Monte Carlo algorithm”, Physical Review D 38 (1988), 2009–2012.
  • M. Aizenman, C. M. Newman, “Discontinuity of the percolation density in one dimensional 1/|x−y|² percolation models”, Communications in Mathematical Physics 107 (1986), 611–647.
  • M. Aizenman, J. T. Chayes, L. Chayes, C. M. Newman, “Discontinuity of the magnetization in one-dimensional 1/|x−y|² Ising and Potts models”, Journal of Statistical Physics 50 (1988), 1–40.
  • C. M. Newman, L. S. Schulman, “One dimensional 1/|j−i|^s percolation models: the existence of a transition for s≤2”, Communications in Mathematical Physics 104 (1986), 547–571.

このテーマの 100 本ノック(50 問)

執筆: Claude Code(Opus 5.5)、Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 2 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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