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Schwarzschild 解と太陽系での検証:Birkhoff の定理から近日点移動・光の偏向・赤方偏移まで

対象読者: 本テーマ第 1〜2 章のテンソル解析と Einstein 方程式を学び、ニュートン力学の中心力による軌道運動(保存量・軌道方程式)を知っている人。

前提となる記事:Einstein 方程式:ビアンキ恒等式、作用原理による導出、ニュートン極限、線形化重力、曲がった時空のテンソル解析:計量・共変微分・測地線・曲率を等価原理から組み立てる

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太陽のまわりを回る水星の軌道は、ニュートンの理論で計算した楕円からごくわずかにずれていきます。この記事では、太陽のように丸い天体のまわりの時空を一般相対性理論で厳密に求め、そのずれが何秒角になるかを実際に計算します。同じ時空を使って、太陽のそばを通る光がどれだけ曲がるか、太陽表面から来る光の色がどれだけ変わるかも求めます。

  • 球対称で真空の Einstein 方程式の解は、自動的に静的になり、rs=2GM/c2r_s=2GM/c^2 をただ 1 つのパラメータとする Schwarzschild 解に限られます。これが Birkhoff の定理で、Ricci テンソルの成分 4 個を計算するだけで証明できます(定理 3.1)。
  • 帰結として、球対称な空洞の内側は平坦であり(系 3.3)、球対称に脈動する星は重力波を出しません。
  • 測地線の保存量 E, LE,\ L から、軌道方程式 u′′+u=GMℓ2+3GMc2u2u''+u=\dfrac{GM}{\ell^2}+\dfrac{3GM}{c^2}u^2 が得られます(命題 4.2)。右辺の u2u^2 の項がニュートン力学にない補正です。
  • この補正により、楕円軌道は 1 周ごとに Δφ=6πGMc2a(1−e2)\Delta\varphi=\dfrac{6\pi GM}{c^2a(1-e^2)} だけ回ります(定理 5.1)。水星では 100 年あたり 4343 秒角で、19 世紀から知られていた説明のつかない余りと一致します。
  • 光の軌道は u′′+u=3GMc2u2u''+u=\dfrac{3GM}{c^2}u^2 に従い、太陽の縁をかすめる光は 4GMc2b=1.75′′\dfrac{4GM}{c^2b}=1.75'' 曲がります(定理 6.1)。静止した発信者と観測者の間の振動数比は f(re)/f(ro)\sqrt{f(r_e)/f(r_o)} です(定理 7.1)。

一般相対性理論が提出された 1915 年、確かめられていたのは水星の近日点移動だけでした。他の惑星の摂動を差し引いても、水星の近日点は 100 年あたり 43 秒角ほど余分に動いていました。ニュートン理論に未知の惑星(ヴァルカン)を足す試みは失敗に終わっていました。アインシュタインは場の方程式を完成させた直後に、この数値を近似解から導いて 43 秒角を得ました。

その直後、シュヴァルツシルトは静的球対称な真空解を厳密に求め、同じ計算をはるかに見通しよく行える土台を与えました。本記事は、この解を方程式から導き(§2〜§3)、それを使って 3 つの検証を行います(§4〜§7)。

検証結果本記事の節
水星の近日点移動100 年あたり 42.98′′42.98''§5
太陽による光の偏向1.75′′1.75''(1919 年の日食で確認)§6
重力赤方偏移振動数比 f(re)/f(ro)\sqrt{f(r_e)/f(r_o)}§7

使う道具はすべて前の 2 章のものです。曲がった時空のテンソル解析の測地線と曲率、Einstein 方程式の真空方程式 Rμν=0R_{\mu\nu}=0(定理 5.1[Einstein 方程式] の証明で導いたトレース反転形で Tμν=0T_{\mu\nu}=0 としたもの)です。座標は xμ=(x0,r,θ,φ)x^\mu=(x^0,r,\theta,\varphi)、x0=ctx^0=ct です。

2. 球対称な計量と Ricci テンソル

Section titled “2. 球対称な計量と Ricci テンソル”

球対称性は、「空間の回転 SO(3)SO(3) が計量を保つ」ことです。このとき各点を通る回転の軌道は球面になります。その球面の面積が 4πr24\pi r^2 となるように動径座標 rr を取ります(面積半径)。これを座標系の選び方として採用します。

定義 2.1(球対称な計量)↗

計量が球対称であるとは、座標 (x0,r,θ,φ)(x^0,r,\theta,\varphi) が存在して、x0,rx^0,r の関数 A,B,CA,B,C により

ds2=−A (dx0)2+2C dx0dr+B dr2+r2(dθ2+sin⁡2θ dφ2)ds^2=-A\,(dx^0)^2+2C\,dx^0dr+B\,dr^2+r^2\bigl(d\theta^2+\sin^2\theta\,d\varphi^2\bigr)

と書けることをいう。ここで rr は球面 {x0,r=一定}\{x^0,r=\text{一定}\} の面積が 4πr24\pi r^2 となる座標、A>0A>0、B>0B>0 とする。

交差項 dx0drdx^0dr は座標の取り替えで消せます。

補題 2.2(交差項の除去)✓

定義 2.1 の計量は、時間座標を x0→x~0(x0,r)x^0\to\tilde x^0(x^0,r) と取り替えることで

ds2=−e2a(dx~0)2+e2bdr2+r2dΩ2,dΩ2=dθ2+sin⁡2θ dφ2ds^2=-e^{2a}(d\tilde x^0)^2+e^{2b}dr^2+r^2d\Omega^2,\qquad d\Omega^2=d\theta^2+\sin^2\theta\,d\varphi^2

の形(a,ba,b は x~0,r\tilde x^0,r の関数)にできる。

証明(補題 2.2)

x0,rx^0,r の部分を平方完成します。

−A (dx0)2+2C dx0dr+B dr2=−A(dx0−CAdr)2+(B+C2A)dr2.-A\,(dx^0)^2+2C\,dx^0dr+B\,dr^2=-A\Bigl(dx^0-\frac{C}{A}dr\Bigr)^2+\Bigl(B+\frac{C^2}{A}\Bigr)dr^2 .

x0,rx^0,r の 2 変数では、1 形式 ω=dx0−(C/A) dr\omega=dx^0-(C/A)\,dr に積分因子が存在します。常微分方程式 dx0/dr=C/Adx^0/dr=C/A の解曲線の族を考えると、初期値への微分可能依存性(定理 8.1)[解の存在と一意性] により、各解曲線上で一定の値をとる滑らかな関数 x~0(x0,r)\tilde x^0(x^0,r) で ∂x~0/∂x0≠0\partial\tilde x^0/\partial x^0\neq0 となるものが取れます(初期値 x0∣r=r∗x^0|_{r=r_*} そのものを取ればよい)。x~0\tilde x^0 は解曲線上で一定なので、dx~0d\tilde x^0 は ω\omega の関数倍、すなわち dx~0=μ ωd\tilde x^0=\mu\,\omega(μ=∂x~0/∂x0\mu=\partial\tilde x^0/\partial x^0)です。すると第 1 項は −(A/μ2)(dx~0)2-(A/\mu^2)(d\tilde x^0)^2 となり、第 2 項の dr2dr^2 の係数は座標 (x~0,r)(\tilde x^0,r) でもそのままなので、主張の形になります(e2a=A/μ2e^{2a}=A/\mu^2、e2b=B+C2/Ae^{2b}=B+C^2/A)。

以下、x~0\tilde x^0 を x0x^0 と書き直します。ドットを ∂0=∂/∂x0\partial_0=\partial/\partial x^0、プライムを ∂r\partial_r の記号として使い、g=diag(−e2a, e2b, r2, r2sin⁡2θ)g=\mathrm{diag}(-e^{2a},\,e^{2b},\,r^2,\,r^2\sin^2\theta) とします。

次の補題は Birkhoff の定理の証明に使う部品です。証明は長く見えますが、Christoffel 記号をすべて求め、それを Ricci テンソルの式に入れて成分ごとに足し引きする機械的な計算です。結論は 4 つの式だけなので、途中を飛ばして式を眺めるだけでも先へ進めます。

補題 2.3(球対称計量の Ricci テンソル)✓

計量 ds2=−e2a(dx0)2+e2bdr2+r2dΩ2ds^2=-e^{2a}(dx^0)^2+e^{2b}dr^2+r^2d\Omega^2 の Ricci テンソルの成分は、R01R_{01}、R00R_{00}、R11R_{11}、R22R_{22}(R33=sin⁡2θ R22R_{33}=\sin^2\theta\,R_{22})を除いて 00 で、

R01=2b˙r,R00=e2(a−b)[a′′+a′2−a′b′+2a′r]−(b¨+b˙2−a˙b˙),R11=−[a′′+a′2−a′b′]+2b′r+e2(b−a)(b¨+b˙2−a˙b˙),R22=e−2b[r(b′−a′)−1]+1\begin{aligned} R_{01}&=\frac{2\dot b}{r},\\ R_{00}&=e^{2(a-b)}\Bigl[a''+a'^2-a'b'+\frac{2a'}{r}\Bigr]-\bigl(\ddot b+\dot b^2-\dot a\dot b\bigr),\\ R_{11}&=-\bigl[a''+a'^2-a'b'\bigr]+\frac{2b'}{r}+e^{2(b-a)}\bigl(\ddot b+\dot b^2-\dot a\dot b\bigr),\\ R_{22}&=e^{-2b}\bigl[r(b'-a')-1\bigr]+1 \end{aligned}

である。

証明(補題 2.3)

Christoffel 記号を 定理 3.4[曲がった時空のテンソル解析] の式から計算します。計量は対角なので Γσμν=12gσσ(∂μgσν+∂νgσμ−∂σgμν)\Gamma^\sigma{}_{\mu\nu}=\tfrac12g^{\sigma\sigma}(\partial_\mu g_{\sigma\nu}+\partial_\nu g_{\sigma\mu}-\partial_\sigma g_{\mu\nu}) で、0 でないものは(下の 2 添字の対称性を除いて)次のとおりです。

Γ000=a˙,Γ001=a′,Γ011=e2(b−a)b˙,Γ100=e2(a−b)a′,Γ101=b˙,Γ111=b′,Γ122=−re−2b,Γ133=−re−2bsin⁡2θ,Γ212=Γ313=1r,Γ233=−sin⁡θcos⁡θ,Γ323=cot⁡θ.\begin{gathered} \Gamma^0{}_{00}=\dot a,\quad\Gamma^0{}_{01}=a',\quad\Gamma^0{}_{11}=e^{2(b-a)}\dot b,\quad \Gamma^1{}_{00}=e^{2(a-b)}a',\quad\Gamma^1{}_{01}=\dot b,\quad\Gamma^1{}_{11}=b',\\ \Gamma^1{}_{22}=-re^{-2b},\quad\Gamma^1{}_{33}=-re^{-2b}\sin^2\theta,\quad \Gamma^2{}_{12}=\Gamma^3{}_{13}=\frac1r,\quad\Gamma^2{}_{33}=-\sin\theta\cos\theta,\quad\Gamma^3{}_{23}=\cot\theta . \end{gathered}

縮約した Christoffel 記号 Γαα0=a˙+b˙\Gamma^\alpha{}_{\alpha0}=\dot a+\dot b、Γαα1=a′+b′+2/r\Gamma^\alpha{}_{\alpha1}=a'+b'+2/r も使います。Rνβ=∂αΓανβ−∂βΓανα+ΓαασΓσνβ−ΓαβσΓσναR_{\nu\beta}=\partial_\alpha\Gamma^\alpha{}_{\nu\beta}-\partial_\beta\Gamma^\alpha{}_{\nu\alpha}+\Gamma^\alpha{}_{\alpha\sigma}\Gamma^\sigma{}_{\nu\beta}-\Gamma^\alpha{}_{\beta\sigma}\Gamma^\sigma{}_{\nu\alpha}(定義 6.1[曲がった時空のテンソル解析] の縮約)を成分ごとに計算します。

R01R_{01}。 ∂αΓα01=∂0a′+∂1b˙\partial_\alpha\Gamma^\alpha{}_{01}=\partial_0a'+\partial_1\dot b、∂1Γα0α=∂1(a˙+b˙)\partial_1\Gamma^\alpha{}_{0\alpha}=\partial_1(\dot a+\dot b) で、差は 00 です。ΓΓ\Gamma\Gamma の項は (a˙+b˙)a′+(a′+b′+2/r)b˙(\dot a+\dot b)a'+(a'+b'+2/r)\dot b から Γα0σΓσ1α=a˙a′+2a′b˙+b˙b′\Gamma^\alpha{}_{0\sigma}\Gamma^\sigma{}_{1\alpha}=\dot aa'+2a'\dot b+\dot bb' を引いて 2b˙/r2\dot b/r になります。

R00R_{00}。 ∂αΓα00=a¨+e2(a−b)[a′′+2a′(a′−b′)]\partial_\alpha\Gamma^\alpha{}_{00}=\ddot a+e^{2(a-b)}[a''+2a'(a'-b')]、∂0Γα0α=a¨+b¨\partial_0\Gamma^\alpha{}_{0\alpha}=\ddot a+\ddot b、ΓαασΓσ00=(a˙+b˙)a˙+e2(a−b)a′(a′+b′+2/r)\Gamma^\alpha{}_{\alpha\sigma}\Gamma^\sigma{}_{00}=(\dot a+\dot b)\dot a+e^{2(a-b)}a'(a'+b'+2/r)、Γα0σΓσ0α=a˙2+2e2(a−b)a′2+b˙2\Gamma^\alpha{}_{0\sigma}\Gamma^\sigma{}_{0\alpha}=\dot a^2+2e^{2(a-b)}a'^2+\dot b^2 です。足し引きすると、空間微分を含む項が e2(a−b)[a′′+a′2−a′b′+2a′/r]e^{2(a-b)}[a''+a'^2-a'b'+2a'/r]、時間微分を含む項が −b¨−b˙2+a˙b˙-\ddot b-\dot b^2+\dot a\dot b になります。

R11R_{11}。 ∂αΓα11=∂0(e2(b−a)b˙)+b′′\partial_\alpha\Gamma^\alpha{}_{11}=\partial_0(e^{2(b-a)}\dot b)+b''、∂1Γα1α=a′′+b′′−2/r2\partial_1\Gamma^\alpha{}_{1\alpha}=a''+b''-2/r^2、ΓαασΓσ11=(a˙+b˙)e2(b−a)b˙+(a′+b′+2/r)b′\Gamma^\alpha{}_{\alpha\sigma}\Gamma^\sigma{}_{11}=(\dot a+\dot b)e^{2(b-a)}\dot b+(a'+b'+2/r)b'、Γα1σΓσ1α=a′2+2e2(b−a)b˙2+b′2+2/r2\Gamma^\alpha{}_{1\sigma}\Gamma^\sigma{}_{1\alpha}=a'^2+2e^{2(b-a)}\dot b^2+b'^2+2/r^2 です。1/r21/r^2 の項は打ち消し合い、結果は主張のとおりです。

R22R_{22}。 ∂1Γ122=−e−2b+2rb′e−2b\partial_1\Gamma^1{}_{22}=-e^{-2b}+2rb'e^{-2b}、∂2Γα2α=∂θcot⁡θ=−1/sin⁡2θ\partial_2\Gamma^\alpha{}_{2\alpha}=\partial_\theta\cot\theta=-1/\sin^2\theta、Γαα1Γ122=−re−2b(a′+b′+2/r)\Gamma^\alpha{}_{\alpha1}\Gamma^1{}_{22}=-re^{-2b}(a'+b'+2/r)、Γα2σΓσ2α=−2e−2b+cot⁡2θ\Gamma^\alpha{}_{2\sigma}\Gamma^\sigma{}_{2\alpha}=-2e^{-2b}+\cot^2\theta です。1/sin⁡2θ−cot⁡2θ=11/\sin^2\theta-\cot^2\theta=1 に注意してまとめると R22=e−2b[r(b′−a′)−1]+1R_{22}=e^{-2b}[r(b'-a')-1]+1 です。

残りの成分について。計量は回転で不変なので、RμνR_{\mu\nu} も回転で不変です。S2S^2 上に不変なベクトルは存在せず、不変な対称 2 階テンソルは計量の定数倍に限られます。よって R0A=R1A=0R_{0A}=R_{1A}=0(A=θ,φA=\theta,\varphi)、RAB=R22 diag(1,sin⁡2θ)R_{AB}=R_{22}\,\mathrm{diag}(1,\sin^2\theta) です。

3. Birkhoff の定理と Schwarzschild 解

Section titled “3. Birkhoff の定理と Schwarzschild 解”

ここからが本記事の中心です。証明の方針は、補題で得た 4 つの式をすべて 00 とおいて未知関数を順に決めていくことです。まず R01=0R_{01}=0 で時間への依存を消し、次に R00R_{00} と R11R_{11} の組合せで aa と bb を結び付け、最後に R22=0R_{22}=0 を解いて積分定数 rsr_s を得ます。

定理 3.1(Birkhoff の定理)✓

補題 2.2 の形の球対称な計量が、領域 U\mathcal{U} で真空の Einstein 方程式 Rμν=0R_{\mu\nu}=0 を満たし、かつ U\mathcal{U} で r>0r>0、e2a>0e^{2a}>0 であるとする。このとき、定数 rsr_s と時間座標の取り替え x0→ctx^0\to ct が存在して、U\mathcal{U} で

ds2=−(1−rsr)c2dt2+(1−rsr)−1dr2+r2dΩ2ds^2=-\Bigl(1-\frac{r_s}{r}\Bigr)c^2dt^2+\Bigl(1-\frac{r_s}{r}\Bigr)^{-1}dr^2+r^2d\Omega^2

となる。ここで 1−rs/r>01-r_s/r>0 である。とくに計量は tt に依存しない(静的)。

証明(定理 3.1)

真空では 補題 2.3 の 4 成分がすべて 00 です。

(1) R01=0R_{01}=0 より b˙=0\dot b=0、すなわち b=b(r)b=b(r) です。これにより R00R_{00}、R11R_{11} の時間微分項が消えます。

(2) e2(b−a)R00+R11e^{2(b-a)}R_{00}+R_{11} を作ります。a′′+a′2−a′b′a''+a'^2-a'b' の項が打ち消し合い、

e2(b−a)R00+R11=2r(a′+b′)=0.e^{2(b-a)}R_{00}+R_{11}=\frac{2}{r}(a'+b')=0 .

したがって ∂r(a+b)=0\partial_r(a+b)=0 で、a+ba+b は x0x^0 のみの関数 F(x0)F(x^0) です。すなわち a=−b(r)+F(x0)a=-b(r)+F(x^0) です。時間座標を c dt:=eF(x0)dx0c\,dt:=e^{F(x^0)}dx^0 で取り替えると、e2a(dx0)2=e−2b(r)c2dt2e^{2a}(dx^0)^2=e^{-2b(r)}c^2dt^2 となり、aa が rr だけの関数 a=−b(r)a=-b(r) になります(座標を替えても bb は変わりません)。

(3) R22=0R_{22}=0 に a′=−b′a'=-b' を代入します。e−2b(2rb′−1)+1=0e^{-2b}(2rb'-1)+1=0 です。これは

ddr(re−2b)=e−2b(1−2rb′)=1\frac{d}{dr}\bigl(re^{-2b}\bigr)=e^{-2b}(1-2rb')=1

と同値です。積分して re−2b=r−rsre^{-2b}=r-r_s(rsr_s は定数)、すなわち e−2b=1−rs/re^{-2b}=1-r_s/r を得ます。e−2b>0e^{-2b}>0 なので 1−rs/r>01-r_s/r>0 です。

以上で e2a=e−2b=1−rs/re^{2a}=e^{-2b}=1-r_s/r が決まり、主張の形になりました。

(4) 逆に、この計量が真空解であることを確かめます。R01=0R_{01}=0 は b˙=0\dot b=0 から、R22=0R_{22}=0 は (3) の逆をたどって成り立ちます。R00R_{00} は、a=−b=12ln⁡fa=-b=\tfrac12\ln f(f=1−rs/rf=1-r_s/r)で a′=f′/(2f)a'=f'/(2f)、a′′=f′′/(2f)−f′2/(2f2)a''=f''/(2f)-f'^2/(2f^2) なので

a′′+2a′2+2a′r=12f(f′′+2f′r)=12fr2(r2f′)′=0a''+2a'^2+\frac{2a'}{r}=\frac{1}{2f}\Bigl(f''+\frac{2f'}{r}\Bigr)=\frac{1}{2fr^2}\bigl(r^2f'\bigr)'=0

です(f′=rs/r2f'=r_s/r^2 より r2f′=rsr^2f'=r_s は定数)。R11R_{11} は (2) の関係式 e2(b−a)R00+R11=0e^{2(b-a)}R_{00}+R_{11}=0 から 00 です。

rsr_s の意味は、ニュートン極限との比較で決まります。

命題 3.2(rs=2GM/c2r_s=2GM/c^2)✓

定理 3.1 の解で、r≫rsr\gg r_s の領域の低速の自由落下粒子は、ニュートン重力のもとで質量 M=c2rs2GM=\dfrac{c^2r_s}{2G} の天体のまわりを動く粒子と同じ運動をする。

証明(命題 3.2)

g00=−(1−rs/r)g_{00}=-(1-r_s/r) なので、直交座標に直した弱場近似で h00=rs/rh_{00}=r_s/r です。定理 5.1[Einstein 方程式] の 1 により、粒子の運動は Φ=−12c2h00=−c2rs2r\Phi=-\tfrac12c^2h_{00}=-\dfrac{c^2r_s}{2r} のニュートンポテンシャルに従います。これが −GM/r-GM/r に等しいと置けば M=c2rs/(2G)M=c^2r_s/(2G) です。

こうして質量 MM のパラメータは rs=2GM/c2r_s=2GM/c^2 と同定されます(シュヴァルツシルト半径(定義 5.3)[曲がった時空と重力])。関数 f(r):=1−rs/rf(r):=1-r_s/r を以後使います。

次の系は、球対称な空洞の中心付近では重力が働かない、という主張です。中心で時空が滑らかなら rs=0r_s=0 でなければならないことを、rs≠0r_s\neq0 だと中心に近づくにつれて曲率が限りなく大きくなってしまうことから示します。

系 3.3(球対称な殻の内側は平坦)✓

球対称な真空領域が中心 r=0r=0 を含み、そこで時空が滑らかである(曲率が有界)なら、その領域の計量はミンコフスキー計量である。

証明(系 3.3)

定理 3.1 により領域の計量は rsr_s をパラメータとする Schwarzschild 型です。rs≠0r_s\neq0 なら r→0r\to0 で曲率が発散することを示します。補題 2.3 の記号 f=e2a=e−2bf=e^{2a}=e^{-2b} のもとで、例えば成分 RθφθφR^{\theta}{}_{\varphi\theta\varphi} を計算します。Schwarzschild 計量 gθθ=r2g_{\theta\theta}=r^2、gφφ=r2sin⁡2θg_{\varphi\varphi}=r^2\sin^2\theta、grr=fg^{rr}=f から、Christoffel 記号の式(定理 3.4[曲がった時空のテンソル解析])で

Γθφφ=−12gθθ∂θgφφ=−sin⁡θcos⁡θ,Γφθφ=12gφφ∂θgφφ=cot⁡θ,Γθθr=12gθθ∂rgθθ=1r,Γrφφ=−12grr∂rgφφ=−rfsin⁡2θ\Gamma^\theta{}_{\varphi\varphi}=-\tfrac12g^{\theta\theta}\partial_\theta g_{\varphi\varphi}=-\sin\theta\cos\theta,\quad \Gamma^\varphi{}_{\theta\varphi}=\tfrac12g^{\varphi\varphi}\partial_\theta g_{\varphi\varphi}=\cot\theta,\quad \Gamma^\theta{}_{\theta r}=\tfrac12g^{\theta\theta}\partial_r g_{\theta\theta}=\frac1r,\quad \Gamma^r{}_{\varphi\varphi}=-\tfrac12g^{rr}\partial_r g_{\varphi\varphi}=-rf\sin^2\theta

で、Γθφθ\Gamma^\theta{}_{\varphi\theta} は φ\varphi によらず、Γθθθ=Γθθφ=Γθθ0=0\Gamma^\theta{}_{\theta\theta}=\Gamma^\theta{}_{\theta\varphi}=\Gamma^\theta{}_{\theta0}=0、Γθφσ\Gamma^\theta{}_{\varphi\sigma} は σ=φ\sigma=\varphi 以外で 00 です。これらを 定義 6.1[曲がった時空のテンソル解析] に入れると

Rθφθφ=∂θΓθφφ−∂φΓθφθ+ΓθθrΓrφφ−ΓθφφΓφφθ=−(cos⁡2θ−sin⁡2θ)−0−fsin⁡2θ+cos⁡2θ=sin⁡2θ (1−f),\begin{aligned} R^\theta{}_{\varphi\theta\varphi} &=\partial_\theta\Gamma^\theta{}_{\varphi\varphi}-\partial_\varphi\Gamma^\theta{}_{\varphi\theta}+\Gamma^\theta{}_{\theta r}\Gamma^r{}_{\varphi\varphi}-\Gamma^\theta{}_{\varphi\varphi}\Gamma^\varphi{}_{\varphi\theta}\\ &=-(\cos^2\theta-\sin^2\theta)-0-f\sin^2\theta+\cos^2\theta=\sin^2\theta\,(1-f), \end{aligned}Rθφθφ=gφφRθφθφ=1−fr2=rsr3R^{\theta\varphi}{}_{\theta\varphi}=g^{\varphi\varphi}R^\theta{}_{\varphi\theta\varphi}=\frac{1-f}{r^2}=\frac{r_s}{r^3}

です(rs=0r_s=0 の平坦な場合の f=1f=1 では 00、rr を固定して θ,φ\theta,\varphi だけを見た球面の曲率とは ΓθθrΓrφφ\Gamma^\theta{}_{\theta r}\Gamma^r{}_{\varphi\varphi} の項だけが違います)。曲率の成分が計量の局所的な不変量(正規直交基底での成分)として rs/r3r_s/r^3 になるので、rs≠0r_s\neq0 なら r→0r\to0 で有界ではありません。曲率が有界という仮定に反するので rs=0r_s=0 で、計量は −c2dt2+dr2+r2dΩ2-c^2dt^2+dr^2+r^2d\Omega^2、すなわちミンコフスキー計量です。

注意 3.4(Birkhoff の定理の物理的な帰結)

殻定理の相対論版。 球対称な質量分布の外側の時空は、内部の運動に依らず質量 MM の Schwarzschild 解です。星が脈動しても、球対称に崩壊しても、外から見た時空は不変です。したがって球対称な運動は重力波を出しません(重力波の最低次が四重極であること、は重力波で示します)。球殻の内側は 系 3.3 により平坦で、ニュートン重力の殻定理に対応します。

適用範囲。 本定理は e2a>0e^{2a}>0(x0x^0 方向が時間的)の領域、すなわち r>rsr>r_s で証明しました。r<rsr<r_s では 1−rs/r<01-r_s/r<0 となり、rr が時間的、x0x^0 が空間的になるので、仮定を満たしません。この領域(ブラックホールの内部)は、a,ba,b の役割を入れ替えた同様の計算で扱えます。計量が r=rsr=r_s で見かけ上発散する問題とともに、ブラックホールの章で扱います。

Schwarzschild 時空での自由落下を調べます。計量は x0x^0 にも φ\varphi にも依らないので、それぞれに対応する量が運動のあいだ一定に保たれる、というのが以下の要点です。x0x^0 と φ\varphi は計量に陽に現れないので、計量の対称性と保存量(命題 5.5)[曲がった時空のテンソル解析] が使えます。

命題 4.1(Schwarzschild 時空の測地線)✓

固有時 τ\tau(光線ではアフィンパラメータ σ\sigma)で測った測地線について、次が成り立つ。

  1. 運動は 1 つの平面内にあり、座標を回転して θ=π/2\theta=\pi/2 とできる。
  2. 時間的測地線では、定数 ε, ℓ\varepsilon,\ \ell が存在して f dtdτ=ε,r2dφdτ=ℓ,(drdτ)2=c2ε2−f(r)(c2+ℓ2r2).f\,\frac{dt}{d\tau}=\varepsilon,\qquad r^2\frac{d\varphi}{d\tau}=\ell,\qquad \Bigl(\frac{dr}{d\tau}\Bigr)^2=c^2\varepsilon^2-f(r)\Bigl(c^2+\frac{\ell^2}{r^2}\Bigr).
  3. ヌル測地線では、定数 E, LE,\ L が存在して
f dtdσ=E,r2dφdσ=L,(drdσ)2=c2E2−f(r)L2r2.f\,\frac{dt}{d\sigma}=E,\qquad r^2\frac{d\varphi}{d\sigma}=L,\qquad \Bigl(\frac{dr}{d\sigma}\Bigr)^2=c^2E^2-f(r)\frac{L^2}{r^2}.
証明(命題 4.1)

1. θ\theta 成分の測地線方程式は、定理 5.3[曲がった時空のテンソル解析] の 1 のオイラー・ラグランジュ方程式から ddτ(r2θ˙)=r2sin⁡θcos⁡θ φ˙2\dfrac{d}{d\tau}(r^2\dot\theta)=r^2\sin\theta\cos\theta\,\dot\varphi^2 です。ある時刻で θ=π/2\theta=\pi/2、θ˙=0\dot\theta=0 なら、θ≡π/2\theta\equiv\pi/2 はこの方程式(他の成分とともに)を満たす解で、命題 5.2[曲がった時空のテンソル解析] の 4(一意性)により、これが唯一の解です。計量は回転で不変なので、座標を回転すれば任意の初期条件についてこの状況にできます。

2. x0x^0 と φ\varphi が循環座標なので、命題 5.5[曲がった時空のテンソル解析] により p0=g00 dx0/dτ=−fc t˙p_0=g_{00}\,dx^0/d\tau=-fc\,\dot t と pφ=r2φ˙p_\varphi=r^2\dot\varphi が定数です。前者を −cε-c\varepsilon と置きます。正規化条件 g(u,u)=−c2g(u,u)=-c^2 は、θ=π/2\theta=\pi/2 で

−fc2t˙2+r˙2f+r2φ˙2=−c2-fc^2\dot t^2+\frac{\dot r^2}{f}+r^2\dot\varphi^2=-c^2

です。t˙=ε/f\dot t=\varepsilon/f、φ˙=ℓ/r2\dot\varphi=\ell/r^2 を代入して整理すると第 3 式を得ます。

3. ヌル測地線では右辺が 00 になる以外は同じです。−fc2t˙2+r˙2/f+r2φ˙2=0-fc^2\dot t^2+\dot r^2/f+r^2\dot\varphi^2=0 に t˙=E/f\dot t=E/f、φ˙=L/r2\dot\varphi=L/r^2 を代入して得られます。

保存量の意味を確かめておきます。無限遠(f→1f\to1)で、ε=dt/dτ\varepsilon=dt/d\tau は静止質量あたりのエネルギー Etot/(mc2)E_{\mathrm{tot}}/(mc^2) にあたり、ℓ\ell は単位質量あたりの角運動量です。

命題 4.2(軌道方程式)✓

u:=1/ru:=1/r とする。時間的測地線は ℓ≠0\ell\neq0 のとき

d2udφ2+u=GMℓ2+3GMc2 u2,\frac{d^2u}{d\varphi^2}+u=\frac{GM}{\ell^2}+\frac{3GM}{c^2}\,u^2,

ヌル測地線は L≠0L\neq0 のとき

d2udφ2+u=3GMc2 u2\frac{d^2u}{d\varphi^2}+u=\frac{3GM}{c^2}\,u^2

を満たす。

証明(命題 4.2)

時間的な場合。du/dφ=−r˙/(r2φ˙)=−r˙/ℓdu/d\varphi=-\dot r/(r^2\dot\varphi)=-\dot r/\ell なので、命題 4.1 の 2 の第 3 式から

(dudφ)2=c2ε2ℓ2−1ℓ2 (1−rsu) (c2+ℓ2u2).\Bigl(\frac{du}{d\varphi}\Bigr)^2=\frac{c^2\varepsilon^2}{\ell^2}-\frac{1}{\ell^2}\,(1-r_su)\,(c^2+\ell^2u^2).

両辺を φ\varphi で微分し、2 du/dφ2\,du/d\varphi で割ります(du/dφ≠0du/d\varphi\neq0 の点で。他の点へは連続性で延長します)。

d2udφ2=12ℓ2[rs(c2+ℓ2u2)−2ℓ2u(1−rsu)]=rsc22ℓ2+rs2u2−u+rsu2.\frac{d^2u}{d\varphi^2}=\frac{1}{2\ell^2}\Bigl[r_s(c^2+\ell^2u^2)-2\ell^2u(1-r_su)\Bigr] =\frac{r_sc^2}{2\ell^2}+\frac{r_s}{2}u^2-u+r_su^2 .

移項して rs=2GM/c2r_s=2GM/c^2 を使うと、u′′+u=GMℓ2+3rs2u2=GMℓ2+3GMc2u2u''+u=\dfrac{GM}{\ell^2}+\dfrac{3r_s}{2}u^2=\dfrac{GM}{\ell^2}+\dfrac{3GM}{c^2}u^2 です。ヌルの場合も、命題 4.1 の 3 から (du/dφ)2=c2E2/L2−(1−rsu)u2(du/d\varphi)^2=c^2E^2/L^2-(1-r_su)u^2 で、微分して u′′=−u+32rsu2u''=-u+\tfrac32r_su^2 を得ます。

注意 4.3(有効ポテンシャル)

命題 4.1 の第 3 式は 12r˙2+Veff(r)=12c2ε2\tfrac12\dot r^2+V_{\mathrm{eff}}(r)=\tfrac12c^2\varepsilon^2、

Veff=12c2−GMr+ℓ22r2−GMℓ2c2r3V_{\mathrm{eff}}=\tfrac12c^2-\frac{GM}{r}+\frac{\ell^2}{2r^2}-\frac{GM\ell^2}{c^2r^3}

と書けます。最初の 3 項は定数を除いてニュートン力学の中心力問題の有効ポテンシャル(定義 4.1[惑星の運動と中心力])と同じで、最後の r−3r^{-3} 項が一般相対論の補正です。この項は小さな rr で引力的に効き、ニュートン力学にはない不安定軌道を作ります(演習 8.5)。

ニュートン力学では、逆二乗力のもとの束縛運動は閉じた楕円です。命題 4.2 の補正項 3GMc2u2\dfrac{3GM}{c^2}u^2 は、この閉じた軌道をわずかに開きます。証明の方針は、ニュートン力学の楕円軌道を出発点にして補正項を 1 次の摂動として足し、近日点が 1 周ごとにどれだけ回るかを読み取ることです。

定理 5.1(近日点移動)✓

質量 MM のまわりの束縛軌道で、ニュートン近似の軌道が半直弧 p=ℓ2/(GM)p=\ell^2/(GM)、離心率 ee(0≤e<10\le e<1)の楕円であるとする。δ:=3GMc2p≪1\delta:=\dfrac{3GM}{c^2p}\ll1 のとき、δ\delta の 1 次の範囲で、連続する 2 回の近日点の間に角度 φ\varphi は 2π(1+δ)2\pi(1+\delta) だけ進む。すなわち近日点は 1 周ごとに

Δφ=2πδ=6πGMc2p=6πGMc2a(1−e2)\Delta\varphi=2\pi\delta=\frac{6\pi GM}{c^2p}=\frac{6\pi GM}{c^2a(1-e^2)}

だけ軌道の進む向きに回る。ここで aa は軌道長半径で、p=a(1−e2)p=a(1-e^2) を使った。

証明(定理 5.1)

α:=3GM/c2\alpha:=3GM/c^2 とおき、命題 4.2 を u′′+u=GM/ℓ2+αu2u''+u=GM/\ell^2+\alpha u^2 と書きます。α=0\alpha=0 の解は、ケプラーの第一法則(定理 5.2)[惑星の運動と中心力] の証明と同じく u0=1p(1+ecos⁡φ)u_0=\dfrac1p(1+e\cos\varphi) です(近日点を φ=0\varphi=0 に取ります)。u=u0+u1u=u_0+u_1 と置き、α\alpha の 1 次で

u1′′+u1=αu02=αp2(1+e22+2ecos⁡φ+e22cos⁡2φ)u_1''+u_1=\alpha u_0^2=\frac{\alpha}{p^2}\Bigl(1+\frac{e^2}{2}+2e\cos\varphi+\frac{e^2}{2}\cos2\varphi\Bigr)

を解きます(cos⁡2φ=(1+cos⁡2φ)/2\cos^2\varphi=(1+\cos2\varphi)/2)。右辺の各項に対する特殊解は次のとおりです。

  • 定数 CC には u=Cu=C。
  • Acos⁡2φA\cos2\varphi には u=−A3cos⁡2φu=-\tfrac{A}{3}\cos2\varphi((cos⁡2φ)′′=−4cos⁡2φ(\cos2\varphi)''=-4\cos2\varphi なので −4A′+A′=A-4A'+A'=A より A′=−A/3A'=-A/3)。
  • Bcos⁡φB\cos\varphi には u=B2φsin⁡φu=\tfrac B2\varphi\sin\varphi((φsin⁡φ)′′=2cos⁡φ−φsin⁡φ(\varphi\sin\varphi)''=2\cos\varphi-\varphi\sin\varphi なので (φsin⁡φ)′′+φsin⁡φ=2cos⁡φ(\varphi\sin\varphi)''+\varphi\sin\varphi=2\cos\varphi)。

したがって、同次解(cos⁡φ,sin⁡φ\cos\varphi,\sin\varphi の項で、ee と近日点の位置の再定義に吸収できます)を除いて

u1=αp2[1+e22−e26cos⁡2φ+e φsin⁡φ].u_1=\frac{\alpha}{p^2}\Bigl[1+\frac{e^2}{2}-\frac{e^2}{6}\cos2\varphi+e\,\varphi\sin\varphi\Bigr] .

全体は、δ=α/p\delta=\alpha/p として

u=1p[1+ecos⁡φ+δ e φsin⁡φ+δ(1+e22−e26cos⁡2φ)].u=\frac1p\Bigl[1+e\cos\varphi+\delta\,e\,\varphi\sin\varphi+\delta\Bigl(1+\frac{e^2}{2}-\frac{e^2}{6}\cos2\varphi\Bigr)\Bigr] .

近日点は uu の極大点です。φ=2πn+x\varphi=2\pi n+x(xx は小さい)とおき、du/dφ=0du/d\varphi=0 を調べます。

pdudφ=−esin⁡φ+δe (sin⁡φ+φcos⁡φ)+δe23sin⁡2φ.p\frac{du}{d\varphi}=-e\sin\varphi+\delta e\,(\sin\varphi+\varphi\cos\varphi)+\frac{\delta e^2}{3}\sin2\varphi .

φ=2πn+x\varphi=2\pi n+x では sin⁡φ=sin⁡x≃x\sin\varphi=\sin x\simeq x、cos⁡φ≃1\cos\varphi\simeq1、sin⁡2φ≃2x\sin2\varphi\simeq2x なので

−e x+δe (x+2πn+x)+2δe23x=0⟹x=2πn δ+O(δ2)-e\,x+\delta e\,(x+2\pi n+x)+\frac{2\delta e^2}{3}x=0 \quad\Longrightarrow\quad x=2\pi n\,\delta+O(\delta^2)

を得ます(δx\delta x の項は 2 次として落としました。nδ≪1n\delta\ll1 の範囲で有効です)。したがって nn 番目の近日点は φn=2πn(1+δ)\varphi_n=2\pi n(1+\delta) にあり、連続する近日点の間隔は 2π(1+δ)2\pi(1+\delta)、1 周あたりの移動は 2πδ=6πGM/(c2p)2\pi\delta=6\pi GM/(c^2p) です。最後の式の p=a(1−e2)p=a(1-e^2) は楕円の半直弧と長半径・離心率の関係です。

直観的には、δeφsin⁡φ\delta e\varphi\sin\varphi の項は cos⁡((1−δ)φ)≃cos⁡φ+δφsin⁡φ\cos((1-\delta)\varphi)\simeq\cos\varphi+\delta\varphi\sin\varphi の展開にあたり、「軌道の角振動数が 11 ではなく 1−δ1-\delta」であることを意味します。1 周して元の向きに戻るには 2π/(1−δ)≃2π(1+δ)2\pi/(1-\delta)\simeq2\pi(1+\delta) だけ回る必要があります。

(a) 太陽(焦点)と回る楕円近日点の移動(b) 質量 M遠方の光源観測者へb
(a) 近日点移動(実際の効果を大幅に誇張して描いている)。楕円軌道が 1 周ごとに少しずつ回る。(b) 太陽の近くを通る光線の偏向。偏向角は α = 4GM/(c²b)。

例 5.2(水星の近日点移動)

水星の軌道長半径 a=5.791×1010a=5.791\times10^{10} m、離心率 e=0.2056e=0.2056、公転周期 87.9787.97 日、GM⊙=1.3271×1020 m3/s2GM_\odot=1.3271\times10^{20}\ \mathrm{m^3/s^2} を 定理 5.1 に入れます。a(1−e2)=5.791×1010×0.9577=5.546×1010a(1-e^2)=5.791\times10^{10}\times0.9577=5.546\times10^{10} m で、

Δφ=6π×1.3271×10208.988×1016×5.546×1010=2.502×10214.985×1027=5.02×10−7 rad/周\Delta\varphi=\frac{6\pi\times1.3271\times10^{20}}{8.988\times10^{16}\times5.546\times10^{10}}=\frac{2.502\times10^{21}}{4.985\times10^{27}}=5.02\times10^{-7}\ \text{rad/周}

です。100 年(3652536525 日)の公転回数は 36525/87.97=415.236525/87.97=415.2 なので、5.02×10−7×415.2=2.084×10−45.02\times10^{-7}\times415.2=2.084\times10^{-4} rad、秒角に直すと ×206265\times206265 で

42.98′′ /世紀42.98''\ /\text{世紀}

です。19 世紀の終わりにニューカムが他の惑星の摂動を差し引いて得た水星の近日点の余分な前進はおよそ 4343 秒角でした。この一致が、一般相対性理論が最初に成功した検証です。

他の惑星では効果は小さくなります。金星 8.6′′8.6''、地球 3.8′′3.8''、火星 1.4′′1.4''(いずれも 100 年あたり)。1/[a(1−e2)]1/[a(1-e^2)] と公転回数の積で決まるからです。

光はヌル測地線に沿って進みます。命題 4.2 のヌルの式を摂動で解きます。衝突径数 bb は、光線をまっすぐな線とみなしたときの、天体の中心からその線までの垂直距離のことです。方針は §5 と同じで、直線の解を出発点に補正を 1 次まで足し、光線が無限遠へ去る 2 つの方向が直線のときの向きから何ラジアンずれるかを求めます。

定理 6.1(光の偏向角)✓

質量 MM の天体の外側を通過するヌル測地線で、最接近距離(衝突径数)が bb であるものを考える。GM/(c2b)≪1GM/(c^2b)\ll1 の 1 次の範囲で、無限遠から無限遠までの光線の偏向角は

α=4GMc2b=2rsb\alpha=\frac{4GM}{c^2b}=\frac{2r_s}{b}

で、光線は天体に引き寄せられる向きに曲がる。

証明(定理 6.1)

u′′+u=3GMc2u2u''+u=\dfrac{3GM}{c^2}u^2 を、右辺を落とした解 u0=sin⁡φ/bu_0=\sin\varphi/b(直線 rsin⁡φ=br\sin\varphi=b。光は φ=0\varphi=0 の遠方から来て φ=π\varphi=\pi の遠方へ去る)から出発して GM/c2GM/c^2 の 1 次で解きます。u=u0+u1u=u_0+u_1 として

u1′′+u1=3GMc2b2sin⁡2φ=3GM2c2b2(1−cos⁡2φ).u_1''+u_1=\frac{3GM}{c^2b^2}\sin^2\varphi=\frac{3GM}{2c^2b^2}(1-\cos2\varphi).

定数項には u1=3GM2c2b2u_1=\dfrac{3GM}{2c^2b^2}、−3GM2c2b2cos⁡2φ-\dfrac{3GM}{2c^2b^2}\cos2\varphi には u1=GM2c2b2cos⁡2φu_1=\dfrac{GM}{2c^2b^2}\cos2\varphi((cos⁡2φ)′′=−4cos⁡2φ(\cos2\varphi)''=-4\cos2\varphi より係数は −3A′=−3GM/(2c2b2)-3A'=-3GM/(2c^2b^2) から A′=GM/(2c2b2)A'=GM/(2c^2b^2))が特殊解です。よって

u=sin⁡φb+GMc2b2(32+12cos⁡2φ)=sin⁡φb+GMc2b2(1+cos⁡2φ).u=\frac{\sin\varphi}{b}+\frac{GM}{c^2b^2}\Bigl(\frac32+\frac12\cos2\varphi\Bigr)=\frac{\sin\varphi}{b}+\frac{GM}{c^2b^2}\bigl(1+\cos^2\varphi\bigr) .

光線が無限遠に達する方向は u=0u=0 です。入射側は φ=−δ1\varphi=-\delta_1 の近くで、sin⁡φ≃−δ1\sin\varphi\simeq-\delta_1、cos⁡2φ≃1\cos^2\varphi\simeq1 とすると −δ1/b+2GM/(c2b2)=0-\delta_1/b+2GM/(c^2b^2)=0 より δ1=2GM/(c2b)\delta_1=2GM/(c^2b)。出射側は φ=π+δ2\varphi=\pi+\delta_2 の近くで、sin⁡φ≃−δ2\sin\varphi\simeq-\delta_2 なので同様に δ2=2GM/(c2b)\delta_2=2GM/(c^2b) です。光線が掃く角度の総量は π+δ1+δ2\pi+\delta_1+\delta_2 で、直線なら π\pi なので、偏向角は δ1+δ2=4GM/(c2b)\delta_1+\delta_2=4GM/(c^2b) です。u1u_1 は u0u_0 に比べて小さく、bb は最接近距離(du/dφ=0du/d\varphi=0 の点 φ=π/2\varphi=\pi/2 での r=1/u≃br=1/u\simeq b)とこの近似では一致します。

例 6.2(太陽・木星・地球の縁をかすめる光)

b=R⊙=6.957×108b=R_\odot=6.957\times10^8 m、GM⊙/c2=1.4766×103GM_\odot/c^2=1.4766\times10^3 m で

α=4×1.4766×1036.957×108=8.49×10−6 rad=1.75′′\alpha=\frac{4\times1.4766\times10^3}{6.957\times10^8}=8.49\times10^{-6}\ \text{rad}=1.75''

です。1919 年の皆既日食でエディントンらが測った値は 太陽をかすめる星の光(例 6.3)[一般相対性理論への招待] で見たとおりで、等価原理だけから得られる 0.87′′0.87'' ではなく、1.75′′1.75'' を支持しました。α\alpha の半分は時間成分 g00g_{00} から、残りの半分は空間成分 grrg_{rr} から来ます(注意 6.4[一般相対性理論への招待])。

木星の縁なら GMJ/c2=1.41GM_J/c^2=1.41 m、RJ=7.149×107R_J=7.149\times10^7 m で α=4×1.41/(7.149×107)=7.9×10−8\alpha=4\times1.41/(7.149\times10^7)=7.9\times10^{-8} rad =16=16 ミリ秒角、地球の縁では 0.570.57 ミリ秒角です。太陽以外の天体による偏向は桁違いに小さく、この大きさの角度を測れる電波干渉計の精度が求められます。

最後に、Schwarzschild 時空での振動数のずれを厳密に求めます。光の波動としての性質は局所慣性系で扱います。

定理 7.1(Schwarzschild 時空での振動数比)✓

r=rer=r_e に静止した発信者が出した光を、r=ror=r_o に静止した観測者が受け取るとき、それぞれが測る振動数 νe,νo\nu_e,\nu_o の比は厳密に

νoνe=f(re)f(ro)=1−rs/re1−rs/ro\frac{\nu_o}{\nu_e}=\sqrt{\frac{f(r_e)}{f(r_o)}}=\sqrt{\frac{1-r_s/r_e}{1-r_s/r_o}}

である。

証明(定理 7.1)

光子の 4 元運動量を pμ=dxμ/dσp^\mu=dx^\mu/d\sigma(アフィンパラメータ σ\sigma、x0=ctx^0=ct)とします。観測者の 4 元速度を uobsu_{\mathrm{obs}}(g(u,u)=−1g(u,u)=-1)とすると、観測者の局所慣性系(命題 4.5[曲がった時空のテンソル解析])で u=(1,0,0,0)u=(1,0,0,0) であり、−g(p,u)=p0-g(p,u)=p^0 はその系での光子の時間成分、すなわちその観測者が測る振動数に比例します。比例定数は観測者によらないので、ν∝−g(p,uobs)\nu\propto-g(p,u_{\mathrm{obs}}) です。

静止した観測者は dr=dθ=dφ=0dr=d\theta=d\varphi=0 です。線素は ds2=−f (dx0)2ds^2=-f\,(dx^0)^2 で、g(u,u)=−1g(u,u)=-1 となる u=dx/dsu=dx/ds(s=cτs=c\tau)は uobs=(1/f,0,0,0)u_{\mathrm{obs}}=(1/\sqrt f,0,0,0) です。したがって

−g(p,uobs)=−g00 p0u0=f p0⋅1f=f p0.-g(p,u_{\mathrm{obs}})=-g_{00}\,p^0u^0=f\,p^0\cdot\frac{1}{\sqrt f}=\sqrt f\,p^0 .

一方、命題 5.5[曲がった時空のテンソル解析] により p0=g00p0=−fp0p_0=g_{00}p^0=-fp^0 は光線に沿って定数なので p0=const/fp^0=\mathrm{const}/f です。よって ν∝f⋅const/f=const/f\nu\propto\sqrt f\cdot\mathrm{const}/f=\mathrm{const}/\sqrt{f}、つまり発信点と受信点で νef(re)=νof(ro)\nu_e\sqrt{f(r_e)}=\nu_o\sqrt{f(r_o)} です。

rs/r≪1r_s/r\ll1 では νo/νe≃1−rs2(1re−1ro)=1−GMc2(1re−1ro)\nu_o/\nu_e\simeq1-\dfrac{r_s}{2}\Bigl(\dfrac1{r_e}-\dfrac1{r_o}\Bigr)=1-\dfrac{GM}{c^2}\Bigl(\dfrac1{r_e}-\dfrac1{r_o}\Bigr) で、Φ=−GM/r\Phi=-GM/r とすれば 重力赤方偏移(定理 5.1)[一般相対性理論への招待] の式 −(Φo−Φe)/c2-(\Phi_o-\Phi_e)/c^2 と一致します。等価原理から出した近似式が、厳密解の 1 次展開になっています。

例 7.2(太陽表面から来る光)

re=R⊙r_e=R_\odot、ro=∞r_o=\infty とすると νo/νe=1−rs/R⊙≃1−GM⊙c2R⊙=1−2.12×10−6\nu_o/\nu_e=\sqrt{1-r_s/R_\odot}\simeq1-\dfrac{GM_\odot}{c^2R_\odot}=1-2.12\times10^{-6} です。これをドップラー速度に換算すると 2.12×10−6×c=636 m/s2.12\times10^{-6}\times c=636\ \mathrm{m/s} で、吸収線が長波長側に 636 m/s 分ずれて見えます。太陽表面のガスの対流や自転によるドップラーずれも同程度の大きさなので、太陽光だけで重力赤方偏移を精密に測るのは難しく、地上の実験(パウンド・レブカ実験(例 5.3)[一般相対性理論への招待])や原子時計による検証のほうが精度で勝ります。

演習 8.1易

地球の軌道(a=1.496×1011a=1.496\times10^{11} m、e=0.0167e=0.0167、周期 365.26365.26 日)の近日点移動を、100 年あたりの秒角で求めよ。GM⊙=1.3271×1020 m3/s2GM_\odot=1.3271\times10^{20}\ \mathrm{m^3/s^2} を使え。

解答

a(1−e2)=1.496×1011×(1−2.79×10−4)=1.4956×1011a(1-e^2)=1.496\times10^{11}\times(1-2.79\times10^{-4})=1.4956\times10^{11} m。定理 5.1 より 1 周あたり

Δφ=6π×1.3271×10208.988×1016×1.4956×1011=2.502×10211.3442×1028=1.861×10−7 rad\Delta\varphi=\frac{6\pi\times1.3271\times10^{20}}{8.988\times10^{16}\times1.4956\times10^{11}}=\frac{2.502\times10^{21}}{1.3442\times10^{28}}=1.861\times10^{-7}\ \text{rad}

です。100 年の公転回数は 36525/365.26≃100.036525/365.26\simeq100.0 なので 1.861×10−51.861\times10^{-5} rad、秒角で 3.84′′3.84'' です。水星の約 1/111/11 で、これは 1/[a(1−e2)]1/[a(1-e^2)] が約 1/2.71/2.7、公転回数が約 1/4.21/4.2 になるためです。

演習 8.2易

木星の縁をかすめる電波の偏向角を求めよ。GMJ=1.2669×1017 m3/s2GM_J=1.2669\times10^{17}\ \mathrm{m^3/s^2}、RJ=7.149×107R_J=7.149\times10^7 m とせよ。

解答

定理 6.1 より α=4GMJ/(c2RJ)=4×1.2669×1017/(8.988×1016×7.149×107)=5.068×1017/6.425×1024=7.89×10−8\alpha=4GM_J/(c^2R_J)=4\times1.2669\times10^{17}/(8.988\times10^{16}\times7.149\times10^7)=5.068\times10^{17}/6.425\times10^{24}=7.89\times10^{-8} rad、すなわち 16.316.3 ミリ秒角です。

演習 8.3標準

Schwarzschild 時空で、動径方向に進む光が r1r_1 から r2r_2(rs<r1<r2r_s<r_1<r_2)まで進む座標時間 Δt\Delta t を求め、rsr_s について 1 次の補正(Shapiro 遅延)を示せ。

解答

動径方向のヌル測地線は ds2=0ds^2=0、dθ=dφ=0d\theta=d\varphi=0 より f c2dt2=dr2/ff\,c^2dt^2=dr^2/f、すなわち c dt=dr/fc\,dt=dr/f です。積分して

c Δt=∫r1r2dr1−rs/r=∫r1r2(1+rsr−rs)dr=(r2−r1)+rsln⁡r2−rsr1−rsc\,\Delta t=\int_{r_1}^{r_2}\frac{dr}{1-r_s/r}=\int_{r_1}^{r_2}\Bigl(1+\frac{r_s}{r-r_s}\Bigr)dr=(r_2-r_1)+r_s\ln\frac{r_2-r_s}{r_1-r_s}

です。第 1 項は平坦な時空での値で、第 2 項が重力による遅延です。rs≪r1r_s\ll r_1 では rsln⁡(r2/r1)r_s\ln(r_2/r_1) に近づきます。太陽の近くを通る電波の往復時間はこの対数の項の分だけ延び、数百マイクロ秒に達します。

演習 8.4標準

有効ポテンシャル(注意 4.3)の停留条件から、半径 rr の円軌道の角運動量 ℓ\ell が ℓ2=GMr2r−3GM/c2\ell^2=\dfrac{GMr^2}{r-3GM/c^2} で与えられることを示せ。この式は rr にどんな条件を課すか。

解答

円軌道では r˙=0\dot r=0 かつ r¨=0\ddot r=0 なので、Veff′(r)=0V_{\mathrm{eff}}'(r)=0 です。

Veff′=GMr2−ℓ2r3+3GMℓ2c2r4=0 ⟺ GMr2−ℓ2r+3GMℓ2c2=0 ⟺ ℓ2(r−3GMc2)=GMr2.V_{\mathrm{eff}}'=\frac{GM}{r^2}-\frac{\ell^2}{r^3}+\frac{3GM\ell^2}{c^2r^4}=0 \ \Longleftrightarrow\ GMr^2-\ell^2r+\frac{3GM\ell^2}{c^2}=0 \ \Longleftrightarrow\ \ell^2\Bigl(r-\frac{3GM}{c^2}\Bigr)=GMr^2 .

ℓ2>0\ell^2>0 なので r>3GM/c2=32rsr>3GM/c^2=\tfrac32r_s が必要です。この半径が円軌道の存在する限界で、r→3GM/c2r\to3GM/c^2 で ℓ→∞\ell\to\infty になります(光子の円軌道の位置に対応します)。

演習 8.5難

演習 8.4 の円軌道が安定であるための条件 Veff′′(r)>0V_{\mathrm{eff}}''(r)>0 を求め、最内安定円軌道の半径が rISCO=6GM/c2=3rsr_{\mathrm{ISCO}}=6GM/c^2=3r_s であることを示せ。

解答

Veff′′=−2GMr3+3ℓ2r4−12GMℓ2c2r5=1r4[−2GMr+3ℓ2(1−4mr)]V_{\mathrm{eff}}''=-\dfrac{2GM}{r^3}+\dfrac{3\ell^2}{r^4}-\dfrac{12GM\ell^2}{c^2r^5}=\dfrac{1}{r^4}\Bigl[-2GMr+3\ell^2\Bigl(1-\dfrac{4m}{r}\Bigr)\Bigr]、ただし m=GM/c2m=GM/c^2 と置きました。円軌道の条件 ℓ2=GMr2/(r−3m)\ell^2=GMr^2/(r-3m) を代入すると

3ℓ2(1−4mr)=3GMr2r−3m⋅r−4mr=3GMr(r−4m)r−3m,3\ell^2\Bigl(1-\frac{4m}{r}\Bigr)=\frac{3GMr^2}{r-3m}\cdot\frac{r-4m}{r}=\frac{3GMr(r-4m)}{r-3m},−2GMr+3GMr(r−4m)r−3m=GMrr−3m[−2(r−3m)+3(r−4m)]=GMr (r−6m)r−3m-2GMr+\frac{3GMr(r-4m)}{r-3m}=\frac{GMr}{r-3m}\bigl[-2(r-3m)+3(r-4m)\bigr]=\frac{GMr\,(r-6m)}{r-3m}

です。r>3mr>3m では分母が正なので、Veff′′>0V_{\mathrm{eff}}''>0 と r>6mr>6m は同値です。したがって安定な円軌道は r>6GM/c2r>6GM/c^2 に限られ、最内安定円軌道は rISCO=6GM/c2=3rsr_{\mathrm{ISCO}}=6GM/c^2=3r_s です。ニュートン力学では円軌道はいくらでも小さくできますが、一般相対論ではここより内側では円軌道が不安定になり、物質は内側へ落ち込みます。降着円盤の内縁がこの半径で決まります。

  • K. Schwarzschild, “Über das Gravitationsfeld eines Massenpunktes nach der Einsteinschen Theorie”, Sitzungsberichte der Königlich Preußischen Akademie der Wissenschaften (1916), 189–196. — 球対称真空解の原論文。
  • G. D. Birkhoff, Relativity and Modern Physics, Harvard University Press, 1923. — Birkhoff の定理の出典。
  • A. Einstein, “Erklärung der Perihelbewegung des Merkur aus der allgemeinen Relativitätstheorie”, Sitzungsberichte der Königlich Preußischen Akademie der Wissenschaften (1915), 831–839. — 水星の近日点移動。
  • F. W. Dyson, A. S. Eddington, C. Davidson, “A Determination of the Deflection of Light by the Sun’s Gravitational Field, from Observations Made at the Total Eclipse of May 29, 1919”, Philosophical Transactions of the Royal Society A 220 (1920), 291–333.
  • S. M. Carroll, Spacetime and Geometry, Addison-Wesley, 2004 — 第 5 章(シュヴァルツシルト解と Birkhoff の定理)、第 5.4〜5.5 節(測地線と古典的検証)。
  • R. M. Wald, General Relativity, University of Chicago Press, 1984 — 第 6 章(球対称解)。

このテーマの 100 本ノック(50 問)

執筆: Claude Code(Sonnet 5.5)、Claude Code(Opus 5.5)・監査 3 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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